2007-11

「中国女性発展要綱」の中期評価報告

 今年5月、国務院女性児童工作委員会は、「『中国女性発展要綱(2001─2010年)』実施情況中期評価報告」を発表しました(「《中国女性発展綱要》(2001─2010年)実施情況中期評估報告」←ここからPDFファイルが取り出せます。英文もあります)。[→追記:リンク切れなのでこちらから]。

 「中国女性発展要綱」というのは、女性の発展の全体的な目標、優先する領域、主要な目標、そのための措置を定めたものです。北京で世界女性会議がおこなわれた1995年、国務院女性児童工作委員会が、はじめて1995年から2000年までの「要綱」を作成しました。今回評価の対象になったのは、その次に作成された2001年から2010年までの「要綱」です(「《中国女性発展綱要》(2001─2010年)」)→[追記:リンク切れなのでこちらを]。

 しかし、この評価をしたのも国務院女性児童工作委員会だからなのでしょうか、やはり、以下に見るように甘い評価になっています。

目標の達成状況
 この報告は、目標の達成状況については、数量化できる指標として以下のものを挙げて、評価しています。
 以下のカッコ内は(2000年の数値→2005年の数値:2010年の目標)の順です。また、単位が書いていない数字の単位は「%」です。

1.期限前に目標に到達した指標(28項目)
 ・社会全体において女性の就業人員が占める比率(46→45.4:40以上)
 ・養老・医療・失業・労災保険に参加している人数(それぞれ、10448万人→17487万人、2863万人→13783万人、10408万人→10648万人、4350万人→8478万人:平等な権利と機会を保障する)
 ・農村の貧困人口(3209万人→2365万人:減少させる)
 ・都市の最低生活保障人数(403万人→2234万人:増やす)
 ・農村の最低生活保障人数(300万人→825万人:増やす)
 ・全国人民代表大会常務委員会の女性比率(12.7→13.2:向上させる)
 ・全国政治協商会議常務委員会の女性比率(10→11.4:向上させる)
 ・全国政治協商会議の女性比率(15.5→16.8:向上させる)
 ・省(部)クラスの女性幹部比率(7.8→10.3:向上させる)
 ・地(級)クラスの女性幹部比率(11→12.9:向上させる)
 ・県(処)クラスの女性幹部比率(15.8→17.2:向上させる)
 ・女性幹部比率(36.2→38.5:向上させる)
 ・居民委員会の女性委員比率(59.1→53.1:一定の比率を占める)
 ・小学適齢女子児童の純入学率(99.07→99.14:99)
 ・小学女子児童の5年強固率(94.48→98.5:95)…1年生が退学せずに5年生になれた比率
 ・初級中学への女子児童の粗入学率(88→94.5:95)
 ・女性の平均寿命(73.3歳→74.1歳:向上させる)
 ・妊婦の産前の医学検査率(89.4→89.8:向上させる)
 ・農村の妊産婦の病院出産率(65.2→81.0:65) 
 ・計画出産の知識の普及率(60→80:80以上)
 ・法律援助機構の数(1582ヶ所→2600ヶ所:女性に法律的援助を提供する)
 ・法律援助を得た女性の数(41107人→76257人:女性に法律的援助を提供)
 ・農村の飲料水の安全の普及率(59.2→66.9:向上させる)
 ・農村の衛生便所の普及率(44.80→55.31:向上させる)
 ・都市の汚水処理率(34.25→51.95:45)
 ・大気環境の目標を達成した地クラス以上の都市の比率(41.8→54.1:向上させる)
 ・水環境の目標を達成した地クラス以上の都市の比率(42.2→52.3:向上させる)

2.達成が望める指標(3項目)
 ・都市の労働者の生育保険のカバー率(26→46.1:90以上)
 ・成人女性の識字率(86.53→83.85:85以上)
 ・女性の青壮年の識字率(96.11→94.7:95)
 (識字率に関する2項目は、2000年と2005年とでは基準が異なります)

3.まだ目標に到達していない指標(10項目)
 ・女性労働者の特殊な労働保護規定を執行している企業の比率
  四期の労働保護の規定を執行している企業(95→34.9:保障する)
  女性労働者が従事してはいけない労働の規定を執行している企業(85→29.7:保障する)
 ・全国人民代表大会の女性比率(21.8→20.2:向上させる)
 ・省政府の指導グループへの女性幹部配備率(64.5→87.1:100)
 ・市(地)政府の指導グループへの女性幹部配備率(65.1→82.6:100)
 ・村民委員会のメンバーの女性比率(15.7→16.7:一定の比率を占める)
 ・婚前医学検査率(64.55→2.93:都市80、農村50)
 ・妊産婦死亡率(53.0人→47.7人:39.75人)(10万人中)
 ・全国でその年に報告された女性のエイズウイルス感染人数(1008人→9861人)
 ・その年の性病の報告例数(35.8万→32.5万)

4.データがない指標(4項目)
 ・高級中学段階の女性の粗入学率(?:75)
 ・高等教育の女性の粗入学率(?:15)
 ・都市のゴミの無害化処理率(?:向上させる)
 ・女性が自分で支配する時間(?:増加させる)

 上記からは、たしかに様々な面で中国女性の状況は改善されていることがわかります。こうした面はきちんと見なければならないでしょう。
 しかし、ご覧になればわかるように、この評価には次のような問題があると思います。

 第一に、もともとの数値目標が非常に甘いということです。
 まず、「向上させる」としか目標が書かれていない項目が多い。「目標を達成した」とされている指標の多くは、そうした項目です。
 また、2000年の時点ですでに達成されている数値が目標として掲げられている項目もあります。たとえば「社会全体において女性の就業人員が占める比率」という項目は、「40%以上」という目標が掲げているのですが、2000年の時点で、女性の就業人員はすでに46%を占めていました。2005年は45.4%であり、むしろ僅かながら低下しているのですから、これで「目標達成」とするのは、もともと女性の就労を重視していない現われでしかないように思えます。そうした項目は他にいくつもあります。
 この報告も、「要綱を制定したときに設定した個々の目標は、指標を実際の状況にもとづいて適当に調整しなければならない」ということは述べているのですが……。

 第二に、指標が適切かどうかということです。
 まず、重要な指標がたくさん抜けています。たとえば男女賃金格差は、男女差別を考える際、誰もが思い浮かべる最重要の指標だと思うのですが、入っていません。その直接の原因は、全国的な公的統計がないということだと思うのですが(婦連による調査や研究者による調査はもちろんある)、そのこと自体、この問題が政策的に重視されていないことの現われだと思います。
 逆に、女性の地位向上を示す指標として適切かどうか疑わしいものが少なくありません。まして「婚前医学検査」ともなると、政策的にも2003年には義務ではなくなり、実際、検査を受けている人の比率も大幅に低下しているのですが、この報告は、なお、「出生の欠陥発生率を低める」ために受診率を向上させるべきことを唱えています。
 どうも全体として、中国政府の言う「女性の発展」というのは、「男女差別をなくす」ということとは、かなりズレがあるようです。この点は、中国が発展途上国だということとも関わるでしょうし、日本と同じ基準で判断してはならないのはもちろんですが……。

領域ごとの進展状況
 この評価報告は、領域ごとの進展状況については、以下のような見出しを掲げて説明しています。
(一)女性と経済
1.女性の就業人数が増加し、就業構造に変化が起きた。
2.女性は男性と平等な労働と社会保障の権利を享有している。
3.農村の貧困な女性は減少し、都市と農村で最低生活保障を得ている人数は大幅に増加した。
(二)女性の政策決定と管理への参与
1.全国の女性の人民代表の比率はやや減り、女性の政治協商会議の委員の比率は増えた。
2.各クラスの女性幹部の比率は高まり、省・市・県クラスの党と政府の指導グループへの女性幹部の配備率は上昇した。
3.女性が基層のコミュニティの管理に参与する比率は上がったり下がったりで、農村女性の参政比率は依然として低すぎる。
(三)女性と教育
1.9年制義務教育がカバーしている面はさらに拡大した。
2.高等教育を受ける女性の人数と比率は、増え続けている。
3.女性の識字率は着実に向上し、男女の教育を受ける平均年数の差は縮小した。
(四)女性と健康
1.妊産婦死亡率は下降し、女性の平均寿命が上がった。
2.女性が計画出産の権利はさらに保障された。
3.エイズウイルスの感染人数が急速に増大し、女性の感染比率が上昇した。
(五)女性と法律
1.男女平等を促進する法律法規がさらに整った。
2.女性労働者の権益を保護する工作が不断に強まっている。
3.女性の人身の安全がさらに保障された。
4.女性のための法律援助サービスがさらに強まった。
(六)女性と環境
1.女性の生活環境がいくらか改善された。
2.女性の発展の社会的世論の環境がさらに整った。

 たしかに、上のような面もあるのですが……。
 その他、この報告は、このかんの政策の前進面や問題点などにも触れていますが、やはり肯定的な側面に大きく偏った記述になっています。

報告が指摘する問題点
 ただ、この報告は、上の数値や見出しにも示されているように、問題もいくつか指摘しています。 
 ・全国人民代表大会の女性代表の比率がやや低下した(21.8%→20.2%)。
 ・女性が基層のコミュニティの管理に参与する比率の問題。全国の居民委員会の女性委員の比率はやや低下した(59.1%→53.1%)。また、全国の村民委員会の女性委員の比率は16.7%であり、2000年より1%上昇したが、男性よりはるかに低い。また、都市よりもはるかに低く、農村人口の性別構造と合致していない(男性は都市に出稼ぎに行く人が多いので、農村人口は女性の方が多い)。
 ・妊産婦死亡率は、2000年には10万人中53人だったのが、2005年には47.7人に低下したが、このままでは、2000年の1/4にするという目標の達成は難しい。
 ・衛生部門の統計によると、女性のエイズウイルス感染者が2005年に、3万9838人に達した。これは、感染者全体の27.6%であり、このパーセンテージは、2000年に比べて11.3%増えている。

 2011年には「中国女性発展要綱(2001─2010年)」の「終期監測評価報告」も出されることと思います。
 この前の「中国女性発展要綱(1995─2000年)」の「終期監測評価報告」はかなり詳しいもので、女性の「労働権益」と「女性の健康水準の向上」の点では、「目標は未達成」という評価を下しました(「《中国女性発展綱要》(1995─2000年)終期監側評估報告」)[→追記:リンク切れなのでこちらへ]。農村の土地請負権のジェンダーによる不平等や女性の労働保護の弱まり、妊産婦死亡率の高さなどが問題になったのです。
 今回はどうなるでしょうか?
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女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDV調査プロジェクトはじまる

 今年9月から、「女性同性愛(バイセクシュアル)DV状況調査および反DVハンドブック作成」プロジェクトが始まりまりました。このプロジェクトのブログもできました(「女同(双)性恋者家暴調査」)。

 このプロジェクトは、来年9月までに、北京・上海・成都・昆明などで女性同性愛者(バイセクシュアル)にDVについてのアンケート調査やインタビューをおこない、その報告を作成するとともに、レズビアンたちのための反DVハンドブックを作成するものです(「什麼是女同(双)性恋者家暴調査」)。
 このプロジェクトを執行するのは、北京同語女性同性愛コミュニティ活動グループ(北京同語女同社区工作組)です(「同語」というのは、「同(性愛の)女」に音が通し、また「共同の言語」という意味もある)。ほかに、北京レズビアンサロンネットワーク(北京拉拉沙龍網絡)やLES+工作組、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターも参加します。DV関係の人々も協力します(「項目領導及参与者」)

 このプロジェクトは、「大多数の人はDVを『男性から女性への暴力』と定義しているために、同性愛のパートナーが受ける暴力と、異性婚においてレズビアンやバイセクシュアルが受ける暴力のような問題は忘れ去られている」と指摘します。
 ここで言う、女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDVとは、以下の2つを指します。

 1.女性どうしの親密な関係における暴力
 このプロジェクトの人の友だちにも、以下のような事例があるとのことです。
 ・北京のある女性は、同性愛パートナーと別れようとして、住んでいる所に閉じ込められて、外と連絡が取れなかったため、窓を割って逃げるしかなかった。
 ・同性愛パートナーに殴られ、人身の自由を制限された。加害者は自傷行為をすることもあったが、被害者はDV反対組織に助けを求められなかった。

 多くのレズビアンやバイセクシュアルは、自分がそうした性指向を持っていることを知られることを恐れているので、暴力をふるうパートナーから「おまえがレズビアン(バイセクシュアル)であることをばらすぞ」と脅されることもあるといいます。そして、そうされても、一般のDV電話相談は同性愛の問題に無理解なので、相談しにくいそうです。実際、「私はDV被害にあっている同性愛者だ」と言ってDV電話相談に相談しても、ソーシャルワーカーは、同性愛者の立場に立った回答をしてくれなかったとのことです。

2.異性婚においてレズビアンが受けるDV
 多くのレズビアンによると、父母は、娘がレズビアンであることを知ると、罵ったり、侮辱したり、殴ったり、監禁したりして彼女たちを改造しようとするといいます。長い間、親と対峙していると心身が傷つき、その結果、自殺を試みる人もいるとのことです。また、夫から暴力を受ける人もいます。
 たとえば――
 ・黒龍江省七河台市のある37歳のレズビアンは、女性どうしの親密な関係のために、家族に捨てられ、仕事もない。
 ・山東省のある農村のレズビアンは、結婚させられそうになって逃げようとした。けれど、無理やり結婚させられ、性関係を強要された。彼女は逃げようとしたが、夫や家族に殴られ、人身の自由を制限された。
 ・ある広東のレズビアンの医者は、自分はレズビアンであることを言って夫と離婚しようとしたら、夫に殴られた。夫は、彼女の職場にまで行って、脅したり罵ったりした。

 以上のような状況に関しては中国では研究もなく、サポートもおこなわれていないので、このプロジェクトを開始するとのことです(以上は、「認真対待女同(双)性恋者遭受的家庭暴力――一個幾乎未被認識到的社会問題」)

 すでに香港のレズビアン団体、香港女同盟会などは、2006年12月から2007年2月にかけて「同性パートナーDV研究アンケート調査」をおこないました(「香港女同盟会:『同性伴侶家庭暴力研究問巻調査』報告」)。
 香港政府は「香港は同性婚を認めていないので、DV防止条例も同性間には適用されない」と言っているそうです。しかし、同性婚は認めていなくても、DV防止法が同性間にも適用される(ように改正した)国や地域はあります(ニュージーランド、オーストラリアなど。近隣でも、フィリピン、台湾)。

 香港でのアンケート調査は、DVは同性パートナーの間にも存在しているのみならず、問題が深刻であることを明らかにしています(なお、この調査は、男性カップルについての調査も、3割程度含まれています)。たとえば――
 ・33%の人は、パートナーからDVを受けた経験がある。16%の人は「身体的暴力」「持続的な言語による辱め罵り」「精神的虐待」「行動の監視・コントロール」「性侵犯」をやった経験がある。
 ・女性カップルの場合だと、多いのは、「持続的な、言語による辱め罵り」「精神的虐待」「薬物による治療は必要でない身体的暴力」の順である(男性カップルだと、「友だちや家族に会ったり連絡したりすることを禁止する」「医者による治療必要な重大な身体的暴力」「同性愛者の活動への出席を禁止する」の順)。
 ・同性どうしの場合、体格の差が小さいせいか、20%の人は反撃している。
 ・同性パートナー間に独特のDVとして、「同性愛者(バイセクシュアル)であることをばらす」という脅迫や「同性愛者の活動に出席するのを禁止する」というものがある。
 ・世間には同性愛に対する偏見があるために、DVを受けても、74%の人は友だちや家族に訴えなかった。17%の人だけが親友に訴えた。DV電話相談に相談したのも、219人中、たった1人である。
 彼女(かれ)らは、むしろ同性愛組織に電話したいが、そうした組織の大部分は会の住所もなく、専従もおらず、限界がある。

 このプロジェクトを終了した後は、続いて、以下のようなことをやる計画のようです。
 ・各地のレズビアン(バイセクシュアル)コミュニティが、DV反対活動に取り組む。
 ・女性問題をテーマにした会議の時は、レズビアン(バイセクシュアル)も討論の議題にして、女性問題やDV問題の専門家にそうした問題を理解してもらう。
 ・テーマと関係した文化芸術活動(話劇など)をおこなう。
 (「后続活動計劃」)。

 たぶんDVの問題は、単純な意味での男性と女性の問題ではなく、(伊田広行さんの言葉を使えば)「カップル単位」的な考え方や制度の産物でもあるので、同性間でもこうした問題が起きるのでしょう。ただし、上の「2.異性婚においてレズビアンが受けるDV」は、男性の女性への暴力の場合が多いと思いますが……。
 また、レズビアンの女性は、女性であることと同性愛者であることの二重の差別に苦しんでおられるということでしょう。
 いずれにせよ、中国のレズビアンの人々は、こうした活動もすでに始めているということです。

[追記]
 2009年7月、レズビアンのための反DVハンドブックが完成しました。→本ブログの記事「レズビアンのための反DVハンドブック刊行」参照。
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ウイグルの人権活動家・ラビア・カーディルさん大阪で講演

 先日私のブログで述べた、ウイグルの人権活動家のラビア・カーディルさんの大阪での講演会に、昨日、行ってきました。

 会場には、満員の50人以上の方が詰め掛けており、椅子が足りなくなるほどでした。
 ラビア・カーディルさんは、張りのある大きな声で話され、その講演はたいへん迫力のあるものでした。獄中ある子どもたちのことを語った際には、涙も流しておられました。
 以下、だいたいの内容を紹介しますが、メモに頼って書いたので、不正確な部分もあることをご了承ください。

 私の祖国の本来の名前は東トルキスタン。1949年にトルキスタンは、ソ連と中国に分割され、それ以来、私たちは50年以上、中国共産党の侵略の下で暮らしています。チベットとは地理的にも続いていますが、その運命も同じです。西トルキスタンはソ連が解体したときに独立しましたが、東トルキスタンは、まだ中国の一部です。
 私たちには、自分たちの歴史、言語、文化があります。中国とはつながりがありません。本来なら、自分たちの祖国や文化、言語を持てるはずです。

 中国が侵略してきたとき、現地の漢族は、軍人と軍人の家族だけで、人口全体の2%程度にすぎませんでしたが、「新疆ウイグル自治区」を立ち上げました。
 1954年に、まずウイグルの中の金持ちが、「西洋主義(?)」というレッテルを貼られて逮捕されました。1957年には、知識人や宗教家が「民族主義」というレッテルを貼られて逮捕されました。1966年と68年には、ウイグルで役職を持っている人が取り締まられました。

 自分の家庭に起こったことをお話しします。私はアルタイの商人の家庭で生まれ、幸せで平和な暮らしをしていました。しかし、だんだん平和な暮らしでなくなっていきました。
 まず、集中的に住んでいたウイグル人を分散させる政策が取られました。毎日のようにトラックが来て、近所の人をあちこちに連れて行くのです。私の家の前にもトラックが来ました。どこに行くのかや、何のために行くのかということも知らされませんでした。こうして私たちは、タクラマカン砂漠の中のアクスという町に移住させられました。
 当時私は13歳でしたが、教育の場も、近所の人も、故郷も失いました。

 その後いろいろありましたが、1978年以降、改革開放政策がはじまり、私は商売を始めました。中国共産党の侵略の結果、ウイグル人は、経済力も、教育も、独自の文化も、宗教的な価値観も奪われました。
 私の商売は成功し、中国の十大富豪の中の七番目にまでなりました。そこで、私はそのお金で学校を開き、奨学金も出して、ウイグル人の教育や文化のために努力しました。
 次に、私は政治の世界に入りました。自治区や全国の政治協商会議の委員になって、トウ小平や江沢民の前でも演説して、教育や経済、文化の面での民族の平等を訴えました。当時、私は、北京がウイグルの現地の状況を知らないことに問題があるのだと考えていたのです。

 しかし、ソ連が崩壊した時にウイグルの親戚の民族が次々に独立したことに危機感を抱いた中国は、そのころ、むしろ体制を厳しくしたのです。
 1997年にグルジャという町で、1万人を越す人がデモをしました。手に武器を持っていた人はおらず、平和的なデモでした。しかし、中国は軍隊で鎮圧しました。現場で407人の人が殺され、逮捕された人は6万人を越えました(デモに行った人の親戚や友人まで逮捕したのです)。行方不明の人は8000人を越えます。
 それからしばらく経って、トラックで引き回したうえでの、公開処刑がおこなわれました。
 当時、国際社会は何もしてくれませんでした。

 2003年には、ウイグル人が教育の場で、ウイグル語を使うことが禁止されました。
 2006(2000?)年からは、7-16歳の子どもたちが一年に数千人、内陸の方に連れて行かれて教育を受けさせられています。なぜ、自分たちが、自分の故郷で、自分たちの言語で教育をできないのでしょうか?
 1987年以降は、計画出産によって、人口が減らされました。その一方で、ウイグルには大量の漢人が移住しているのです。これは、民族を消滅させる政策です。

 2006年6月からは、ウイグル族の各家庭の娘を、内地に労働に行かせる政策が取られるようになりました。「就職させる」という名目なのですが、数百万人の漢人がこちらに来て就職しているのに、なぜなのでしょうか? はじめは「16歳から25歳までのきれいな娘」という条件でしたが、きれいな娘がいなくなったからでしょうか、最近は「きれいな」という条件を外しました。政府が発表した数字でも、1年間にカシュガルだけで24万人を行かせたそうです。娘を行かせないと取り締まられます。

 また、ウイグルでは核実験が45回以上おこなわれました。すぐ近くに人が住んでいる場所でするので、多くの人が死に、出生児の異常も多いです。政府の内部資料でも70万人の人が命を落としたということです。

 ウイグル自治区は、中国で唯一、政治犯を死刑に処している地区です。2004年9月14日に現地の政府のトップ・王楽泉が「2004年1-7月に、22の組織のメンバー55人を死刑にした」と言いました。
 最近は、私たちは「テロリスト」というレッテルを貼られるようになりました。

 私が逮捕されて6年間監獄にいました。2年間は真っ暗な部屋で過ごしました。当時は「民主はこの世の中に存在しない」と思ってきましたが、アムネスティをはじめとする国際組織の力で釈放されて、少し考えが変わりました。
 しかし、私が中国に残してきた5人の子どものうち、2人の子どもは9年の懲役、1人の子どもには7年の懲役に処せられました。他の子どもや孫も監視下に置かれています。
 オリンピックを控えて内情を知られるのを恐れるからか、今年5月から、ウイグル人のパスポートは強制的に回収され、国外に出さないようにされています。

 ウイグルは資源が豊富で、天然ガスや石油が出ます。しかし、わが祖国の資源は、剥奪されています。農民の土地も、内地から来た人に奪われています。

 私は訴え続けて、国際社会を動かします。
 日本になぜ来たか? 日本には親密感を抱いていますし、日本はアジアで唯一民主主義が進んだ国です。行政に圧力をかけてもらいたい。アジアにおける人権・民主のため、日本が先頭に立って何とかしてほしい。
 この21世紀は人権問題が重視される世紀です。アメリカ・ヨーロッパではかなり反対をおこなっている。皆さんを通じて、行政に圧力をかけてほしい。

 以上がラビア・カーディルさんの講演の大まかな内容ですが、グルジャでのデモと核実験については、水谷尚子『中国を追われたウイグル人』(文春新書 2007年)の第三章「イリ事件を語る」と第四章「シルクロードに散布された『死の灰』」に、それぞれ詳しく書かれています。

 また、若い女性が就労のために連れ出される問題については、世界ウイグル会議のサイト(日本語版が最近出来ました)に日本の各新聞の記事が紹介してあり、とくに朝日新聞と産経新聞に、以下のように詳しく書かれています。
 「カーディルさんの説明では、自治区政府は、06年から就職あっせんとして、ウイグル人の未婚女性を山東省などの都市に派遣し始めた。派遣先の縫製工場やナイトクラブなどでは外出が禁止され、月給は約束の4分の1しか払われない。今年7月には自治区内で、娘の返還を求める親らのデモがあったという。
 中国国内のウイグル人は約840万人。カーディルさんは、働きに出たウイグル女性と漢族男性の結婚が増える可能性も指摘し、『漢民族に同化させ、民族を消す手段。弾圧が一歩進んだ』と強く批判した。」(『朝日新聞』2007年11月9日)
 「昨年だけでも合計24万人の女性のウイグル女性が北京・天津・青島などの都市になかば強制的に移住させられ、苛酷で安価な工場労働などに就かされているという。ウイグル人口を減らし、漢民族の女性不足をおぎなう冷酷な政策の一環として、総計40万人のウイグル女性を移住させる計画だとされる。」(『産経新聞』2007年11月11日)。

 私は、日本は、欧米に比べて、こうした国内外の少数民族の人権のための運動も弱いように思います。
 上で簡単に紹介したラビアさんのお話からわかるように、これは、きわめて深刻な問題です。中国国内で少数民族の人権のための運動をすることは、今は不可能に近いのですから、国際世論などの力で圧力を掛けるしかないと思います。もちろん、日本の対外援助にも民衆の視点やジェンダーの視点だけでなく、こうした少数民族の視点も必要でしょう。

 昨日の講演会では、中国政府への抗議はがきなども配布され、さっそく私も書きましたが、今後ともこうした問題に関心を払うとともに、できることをやっていきたいと思います。

[追記]
 コメント欄でお知らせいただいた「東トルキスタンに平和と自由を…」のサイトに、東京講演の報告が掲載されています。大阪講演では話されなかったことや、私がきちんとメモできなかったことも書かれていますので、こちらもご覧ください。
 ウイグル女性の域外就労問題に関しても、このサイトが産経新聞の詳しい記事を紹介していらっしゃいます(「ウイグル女性の強制移住」)
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リプロダクティブ・ヘルスに対する取り組みを述べた書

 中国といえば「一人っ子政策」。「リプロダクティブ・ライツ/ヘルス」の理念とは相容れないイメージがあります。
 実際、中国の女性問題研究者らが著した『中国女性発展報告[中国婦女発展報告] No.1(´95+10)』(王金玲主編)も、「リプロダクティブ・ヘルス」概念について、次のように述べています。
 「この概念の内包は、女性と男性の生殖の権利を著しく強調しており、出産をするか否かや、いつ出産するかを自由に決定してよく、子どもの数を自由に決定してよいということを含んでいる。リプロダクティブヘルスの内容は、人口のコントロールを厳格に実行している中国に対して、間違いなく厳しい挑戦である」(肖揚)(1)
 同書の第3章「女性と健康」では、中国の現状の数々の問題点とともに、そうした挑戦を受けた中国の政府や婦女連合会、研究者、NGOの取り組みがかなり詳しく書かれています。この章を読むと、計画出産ひとつとっても、単純な行政的方法だけでなく、サービスや女性の地位向上を重視する方向へ変わりつつある面もいくらかはあるようです(もちろん政府の対応などは、かなり形式的なものにとどまっていて、深刻な事件も起きていますが……)。

 さて、中国の婦女連合会などの、そうした「リプロダクティブ・ヘルス」に対する取り組みを述べた単行本が、次の書物です。

 朱明若主編『中国女性のリプロダクティブヘルスの促進――ニーズの評価から政策の発展へ[中国婦女生育健康促進――従需求評估到政策発展]』(中国社会出版社 2005年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)

第1章 序論(朱明若)
リプロダクティブ・ヘルス篇
第2章 グローバル化の趨勢と女性のリプロダクティブ・ヘルスの促進(朱明若・李佳)
第3章 グローバル化の中国女性の健康に対する影響(劉伯紅)
第4章 ジェンダーとリプロダクティブ・ヘルス政策の促進(杜潔)
健康促進篇
第5章 健康の基本概念と健康の決定要素(朱明若・顔茹)
第6章 公衆衛生の趨勢と発展(朱明若)
第7章 公衆衛生における住民参加(朱明若)
方法篇
第8章 ニーズ評価の意義と方法(朱明若・馬冬玲)
第9章 プロジェクトの発展と評価(朱明若・張永英)
政策篇
第10章 リプロダクティブ・ヘルス政策:理論と国際的趨勢(朱明若・呉昭原)
第11章 「中国女性リプロダクティブ・ヘルス政策提案(草案)」の形成(呉菁)
実践篇
第12章 「中国女性リプロダクティブ・ヘルスプロジェクト(第三期)」実践総報告(杜潔・呉菁・馬冬玲) 
反響篇
第13章 リプロダクティブ・ヘルスと私たち
参考文献
附録 中国女性リプロダクティブ・ヘルス資源索引

 この本によると、中華全国婦女連合会女性研究所は、1992年から、フォード財団の援助を受けてリプロダクティブ・ヘルスについての研究を開始しました。それは、次の3期に分かれるということです。
 第一期(1992年2月~1993年末):注意の喚起と問題の発見
 第二期(1994年2月~1997年9月):人材の育成と研究の実践
 第三期(2001年~2004年):普及と政策の発展

 この本は、第三期の成果について述べたものです。
 第三期は、女性研究所副所長の劉伯紅さんが責任者として指導をし、イギリス留学から帰ってきた国際室主任の杜潔さんがプロジェクトを管理し、呉菁さんが協力したそうです。
 オーストラリアのグリフィス大学の教授で、同大学の環境と人口研究センター主任の朱明若(Cordia Chu)さんも大きな役割を果たしており、この著作でも、かなりの部分も執筆しています。

 この本は600ページ余りある大部な書物であり、私はまだ少しめくってみただけですが、パッと見て私が興味深く思ったのは、以下の箇所です。

 第4章の第2節で、杜潔さんは「中国のリプロダクティブ・ヘルス政策・策略に対するジェンダー分析」をしています。
 杜さんは、母子保健に関しては、中国は1950年代から母子保健や避妊技術指導を重視しており、当時は世界でも比較的先進的だったと言います。けれど、1980年代の国家の経済改革によって、母子衛生への投資が削減されたことを指摘します。また、優生優育によって知力や身体の資質を発展をはかるにとどまったという限界も述べます。
 また、計画出産に関しては、女性の全面的発展を軽視したために、批判に遭ったと述べます。

 1994年のカイロ会議の「リプロダクティブ・ヘルス」の提起を受けて、中国でも「女性のエンパワメント」や「女性を中心にしたリプロダクティブ・ヘルス」という理念が唱えられ、法律的にも、たとえば「人口と計画出産法」では、「人口と計画出産工作をおこなうには、女性が教育を受ける機会や就業する機会を増やし、女性の健康を増進し、女性の地位を向上させることと結び付けなければならない」という規定が盛り込まれたりしたという変化を指摘しています。

 けれども、杜さんによると、現在の中国の法律や政策の規定には、以下の限界があるとのことです。
 (1)女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する条項や措置の大多数は、婚姻・家族や母子保健の大枠の中に置かれている。
 (2)現行の女性のリプロダクティブ・ヘルスに関する条項の多くは、出産・育児期段階の女性に対するものに限られている。
 (3)現行の多くの条項は、みな女性を保護するという角度から出発していて、女性を弱者と仮定しており、女性の人権を保障するという地点にまで到達していない。
 (4)現行の女性に向けられた政策、たとえば「中国女性発展要綱」の中で規定されている女性の健康の措置と指標は、まだ国家のマクロな社会・経済政策の主流に入っていない。

 また、第11章では、「中国女性リプロダクティブ・ヘルス政策提案(草案)」について述べられています。
 これは、2002年、全国婦連の「中国女性リプロダクティブ・ヘルス」プロジェクトチームが起草したもので、同年12月の「中国女性のリプロダクティブヘルスの促進:政策と措置フォーラム」での討議などを経て、2003年7月に完成しました。
 この「提案」は、中国女性の健康にとって横たわる問題として、出稼ぎの女性やリストラされた女性の貧困、「計画出産」的なやり方では女性のインフォームド・チョイスが困難であること、男性の参与の不足、心理的健康や女性に対する暴力の軽視、セックスワーカーや性病・エイズの女性の問題などを挙げています。

 政策の提案としては、「ジェンダー平等」「女性のニーズとの合致」「男性の責任と参与」などを原則として、以下の9点にわたっておこなわれています。
 1.出生児の性別比率を低下させる
 2.青少年のリプロダクティブヘルス教育を強める
 3.妊娠中絶率を低下させる
 4.妊産婦保健の利用率と質を向上させる
 5.貧困層の医療救助を保障する
 6.エイズウイルスとエイズの感染率を低下させる
 7.女性の自殺率を低下させる
 8.女性に対する暴力を防止し、減少させる
 9.老年女性の健康
 たとえば、「1.出生児の性別比率を低下させる」という点に関しては、「女の嬰児や児童の死亡率が高い問題を『中国女性発展要綱』『中国児童発展要綱』の重点的なテーマにし、具体的な工作目標を明確にし、実効性のある措置を制定する」、「女の嬰児・児童の生存状況の社会的な監視と保護のネットワークを構築する」「男女が同等に利益を受ける農村の養老保障制度を一歩一歩構築し、完成させる」とか、「『人口と計画出産法』の『医学的な必要のない胎児の性別鑑定や性別を選択した中絶を禁止する』という条項の宣伝を強める」「ジェンダー意識教育を広範におこなって、女性や子どもの権益を宣伝する」などの提案をしています。

 第12章は、以下のいくつかのプロジェクトの実践報告を収録しています。
 「貧困地区の女性の妊娠出産期保健サービスの利用の向上報告」(陝西省リプロダクティブヘルスと政策促進課題グループ)
 「済南市小学校高学年の少女の青春期健康促進研究報告」(山東省婦連女性リプロダクティブヘルス課題グループ)
 「四川農村女性膣炎防止治療行動研究」(四川省婦連女性リプロダクティブヘルス課題グループ)
 「農村妊産婦保健サービス改善行動研究」(北京市女性保健所女性リプロダクティブヘルス課題グループ)

 たとえば、一番最初の「貧困地区の女性の妊産期保健サービスの利用の向上報告」では、以下のような経験が述べられています。
 ・貧困な山区では、すべてを病院出産にする条件がないので、医者や母子保健員が村に行って出産の世話をした。これは、貧困な山区の女性のニーズに符合した妊産期の保健サービスのあり方のモデルになる。
 (ただし、この報告は、「今回、村に行って出産の世話をできたのは、このプロジェクトが補助金を出したからであり、今後は県の財政支出によって、母子保健員の待遇を改善しなければならない」ということも指摘しています。)
 ・村民や村の幹部に保健知識を宣伝することによって、妊産期保健サービスに対する支持を強めた。村民に対しては村民大会で説明したり、ハンドブックを配布したりした。村の政府や衛生、計画出産、母子、婦連などの責任者には、陝西省女性理論婚姻家庭研究会のメンバーが、ジェンダー概念やリプロダクティブ・ヘルスについても説明した。
 ・夫や舅・姑を対象にした妊産期の保健知識の学習班を開催したことにより、彼(彼女)らの考えも変わりはじめ、家庭のサポート環境も改善しつつある。

 ごく一部しか紹介できませんでしたが、この本は巻末に40ページにわたる文献目録も収録しており、手元に置いておくと便利な一冊かな、と思います。

(1)王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』(婦女発展藍皮書)(社会科学文献出版社 2006年)139-140頁。
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三井マリ子さん控訴。今月16日に一審判決への抗議デモ

三井マリ子さん控訴
 「館長雇止め・パックラッシュ裁判」(私のHPのこの裁判のページ参照)の大阪地裁の不当判決(9月12日)に対して、同月26日、原告の三井マリ子さんは控訴しました。
 控訴にあたって、三井さんは、「控訴審に向けて歩み始めました。裁判長も認めた被告の『嘘』『不正』を違法に」とという文を発表しました。ぜひお読みください。
 判決文などを引用した参考メモ・「判決も認めた被告側の5つの嘘と不公正」も、ファイトバック会で作成しました(いちおう私が作成を担当しました)。

記者向け報告会
 「『しょせん女の非常勤問題』というバイアス」……記者向け報告会で私が感じたことをまとめました。

デモ
 この裁判を支援する「ファイトバックの会」では、今月16日に以下のデモを計画しています。せひ参加してください。

天高く怒り燃ゆるデモ
「生きさせろ! 非常勤の怒りを、悔しさを、いっしょに地裁に届けよう!」

 9月12日、大阪地裁は、雇用継続を拒否した豊中市らに損害賠償を求めていた三井マリ子さんの訴えを棄却しました。判決は、豊中市の嘘と不正を認めながらも、雇止めは違法とはいえないというものでした。
 三井さんは、2000年、全国公募で“女性センター”館長に選ばれました。ところが3年後、市や財団から評価されながら、「組織強化」の名の下に雇止めされたのです。情報から隔絶され、嘘に嘘をつかれたあげくの首切り事件の背後には、バックラッシュ攻撃がありました。三井さんは、怒りをこめて大阪高裁に控訴しました。
 非常勤の多くは常勤と同じような仕事をしながら、いつ辞めさせられるかわからない不安におびえています。非常勤の人権など歯牙にもかけない不当判決に、三井さんや弁護団はもちろん、私たちは怒りが沸点に達しています。

 11月16日(金)12時から2時。
 大阪地裁正門前に集合しましょう。みんなでデモをしましょう。不当判決に抗議するハガキを地裁まで届けましょう。ぜひご参加くださいますようおねがいいたします。

デモの詳細はこちらから
 http://fightback.fem.jp/flyer-07_11_16demo.html
不当判決抗議ハガキはこちら
 http://fightback.fem.jp/flyer-07_11_16futouhanketu_kougi.html

館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会               
(略称ファイトバックの会)
HPhttp://fightback.fem.jp
ブログhttp://fightback.exblog.jp
連絡先
e-mail:ikaridemo16@yahoo.co.jp
tel :080-3783-4552(ふじ)
   090-3288-4684(上田)
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中国でも注目されつつある同一価値労働同一賃金原則

 先日来、新聞で、同一価値労働同一賃金原則がたびたび取り上げられています(「同一価値労働に同一賃金を」『朝日新聞』10月24日大阪本社版、「男と女 賃金格差大国 日本」『朝日新聞』10月26日全国版、「パートや事務職は低賃金でも当たり前?」『毎日新聞』10月29日東京本社版)。
 また、2000年に日本で初めて同一価値労働同一賃金原則を認めた判決を勝ちとった屋嘉比ふみ子さんの『なめたらあかんで! 女の労働』(←会社の中で二十年以上もの間、さまざまな困難に屈せず、ほぼ一人で闘い続けた方のすばらしい記録です。明石書店 2007年)も、最近出版されました。

 近年は、中国の女性問題研究者たちも、従来の同一労働同一賃金(中国語では、同工同酬)原則だけでは解決できない、女性の多い職種の低賃金問題を解決するために、同一価値労働同一賃金(中国語では、等値同酬)原則を提唱しはじめています。

 この原則は、カナダ国際開発庁が資金を提供して1998年から始められた「中国-カナダ婦女法プロジェクト」(婦女権益保障法など、中国の女性の権利を保障する法律の施行の推進を目的とする)をきっかけに、中国でも語られるようになりました(1)
 2002年に出版されたこのプロジェクトの報告集では、中国側の各論者が同一価値労働同一賃金原則に言及していますが、とくに重視しているのは、蒋永萍さん(現在、全国婦連婦女研究所政策研究室主任)です。蒋さんは、この報告集で、同一価値労働同一賃金原則の内容について、労働の「価値」を、技能、強度、責任、労働条件の四つの要素を性的に中立な基準(女性に仕事に対するバイアスを排除した基準)で測定するものであることを紹介して、この原則を法律化したカナダのオンタリオ州やマニトバ州のペイ・エクイティ法についても詳しく述べています。
 蒋さんは、中国でも職業が性によって分割されていて、女性の仕事に対しては低い評価しかされていないことに注意を促します。すなわち蒋さんは、中国でも、看護師や小学校・幼稚園の教師、商業における販売員、家事サービス員、紡織・アパレル・電子電器の組み立てラインの労働者などは、女性の比率が70%以上であること、北京・珠海・無錫の三都市の調査では、教育や職業の等級、単位の類型などの要素を差し引いても、女性は一時間当たりの賃金が、男性よりも10-15%低いことを指摘して、今後は、法律の規範の重点を、「同一労働同一賃金」から「同一価値労働同一賃金」に移行すべきだと主張しました(2)

 蒋さんは、翌年の論文でも、2000年に行われた「中国女性の社会的地位調査」の結果を統計的に分析して、女性の賃金が低い重要な原因は、女性が多い職業の賃金の低さであること明らかにすることによって、同一価値労働同一賃金原則の重要性を強調しています(3)

 2005年に婦女権益保障法が改正された際には、改正内容を提案する「建議稿」を作成したグループが民間でいくつか現れましたが、中華女子学院(婦連傘下の大学だが、近年、フェミニズムが一定の力を持っている)の研究者グループの建議稿は、従来の「同一労働同一賃金」原則にかえて「同一価値労働同一賃金」原則を提案しました(4)
 同年に中華女子学院の教員が集団で執筆した書籍も同一価値労働同一賃金原則を採用しており(5)、中華女子学院法律系経済法教研室主任の劉明輝さんも、同一価値労働同一賃金原則をめぐる論争を紹介して、「どのようにして職業を越えた異なった職種の同一価値基準を設定するかについては、まだ深い研究が必要である」と述べつつも、ILO100号条約やカナダのペイエクイティ法に加えて、ノルウェーやフランス、イギリス、アメリカの法規定を紹介しすることによって、「『同一労働同一賃金』制度を『同一価値労働同一賃金』制度に拡充することは、大勢の赴くところである」と指摘しました(6)

 しかし、2005年の婦女権益保障法の改正では、「同一価値労働同一賃金」原則は採用されませんでした。
 それに対して、劉明輝さんは、国際的に「立ち遅れている」と述べて批判しました(7)

 中国では、「同一価値労働同一賃金」原則は、欧米や日本と異なって、まだ一部の女性労働問題研究者が提唱しているだけの段階だと言えます。しかし、近年は中国も国際基準を意識するようになってきていることは、こうした動きの追い風になりうると思います。

(1)そうした関係で、中国で同一価値労働同一賃金原則が比較的メジャーな形で最初にメディアに掲載されたのは、私の見るかぎり、「中国-カナダ婦女法プロジェクト」のシンポジウムにおいて、カナダの実践について同国のウイニペグ(マニトバ州)人権委員会の委員長が発言したことが、2001年に『中国婦女報』で報道されたのが最初のようです(加拿大魁北克人権委員会主席 米謝楽・瑞范特「同工同酬与就業平等不応只是画餅」『中国婦女報』2001年2月22日)。
(2)丁娟「中国-加拿大男女平等就業権相関問題比較及其対我国法治改革的建議」67-68頁、牛麗華「対健全婦女平等就業法律与機制的思考――中国-加拿大促進婦女平等就業比較研究」101頁、蒋永萍「中国-加拿大両性工資平等立法的比較研究」(いずれも、劉伯紅主編『女性権利-聚焦《労動法》和《婚姻法》』当代中国出版社 2002年)
(3)蒋永萍「中国城鎮男女両性的収入差距及其原因分析」蒋永萍主編『世紀之交的中国婦女社会地位』(当代中国出版社 2003年)55-58頁
(4)「昨天,衆多専家雲集中華女子学院,就《婦女権益保障法》修改立法建議達共識 応強化立法実施機制」『中国婦女報』2005年2月21日。
(5)李明舜・林建軍主編『婦女人権的理論与実践』(吉林人民出版社 2005年)194-197頁。
(6)劉明輝『女性労働和社会保険権利研究』(中国労動社会保障出版社 2005年)118-122頁。李明舜
(7)「婦女労働権益保護,還有多少難題待解?」『中国労働保障報』2005年9月13日。
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