2008-05

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山西省女性作家協会設立

 4月19日、山西省太原市で、山西省女性作家協会(山西省女作家協会)が設立されました。これは、中華人民共和国で初めての女性の文学芸術活動従事者の社会団体(社団)組織です。

 会長は蒋韵さん、常務副会長は李建華さん、副会長は葛水平さんです。

 会員は600人あまりで、設立大会には100名あまりの女性作家が集まりました。

 山西省女性作家協会の前身は、1985年に設立された山西省女性作家懇親会(山西省女作家聯誼会)です。ところが、前の会長が手続きをいい加減にしていたため、蒋韵さんらが民政部門に登録をやり直さなければならなくなり、その際、民政部門に「学会」か「協会」かを選択するように言われたため、「協会」という名称を選んだという事情があるとのことです。ただし、「協会」といっても、山西省女性作家協会は、実際は一種の文化サロンで、ふだんは一つのテーマについて交流をするという活動をするようです。

 「男性作家と一線を画すのではないか?」という憶測をする人もいたようですが、蒋韵さんは「この協会は、けっしてフェミニズム団体ではありません。男性会員は入れませんが、私たちがおこなう活動には、彼らが参加して交流するのを歓迎します」と語っています。

 設立大会には、副省長で中国作家協会副主席、山西省作家協会主席の張平さんや、山西省婦連主席の張悦さんが出席して講話をしたということですから、良かれ悪しかれ公的な団体という色彩があるようです。

 ただし、蒋韵さんは、この協会を、女性の問題について女性作家どうしが語り合う場にもしようと考えています。蒋韵さんは「男性作家と比べて、女性作家は苦労しています。彼女たちは、やる仕事は男性と大差ないのに、家に帰るとあまりにも多くの家事をしなければなりません。女性は思いをぶちまけることが必要であり、文学も思いを語る一つの方法ですから、この面から言えば、女性は男性より文学に近いですが、女性作家どうしの交流ももう少しスムーズにします」というふうに語っています。

[資料]
「国内首個女作協争議声中山成立 蒋韵会長表示:不作和作協成競争対手」『中国婦女報』2008年4月23日。
「山西省女作家協会際太原成立──高建民致信祝賀,張平出席並講話」(2008-4-23)山西省婦聯HP
「山西省女作家協会成立 女作家蒋韵任会長」新華網(2008-4-22)
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方剛『男性研究と男性運動』出版

 中国の男性学研究者である方剛さんが、この4月、『男性研究と男性運動(男性研究与男性運動)』(山東人民出版社 2008年)を出版なさいました(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)。The Study on Masculinities and Men's Movementという英文名も付いています。

 方剛さんについては、すでにこのブログでも、一昨年に方剛・胡曉紅主編『男性要解放』(山東人民出版社 2006年)を出版なさったことや(その時の記事)、大浜慶子さんの訳で「中国の男性解放運動と男性学」という論文を『ジェンダー史学』第2号(2006年11月)(ジェンダー史学会発行)にお書きになったことを紹介しました。

 方剛『男性研究と男性運動』の構成は、以下のとおりです。
自序
西洋の男性性研究と男性運動
 男性性の性役割理論
 男性性の多様性の理論
 西洋の男性運動およびその流派
中国の男性性研究
 中国における男性性の研究および出版
 男性性の実践の多様な趨勢の分析
 陽剛(男らしい勇ましさ)と陰柔(女らしいやさしさ)の間──ある男性コンテストにおける男性性の実践についての分析
 両岸の男子大学生のジェンダー役割と内包の対比研究──北京と台北を例に
 中国内地の職場のセクシュアルハラスメントと立法から見た男性研究と配慮の欠落
 賈宝玉:階級とジェンダー役割に対する二重の反逆者
 エコロジカルフェミニズムに対する男性研究の視角からの回答
セックスと男性性の研究
 男性性の視点から見た男のセックス
 男性セックスワーカーと彼らの男性性
 精力剤の広告における男性像の分析
 「ベッドの上の平等」の背後──高収入の男性の性生活の叙述における男性性の分析
 中国のセクシュアリティ研究に男性研究を導入する展望
中国内地の男性運動
 中国内地の男性運動の萌芽
 男性の自覚とフェミニズム:反家父長制文化の同盟者
 「男性の自覚/解放」釈義
 支配的な男性性の改造から男性の参与の促進へ
 中国内地の男性運動備忘録
 中国の内地の男性研究/運動を推進する当面の構想
香港・台湾の男性運動
 香港の男性運動:観察と思考
 台湾の男性グループ
 台湾の学者と男性運動を討論
 「男性フェミニスト」王雅各の印象

 本書の「中国における男性性の研究および出版」「中国内地の男性運動の萌芽」「中国内地の男性運動備忘録」などの節では、中国の男性研究と男性運動の歴史がわかります。

 ただし、「男性運動」のほうは、グループとしては、2005年3月に方剛さんらが北京林業大学人文学院心理学系で発足させた「男性解放学術文化サロン」くらいしかないようです。他に、1998年に『からだ・私たち自身(我們的身体、我們自己)』が翻訳された際に「北京男性健康促進グループ」が結成されたり、2002年にDV反対のホワイトリボン運動の一環として、「女性に対する暴力に反対し、ジェンダー平等を促進する」男性ボランティアグループが結成されたりしたことはありましたが、それらは男性自身の要求に基づくものというよりも、フェミニズム主導のものであったことなどの理由で、長続きしていません。

 方剛さん自身も、中国の男性運動の困難として、以下の点を挙げています(「中国内地の男性運動の萌芽」)。
 ・西洋に比べて男性研究や男性運動の基礎になるフェミニズムが普及していない。
 ・男性自身が家父長制文化に抑圧されていることを意識していない。同性愛者はサブカルチャーにおいて家父長制に挑戦しているが、西洋に比べて、主流の文化に対する同性愛サブカルチャーの影響も弱い。
 ・フェミニズムも男性研究・運動に対して懐疑と警戒の念があり、男性研究・運動の中にもさまざまな争いがある。

 上のような点は、日本も程度の差こそあれ同じだと思いますが、方剛さんは今後の男性研究・男性運動の構想として、以下のようなことを考えているそうです(「中国の内地の男性研究/運動を推進する当面の構想」)。
 ・大学に男性研究の課程を開設したり、関心のある人向けの講座をする。
 ・男性研究のプロジェクトをおこなって、その成果をもとに社会の改良するための提案をする。また、その提案を実際におこなってみる。テーマとしては、男性の家事分担、男性によるDV、性産業における男性の顧客の態度など。
 ・ホワイトリボン運動や演劇をおこなう。たとえば『陰道独白(ヴァギナ・モノローグ)』のように、『陰茎道白』を制作して男性性を問いなおす。
 ・男性向けの電話相談をする。男性が直面するジェンダー問題に即した「男性成長グループ」を組織する。

 なお、方剛さんの基本的な視点はこれまでと同じであり、以下の「男性の自覚の二重性」ということを述べています。
 1.男性は、家父長制的な文化と体制が女性を傷つけていることを自覚し、女性が平等と自由の生存空間を獲得するのを支持し、助けなければならない。
2.男性は、家父長制的な文化と体制が男性を傷つけていることを自覚し、行動して反抗しなければならない。

 ただし、今回の本では、1の点に関して、「女性」だけでなく「セクシュアルマイノリティ」も傷つけていることを自覚しなければならないということを付け加えています。また、方剛さんは、「『男性解放』は、こうした『男性の自覚』の目標ではあるが、まだ多くの人が『男性の自覚』を持っていない今日の段階では、単純に『男性解放』という言葉を使うのは、若干先に進みすぎている」という趣旨のことを述べておられ、私にはその点も興味深かったです(「『男性の自覚/解放』釈義」)。

 もっと具体的に、ひとつ、「中国内地の職場のセクシュアルハラスメントと立法から見た男性研究と配慮の欠落」という論文を読んでみました。

 中国では、2005年8月に婦女権益保障法が改正された際に「女性に対するセクハラを禁止する」という条項が入りました。その際、「男性に対するセクハラが問題にされないのはおかしい」という意見と「現実には女性に対するセクハラのほうがはるかに多い」という意見が対立しました。

 方剛さんは、後者の意見に対しては、「少数だからといって法律が取り上げないのはおかしい」という立場です。方剛さんは、女性上司からセクハラを受けた2人の男性にインタビューしています。方剛さんはそのインタビューから、男性に対するセクハラも権力者がおこなうものであること、セクハラ被害を受けた男性も、女性同様、自尊の感情が損なわれ、抑鬱や倦怠、異性に対する態度の変化などが起きることを発見します。また、男性の被害者は、「男性の尊厳」(実際は支配者としての男性性)が損なわれるので、男性は被害を訴える勇気がないという状況――すなちわ男性性は、男性が女性にセクハラをする背景であるとともに、男性自身をも傷つけていると述べています。

 方剛さんは、多くの国のセクハラ禁止規定は男女両性に同等の権利を保障しており、また労働法などの中に置かれていて、職場の問題が重視されているのに対して、中国では、婦女権益保障法という強制性がない法律にセクハラ禁止条項が入っていることを問題として指摘し、以下のようなことを述べます。
 ・中国の政策決定をおこなう者たち――その多くは男性である――には、ジェンダー意識が乏しい。
 ・女性の人権意識が高まったからこそセクハラ禁止条項が婦女権益保障法に入ったのだけれども、男性研究や男性への配慮の推進も必要である。
 ・職場の中では多くの場合、男性が権力者であるから、男性の自己反省が必要であることを強調せねばならない。
 だからこそ方剛さんは、男性研究や男性運動が必要だと訴えるわけです。

 方剛さんは欧米の研究にも通暁しておられ、誠実かつ精力的にさまざまな問題を研究しておられます。また、個人の生活から考えることの重要性も指摘しておられますが、もう少し方剛さんご自身の経験なども書かれたらいっそう説得力が増すのではないかという気もしました。
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「館長雇止め・バックラッシュ裁判」控訴審

 三井マリ子さんは、2000年、大阪府豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の初代館長(全国公募による。非常勤)として、数々の独創的な企画を打ち出すなど全力で仕事を進め、その実績は市やセンターにも高く評価されました。しかし、そうした三井さんの仕事が目ざわりだったバックラッシュ勢力(男女平等の推進に反対する勢力)が市やセンターに圧力をかけ、その圧力に屈した豊中市などは、非常勤館長職廃止して館長を常勤化する「組織変更」の名の下に2004年3月、三井さんを雇止めし、新館長への採用も拒否しました。

 三井さんは同年12月、豊中市と「すてっぷ」を運営する「とよなか男女共同参画推進財団」を相手取って、損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました 三井さんはこの裁判を、「非常勤労働者」と「バックラッシュ」という日本の女性にとっての二大問題に取り組むものとして位置づけて闘っておられます。

 しかし、昨年9月の大阪地裁判決は、三井さんの敗訴でした。そこで、三井さんは大阪高裁に控訴しました(裁判の詳しい経過は、私が作成したこのページをご覧ください)。

 今年1月には、弁護団は、一審判決を徹底的に批判した「控訴理由書」(PDFファイル)を提出しました。私は、控訴理由書のごく一部を簡単に紹介した文を、この裁判を支援する会のブログに書きました。
[控訴理由書要約・その1]
 ・組織変更がなぜ必要だったかという理由として、判決がただ一つ挙げた「山本事務局長の後任を市から派遣できない」という点について。
 ・判決が特に認めなかった「バックラッシュ攻撃に豊中市が屈した」という点について。
[控訴理由書要約・その2]
 ・弁護団が新機軸として打ち出した、採用拒否の違法性についての新しい論証

 2月26日には、控訴審の第1回口頭弁論がおこなわれました。当日の法廷では、三井さんは以下の「意見陳述」をおこないました。


 昨秋、大阪地裁の山田裁判長は、雇用継続を拒否した豊中市らに損害賠償を求めた私の訴えを棄却しました。

 豊中市や財団は嘘に嘘を重ねて私の人生を翻弄しました。私は、その人間としての不誠実さに直面して苦しみました。体中に湿疹ができました。眠れない夜が続きました。そして職を失い収入がなくなりました。ところが、一審判決は、その苦しみを癒すどころか倍増させるものでした。

 この私の苦しみは、この日本社会において軽んじられてきたおびただしい数の働く女たちの苦しみであり、大勢の非常勤職の人たちの苦しみでもあります。

 私の首斬りの背後には、バックラッシュ勢力の攻撃があります。その勢力は、個人として女性が生き生きと生きていける社会が嫌いです。男女平等を目指す言動も嫌いなのです。

 その勢力に属する人々は、男女平等を求めて活動する人々やその著作までも執拗に攻撃します。その手法は、事実を歪曲・すり替えしたり、根も葉もないことをでっちあげたり、誹謗中傷をしたりします。それをチラシ、噂、メディアで広めます。たとえば私に関しては、「すてっぷの館長は、講演会で専業主婦は知能指数が低い人がすることで、専業主婦しかやる能力がないからだと言った」というとんでもない嘘を、市議会議員が、噂と称して流しました。

 こうした攻撃は豊中市だけではありません。日本の津々裏々で見られます。日本各地で男女平等推進施策を踏み潰しては快哉を叫んでいます。

 そのような攻撃を受けて疲弊している多くの人々に対しても、一審判決は、さらなる打撃を与えたのです。

 ですから、私は、このまま黙って引き下がるわけにはいかないのです。

 2000年、私は全国公募に応募した60人の中から選ばれ、豊中市の男女共同参画推進センターの初代館長に就任しました。このセンターは「すてっぷ」と呼ばれました。豊中市民の長い間の夢でした。「男女平等の社会をつくることは国の最重要課題」とうたう男女共同参画社会基本法の賜物でもありました。

 私は、館長としてスタッフの仕事の下支えをし、「豊中にすてっぷあり」と言われる、その日を目指して、一生懸命に働きました。すてっぷから徒歩2、3分の地に住まいも移しました。こうした私の仕事は、市や財団から評価されこそすれ批判されたことはありませんでした。

 しかし3年後、豊中市は、「組織強化」の美名のもとに、2004年4月からは非常勤館長職をなくして館長ポストを常勤化すると言い出しました。そうなった場合、「第一義的には三井さんです」と言って私をだまし、裏では「三井は3年で辞めると言った」「三井は常勤はできないと言った」との嘘をふりまき、後任館長を密かに決めていたのです。

 候補者10人のリストが極秘に作成され、2003年10月には市長にだけ見せて、「それで当たれ」という市長命令の下、候補者打診が進められ、12月には次期館長がひそかに決まっていたのです。

 全国からの抗議の声や、私が「常勤館長をやる意思がある」と表明したこともあって、2004年2月、市は採用試験をすることに決めました。すてっぷ館長として働き続けたかった私は一縷の望みをかけて受験をしました。しかし私は、不合格とされ、2004年3月31日で豊中市を追われました。

 その採用試験官には、後任館長探しに狂奔していた市の人権文化部長が入っていました。この不公正さを1審は認めております。しかし、慰謝料を支払わないといけない程の違法性を認めることはできないと、損害賠償は否定されました。

 この判決を聞いた私は、「10発殴られたら違法、と言ってやってもいいが、5,6発だろ、我慢しろよ」と裁判官から言われたような気持になりました。

 女性の人権擁護と男女平等の推進を市民の先頭に立って担うべき豊中市が、女性の人権擁護と男女平等施策を誠実に実行してきた女性センター館長を、嘘まみれの陰湿な手法で排除したのです。使い捨てたのです。そしてそのことで、私は、精神的にも経済的にも、計り知れない打撃を受けました。だのに、なぜ、それが違法にならないのでしょうか?

 裁判長、最後に申し上げます。週2,3日出勤の館長職では運営上問題があるなどと理由をこじつけて、市は非常勤館長の私を排除しました。しかし、私の後任の常勤館長は「組織強化になっていない」と法廷で証言し、2007年3月31日付けで辞職しました。こうして、すてっぷは、常勤館長の休職期間を入れると館長職不在のまま1年以上が過ぎました。今日、2月26日現在も館長はいません。

 まさに、バックラッシュ勢力の狙い通りのことが、すてっぷで起きているのです。この一事をもってしても、豊中市の言う組織強化なるものは、私を排除するための単なる方便だったといえると思います。

 控訴審の公正なる審判を切に願い、意見陳述を終えます。


 控訴審の第2回目は、6月5日(木)午後1時15分から、大阪高裁74号法廷でおこなわれます。

 当日は、続いて、中央公会堂で以下のような集会もおこなわれます。
第1部:弁護士解説付き交流会(2:00-4:00)
 「これが控訴審のポイントだ」

 ゲスト:脇田滋さん(龍谷大学法学部教授)(脇田さんのサイト)……脇田さんは、この裁判に対して、三井さんの雇止めの不当性を述べた意見書を提出なさっています。
 脇田さんのこの裁判へのコメント:「ぼくは、このケースは完全に解雇だと思います。組織変更はやる必要はなかったと思いますね。必要がなかった組織変更を出してきて首にしただけでなく、採用試験をやって公正さを装って雇用拒否をしたんですねぇ」
第2部:支援コンサート(4:00-6:00)
 「女たちは後戻りしない」

 byMASAさん(サックス奏者)(挨拶MASAさんのサイト公演日程)
 詳しくは、ここを参照してください。ぜひおいでください。
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中国の女性セックスワーカーに対する暴力の調査

 先月、中国版ニューズウイーク(中国新聞週刊)が、中国の女性セックスワーカーに対する暴力の問題を取り上げました(「暴力猛于艾滋病──女性性工作者生命安全被厳重威脅!!」)。

 この記事は、中国の女性セックスワーカーの生存状況を描写した潘綏銘さん(彼女のブログ)の言葉――「第一に生存、第二に殺されたり奪われたりしないこと、第三に性病・エイズからの防備」から始まっています。中国版ニューズウイークの記者が数十名の最底辺のセックスワーカー(小姐)を取材したところ、ほとんどすべての人が強盗にあったり、強姦されたりした経験があったそうです。

 この記事は、趙軍さん(1969年生まれ)という、「女性セックスワーカーの被害問題」を研究テーマにしている女性のインタビューも掲載しています。趙軍さんは潘綏銘さんの弟子で、この10年近くセックスワーカーの中に入って、調査をしてきたそうです。以下、趙軍さんのお話の一部をおおまかに紹介します。

 なぜセックスワーカーは暴力的な侵犯のターゲットになりやすいか? (1)女性は生理的・身体能力的に弱者である。(2)セックスワーカーは、接近しやすく、商売の対象が流動的で、不特定であるという特徴がある。(3)彼女や彼女の雇い主は、ふつうの出稼ぎの若い男性よりも金を持っている。(4)一人で活動することが比較的多い。(5)警察に事件を届け出ることが少ない。

 犯罪の動機について言えば、強盗はもちろん金目当てだが、殺害に関しては、さまざまな動機がある。客にサディズム的傾向があり、セックスワーカーが承諾しなかったために殺された場合もある。もっとよく見られるのは価格の問題で、セックスワーカーは価格には敏感なので、話がまとまらなくて、セックスワーカーが騒いだために、客が静かにさせようとして殺害する結果になる。もちろん金を奪うためにセックスワーカーを殺害した事件もある。

 なぜ警察に事件を届けないかといえば、現在の法律の体制では、警察は彼女たちの敵だからである。法律の規定によると、売春する者は、軽くて10~15日間の拘留、5000元以下の罰金、重ければ6カ月~2年間の労働矯正処分となる。

 経営者(老板)も、警察に介入されるのをいやがる。刑法359条では、他人を誘惑・収容・紹介して売春させたものは、5年以下の有期懲役・拘留(*)・管制(**)に処すとされており、情状の重いものは、5年以上の刑もある。重大な組織的売春は、死刑さえある。したがって、被害者が警察に事件を届けることは、経営者にとってさらに危険かもしれない。
 (*)短期間の自由刑
 (**)一定期間、一定の自由(表現活動や移動・面会など)を制限して、公安機関の監督下で社会生活を送らせる刑罰

 セックスワーカーの権利は周縁化されている。その原因は、彼女たちの「仕事」が周縁化・地下化されていることである。

 警察は、被害を届け出たセックスワーカーや経営者はあまり処罰しないようにすべきである(しかし、警察は往々にして公然と「我々は被害を届け出た者を処罰しない」と言えない)。

 また、警察は、摘発した事件をもとにして、セックスワーカーにどうしたら自分の権利を守れるかを宣伝すべきである。生命権は、疑いなく「社会の教化」より重要である。権利の主体は、身分のいかんを問わない。この点から出発すれば、警察がいかに自分の生命や財産を保護するかを教育することは完全に合法的である。

 趙軍さんは昨年4月、『懲罰の辺境:売春刑事政策実証研究(懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究)』(中国法制出版社 2007年)という本も出版しました。私はまだ読んでいませんが、以下のような構成の本です(詳しい紹介)。
 第1章 序論
 第1節 研究視角
 第2節 研究方法
 第2章 法益あるいは権利の侵害に関して
 第1節 「家庭破壊説」の疑問点
 第2節 「性病・エイズ伝播説」の欠陥
 第3節 「違法犯罪誘発説」への疑問
 第4節 売春とそれと関係する行為の侵害
 第3章 規範あるいは道徳の違反に関して
 第1節 売買春が徳行にもとることの考察
 第2節 売春を紹介することが徳行にもとることの考察
 第3節 売春を組織することが徳行にもとることの考察
 第4章 法律のコストと効果に関して
 第1節 経済的コストの分析
 第2節 社会的コストの分析
 第3節 法律的効果の分析
 結語
 参考文献
 附録

 目次を見ると、売買春の取締りについて、非常に根本的なところから問題にしている本のようです。また、抽象的な思弁ではなく、セックスワーカーに対するアンケートなど、実際の調査をもとしして論じられているようです。

 全体で429ページありますが、そのうち200ページ近くが、「附録」という形で、警察や経営者、セックスワーカー、顧客などに対する調査、ケーススタディに充てられており、この箇所だけでも貴重な本のように思われます。

 私はさっそくこの本をネット書店「書虫」に注文しましたので、もし入手可能なら、2週間ほどしたら、書虫の目録に掲載されると思います(書虫は、予め目録に掲載されている本以外の本を注文すると、その注文が通った時点で目録に掲載されるシステムです)。→掲載されました(趙軍『懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究』)
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看護ヘルパーの劣悪な労働条件

 先日の記事でも書いたように、中国では看護師が不足しているため、患者の日常の世話は家族や看護ヘルパー(護工、護理工)に頼っています。しかし、 看護ヘルパーの労働条件は劣悪です。

 今年初め、上海市の婦連が「上海女性看護ヘルパー現状調査報告」(上海女性護理工現状調査報告)を発表したことが報じられました。この調査報告は、2006年5月から上海市女性学学会、復旦大学女性研究センター、上海交通大学医学院女性研究センターが共同で、30の病院の900人あまりの看護ヘルパーを調査したものです。

 この調査によると、看護ヘルパーは、36歳から50歳までの中年の女性が78.9%を占めていました。大部分の看護ヘルパーは(農村などからやってきた)外来の人で、84.9%を占めています。学歴は、初級中学以下の人が88.8%でした。

 労働時間は長く、1日の労働時間は、30.9%の人が9─12時間、5.9%の人が13─18時間、52.7%の人が19─24時間でした(=ずっと付き添って寝起きしているということだと思います)。しかも、73.3%の人が残業手当をもらっていませんでした。

 このような重労働なのに、賃金は安いです。同時期の上海の一人当たりの平均月収は1869元だったのに、看護ヘルパーは、500元から1000元の人が59.9%を占めていました。上海の最低賃金の基準は750元なので、その前後にすぎません。また、77.7%の人が労働契約を締結していませんでした。また、84.2%の人が社会保険に加入していませんでした(1)

 北京でも、2004年にNGO「打工妹の家」が病院の看護ヘルパーについて調査をおこなったことがありますが、ほぼ同じような問題が指摘されていました(2)

 たとえば北京の調査では、賃金は、日給で平均で29.15元でした。毎月26.38日働いているので、平均月収は768.98元です。ウルムチでも調査がおこなわていますが、「看護の仕事はとても繁雑で重いのに、月収はふつう600-900元の間である」と述べられていたので(3)、どこでもだいたいこんな金額なのでしょう。

 北京での調査は、休日についても調べていますが、1ヶ月に8日とか4日休めるのはごく少数で(3.1%と10.3%)、2日休める人も18.0%だけで、まったく休日がない人が33.5%もいました。休暇を取れる人も、有給である人は19.8%だけでした。

 「打工妹の家」の「非正規就業農民労働者権益保護」課題グループの郭慧玲さんによると、もともとは看護ヘルパーは、病院の看護部か後方勤務部門が管理していました。しかし、近年、経済効率を追求するため、多くの病院では、看護ヘルパー業務を看護部から切り離したり、後方勤務部門を社会化・会社化して、病院に下属した「ヘルパーセンター」にしたりしました。さらには直接民間の会社に外注するようにしたそうです。すなわち、正規雇用から非正規雇用にしたわけです。だから不安定であるうえ、中間搾取もある。現在の中国の雇用の非正規化の問題や農民労働者([農]民工)の問題は、病院にも現れていると言えそうです。

 本来なら看護師がするべき生活看護のかなりの部分を、看護師不足のために、事前にほとんど訓練されていない看護ヘルパーがやっている状況なので、この点も問題です。ですから、北京では、昨年から9つの病院が、看護ヘルパーはなくして、あらかじめ3ヶ月間の技能訓練を経た「看護員(看護補助業務をおこなう者、看護助手)」が身の回りの世話をするという試みを開始しました。

 問題は、コストが増加することです。現在決められている看護料が安いので、看護員の賃金を病院が支払うと、病院が損をすることになるようです。だから、政策的な対処が必要だと指摘されています(4)

(1)「上海九成女護理工工作時間超法定限度」『中国婦女報』2008年1月3日。なお、この調査報告については、すでに「護理工亟待納入職業労動管理」(『中国婦女報』2007年8月30日)でも報じられていますので、適宜、後者の記事からも数値などを補いました。
(2)「就業“臨時化”帯来新的貧困 京城医院護工保潔工生存状況堪憂」『中国青年報』2004年11月2日。
(3)「烏魯木斉護工現状調査」『中国婦女報』2004年7月5日。
(4)「護理員将逐歩替代護工」『現代護理報』2007年8月30日、「護理員真的能代替護工嗎」『健康報』2007年8月31日「護理員逐歩取代護工是喜是憂?」『現代護理報』2007年10月9日「護工,会从医院消失嗎」『人民日報』2007年9月20日

 ほかに、「医院護工現状調査:上崗多没合同 収費憑経験定」(『北京晨報』2007年8月29日)も、記者が独自に取材をしています。
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市川房枝記念会解雇事件不当判決への抗議声明

 先日、このプログで裁判長への要請署名をお願いしていた市川房枝記念会不当解雇撤回裁判で、先月22日、不当判決が出されました。原告の方々や弁護団が抗議声明を出しておられますので、以下、転載させていただきます。

 この判決は労働者の人権を踏みにじるものですが、裁判官自らが証人尋問の最後に原告に「結婚はされているのですね。」「ご主人の収入もあるということですか。」と質問したなんて、女性の労働に対するバイアスもあからさまですね。



市川房枝記念会解雇事件不当判決への抗議声明

声明文

1.私たちは、2008年4月22日、東京地裁民事第11部(裁判官 村越 啓悦)による市川房枝記念会解雇事件の判決について、これまでの整理解雇の判例法理を顧みず、労働者として、さらに女性としての人権を無視した不当判決として厳重に抗議します。

2.本判決は、原告らが解雇された年の2006年夏の賞与の支払いを一部認めただけで、その余の地位確認などを棄却しています。

 被告財団は職員8名中6名の仕事を奪うことを事業方針の転換に当初から織り込んでいながら、その発表まで、一度も職員の意見を聞かず、労働組合との協議をしないまま退職勧奨を発表し、退職を前提とした話し合いに応じないならクビだとして、ほぼ1ヶ月という短期間で解雇を強行したのです。こうした被告の対応について、「経営者の裁量権」として認めた判決は、労働者の雇用の継続・確保について使用者は何ら責任を負わなくてよいと言っているに等しく、これまでの判例法理に全く反したものであり、労働者の生活権、労働権、団結権を無視したものです。

3.本件のような整理解雇については、労働者に特段の責められるべき理由がないのに使用者の都合により一方的になされるものなので、業績悪化などの場合にその必要性を認めるなど、これまでの判例では慎重な判断が求められていました。

 しかし、本判決は、財団の財政状況について「負債はなく安定している」、「事業面では規模が小さく収益力は高くはない」とし、「賞与も支払うことができないほど財政が逼迫しているとは考えられない」として賞与の支払いを命じながらも、被告の事業方針の転換(事業の縮小特化)について、被告の経営者は「被告の運営に関する裁量権を有している」から「その判断が常識を逸脱するようなものでない限り、これに容喙(横から差し出ぐちをすること)すべきものではない」とし、「事業特化を行うとすれば解雇以外に途はない」などとして、解雇を有効としたものであり、労働者の立場を全く無視したものです。

 また、本判決は、「たとえ原告らの請求に全面的な理由があっても、事業者に既に廃止した事業を再開することを求めることはできない」から「労働契約上の地位を確認することはできない」としています。このような解雇無効でも労働契約上の地位を確認する判決は出せないという判断は,これまでの判例にもない異常なものです。実際には、記念会は、今年1月29日の口頭弁論終結後に、マスコミ上でも寄付金を募り、これから耐震補強工事と改修工事を行い、創立記念日の11月15日にリニューアルオープンすることを公表しています。その事業計画の中で、担当者をクビにして一旦は閉じた市川房枝政治参画センターを復活させるとしています。

4.原告らは1998年から女性ユニオン東京の組合員として、被告と団体交渉を積み重ね、働きやすい職場を実現させてきました。2006年の3月以降も賃金交渉を4回重ねていました。ところが被告は7月になって突然の事業方針の転換を発表し,そのわずか1ヵ月後に解雇を強行したのです。経済的に逼迫していたわけではなかったのに、被告は敢えて講座を中止し、職員をクビにしました。数多くの受講生の生きがいである講座を中止し、職員の生計の手段を突然絶つことに躊躇しなかった理由は、組合嫌悪、組合つぶしのほかには考えられませんが、本判決は、「(退職勧奨は)退職を前提とするものではあるが、解雇の回避に向けて一応の努力をした」,「退職勧奨を行っているから手続的に不相当とはいえない」としており,解雇回避努力や手続きの相当性についても,労働者の雇用の継続・確保について使用者は何ら責任を負わなくてよいとする誤った判決です。

5.本件は、女性の社会的・政治的地位向上を目指す市川房枝記念会でおきた整理解雇について「整理解雇の4要件」に欠け無効のものであることから地位の確認を求めました。市川房枝記念会の事業の縮小・特化は創設者市川房枝の意思にそむくものであり、数多くの女性たちの募金で建てられた婦選会館が本来の姿で再建されることを目指した訴訟でした。市川房枝記念会の財政状況は人員削減を必要とするものではなく、耐震診断結果についても、婦選会館の一時使用禁止は必要ありませんでした。そのことは、日本婦人有権者同盟が、この2年にわたって変わらず建物を使用していたことからも明らかです。講座は大きく儲かる事業でないとしても、健全に運営されており事業の特化の方針は誤りでした。しかし、原告の主張や原告の提出した証拠書類は厳正に検討されず、判決は「経営者の裁量権」のみ大きく認めました。このような手法がまかり通る社会になったら、労働者に人権は無いに等しいと言えるのではないでしょうか。

6.なぜ、現存の労働法やこれまでの判例法理でも守られているはずの原告の労働者としての権利を無視した被告の行為が裁かれなかったのでしょうか。それは、裁判官が証人尋問の最後に原告に発した次の質問、「結婚はされているのですね。」「ご主人の収入もあるということですか。」に現れています。女性の賃金は、「一家の生活を支える」とされる男性の賃金並には重視されず、その権利を侵害されても、夫の収入で生活できるだろうという扱いです。女性労働者の組合活動にたいする雇用者側の不当な行為についても男性労働者並には扱われないのではないかという疑問を持たざるを得ません。働く女性の人権より、「経営者の裁量権」を優先した本判決は、労働者の人権と並び女性の人権を軽視したものと言えます。

 社会的な貧困、格差社会が問題になっている中で、経営者の裁量権を拡大する本判決に対し厳重に抗議します。

以上

2008年5月1日

市川房枝記念会の不当解雇を撤回し、婦選会館を再生させる会(市川房枝ルネッサンス)(ホームページブログ)
弁護団 志村 新、井上幸夫、大竹寿幸

連絡先:〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-19-7 横山ビル2階 女性ユニオン東京気付
FAX:03-3320-8093
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