2017-05

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先進的と言われた「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例」が空文化?

目次
はじめに――制定当時高く評価された「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例」
一 施行に責任を持つ「ジェンダー平等促進工作機構」が施行後4年たっても設立されず
二 条例に規定されている、就職の性差別に対する是正命令も、それに反した時の罰金徴収も、1回もおこなわれず
おわりに――社会運動がなければ空文化は必然

はじめに――制定当時高く評価された「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例」

2009年、「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例」の「意見募集稿」が発表された。この意見募集稿は、いつも中国の女性政策に厳しい論評をしているフェミニスト電子雑誌『女声』誌も高く評価した。当時、私は、この起草グループの代表が国際人権法・反差別法の研究で著名な李薇薇教授であることが、この意見募集稿に多くの画期的内容が含まれていることにつながっているのではないかということや、しかし他市(北京市など)のケースから見て、この意見募集稿がそのまま成立するか否か不安であることなどを述べた(本ブログの記事「『深圳経済特区ジェンダー平等促進条例』の意見募集稿は画期的だが……」)。

2012年6月、「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例(深圳经济特区性别平等促进条例)」は深圳市人民代表大会の常務委員会で正式に採択され、2013年1月から施行された。やはり、採択・施行された条例は「意見募集稿」より後退している点が多かった。しかし、それでも「ジェンダー平等促進工作機構」を軸にしてジェンダー主流化をめざすなど画期的な部分を持っていたし、当時中国のマスメディアには高く評価された(「『深圳経済特区ジェンダー平等促進条例』制定――ジェンダー主流化のシステムを作ったが、具体的な規定は草案より大きく後退」)。

しかし、その後、この条例は期待されたような役割を発揮しているのか?

施行から4年が経過した今、法律業務従事者の沙沙さんがこの点について調査をおこない、その執行状況を具体的に検証した。それは「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例実施状況モニタリング報告」としてまとめられた(1)

以下、沙沙さんのこの報告について、ご紹介したい。

一 施行に責任を持つ「ジェンダー平等促進工作機構」が施行後4年たっても設立されず

沙沙さんは、「『条例』の中の多くの規定は実現していない。とくに重要なのは、設立されることになっている『ジェンダー平等促進工作機構』が法規施行4年後もまだ設立されていないことだ」と指摘している。

以下をご覧になれば、この条例では、「ジェンダー平等促進工作機構」が、ジェンダー平等促進、ジェンダー主流化のためのカナメの役割を果たすものとして位置づけられていたことが理解されよう。

第6条 本条例は市のジェンダー平等促進工作機構が責任を持って施行の手はずをする。具体的な機構の編制事項は、市の機構編制部門が別に確定する。

第7条 市のジェンダー平等促進工作機構は、以下の職責を履行する。
 (1)全市のジェンダー平等工作の情況を定期的にモニタリング・評価し、モニタリング・評価報告を発表する。
 (2)関係部門と協調して、ジェンダー予算・ジェンダー監査・ジェンダー統計を実施する。
 (3)本市のジェンダー平等にかかわる法規・規則・規範的文書について、ジェンダー分析をおこなう、または関係単位が分析をするのを指導する。
 (4)性差別を撤廃する政策を立案する。
 (5)関係する訴えを受理し、規定にしたがって処理する。
 (6)法律・法規が規定したその他の職責。

 第8条 市の人民政府(以下、「市政府」と略称する)が国民経済と社会発展計画を制定するとき、ジェンダー平等を促進する目標と戦略を明確にしなければならない。市のジェンダー平等促進機構は、全市のジェンダー平等発展計画を作成・制定し、市の政府の批准を経たのちに発表し、実施を案配する。

 第9条 本市の労働就業・社会保障・衛生保健・文化教育・計画建設・民政福利・組織人事・婚姻家庭などの面の法規・規則の草案がジェンダー平等と関係する内容であるときは、起草単位は市のジェンダー平等促進機構の意見を求めなければならず、市のジェンダー平等促進機構はその法規・規則の草案のジェンダー平等促進に対する影響を研究分析し、性別の影響の分析報告を作成しなければならない。
 起草単位は、性別の影響についての分析報告の受け入れ状況について、書面で市のジェンダー平等促進機構に回答しなければならない。
 市政府の法制工作機構が、市政府の各部門の規範的文書を審査するとき、市のジェンダー平等促進機構にその文書を渡して、性別の影響の分析をさせ、性別の影響の分析報告を作成させることができる。

 第10条 本市の法規・規則及び規範的文書が施行された後、市のジェンダー平等促進機構は、そのジェンダー平等促進に対する影響についての評価をおこなうことができる。
 評価で問題を発見したときは、市のジェンダー平等促進機構は、関係部門に対して改正の提案を出さなければならない。

 第11条 ジェンダー[性別]の影響の分析・評価は、以下の主要な面を含まなければならない。
 (1)男女両性が平等に利益を得て、一方の性別の特殊なニーズにも配慮している。
 (2)一方の性別に不利な差別的対応、制限、排斥をもたらす可能性がある。
 (3)性差別の解消を推進するために取ることができる直接的または間接的措置。
 (4)市のジェンダー平等促進工作機構が必要と認めたその他の内容。

 第17条 ジェンダー予算制度を打ち立て、推進する。
 市のジェンダー平等促進工作機構は、市の財政部門と共同でジェンダー予算指導意見を決定・発表し、各予算単位にジェンダー予算工作をおこなうよう指導しなければならない。

 第18条 市・区の各予算単位はジェンダー予算指導意見にもとづいて、その部門の年度のジェンダー平等促進工作の目標・方式を十分に考慮し、それに応じた予算の割り振りをしなければならない。

 第19条 市・区の監査部門は、各予算単位の年度のジェンダー平等促進予算の執行状況について監査をして、監査意見を出さなければならない。監査で発見した問題については、処理意見と改善提案を提出し、関係部門に是正を督促しなければならない。

 第20条 ジェンダー統計制度を作り、完全なものにする。
 市の統計部門は市のジェンダー平等促進工作機構と共同でジェンダー統計報告表制度を作らなければならない。
 市の統計部門は市のジェンダー平等促進工作機構と共同で年度のジェンダー統計報告を発表しなければならない。

 第22条 市のジェンダー平等促進工作機構は、定期的にセクシュアル・ハラスメント行為防止指南を発表して、国家機関、企業・事業単位、社会団体その他の組織がセクシュアル・ハラスメントを予防・制止する指導をしなければならない。

 第25条 市のジェンダー平等促進工作機構は、必要にもとづいて、市の公安・司法行政、衛生、民政、婦女連合会などの関係単位と共同で、工作調整メカニズムを打ち立て、保護を受けている[家庭内暴力の]被害者のために、法律的援助・医療措置、心理カウンセリングなどのサービスをしなければならない。

 第26条 国家機関、企業・事業単位、社会団体その他の組織が本条例の規定する職責を履行していないときは、市のジェンダー平等促進工作機構は、改善意見を提出することができる。もし改めないときは、市のジェンダー平等促進工作機構は、その単位の職責履行の状況について社会に対して公表することができる。

 第27条 市・区の政府あるいは政府部門に栄誉称号の授与を申請している、あるいは既に獲得した単位で、本条例の規定に違反して情状が悪い者については、市のジェンダー平等促進工作機構は、主管部門にその栄誉称号の申請の却下・撤回を具申することができる。

 第28条 性差別であるか否かで争いが起きた時は、当事者は市のジェンダー平等促進機構に申請をすることができ、市のジェンダー平等促進機構は、性差別である否かの意見を出さなければならない。

この肝心の「ジェンダー平等促進工作機構」が設立されていないのである。

上の条文で挙げられている具体的事項に関しても、沙沙さんは、下で述べる家庭内暴力防止、ジェンダー評価、ジェンダー統計の点以外は、実現していないことを指摘している。

・反DVに関しては、2016年3月に施行された全国的な「反家庭内暴力法」によって、家庭内暴力防止活動がおこなわれている。

・ジェンダー評価に関しては、「深圳市地方法規ジェンダー平等評価委員会」が、ジェンダー平等促進機構のかわりに、一部のジェンダー平等評価をおこなった。

・同様に、ジェンダー統計に関しては、深圳市婦女児童工作委員会が、深圳市の統計局と協力して上の「深圳市ジェンダー統計報告表制度」「深圳市ジェンダー統計指標体系」「2015年深圳市ジェンダー統計報告」を作成した。これらのジェンダー統計を作成する職責は、「条例」では、「ジェンダー平等促進工作機構」の職権だと規定されているにもかかわらず、である。

沙沙さんが、「さらに奇妙なことがまだある」として、次のことを述べる。沙沙さんは、深圳市婦女児童工作委員会事務局と深圳市統計局とに対して、それぞれ、「深圳市ジェンダー統計報告表制度」「深圳市ジェンダー統計指標体系」「2015年深圳市ジェンダー統計報告」の3つの文書の内容の情報公開を申請した。すると、深圳市統計局は、「深圳市婦女児童工作委員会が作成の主体だから、深圳市婦女児童工作委員会に頼むべきであり、公開できない」と回答し、深圳市婦女児童工作委員会は、「深圳市婦女児童工作委員会は、作成の主体ではないから、公開できない」と回答した。

沙沙さんは、「深圳市のジェンダー平等促進機構がずっと設立されていないために、深圳市地方法規ジェンダー平等評価委員会と深圳市婦女児童工作委員会が、市のジェンダー平等促進工作機構の一部の工作を肩代わりしているが、三者の境界は曖昧であり、その結果、お互いに責任を押し付けあうことになっている」と指摘している。

沙沙さんは「市のジェンダー平等促進工作機構の編制は結局どうなったのか?」という点について、以下のように述べている。

「条例」の正式施行前は、メディアは褒める記事ばかりだった。しかし、正式に施行された後は、『羊城晩報』が2014年1月2日付けで、「深圳ジェンダー平等条例は、施行満1年の今なお空中の楼閣のごとし」(2)という記事を掲載しただけである。

その記事には、「編制が凍結されたので、ジェンダー平等促進工作機構はずっと設立されていない(……)深圳市編制事務局の責任者によると、2013年3月から、広東全省において機構の編制が凍結されており、全市的に、新しい機構を増やしていないという。その責任者は、深圳市ジェンダー平等促進工作機構の設立は、今年(2014年)上半期に全市の編制の凍結が解除された後に、継続して展開できる予定だと述べた」とある。

現在はどうなっているのか? 沙沙さんが深圳市編制委員会の事務局に、なぜ市のジェンダー平等促進工作機構が設立されていないのかを質問したところ、以下のような書面での回答が得られた。

「条例」を実施するために、2015年3月、当事務局は、市の婦女連合会内の機構を適正化する調整をおこなった。市のジェンダー平等促進工作機構と市の婦女児童工作委員会の工作内容にはある程度関連があり、工作方法も似ているので(どちらも、政策と計画にもとづく、立案・調整・督促・指導を主としている)、関連する工作を統一的に計画案配するために、当事務局は、市の婦女児童工作委員会が「『深圳経済特区ジェンダー平等促進条例』を推進・実施する」職責を担うことを明確した。

市の婦女連合会の公式ウェブサイトの「部門の職責(部门职责)」の中にも、「市の婦女児童工作委員会の事務局が『深圳経済特区ジェンダー平等促進条例』を推進・実施する」と書かれている。

このような状況に対して沙沙さんは次のように述べている。

市の婦女児童工作委員会に、条例の中のジェンダー平等促進工作機構がすることをできると言うのだろうか? しかし、深圳市婦女連合会にさらに尋ねて得た返信には、「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例第7条が規定している市のジェンダー平等促進工作機構の職能・権限と市の婦女児童工作委員会の職能はけっして同じではない」とある。

編制に関しては、2012年7月6日、当時の婦女連合会主席の蔡立は、『中国新聞週刊』の取材を受けたときには(3)、2つの方法を述べていた:一つはまったく新しい独立した機構を設立することである。もう一つは、婦女児童工作委員会事務局と編制を統合し、職能を調整することである。「婦女児童工作委員会は、議事を調整する機構にすぎず、主要な職能は、組織・調整・監督であり、職能は比較的抽象的で、強制力がない。もし新しい機構と統合できれば、もっと多くの適切な職能を賦与されるだろう。」

以上から見ると、現在は、結局、権限が弱い婦女児童工作委員会の体制のままになっている可能性が濃厚だと言えよう。沙沙さんは、より慎重に(ただし厳しく)次のように述べている。

現在の状況は、市の婦女児童工作委員会が市のジェンダー平等促進工作機構の編制と統合したということだろうか? 市のジェンダー平等促進工作機構が今まで4年間設立されていない結局の原因は何だろうか? 責任は誰にあるのだろうか? まさか「条例」の公布は行政上の実績づくりのためで、実行するつもりはなかったというのではあるまい?


二 条例に規定されている、就職の性差別に対する期限を切った是正命令も、それに反した時の罰金徴収も、1回もおこなわれず

次に、沙沙さんは、具体的に就職の性差別禁止規定について調査した。

「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例」第16条は、以下のように規定している。

雇用単位が人員を招聘・採用するとき、国家の法律で規定されている場合を除いて、性別の要求をしてはならず、性別・婚姻・出産などを理由として、ある性別の採用を拒否したり、ある性別に対して採用基準を上げたりしてはならない。ただし、性別の比率のバランスについての指導意見、および関係する法律・法規の規定に基づく性別に対する優先・優待措置を除く。

前項の規定に違反したときは、人力資源と社会保障部門が期限を切って命令を下し、責任をもって改めさせる。期限が過ぎても改めないときは、3千元以上3万元以下の罰金に処す。

沙沙さんは、この規定について「条例が施行されてからすでに4年たったが、期限を切って改めさせたり、罰金を科したりした前例はあるのだろうか?」と思い、調査をした結果、以下のことがわかった。

深圳市人力資源と社会保障局の回答によると、深圳市の労働監察の法律執行の職権はすでに各区に移譲しており、企業が「条例」第16条に違反した行為に対する立件・調査、是正、行政処罰などの法律執行の業務は、違法行為が発生した地区の人力資源部門が担っているという。

そこで、沙沙さんが深圳市の10の区の人力資源局または(新区の場合は)社会建設局に、期限を切って改めさせたり、罰金を科したりした前例について尋ねたところ、どの区からも、そうした前例はないという回答が書面で寄せられた(この情報は、主に2017年1月ごろ、情報公開申請によって集めたものである)。すなわち、2013年1月1日に条例が施行されてから、今までに処罰された事例は1つもない。

ところが、沙沙さんが深圳市における求人広告を見てみたら、男性に限定した求人広告があちこちで見つかった。

そこで、沙沙さんは、深圳市の数区の労働監察の電話相談に電話をして、そうした求人広告を通報した。ところが、龍崗区の人力資源局と羅湖区の人力資源局は、就職の性差別の通報は処理のしようがないと言い、さらには「企業には採用の自主権があるから、企業は法規に違反していない」とさえ言った。反応が比較的良かったのは、福田区の労働監察であり、最初に自分から「これは就職の性差別の問題だ」と言って、「問題があれば、資料を送って意見を出してほしい」と述べた。

沙沙さんは、以下のように言う。

たとえ条例が「就職の性差別があったときには、各労働監察大隊は、法規に違反した企業に対して期限を切って改めさせたり、罰金を科したりする」と明確に規定していても、各労働監察大隊には就職の性差別に対する意識が足りないために、主体的に企業の就職の性差別行為を是正することはせず、通報人から完全な資料を手渡されるのを待っているだけで、資料を渡されてからやっと事実を確認する。このような消極的な法執行の態度こそが、深圳で現在、就職の性差別状況があまり改善されていない原因である。

沙沙さんは「『条例』は、起草から誕生までの間は広く注目され、各政府部門、各階層の市民、各地方の学者、各大小のメディアがみな多くの賞賛と期待をした。誰もこの『条例』が空文になるとは思わなかっただろう」と述べている。

おわりに――社会運動がなければ空文化は必然

私は、施行された「条例」が草案より大きく後退したとき、「中国では大衆的な運動に対する政治的制約が大きいので、後退を食い止めることも日本よりいっそう難しい」(「『深圳経済特区ジェンダー平等促進条例』制定――ジェンダー主流化のシステムを作ったが、具体的な規定は草案より大きく後退」)と述べたが、施行後においても、社会的な運動がなければ、空文化するのが必然であろう。深圳には女性農民工を支援する団体はあっても、大学のような若い活動家の拠点もなく、運動が展開しにくいという地域的事情もありそうだ。

もうひとつ、沙沙さんが指摘しているように、メディアが、「条例」の施行前はその意義について報道したが、施行後はその施行状況についてほとんど報道しなくなったという問題もあろう。すなわち、施行状況に対してメディアがチェックし、監視する機能が乏しいのである。以前、最初に触れた『女声』誌が、各地の法規のセクハラに関する条項について、「各地のセクハラに関する定義はみな熱い議論を引き起こしたけれども、法律が出来た後は、情報がなくなってしまう」(4)と指摘したことがあるように、このような状況は、しばしば見られる。

この点もある意味、運動の弱さと関係があり、それと関連する政治体制の問題でもあろうが、注意すべき点のように思う。

(1)深圳性别平等促进条例:反性别歧视制度先锋,如今竟成一纸空文?」归来的女神221 2017年3月21日 11:59:41
(2)深圳性别平等条例实施满 1 年至今仍如空中楼阁」『羊城晚报』2014年1月1日。
(3)深圳立法促进性别平等」中国新闻周刊2012年7月9日。
(4)「中国的法律为什么不好用──从反性骚扰说起」『女声』第3期(試刊)[word](2009年9月28日)。
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就職の男女差別裁判で、会社の謝罪も命じる初の判決

目次
はじめに
1.黄蓉さんと馬戸さんが起こした就職の男女差別裁判の判決――原告勝訴だが、慰謝料2000元のみ
2.高暁さんの裁判の第一審の経過
3.第一審判決(2016年4月)――勝訴だが、慰謝料はまたも2000元、謝罪なし
4.黄溢智弁護士の一審判決に対する評価
5.高暁さんが負った心の傷、損失、憤り
6.控訴審における請求と控訴理由
7.第二審判決(2016年9月)――書面での謝罪も命じ、訴訟費用も被告側の負担に。ただし慰謝料は2000元のまま
8.黄溢智弁護士の二審判決に対する評価
9.人力資源・社会保障局の責任を問う裁判は、一審敗訴
おわりに――馬戸さんも最後まで闘っている

はじめに

2012年以降、中国で「フェミニスト行動派」を自称する若い女性たちが、就職の男女差別について裁判を起こして、次々に勝利を勝ち取ってきた。それらは、まだ募集・採用段階における女性であることを理由として明示した直接差別に限定されているとはいえ、職種の面では、事務職から男性職へと対象を広げてきた。訴訟が受理されるまでの期間もしだいに短縮してきた。

しかし、判決において慰謝料が低額であることと会社の謝罪を勝ち取れていない点は限界だった。

けれども、それらの点に関しても、粘り強い運動が続けられ、昨年は謝罪などの面でも前進があったことを、以下、ご紹介したい。

1.黄蓉さんと馬戸さんが起こした就職の男女差別裁判の判決――原告が勝訴するが、慰謝料2000元のみ

黄蓉(仮名。以下の原告名もすべて仮名)さんは、東方調理職業技能訓練学校の文書作成業務の募集に応募した際、「男性のみ」の募集であることを理由に応募を拒否されたことを、2014年7月、裁判に訴えた。2014年11月、法院(裁判所)は、被告に対して、黄蓉さんに慰謝料2000元(約5万円)の支払いを命ずる判決を下した。これが、就職の男女裁判初の勝訴判決である(本ブログの記事「求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる」参照)。

しかし、黄蓉さんは、書面による謝罪と慰謝料の増額も求めて控訴した。けれども、2015年2月、法院は、黄蓉さんの請求を棄却し、原判決を維持した(1)

2015年1月には、馬戸さんが、北京市郵政スピード郵便物流有限公司(北京郵政)が女性であることを理由に馬戸さんの宅配便配達員への採用を拒否したことについて、裁判に訴えた。2015年11月、馬戸さんは、黄蓉さんと同じく慰謝料2000元の判決を得た(本ブログの記事「就職の男女差別で2件目の勝訴判決――今回は宅配便配達という男性職。コック見習い採用の男性のみ求人も提訴」参照)。

馬戸さんも黄蓉と同様の趣旨の控訴をしたが、2016年3月、棄却された(2)

すなわち、職種こそ異なるが、同様の判決が下され、同様の趣旨の控訴がおこなわれたが、同様の控訴棄却が繰り返されたのである。

2.高暁さんの裁判の第一審の経過

広東恵食佳経済発展有限公司がコック見習い募集において高暁さんが女性であることを理由にして不採用にしたこと対して、2015年8月、高暁さんがは謝罪と賠償を求めて広州市海珠区人民法院に提訴した。

この裁判の経過については、本ブログでは、同年9月17日の第1回審理までしかお伝えしていなかったので、それ以後についてご紹介する。

第2回審理――被告側の新たな証拠にもとづく主張に反論

12月4日の第2回審理のとき、広東恵食佳経済発展有限公司(以下、恵食佳と略す)は新たな証拠を提出した。その一つは、4名の女性の厨房職員の労働契約と社会保険の記録である。恵食佳はそれによって、厨房でもけっして女性を採用していないわけではないことを主張した。

しかし、黄溢智弁護士によると、実際はこの4名の女性職員は、いくつかの職場に散在しているだけであるうえ、けっして直接厨房の仕事に採用されたのではなく、長年経ってからやっと厨房に関係する仕事につけたにすぎない。また、賃金水準も低く、広東省の最低賃金ギリギリでしかなかった。

つまり、被告が出した証拠は、むしろ自らの性差別を証明するものになった(3)

恵食佳が提出したもう一つの証拠は、厨房の男性が重ねた皿や品物を運ぶなど、重い仕事・力仕事をしている写真だった。

しかし、その写真も、その厨房には男性だけしかおらず、雇用における男女差別が存在していることを示しているものであり、また、そうした重い荷物を運ぶ仕事も、法規で決められた「女性労働者が従事してはならない仕事の範囲」には属さないことを示しているものだった。

さらに、高暁さんは、恵食佳が証拠として提出した写真の作業と自分も同じ作業をして、その写真を証拠として提出し、高暁さんにもできる仕事であることを示した(4)

また、被告側は、高暁さんの調理師免許が本物かどうか疑ったり、高暁さんが3カ月で初級調理師から高級調理師になれたのはおかしい、などと言ったりして、高暁さんが仕事につけないのは能力の問題であるかのような印象を与えようとした。

これに対しては、裁判官も、「性差別の議論に戻ってください」と2度も強調したほどだ。

しかし、裁判官は、その一方、高暁さんの弁護士に対して、「あなた方は、炒作(センセーショナルなやり方)はしないように」と言った(5)。これは、高暁さんが広東省人力資源・社会保障庁の庁長に対して、自分が作った料理を食べてもらうよう招待するから、広東省の飲食業における女性従業員の状況(比率の低さや女性差別の強さ)について話をしようと呼び掛ける手紙を出して(6)、マスコミなどにも取り上げられた(7)ことを指していると思われる。裁判官は、こうしたやり方は嫌うようで、この点は、社会運動的なやり方に対する嫌悪感なのかもしれない。

第3回審理――被告に名豪軒も加える

2016年3月9日の第三回審理では、高暁さんは、広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼(以下、名豪軒と略す)を被告として追加した。名豪軒は、恵食佳に委託して募集情報を発表した。恵食佳はそれを受けて広告を発表して、職位を募集したのであって、名豪軒も権利侵害行為の主体だったからである(8)

3.第一審判決(2016年4月)――勝訴だが、慰謝料はまたも2000元、謝罪なし

2016年4月3日、広州市海珠区人民法院は、恵食佳と名豪軒に対して、連帯して高暁に慰謝料2000元を支払うことを命じる判決を下した。

その主要部分は、以下のとおりである。

被告の両者は、募集広告の中あるいは実際の募集過程の中で、ずっと原告の能力について職務の条件を満たすか否かの審査をおこなわず、直接高暁の性別を理由として何度も高暁の応募を拒否し、原告に平等な面接試験の機会を与えることを拒否したことは、女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別であるので、原告の損失について、連帯して責任を負わなければならない。

この事件において、原告は、被告の就職差別の行為によって、気持ちが落ち込み、自信がくじけたと主張し、両被告に書面での謝罪を公開するするとともに、経済的損失、精神的損害の慰謝料などを賠償することを主張している。しかし、原告の気持ちが落ち込み、自信がくじけたことなどは主観的な描写であり、たとえ原告が述べた状況が本当にあったとしても、それは原告自身の耐える能力ともある程度関連があるため、権利侵害の程度を完全には反映していない。また、原告が提示した交通費などの領収書も、この事件と関係があることを証明できていない。被告の両者の過ちの程度および権利侵害がもたらした結果の大小を総合的に考慮すると、当裁判所は、被告の両者が連帯して賠償する原告の精神的損失の金額は、2000元が適切であると考える。(9)

この判決に対しては、「2000元の賠償は慣例になったのか?」という声も上がった(10)

4.黄溢智弁護士の一審判決に対する評価

高暁さんの代理人である黄溢智弁護士は、この判決文の中の性差別に関する認定や論理に関しては、評価した。また、以下に述べるように、女性差別撤廃条約との関係でも評価をしている。

原告に直接性別を理由として何度も原告に平等な面接試験の機会を与えなかったことは、「女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別となる」という認定は、女性差別撤廃条約の性差別に関する認定基準に合致しており、さらに司法判決という形式を通じて、現在の飲食産業に存在する性差別の問題を認定したことは、明示的な就職差別を減らすためにある程度役に立つ。

その一方、黄弁護士は、この判決について以下のように批判している。

しかし、この判決は、原告が要求した謝罪の請求を支持しておらず、精神的損害額も低すぎる。これでは、原告がこうむった実際の損失と権利擁護にかかったコストを補償できないだけでなく、女性が性別という理由だけで生活とキャリアの機会を失ったことによる精神的圧力を慰めることもできない。

同時に、就職差別をした被告に対しては、2000元の賠償は、2つの商業団体にとってはごく少ない支出であり、就職差別をした行為の重大性と比べて非常に不釣り合いである。

(11)

5.高暁さんが負った心の傷、損失、憤り

実際、原告の高暁さんが負った心の傷や損失は、上の判決が言うような主観的なものでも、軽いものでもなかった。

心の傷、憤り

高暁さんは子どものころから、中華料理のコックになることが夢で、広東料理のクラスに入って、刻苦勉励した。高さんの料理は先生や同級生にも賞賛され、良い成績を取り、コックの資格試験にも合格した。

ところが、恵食佳のコック見習いに応募すると、受付で「あなた本人が応募するのか」と驚かれ、実地試験もされずに、通知を待っているように言われ、その後、電話で「定員がいっぱいだ」と断られた。高さんは、次に名豪坊に応募したが、ここでも、「定員がいっぱいだ」と断られた。高さんは、やはり自分の性別が断られる原因なのだと思い、高さんは自分にコックの仕事ができることをわかってもらおうと、「私はコックの免許を持っていますし、苦しいことや疲れることも平気ですし、男子学生にできることは私もできますし」と続けざまに言ったが、相手は高さんが言い終わらないうちに、面倒そうな表情になって背を向けて出ていき、周りの人々は高さんに哀れみの視線を投げかけるだけだった。高さんは、その刹那、自分のすべてが否定されたと感じ、自分にはそれに抗う力が何もないと思い、意気阻喪した。高さんはうなだれ、ホテルから出て、よろよろ歩いていると、恵食佳がまた求人広告を出しているのを見つけたので、高さんは電話をかけたが、恵食佳は「わが社は、厨房では女は雇わないと規定している」と言われた。その瞬間、高さんは「この業界には自分は入れない」と思い、目が涙でいっぱいになった。

高さんは、こんな形で自分の夢が破れたとは信じられなかった。自分の能力によってではなく、性別によって排除されたことに、高さんは憤るとともに、どうしようもなさを感じた。

職業の道が断たれたことで、高さんはすっかり落ち込み、のちに病院でうつ病だと診断された。今でも高さんは薬を飲み続けている。その後も、高さんはホテルに電話して応募し続けたが、どこにも断られた。

高さんはあきらめずに、恵食佳を訴えた。しかし、裁判によって、高さんの病状はむしろ悪化した。恵食佳は事実を無視して、証拠を否認し、さらには高さんを貶め、人身攻撃をしたからだ。たとえば、恵食佳は、高さんが応募した時のことをよく覚えていることを「ずば抜けた記憶力を持っている」と風刺したが、高さんが深く傷ついた時のことをよく覚えているのは当然だった(12)

やむなく菓子職人の道へ――それまでの金銭と時間は無駄に

高暁さんは、性差別が比較的少ない菓子作りの職場にしか入れなかった。それは彼女にとってまったく新しい領域だったので、見習い労働者から始めるしかなかった。毎日の仕事の量は多かったのに、賃金は非常に低かった。高暁さんは家賃を払い続けることができなかったので、友だちや仲間と別れて、やむなく勤務先が提供した宿舎に引っ越した。

高暁さんは、「たとえ好みの話は置いておいたとしても、広東料理を学んだときに使った金銭と時間が、なんと大きな無駄になったことか! 卒業したばかりでまだ収入がなく、理想を持った若い人にとって、時間と金銭と理想は貴重であり、踏みにじることは許されない」と語っている。

裁判に対する当局の圧力

訴訟を起こして以後、高暁さんがますます安らかに生活できなくなった原因には、当局からの圧力がかかったこともあった。広州市人力資源・社会保障局(以下、「人社局」と略す)は、家主と居住組織を通じて高暁さんの個人情報と生活状況を調査し、労働監察大隊は高暁さんの家まで訪ねて来た。さまざまなハラスメントの電話もかかってきた。故郷の村の中国共産党支部の書記まで、高暁さんの家族を訪ねてきて、高暁さんは党員だから、党組織とは関係がない活動は必ず上級組織に報告するように要求した。

全ての生活が安全でない感じに満たされたうえに、にっちもさっちもいかない経済状況によって、高暁さんはいっそう束縛され、呼吸することもできないほどになり、精神科の病院に「双極性障害(旧い呼び方では躁うつ病)」だと診断された(13)

6.控訴における請求と控訴理由

4月13日、高暁さんは控訴した。

控訴審では、被告に対して以下の請求をすることにした。

1.控訴人[高暁さん]に対して公開の書面で謝罪をする。
2.控訴人が応募したことによる経済的損失21元(交通費20元、電話料金1元)を賠償する。
3.控訴人に精神的損害の慰謝料40800元を賠償する。
4.一審と二審の訴訟費を負担する。

以下が、控訴理由(抜粋)である。

まず、控訴人の訴訟での請求の第1項は、「権利侵害責任法(侵权责任法)」第15条第(7)項によって被控訴人に謝罪を求めるものである。「民法通則」第134条第10項も、「謝罪」を、民事責任を引き受ける方法の一つとしている。原審の法院が認定した権利侵害の事実の上に立って、訴訟で謝罪を請求することは、事実の根拠も法律的根拠もあるので、原審の裁判所は支持すべきであった。

同時に、「最高人民法院の民事権利侵害の精神的損害賠償責任を確定することに関する若干の問題の解釈」第8条は、「権利の侵害が人に精神的損害を与え、その影響が重大なときは、人民法院は、人に侵害を停止させる、名誉を回復する、影響をなくす、謝罪するなどの民事責任を判決によって命ずるほか、被害者側の請求にもとづいて精神的損害の慰謝料を賠償させることができる」と規定している。(中略)

次に、原審の法院が両被控訴人に支払わせた2000元精神的損害賠償は低すぎて、控訴人が被った実際の損失と権利を擁護するために支払ったコストを補償できないだけでなく、女性が性別のみによって、生計を立て能力を発展させる機会を失ったことを慰藉することもできない。同時に、就職差別をおこなった2つの企業にとっては、2000元という賠償はきわめて低額な支出であり、就職差別という行為をすうという重大性にふさわしくなく、法律に背いた者や潜在的に法律に背いている者を震え上がらせることもできない。これは、国家の法律・政策の中で、女性の平等な就業権を確実に推進するという精神にも合致しない。

(中略)

以上、控訴人は原審の法院が両被控訴人に2000元だけしか精神的損害の慰謝料を払わせず、謝罪と経済的賠償を支持しなかったことは、法律の規定と男女平等の国策に合致しないと考えるので、「民事訴訟法」第164条にもとづいて控訴し、二審の法院が法にもとづいて判決を改め、控訴人の控訴の請求を支持し、女性の平等な就業権を確実に保証するよう求める。

(14)

7.第二審判決(2016年9月)――書面での謝罪も命じ、訴訟費用も被告側の負担に。ただし慰謝料は2000元のまま

2016年9月20日、広州市中級人民法院は、次の2点で高さんの請求を受け入れた判決を下した。

(1)謝罪の請求を支持した。

被告の広東恵食佳経済発展有限公司と広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼は、判決の効力が生じてから10日以内に高暁に対して書面で謝罪し(謝罪の内容は法院が審査して決める)、もし履行しないならば、法院が広州地区の公に発行されている新聞に判決書の主要な内容を掲載し、それにかかる費用は被告側が負担する。

(2)訴訟費用を相手側の負担とした。

一・二審の事件の受理費の各500元は、ともに広東恵食佳経済発展有限公司と広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼の負担とする

(15)

8.黄溢智弁護士の二審判決に対する評価

以下、黄溢智弁護士が、この判決について述べたことを記した。これまで述べたことと重複もあるが、最終審での判決についての論評なので、詳しくご紹介してみた。

以前の北京[の馬戸さん]と杭州[の黄蓉さん]の2件の裁判と比べると、この事件の判決が進歩であることは疑いなく、この判決は司法の男女平等な就業権の保護について、また一歩段階を進めた。(中略)

2008年に施行された「就業促進法(中华人民共和国就业促进法)」は、その前の「労働法」と「婦女権益保障法」にすでにあった女性差別を禁止する条項を重ねて規定したが、就業促進法の第62条(「本法に違反して就職差別をした場合は、労働者は人民法院に訴訟を起こすことができる」)で、差別を受けた者が直接法院に訴訟を起こす権利を明確にした。高暁はその条文に依拠して、恵食佳に謝罪と損害賠償の慰謝料を要求したのである。

性差別の存在を証明することはあまり困難ではなかった。恵食佳は一貫して男性だけを募集したことを否認したけれども、高暁は恵食佳の職員と何度も話をしたときに、いつも「厨房では女性は募集しない」と言われ、その後、恵食佳は、求人広告に「男性」という条件を入れるようになったことは、故意に差別をしていることを明確に示している。恵食佳は、人を雇う自主権を主張したが、これは差別をしてよい理由にはならない。人を雇う自主権も、法律が禁止している規定に違反してはならない。恵食佳は、厨房には4名の女性従業員がいるという資料を提供して弁解した。しかし、これらの女性従業員の資料は、むしろ恵食佳に性差別が存在していることをいっそう証明するものだった。別々のホテルに4人だけいる女性従業員は、10年近く仕事を続けた後になってやっと厨房と関係がある仕事(主要な厨房のポストではない)に従事することができたにすぎず、報酬や待遇も依然としてきわめて低かった。厨房の重要なポスト、ひどい場合はすべてのポストは男性が独占している。裁判所は、高暁が提供した証拠にもとづいて、恵食佳の被告の両者が、求人広告においても、実際の採用過程においても、高暁の能力がポストの条件を満たしているか否かをまったく審査せずに、直接高暁の性別を理由として何度も高暁の応募を拒否し、原告に平等な面接試験の機会を与えることを拒絶しており、これは、女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別であると認定した。

性差別を認定し、当事者が謝罪を要求した以上、判決で謝罪を命じることは、本来、道理にも、法にもかなっている。しかし、杭州の黄蓉の裁判から北京の馬戸の裁判に至るまで、法院は謝罪の請求を支持してこなかった。けれど、2008年に「就業促進法」が施行された後、B型肝炎の就職差別裁判が多く起こされたが、その多く判決の中で、各地の法院は、差別された応募者が企業に求めた謝罪の請求を支持したことを私たちは知っている。「謝罪」は、法律が規定した民事責任を引き受ける方法の一つである。謝罪は原状回復に重点があり、慰謝料は金銭的賠償に重点がある。法院はまず前者を考慮すべきなので、法院は精神的損害の慰謝料の支払いを判決で命じた以上は、謝罪も支持するのが当然である。広州市中級人民法院は、高暁の控訴意見を認めて、恵食佳に公開での謝罪を命じる判決を出した。訴えを起こして以降、差別をした側である恵食佳の態度は傲慢で、差別を認めないだけでなく、法廷で高暁をあざけって、高暁に二次被害を与えたので、この謝罪の判決は、高暁個人にとっては慰めになる。同時に、これは性差別を受けた者に対する司法的救済を完全なものにする上で有利であり、謝罪は金銭的賠償の不足をある程度補う。しかし、まったく不十分である。

3件の性差別裁判で法院が判定した損害賠償は、みな、わずか2000元である。馬戸の裁判では、この2000元の賠償は、訴訟費用さえまかなうことができず、まして公証費、旅費、仕事に支障をきたした出費などはまかなえなかった。この2000元は、企業にとってはきわめて低額な支出であり、就職差別という行為の重大性にふさわしくなく、法律に背いた者や潜在的に法律に背いている者を震え上がらせることもできず、国家の法律・政策において、女性の平等な就業権を確実に推進するという精神にも合致しない。私たちが多くの就職差別の判決を収集したところ、法院が、B型肝炎によって就職差別をされた応募者に対して与えた賠償は、就職の性差別の判決の中の2000元よりもはるかに高額だったことがわかった(16)。B型肝炎差別問題の解決と有効な司法的救済とは密接に関連していた。就職の性差別問題も司法のルートを通じて早急に有効な解決をする必要があるが、差別の被害者に対する賠償の基準を引き上げることによって企業の法律違反のコストを増加させることがそのカギとなる。

この判決のもう一つ進歩は、法院が訴訟費用の分配を改めたことである。この裁判の一審判決の受理費は500元だったが、一審の法院の判決は、高暁に476元を負担させ、会社は24元しか負担しなかった。この裁判は、平等な就業権に対する権利侵害の訴訟であり、財産についての裁判ではなく、人格権の裁判である。原審の法院は恵食佳の行為は就職差別だと判決で認定し、高暁の人格権が侵犯されたという訴えはおおむね認められたが、賠償金額上では、40800元の訴えとは開きがあったというだけである。しかし、原審の法院は、財産についての裁判として処理し、高暁が獲得した賠償金額の比率にもとづいてのみ訴訟費用を配分し、人格権の裁判の中で恵食佳の権利侵害行為が成立したことによって敗訴した責任を負わなければならないことを考慮していなかったため、大部分の訴訟費用を、差別を受けた被害者の側に支払わせた。一審の法院の訴訟費用に対する配分はきわめて不公平である。この問題は馬戸の裁判の中でも出現した。このことは、法院が扱った就職差別裁判の件数が少なすぎるために、普通の労働争議裁判と本当に区別して扱っていないことと関係があるのかもしれない。いっそう反差別裁判の司法的救済を整備し(受理した事件の内容?およびこうした事件の審理の規範を制定することを含む)、長期的には、反就職差別法を制定し、反差別システムを設立することも必要である。(17)

9.人力資源・社会保障局の責任を問う裁判は、一審では敗訴

2015年6月、高暁さんは、広東省人力資源・社会保障庁にも、恵食佳の採用の性差別について訴えを提出した。これはのちに、広州市人力資源・社会保障局に取り次がれた。

しかし、11月24日、高暁さんは、広州市人社局から、「調査したところ、恵食佳は男性に限定して採用を拒否したという事実を否認しており、また、高暁はすでに訴訟を起こしているので、受理せず、法律的手続きによって処理してほしい」という回答を受け取った。その回答には印章も押されていなかった(18)

高暁さんは、「就業促進法」「人材市場管理規定」などの法律法規は、労働行政部門は企業の就職差別に対して監督責任があることを規定しているので、たとえ裁判が起こされていたとしても労働行政部門は訴えの受理を拒否できないと考え、広州市人社局と広州市労働保障監察支隊を相手取り、以下のことを求めて裁判を起こした。
・人社局が高暁さんの就職差別の訴えを受理しなかったという行政行為は違法であることを確認すること。
・人社局に高暁さんの就職差別の訴えを受理するように命じること。

2016年5月24日、その裁判の1回目の審理が広州市鉄道運輸第一法院でおこなわれた。その日の午前中、女子学生の王月さんら数人の青年が、広東省の人社庁に行って建議の手紙を渡して、人社庁が就職の男女差別を重視し、それを監督するシステムを作るよう訴えた。その際、青年たちは、人社庁の前で、黒い中華鍋を手に持って、「就職差別にコストはない、黒い鍋は女性には背負わせない」という、性差別的現状を批判したプラカード掲げてアピールした。人社庁の陳情室の職員は、彼女たちの手紙を受け取り、事情を聞いた後、人社庁は高暁の事件をずっと重視しているし、たしかに就職の性差別はずっと存在しているので、この件には注目していきたいと述べた。青年たちは、午後は法院に行って裁判を傍聴した(19)

しかし、9月13日、広州市鉄道運輸第一法院が下した判決は、高暁さんの就職差別の訴えを受理することを求める請求は支持せず、人社局の回答に印章が押されていない点のみを違法とするものだった。

高暁さんは控訴した(20)

おわりに――馬戸さんも最後まで闘っている

2016年3月に控訴が棄却された馬戸さんも、それで諦めたわけではない。

まず、馬戸さんは、「申訴」をおこなった。申訴とは、すでに効力を発した判決について上級裁判所に改めて審理を要求することである。中国は二審制だが、そうした道もあるのである。しかし、これは失敗に終わった。

さらに、馬戸さんは、2017年1月5日、北京市人民検察院に「抗訴」の申請をおこなった。抗訴とは、検察院が法院の判決に対して不服な場合、再審をおこなうことである。馬戸さんの場合、高暁さんの二審判決と異なり、勝訴とはいえ、謝罪は獲得できなかったし、訴訟費用のうち2129元のうち、北京郵政は100元しか負担せず、残りは馬戸さんが負担する判決だった。その一方、北京郵政が馬戸さんに支払った精神的損害賠償(慰謝料)の金額は、(これは高暁さんの場合も同じだが)2000元にすぎなかった。その点について変更を求めたのである。

2016年8月22日、最高人民法院のウェブサイトは、「社会主義の核心的価値観を発揚した典型的判例」の一つとして、馬戸さんの裁判の判決を挙げた。そのこと自体は注目すべきだ。しかし、最高人民法院は、慰謝料は、募集要項の「過ちの程度」にもとづいて決めたと記した。また、就職の性差別をしようとした企業に「威嚇」を与えるものだとも記した。

それに対して、馬戸さんは次のように述べている。「法院はどのようにして過ちの程度を測ったのか? 2000元だけで賠償できるとは、どの程度なのか?」「賠償金額が2000元だけだというのは、企業に対する威嚇なのか、それとも権利を守る者に対する威嚇なのか、私にはわからない。北京郵政が登記している資本は4000万元だ。」「男女平等という社会主義の核心的価値観はこんなにも安いのか?」と(21)

フェミニスト行動派の女性たちは、2012年7月に最初に就職の男女差別を裁判に訴えた曹菊さんの訴えを裁判所に受理させるだけのために、1年以上もの期間、さまざまな努力を重ねた(「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」)。

上で述べてきたことからは、そうした闘いは、さまざまな困難にも負けず、今なお続けられており、わずかずつだが成果も勝ち取ってきていることがおわかりいただけよう。

(1)求职遭歧视案续:女生二审胜诉却仍未获道歉」搜狐2015年2月5日(来源:大河网-大河报、原題:「案件二审维持原判女生仍未获道歉」)。
(2)女权之声【马户诉就业邮政性别歧视案终审判决结果:维持原判】3月2日 14:30
(3)广东就业性别歧视案一审第二次开庭」女权之声的博客2015年12月4日。
(4)女权行动派更好吃的微博【“我们没有歧视女性,女人真的做不了大厨”】2015年12月4日 14:26、「想做女厨师不成 她要做饭请厅长吃」『南方都市报』2015年12月9日。
(5)注(4)の箇所からここまでは、法官捎话给:原告你们不要炒作」新媒体女性的博客2015年12月5日。
(6)厅长,女大厨请你吃饭,约吗?」2015-10-19 女权行动派很好吃。
(7)想做女厨师不成 她要做饭请厅长吃」『南方都市报』2015年12月9日。
(8)遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉!」女权行动派很好吃2016年9月20日→「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉! 」女权之声2016年9月21日 15:08:57
(9)性别歧视2000块就了事?想当大厨被拒的她发起众筹继续上诉」女权之声2016年4月18日 11:33。
(10)广州就业性别歧视第一案一审判决:赔偿2000块成为惯例?」女权之声2016年4月5日 16:13。
(11)以上は同上。
(12)以上は、「“性别歧视不足以阻止我”……去炒菜!」女权之声2016年8月19日 13:54:54(作者: 女权行动派吃不完)。
(13)以上は、(10)に同じ。
(14)以上も、(10)に同じ。
(15)以上は、「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉!」女权行动派很好吃2016年9月20日→「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉! 」女权之声2016年9月21日 15:08:57
(16)黄弁護士が調べたところ、2008年、2009年のB型肝炎の就職差別裁判では、裁判官は1万5000元の精神的損害賠償の判決を下したこともあるし、広西と武漢では、それぞれ1万元、5000元の精神的損害賠償を命じているとのことだ(「违规成本只要2000块? 广州就业性别歧视第一案判决遭炮轰」自由亚洲电台2016年4月7日)。
(17)黄溢智「高晓案胜诉对完善我国反歧视司法有何意义?」女权之声2016年9月21日 17:55:23。劉明輝弁護士(中華女子学院法学院教授)の判決に対する評論は、刘明辉「女大厨遭遇就业性别歧视:判决赔礼道歉为何如此艰难?」橙雨伞公益的微博2016年9月29日 11:00:53参照。
(18)法院纵容人社局对就业性别歧视不作为! 刚胜诉的高晓马不停蹄上诉」女权之声2016年9月29日 17:11:07(来源:微信公众号“女权行动派很好吃”)
(19)この段落と上の段落については、@小田切菜「女青年背黑锅现身人社厅,呼吁关注厨师行业招工性别不平等」2016-05-25 15:19:54、明燚feminist的微博2016年5月24日 17:31
(20)以上は、(18)に同じ。
(21)只值2000块的社会主义价值观」2017-01-05 马户 女权行动派很好吃

就職の男女差別で2件目の勝訴判決――今回は宅配便配達という男性職。コック見習い採用の男性のみ求人も提訴

<目次>
一 宅配便配達員の採用の男女差別に関する勝訴判決と「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の縮小を求める運動
 1 北京郵政、宅配便配達は「女性労働者保護特別規定」の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」で女性の従事が禁じられていると主張
 2 馬戸、北京郵政の「男性のみ」求人を人社局にも通報。さらに、「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小を求める建議」を総理に郵送し、署名運動も。フェミニスト行動派の微博は「女子が重い荷物を持つコンクール」
 3 北京市順義区法院、北京郵政に慰謝料2000元などの支払い命じる馬戸勝訴判決
 4 馬戸、北京郵政への謝罪要求棄却と慰謝料の低額さを批判して控訴、北京郵政も控訴
 5 馬戸、人社部に「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の該当箇所の根拠について情報公開申請

二 高暁、女性であることを理由にしたコック見習い不採用を提訴
 1 黄蓉の就職の男女差別事件の判決を見せて、裁判官に訴えを即日受理させる
 2 若い女性たち、裁判所前で、料理をしている主婦の扮装で「女もシェフになれる」パフォーマンスアート
 3 鄭楚然、「主婦も、工場の食堂の炊事婦も女性だ。女は無料か安価でしか飯を作れない」と現状を批判
 4 高暁、広東省の人社庁の長官に、自分が作った食事に招待する手紙

2015年11日2日、就職の男女差別で2件目の勝訴判決(職種は宅配便配達員)があったことや8月18日、コック見習い採用の男性のみの求人についても提訴がされたことを、以下、ご紹介します。いずれも、これまで男性が多かった職種の採用の男女差別についてです。

一 宅配便配達員の採用の男女差別に関する勝訴判決と「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の縮小を求める運動

今年1月、北京郵政の宅配便配達員の求人に「男性のみ」と書かれていたにもかかわらず、馬戸さん(仮名)という女性が応募し、2日間試用してもらうことによって、任に堪えることを証明して営業所の主任に採用を承諾させた。けれど、本社は、馬戸さんが女性であるという理由で採用を拒否したため、馬戸さんは北京郵政を北京市順義区法院に訴えた(これまでの経過は、本ブログの記事「『男性のみ』募集を訴えた3件目の裁判――今回は翌日に受理、『男性向け』と思われがちな宅配便配達員での採用の性差別を問う」参照)。

1 北京郵政、宅配便配達は「女性労働者保護特別規定」の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」で女性の従事が禁じられていると主張

4月20日、馬戸さんの裁判の2回目の法廷が開かれた。北京郵政は、宅配便配達の仕事は女性には適していないと述べ、その根拠として、「女性労働者保護特別規定(女职工劳动保护特别规定)」の付録の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲(女职工禁忌从事的劳动范围)」が「一時間に6回以上、20kg以上の荷物を持つ作業、または断続的に25 kg以上の荷物を持つ作業」に女性労働者が従事することを禁じていることを挙げた。北京郵政の弁護士は、「北京郵政には現在、女性宅配便配達員はいない。女性宅配便配達員を採用している企業は違法なので、労働監督部門はそれらの企業を処分すべきである」とまで主張した。

こうした主張に対して、まず、馬戸さんの代理人の劉明輝弁護士(女性。中華女子学院法学教授)は、「北京郵政は、証拠もなしに、配達する荷物の重量が25kgあるいは20kgを越えていると言っている。それに、日常生活の経験から見ても、小包が20㎏を越える状況は珍しい。ごく少数のそうした小包については、北京郵政は、法律に従って女性配達員に配達を割り当てなければいい。これは労務管理の問題だ」と反論した。

さらに、劉明輝弁護士は、「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の規定は、立法の初心は女性を保護することだったが、客観的には、男性が独占している高給の職務に女性が入ることの障害になっているのではないか、と述べた。つまり、「わが国の立法はいささか家父長的であって、『必ずあなたを保護しなければならない』というものだが、まず女性に『そのような保護をあなたは受けたいのか?』と問わなければならないのではないか?」(劉弁護士)ということである。劉弁護士は、今年の2つの会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の期間にも、女子大学生が百人近い全国人民代表大会の代表に手紙を書いて、女性労働者禁忌労働範囲を調整して、女性の個人の差異を尊重し、女性の選択権を保障することを求めるよう訴えたことも述べた。

当日は、釈放された李婷婷(李麦子)さんも駆けつけて、裁判所の前で、馬戸さんといっしょに、女性のパワーを示す「WE CAN DO IT」のポーズをとった写真に収まった(1)

2 馬戸、北京郵政の「男性のみ」求人を人社局にも通報。さらに「女性労働者が従事することを禁じる労働の範囲の縮小を求める建議」を総理に郵送し、署名運動も。フェミニスト行動派の微博は「女子が重い荷物を持つコンクール」

「男性のみ」求人を人社局に通報

5月18日、馬戸さんは、北京郵政が求人サイト「58同城」に相変わらず「男性のみ」という性差別的求人広告を出しているのを発見して、北京市朝陽区の「人力資源と社会保障局」(人社局)にそれを訴える手紙を出した(2)。7月7日にも、馬戸さんは、北京郵政とその募集の代理をしている労務派遣会社の「男性のみ」求人広告を人社局に通報する手紙を出した。馬戸さんは「『就業促進法(中华人民共和国就业促进法)』第60条によると、『労働行政部門は本法の実施状況に対して監督・検査をおこない、通報制度を設け、本法に違反する行為に対する通報を受理して、事実を確認して処理しなければならない』とある。私は、労働監察部門の監督を監督して、通報された者に対して法にもとづいて行政処罰をすることによって、労働者の合法的権益を守り、女性差別はもう代償なしにできる、免責されることではないようにすることを望んでいる」と述べた(3)

「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小を求める建議」

さらに、馬戸さんは7月27日から、「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小を求める建議」を李克強総理に提案する手紙と、性差別的な求人を出している単位(企業・機関など)を人社局に通報する手紙、その求人を出しているサイトを人社局に通報する手紙を1通ずつ送る活動を始めた(4)。馬戸さんは、9月6日まで、断続的に16日間、それをおこなった。

馬戸さんが書いた「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小に関する建議」は、その範囲を縮小すべき理由として、3点を挙げている。

まず、「1.伝統的な重い肉体労働の職種の実質は現在では変化している」と述べて、科学技術の進歩と機械化の程度の向上によって、たとえば坑内労働も、人力の採掘の大部分が機械にとって代わられて労働強度が低下し、ガス測定員のような肉体労働でない労働もできるなど、女性も、伝統的には重い肉体労働だった職種に携わることができるようになるという変化が生じたことなどを述べている。

また「2.女性労働者の職業禁忌は差別的な結果を招いている」として、四期(月経・妊娠・出産・哺乳の時期)以外に女性労働者を特定の職業に従事することを禁止することは、背が低くて弱小な男性もすべての職業に適しているとすると仮定していることになるが、これは男性を尊重していないし、また、女性なら、背が高くて強壮な女性も適していないとするものであり、これは、「女性の就業の機会を減少させ、一部の適した女性の就業の選択権を剥奪し、使用者には女性労働者を雇わない口実を与えるため、女性の就職難という状況を激化させる」と指摘している。

さらに、「3.時代遅れの『保護』は先進的な『エンパワメント』に変えるのが世界的な立法の趨勢である」として、ドイツでは、以前は女性の坑内労働と採鉱作業を禁止していたのを、「母親保護法」では、女性に対する特殊な保護を妊娠以後の一定の期間に限定したことや、ECの立法では、鉱業や林業などの職業では、各個人が、自分がその仕事につくか否かの選択権を持っており、使用者が性別によって不採用にすることは禁じていることを挙げている。

馬戸さんが李克強総理におこなった具体的な「提案」は、以下の3点である。

1.女性という集団の個人による差異の分類の規範について、保護的立法をエンパワメントする立法に改める。「エンパワメント」に立脚して、女性の権利主体としての地位を確立し、特殊な保護を必要としない女性が男性の独占している職業に進出できる選択権を付与する。

2.「中華人民共和国労働法」第59条の「女性労働者を坑内労働と国家が規定する第四級肉体労働強度の労働とその他の禁じられた労働に配置することを禁止する」を廃止する。

3.「女性労働者保護特別規定」の附録である「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の中の第1条「女性労働者が従事することを禁止する労働範囲:(一)坑内作業、(二)肉体労働強度分級基準の中で規定する第四級肉体労働強度の作業、(三)1時間に6回以上、毎回20㎏の重荷を負う作業、あるいは断続的に毎回25㎏の重荷を負う作業」を削除する。(5)

また、人社局への通報活動については、金華市人社局が、性別を制限するホームページの情報をなくしたことを回答する(6)などの成果があった。

さらに、9月7日、馬戸さんたちは、裁判所での3回目の審理に向けて、「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小を求める署名」を開始した。

その署名の内容は、これまでの裁判の経過と上記の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小に関する建議」とを簡潔にまとめたもので、具体的な「提案」は上の1~3とまったく同じである(7)

第3回審理が終わった後、国家の人力資源と社会保障部(人社部)に建議信と200あまりのネット上で集めた署名を提出した(8)

「女子が重い荷物を持つコンクール」

また、9月12日から25日まで、「フェミニスト行動派」の微博(中国版ツイッター)アカウントが、「女子が重い荷物を持つコンクール」をおこなった。これは、「すべての女性が『配慮』されなければならないのか?」というテーマのもと、自分が重い荷物を持っている写真とメッセージを各自の微博で発表してもらうコンクールである(9)

このコンクールには、さまざまな写真やメッセージが寄せられたが(10)、1等賞から3等賞までを微博の転載(リツイート)数と「賛」(いいね)の数で決めた。その結果、1等賞には、李麦子さんの同性婚の相手が李麦子さんを持ちあげている@徐枣枣辣手摧花の写真、2等賞には、腰を痛めている鄭楚然さんがカートを使って荷物を運んで「人と多くの動物との違いは、人は道具を用いることができることだ」と言っている写真と、郭晶さんが「My vagina My power!」と書いたホワイトボードの前で、ヴァギナに見立てた切れ目を入れたスイカを持ち上げている写真が選ばれた(11)

3 北京市順義区法院、北京郵政に慰謝料2000元などの支払い命じる馬戸勝訴判決

11日2日、北京市順義区法院は、「北京郵政は就職差別をおこなって、馬戸に対して一定の精神的損害を与えた」と述べて、慰謝料2000元などの支払いを命ずる判決を下した。これは、中国における、男女の就職差別に関する2件目の勝訴判決である。1件目は、2014年11月、杭州市西湖区法院が、東方調理職業技能訓練学校が文書作成の仕事をする人を募集した際に「男性のみ」という条件を付けたために黄蓉さんの平等な就職の権利を侵害したことに対して慰謝料2000元の支払い命じた判決である(本ブログの記事「求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる」)。

判決は、北京郵政側の主張に対しては、「宅配便配達員は、国家が規定している女性が従事するのに適していない職種やポストではない」として退けた(12)

馬戸さんは、判決に対して、「大変感激している。」「私は卒業したばかりの大学生で、郷里を離れて不案内な北京にやってきた、取るに足りない存在だ。また、女性なので、差別されやすい存在だ。」、だから「最初のころは、勝訴できるとはどうしても思えなかった。なぜなら、北京郵政は国有企業であるのに対して、正直に言って、私自身の力は小さすぎると思っていたからだ。しかし、事件の審理での、相手側が法廷で述べた筋が通らない弁護やあからさまな差別に対して、この判決は情理に合っている」と語った(13)

4 馬戸、北京郵政への謝罪要求棄却と慰謝料の低額さを批判して控訴、北京郵政も控訴

ただし、馬戸さんは、続けて、「しかし、心の底ではやはり不満足だ。まず、私が最も気にかけていたお詫びは裁判所の支持を得られなかった。また、起訴費と公証費も支持を得られなかったし、賠償の金額は黄蓉事件と同じ2000元で、私は法律違反のコストとして低すぎると思う」と述べ、弁護士と相談した結果、控訴するつもりだと語った(14)

一方、北京郵政も控訴した。北京郵政は、自分たちは道理にも法律にもかなっていて、差別はしておらず、馬戸のほうが悪意の訴訟をしていると断言している、とのことだ。馬戸さんは、やっと1審で勝訴したのに、もし敗訴したら、と考えると、思わず涙が溢れ出た。しかし、相手方の控訴状に、一審判決の取り消しや馬戸さんのすべての請求の棄却、一審と二審の訴訟費は馬戸さんに負担させることなどが書いてあるのを読み、怒り心頭に発した。

馬戸さんの控訴審での請求は、以下のとおりだ。
1.書面でお詫びをすること。
2.控訴人(馬戸さん)に対して、精神的損害の慰謝料5万元を賠償すること。
3.控訴人の公正費用(公証費用の誤記?)1千元を賠償すること。(15)

今回の勝訴は、募集段階での明文での女性排除についてなので、まだ初歩的な勝利だとは言えるかもしれない。しかし、1件めの勝訴判決は、事務職についてだったが、今回は、宅配便配達員という、かなり「男性職」的色彩が強い仕事ついての就職の男女差別についてのものだった点は、前進だと言えると思う。

5 馬戸、政府の人社部に「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」の該当箇所の根拠について情報公開申請

11月16日には、馬戸さんは、政府の「人力資源と社会保障部」(人社部)に対して、情報公開申請をおこなって、「女性労働者保護特別規定」の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲」が「一時間に6回以上、20kg以上の荷物を持つ作業、または断続的に25 kg以上の荷物を持つ作業」を女性労働者に禁止していることについての、事実にもとづく根拠と法律的根拠、および実現可能性に関する報告、調査研究報告を公開するよう求めた。同時に馬戸さんは、上記の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小に関する建議」のほうも、政府の人社部に提出した。

馬戸さんは、「けっして、すべての男性が、肉体労働ができるわけではなく、すべての女性が、肉体労働ができないわけではない。女性がやりたくて、かつ、やれることは、『保護』という名目で女性の選択権を剥奪すべきではない。」「また、現代は機械化の時代であり、機械の発明は、肉体労働に対する要求を大きく軽減した。実習のとき、私が配達しなければならなかったのは、基本的には郵便物とインターネットで購入した小さな小包が主であり、10kg以上の重いものを運ぶときは、男性配達員であっても補助的な道具を使用していた。だから、体力は、もう女性がそれぞれの職業に入る制限にはならない。女性は自由に職業を選択する機会と権利を持たなければならない」と述べた(16)

中国の女性労働者保護が、女性がつく職種自体の制限をしている問題については、瀬地山角『東アジアの家父長制』(勁草書房 1996年)も触れているし(p.318-320)、近年は中国でも問題が提起されてきたが(本ブログの記事「『女性労働者特別労働保護条例(意見募集稿)』に対する女性団体の意見」など参照)、直接の当事者が運動として改正を求めたのは、今回が初めてであろう。

二 高暁、女性であることを理由にしたコック見習い不採用を提訴

1 黄蓉の就職の男女差別事件の判決を見せて、裁判官に訴えを即日受理させる

2015年8月18日、高暁さんという女性が、広州市海珠区法院に、広東恵食佳経済発展有限公司(以下、「恵食佳」と略す)がコック見習いを募集したとき、女性であることを理由に採用を拒否されたことを訴えた。裁判所は、即日受理した。

高暁さんは、「私は6月28日、この会社が『58同城』サイトにコック見習いの求人広告を出しているのを見つけ、自分にはこの職につく資格が十分にあると思ったが(高暁さんは、2014年に広東料理クラスの研修を受け、中国式調理師の高級資格証書も取得していた)、応募した後になって、『満員になった』という電話がかかってきた。けれども、同社はその後も同じ職位の求人広告を出しており、数日後に見てみると、その求人情報には『男性のみ』と書かれていた。私は納得できなくて、電話をして尋ねたら、コック見習いは男子学生しか募集していないと断られた」と語っている。

高暁さんは、以前から何度も「女の子がコックの仕事を見つけるのは難しい」と言われてきたが、事務の仕事をやめて研修に参加して、中国式調理師の高級職業資格証書をもらった。2015年6月から、高暁さんは、コック見習いのポストに応募するためにたくさん履歴書を送ってきたが、なしのつぶてだった。高暁さんは調理が好きで、調理の仕事をしたかったのに、女性であるために排除されるのは、やりきれなかった。

高暁さんは、ジェンダー平等の問題に長い間取り組んできた黄溢智弁護士のところに相談に行って、裁判をすることに決めた。

8月18日、高暁さんは広州市海珠区人民法院に行って、恵食佳に謝罪と賠償を求める訴状を提出した。裁判官は、初めは、高暁さんに労働局に行って労働仲裁を申請するように言ったが、高暁さんが、黄蓉さんの就職の男女差別事件の判決などを見せたら、裁判官は態度を変え、その日の午後には高暁さんの訴えは立件(受理)された。

高暁さんは、「就職の性差別の最初の裁判の曹菊は、立件(受理)に1年間の時間がかかった(本ブログの記事「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」参照)。二番目の黄蓉の裁判も1カ月かかったが、私は当日立件できた。これは、女性の平等な就業件に対する注目を示しており、自分の裁判には楽観的な期待が持てる」と語った(17)

2 若い女性たち、裁判所前で、料理をしている主婦の扮装をして「女もシェフになれる」パフォーマンスアート

9月17日、高暁さんの裁判の審理がおこなわれた。黄溢智弁護士は、これは広東で最初の、女性が企業の募集の性差別を訴えて、裁判所が受理して立件した民事訴訟だと述べた。

この日、裁判所(法院)の入口では、エプロンを身に着け、フライ返しと白菜を手に持った、家庭で「料理をする女性」の扮装をした女性たちが、「主婦は高暁を応援する」、「女もシェフになれる」と書いた紙を掲げてアピールした(その写真を含んだ記事)。

当日の法廷で恵食佳の弁護士は、「募集したポストは一定の特殊性がある。伝統的な広東料理の店では、コックと見習いとは伝統的な師弟関係になるので、応募者を採用するのは、コックと指導者の同意も必要であり、料理店は採用の過程で自主選択権を持っている」と主張した。

それに対して、高暁さんのもう一人の代理人である劉瀟虎弁護士は、「採用の過程での自主選択権は限定的なものであり、『男性のみ』と明確に示すのは性差別である」、「現在多くの人はまだ男女の職業選択にステロタイプなイメージを持っていて、『あなたのためを思って』とか『男(女)には適していない』とかいった理由で求職を拒絶しているが、これも無意識的な就職差別であり、求職者の就業の自主権を侵犯している」と述べた(18)

3 鄭楚然、「主婦も、工場の食堂の炊事婦も女性だ。女は無料か安価でしか飯を作れない」と現状を批判

この事件に関して、8月21日、鄭楚然さんは、「女は男より力がないから、厨房の仕事は難しい」という考え方に対して、「多くの工場の食堂や建設現場の食堂で、50人以上の肉体労働者の飯を炊いている台所の労働者は中年女性だ。彼女たちは、大きな桶を洗い、大きな包丁を使い、大きな鍋で炒め、大きな鉢を持ち、大きなひしゃくでスープ・副食物・飯を取り分けている」、また、家庭でも女性は、大きな買い物をするときは、「私の母親も、少なくとも10kgをビニール袋に入れて家に帰る」ことを挙げて反論した。

鄭楚然さんは言う。「女はけっしてコックという職業につく能力がないのではなく、女は家でしか飯を作れず、大きな料理店では飯を作れないのだ。また、女は安い食堂でしか飯を作れず、高級な料理店では飯を作れないのだ。このような現象の実際の結果は、女は無料か安価でしか飯を作れず、飯を作ることで名誉と利益を得ることはできない、ということだ」と述べた(19)

4 高暁、広東省の人社庁の長官に、自分が作った食事に招待する手紙

高暁さんは、10月、広東省人力資源・社会保障庁の庁長の林応武さんに、自分が作った料理を食べてもらうよう招待するから、広東省の飲食業における女性従業員の比率の低さや女性差別の強さについて話をしようと呼び掛ける手紙を出した。

高暁さんは、さまざまな写真を示しつつ、家庭で炊事をしている母親は30~40斤(1斤は500g)あるような子どもを抱いて、手にスーパーマーケットで買った重い荷物を持っていたりすることや、学校の調理室の炊事婦や工事現場の農民工、田畑を耕作する農民の多くが女性であることを述べて、女性に調理師ができないはずはないことを訴えた(20)

明日、12月4日に、第2回目の法廷が開かれるそうである(21)

以上のように、3月~4月のフェミニスト5女性の拘留事件後の厳しい状況の下でも、フェミニストたちは、裁判、違法行為の行政当局への通報、情報公開申請、署名運動、パフォーマンスアート、ネット上での創意あるコンクールなど、さまざまな活動をつうじて闘いを続けていることがわかる。

とはいえ、以前のような、全国いっせいに何かをするような活動はまだおこなわれていないし、11月25日に開催が予定されていた、女性に対する暴力に反対する芸術展(そこで展覧予定だったさまざまな写真を含んだ記事)が開催寸前に中止させられた(22)というような事態もあるのだが……。

(1)熊婧竟称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭,北京邮政拒不认错| 女声」女权之声的微博2015年4月21日 12:04→熊婧「北京邮政称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭」女声网2015年4月21日。「女子大学生が百人近い全国人民代表大会の代表に手紙を書いて、女性労働者禁忌労働範囲を調整し、女性の個人の差異を尊重し、女性の選択権を保障することを求めるよう訴えた」というのは、3月1日に、フェミニストの猪西西さんが提出した手紙のことを述べている。その内容は、@兔子走丢了「女大学生致信人大代表得六回复:愿意关注女性就业选择权」(NGOCN2015年3月3日 11:23:55)を見るかぎり、馬戸さんが出した、後述の「女性労働者が従事することを禁止する労働の範囲の縮小を求める建議」と内容が同一であり、すでにこのときにはフェミニストの中で文面が共有されていたことがわかる。
(2)女权行动派更好吃的微博【“快递员性别歧视案”当事人投诉”58同城”发布性别歧视招聘广告】5月19日 18:44
(3)女权行动派更好吃的微博「北京邮政招聘又现性别歧视,起诉邮政当事人再举报」2015年7月9日 11:49。
(4)女权之声的微博【女大学生致信李克强,建议缩小女职工禁忌从事劳动范围】7月28日 11:44。「女大学生」(女声网2015年7月31日)。
(5) (4)にも書かれているが、より読みやすく書いてあるのは、「关于缩小女职工禁忌从事劳动范围的建议」(2015-09-07 女权行动派很好吃)。
(6)女权行动派更好吃的微博7月29日 14:54
(7)女权之声的微博「状告北京邮政性别歧视女生发起联署:呼吁缩小女职工禁忌从事劳动范围」2015年9月7日 18:18、「如果你觉得女生也可以当快递员 ,请加入联署!----关于缩小女职工禁忌从事劳动范围的建议」(马户 2015年9月7日)。
(8)
(9)女权行动派更好吃的微博9月12日 19:37
(10)女权之声的微博「给我一个快递,我能举起全世界」2015年9月21日 13:03。
(11)女权行动派更好吃的微博9月29日 18:33
(12)以上は、女权行动派更好吃的微博【恭喜马户胜诉!!】【女快递员起诉邮政胜诉!】11月2日 11:50、马户「女快递员诉邮政就业性别歧视案胜诉啦!【内有彩蛋一定要看!!】 」女权行动派很好吃2015年11月2日。
(13)以上は、「胜诉啦!女生应聘快递员遭拒,法院判定北京邮政性别歧视」女声网2015年11月2日、女权之声的微博「她是中国第一个状告国企就业性别歧视的女生,然后赢了」2015年11月3日 10:59。
(14)同上。
(15)女权行动派更好吃的微博「【悲惨的双十一】当不了快递员,连上诉都没带够钱」2015年11月11日 21:45。
(16)女权行动派更好吃的微博「不满女职工劳动禁忌范围,求职者马户要求人社部公开相关依据」2015年11月17日 11:02。
(17)女权之声的微博「为什么女人不能做厨师? 女生应聘厨房遭拒愤而起诉,当天立案」2015年8月19日 15:11、女权行动派更好吃的微博「为什么女人不能做厨师? 女生应聘厨师遭拒愤而起诉」2015年8月19日 20:53(両者の記事の内容は同一)。ただし、「高暁さんは、以前から何度も」という文言で始まる段落だけは、新媒体女性的微博「广东就业性别歧视第一案昨开庭 “煮妇”法院门前撑女大厨」2015年9月18日 10:27。
(18)新媒体女性的微博「广东就业性别歧视第一案昨开庭 “煮妇”法院门前撑女大厨」2015年9月18日 10:27。
(19)大兔纸啦啦啦的微博「周星驰没有告诉高晓,女人不能掌厨当食神」2015年8月21日。
(20)厅长,女大厨请你吃饭,约吗?」2015-10-19 女权行动派很好吃。
(21)新媒体女性的微博「【开庭公告】广东省就业性别歧视第一案12月4日二次开庭,欢迎旁听!」2015年12月2日 17:28
(22)女权之声的微博「一个女权主义展流产之后,留 下了什么?」2015年12月2日 15:37

「男性のみ」募集を訴えた3件目の裁判――今回は翌日に受理、「男性向け」と思われがちな宅配便配達員での採用の性差別を問う

<目次>
1.「男性のみ」求人だったが説得して試用後に合格。しかし、本社が女性だからという理由で採用拒否
2.フェミニズム運動に参加してきたことが、裁判を起こすことにつながった
3.曹菊さんの裁判の資料を示したら、翌日には裁判所が訴訟を受理
4.男性向けの肉体労働だと思われている仕事での採用拒否を問う
5.女性宅配便配達員の写真や話を集める活動

中国では、今までに募集(求人)の男女差別に関して2件訴訟がありました。1件目は、2012年7月に曹菊さん(仮名)が提訴し、2013年9月に和解によって、謝罪と3万元を勝ち取ったの裁判で、2件目は、2014年7月に黄蓉さん(仮名)が提訴し、同年11月に判決によって、精神的損害賠償(慰謝料)2000元を勝ち取った裁判(2015年2月2日の二審判決も、原判決維持(1))です(それぞれ本ブログの記事「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」、「求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる」など参照)。

今年1月26日、馬戸さん(仮名。「小盧」と記している新聞もありますが、以下「馬戸」で統一します)が、3件目の裁判を起こしました。

1.「男性のみ」求人だったが説得して試用後に合格。しかし、本社が女性だからという理由で採用拒否

今年大学を卒業する馬戸さんは、2014年9月24日、ネット上で北京市郵政スピード郵便物流有限公司(北京市邮政速递物流有限公司(Beijing Postal Express & Logistics Co,Ltd)。以下、「北京郵政」と略す)が宅配便配達員を募集しているのを見つけました。そこには「男性のみ」と書かれていたのですが、馬さんはずっと宅配便の仕事に興味を持っていたので、履歴書を送ったところ、その日のうちに面接の通知を受け取りました。

翌日、馬さんが面接に行ったところ、営業所の主任は、女性が応募してきたことに驚きましたが、最終的には、馬さんが説得して、営業所の主任が、彼女に2日間、仕事をさせてみることに決めました。馬さんは、試用期間の2日間、男の配達員といっしょに、荷物の仕分けや車への積み込み、配達をやりました。馬さんは、当時の日記に、「仕事の量は多く、荷物は重いけれど、たしかなのは、できないのではないことだ。車があるし、車の中にはカートがあるし、エレベーターがあるのだから、どのようにしても運べる」と書いています。

2日間の試用後、職員がOKを出し、主任も彼女と契約することに同意して、健康診断をした後、10月8日に契約することになりました。ところが、契約の日にもう一週間待つように言われ、二週間近く後になって、電話で「本社が『第一線の職員には女性は採用しない』と言って、契約を認めなかった」と言われました。

馬さんは「私には、2日間試用して私の能力を認めたにもかかわらず、性別を理由として契約を承認しないという、性別だけを見て能力を見ない採用方法を受け入れることはできません。私が訴訟を起こすという選択をしたのは、このような性差別をする企業に、男子学生にできる仕事は女子学生にもできるということを知ってもらわなければならないからです!」と語りました。

2015年1月26日、馬戸さんは、「北京郵政」が、2日間の試用期間後に口頭で承諾の契約が成立したにもかかわらず、女性であるという理由で採用を拒否したということを、北京市順義区人民法院に訴えました(2)

2.フェミニズム運動に参加してきたことが、裁判を起こすことにつながった

裁判をすると決めたとき、馬戸さんは、まったく躊躇しなかったと言っています。この勇気と決心は、彼女が青年たちのフェミニズムの活動に参加してきたことと関係している、と本人が言っています。

馬さんは、大学4年生の2学期、性暴力に反対する「美麗のフェミニズムウォーク」(肖美麗さんが、性暴力反対を訴えつつ北京から広州まで徒歩で歩いた活動(※))に参加して、鄭州から広州まで、110日あまり、肖さんと一緒に歩きました。馬さんは、肖さんと一緒に歩いた期間が一番長い女性でした。馬さんは、北京では、フェミニズム劇団の「B-Come」グループに参加して、女性の性の権利を訴え、ジェンダー暴力に反対する演劇をしました。馬さんは「これらの活動に参加したことによって、私は自分の権利をより深く知りましたし、どのようにして自分の権利を守るかも知りました」と語っています。馬さんが裁判をするという考えを漏らしたときも、まわりの若い仲間たちが支持し、励ましてくれたそうです。

(※)本ブログの記事「学校教師による性暴力と行動派フェミニスト――『強姦犯を閉じ込めろ、私を閉じ込めるな』」の7「肖美麗さんがフェミニズムウォーク(北京~広州)に出発――性侵害反対と女性の自由を主張」や『女たちの21世紀』No78の大橋史恵「中国フェミ的見聞録」参照。

馬さんは、NGOの助けを得て、浙江で長いあいだジェンダー平等の問題に関心を持っていた李艾弁護士と、曹菊さんの事件でも弁護士をつとめた劉明輝弁護士(中華女子学院法律系教授)に代理人を引き受けてもらいました(3)

『新文化報』の記者が「あなたが訴えたのは国有企業だけれど、裁判に勝てないのが怖くなかったのですか?」と尋ねたところ、「そういうふうには思いませんでした。現在では多くの会社に女性配達員がいるのですから、国有企業はもっと女性を尊重して、私たちに平等な就業権を与えなければなりません。裁判に勝つか負けるかはやってみなければわかりません。私が北京郵政を訴えたのは、権利が侵害されたとき、もっと多くの女性にたたかいを放棄してほしくないからです」と語りました(4)

3.曹菊さんの裁判の資料を示したら、翌日には裁判所が訴訟を受理

27日の早朝、馬さんが曹菊さんの事件の資料を印刷して裁判所に届けたところ、午後には裁判官から電話かかって来て、「あなたの事件は受理できる。少し資料を準備してください」と言われました(5)。つまり、翌日には受理されたわけです。

中国では、民事訴訟の場合でも、原告が裁判所に訴状を提出しても、裁判所が訴えをなかなか受理しない(立件しない)ことが非常によくあります。2012年7月に裁判を起こした曹菊さんの場合は、裁判所が受理したのは2013年9月で、受理まで1年以上かかりました。その間、原告や支援者は、当該裁判所、監察院、上級の裁判所、検察院への訴え、全人代や婦女連合会に向けての署名運動、行政再議、行政訴訟、パフォーマンスアートなど、さまざまな活動を積み重ねました(本ブログの記事「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」参照)。

次の黄蓉さんの場合は、提訴した7月8日の約1か月後の、8月12日に受理されました(「求人の女性差別を訴えた中国で2回目の裁判始まる――今回は1ヶ月で裁判所が受理」)。

今回は翌日に受理されたのですから、受理までの期間は、1件目の裁判から順番に、約1年→約1か月→1日と、大幅にスピードアップしているわけです。

今回は曹菊さんの事件の資料が力になったことに示されるように、このようなスピードアップには、それまでの運動の蓄積が力なっていることは間違いありません。

馬さんもこう言っています。「私が郵政を訴えたのは、多くの人にこの事件を知ってもらい、みんな、とくに女性に自分のために機会を闘い取ってもらいたいからです。諦めることに慣れっこになってほしくありません。一つの裁判で現状を変えることは不可能です。しかし、少なくとも一部の人には闘っている人がいることがわかります。曹菊・黄蓉がいたからこそ、馬戸があるのです。私の後にも勇敢な人が立ち上がることを信じています」と語っています(6)

4.男性向けの肉体労働だと思われている仕事での採用拒否を問う

馬戸さんの事件が、曹菊さんや黄蓉さんの事件と少し異なるのは、曹菊さんや黄蓉さんが応募したのは、事務系の職業だったのに対して、馬戸さんが応募した宅配便配達員は、男性向けの肉体労働だと一般に考えられていることです。

ですから、馬さんの訴えに対しても、「宅配便配達員は肉体労働だから、女性の体力では難しい。身体を壊すのではないか」「なにも宅配便配達員にならなくても、教師になった方がいいのでは」といった、会社側を支持する意見がかなり出ました(「男子学生にできる仕事は女子学生にもできる」という馬戸さんの意見は、毛沢東の時代なら一般的なスローガンだったのに、時代は変わったものです)。

そうした意見に対しては、さまざまな人が批判しましたが、劉文昭さんという人が書いた「女子大学生の宅配便配達員への採用を拒むのは、善意の性別偏見である」(7)という文がまとまっていて、馬戸さんの訴訟の意義についても明らかにしているので、以下、少し抜粋します。

[そういう意味での]「保護」は法律に反している。女性は「適していない」仕事も立派にできる

法律上の「女性の保護」は、国務院令の「女性労働者特殊労働保護条例」によって規定されている。一つは、女性が従事することを明確に禁止している特定の職業の規定であり、以前は森林の伐採や建築業での(高層建築の際に足場である)やぐらの組み立て・撤去などもあったが、現在残っているのは、坑内労働だけである。第二に、女性が従事できない労働の範囲も規定しており、それは、肉体労働強度分類基準の第四級肉体労働強度および加重の強度が過大な作業である。また、女性の生理期間には、第三級肉体労働強度の作業と、一部の冷水・低温・高所での作業も禁止されている。

第四級肉体労働強度は、「極めて重い労働」とも称され、大きな強度の採掘・運搬のように女性にはすることが難しい仕事である。第三級肉体労働強度は、「重労働」であり、重いものを運ぶことなどである。宅配便配達は、第何種に当たるのか? 法律は明確には規定していないが、通常の第三級・第四級の肉体労働に比べれば、宅配便配達は、主に「駆け回る」ことであり、まあまあ軽い仕事だと言える。馬戸が言っているように、宅配便配達は「仕事の量は多く、荷物にも重いものがある」とはいえ、「車があり、エレベーターがあるので、できないことではない」。

女性はすでに多くの「適していない」領域で一定の地歩を占めている

女性が宅配便配達員に適していないと考える幾つかの観点は、実際、一定の道理がある。しかし、問題は、「適していない」ことは、できないことを意味せず、多くの女性に適していないことは、すべての女性に適していないことを意味しないことにある。

(劉さんは、ここで、軍人やコックは、体力が必要であるだけでなく、ケガをしやすい職業だけれども、この2つの職業でも女性が一定の地歩を占めていることを述べて、「女性が宅配便の配達員になることは、もっと普通のことである」と主張しています)

このような保護観の多くは「善意の性別偏見」であるが、けっして採用してはならない

時代の進歩と女性の自我意識の目覚めによって、中傷・蔑視・圧制を特徴とする「敵意ある性別偏見」はしだいに消失したけれども、数千年伝播した「男は外をつかさどり、女は内をつかさどる」「女性は弱い性別であり、男性の保護を必要としている」という男性の権威意識は容易には消失しない。ここにおいて、愛護・鑑賞・思いやりなどの態度と行為によって女性が伝統文化に従うことを支持する「善意の性別偏見」が、伝統的な性別文化を婉曲に表現する方法になる。

「善意の性別偏見」も同様に女性の利益を損なう

多くの人は、「善意の性別偏見」の根源は、男女の社会的分業が異なる現実にもとづいており、正常な現象であって、なんら批判に値しないと考えている。しかし、このような「善意の偏見」は、女性を含めた社会の大多数の人の共通認識になったのちは、障害になり、禁止ラインとなって固定化し、女性をある種の職業から硬く隔絶することになって、実質的に女性の就業の選択範囲を制限する。

この視点から見て、馬戸が起こした就職差別訴訟の意義は重要である。性差別を容認してはならない。たとえ女性に対する「保護」であっても、必ず女性の独立した意志と合致していることが前提でなければならない。女性が宅配便配達員になりたくないときに、配達員にさせられることがあってはならず、女性が配達員になりたいときに、性別を理由として拒否されることがあってはならない。他の職業も同様であり、女性がエンジニアやプログラマーに応募したければ、法律によって禁止されていないかぎり、性別が原因で不採用になることがあってはならない。若干の法律家は、法律で決めている女性の従事を禁止している労働の範囲も縮小すべきで、たとえばフランスでは、女性が坑内労働に従事することもすでに禁止されなくなっていることを述べている。


また、インターネット上でも、上の劉文昭さんの指摘と重なる指摘がいろいろ出ています。それらについて「女権の声」の微博は、次の5つの観点にまとめました(8)

1.いわゆる「保護」は、実は違法
2.「あなたのために」と言うな。それは差別だ。
3.他の辛い仕事にも女性はおおぜいいる。
4.女の宅配便配達員は実際にいて、ニーズもある。
5.権利を守る勇気がすばらしい。

上の4では、「女性のほうが親しみを感じさせて、笑顔だ」とか、「女性のほうがサービスの態度がよい」といった、ある種の男女の特性論にもなりうる一方、現状においては平均的にはむしろ女性の良さを示す意見も出ています。

5.女性宅配便配達員の写真や話を集める活動

馬戸さんの提訴が受理されたことを受けて、2月2日~3日、行動派フェミニストの微博と女権の声の微博が、女性宅配便配達員の写真や声を集める活動を呼びかけました(9)

現実には、女性宅配便配達員も存在している。けれども、男性宅配便配達員に比べて、その数はずっと少ない。彼女たちの声は、人々には聞こえず、彼女たちの話は、人々は知らない。彼女たちは自分の仕事をどのようにしているのか? 求職時には性差別にあったのか? どのようにして自分を証明したのか? 宅配便を配達する中で、どのようなおもしろい話があったか?

女性宅配便配達員は見られ、関心を持たれることを必要している。彼女たちは努力しており、社会も平等に扱うべきで、差別されるべきではない。

 1.写真の募集――女性宅配便配達員の仕事の写真あるいは何人かで写っている写真に、彼女たちが言いたいことを書いて、馬戸に送る(100KB以上。地区の限定なし)。

 2.手かがりの提供――馬戸は実際に女性宅配便配達員たちを取材し、彼女たちの物語を集め、ビデオにして、宣伝し、多くの人に彼女たちの存在を知らせたいと思っている。もしあなたが女性宅配便配達員であるか、身近に彼女たちの手かがりがあれば、馬戸まで連絡してほしい。


これは、上の4の「女の宅配便配達員は実際にいて、ニーズもある」ことを示す活動であるとともに、男性職における女性労働者の要求を示す意味などもあるのかもしれません。

以上、馬戸さんの訴訟は、これまでの2件の裁判を含めた、中国における近年のフェミニズム運動のこれまでの積み重ねを生かしつつ、新たに「男性の仕事」とされている領域への女性の参入の権利を求めるものであると言えそうです。

<注>
(1)ただし、二審判決も、黄蓉さんが求めていた精神的損害賠償(慰謝料)は認めませんでした。
 そのため、黄さんは、二審判決に非常に失望しました。黄さんは「学校は、一審が始まったときから、法廷に出てきたことがありません。彼らは現在も自らのどこが間違っていたのか、わかっていません。裁判所も就職の性差別を認定した学校が謝罪する必要はないという点は、私には理解できません。」「私のこの事件は中華全国総工会の収入労働の法律違反の典型的事件の中に入っており、社会の広範な関心も集めました。これらは、私が平等な労働権を勝ち取る努力をしたことが無駄ではなかったことを示しています。私は、性差別企業が誤りを認識するまで訴えを続けます」と語っています。
 中華女子学院法学院教授で、この事件で弁護士をつとめた劉明輝さんは、「判決の中で裁判所は『権利侵害責任法(侵权责任法)』にもとづいて、謝罪も賠償も権利侵害をした人が責任をとる具体的方法であり、単独でも適用できるし併合しても適用できるとして認めているにもかかわらず、権利侵害をした人の誤りの程度が謝罪を必要とする程度に達していなかったと述べている。どこにでも存在している就職の性差別に対して、社会はあまり重視していない」と述べました。この事件のもう一人の弁護士の許英さんも、「謝罪を求める控訴を棄却したのは、私は、裁判所の法律の適用が不当だと思う。より根本的には、性差別の悪影響の深刻さに対する裁判所の認識不足があると思う」と語りました
(女权行动派很好吃的微博【全国首例法院认定就业性别歧视案二审维持原判】2015年2月3日 12:27)。
 2月5日、黄さんは、学校が支払った慰謝料をもとに「黄蓉性差別反対ホットライン」という電話及びメールでの相談を開始しました(女权行动派很好吃的微博【首例就业性别歧视胜诉当事人黄蓉开设公益热线:助力女性维护平等就业权】2月5日 17:34 )。
(2)以上は、女权之声的微博【应聘快递员被拒 女大学生起诉北京邮政性别歧视】2015年1月26日 16:21に、女权之声的微博【北京邮政拒录女性快递员被诉歧视 女声专访原告女大学生】1月28日 14:08(熊婧「女生为啥不能做快递员? 起诉北京邮政性别歧视立案」)の情報を加味しました。
(3)以上は、女权之声的微博【北京邮政拒录女性快递员被诉歧视 女声专访原告女大学生】1月28日 14:08(熊婧「女生为啥不能做快递员? 起诉北京邮政性别歧视立案」) に、「女大学生应聘快递员被拒起诉北京邮政速递性别歧视」(『新文化报』2015年1月30日)の情報を加味。
(4)女大学生应聘快递员被拒起诉北京邮政速递性别歧视」『新文化报』2015年1月30日。
(5)女权之声的微博【立案啦!起诉邮政性别歧视案今立案】1月27日 15:30、女权之声的微博【北京邮政拒录女性快递员被诉歧视 女声专访原告女大学生】1月28日 14:08(熊婧「女生为啥不能做快递员? 起诉北京邮政性别歧视立案」)
(6)女权之声的微博【北京邮政拒录女性快递员被诉歧视 女声专访原告女大学生】1月28日 14:08(熊婧「女生为啥不能做快递员? 起诉北京邮政性别歧视立案」)
(7)刘文昭「女大学生应聘快递员被拒:属于善意性别歧视」腾讯评论第3058期(腾讯网2015年2月2日)。
(8)女权之声的微博【想当快递员被拒的女大学生状告邮政,网友五大理由力挺】2015年2月3日 15:39
(9)女权行动派很好吃的微博【寻找女快递员!】2月2日 21:37、「女生要做快递员!」女声网2015年2月3日。

求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる

今年6月、女子大学生の黄蓉さん(仮名)は、杭州市西湖区の東方調理職業技能訓練学校が、文書作成の仕事をする人を募集していたのを見つけ、応募条件が自分にぴったりだと思い履歴書を送りました。けれど、返事が返ってこないので、もう一度その求人をよく見ると、「男性のみ」という条件が付いていました。黄さんは、なぜ男性のみを募集するのかを電話で尋ねたり、直接会社に行って聞いたりしましたが、納得のいくような返事は得られませんでした。

そこで、7月8日、黄さんは東方調理職業技能訓練学校を裁判所に訴え、8月11日に、その訴えは受理されました。かくして、この裁判は、2012年7月に曹菊さん(仮名)が提訴した裁判に次ぐ、中国で第2回目の求人の男女差別についての裁判となりました。

裁判は、9月10日、杭州市西湖区法院で公開の審理がおこなわれました。被告側は証拠や反論の書面は出しましたが、法廷には姿を現しませんでした。

このかん、フェミニストたちは、最高人民法院や全国婦連に書簡を出したり、公正な判決を求める署名を集めて裁判所に提出したりするなど、原告を支援する活動をおこないました(以上について詳しくは、本ブログの記事「求人の女性差別を訴えた中国で2回目の裁判始まる――今回は1ヶ月で裁判所が受理」参照)。

11月12日、杭州市西湖区法院は、東方調理職業技能訓練学校には、就職差別の行為があり、黄さんの平等な就職の権利を侵害したとして、同校に精神的損害賠償の慰謝料2000元の支払いを命ずる判決を下しました(下で示した判決をみればわかるように、9月10日に被告側が欠席したから原告側が勝ったというわけではありません)。

2年前の2012年7月に、曹菊さん(仮名)という方も、求人の男女差別を裁判に訴え、2013年12月に、謝罪と3万元を勝ち取りましたが、これは裁判所の調停による和解によるものでした(本ブログの記事「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」参照)。判決による勝訴は今回が初めてです。なお、曹菊さんに対して支払われた3万元は金額は比較的大きいのですが、名目上は会社側が「女性の平等な就職のための専門の基金」として曹菊さんに給付したものでしたので、精神的損害賠償(慰謝料)として金銭を勝ち取ったのは、今回が初めてになります。

裁判での被告側の弁明

黄蓉さんが裁判を起こす前に、なぜ男性のみを募集するのかを東方調理職業技能訓練学校の担当者に尋ねたら、担当者に「このポストはしょっちゅう出張しなければならないので、男性のみにした」と言われました。黄さんは、それに対して、「大丈夫です。私は出張の仕事もできます。私は自分の仕事と生活を調節できます」と答えました。すると、担当者は、「われわれの学校の校長はみな男だから、あなたを採用したら出張のとき2つ部屋を取らなければならなくなるので、コストがかかる」と言ったので、黄さんは「校長がみな男だったら、女子学生は採用できないのか!」と思ったことがありました(1)

裁判でも、被告側は、答弁書で、「このたび募集したポストは、朝晩いつも時間外労働をしなければならないうえ、校長といっしょによその土地に出張しなければならず、出張の際はコストを節約するために同じ部屋に泊まらなければならないが、校長は男性である」から男性を募集したと述べました。被告側は、自分たちは「募集するポストの仕事の特徴にもとづいて、男性を募集したのは、比較的重い、比較的特殊な仕事の任務である。これは、女性を差別していないのみならず、むしろ女性を十分に尊重し優遇した」と主張しました(2)

黄さんは、会社がこのように「思いやりの衣」をかぶっていることに、無力感を感じ、また、がっかりしました(3)。しかし、判決は、法律にもとづかない、このような会社の主張を退けました。

判決の主要部分

この事件において、被告が招聘したポストは文書作成であるが、被告はそのポストが法律・法規が規定している女性労働者が従事してはならない仕事(女职工禁忌从事的工作)であることを証拠によって証明できておらず、被告が発表した募集条件にもとづけば、女性はこのポストの仕事に堪えることが完全にできるのであり、被告が主張している、男性を採用しなければならない理由は法律に合致していない。かような状況において、被告は、原告に対して募集条件に合致しているか否かの審査をおこなわずに、直接、原告は女性であって、男性を募集しているという理由によって原告の応募を拒否した。この行為は、原告の平等な就業の権利を侵犯し、原告に対して就職差別をすることによって、原告に一定の精神的損害を与えた。それゆえ、原告が被告に精神的損害の慰謝料を要求することには、十分な理由がある。具体的金額については、被告がこの過程で犯した過失の程度と原告がこうむった損害の結果とにもとづき、本院が、状況を考慮して2000元と確定した。原告が被告に書面での謝罪を請求したことは、法律的根拠が不足しているので、本院は支持しない。被告が、本院が召喚状を出して召喚したにもかかわらず、正当な理由なく出廷しなかったことは、この事件の審理には影響しなかった。以上より、「中華人民共和国労働法」第3条、第12条、第13条、「中華人民共和国就業促進法」第3条、第27条、第62条、「中華人民共和国権利侵害責任法」第22条、「中華人民共和国民事訴訟法」第144条の規定にもとづき、以下のように判決をする。
一、杭州市西湖区東方調理職業技能訓練学校は、本判決の効力が生じた日から10日以内に[原告の本名]の精神的損害の慰謝料2000元を賠償すること。
二、[原告の本名]のその他の訴訟の請求を棄却する。(4)


判決の意義

弁護士の許英さんは、「この事件は、初めて判決の形式で、募集の中の就職差別を確認し、賠償をしました。これは、人を雇う企業や機関に対する警告であり、応募において不公平に遭遇した人に対する励ましになります」と述べました(5)

中国政法学院教授の鄧小楠さんも、「中国の女性の就職差別事件の最大の問題は、判例がないことです。中国は判例法の国家ではありませんが、法律には性差別事件に対して原則的な規定しかない中で、判例はきわめて重要な働きをします。この西湖区法院の判決は、中国の就職の性差別事件として、全国で2番目のものであり、普遍的に存在する女性に対する就職差別の撤廃に対して、模範となる役割を果たすでしょう」と語りました(6)

『人民日報』にも、アインシュタインに「歴史上もっとも偉大な女性数学者」と言われたエミー・ネーターが女性であるために教授になれないことに怒った数学者ダフィット・ヒルベルトの言葉「ここは大学だ。銭湯ではない!」を引用した、「企業は銭湯ではない、人が入るのにまず男か女かを見るのか?」というタイトルの論説が掲載されました(7)

判決の限界

その一方、賠償の金額の低さや書面での謝罪が退けられたことには批判も出ました。

「中国の民間フェミニスト活動家の鄭[楚然]さん」は、「中国の就職の性差別事件で今までに勝訴したのは2件だけであり、この2件の原告も、充分な賠償を得られていません。また、2件の被告とも、書面での謝罪をしていません」と語りました(8)

また、この事件の場合は、会社側が明確に「男性のみ」という求人をしていたからこそ勝てたという点も指摘されています。

舒鋭さんは、「このケースは比較的特殊なものです。求職者の黄蓉が求人をしている会社に対して履歴書を送ったら、会社は明確に『男性のみ』だと回答しました。その後、彼女が何度も会社に履歴書を送って、直接会社に行ったときにも、明確に『女子学生という身分』ゆえに拒否されました。これらはみな、法律上、会社にとって不利な証拠となって、比較的明確な『就職差別』だということになって、黄蓉は裁判所の支持を得られました。
 しかし、多くの情況の下では、採用の過程には多くの主観的な要素が存在しているので、差別はしばしば表面に現れませんし、けっしてすべての会社がこのように明確な証拠を残すわけではありません。『隠れている』けれども実在する差別を受けた労働者は、十分な証拠を出せないので、勝訴するのは難しいのです」と述べています(9)

実際、「客観的に言って、近年、採用の過程における露骨な就職差別は大きく減少したが、さまざまな、半ば秘かで半ばあからさまな方法が出現している。たとえば、女性の履歴書は受け取るけれども、いささかの団体の採用の過程では、女性の履歴書はほとんど開かれることもなく、女性が面接試験に進む機会は少ないとか、女性は男性と抱き合わせでなければ視野に入れない、などである」(10)と指摘されています。

鄭楚然さんは「私たちは、若干の企業が女性に対する就職差別をしている事例を通報しましたが、関係方面からの回答は多くありませんでした(→本ブログの記事「女子大学生らが全国8都市で『男性のみ』求人の企業267社を当局に通報、その結果は…」参照)。政府の関係部門は、法律執行の面で非常に不十分なことしかしていません。要するに、中国の就職の性差別については、法律の面でも、法律執行の面でも、法律執行のメカニズムと手続きの面でも、大きな欠陥があるので、大きな改革が必要です」と述べています(11)

実際、中国国内のある新聞も、「就職差別をなくすには、司法による救済だけでは不十分である。政府部門は使用者に対する監督と取締りを強化し、出産・育児を女性だけが負担するという不公平な現実を変え」なければならない(12)と指摘しています。

また、その鄭楚然さんが、11月13日、タイのバンコクで開催されるアジア太平洋地区「北京+20」NGOフォーラムに出席するために出国しようとしたら、飛行場で出国を阻止されるという事件も起こりました(13)

とはいえ、こうした困難な条件の中で、求人の男女差別について、昨年12月に曹菊さんが勝利和解をし、この11月に黄蓉さんが勝利判決を勝ち取ったこと、曹菊さんの訴えは裁判所に受理されるまでに約1年かかり、勝利和解までに約1年半かかったけれども、黄蓉さんの訴えは裁判所に約1カ月で受理され、勝訴までに4か月しかからなかったことなど、運動が着実に成果を挙げていることはたしかです。

(1)招聘季来临,谁来保障女生公平就业?」『中国青年报』2014年11月17日。
(2)判決文は、女权之声的微博【“浙江就业性别歧视第一案”宣判:判定歧视 赔偿两千元】11月12日 17:35に掲載されています。
(3)(1)に同じ。
(4)(2)に同じ。
(5)法律没有让她哭 浙江就业性别歧视第一案判决 求职者获精神赔偿」『中国妇女报』2014年11月16日。
(6)浙江就业性别歧视第一案胜诉 法院认定新东方烹饪学校存在性别歧视」法制网2014年11月13日、「大学生应聘遭性别歧视 起诉对方获赔2000元」人民网-人民日报2014年11月14日。
(7)人民日报批招聘性别歧视:企业非澡堂无需看男女」新浪網2014年11月19日(来源:人民日报)。
(8)浙江省第一列性别歧视案胜诉」Radio Free Asia2014年11月13日。
(9)(5)に同じ。
(10)反女性招聘歧视关乎社会正义」『中国青年报』2014年11月18日。
(11)(8)に同じ。
(12)反就业性别歧视光有判决还不够」『京华时报』2014年11月15日。
(13)吕频的微博「拒绝沉默的人需要――被回应青年活动家被出境之后」2014年11月17日 16:20、女权之声的微博11月17日 21:21【外媒采访被广州警方阻拦出境女权活动者】など。

求人の女性差別を訴えた中国で2回目の裁判始まる――今回は1ヶ月で裁判所が受理

黄蓉さんの提訴

今年6月25日、女子大学生の黄蓉さん(仮名)は、杭州市西湖区の東方調理職業技能訓練学校が、文書作成の仕事をする人を2人募集しているのをインターネットで見つけました。黄さんは、募集の条件と自分の条件とがぴったり合ったので、履歴書を送りました。しかし、何の返事もなかったので、あらためて募集サイトをよく見てみると、「男子のみ」という文字が書かれているのを発見しました。黄さんは「なぜ文書作成の仕事なのに、男性だけを募集するのか?」と疑問に思い、すぐに会社に電話で問い合わせました。しかし、相手は乱暴に「私たちは男性だけを募集している!」と答えただけでした。黄さんはがっかりしましたが、同校が別のサイトに出していた求人広告では「男子のみ」と書いていなかったので、希望をつないで、そちらにも履歴書を送りました。しかし、やはり何の音沙汰もなかったので、電話して尋ねると、歯切れの悪い返事で、「女子学生は出張させにくい」などと答えただけでした。

黄さんは、江蘇衡鼎弁護士事務所の許英弁護士(女性。微博: 许英律师)に相談しました。許弁護士は、「会社は性別を原因として採用を拒否しているのだから、『就業促進法』『婦女権益保障法』などの関係の法律・法規に違反している。だから、あなたは法律という手段で自分の権利を守ることができる」と答えました。

7月8日、黄蓉さんは、許弁護士の助けを得て、東方調理職業技能訓練学校の「労働者募集における性差別」を杭州市西湖区人民法院に訴えました(1)

訴訟を受理させるまでの1カ月余りの原告や弁護士の奮闘

中国では、民事訴訟の場合でも、原告が裁判所に訴状を提出しても、裁判所が訴えをなかなか受理しない(立件しない)ことが非常によくあります。

2012年7月に中国で最初に就職の女性差別に対する裁判を起こした曹菊さん(仮名)の場合は、提訴してから裁判所が2013年9月に受理するまでに、1年以上かかりました(同年12月には、裁判所の調停による和解によって、謝罪と3万元を勝ち取りましたが)。その間に原告や支援者は、当該裁判所への訴え、監察院や上級の裁判所、検察院への訴え、全人代や婦女連合会に向けての署名運動、行政再議、行政訴訟、パフォーマンスアートなど、さまざまな活動を積み重ねることによって、やっと受理(立件)させたのです(本ブログの記事「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」参照)。

黄蓉さんの場合も、訴状を出した7日目に、裁判所から弁護士に「この事件は訴えることはできない」という電話がかかってきました。ただし、裁判所は「補充の証拠資料を提出してほしい」とも言ったので、7月21日、黄蓉さんは裁判所に行って、裁判官が要求する資料を提出しました。けれども、裁判官は、その資料についても、以前の事例は参考にできないなど、さまざまな理由を挙げて、撤回して出し直すように求めました。黄蓉さんは、8月2日、もう一度起訴状を出したのですが、その後、また裁判官から、補充の資料を求められました(2)

裁判官は補充資料を提出させた理由として、「以前おこなわれた中国初の性差別訴訟は、勝訴判決によってではなく、調停によって終結したのだから、判例としては参考にできない。また、B型肝炎の差別事件は面接試験の後で起きたけれど、あなたはまだその会社の面接を受けていないので、B型肝炎差別事件とは性質が異なる」ということを挙げたそうです。黄さんは、この裁判官の回答に対して、「企業が私に面接の機会を与えなかったから私が面接に進めなかったことは明らかなのに、なぜそのことが立案を妨げるのか?」といぶかしく思いました(3)

8月11日、黄さんが裁判官に電話して尋ねたところ、一両日中に回答すると言われて、翌12日にやっと、黄さんのところに、裁判官から「立案費を払うように」という電話がかかってきた、つまり訴訟を受理したという通知を受け取りました(4)

11市の若い女性たちが、前回の訴えに比べれば素早い受理を歓迎するとともに、公正な判決を求める公開書簡

8月20日、11都市(北京・上海・汕頭・棗荘・済南・武漢・昆明・新郷・杭州・広州・蘭州)の若い女性たち113人が、最高人民法院、全国婦連、杭州市西湖区人民法院に対して、黄さんの訴えが受理されたことを歓迎するとともに、公正な判決を求める公開書簡(「祝電」と記している新聞もあります)を送りました(5)。その内容は、以下のとおりです。

最高人民法院・全国婦連・杭州市西湖区人民法院:

こんにちは! 私たちは、全国各地の女性労働者です。女性労働者として、求職のときに、仕事の能力以外のことで、招聘する単位が性差別をおこなうということが、ずっと私たちの最も大きな心配であり、悩みになってきました。

去年、曹菊(仮名)という女子大学生が、新巨人訓練学校に「男子のみ募集」によって採用を拒否され、それを北京市海淀区人民法院に訴えましたが、1年の時間がかかりました。さまざまなアピール、行政再議、行政訴訟、立案建議によって、ついに、困難を突破して曲折を経て立件されたのです。

今年の浙江の「初の性差別事件」は、裁判官が立件しないと言ったのに対して、弁護士が道理にもとづいて議論し、メディアが広く報道した後、1か月の時を経て、ついに立件に成功しました。

「浙江最初の性差別訴訟」の当事者の黄蓉は、裁判所が彼女に立件費を払うよう求めたと聞いた時、涙を流して、「これはなんと曹菊の立案に比べて12倍速い」と言いました。

私たちは、浙江最初の性差別訴訟が1か月で順調に立件されたことをお祝いするとともに、西湖区人民法院の立件への責任と努力を賞賛します。同時に女性求職者として、私たちは全国婦連と最高人民法院が女性の就職の性差別事件に対して共通認識を達成し、このような問題を積極的に処理したことに感謝いたします。

私たちは、法院がこの事件を審理する過程で、公平公正に、わが国の法律に照らして、黄蓉に正義を取り戻し、広範な女性求職者にも正義を取り戻すよう希望します。

曹菊・黄蓉の遭遇はけっして特別な事例ではありません。就業市場の性差別という現象は非常に普遍的です。

全国婦連発展部が2011年に発表した「女子大学生就職状況調査報告」は、56.7%の女子大学生が求職の過程で「女子学生のほうが、機会が少ない」と感じ、91.9%の女子大学生が人を雇う単位に性別による偏見があると感じたと報告したことを明らかにしています。

北京市婦女児童工作委員会が2011年8月12日に発表した「北京市高等教育女子大学生就職状況調査報告」は、次のように述べています。現在、女子大学生が就職の過程で不公正な待遇と性差別を受ける状況は比較的普遍的であり、61.5%の女子大学生が求職の過程で差別を受けたことがある。しかし、女子大学生は差別に対してふつうは回避したり、妥協的な態度を取っている。(中略)

2013年5月16日、国務院事務局が発表した「全国の普通高等学校卒業生の就業工作に関する通知」は、人を雇う単位は、求職者に対して性別・民族などの条件を付けてはならない。大学の卒業生を招聘する際には、卒業した大学・学院、年齢、戸籍などによる制限をしてはならず、卒業証書の発行と大学卒業生の契約調印とをリンクさせてはならないと述べています。この就職差別禁止令は、女性の平等な就職にとっての重大な意義があります。しかし、政策が実際に役に立ち、本当に執行されることこそが最も重要なのです。

以上のとおり申し上げます。

敬具。

2014年8月19日(6)


微博(中国版twitter)には、各人が上の公開書簡を持って、各地の郵便局(またはポスト)から郵送しようとしている写真がいくつも掲載されています。その際には、手紙だけでなく、「浙江初の就職性差別事件の立案を祝す」と書かれた稲妻の形をしたパネルを手に持って、早急な立件を歓迎していることをアピールしています(NGOCN 的微博【11城女生赞浙江就业性别歧视第一案立案快如闪电】8月21日 18:00、济南Les工作社的微博8月20日 18:31、女权行动派很好吃的微博8月20日 19:36)。

黄さんが言っているように、「この1カ月余り、いろいろ奔走したり、無視されたりしたことは、この事件の立案が見かけほどにはけっして順調ではなかったことを示している」(7)ことはたしかです。裁判所の体質そのものはそれほど変わっていないのかもしれません。

しかし、前回の曹菊さんの提訴の際にさまざまな運動を積み重ね、裁判でも謝罪と3万元を勝ち取ったということが、今回の訴状の受理の早さにつながっていることは間違いないと思います。

最初の裁判の日は、被告もその弁護士も欠席。原告を支援する署名が400筆近く集まる

9月10日、浙江省杭州市西湖区法院で初めて公開の審理がおこなわれました。しかし、被告もその弁護士も、正当な理由なく(とマスメディアに書かれています)、法廷に姿を現しませんでした。被告側は、証拠と書面での質疑意見を出しただけでした。

当日は、原告の黄さんとその弁護士が証拠を提示して陳述をするとともに、被告が提出した質疑意見に対して弁論がおこなわれました。裁判官は、「被告が法廷に来ないので、この事件は調停のしようがない」と述べ、双方が提出した事実と証拠について事実を確かめた後に、総合的な評議をし、時期を選んで裁判を続けることになりました。

また、この裁判に先立って、曹菊さんが発起人になって、原告の黄蓉さんを支持する、西湖区法院宛ての署名運動が微博上で始めており、この時点までに既に37都市から400筆近い署名が集まりました。(8)

その署名は、「こんにちは! 私は曹菊です。私は『中国初の性差別裁判』の当事者です。今日は、ジェンダー平等に関心を持つ求職者たちといっしょに、貴院に建議の手紙を書きました」という文から始まり、先の公開書簡と同様に、就職における性差別は曹菊さんや黄蓉さんだけの問題ではないことを述べています。最後に、「私たちは、西湖区法院が、法律に照らして、新東方調理学校の人員募集における黄蓉に対する性差別の存在に対して判決を下し、法律という方法をつうじて法律の公義を保障するように求めます。私たちは、裁判所が、女性求職者の尊厳と労働の権利を保障し、公正公義の代表として、社会の就職の性差別の現状を一歩一歩変えるように求めます」と訴えています。(9)

事前に「女権之声」というフェミニズム微博は、午前9時15分から西湖区法院の2522法廷で審理おこなわれることを伝えて傍聴を呼びかけていましたが(10)、実際、当日、支援者の若い女性が来て傍聴をしました(11)。フェミニスト活動家の猪西西さんは、おそらく原告と弁護士さんのお2人が裁判所前に立っている写真を掲載しています(猪西西爱吃鱼的微博 9月10日 09:51 )。

原告支援の署名運動や裁判の傍聴をする――ここらへんは日本の裁判支援運動と同じような感じになってきたと思います。問題にしているのは「募集」の段階の差別なので、初歩的なことだとも言えるかもしれませんが、着実に前進しつつあると思います。第1回目の法廷に被告やその弁護士は欠席したということも、裁判に有利に働きそうな気がします。

(1)以上は、女权之声的微博【招文案仅限男?女大学生状告新东方烹饪学校】7月28日 18:30など。なお、のちに許英弁護士は、『中国婦女報』の取材に答えて、「性差別は、わが国の法律の中では明確に就業差別の種類として挙げらており(『就業促進法』第3条)、『就業促進法』第62条は、本法の規定に違反して、就業差別をした場合は、労働者は人民法院に訴訟を起こせる。だから、黄蓉の訴えは合法です」と語っています(「因招工限男性 女大学毕业生状告企业 本案成为全国性别就业歧视第二案」『中国妇女报』2014年8月16日)。
(2)11城女生赞许浙江就业性别歧视第一案立案快如闪电」NGO发展交流网8月21日。
(3)(1)に同じ。
(4)(2)に同じ。
(5)女大学生求职遭性别歧视 11城市女青年发起联名信」中国新闻网2014年8月21日。
(6)女权之声的微博【浙江“性别歧视第一案”立案 征集女青年联署祝贺】8月19日 16:38
(7)(2)に同じ。
(8)以上は、「女大学生求职遭歧视追踪:法院开庭被告拒不到庭」中国新闻网2014年9月11日。
(9)关于请求‟浙江性别就业歧视第一案”依法判决、还女性公道的联名信」(曹菊及××名求职者)2014年9月5日。
(10)女权之声的微博【黄蓉案开庭公告及联署征集】9月9日 14:34
(11)(8)に同じ。

就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う

曹菊さん(仮名)が昨年7月11日に起こした、就職の男女差別(北京巨人教育公司が「男性のみ」の求人広告を出し、曹さんが女性だったので門前払いにした)についての中国初の裁判は、12月18日午後、北京市海淀区人民法院で、初の審理がおこなわれました(これまでの経過については、本ブログの記事「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」と「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」参照)(1)

当日の法廷でのやり取り

原告側からは、原告の曹菊さん、弁護士の劉明輝さん・黄溢智さん(劉さんは中華女子学院教授でもある)が出廷しました。被告側からは、北京巨人教育公司の理事長で、北京海淀区新巨人学校の校長でもある尹雄さんと彼の弁護士が出廷しました。

法廷では、まず、曹菊さんが訴状を読み上げたのちに、被告に以下の3点を課する判決を求めました。
 [1]曹菊さんへの謝罪。
 [2]精神的損害賠償(慰謝料)として5万元を支払う。
 [3]訴訟費用は被告の負担とする。

曹菊さんのこの発言が終わると、すぐに尹雄校長は、「『男子のみ』という募集をしたのは、人事部門のミスだった」と認めました。ただし、彼の弁護士は「巨人学校は女性の勤務員が特に多く、事務関係の勤務員はみな女性だったので、本を運ぶとか、ウォーターサーバーの水を交換するとかいった力仕事をしてくれる男性がほしかった」と弁解しました。傍聴者は、「要するに、故意に差別をしたことは認めないという意味なのだろうが、弁護士が言っていることには証拠もないし、説得力がない」と思ったそうです。

尹校長は、「このたびの事件の弁護権を放棄する」と述べ、謝罪と訴訟費用の支払いをしたいと述べました。けれども、彼の弁護士は、慰謝料には「法律的根拠がない」と言いました。つまり、上の[1]と[3]の要求は受け入れるが、[2]の「精神的損害賠償(慰謝料)として5万元を支払う」という点は受け入れられないということです。

裁判官が調停を望むかどうかを原告側と被告側の双方に尋ねると、双方とも調停に同意しました(この時点で傍聴者は外に出された)。そこで、双方の弁護士が裁判官の前で金額を書きましたが、黄溢智弁護士が書いたのは「3万」元だったのに対し、会社側の弁護士が書いたのは「3000-5000」元であり、金額の開きが大きすぎたので、弁論を続けることになりました。

若干の議論をした後、また賠償金額の話に戻ると、尹校長は、曹菊が言った金額を受け入れると表明し、そのお金は、「『女性の平等な就職のための専門の基金』として、曹菊が差別反対活動をするのを支持したい」と述べました。このことについて、黄溢智弁護士は、「賠償であることを明確にせずに、給付だと言ったのは、そのほうが人聞きがいいし、会社が性差別に反対しているという態度を示せるので、PRにもなるからだ」と説明しています。

翌日の報道を見ると、曹菊が「贈与を獲得した」したという見出しで報じた新聞もありますが、巨人学校が「補償」をしたという見出しで報じた新聞や「賠償を獲得した」という見出しで報じた新聞もありますので(2)、マスコミも、会社側の言うことを額面どおりには受け取っていないのだと思います。

お詫びの手紙

尹校長は、法廷で、事前に準備してきたお詫びの手紙(3)を曹菊さんに渡しました。

その手紙は、冒頭で「巨人学校は全国で500近い教学スポットがあり、6000人近い従業員がいるが、そのうち女性従業員が総数の80%を占めており、会社には、就職の性差別をするという主観的な故意は存在していない」と述べ、次に、上で弁護士が言ったような「男性が必要だった」という主張を書いたうえで、「人事部門が求人情報を発表した時に『男性のみ』とだけ明記したことは、あなたに不必要な誤解を生じさせた」と述べています。

次の段落には、巨人学校がさまざまな社会的義務を果たしてきており、就業者の権利を軽視することは、われわれの望むところではない、といったことが書いてあります。

そして、最後の段落で、「会社は、この事件から教訓を得て、自らの活動の細部をいっそうきちんとしたものにする。女性の応募者の平等な就職という合法的権利を尊重するという立場から、会社があなたを傷つけたことについて、心からお詫びする!」と述べています。

尹雄校長は、当日、「弁護権を放棄したのは、わが校の就職差別が故意のものだと認めたわけではけっしてないけれども、この件では人事部門が不注意だったために、不必要な誤解を招いたので、私たちは曹菊さんに公にお詫びをしたい」とも述べており(4)、この手紙もそうした趣旨のものでしかないのですが、ともかく、「男性のみ」とした点について、「心からのお詫び」の文書はもらえたわけです。

当日の大学生らの裁判支援活動

法廷には、大学生がたくさん傍聴に来ました。しかし、法廷には十数席しかなかったので、入り口で廷吏に遮れられて、中に入れない人がおおぜい出ました。それでも、彼女たちは必死で中にもぐり込んだのですが、裁判官は、立って傍聴することを認めませんでした。劉明輝弁護士がとりなして、1つの座席に2、3人が座って傍聴することになりました。

法廷の外でも、開廷前に、裁判所の前で、支援者の3人の女性が、学士帽と学士ガウン姿で宣伝活動をおこないました。3人のうちの、向かって一番左の女性は「能力さえあれば、性別は重要ではない」と書いたパネルを掲げ、一番右の女性は「曹菊の裁判を断固として支持し、性差別に対してNOを言おう」と書いたパネルを掲げ、3人で声をそろえて、パネルに書かれたスローガンを叫びました。また、まん中の女性は、両手で茶碗を持ちました。これは、もし差別されて仕事が見つからなければ、乞食をするしかないということを表しているということです(写真:女权之声的微博【就业性别歧视第一案“曹菊案”开庭 志愿者法院门外声援】12月18日 13:57、同【“性别歧视第一案”结案 被告道歉并支付3万元作关爱女性平等就业资金】12月19日 12:43)。

裁判終了後の曹菊さんの話

和解が成立した後、曹菊さんは、感激で涙を流しました。曹さんは、「実は自分はつらいと思ったことはありません。私には弁護士が援助してくれ、多くの人が支持してくれましたので、1年間やってこられました。他の人はもっと困難なはずです。中国で権利を守るのはとくに難しいのです」と語りました。

曹さんは、また、「尹校長は3万元出して私を支持したいと言ってくれて、とてもうれしい。国家にはすでに法律があり、社会・メディア・裁判官・弁護士などもみな私のプライバシーを尊重してくれましたので、この1年あまりの間、私は何の圧力も受けませんでした。私の訴訟の事例をつうじて、私のような大学の卒業生は、恐れることなく、自分の権利を守るために立ち上がるべきことを伝えたい」と述べました(5)

曹さんは、法廷の外では、顔を隠すためにマスクをしていました。けれども、実は彼女自身は、顔をさらすことをあまり恐れていなかったそうです。顔を隠していたことについて、曹さんは、「他の大学生に、『顔を出さなくても、権利を守ることはできる』手本を示したかったから、ということもあります。顔を出さなければ、彼女たちも安心して立ち上がることができるでしょう」と言っています。

3万元の使い道について問われると、曹さんは、まだ考えているところだと言いつつも、「私が勝利したのではなく、みんなで一緒にやったからこそ勝利したのです。このお金も私のものではなく、意義のあることに使うほうが良い」と述べました。

1年あまりにわたった訴訟受理のための努力

この裁判は12月18日が初めての審理だったのですが、曹菊さんは、「私はもう何回ここに来たのか覚えていない」と述べています(6)

実は、昨年7月に曹さんが裁判を起こしてから今年9月まで、この訴訟は、裁判所に受理さえされませんでした(雇用の男女差別については、従来、中国ではそうしたことが非常に多かった)。そのため、曹さんや弁護士、支援者は、1年以上にわたって、以下のようなさまざまな努力をしてきました(詳しくは本ブログの記事「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」を参照してください)。
 ・鄭楚然さんをはじめとした10人の女子大学生などの支援者たちが、会社の前で支援者がパフォーマンスアートをした。
 ・訴訟を受理しようとしない北京海淀区法院に対して、受理すべき理由を詳しく説明した。
 ・同法院の監察院や上級の法院・検察院に対して、訴訟を受理させるよう訴えた。
 ・曹さんは、巨人教育公司に対して行政処分を求めた。さらに行政訴訟を起こした(これは受理されたが、今年7月、敗訴した)。
 ・114名の女子大学生が連名で、北京市と海淀区の人民代表大会内務司法委員会に対して、海淀区法院に訴訟を受理させるよう求める書簡を送った。
 ・中国各地の7名の女性弁護士が、北京市や海淀区の法院と婦女連合会に対して、女性の権利のための訴訟として、曹さんの訴訟を受理させるように訴えた。
 ・以上について、マスコミに取り上げさせる努力をした。

また、このかん、この訴訟だけでなく、求人の男女差別問題に関して、中国の若い女性らは、行政機関へのいっせい通報など、さまざまな手段を尽くしてきました。

曹菊さん自身は、訴訟を起こした2か月後に、別の職場(貿易会社。職種は北京巨人教育学校と同じで、事務補助)に就職することができました。しかし、その後も、裁判のための活動は続けてきました。曹さんが最初に裁判を起こしたときの出発点は、単純に援助を求めただけだったそうですが、その後、自分の裁判が大きな影響を引き起こすにつれて、曹さんはこの裁判の意義を認識するようになったとのことです(7)

黄溢智弁護士の話

黄溢智弁護士は、和解が成立した日の夕方、『女声』誌のインタービューに応えて、以下のように述べました。

問:不立件(不受理)から立件(受理)になるまでに、どのような要素がカギになる働きをしたのか?

黄:私たちは海淀法院が立件しないことを上級機関に対して訴えた。回答はなかった。しかし、私は、裁判官が圧力を感じたことを間接的に知った。今年5月に行政訴訟をしたときに、私が立件法廷の裁判官に会ったら、裁判官は今、「立件しない」という裁定を書いているところだと言った。つまり、当時の態度は、「立件しない」ということだったのだ。その後、また、いささかの公然とした支援行動があった。すなわち、女子大学生と女性弁護士の建議の手紙だ。8月になってやっと初めて裁判官が自分から私たちに電話してきた。メディアが関心を持ったことが重要だったのかもしれない。
 そのほか、婦連も間接的に態度表明をしたことがある。去年多くの地の女子大学生が就職の性差別を集中的に通報した時期に[本ブログの記事「女子大学生らが全国8都市で『男性のみ』求人の企業267社を当局に通報、その結果は…」参照]、全国婦連が女子大学生の差別反対行動について支持すると公に言った(8)。これも曹菊事件についての間接的な回答だと理解できる。私は、婦連はこの事件をきっと知っていると思う。

問:なぜ募集の差別の訴訟は難しいのか?

黄:法律上は訴権があるけれども、実践するのは困難であり、さまざまな募集差別訴訟の立件はみな容易ではない。憲法は非常に多くの権利を規定しているけれども、中国では憲法に依拠した訴訟はできなくて、もっと具体的な法律に依拠しなければならない。たとえば、私たちが依拠した、2008年に発効した「就業促進法」のようなものである。

問:この「最初の訴訟」の法律的意義は、具体的には何か?

黄:募集の性差別が深刻であることは誰もが知っている。けれどもみんな裁判を起こさなかった。曹菊の訴訟は、募集の性差別を法律的手続きに入れるルートを切り開いた。募集の性差別について裁判を起こせることをみんなに知らせた。

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今回の和解については多くの新聞が取り上げました。しかし、その記事の中でも、近年は、求人広告には性別を書かずに、採用の過程で女性を(女性だからという理由を付けずに)拒絶するというやり方が増えているということも指摘されています(9)

曹菊さんの裁判は、募集の段階の話なので、今の日本ではかなり珍しくなった形態の差別だということも言えます。

とはいえ、日本でも、募集や採用の段階における差別を裁判で争うことは、昔も今も難しいことなのは確かです。また、恥ずかしながら、私自身も、当初は「今の中国では、この訴訟は無理なのでは……」などと思っていたので、長期にわたる粘り強い運動が実って本当に良かったと思います。

(1)今回のエントリは、基本的には、判決当日を中心とした原告側の最も詳細な記録である、「“又前进一步”――“就业性别歧视第一案庭审特写」『女声』142期(2013.12.21)[word]にもとづいており、注記のない個所は、同記事によるものです。この和解については、他にも、「就业性别歧视第一案和解 巨人学校放弃辩护权 公开道歉并给予女孩补偿」『北京晨报』2013年12月19日、「“就业性别歧视首案”3万元和解」『新京报』2013年12月19日、「“就业性别歧视第一案”调解结案 巨人教育当庭向原告致歉 」『北京日报』2013年12月19日、「北京巨人教育公司被指性别歧视 遭女大学生控告」新华网2013年12月19日、「“中国就业性别歧视第一案”和解 女生获赠3万」腾讯教育 [微博] 2013年12月19日、
“就业性别歧视第一案”当庭和解 个案胜利捅不破女性就业天花板」『中国青年报』2013年12月20日、「就业性别歧视第一案和解结案 原告获赔精神损害抚慰金3万元」『中国妇女报』2013年12月20日、「反对就业性别歧视 需更多“曹菊”打官司」『中国妇女报』2013年12月20日などが報じています。
(2)“中国就业性别歧视第一案”和解 女生获赠3万」腾讯教育 [微博] 2013年12月19日、「就业性别歧视第一案和解 巨人学校放弃辩护权 公开道歉并给予女孩补偿」『北京晨报』2013年12月19日、「就业性别歧视第一案和解结案 原告获赔精神损害抚慰金3万元」『中国妇女报』2013年12月20日。
(3)全文は、「“又前进一步”――“就业性别歧视第一案庭审特写」『女声』142期(2013.12.21)[word]の5頁に掲載されています。
(4)就业性别歧视第一案和解 巨人学校放弃辩护权 公开道歉并给予女孩补偿」『北京晨报』2013年12月19日。
(5)同上。
(6)“就业性别歧视第一案”当庭和解 个案胜利捅不破女性就业天花板」『中国青年报』2013年12月20日。
(7)职场歧视:一场悬在半空的诉讼」中国新闻周刊网2013年8月1日、「“就业性别歧视第一案”当庭和解 个案胜利捅不破女性就业天花板」『中国青年报』2013年12月20日。
(8)全国妇联权益部支持女大学生向性别歧视说“不” 坚决反对就业中的性别歧视」『中国妇女报』2013年2月1日。
(9)“就业性别歧视第一案”当庭和解 个案胜利捅不破女性就业天花板」『中国青年报』2013年12月20日。

求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動(追記あり)

中国の若い女性たち、とくに「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(ジェンダ平等活動グループ)」(その活動は「年表」とその年表の下のリンク参照)の女性たちは、昨年から就職の男女差別をなくすためにさまざまなアクションをおこなってきた。すなわち、各地で花木蘭の扮装をして就職差別をなくすことを訴えたり、曹菊さんが北京巨人教育グループの「男子のみ」求人を裁判所に訴えたり、求人サイト「智聯招聘網」に性差別的な求人広告を出していた企業267社を各地でいっせいに行政当局に告発したりしてきた。

その後も、彼女たちは、以下のように、次々にさまざまな行動をしている。

1.曹菊さんの裁判所への訴え・その後

上でも触れたが、2012年7月11日、北京在住の女子大学生の曹菊さん(仮名)は、求人の際に性別の制限をしたことを理由に、北京巨人教育グループ(巨人教育集团)を、北京市海淀区法院(裁判所)に訴え、謝罪および精神的損害賠償5万元の支払いを求めた(本ブログの記事「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」参照)。

中国の場合、民事訴訟で、原告が裁判所に訴状を提出しても、裁判所が訴えを受理しない(立件しない)ことが少なくない。それでも、中国の民事訴訟法には、「人民法院は訴状あるいは口頭の訴えを受け取り、審査をして、訴えの条件に適合していると認めた時は、7日以内に立件して、当事者に通知しなければならない。訴えの条件に適合しないと認めた時は、7日以内に不受理の裁定をしなければならない」(112条)とあり、7日以内に何らかの決定がなされるはずだった。

しかし、曹菊さんのもとには、期限を過ぎても北京市海淀区法院からは何の連絡もなく、曹菊さんの訴えはたなざらしにされていた。

曹菊さんと弁護士、訴えを裁判所が立件(受理)しないことを告発する手紙を各所に送る

そこで、同年8月16日と9月4日、曹菊さんと黄溢智弁護士は、それぞれ、海淀区法院監察院、北京市一中級人民法院、北京市人民検察院第一分院に、海淀区法院が曹菊さんの訴えを立件(受理)しないことを告発する手紙を送った。その内容は、「海淀区法院が法定の期限を過ぎても訴訟を受理しない行為は、市民が公正な司法救済を得る権利を剥奪し、わが国の司法の権威と法律制度を破壊している。それゆえ、責任を持ってこの訴訟を受理するように命じて、事件を処理する担当者の法律的責任も追及するよう要求する」というものであった。

しかし、どこからも返事はなかった。

今年4月初め、曹菊さんが海淀区法院に再度その後の進展について尋ねると、裁判官は、逆に曹菊さんに対して、「あなたはまだ訴えたいと思っているか?」と尋ねるというありさまだった。

この件に関して、劉小楠さん(中国政法大学教授)は、中国でも、性差別を禁止する規定は、労働法や就業促進法、婦女権益保障法、女性労働者保護特別規定などの法律・法規の中に散見するけれども、問題は「それらには『差別』という言葉について何の明確な定義もないことだ」と言う。劉伯紅さん(中華全国婦女連合会婦女研究所前副所長)は、国連の女性差別撤廃委員会は、中国に対して、女性差別撤廃条約の第1条にもとづいて、女性差別(直接差別と間接差別を含む)の定義を法律で定めるよう勧告しているけれども(遠山注:本ブログの記事「国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント」でも紹介したように、2006年にも同じことを勧告されている)、中国はまだ立法のレベルでは、何の定義もしていないと述べている(以上は(1))。

鄭楚然さんら114名の女子大学生が、裁判所に立件させるよう北京市と海淀区の人民代表大会に要請する書簡を送る

今年5月25日、広州の中山大学の今年度の卒業生の鄭楚然さんは、曹菊さんの訴えを海淀区人民法院に立件させることを求める書簡を北京市人民代表大会などに送ること、およびその書簡を中国の31省の女子大学生100名の連名にするために、賛同する女性たちに「姓名+省+学校名」を知らせてもらいたいということを自らの微博で訴えた(2)

翌26日、鄭楚然さんは、そうして集まった22省114名の女子大学生らと連名で、北京市人民代表大会と海淀区人民代表大会の内務司法委員会にその書簡を送った(3)

彼女たちが住んでいる省は、広東19、湖北14、内蒙古12、河南省12、北京10、陝西6、山西5、甘粛5、広西4、上海4、浙江4、湖南3、黑龍江2、重慶2、山東2、江蘇2、河北1、香港1、四川1、天津1、遼寧1であった(4)。鄭さんが住んでいる広東がやや多いものの、全国の女性が名を連ねていると言えよう。

7人の女性弁護士が裁判所と婦女連合会に曹菊さんの訴えを立件する(させる)よう要請

曹菊さんが訴えを起こして1年になる前日の今年7月10日には、北京・河南・山東・海南の7人の女性弁護士が、北京市高級人民法院、北京市婦連、海淀区法院、海淀区婦連に対して、以下の2点を要求した。
a)「女性の就職差別事件」を「女性の権利保護合議法廷(妇女维权合议庭)」の重点的審理の範囲に入れること。
b)昨年の曹菊の訴えを女性の平等な就職の権利についての司法保護の典型的な事件として、早く立件し、早く審理すること(5)

2.曹菊さんの海淀区人力資源と社会保障局(人社局)への訴え・その後

昨年7月11日、曹菊さんは、北京巨人教育グループを海淀区法院に訴えただけでなく、海淀区人力資源と社会保障局(人社局)に対しても、同グループを行政的手段で処罰するように求める告発をしていた。

海淀区人社局は、「うっかりミスで、すでに取り消した」という理由から立件せず

10月、曹菊さんは労働監察大隊の調査を受けた。しかし、この事件を担当する監察員は、「たとえ差別の事実が認定されたとしても、どのように処罰するのかを規定している具体的な法律の条文はない」と言った。

そこで、曹菊さんの代理人の黄溢智弁護士は、国家工商行政管理総局が共同で公布した「全国人材市場管理規定(2005年修正)」の第39条に、「使用者がこの規定に違反して、民族・性別・宗教信仰を理由として、採用を拒絶したり、採用の条件を高めたりした場合には(……)県クラス以上の政府の人事行政部門は、責任を持って改めるように命じ、情状が悪い場合は一万元以下の罰金に処すことができる」という規定があることを示した。

しかし、2012年11月30日、海淀労働監察大隊から、曹菊さんに立件を取り消す通知書が来た。通知書には、その理由として、巨人教育学校は「職員がうっかりしていたために、対外的に発表した募集情報の中に、管理助手の職位に性別の制限を設けた」、しかし、「すぐに発見して訂正しており」、曹菊さんが訴えた時は「その性別の制限はすでに削除されており、現在は発表されている募集情報の中には、性差別的情報は存在していない」と書かれていた。

けれど、巨人教育学校は、当時、曹菊さんが応募したとき、返事をせず、問い合わせに対しても、女性だからという理由で断っているのだから、いわゆる「うっかりミス」だったとは考えられない。曹菊さんが裁判を起こしたから、「男性のみ」という条件を削除をしたのであろう。

曹菊さんは、今年1月29日に、北京市人力資源と社会保障局に対して行政再議を申請したが、同局も、3月28日、海淀区人力資源と社会保障局の判断を支持する決定をした(以上は(6))。

曹菊さん、海淀区人社局の不作為について行政訴訟を起こす→受理され、初めて人社局が被告になった裁判へ

そこで、今年4月12日、曹菊さんは、海淀区人力資源と社会保障局の不作為について、海淀区法院に行政訴訟を起こした。

5月7日、この訴訟については、海淀区法院は曹菊の訴えを正式に受理(立件)した。これは、人力資源と社会保障局(人社局)が初めて就職の性差別が原因で裁判で被告になった出来事だった(7)

6月7日、海淀区法院は、この行政訴訟について開廷して審理をしたが(8)、判決はまだのようだ。

3.鄭楚然さんら、全人代の代表(議員)らに法改正を求める訴え→2人の代表が就職の男女差別をなくすための提案を起草

このブログの初めにも触れたように、昨年12月26日、広州・北京・上海・蘭州・鄭州・済南・武漢・南京の8つの都市の20名あまりの女子大学生たちが、鄭楚然さんの呼びかけに応えて、求人仲介機構の「智聯招聘網」に、「男性のみ」などの性差別的な求人広告を出していた267の企業を、いっせいに各地の「人力資源と社会保障局(人社局)」と「工商局」に通報した。

しかし、その結果、「智聯招聘網」からは「男性のみ」求人は消えたものの、処罰されたのは1社だけで、多くの人社局や工商局からは、返事がないなど、まともな対応がなされなかった(本ブログの記事「女子大学生らが全国8都市で『男性のみ』求人の企業267社を当局に通報、その結果は…」参照)。

鄭さんは、当局が自分たちの通報に対してまともな対応をしなかった原因は、法律・法規の中に性差別の定義や具体的な処理方法、労働部門の監督・検査の責任、罰則などが明記されていないことにあると考えた。だから、鄭さんは、2013年3月1日、それらを法律・法規の中に明記することを求めて、全人代の代表や全国政協の委員に対してメールを出そうしていること、また、それを100名の連名の訴えにしたいので、一緒に名を連ねてくれる人はメールか電話で連絡をくれるように自らの微博で訴えた(9)

わずか9時間の間に鄭さん自身を含めて104人の賛同が集まったので、3月2日、鄭さんは、104人の連名で、全人代の代表や全国政協の委員にメールを出した(10)

そのメールの内容(抜粋)は、以下のようなものだった。

就職のジェンダー平等の司法の指導を明細なものにし、女性の平等な就職の権利を保障することに関する提案

私は、女性の就職難の状況は、関係する法律法規の中で募集の性差別の処罰の措置が明確になっていないことによってもたらされていると思う。就職のジェンダー平等の司法の指導を急いで明細なものにし、普及する必要がある。理由は、以下の3点である。

1.女性の就職難の問題は依然として普遍的に存在している

2.現行の関連する法規には募集の性差別についての細かい規定と具体的な処理方法が欠けている。

3.ジェンダー平等はわが国の国策であり、平等な就業の権利は共通認識になっている。

すなわち、法律法規の中で募集の性差別の定義を明細なものにし、かつ具体的な処理の方法を詳しく記して、労働部門の監督検査の責任を規定し、あわせて罰則を明記することが必要である。ゆえに、私は以下の建議を提出する。

1.関係する法律・法規の中で就職の性差別の定義を明確にすること。すなわち「性別を理由として採用を拒否する、あるいは女性に対しては採用基準を上げた場合は、募集の性差別であり、労働部門が監督・処理しなければならない」と規定すること。

2.関係する法律・法規の中で、企業の性差別に対する労働部門の処理のプロセスと処理の細則を規定すること。募集の性差別について、期限を過ぎても改めない単位に対しては、人力資源保障部は3000元以上3万元以下の罰金を課し、あわせて訴えた人の経済的損失を賠償させることができるようにすること。

3.関係する法律・法規の中で、就職の性差別に対する挙証責任を、訴えられた使用者側に課すべきこと


このメールに名を連ねている人の名前や居住地は、鄭さんの微博で公表されている(11)。それを見ると、ジェンダー平等活動グループの活動家が最初に名を連ねているが、全体としては、鄭楚然さんの地元の広州の人が67名(深圳の4名と茂名の1名を加えると、広東省全体で72名)と多くなっており、鄭さんは地元でつながりを作り、それを生かしていることがわかる(他は、北京6名、武漢4名など)。

彼女たちのメールを受け取った全人代の代表のうち、羅和安代表(湘潭大学学長)と馬蘭代表(上海医学薬理センター主任、教育部長)の2人は、それぞれ、全人代に向けて、そのメールに沿った提案を起草した(12)

4.鄭楚然さん、南方人材市場の「男性のみ」求人を追及

鄭楚然さんが去年の10月と今年6月に調査したところ、南方人材市場の350の募集ブースの広告のうち、30以上の広告、すなわち約10%の広告に「男性のみ」「男性優先」と書かれていた。それらのポストは、国家の規定によって女性が従事することを禁止されている重い肉体労働ではなく、「業務員」「運転手」「編集者」などであった(13)

広東省人力資源と社会保障庁の庁長に対して、人材市場を見て回るように求める手紙

そこで、鄭楚然さんは、広東省人力資源と社会保障庁(人社庁)の林応部庁長に手紙を出して、「私と一緒に人材市場を訪問して、女性が就業市場でぶつかっている苦境と差別を知ってください」と訴えた(14)

8月10日、広東省人社庁は、南方人材市場は広東省と広州市の人社庁の求めに応じて調査をして、性差別的な求人告をなくしたと述べた。また、9日付けで広東省人社庁は、日常の巡回を強化し、訴えや通報を受理するルートを整備すること、また人材資源市場での募集活動について集中的な検査をし、性差別などの就職差別を直ちに発見し、是正するように通知を出した(15)

鄭楚然さんと人力資源と社会保障庁(局)との対話

南方人材市場は、8月9日に、鄭さんと会って意見や提案を聞くつもりだったが、鄭さんが広州にいなかったので、両者の対話は、8月14日におこなわれることとなった。

14日、鄭楚然さんが南方人材市場に行くと、広東省の人社局、広州市の人社局、南方人材市場などの機関の6人の関係する責任者が待っていた(16)

鄭さんは、以下のような要望をした。
 [1]企業の募集の掲示に対しては、事前に審査をして、「男性のみ」とか「男性優先」といった性差別的な言葉を書くことを厳しく禁止してほしい。
 [2]隠れた差別をなくしてほしい。若干の企業は女性を採用する際は条件を厳しくし、男性を採用する際は条件を緩くしている。これは隠れた差別が存在するということである。求職者がそうしたことを訴えることができるメカニズムを作ってほしい。
 [3]以前南方人材市場の顧客サービスセンターに電話をして、企業が性差別をしていることを訴えたら、職員に「企業には雇用の自由がある」と言われた。就職の平等に関する法律的知識がないのではないか。

鄭さんに対して、南方人材市場管理事務局の王世華副主任は、企業の募集情報については、審査(とくに性差別の面の審査)を担当している責任者がずっといるけれど、審査のプロセスがわりあい複雑で、管理作業がどうしてもうっかりしがちだったので、今後は誤りの指摘・訂正を強化すると述べた。王副主任は「私たちは企業と意思疎通を強めて、もっと企業に規範を守らせるようにし、参加する企業が性差別的な文言を掲示しないことを保証する」と明言した。

南方人材市場の企画広報部の呂純静副部長は、顧客サービスセンターの職員には法律的知識が乏しいという問題について、「顧客サービスセンターは窓口としての役割をしているだけだから、窓口の職員に高すぎる要求はできない。私たちにはそのための業務機構がある」と答えた(以上は(17))。

また、王世華副主任は、鄭楚然の今回の行動は「パフォーマンス的な行為であり、注目を集めることによって、求人の秩序を乱してさえおり、実際の有効な解決の方法を提供していない」と述べた(18)。別の新聞では、王世華副主任は「これは、私たちの求人の秩序を乱す行為である。庁長に人材市場を歩き回るように要求したことは、私たちは実務部門として反感を持った」「個々の差別の事例が起きたら、立証した後に直接関係部門に言って問題を解決するべきだ」と言ったと報じている(19)。鄭楚然さん自身の微博には「法律の手続きを踏むべきであり、メディアにしょっちゅう訴えるべきではない」と何度も言われたと書かれている(20)

この王副主任の発言については、後日、ある学者(「柳絮」と名乗っている)が、王副主任には「お詫びをして、自分の仕事のうかつさを自己批判する誠意はなくて、逆に鄭楚然のまじめで『等級を飛び越した』訴えに怒る(……)このような言論には本当に驚く」と表明した(21)

また、王副主任は、「就業の平等を促進するには社会のコンセンサスが必要であり、鄭楚然のこのような監督行為は、企業にばつが悪い思いをさせる」と述べ、鄭さんに「いかなる性差別的な語も出現しないようにしたら、問題は解決するのか?」と反問した(22)

鄭さんは、王副主任に対して、「人材市場に定期的に無料の展示ブースを設けてれば、性差別に関する法律の知識を普及させられるし、それは人材市場の関係する責任者の共通認識にもなる」と言った(23)

また、鄭さんは「相手(南方人材市場?)は、あなたは求職者ではないから、監督する権利はないと言うけれども、一人一人の市民に監督する権利がある」と述べた。鄭さんに言わせれば、「パフォーマンスは良いこと」である、「なぜなら、みんなにあるテーマに関心を持ってもらうことができるからだ。ラディカルな行為によって、多くの応募者に法律という手段によって自分の権益を守ることができるということを知ってもらうという私の目的は達成した」ということである(24)

全体として感じること

全体として、以下のようなことが言えるように思う。

[1]彼女たちは、雇用の平等という企業の利害にかかわるような難しい問題に対して、非常に粘り強い運動をしている。この点は、曹菊さんの司法と行政の場への訴えをめぐって、次々にさまざまな行動が起こされたこと、おそらくはその結果として、人社局を被告の座に就かせることまではできたことに端的に示されていると思う。

[2]彼女たちは、雇用の平等のうちでも、とくに求人(募集)の平等に力を入れている。これは、若い女性、とくに女子大学生にとっては、就職の問題が最も切実であり、その第一関門が求人の条件であるからだろう。それと同時に、求人(募集)の性差別(具体的には公然と「男性のみ」とか「男性優先」という条件を掲げること)を規制することは、採用や昇進の平等を実現することに比べれば、より容易で、現実的であるという理由もあるのかもしれない。

[3]彼女たちが具体的に行動を起こした場(北京巨人教育グループ、智聯招聘網、南方人材市場など)に関するかぎりは、いずれも、公然とした性差別的求人をなくすことに成功している。

[4]鄭楚然さんが広東省や広州市の人社局と直接対話したということも、画期的なことのように感じる。以前、3人の女性がDV防止法に関する1万2000筆の署名を渡そうとして、全国人民代表大会法制工作委員会と中華全国婦女連合会に直接手渡そうとしたけれども、たらい回しにされた末、結局は直接応対してもらうことができず、やむなく郵送によって提出するしかなかったことと対比しても、そのように思う(本ブログの記事「DV防止法制定に関する署名1万2000筆に達し、全人代などに提出」参照)。その一方で、そうした状態に追い込まれた当局のメンツをつぶしたと言えるかもしれず、この点はたしかに、前回述べたように当局にジェンダ平等活動グループの夏合宿をつぶそうとさせた(本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの合宿に対する当局の妨害と『herstory maker青年女性行動力育成計画』」参照)要因になった可能性もあろう。

[5]彼女たちの行動も、実効ある規制を可能にするような法律の改正を実現することや性差別的な求人をした企業を処罰することまでは、まだできていない。この点に関しては、より大衆的な運動が必要とされるのだろう。ただし、さまざまな行動によって、法改正の必要性が明確になったことは、一つの成果だとも言えよう。

[2013年9月17日追記]

2013年9月10日、北京市海淀区法院は、ついに曹菊さんの訴えを受理(立件)した。それを伝える記事「“性别歧视第一案”历时一年终获受理」(网易女人2013年9月11日)には、曹菊さんが裁判所前で「立案了,yeah!」と書かれた紙片を持って立っている写真も掲載されています。

(1)杨迪「职场歧视一场悬在半空的诉讼」中国新闻周刊网2013年8月1日。
詳しい経緯については、「遭就业性别歧视 女毕业生诉人社局行政不作为正式立案 人社局首次因性别就业歧视投诉被告上法庭」(社会性别与发展在中国2013年5月9日)も参照のこと
(2)大兔纸啦啦啦的微博2013年5月25日 11:02
(3)女权之声的微博2013年5月27日 10:10、「 22省百余名女大学生联名致信人大,呼吁监督海淀区法院立下性别歧视第一案」社会性别与发展在中国2013年5月27日(来源:郵件)。前者の記事では「111名」と書かれているが、後者の記事では「114名」と書かれている。
(4)21省百余名女大学生联名呼吁监督法院立下性别歧视第一案」性别平等网2013年5月27日。
(5)“性别歧视第一案”诉状递交1年至今未获立案 七名女律师联名建言法院“快立快审”」法制网2013年7月10日。
(6)女大学生就业遭遇性别歧视 法院受理首例人社局被告案」『北京晩報』2013年5月10日。
(7)同上。
(8)杨迪「职场歧视一场悬在半空的诉讼」中国新闻周刊网2013年8月1日。
(9)大兔纸啦啦啦的微博【100人递两会建议】2013年3月1日 17:25
(10)大兔纸啦啦啦的微博【104人一齐呼吁就业反歧视议案上两会】2013年3月2日 02:19
(11)同上。
(12)「青年学生联名信牵动人大代表心 」『光明日报』2013年3月11日→「青年学生联名信牵动人大代表心 」新浪新聞中心2013年3月11日、「马兰代表建议:不得以性别为由提高女生录取门槛」『中国妇女报』2013年3月14日。
(13)招聘广告10%“限男性” 中大毕业生邀厅长访人才市场 省人社厅称稍后回应,或将约谈该毕业生」『南方都市报』2013年8月9日。
(14)同上。
(15)省人社厅: 已清理性别歧视消息」『南方都市报』2013年8月10日。
(16)不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 省人社厅保证:人才市场不再出现“限招男性”」『南方都市报』2013年8月15日。
(17)“将杜绝性别歧视招聘语言”」『信息时报』2013年8月15日。
(18)同上。
(19)不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 省人社厅保证:人才市场不再出现“限招男性”」『南方都市报』2013年8月15日。
(20)大兔纸啦啦啦的微博8月14日 13:43
(21)柳絮(学者)「邀厅长逛人才市场是作秀吗?」『南方都市报』2013年8月16日。
(22)“将杜绝性别歧视招聘语言”」『信息时报』2013年8月15日。
(23)不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 省人社厅保证:人才市场不再出现“限招男性”」『南方都市报』2013年8月15日。
(24)“将杜绝性别歧视招聘语言”」『信息时报』2013年8月15日。

女子大学生らが全国8都市で「男性のみ」求人の企業267社を当局に通報、その結果は…

<目次>
1.「男性のみ」の求人を出した企業267社とそれらの求人広告を掲載したサイトを、法律違反として人力資源・社会保障局や工商局に通報
2.いっせい通報の結果――処罰されたのは1社だけ。ただし、当該の求人サイトは「男子のみ」求人は掲載しなくなるなど、ごく一部で成果
3.同時期、「男性のみ」求人について、人社局の調停によって是正や謝罪広告、損害賠償を勝ち取った事例も

1.「男性のみ」の求人を出した企業267社とそれらの求人広告を掲載したサイトを、法律違反として人力資源・社会保障局や工商局に通報

2012年12月26日、広州・北京・上海・蘭州・鄭州・済南・武漢・南京の8つの都市(*)の20名あまりの女子大学生たちが、鄭楚然さん(中山大学2012年度卒業生)の呼びかけに応えて、求人仲介機構の「智聯招聘網(智联招聘网)」に、「男性のみ」などの性差別的な求人広告を出していた267の企業を、いっせいに各地の「人力資源と社会保障局」(以下「人社局」と略)と「工商局」に通報しました。また、「智聯招聘網」自体についても、長期にわたって大量の性差別的募集情報を掲載してきたことを北京市朝陽区の人社局に通報しました。

女子大学生たちは、各地の「人社局」などに対して、「労働法」「就業促進法」「婦女権益保障法」「女性労働者保護規定」などにある、「性別を理由として女性の採用を拒否し、または女性の採用基準を引き上げてはならない」という規定を厳格に順守させ、性差別的な求人をした企業に行政処罰をするよう求めました(1)

(*)10都市(都市名としては、成都・杭州・西安を加え、蘭州がない)と報じている新聞もあります(2)

鄭楚然さんの活動と呼びかけ

鄭楚然さんは、2012年4月30日に、全国のトップ500の企業のCEOに、性差別的な採用条件(「男性のみ」「男性優先」「容姿端麗」「身長1m65cm以上」「三年以内に出産してはならない」)を改めるように訴える手紙を郵送する活動をした人です(3)。企業からは1通も返事は返ってきませんでしたが、鄭さんは、その後も調査や実践を続け、それらの活動を通じて、「中国の法律には女性の就業に有利な比較的明確な規定はあるけれども、実践においては実現していない」と痛感したということです。鄭楚然さんが招聘会やイン―ネット上の求人を調べたところ、「『男性のみ』の求人が非常に多く、そうした求人をしているポストは、肉体労働が必要な職種だけでなく、管理・経営などの職種にも比較的多かった。もちろん女性限定の職種もあったが、それらはみなサービスなどの職種で、両者の報酬の差は大きい」(4)(鄭さん)ということです。

鄭楚然さんによると、蘭州師範大学に通う李橙さんは、「智聯招聘網」で募集情報を見つけて、ネットで履歴書を送ったところ、1日のうちに、なんと48の企業から「そのポストは女性を採用していない」という理由で、採用を拒否されました(これは、ひょっとしたら「男性のみ」と書かれている企業に送ったのでしょうか?)。鄭さん自身も28の企業に応募して同様に断られましたが、肉体労働が多く必要だった仕事は1つだけで、その他は技術職や管理職、事務職だったと言います(5)

上のような現状にもとづいて、鄭楚然さんは、2012年11月、今回の行動を微博(ミニブログ、「中国版ツイッター」とも呼ばれる)で呼びかけました。鄭さんは、「私たちは、微信(WeChat)やQQ(SNSの一種)で連絡を取り合って、問題があれば随時相談し、12月26日に集中的に通報することに決定めました」、「費用はすべて、自分たちで出しました」と語っています(6)

各都市での活動

たとえば、山東省の済南市では、大学1年の新入生の小王と彼女の3人の大学生の仲間(うち1人は男子学生)――彼女たちについて、「山東大学の年年(仮名)、小白、大宇など」と記す報道もある(7)――と、57通の手紙を郵便局から郵送しました。その1通は、「智聯招聘網」を北京市朝陽区の人社局に通報したもので、残りの56通は、「智聯招聘網」で性差別的な募集をしていた企業28社を、山東省の人社局と工商局にそれぞれ通報したものでした(8)

年年さんは、鄭楚然さんと連絡を取って、済南で性差別的求人をしている企業を調査してきました。それらの企業は、飲食・専門技術などの領域の求人広告に、「男性のみ」「男性が適している」などの条件を付けたりしていました(9)

また、湖北省の武漢市では、中南財経政法大学の2012年度卒業生(6月に卒業、現在は大学院の受験準備中)の猪西西さん(ハンドルネーム。「裘珍」という仮名で報じている新聞もある)が、5、6人の武漢の女子大学生といっしょに同様の作業をして、83通の郵便を送りました(10)

武漢で彼女たちが通報した企業が「男性のみ」という制限を課していた職種は、警備・運転手・倉庫保管係のような通常は男性が多い職種のほか(11)、経営・販売・総務・監視測定員・会計・インターネット技術者・不動産管理のような性別の差違がはっきりしない職種もありました。

河南省の信陽市では、大学3年生の王雪さんと彼女の仲間たちが、71通の手紙を大学の近くの郵便局から郵送しました。王雪さんも、ミニブログ上で鄭楚然さんが集中的な通報活動を呼びかけているのを見て、鄭さんとも相談して地元の信陽市で行動を起こしたものです(12)

12月26日のいっせい通報は、多くのメディアに取り上げられ、「男子のみ求人」に対する批判的な論評が多数、出ました(13)

2.いっせい通報の結果――処罰されたのは1社だけ。ただし、当該の求人サイトは「男子のみ」求人は掲載しなくなるなど、ごく一部で成果

武漢の一社は、「男性のみ」求人広告により、罰金に処せられた。他にも差別を是正させた事例はあった

12月26日の通報の結果、処罰されたのは、少なくとも今のところ、武漢万路教育管理諮詢公司だけでした。同公司は、実習人員を募集した際に「男性のみ」という限定を付けた求人広告を掲載したので、武漢市洪山工商局が広告管理関連の細則に違反したという理由で、罰金1万元に処しました(14)

また、鄭楚然さんによると、武漢のある人社局は、専門グループを作って研究すると表明したとのことです。また、李麦子さんは、海淀区の人社局からは、「その企業の差別行為を正したので、処罰はしなかった」という回答があったと述べており、このケースは、差別を是正させたことになります(15)

「智聯招聘網」が「男性のみ」求人広告の掲載をやめた

さらに、「智聯招聘網」は、鄭楚然さんが確認したところによると、遅くとも2013年1月5日には「男性のみ」求人は掲載しなくなりました(16)

しかし、ほとんどの人社局や工商局は、返事がないなど、まともな対応をしていない

しかし、他の人社局や工商局は、彼女たちの訴えにきちんと対応しませんでした。

鄭楚然さんによると、三割しかまだ返答がありません(17)。個別の状況を言うと、以下のような反応でした。
・ある工商局:「求人広告は広告法で言う広告ではないので、私たちの管轄ではない」
・ある人社局:「このような通報を受理したことはないし、関係する法律の規定もない」
・ある人社局:「学生が余計な世話をするな」、「もしあなたが自分でその仕事に応募するのでなければ、とやかく言うな」
・「その会社が登記している住所は、彼らの実際の仕事の場ではないので、その企業を調査しようがない」(18)

北京で40社を人社局と工商局に通報した李麦子さんにも、まだ14通しか回答が返って来ていません。しかも、そのうち、10通は「受理しない」という回答でした(19)。個別の状況を言うと――
・「智聯招聘網」がある北京市朝陽区の人社局からは、返事が返ってきていない。
・ある郊外区域の人社局には、裁判所に提訴するように言われた。
・いくつかの工商局は、電話で、この件の管轄ではないので、他の部門に転送したと言った。
・海淀区の人社局を除いて、他の部門は明確な処理意見を出さなかった(20)

成都で企業を通報した李橙さんも、同様の問題に遭遇しました。いささかの区の労働監察大隊は受理せず、就業差別の問題は法院の管轄だと言いました。彼女に「婦連に行きなさい」と言ったところもありますし、少なくない部門が、たらい回しにするという対応を取りました(21)

鄭楚然さんは、多くの管理部門が、さまざまな口実によって女子大学生らの訴えを処理しなかったことについて、「完全に行政の不作為だ!」と憤っています(22)

それでも「良いスタート」(鄭楚然さん)

といっても、鄭楚然さんは、「いささかの企業はそれでも是正させられ、また、智聯招聘網は性差別的内容を削除したのだから、職場の性差別に反対する良いスタートだと言える」と語っています(23)。また、当局の不作為、怠慢ぶりを明らかにしたこと自体も、成果だと言えると思います。

鄭楚然さんや李麦子さんは、昨年からパフォーマンスアートなどによって、さまざまな性差別問題を社会に訴えてきたネットワークのリーダーです(本ブログの記事「若い行動派フェミニストたちの『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』」「『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』などの活動年表」参照)。今回も、彼女たちのネットワークが生かされたことと思います。

3.同時期、「男性のみ」求人に対して、人社局の調停によって是正や謝罪広告、損害賠償を勝ち取った事例も

華南師範大学の2012年度の卒業生の梁さんは、昨年10月、広州のある貿易会社[広州宝勒商貿有限公司]の販売職の求人広告を見つけました。ところが、応募条件に「男性、20-28歳、健康で明朗」と書いてありました。梁さんは、それでも履歴書を送ったのですが、返事がなかったので、会社に電話すると、人事部の職員が「会社のその職位は男性のみの募集だ。販売は、取引先と会わなければならないから、わが社の文化から言って、女性はいらない」と言われました。

そこで、梁さんは、2012年11月6日、広州市越秀区の人力資源・社会保障局(人社局)に対して、この貿易会社の募集情報の中から「男性のみ」という規定を削除し、今後は募集の中で女性を差別しないことを保証させること、および梁さんへの謝罪を求めました。

人力資源・社会保障局の労働監察大隊が事実を調査して、意見の調整に努力した結果、2013年1月15日、その貿易会社が以下の点をすることになりました。
・会社は二度と誤った差別的行為をしないことを約束する。
・会社は、同社のウェブサイトのトップページと募集サイトが発表する採用情報のページに、2週間、梁さんに対するお詫びを掲載する。
・会社は、梁さんが訴えの過程で使った速達料・電話代・交通費など合計600元、および象徴的に精神的損害賠償1元を支払う(24)

その結果、以下のお詫びが掲載されています(2013年1月27日現在。致歉)

お詫び

尊敬する梁さんへ:

わが社は2012年10月21日の智聯の求人において、販売のポストを男性に限定し、あなたの応募に対して、女性であるという理由で拒絶しました。これは、わが社の人事職員に両性の平等という理念が欠けていたことによるものです。あなたと他の女性の応募者を傷つけたことに対して、わが社は心よりお詫びの意を表明いたします! わが社はここに自ら、すべての差別的行為を正し、また今後は類似の行為をおこなわないことを保証いたします。両性の就業が対等であるという理念が、あなたの唱導と私たちの共同の努力の下、深く人々の心に深く入り、法律的規範として打ち立てられることを希望いたします。

以上のとおり申し上げます。

敬具

広州宝勒商貿有限公司


トップページにも、上記のお詫びへのリンクがあります(2013年1月27日現在。右のほう「致歉」という個所)。

梁さんは、結局、その会社を受験したのかどうかはわかりませんが、ウェブサイトに募集段階の性差別についてお詫びを出させたのは大きいと思います。

この件と昨年12月26日のいっせい通報との関係はわかりません。しかし、梁さんが人社局に訴えたことも、人社局が対応して会社が謝罪したことも、おそらく、鄭楚然さんたちの運動やその社会的反響と関係があるのではないかと思います。

(1)以上は、「“仅限男性”招聘广告引八城市女大学生举报 专家称各地人社局依法处罚监管保证就业平等」法制網2012年12月26日、「8市20名学生举报智联招聘 指其刊登歧视性招聘信息」中国経済網2012年12月27日(来源:済南時報)。
(2)10市女大学生上访 举报企业招聘“仅限男性”」大豫網2012年12月27日(来源:東方今報)。「“仅限男性”招聘广告铺天盖地 十城市女大学生 举报“智联招聘”」(『鄭州晩報』2012年12月27日)にも、「10都市」と記述してあります。
(3)“三年内不得生育”竟成某些企业女性入职硬性要求 女大学生向全国500强企业CEO邮寄倡议书 对招聘性别歧视说不」『南方日報』2012年5月8日。
(4)以上は、「“仅限男性”招聘广告引八城市女大学生举报 专家称各地人社局依法处罚监管保证就业平等」法制網2012年12月26日。
(5)女大学生应聘48家企业被拒 原因竟是“限招男性”」金羊網2012年12月27日(来源:羊城晩報)。
(6)8市20名学生举报智联招聘 指其刊登歧视性招聘信息」中国経済網2012年12月27日(来源:済南時報)。
(7)八城市女大学生集中举报性别歧视企业 济南28家企业只招男性被举报」『都市女報』2012年12月27日。
(8)8市20名学生举报智联招聘 指其刊登歧视性招聘信息」中国経済網2012年12月27日(来源:済南時報)。
(9)八城市女大学生集中举报性别歧视企业 济南28家企业只招男性被举报」『都市女報』2012年12月27日。
(10)武汉女生80封挂号信举报41家企业"仅限男性"」人民網2012年12月27日(来源:楚天都市報)、「8地女生举报企业招聘性别歧视」『長江商報』2012年12月27日。
(11)もちろん、男性が多い職種に関しても、武漢市労働保障監察支隊の副隊長の蘇小明さんが言っているように、「劉陽は宇宙飛行までしたのだから[2012年5月、神州9号で劉陽が中国女性初の宇宙飛行をしたことを指している]、女性も警備や運転手、倉庫保管係ができるにきまっている。あるポストは男性により適しているとか、男性の従事者が多いとかいうことは、女性にはできないということと同じではない。もし企業が画一的に『男性のみ』とするなら、女性の権利を剥奪することになる」のです(「武汉女生80封挂号信举报41家企业"仅限男性"」人民網2012年12月27日[来源:楚天都市報])。
(12)10市女大学生上访 举报企业招聘“仅限男性”」大豫網2012年12月27日(来源:東方今報)。
(13)以上の注で挙げたほかに、「庞春蕾:女大学生应聘28企业被拒,性别歧视何时休?」荊楚網2012年12月27日、楽水「莫让“限招男性”成为企业招聘的潜规则」華龍網2012年12月27日、「“我们就像趴在玻璃箱里的苍蝇” 就业遭遇隐性歧视 女大学生自嘲“前途光明,出路没有”」『都市女報』2012年12月28日、田小典「警惕职场“性别歧视”增强女性“无助感”」眉山網2012年12月28日、「求职遭性别歧视 法律应给力」中国新聞網2012年12月28日(来源:広州日報)、葉小娟「“限招男性”未必是个好主意 」『中国婦女報』2012年12月31日。日本の『朝日新聞』の記事の翻訳も出ています(「求职遭性别歧视 中国女生怒了」 第一金融网2012年12月30日)。
(14)武汉一企业被工商部门罚款万元」新華網2013年1月26日(来源:人民網)、「性别就业歧视第一案 半年过去未立案 反性别歧视 告状无门?」『北京晩報』2013年1月23日。
(15)性别就业歧视第一案 半年过去未立案 反性别歧视 告状无门?」『北京晩報』2013年1月23日。
(16)「因被大学生举报性别歧视 智联招聘取消“男女限制”」中原網2013年1月24日。
(17)8地女生举报267家企业涉嫌性别歧视 仅一家企业被罚」新华网2013年1月26日。
(18)以上は、「中国女大学生联名举报企业招聘性别歧视 仅一家企业被罚款」自由亜洲電台(Radio Free Asia)2013年1月24日、「性别就业歧视第一案 半年过去未立案 反性别歧视 告状无门?」『北京晩報』2013年1月23日。
(19)武汉一企业被工商部门罚款万元」新華網2013年1月26日(来源:人民網)。
(20)性别就业歧视第一案 半年过去未立案 反性别歧视 告状无门?」『北京晩報』2013年1月23日。
(21)武汉一企业被工商部门罚款万元」新華網2013年1月26日(来源:人民網)。
(22)8地女生举报267家企业涉嫌性别歧视 仅一家企业被罚」新华网2013年1月26日。
(23)中国女大学生联名举报企业招聘性别歧视 仅一家企业被罚款」自由亜洲電台(Radio Free Asia)2013年1月24日。
(24)以上は、「女生求职遭性别歧视投诉 被投诉企业刊登道歉信」中国新聞網2013年1月23日(来源:羊城晩報)。

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遠山日出也

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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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