2008-08

中国の女性(と子ども)センター

 7月26日、「天津市女性活動センター」がオープンしました(天津市婦女活動中心啓用)。「女性の教育訓練、文化の伝播、社会サービス、レジャーと健康な体づくり、ビジネスの展示などの多様な機能が一体になった公衆の活動場所」であるということですが、そのサイト(天津市婦女活動中心)を見ると、「美容とスキンケア」「服飾と贅沢品」「ヨガと健康な体づくり」という文字が躍っています。それも結構ですが、男女平等のための事業が見当たらないのです。

 中国にも、「女性(活動)センター」は各地にあります。しかし、他のサイトを見ても、あまり男女平等の活動の拠点という感じはしません。女性に対する職業訓練はしているのですが、それと関連して、よく設置されているのは、「巾幗家政サービスセンター」(「巾幗」とは、女性の髪飾りから転じて「女性」の意)といった名称の、女性を家事サービスに派遣するセンターです。結婚紹介や結婚式の業務をおこなっているところも目立ちます。もちろん婦女連合会の行事にも使われますし、中には相談業務などをしている所もあるようですが、前面には出ていません。

 また、中国の場合、「女性子ども(婦女児童)活動センター」という名称のほうがむしろ一般的で、それらは、だいたい「子ども」の方が中心であり、子どもの校外活動・才能育成の拠点になっているようです。

 以下、「天津市婦女活動中心」以外で、目に付いたサイトを列挙しておきます。

中国婦女児童事業発展中心(全国婦聯直属)
河北省婦女児童活動中心
瀋陽市婦女会館
長春市婦女児童活動中心
蘇州市婦女児童活動中心
福建省婦女児童活動中心
済南市婦女児童活動中心
中山市婦女児童活動中心
深圳市龍崗区婦女児童活動中心
珠海市青少年婦女児童活動中心
安陽市婦女児童活動中心

 日本の女性(男女共同参画)センターも、「やっていることが、意識啓発にとどまっている」とか、「女性センターなのに、女性を非正規雇用にして、安く使い捨てにしている」とかいう批判が強いですが、中国の女性センターは、それ以上に、まだまだだと思います。もちろん単純な比較をしてはいけませんから、中国の女性センターの位置づけや歴史的背景なども調べてみなければならないと思いますが。
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DVに対して初の人身安全保護裁定

 8月6日、江蘇省無錫市の崇安区人民法院が、中国で初めて、DVに対して人身安全保護の民事裁定を下しました。

 許某と陳さんは夫婦でしたが、夫の許某は、妻の陳さんに対して、平手打ちをしたり、こん棒で殴ったりするなどの暴力をふるっていました。ですから、陳さんは、崇安区人民法院に離婚を求める訴えを起こしました。

 その翌日、裁判官は陳さんの両腕にあざがあるのを発見し、陳さんも、裁判官に傷の写真やカルテを示して助けを求めました。

 そこで、崇安区人民法院は、離婚事件を審理するまえに、「許某が、陳某を殴ったり、脅したりすることを禁止する」という民事裁定を下しました。

 この裁定は、今年3月に、最高人民法院の中国応用法学研究所が出した「DVにかかわる婚姻事件の審理の指針」(「渉及家庭暴力婚姻案件審理指南」。以下、「反DV指南」と略す)に基づいたものです。「指針」では、離婚訴訟を起こすことが暴力を激化させる可能性があることを考慮して、こうした裁定を下すように書かれていました。「反DV指南」は法律ではなく、司法解釈(最高人民法院が決めた法律の解釈)でもありません。だから、そうした法律的な効力はないのですが、裁判官にとっては事件を処理する参考になるものだということです。

 「反DV指南」によると、裁判所は、15日を期限とする緊急保護、あるいは3~6ヶ月の長期保護の裁定を下すことができ、裁定に違反した場合の制裁もすることができるとのことです。また、警察にも告知して、警戒させることができるということです。

 「反DV指南」は、以下の点でも重要であると指摘されています。
 ・DVの類型として、精神的暴力や性暴力、経済的支配も挙げている(これまでの司法解釈では、身体的暴力だけを暴力だとしていた)。
 ・DVの立証責任の転換をおこなった(原告が被害の事実や傷害の結果などを証明すれば、被告側に立証責任が移動する)(以上は、(1))

 「反DV指南」は、全国の9の基層(末端)の法院で試験的に実施されており、その経験が将来的には司法解釈の制定や修正にもつながる可能性があるそうです(2)

 中国では裁判所が保護命令を出せる根拠になるような法律がないことが問題だと指摘されています。上のような裁定は、保護命令に比べればとても不十分なものだと思いますが、長い目で見れば、保護命令への一里塚にもなるのではないでしょうか?

(1)「中国発出首個人身安全保護裁定反家庭暴力」『法制日報』2008年8月18日。
(2)「“反家暴指南”終結最親密傷害」『新女報』2008年6月24日「渝中区法院正式啓動《渉及家庭暴力婚姻案件審理指南》試点工作」(2008-6-4)(重慶市渝中区人民政府サイト)には、全国の9の基層の法院の一つである重慶市渝中区法院で、この「反DV指南」を実施するための具体的な方策など制定していることが書かれています。
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サイト「デルタG」に、台湾初のトランスジェンダー向けホットラインの記事

 2人のレズビアンの方(「つな」さんと「ミヤマアキラ」さん)が運営していらっしゃる「デルタG」というブログがあります。

 そのブログに、今月、「【台湾初】トランスジェンダー向けホットライン」という記事が掲載されています。この記事は、8月6日に「台湾同志諮詢熱線」と「台湾TG蝶園」が、台湾初のトランスジェンダー向け電話相談を設立したことについて述べています。

 また、上の記事と関連して、「台湾でゲイになれるのは孤児だけ」という記事も掲載されています。この記事は、何春蕤さんと高旭さんが、台湾(というか中華圏)の家族主義が、トランスジェンダーの人々を抑圧している状況について述べています。
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環境衛生労働者の苦難

 中国の「環境衛生労働者(環衛工)」は、暑い日も寒い日も、夜が明けないうちに道路の清掃をしています。雪が降れば、睡眠時間を削って、道路の雪かきをします。環境衛生労働者は「都市の美容師」とも称されますが、その仕事は、「都市の中の最も汚く、最も苦しく、最もきつい職業」だとも言われています(1)

 彼女たちは、毎日、朝の3、4時から働き始め、晩の8、9時に家に帰るという生活で、1日に10時間以上働き、休日もほとんどありません。臨時労働者や契約労働者であることが多く、そうした場合は最低賃金程度の収入しかなく、社会保障もありません(2)。労働契約も、きちんとなされていないことが少なくないようです(3)

 環境衛生労働者は、40歳から50歳の女性が多く、彼女たちの多くは、リストラされた人や農村からの出稼ぎに来た人です(4)。長沙市には、環境衛生の一線の労働者が6370人いるそうですが、そのうち農民労働者が5691人で、全体の89.3%を占めています(5)

 彼女たちの健康状態は、よくありません。西安市の蓮湖区で、環境衛生の女性労働者の健康診断をしたところ、その9割が病気にかかっていました(婦人病、貧血、胆嚢結石、腎臓結石、胆嚢炎など)。ある専門家によると、彼女たちの仕事は、時間の制限がきつく、労働強度が大きく、仕事の環境も悪くて、大多数の人は朝食を食べるどころではなくて、飲食が不規則であり、暑さ寒さの変化も激しいので、肝臓・腎臓・肺・胃・婦人科の病気にかかりやすいということです。また、通風や、腰の筋肉を疲労で損なうなどの、骨格や筋肉を損傷する疾病にもなりやすいそうです。しかし、彼女たちは低収入であるため、なかなか医者に行かないので、しばしば大病になってしまいます(6)

 また、交通事故にあう人も多いです。たとえば長沙市では、2005年1月から2006年7月までの間に、環境衛生部門で交通事故が165件発生し、182人が負傷して、5人が死亡しました(7)。交通事故のあうのは深夜や早朝ですが、こうした時間帯こそ、彼女たちが道路の掃除をする主な時間帯なのです。彼女たちは、傷害保険に入っていないので、いったん事故に遭うと、経済的な負担も重くなります(8)

 そのため、「朝晩の出退勤のときや車の流れがピークに達したときは、環境衛生労働者に大通りの清掃をさせないようにすべきだ」とか、「運転手に対する教育を強めるべきだ」という声が上がっています。もちろん、「傷害保険に入れるように関係部門が援助すべきだ」という声や、「政府がお金をかけて、大通りの清掃をもっと機械化すべきだ」という声もあります(9)

 このように大変な仕事をしている環境衛生労働者ですが、彼女たちはけっして人々に尊重されているとはいえず、彼女たちが殴られる事件もしばしば起きています(10)

 そうした状況ですから、今年の春の地方の人民代表大会や政治協商会議でも、環境衛生労働者の権益が話題になりました。河南省の人民代表大会では、11名の代表が、環境衛生労働者が保険に加入できるように政府が措置を取ることを提案しました。武漢市の政治協商会議では、ある委員が、政府が環境衛生労働者の仕事や福利、手当などに関して指導的な意見を出すことや、財政支出をおこなって彼女たちの賃金を引き上げることを提案をしました(11)

(1)「城市美容師需要的不僅是尊重」『中国婦女報』2008年2月18日。
(2)「城市環衛工負担重流失多」『新華日報』2006年6月7日「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(3)」(新華網2007年5月21日)
(3)「労動合同缺失令環衛女工失業」『中国婦女報』2005年5月21日。
(4) (1)に同じ。
(5)「請給農民環衛工更多関懐」『湖南日報』2006年10月24日。
(6)「“城市美容師”健康堪憂 西安蓮湖区環衛女工九成患病」『中国婦女報』2006年4月12日。「呼市近七成環衛工人患多種疾病」(『中国婦女報』2005年6月29日)という記事もあります。
(7) (5)に同じ。「城市美容師何日享有安全-瀋陽環衛女工惨死車輪下引起全社会関注」『中国婦女報』2002年8月21日。
(8)「誰来保障環衛工人的安全?」『中国婦女報』2006年8月19日。
(9)同上。
(10)「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?」「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(2)」「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(3)」(いずれも新華網2007年5月21日)、「司機叫環衛女工譲路遭拒 両度将其暴打」(広州網2008年03月28日)「武漢一環衛女工制止店主乱掃圾拉 遭当街暴打」(人民網2008年3月5日)など。
(11) (1)に同じ。
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「セクハラで初の刑事処罰」

 成都市のある会社の人事担当者の男が、新しく会社に入ってきた女性従業員に交際を申し込みましたが、断られました。すると、その男は、女性を抱き締めて、無理やりキスしようとしました。女性は大声で助けを呼んだため、隣の部屋の同僚が警察に通報し、その男は逮捕されました。今年6月、裁判所は、その男に対し、「人事を管理する権限を利用し、女性を侮辱した行為は刑事処分に値する」として、女性に対する強制わいせつの罪(刑法237条)で、拘留5ヶ月の判決を下しました。

 中国では、2005年に「婦女権益保障法」が改正された際、セクハラを禁止する規定が入りました。この事件について、多くの中国のメディアは、「国内で初めて『セクハラ』によって刑罰に処せられた事件である」と報じました。

 四川省婦連の法律顧問の江敏弁護士は、「この事件は、『セクハラ』は犯罪にならないと思っている人に対する警告である」と述べています(以上は(1))。

 ただし、判決の中には、「セクハラ(性騒擾)」という言葉はまったく出てきません。というのは、婦女権益保障法の中には「女性に対してセクハラをすることを禁止する」といった文言しかなく、これは、刑事処分の根拠になるようなものではないからだそうです。というか、民事でも、判決文の中にはまだ出てきていないかもしれません。

 また、警察や検察の中には、「男の行為は違法行為ではあるが、犯罪とはまではいえない」という意見もありました。けれど、女性が抵抗したため、男が女性の首を絞めた際に、喉に傷を負わせていて、悪質であるため、「一般の人が理解するセクハラを越えて、犯罪を構成する」から、検察が刑事責任を追及したという事情もあるようです(以上は(2))。

[2008年12月29日追記]
 この事件の報道に関しては、のちに明確に「典型的な誤報事件」であるという指摘がされています。その理由は、上の記事でも少し触れていますが、改正後の「婦女権益保障法」は確かに「セクハラ」を規定したけれども、同法の58条は、セクハラを治安事件あるいは民事事件として規定しているからです。この事件は、刑法に以前からある「女性に対する強制わいせつ罪」によって起訴され、処罰されたものであり、「セクハラ」や「婦女権益保障法」とは全く関係ないからです(12月29日付の本ブログの記事2008年「中国10大セックス/ジェンダー事件」参照)。私は、上の記事を書いた時点では、誤報であることを明確に指摘できなかったことをお詫びするとともに、今回、この記事のタイトルにカギカッコ(「」)を付けるという変更をしました。

(1)「国内首例性騒擾獲刑案成都判決」『中国婦女報』2008年7月16日。日本でも「中国:セクハラ裁判で有罪判決 法施行以来初めて」(『毎日新聞』2008年7月16日)と報じられています。
(2)「“首例性騒擾判刑案”曝盲区」『青年周末』2008年7月24日(「“首例性騒擾判刑案”曝盲区 判決書没提性騒擾」「社会性別与発展」サイトへ転載された同じ記事[リンク切れの場合に参照])。
*その他、『検察日報』もかなり詳しく報じています(「解読国内首例性騒擾獲刑案:界定盲区還需要多久」2008年7月16日)。
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