2007-10

台湾女性研究11月論壇(フォーラム)

 この論壇(フォーラム)については以前もお知らせしましたが、11月論壇の報告の正式の題目が決まりましたので、改めてお知らせいたします。

日時:2007年11月10日(土)13:30~18:00(受付13:00)
会場:関西学院大学梅田キャンパス「アプローズタワー 受付14階」使用教室は10階1003(阪急梅田茶屋町口から北へすぐ、ホテル阪急インターナショナルや梅田芸術劇場が入っているビル)地図
報告Ⅰ「不孝的権利:台湾女性的継承両難困境」
 講師:陳昭如(台湾大学法律系助理教授)
 解説・コメンテーター:林香奈(京都府立大学文学部准教授)
報告Ⅱ「台湾女性労働史与職場的性別不平等」
 講師:張晋芬(中央研究院社会学研究所研究員)
 解説・コメンテーター:大平幸代(関西学院大学法学部准教授)

(関西中国女性史研究会・野村鮎子代表より)
 本研究会では、目下、台湾のジェンダー研究者との共同研究による「台湾女性史とジェンダー主流化戦略に関する基礎的研究」(研究代表者:成田靜香、基盤研究B)を進めています。そこで今秋、台湾側のカウンター・パートナーである女性研究者を招聘し、それぞれの専門分野から「台湾女性」を考えるという催しを企画いたしました。「台湾女性の今」を知る絶好の機会です。
 時間の関係で、当日、報告に通訳はつきませんが、報告内容は日本語に翻訳して当日配布いたしますし、解説・コメンテーターの発言も日本語の予定です。研究会では、専門以外の方にもできるだけたくさんご参加いただきたいと考えています。

おまけ
 私の報告です。

高槻ジェンダー研究ネットワーク公開学習会
日時:11月2日(金)午後6時半~8時半
場所:高槻市立総合市民交流センター4階 第4会議室(JR高槻駅中央出口を南に降りてスグ)
報告者:遠山日出也
テーマ:「近年の中国の女性政策と女性団体の動向――女性労働とDVの諸問題への対応を中心に――」
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小中学校の教材と授業のジェンダー分析

 3年前に出版された本ですが、史静寰『教材と教学のジェンダー世界に歩み入る(走進教材与教学的性別世界)』(教育科学出版社 2004年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)を中国から取り寄せて読んでみました。
 この本は、ジェンダーの視点から中国の基礎教育の教材と教室での授業の状況を分析した論文集です。

 中国でも、教科書をジェンダー視点から分析すること自体は、以前からおこなわれており、早くも1992年の『中国婦女報』には、北京外語学院女性学研究討論会が小学校の国語教科書の挿絵を分析した記事が掲載されています(1)
 同年の日本の『中国女性史研究』にも、遠藤祐子さんや丹野美穂さんと私がいっしょに翻訳した、閔冬潮・杜芳琴「中国の中学歴史教科書における性別問題の分析」が掲載されています(2)
 けれども、こうした問題を研究した単行本は、これが最初だと思います。
 
 上の本を執筆した北京師範大学教授の史静寰さんたちは、2000年から「中国の幼稚園・小中学校・成人識字教育の教材のジェンダー分析の研究」プロジェクトを始めました。
 メンバーは、北京師範大学、中央教育科学研究所、陝西師範大学、西南師範大学、全国婦連女性研究所などの20名余りの研究者です。

この研究プロジェクトのの基本目標は次の4つでした。
 1.現行の小中学校の教科書に依然として存在するジェンダーの旧いステロタイプに対して記述・分析することによって、教育業務従事者がジェンダー問題に対する関心を持ち、議論をして、ジェンダーの角度から教学の材料と教学の行為を再認識し、ジェンダー平等の原則を教育・教学業務を評価する一つの要素にする。
 2.ジェンダーの平等と公平の基礎の上に、教学計画と参考資料の作成を設計することを通じて、教師がジェンダー平等意識を獲得するというエンパワメントをすることを助け、ジェンダーの平等と公平の理念を教室の教学の実践に入れる。
 3.関係部門に報告や提案をすることによって、ジェンダー視点をカリキュラムや教材の編集・執筆の主流の業務に組み入れることを推進する。
 4.研究協力を通じて、ジェンダー教育の領域における国際的・国内的協力を強める。

 この研究においては、教材に出てくる人物などについての定量研究だけでなく、教材を使用している教師や学生にインタビューしたり、教室での授業を観察したりするなどの質的研究の方法や、異なった時期の教材を比較する歴史研究の方法なども用いられました。

 2001年7月には、この研究グループは「ジェンダーと教材文化研究」学術シンポジウムを開催しました。このシンポは、こうした問題に関する初めてのものでしたので、『中国婦女報』にも大きく報道されました(3)

 プロジェクトの研究結果とそれに基づく提言は、全国婦連を通じて国務院にも送られ、国務院から教育部に転送されました。
 その後の2002年7月に、教育部の基礎教育局と基礎教育課程教材発展センターが北京で開催した「全国小中学教材建設シンポジウム」における討論では、「教材の編集・執筆の過程におけるジェンダーの平等と公平という理念が共通認識になった」とのことであり(4)、この研究プロジェクトは、関係者にはある程度の影響を与えたようです。
 
 さて、この本の構成は、以下の通りです。

序言 教材と教室の教学のジェンダー世界に歩み入る(史静寰)

上篇:教材・読物のテキストのジェンダー文化の研究
『宝宝家庭課堂』から見たジェンダー役割の社会化(劉雅琴)
ジェンダーの差異がどれほどあるか――『父母必読』のジェンダー分析(何夢燚)
現実生活と童話世界の対話(羅佩珍)
ジェンダー視角から見た小学『社会』教材の改革(易進)
まだ開くことが必要な窓格子――『総合実践活動・生活』教材のジェンダー分析(卓挺亜)
姿を隠し、声を失った女性――小学国語教材のジェンダー文化のテキスト分析(郭葆玲)
ジェンダーステロタイプの反映――小学国語教材のテキストの人物に対するジェンダー分析(楊潔・呂改蓮)
科学のジェンダー化の構築――香港版小学国語教材に対するジェンダー分析(黄河)
女性の無視――初級中学の国語教材の女性像の分析研究(馬国義)
初級中学の歴史教材における武則天像に対する分析(郭楠)
女性と政治の記述:歴史教材におけるジェンダーポリティックスのイデオロギー解読――中国前近代史の部分を例に(余艶)
お母さんと私――初級中学の英語教材における両世代の女性のジェンダー役割の分析(趙萍)
マカオの中学一年の中国語教科書におけるジェンダーイデオロギーの内容の分析研究(蘆立濤)
香港・マカオ地区の初級中学の国語教科書におけるジェンダー問題研究(黄俏梅)
良妻賢母から平等な労働者へ――中国近代の初級小学の国語教材における女性像と女性役割の分析(王毅)
識字教材におけるジェンダー役割のステロタイプ化(頼立)
女性識字、および識字後の教材のジェンダー分析(王素)
成人識字教材における職業役割のジェンダー分析(曲雯)
少数民族の識字教材の中のジェンダー研究(任市明)

下篇:教学のプロセス、教師と生徒の相互作用のジェンダー文化研究
分析学の原理を運用した、幼児読み物に対するジェンダー分析(布朗・戴維斯)
オーストラリアと日本の子どもが読む『紙袋のプリンセス[The Paper Bag Princess]』に関する研究(布朗・戴維斯)
児童の遊戯におけるジェンダー文化の分析(張咏)
児童 ジェンダー 国語教材(郭力立・趙張洲)
紙一枚を隔てて――小学校の数学の教室におけるジェンダー役割の透視(陳萍・陳偉玲)
誰が良い学生か――初級中学の理科教師のジェンダーステロタイプの分析(宋輝)
初級中学の国語教学におけるジェンダー問題研究(張莉莉)
打工妹と生活技能教育(李慶)

 以下、史静寰さんの序言の中で、教材と授業に関してジェンダー分析をしている箇所について、だいたいのところ、どんなことが書いてあるのかを紹介してみます(正確には、原文を見てくださいませ)。

一 教材のテキストの中の性別のアンバランスとステロタイプ

1.男女の比率がバランスを欠いており、女性の出現の比率は、児童読み物で最も高く、年齢が上がるにつれて、教材の中の女性の比率は下がる。
 女性が最も多く出てくるのが児童向けの読み物だということは、家庭生活では母親が主役であるという性別分業の反映である。
 また、出てくる男の子は知的に高いものを要求されている一方、生活習慣で誤りを犯す存在として描かれている。このことは、男の子は聡明かつ腕白な存在で、その誤りに対しては社会が寛容であることを示している。

2.小学校以後の教材においては女性が少なすぎ、とくに独立した身分の女性の主役が欠けている。
 小学校の国語教科書において、女性が主役である話は、19.2%だけである。
 社会科では、出てくる人数は男女で基本的に同じだが、独立した身分として名前が出てくる者の中では、女性は5%だけである。
 また、数学の挿絵には、男性が女性の倍近く出てくるうえ、男性の方が思考が深い存在として描かれている場合が多い。

3.男女の職業における分業や活動領域・性格・行動などの面における伝統的なジェンダーのステロタイプが重大である。
 「総合実践活動・生活」という斬新な科目の教科書でも、その挿絵のジェンダーのステロタイプはほとんど変わっていない。たとえば「自然と環境」というテーマにおいて、「なぜ」という問いは、ほとんどすべて男子生徒が出している。女性は、生活の小さな環境や小動物を愛護する役割を担い、「大気汚染」のような大きなテーマについては、男子生徒が解決方法を提起している。
 小学校の国語の教科書では、女性の挿絵は、家庭という私領域に登場する場合が多い。穎超のような党と国家の指導者でさえ、周恩来の衣服を繕ったり、警備員に傘を届ける女性として登場している。

4.時代感覚が豊かで、生徒の現実生活にとって身近で、生き生きとした具体的な女性という性別の手本が欠けている。
 教科書に出てくる女性は、数が少ないだけでなく、生徒の現実の生活に身近な、模範になるような女性像となると、さらに少ない。テキストに出てくる女性は、古人(花木蘭)や老人(母親)、有名人(謝冰心)であり、現実の生活との距離が遠く、子供たちが共鳴しにくい。
 また、テキストでは、女性は、善良で優しく、辛抱強い存在として描かれ、男性は、高尚で偉大な存在として描かれている。また、欠点を描写する際には、男性は、傲慢でずる賢く、女性は、幼稚で無知な存在として描かれる。つまり、女性は原始的で本能的、男性は主体的で知能的な特徴を持つものとして描かれる傾向がある。

二 教学活動におけるジェンダー文化の衝突と構築

1.ジェンダーの視角から見た、教師の観念と教学におけるその現れ
 幼稚園での遊戯のとき、教師は、女の子に、母親としての役割や規範を教え込んでいる。
 また、中学校の理科の教師に、ある子どもの行動を述べた文章を読んでもらって、その子の評価させると、全く同じ文章なのに、その子の名前を「王蕾(女性名)」とするか、「王健(男性名)」とするかで評価が異なってくる。たとえば「授業以外の本をよく読んでいる」子どもは、男の子なら「知識の範囲が広い」子どもとして、高く評価されるが、女の子だと、「学習をサボっている」子どもとして低く評価される。

2.ジェンダーの視角から見た、教室での教学における教師と生徒のコミュニケーションモデル
 教師と男子生徒との相互作用は、集中していて、親切で、自然で、「自然焦点型コミュニケーション」である。
 それに対して、教師と女子生徒との相互作用は、「礼儀正しい忌避型のコミュニケーション」であり、表面的に見ると、教師も生徒も礼儀正しく、親切だけれども、双方とも内心では小心翼翼としている。

3.ジェンダーの視角から見た、クラス内の男子生徒と女子生徒の相互作用
 女子生徒は、教室で問題に答える時、反応が遅く、声が小さい。その原因は、女子生徒は小さいときから「お上品」であるべきだと教えられているために、間違いをするのを恐れるからであるが、彼女たちはとくに男子生徒に責められ、嘲笑されることを恐れている。
 私たちは、女子生徒が教室で活発でないことを批判するけれど、男子生徒と女子生徒との間に潜むこうしたジェンダーの問題にも目を向けなければならない。

 私はこの本で扱われているような問題について十分知りません(ですから、訳語などが適切でない箇所もあると思います)。また、この本で述べられていることの中には、欧米や日本では既に明らかになっている点も多いかもしれません。
 けれど、中国の教科書と教育に即して、こうした問題を解明したこの本の意義は大きいと思いました。

(1)北京外語学院婦女学研討会(謝致紅執筆)「男人該做什麼 女人該做什麼――析伝統性別角色在小学語文挿図中的滲透」『中国婦女報』1992年1月3日。
(2)閔冬潮・杜芳琴「中国の中学歴史教科書における性別問題の分析」『中国女性史研究』(中国女性史研究会)第4号(1992年)。
(3)卜衛「女孩子読一読,男孩子想一想?」、趙萍「教材中的性別文化透析」いずれも『中国婦女報』2001年8月14日。
(4)王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』(婦女発展藍皮書)(社会科学文献出版社 2006年)126,250頁。
*注記してある以外の記述は、史静寰主編『走進教材与教学的性別世界』(教育科学出版社 2004年)によっています。
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ラビア・カーディルさんの東京講演会の場所が変更

 先日このブログでお知らせした、ウイグルの人権運動家・ラビア・カーディルさんの全国講演(東京・和歌山・倉敷・松江・山口・大阪・札幌・新潟)ですが(詳細)、東京講演会の場所が以下のように変更されましたのでお知らせします。
 また、神戸での講演も新たに決まりました。

東京
11月10日(土)
15:30-18:00
ハーモニックホール
地図

新宿区西新宿7-21-20関交協ビル地下1階TEL:03-5337-1750
参加費:一般1000円/学生500円
camp@amnesty.or.jp

神戸
11月14日(水)
16:45-18:15
神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館1階B106講義室
地図
参加費:無料
主催:神戸学院大学人権問題委員会/経済学部
神戸学院大学総務事務グループTel:078-974-1805

 東京講演会の場所が変更されたことは、サイト「ラビヤ・カーディル ウイグルの「母」」とブログ「真silkroad?」を作成しておられるkokさんからから教えていただいたのですが、kokさんは次のようにおっしゃっています。
 「ラビアさんは北京会議にも出られたようですが、その後悲劇的な運命に翻弄されておられます。日本の北京会議関係者にも是非講演会に出席して欲しいと思うこのごろです。 」(本ブログのコメント欄より)

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江蘇省、極めて限定的な婚姻内強姦の禁止案も撤回

 婦女権益保障法が2005年に改正されたのに伴って、各省ごとに制定されているその施行規則(辨法)も、今、改正されつつあります。
 江蘇省は、その施行規則に、「離婚事件の一審判決がまだ効力を生じる前、あるいは二審の期間に、夫は妻に性行為を強要してはならない」という規定を導入しようとしていることが、昨年末、報じられました。このことは、このブログでも取り上げました(「江蘇省、極めて限定的に婚姻内強姦を禁止か?」)。

 しかし、最近、江蘇省の人民代表大会の常務委員会でこの施行規則を審議した際、上の規定は削除されました。
 同省の人民代表大会の内務司法委員会の責任者によると、その理由は、「『婚姻内強姦』が犯罪になるかどうかは、いま法学理論の分野で長い間、論争の焦点になっている。だから、この条項は『地方での立法の範囲には属さない』」というものだそうです(1)

 上で述べたように、江蘇省が導入しようとしていた規定は「離婚事件の一審判決がまだ効力を生じる前、あるいは二審の期間」というきわめて限定的な期間だけ強姦を禁止する規定にすぎませんでした。もしこうした規定が導入されたら、へたをすると「一審判決以前だったら(まして離婚訴訟以前だったら)、性行為を強要してもよい」と解釈される危険もあると思いますので、今回削除されて、かえって良かったような気もしないではありません。
 けれども、削除した理由を聞くと、けっしてそうした理由から削除されたわけではなく、地方の立法の限界という理由なので、喜べないです。

(1)「江蘇省実施婦女法辨法一審時増加了鼓励夫妻聯名登記財産条款,但――“妻子可調査丈夫私房銭”内容被刪」『中国婦女報』2007年9月28日。
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中国共産党指導部の女性比率

 昨日、中国共産党17回党大会が終わり、新しい中央委員が選出されました。
 女性で中央委員に選出されたのは、次の13人です。
 馬[文+馬]、烏雲其木格(モンゴル族)、楠、劉延東、孫春蘭、李斌、李海峰、楊衍銀、呉愛英、沈躍躍、宋秀岩、陳至立、黄晴宜(敬称略)
 (中国共産党第十七届中央委員会委員名単より)。

 2002年の16回大会では、女性は5人しか中央委員に選出されませんでしたから、今回、2.5倍以上に増えたわけです。しかし、中央委員は全部で204人選出されているので(今大会の場合)、女性は全体の6.4%でしかありません。
 下の表を見ていただければわかるように、中央委員会の女性比率は、1950年代からずっと低いままであり(文化大革命の時に少しだけ上昇した)、16回大会が異常に低かったのを回復しただけとも言えます。
 しかし、今後、女性が増大する流れの第一歩である可能性もあると思います。

各党大会で選出された中央委員の女性数・比率(1)
8(1956年) 4/ 97[4.1%]
9(1969年)13/170[7.6%]
10(1973年)20/195[10.3%]
11(1977年)14/201[7.0%]
12(1982年)11/210[5.2%]
13(1987年)10/175[5.7%]
14(1992年)12/189[6.3%]
15(1997年)8/193[4.1%]
16(2002年)5/198[2.5%]
17(2007年)13/204[6.4%]

 今日は、中央委員会の総会で、中央政治局常務委員と中央政治局員が選出されました(第十七届一全会産出中央領導機構)。
 中国共産党の場合、中央委員会の上に位置する中央政治局とその常務委員会とがたいへん重要です。10年以上以前の話ですが、毛利和子さんは次のように言っていました。「党が上から下へのピラミッド型機構のため(……)中央委員会はこれまでずっと政策決定の中で重要な役割を果たしてこなかった。/政策決定のコアになるのは二十数名の中央政治局、とくにもっとも重要な決定は、多くの場合6~7名のごく小さい集団――中央政治局常務委員会で行われる。(……)10億以上の国民を擁する大規模国家の重大事が、20人前後の党政治局のメンバー、ひいては6~7名の政治局常務委員によって決められる。これが四十年来の中国政治だった」(2)

 中央政治局員と中央政治局常務委員には、これまで女性ほとんど選出されていません。
 まず、女性が中央政治局常務委員になったことはありません。
 ヒラの中央政治局員には、女性がなったことはあります。しかし、1980年代までは、女性で政治局員になったのは、江青(毛沢東の妻)、葉群(林彪の妻)、鄧頴超(周恩来の妻)という、著名な指導者の妻である場合ばかりだったのです(下表)。

 そうしたなか、呉儀さんは著名な指導者の妻ではなく、独身(未婚)で、5年前の16回大会直後の中央委員会総会で中央政治局委員に選出され、2003年3月には国務院副総理にもなりました。
 現在68歳である呉儀さんは、今大会で、中央政治局や中央委員会から引退しました。
 今回は、女性では、中国共産党中央統一戦線部長の劉延東さん(簡歴)が中央政治局委員になりました。劉延東さんも著名な指導者の妻というわけではないので、今後も女性が中央政治局の一角を占める流れ(といっても、まだ1人だけですが)が続くのかもしれません。

中国共産党最高指導部の女性数(女性数/全体の人数)(3)
政治局常務委員  政治局委員
8(1956年)0/6  0/17
9(1969年)0/5  2/21(江青、葉群)
10(1973年)0/9  1/21(江青)
11(1977年)0/5  0/22
12(1982年)0/6  1/25(鄧頴超)
13(1987年)0/5  0/17
14(1992年)0/7  0/20
15(1997年)0/7  0/22
16(2002年)0/9  1/24(呉儀)
17(2007年)0/9  1/25(劉延東)

(1)中華全国婦女聯合会婦女研究所・国家統計局社会与科技統計司編『中国性別統計資料(1990-1995)』(中国統計出版社 1998)430頁、中華全国婦女聯合会編『中国婦女運動百年大事記』(中国婦女出版社 2003)における各党大会とその後の一中全会の記述などより作成。
(2)毛里和子『現代中国政治』(名古屋大学出版会 1993)141頁。
(3)(1)と同じ。
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「体制外従業員」と同一労働同一賃金問題

 劉明輝さん(中華女子学院教授)の論文「雇用の性差別の問題に関する立法の思考」の中にこういう一節があります。
 「長い間、わが国は計画経済の下での労働力の分類基準、すなわち『人事編制』を踏襲してきた。同じ持ち場で仕事をしている人が、編制が異なるために、長い間、待遇がまったく異なってきた。[1995年に]『労働法』が施行された後は、あらゆる使用者と労働者は、労働契約制度を全面的に実行し、職場の各種の労働者が享受する権利は同じになたった。このため、以前の意味での、正式労働者に対する臨時労働者はもう存在しなくなった。……しかし、現実には依然として編制外の臨時労働者が存在しており、待遇は一般に正式労働者の1/3であり、その中には女性が多い」(1)

 実際、2000年におこなわれた第2回中国女性の社会的地位調査によると、女性は正規就業の中では全就業者の39.8%を占めるにすぎませんが、非正規就業の中では47.1%を占めています(2)。詳しくは調べていませんが、おそらく、ほぼ「正式労働者」=「正規就業」だと思います。
 日本ほど男女の比率がかけ離れていないのは、中国では、農村からの出稼ぎの労働者にとくに非正規就業が多く、かつ出稼ぎの労働者は男性が多いからです。
 ただし、以前も述べたように、同じ出稼ぎの中で比べると、男性の場合は、非正規就業が男性全体の約40%なのに、女性の場合は、非正規就業が女性全体の約50%であり、ここにも男女差があります。

 さて、中国の体制(編制)外の従業員には二種類あって、一つは、行政や国有企業の中の「体制(編制)」外の従業員であり、もう一つは、外資企業や民営企業の従業員です(3)
 後者の場合は、一部には能力を発揮して高い賃金を得ている人々もいます(ただし彼らも、生活の安定や社会保障の点では「体制内」の労働者ほど恵まれていません。また、多数の農村からの出稼ぎの労働者は、ひどい差別を受けていますが)。
 けれど、前者の場合は、差別が、一つの企業の中での「体制(編制)の内と外との差別」という形ではっきりと目に見える形で現れます。

 前者の場合、すなわち行政や国有企業における体制外の従業員の情況をリアルに記述した記事が、今年8月7日付けの『中国青年報』に掲載されていました。「体制外従業員:同一労働で同一報酬でないのは雇用差別である。同じ職場で同じ仕事をしても、収入は10対1」という記事です(4)
 この記事も、最初に、中国の「政府機構・事業単位、国有企業のなかでは、『編制』『正式労働者』などの名詞がまだ使われており、多くの企業・事業単位は、工員を『正式労働者』と『臨時労働者』に分けて」いること、それによって「同一労働非同一賃金」という現象が引き起こされていることを指摘しています。

 この記事は、さまざまな体制(編制)外従業員と体制内の正式労働者との大きな賃金格差を、次のように明らかにしています。
○あるテレビ局
 ・体制外(臨時工):映画チャンネルのプロデューサーなのに、月収2500元で、三険一金(養老保険・医療保険・失業保険、住宅公積金)がない。
 ・体制内:月収5~6000元で、三険一金のほか、住宅も分配される。
○安慶市のある中学校
 ・体制外(聘任制):毎月48時限の授業をして、一時限あたり12元で、576元だけが月収。
 ・体制内:一時限あたりの賃金だけでなく、「基本賃金」と「国家補助」があり、初級教師でも月収1000元余り、高級教師ならば3000元余り。そのほか、年末のボーナスが1~2000元など。
○あるタバコ会社
 ・体制外(聘用工):月収1000元。ボーナスは1000元。
 ・体制内:月収3000~4000元。年末にボーナス10000元余り。
○広東省恵州市電供(電気供給)局のある兄弟
 ・弟=体制外(外聘):月収10000元余り
 ・兄=体制内:月収1000元 

 体制外従業員は、けっして「臨時」の「お手伝い」の仕事をしているわけではないのです。
 むしろ、あるテレビ局の臨時労働者は「本当に番組を制作している人は、みな編制外だ」と言います。彼らのチャンネルの中核的な制作者は、みな臨時労働者であり、編制内の労働者は、事務室の行政人員だけだそうです。その人は、「彼ら[=正式労働者]は10人で1つの仕事をする。我々は1人で10の仕事をする」と言います。
 ある中学校の臨時教師は、「面倒なことはみんな私たちにやらせるのだ」と言います。たとえば、臨時教師には、腹がすく3,4時限目の授業や、学生たちが居眠りをする午後の1時間目の授業が割り当てられるとのことです。
 また、電供局では、体制外従業員は、どんなに技術が優れていても、中核的な技術的仕事はやらせてもらえないそうです。
 彼らは、昇進の見込みもなく、いつ辞めさせられるのかびくびくしているということです。

 中国人民大学労働学院副院長の劉爾鋒教授は、「改革開放の前夜、体制内の従業員は8~9割を占めていました。けれど、現在、国有の大企業や事業単位では、体制内従業員は約4割を占めるにすぎません」と言います。つまり、体制外従業員の問題は、以前からあった問題ではあるけれども、大きく広がったのは、改革開放後なのです。
 中国人民大学法学院教授で、労働・社会保障法研究所の所長の林嘉さんは、「同一労働非同一賃金も、一種の雇用差別です。最低賃金は法律で決められていますが、国家は最低基準を規定しているだけで、その他の面は規制していません」と指摘しています。

 この記事によると、労働・社会保障部の賃金局局長の邱小平さんは、同局では関係部門と一緒に賃金立法の起草を研究しており、すでに同一労働同一賃金問題をその重点的内容にしているとのことですが、前途は険しそうです。

 また、中国労働関係学院教授の林燕玲さんは、体制外の臨時労働者の中に農民戸籍を持った人が多いことに注目して、論文「農民労働者の就労差別の状況報告──一種の身分に基づく差別」(5)の中で、「臨時労働者は、農民労働者に対する『間接差別』の一形態である」と述べています。

 林さんは言います。「同じ職場で、同様の技術的水準の、同様の強度の労働をしても、正式労働者と臨時労働者の区別があるために、正式労働者は、臨時労働者の2倍、はなはだしきは何倍も賃金を得る。汚い仕事、疲れる仕事、苦しい仕事、危険な仕事はみな臨時労働者がする。正式労働者は、指導者のように、臨時労働者に対して上に立って命令を出し、指図することさえできる」。
 林さんは、臨時/正式の労働者の月収の違いについて、ある職場の次のような例を挙げています。
 ・臨時労働者:一日あたりの賃金の基準37元×22日+医療補助10元=824元
 ・正式労働者:賃金1899元+手当1720元+交通費補助520元+一回性のボーナス(一次性奨金)115.5元+双節(中秋節と国慶節)手当41.67元+年末のボーナス(年奨金)16.67元+防暑費20元+住宅公積金=4586.84元

 林さんによると、「こうしたケースは、国家機関・事業単位、社会団体の中ではわりあい普遍的な現象である。臨時労働者の大部分は農業戸籍であり、一部は、よその土地の非農業戸籍や当地の非農業戸籍である。(……)若干の人々は、機関や事業単位に入った時にすでに良い労働者としての資質を持っているが、臨時労働者であるということだけのために、いくらよく働いても正式の人員と同じ賃金と福利の待遇を受けられない。ある人は、正式労働者になるために、ごちそうをしたり物を贈ったり、賄賂さえ贈るが、いったん目的を達すると、『金持ちになると、態度が変わって』正式労働者の資質は、ますます悪くなる」とのことです。

 農村から出稼ぎに出てきた農民労働者([農]民工)の場合は、建築の仕事や家政婦、外資系(の下請け)の生産ラインの仕事をやっていることが多く、都市の人とは別の職場、別の職種で仕事をしているケースも多いです(6)
 しかし、上で挙げられた具体例は、同じ職場で働きながら差別されている事例です。
 また、農村出身者ばかりではなく、林さんも言っているように、都市の人の場合もあるようです。臨時教師の事例などは、たまたま大学を卒業した時が「よい時期」でなかったために、臨時教師になったとのことであり、日本にも同じような話があると思います。

(1)「関于就業性別歧視問題立法思考」北京大学法学院婦女法律研究与服務中心編『中国婦女労動権益保護理論与実践──从法律援助和公益訴訟的視角』(北京人民公安大学出版社 2006年。同書の紹介)234-235頁。
(2)全国婦聯婦女研究所課題組『社会転型中的中国婦女社会地位』(中国婦女出版社 2006年。同書の紹介)139頁。
(3)「体制内外待遇有別 体制外員工是二等公民嗎?」人民論壇2007年5月19日
(4)「体制外員工:同工不同酬是就業歧視 在同一単位做同様工作,収入却是10:1」『中国青年報』2007年8月28日
(5)林燕玲「農民工就業歧視状況報告――一種身份性歧視」蔡定剣主編『中国就業歧視現状及反歧視対策』(中国社会科学出版社 2007年)253-255頁。
(6)彼らの状況について日本語で読めるものとしては、最近出た、秦尭禹(田中忠仁・永井麻生子・王蓉美訳)『大地の慟哭 中国民工調査』(PHP 2007年6月)があります。
 もちろん、職場や職種が違う場合でも(すなわち「同一労働」でなくても)、「同一価値労働同一賃金(中国語では「等値同酬」。なお「同一労働同一賃金」は「同工同酬」)」は問題にすることはできます。こちらの問題はまた項目を改めて書きたいと思います。
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中国社会学学会に女性/ジェンダー社会学専門委員会設立

 今年9月16日、中国社会学学会の女性/ジェンダー社会学専門委員会理事会の設立会議が開催されました(1)
 2006年8月に、全国の社会科学院や大学の10名の学者が連名で、社会学学会の理事会に「女性/ジェンダー社会学専門委員会」の設立を申請しました。この申請は承認され、その後、彼女たちは準備委員会を作って準備をすすめてきました。

 今回の会議では、以下のように、この「女性/ジェンダー社会学専門委員会」の位置づけや今後の方向性について議論されました(2)
1.社会学領域におけるジェンダー主流化の拡大・強化について
 中国社会学会の年次総会では、すでに2回、「女性とジェンダーフォーラム」を開催している。しかし、他のフォーラムにはジェンダーの視点が乏しいので、他のフォーラムにもジェンダー視点を入れていく必要がある。
2.「学科を越えた発展」VS「専門領域の対話の拡大・深化」
 ある学者は、「学科を越えた発展をめざす」という方向性を主張した。それに対して、「まず、社会学の専門領域の中での対話を拡大・深化させるべきだ」という意見も出た。
3.女性/ジェンダー社会学専門委員会の職責について
 みな、この委員会の職責は、「国内外の学会との交流をすすめる、情報交流の場の構築、学術的サポートの提供、専門の訓練をおこなう、他の学会やネットワークとの協力、内部の通訊や電子刊行物の発行、教材の作成」などであると考えた。

 また、会議では、以下の常任理事[常務理事]を選出しました。
 馮小双(中国社会科学院《中国社会科学》編集部)、高小賢(陝西省婦連婦女婚姻家庭研究会)、郭虹(四川社会科学院社会学所)、賈応生(西北師範大学社会学系,男)、蒋永萍(全国婦連婦女研究所)、金一虹(南京金陵女子学院社会保障系)、李慧英(中央党校社科部)、李明歓(厦門大学公共管理学院)、李銀河(中国社会科学院社会学所)、譚琳(全国婦連婦女研究所)、譚深(中国社会科学院社会学所)、佟新(北京大学社会学系)、王愛麗(黒龍江社会科学院社会学所)、王金玲(浙江省社会科学院社会学所)、向平(武漢大学社会学系,男)、徐安(上海社会科学院社会学所)、楊国才(雲南民族大学学報編集部,白族)、張李璽(中華女子学院)、張宛麗(中国社会科学院社会学所)、鄭丹丹(華中科技大学社会学系,代表婦女/社会性別学学科発展網絡社会学子網絡)、周偉文(河北社会科学院社会発展所)
 常任理事会の主任には、王金玲、副主任には、佟新、楊国才、向平、張宛麗の各氏が選ばれました。

(1)「中国社会学学会婦女/性別社会学専業委員会理事会成立」(全国婦連婦女研究所HP)。
(2)「中国社会学学会婦女/性別社会学専業委員会理事会成立会議紀要」(ワードファイル)
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ウイグルの人権活動家、ラビア・カーディルさんが来月、日本各地で講演

 ラビア・カーディルさんは、1948年にアルタイで生まれました。改革開放後は、女性企業家として大きな成功を収め、政府の役職も多くつとめました。
 しかし、1996年と1997年、彼女が政治協商会議の席上で、ウイグル人の信教の自由や母語を使用する権利が尊重されていないこと、大量の政治犯が処刑されていることなどについて訴えたところ、全ての要職を解かれます。
 1999年、ラビア・カーディルさんは、ウイグルの人権問題のレポートをアメリカ議会代表団に渡そうとして、国家安全局に拘束されました。2000年には、判決で「ウイグル族の独立活動家に対する処罰を報じた地元紙記事をアメリカ在住の夫に送り、不法に国家に不利な情報を海外に提供した国家安全危害罪」の罪で懲役8年が確定します。
 彼女は有名人だったため、拷問は受けませんでしたが、他のウイグル人がひどい拷問を受けて呻いている声をわざと聞かされたり、実際に血だらけになったウイグル人男性を見せられたりしました。
 欧米で彼女を釈放の求める運動が広がったこともあり、2005年、彼女と夫はアメリカに亡命することができました。現在は、在米ウイグル人協会(Uyghur American Association)の会長をしています。また、彼女自身も国際ウイグル人権民主基金(International Uyghur Human Rights and Democracy Fondation)を創設しました。
 しかし、彼女の息子や娘たちは、公安に拘束されるなど迫害に遭っているということです。
 (以上は、下記の水谷尚子さんの記事とアムネスティのサイトのページ「ラビア・カーディルさんとは」にもとづく)。

 そのラビア・カーディルさんが、この11月、アムネスティ・インターナショナル日本などの尽力で、以下のように日本各地で講演をなさいます(アムネスティ日本)。めったにない機会なので私も聞きに行くか、賛同金を送るかしようと思います。
 賛同金 個人(一口) 3,000円
 振込先 郵便振替口座:00120-9-133251
 加入者名:社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

11月10日(土)14:30-17:00
ハーモニックホール(新宿区西新宿7-21-20関交協ビル地下1階)に変更

11月11日(日)19:00-21:00
和歌山県田辺市民総合センター2階青少年ホール

11月14日(水)16:45-18:15NEW
神戸学院大学ポートアイランドキャンパスB号館1階 B106講義室

11月15日(木)18:30-20:30
倉敷カトリック教会

11月17日(土)13:30-16:00
松江スティックビル501号室

11月18日(日)14:30-16:30
山口カトリックセンター

11月21日(水)18:30-20:30
大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)5Fセミナー室

11月24日(土)18:30-20:30
札幌エルプラザ4階中研修室

11月25日(日)15:00-17:00
クロスパルにいがた

*参加費や地図、連絡先などの詳細については、アムネスティの全国講演詳細のページを見てください。

 日本は欧米に比べて、女性やジェンダーの問題に関してだけでなく、こうした問題に関しても社会的な運動が弱いと思います。
 最近は、アメリカを先頭にした「テロとの闘い」に便乗して、中国も、民族独立運動家に「テロリスト」というレッテルを貼って弾圧しているとのこと。この点も心配です。

 なお、ラビア・カーディルさんについては、日本のサイト「ラビヤ・カーディル ウイグルの『母』」に非常に詳しく書かれています。また、同じ方がなさっている、ウイグル人の人権について訴えるブログ「真silkroad?」にも、彼女の新たな情報が多数掲載されています。
 活字媒体では、水谷尚子さん(中央大学非常勤講師)が、『諸君』2006年5月号にラビアさんのインタビューを掲載していますが、このインタビューも上のサイト「ラビヤ・カーディル ウイグルの『母』」に全文収録されています(「目のあたりにした血も凍る拷問・悲鳴・絶叫… ウイグル人の悲劇」←そうした許しがたい拷問の話だけではなく、ラビヤさんの生涯を通じた話が語られています)。
 水谷さんは、今月19日に文春新書から、『中国を追われたウイグル人』(文芸春秋社 2007年)を刊行なさるようです。840円という安価なものですし、私も買います。

 なお、今回のラビヤ・カーディルさんの講演は、民族の問題に焦点を当てた講演だと思いますが、彼女の生涯は、女性やジェンダーの問題と無関係ではありません。ラビヤ・カーディルさんは、彼女が弾圧されたとき、彼女が起こした「千の母親運動」(女性の起業に対して援助をする活動)も潰されたことを特に残念がっています。
 上のサイトに収録されている、ラビヤ・カーディルさんと娘アクダさんのインタビューの翻訳を読むと、ウイグル人の女性も、夫や息子に頼るのではなく、自分たち自身が力をつけて立ち上がってほしいというのが彼女の願いのようです。
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女性経済学者の地位向上めざして

 2002年から「中国女性経済学者 研究と訓練プロジェクト(中国女経済学者研究与培訓項目)」というものが、北京大学中国経済センター主催で始まっています。
 このプロジェクトの趣旨は「高等教育機関と研究機構の女性経済学者の研究能力を向上させ、女性経済学者の学術的地位の向上を促進し、中国の経済学研究とジェンダー研究を推進する」ことです。フォード財団の資金援助を受けています。
 プロジェクトの責任者は、カナダのウィニペグ大学の董曉媛教授と北京大学経済研究センターの趙耀輝教授です。
 ウェブサイトも昨年出来ました(「中国女経済学者」)。

 このプロジェクトでは、定期的に「ジェンダーと発展」をテーマにした国際シンポジウムを開催したり、毎年の中国経済学会で「女性学者フォーラム」をしたりしています。
 また、「中国女経済学者懇親会[聯誼会]」というネットワークも作りました。


 昨年から、何人かの会員が、IAFFE(International Association For Feminist Economics)の年次総会にも参加しています。先日、IAFFEの機関誌のFeminist Economicsの13巻3-4号(2007年7-10月)が、中国におけるジェンダーとWTOについての特集をしましたが(目次。今ならここから全文ダウンロード可能)、その中国語訳の準備もしているとのことです。

 さて、中国の女性の経済学者の地位については、王小波さんと董曉媛さんが2003年にカナダのウィニペグ大学で報告した論文がネットで読めます(「中国女経済学家状況調査及其分析」)。

 この論文によると、中国の女性経済学者については統計自体が不足しているのですが、ある調査によると、経済学の教師全体の32.8%を占めており、カナダ(12.8%)と比べても大変多いようです。
 ただし、地位が高くなると女性が少なくなるという現象は、やはり顕著です(下表)。
地位 女性比率
教授  10.4%
助教授 32.1%
講師  42.2%
助手  44.8%

 また、年齢的には、女性は若い世代の教師に多いです。その一つの原因は、女性の教育水準が向上して、博士や修士になる女性が増えたことです。しかし、もう一つの原因は、改革開放以来、教員を辞めて実業界に飛び込むことがブームになったことや教師の待遇が低かったことのために、男性教師が流失したのに対して、女性の高学歴者は、「時間的に自由が利いて、安定した職業である」教師になる傾向が強かったということだそうです。しかし、ここ数年は、教育制度が改革されて、教師の待遇が大幅に上がったので、若い世代での女性の比率が高さが継続するかどうかは注意しなければならないと述べています。

 収入は、男性教師(教授、助教授、講師)の平均が月収3072元であるのに対して、女性教師の平均は2363元と、かなり差があります。大学教員の場合、職称による収入の差が大きいので、それが響いているようです(下表)。
地位  性 収入 (カナダ)
教授  男 4138  (102140)
     女 3200  (93000)
助教授 男 2871  (82000)
     女 2464  (66430)
講師  男 2360  (67500)
     女 2045  (62000)
       (元)  (カナダドル)
 
 ただ、中国の女性経済学者たち自身は、性別が、賃金や自らの発展に影響しているとはあまり考えていない傾向があるとのことです。著者たちは、この点について、女性学者の「感覚が麻痺している」といいます。すなわち、中国では「女性が高等教育機関で教員になるとき、単に安定した、体裁がいい、わりあい暇があって、家族や夫の面倒をよく見られる職業だ」と考えているというのです。

 お二人の論文を読んで、日本と中国を比較してみると、地位が高くなると女性が少なくなる点は同じながら、大学の経済学の教員に占める女性の比率や大学の状況はずいぶん違いがあると感じます。
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 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
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 私への連絡はtooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpまで。

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