2007-12

女性・ジェンダー研究の新しいサイト、資料の新しいアップロード

 1993年1月に設立された「天津師範大学女性研究センター(天津師範大学婦女研究中心)」は、中国の大学に設立された女性(学)研究センターとしては、比較的古いものの一つです(なお、一番最初に設立されたのは、1987年5月に李小江が設立した「鄭州大学女性学研究センター(鄭州大学婦女学研究中心)」)。このセンターのサイトは情報量豊富で、まだ生きています。
 しかし、このセンターは、2006年10月、「天津師範大学ジェンダーと社会発展研究センター(天津師範大学社会性別与社会発展研究中心)」と改称し、最近、下の新しいサイトを設立しました。
 婦女与社会性別知識社区網

 上の新しいサイトは、開設されたばかりのせいか、まだあまり多くの文献を収録していません。
 けれど、センターの簡単な紹介(「天津師範大学性別与社会発展研究中心簡介」)のほか、このセンターの方々が出版している『ジェンダー(社会性別)』(年刊。2004年~)の最新号の目次などがわかります。
 また、センターが今年9月に開催した「民族主義とフェミニズム」に関する学術交流活動の報告なども収録しています(「民族主義与女性主義論題綜述」)。

 1986年6月に設立された「陝西省女性理論婚姻家庭研究会(陝西省婦女理論婚姻家庭研究会)」は、中国で最初のころに設立された民間の女性(学)研究会のうちの一つだと思います(一番最初に設立されたのは、1985年4月にやはり李小江が設立した「河南省未来研究会女性学会」)。
 最近、このサイトの次のページから、同研究会の機関誌『関注』(季刊。2000年─2004年)が全文ダウンロードできるようになりました。
 《関注》(全集)

 たとえば『関注』の2000年第1期を見てみると、この号は、同研究会が1998年~1999年におこなったDVに関する調査研究についての特集号です。この特集には、さまざまな調査報告や考察のほか、研究会の人々が中心になって作成・提案した「陝西省反家庭暴力条例(建議稿)」(実際に陝西省で制定されたものと比較すると興味深い)も全文収録されています。

 なお、似たような名称の雑誌として、中華女子学院ジェンダー研究情報センター(中華女子学院性別研究信息中心)が出している『思考与関注』(隔月刊。2006年~)というものもあり、こちらも全文が女性/ジェンダー学学科発展ネットワークの当該ページからダウンロードできます。ただし、こちらの雑誌は、さまざまなサイトからジェンダー問題に関連した重要記事をピックアップした情報誌です。

 それから、これは研究とは直接関係ありませんが、今月、人民網と全国婦連宣伝部とが共同で「中国婦連ニュース」というサイトを開設しました。これは、婦連などの公的機関の最近の動きを知るには役に立つようです。
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女性・子どもの人身売買に対する初の行動計画

 12月13日、国務院弁公庁から「中国の、女性や子どもを誘拐して売ること(以下、人身売買と言う)に反対する行動計画(2008─2012年)」が発表されました(1)。もちろん従来も人身売買を禁止するさまざまな法律や個別の政策・活動などはありましたが、「行動計画」はこれが初めてです。

 この行動計画の全体的目標は、「人身売買に反対する活動の協力・保障のメカニズムを整備し、関係部門の職責・任務を明確にし、協力を強め、予防・打撃・救助・リハビリが一体となった反人身売買の持続的なメカニズムを打ち立て、活動の効率を向上させ、女性・子どもの人身売買の活動の発生を最小限にし、人身売買の被害にあった女性・子どもの心身の傷を最小限にする」ということです。

 具体的には、関係部門の人身売買に対する認識の向上、犯罪の予防、取締り、女性・子どもの救出、リハビリ、国際協力などについて書かれています。

 また、この行動計画は、「女性・子ども人身売買反対行動工作部局間[部際]合同[連席]会議制度」を設立することにしました。「部際」の「部」というのは、以下の団体のことで、これらの団体が協力・調整する制度です。
 公安部・中央宣伝部・中央綜治弁・全国人大常委会法工委・外交部・発展改革委・民生部・司法部・財政部・人事部・労働保障部・鉄道部・交通部・農業部・商業部・文化部・衛生部・人口計生委・工商総局・民航総局・広電総局・法制弁・婦児工委弁公室・扶貧弁・全国総工会・共青団中央・全国婦連。
 女性の人身売買が、いかに多くの問題と関わっているのかがわかります。

 『中国婦女報』の記事は、この行動計画について、「わが国が『打拐』から『反拐』へ向かいつつあることを示している」と述べています(2)
 つまり、これまでは人身売買を取り締まることが中心だったのが、より総合的な人身売買対策を掲げるようになったということです。『中国婦女報』の記事は、「行動計画」にだいたい以下のような点が述べられていることに注目しています。

 救出された女性・子どもをできるだけ早く家庭や社会に復帰させ、二次被害を受けるのを防ぐため、救出された女性と子どもに対して、社会的な思いやりを強める。もと住んでいたところに帰れないか、帰りたくない被害女性と16歳以下の未成年者に対しては、職業訓練や職業紹介などをして、異郷で就職するのを助けるなど。
 犯罪を根本的に予防するメカニズムを整備する。農村の貧困な女性のサポート、女性の地位向上、義務教育の経費の保障など。
 人身売買の「買い手市場」を取り締まる。労働者を違法に使用する職場や児童労働者を使用する行為、違法な労務紹介・婚姻紹介などの取り締まりなど。

 こうしたことが今までまったくおこなわれてこなかったわけではありません。たとえば、被害者に対するケアという面では、公安部などが、「誘拐された女性・児童の中継[中轉]・訓練・リハビリセンター」というものを2001年から今日までに、4つの省や市で設立しています(江蘇、雲南、四川、徐州)。こうしたセンターでは、被害者が社会復帰する(家族のもとに帰る)前に、被害者に基礎的教養や法律、職業技能の訓練、傷ついた心身のリハビリなどをおこなっています。
 4つのセンターのうちでは、四川省のものが最も規模が大きく、その経費はすべて政府持ちで、面積は5000平方メートルに及び、生活・生産・学習・治療・活動・事務の6つの区域があるといいます(以上、(3))。
 四川省では、省の女性児童人身売買打撃弁公室と公安部とユニセフが共同で、『悪夢[噩夢]』という被害者の口述記録や『再び虹を見る[重見彩虹]』という被害者ための心理相談のハンドブックも作成して救援活動の一助にしているようです(4)

 もちろん、このような取り組みはまだごく一部でおこなわれているにすぎません。今回の「行動計画」を足がかりにして、こうした点を含めた総合的対策を少しでもすすめてほしいものです。

(1)「国務院辨公庁関于印発中国反対拐売婦女児童行動計劃(2008─2012年)的通知」婦女観察網HPより
(2)「被解救婦女可安排異地就業」『中国婦女報』2007年12月26日。
(3)「被解救婦女児童中転康復中心昨在我省設立」『華西都市報』2002年11月6日「中国関注被拐婦女児童心理的康復」新華網2004-05-30
(4)「携手維護 婦女児童合法権益」『四川日報』2004年3月8日。
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台湾のプライドパレードと移住労働者デモ

 サイト・Global Voicesが、今年おこなわれた台湾プライドパレードと移住労働者デモについて報じています。いずれも中国語版のほか、日本語版もあります。写真も10枚程度添えられていて、貴重です(「2007同志大遊行」「2007台湾プライドパレード」「『我用休假』移工大遊行」「移住労働者集会:『休みがほしい!』」)。

 10月13日におこなわれた台湾プライドパレードは、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)が参加するもので、これで第5回目です。1万5千人近くが参加しました。参加者は、「ジェンダー差別禁止法」や「パートナーシップ法」の制定を求め、人気歌手のアーメイ(張惠妹)も参加したそうです。

 12月9日の移住労働者デモは、台湾国際労工協会が呼びかけたものです。台湾では、36万人の、東南アジアなどから来た移住労働者が働いています。
 そのうち16万人は、介護や看護などの家庭内労働部門で働いています。けれども、台湾の労働基準法からは除外されているために、休暇や残業代の権利はない(中国本土も同じですね)。だから「休暇がほしい!」と、その点を問題にしているわけです。

 詳しくは、上の記事のリンクをクリックしてください。また、リンク先の記事の中にも多数のリンクがありますので(中国語ですが)、それらをクリックするとより詳しいことがわかります。

 日本語と言えば、10月におこなわれた、「台北同玩節」(台北レインボー祭)のサイトにも、ごく簡単にですが、日本の説明が付してあります(ページの右下です)。今年で第8回で、セミナーや映画祭をやっています。
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ウイグルの人権活動家・ラビア・カーディルさんの講演、インターネット新聞JanJanに掲載

 先日来このブログで2回にわたって取り上げた(ウイグルの人権活動家、ラビア・カーディルさんが来月、日本各地で講演」「ウイグルの人権活動家・ラビア・カーディルさん大阪で講演」)、ラビア・カーディルさんの講演について、インターネット新聞JanJanに投稿したところ、以下のような形で掲載されました。
 ウイグルの人権活動家・日本に訴え

 先日の報告とそれほど大きく変わっていませんが、より正確なものにしたうえで、私のコメントも若干書き加えました。もしよろしければ、記事の末尾の「この記事が気に入ったらクリック」を押してくださるとうれしいです。

 投稿が少し遅なったのは、新聞や雑誌にも投稿したので二重投稿にならないようにしたためですが、新聞や雑誌には掲載されませんでした。やはり新聞などは、世の中の話題になっているテーマ(≒その新聞が大きく取り上げたこと)か、身近な話題についての投書でないと、なかなか採用しないようです。

 また、これは今回の投書の採否には直接関係ないことかもしれませんが、ウイグル問題について初心者の私のような者が、ラビア・カーディルさんの講演だけをもとにして文章を書くと、どうしても「ラビアさんは~~と言っていた」「~~とのことだ」「~~だそうだ」という伝聞的な書き方になってしまうので、第三者に対しては若干、説得力が弱い文章になってしまう感じがしました。

 もちろん私自身は、ラビア・カーデイルさんの今回のお話は、すべてが正確ではないにせよ、さまざまな意味で信憑性が強いと思います。しかし、私はウイグル問題についてまだまだ不勉強ですし、それに対して日本が何ができるのかという点についても十分考えることができていません。今後、自分自身でさらに勉強し、少しは研究もしなければならないと思います。

 なお、先日、寺町みどりさんらが呼びかけておられた「国立女性教育会館の単独存続を求める申し入れ書」は、自治体議員59名/市民団体43団体/市民306名で提出なさったようです(呼びかけ人の寺町みどりさんのブログより)。
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高齢女性(2)──高齢者権益保障法の改正とジェンダー

 前回の記事:高齢女性(1)──高齢女性のかかえる問題

 今年、2007年は、中国の「高齢者(老年人)権益保障法(「老人権益保障法」と訳されることもある)」(1996年制定)の改正作業が始まった年です。この改正にジェンダーの視点を入れるために、今年、2つの会が開かれました。

一、老齢女性権益保障専門シンポジウム[専題研討会](2007年3月)(1)

 まず、今年3月、中国人民大学老年学研究所や同大学の女性学研究センターなどが、「老齢女性権益保障専門シンポジウム」を開催しました。

 このシンポジウムでは、まず、高齢者権益保障法改正の専門家メンバーで、全国老齢工作委員会弁公室権益部主任の王さんが、「わが国の高齢者権益保障の法律には、性別の差異の状況に対する考慮がたしかに不足していた。新しく改正する高齢者権益保障法は、ジェンダーの専門家の意見を十分に吸収して、高齢女性の権益をより確実に保障できるようにしなければいけない」と述べました。

 また、中国人民大学老年学研究所の杜鵬教授は、2002年の第2回世界高齢者大会の「マドリード国際高齢者問題行動計画」では高齢女性の問題がかつてなく注目されているのに、中国国内での研究や政策実践は始まったばかりであることを指摘しました。

 さらに、社会科学院の董之鷹研究員は、高齢女性は寿命が長く、配偶者を失なう率も高く、自らの経済的蓄積も少ないので、彼女たちの社会的な養老保障に対するニーズは男性よりも大きいこと、しかるに、中国の現行の社会的養老制度は、高齢女性の特殊な要求を考慮しておらず、その点に配慮した扶助政策がないことを指摘しました。

 この会では、農村の高齢女性の深刻な状況も議論されました。中国青年政治学院副教授の劉暢さんと全国婦連女性研究所補佐研究員の賈雲竹さんは、次の問題を指摘しました。
 ・農村の青壮年労働力が大量に都会に流出しているため、農村の高齢女性にますます生産と生活の圧力がかかってきており、彼女たちの生活のケアと精神的慰籍が非常に欠乏している。
 ・家族の小規模化や青年世代の女性の独立した自我意識の高まりのために、農村の伝統的な家庭の養老能力が弱まり、世代間の矛盾と衝突が激しくなって、姑と嫁の間の矛盾がしばしば家族の贍養[せんよう。子の親に対する扶養]紛争の導火線になっている。贍養紛争では、高齢女性がもっとも被害をこうむる。
 賈雲竹さんは、それゆえ、農村の社会的養老保障制度では、男女の生産と生活における異なった経歴と境遇に注意して、男女が真に平等に社会発展の成果を享受できるようにすべきだと述べました。

二、「高齢者権益保障法」改正専門家討論会(2007年8月)(2)

 8月31日には、全国婦連権利保護工作指導グループ[維権工作領導小組]、全国婦連老齢工作委員会、全国婦連女性研究所の共催で、「高齢女性の権益を保障し、平等で調和した社会を構築しよう──『高齢者権益保障法』改正専門家討論会」が開かれました。
 この会も、高齢者権益保障法にジェンダーの視点を入れ、高齢者女性の権益を守る目的で開催されました。

 会議は全国婦連書記処書記の王乃公が主宰し、副主席の莫文秀も出席しました。
 参加者は、法改正にジェンダーの視点を入れる必要性や、その基本的な考え方と原則、具体的な条項の改正について討論しました。 

 この討論会では、高齢者権益保障法をどう改正するかについて、以下のような意見が出ました(末尾にその意見を出した人の名前を書いています。ただし、個々の条項の改正すべき点については、「条項の具体的な改正提案」として一括して書かれているので、ある程度この会の総意なのかもしれません)。

家庭による養老モデルを変え、政府の責任と社会保障を強調を
 この点は「参加した専門家が一致した」と書かれています。たとえば、「家庭養老の観念は変えるべきであり、社会保障と政府の責任を強化し、多くの手段によって在宅養老サービス体系を打ちたてて、共同で高齢者の贍養責任を担わなければならない」(中華女子学院教授・夏吟蘭)などと述べられています。
 より具体的には――
 ・現行法では、第2章「家庭贍養と扶養」、第3章「社会保障」……となっているが、第2章「人身と財産の権利保障」、第3章「社会保障」、第4章「贍養と扶養」……にするべきである(全国婦連女性研究所・譚琳)
 ・現行法の第10条に「高齢者の養老は主に家庭による」とあるが、こうした伝統的な養老観念は変え、政府の責任と社会保障を強調する必要がある」(中華女子学院教授・李明舜)
 ・単純な家庭養老はダメだが、完全な社会化は時期尚早だ。コミュニティによる養老が比較的良い方法だ(李明舜、国務院法制弁公室・曹穎、全国人民代表大会内務司法委員会・黄怡捷など)――こうした点については、参加者によってニュアンスに差があるようです。

社会保障に対する政府の責任を明確に
 この点については、現行の条文に以下のような批判がなされました。
 ・現行法の第23条に「労働能力がなく、生活の源がなく、扶養する人がいない」老人に対しては、現地の政府などが救済するとある。つまり法律の重点は、完全に能力がなくて、生活がきわめて貧困な集団に置かれている。しかし、これは、現状と適応していない。
 ・第26条には「本人と扶養人がたしかに医療費用を支払う力がない者」に対して政府や社会が扶助するとある。しかし、それだけを強調するのでは、政府が負うべき責任を弱めている。すべての高齢者に対する健康・医療保険を打ち立てた後に、特殊な集団に対する医療救助を強調するべきだ。
 ・第33条に「国家は、社会組織あるいは個人が高齢者[老年]福利院・敬老院・高齢者アパート・高齢者リハビリセンター・高齢者文化体育活動の場所と施設を設立・運営するのを励まし、援助する」とあるが、具体的な方法(税の減免など)を明記すべきだ。

死別・再婚・同棲の際の財産権の保護
 ・高齢女性の婚姻の自由は法律で保障されているが、現実にはしばしば障害がある。そのため、同棲(同居)という関係が多いので、同棲関係や同棲の過程で生ずる問題について適切な規定をするべきである。それとともに、再婚の自由と再婚時の権益の侵害に関する条項を充実させるべきだ(夏吟蘭)。
 ・再婚した女性が配偶者を失った際の相続権の問題は深刻である。また、女性が同棲したとき、元の婚姻関係の中の財産権が保護されないとか、同棲している女性が配偶者を失ったとき、相続権が保障されないという問題もある。法律は、こうした面について重視し、規定すべきだ(北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター・李瑩)。
 ・とくに再婚・離婚時の住宅の権利を保護する必要があり、小額の金銭保障で済ませてはならない。高齢者が死亡したとき、その配偶者は、住居に対する終身の権利を享受すべきことを提案する(海淀法院裁判官・肖菲、李超)

人身の権利、(家庭内)暴力
 ・高齢者に対する暴力の禁止規定を置くべきである(農村では、家族のメンバー以外からの暴力もある)。現行の第4条に「高齢者に対する差別視・侮辱・虐待・遺棄を禁止する」とあるが、「高齢者に対する暴力を禁止する」にして、「いかなる言語・行為およびその他の方法で高齢者を差別視・侮辱・虐待・無視(軽視)、遺棄することもみな高齢者に対する家庭内暴力と見なす」とするべきである。
 ・家庭内暴力に関して、婚姻法では離婚の時に被害者が家庭内暴力について訴訟を起こせると規定しているが、子どもの高齢者に対する家庭内暴力についても訴訟を起こせるかどうかも検討に値する。
 ・第15条に「扶養者は高齢者の力ではできない(力不能及)労働を要求してはならない」とあるが、「力不能及」という言葉は、司法上、使いにくいし、また、家事労働はしばしば正式の労働とみなされないことがある。だから、「扶養者は高齢者に生産労働と家事労働を強要してはならない」という条文にすべきだ(譚琳)。

法律の実効性。法律上の責任や救済措置に関する規定の強化
 ・現在の司法実践では「高齢者権益保障法」は裁判所の判決の根拠としては使いようがない。当事者もこの法律によって訴訟をおこすことも少なく、調停で少し引用できるだけだ(中国人民大学教授・杜鵬)。
 ・この法律の実用性と可操作性を強めるべきで、そうでなければ、宣言的・唱道的な法律にしかならない(曹穎、黄怡捷、肖菲)
 ・第5章「法律上の責任」は「法律上の責任と救済措置」に改め、救済措置も規定するべきである(譚琳)
 ・第5章「法律上の責任」では、法律の規定がないか、不明確である内容について、補充をするべきである。たとえば、家庭内暴力に関して……(先述)。
 ・第3章第39条に「弁護士費用を支払う力がない人は、法律扶助を得ることができる」とあるが、「できる」は、「すべき」に改めるべきである。

高齢者権益保障法の対象と定年差別の関係をめぐる議論
 ・「高齢者権益保障法の対象(「高齢者(老年人)」の定義)は60歳以上だが、女性の定年は55歳かそれ以前だから、法の対象を広げるべきだ」(杜鵬、徐勤)。
 ・この意見に対し、「定年差別こそを克服すべきであり、高齢者権益保障法の対象を広げることは、将来差別是正の妨げになる。60歳未満の人の問題は社会保険法などで対応すべきだ」(譚琳)という意見も。

その他、ジェンダー視点
 ・高齢者の中でも、とくに貧困な人々や三無(労働能力がない、生活費の出所がない、贍養・扶養する人がない)の人々、とくに年齢の高い人(高齢老年人)には女性が多い。だから、そうした人々の保護をとくに重視する規定を置けば、多くの女性高齢者が保護されることになる(全国婦連女性研究所・劉伯紅ほか)。

 その他にも、いろいろ提案や議論がされましたが、書ききれません。

全国婦連副主席の莫文秀の総括講話
 会の最後に全国婦連副主席の莫文秀さんが、高齢者権益保障法の修正に対する婦連の取り組みについて、以下のような意見を述べました。
 1.婦連の組織は高齢者権益保障法の改正の過程で、「人間本位(以人為本)」という発展観(=経済発展一本やりでないということ)を堅持しなければならない。
 2.法改正に参与する過程で、ジェンダーの視角を体現しなければならない。
 3.婦連の組織は調査研究を強めて、高齢女性の権益を保障しなければならない。
 4.高齢者権益保障の主体は政府であり、婦連の組織は有効な職能作用を発揮しなければならない。
 5.「高齢者権益保障法」の基本法としての地位を十分に体現しなければならない。すなわち、単に他の法律と合致させるだけではなく、現実の問題を解決しなければならない。

(1)「将性別視角納入老年婦女権益保障体系」『中国婦女報』2007年3月29日
(2)全国婦聯婦女研究所編『研究信息簡報』2007年第13期(2007年11月20日)(附件にPDFファイル「保障老年婦女権益 構建平等和諧社会――《老年人権益保障法》修改専家討論会綜述」があります)。なお、この会については、「以性別的視角関注老年人権益」(『中国婦女報』2007年9月4日)にも簡単に報じられています。

※なお、現在の中国の高齢者扶養システムについては、湯山トミ子「撫養と贍養 中国における扶養システムと親子観」富田武・李静和編『家族の変容とジェンダー――少子高齢化とグローバル化のなかで』(日本評論社 2006年)などがあります。
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「国立女性教育会館の単独存続を求める申し入れ」ほか

 先日の私のブログで取り上げた、「館長雇止め・バックラッシュ裁判」宮地光子弁護士の講演がインターネット新聞JanJanに掲載されました。よろしければご覧ください。よろしければリンク先の「この記事が気に入ったらクリック」を押してくださるとうれしいです。
 「館長雇止め・バックラッシュ裁判」で宮地光子弁護士が講演(上)
 「館長雇止め・バックラッシュ裁判」宮地光子弁護士の講演(下)

 ところで、寺町みどりさん(HPブログ)という岐阜の地方議員の方から、以下のような呼びかけが送られてきましたので、私も賛同しました。よろしければ皆様もご協力をお願いいたします。

第2次「国立女性教育会館の単独存続を求める申し入れ」の呼びかけ(12.21まで)

みなさま
 「国立女性教育会館(ヌエック)」が「独立行政法人の合理化計画」の対象になり、統合・縮小されようとしています。「国立女性教育会館」の統合・縮小は、国の男女平等政策の後退であり、このような暴挙を許せば、全国各地の女性政策や女性センターも深刻な影響を受けます。
 わたしたちは同じ思いの人たちに呼びかけて、12月13日付けで、「自治体議員41名、団体29団体、市民202名」の連名で「国立女性教育会館が単独存続を求める申し入れ書」を提出しました。
「国立女性教育会館の単独存続を求める申し入れ書」PDFファイル

 独立行政法人改革は、二巡目の閣僚折衝も難航し調整はほとんど進んでいない模様。国立女性教育会館については、自民党三役も12日に存続を求める要望書を提出し包囲網が狭まっています。結論は、12月24日の閣議に持ち越し、福田首相が判断するということです。
 申し入れ書の第一次集約は二日半だったので、引き続き賛同者を募ってほしい、という声もたくさん届いています。そこで第二次として、福田首相(行政改革推進本部長)に焦点を絞って、「ダメ押し」で第二次の呼びかけを開始します。
 超党派で呼びかけていますので、みなさまからさらに輪を広げていただければうれしいです。
 趣旨に賛同される方は、署名をして以下にご返送ください。 
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●呼びかけ人に加わっていただける方は、「呼びかけ人になります」と明記して、「氏名、住所、連絡先(TEL)

、 mailアドレス」をご本人からお知らせください。
 ・賛同者は、自治体議員、市民、団体の3種で集約します。
 ・申し入れの趣旨に賛同される方は、どなたでも参加できます。
 ・申し入れ書提出は、呼びかけ人を特定せず、提出者連名(50音)とします。

●申し入れに参加いただける方は、以下のフォームに①②③④の要件を記入して、
 寺町みどりmidori@ccy.ne.jpまでお送りください。
 ■返信先アドレス■midori@ccy.ne.jp Fax:0581―22―4989
 ■第2次集約期限■12月21日(金)(必着)(翌日午前中に速達で発送します)
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【個人(議員・市民)の場合】(以下必須)
①氏名
②県名(自治体名)
③職業、所属、肩書等
④mailアドレスまたは連絡先(非公表)

【団体の場合】(以下必須)
①団体名
②代表者氏名(代表表記の仕方も)
③所在地・〒住所(非公表)
④所在地電話番号(非公表)

※なお、いただいた個人情報は、申し入れ書提出に限定して使用し、目的外使用はしません。
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●呼びかけ人
寺町みどり(岐阜県「む・しネット」事務局) 小川まみ(前三重県桑名市議会議員) 小川みさ子(鹿児島県鹿児島市議会議員) 呉羽真弓(京都府木津川市議会議員) 小林純子(長野県安曇野市議会議員) ごとう尚子(前愛知県日進市議会議員) 今大地はるみ(福井県敦賀市議会議員)  合田美津子(北海道・女性市民グループ代表)  青木美智子(栃木県小山市議会議員) 小磯妙子(神奈川県茅ヶ崎市議会議員) 五十嵐美那子(神奈川県・生活思想社) 神永れい子(広島県・クオータ制の実現をめざす会) 桑原糸子(神奈川県・かながわ女性会議) 中村彰(メンズセンター運営委員)、寺町知正(岐阜県山県市議会議員)
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高齢女性(1)――高齢女性のかかえる問題

 2005年末の時点で、中国では65歳以上の高齢人口の割合が7.7%になり(1)(日本は20%を越えていますが)、中国も、しだいに高齢化社会になってきています。
 それにともなって、中国でも近年、高齢女性の問題が注目されるようになってきました。今回と次回の2回に分けて、この問題に関する最近の会議などをいくつか取り上げてみます。

一、「高齢保障とジェンダー平等シンポジウム」(清華大学。2006年10月)

 たとえば、2006年10月、清華大学で「高齢[老年]保障とジェンダー平等シンポジウム」がおこなわれています(2)

 このシンポジウムで、中国老齢協会副会長の閻青春さんは、現在の高齢人口のうち、女性は男性より464万人多いと述べています。これは、女性のほうが男性よりも平均寿命が長いからですが、長く生きることは、必ずしも健康で生きられることを意味しません。
 全国婦連女性研究所の研究員の劉伯紅さんは、(1)高齢者には女性が多い、(2)彼女たちが社会の周縁集団になりやすいという二つの理由から、「高齢者問題の核心と実質は、高齢女性の問題である」と述べました。
 中国老齢科学研究センター研究員の徐勤さんによると、都市の男性の高齢者で貧困状態ある人は6.3%にすぎないのに、女性の場合は23.4%であるといいます。農村でも、貧困な高齢者は、男性は17.1%に対し、女性は20.4%に達しているとのことです。

 清華大学老年学研究センター教授の裴曉梅さんは、高齢女性が貧困に陥る原因は、社会保障の欠乏または不足であると指摘しました。現行の高齢者保障は、男性高齢者の87.1%をカバーしているが、女性高齢者については、55.1%しかカバーしていません。
 この点について劉伯紅さんは、世界の多くの国々では社会保障は労働とリンクしているため、労働市場の男女不平等が社会保障にも反映するので、女性は、就労の機会が少なく、賃金水準が低く、非正規部門の労働や家事労働に従事していることも多いため、年金などについても不利であると指摘しました。
 その一方で、政府の労働・社会保険部(日本で言えば厚労省に当たる)の養老保険局局長の焦凱平さんは、先進国のように、遺族手当を社会保険システムに組み込むことを提案しました。

ニ、『中国女性発展報告』より

 高齢女性の置かれているこうした問題点を、王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』の「第11章 高齢[老年]女性」(執筆者:徐勤、伍小蘭、王莉莉)の中から見てみましょう。この章で言う「高齢[老年]女性」は、60歳以上の女性を指すとのことです(中国の「高齢者[老年人]権益基本法」の「高齢者」の定義も60歳以上)。

 この章では、中国の女性の平均寿命が1990年は70.47歳だったのが(男性は66.84歳)、2000年には73.33歳に伸びた(3)(男性は69.63歳)とか、教育程度や収入、生活条件が改善されたとかの明るい面も書かれていますが、現在の問題点としては以下のことが列挙されています(4)。以下、簡単に紹介します。

(一)経済
 1.収入源が単一で、水準が低い。男性高齢者は労働収入や年金がある人が多いが、女性高齢者は、家族の他のメンバーに養われている人が60%である(男性は27%)。
 2.社会保障の程度が低い。都市の高齢者で年金をもらっている人は、男性は85.6%だが、女性は57.7%である。平均月収は、女性高齢者の場合、都市では490元(男性の51.7%)、農村では124元(男性の68.3%)にとどまる。とくにリストラされた女性、障害のある女性、配偶者を失った女性、子どものいない女性は貧困に陥りやすい。
 3.消費水準が低い。都市では、高齢女性の一ヶ月の平均生活費は116.7元で、男性の66.7%、農村では39.3元で、男性の62.5%である。
(二)健康
 1.高齢男性より高齢女性は慢性病にかかっている人が多い
 2.高齢者のうちでも高い年齢の人の人数が、女性は男性よりずっと多く、そのため、高齢女性の日常の生活機能は、平均的に高齢男性より低い。2000年の調査では、都市の高齢者で日常生活活動能力(Activities of daily living; ADL)を喪失した人は、男性3.7%に対し、女性は6.7%で、男性の1.8倍である。農村では、男性6.9%に対し、女性は10.9%で、男性の1.5倍である。
 3.高齢女性の健康状況は悪いのに、持っている医療資源は少ない。公費医療を享受している人は、都市では、男性は72.9%だが、女性は49.8%。
 4.健康状況は悪いのに、高齢女性が医療支出は男性よりずっと少ない。都市では高齢女性の年間医療支出は494.0元で、男性の91%であり、農村ではわずか81元で、男性の61%にとどまる。
(三)社会的地位
 職業に就いている比率も少なく、党員や幹部である比率も、高齢男性より少ない。たとえば、高齢男性では、中共党員である比率が31.5%、民主党派の党員である比率が10%なのに対して、女性はそれぞれ8.0%と0.4%にすぎない。
(四)家庭的地位
 教育程度や就労率、経済的収入が低いため、青年・中年女性や高齢男性よりも地位が低い。
(五)合法的権益
 とくに農村女性や年金がない都市女性の場合、扶養、住宅、財産権、虐待・DV、婚姻の自由(再婚に対する子どもの反対)が問題になる。
(六)社会的適応性
 女性高齢者は、子どものころ教育を受ける機会が男性より少なかったうえ、高齢期になってから教育を受けることも男性に比べて少ない。そのため、詐欺の被害にあったりすることもある。
(七)余暇活動
 テレビと朝のトレーニングくらい。
(八)ケア
 女性の方が配偶者を亡くす率が高いので、配偶者に世話をしてもらえる率は、男性より女性の方が少ない(男性は、都市で75.4%、農村で60.7%であるのに対し、女性は、都市で35.6%、農村で28.7%にずきない)。また、社会的変化によって、伝統的な家族ケアは困難になりつつある。
(九)都市と農村の発展のアンバランス
 高齢女性のうち65.8%は農村に住んでいるが、農村には社会保障がほとんどない。また、農村の一部では高齢者世代の生活扶養については、下の世代に二の次にされている。また、都市では、仕事につきたくてもつけない人が多い。

三、全国婦連高齢者[老齢]工作会議(2006年11月)

 婦女連合会(婦連)も、そうした状況に対応をせざるをえません。
 
 昨年11月、全国婦連は高齢者[老齢]工作会議を開催しました(5)
 この会議で、全国婦連の副主席で、書記処第一書記、全国婦連高齢者[老齢]工作協調委員会主任の黄晴宜さんは、「高齢者女性工作は、婦連の工作の重要な内容である」と述べました。その理由の第一は、「わが国の高齢者人口の中の女性は男性より464万人多く、2049年にピークに達した時には、2645万人多くなり、そのうち50-70%は、80歳以上である」こと。第二は、「高齢者女性の多くは経済的に弱者の地位に置かれており、かなりの部分の人は収入がないか低すぎ、大多数はまだ養老保障制度の外に置かれている」ことだといいます。
 彼女は、各クラスの婦連に、(1)関連する法律や法規の制定に参与して高齢女性の利益を守ること、(2)高齢女性のための法律的援助やサービスを強化すること、(3)高齢女性の特徴にあった文化体育活動をすることなどを呼びかけました。

(つづく)

(1)「超1億,我人口急劇老年化 全国1%人口抽様調査統計結果還顕示,人口流動趨于理性化」『中国婦女報』2006年9月5日
(2)「老年婦女貧困問題亟待関注」『中国婦女報』2006年10月18日「譲老年婦女告別貧困」『中国婦女報』2006年11月27日
(3)先日のブログでも述べたように、2005年現在は74.1歳に伸びています。
(4)王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』(婦女発展藍皮書)(社会科学文献出版社 2006年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)409─416頁。
(5)「全国婦聯老齢工作会議挙行」『中国婦女報』2006年11月6日。全国婦連老齢工作会議は、これが2回目です。第1回全国婦連老齢工作会議は、1999年に開催された全国老齢工作委員会第1回会議を受けて、2000年1月に開催されています(同年3月には全国婦連から「老齢女性工作を強化することに関する意見」[「全国婦聯関于加強老齢婦女工作的意見」←ワードファイル]が出されています)。ですから、それ以来、6年ぶりの会議だったわけです。なお、黄晴宜さんの話はwebで読めます(「学習貫徹党的十六届六中全会精神認真做新形勢下老齢婦女工作」)
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「台湾におけるドメスティック・バイオレンス政策調査研究」報告書(2年前の文献ですが……)

 台湾では、日本よりも早く1998年に家庭内暴力防止[防治]法が制定されたこともあって、台湾のDV政策については、日本でも既にいくつもの文献で取り上げられています。
 戒能民江「台湾家庭暴力防止法から学ぶ」(戒能民江編著『ドメスティック・バイオレンス防止法』尚学舎 2001年の第4章)、「台湾―背景、DV法の概要と実態―」(アジア女性交流・研究フォーラム編『アジアのドメスティック・バイオレンス』(明石書店 2002年の第1章)などがそれです。久野綾子氏の発行するミニコミ『おんなの叛逆』49号(2001年)の特集「台湾のDVとりくみ見聞記」も見逃せません。

 今回、私は、お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」(F-GENS)のサブプロジェクトとして「シングルマザー・DV研究会」が作成した「『台湾におけるドメスティック・バイオレンス政策調査研究』報告書」(+114ページ)を読んでみました。

 本ブログでも取り上げたように、台湾の家庭内暴力防止法は2007年3月に改正されました。
 この報告書は、2005年8月の実地調査をもとにしたものです(発行は2006年3月)。ですから、ちょうど今年の法改正の前夜に当たる時期でして、その頃の状況がわかります。たとえば、巻末資料にも、今年の法改正ついての政府案と民間団体「DV防止法改正連盟」の案との対比表が20ページあまりにわたって収録されています。
 資料についても、さまざまな原資料が掲載されており、貴重だと思います。

 また、この報告書は、ドメスティック・バイオレンスだけでなく、性暴力やシングルマザーの問題についてもかなりページを割いています。

「台湾におけるドメスティック・バイオレンス政策調査研究」報告書・編集委員会編「『台湾におけるドメスティック・バイオレンス政策調査研究』報告書」お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」(F-GENS)プロジェクトA1「アジアにおけるジェンダー政策とその評価に関する研究」発行(F-GENSでこの報告書を紹介しているページ)
 <構成>
はじめに
 目次
 日程と訪問先
 メンバー
Ⅰ 本編
1.台湾DV防止法と改正の動向(戒能民江)
2.台北市のDV対策(戒能民江)
3.高雄市のDV対策(戒能民江)
4.インタビュー調査から
 ①台北県政府家庭暴力及び性侵害防治中心(湯澤直美)
 ②(財)天主教善牧福利基金会(庄司洋子)
 ③国立台湾大学 王麗容教授(湯澤直美)
5.台湾における母子家庭支援政策の動向(湯澤直美)
6.まとめ(戒能民江)
Ⅱ 資料編
1.台湾家庭暴力防治法
2.「台湾家庭暴力防治法」改正案―政府案と改正連盟案
3.地方法院民事保護命令申立事件終結状況等統計資料
4.台北市家庭暴力および性暴力防止センター相談から支援までの流れ
5.台北市DVセンター統計
6.台北市DV被害者権利保障サービスリーフレット
7.高雄市DVセンターリーフレット
8.(財)天主教善牧社会福利基金会組織図
9.(財)天主教善牧社会福利基金会事業内容
10.同基金会 台北市温心家園個別案件の保護指導システム
11.中華民国特殊境遇にある母子家庭補助法
12.中華民国特殊境遇にある母子家庭補助法 附表
13.台北市特殊境遇にある母子家庭補助 資料
14.高雄市ひとり親家庭扶助自治条例
15.中華民国性暴力犯罪防止法
16.性暴力被害への対応マニュアル
17.台北市性的暴力被害者権利保障事項説明リーフレット
18.子どもの性的買売春捜査マニュアル
19.写真集
(調査メンバー:戒能民江、庄司洋子、湯澤直美、田中弘子。翻訳:陳志明、陳君慧、黄齡萱、李軍、星友康、阿部由理香、北川修一、赤松美和子、星純子、金戸幸子)

 私は、今、関西中国女性史研究会の会員らが編訳をする(野村鮎子さんや黄英哲さんらによる編集委員会がリーダーシップをとっています)『台湾女性史入門』の作成に携わっているところですので、この文献も読んでおきたいと考え、F-GENS事務局にお願いしてこの報告書を送っていただきました(送料は負担する必要がありますが、無料だそうです)。
 この問題にご関心のある方は、同事務局にメールで問い合わせてみてはいかがでしょうか?(f-gens@cc.ocha.ac.jp)
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ジェンダー統計に関する初の全国会議

 今年の4月27日と28日、江西省南昌市で「全国ジェンダー統計研究討論会議」が開催されました(半年以上前の話で申し訳ありません)。
 これは、国務院女性児童工作委員会と国家統計局社会科技局、全国婦連女性研究所が共催したもので、ジェンダー統計をテーマにした中国初の全国会議です。国連人口基金とユニセフが資金援助をしました。

 この会議では、国務院女性児童工作委員会副主任で、全国婦連の党グループ書記・副主席・書記処第一書記の黄晴宜さんが「ジェンダー統計は、男女平等という基本的国策を貫徹し、二つの要綱(中国女性発展要綱と中国児童発展要綱)を実施する重要な基礎工作であり、重点的に性別ごとの指標を一歩一歩国家の統計制度に組み込んで、部門の統計と接続させ、さらに正確に二つの要綱の実施進展状況を反映させなければならない」と述べました。

 この会議では、全国婦連女性研究所、中国社会科学院人口と労働経済研究所、ユニセフなどの専門家が発言し、各地の統計関係者も、実際のやり方や経験について意見を交流したとのことです(1)

 こうした会議が開催された背景の一つには、中国政府が国連の女性差別撤廃委員会に提出した報告に対する、同委員会の最終コメント(2006年8月。このブログの記事)があるようです。
 その最終コメントにおいて、女性差別撤廃委員会は、中国政府の報告には、性と地域、民族別のデータが十分に含まれていないことや、そのことが女性差別撤廃条約を履行するうえで障害になっている可能性があることに懸念を表明し、その点を改めるよう勧告していたのです(2)
 実際、国務院女性児童工作委員会の常務副主任の蘇鳳傑さんは、この全国ジェンダー統計研究討論会議について、女性差別撤廃委員会の最終コメントを実行する一環として位置づけています(3)

 この会議では、日本の法政大学経済学部統計研究所の専門家も意見を述べたことが報じられていますが(1)、その専門家というのは、おそらく秦小[にんべんに栗]さんのことだと思います。

 秦さんは、今年2月に発行された『日本統計研究所報』(法政大学日本統計研究所)の35号(27-61頁)に「中国のジェンダー統計データの充実度と改善方向―関連統計調査・ジェンダー統計集・統計分析書の検討を通じて―」という論文を発表しておられます(4)
 この論文の構成は以下のとおりです。
1. はじめに
2. 中国の男女平等促進体制
 2.1 中国の男女平等促進体制
 2.2 中国の主なジェンダー問題と『中国婦女発展綱要(2000-2010)』
3. 中国のジェンダー統計資料の作成過程と現状
 3.1 中国のジェンダー統計資料集およびジェンダー統計分析書の作成過程
 3.2 中国のジェンダー統計資料の指標体系の現状
4. 調査票、報告様式に遡っての検討――労働(有償労働)分野を例に
 4.1 中国の労働統計体系の特徴と問題点
 4.2 各報告様式、調査票及び統計結果表の特徴と問題点
5. 中国のジェンダー統計の整備に向けての提案
 5.1 ジェンダー統計の内容に関する改善方向
 5.2 ジェンダー統計の内容の改善に必要とされる制度体系と各関連機構の役割分担

 秦さんは、1章の「はじめに」で「本論文の課題は、中国における男女平等促進体制と主なジェンダー問題を概観した上で、ECEと日本のジェンダー統計指標を基準にして、中国のジェンダー統計データの充実の度合いを検討し、改善方向を示すことである」と述べます。

 2章では、秦さんは、中国では「90年代から2000年代にかけて、教育、妊産婦の健康などについてのジェンダー問題は改善されてきた。しかし、意思決定についてはほとんど改善されておらず、出生性比、経済参加、社会保障などについての問題はむしろ悪化している」と述べます。
 そのような認識にもとづいて、秦さんは「『中国婦女発展綱要(2000-2010)』は、中国の主なジェンダー問題の多くに対応しているが、①人口性比、非正規労働、職業訓練に対応する目標の導入、②企業の管理層への女性の参加に関する目標の拡大、③目標数値の設などについては、まだ改善される余地がある」と指摘しています。

 3章で、いよいよ秦さんは、現時点で国家統計局が出版した最新のジェンダー統計資料である『中国性別統計資料(1990-1995)』とWomen and Men in China―Facts and Figure―(2004年版)=『中国社会中的女人和男人─事実和数据(2004)』(中国統計出版社 2004年)(ネット書店「書虫」のデータベースの中のこの本のデータ)などのジェンダー統計資料を詳細に検討し、その結果、以下のような知見を導き出します。
 ・分野分割の状況を見る限り、中国のジェンダー統計は比較的揃っているように見える。
 しかし、
 ・時系列の統計が少ない。その理由は主に、個人に関する性別統計の多くが、人口センサスなどの調査間隔の長い資料に依拠していることにある。
 ・性と他の属性をクロスした統計が少ない。
 ・分野ごとに見ると、①「人口構成・変化」の分野については、(秦さんが考える)最重要指標のデータが揃っている。②「世帯、家族、婚姻関係、出産力」「学習・教育」「健康・医療」「意思決定」の分野については、最重要指標と重要指標の一部が揃っている。③「経済活動」「生活時間・無償労働」「社会保障・福祉」「安全・犯罪・司法」については、最重要指標さえ揃っていない。

 秦さんは、「中国のジェンダー統計データについては、男女格差が拡大している労働分野のジェンダー統計に多くの弱点が存在する」と指摘します。
 そこで、秦さんは4章で、労働分野を例にして、調査票や報告様式に遡って検討します。そうしたところ、改善されつつはあるが、重要なジェンダー指標に関する内容が調査票や報告様式に組み入れられていないという問題を発見します。ここでも、非常に突っ込んだ分析がなされてています。

 最後の5章では、秦さんは、中国のジェンダー統計の内容について、改善の方向を示します。まず、労働分野を例にして、報告制度、調査、報告集・統計書のそれぞれについて改善すべき点を示し、次に、『中国性別統計資料(1990-1995)』のような総合的なジェンダー統計資料についても改善方向を提言します。さらに、そのために必要な制度体系と各関連機構の役割分担についても提言なさっています。

 全体として、秦さんの検討は緻密であり、秦さんの提言が今後の中国のジェンダー統計に生かされることを希望します。

(1)「全国性別統計研討会議在南昌召開」(国務院婦女児童工作委員会HP)
(2)「国務院婦児工委簡報2007年第9期」(国務院婦女児童工作委員会HP)
(3)なお、秦さんの第50回(2006年度)経済統計学会での報告要旨はwebでも読むことができます(「中国のジェンダー統計について――労働統計を中心に――」[PDFファイル])
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「館長雇止め・バックラッシュ裁判」宮地光子弁護士の講演

 12月8日、「館長雇止め・バックラッシュ裁判」(原告・三井マリ子さん)(私のHPのこの裁判のページ参照)に関する宮地光子弁護士の講演がありました。

 9月の一審判決に対する簡単な批判は、すでに判決当日におこなわれていますが(遠山日出也「市民感覚との大きなズレ」で報告しました)、この講演では、その時に語られなかった点を中心に、より突っ込んだお話が聞けました。
 以下、やや詳しくご紹介します(ただし、メモや記憶に頼って書いていますので、不正確な箇所もあると思います)。

宮地光子「館長雇止め・バックラッシュ裁判の意味するもの」
   <目次>
はじめに
一、雇止めに関する判例から
二、雇止めに関する原判決の論理とその不当性
 1.雇止めが違法であると言えない理由
 2.法的な権利と言えない理由
 3.不当な目的1─「バックラッシュに屈した」と言えない理由
 4.不当な目的2─非正規雇止め導入のための原告を排除したといえない理由
三、採用拒否に関する原判決の論理
 1.選考手続きにおける不当目的に有無について
 2.選考手続きにおける手続き違反の有無について
四、採用拒否に関する原判決の不当性
 1.採用拒否についての判例
 2.本件採用手続きの趣旨
五、有期雇用をどう規制するか
 1.現行法(略)
 2.ILO条約と勧告の内容
 3.ILO加盟国の義務
 4.労働契約法について

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第1回全国十佳「時代男性」の選出

 『中国婦女報』(北京)、『現代女報』(大連)など、中国の女性紙9紙による、第1回全国十佳「時代(現代的な)男性」選出活動が、昨年の12月から今年8月までおこなわれました。

 この活動は、中国と国連人口基金による「第六周期ジェンダー平等プロジェクト」(2006年~)の一環でもあります。「第六周期ジェンダー平等プロジェクト」は、「リプロダクティブ・ヘルス」「ジェンダー平等」という理念とともに、「男性参与」という理念を重視しています。この場合の「男性参与」とは、リプロダクティブ・ヘルスや家族の養育、家事労働への全面的な参加を意味します(1)

 「時代男性」の選出基準は、以下の点でした。
 1.男女平等意識を持ち、女性を尊重し、思いやっていること。
 2.家庭責任を平等に分担し、家族の発展・調和に重要な貢献をしていること。
 3.自分の職業に立脚して、男女平等と女性の発展の事業を推進していること(2)

 これまで中国では、家族の介護も仕事も頑張っているような「良い嫁(妻)」を表彰することはよくおこなわれてきました。しかし、男性の家庭役割を表彰することは少なかった(一部の地方で、少しおこなわれたことがあるだけ)。
 そのせいでしょう、西安市民の李さんは「こうした活動はなかなかいい。女性を評価して選出することが多すぎ、男性を評価することは本当に少ない。忙しくても、家に帰ったらいつもどおり家事をするような男性を表彰したら、男性中心主義の人に刺激になるだろう」と語っています(3)

 女性/ジェンダー研究者の栄維毅さんは、上記の1.の「女性を思いやる」という基準については、自分だったら、この基準を「女性の言うことに耳を傾ける」と定義すると言います。なぜなら、「愛しているから仕事をさせない」という男性もいるからです。
 けれど、栄さんも、2.の「家庭責任を平等に分担する」という基準は「非常に正しい」と言います。また、3.の「自分の職業に立脚する」という基準については、単に「妻の身の回りの世話をしたり、きちんと子どもの世話をすれば、いい男だ」というような考え方と違って、現代的で良い基準だと述べます(4)

 各地でさまざま形で選出活動が繰り広げられた末、最終的に次の10人の男性を全国の「時代男性」に選出しました(5)

郎景和(北京協和医院産婦人科主任)
 産婦人科医療に尽くし、すぐれた業績。また、一人ひとりの患者を平等に尊重した。(6)
李建華(雲南省薬物依存防止研究所副所長)
 ジェンダー視点でエイズや性病、薬物依存の防止をおこなう(7)
李中華(空軍某試験飛行団副団長、空軍大佐)
 危険な試験飛行の仕事を長年やりつつ、家にいるときは妻を思いやり、家庭の仕事も分担する。妻も夫に尽くす(8)
馬李(徐州市家庭内暴力庇護センター主任)
 DV被害者に食や住まいを提供し、心理相談や法律援助もおこなう「徐州モデル」を作る(9)
施崋山(江西省貴渓市公安局流口派出所政治指導員)
 誘拐されて売り飛ばされた女性や子どもを、危険を顧みず全国各地で180人救出。
韓偉(大連韓偉企業集団理事長)
 「中国の鶏王」と呼ばれる農民企業家。妻の許淑芬(世界のアワビ王)とお互いに支え合って、養殖業で成功。
劉日(山西潞鉱業集団常村炭鉱副隊長)
 23年間、妻とも協力して、妻の父母を介護しつつ、仕事でも優秀な成績を収める。
李明舜(中華女子学院副院長)
 婦女権益保障法の改正や家庭内暴力防止法の建議稿を作成にジェンダー視点で取り組む。中国初のホワイトリボン運動の発起人にも(10)
田輝(宝鶏市疾病予防制圧センター伝染病予防治療課長)
 PKOでハイチに行った妻の李華が任務を遂行できるよう、家庭と子どもを支える。
傅勝龍(娄底大漢集団理事長・総裁)
 会社内で「調和[和諧]家庭」構築の活動をすすめる(十佳和睦家庭や模範夫、良い嫁の表彰など)。家庭でも妻や家族を思いやり、大切にする。

 ただ、彼らを紹介した文を読むかぎりの話ですが、以下の点が気になります。
 (1)従来の男女を逆にしたにとどまる感が強いものもある(李中華、劉日、田輝)。その中には、国家や軍事への貢献が強調されている例もある(李中華、田輝)。
 (2)(1)の点とも関連するが、家族単位の調和を強調する傾向がある。選出基準自体にも「家庭の調和」という言葉が掲げられてており、「調和家庭」の構築活動も表彰の対象になっている(傅勝龍)。この意味で、現在の婦連の活動の枠内にとどまっている面もある。
 (3)仕事関係の表彰でも、『中国婦女報』の記事を読んだだけでは、いまひとつ男女平等やジェンダーの観点がよくわからないものもある。

 しかし、いずれにせよ、全国規模で男性の家庭役割や男女平等への貢献を表彰したのは恐らく初めてのことであり、新しい動きだと言えると思います。

(1)「男性参与是主題 性別平等是目標」『中国婦女報』2007年2月14日。
(2)「誰是我們尋找的“時代男性” 全国9家女性報媒聯手挙辨評選活動,推動広大男性参与性別平等事業」『中国婦女報』2006年12月1日。
(3)「“時代男性”尋找活動進入中期」『中国婦女報』2007年1月16日。
(4)栄維毅「什麼是好男人」『中国婦女報』2007年2月16日。
(5)「中国首届十佳“時代男性”評選進入公示階段」『中国婦女報』2007年8月8日「中国首届十佳“時代男性”当選人物公示」『中国婦女報』2007年8月8日「“時代男性”感言:真情流露那一刻」『中国婦女報』2007年8月21日
(6)「郎景和:給治婦女是善良表達」『中国婦女報』2007年3月20日。
(7)「李建華:一家防艾工作者性別視角」『中国婦女報』2007年3月12日。
(8)「李中華:試飛譲我更愛妻子」『中国婦女報』2007年3月15日。
(9)「馬李:我的工作就是為了消除家暴」『中国婦女報』2007年3月7日。
(10)「李明舜:性別意識給了他“第三只眼”」『中国婦女報』2007年3月17日。
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Author:遠山日出也
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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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