2009-02

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『中国女性史研究』第18号刊行

 このたび、中国女性史研究会の『中国女性史研究』第18号が刊行されました(第17号までの目次はここです)。内容は以下のとおりです。

[論文]
 「『醒世恒言』巻三十六「蔡瑞虹忍辱報仇」に描かれた孝と貞節」(仙石知子)
[研究ノート]
 「中華人民共和国婚姻法における婚姻年齢と男女平等──婚姻年齢における男女の年齢差に着目して──」(松井直之)
[翻訳]
 「民衆化された戦争研究が示唆するもの」(李小紅/秋山洋子訳)
[映画批評]
 「映画『纏足』をめぐって」(秋山洋子)
[会議参加記]
 「新たな労働のジェンダー史をめぐって──第5回ジェンダー史学会参加報告──」(上村陽子)
[書評]
 「須藤瑞代著『中国「女権」概念の変遷─清末民初の人権とジェンダー』(研文出版 2007年2月)」(姚毅)
 「Susan Mann,The Talented Women of the Zhang Family,University of California Press,2007」(リンダ・グローブ)
[新刊紹介]
 「台湾女性史入門編纂委員会編『台湾女性史入門』(人文書院 2008年10月)」(成田靜香)
[年表]
 「現代中国女性誌年表追補4(2007.8~2008.8)」(遠山日出也)

 「例会報告(2007年9月~2008年7月)」
 「中国女性史研究会第13回総会」
 「中国女性史研究会規約」
 「会員業績」
 「農村女性への寄付のお礼とご報告」
 「第17号の訂正・入退会者・編集後記」


 私の書いている年表の追補は、1ページだけのものですが。

 ご購入方法は、中国女性史研究会のHPの中のこのページをご覧ください。
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バレンタインデーに北京の街頭で同性婚の記念写真を撮影してアピール

 2月14日のバレンタインデーに、北京の前門通りの正陽門の牌楼(屋根付きのアーチ形の建造物)の近くで、レズビアンとゲイのカップルがひと組ずつ、公開で結婚写真を撮影するデモンストレーションをおこないました。

 同性愛者やその友人十数人が集まって2人を祝福するとともに、道行く人にカーネーションと一緒にチラシをまいて、同性婚などの平等な権利を支持するように訴えました。

 レズビアンカップルの一人である丹娜さんは、「バレンタインデーは恋人がデートする日です。けれども、中国の同性愛者について言えば、多くの人はこの日に公然と自分の恋人とデートすることはできません。ですから、私たちは、この活動をつうじて人々に私たちが目に入るようにし、私たちの声が聞こえるようにして、私たちも日の光の下で愛を持てるようになりたいと思っています」と述べています。

 昨年のバレンタインデーにも、カーネーションと一緒にチラシをまく活動はおこなわれましたが(「情人節北京同志街頭送玫瑰 開啓同性婚姻倡導月活動」愛白網2008年2月14日)、結婚式のアピールをしたのは今年が初めてだと思います。

 ゲイ雑誌『』の編集者である路可さんによると、結婚衣装を着た2人の新婦の周りには、びっしりと人が集まりました。その人たちは、最初は2人が何をしているのわからず、「新郎はどうしているのか?」と尋ねたり、ドラマか何かの撮影かと思ったりしたようです。

 2人の新婦がキスをしたりしたために、ようやく何をしているがわかると、集まった人たちは、次のような意見を述べたそうです(それぞれの意見は要旨だけを紹介しています)。
 ・北京に観光にきた中年の女性:「私の故郷にも同性愛者はいると思うけど、彼らはみんな人に知られることを怖れています。あなたがたは本当に勇敢で、頭が下がります。」
 ・20歳前後の女子学生:「2人が幸せならば、それでいいです。もし私の友だちや親戚がこういうふうにしても、私は支持するでしょう。」
 ・中年の男性の観光客:「このような活動をもっとする必要があります。社会の関心も高まって、人々も驚かなくなるでしょう」

 「本当に結婚するのですか?」と声をかけてきた通行人もいて、「そうです」と答えると次々に祝福の言葉を述べたということです。

 その一方、少数ながら、年をとった人を中心に、はっきり反対の意見を述べた人もいました。
 ・「気持ちが悪い!」
 ・「うちの息子がこういうことをしたら縁を切ります。彼らはどうして父母のことを考えないのですか!」
 ・「私は全く支持しません。もし私の子どもが同性愛だったら、あらゆる方法を使って過ちを改めさせます。」

 また、活動の最中に、警備(保安)の人々が歩み寄ってきて、チラシについて尋ねたりしました。けれどもとくに干渉はなく、無事に活動は終了しました。

 この活動は、翌日の『新京報』にも取り上げられました。

 この活動については、多くの写真がHPやブログに掲載されています。
 「情人節北京同性恋情侶閙市拍撮結婚照 鮮花送祝福倡導同性婚姻」愛白網2009-2-14(チラシの写真も出ています)
 「両対同性恋人情人節北京前門拍撮婚礼照」愛白網2009-2-14
 「媒体報道北京同性恋情人節公開拍婚照」愛白網2009-2-15(『新京報』の写真も掲載されています)

 周りの人の反応については、以下の記事に詳しく書かれています。
 「同性恋情侶街頭拍婚姻照 路人反応不一――有人送上祝福,有人称想尽弁法改過来」(阿強さんのブログ「夫夫生活」の記事)(警備の人が歩み寄っている写真も掲載されています)
 「情人節同性伴侶北京街頭拍撮結婚照」中山大学性別教育論壇2009-2-15
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初等中等教育での性教育の要綱

 昨年12月26日、教育部は「小中学校健康教育指導要綱」(以下、「指導要綱」と略す)(1)を公布しました。これに伴って、1992年に公布された「小中学生健康教育基本要求(試行)」(以下、「基本要求」と略す)(2)は廃止されました。

 中国の学校では、「性教育」は、公的には「青春期教育」と呼ばれていますが、「青春期教育」は、この「健康教育」の一部として扱われています(3)

 1992年に公布された従来の「基本要求」と、今回出された「指導要綱」を比較すると、まず、全体として、今回の「指導要綱」の方が詳しくなっています。たとえば、従来は、小学校と中学校(初級中学[日本で言う中学]と高級中学[日本で言う高校]の両方を含む)とに分けて書かれていただけでしたが、今回は、小学校1─2年、3─4年、5─6年、初級中学、高級中学という5段階に分けて書かれています。また、小中学校で「毎学期6、7時間」の健康教育課を設けると明確に書かれたりもしています。

 そのうち、「青春期教育」に関する内容的な違いとしては、従来は、中学校になってから「青春期の生理衛生」を教えることになっていたのですが、今回は、小学校から「生長発育と青春期保健」という項目が入っています。具体的には、小学校1─2年では、「生命の妊娠出産・成長の基本的知識、『私はどこから来たか』を知る」という内容となっており、小学校3─4年で教えるのは、「人の生命周期(誕生・発育・成熟・老衰・死を含む)」と「児童青少年の身体の主な器官の機能を初歩的に理解し、自分を保護することを習得する」ことであるとされます。

 中国でも、小学生にとって、こうした教育はぜひ必要なものだと思います。というのも、2006年7月に四川省性社会学と性教育研究センターが生徒や保護者に対しておこなった調査によると、小学校1─2年生の58.4%は、父母に「私はどこから来たの?」と尋ねたことがあるそうですが、そのうち、「お母さんが産んだ」という回答を得られたのは、1/4にも満たなかったということです。また、小学校3─4年生のうちの1/2は、何を「性的侵犯」と呼ぶのがわからず、かつ、女児の方が、わからない比率が男児よりも高かったそうです(4)

 今回の「指導要綱」では、小学校5─6年になると、「青春期の成長発育の特徴」「男女の少年の青春期の発育の差異(男女の第二次性徴の具体的現れ)」「女子生徒の月経・初潮とその意義」「男子生徒の精通とその意義」などを教えることになっています。

 この点も重要で、上記の調査によると、小学校5─6年生の1/4の女子は月経が来るということを知らず、6割以上の男子は遺精をするということを知らなかったということです(5)

 従来の「基本要求」では、「中学生」が学ぶ内容として、「青春期の男女の少年の生殖系統の発育の特徴:生殖器官の発育、第二次性徴の出現、女性の月経の形成、男性の遺精の形成」ということが書かれていたので、その点から見ると、今回の「指導要綱」は、従来の「基本要求」よりも、2年早まったということになります。といっても、従来の「基本要求」も、一方では、「小学校高学年(5、6年)では、青春期の生理的変化の特徴と直面しうる若干の問題(女児の月経・初潮、乳房の発育、男児の変声など)を適当に入れる」ということも書いてあったのですが、上記の調査結果からみると、どこまで教えられていたかは疑問です。

 また、今回の「指導要綱」では、初級中学(日本で言う中学)では、「生活を愛し、命を大切にすること」「青春期の心理的発育の特徴と変化の法則」「にきびの発生の原因、予防の方法」「月経の期間の衛生保健常識、生理痛の症状と処理」「適切なブラジャーを選んで着ける知識」を教えるとされており、高級中学(日本で言う高校)では、「生活を愛し、命を大切にすること」「青春期によく見られる発育の異常は、不正常であることを発見したら、すぐに医者にかかること」「婚前の性行為が青少年の心身の健康に重大な影響を与えること」「婚前の性行為を避けること」を教えるということです。

 上記の四川省性社会学と性教育研究センターの調査によると、中学生(日本で言う中学生と高校生)のうち、7.7%は、異性と性行為をしたことがあるそうです(6)。今回の「指導要綱」が「婚前の性行為」に言及したのは、そうした背景があるからでしょう。しかし、「危険だからやめろ」というだけでは、単純な禁欲主義であるように思います。

 今回の「指導要綱」に対しては、「性の知識だけでなく、性道徳を教えるべきだ」という意見も出ており、その際に、国外の「性の乱れ」が引き合いに出されたりしています(7)。たしかに「性の知識」だけでは不十分なので、モラル的なことを教える必要はあるでしょう。しかし、私は、その際には、「人権」という軸が必要であると考えますが、今回の「指導要綱」ではその点が不十分なように思います。単純な禁欲主義になっているのは、そのためでしょう。

 私は、今回の「指導要綱」は、従来より詳しくなったことや小学校低学年から教育を始めるようにした点など、時代の変化を反映している面はあると思います。ただし、時代の変化に対して的確に対応しているかどうかは疑わしいと思います。

 また、肝心なのは、単に「要綱」に書かれたというだけでなく、実際に性の知識が小中学生に教えられるようになるかどうかなので、それをどう保障するのかも気になります。この点について、「指導要綱」は、従来よりは詳しく実施方法などを書いてはいますが、具体的な制度や予算措置への言及はなく、いまだ抽象的な議論にとどまっているように思いました。

(1)教育部関于印発《中小学健康教育指導綱要》的通知」(教体芸[2008]12号)(2008-12-26)
(2)中小学生健康教育基本要求(試行)」(1992年9月1日衛生部、国家教委、全国愛衛会発布)
(3)「健康教育」には、他に「健康な生活方式」・「疾病の予防」・「心理的健康」などの内容が含まれる)。
(4)八成中学生渇望性教育」『天府早報』2007年4月9日(四川性社会学与性教育研究中心HP)。
(5)中小学性教育終于上講台了」2008-12-29和平論壇より
(6)(4)に同じ。上海計画出産宣伝センターが上海市の初級・高級中学生1700名に対しておこなった調査でも、6割の生徒は、異性との親密な関係を正常なものとみなし、高級中学では10パーセントを超える生徒が身体的接触をしているという結果が出ている(「中学生性教育盲点多」『中国婦女報』2008年12月2日)。
(7)教育部《綱要》不足以矯正跛行性教育」新華報業網2008-12-29、「性教育:性道徳不該缺位」『中国婦女報』2008年12月30日。
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中国の求人広告などの差別の研究

 昨年9月、周偉『反歧視法研究 立法、理論与案例(反差別法研究 立法・理論・判例)』(法律出版社 2008年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)という本が出版されました。

 著者の周偉さんは、四川大学法学院と上海交通大学の教授で、憲法や行政法、反差別法がご専門です。周さんは、また、さまざまな差別訴訟などの代理人もつとめてきました。

 周さんは、すでに雇用差別に関する著作として、共著である『中国的労動就業歧視:法律与現実(中国の雇用差別:法律と現実)』(法律出版社 2006年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ(1)という本を出版しておられますが、今回のものは単著です。

 この本の「第一編」は、1995年~2005年に上海市と成都市の企業などが新聞に出した求人広告に見られる、年齢・性別・容姿・身長に関する差別についての実証的な調査研究です。調査した新聞は、上海では『人材市場報』と『中国貿易報』、成都では『成都商報』と『華西都市報』で、約30万件もの求人広告が分析されています。ただし、新聞の求人広告なので、農民工や臨時工の求人は含まれていません。

 その結果、求人広告の中には、以下のように年齢や性、容貌、身長による深刻な差別があったことが明らかになりました。
 ます、年齢差別については、求人広告の職位の総数のうち、25~30歳以下の年齢を要求するものが、51.7%(上海の場合)でした。35歳以下の年齢を要求するものまで含めると、83.3%(〃)にまでなります。
 性差別については、30%(〃)が「男性のみ」で、特に技術関係の職位は、39.6%(〃)が「男性のみ」でした。
 容貌による差別については、6.7%(上海)、19.7%(成都)が容貌を条件にしていました。具体的には「顔立ちが整っている[五官端正]」、「姿形が良い[形象好]」、「気質が良い[気質佳]」などを条件にしていました。そうした条件を求める広告はサービス業に多く、職業としては、秘書、接客、販売などでした。性別としては、やはり女性に対して多く要求されていました(容姿に条件を付けた求人広告のうち、「男子のみ」が4.5%、「女性のみ」が40.0%、「男女不問」が55.5%)。
 身長差別については、3.4%(上海)、11.6%(成都)が身長を条件にしていました。それらの広告のうち、男性に対して身長を条件にしていたものが、両地とも30%程度だったのに対し、女性に対してのものが両地とも50%台だったことが述べられています。つまり、容貌ほどではないにせよ、身長も、女性に対して要求される場合が多いようです。業種としては、やはりサービス業に多く、具体的には、女性の場合は「身長160cm以上」、男性の場合は「170cm以上」が最も多かったと述べられています。

 著者は、いずれの差別に対しても理論的に批判するとともに、差別を規制する法律がないか、不十分であることを指摘しています。また、公務員の採用にもさまざまな差別が見られるという点からも、国家の責任が重いことを述べています。
 まず、年齢差別については、中国では、年齢による差別は禁止されていません。2007年に成立した「就労促進法」でも、草案には「年齢差別の禁止」が入っていましたが、成立した法案では削除されました。国家公務員の採用に関しても、「国家公務員採用暫定規定」で「35歳以下」と規定されており、それぞれの業務では、さらに厳しい条件が課されています。
 性差別に関しても、採用の段階では差別が見られます。とくに警察や裁判所、検察では差別が深刻で、応募すると「男性を(優先して)採用する」などと言われたりするようです。
 容貌による差別についても、2005年以前は、国家公務員の採用条件にも容貌が考慮されていました。たとえば、税関は「顔立ちが整っている」ことを要求していました。また、18の省・自治区・直轄市のうち、13の省・自治区・直轄市の「身体測定規則」は、容貌の特徴(アザ、白なまず、わきがなど)による制限を設けています。また、若干の地方政府は、教員採用の際、顔に大きな傷痕やアザなどがある者を不合格にする基準を設けています。
 身長差別についても、公務員採用のときに、多くの省で「男性は160cm以上、女性は150cm以上」という制限を設けており、警官、裁判官・検察官となると、さらに厳しい条件が課される場合もあるようです。

 「第二編」には、周偉さんが作成した「中華人民共和国反差別法(草案)学術建議稿」とその「説明」が収録されています。この建議稿では、雇用や教育、公共サービスの平等について、国務院に平等機会委員会を設けて責任を持たせるよう提案しています。少数民族や女性などに対する暫定的特別措置も規定しています。また、立証責任に関しても、訴える人の立証責任を軽減するように定めてあります。

 「第三編」には、他の国や他の地域の法律が掲載されています。ILO110号条約および、アメリカ・ドイツ・EU・カナダ・日本・台湾・香港の差別禁止立法が掲載されています。

 「第四編」には、周偉さんが代理人をつとめた12の差別事件に関する裁判所の判例が掲載されています。

 さらに、「付録」として、「第一編」で述べた求人広告の差別の調査の元になったデータが100ページ余りにわたって掲載されています。

 以上、この本の内容を紹介させていただきましたが、貴重な内容であることがおわかりいただけると思います。「第三編」は中国の国内向けの資料ですが、「第一編」と「付録」に収録された求人広告に関する差別の調査は、今までになかった大規模で総合的なもので、以上で紹介しきれなかった部分が非常に多いです(2)。また、今回はまったく紹介しませんでしたが、さまざまな差別に対する理論的な批判も詳細であり、「第二編」の建議稿やその説明も、15ページ程度のものながら、変革に向けての試みとして重要なものだと思います。「第四編」に関しても、中国の裁判所の判決文はなかなか目にすることができないので(少なくとも私などには)、これも貴重なものです。

 また、本書では、公務員採用における差別など、国家の責任を非常に強調しています。中国の公務員採用における差別は中国の一般の人にもかなり認識されているようで、中国政法大学憲政研究所が北京・広州など中国の10の大都市で調査したところ、65.9%の被調査者が公務員の採用に差別があると答え、その差別のうちでは、性別によるものを第一に挙げる人が多かったということです(づついて、戸籍、身長、容貌、政治的条件の順)(3)。また、西南政法大学の2005年の卒業生に対して、「どのような職場が性別の制限をしていますか」と尋ねたところ、70%の被調査者が第一に「政府機関・事業単位」を挙げたといいます(4)

 2007年2月に、ある女性が容貌による差別事件で労働仲裁を申請し、和解によって差別を是正させたことは、このブログでも取り上げました(「23歳の女性、容貌による差別事件で和解勝ち取る」)。このように差別是正の動きももあるのですが、その女性のケースは、先天性脳水腫で一般の人より頭が大きかったために、教員になることを拒否されたというものであり、こうした事件が起きるのは、教員採用の際に容姿を条件にしているような政府の責任も大きいだろうと思います。

 中国ではこのように公務員採用も含めてかなり明確な差別があることや、求人広告の段階でも性差別や容貌差別があることに問題の深刻さを感じます。といっても、日本でも、ついこの間まで、男女別の求人広告はありふれていましたし、少し以前までは、「容姿端麗」を条件とするような求人広告もありました。また、日本の公務員採用も必ずしも男女平等ではないと言われているので(5)、そういったことは必ずしも中国独特の問題ではないでしょう。

 ただ、身長差別に関しては、かなり中国独特のもののように思えます。また、女性に比べれば少ないですが、男性に対しても容姿に条件を付ける求人が見られることも中国の特色かもしれません。こうしたことの歴史的社会的背景についても知りたいと思いました。この本では、「容貌を、ある職場に選抜する条件にすることは、中国の前近代の官員の選抜制度に遡ることができる」という説明もなされており、外交部幹部局局長の呉懇氏が、外交官は「国家のイメージ」と関係するから、「五官端正」であることが望ましいと述べたことが紹介されていたりする(71、73頁)のですが……。あざや白なまず、身長を気にするという点から見ると、障害者差別とも関係しているような感じがしますが……。

(1)同書の構成は以下のとおりであり、今回出版された本と併読することが必要な本のように思います。
第一篇 中国の雇用[労動就業]差別の現状
 第一章 国家公務員採用の資格条件
 第二章 国家公務員採用の身体検査基準
 第三章 雇用の年齢条件
 第四章 雇用の容貌条件
 第五章 雇用の身長条件
 第六章 成都市の障害者の雇用状況
 第七章 国務院国資委[国有資産監督管理委員会]直属企業の雇い入れ条件
第二篇 中国の雇用差別の法律問題
 第一章 国家の雇用立法の差別問題研究
 第二章 中国の地方の雇用立法の事例の合法性の研究
 第三章 雇用差別の法律的救済  
第三篇 雇用差別の法律的判例
 第一章 雇用の反差別の法律的事件の背景
 第二章 B型肝炎差別事件の法律的文書
(2)ただし、国家公務員の採用条件に見られる差別に関しては、注(1)の著作の第一章と第二章のほうが詳しいです。また、(1)の著作の第三章以下にも、上記のとおり年齢・容貌・身長などに関する求人の差別についての調査研究も収録されており、それぞれ興味深いものです。
 たとえば、第四章「雇用の容貌条件」(李程)は、使った資料は、2002年7-12月と2003年1-3,6-12月の『成都商報』と『華西都市報』の求人広告だけで、やや少ないのですが、以下のようなことを明らかにしており、このように細かな分析は、今回の周偉氏の著作にもありません。
 ・飲食サービス、ホテルのサービス員、経営・販売業務従事者、管理者と文書の立案・秘書業務従事者が、容貌の条件を設けることが最も多い四種類の職業である。このほか受付人員も、容貌や気質の要求を設けられることが比較的多い(109-110頁)
 ・容貌の要求と性別の要求が同時にあることが多い職位の四種類は、接待・受付/フロントの応対人員、飲食サービス員、管理者と秘書業務従事者、販売人員である。通常の要求は「女性に限る、顔立ちが整っている[五官端正]・姿形や気質が良い[形象気質佳]」という各項目の条件を同時に具備している(111-112頁)。
 また、徐敏・康嵐・何春睴「論女性就業機会的量与質――対20世紀90年代報紙招聘広告的性別解読」李秋芳主編『中国婦女就業:現状与対策』(中国婦女出版社 2003年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)は、1990年から1998年までの『杭州日報』の求人広告について、性差別の観点から分析しています。
 ただし、今回出版された、周偉『反歧視立法研究 立法、理論与案例』ほど大量の求人広告をさまざまな視点から分析したものは初めてであると思います。
(3)昨年の5月28日付で『中国青年報』が報じましたが、「遭遇就業歧視不応無可奈何」(『中国婦女報』2007年5月29日)にも簡単に報じられています。
(4)張艶「女大学生就業問題調査報告」『西南政法大学学報』2007年2期。この調査結果については、「女大学生求職仍遭“隠形歧視” 在歧視情況排名中,政府機関居于首位」(『中国婦女報』2008年4月23日)にも簡単に報じられています。
(5)たとえば、つい最近も、沖縄で、「教員採用試験、合格点に男女差」(『琉球新報』2007年11月2日)ということが報じられました。
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