2006-09

アステラス製薬・仙頭史子さんの男女差別裁判

 今日は午後から、アステラス製薬の仙頭史子さんの男女賃金差別裁判の傍聴に行ってきました。
 藤沢薬品(いまのアステラス製薬)では、男性は誰でもおおむね35歳で主任、45歳で主任研究員に昇格していました。けれど男女差別のために、仙頭さんがやっと主任になれたのは48歳でした。つまり、男性よりも13年も遅れたわけです。
 仙頭さんは研究活動で男性に劣らず成果をあげたり、女性初のMRとして男性と同じ営業活動に従事して同等以上の成績をあげたりしていらっしゃったのに、です。
 仙頭さんは「これからの女性には私のような思いをしてほしくない」と、裁判に踏み切りました。アステラス製薬・仙頭史子さんの男女差別裁判を支援する会も結成されています。

 今日の裁判は大阪地裁の大法廷でおこなわれたのですが、原告側の支援者だけで、大法廷の定員をはるかに上回る147人の方が詰めかけ、法廷に入れない人もたくさん出ました。
 手元のメモによっているので不正確な箇所もあると思いますが、以下、簡単に報告します。

 今日は、会社側の証人である、元人事部長の尋問がおこなわれました。
 証人は、仙頭さんの昇進が遅いのは、仙頭さんが1973年に入社した際、あくまでも「研究アシスタント」として雇われたからであると主張しようとして、当時の求人広告を持ち出しました。
 当時は「研究アシスタント」は、「高卒の男子」と「短大卒の女子」を採用していたのであり、仙頭さんは高専卒なので短大卒と同等であって、男性とは「採用区分」が違うのだというわけです。「高専卒の男子」は、「研究技術職」というより高いクラスで採用していたのに、です。

 これは、「昭和30年代や40年代の男女差別採用は、当時としては民法の『公序良俗』には反しないので、違法ではない」という判決があることに悪乗りした主張であり、聞き飽きた理屈ですが、「男女平等を謳った憲法はとっくに施行されていたのに」「当時から雇用の男女差別は問題になっていたのに」と思うと、何度聞いても不愉快です。
 また仙頭さんは、実際はけっして「アシスタント」ではなく、男性と同じような研究業務をおこない、成果も上げていたのですから、二重に間違っています。この裁判を支援する歌として「輝いて生きていきたいパート2」(仙頭史子作詞、豊田光雄作曲)という歌が最近できたのですが、その中に
 「同じ仕事をしていても、男がすれば研究職、女がすればアシスタント。もらう給料、男の半分」
 という一節があるのですが、そういった状況があったわけです。

 証人はさらに、近年は人事・賃金制度の文言から「性」や「学歴」による区別をなくしたことを延々と説明しました。
 しかし、人事・賃金制度の文言からそうした区分をなくしただけで男女差別をなくしたように言うのは、現実をまったく知らない主張のように感じました。女性差別にペナルティーを付けるなり、男女差別意識をなくす研修でもしたなら話は別ですが‥‥。

 こうした会社側の理屈に理論的に反論するのは簡単ですが、具体的な証拠によって反論するのはそれほど簡単ではありません。
 しかし、仙頭さんの弁護士さんらによる反対尋問では、就業規則などの文書には「研究アシスタント」などの区分が記されていないことや、当時の会社の求人広告にも、「男女社員一般事務」とか、性を限定しない「一般事務」の求人があることを追及して、「求人広告では採用区分は明らかにできない」と述べました。証人は、完全にしどろもどろになりました。
 こうした求人広告は、裁判を支援する会の事務局の人が、当時の新聞のマイクロフイルムを丹念に調べて見つけたとのこと、地道な努力に頭が下がりました。

 また、証人が人事制度から「性・学歴別の昇進の標準在任年限を廃止した」と主張したことに対しては、制度変更後の文書にも「現行の標準在任年限を尊重する」という文言があるのを見つけて追及しました。
 さらに性別・学歴別の賃金分布の表や、同期同学歴の人の昇格のしかたを示して、その後も事態は変わっていないことを証人に突きつけしまた。
 また、新しい人事制度では、営業職は最低「+5」という評価が付くと決めているのに、仙頭さんには「+3」しか付いてないことを追及しました。すると、証人は「まれには付く」と、「まれ(言葉は正確でないかもしれませんが)」であることを認めざるをえませんでした。

 裁判後の交流会では、会社側の証人は入念にリハーサルをしてきているけれども、反対尋問で自分が考えていないことを聞かれると、ピントはずれの応答しかできないことなどが話題になりました。

 次の裁判は、仙頭さんの元上司ら4人が証人です。
 これまで出ている陳述書によると、彼らは「昇進の遅れは、男女差別のせいではない」と主張しようとして、仙頭さんの昔のミス(といっても、誰でもやっているようなミスにすぎない)をほじくりだして、仙頭さんが「無能」だと主張しているそうです。
 そんなひどい主張をするしかないほど、彼らは追い詰められているのですが、仙頭さんは精神的に大変でいらっしゃると思います。
 私は行けないかもしれませんが、傍聴に行って、証人を監視して仙頭さんを見守っていただける方がいれば、と思います。

 次回:10月23日(月)10:00〜16:30 大阪地裁大法廷

中国でも「間接差別」概念が浮上

 日本の今年の男女雇用機会均等法の改正において、「間接差別」(「間接性差別」。直接「女性だから」差別するというのではなく、たとえば「契約(派遣)社員だから」という理由で多くの女性に、働きに見合わないひどい待遇を押し付けて結果的に女性差別をすること)が争点になりました。
 いま、改正均等法についての厚労省の省令や指針についても、間接差別の問題をどう扱うかが一つの焦点になっています。9月27日までパブリックコメントを募集中(省令案について指針案について)なので、出しましょう。雇用についてのパブコメについては、ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)の正路怜子さんがお考えになった参考例があり、セクハラについてのパブコメ例は、日本フェミニストカウンセリング学会HPにあります。でも結局は当然自分で考えないといけませんね‥‥。

 さて、9月6日付のこのブログでも紹介したように、8月25日付けの国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の中国政府への勧告でも、中国の国内法に「間接(性)差別」の概念がないことが問題にされました。

 その直前の8月21日、中華女子学院が主催して「雇用の性差別およびその救済のメカニズム・国際シンポジウム」が開催されました。北京大学・中国人民大学・最高人民法院・ハーバード大学などから百人近い専門家が集まったとのことです。
 そのシンポジウムで中華女子学院助教授の劉明輝さん(法学部経済法研究室主任)は、「中国の法律の中にはずっと雇用の性差別の概念がなかった。雇用の性差別をなくすには、立法はまず性差別の内包と外延を正確に定義しなければならない」「性差別の形式には直接性差別と間接性差別がある」と言います。これは4日後に出るCEDAWの勧告と基本的に同じ内容です。
 劉明輝さんは次に「間接性差別」の定義を紹介したのち、以下の例を紹介しています。「ドイツのある企業の内部の規則は、パートタイマーは、ある社会保険を補充する待遇を受けられないと規定していたが、その企業のパートタイマーの99パーセントは女性だった。ECの裁判所はその規定を差別だとし、取り消して当事者に賠償しなければならないという判決を出した」(1)

 劉明輝さんは、すでに昨年の著書において、差別の定義に間接差別を含めるように主張し、さらに、その立証責任を雇い主に負わせるように求めていました(2)
 今回の発言は、『中国婦女報』の3面のトップで「立法は間接性差別を『忘れ』てはならない」という大きな見出しで報じられました。中国の新聞で「間接(性)差別」がこうした形で見出しになったのは、おそらく初めてではないでしょうか。

 そこには国際社会や国連の動向とともに、中国でも近年の市場経済化に伴う性別分業の拡大によって非正規の雇用形態が増大し、その多くが農村からの出稼ぎ労働者や女性だという現実があると考えられます。

 中国の非正規就労の問題は、日本同様いろいろあって簡単には述べられないのですが(3)、劉さんも例に挙げているパートタイマーの場合は、大多数が女性です。
 2003年10月に『中国婦女報』が「都市のパートタイマーに注目しよう」という特集を組んだ際に、「編者のコメント」は、中国のパートタイマーの状況について、以下のように述べていました(4)
 「現在、我が国のパートタイム[非全日制]の雇用形態は、主に飲食業のパートタイマー、家政・家庭教育サービス・清掃・看護の仕事をカバーしており、従業員の多くは女性である。その中には、外来の(≒農村から来た出稼ぎ)労働力だけでなく、レイオフされた女性、失業した女性もおり、大学や専門学校に在学中の女子学生さえいる。
 パートタイム家政・パートタイム秘書・パートタイム調理師というサービスは、人々の日常生活を便利にするけれども、従業員自身は往々にして、如何ともしがたさと無力さを感じており、その原因は‥‥各種の保障のメカニズムがまだ完全でなく、雇用者と雇用主の双方の権利と義務が、口頭での契約によっていて、パートタイマーの合法的な権益が保障されにくく、これに加えて教育訓練と相談サービスもなく、パートタイマーが社会に認められている程度は大変低いことにある。」

 中国では、「間接差別」概念は、まだ研究者が提唱しているだけで、運動のスローガンなどにはなっていません(5)。しかし、こうした概念が、中国の現実とも関わって少しずつ浮上してきたことは注目に値すると思います。

(1)「“就業性別歧視及其救済機制国際研討会”在京挙辨,専家呼吁―立法不応“遺忘”間接性別歧視」『中国婦女報』2006年8月22日
(2)劉明輝『女性労動和社会保険権利研究』(中国労動社会保障出版社 2005年)(←書虫HP)108,112頁。
(3)非正規就労の問題に関しては文献が多いですが、特に女性の非正規就労の問題に注目した日本語の文献としては、ごく簡単なものですが、関西中国女性史研究会『中国女性史入門』(人文書院 2005)で私が執筆した「就労問題」「データと図版で見る現代中国の女性労働問題」の項目。
(4)「関注城市“短工”」『中国婦女報』2003年10月8日。
(5)なお、中国における雇用の性差別解消の困難については、このシンポジウムでも、卓澤淵教授(中国共産党中央党学校)は、「わが国のこの問題における主要な困難」として、以下の点をずばり指摘しています。
 ・差別の主体があまねく存在している。企業、結社団体の組織、事業機構があり、国家機関さえもある。
 ・差別を救済する組織が欠乏しており、雇用差別に反対する女性の自治組織もまだ誕生していない。
 ・差別紛争の司法が立ち遅れており、女性が雇用差別を受けないように保護する有効な司法上の措置がまだない。雇用の性差別に反対する訴訟は比較的少なく、女性の平等な就労権を擁護することに成功した司法上の採決はさらに少ない。

女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク結成

 この8月、中国の大学の教師、科学研究所の研究員、「ジェンダーと発展」領域の活動家によって、「女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク」が結成されました。
 2002年から機関誌『ネットワーク通訊』などを出して活動していたのですが、8月16日から19日まで大会を開き、正式に発足しました。
 女性/ジェンダー学の全国的ネットワークであり、規約によると、団体会員と個人会員があるようです。
 コーディネイトをする協調委員会の委員には王金玲さんら8人が名を連ねており、全員が女性です。

香港でアイドル女性の盗撮に抗議運動

 今回は、アジア女性資料センターの「News」欄にあるadminさんからの情報です。

 それによると―
 「Twinsと言う2人組の女性歌手のうちの1人の着替えの様子が隠し撮りされ、8月21日発売の香港の雑誌『壹本便利』に掲載されました。」
 「AAF[=新婦女協進会のこと:遠山補足。以下同じ]や機会平等を目指す女性団体協力会[=平等機会婦女聯席]で抗議声明を出し、『壹本便利』の不買運動と、署名活動を開始しました。」
 8月29日には「300人の芸能人が集まり、抗議行動と、壹本便利の不買運動を呼びかけ」たそうです。

 ネット署名(「保障女性身體自主,罷買《壹本便利》行動!」というスローガンが掲げられています)では、9月7日午後11時過ぎに私が署名した時点で、5000名以上の署名が集まっていました。
 日本でもこうした盗撮事件は何度も起こったと思いますが、社会的な抗議運動はほとんど展開されなかったように思います。なぜだろうか? そうしたことを考えさせられます。

 詳しい情報は、ここをクリックしてください。
 「観光が大きな香港では、海外から関心が集まっていることは、大きな力になるそうです。よろしければご協力ください」とのこと、
 署名はこちらでお願いいたします(文字化けする場合は、右クリックしてエンコードを「繁体字中国語」にすると、中国語の部分も読めます)。


国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント

 8月7日から25日まで、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の36回会期が開催されていましたが、その最終日の25日、女性差別撤廃委員会は、中国政府の第5次、第6次レポートに対して以下の最終コメント(勧告など)を出しました。

 ご存じの方も多いと思いますが、女性差別撤廃条約を批准した国は、条約の遂行状況を国連に定期的に報告しなければなりません。その報告に対して、どの国に対してもコメントが出されるわけです。
 日本に対しては2003年に出された最終コメントが、コース別雇用が男女差別の隠れみのになっていることや、一般職やパート・派遣などの賃金が低いところで女性が多く働いていることを問題として指摘し、是正を勧告したことは記憶に新しいと思います(詳しくは、日本女性差別撤廃条約NGOネットワークのHPの「第29会期女性差別撤廃委員会に関する活動(2002年〜2004年)」の欄を参照してください)。

 今回の中国に対する最終コメントの全文は、ここをクリックしてください。(pdfファイル。英語)
 中国語版もupされました(10月5日確認。前回の1999年の中国政府に対する最終コメントは、CEDAWのHPでは英語版しか掲載されていなかったのですが、今回は違うようです)。

 以下では、今回どういう点が問題にされたのか、大体の内容を紹介します(見出しは私が付けたものです)。
 ただし省略している部分が多いです。最終コメントは個々の問題について、まず最初に問題点を指摘し、次にそれを改めるよう勧告しているのですが、以下では、後半の勧告の部分はしばしば省略させていただいています(前半を読めば、おおまかには推測可能なことが多いですし)。その他にも省略した箇所は多数ありますし、また翻訳も極めて粗いもので正確ではありません。
 何かに使われる場合は、ナンバリングをもとにして直接原文に当たられるようお願いいたします。

肯定的側面
 5(評価できる点)
 女性差別撤廃委員会(以下、「委員会」と略す)は、2005年の婦女権益保障法改正、2001年の婚姻法改正(DV禁止規定導入など含む)、2002年の農村土地請負法(結婚して家を出たり、離婚した女性の土地の割当ての規定など含む)の公布、2006年の義務教育法改正、中国女性発展要綱(2001-2010年)を歓迎する。
 6〜7(香港とマカオついて:今回は省略)

主要な関心事項と勧告
 9〜10(女性差別の定義)
 委員会は、中国の国内法には、女性差別撤廃条約第1条と合致した、直接差別と間接差別の両方を含む「女性に対する差別」の定義がまだ含まれていないことを引き続き懸念する。この点については既に前回の最終コメントでも述べたにもかかわらず、そうした定義は、2005年に改正された婦女権益保障法にも含まれていない。委員会は、この点を改めるよう繰り返し勧告する。

 11〜12(女性の権利の法的保障)
 委員会は、中国政府が女性と子どもの権利の保護のための特別の法廷を設立したことを歓迎する一方、効果的な法的救済の規定がないために、女性が差別を受けた場合に司法へのアクセスが依然として限られていること(とくに農村では)を憂慮する。また、裁判所で女性差別撤廃条約がまだ活用されたことがないように思われることに留意する。
 委員会は、女性差別撤廃条約や一般的勧告や関連する国内法を、法学教育と司法職員(裁判官、弁護士、検察官を含む)の訓練の必修事項にするよう保障することを奨励する。また女性が法的救済を受けられやすくするよう勧告する。

 13〜14(ジェンダー統計)
 中国政府の報告には、性と地域、民族別のデータが十分に含まれていないので、この点を改めるよう勧告する。

 15〜16(経済の成長・改革と男女の格差の拡大)
 委員会は、中国が近年経済成長を達成して貧困率を減少させたことは評価するが、その利益配分は都市と農村で不均等であり、女性は男性より利益を得ていないことを懸念する。また、経済の再構成やサービスの脱中央集権化がジェンダー特定的な結果をもたらしていること、とくに女性の雇用や健康、教育に影響していることを懸念する。
 委員会は、中国政府が、経済の成長と変化が女性に与える影響の測定を強化し、社会的支出(social spending)の増額を含めた方策をとって、経済成長や貧困率の減少から女性が男性と同等に利益を得られるようにするよう勧告する。経済の再構築が女性、とくに農村や辺境に住んでいる人々や少数民族にマイナスの結果を与えない方策をとるように勧める。

 17〜18(男女の役割のステロタイプ)
 委員会は、家族と社会における男女の役割と責任に関するステロタイプが根強く存続していることを懸念する。それは、性別の不均衡や性別に基づく中絶をもたらす男児選好に反映している。委員会は、そうした広く行き渡っている態度が女性の価値を下げ、彼女たちの人権を侵害し続けていることを懸念する。
 委員会は、中国政府が条約の第2条(f)と第5条(a)にもとづいて、社会における男女の役割に関する伝統的なステロタイプを克服する包括的なアプローチを取るように求める。そうしたアプローチは、法的・政策的および意識向上の方法を含んで行われなければならず、公的機関と市民社会を包括し、全住民、とくに男性と少年たちをターゲットにしなければならない。それは、テレビやラジオ、出版物を含むさまざまなメディアを活用しておこなわれなければならない。委員会は、中国政府に、カリキュラムやテキストをジェンダーに敏感な視点で評価するよう求める。

 19〜20(トラフィッキング)
 委員会は、中国政府が、地域間協力や国際的な協力を含めて、女性と子どものトラフィッキングに取り組んでいることを認めるけれども、女性と子どものトラフィッキングの定義が、売春による搾取を目的にしたものに限定されており、国際的な定義と一致していないことを懸念する。また売春を引き続き犯罪化していることは、ひもやトラフィッカーの起訴と処罰よりもむしろ売春する者に不釣り合いに打撃を与えることを懸念を表明する。また売春する者が法的な手続きなしに行政的に収容される危険があることにも懸念を表明する。さららにトラフィッキング(とくに国内のトラフィッキング)の広がりについてのデータと統計的インフォメーションが不十分であることも懸念する。

 21〜22(女性に対する暴力)
 委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な全国的法律(被害者に司法に対するアクセスを与え、加害者を処罰するもの)がないことと、女性に対するあらゆる形態の暴力に関する統計的なデータがないことを引き続き懸念する。委員会はまた収容所(とくにチベット)において女性に対する暴力事件が報告されていることも懸念する。
 委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な法律(女性と少女に対する、公私の領域におけるあらゆる形態の暴力を、刑法によって処罰できる犯罪を構成することを保障するもの)を採択するよう勧告する。委員会は政府に、一般的勧告19にもとづいて、女性と少女の暴力の被害者に即時の救済と保護を与えるよう求める。

 23〜24(暫定的特別措置の活用)
 委員会は、中国が暫定的特別措置を十分活用していないことを懸念する。活用するよう勧告する。

 25〜26(政治などへの女性の参加)
 委員会は、中国政府が採用した、すべての政治および公的生活への女性の代表を保障する条項を歓迎しつつも、女性の代表の低水準が続いていることを懸念する。また委員会は、提案された村民委員会組織法の改正が、村民委員会への女性の平等な参加を要求していない点も、懸念をもって留意する。

 27〜28(農村女性)
 委員会は、農村女性の、教育や雇用、リーダーシップへの参与や財産における不利な地位にひき続き懸念を有する。また都市のマイノリティ女性(台湾女性を含む)の状況も懸念する。農村の少女の識字率の低さ、中途退学率の高さ、農村地区の保健施設と医療人員の欠乏、高い妊産婦死亡率、高額の医療費、農村で土地がない人の70%は女性であること、農村地区の女性の高い自殺率なども懸念する。

 29〜30(女性の雇用労働)
 委員会は、同一労働と同一価値労働に対する同一賃金を保障する法的規定の欠如、賃金格差が存続していること、インフォーマルセクターへの女性の集中、一部の女性労働者がさらされがちな有毒で有害な環境、競争的な労働市場における収入の減少など、雇用部門で働く女性の状況を懸念する。レイオフの第一の理由にジェンダーがなっていることも懸念する。また、労働法規の監督が限定的であることと、そうした規定の侵害を報告する女性が非常に少ないことも懸念する。

 31〜32(男女の性別比)
 委員会は、性別に基づく中絶を禁止する法的手段や2006年に始まった「女児愛護」行動のような全国的運動に留意しつつも、性別を選択する不法な中絶が存続していることや女児殺し、女児の不登記・遺棄を引き続き懸念する。また女性と少女のトラフィッキングの増加をもたらしかねない性別比の逆転を懸念する。

 33〜34(脱北女性)
 委員会は、女性の亡命者や仮収容所(外国大使館など)を求める女性を保護する法律または規則がないことを懸念する。委員会は、北朝鮮から来た女性の状況、すなわち他人に頼るしかなく、虐待やトラフィッキング、強制的な結婚と事実上の奴隷状態の犠牲者になっているか、なる危険が特にあるという状態にとくに懸念を表明する。

 女性差別撤廃委員会は中国の政策に一定の評価を与えつつも、中国の女性差別問題を包括的に厳しく指摘し、改善を勧告したと言えるでしょう。中国国内では指摘しにくい問題もかなり含まれています。
 こうした国連からの指摘や勧告は、以前は中国国内では(私が日本で入手できるような文献を見るかぎり)活字になりませんでした。しかし、2004,5年頃からは中国国内でも、こうした指摘を受け止めた議論が散見されるようになりました。
 今度の勧告も、中国国内でも少しでも活用されることを願います。

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プロフィール

Author:遠山日出也
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントとトラックバックは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私のHPである中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。私への連絡はこちらまで

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