2008-10

中国の児童労働(2)──「中国労工通訊」の調査報告

 香港の「中国労工通訊」が2006年9月に発表した「中国の児童労働者現象に関する実地視察報告」(1)は、中国の児童労働に関する詳細な調査です。この調査は、とくに教育制度の問題に焦点を当てています。以下、その内容の一部を紹介します。


 「中国労工通訊」は、2005年の5-8月、河北省石家荘市・保定市(の管轄区域の順平県・淶水県・易県・高碑店市)・邢台市(の隆堯県)、河南省駐馬店市(の逐平県)、広西壮族自治区北海市(の合浦県)で児童労働の問題を調査した。

中国の児童労働者の基本的状況(この箇所は、一般に言われていることの紹介です)

 ・児童労働者は、経済的に立ち遅れた中西部の出身で、経済的に発展した東南の沿海地区に移動して働く。したがって、児童労働者は、広東・浙江・福建などに多い。

 ・女性の比率が高い。1996年の『中国婦女報』の広東・山東・遼寧・湖北の一部の県での調査によると、女性が73.5%を占めている。今回の我々の調査でも、女性の児童労働者の方が男性よりも多かった。しかし、我々の調査では、男性と女性の中途退学率には大差はなかった。女性の児童労働者が多いのは、児童労働市場の女性に対するニーズが、男性よりも大きいからだというのが一つの解釈として可能である。この点は、下記の児童労働者の職業分布から証明される。

 ・児童労働者の職業分布は、比較的階層が低いサービス業と労働集約型産業に集中している(紡織業、被服加工業、製靴業、バッグ製造業、玩具製造業、飲食業など)。雇い主は、零細工場主や小型の私営企業主が多い。

政府の対策

 国務院は1991年に「児童労働者使用禁止規定」を公布し、2002年には新しい「児童労働者使用禁止規定」を公布して、16歳未満の未成年者を雇うことを罰則付きで禁止した。ただし、教育的実践労働や職業技能訓練のための労働は許されるとしており、それらに関する明確な規定がないこと(2)や「児童労働者」の定義に曖昧さがあることは問題である。

 政府の労働行政部門は、児童労働問題に対する監察をして、工場に対する取り締まりをおこなっている。それは、ある程度児童労働者を抑制したが、労働行政部門の監察は、長期的に見ると、児童労働者を雇っている工場を閉鎖的にさせて、監察に対する障害を作り出した。また、労働監察部門は人員や財政の制約のために、人手不足なので、雇い主の厳重な警備と閉鎖的管理の前に、「民が通報しなければ、官は追及しない」というやり方になっている。

 また、取り締まりによって児童労働者を解放して、帰郷させても、故郷には仕事がない。そのため、児童労働者は、賃金や労働条件が労働法に違反していても、当局に通報せずにがまんする。また、帰郷後、仕事がないために犯罪に走る者もいる。

労働力市場の児童労働者に対するニーズ

 児童労働者に対するニーズは、「価格が安い」ことによる。農民労働者の月収は500~800元だが、児童労働者は400~600元である。労働時間も自由に延長できるし、違法なので、社会保険の費用も不要である。子どもであるから、管理や支配も容易である。

 子どもたちは、反復性が高く時間はかかるが、労働強度は高くない職種にたずさわっている(たとえば、服に飾りの玉を付ける、電子部品を取り付けるなど)。

 最近、中国の東南の沿海都市では、労働者の賃金が低すぎるために労働力不足が起きており、賃上げのための労働者たちの集団的抗争もますます激しくなっている。そのため、工場主は、賃金や労働条件に対する要求を出せない児童労働者を「代替労働力」にしている。

 児童労働者の労働条件は、成人の労働者よりも悪い。児童労働者には基本的な法律的知識や権利意識がなく、「法定労働時間」や「最低賃金」という観念もないため、雇い主の言いなりになる。河北省で調査したところ、児童労働者の賃金は300―400元であり、同省の当時の最低賃金である520元よりも低い。労働時間も、法定労働時間よりも長く、長い場合は14時間も働かされているのに、時間外の割増賃金もない。

 雇い主は、児童労働者を「食事・住まい付き」で雇う。少数の貧困地区から来た子どもは現在の生活条件に比較的満足しているが、大部分はそうではない。多人数が一部屋に押し込められて、長時間働かされている。暴力をふるわれることもある。父母から引き離されたことによって、心理的にも傷ついている。

児童労働者の供給

 児童労働をなくすには、そのニーズの面からだけでなく、その供給の面からも、原因を探らなければならない。

 中国では、9年間の義務教育(小学6年、初級中学3年)があるが、児童労働者の多くは、初級中学の2年か3年に進級する時に中途退学している。その時の年齢は14歳か15歳で、13歳の場合さえある。生徒の中退は、ふつう家長が、(子どもの成績が悪い場合に)子どもが学業を継続するコストと、中退して出稼ぎに行く収益とを比較して決めている。子どもが学校を中退して児童労働者になりうる状態になるのは、13─15歳、学年で言えば初級中学の2年生に集中している。

 中国の教育部の発表によると、初級中学の中退率は、2.49%である。しかし、その数字はかなりの「水増し」があり、実際の中退率は、それよりはるかに高い(3)

 児童労働の潜在的な原因は、農村の貧困にある。しかし、経済的に比較的豊かな農村の家庭でも中退は少なくなく、貧困が唯一の原因であるとは言えない。

教育制度の欠陥が、児童労働者の供給を作り出す根本原因である

 最近20年あまり、中国経済は急速に成長している。しかし、国家の財政の教育経費は、GNPの2.79%にすぎない。これは、1978年と比べても0.55%しか増えていない。中国では基礎教育の経費は、主に県や鎮の政府が担うことになっているが、貧困な県では、教師の賃金を支払うのが精一杯である。学校の運営に必要な日常の支出は、学生から徴収する「雑費」でまかなうしかない。「雑費」は、学校が買い入れた設備の償還、校舎の建設の借金の返済などにも使われる。

 「義務教育法」では、義務教育では「学費」を免除すると規定している。しかし、「義務教育法実施細則」では、「雑費」は徴収することができると規定している。「学費」と「雑費」に関しては明確な規定がなく、民間ではずっと両者を合わせて「学雑費」と呼んでいる。こうして、無償であるはずの義務教育は、実質的には「有料」になっており、我々が調査したところでは、教育部門や中学校の責任者は、「雑費」が学校の主な収入源だと述べている。父母が支払わなければならない経費は、農民の家庭にとって大きな負担である。河北省邢台市隆堯県では、初級中学の3年間で家庭が4000~5000元も支払わなければならない。

 また、中国では、初級中学の教育目標が高級中学や大学への進学に置かれており、教学の内容や課程の設置において、義務教育の基本的な要求が軽視されていて、進学を目指さない学生と保護者の意向が無視されている。たとえば、教学において、専門技術教育と農村職業技術教育の比重が低すぎる。課程も、都市と農村との区別や相互の接続が十分考慮されていない。そうしたことも、中退する学生を増加させている。また、一部の学校では、進学率の目標を達成するために、成績が悪くて高級中学の入試に合格するのが難しい生徒を中退するよう仕向けている。

 中国では義務教育が無償ではないので、教育への投資が回収できるか否かが重要である。高級中学や大学に進学させるには莫大な費用がかかるが、近年では、子どもを大学にやっても、大学生は就職難なので、教育への投資を回収するのは難しい。


 以上、この「中国労工通訊」による調査報告は、とくに、中国政府が経済成長を優先して、教育の予算を軽視していることを批判しているといえるでしょう。こうした問題自体は、大きく言えば、市場経済至上主義のもたらしたものであり、アジアや世界の他の国々も無縁ではないように思います(もちろん、都市の農村との間に制度的な格差があることなどは、かなり中国独自の問題だと思いますが)。

 この報告が、近年の農村からの労働者の不足が、児童労働の増加をもたらしたことを指摘している点も興味深く思いました。先日のエントリー「中国の児童労働(1)」で取り上げた、凉山彝族自治州から東莞市への子どもの誘拐・かどわかしに関しても、4、5年前から増加したことが報道されています(4)

 児童労働とジェンダーの関係も、さらに解明すべき点でしょう(たとえば、児童労働者の場合は、男女の賃金の格差はどうなっているのか、など)。

 もちろん中国の児童労働問題で論ずべき点はまだまだあります。たとえば多国籍企業や先進国との関連などです。最近評判の映画、《女工哀歌(エレジー)》(CHINA BLUE)の中にも、16歳未満の女性労働者が登場しており、この映画は、そうした問題に焦点を当てているようです。そうした問題は、後日、また論じたいと思います(続く)。

(1)中国労工通訊「関于中国童工現象的実地考察報告」(PDFファイル)(2006年9月)
(2)たとえば、2007年6月には、東莞市の工場で、四川省の中学生数百名が、「実習」の名の下に、1日14時間の労働を、月収わずか500元でさせられていたことが明るみに出ています(「四川中学生東莞做童工」『北京晩報』2007年6月19日「労働権をめぐる中国の現状に関するニュース」2008/03/20(国際労働運動香港連絡事務所))。教育部も、そうしたことがないように通知を出したほどです(「教育部強調加強中職学生実習管理 堅決途絶以実習之名使用童工」『法制日報』2007年10月26日)。
(3)「中国労工通訊」の調査報告は、この箇所では、「教育警鐘敲響:農村初二学生輟学率超過40%」(『中国青年報』2004年6月14日)と「河北某初中輟学率近90%,新“読書無用論”抬頭」(新華網河北頻道2005年11月9日)の2つの記事と、取材した中学校の教師や責任者の発言が引用してあります。
(4)「走出大山 大批被“拐”珠三角」『南方都市報』2008年4月28日
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中国の児童労働(1)──凉山彝族自治州から東莞市に連れて来られた児童

 今年4月、『南方都市報』が、広東省東莞市の大規模な児童労働の実態を報道しました。東莞市の児童労働者は、13─15歳で、四川省南部の凉山彝(イ)族自治州から連れて来られ、1日に12~15時間働かされていました。残業の際の割増賃金も、社会保険・医療保障などの基本的福利もありませんでした。彼らは「賃金は故郷の家に送る」と言われて、仕事がない日は、1日に10元の生活費(家賃を引けば5元)しか与えられませんでした。

 彼らは粗末な借家におおぜいで住まわされていました。子どもたちが故郷に逃げ帰ろうとしても、交通費は与えられていません。工頭からも、「逃げようとすれば殺す」と脅かされていました。きれいな女の子は日常的に強姦もされていました(1)

 「賃金は故郷の家に送る」と言われていましたが、毎月の子どもたちの賃金は、せいぜい1/3しか家には送られていませんでした。何重にも搾取が行われていたからです。児童労働者→小工頭(小ボス。凉山で貧困な家庭から「高給」をエサに児童を捜し集める)→大工頭(大ボス。企業を紹介する、証明書を偽造する、児童労働者の秩序を維持するなど)→ヤミの仲介者(黒仲介。組織全体と工場の間を仲介する)→工場という形で四重に搾取されていました(2)

 東莞市のある場所には、毎朝、百名近い子どもが街頭に並んで、選ばれるのを待っていて、そこに、職業仲介人や経営者がやって来て、トラックやワゴン車でその子たちを連れて行くそうです。賃金が安く、何の福利の保障も必要ないので、工場主に歓迎されるとのことです。子どもたちは、玩具やアパレル、電子の工場に連れて行かれます。

 ある新聞記者が、工場の経営者を装って、大工頭に接近すると、彼は、工場で労働者が実際に働いているところを見せてくれました。ある音響機器の会社では、彼が手配した女の子100人あまりと、男の子90人あまりが働いていたそうですが、記者はそのうちの数十名に会ったところ、20名近くの女の子は16歳未満でした。男の子の中には、9歳未満の子どももいました。

 大工頭は「戸籍を偽造して年齢を18歳以上に偽れば、検査を逃れられる」と言います。また、工場が普通工の名簿と臨時工の名簿とを別々に用意しておいて、労働部門が検査に来たら、普通工の名簿だけを見せたりしていました。また、あらかじめめ労働部門の検査を知っていて、その時になると、子どもたちを外に出すということもおこなわれていました。

 その大工頭によると、東莞は、児童労働の一つの拠点であり、東莞を円の中心として、深圳・広州・恵州などの地にも子どもたちは送られるということです(3)

 故郷の家には、ふつう、最初に500元から1000元が前渡しされていたようです。しかし、子どもを誘拐して来た場合もあり、故郷の家には一銭も送られていない場合もありました。父母が子どもを売ることもありました(4)

 『南方都市報』の報道は全国的に注目され、警察や労働行政も動きました(5)

背景の一つとしての貧困

 この事件の背景の一つには、辺地の農村の極度の貧困があり、この点は多くの人に注目されました。人々が悲哀を感じたのは、次の話です。故郷のお母さんを訪ねた新聞記者が「あなたの子どもは可哀想に、2、3日に一度しか米の飯を食べられない」と言うと、お母さんは「なに、2、3日に一度、米の飯を食べらる」と言って、何秒か前には子どもが失踪して涙を流していたのが、驚きと喜びの表情に変わったということです(6)

 「都市の農村の二元的構造が引き起こした都市と農村の発展のアンバランス」が問題だという指摘もありました(7)

凉山彝族女性児童発展センターの取り組み――女児の職業訓練

 貧困対策だけでなく、子どもたちに法定年齢になるまでに必要な技術を身につけさせて、明朗なルートできちんと就職させることも必要です。たとえば、『南方都市報』の記事の中でも、凉山彝族女性児童発展センターが「特に貧困な家庭の女児の技能訓練と就労配属クラス」を作り、3~5カ月間、無料で訓練をして、彝族の女児を大都市の企業に合法的に就労させていることが紹介されています(8)

 その凉山彝族女性児童発展センターのサイトによると、このセンターが設立した「竹核女子技能訓練センター」では、Mercy Corpsの資金援助を受けて、15─18歳の女児にさまざまな職業訓練をしています。4カ月間の基本的な教養・知識訓練と4カ月間の職業技能訓練があります。基本的な教養・知識訓練では、漢民族の共通語や彝族の文字、基礎的な数学などを学びます。職業技能訓練では、ミシンや家事サービスなどの都市での就職に役立つ訓練や、手工芸や農業技術など、家で事業をするに役立つ訓練をしています。訓練の終了後は、センターが選んだ企業の職を世話をしたり、村で事業をする人には小口の融資をおこなったりします(「女子培訓学校」欄[とくに「女子培訓中心介紹」]、「凉山彝族婦女児童発展中心最新介紹」)。

 なお、凉山彝族女性児童発展センターについては、「ともこ」さんのブログ「週刊中国的生活」に、今年3月、「山の中のNGO活動 1」「山の中のNGO 2 フィールド篇」「ハンセン病患者への活動@四川省」に、このセンターを訪問なさった時のことが書かれています。

 もちろん中国の児童労働に関しては、他にも多くの要因が指摘されています。今後、見ていきたいと思います(続く)

(1)「餓得受不了才能吃頓米飯」『南方都市報』2008年4月28日
(2)「四環利益鏈搾幹童工」『南方都市報』2008年4月28日
(3)「凉山童工像白菜般在東莞売買」『南方都市報』2008年4月28日
(4)「走出大山 大批被“拐”珠三角」『南方都市報』2008年4月28日。王金玲主編『跨地域拐売或拐騙──華東五省流入地個案研究』(社会科学文献出版社 2007年)(人身売買の流入地でのケーススタディ)も、トラフィッキングの目的の一つして「安価な労働力」という類型を掲げている(p.34-37など)。
(5)「“童工”引発全国関注」『南方都市報』2008年4月30日
(6)「東方早報:両三天能吃到一頓米飯是“幸福生活”?」人民網2008年5月4日、「童工現象的深層原因在経済」『中国信息報』2008年5月8日。
(7)「消除貧窮才不会遭遇童工之痛」『中国婦女報』2008年4月29日
(8)(1)に同じ。
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『台湾女性史入門』刊行

 台湾女性史入門編纂委員会編『台湾女性史入門』が、人文書院から刊行されました。定価は2730円 (本体価格2600円+税130円)です。A5判並製で、258ぺージです(ISBN978-4-409-51061-2)。

 人文書院のサイトには、この本について以下のように書かれています。
 「『中国女性史入門』(関西中国女性史研究会編)の台湾版。婚姻、教育、政治から、文化、芸術、そして原住民まで、計72のトピックを台湾のジェンダー研究者が最新の成果をふまえ、それぞれ見開き2ページでコンパクトに解説。コラムのほか、豊富な文献案内、索引、年表付き。戒厳令解除後の民主化とフェミニズム運動の盛り上がりを経てはじめて可能となった、日本はもちろん台湾本国においても稀な女性史『発見』の試みでもある。」

 構成は以下のとおりです。

はしがき 

Ⅰ 婚姻・家庭
 略序/1 家族形態/2 結婚観/3 婚姻法・離婚法/4 離 婚/5 相続権/6 媳婦仔【シンブアー】/7 ドメスティック・バイオレンス/8 国際結婚と新移民女性/9 児童の養育
 [コラム]1 少子化/2 女性の社会進出とベビーシッター/3 同性の伴侶/4 台湾のDV防止法の特色
   
Ⅱ 教育
 略序 1 日本統治以前の女子教育/2 日本統治期の女子教育/3 戦後の女子教育/4 女子留学生/5 女子の職業教育/6 社会教育と女性/7 ジェンダー・イクォリティ教育法/8 新移民女性の教育
 [コラム]5 伝統女子高の今/6 強要された大和撫子/7 『宝妹【パオメイ】と小明【シャオメイ】のお話』―ジェンダー・イクォリティ教育のテキスト/8 新世代の家政科/9 女子高生の星 楽儀旗隊/10 気になる日本――日本語を学ぶ台湾女性/11 夢に向かって、日本留学

Ⅲ 女性運動
 略序/1 日本統治期の女性運動/2 戦時下の女性動員/3 戦後の女性解放運動の始まり/4 民主化と女性運動の高まり/5 女性の政治・経済への参加/6 女性運動の主流化/7 女性団体/8 戦後の娼妓政策と廃娼問題/9 「慰安婦」問題 
 [コラム]12 性暴力からの解放――如雯と彭婉如/13 身心障害者保護法と女性/14 陳妹おばあちゃんの物語/15 台湾大学「婦女研究室」/16 行政院婦女権益促進委員会
   
Ⅳ 労働
 略序/1 日本統治以前の女性労働/2 日本統治期の女性労働/3 戦後の経済発展と女性労働者/4 性別職域分離/5 職場における女性差別/6 労働法規と女性/7 外国人女性労働者/8 家事労働/9 女性労働者間の格差/10 貧困の女性化
 [コラム]17 帽子を編む女性/18 起業で羽ばたく女性たち/19 大学生のアルバイト事情
          
Ⅴ 身体
 略序/1 纏足解放運動/2 服飾の変化/3 戦前の娼妓制度/4 台湾女性とスポーツ/5 性解放運動/6 出産と堕胎/7 レズビアン/8 セクシャルハラスメント
 [コラム]20 黒猫 黒狗【オーニャオ オーガオ】─―政治と大衆文化/21 女子高生の制服/22 哈日族【ハーリーズー】とファッション/23 檳榔西施/24 電子花車 /25 台湾漢民族の妊娠に関するタブー
 
Ⅵ 文芸
 略序/1 女性漢詩人/2 日本統治期の女性文芸/3 戦後の女性詩人/4 戦後の女性作家/5 フェミニズム作家概況/6 クィア文学/7 音楽/8 美術/9 舞台女優/10 歌仔戯/11 映画女優/12 女性監督
 [コラム]20 アジアの歌姫 テレサ・テン/21 大女優 張美瑤/22 故宮博物院初の女性院長 林曼麗

Ⅶ 政治・ヒエラルキー
 略序/1 女性と訴訟権/2 日本統治期の女性の参政/3 日本統治期の女性団体/4 戦後初期の女性の参政/5 二・二八事件、白色テロと女性/6 現代の女性政治家/7 現代の女性リーダー/8 女工という階級
 [コラム]30台湾の裁判制度と女性裁判官/31 台湾の女性革命家 謝雪紅/32 台湾最初の女医 蔡阿信/33 台湾初の女性市長 許世賢/34 白色テロの生んだ悲劇――蒋碧玉

Ⅷ 信仰
 略序/1 媽祖信仰/2 年中行事/3 シャーマニズムと道教/4 仏 教/5 新興宗教/6 キリスト教
 [コラム]35 マカイと張聡明
      
Ⅸ 原住民
 略序/1 婚姻・家庭/2 教育/3 労働/4 工芸/5 身体/6 文学/7 音楽/8 政治/9 信仰
 [コラム]36 パイワンの少女オタイ/37 日本人の妻となった原住民女性たち/38 サヨンの鐘/39 リカラッ・アウーとその作品に描かれた台湾原住民族女性/40 原住民女性が大学で「学ぶ」こと/41 原住民女性初の立法委員 高金素梅/42 プユマ族の村から世界へ――張恵妹

略年表 
索 引 
あとがき

 私も、ほんの少しだけ、翻訳とコラムを担当しました。
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同性愛者の妻のための電話相談

 ピンク空間文化発展センター(粉色空間文化発展中心/Pink Space Culture and Development Centre)という、とても小さなNGOがあります。このセンターは、ウェブサイトを見ると、今年から活動を始めたようですが、「女性の性の権利」についての活動家が設立したものです。設立の趣旨は「性の文化がもたらす差別と偏見を打破し、平等で多元的な新しい型の性の文化を創り出すことにある」そうです。彼女たちは、そのための研究や討論をするとのことで(「関于我們」)、たとえば今年の3月から、女性同性愛者の状況についてのアンケート調査をおこなっています(「粉色空間進行女同状況問巻試調査」、「粉色空間正式開始女同状況問巻調査」、「女同状況問巻調査2008[アンケート用紙(ワードファイル)]」)。

 このセンターは、今月から、同性愛者の妻のための電話相談(同妻熱線)を開設しました。

 この電話相談と関連して、センターのサイトには「私の夫は同性愛者だった」(「我的丈夫是同性恋」)という文章が掲載されています。この文章には、同性愛者の夫と結婚した妻の苦悩が詳しく述べられています。

 その妻(孟さんといいます)は、結婚してから8~9年もの間、夫が同性愛者ではないかと疑い、苦しんできました。夫は妻との性生活にはきわめて冷淡な一方、何人かの男性とは大変親密で、家にも泊まらせ、ときに同じベッドで寝たりしているようだったからです(孟さんは、最後には、パソコンの記録によって夫が同性愛者であることの確たる証拠をつかみます)。夫は、性的能力がなくて妻と性生活を送らないのではなくて、妻に対する愛情そのものがないというのが、孟さんにとって苦痛でした。

 夫は、暴力も何度か孟さんに振るいました。「夫は私を殺そうとしている」と感じたこともあったそうです。暴力が子どもに向けられることもあって、子どもも夫の前ではのびのびできないので、孟さんは離婚を決意しました。けれども、夫は承諾せずに、「おまえに思いやりがなかったから、俺が同性愛になった」などと言います。孟さんはうつ病になってしまいました。離婚の際にも、夫が家や財産を「自分のものだ」と主張するなど、さまざまな苦労がありました。ただし、孟さんも、夫が、自分が同性愛者であることを恥ずかしがって、自らを卑下する心情になっていたこと(父母にも言えないことなど)には同情したようです。

 孟さんは「現在は同性愛が水面に浮上して、みんなが彼らを助けているが、私たちのような人が受けた傷は、実は彼らよりもずっと大きい。けれど、みんなは、こうしたことを認識していない。男権社会だから、中国の女性は値打ちがないのだ。」「まず、私たちのような人が存在していることを知ってほしい。次に、結婚していない同性愛者は、もう結婚しないでほしい」と訴えています。ただし、孟さんは同時に、「同性愛者に対する差別をなくして、同性愛者も結婚する権利を持てるようにすべきだ」ということも主張しています。

 「男性の同性愛者」と「同性愛者の妻」のどちらが傷つけられいているかという点は、ケースによるのでしょうが、後者の場合は、女性としての抑圧も絡まることがあるので、後者の立場からも結婚制度のあり方・是非を問う視点は重要だと思いました。

[付記]
 先日、「レスビアンのためのネット商店が抹消される」とお伝えしましたが、その後、復活させることができたようです(「贏了!!! 噢耶!!!」)。人民網にも下のような記事が掲載される時代ですので、当然のことと思います。

 10月11日と12日、北京林業大学で、方剛さんが司会して、異性装愛好者と性転換者、男性同性愛者、女性同性愛者が1人ずつ、体験談を講義しましたが、このことは人民網の日本語版にも掲載されました(「異性装、同性愛者、大学授業で『体験を講義』(1)」「(2)」。カミクズヒロイさんのサイトで知りました)。方剛さんのブログには、カラー写真入りで出ています(「性少数人高校現身説法紀実」、「新京報文章:易装恋男子進大学講課」)
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西北工業大学女性発展・権益研究センターの活動

 西北工業大学女性発展・権益研究センター(西北工業大学婦女発展与権益研究中心)は、2000年に設立されました(前身は、1993年に設立された「西北工業大学女性[婦女]問題研究室」)。メンバーは、西安の各大学の研究者のほか、弁護士や婦女連合会・労働組合の人々で、センターの現在の主任は、郭慧敏さんです。

研究テーマは「女性の労働権益」

 このセンターの現在の主な研究テーマは「女性の労働権益」であり、「ジェンダーと労働権益(社会性別与労動権益)」というサイトも運営しています。また、2004年10月にセンターがおこなった「ジェンダーと労働権益」シンポジウムの記録は、1冊の本にまとめられています(郭慧敏主編『社会性別与労動権益』西北工業大学出版社 2005年[ネット書店「書虫」データベースのこの本のデータ])。

家事労働者(家政婦)の権益

 このセンターの特色は、研究だけでなく、さまざまな実践もおこなって、研究と実践とを結び付けていることです(以上、「西北工業大学婦女発展与権益研究中心」より)。その一つの試みが、家事労働者(いわゆる家政婦)の権益に関する研究と実践です。

 西安市は内陸の工業都市であり、国有企業が多く、市場経済化によって多くの中高年の女性労働者がリストラされました。そうした女性たちの中には、生活のために家事労働者に転職した人が少なくありません。西安市の家事労働者の90%以上はリストラされた労働者で、その平均年齢は40歳以上です。彼女たちの収入は低く、仕事は不安定です。

 そこで、センターは、香港の楽施会(オックスファム)の資金援助を受けて、西安市の労働組合や婦女連合会と協力して「周縁的労働者のサポートネットワークプロジェクト」を開始しました。そのプロジェクトでは、まず、「家事労働者サポート草の根グループ(家政工支持草根小組)」を組織しました。家事労働者たちは、その中で、政策や法律を学んだり、家族や子どもの問題を語り合ったり、一緒にピクニックに行ったりしました。

 このサポートグループを基盤にして、2004年9月、西安市家事労働者労働組合(西安市家政工工会)が設立されました。この組合が設立されたことによって、家事労働者たちは、お互いに交流をしたり、政策や法律を学んだりするだけでなく、雇い主とトラブルが発生した時に組合の援助を受けることができるようになったと報じられています(以上は、(1))。

 さらに、2006年5月、センターは「西安家政規則[規制]シンポジウム」を開催し、労働者に加えて、雇い主や仲介組織の人も招いて、家事労働者に関する立法を研究しました(「西安家政規制調研論証会」)。同年10月には、センターが主催し、西安市家事労働者労働組合と西安家事サービス業協会が共催して、「西安家政立法促進シンポジウム」をおこない、センターが作成した「西安家政サービス条例(建議稿)」について、家事労働者や雇い主、仲介組織の人々が議論をしました(2)

 また、西安の家事労働者の中には、離婚したシングルマザーも多いです。ですから、センターは、西安市婦連と共同で、シングルマザーが自らの結婚や離婚について話し合う会も組織しました。この会をきっかけに、彼女たちの互助グループも組織されたようです(3)

立法への女性の参与の探求

 センターは、2004年から、国連女性基金(UNIFEM)の「女性が立法に参与する能力の建設の本土化のモデル」プロジェクトという、女性が立法に関与する能力を高めるプロジェクトもおこなっています。

 その一環として、2005年12月、センターは、陝西省婦連権益部や陝西省女性法律業務従事者協会(陝西省女法律工作者協会)と共同で、「女性の立法参与能力建設ワークショップ」を開催しました。このワークショップでは、大学教授らが立法学の理論と実務や、ジェンダーと立法について講義をしただけでなく、当時改正されたばかりの婦女権益保障法の問題点や女性の立法への参与についてのグループ討論もおこないました(楊雲霞「婦女立法参与能力建設工作坊」)。

 次いで、2007年11月には、センターは「ジェンダー主流化と立法シンポジウム」を開催しました。このシンポでは、現在の法律に関してジェンダーの視点から検討したり、各地で法改正を推進した経験などを語りあったりしました。このシンポの最後に、センターの主任の郭慧敏さんは、女性の立法への参与の問題は、ジェンダー主流化の中の最も重要な問題であることや、ジェンダー主流化のプロセスは、中国の法治化と立法の民主化の過程に位置づけて考えなければならないことを指摘しました(郭慧敏・段燕華「性別主流化与立法研討会」)。

 センター自身も、「陝西省婦女権益保障法施行意見」の改正に参与し、国際法の内容に沿った形で「性差別」の定義や「セクハラ」の定義を書き込ませるなどの成果を収めているようです(私は、施行意見の文言は未確認ですが)(4)

女性労働者の権利に関する記事や論文をサイトに掲載

 センターのサイトである「ジェンダーと労働権益」に掲載されている記事や論文の多くは、他のサイトからの転載です。ただし、女性労働者の立場に立った記事や論文を重点的に収録しているようですので、どのような記事や論文があるかを知るうえでは多少は役に立つと思います。

 たとえば、西安交通大学で起きた臨時工の定年退職の際の待遇に関する最近の裁判の記事が、いくつかこのサイトに収録されています。その記事が伝えている事件は、以下のようなものです。

 楊桂君さんは、1983年から23年間、西安交通大学で、臨時工として、清掃や学生アパートの管理の仕事をしてきました。ところが、2006年5月、楊さんは突然やめさせられ、退職金などもまったく出ませんでした。そこで、楊さんが労働仲裁委員会に訴えたところ、楊さんが勝訴しました(5)。しかし、西安交通大学はその判決を不服として従わなかったため、楊さんは裁判に訴え、一審(2008年1月判決)でも、二審(同年7月判決)でも勝訴し、楊さんは退職金などを獲得しました(6)

 中国では、法律上は一応、臨時工も正規の労働者と同等に扱わなければならないとならないとされており(契約期間の点を除いて)、臨時工も、退職年齢になったときは、その人が勤続年数を満たしていれば、退職金などを正規労働者と同等に支払われなければならないことになっているようです。しかし、実際には退職金が支払われなかったり、医療保険を打ち切られたりするなどの差別が多く、いくつか裁判にもなっています(7)

(1)「家政工有了自己的“家” 全国首家家政工工会在西安成立」『中国婦女報』2004年10月23日、「从草根起歩──一個家政工工会的成長体験」『中国婦女報』2005年3月15日
(2)「関注家政工群体 促進家政服務業立法」西北工業大学新聞網(2006-11-10)
(3)西安市婦聯「陝西省西安市婦聯与有関単位聯合培訓家政単親母親効果顕著」中国婦女網2004-03-16。なお、以上の家事労働者に関するセンターの取り組みについての総合的な計画や総括が書かれた文献には、「法律援助、家政工会、単親之家項目 西北工業大学婦女発展与研究中心行動計劃」「西安家政網絡項目研究与行動支持模式総結」(ともに「社会性別与発展在中国」HPに収録)があります。
(4)「“社会性別主流化与立法研討会”在陝西挙行 婦女参与立法是婦女参政的重要形式」『中国婦女報』2007年11月20日
(5)「臨時工告西安交大労動仲裁勝訴」『華商報』2007年3月31日
(6)「23年“臨時工”耗時両年討到退休権」『陝西工人報』2008年7月28日
(7)「聚焦:“臨時工”退休待遇」『法制日報』2008年10月7日など
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香港のDV条例改正とその後

 この6月、香港の家庭内暴力条例(家庭暴力條例)が改正され、8月から施行されました(従来の家庭暴力絛例改正点←法案そのものなので、非常にわかりにくい書き方です)。改正されたのは、主に以下のような点です。
 ・従来は条例の適用範囲が、配偶者や異性の同居者だけだったのが、元の配偶者や元の異性の同居者、直系親族にまで広げた。
 ・裁判所が強制命令(日本の保護命令に近いもの)を出すときに、社会福利署が立てた反暴力計画に加害者を参加させ(て、彼の暴力的な態度と行為を改めさせ)ることができるようになった。
 ・裁判所が強制命令の有効期間を2年まで延長できるようになった(従来は3カ月が原則で、もう3カ月延長できただけ)。(1)

 しかし、女性団体が共同して出していた要求(詳しくは「平等機会婦女聯席就家庭暴力法改革立場書」(2007年9月28日)」参照)のうち、次のようなものは実現していません。
 ・「家庭内暴力」の定義を明確にし、精神的暴力なども含まれることをはっきりさせるべきである。
 ・同性の同居者の暴力も、条例の対象にするべきである。
 ・「強制命令」を「保護命令」に改称する(その理由は、「強制命令」という言葉は加害者を挑発しがちで、被害者に対する報復を引き起こすからだそうです)とともに、被害者に対する保護を強化するべきである。
 ・家庭内暴力専門の法廷を設けて、民事と刑事を同時に審理できるようにすべきである。

 ただし、同性の同居者の暴力については、香港政府は、法案の審議の中で、女性やLGBTの団体の要求(2)を入れて、来年、条例の対象に入れることを承諾しました。

 しかし、そうした政府の動きに対して、キリスト教保守派の「明光社」などは、9月の立法会(香港の議会)の選挙に向けて、7月から、「婚姻は一人の男と一人の女の結合であり、人類社会の基礎である」ことなどをうたった「家庭保護宣言」に対する署名を開始しました。さらに、8月6日付の『明報』に、2面にわたるその署名の全面広告(←クリックすると2段階で拡大します。2回目は文書の右下をクリックしてください)を出して、同性関係を家庭内暴力条例の適用範囲に入れることに反対を表明しました。当然、多くのLGBTの団体は、この全面広告に対して抗議しました(3)

 民主党(「親中派」に対する「民主派」の最大会派といわれる)も、法案審議の際には、政府が家庭暴力条例の対象から「同居している同性」を除外していることについて、「性的指向による差別だ」と主張していました。しかし、明光社が選挙前におこなったアンケートに対しては、民主党の各議員は「政府は現状を維持すべきだ」という回答を一致しておこないました。この事態に対して、「民主党は得票のために、同性愛者を犠牲にした」という批判がおこりしまた(4)

 民主党もさすがにまずいと思ったのか、9月3日、ほとんどの議員は回答を変更し、「家庭内暴力の定義を広げて、同一の住居に住んでいれば、婚姻状況や性的指向に関係なく、暴力を受けないようにすべきだ」という回答をしました(2008年立法會選舉家庭價値議題投票參考(9月3日修訂版))。しかし、この回答は、「同性の同居者を家庭内暴力条例がカバーする範囲に組み込む」という明快な回答(そうした選択肢も設けられています)とは、若干、異なります。この点は、民主党が、香港の法律が同性婚を認めていないという前提に配慮したとも考えられますが、「同性の同居者を家庭内暴力条例に組み込むことは、同性婚の承認につながる」という保守派の憂慮に配慮したとも言えます(明光社も、同居している同性愛者に対する暴力そのものには一応反対の立場であり、「家庭内暴力条例」を「家居暴力条例」に変更することによって同性婚否定の立場を貫こうとしている)。

 9月7日の選挙結果と上記の各候補者の明光社への回答と照らし合わせてみると、明確に「現状維持」という回答をした当選者は、全60議席中の5名程度であり(ただし、「回答拒否」や「連絡がつかない」人の占める比率が高い)、今後おそらく、「同居している同性」を何らかの形で家庭暴力条例の対象にする方向への前進があるものと思います。しかし、逆に「同性の同居者を家庭内暴力条例がカバーする範囲に組み込む」という明確な選択肢を選んだ当選者もほとんどいないので、結局のところ、異性婚を前提にした改正にとどまるものと思われます。

(1)「新聞公報《2008年家庭暴力(修訂)絛例》八月一日生効」(香港特別行政区政府労工及福利局HP)
(2)上で述べた「平等機会婦女聯席」の要求にも入っているが、より詳しくは、香港十分之一会・香港女同盟会・香港彩虹・姉妹同志・啓動服務者「請支持修訂家暴絛例,保障同志伴侶」新婦女協進会「呼籲將同性同居者納入家暴條例」など参照。
(3)「香港特区立法会選挙前,明光社辧『家庭価値議題調査』惹争議」。批判としては、杜振豪(新婦女協進会・資源発展幹事)「維護家庭 維護什麼」など。女同学舎による抗議行動の写真は、「雷霆掃明光」に収録。
(4)「香港特区立法会選挙前,明光社辧『家庭価値議題調査』惹争議」
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台湾プライドパレードに史上最高の1万8千人

 9月27日、台湾のプライドパレードは、台風の接近による風雨にも負けずにおこなわれました(パレードのサイト)。

 台湾のプライドパレードは2003年に始まり、今年で6回目です。最初の2003年の参加者は500人程度だったそうですが、昨年は1万5千人もの人が参加し、今年は史上最高の1万8千人が参加しました。これは、アジア史上最高の人数でもあります。幅4.5メートル、長さ100メートルのレインボーフラッグを掲げて行進したのですが、これも、全アジア最大のレインボーフラッグだそうです。

 団体としても、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の団体を中心に100を越える団体が参加しました。今年はとくに「残酷兒」という、障碍者(=残)のクイア(=酷兒)によって結成された団体が参加したことが注目を集めました(1)。彼らは3キロメートルのパレードのコースを電動車椅子で進みました。

 日本からの参加もありました(昨年までのパレードの様子も詳しく紹介した、今年のパレードへの参加を呼びかける記事「イケメンだらけな台湾のパレードへ!」)。パレードのサイトの中には日本語のページもあり、今年のパレードのテーマと精神について紹介してあります。

 今年の台湾プライドパレードは、「六色レインボー宣言」を出しました(2008台湾同志遊行的主張与訴求―【六色彩虹宣言】)。
 きわめて大づかみに言えば、以下のような内容の宣言です(あまり正確な要約ではないことをご了承ください)。

赤:性愛――悪法を廃止しよう。性の権利は人権である。
 人は、自主的・多元的に性愛を選択する自由を持つ。異性愛という単一の基準でその価値を評定してはならない。三大悪法(2)は、「善良な風俗を妨害する」「子どもと青少年を保護する」「猥褻を一掃する」という名の下に人権を侵害し、LGBTを圧迫するものだ。

オレンジ:力――集団で示そう。私たちは力である
 日ごろは私たちは孤立させられて、圧迫されているけれども、パレードで私たちの力を示そう。

黄:希望――勇往邁進し、希望の種子を創り出そう
 台湾というこの地の希望は、現在、私たちが一緒につくり出しているところだ。台湾のLGBTの運動は発展してきた。たとえば、私たちは、父母にどのようにカミングアウトするかを恐れるところから、同性愛者にも父母になって次の世代を育てる権利があるところにまで進んできた。私たちは、多元的な未来の空間を開拓し、希望の種を創造した。LGBTの運動はもうすぐ20年になる。私たちはこの希望の道を進み続けている。

緑:自然――差異を見つめよう。自然は本性を現わす。
 LGBTは「不自然」だと責められてきたが、人類が大自然のことを理解するにつれて、自然にはさまざまな性愛の様式があることがわかってきた。人類だけが、セクシュアルマイノリティを差別している。さまざまなセクシュアルマイノリティがのびのびと自分の本性を示すことこそが自然なのである。

青:自由――自主的・多元的に身体の自由を解放しよう
 私たちには、恐怖を免れる自由が必要だ。プライドパレードは集団的なカミングアウトだが、友人や同僚、身内にもカミングアウトして自由を獲得したい。
 私たちには、身体を自分の意思で決める自由が必要だ。ジェンダーのステロタイプに束縛されるべきできない。誰もが自由なジェンダーのステロタイプから脱した服装や髪型をすることができる。
 私たちには、欲望を解放する自由が必要だ。伝統的なジェンダーの枠組みから脱しよう。情感と性愛には多元的な可能性がある。

紫:芸術――自己を生かして、多種多様な芸術を創造しよう
 長い間異類として見られてきたLGBTにこそ、多種多様な芸術を生み出す力がある。トランスジェンダー、同性愛者、バイセクシュアルの力は、単調で面白みのない異性愛の空間におもむきを添えるだろう。

 パレードの写真は、「愛白網」にたくさん掲載されています(2008台湾同志游行:無畏風雨勇往前行)。

 芸能人からもボランティアで協力があります。今年のパレードの終点では、歌手の周さんが歌で声援を送りました(彼女のプログにも写真入りで書かれています[超high同志大遊行])。同じく日本でも有名な歌手の張恵妹さんも、昨年のレインボー大使をつとめるなどしています(このことは、日本の彼女のファンサイトにも掲載されています[台湾プライドパレード アーメイに感謝])。

 日本の関西レインボーパレードは、10月19日(日)の午後、御堂筋でおこなわれるそうです。詳しくは、関西レインボーパレードのサイトを参照してください。

[追記]
 2009年のパレードについては、本ブログの記事「台湾プライパレード2009に2万5千人」をご覧ください。

(1)[残酷兒]残障同志,也可以快楽的参加同志大遊行!」。この団体のサイトは「荒漠裡的彩虹─【残酷兒】残障同志心霊成長団体
(2)以下の3つの法律の条項です。いずれも売買春や猥褻物に刑罰を科す条項です。
社會秩序維護法・第80条
 有左列各款行為之一者,處三日以下拘留或新台幣三萬元以下罰:
一、意圖得利與人姦、宿者。
二、在公共場所或公眾得出入之場所,意圖賣淫或媒合賣淫而拉客者。前項之人,一年内曾違反三次以上經裁處確定者,處以拘留,得併宣告於處罰執行完畢後,送交教養機構予以收容、習藝,期間為六個月以上一年以下。
兒童及青少年性交易防治條例・第29条
 以廣告物、出版品、廣播、電視、電子訊號、電腦網路或其他媒體,散布播送或刊登足以引誘、媒介、暗示或其他促使人為性交易之訊息者,處五年以下有期徒刑,得併科新台幣一百萬元以下罰金。
刑法・第235条
 散布、播送或販賣猥褻之文字、圖畫、聲音、影像或其他物品,或公然陳列,或以他法供人觀覽、聽聞者,處二年以下有期徒刑、拘役或科或併科三萬元以下罰金。
 意圖散布、播送、販賣而製造、持有前項文字、圖畫、聲音、影像及其附著物或其他物品者,亦同。
 前二項之文字、圖畫、聲音或影像之附著物及物品,不問屬於犯人與否,沒收之。
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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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