2006-10

アステラス製薬の元上司らの証言、説得力なし

 9月20日につづいて(その時の報告)、昨日も、アステラス製薬の仙頭史子さんの男女差別裁判(支援する会のHP)を傍聴してきました。
 ただし、私は午後からしか傍聴できませんでした。また簡単なメモと記憶によって書いていますので正確でない箇所もあると思いますが、以下簡単に報告します。

 今回は仙頭さんの元上司らが4人、会社側の証人として登場しました。
 各証人は、それぞれもっともらしい理由を言って、仙頭さんに対する処遇を正当化しようとしました。

 〇仙頭さんは、はじめは藤沢薬品(のちのアステラス製薬)の研究所で業務をしていたのですが、女性は何年たっても単純なルーチン業務が中心だという男女差別がありました。
 そこで、仙頭さんは「結果が数字に出る営業職であれば男女差別されないのではないか」と考えて営業職に応募し、藤沢薬品で女性初のMR(製薬会社の営業職のこと)になりました。ところが、営業職で男性と同等の成績をあげても、賃金格差は開く一方でした。

 今回の証人尋問では、営業職時代の元上司が「仙頭さんは、目標を達成することは評価できたが、プロセス管理が不十分だった」と証言しました。
 「プロセス管理が不十分だった」というのは、「週報(?)」というその時々の報告書のようなものをきちんと出していなかったいうことだそうです。私はそれを聞いて「プロセスというのは、目標を達成するための手段にすぎないはずだが? 基本的には成果が上がっていればいいのでは? 少なくともそんなことで、このひどい格差が正当化されるはずはないが?」と素朴に疑問を感じました。
 案の定、反対尋問では、原告側の弁護士はその点を追及しましたが、まともな答えは返って来ませんでした。
 また「週報」の問題は、「チャレンジシート」という自分の今後の目標を書く書類のようなものを作る際にも、その点を別に指導していなかったそうです。この点から見ても、いったいそれがどれほどの問題なのかを疑問に思いました。

 〇藤沢薬品ではその後、1997年に職群制(いわゆるコース別)が導入され、営業職はC職群(いわゆる総合職)に分類されることになりました。仙頭さんは「これで私も総合職」とお喜びになったそうです。
 ところが、なんと藤沢薬品は、そのとたんに仙頭さんを子会社に出向させることによって、B職群(いわゆる一般職)に格付けしました。

 今回の証人尋問では、その当時の人事の人が、「仙頭さんを営業職から外したのは、適性判断と会社の営業戦略の変化、本人の希望によるものだ」と証言しました。
 ・「適性判断」とか「会社の営業戦略の変化」というのは、「会社は一般用試薬から、研究用試薬に重点を移行しようとしていた。仙頭さんは『不特定多数に会うのは苦手』と言っており、一人一人の先生に説明しなければならない研究用試薬の営業は苦手そうだった」といったことです。
 ところが反対尋問で、原告側弁護士が証人に、「『不特定多数に会うのは苦手』という言葉の意味を具体的に聞きましたか?」と尋ねると、証人は、「具体的には確かめていない」と認めました。実は仙頭さんが言っていたのは、講演などによって「不特定多数」に営業するのは苦手という意味であり、完全に意味を取り違えていたのです。
 また、弁護士さんが「仙頭さんは研究用試薬を売っていなかったのですか? 売っていたでしょう?」と追及すると、「売っていました」と認めました。
 ・「本人の希望」というのは、証人によると、「仙頭さんが、他の職種を希望すると言っていた」ということだそうです。
 しかし、反対尋問では、仙頭さんが言っていたのは遠い先の話であり、仙頭さんはむしろ今後の営業活動に大いに意欲を示した文書を残していたことが明らかになりました。
 「それなのに、なぜすぐに子会社に異動したのか」と追及すると、証人は説明できませんでした。

 〇藤沢薬品でもB職群からC職群への転換は一応出来たようですが、その際、直属の上司の推薦が必要だとのことです(こんなハードルがあったら、男女差別などなくならないことは明らかです)。

 今回の証人尋問では、直属の元上司は、「仙頭さんは、経営職(上のクラスの管理職)より(一般職の)主事になる方が良いと思った。仙頭さんは、経営職になるには、視野の広さや説得力・協調性に欠けていたからだ」と証言しました。
 「視野の広さや説得力・協調性に欠ける」と考えた理由として、元上司は、仙頭さんがどこかの会社の社長(所長?)と衝突したということと、(会社の経営のことを考えずに)高額の機械を買うことを主張したということを挙げました。
 ところがこの元上司、そうしたことを自分で直接見ていたわけではなく、人から聞いたにすぎません。反対尋問で「どういう理由で衝突したか自分で確認しましたか?」「どんな機械を何のために買うと主張したのか確認しましたか?」と尋ねられると、いずれも「確認していない」との答え。
 またこの上司は、仙頭さんのそうした問題点(だと今回主張した点)を本人に言っていたかと聞かれると、「本人には言っていない」と答えました。
 裁判の後の交流会で、「『視野の広さや説得力・協調性に欠ける』と主張したのは、女性に対する偏見を自分で告白しているようなものではないか?」という趣旨の意見が出ました。私も、反対尋問にこんな答えしかできないということは、その可能性が大いにあるように思いました。

 ○この裁判では、会社は、ある時期からは人事・賃金制度から性と学歴という属人的要素を排除して「職務と能力を中心した、公平で納得性のある評価」をするようにした、と主張しています。
 ところがこの裁判の中で、会社はその際に、社員には公開せずに「スタート考課」という人事制度を導入していたことが明らかになりました(住友金属の男女差別でも問題になっていた、いわゆる「闇の人事制度」です)。
 その中で、会社はこっそり社員を3ランクに分類していたのです。その分類は、それまでの性と学歴という属人的要素を強く受けた賃金実態をそのまま当てはめたものであり(たとえばアシスタントは+1、研究開発は+5が基本で、遂行能力を加味する)、結局は差別が固定化されたことが指摘されています。

 今回も、この「スタート考課」のことが話題になりました。私にはよくわからない点も多かったのですが、少なくとも仙頭さんの「職務と能力」をきちんと分析して考課を決めたという話はまったく出てきませんでした。
 仙頭さんのある上司は、当時の仙頭さんの考課ランク(これで賃金が決まる)が「+3」だったことを述べました。しかし仙頭さんが「+1」のスタート考課だけど、優秀だから「+3」という考課ランクになったのか、「+3」のスタート考課だけれども、最低限のことしかできないから「+3」なのかということさえ言えませんでした。

 その他、各上司は、仙頭さんに対する処遇を正当化しようと、いろいろ言っていました。しかし、反対尋問で追及されると、「確認していない」とか、「何らかの形で」とか、「具体的には覚えいていない」といった答えばかりが目立ちました。

 私は、「会社側証人がこの程度のことしか言えないということは、男女差別が原因だったことは間違いない」と強く思いました。

 裁判の今後の予定は、以下のとおりです。
11月20日(月)、13:30~16:30 大阪地裁202号法廷
 原告側証人として森さんが証言
12月20日(水)、10:00~16:30 大阪地裁202号法廷
 原告の仙頭さんが証言
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チェン・ウエイスー「布─結びあう女たち」、ユーチン・ヤン「纏足」上映

 第3回「女たちの映像祭」が、2006年12月1日(金)~3日(日)、とよなか男女共同参画推進センター・すてっぷホール(阪急宝塚線豊中駅すぐ)にて開催されます。

 「女たちの映像祭」というのは、2年に1度、インディペンデントのフェミニストの女性監督の作品を上演する映画祭で、今年で3回目です。
 主催は「波をつくる女たち(Women Make Sister Waves)」という女性グループ。
 上演後に必ずトークがあり、監督と観客が作品批評をするのが特色です。
(この映像祭については、ふじみつこさん[彼女のブログ「女たちよ! 女の連帯で平和を!」]にいろいろ教えていただきました)

 今年は、中国関係の映画として次の2本が上演されます。

チェン・ウエイスー「布─結びあう女たち(原題:玩布的姊妹)」(2004年 56分)
 12月1日(金)13:00~15:00、12月2日(土)18:00~20:00上映

 チェン監督は、12月3日(日)のシンポジウム「女の価値観をどう実現するか─女の表現をとおして」(15:00~17:00)にも出席なさいます。

ユーチン・ヤン「纏足─金色の蓮花靴は10センチ(原題:Footbinding:Search for the Three Inch Golden Lotus)」(48分)。
 12月3日(日)18:00~19:30上映

 チェン・ウエイスー(簡偉斯)監督は、台湾在住です。台湾女性映像学会の理事でもあります。台湾電影網による経歴はこのとおりです。
 すでにこの映像祭のキャラバン上映で、「響きあう女たちの声(迴首来的時路)」(1997年 60分)という映画が上演されています。これは戒厳令時代からの台湾の女性運動を扱った作品のようです。「女たちの映像祭」のブログの説明によると、「1971年、帰国したアネット・ルー[=今の副総統・呂秀蓮]は女性学生が増えたことを資源の浪費といい、浮気を理由にした妻を殺した夫に同情が集まる社会風潮に対して批判の意見を発表、そこから台湾の新しい女性解放運動が始まった」とあります。

 今回の「布─結びあう女たち(玩布的姊妹)」は、「玩布工作坊」というワークショップで、女性たちが布の表現に取り組みながら、自分史を語り合って結び付きを深めていくという話のようです。台湾ではすでにDVD(ワードファイル)が発売されています。
 チェン監督には、「《玩布姊妹》的心霊被単」(「網市女性電子報」173期)という文もあるようです。

 ユーチン・ヤン(Yue-Qing Yang)監督は、中国本土出身ですが、現在はカナダ在住です。
 ヤン監督の作品も、すでに第1回の映像祭で「女書─中国の隠された女文字」(2000年 58分)が上演されています。これは、1995年の北京女性会議で「女書」の存在を知ったヤン監督が、「それがどんなものか」「なぜ隠されていたのか」に興味を持ち、探っていく映画です。

 今回の「纏足」でも、監督は、なぜ多くの中国の女性がこの纏足という風習に耐えてきたのかを理解しようと試みているようです。そのためにヤン監督は帰国して、纏足の母とおばを訪ねます。
 実はこの作品は北京会議で上映予定でした。でも「中国の恥」と言われて上映できませんでした。やっと去年カナダのテレビで放映されました。
 纏足については、 最近翻訳された、ドロシー・コウ著(小野和子・小野啓子訳)『纏足の靴』(平凡社 2005年)が評判です。しかしヤン監督の作品は、解説を読むと、纏足を女性文化の創造という観点から捉えるドロシー・コウさんの著作と比べて、女性抑圧の面から捉える傾向が強いもののようです。

 チケットは前売り1000円、当日1400円、5枚つづり券4500円、三日通し券6000円とのことですので、高くないです。
 交流会券は1500円(前売りのみ・軽食飲み物付き)

 他にもアジアの映画が多数上演されます。
 他の作品など、詳しいことは「女たちの映像祭」のブログの10月15日の箇所をぜひ見てください。
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セクハラをした社長を解雇した会社、元社長に敗訴

 本ブログの8月19日付記事でお伝えした、女性教師が校長のセクハラを訴えた裁判において、2月7日の一審判決に対して女性教師の側が控訴していた件ですが、9月26日に重慶市の中級人民法院(裁判所)での二審判決も、女性教師の側の敗訴でした。
 二審判決も一審判決と同様、(校長と女性教師との間の権力関係を無視して)女性教師のメールに明確な拒絶の表現がないことを根拠にしました。

 この事件を伝える『中国婦女報』の記事は、西南政法大学の民事法の専門家の侯国曜博士の言葉として「現在セクハラを裁判に訴えること少なくないが、勝訴はけっして多くない」という言葉を紹介し、その理由として、「立法のうえでセクハラの定義が明確にされていないこと」「証拠の収集が難しいこと」などを挙げています(1)
 
 同じ9月には、セクハラをした社長の契約を解除した会社が、その社長に訴えられた結果、裁判で敗れるという事件もありました。
 上海のある広告会社の社長(イギリス籍)が、2005年3月にアメリカの親会社の国際的グループがタイで開いた国際会議に出席した際、そのグループで働いていたシンガポールの女性労働者にセクシュアルハラスメントをしました。
 その女性労働者の訴えを受けて、その親会社と上海の子会社が調査し、この社長の労働契約を解除しました。
 しかし元社長は納得せず、労働仲裁に訴えたところ、元社長の訴えが認められました。そのため、会社は裁判に訴えました。

 9月8日の上海の静安区の人民法院の判決では、会社は敗訴しました。裁判所は、会社に対して元社長に4月以降の賃金を支払うことを命じました。
 その理由は、「会社は、元社長のセクハラ行為を裁判に訴えていない」「元社長と会社との労働契約では、重大な不良行為があった場合だけにしか契約を解除できないことになっており、それには当たらない」などというものでした。
 この判決に対しては、労働法の専門家から、「セクハラ行為をした本人が認めたならば、裁判所などの機関が認定しなくても、会社はセクハラを認定できる」「セクハラは容認できない重大な不良行為である。国際的な慣例ではとくにそうだ。会社の社長がセクハラをするなど、こうした国際的な会社にとっては大きく名誉を損なう」といった批判が出ています。

 また、元社長は「中国では現在まだセクハラに対する有効な立法がない。双方(元社長と会社)の契約では、セクハラは契約解除の理由に挙げられていない」とも主張していました。
 この点についても、ある弁護士からは「中国の現行の労働法にはセクハラのことは書かれていないけれども、憲法や婦女権益保障法などから見て、わが国の法律はセクハラ行為を明確に禁止している。女性差別撤廃条約も、企業は女性に安全な職場環境を提供するように規定している」という反論が出ています。

 女性の権利の問題に関心を持っているある人は、「この社長はわが国の法律の隙を突いているが、遺憾なことに一審の裁判所は、司法判断という形式によって彼の目的を実現させてしまった」と言っているそうです(2)

 私も、中国の法律のみならず、裁判所にもジェンダーバイアスを感じずにはいられません。

(1)「重慶女教師告短信性騒擾案二審敗訴」『中国婦女報』2006年9月28日。
(2)以上は、「総経理騒擾女員工被除名 上海首例性騒擾労動糾紛案用人単位一審敗訴 法院判決引発一片質疑」『中国婦女報』2006年9月12日。
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豊中市の男女共同参画推進財団理事長の呆れた発言

 きたる11月26日(日曜)の午後2時から(~4時45分)、「館長雇止め・バックラッシュ裁判」の原告の三井マリ子さんを大阪のドーンセンター(案内地図)にお招きして(4階大会議室)、お話しいただくことになりました。
 主催は日本女性学研究会で、私と村井恵子さんが企画しましたので、ぜひおいでください。

 三井さんは、豊中市の女性センター(「とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ」)の館長に全国公募で選ばれ、独創的な企画を次々におこなうなど全力を投じて仕事をなさいました。
 しかし、彼女はバックラッシュ勢力(男女平等の推進に反対する勢力。日本会議など)とそれに屈服した豊中市によって館長の座を追われます。その背景には、館長を含めてセンターの女性職員の多くが非常勤だったという問題もありました。
 三井さんは、豊中市と「とよなか男女共同参画推進財団」(女性センターを管理している財団。実際は市のいいなり)とを相手取って、裁判を起こしました。
 (詳しくは、私が日本女性学研究会の機関誌に書いた文章をご覧ください)

 先日、この裁判の傍聴に行ってきましたので、簡単に報告します。
 今回は、上の「とよなか男女共同参画推進財団」の理事長の高橋叡子さんという方の証人尋問でした。高橋理事長は、女性センターの館長を非常勤から常勤にする体制変更をした際、それまで非常勤の館長だった三井さんを切り捨てた責任者です。

 高橋理事長は、三井さんを切り捨てた理由として、「三井さんは常勤は無理だと思ったから」と言います。でも弁護士さんが尋問すると、その根拠はすべて、豊中市の人権文化部長と、(豊中市から派遣されている)女性センターの事務局長からの報告だということでした(彼らの報告は、三井さんの話とまったく異なります)。
 三井さんを解雇したとき、理事長自身は一度も三井さんと会って事情を聞こうとはしなかったそうです。
 三井さんとはその3年前に一度会ったきりだそうで、そのころは三井さんは東京在住でした。しかしその後、三井さんは女性センターから徒歩1分の所にアパートを借りて、いっそう仕事に全力投入できるようになります。そんな基本的なことさえ、理事長は「知りませんでした」と答えるのです。

 それにしてもこの理事長、三井さんの後任の館長の選考にも具体的に関わっていなかったことについて尋ねられると、「私は男女共同参画は、専門ではないですし‥‥」などと言い訳をしたのには、驚きました。
 聞けばご本人は、国や自治体の審議会や懇話会の委員をたくさん兼任していて(いま20以上兼務しているそうです)、多忙だとのこと。一つ一つについてはよく知らないよ、ということなのでしょうか?

 また、この理事長は、三井さんは非常勤で1年契約だから「辞めてもらうのに、法的に問題はない」と言います。さらに、「多くの女性に機会を与えるために、同一人が長期にわたって占有せず、4,5年で交替するのがよい」というのが持論だなどと、非正規雇用労働者の運動について少しでも知っていたら到底言えないようなことを言いました。
 また、「長くとどまるべきではない」「4,5年で」というのなら、なぜ館長を常勤にしたのでしょうか? やっぱり非常勤の三井さん切り捨てのためでしょうか?

 この理事長のような人物を形だけトップに据えて、男女平等のために一生を尽くしている三井マリ子さんを切り捨てさせる。
 「審議会にも女性を入れる」と言いながら、こうした人を、あちこちの審議会の委員にする。
 今回は行政の裏側を見た思いでした。
 私の地元の男女共同参画行政はどうなっているのか、調べてみなければならないとも思いました。

 次回は原告の三井マリ子さんが証言台に立ちますので、ぜひおいでください。
10月30日(月)午後1時10分~5時
大阪地方裁判所 202号大法廷(100人収容)
 証人尋問 原告・三井マリ子

 もう一つお願いがあります。
 次のお二人の証人尋問が実現するように、裁判長宛にはがきを出していただきたいのです。詳しくは、ここをクリックしてください。
[一色貞輝元市長]
 非常勤館長をなくすという体制変更は、「市のトップの判断」でおこなわれたと人権文化部長は言っています。
 また、今回高橋理事長は、三井さんの任命権者は「財団の理事長と市長」とはっきり答えました。しかも高橋理事長は、以上のようなありさまです。
 三井さんの雇止め(解雇)については、市長にお尋ねするしかありません。
[桂容子現すてっぷ館長]
 三井さんの後任の常勤館長を決める際、豊中市は「(現館長の)桂さんだけでなく、三井さんにも機会を与えた。公平な試験をした」と言っています。
しかし、豊中市(本郷人権文化部長)は、桂さんには「三井さんは辞めることを了解している」「試験は形式的なものだ」「あなたしかいない」と言っていたのです。
 この点を証言できるのは桂さんだけです。
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ラディカルなHP・「男権転覆ネット」

 久しぶりに中国のネットを見てみると、9月15日に「男権転覆ネット(顛覆男権網)」というHPが創設されていました。

 そのHPの上の箇所には、「全世界の女性は」「団結して」「男性の覇権をくつがえそう」という文字が次々に出てきます。
 また、左上には、「サイト長語録」として、「全人類を抑圧しているのは、奴隷制でも封建制でもなく、資本主義でもなくて、人間性の貪婪である。男性の覇権は、すなわち人間性の貪婪の直接の体現である。全人類を解放する根本問題は、男権を打ち倒して、人間性の貪婪を有効に制止することである」という言葉が掲載されています。
 このHPは、そうした、いわばラディカル・フェミニズムの言葉に満ちています。

 「サイト長」は、ペンネームで「水でできた骨肉」。
 これは、『紅楼夢』の主人公の「男は泥でできており、女は水でできている」というセリフをもとにしているのでしょうが、このHPは自分ひとりで作っているそうです。(「本站介紹」)

 何よりも驚かされるのは、「中国の第二次文化大革命運動」をおこすと言って、「婦連を砲撃せよ」という「大字報」を書いたことです(もちろんこれは、文化大革命の時の「司令部を砲撃せよ」という、毛沢東の「大字報(壁新聞)」にならったものでしょう)。
 この「大字報」というのは、具体的には「中国の婦連はなぜ失敗するのか」「21世紀の纏足した女たち」などの文章のことであり、これらを全国婦連と地方の婦連に送りつけたとのことです。

 婦連(婦女連合会)と言えば、中国共産党の指導の下にある唯一の全国的女性団体。このサイトやご本人が今後も無事に活動を続けられれば良いのですが。
 このサイトはつながりにくいのですが、いまのところ、まだこのサイトは無事のようです。

 ただ、このサイトの文章はまだ十分読めていないのですが、「中国の婦連はなぜ失敗するのか」などの文を読んでみると、議論が少し抽象的で、社会的分析が弱く、家族単位的思考を脱していない感じがしました。
 単純に女-男の関係で問題を考えていることの弱点かもしれません。ラディカル・フェミニズムのごく一部に見られると言われる、男女二分法の上で、女性の道徳的優位性を説くフェミニズムという感じです。 

 「中国の婦連はなぜ失敗するのか」の論旨は以下のようなものです。
 「婦連が女性を社会に押し出す行動は明かに失敗だった、それは、女性に対して『自尊・自信・自立・自強すべきだ』と言って、女性に、夫や子どもに対する感情を放棄させ、一個の徹底した理性の動物にさせることである。そうではなく、教育の矛先を男性に向けて、男性を、愛情と婚姻に忠実にして、家庭に回帰するように導くべきである。
 中国の婦連は自然と人間性の立場から、男性主導の理性の世界にメスを入れるべきである。婦連は、不合理な男性の世界を変革すべきで、女性をどのように変革すべきかばかりを考えるべきではない」

 けれど上の論文の批判は、婦連の弱点、すなわち女性に「自尊・自信・自立・自強しろ」と説くだけで、男性の世界の変革をおろそかにする傾向があるという弱点を突くものであることは確かだと思います。

 また「21世紀の纏足した女たち」の方は、近年の美容整形を「男性社会の審美基準による抑圧」として批判したものです。

 その他さまざまな文章がこのHPには掲載されており、その中には理論的には疑問を感じるものも少なくないのですが、(良い意味での)ラディカルさを感じさせるものも多いように思いました。

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深圳で強姦被害者への救援活動

 2005年9月から2006年8月まで、深圳市の心理危機関与センター、公安局心理サービスセンター、女性児童心理カウンセリングセンターなどが、「春風計画」という、強姦(セクハラなどを含む)の被害者に対する援助活動をおこないました。
 具体的には、性暴力の被害者に対するカウンセリングや治療、法律相談などがおこなわれたとのことです。資金は義捐金でまかない、人員はボランティアでまかなったようです。
 この活動は、中国本土で初めて強姦の被害者にテーマにしておこなわれた公益活動です(1)

 この9月初めの『中国婦女報』の報道では、これまでに20人あまりの女性に相談と治療をおこなったそうです。専門的な心理的治療の結果、彼女たちからは、みな後遺症が消えたと報じられています(2)

 そんなに簡単に心の傷が消えるのかどうか疑問ですし、具体的にどのようなスタンスで相談がおこなわれたのかもわかりません。また今後もこうした活動が継続されるのかもはっきりしません。
 ただ、台湾には現代婦女基金会などの組織があり、香港にも1997年に関注婦女性暴力協会が結成されて、ずっと電話相談などの強姦救援活動をおこなってきているのに、中国本土ではこうした形での被害者救援活動はおこなわれてきませんでした(3)
 そのことを考えると、中国本土でも社会的な救援活動がともかく始まったということは注目すべきだろうと思います。

(1)「春風計劃節后収到各界捐款5100元」新浪網2006年2月8日。
(2)「深圳建立性侵犯受害者援助網絡」『中国婦女報』2006年9月9日。
(3)『中国婦女報』で2001年11月から2002年7月まで、「関注性暴力」というテーマで討論がおこなわれたことはあります。また、個別事件に関しては黄静事件というデートレイプ事件に対する取り組みもあります。
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本年の動向7‐北京会議以降の中国女性についての2冊の白書

 1995年の北京での世界女性会議以来の中国女性の状況を総括した、次の2冊の本がこの3月に出版されました。

1.全国婦聯婦女研究所『1995~2005年:中国性別平等与婦女発展報告』(婦女緑皮書)(社会科学文献出版社 2006年)→以下、「緑皮書」と略す。
2.王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』(婦女発展藍皮書)(社会科学文献出版社 2006年)→以下、「藍皮書」と略す。

 こうした本格的な「白書」的なものが出版されたのは、初めてだと思います。
 文字通り、1が緑色の表紙で、2が青色の表紙です。

 1の「緑皮書」は、全国婦連の女性研究所が中心になってまとめた半官半民の白書、2の「藍皮書」は、民間の白書という感じですが、1も、NGOの報告もかなり収めており、それぞれ興味深い書籍です。

 1の「緑皮書」の方は、「総報告」のほか、5つの篇で構成されています。「発展状況分析篇」「法律政策分析篇」「専題調査研究篇」「社会行動篇」「評估報告篇」です。そしてこの各篇にそれぞれ6~10の報告が収められています。
 最後に、1995年から2005年までの中国のジェンダー平等と女性の発展に関する年表も付いています。

 2の「藍皮書」の方は第1章から順に12の章で構成されており、順に、「女性と貧困」「女性と教育」「女性と健康」「女性に対する暴力に反対」「女性と経済」「女性と政治参加」「女性と人権」「女性とメディア」「女性と環境」「女児」「老年女性」「流動女性」となっています。
 つまり、北京女性会議の12の領域にほぼ沿っており、その意味で国際基準に沿っているとも言えるでしょう。
 ただし、北京会議の12の重点領域と比較すると、「老年女性」と「流動女性(他の地に移動した女性、農村から都市への出稼ぎが大多数)」が入っており、「女性の地位を向上させるメカニズム」と「女性と武力紛争」が抜けています。この点は、中国の女性が置かれた状況の独自性や困難を示しているようにも思えます。
 なお、この本は、香港の楽施会(オックスファム)の資金援助を得て作られています。
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中国初の婦連などによる、妊娠した少女のサポートセンター

 8月30日、江西省南昌市で、同省の婦女連合会(婦連)や省教育庁などが「江西省少女救助センター」を設立しました。
 このセンターでは、望まない妊娠をした16歳以下の少女と、望まない性行為(強姦など)によって妊娠した16歳以上の貧困な少女に対して、無料で妊娠中絶の手術をします。
 このセンターの事務局は南昌仁愛女子病院に置かれ、相談電話も設けています。
 6月から試験的に運行を始めており、2ヶ月の間に相談の電話1200本あまりを受け、望まない妊娠をした少女135人に手術と心理的援助をしたとのことです(1)

 こうしたセンターは国内最初ではなく、すでに2003年2月、重慶の病院(計生医院)に「望まない妊娠 緊急中絶援助センター(意外懐妊緊急避妊援助中心)」が設立されています。続いて、杭州・済南・成都・ハルピンにも同様の機構ができました(2)。昨年には海南省にも出来ています(3)
 ただし、今回の江西省南昌市のセンターは、「婦連が主になって、関係部門と協力して成立した少女救助機構」としては、「わが国最初のもの」(全国婦連宣伝部部長・王衛国)です(4)

 こうしたセンターができる背景には、中国でも、青少年の性の早熟傾向や性教育の立ち遅れなどによって、少女の望まない妊娠や妊娠中絶が増大していると言われていることがあります。

 「無料で手術をすることは、未婚の青少年の性行為を助長するではないか」という声もあります。
 しかし、中国では(でも)、望まない妊娠をした少女をサポートする人がいないために、そうした少女は、家族にも言えずに小さな個人の診療所で中絶するしかないようです。そうしたところは、医療設備や技術などがお粗末であるために、もう妊娠できなくなったりする少女や、生命さえ失ってしまう少女もいます。
 だから、こうしたセンターは絶対に必要だとのことです(5)

 もちろん、「根本的には性教育がないことがが問題」な面もあります。中国では(でも)性教育がきわめて立ち遅れているため、「恋人がセックスの要求を出した時に、『ノー』の言い方がわからない、うまく言えない」「性の侵害にあったとき、どうしたらいいかわからない」(6)ということです。中国でおこなわれている「青春期教育」は、禁欲主義的な色彩が強く、避妊についてもきちんと教えません。
 ですから、こうしたセンターでは、避妊を含めた性教育もしています。
 それに対しても、「避妊を教えるのは性の逸脱を助長する」というような声が、中国でもあるわけですが‥‥(7)

 ただし、実は今までのセンターに対しては、「相談の電話が多いけれども、実際に来る人は少ない」という報道がしばしばなされてきました。
 その理由として言われているのは、「後見人が必要だから(そういうセンターもある)」「少女たちが、学校や親に秘密が漏れることを心配するから」といったことです(8)
 今回出来たセンターに関してはそうした報道はないようですが、今後どうなるのか注目したいと思います。

(1)「江西成立全国第一家由婦聯牽頭成立的少女救助機構」新華網江西頻道
(2)「正視“少女意外懐妊”」『中国婦女報』2003年2月26日、「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。
(3)「海南成立少女妊娠救助中心」『中国婦女報』2005年6月7日。
(4)(1)に同じ。
(5)呂霜「救助懐妊少女是“人道”,是進歩」『中国婦女報』2006年9月5日など。
(6)「不能光靠医生収拾残局  国内首家“少女意外妊娠援助中心”主任曾慶亮認為,要从根本上解決性教育“缺席”問題」『中国婦女報』2004年4月21日。
(7)「北京:免費救助懐妊少女引発争議」『中国婦女報』2003年12月10日。
(8)「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。「熱線電話打進3000人多 前来救助僅50人 哈尓濱懐妊少女救助通道遭遇◇尬」『中国婦女報』2003年12月15日。「内蒙古首家少女意外懐妊救助中心遭冷遇 監護人陪同難倒求助者」『中国婦女報』2006年1月4日など。
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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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