2009-04

中国の女性NGOについての本

 4月初め、高小賢・謝麗華主編『中国婦女NGO成長進行時』(金城出版社 2009年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)という本が出版されました。

 この本には、中国の6つの代表的な女性NGOについて書かれています。それらのNGOは、1980年代~1990年代に設立された、中国では「第一世代の女性NGO」(序文)です。(「序文」はネットに掲載されています:王行娟「前言」)。

 この6つのNGOは、2004年から「中国女性NGO能力建設」というプロジェクト(そのサイト)をおこなって、それぞれのNGOの組織建設、機構文化、人力資源、資金調達、財務制度、プロジェクト管理の経験について交流と総括をしました。本書は、このプロジェクトがもとになって出来ました。

 これまでにも、中国の女性NGOが、さまざまな問題について訴えたり、研究成果を報告するために出版した本はいろいろありました。しかし、この本はNGO自体の組織や運営、歴史について書かれたものであり、こうした本が中国で出版されるのは初めてだと思います。

 本書は、以下の6つのNGOについて、その関係者が書いた文を、4~5編づつ収録しています(新しいNGOから順に並んでいます)。

 第1輯 河南コミュニティ教育研究センター河南社区教育研究中心)(1998年10月設立)
 第2輯 シーサンパンナ州女性児童心理法律相談サービスセンター西双版納州婦女児童心理法律諮詢服務中心)(1997年3月設立)(シーサンパンナ州は、雲南省にあるタイ族の自治州)
 第3輯 北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター北京大学法学院婦女法律研究与服務中心)(1995年12月設立)
 第4輯 農家女文化発展センター農家女文化発展中心)(1993年1月創刊の『農家女百事通[2003年1月から農家女]』誌から発展し、2001年9月設立)
 第5輯 北京紅楓女性心理相談サービスセンター北京紅楓婦女心理諮詢服務中心)(1988年10月、中国管理科学研究院婦女研究所として設立、1995年改称)
 第6輯 陝西省女性理論婚姻家庭研究会陝西省婦女理論婚姻家庭研究会)(1986年6月設立)

 内容はまだあまり読めていませんが、以上、簡単に報告させていただきました。

 なお、中国の女性NGOに関する書籍や論文については、私のサイトの中の「中国の女性NGOに関する英語・日本語文献目録」のページもご覧ください。
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HIV女性感染者のネットワーク

 中国では、HIV感染者の中で女性が占める比率が、ここ10年間で7.1%から35%に急増しました(1)

 エイズの感染、治療・サポートは、女性の地位の問題と深く関わっています(性的自律性、女性の性に対する偏見、経済力、暴力、医療・教育の保障、妊娠・出産、病人の介護などの面で)。ですから、中国でも、以下のようなHIVの女性感染者のネットワークが活動を始めています。

1.タンポポ女性感染者ネットワーク

 2007年3月8日、「タンポポ女性感染者ネットワーク(のちに「タンポポ中国女性ネットワーク」などとも称する。蒲公英中国女性網絡、Dandelion:Association of Chinese Women PLWHA、Dandelion Chinese Women's Network)」が設立されました。女性感染者を中心に、男女のボランティアも含めて100人あまりが加入しています。「タンポポ」という言葉は、生命力の強さを象徴しています。

 このネットワークの目標は、インターネットを通じて女性の力を合わせて、女性感染者と家族のエイズ治療に関する知識や自己看護能力を高め、女性感染者の生存・学習・就労・婚姻・出産の機会・環境を勝ち取り、改善し、治療環境も改善して、生存の質を高め、最終的には「エイズの平等な治療、エイズの平等な生存」を実現することです(2)

 それまでにも、地域に女性感染者の小さなグループはあったようですが、全国的な組織は、「タンポポ女性感染者ネットワーク」が初めてです(3)。べつに男性感染者と対立する組織ではなく、女性には、治療、就労、結婚・育児、家庭看護、心理的な訴えなどの点で男性とは異なる問題があるので結成されました(4)

 このネットワークは、活動内容として、以下のことを掲げています。
 (1)電話相談やQQ群(グループ内で話し合えるネット上のコミュニティ)、ホームページ(今は不通)、フォーラムなどをとおして、女性感染者のために、交流や訴え、相談の場を作る。
 (2)女性のニーズ調査をする。
 (3)独身の感染者に友人・結婚相手募集の場を提供する。
 (4)女性・子どもの個別のケースの整理、および権益の主張。
 (5)不平等な待遇にあった女性や子どものために法律的援助を求める。
 (6)貧困な女性・子どものために資金援助を求める。
 (7)より多く、より高い効果のあるウイルスに対抗する薬、および高い質の治療サービスを求める(5)

 設立したのは、感染者の何田田さんらです。「何田田」というのは、「江南可採蓮,蓮葉何田田」という詩句から採ったペンネームで、彼女は、同名のブログも持っており、書いた文章は、「何田田治療手記」という形でも、まとめられています。何さんは「HIV感染者及関注者圏」というブログサークルも主宰しています。

 上の(2)~(7)の活動がどこまでなされているかは具体的には確認できませんでしたが、少なくとも、(1)の交流や相談は、活発になされています。たとえばQQ群では、感染者の出産や育児の問題(期待と危険性、楽しみと負担の両面がある)がよく話し合われているそうです(6)

 また、昨年から今年にかけて、「タンポポ女性感染者ネットワーク」は、「赤いマフラー(紅囲巾)」行動を起こしました。この活動は、女性感染者が少しずつマフラーを編んで、次々にリレーし、長いマフラーを編んでいく活動です。編んでリレーすることを通じて「生命の意義を次々に伝え、女性感染者がさらに高い質の生活を追求する願いを示し、普遍的に存在している感染者に対する差別と偏見を変える」という主旨だそうです。東部・南部・西部・中部の四つの方面から同時に織り始め、昨年11月、「エイズと芸術展覧および招待会」で披露されました(7)

 また、今年2月には、「ピンク色空間性文化発展センター(粉色空間性文化発展中心)」と共同で、『蒲公英通訊』(PDFファイル)という機関誌も発行しました。

2.「中国女性抗エイズネットワーク」の準備グループ

 今年2月、「中国女性抗エイズネットワーク(中国女性抗艾網絡)」の第1回準備会議がおこなわれ、全国各地から、女性のエイズ感染者だけでなく、多数の専門家の顧問が集まりました。

 このネットワークは、上記の「タンポポ女性~」を基礎にしつつも、「主な目標」として、「女性感染者と女性組織を成長させ、女性の代表性と参与度を高め、女性感染者の地位を向上させ、政策を推進すること」を掲げています(8)

 中国のエイズ対策では、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」(HP日本語による説明)の国内委員会である「国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism[CCM])」が大きな役割を果たしています。しかし、今年3月の武漢での会議(9)に参加した225名のうち、女性は40名にすぎず、その中で女性と子どもの利益を代表して参加したのは、5名前後だけでした。

 そこで、「中国女性抗エイズネットワーク準備グループ」は、セックスワーカーのために性病防止活動をしている「青島姐妹行健康工作組(10)と共同で、女性の感染者や女性組織がより多く参与できるように、選挙の規則を改善するように4つの提案をおこないました。

 それらの提案うち、2つは採択(2/3の賛成が必要)されましたが、残りの2つは採択されませんでした。採択されたのは、原則的・奨励的な提案(「代表には、一定の比率の女性を確保する」など)であり、採択されなかったのは、具体的に女性枠を「〇人以上」などと決める提案でした。参加者からは、「女性は能力によって競争すべきで、特別待遇を要求すべきでない」といった意見も出されたのですが、それに対して十分な反論が出来なかったとのことで、その点は今後の課題だということです。

 今後、選挙に向けて、「ジェンダーと発展ネットワーク」とも協力して、代表の選出方法を分析したり、女性を動員したり、ハンドブックを作成するなど、さまざまな活動をおこなっていくそうです(11)

[追記(2009.12.29)]
 2009年7月、「女性抗エイズネットワーク・中国」が設立されました(「『女性抗エイズネットワーク・中国』設立」)。

(1)中国のHIV感染者、過去10年で女性比が5倍に」人民網(日本語版)2008年10月21日、「女性のエイズ患者急増、10年間で5倍に―中国」レコードチャイナ2008年10月21日。もっとも、中国のエイズ統計については、感染者を過小に見積もっている疑いが強いと言われます。また、中国の場合、1990年代における河南省を中心とした売血政策による感染者が多いのが特徴ですが(ピエール・アスキ[山本知子訳]『中国の血』[文芸春秋 2006年]など参照)、売血による感染者には、女性も多いと考えられます。
 けれど、いずれにせよ、中国でも、近年、異性間性交渉、売買春による感染の比率が増加しているのは間違いないようです。
(2)"蒲公英”女性感染者組織正式宣布成立」(2007-03-08)何田田新浪博客、「“蒲公英”中国女性網絡聯盟簡介」(2007-10-16)中国紅絲帯網。なお、組織の名称が、後者では、「タンポポ中国女性ネットワーク」と改称されています。これは、恐らく、感染者以外のボランティアや専門家を含めた名称にしたたためではないかと思います。
(3)生命教科書 07十大健康英雄」南都週刊2007年12月4日。
(4)関于女性感染者組織的説明,兼回周筱[斌+貝]版主」(2007-03-19)何田田新浪博客
(5)(2)の「“蒲公英”中国女性網絡聯盟簡介」
(6)何田田「与艾滋戦闘:像蒲公英那様温暖世界」『蒲公英通訊』
(7)“紅囲巾”在行動:一条長囲巾正在女性感染者手中伝逓」(2008-03-08)、「把紅囲巾行動進行到底」(2008-03-26)、「艾滋感染者与芸術社区聯手反歧視」(2008-12-10)。いずれも何田田新浪博客より。
(8)中国女性抗艾網絡「中国女性抗艾網絡第一次籌備会議在北京召開」(2009-03-02)中国発展簡報網站
(9)武漢で、「第2期エイズ・結核・マラリア防止活動NGO会議」と「世界基金中国調整委員会改選選挙コミュニティ会議」の2つが連続して開催された。その2つの会議について言っている。
(10)イギリスのBarry―Martin財団の資金援助の下に、2006年に設立された。娯楽サービスの場で働く女性や流動女性を対象として、性病・婦人病治療などの医療サービスをおこなう。具体的には、青島大学医学院付属病院性健康センターで、HIVと梅毒の無料検査のほか、他の性病・婦人病についても、安価に治療を行っている。青島姐妹行健康工作組のサイトは、セックスワーカーに力点が置かれており、セックスワーカーの人権や互助活動に関する報告も収録されている。
(11)中国女性抗艾網絡籌備組「関于完善選挙規定促進女性参与的建議」(2009-03-02)中国発展簡報網站、「09年04月GAD聚会:从艾滋領域中的婦女参与到促進婦女参与CCM選挙」社会性別与発展在中国HP
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今年の全人代に提出された女性やジェンダーに関する議案――(3)託児所に関する提案をめぐって

 全国婦連は、今年の全人代に、託児サービスを公共サービスの枠組みに入れるように求める提案も出しました(1)

 全国婦連が北京と上海で調査をしたところ、3歳以下の幼児が幼稚園(託児所)(2)に入っている率は、21%だけでした(3)

 といっても、55.3%(北京)、68.9%(上海)の人は、3歳以下の幼児は、幼稚園(託児所)に入ることが適切だと考えています。けれど、24.8%(北京)と23.9%(上海)の人は、幼稚園(託児所)が見つからなかった経験があり、その人たちは、主に、収入が中程度か、低い人たちでした。つまり、料金の高すぎるのです。

 『中国婦女報』の記事は、保育料が高い背景には、政府が、学齢前の教育に投じる予算が少ないことがあると指摘しています。中国では、教育予算全体に占める学齢前の教育の予算の比重はわずか1.2~1.3%で、この比率は、ブラジルの5.1%やタイの16.4%に比べても低いそうです(4)

 政府のサポートが不足しているために、多くの幼稚園(託児所)では、幼い子どもを預かることに消極的だともいいます。

 また、市場経済化にともなって、国有企業や政府機関が経営する幼稚園(託児所)は減少し、民営(私立)のものが急速に増えています。それでも公営の幼稚園(託児所)の役割は大きいにもかかわらず、一部の国営企業は市場化をおしすすめ、幼児教育の教師を大幅に減らしています。

 そこで、全国婦連は、託児事業の公共サービスの機能を強化するために、政府の各機関が以下のような措置をするように提案しました。
 ・「国家中長期教育計画」において、託児事業の公益性や公営託児所の役割を強調する。
 ・普通の家庭に合った、質が優れた低価格の公共サービスとしての性格を持った託児所・幼稚園を発展させる。
 ・幼稚園の料金を適切に制限して、乳幼児が公平なサービスを受けられるようにする。
 ・労働者に対して託児に関する補助を増額する。幼児のいる家庭に対して所得税の減免をする。

 全国婦連のこの提案は直接触れていませんが、市場経済化は、女性が圧倒的多数を占める幼稚園の教師の待遇にも大きな影響を及ぼしています。民営の場合はまったく補助を受けることができないため、私立の幼稚園は苦境に立たされており、教師の待遇はとくに低いです。

 2006年に『厦門日報』が、公立と私立の幼稚園の教師、200人ずつ(すべて女性)にアンケートをしところ(有効回答は公立112、私立154)、以下のような結果でした。
 1日の労働時間
 ・公立は、「8時間」が60%で、「8─10時間」が40%。
 ・私立は、「8時間」は27%で、「8─10時間」が60%、「10─12時間」も13%。
 1月の賃金
 ・公立は、2000元以上が62%。1500─2000元と1000─1500元が14%ずつ。800─1000元と800元以下が5%ずつ。
 ・私立は、2000元以上は皆無で、1500─2000元も3%だけ。1000─1500元が44%で最も多く、800─1000元が38%、800元以下が15%。
 賃金水準の満足度
 ・公立でも、「満足」は2%だけで、「わりあい満足」が34%、「不満足」が57%、「非常に不満足」が7%。
 ・私立では、「満足」は皆無、「わりあい満足」が31%、「不満足」が37%、「非常に不満足」が32%(5)

 公立の場合でも、教師の待遇は十分ではないようですが、とくに私立は待遇が低いと言えます。

 とくに出稼ぎ労働者が多い都市では、彼らの子どものための私立幼稚園が非常に多いのですが、保護者に経済力がないため、経営は苦しいです。たとえば広東省海口市では、急増した私立の中小の幼稚園は設備が粗末で、子どもたちが遊ぶ場所もほとんどないそうです。教師は、みな一日10時間以上働くのに、一般に月収は500元に達しておらず、社会保障もありません。海口市の最低賃金基準は450元ですが、これは社会保障がある状況の下での金額なので、私立幼稚園の教師の賃金は、実質的には最低賃金にも達していません(6)

 農村部の幼稚園の教師の待遇はさらに劣悪で、幼稚園教師の資格を持っていても、身分は農民であり、月収は2、300元程度で、社会保障もないということです(7)

 また、公立・私立を問わず、近年増加している臨時や契約制の保育員は待遇が低いという問題もあります(8)

 全国婦連が全人代に上述ような提案を出したのは、上でも言及があるように、現在、教育部が、今後12年間の教育についてのプランである「中長期教育改革と発展計画要綱[国家中長期教育改革和発展規画綱要]」に対して意見を求めていることと関係があると思います。「中国学前(「学齢期以前」の意)教育研究会」も、このプランに対してさまざまな意見を出していますし、その中には教師の待遇の問題に触れたものもあります(9)。けれど、婦連や『中国婦女報』は、従来から幼稚園の教師の待遇については、ほとんど取り上げていません。

 しかし、ある幼稚園の教師は、自分のブログで次のように述べています。
 「いま、私たち幼児教師の地位は、社会のほとんど最底辺に落ちようとしているのに、まだ指導的階層に重視されていない。その原因はどこにあるのか? 私たちがみな女だからである」
 「国家はずっとマクロな経済をコントロールして都市と農村の収入の格差を縮める努力をしているけれど、いつになったら私たち幼児教師と小中学校の教師、大学教師との格差を考える時間を取ってくれるのだろうか? 同じように高等教育を受け、同じように困難な頭脳的肉体的労働に従事し……」(10)

 やはり婦連も、女性の地位の問題として、幼稚園の教師の待遇の向上に取り組むべきではないかと思うのです。

(1)全国婦聯建議:将托幼服務納入公共服務框架」『中国婦女報』2009年3月10日。
(2)ネットで読める一見真理子「中国の幼児教育──ここ十年の変化と今後──」(『教育と医学』第51巻2号[2003年2月])によると、「託児所は0~3歳の子どもを預かる衛生部門主管の機関であるが、近年は幼稚園に改組され、合併吸収される傾向にある」、「『幼稚園教育指導要綱』(2001年)によれば、近い将来中国の幼稚園は、0~6歳を対象とし得る乳幼児のための保育・教育の総合的な機関に変わる見込みである」とのことです。なお、一見さんには「教育政策と市場経済のはざまで─中国における早期教育事情─」(『内外教育』2005年11月29日)という報告もあります。
(3)お茶の水女子大学COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」の中国パネル調査の2004年度における北京の中心8区での調査によると、第1子の主な保育者が「託児所」であるのは、「満1歳まで」では6%であり、「1~3歳」では31%となっています。この数値は全国婦連の調査と整合性があるように思います。
 また、この調査は、若い世代ほど託児所の利用が減少し、かわりに親族および母親の関与が増えていることも明らかにしており、その背景について、以下のように推察しています。
 「改革開放政策と国有企業改革の中で健康な40、50歳代の女親の多くが引退している。逆に経済発展によって若い世代は収入が増え、また今後も増える見通しが高まっている。その一方、市場経済化の中で国有企業が株式会社化され、また小規模の民間経営の企業も増えた。国有企業が所有している託児所は閉鎖されたものもあり、また託児所の経営方式がかわる中で費用負担も上昇している」
 以上については、お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」(F-GENS)プロジェクトB編『家族・仕事・家計に関する国際比較研究:中国パネル調査第1年度報告書』(2005年)第6章「家族と保育」(永瀬伸子・長町理恵子執筆)を参照してください。
(4)中国学前(「学齢期以前」の意)教育研究会理事長で北京師範大学教授の馮曉霞さんも「長い間、数字は教育経費の1.3%前後である。国際的平均水準は3.8%であり……このような状況の下では、市場は公平性の問題を解決することはできない」(「我国教育経費僅1.3%投入幼教 遠低于国際平均値」人民網2009-4-12)と述べています。
(5)「当個幼児教師容易嗎?」『厦門日報』2006年11月19日。馮曉霞・蔡迎旗「我国幼児園教師隊伍現状分析与政策建議」(『人民教育』2007年11期)も、地位・待遇の低さ(職掌、定員削減、報酬の面で)、仕事の重さ、農村の幼稚園の教師の身分の問題などを指摘しています。
(6)関注幼児教師的生存状況」人教論壇2007-4-5(もとの記事は、海南新聞網2006年10月23日付より)、「幼教工作:不同崗位不同圧力」『珠海特区報』2008年5月12日など。
(7)注(5)の馮曉霞・蔡迎旗「我国幼児園教師隊伍現状分析与政策建議」にも書かれていますし、山東省臨[月+句]県では「全県の10%の農村幼児教師の一月の賃金は200元に足らず、70%の人は一月の賃金は300元前後であり、20%前後の人が50元以上の賃金を得られるといい(陳強「農村幼児教師待遇亟待提高」[2004-12-27]全国人民政治協商会議全国委員会辨公庁HP)、河北省石家荘市霊寿県では、200元だといいます(「幼児教師待遇太低 河北省石家荘市霊寿県全体農村幼児教師致新聞媒体的一封信」2007年2月23日中国幼児教育網)。
(8)十個保育員370元月薪拿三年 交社保后難糊」『楚天都市報』2007年3月16日、「幼児園保育員臨時工毎個月只有400元工資」中顧網など。
(9)重要専題:積極為幼教事業建言献策!」中国学前教育研究会HP
(10)呂楽「社会対于我們幼児教師来説公平嗎」『緑旋』(幼児教師博客)。幼稚園の教師のうち、高等教育(大学、専科)を受けた人の割合は、2001年には30.5%だったのが、2005年には49.2%に達しているだけに(注(5)の馮曉霞・蔡迎旗「我国幼児園教師隊伍現状分析与政策建議」)、こうした矛盾は大きくなっていると思います。

※なお、西山佐代子「社会主義市場経済政策下中国の幼稚園行政に関する研究」(その1)~(その3)『北海学園大学経済論集』第53巻第1号~第3号(2005年)が、市場経済化に伴う幼稚園(託児所)行政について、きわめて詳細に論じています。(その3)では、北京と瀋陽の幼稚園の園長への聞き取りもおこなわれ、現場の試みがわかるとともに、幼稚園の格差拡大、利用者負担の増大、教師の待遇の低下を含めた、さまざまな問題も明らかにされています。西山氏には、この論文以前に、「社会主義市場経済下中国の都市保育行政の動向」『北海学園大学経済論集』第51巻第1号(2003年)、「中国の幼稚園経営体制改革」第51巻第2号(2003年)などの論文もあります。
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今年の全人代に提出された女性やジェンダーに関する議案(2)――DVに関する提案

 2回では書ききれなくなりましのたで、当初の予定を変更して、3回に分けて紹介させていただきます。今回は、DVに関する3つの議案を見てみます。

1.「DV防止法」を全国人民代表大会常務委員会の立法活動計画の中に入れる提案(1)

 昨年7月、このブログでもお伝えしたとおり、中共中央宣伝部、最高検察院、公安部、民生部、司法部、衛生部、全国婦連という7つの部門が合同で「DV防止のための意見」を公布しました。しかし、「意見」というのは、政策的な意味は持っていますが、法律ではありません。また、この「意見」は、内容的にも一定の原則を示したにとどまっている面があります。

 ですから、今年は、全人代の常務委員会に「DV防止法」を制定することを求める提案が出されました(1)。ただし、同様の提案は、昨年も出されています(昨年の本ブログの記事参照)。

 むしろ今年の特徴は、以下ののような、より具体的な提案が出されたことのようです。

2.公安機関(警察)のDVの予防・制止の規範を制定する提案

 この提案は、陝西師範大学教授の屈雅君さん(全国人民代表)がおこなったもので、警官がDVの通報を受け対処する際の職責と行為基準を詳しく規定するように求めたものです。

 具体的には、・通報を受けたら直ちに現場に行くこと、・暴力の制止、・質問の調書の作成、・証拠の保全、・負傷の程度の鑑定、・報告書の作成などを定めるよう提案しています。

3.「人民法院がDVに関係する事件を審理し、人身保護裁定を適用することに関する若干の問題の規定」を制定する提案

 これは、尚紹華さん(全国政治協商会議委員)がおこなった提案です。この提案の背景には、昨年3月、最高人民法院の中国応用法学研究所が、裁判官の参考に供するために「DVに関わる婚姻事件の審理の指南(渉及家庭暴力婚姻案件審理指南)」(2)を出したことがあります。

 この「指南」は全81条の詳細なものですが、第3章で「人身安全保護措置」を定めています。「人身安全保護措置」とは、法院(裁判所)が、被害者の申請にもとづいて、以下のような内容の人身安全保護裁定を出すことができるというものです(第27条)。
 1.被申請者(通常は加害者、以下「加害者」と称す)は、申請者(以下、「被害者」と称す)やその親、友人を殴打したり、脅迫してはならない。
 2.加害者は、被害者にハラスメントをしたり、つきまとったり、被害者やその未成年の子どもに歓迎されない接触をしてはならない。
 3.人身安全保護裁定が有効な期間は、夫婦の一方が勝手に、価値の比較的大きい夫婦の共有財産を処理してはならない。
 4.必要性があり、かつ条件がある場合は、被害者をしばらく双方の共同の住まいから引っ越すように命令を下すことができる。
 5.被害者の住まい、学校、職場、その他のいつも出入りする場所から200m以内において、加害者が活動することを禁止する。
 6.必要なときは、被害者に自費で心理的な治療を受けるように命ずることができる。
 7.被害者およびその特定の親族の人身の安全のためのその他の措置

 この人身保護裁定には緊急保護裁定と長期保護裁定があります。緊急保護裁定の有効期間は15日、長期保護裁定は3~6カ月、たしかに必要な場合は12カ月まで延長できるとされています(第29条)。

 疑問を感じる規定もありますが、ある程度、欧米や台湾、日本の保護命令に近いものを規定しているようです。

 ほかにも、この「指南」には、多数のこれまでにない内容を含んでいます。とくに以下の点は注目されます。
 ・DVの定義に、身体的暴力だけでなく、性的暴力、精神的暴力、経済的支配を含めたこと(第2条)。
 ・関係する事件を審理する裁判官は、毎年、12時間以上のジェンダー意識研修と18時間以上のDVの知識の研修を受けるべきこと(第20条)
 ・DV事件については、一定の状況の下では立証責任の転換をすべきだとしていること(第40条)、DVの専門家の意見を法廷で聴くように勧めていること(第44条)。
 ・財産分与の際、DVの被害者は共有財産の70%以上を獲得させるべきこと(第58条)。原則的には、未成年の子どもの養育はDVの加害者がおこなうべきではないとしていること(第63条)
 ・調停に際しては、「被害者は悪くない」という原則を貫くべきとし、被害者を責めたり、殴らないことの交換条件として被害者の行為を改めるように要求したりする(3)ことを禁じていること(第70条)。また、裁判官は調停の過程で、被害者に対する加害者の不当な影響を減らし、被害者が自分の権利を主張する能力を高めるべきだとしていること(第71条)。

 この「指南」は、全国の9ヵ所の基層(末端)の法院で試験的に使われています。昨年8月、その1ヵ所である江蘇省無錫市の法院が初の人身安全保護裁定を出したことは、本ブログの記事でもお伝えしたとおりです。この裁定は、中国初の「反DV保護命令」であるとも報道されました。

 しかし、その人身安全保護裁定の内容は「殴打・脅迫を禁止する。本裁定は今から3カ月間有効で、この裁定の送達後、ただちに執行する」というものにすぎませんでした(4)。つまり、「指南」の第27条の1の、現行法でも既に禁止されていることを命じただけであって、内容的には「保護命令」とは言い難いものであり、この点に対しては法学者からも批判が出ています(5)

 四川省重慶市の渝中区の法院も「指南」を活用して幾つかの人身安全保護裁定を出していると報じられていますが、まだ本格的な「保護命令」のようなものは出てないようです(6)。「指南」の他の部分に関しても、なかなか実施が困難な部分があると思われます。

 いずれにせよ、「指南」は、あくまで「参考に供する」のためのもので、ごく一部の法院で試験的に使われているにすぎません。

 今回、尚紹華さんは、どの裁判所も人身安全保護裁定を下せるように、最高人民法院が「司法解釈」(最高人民法院が決めた法律の解釈)を出すように上記の提案をしたわけです。

 先日の『中国婦女報』の記事は、「DV防止法」と警察の行動規範、裁判所の人身安全保護裁定が合わされば、DV反対のための力になることは間違いないと述べています(7)。 

(1)針対家庭暴力,法律框架期待成型」『中国婦女報』2009年3月10日。以下のの提案についても、この記事で述べられています。
(2)最高人民法院中国応用法学研究所「渉及家庭暴力婚姻案件審理指南」(2008年3月)中国公益律師協作網HP、陳敏「《渉及家庭暴力婚姻案件審理指南》出台背景及其対案件審理的影響」(『通訊』35期[PDFファイル]16-19頁)は、中国応用法学研究所の陳敏さんが、この「指南」の意義を述べた記事です。なお、この記事の「編者按」には、「この指南は、厳密な意味での法律ではなく、裁判官がDV事件の特徴と法則にとづいてこうした事件を処理するように指導する『裁判官のハンドブック』だれども、最高人民法院の指導部が批准したものであり、最高人民法院のDVに反対する意志と決心をやはり代表している」とあります。
(3)こうしたやり方が、中国の新聞ではむしろ肯定的に報じられている場合もあることを、私は、拙稿「中国のDVシェルターの歴史と現状」(『中国女性史研究』16号)の54-55頁で言及しました。なお、DVに対する中国の政策や運動については、拙稿「中国におけるドメスティック・バイオレンスに対する取り組み」(『中国21』27号[2007年3月]、229-246頁)に簡単にまとめてあります。
(4)無錫法院初試“反家暴保護令”」『民主与法制時報』2008年9月7日。
(5)王琳「誰来保護“反家庭暴力保護令”」『広州日報』2008年9月10日。王琳さんは、男性の法学者で、ブログ(王琳的博客)も持っています。
(6)再打老婆就拘留你! 重慶発出首批人身保護令」『重慶時報』2008年10月23日。この記事で挙げられている人身保護命令の内容は、①夫に勝手な財産の処分を禁じたもの、②「無視」という精神的暴力をふるう夫に対して、7日以内に意思疎通を命じたもの、③夫に6ヵ月の観察期間を設け、もしそれを破ったら離婚させるとしたもの、④暴力を禁じるとともに、妻の出廷を免除したものです。
(7)(1)に同じ。
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今年の全人代などに提出された女性やジェンダーに関する議案(1)

 先月開催されていた、今年の全国人民代表大会(全人代)や全国政治協商会議(全国政協)にも、代表や委員から、女性やジェンダー問題に関する議案がたくさん提出されました。一般の代表や委員が提出した議案は、国務院や全人代の常務委員会(全人代の常設機関)が提出した議案と違って、すぐに成立する見込みはまったくありません。しかし、それなりに時代の動きを反映している面があると思いますので、その中のいくつかを、2回に分けてご紹介します。

 今年は、全国婦連の要人による提案が目立ったように思います。

1.「婦女権益保障法」を、全国人民代表大会の常務委員会の法律執行の点検計画の中に入れる議案(1)

 「婦女権益保障法」は女性の権益についての基本法です。1992年に制定され、2005年に改正されました。けれども、あまり守られていません。

 そこで、今年、全国婦連副主席・書記処書記の陳秀榕さんが主提案者になって、全国人民代表大会の常務委員会が2009年と2010年に法律の執行状況を検査する際に、「婦女権益保障法」についても検査するように提案しました。

 とくに、下の4つの領域を重点的に検査することを提案しています。
 ①雇用における女性の権利……国際金融危機の下で脅かされている。
 ②農村女性の土地権……下の参照。
 ③出産[生育]保険と出産救助……出産保険は、他の社会保険と比べてカバーしている範囲が少ない(2008年11月末時点で、入っている労働者は8995万人)。また、農村では、貧困のために病院で出産できない女性がいる。
 ④女性の政治参加……全国人民代表大会の代表のうち、女性は21.33%で、「22%」という要求に達していない(本ブログの記事「全人代の女性代表比率を『22%以上』と規定へ」[2007-3-10]、「全人代の女性代表の比率、21.3%にとどまる」[2008-3-1]」参照)。

2.農村女性の土地権益を保障する問題に関する提案(2)

 この提案は、全国婦連副主席・書記処書記の甄硯さんが主提案者になって提出しました。全国婦連の統計によると、ここ数年、婦連に対して女性が集団で訴えて来る問題で、最も多いのは、農村女性の土地権益の問題だそうです。

 中国の農村では、「村民委員会の決定」や「村民大会の決議」という形を取って、勝手に、嫁に出た女性や離婚した女性、夫を失った女性、あるいは婿入りした男性には土地請負権を与えないことが少なくないと言われます(この件については、本ブログでも、以前「農村女性の土地経営請負権をめぐる裁判」を紹介しました)。

 改革開放後、都市化・工業化による農地の収用に伴って、農民が農地を失う場合が増えているのですが(3)、そうした際、女性の農民に対しても、その補償金や再就職・職業訓練・生活保障などが問題になっています。上述のように土地請負権が実質的には(個人ではなく)家族単位で与えられていて、また、女性の就職が厳しい状況では、土地の収用の際、女性の権益はとくに侵害されがちです。

 そこで、甄硯さんらは、以下のような提案をしています。
 ・「村民委員会組織法」や「農村土地請負法」の改正や運用を通じて、地方政府に農民女性の土地権を守らせる。
 ・土地の収用後の補償や再就職の状況について、男女別に把握をする。弱者層のための保障の基金を設立する。
 ・最高人民法院は、土地を失った女性の農民の権益をめぐる事件を研究する。

3.社会保険法(草案)の修正に関する建議

 「社会保険法」は、中国の社会保険制度の基本的な枠組みを定める法律です。2007年12月に全国人民代表大会常務委員会で審議が開始され(4)、昨年末には草案の全文が広く国民に公表されました(5)

 それに対して、全国婦連組織部長の張黎明さんらは、「社会保険法(草案)の修正に関する建議」を提出し、以下のような点を要望しました(6)
 ・総則で「公平公正の原則」を謳うべきである。具体的な制度設計において、性別、職業、戸籍、都市と農村などによる差別が出現しないようにするべきだ。
 ・近年、臨時工や派遣労働者、露店商人、パートタイマーなどの非正規就労者が増え、都市の在職者の40%前後を占めるようになった。その過半数は女性である。社会保険法の調整の範囲と対象を広げ、そうした非正規就労者もカバーするべきである。また、低収入の者の保険料は、政策的に補填するべきである。
 ・婦連や共青団(共産主義青年団)などの社会組織に、立法や法の執行情況を監督する職能を賦与するべきである。
 ・性による平等を促進するべきである。女性は有償労働をしている人数や時間が男性より少ないため、高齢女性は年金がないか、少なく、貧困である。納付比率や納付年限、受益水準を測定する際に、男女両性の違いに注意せよ。条件があるところでは、高齢寡婦手当を支給すべきだ。
 ・財政面において、政府の責任を強化すべきである。
 ・出産[生育]保険は、女性が担う人類の再生産の社会的価値の補償であり、普遍的なものであるべきだ。出産保険がカバーする範囲を拡大し、労働者の出産保険だけでなく、都市住民の出産保険、農村の新型合作医療出産保険を包括することを明確に規定すべきである。

 その他、社会保険法に関しては、以下のような記事も出ています。
 ・社会保険法に遺族保険制度を入れることによって、高齢女性の貧困を減らし、家族の負担を減らすべきである。夫婦2人とも年金がある高齢者には必要ないので、さほどの財政支出にはならないはずである(7)
 ・男女の定年差別をなく(したうえで社会保険法の規定を作成)すべきである(8)

(1)《婦女法》応列入人大執法検査計劃」『中国婦女報』2009年3月10日。
(2)甄硯等委員提交建議 切実保障農村失地婦女土地権益」『中国婦女報』2009年3月9日。
(3)土地を失った農民(失地農民)の問題については、ネット上では、矢吹晋「失地農民」『21世紀中国総研』第24号(2006.7.6)、「工業化の犠牲、土地失った農民が1億人へ」(exciteニュース2009年3月15日)など参照。
(4)中国、社会保険法の制定に着手」中国国際放送局HP(日本語)2007年12月23日、「社会保険法等法律案将首次審議」『中国婦女報』2007年12月18日。
(5)中華人民共和国社会保険法(草案)」新華網2008年12月28日。
(6)社会保険立法応充分考慮性別平等」『中国婦女報』2009年3月10日。
(7)全国政協委員建議 社会保険法中増加遺属保険」『中国婦女報』2009年3月13日。
(8)劉明輝「対《社会保険法》(草案)的幾点意見」(2009-2-16)婦女観察HP
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台湾で女子生徒に対するスカート強制が問題に

 昨年の話で恐縮ですが、台湾で、女子学生が制服としてスカートを強制されていることが問題になりました。

 台北市女子第一高級中学(日本の高校に当たる)は、学生が体操服のショートパンツ姿で校門を出入りしていることに対して、「体裁が良くない」言って、その学生たちを処罰してきました。昨年秋、学生たちがそれに対して「不便だ」と抗議をしたことから、女子学生の制服が問題になりました(1)

 民間団体である「台湾ジェンダー平等教育協会(台湾性別平等教育協会)」が調査したところ、台北市の多くの国民中学(日本の中学校に当たる)と高級中学が、校則によって、夏季の制服として、女子学生にスカートをはくよう強制していることが明らかになりました(以下参照)。もしも守らなければ、さまざまな処罰をされます。

《夏季の制服の規定についての調査》
・国・私立の高級中学と高級職業学校……スカート:69.30%、スカートだがズボンも可:2.53%
・台北市立・私立の高級中学……スカート:95.56%、スカートだが、ズボンも可:13.95%。
・台北私立・私立の国民中学……スカート:62.50%、スカートだが、ズボンも可:15%。(2)

 ジェンダー平等教育協会には、女子学生からさまざまな訴えが寄せられました。「のびのびできない」「心地よくない」「スカートをはくのが嫌な女子学生もいる」「ジェンダー平等教育法が施行されているのに、なぜ女子学生にはスカートを強制するのか」「男子学生は自由にズボンをはけるのに、女子学生ははけないのは何故か?」「スカートだと、風が強いと、覆い隠さないといけない」「階段を登るときに、押さえていなければならない」「腰を下ろして授業を受けたり、靴紐を結んだりするときに、注意しなければならない」「男子学生が足をじっと見るのがいや」(3)

 また、台北市立・私立の高級中学の3割近くは、冬服にもスカートを採用しており、「寒くてたまらない」という声も出ました(4)

 小学生にとっても、女子は学校帰りに球技場を駆け回ったり、滑り台を滑ったり、鉄棒をしたりできないこと、スカートめくりをされることを指摘する声があります(5)

 ジェンダー平等教育協会は、10月9日、記者会見を開いて、女子学生にスカートを強制するのは、なんの必要性も合理性もないことを強調しました。民進党の立法委員の黄淑英さんは、女子学生に対してスカート着用を強制するのは、上述の「ジェンダー平等教育法(性別平等教育法)」(ワードファイル)(2004年6月公布)(6)違反だと指摘しました。同法は「性別の差異が不公平な対応をもたらす」ことを避けるためのものであり、第12条には「学校はジェンダー平等の学習環境を提供しなければならない」とあるからです(7)

 台湾の教育部(日本で言う文科省)のジェンダー平等教育委員会は、この問題を受けて討論をおこない、10月13日、以下のような発表をしました(大要)。

 一、多元的選択を尊重し、ステロタイプなイメージを取り除くこと。一部の学校が女子学生にスカートをはくことを強制しているのは、ジェンダーのステロタイプなイメージとジェンダーによる偏見が潜んでいるようで、ジェンダー平等教育法の「多元性を尊重し、性による差別と偏見を取り除く」という立法の精神に背いている。

 二、学生が個別の選択によって処罰を受けてはならない。校則は、ジェンダー平等教育の精神に合致し、学生の個別の選択を尊重したものでなければならない。学校は、学生の服装・風采に対する個別の選択によって処罰をしてはならず、学生に民主的精神とジェンダー平等意識を身につけさせるようにすべきである(7)

 その後の経過はフォローしていませんが、日本の文科省には、こうした声明は発表できないと思います。

(1)進出禁穿短褲不雅観? 北一女争褲権」『聯合報』2008年10月5日。
(2)制服譲女孩真『囧』?!──女学生要有選択権 廃除強制裙装校規 記者会」(2008.10.09)台湾性別平等教育協会HP、「立委痛批/9成高中強制裙装 違性平法」『自由時報』2008年10月10日。
(3)附件 学生申訴内容」(ワードファイル)
(4)『穿裙子很囧』高中妹争褲装権」『中国時報』2008年10月10日。
(5)破除刻板印象 性別平等」台湾読報教育資源網
(6)「ジェンダー平等教育法」については、台湾女性史入門編纂委員会編『台湾女性史入門』(人文書院 2008年)52-53頁の「ジェンダー・イクォリティ教育法」の項目も参照。
(7)(2)に同じ。
(8)教育部性別平等教育委員會籲請學校尊重學生服儀之多元選擇」(2008/10/17)教育部性別平等教育委員会HP、「裙装褲装 学校不得強制規定」『台湾立報』2008年10月14日。

[お断り]
 4月8日、上記の記事を書いた際に、冒頭で「最近、スカートとジェンダーの関係が台湾と大陸で話題になりました。2回に分けて書きます」と述べました。しかし、私が当初、大陸での話題として取り上げようと思った事件は、「ニュース」としての性格が薄いため、予定を変更して、今回は扱うのを中止して、またの機会に取り上げさせていただきます。冒頭の文も削除させていただきました。
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