2008-12

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2008年「中国10大セックス/ジェンダー事件」

 この12月に、全国各地の青年学者14名が、今年起きたセックスとジェンダーに関する10大ニュースを選びました。その14名とは、方剛、趙合俊、張玉霞、胡曉紅、黄燦、李扁、彭濤、裴諭新、沈奕斐、徐兆寿、楊柳、遠小近(薄叢)、張敬婕、張静の各氏です。ニュースの選定に当たっては、たんに話題になった事件を選ぶのではなく、性の権利やジェンダー平等の理念を推進するという観点から選び、それゆえ、コメントも付けたということです(「2008年“中国10大性/性別事件”評選結果公告」)。

 以下、おおざっぱに紹介します。「*」は、選者のコメントとして書かれている内容(のうちの一部)で、「←」は私の追記です。1~10の順番は、事件の発生順だということです。

1.「艶照門」事件

 2008年初め、香港の女性芸能人の性行為を撮影した写真がネット上に大量にばらまかれた。←この事件については、アジア女性資料センターHPに「香港:女性芸能人のプライバシーを守れ」という記事が日本語で出ています。その記事は、香港の新婦女協進会の「不再侵犯私隠、停止道徳審判」という署名も紹介しています。

 *この事件は、ネットの違法な性暴力事件、集団的盗視事件であるとともに、性差別事件でもあった。女性芸能人が性に関する二重規範によって裁かれた。

2.《色・戒》の風波と封殺令

 3月初め、映画《色・戒》(ラスト・コーション)のヒロインの湯唯(タン・ウェイ)が、その中の全裸シーンのために、国家放送映画テレビ総局(国家広播電影電視総局)に封殺された(←彼女のテレビCMの放送が禁止されたことを指していると思われる。ただし、この点については、彼女の役柄が日本の軍事政権のスパイのボスを愛する女性であったことが原因だったとも言われている)。

 2007年12月29日、国家放送映画テレビ総局が「色情映画の製作と上映を禁止することに関する通知(関于禁止制作和播映色情電影的通知)」を出し、《苹果(りんご)》(ロスト・イン・ベイジン)が「色情映画」としてやり玉に挙げられた。3月21日には、「色情映画の製作と上映の禁止を重ねて声明することに関する通知(関于重申禁止制作和播映色情電影的通知)」が出された。その中で起きた事件である。

 *またも現在の文化管理モデルの悪弊が明らかになった。争点の一つは、映像管理の基準である。たとえば、「エロは禁じて暴力は禁じない」というアンバランスがある。また、湯唯のCMを禁止するのは公権力の乱用ではないかという問題、湯唯の恋愛やセックスの問題をあれこれ取り上げたメディアの問題などもある。

3.「守貞課」事件

 4月11日、浙江大学が「守貞課」という講義を開設し、大学生の婚前の性行為禁止を唱えた。そのことに対して社会的な論争が起こり、「守貞性教育」理念と「安全性教育」理念とが対立した。

 *「安全性教育」は、「守貞」に反対するわけではなく、守貞に代表される禁欲的な性教育の理念に反対するのであって、多元的な性情報を提供し、性の主導権を青少年に返すことを主張する。この事件に関する論争は、中国で開放的で開明的な性教育を推進する助けになった。

4.三亜のヌーディストビーチおよびヌーディズムに関する論争

 7月、三亜に自発的にヌーディストビーチが出現し、性学者の方剛がブログで公のヌーディストビーチの設立を呼びかけたため(→「支持並強烈呼吁設立裸体海灘!」「設立裸体海灘,有助于建設和諧社会!」など)、社会的な論争になった。支持者は、「少数者の権益の保護」を言い、反対者は「公序良俗を損なう」と主張した。

5.中国初の「セクハラの刑事処罰」

 この事件については、本ブログの記事「セクハラで初の刑事処罰」を参照(注)

 *これは、典型的な誤報事件である。改正後の「婦女権益保障法」は確かに「セクハラ」を規定したが、同法の58条は、セクハラを治安事件あるいは民事事件として規定している。この事件は、刑法に以前からある「女性に対する強制わいせつ罪」によって起訴され、処罰されたものであり、「セクハラ」や「婦女権益保障法」とは全く関係がない。

 (注)私のブログの記事では、「この事件について、多くの中国メディアは、『国内で初めて「セクハラ」によって刑罰に処せられた事件である』と報じました」という書き方をしています。また、私は「判決の中には、『セクハラ(性騒擾)』という言葉はまったく出てきません。というのは、婦女権益保障法の中には『女性に対してセクハラをすることを禁止する』といった文言しかなく、これは、刑事処分の根拠になるようなものではないからだそうです」とも書いています(この点は、「“首例性騒擾判刑案”曝盲区」[『青年周末』2008年7月24日]という記事の中にそのような指摘があったからです)。しかし、私は、当時、ずばり誤報であるとは指摘できせんでした。また、記事のタイトルを、引用符も何もつけずに、「セクハラで初の刑事処罰」としたのは問題でした。この点、お詫びするとともに、訂正します。

6.南陽のネチズン(網民)がポルノグラフィをダウンロードして、警察から罰金を取られた

 南陽市民の任超奇がインターネットからポルノグラフィ(色情品)をダウンロードしたために、インターネット警察から罰金を取られた。任超奇は行政に再議を求めたため、任超奇の行為が違法であるか否かが議論になり、警察は罰金を撤回し、批判・教育に改めた。

 *インターネット警察を支持する人は、「コンピュータ情報ネットワーク国際インターネット安全管理規則」(計算機信息網絡国際互聯網安全保護管理辨法、1997年公布)の規定を引用し、反対する人は、公権力の私人の領域に対する侵犯だと主張した。公民がポルノグラフィ(色情品)を得ることが保護に値する情報権であるか否か、法律を改正すべきか否かという問題も今後に持ち越された。

7.婚姻に失意した女性が連続して自殺

 10月、北京体壇週報の女性編集者・李穎河が自殺し、ほどなくして、貴州の一テレビ局の責任者(主持)の余静も自殺した。聞くところでは、二人とも夫との愛情の問題が原因だという。

 *この事件は、依然として男権社会において女性は弱者であって、女性が婚姻や愛情に自己の価値を見いだしていることを示した。

8.中国政法大学の教授が学生に刺殺される。この事件は男女関係のスキャンダルによるものだと伝えられる。

 10月28日、中国政法大学の副教授が男子学生に刺殺された。伝聞によると、その副教授は、男子学生のガールフレンドと関係していたためだという。その伝聞が正しいかどうかは証明されていないが、教師と生徒の恋愛について議論になった。

 *教師と学生とは不平等な権力関係だからという理由で、両者の恋愛は否定的に見られてきたが、学生の自主的な選択を尊重すべきだという見方もある。この事件は、また、性がなぜ男性の尊厳と結びついているのかを考えさせれられる出来事でもあった。

9.政府高官が女児に猥褻な行為をした嫌疑を受けた事件

 10月某日、深圳市海事局の党グループの書記であり、副局長である林嘉祥が11歳の女児に猥褻な行為をしたことが疑われた。林は女児の父親に責められて、暴力をふるった。深圳の警察の調査では、林の行為は猥褻には当たらないとされたが、女児の父母は警察の調査結果を受け入れないという声明を発表し、警察に対する批判が高まった。

 *林の行為は、刑法上の児童猥褻には当たらないが、少なくとも治安管理処罰法の児童猥褻である。警察は、林の「動作が不当で」「行為に慎重さを欠いた」ことを認めながら、それを、「小さな女の子に対して善意と謝意を示した」ものだと認定したのは、非常におかしい。この事件は、社会的権力の欲望の膨張とジェンダー意識の薄さとの矛盾を反映している。また、政権意識と民衆の合法権益(性の権利を含む)との深刻なアンバランスを反映している。この事件はまた、司法過程の問題や官僚主義、官僚の腐敗の問題を示した。

10.「北京市『婦女権益保障法』施行規則[弁法]」(修正草案)が一般から意見の募集を開始

 12月、「北京市『婦女権益保障法』施行規則」(修正草案)に対して、ネット上で一般から意見の募集が始まった。この規則のうち、とくに次のような規定が注目された。
 ・女性労働者がセクハラにあったら、使用者が予防や制止の措置を講じていなければ、連帯して賠償の責任を負わなければならない。
 ・DVは社会的治安総合管理の範囲に入り、加害者に対して行政処分を科しうる。
 ・女性の部[処]クラス以上の指導者と女性の高級知識分子の定年を延長する。

 *この草案は、婦女権益保障法を執行する役に立つ。けれども、依然として女性を区別して対処するという現象がある(定年問題)。
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香港初のプライドパレードに1000人あまり

 12月13日、香港初のプライドパレードがおこなわれました。香港では、2005年から3回、国際反ホモフォビアデーを記念したパレードがおこなわれてきましたが、正式のプライドパレードは今回が初めてです。

 午後2時に銅鑼湾の東角道を出発し、湾仔の修頓球技場まで、2時間かけて行進しました。主催したのは、香港女同盟会(Women Coalition of HKSAR)(女性のセクシュアルマイノリティの団体)・香港彩虹(Rainbow of Hong Kong)(LGBTの団体)・午夜藍(Midnight Blue)(男性セックスワーカーの団体)・学連社会運動資源センター(社会の民主化をめざす学生団体)です。LGBTの人たちだけでなく、その友人や家族もパレードに参加しました。

 主催者は最初、パレードの参加人数を250人と予想していましたが、その4倍を越える1000人あまり(1200人と報じている記事もあります)が参加しました。そのうち400名は、台湾や中国本土からの参加でした。中国本土からは、新疆・貴州・東北・天津・浙江・福建・広州・深圳から参加がありました。本土からの参加者は「中国の地で、同性愛者のパレードに参加できることはめったにないから」、「台湾のほうがLGBTの運動はすすんでいるが、大陸から台湾には行きにくいから」などと語っていました。中国政府が同性愛映画の公の上映を禁止していることに抗議する横断幕も掲げられました。

 パレードは、「異なった性的指向やジェンダーの身分の者を尊重し、差別に反対しよう」という宣言を出しました。終点の修頓球技場では、さまざまなパフォーマンスもおこなわれました。

 パレードには困難もありました。当初は、先導のために2階建バスを借りようとしたのですが、バス会社から「会社のイメージ」を理由に断られました。当日も、パレードに対して野次を飛ばす人もいました。

 台湾のプライドパレードも、最初は1000人ほどだったとのことです。人口の少ない香港でこれだけの方が参加したのは、画期的なことだと思います。

 youtubeに、いくつか画像がupされています。

香港同志遊行2008大会主題曲《驕傲愛上街》
http://hk.youtube.com/watch?v=ZqdNFwrfka8

香港同志遊行2008參與人數多達1,000人(写真集だが、さまざまな団体や個人を紹介)
http://hk.youtube.com/watch?v=cZjI0LHNm7I

2008香港同志大遊行 By Apple Daily(新聞社が撮影した動画)
http://hk.youtube.com/watch?v=Sp43FJ4AU1M&NR=1

Hong Kong Pride Parade 2008(パレードの出発前、出発開始の頃がやがやした様子)
http://jp.youtube.com/watch?v=oUCqTxLam-E

 香港プライドパレードについては、サイト「Gay Life Japan」も、「『TIME』誌が香港初のプライドパレードを取り上げました」という記事を掲載しています。

 以下は、パレードの前に出た、パレードへの参加を呼びかける文です(「驕傲愛上街 Celebrate Love」)。

 国際的な大都会である香港の繁華街では、レズビアンやゲイの姿を見かけることが多くなった。時には、レズビアンやゲイのカップルが手をつないでいるのを見かける。あなたは、それに衝撃を受けるだろうか、それとも憧れるだろうか?

 実際は、私たちは誇りを持ってパートナーを愛している。なぜなら、重要なのは性的指向ではなく、私たちの間の愛だからである。

 人はみな、生まれながらにして平等である。私たちがみな生まれつき持っているこの権利を信じされすれば、私たちは太陽の下に自分を取り戻すことができる。

 日の当たらないタンスの陰に一生隠れていて、悔しい思いをするのか、それとも私たちといっしょに虹の路上で肩を並べてパレードするのか。

 六色の虹は、多様性の受容と差異の尊重を象徴している。私たちは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、マルチセクシュアル、トランスジェンダー、異性装、トランスセクシュアル、BDSM、クィアの人々に、あるいはさまざまな性的指向や性的アイデンティティの多元的な差異を尊重する友人に、年齢・人種・宗教・身体の障害の有無を問わず、誇りを持って街に出て、愛のために行進することを呼びかける。

[資料]
藍胡蝶「向前走,在彩虹旗飄揚的天空下:記香港第一届同志大遊行」Fridae(2008.12.16)(写真多数)
Nigel Collect“1200 march at Hong Kong's first official gay pride parade”Fridae(2008.12.15)
上千人参加香港同志遊行,事前租用巴士被拒」愛白網(2008-12-13)(写真多数)
「勇敢公開性傾向 中港台大団聚 同志遊行千人参加」『新報』2008年12月14日。
「来自両岸三地東南亜 千名同志遊行宣揚平等」『聯合報』2008年12月14日。

*新聞記事は、他にも多数あります。以下を見てください。
香港同志遊行2008大会記録(部分照片)及主題曲←ここには、多くの資料が収録されています。
香港同志遊行2008驕傲愛上街剪報及錄像報導
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中国初の本格的生活時間調査

 国家統計局は、今年5─9月、北京・河北・黒龍江・浙江・安徽・河南・広東・四川・雲南・甘粛の10の省・市で、約3万7千人を調査対象にして、「わが国最初の時間利用調査」をおこないました。

 もちろん今まで中国でも生活時間調査の類がまったくおこなわれなかったわけではないのですが、国家統計局が「国際的に通用する基準と方法」でおこなったものは、これが初めてです。

 その結果の一部を紹介すると――

 一日の総労働時間は、男性が平均7時間30分(有償労働時間:6時間、無償労働時間:1時間30分)に対し、女性は平均8時間17分(有償労働時間:4時間23分、無償労働時間:3時間54分)で、女性のほうが長い。
 (男女とも、総労働時間や有償労働時間が短いですが、これは、調査対象が15─74歳であり、有償労働をしていない人も含めた平均値だからです。有償労働への参加率は、男性は74%で、女性は63%であり、無償労働への参加率は、男性は65%で、女性は92%です。)

 農村の女性が最も負担が大きく、毎日の総労働時間も、無償労働の時間も、男性や都市の住民よりも長い。
 都市の男性が最も負担が軽く、一日の総労働時間は5時間49分、無償労働時間は1時間36分である。都市の女性は、一日の総労働時間は6時間40分、無償労働時間は3時間36分である。

 『中国婦女報』の記事は、こうした調査結果を紹介しつつ、社会のジェンダー役割分業の変革や女性の無償労働の軽減が必要であると述べています。また、女性の無償労働を軽減する一つの方法は、市場化サービスを購入することだが、それは、農村や都市の低収入世帯には難しいので、国家が福利的なサポートをすることがもう一つの方法であると言っています。

 この調査結果の詳細はまだ発表されていないようですが、今後、重要な資料として扱われると思います。

[追記]
 国家統計局社会和科技統計司編『時間利用調査資料匯編2008』(中国統計出版社 2009)として出版されたようです(ネット書店「書虫」による、この本の紹介)。国家統計局のHPからも読めます!(2008年时间利用调查资料汇编)。 

[資料]
「安新莉等:2008年時間利用調査結果簡介」(2008.11.21)中華人民共和国国家統計局HP
「婦女無酬労動応該減軽」『中国婦女報』2008年12月10日。
「我国首次“時間利用調査報告”顕示――女人毎天比男人多労動45分鐘」『南陽日報』2008年11月28日。この記事は、河北省の調査結果を報じています。
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大学生を対象に、女性に対する暴力反対活動

 今年も中国では、11月25日の「女性に対する暴力撤廃国際デー」から12月5日までの人権記念日までの16日間、女性に対する暴力に反対する活動が各地でおこなわれました。

 今年は、事前に各地の関係団体が集まったワークショップ(10月25-26日、於:西安)で、若い世代を対象にした活動を重視する方針が打ち出されました(1)。具体的には、以下のような活動がおこなわれました。

陝西省女性理論婚姻家庭研究会の活動

 陝西省女性理論婚姻家庭研究会は、大学生を対象にして、次のような活動をしました(2)
 ・同研究会で女性に対する暴力防止活動にたずさわっている教師が、いくつかの大学で講座を開いた。その中では、とくにデートDVの問題や、恋愛の中のジェンダー・ポリティ
ックスの問題を取り上げた。
 ・大学の卒業の集いで、女性に対する暴力反対の講演やホワイトリボン運動の署名・宣誓活動(「女性に対する暴力に沈黙しない」など)をした。

北京の8大学の大学生がディベート

 北京では、中国法学会DV反対ネットワークが主催して、「首都八校反DVディベート」をおこない、北京大学・中国人民大学・北京師範大学・中国農業大学などのチームが参加しました。

 与えられた論題は、「家庭内暴力の防止や処理は加害者に重点を置くべきか、被害者に重点を置くべきか」、「家庭内暴力への関与に、大学生は貢献することが容易であるか、困難であるか」といったもので、一概に正解が出せるものではなく、DV問題に関してかなりの見識がないと論じられないものです。11月25日に決勝がおこなわれ、夏吟蘭・李明舜ら、DV問題の研究者らが審判をつとめました。その結果、北京外国語大学が優勝しました(3)

デートレイプなどについて学生と懇談会

 中山大学の艾曉明・宋素鳳の両教員は、大学生と懇談会を開いて、デートレイプなどの問題について、学生と議論・交流しました(4)。これは、ごく小規模なものですが、他の場でもこうしたことはおこなわれたと思います。

(1)「行動・承諾・改変:記2008“16天行動”工作坊」(中山大学性別教育論壇HP)、「反対性別暴力,年軽人応有所作為」(『中国婦女報』2008年12月11日)。同時に、「女性に対する暴力」という概念を広げ、「ジェンダーに基づく暴力」として、セクシュアル・マイノリティの問題を視野に入れる方針も出されました。
(2)「反対性別暴力十六日行動──大学生反対性別暴力工作坊」(2008-11-21)、李林「反対性別暴力,我們在行動──大学生系列活動」(2008-12-05)、王延萍「反対性別暴力,我們在行動──大学生系列活動(服装芸術学院)」(2008-12-11)、王延萍「反対性別暴力,我們在行動」(2008-12-12)(いずれも、陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP)。
(3)「首都八校反家庭暴力法律弁論賽決賽在首師大開賽」反対家庭暴力網絡HP(2008-11-26)、「政法学院挙辨首都八校法律弁論賽決賽」首都師範大学HP(2008-11-26)(反対家庭暴力網絡HPの記事と同一だが、写真入り)、「首都高校反家庭暴力弁論賽 我校法学院選手初戦伝捷報」北外学新網(2008-11-1)、「我校法学院代表隊問鼎“首都八校弁論賽”」北京外国語大学新聞網(2008-12-2)。
(4)「消除暴力,从心開始──記16天運動之消除性別暴力懇談会」(中山大学性別教育論壇HP)。
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裁判をいっそう身近に感じさせる「人格権」の主張──浅倉意見書

 バックラッシュ勢力に屈した豊中市によって、男女共同参画推進センターの館長(非常勤)を雇止めされた三井マリ子さんが起こした「館長雇止め・バックラッシュ裁判」(裁判の詳しい内容)の今年9月の控訴審第3回口頭弁論では、以下の書面が提出されました。
 ・第3準備書面
 ・求釈明の申立書(第3準備書面と関連したものです)
 ・浅倉むつ子意見書
 ・支援者からの陳述書

 「第三準備書面」と「求釈明の申立書」については、私による紹介と要約をご覧ください。

 浅倉むつ子意見書についても、私が要旨を書きましたので、よろしければご覧ください。以下、浅倉意見書の内容を紹介しつつ、その感想を述べます。

 浅倉意見書は、「使用者には、労働者の『人格権』が尊重されるような『職場環境保持義務』がある」という観点から、この事件を分析したものです。

 そのことを通じて、三井さんを「すてっぷ」から排除する以前におこなった、豊中市や財団の三井さんに対する対応それ自体が、以下の(1)(2)の点において、不法であり、精神的な損害賠償に値することが説得的に書かれています。

 (1)バックラッシュ勢力から攻撃に対して、市や財団が三井さんを支援するための対応をせず、三井さんを終始矢面に立たせたのは、使用者が負うべき「職場環境保持義務」の履行を怠った行為であること。

 (2)三井排除にいたる一連の過程の中で、以下の①~⑤のさまざまな人格権侵害がおこなわれたこと。
 ①非常勤館長職から常勤館長職への切り替えに関する情報を当初から三井さんに秘匿したこと。
 ②「三井さんは常勤館長職を望んでいない」という虚偽の未確認情報を、意図的に、第三者や館長候補者に流したこと。
 ③その虚偽情報を流しながら、他の人々に館長就任要請をおこなって就任を応諾する人が出るまで、さらに三井さんに情報を秘匿したこと。
 ④常勤館長選考試験も、すでに決まっていた候補者を合格させるためだけの試験であり、このことによって三井さんを欺いたこと。
 ⑤最終的には、正当な理由もなしに、三井さんを財団から排除したこと。

 これらの行為によって、三井さんは、自らの人間としての尊厳を傷つけられ、精神的苦痛をこうむり、人格的利益を侵害された。実際、三井さんは首を切られるかもしれない恐怖感、情報から隔絶されて、自分のまったく知らないところで自分の身分に関わることが決められている恐怖などによって、著しい身体的苦痛を被った。

 私は、浅倉意見書が以上の点を指摘した意義は、非常に大きいと思いました。

 なぜなら、なにより、職場環境保持義務の不履行や人格権の侵害は、さまざまな職場や組織で起こっていることだからです。外部からの攻撃に対して労働者を矢面に立たせること、ある人を排除するために、当人には知らせずに裏でさまざまな策謀をめぐらすこと、虚偽の未確認情報を流すこと、公正であると信じた試験が形だけものだったこと、それらのために心身に大変な苦痛を感じること──これらのことは、いずれも、私がごく身近に経験したことです。もちろん①~⑤が一連のものとしてなされたことに、この事件のひどさもあるのですが、日本はほんとうに「人格権の侵害」にあふれた社会だと思います。その意味で、私は、浅倉意見書によって、この裁判の意義をいっそう身近に感じることができました。

 また、「人格権」の主張自体は第一準備書面で既におこなわれているのですが、その際、私は、ある大学の教授から、賛同のメールをいただきました。その方は「自由主義」の立場に立つとおっしゃる方で、この裁判についても、雇止めの違法性を争うことなどには疑問を呈しておられました。しかし、今回、その方からは、「人格権には納得です」「こういう理由が説得力を持つ社会であってほしいと思います」「今回の裁判戦略の成功を祈ります」と励ましをいただきました。このように、「人格権」の主張は、今までとは異なった方の共感も呼ぶものだと思います。このことは、当然、裁判に勝利するうえでも役立つでしょう。

 「人格権」や「職場環境保持義務」の主張に加えて、私は、次の二つの点にも浅倉意見書の意義があると感じました。

 第一に、この裁判の内容が非常にわかりやすく書かれていることです。弁護団の書面は、事実の一つ一つについて、証拠を克明に示して書かれているぶん、読むには苦労もありました。量も膨大でした。しかし、この浅倉意見書は、従来の書面のエッセンスをつかんだうえで、わかりやすく書かれているように思いました。弁護士さんから「この意見書は、冊子にまとめるといいですよ」というご助言があり、実際、そうなったのも、もっともだと思いました。

 第二に、浅倉意見書には、従来の弁護団の書面にはなかった、新たな主張も相当書かれていることです。前回の法廷では、裁判長も浅倉意見書をもう読んでいたようで、「ここに書かれている主張は、あとで準備書面でもまとめられるのですか?」と発言したほどです。

 私も、たとえば浅倉意見書が、ファックス事件に関する判決の論理をいくつもの点から批判している箇所(12頁)は、非常に鋭いと思います。その他、浅倉意見書が、11月8日になってはじめて三井さんに曖昧な説明をしたことについて、「もし三井さんが十分に自体を理解して……自らの[常任館長への]就任希望をいち早く明らかにしていたら……市にとって、常勤館長職を引き受ける三井さん以外の人材を探し出すことの困難性は、著しく増大したであろう」(18頁)と説明している箇所や、「三井さんは、常勤館長候補者(この場合は桂)が明確に決まるまで、本件に関する情報を市から故意に秘匿されてきた」(20頁)ことを説明している箇所も、明快であるように思いました。

 あえてひとつ不満を言わせていただくとすれば、「2 バックラッシュ勢力の横暴で執拗な言動について」の箇所で、地方自治体の対応について具体的な事例をもう少し多く書いていただいた方がよいように思えました。もっとも、文中にある、「極度の緊張」とか「精神的うつ状態」などの文言から見ると、浅倉さんご自身は、具体的な事例をご存じであるように見えます。あくまで私の想像ですが、そうした事例を具体的にお書きになれないご事情が浅倉さんにはある(けれども、記述には生かされている)ということなのかな? と思いました。しかし、弁護士さんの解説によると、ファイトバックの会の会員の多くの陳述書が具体的な事実を提示することによって、浅倉意見書のこの節の記述を補強しているとのことです。このことから、私は、訴訟には、原告や弁護士だけでなく、支援者の役割も重要であることを改めて感じました。

 浅倉意見書は、カンパ300円(以上)で販売中です(送料込み)。詳しくは、こちらをご覧ください。

 前回の交流会で、宮地光子弁護士は「浅倉さんは多忙で、住友裁判でも意見書を書いていただけなかった。しかし、以前浅倉さんからいただいた葉書の中に『この事件は、ハラスメントだと思います』と書かれていたので、書いてもらえるかと思った」という発言をなさいました。

 浅倉意見書は、このようにすばらしいものです。しかし、支援団体である「ファイトバックの会」が、証人の桂さんに対して、バックラッシュ勢力が三井さんに対してやったのと同様に、「誹謗する噂」を流したのに、その後の謝罪が不十分なままに終わったことや、会の世話人の多くの方々が、謝罪を推進した人々を「排除」するために秘密裏にさまざまな画策をしたこと、それらのことのために、桂さんを含めた多くの人たちの心身が傷つけられたことは、この意見書の趣旨とあまりにも反しています。こられの点は是正されなければなりません(詳しくは、ファイトバックの会 謝罪問題まとめ@wikiを参照してください)。

 次回の裁判は、明日、
 2008年12月11日(木)午後1時30分~
 大阪高裁74号法廷
 法廷後は弁護士解説付交流会 午後2時ごろ~ 弁護士会館へ
 詳しくはこちらを参照してください。
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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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