2007-01

『中国女性史研究』16号発刊

 私が入っている中国女性史研究会の機関誌『中国女性史研究』第16号が発刊されました。

 私も「中国のDVシェルターの歴史と現状」という原稿を書いています。内容は以下のとおりです。
 一、中国におけるDV(女性)シェルターの歴史
 二、シェルターの現状と問題点
 三、運動体の取り組み
 まとめ

 他には、以下のものが掲載されています。
 今号では、昨年お亡くなりになった「柳田節子先生追悼」の特集が組まれています。

[論文]
 「科挙家族における庶と妾―囲う側の事情と死去後の庶妾の選択」(李偉中/土田正・訳)
 「アメリカ人プロテスタント宣教師ワイト女史と『女鐸報』」(陳馨)
[柳田節子先生追悼]
 「先駆としての柳田さん」(小野和子)
 「Reminiscence」(Susan Mann)
 「柳田節子先生,后学心中的楷模」(小南)
 「柳田先生の思い出」(前山加奈子)
 「谷口やすよ先生追悼」(末次玲子)
[紹介]
 「打工妹之家10年の道程」(韓会敏/大橋史恵・訳)
 「日中共同翻訳プロジェクト『日本視角:戦争与性別』序文」(秋山洋子) 
[書評]
 「韓賀南著『平等与差異的双重建構―五四婦女解放思潮研究』」(宮川麻理)

 1冊1000円です(送料別。会員価格は800円)。
 バックナンバーを含めた目次の一覧はこのページです。お申し込みは、こちらのページからお願いいたします。

 なお、私は『中国女性史研究』には、第14号にも「現代中国女性史年表(1949-2004)」を書いており、第15号とこの第16号にもそれぞれ「現代中国女性史年表追補(2004-2005)」と「現代中国女性史年表追補2(2005-2006)」を書いています。
 ほかに、第2号にも「書評:Kay Ann Johonson,Women,the Family and Peasant Revolution in Chinaを書いています。
 このブログや私のHPと併せて読んでいただければ、うれしく思います。
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中国放送テレビ協会ドキュメンタリー委員会に女性監督クラブ設立

 昨年l2月16日、中国放送テレビ協会ドキュメンタリー委員会の下に、女性監督クラブ(女導演倶楽部)が設立されました。
 中国の女性監督(体制の内外の映画やテレビの制作者・研究者を含む)が作る職業的な社会組織です。
 クラブの主旨は、女性監督が協力して製作したり、研究・討論をしたり、懇親・交流をするための場を提供することです(1)
 「中国女性監督クラブ宣言」(2)も出していますが、「ここは女子主義者のサロンではなく、女性の映像創作者の暖かい故郷である」という一節で始まっており、フェミニズム色は薄いようです。

 朱羽君(中国メディア大学の教授)が主席で、ほかに副主席、秘書長、副秘書長などの役員を置いています(3)

 設立大会の様子は、新浪娯楽網でも報道されています(4)

 そしてこのたび、女性監督クラブのホームページ中国放送テレビ協会ドキュメンタリー委員会のサイトの中に設置されました。
 このホームページには、「クラブ情報」「女性監督の風采」「女性監督の活動」「女性監督の作品」「女性監督のブログ」の各コーナーがあります。
 「女性監督の風采」欄では、メンバーの経歴や作品が紹介されています。
 「女性監督の作品」欄からは短編の作品が鑑賞できるようです(私にはうまく見れませんが)
 「女性監督のブログ」からは、方燕妮・柴静・崔亜卿・楊陽のブログに行けます。

(1)「中国広播電視協会記録片委員会中国女導演倶楽部章程」(2006年12月16日)。
(2)「中国女導演倶楽部宣言」(2006年12月16日)。
(3)「女導演倶楽部領導成員名単」(2007年1月11日)。
(4)「女導演倶楽部成立 首先打造“美麗十分鐘”」(2006年12月17日)。
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三井マリ子さんの裁判の傍聴記

 1月25日に発行された、ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)のニュースレター46号に、私の以下の文が掲載されました。

[裁判傍聴記]
館長雇止め・バックラッシュ裁判
「現館長・桂容子さんの証人採用を実現!」


 昨年の10月30日、原告・三井マリ子さんの本人尋問がおこなわれました。
 三井さんは、豊中市の女性センター「すてっぷ」の館長(非常勤)に全国公募で採用され、就任後は自ら地域や学校に出向いて「出前講座」をするなど情熱を傾けてさまざまな仕事をしたこと、けれど、そうした仕事の次の展開を準備していたまさにその時に雇止めされたことを陳述しました。

 夜の市役所の会議室で3時間もバックラッシュ派の市議らに糾弾されたこと、「三井館長は『専業主婦は知能指数が低い』と言った」という彼らのデマを豊中市が放置したことも悔しさとともに語られました。バックラッシュ派に屈した豊中市は三井さんに隠れて後任の館長を探しはじめます。信頼していた事務局長もひそかに三井さんを裏切っていました。三井さんもそうした動きに気づき、「情報が私に来ない中で、私自身のことが決められている恐怖感」から不眠症にもなります。そして豊中市は、三井さんに不公正な次期館長(常勤にした)選考試験を形だけ受けさせて不合格にし、解雇しました。

 三井さんが最後に、「全国公募までした館長でも、非常勤ということで、こんな理不尽な辞めさせられ方をするのか」「豊中市はバックラッシュに屈しても、私は屈しない」と訴えたことが心に響きました。

 また、この間「支援する会」では、現館長の桂容子さんらの証人採用を求める要請ハガキを裁判長に送る運動をしました。桂さんも三井さんと同じく次期館長選考のための面接試験を受けたのですが、事前に選考委員の豊中市の部長から「うちは桂さんしかいない」「面接をするのは形式を踏むため」と言われており、面接を受けたのも自分ひとりだと思っていました。ご自身が三井さんらにそう述べています。

 12月25日の法廷で、次回の2月21日に桂さんの証人尋問をすると決定! ただし桂さんは、有期雇用でないとはいえ、被告の「すてっぷ」財団の職員なので真実を証言なさるには困難もあると思います。傍聴席から多くの方が見守ってください!


 ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)とは、1995年に結成された、職場での男女平等の実現を目的にした団体です。
 WWNは長い間、住友メーカー3社の男女賃金差別裁判の支援に力を入れてこられました。国連にも訴えに行かれるなどのさまざまなご努力の末、裁判ですべて勝利和解を勝ち取られました(そのすばらしい活動の記録は、ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク編『「公序良俗」に負けなかった女たち』[明石書店 2005年]にまとめられています。私も裁判の傍聴やビラまきなど、ささやかながら協力というか、活動をしました)。
 その後も、均等法において間接差別(=直接「女性だから」差別するというのではなく、たとえば「契約(派遣)社員だから」という理由で多くの女性にひどい待遇を押し付けて、結果的に女性差別をすること)をきちんと禁止させる努力などを続けておられます。
 つい先日の1月20日、「働く女性の全国センター」という、働く女性の全国的な団体が結成されましたが(年会費千円で、その目的[女性に対する差別の根絶、一人でも豊かに生活できる賃金など]に賛同する女性は誰でも参加できるようです。詳しくはホームページ参照)、この団体の結成にも、WWN会員の中の多くの人々がずいぶん役割を果たされたとのことです。

 文中にあるように、次回の館長雇止め・バックラッシュ裁判は、2月21日、午後1:45~大阪地裁809号法廷です。
 詳しくは、「館長雇止め・バックラッシュ裁判を支援する会」のHPで。
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江蘇省、極めて限定的に婚姻内強姦を禁止か?

 婦女権益保障法が2005年に改正されたのに伴って、各省で制定されているその施行規則(辨法)も、2006年から各省で改正されはじめています。

 江蘇省の施行規則も今年中に改正される見通しですが、その中で中国で初めて婚姻内強姦の禁止が規定されるようです。
 このことは、婦女権益保障法が2005年に改正された際、新しく「女性に対する家庭内暴力を禁止する」(46条)という規定が導入されたこととも関係があると見られます。
 江蘇省の「婦女権益保障法」施行規則の草案では、「女性に対するいかなる形態の家庭内暴力も禁止する」(下線は引用者)というふうに、家庭内暴力の定義を広くする(現在の最高人民法院の司法解釈では、家庭内暴力の定義は身体的暴力に限定されています。まあ江蘇省の規則も、「家庭内暴力」という言葉自体の定義がないと言えばそれまでですが)とともに、婚姻内強姦の禁止にも踏み込んだわけです。

 しかし、この婚姻内強姦の禁止は、非常に限定的なものです。すなわち「離婚事件の一審判決がまだ効力を生じる前、あるいは二審の期間に、夫は妻に性行為を強要してはならない」というものです(1)
 1990年頃から、離婚訴訟中の婚姻内強姦に関しては有罪判決もすでにいくつか出ていますので、その線で立法化した、あるいは一審判決後に限定した分、より限定的に立法化したにすぎないと言えると思います。

 こうした限定的な立法をすることは、「一審判決以前だったら(まして離婚訴訟前だったら)、性行為を強要してもよい」と解釈される危険もあるように感じます。中国の刑法の強姦罪にはもともと「夫を除く」と書いてあるわけではありませんので、とくにそういう感じがするのです。
 ただし、婚姻内強姦禁止という「世界的な立法の趨勢」の中に位置づけるという、非常に大きな視点で見た場合、江蘇省の規定は「夫が合法的婚姻の衣の下でほしいままに勝手なことをするのを取り締まることができるだけでなく、同時に社会的に男女平等のジェンダー観念を養成し、男女の実質的な平等の日に一歩近づく助けになる」(2)という面もあることは見なければならないでしょう。

(1)「江蘇擬修改婦女権益保障法実施辨法 婚内強奸性騒擾或被追究刑事責任」『中国婦女報』2006年12月30日。
(2)佟吉清「強奸,丈夫没有豁免権」『中国婦女報』2007年1月4日。
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農村に残された「留守女性」(2)

三、「農業の女性化」「留守女性」とジェンダー

 前回の(1)の続きです。
 「留守女性」という現象は昨日今日に始まったことではなく、1990年代から「農業の女性化」「男工女耕」という形では、中国で女性問題研究者たちに注目されてきました。
 たとえば、金一虹さんはすでに1990年に、既婚女性は家事育児の負担があるために農村を離れられないので、農業労働力の女性化が進んでいることを指摘しています。また金さんは、農村の労働力は「社会の工業労働力全体の貯水池」だが、農村の女性は「貯水池の中の貯水池」、すなわち「二級の貯水池」であるとも言っています(1)
 また、農村女性が「農業・副業生産のあまりに重い負担を一人で担い、くわえて多くて重い家事労働と子どもの教育など‥‥が女性の身体の健康に影響を与える」ことも、つとに気付かれていました(2)

 ただし、「留守女性」という言葉自体がよく聞かれるようになるのは割合最近のことのように思います。このことは出稼ぎの広がりを意味しているのかもしれません。

 いずれにしろ、こうした「農業の女性化」「留守女性」という現象には、ジェンダーの視点から見て以下のような問題があると指摘されています。

 第一の問題は、女性が農業にしかつけないことは、男女の収入の格差を拡大させるということです。
 高小賢さんはすでに1993年に「農業の女性化は女性の地位の向上に明らかに不利である。それは、女性の家庭の収入と社会的総生産額における女性労働の比重を相対的に下降させる」と述べています。なぜなら、「社会の総生産額に占める農業生産額の相対的比重は低下している」からです(3)
 2000年におこなわれた第2回中国女性の社会的地位調査では、農村女性の収入は男性の59.6%にとどまりました。10年前と比べて19.4%も格差が拡大しました。この調査をおこなったグループも、「農業労働の女性化という趨勢が、農村の女性の収入が男性より少ない主な原因である」と指摘しています(4)

 第二の問題は、「農村の女性が農業労働の主要な参与者であることは、けっして彼女たちに、所有者と管理者の身分を賦与しない」ことです(5)
 所有という面では、「責任田は、観念上・習慣法上は夫のものである」ということがあります(6)
 また、管理という面では、「現段階の農村労動力の非農産業への転移は往往にして兼業性を帯びており、転移した男性労動力が依然として家庭の農作業の管理者であるほか、責任田に何をどれほど植えるのか、売りに出すのかどうかなどを決定する」という指摘があります(7)
 また、「農業労働に新たな性別分業のモデルが出現している」ことも指摘されています。すなわち「農業労働を技術的構成の高い労働と非技術的な労働に分けると、前者の機械耕作・電気潅漑・植物保護などに従事しているのは男性であり、後者の日常的な耕作地の管理は多く女性が引き受けている」というのです(8)

 実際、家庭の農業生産を主に妻がになっている場合でも、無錫県(錫山市)の堰橋鎮の姑亭廟における調査で、農民女性に対して「あなたの夫が農業以外の仕事に従事し、あなたが家庭の農業生産を主に引き受けたとき、あなたの家の中での地位にどんな変化が発生しましたか?」と質問すると、複数回答可の質問であるにもかかわらず、「私が家の中で話す分量が増した」という回答は8.06%、「私が以前より多く決定をできるようになった」は11.37%、「私が家族の支出を決定する権力が増した」は3.79%、「夫が以前より私の面倒を見るようになった」は4.74%、「夫が以前より家事をするようになった」は6.16%にとどまっており、68.57%の人は「基本的に変化がなかった」と答えています(9)

 もっとも、責任田の管理や農業労働における性別分業という点は、夫が農村から離れた土地に出稼ぎに行くと、さすがに様相が変わってくるようです。つまり、女性が農業労働の主力になることによって、「自主的意識」や「独立した生存能力」「独立した人格」が形成される面があるとも言われます(10)
 ただしその分、次の問題、すなわち前回から述べてきた点──
 第三の問題として、女性の二重負担、三重負担が深刻になるようです。
 この点も、もちろん女性の発展・発達にマイナスです。前回述べたように、性犯罪の問題もあります。
 
 結局、大きな目で見ると、夫が出稼ぎに行ってしまう場合を含めて、農業の女性化は「『男は外をつかさどり、女は内をつかさどる』という考えの、現在の社会における表現形態であり、それは、相変わらず『女は家の中でじっとし,男は世界に向かって歩む』ということを体現している」と言わざるをえないようです(10)

(1)金一虹「経済改革中的農村婦女現状与出路」李小江・譚深主編『中国婦女分層研究』(河南人民出版社 1990年)33-40頁。
(2)任青雲・董琳「農民身份与性別角色──中原農村“男工女耕”現象考察」李小江主編『平等与発展』(生活・読書・新知三聯書店 1997年)184-185頁。
(3)高小賢「経済改革与農村婦女」『中国婦女与発展──地位 健康 就業』(河南人民出版社 1993年)116-117頁。
(4)第二期中国婦女社会地位調査課題組「第二期中国婦女社会地位抽様調査主要数据報告」『婦女研究論叢』2001年第5期。
(5)佟新・尤彦「反思与重構──対中国労動性別分工研究的回顧」『複印報刊資料 婦女研究』2002年第6期(原載は『浙江学刊』2002年4期)40頁。
(6)同上。
(7)高小賢、前掲論文
(8)金一虹「農村婦女発展的資源約束与支持」『複印報刊資料 婦女研究』2001年第1期(原載は『浙江学刊』2000年6期)29頁。
(9)笑冬『站在国家与男人之間──中国農村工業化的性別推動力』(中国物資出版社 2002年)95-98頁。
(10)任青雲・董琳、前掲論文、185頁。
その他、最近発表された孫瓊如「農村留守妻子家庭地位的性別考察」(『中華女子学院山東分院学報』2006年2期)が、以上のような問題をきれいにまとめているように思います(ただし、この論文は典拠がしっかり書かれていない)。
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レズビアンサイト「花開的地方」閉鎖

 今年1月1日付で上海のレズビアンサイト「花開的地方(花開くところ)」が閉鎖されました(公告)。
 以前から閉鎖は予告されており、心配する声もあがっていたのですが‥‥(voice「花開網站需要您的関注」女権在線サイト)。
 閉鎖した事情はよくわかりません。

 「花開的地方」サイトは2002年1月1日に開設され、以下のことをした最初のサイトであるとうたっていました。
▲中国大陸で最初のすべて女性がテーマのネットラジオ。
▲国内で最初のレズビアンのネット商店(のちに「花開女性ネット店」として、花開ブランドを創始)。
▲最初の「レズビアンの声[語音]の生の[現場]競売活動」がネット上の販売に新紀元を開く。
▲国内のレズビアンサイトで、初めて花開携帯画像を発信。
▲国内で最初にレズビアンの特色を持った宣伝Tシャツを作成。
(http://www.lescn.net/help.asp[2005年10月5日access])

 またネット誌(花開網刊)も刊行しており、貴重な情報を伝えていました。
 2004年末には上海に1088clubというバーを開設し、拠点にしました(こちらのサイトは存続しています)。

 単なるレズビアンの交流の場ではなく、中国各地や外国のレズビアンをめぐる活動や情報を伝え、レズビアンの権利擁護の主張を掲載するなど社会的な活動をしていました。
 現在、社会性を持ったレズビアンサイトは他にもいくつかありますが(北京拉拉沙龍阿拉島など)、惜しまれます。

 なお、中国におけるレズビアングループの活動の歴史については、He Xiaopei“Chinese Queer(Tongzhi) Women Organizing in the 1990s”Chinesn Women Organizing: Cadres, Feminists, muslims, queers. (ed.Hsiung, Ping-Chun; Jaschock, Maria; Milwertz, Cecilia), Berg publishers, 2000に詳しいです。
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香港でセックスワークと法律についての会議

 昨年9月にこのブログで書いた香港のアイドル女性の盗撮問題ですが、昨年11月1日、盗撮写真を載せた雑誌が裁判所から猥褻出版物の指定を受けました。
 詳しくは、アジア女性資料センター『女たちの21世紀』の48号(2006年秋号)に掲載されれている、小出雅生「盗撮写真掲載誌に猥褻出版物」(同誌57頁)を見てください。
 盗撮の被害にあった鐘欣桐さん(亜州明星総覧HPの中の彼女を紹介した日本語版ページ)は写真の返還と賠償を求めた訴訟も起こしているようです。

 『女たちの21世紀』の上の号には、要友紀子・武田明恵「セックスワークを不安全にする越境組織犯罪防止政策」(同誌28-31頁)という文章も掲載されているのですが、その中で、昨年10月21日から2日間にわたって香港で紫藤と香港城市大学応用社会科学部との共催で「売春非犯罪化会議」という国際会議が開かれたことが2ページにわたって紹介されています。
 参加したのは香港のほか、イギリス・スウェーデン・ドイツ・オーストラリア・ニュージーランドなど6カ国のセックスワーカーや研究者、NGOのメンバーだったそうです。 要さんと武田さんの文章は、日本の人身売買取締政策がセックスワーカーの排除とセックスワーカーの労働環境の悪化をもたらしたこと、その点は諸外国でも同じであることを述べたものですが、香港の「売春非犯罪化会議」でそうした諸外国の状況が話し合われたことをレポートしています。

 上の会議については、『紫藤会訊』19期に「千言万語―性工作与法律」会議として掲載されています。

 『女たちの21世紀』の上の号は、「不安の動員 守られるのは誰の安全なのか」という特集や「北コリア・スタディーツアー」の報告もあって、大変興味深い内容でした。
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農村女性の自殺問題

 「農村に残された『留守女性』(2)」はしばらく後回しにして、今回は農村女性の自殺問題を取り上げます。

 近年、中国では農村の女性の自殺率が高いことが問題になっています。
 最近もNGOの農家女文化発展センターの謝麗華さんが、「毎年わが国では、自殺によって28.7万人が死んでおり、そのうち女性が15.7万人で、女性が男性より25%多い。また農村の女性の自殺は、都市の女性の3-5倍である」(数字は北京心理危機研究・関与センターの費立鵬さんの研究報告による。この報告の根拠は1995-1999年の政府の統計データなどによる)と述べています。

 謝さんが農村女性の自殺260件を調査したところ、自殺したのは15-34歳が90%、既婚者が68%、夫婦関係や家庭の矛盾による自殺が66%だったそうです。
 謝さんは、農村女性の自殺をもたらす5大要素として、1.男性中心と男尊女卑の伝統的観念と伝統文化、2.農民と農村女性の弱者としての地位、3.農村の組織構造と社会的サポートシステムの欠如、4.社会と公衆が自殺という現象と心理の問題を軽視していること、5.自殺の道具である農薬が簡単に手に入ることを挙げています。
 謝さんは、具体的にはとくに、「女性の自殺の大きな部分が家庭内暴力によって引き起こされている」と指摘しています(1)
 謝さんはまた、上記の農村の組織構造と社会的サポートシステムの欠如の問題についても次のように述べています。土地請負制になって生産の単位が生産隊から家庭になって、農村の社会組織がなくなった。男性が都市に働きに出て、女性の労働強度が増加しているのに、集団生活や文化生活が欠けていて、個人と家庭が孤立している。しかるに女性の唯一の組織である女性代表会議(婦連の末端組織)は計画出産の活動しかしておらず、女性はどこに助けを求めれば良いかわからない。
(以上は、謝麗華さんのブログ「家庭暴力与農村婦女自殺」エントリー[2006-11-21]より)(2)

 こうした問題に対する取り組みも始まっています。
 家庭内暴力に対する取り組みは、まだ小規模な活動ですが、家庭内暴力反対ネットワーク(反対家庭暴力網絡)の活動が有名です。
 また、とくに農村女性の自殺問題に焦点を当てた取り組みもあります。すでに1996年、『農家女百事通』(1993年創刊。2003年~『農家女』)誌は、農村女性の自殺が多いことから、個別の事件について追跡調査を始めました。その編集長だった謝麗華さんは、同誌に「彼女たちはなぜ自殺の道を歩んだか」というコーナーを開設、1999年には『中国農村婦女自殺報告』という本も出版します。

 『農家女百事通』誌は、2001年にNGO「農家女文化発展センター」に再編されますが、同センターは、2002年からフォード財団の資金援助を得て、「農村女性生命危機関与コミュニティプロジェクト」という農村女性の自殺問題への取り組みを開始します。

 この活動は婦連にも協力を求めますが、なかなか協力は得らなかったようです。ある婦連の幹部は「私たちのところには女性の英雄(巾幗英雄)、女性の腕利き(女能手)、女性の労働模範などの良い手本がたくさんいるのに、どうしてそういうプロジェクトをしないのか。自殺のようなことはマイナス面であり、それが露わになると、行政の成績に影響する」と言ったそうです。

 それでもいくつかの県の婦連からの協力を得ることができ、同センターは同年8月、河北省の3つの県の6つの村に「農村女性健康サポートグループ(農村婦女健康支持小組)」を設立します。
 「健康」といっても狭い意味ではなく、心理的健康のことです。また「心理的健康」といっても精神医学上の意味ではなく、「心、精神(中国語の「霊魂」)」という意味だそうです。
 「自殺関与グループ」などという名称にしなかったのは、そうした名称は刺激的すぎるというだけでなく、本末転倒になるからです。

 活動は、以下のような手順で進められました。
1.実情調査
 県の婦連と県・郷の病院の救急センターが共同で女性の自殺の情況を調べ、調査報告を作成。
2.リーダーの養成
 研修クラスを設け、リーダーや自殺しようとした人の研修をする。
 その中で、たとえば、以前はマージャン以外は何もやる気がしなかった人が、学習以後、廃品回収ステーションの仕事を請け負って、充実した生活をするなどの変化が生まれた。
3.カリキュラムの計画
4.女性健康サポートグループの設立
 2002年8月、河北省正定県の上曲陽村・西叩村に、2003年10月、海興県の后程村・張王文村に、2004年8月、青龍県の東蒿村・三十六◇村に設立され、以下のような活動をおこなった。
①文芸娯楽隊の活動‥‥たとえば、ある村では老若男女が秧歌(ヤンコ。田植え歌)を歌い踊る、エアロビクスなど。
②グループの活動室を設置。
③家族の健康の記録を作る。
④農村女性全員に健康診断。
⑤図書室や図書コーナーの設立。
⑥カラーテレビやDVD、書架などを活動室に配置、図書や科学技術のソフトを贈呈して、活動室を村民の閲覧室・情報交流の場、村民クラブに。
⑦農作業への科学技術の導入活動と結合。
5.プロジェクトの展開によって末端の女性代表会議の活動内容を充実させる
 従来は計画出産の活動しかしていなかったのを、プロジェクトと結びついた活動をするようになり、たとえば、ある村では、抑鬱症の女性や夫の賭博で借金がかさんで自殺を図った女性の相談や世話をするようになった。

 こうした活動の結果、上の村々では自殺者が出ませんでした。
 また、こうした活動がテレビや新聞でも取り上げられることによって、農村女性の自殺問題に対する社会的関心が高まったことも成果です。

 ただし、以下のような困難にもぶつかったとのことです。
1.村民委員会の改選の影響。健康サポートグループのグループ長は、一般に村の婦連の主任がするが、村民委員会が改選されて、新しい婦連の主任が無関心だったので、活動がストップしてしまった村があった。
2.貧困な県では、機構の簡素化がおこなわれているが、その際に、婦連が一番犠牲にされやすい。たとえば、ある村のグループ長は婦連の主任でないために、その村においてはポジションを得ていない。
3.婦連の活動方式は、相変わらず上から下への注入式に慣れており、草の根式には慣れていない。今後婦連の工作の重点を、やり手や有能な人から、農民や弱者層へと移していく必要がある。

 昨年、この「農村女性生命危機関与コミュニティ行動」の記録が、1冊の本にまとまりました。『生命危機関預社区行動──項目操作手冊』です。この全文が農家女文化発展センターのサイトで読めます。
 私もまだよく読めていないのですが、上の本には、プロジェクトに携わったさまざまな人々――婦連やサポートグループのリーダーの文章のほかに、そのメンバーである農村女性の体験記が収められています。また自殺を試みて失敗した後にグループに参加した農村女性の文章(口述筆記が多い)も多数収められています。

 なお、農村の自殺問題に関しては、呉飛さんElegy for Luck: Suicide in a Country of North China, berkley.Ca. :The University of California Pressがあり、近く中国語訳も『福殤:華北某県自殺研究』として出版されるようです。

 ※追記:近年は状況が変わってきているという指摘もあります。
 「中国の農村女性の自殺率が低下? その原因は?」(2011年10月13日付の本ブログの記事) 

(1)関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』(人文書院 2005年)の「ドメスティック・バイオレンス」の項目(私が執筆)でも、以下のような農村女性へのアンケート結果を紹介しました。
 まず、「殴られたことがある」という回答が40.1%でした。都市に比べて農村は高率です(別の調査では、都市住民27.5%に対して、農民42.0%)。
 また「ある」と回答した人に、「殴られた後、どう思ったか」と尋ねると、12.7%も「自殺を考えた」という回答がありました。
(2)農村女性の自殺問題に関しては、さまざまな新聞記事も出ていますので、ご覧ください。たとえば「她們為何軽生―中国年軽女性自殺状況報告」などがあります。
  
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農村に残された「留守女性」(1)

 今回は、最近少しずつ問題になりだした、夫が都市に出稼ぎに行って農村に残された女性=「留守女性」の問題についてまとめてみました。その第1回目です。

一、農民労働者の背後に埋もれた「留守女性」の問題

 農民の女性は、農民に対する差別と女性に対する差別という二重の差別を受けています。
 その具体的現れの一つは、前々回述べたように都市に出稼ぎに出た農民労働者の中でも女性は差別されているということですが、もう一つがこの「留守女性」の問題です。

 都市に出稼ぎに行った農民は、都市の中では差別されますが、それでも農村にいるよりは多くの金を稼ぐことができます。ですから女性も、未婚のうちは多くの人が都市に出稼ぎに行くのですが、結婚すると、子どもや家族のことがあるため農村に残らざるをえなくなる場合が多くなります。
 すなわち、「もし農民労働者の権益の焦点が、農民労働者が都市社会で受ける不公正な待遇であると言うならば、留守女性の受けている不公正は二重である。彼女たちは二元的な都市と農村の分割体系の下で大きな差別をされているだけでなく、農村の家庭の一方として男性の農民労働者の背後に埋もれている」(南京大学社会学教授・張玉林)というわけです。

 上海理工大学社会学教授の王波さんは「農民労働者の権益の問題はいまだかつてなく取り上げられているのに、留守女性の直面している巨大な圧力と困難はまだふさわしい関心を寄せられていない」と指摘しています(1)

二、留守女性の基本的情況

 「留守女性」は、全国で四千万人から五千万人に達すると言われます(1)

 2006年8月に徐州市の婦連が調査したところ、「留守女性」は、年齢的には31~45歳に比較的集中していました。
 夫が出稼ぎに行っている期間は、85%が1~5年、最も長い人では20年だったといいます。
 夫が家に帰ってくるのは、86%の人が「毎年1,2回」でした(2)

三、留守女性の困難

1.農作業と老人、子どもの三重負担

 上の徐州市の婦連の調査では、「家事と農作業は誰がやっているか」という質問に、100%、すなわち留守女性の全員が「自分」と答えました。
 南寧市婦連が2006年におこなった調査でも、80%の人は田畑の管理をしなければならず、77%の人は子どもの面倒をみなければならず、62%の人は老人の面倒を見なければならないとのことです(3)

a.農作業
 『中国経済週刊』の記者が「留守女性」を取材したところ、「労働力が足りない」「一人では忙しくて、手が回らない」「夫が早く金を稼いで帰ってきてほしい」という声が最も多く聞かれたといいます。
 なんといっても農作業は多くて重い肉体労働、疲れ果てます。
 また女性は技術教育を受けていないので、技術的労働も不得手です。たとえば、ある女性は農薬中毒になって「必死で水を飲む」こともあるとのこと。
 体が良くない女性にとっては、ぶつかる困難はいっそう大きい。たとえば、ある女性は一人で五頭の牛を飼っているため、毎日草を刈って餌をやらねばならず、疲労のために腰椎間板突出になりました。本来は手術が必要なのに、金がないために手術を受けられないといいます。薬代だけでも負担であり、夫はいないのに自分は病気で、気がもめてたまらないとのことです(1)

b.子どもの教育、しつけ
 農作業だけでも大変ですから、子どもの教育までなかなか手が回りません。
 一人だけでは、子どもをしつけることもままなりません。ある教師は、夫が出稼ぎの家では、勉強せずに外でぶらぶらしている子どもが比較的多いと述べています(1)
 また、農村の女性はあまり教育を受けさせてもらっていないために、子どもの教育も十分できない場合も多いようです。
 南寧市の婦連の調査では、「留守女性」の学歴は初級中学(日本の中学校)が58%、小学校が33%でした(3)。ある女性は「子どもに『母さんは字を知らないのに、何がわかるの』と言い返されて、とても辛い」と述べています(2)

c.親の世話、介護
 さらに「留守女性」には通常、世話をしなければならない老いた父母が一人か二人います。介護が必要だと大変です(1)

 要するに、女性は農業生産の主力軍になっているのに、農業労働のほかに伝統的な家庭役割を担わなければならないため、労働の強度も増し、労働時間も長くなるということです(1)
 『中国婦女報』の記者の調査では、「労働の負担が重く、体の具合が良くない」と答えた人が約75%を占めたといいます(2)

2.夫との関係:夫が愛人をつくる、離婚。

 夫が、華やかな都会で女性を作る場合もあります。豊県という県の婦連の調査では、「あなたは一番夫の何を心配していますか」という問いに対して、少なくない人が「愛人を作ること」と答えました。『中国婦女報』の記者の調査では、それが心配で夫と一緒に都会で働きたい女性が多くいるとのことです(2)
 もちろん出稼ぎの労働者の経済状態は良くないですし、そんな心配はせず、夫の健康と安全だけが心配だという妻もいます。
 ただ、交流が少なくて感情が疎遠になりがちであること、離婚事件が多く発生していることは確かです。

 また離婚する場合、離れて暮らしている夫の収入の状況がわからないために、夫に「貯蓄はない」などと言い張られて、財産分与が受けられないなど、女性の権利が十分守れないことも多いです(3)(4)

3.犯罪、とくに性犯罪の標的に

 村に残されたのは、女性と子ども、老人だけなので、治安・防犯の力が低下し、泥棒も増えています(1)

 「留守女性」はすでに農村の強姦事件の主な対象になっています。ある調査によると、農村の性侵害事件の被害者の70%は「留守女性」です。
 そうした事件の加害者はみな、夫が出稼ぎに行っていることを知っている同じ村の村民であり、隣り近所の者もいるとのことです。加害者の多くは犯行を繰り返しますが、被害者は強姦されたことで面子を失ったり、他人の噂になったりすることを恐れ、また家族の理解が得られないために事件を届け出られないといいます。
 『中国婦女報』の記者が取材した、ほとんどすべての「留守女性」はぐっすり眠ることもできないと言ったいいます。ある女性は、暑い日でも夕飯後に涼みに出ることもできず、夜は犬の声や人の足音にも身震いするとのことです(2)

4.精神生活

 南寧市婦連の調査によると、40%の女性にとって最大の娯楽はテレビを見ることで、他の娯楽は、市(いち)に行ったり世間話をしたりすることくらいだということです(3)

 「留守女性」はこのように、さまざまな面で困難な状況に置かれています。
 次の「農村に残された『留守女性』(2)」では、「留守女性」とジェンダーや性別分業との関係、「留守女性」問題に関する婦連の対策などについて述べたいと思います。

(1)張俊才・張倩「5000万“留守村婦”非正常生存調査」『中国経済週刊』2006年40期。
(2)邢志剛・李昭先「“留守婦女”生存状況堪憂」『中国婦女報』2006年12月5日。
(3)「南寧“留守婦女”生存状況堪憂」『中国婦女報』2006年8月26日。
(4)紹雨・会東・陸峰「関注農村“留守婦女”婚姻危機」『新華日報』2005年9月8日。
他に「走進農村留守婦女的現実生活 心頭的“三座山”」『半月談』(2005年11月10日)「“留守婦女”酸辣苦渋」(2006年11月7日)西部女性HPも参照してください。
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2006年の女性をめぐる話題

 先日、『中国婦女報』の編集部が今年の元旦に発表した2006年の「十大ニュース」をお伝えしました。
 その4日後、王春霞記者は同紙に「2006年のけっして周縁的ではない女性の話題」と題する記事を書き、2006年に話題になった以下のようなことを、女性をめぐる代表的な話題として挙げています(1)

 今回は、それらを論じた当時の『中国婦女報』などの記事を注に付しつつ、王さんの挙げた出来事を簡単に紹介します。

高齢の妊産婦の「出産[生]」と「昇進[升]」の痛み
 2006年6月、『中国婦女報』の記者が調査したところ、最近妊産婦が高齢化していることがわかりました。北京市人民病院では30歳以上の妊産婦が52%、35歳以上の妊産婦が12%でした。
 同紙の記事は、あまりに高齢での出産には危険があるけれども、こうした妊産婦の高齢化の背景には、出産すると昇進できないだけでなく、賃下げまでされる場合もあるなど、出産が社会的に保障されていないという状況があることを指摘しています(2)

女性作家が「命懸けで反抗する」ことに反対
 22歳のある女性が強姦犯に抵抗して殺されました。
 作家の陳嵐さんは、「強姦に命懸けで反抗するのは、人類の恥辱!」という文を発表します。
 陳さんは、女性は強姦に命懸けで反抗すべきだと唱える男性は、「男性の性の専属権は女性の生命よりも重要である」と潜在的に認識していると指摘し、このような要求は道徳的に行き過ぎであって、女性自身の安全を保つことを第一にすべきであると主張しました。陳さんはまた、「女性がこの時に守っているのは、彼女の後ろの男性の権益であり、彼女の生命権もまた自己のものではなく、ある男性のものである」と指摘しました(3)

女性労働者の突然死が引き起こした重苦しい話題
 2006年、全国各地で農村から都市に働きに出てきた女性が突然死・過労死するという事件が相次ぎました。
 その背景には、職場の高温・有害物質・粉塵など、労働環境の劣悪さ、残業や休日出勤などによる労働時間の長さ、法律や政策の無力さ・貧弱さなどがあることが指摘されました(4)

「お妾さん」の権利を擁護をすべきか?
 2006年6月、法学修士の鄭百春さんが「お妾さん(二奶)の権利擁護ネット」というホームページを開設します。
 鄭さんとその支持者は、「『お妾さん』もまず人間であり、婚姻道徳には反しているとはいえ、一人の公民として、法律が一人一人の公民に与えた権利は持っている」ということを主張しました。
 それに対して、「『お妾さん』の権利の擁護は、別の弱者である『妻』を苦しめる」という意見もありました。
 『中国婦女報』では、この問題をジェンダーの視点からはどう考えるべきかが論じられました(5)

張事件が暴き出した「裏のルール[潜規則]」
 女優の張さんは、映画監督が役と引き換えに女優に肉体関係を強要しているという実態を告発、監督らとの性行為を録画したビデオやテープを公開、ネットにもupしました。
 張さんは、男性のプライバシーを犯しているとか、性の問題を公の場にさらしたとか、動機に邪まなものがあるとかいう非難を受けます。
 しかし呂頻さんは、張さんが「取り引き」という名の下の女性に対する性的搾取を暴き出したことこそが重要だと『中国婦女報』で指摘しています(6)

花季の少女がやむなく「赤ん坊を出産することによって強姦を証明[産嬰証奸]」
 16歳の少女が、雇い主に強姦されました。彼女は事件を警察に届け出る時期を失してしまったため、赤ん坊を出産することによって強姦されたことを証明しようとします。
 この事件に対しては、こうしたやり方は犯人を懲罰するためにも、自分のためにも適切ではないけれども、彼女がそうした背景には、社会的な救助のメカニズムの欠如があることが指摘されました(7)

億万長者が集団で花嫁を募集
 憶万の資産を持つ富豪が広告を出して結婚相手を募集するということは、近年ずっとあったようですが、2006年は特にその規模が大きく、話題になったそうです。
 そうした広告は、基本的にはみな、妻には「年が若い、美人、上品で、大学や専門学校以上の学歴があり、初婚である」ことを求めているのですが、こうした広告を出す富豪は、通常中年の男子で、再婚だといいます。
 こうした広告に対しては、これは一見個人的なことに見えるけれども、広告として出すことは社会的な影響があり、また女性を人格的に傷つけるという指摘もあがりました(8)

(1)「2006那些並辺縁的女性話題」『中国婦女報』2007年1月5日。
(2)「関注“高齢産婦”話題」『中国婦女報』2006年1月20日、「(職業女性生育困境調査・現状篇)“生”“升”困境致産婦高齢化」『中国婦女報』2006年7月13日「(同・原因篇)生育的代価,誰来分担」『中国婦女報』2006年7月14日「(同・出路篇)生育這件大事需統籌解決」『中国婦女報』2006年7月15日
(3)陳嵐「面対強奸,冒死反抗是人類的恥辱!」(2006年7月22日。ブログの一部から引用)、「女作家反対“冒死反抗”引争議」『中国婦女報』2006年7月22日「女作家陳嵐:生命権高于一切」『中国婦女報』2006年7月25日
(4)「女工連続4天加班22小時猝死」『中国婦女報』2006年6月3日、「女工猝死引発権益保護沈重話題―来自粤閩両地女工権益保護調査系列報道(一)」『中国婦女報』2006年8月31日「女工被迫陥入加班“潜規則”中無力抽身―同(二)」『中国婦女報』2006年9月1日「悪劣環境漸成女工“慢性殺手”―同(三)」『中国婦女報』2006年9月2日「女工権益保護現状呼喚維権新思路―同(四)」『中国婦女報』2006年9月4日
(5)「二奶維権網」(非常につながりにくい)。『中国婦女報』における議論としては、「為“二奶”討説法 深陥倫理与法的悖論」2006年10月17日郭慧敏「社会性別視角下的“二奶維権”」2006年10月17日「該不該為“二奶”維権?」2006年12月23日など。
(6)張さんのブログ呂頻「如何譲張事件不僅是醜聞」『中国婦女報』2006年11月28日洛洛「無権者的無恥」『中国婦女報』2006年12月5日
 なお、この事件については、『南方週末』2006年11月23日付の「張:我用明擺着的無恥対付潜在的無恥」と題する、張さんに対するインタビュー記事を要紘一郎さんが日本語に翻訳していらっしゃいます。
 週刊誌も、『週刊ポスト』2007年1月12・19日号が「『好色映画監督は許さない』で北京は大騒ぎ 中国大人気女優が『性上納ビデオ』を復讐公開」として報じています。この記事も張さん自身にも取材しており、張さんの主張を伝えるものになっています。ただ、この記事の締めくくりが「女を敵に回すと怖いのは中国でも同じようだ」となっているのはともかく、特集の題名が「仰天オンナの2連発!」となっていて、張さんを「仰天オンナ」扱いしているのはいただけない。
 また、『クーリエ・ジェポン』2007年1月14・18日号も報じていますが、こちらも、「中国版・石原真理子?」という見出しであり、やはり告発した女性に焦点を当てた見出しになっています(なお、日本のマスコミの石原真理子さんの本に対する報じ方についても、DVをした玉置さんではなく、告発した石原さんを非難するなど、問題が大きいことを伊田広行さんが指摘していらっしゃいます)。
(7)「花季少女無奈“産嬰証奸”」『中国婦女報』2006年7月7日「“産嬰証奸”,少女心里有多苦?」『中国婦女報』2006年7月11日
(8)丁香花・葉静「又見富豪徴婚」『中国婦女報』2006年9月23日
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農民女性の権益に関する全国婦連の調査

 昨年の11月22日、全国婦連副主席の莫文秀が「全国農村女性の権益状況・権益擁護要求の調査報告」を発表しました。
 これは、全国婦連が浙江・福建・吉林・湖北・河南・寧夏・陝西・貴州の8つの省の416の村と北京・広州・武漢・成都の4つの都市でおこなったもので、調査対象は6596人だったとのことです。

1.出稼ぎ女性

 女性の農民労働者(農村から都市に働きに出ている出稼ぎ労働者。農村戸籍のまま)のたちの月収は平均で859.01元。男性の場合は1033.68元であり、その差が20%ありました(1)
 また、彼女たちの50.2%が非正規就労(インフォーマルな就労。属している「単位」がない)でした。男性の場合は40.2%なので、その差が10%あります(2)
 低賃金の農村からの出稼ぎ労働者の中でも、さらに差別されているのが女性だということです。

 女性の農民労働者で、きちんと単位(企業など)と労働契約をしているのは40.2%だけでした。
 医療保険・労災保険・養老保険・失業保険・出産保険に入っていたのも、それぞれ23.8%、19.1%、15.8%、8.1%、6.7%だけでした(2)
 また、産休のときに賃金を全くもらっていない人が64.5%を占めていました(3)

2.農村の女性

 農村でも、土地を持っていない女性のうち、「結婚後に失った」「離婚後に失った」という人が29.2%を占めており、婚姻状況の変化が女性から土地を奪っていることも浮き彫りになりました(1)

 また、農村女性の収入は、2/3が年収が3000元以下でした。男性の場合より、3000元以下の人が24%多かったとのことです(1)

 以上のような点は、以前から指摘されてきたことです。しかし今回、全国婦連自身のかなり大規模な調査で裏付けられたことには意義があると感じます。より詳しいデータを見てみたいと思いました。

(1)「農村婦女権益状況和維権需求調査結果顕示─女性特殊権益亟待維護」『中国婦女報』2006年11月22日
(2)「女性農民工半数非正規就業 享受社会保険比例低」『中国婦女報』2006年12月11日
(3)「大多数女農民工未能享受産假待遇」『中国婦女報』2007年1月4日
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『中国婦女報』による2006年「十大女性ニュース」

 1月1日付の『中国婦女報』に、同紙の編集部が選んだ2006年の「十大女性ニュース」が発表されました(1)
 今回は、それらの事件を報じた当時の『中国婦女報』の記事を付しつつ、それらを簡単に紹介します。

 『中国婦女報』は、中国共産党の指導の下にある中華全国婦女連合会の機関紙なので、国家的なニュース、公的なニュースが中心です。

1.調和[和諧]家庭の建設が突っ込んで繰り広げられる
 2006年10月に中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議で「社会主義調和社会の建設に関する若干の重要な問題に関する決定」(2)が採択されました。
 その決定は「家庭の美徳の教育の展開」も明確に指摘しており、「家庭は社会の細胞であり、調和家庭の建設は調和社会の建設の重要な構成部分である」ので、中華全国婦女連合会は、調和家庭を建設する活動をした、とのこと。

2.婦女権益保障法の施行細則が続々と制定
 新たに改正された「婦女権益保障法」の公布と施行[2004年8月公布、12月施行]の後、各省で続々とその施行細則が制定されはじめました。

3.「二つの要綱(両綱)」の中期評価の監督指導が全国的に展開
 国務院が2001年、「中国女性発展要綱(2001年-2010年)」と「中国児童発展要綱(2001年-2010年)」を公布しましたが、2006年はその二つの「要綱」の中期評価年でした。
 2006年8月から10月にかけて、国務院女性児童工作委員会などが15の中期評価監督指導グループを結成して、全国で監督指導工作をしました(3)

4.海峡両岸(中国と台湾)の女性の交流活動
 2006年9月19日から24日まで全国婦連の主宰による海峡両岸女性交流活動が北京などでおこなわれました(4)

5.陳馮富珍、WHOの事務総長に
 2006年11月9日、香港の陳馮富珍さんがWHOの事務総長に選出されました(5)

6.第2回「十大傑出母親」発表
 2006年12月22日、第2回「十大傑出母親」が発表されました(6)

7.鉄凝が中国作家協会の主席に当選
 2006年11月12日、女性作家の鉄凝が中国作家協会の第三代主席に当選しました。新中国成立以来、初めて女性作家が作家協会の主席になりました。初めての50歳以下の作家の就任でもあります(7)

8.女性のブロガーが日増しに活躍
 2006年8月までに中国のブロガーは1750万人に達し、女性のブロガーも日増しに活躍しています。

9.中国女性児童博物館の定礎がおこなわれた
 2006年3月27日、全国初の女性と子どもをテーマとする国家クラスの博物館である中国女性児童博物館の定礎式がおこなわれました(8)。 この博物館は、2007年に竣工し、2008年の北京オリンピックの前には公開される計画だとのことです。

10.初の女性緑書を発表
 2006年3月1日、中国初の「女性緑書」である『1995-2000年:中国ジェンダー平等と女性発展報告』が刊行されました(本ブログの記事)。

(1)「本報編輯部評出十大女性新聞」『中国婦女報』2007年1月1日。
(2)「中共中央関于構建社会主義和諧社会若干重大問題的決定」『中国婦女報』2006年10月19日
(3)「両綱中期評価估督導8至10月進行」『中国婦女報』2006年7月26日「“両綱”督導動真格 個別彙報◇了殻 国務院“両綱”中期評估督導組声振陝西」『中国婦女報』2006年8月24日「国務院“両綱”評估督導組在内蒙古評估督導后表示-内蒙古落実“両綱”政府投入相対不足」『中国婦女報』2006年9月7日など、『中国婦女報』に記事多数。
(4)「我們的関切 我們的観点-第三届海峡両岸婦女発展交流研討会分論壇総述」『中国婦女報』2006年9月20日など、『中国婦女報』に記事多数。
(5)「陳馮富珍将出任世衛組織総幹事」『中国婦女報』2006年11月9日
(6)「中国十大傑出母親評選掲曉」「第二届“中国十大傑出母親”簡要事跡」『中国婦女報』2006年12月23日。
(7)「鉄凝当選中国作協主席」『中国婦女報』2006年11月14日
(8)「中国婦女児童博物館奠基」『中国婦女報』2006年3月27日。
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