2008-08

環境衛生労働者の苦難

 中国の「環境衛生労働者(環衛工)」は、暑い日も寒い日も、夜が明けないうちに道路の清掃をしています。雪が降れば、睡眠時間を削って、道路の雪かきをします。環境衛生労働者は「都市の美容師」とも称されますが、その仕事は、「都市の中の最も汚く、最も苦しく、最もきつい職業」だとも言われています(1)

 彼女たちは、毎日、朝の3、4時から働き始め、晩の8、9時に家に帰るという生活で、1日に10時間以上働き、休日もほとんどありません。臨時労働者や契約労働者であることが多く、そうした場合は最低賃金程度の収入しかなく、社会保障もありません(2)。労働契約も、きちんとなされていないことが少なくないようです(3)

 環境衛生労働者は、40歳から50歳の女性が多く、彼女たちの多くは、リストラされた人や農村からの出稼ぎに来た人です(4)。長沙市には、環境衛生の一線の労働者が6370人いるそうですが、そのうち農民労働者が5691人で、全体の89.3%を占めています(5)

 彼女たちの健康状態は、よくありません。西安市の蓮湖区で、環境衛生の女性労働者の健康診断をしたところ、その9割が病気にかかっていました(婦人病、貧血、胆嚢結石、腎臓結石、胆嚢炎など)。ある専門家によると、彼女たちの仕事は、時間の制限がきつく、労働強度が大きく、仕事の環境も悪くて、大多数の人は朝食を食べるどころではなくて、飲食が不規則であり、暑さ寒さの変化も激しいので、肝臓・腎臓・肺・胃・婦人科の病気にかかりやすいということです。また、通風や、腰の筋肉を疲労で損なうなどの、骨格や筋肉を損傷する疾病にもなりやすいそうです。しかし、彼女たちは低収入であるため、なかなか医者に行かないので、しばしば大病になってしまいます(6)

 また、交通事故にあう人も多いです。たとえば長沙市では、2005年1月から2006年7月までの間に、環境衛生部門で交通事故が165件発生し、182人が負傷して、5人が死亡しました(7)。交通事故のあうのは深夜や早朝ですが、こうした時間帯こそ、彼女たちが道路の掃除をする主な時間帯なのです。彼女たちは、傷害保険に入っていないので、いったん事故に遭うと、経済的な負担も重くなります(8)

 そのため、「朝晩の出退勤のときや車の流れがピークに達したときは、環境衛生労働者に大通りの清掃をさせないようにすべきだ」とか、「運転手に対する教育を強めるべきだ」という声が上がっています。もちろん、「傷害保険に入れるように関係部門が援助すべきだ」という声や、「政府がお金をかけて、大通りの清掃をもっと機械化すべきだ」という声もあります(9)

 このように大変な仕事をしている環境衛生労働者ですが、彼女たちはけっして人々に尊重されているとはいえず、彼女たちが殴られる事件もしばしば起きています(10)

 そうした状況ですから、今年の春の地方の人民代表大会や政治協商会議でも、環境衛生労働者の権益が話題になりました。河南省の人民代表大会では、11名の代表が、環境衛生労働者が保険に加入できるように政府が措置を取ることを提案しました。武漢市の政治協商会議では、ある委員が、政府が環境衛生労働者の仕事や福利、手当などに関して指導的な意見を出すことや、財政支出をおこなって彼女たちの賃金を引き上げることを提案をしました(11)

(1)「城市美容師需要的不僅是尊重」『中国婦女報』2008年2月18日。
(2)「城市環衛工負担重流失多」『新華日報』2006年6月7日「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(3)」(新華網2007年5月21日)
(3)「労動合同缺失令環衛女工失業」『中国婦女報』2005年5月21日。
(4) (1)に同じ。
(5)「請給農民環衛工更多関懐」『湖南日報』2006年10月24日。
(6)「“城市美容師”健康堪憂 西安蓮湖区環衛女工九成患病」『中国婦女報』2006年4月12日。「呼市近七成環衛工人患多種疾病」(『中国婦女報』2005年6月29日)という記事もあります。
(7) (5)に同じ。「城市美容師何日享有安全−瀋陽環衛女工惨死車輪下引起全社会関注」『中国婦女報』2002年8月21日。
(8)「誰来保障環衛工人的安全?」『中国婦女報』2006年8月19日。
(9)同上。
(10)「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?」「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(2)」「頻頻被打皆因瑣事 環衛工人的権益誰来保護?(3)」(いずれも新華網2007年5月21日)、「司機叫環衛女工譲路遭拒 両度将其暴打」(広州網2008年03月28日)「武漢一環衛女工制止店主乱掃圾拉 遭当街暴打」(人民網2008年3月5日)など。
(11) (1)に同じ。

セクハラで初の刑事処罰

 成都市のある会社の人事担当者の男が、新しく会社に入ってきた女性従業員に交際を申し込みましたが、断られました。すると、その男は、女性を抱き締めて、無理やりキスしようとしました。女性は大声で助けを呼んだため、隣の部屋の同僚が警察に通報し、その男は逮捕されました。今年6月、裁判所は、その男に対し、「人事を管理する権限を利用し、女性を侮辱した行為は刑事処分に値する」として、女性に対する強制わいせつの罪(刑法237条)で、拘留5ヶ月の判決を下しました。

 中国では、2005年に「婦女権益保障法」が改正された際、セクハラを禁止する規定が入りました。この事件について、多くの中国のメディアは、「国内で初めて『セクハラ』によって刑罰に処せられた事件である」と報じました。

 四川省婦連の法律顧問の江敏弁護士は、「この事件は、『セクハラ』は犯罪にならないと思っている人に対する警告である」と述べています(以上は(1))。

 ただし、判決の中には、「セクハラ(性騒擾)」という言葉はまったく出てきません。というのは、婦女権益保障法の中には「女性に対してセクハラをすることを禁止する」といった文言しかなく、これは、刑事処分の根拠になるようなものではないからだそうです。というか、民事でも、判決文の中にはまだ出てきていないかもしれません。

 また、警察や検察の中には、「男の行為は違法行為ではあるが、犯罪とはまではいえない」という意見もありました。けれど、女性が抵抗したため、男が女性の首を絞めた際に、喉に傷を負わせていて、悪質であるため、「一般の人が理解するセクハラを越えて、犯罪を構成する」から、検察が刑事責任を追及したという事情もあるようです(以上は(2))。

(1)「国内首例性騒擾獲刑案成都判決」『中国婦女報』2008年7月16日。日本でも「中国:セクハラ裁判で有罪判決 法施行以来初めて」(『毎日新聞』2008年7月16日)と報じられています。
(2)「“首例性騒擾判刑案”曝盲区」『青年周末』2008年7月24日(「“首例性騒擾判刑案”曝盲区 判決書没提性騒擾」「社会性別与発展」サイトへ転載された同じ記事[リンク切れの場合に参照])。
*その他、『検察日報』もかなり詳しく報じています(「解読国内首例性騒擾獲刑案:界定盲区還需要多久」2008年7月16日)。

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