2017-10

女性HIV感染者の運動

ジェンダー視点から見た中国のエイズ政策の問題点

 前回も述べたように、中華人民共和国衛生部・国連エイズ合同計画・WHOの推定によると、中国で生存中のエイズウィルス(HIV)感染者とエイズ患者は、2011年末で78万人で、そのうち28.6%が女性だと見積もられています(1)。また、エイズ患者のケアをしている人々の多くは女性です。

 しかし、中国のエイズ政策には、ジェンダー視点がきわめて乏しいようです。

 李慧英さん(中央党校社会学教授)は、中国のエイズに関する政策や法規のジェンダー分析をおこない、以下のような点を指摘しています(2)
 ・地方レベルのエイズ防止計画には感染者(患者)についての男女別統計が書き込まれていても、国家レベルの計画では消え去ってしまっている。これは、政策決定者がジェンダーに無関心であることの現れである。また、性別の統計とその他の要素(年齢・職業など)をクロスした統計もない。
 ・政策がジェンダーセンシティブでない。
 ・政策が同性愛に対して認識不足で、その点がエイズ防止の妨げになっている。
 ・エイズ政策の中で述べられている「女性の権利の保護」の多くは、母子感染の防止という文脈の中で語られており、実際は、女性ではなく、子どもの権利の保護になっている。
 ・地下で性サービスに従事するなど違法な活動をしている女性は、権利を保護すべき「女性」の中から排除されがちである。エイズ政策の中には、一貫して「売買春は犯罪であり、取り締まることによってこそエイズが防止できる」という考えがあるが、買春男性と売春女性との間には不平等な権力関係があって、主導的地位のあるのは男性なのに、売春女性を取締りの重点にしている。また、取締りには、売買春を地下に潜らせるだけであるといった問題もある。

少ない女性HIV感染者の組織とエイズ対策に関する発言権

 また、中国のエイズ関係の団体には、女性の指導者や女性の組織は少ないことも指摘されています。

 中国には、エイズ関係の女性組織(その創始者とメンバーの大多数が女性である組織)は、40ほどあると推定されていますが、その70%は2005年~2006年に設立されたものだそうです。その多くは女性感染者らの自助ないし互助組織で、一部に、エイズで孤児になった子どもや女性の薬物中毒者・女性のセックスワーカーを援助する組織もあるとのことですが、いずれにせよ、エイズ関係の女性組織は、他の分野(MSMなど)のエイズ関係の組織に比べると非常に少ないそうです。

 中国のエイズ対策では、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」(HP日本語による説明)の国内委員会である「国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism[CCM])」が大きな役割を果たしています。しかし、中国のCCMを構成するメンバー23人の中には、女性は1人もいません。23人のうち12人は選挙で選出されるのですが、女性は1人も選出されたことがありません。正式のメンバーと異なって、投票権はないが発言権はある「列席代表」にも、女性は1人も選出されてきませんでした(正式の代表も列席代表も、2段階の選挙を経て決定され、第1段階では女性もある程度当選しているが、その当選者どうしで争われる第2段階の選挙で落選している)(3)

女性HIV感染者組織のネットワーク

 そうした中、国連のエイズ合同計画などの力も借りて、女性HIV感染者組織のネットワークが形成され始めています。

 すでに本ブログでお伝えしたように、2007年3月、女性HIV感染者のネットワーク「タンポポ女性感染者ネットワーク(のちタンポポ中国女性ネットワーク)( “蒲公英”中国女性网络联盟)」が設立され、2009年7月には、「女性抗エイズネットワーク・中国(女性抗艾网络-中国)」が設立されました(本ブログの記事「HIV女性感染者のネットワーク」、「『女性抗エイズネットワーク・中国』設立」)。

 さらに、2010年5月には、初の省クラスの女性ネットワーク「河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワーク(河南女性抗艾社区组织网络)」が設立されました(4)

 「女性抗エイズネットワーク・中国」は、2010年10月時点で、24の女性組織がメンバーになっており、「河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワーク」は、15の女性組織がメンバーになっています(5)

 こうしたネットワークは、各組織の相互交流やエイズに関する研修をはじめとして、さまざまな活動をしていますが、以下ののような活動もしています。

ネットワークの活動1――シンポジウムや政策提言

 2011年5月、女性抗エイズネットワーク・中国は、「女性とエイズ問題」シンポジウムを開催しました。コミュニティから女性の活動家28名と女性とエイズ問題の専門家・学者など10名が集まって議論し、女性HIV感染者のニーズとコミュニティの行動建議をまとめました(以下に、その内容の一部をご紹介しました)(6)

【女性感染者のニーズとコミュニティの行動建議】
一、女性感染者と治療サービスの問題
 無料の婦人科検査、病気の医療保障、治療薬の副作用や日和見感染の治療費の減免、医療部門(とくに末端の病院)の態度の改善などが必要→女性感染者のコミュニティグループが、関係部門との意思疎通をして、研修などを要請する。
二、女性感染者の就労と経済の独立の問題
 治療の経済的負担、就職の差別など→ネットワークが、最低生活費保障の比率の拡大や、事業をおこなう感染者や感染者を雇う企業に対する税の減免などが必要であることを政府に訴える。
三、女性感染者の婚姻・愛情・家庭の問題
 家事の責任を負わされる、家族関係の硬直化、性の相手にされない・性暴力、性や心理の抑圧、再婚などの困難、家族からサポートや思いやりを得られれなくなる、子どもの養育権・教育権の剥奪、離婚の際に劣勢だが、司法の援助を受けられない→感染者グループの互助・相談・出版活動、弁護士のボランティアなど。
四、女性感染者のリプロダクティブヘルスの問題
 略(本ブログの記事「女性HIV感染者のリプロダクティブヘルスに関するニーズ調査」など参照)。

 同年11月には、河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワークが「ジェンダー戦略とエイズ:行動と挑戦」サロンを開催しました。これは、中国初の「基層のコミュニティ組織のネットワークが開催したジェンダー戦略をテーマにしたサロン」だということです。国連エイズ合同計画などの国際組織の代表や専門家、基層のコミュニティ組織の代表など30名余りが参加して、主に、エイズ政策決定への女性の参与を強化する問題について話し合ったようです(7)

ネットワークの活動2――世界基金の国別調整機構のメンバーの選挙規則の改正を提案

 河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワークは、女性の代表がCMMのメンバーに選出されるように、「コミュニティを基礎とするNGOあるいはその他のNGOの代表の選挙規則(以社区为基础的非政府组织或其他非政府组织代表选举规则)」を改正することを提案しています。具体的には、第1段階の選挙で、「エイズ感染者/患者組織」から選出する代表4名と「[ボランティア組織などの]総合的組織及びその他の組織」の代表5名について、それぞれ、「そのうち少なくとも1名を女性とする」と規定することや、第2段階の選挙でも、「正式の代表と列席代表のうちの、少なくとも1人は女性にする」と決めることなどを提案しました(8)。この提案は、34の組織の支持を獲得し、「動議」になったそうです(9)

ネットワークの活動3――女性HIV感染者の入院・手術拒否事件に対する抗議活動

 2011年9月、広東省英徳市で、HIV感染者の女性が全身の85%にも及ぶ大やけどを負ったにもかかわらず、多くの病院から「うちは伝染病(or火傷)が専門でない」という理由で入院を拒否され、たらい回しにされて、手術を受けられないという事件が発生しました(10)

 各地の女性HIV感染者の活動家6人が発起人になって、衛生部や全国婦連に対して、「こうした事態は憲法やエイズ防止条例に違反している、彼女に速やかに植皮手術をするとともに、再発防止策を取ってほしい」(要旨)と訴える手紙を出しました(11)。この手紙には、各地のHIV感染者組織やエイズ問題に取り組む同性愛者の組織21とネットワーク6、および35人の個人が賛同しました(12)

 広東省衛生庁からは、返事も返ってきました。ただし、その内容は、「入院の拒否やたらい回しという事実はなかった、現在ではもう重い火傷の面積は小さくなっており、植皮手術をするのは不適切・不必要である」(要旨)というものでしたが(13)

全国婦連と女性感染者コミュニティ組織

 一昨年あたりから、中華全国婦女連合会(全国婦連)も、女性感染者組織との連携をはかろうとしているようです。

 2010年11月、全国婦連権益部と法律援助センターは、北京で、「『女性の権益とエイズ』ハイレベルフォーラムならびにコミュニティ行動試験的実施始動会[社区行动试点启动会]」を開催しました。この会議には、衛生部や農業部、公安部などの政府関係者や、ユニセフ、国連エイズ合同計画、国連人口基金などの国連関係者も参加し、マスコミでも報道されました。上述の「女性抗エイズネットワーク・中国」の何田田さんや「河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワーク」の袁文莉さんらも参加し、何さんが女性感染者の直面している問題やニーズについて報告しました(14)

 上で述べている「『女性の権益とエイズ』コミュニティ行動」の具体的内容はよくわからないのですが、全国婦連は、ある程度、女性感染者の組織とも連携しようとしているのだろうと思います。

 けれども、全国婦連と女性感染者組織との間には、まだかなり溝があるようです。

 たとえば、上の会議の前月に全国婦連権益部と法律援助センターがおこなった研究討論会の席で、袁文莉さんは、婦連の幹部に対して、「女性感染者や感染者の女性の家族に対する差別をなくす先頭に立ってほしい」、「女性感染者や女性の家族にサービスやサポートをする際には、類型の区分や道徳的な判定をするべきではない。『良家の女性』の連合でなく、すべての女性の連合になるべきだ」と訴えています(15)。こうした訴えがなされるということは、まだ婦連の幹部の態度に問題があるということでしょうし、「類型の区分や道徳的な判定をするべきではなく、『良家の女性』の連合であるべきではない」というあたりは、婦連が女性セックスワーカー(あるいは、それにプラスして薬物中毒などによる感染者)を排斥・差別していることを表しているのではないかと思います。

 上で述べた全国婦連の「コミュニティ行動試験的実施始動会」についても、袁文莉さんは「この会議の社会組織の参与はまったく不十分だった」と言っています。たとえば、「ある『コミュニティ行動』の会議では、参加した数十名の代表のうち、コミュニティからの代表は3名しかいなかった。それなのに、婦連の幹部は討論の時に、『感染者が見つからない、活動家が見つからない』と不平を言っていて、私は憂鬱になった」そうです(16)

 全国婦連副主席・書記処書記の甄硯さんは、この会議を報じた翌々日の『中国婦女報』で、「今後婦連組織はどのようにエイズ防止活動をしてくのか?」という記者の質問に答えて、「とくに広範な婦連の幹部は、胡錦濤総書記の『エイズの防止は、中華民族の素質と国家の興亡にかかわる大事であり、各クラスの党と政府の指導者は、認識を高め、全社会を動員して~(以下略)』重要指示をしっかりと覚えておいてほしい」(17)と述べています。こうした民族的・国家的視点からの活動と女性感染者の要求との間にはズレが生じるのは当然という面もあると思います。

 そうはいっても、2011年以後、婦連の組織と女性のコミュニティグループとが何らかの形で共同することが出てきています(2つの組織だけが協同するわけではなくて、国連開発計画なども入っているようですし、そうした国連の組織がイニシアを取っているのかもれませんが)(18)。また、全国婦連の機関紙『中国婦女報』にも、袁文莉さんが、自らのネットワークがやった上記の「ジェンダー戦略とエイズ:行動と挑戦」についてかなり詳しく書いたりしています(19)

北京ピンクスペース文化発展センターの試み

 女性HIV感染者自身の運動とは異なりますが、さまざまな女性のマイノリティの権利擁護の活動をしている北京ピンクスペース文化発展センター(北京粉色空间文化发展中心、Pink Space Sexuality Research Centre)が、女性HIV感染者についてのステロタイプなイメージを克服しようとして、ユニークな試みをしていますので、少しご紹介してみます。

1.女性HIV感染者が撮影した写真の展示

 2009年、北京ピンクスペース文化発展センターの代表である何小培さんが、「女性HIV感染者性と生殖の健康ニーズ調査プロジェクト」(前回の本ブログの記事で紹介)で、山西省に調査研究に行った際、出産の前後に、医者に「栄養が付く」と言って勧められた輸血によってエイズに感染した母子たちに出会いました。

 何さんたちは、感染者自身に何らかの表現をしてもらおうと思ったのですが、彼女たちには文章を書いたり、講演をしたりすることは難しかった。たまたま、その頃、北京映画学院の袁園さんがプロジェクトに加わったこともあって、彼女たちにデジタルカメラを贈って、写真を撮ってもらってはどうか? という話になりました。そこで、感染者の方々にカメラの使い方を覚えてもらったところ、さまざまな身近なものを撮影さなるようになり、撮影の技術の交流などもおこないました(20)

 2011年9月、彼女たちが撮った写真は、第11回中国平遥国際撮影大展覧会で展示されました(冊子になっています⇒『山女晋娃农村艾滋病感染家庭摄影作品集』[PDF])。

 それらの写真は、感染者自身が日常生活で撮った写真であり、多くの人が「エイズ」から連想する、他者の視点から見た「死」や「悲惨」の画面ではありません。彼女たちの作品集の前書きで、何小培さんと袁園さんは、「感染者自らが写した映像は、エイズは一つの病気にすぎないこと、恐れるべきは、病気ではなく、病気に対する社会の恐れと差別であることを示している」と書いています。

2.エイズ患者・張希さんを撮影したドキュメンタリー・フィルム

 「视频: 艾滋病毒感染者纪录片《宠儿》」(中国語と英語の字幕付き)

 上のドキュメント・フィルムについてですが、当初は、北京ピンクスペース文化発展センターの人々は「死を恐れないエイズ患者の話」をビデオに撮るつもりでした。しかし、主導権を持っているはずの研究者や撮影者は、エイズ患者の張希さんの本当か噓かわからない話を前にして、その主導権を奪われていく――というような性格のフィルムだそうです(21)

 実は私もよくわからないままに、上のように紹介しているのですが、声が聞こえにくい人々の声を聴くために、ドキュメンタリー・フィルムに注目するというのは、邱貴芬(田村容子訳)「女性史研究の方法――ある台湾ドキュメンタリー・フィルムを例として」田村容子「〈解題〉「『サバルタン』が語る/騙るとき――台湾女性史研究における台湾女性ドキュメンタリー・フィルムの可能性」(野村鮎子・成田靜香編『台湾女性研究の挑戦』(人文書院 2010年)の議論と共通性があるように思いました。

 上の1・2のような試みがどこまで成功しているのか、私にはわかりません。しかし、北京ピンクスペース文化発展センターが、なんとかステロタイプな女性エイズ感染者・患者像を乗り越えようと試みていることは確かだろうと思います。

逮捕されたHIV感染者・田喜さん。ネットワークの活動に干渉も。

 以上のような様々な試みがある一方、当局に抗議し、陳情運動をして逮捕された女性HIV感染者・田喜さんのような人もいます(「田喜(Tian Xi) 活動家に拷問の恐れ」アムネスティ・インターナショナル日本[2010年10月13日国際事務局発信]参照)。

 「河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワーク」もけっして自由に活動できているわけではありません。同ネットワークの「2011年度工作報告」にこうあります。「私たちは現在、けっして政府の明確な支持のシグナルを獲得できているわけではない。(……)研修さえも関係部門の妨害を受けた。私たちは、最初に決めていた時間を短縮せざるをえず、そのことは、ネットワークの研修の質に影響したし、一部のメンバーの心理にある程度のショックを与えた」(22)

 こうした制約の中で、努力を続けておられるのだろうと思います。 

(1)中华人民共和国卫生部 联合国艾滋病规划署 世界卫生组织「2011 年中国艾滋病疫情估计[PDF]」(2011年11月)。
(2)李慧英「我国艾滋病政策法规的社会性别分析报告」新華網2006年11月13日。
(3)以上は、張濤「研究报告:中国全球基金治理中的女性参与」『中国全球基金观察』第16期[2011年9月] [PDF]による。なお、2011年10月に全国エイズ情報資源ネットワーク(全国艾滋病信息资源网络)が出版した中国最初の国内女性感染者グルーブの情報名簿である『紫色陽光――女性小組聯誼録』によると、1~2名のボランティアによって支えられるグループを含めても、29しかないといいます。
(4)河南女性抗艾社区组织网络郑州筹备会会议纪要」河南女性抗艾社区组织网络サイト、「河南女性抗艾社区组织网络成立大会及培训会议顺利召开」河南女性抗艾社区组织网络サイト2010年5月26日。
(5)張濤「研究报告:中国全球基金治理中的女性参与」『中国全球基金观察』第16期[2011年9月][PDF]。それぞれのサイトによると、「女性抗エイズネットワーク・中国」の2009年時点のメンバーは、蒲公英女性网络、河南金色阳光儿童互助(关怀)协会、郑州祥宇、沈阳萤火虫、上海美丽人生依依茉莉、雲南個旧市苦草工作室、新乡市爱心救助协会、浙江互助会-网络支持、巩义康乐家园、龙江丝路驿站、南明滋心小组、宁明荷城之光、河南省登封市阳光女性家园小组、河南商丘腊梅花女性小组、河北永清“半边天”、临汾绿色港湾“手牵手”、七台河爱心家园 贵阳健康关爱苑、中山阳光公社、柳州雨后阳光、四川凉山社会性别与艾滋病研究会です(「我们是女性抗艾网络-中国」2009-11-15)、「河南女性抗エイズコミュニティ組織ネットワーク」のメンバーは、翔宇工作组、河南省登封市阳光女性家园小组、西峡红丝带病友联议会、南阳市南阳红、商水县关爱互助自救协会、河南郏县玫莉芳香感染者互助组、河南商丘腊梅花女性小组、郑州你我健康服务中心、新乡市爱心救助协会、河南金色阳光儿童互助(关怀)协会、巩义康乐家园です(「成员介绍」→それぞれのグループについて詳しく説明しています)。なお、河南省にエイズ感染者のグループが多いのは、中国の場合、1990年代における河南省を中心とした売血政策による感染者が多いからです(ピエール・アスキ[山本知子訳]『中国の血』[文芸春秋 2006年]など参照)。
(6)社区骨干与社会学专家共同研讨女性与艾滋病问题」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月26日、WNAC秘書処「中国女性感染者面临的问题和需求及行动建议 文/ WNAC秘书处」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月26日。
(7)“性别策略与艾滋病“沙龙在北京举行」河南女性抗艾社区组织网络サイト
(8)关于修改《以社区为基础的组织或其他非政府组织代表选举规则》的建议(一)」、「关于修改《以社区为基础的组织或其他非政府组织代表选举规则》的建议(二)」、「关于修改《以社区为基础的组织或其他非政府组织代表选举规则》的建议(三)」河南女性抗艾社区组织网络サイト
(9)2011年度工作报告」河南女性抗艾社区组织网络サイト
(10)广东“艾滋女”全身85%烧伤 求医4个月屡次碰壁」捜狐網(来源:城市晚報) 2011年9月21日。
(11)部分艾滋病女性感染者、社区工作者致中华人民共和国卫生部的呼吁信」、「部分艾滋病女性感染者、社区工作者致中华全国妇女联合会的呼吁信」河南女性抗艾社区组织网络サイト。
(12)部分女性感染者和社区工作者给两部委的呼吁信支持者名单」河南女性抗艾社区组织网络サイト。
(13)广东省卫生厅对部分女性感染者、社区工作者给卫生部呼吁信的回复」河南女性抗艾社区组织网络サイト。
(14)“妇女权益与艾滋病”高层论坛 暨社区行动试点启动会在京举行」『中国婦女報』2010年11月29日。
(15)女性抗艾网络:呼吁妇联干部带头减少对女性感染者的偏见和歧视」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月9日。
(16)袁文莉「关注妇女、女童、社会性别与艾滋病——参与“妇女权益与艾滋病”高层论坛及社区行动试点启动会报告」河南女性抗艾社区组织网络サイト
(17)遏制艾滋 维护权益 妇联在行动――访全国妇联副主席、书记处书记甄砚 」『中国婦女報』2010年12月1日。
(18)女性社区小组与妇联组织、防艾系统共同抗击艾滋病」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月26日、「湖南省妇联“知晓你的权利”项目启动WNAC在骨干培训班上健康女性感染者及其小组需求」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月26日。
(19)防治艾滋,女性实质参与更重要 “性别策略与艾滋病”沙龙在京举行 」『中国婦女報』2012年1月10日。
(20)女性感染者的声音:山女晋娃走进平遥国际摄影大展」『中国发展简报』NO.52
(21)粉色空间纪录片《宠儿》:艾滋病感染者张希的故事」女声網2012年2月3日。
(22)2011年度工作报告」河南女性抗艾社区组织网络サイト

※濱崎憲一・伊吹淳『HIV/エイズと中国 感染者たちの挑戦』(子どもの未来社 2006年)という本は、2005年に放映されたNHKスペシャルをもとにしたものですが、読みやすい本で、エイズ感染者自身の活動もしっかり取材しています。

※日本では「web NEST」 (HIV陽性者とそのパートナー・家族・ともだちのために役立つ情報や、それぞれの経験を共有したり共感したりすることができる場を提供しているサイト)の中に「Women's Salon」があります。また、2007年に川名奈央子さんらによって日本国内の女性陽性者ネットワーク「Live Positive Women’s Network」が立ち上げられているということです(「ぷれいす東京NEWS LETTER」No.55[PDF])。また、アジア・太平洋地域のネットワーク「Women of APN+」(中国語では、亚太女性感染者网络)もあります。

女性HIV感染者のリプロダクティブヘルスに関するニーズ調査

 中華人民共和国衛生部・国連エイズ合同計画・WHOが作成した文書によると、中国で生存中のエイズウィルス(HIV)感染者とエイズ患者は、2011年末で78万人であり、そのうち28.6%が女性だと見積もられています(中华人民共和国卫生部 联合国艾滋病规划署 世界卫生组织「2011 年中国艾滋病疫情估计[PDF]」2011年11月)(1)

 中国におけるジェンダー視点によるエイズ研究は、1995年の北京での世界女性会議以後(とくに21世紀になって以後)、始まりました。もちろんその中には男性同性愛者のエイズに関する研究もありますけれど、女/男に焦点を当てた研究としては、これまでに、単行本としては、龍秋霞『红丝带的思索[レッドリボンの思索]』(広東科技出版社 2003年)や張翠娥『差异与平等―艾滋病患者的社会性別研究[差異と平等―エイズ患者のジェンダー研究]』(社会科学文献出版社 2009年)が出版されています。いずれも、インタビューやアンケート調査などをもとにした実証的な著作です。

 龍秋霞『红丝带的思索』は、ユニフェム(UNIFEM)とユニセフ(UNICEF)の援助を受けて広東省女性研究センターが2002年から2003年にかけておこなった「ジェンダーとHIV/AIDS防止」研究プロジェクトの成果をまとめたものです。この本は、私は未読ですが、男女両性のエイズに対する認識・行為・態度の差異にもとづいて、エイズが流行している状況やエイズ流行の原因についてのジェンダー分析をおこなうことによって、エイズ政策にジェンダーの視点を入れることを訴えた本のようです。同書は、エイズウィルスの感染者や患者だけでなく、家族・ボランティア・教師・政府関係者・地域コミュニティの指導者などについても調査していることが特色だとのことです(2)

 張翠娥『差异与平等―艾滋病患者的社会性別研究』(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ )は、張さんが2006年に河南省南陽市の売血によるエイズ患者らに対しておこなったアンケート調査やインタビューにもとづいた著作です。この本は、エイズの流行に対するジェンダーの影響を明らかにするとともに、ジェンダー再構築に対するエイズの影響も論じています。

 2009年8月からは、フォード財団の資金援助を受け、マリー・ストープス・インターナショナル・チャイナ(Marie Stopes International China[玛丽斯特普国际组织中国代表处])による「女性エイズウイルス感染者の性と生殖の健康(リプロダクティブ・ヘルス)ニーズ調査プロジェクト」が開始されました。このプロジェクトは、女性HIV感染者自身のニーズに焦点を当てたものです。このプロジェクトは、ジェンダー問題の専門家である馮媛・何小培・葛友俐の3氏を迎えて、全国でアンケート調査や訪問調査をおこないました。この調査の調査員は、全国各地の感染者サポートグループの活動家でもある16人の女性感染者(3)です。彼女たちは単なる調査員ではなく、研究にも参与しています。

 昨年、このプロジェクトの成果として、「中国女性エイズウイルス感染者の性と生殖の健康ニーズ調査研究報告及び政策建議(中国女性艾滋病病毒感染者性与生殖健康需求调研报告及政策建议[PDF])」が完成しました(サマリーには英訳も付されています[p.5-8])。以下、その内容を簡単にご紹介します。 

 この調査では、全国18省(市・自治区)の450人の女性感染者にアンケートをおこない、そのうち63人にはインタビューもしたそうです。民族は、漢族が76.3%、少数民族が26.4%(チワン族29人、ウイグル族29人、イ族22人、回族13人など)です。平均年齢は38.5歳で、71%の女性に子どもがいます(子どもの93%はHIVに感染していない)。戸籍は、都市戸籍が36%、県政府所在地が11%、農村戸籍が52%です。教育程度は、初級中学(日本でいう中卒)が43%で最も多くなっています。感染経路は、51%が性行為、売血と輸血が12%ずつで、感染してから平均4.5年たっています。

 この調査研究の結果、以下のようなことがわかったそうです(上の冊子の「摘要」や五「研究成果と政策提案」の個所を基本に、他の箇所も参照して、私なりにまとめました)。


一、女性感染者の性と生殖の健康(リプロダクティブ・ヘルス)に関するニーズは、「基本的な生活と福祉」「安全で満足のいく性生活」「尊重された、質の高い性と生殖の健康の保健サービス」「性と出産の権益の理解と行使」に概括できる。この4つの面のニーズに対して、国家と関係機構は、すみやかに正視して、有効な対応をしなければならない

1.基本的な生活状況が明らかに損なわれた
 55%の被調査者(以下、「人」と略します)の基本的な生活条件は、HIVに感染した後、明らかに低下した。64%の人は財産が減り、16%の人は財産を失った。17%の人は収入がなく、家族に養われている。
 62%の被調査者は、HIVに感染したことによって、親密な関係の面でマイナスの変化があった(愛情が終わった、婚姻が破綻した、嫌われて相手にされなくなった、出産できなくなったなど)。同時に、子どもの監護権や面接権を失った人もいる。

2.安全で満足のいく性生活がない
 47.6%の人は、三か月以内に性生活がなかった。56%の人は、性のパートナーがいるけれども、望まない性行為または安全でない性行為(たとえば、相手はいるが、自分が性関係を持ちたくない。相手は望むけれど、自分はいや。私がしたいやり方は相手がいや、またはその逆など)に苦しんでいる。約32%の人は、相手がいないか、安定した性のパートナーがおらず、満足な性生活ができずに苦しんでいる。20%の人は、条件(居住条件、女性用コンドームがない、治療が必要など)を改善できずに苦しんでいる。
 ・感染後、1/5の人は、恋愛や婚姻、出産に関して「どうしようもない」と考えており、半数をやや超える人が、「現状を維持し、成り行きに任せる」と答えている。このような、自らの心理・認識レベルでの障害にまず対応する必要がある。
 ・周りの者(パートナー、看病する者、医者・看護師)の認識に問題がある。彼らにインタビューをしても、彼らは基本的に彼女たちの愛情や出産のニーズしか知らず、性のニーズはほとんど問題にしていない。
 ・安全でない性行為の要因を減らす必要がある。感染後に安全な性行為ができない原因は、半数以上が、「情報を知ってはいるが、相手にそれができない」ことであり、次が、「情報を知らない」ことである。「ときに安全な措置が取られない」最大の原因は、「身近にコンドームがない」ことである。

3.尊重を受けられる、質の高い医療・保健サービスが得られていない
 半数の人が、政府関係者や医療業務従事者が平常心で/非差別的態度で接するように望んでいる。女性感染者は、婦人科の検査・妊娠中絶・婦人科手術などの、生殖の健康の保健・治療のニーズが満たされておらず、そればかりか、しょっちゅう無視され、拒否され、差別されている。そうしたことが起きるのは、サービス提供者個人の専門知識・観念・態度に問題があるだけでなく、機構の姿勢や政策・措置、現在の体制の配置・運用にも問題があるからである。
 若干の医療・疾病予防・民政などの機構や人員は、意識的・無意識的に差別的態度をとっており、日常の相談と治療、コンドームの支給、婦人科検査、妊娠中絶、最低生活保障制度(生活保護)申請などの際に、官僚主義が存在するのみならず、態度と言葉が差別的である。サービスの項目についても、検査・投薬・医療器具・設備・費用の面で、彼女たちの戸籍や感染者としての身分を理由にしてサービスを拒絶したり、費用を引き上げたりする。感染者の個人情報を漏らすことさえある。(4)
 女性感染者の性と生殖に対する体制的・政策的な無視と否認は、感染者が十分な妊娠・出産期のサービスを受けにくい点に集中的にあらわれている。現在の政策は、母子感染の防止についてしか明文で責任主体とサービス内容を規定していないが、女性感染者の妊娠出産期の性と生殖の健康面のニーズは、それだけには全然とどまらない。一般の母子保健機構は、女性感染者のための、妊娠出産期を含めた性と生殖の健康の面での診療サービスがないか、拒絶し、エイズ指定病院は、その面の専門的サービス能力がない。
 女性感染者の性と生殖の健康のニーズに直接対応するプロジェクトは多くなく、わずかに若干の国際機構、たとえば「国境なき医師団」のような国際民間組織が展開するプロジェクトだけが女性感染者の性と生殖の健康と権利を促進する助けになっていたが、近年、そうしたプロジェクトは、相次いで減ったり、終わったりした。

4.性と出産の権益が阻害されている
 女性感染者が結婚や出産をするか否か、ジェンダー暴力・性暴力を受けないか否か、離婚後の子どもの保護監督権、財産権、治療と保健のサービスの権利、合理的賠償の権利を得られるか否かは、個人・機構・体制のあり方の影響を受けている。
 まず、出産する(しない)意志を実現するというニーズが阻まれている。57%の人が出産の面で直面している問題は、経済的困難と医療・保健の制約である。13%の人は、自分が出産するか否かという意思が他人の圧力を受けている(たとえば、子どもが欲しいけれど、誰も賛成しない[3.8%]、自分は子どもが要らないが、相手が希望する[3.5%]、相手の父母から[男の子を産めなどと]圧力をかけられる[5.7%]など)。
 各種の家庭内暴力を受けずに、平等に尊重されたいというニーズがある。少数民族では、出産するか否かの問題によって(たまたま、またはしょっちゅう)怒鳴られたり、殴られたり、排斥され孤立している人が合わせて27%いる(全体の平均では14%)。31%の少数民族の人が出産の問題によって冷遇されたり、皮肉を言われたりしている(全体の平均では17%)。
 不合理な制度や規定を変えたいというニーズがある。移転の自由は憲法と法律で規定された権利であるが、戸籍管理によって、女性感染者は、男性よりもさらに多くの不便をこうむっている。たとえば、戸籍がない居住地では、無料の婦人科の検査などの福利を享受できないなどである。

二、女性感染者はさまざまな手段で、能動的に自らの性と生殖の健康のニーズに対応し、自らの声を発している。その主要な現れは、以下の1~3である

1.個人の努力によって、マイナスの要素を転換させ、肯定的変化を求めている
 「現在の状況(HIVに感染している)の下で、あなたは愛情・婚姻・出産の面でどのような考え方をしていますか」と尋ねたところ、34%の人は「私にはなお幸福を追求する権利がある」または「事を謀るは人に在るも、事の正否は天にあるので、自ら努力して得る」と回答しており、比較的積極的な考え方をしている。実際、17%の人は、親密な関係についてプラス方向の積極的変化(新しい愛情・婚姻・子どもを得る)があった。ある女性は、感染を知った後に、毅然として暴力的な婚姻から逃れ、新たな都市で新しい幸福を得て、子どもを出産した。

2.集団的な力を強め、サポートネットワークをつくる
 病気を縁に知り合った友人(病友)は、家族に次ぐサポートの力である。43%の人が感染の状況を自ら告知したい対象として病友を選んでおり、これは、性のパートナーに次ぐ。
 インターネットは、地理的な限界を乗り越え、プライバシーを保護した状況の下でサポートネットワークを拡大する助けになっている。27.6%の人がインターネットとQQ群(内輪のSNSの一種)によって、他の感染者と知り合った。
 この調査は、各地の感染者グループ、とくに、活動的な女性感染者とサポートグループに委託しておこなったため、78%の人が住んでいる場所に、感染者をサポートするグルーブか民間組織のグループがあり、60%の人が住んでいる場所に、専門に女性感染者をサポートするグループか民間組織があった。51%の人が、1つまたは多くの感染者のグループまたは民間組織に参加している。20%の人が、住んでいる場で、女性感染者をサポートするグループまたは民間組織に参加している。
 愛情や婚姻、性と出産の面で問題にぶつかったとき、48%の人は、感染者の組織に話をしている(次が配偶者。この点は、かなりの人には、配偶者などの親密な関係の人がいないことと関係があるかもしれない)。

3.行動、とくに各種のメディアを運用することによって、この集団の性と生殖のニーズについて声を上げている
 85%の人が女性感染者の性と出産のニーズのために何らかの行動をしている。66%の人は「他の感染者といっしょに討論して」いる。17%の人が政府に提案をしている。29%の人が何らかのメディアによって女性感染者の性と出産のニーズを表現し伝えている(そのうち10%は、インターネットに書き込んだり、ビデオや録音を発表したりしている)。
 インターネットは、女性感染者が知識や情報を得て、交流をし、分かち合い、意見と要望を出す重要なツールになっている。QQ群は、それに比べると使用率は高くないけれども、若い人、特にエイズが流行していない中小の都市や町に住んでいるために周囲には病気の友人がいない人にとっては、非常に重要な役割を果たしており、彼女たちが腹を割って話をしたり、自分の法律的権利を理解したりする場になっている。

三、政策の提案

1.関連する医療保険サービスの内容を増やし、手に届きやすくする
 ・サービスがカバーする範囲を増やすとともに、手に届きやすくする。たとえば、女性感染者の妊娠出産期の保健を制度化する。
 ・医療・保健・予防に携わる人々(とくに末端の人々)の言葉と行為、技術方案に対する規範管理を強化する。
 ・診察・カウンセリングにおいては、女性感染者を援助できるカウンセリングやソーシャルワーク、ピア・エデュケーションの面の人員が必要である。少なくとも、感染者をサポートする組織あるいは女性感染者のボランティアが、性と生殖の健康の面のピア・エデュケーションやサポートをするために参与することを支持しなければならない。
 ・予防センターあるいは指定病院など、感染者が相対的に集中しているところでは、常に、または定期的に性と生殖の健康(心理的な面も含む)に関する講座・相談と各種の形態の教育活動をおこなう。

2.教育と情報宣伝を改善する
 ・女性感染者は教育を受ける機会が比較的少なく、教育程度が低いことを考慮して、彼女たちに合った方法、とくに文字を使わない、見てわかる手段を使って、予防や保健、権利保障やサービスに関する情報を伝える。
 ・メディアで働く者たちは、女性感染者の愛情と性などの親密な関係に対するニーズを正視し認め、女性感染者の性生活や出産するか否かなどについての自由意志・自主・自決を促進し、一方で、他の者が女性の性と出産の権利を無視し剥奪することを防止するとともに、もう一方で、他の者(とくに夫と夫側の家長)が女性を性と出産の対象として扱って、彼女たちの自らの性と出産に関する意思を放棄させるよう強制することを防がなければならない。
 ・女性感染者がインターネットを含めたメディアを活用することを支持しなければならない。性をポルノや低俗と同一視する勝手なやり方を改めて、「ポルノ一掃、非合法サイト取締り」などの方法でおこなわれるインターネットの取締りが、女性感染者の性と生殖の健康を促進する情報とサイトに災いを及ぼさないようにしなければならない。

3.政策・法律・体制を改善する
 ・女性感染者に対する医療や保健の予算の増額、医療関係者の研修など。
 ・医療機構が女性感染者を押し付け合ったり、拒絶したりすることをやめ、不合理に高い料金なども取らないようにする。母子感染の防止だけでなく、妊娠・出産期の保健サービス、妊娠中絶その他の婦人科の治療・出産保健サービスを充実させる。
 ・女性がコントロールできる避妊と安全の措置(女性用コンドームなど)に関する研究開発と応用などを推進する。
 ・無料の検査(通常の検査、婦人科の基本的検査)・治療などを拡大する。
 ・公共サービスを一体化するプロセスにおいて、戸籍の制限を撤廃して、女性感染者が居住地で基本的な性と生殖の保健サービスを受けられるようにする。
 ・最低生活保障(生活保護)・低家賃の賃貸住宅・貧困救済などの政策を設計・実施・調整する際、女性感染者、とくにシングルマザーのニーズに配慮する。
 ・感染者の結婚・出産・養子を取ることを認めるようにする。とくに「婚姻法」「伝染病防止法」およびその施行において、結婚をしばらく猶予する規定を撤廃する(5)
 ・青少年に対する性教育を積極的に実施する。また、性教育の中に、女性の性の自主・平等・尊重・責任、安全な性行為(セイファーセックス)の内容を組み入れる。性教育には、女性感染者など、性についての周縁的集団が参与することが必要である。男性に、安全で責任を持った性行為をさせるようにする。


 以上をご覧になればわかるように、徹頭徹尾、女性感染者のニーズに寄り添った調査だと思います。

 この調査研究はマリー・ストープス・インターナショナル・チャイナの事業ですし、研究者と当事者とを同一視することもできません。とはいえ、この調査研究は、女性感染者自身が調査者となったうえで、研究にも参与しており、女性感染者自身が自らのニーズを調べ、要求をまとめる一つの機会にもなったのではないかと思うのです(もちろん、感染者の視点がこの研究報告に寄与していることも、言うまでもありません)。

 この調査研究の過程で、2011年5月に、中国で初めて「女性感染者の性と生殖の健康のニーズ研究討論会」も開催されました(6)

 また、この報告の内容自体も、女性感染者が主体的な行動をしていることを明らかにしており、単なる「犠牲者」「被害者」ではない感染者像を描き出していると思います。今回の調査対象は女性感染者グループのメンバーやその周辺の人々が多いと考えられますから、女性感染者全体に当てはめることはできませんが、インターネットなどによって、ある程度の広がりを作り出していることもわかります。

 また、この調査は、リプロダクティブヘルスのうちの、女性感染者の「性」のニーズにもきちんと向き合っている点にも特色があります。

 また、近年エイズについて少数民族の問題が注目されるようになったこともあって、それぞれの事項について漢族と少数民族とに区別して統計を出していることも、この調査の特色かと思います。この調査からは、全体として見ると、少数民族の方が状況が悪いことがわかります。ただし、「政策の提案」では、少数民族に関する言及は、「エイズが流行している農村、とくに少数民族地区では、女性感染者が質の高いサービスと正確で信頼できる情報と意見を得られるようにする」という箇所だけであり、物足りなさを感じました。

もちろんリプロダクティブ・ヘルス以外にも、問題とニーズは多い

 今回の調査は、あくまでも女性感染者の「性と生殖の健康(リプロダクティブ・ヘルス)」に関する調査だということには気を付けなければならないと思います。女性感染者グループのネットワークである「女性抗エイズネットワーク・中国(女性抗艾网络-中国)」の何田田さんは、この2年間の自分たちの調査研究でわかった「女性HIV感染者の直面する問題とニーズ」として、「心身の健康の問題」「経済的苦境」「差別される状況」の3点を挙げています(7)。リプロダクティブ・ヘルスにも、その3点はすべて関わっているわけですが、リプロダクティブ・ヘルス以外にも多くの問題があることは言うまでもありません。

 たとえば、「心身の健康の問題」としては、何さんは、「女性はHIVに感染した後、仕事を続けるほかに、家事・農作業・子どもの養育などの仕事もしなければならないのに、感染あるいは薬の重い副作用のために健康が損なわれ、しょっちゅう仕事を失うか、自分で仕事を辞めなければならなくなる」とか、「一部の女性感染者は、自責と後ろめたさという心理があらわれ、かつ、これらの心理が絶えず繰り返され、友だちとの交友も減り、自分は他の人より劣っていると思い、自信を失い、自分に価値が認められなくなって、劣等感を持つ。一部の女性は差別され、見捨てられ、暴力を振るわれたために、悲観・絶望・厭世という心理が絶えず生まれ、心理的健康状況が心配に堪えない」といったことが挙げています。

 また、「経済的苦境」としては、「健康が原因で仕事を辞めたのち、女性感染者の経済的収入は大幅に減少し(……)夫に頼るか、実家に援助してもらうしかなくなるが、日和見感染の治療と薬物の副作用の対抗のために多額の金銭を使うので、ますます経済的に困難になる。夫を亡くした後の女性感染者は往々にして婚家と実家の両方に嫌がられる。こうしたシングルマザーは、非常に経済的に困難である」といったことが挙げられています。

 ですから、女性感染者のニーズとしては、「心理的サポート」や「生活保障」などが挙げられています。具体的には、前者については、「女性感染者グループの活動能力をサポートし、発展させる、女性感染者の中にピア・エデュケーション員を養成する」といったことが挙げられており、後者については、「貧困な母親は生活保障が必要である。『エイズ孤児』を救助するだけでなく、母親も適時に救助が得られるならば、彼女の子どもも『孤児』にはなりにくいだろう」といったことが書かれています。

 以上のような、リプロダクティブ・ヘルス以外の点についても、量的・質的にきちんとした調査研究が必要だと思いました。

※本ブログの記事「女性HIV感染者の運動」もご参照ください。

(1)毎年の新しい感染者について言えば、2007年、全国婦連と衛生部による「女性エイズ防止工作会議」が開催された際、「毎年新しく報告されるエイズウィルス感染者の男女比は、1990年代は5:1だったのが、現在は2:1になっている」と報道されて、女性感染者の比率の上昇が注目を集めました(「中国女性艾滋病感染者比例明显上升」新華網2007年6月5日、「新报告:艾滋病感染者男女比例升到2∶1」広州日報→新華網2007年6月6日)。
(2)この段落は、劉伯紅、李亜妮の書評(「对艾滋病的社会性别分析――读《红丝带的思索》」『婦女研究論叢』2005年1期→社会性别与公共政策サイト2006年10月3日に転載[ただし注は省略されている])にもとづいて書いています。また、王英 陈澜燕 张红漫 李慧英「HIV/AIDS流行控制中的社会性别分析」『中国艾滋病性病』2004年6月(第10 卷第3 期)も同じ研究プロジェクトにもとづいて書かれた論文です。龍秋霞さんについては、「“我出名是因关注艾滋病的人太少”——访广东省“从社会性别角度研究艾滋病”第一人龙秋霞女士」(金羊網2005年12月1日)参照。
(3)広西の「女性抗エイズネットワーク・中国(女性抗艾网络-中国)」(これについては本ブログの記事「『女性抗エイズネットワーク・中国』設立」で取り上げました)の何田田さんのほか、北京歓顔女性グループ(北京欢颜女性小组)、賀州水果楽園(贺州水果乐园)、中国愛之関懐組織(中国爱之关怀组织)(南寧)、瀋陽蛍火虫工作組(沈阳萤火虫工作组)、山西新絳同様紅小組(山西新绛同样红小组)、個旧苦草工作室(个旧苦草工作室)、雲南載托普薬物依存治療リハビリセンター(云南戴托普药物依赖治疗康复中心)、天同小組(天同小组)、浙江互助会ネットサポート(浙江互助会网络支持)、河南登封陽光女性家園(河南登封阳光女性家园)、美麗人生・依依茉莉女性グループ(美丽人生・依依茉莉女性小组)、「天の半分」河北永清感染者互助グループ(半边天河北永清感染者互助组)、西昌月城女児グループ(西昌月城女儿小组)、中国愛之関懐組織(広州)の各グルーブの女性が調査員になっています。
(4)こうした点については、「<調査>診療の拒絶も! 医療従事者と役人・教師の3割がHIV感染者を差別―中国」(レコードチャイナ2009年12月1日)という報道もあります。
(5)中華人民共和国婚姻法第7条は、「医学上結婚すべきではないと認められる疾患に罹患している者」は「結婚を禁止する」と定め、第10条では、「婚前に医学上結婚すべきではないと認められる疾患に罹患し、結婚後もまだ治癒していない場合」は「婚姻は無効である」と定めています(鈴木賢・廣瀬眞弓「中華人民共和国婚姻法 邦訳[PDF]」北大法学論集 53[1])。婚姻法の中には、「医学上結婚すべきではないと認められる疾患」の名称は書かれていません。しかし、1995年に制定された中華人民共和国母子保健法(中华人民共和国母婴保健法)第9条は「婚前医学検査によって、指定伝染病にかかっていて伝染期間内(……)であると診断された者に対しては、医者は、結婚を予定している男女双方に、結婚をしばらく見合わせなければならないという医学的意見を言わなければならない」と規定しており、同法第38条では、本法で言う「指定伝染病」とは、「中華人民共和国伝染病防止法(中华人民共和国传染病防治法)」の中で規定されている「エイズ・淋病・梅毒・ハンセン病および医学上結婚と出産に影響を与えるその他の伝染病」を指していると書かれています。
 こうした規定に対しては、エイズ問題に取り組んでいる北京愛知行研究所も、改正を求めています(「就婚前自愿艾滋病检测咨询、梅毒检测咨询给国务院法制办、国务院防治艾滋病工作委员会和卫生部的信函[北京爱知行研究所2011年5月30日发布]」、「北京爱知行研究所就清理歧视艾滋病患者法律法规的建议 [北京爱知行研究所2011年12月28日发布]」)。
(6)首个中国女性感染者性与生殖健康需求研讨会在京召开」中国发展简报2011年5月17日。
(7)女性HIV感染者面临问题和需求——来自女性社区组织的调研和发现」女性抗艾网络-中国ブログ2011年9月24日。

「女性抗エイズネットワーク・中国」設立

 以前、本ブログで、2007年3月、女性のエイズ感染者などのネットワークとして「タンポポ女性ネットワーク[蒲公英女性網絡]」が結成されたこと、本年[2009年]2月には「中国女性抗エイズネットワーク」の準備グループが出来たことをお伝えしました(「HIV女性感染者のネットワーク」)。

 こうした活動を経て、本年7月9日、「女性抗エイズネットワーク・中国(Women's Network Against AIDS-China)」が設立されました(ブログ:「女性抗艾網絡-中国」)。設立にあたっては、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の資金援助もありました。

 「女性抗エイズネットワーク・中国」は、「タンポポ女性ネットワーク」を含む、中国各地の、エイズに影響を受けた女性(エイズ感染者やエイズ患者の家族)の組織によって構成されており、エイズに影響を受けた女性の声を集め、発表する活動の足場となる組織です。現在のメンバーは以下の21組織で、中国の11の省・市・自治区にまたがっています。

 苦草工作室、瀋陽蛍火虫工作組、河南新郷愛心協会、浙江互助会網絡支持、河南鞏義康楽家園、蒲公英女性網絡、絲路駅站、貴陽滋心小組、広西寧明荷城之光互助小組、河南登封市陽光家園、鄭州祥宇工作組、“半辺天”河北永清感染者互助組、山西臨汾緑色港湾、七台河愛心家園、商丘臘梅花女性小組、貴陽関愛苑、中山陽光公社、美麗人生依依茉莉、河南金色陽光児童関懐協会、凉山社会性別与艾滋病研究会、柳州雨后陽光女性小組

 総幹事は、「治療手記」を発表したことで有名な感染者の何田田さん(彼女のブログ:「江南可採蓮,蓮葉何田田」)です。

 「女性抗エイズネットワーク・中国」の「目的」は、「女性感染者の組織の発展を促進し、女性のコミュニティへの参与と地位を高め、それによって、エイズと共に生きる女性の地位を高め、ジェンダー・センシティブなエイズ防止・治療の政策と措置を提唱すること」です。

 「使命」は、「全国各地の女性の抗エイズの力をつなぎあわせ、女性グループの成長を促進し、女性が声をあげること」です。

 「願い」は、「平等な生存・平等な治療・平等な発展」です。

 「活動計画」は、以下の柱で組み立てられています。
1.組織の発展と能力建設
 1.1 ネットワークの組織の発展
 1.2 ネットワークのメンバーの能力建設
 1.3 女性組織の設立の援助
2.唱道
 2.1 一般大衆の中での唱道
 2.2 政策転換のための唱道(1)

設立の過程(2)

 2007年3月に設立された「タンポポ女性ネットワーク」は、インターネットの中に自分たちの交流の空間を作ろうとしました。ところが、彼女たちのホームページが存在していたサイトの中に性に関わる内容があったため、そのサイトは国家のインターネット粛正運動によって閉鎖させられ、それに伴って、彼女たちのホームページもなくなってしまいました。

 そこで、彼女たちは、今度は、もっと広い範囲で、もっと具体的な方法で自己の存在を示す試みを開始しました。すなわち、彼女たちは、全国各地の女性感染者グループを探して、それらのグループの責任者や中核の人と連絡を取って、相互のネットワークが結成できるかを探求しつつ、しだいに目標や活動プランも明確にしていきました。この過程は、馮媛さん(ジェンダー研究者、元『中国婦女報』高級編集者)によると、以下の3つの過程でもあったと言います。

 ①お互いに激励する過程……ネットワーク作りの過程で、女性感染者が集まる機会が増え、お互いの経験を語り合った。それらの話は、女たちが困難に対処し、生活を創造できる潜在能力を示すものだった。ある人は、エイズのために離婚したが、その後、自立した単身生活を創造した。ある人は、陽性であることを明らかして結婚相手を求め、勇気ある陰性の人と家庭を持つにいたった。ある人は、同じ病気の人と一緒に病気や差別と闘う中で知り合った人と結婚した。若い感染者たちは、出産・育児の経験を交流し、どのように困難を克服して母親である権利を実践・実現したかを語った。最低生活保障などの権益を獲得したり、体制と個人の差別・偏見と闘った人もいた。これらの話は、古くから病気だった人を勇気づけ、新しく病気になった人を恐怖や消沈から脱出させた。感染者の家族には、病気の家族を理解し、励ます気持ちを持たせた。

 ②行動を示す過程……現在、国内で比較的形が整った女性グループは、10数にすぎないが、それぞれのグループの行動の歩みは、感動的なものだった。たとえば、雲南の女性感染者グループである「苦草」(3)というグループ名は、生命力の頑強さと草の根が地下では一つであることを示している。このグループは、病気になったセックスワーカーのホスピスケアと葬式をする活動で有名になったが、現在は、生産による自助や監獄訪問、孤児の援助などにも活動を拡大している。河北の永清の「半辺天家園」は、農村の女性感染者の自助組織であり、生活や栄養、治療の面で助け合いをし、福利や薬の権益を勝ち取ることにも成功している。

 ③主張を形成する過程……2003年前後、各地で感染者の自発的組織が出来はじめた。その中には、たまに女性の姿も見られたが、表現するニーズは男女に共通のものだった。2005年秋冬以降、十数の女性感染者グループが相次いで出現した。2007年には、タンポポ女性ネットワークが設立された。しかし、エイズに影響を受けた女性(とくに女性感染者)独自のニーズ主張は、まだ提出されていなかった。けれど、ネットワークの準備をする過程で、以下のような女性独自なニーズが明確になっていった。
 ――地位向上のニーズ。病気になって夫や実家・婚家からの援助が断ち切られた時にも生きるのが困難にならないように、女性には、自分と子どもの生存・発展を支えられる独立した経済的地位が必要だ。女性の地位向上は、感染したためにDVの被害にあうのを避けたるためにも必要だ。また、性的搾取・性的奴隷労働や子どもを産む道具にされたために感染するのを避けるためにも、女性の地位向上が必要だ。母親としての役割を果たすためにも、地位の向上は必要だが、現在はシングルマザー(ファーザー)へのサポートや援助はない。
 ――出産・育児と性の健康のニーズ。女性感染者は、しばしば子どもを持ちたいという切実な希望を持っており、そのための専門的科学的知識を必要としているけれど、それらの知識は得るのが難しいし、医療・看護従事者は、しばしばそうしたニーズを否定するので、専門家からも相談や援助は得にくい。養子をもらうことを希望する女性もいるが、国家の養子法は、伝染病の病人は養子をもらえないと規定している。また、長い間、男性の性のニーズは堂々と論じられてきており、実現できるルートもあったけれど、女性、とくに感染者の性のニーズは正視されてこず、またジェンダー規範の圧力によって実現することはさらに難しかった。
 ――平等な参与のニーズ。女性が社会政策や法律の制定・修正に参与できるルートを保障する。世界基金などの国際協力のメカニズムと資源の分配において発言権を得る。メディアにおいて、女性感染者を単なる被害者でなく、行動者・変革者としての働きや彼女たちの観点や要求を示すようにする。女性感染者の声を科学研究プロジェクトに組み入れる。薬物の副作用の性別による差異を探究するなど。

女性エイズ感染者の手記・『写生』出版

 11月25日、「女性抗エイズネットワーク・中国」は、同ネットワークが企画・出版した、女性エイズ感染者の手記を集めた『写生』という本の発表会をおこないました。

 発表会には、国連副事務総長のMichel Sidibéさん、衛生部が選んだ初のエイズ防止宣伝大使である女優の蒋雯麗さん、監督の顧長衛さん、写真家・王小慧さんらも出席しました(4)

 『写生』は商業出版されていないようですが、網易女人の特集ページで連載が開始されており、感染者が出産や仕事について語っています(「第一部女性艾滋感染者手记《写生》发布」、「《写生》一:我好想好想做妈妈」、「《写生》二:感染艾滋的我,也可以工作」)。

 この本を編集した何田田さんは、次のように述べています。

 「中国の感染者のうち、女性感染者は1/3を超えており、若干の地区では40%以上に達しています。三大感染経路のうち、性感染が最も主要な感染経路になりつつあり、新しく増えた感染者の中では、女性の増加速度は男性より速くなっています。エイズウイルスに対しては、生理的角度からも、社会的角度からも、女性は、より大きな危険に直面しています。中国の社会では、女性が家族や跡取りから受ける圧力は、男性よりはるかに大きく、また、私たちの民族のいささかの伝統的・封建的意識によって、災難が降りかかった時、しばしば、多くの女性が家族や夫、はなはだしきは子どもによって捨てられます。さらに、人々は、しばしばエイズを道徳的堕落や行動の慎みのなさと結びつけます。病身の上に付加されるこれらの汚名と差別は、女性にとって巨大な圧力となります。」

 「エイズに影響を受けた女性の訴えは、みんなが聞く必要があります。ジェンダー意識は、エイズ予防・治療政策の中で体現される必要があり、病身の上に付加された汚名と差別は、社会全体の努力で少しずつ解消していかねばなりません。」

 「ですから、私たちは『写・生』を作って、私たちが書いた生命の物語を通じて、みんなに『私たち』を本当に知ってほしいと思います。『私たち』とは、エイズに影響を受けた女性であり、女性感染者のほかに、感染者の女性の家族もいます。病気を前にして、運命の選択を前にして、私たちは逃避せず、正面から立ち向かいました。『写・生』のきめ細かで耽美的な写真や文の背後には、女性が厳しい環境に直面して示した剛毅さと勇気が表現されています。それは、生活と運命が交差する中での答案であり、社会の理解と平等な扱いを訴える叫びなのです。」

 「健康・貧困・差別・DVは、エイズに感染した女性が直面する主要な悩みです。免疫力の低下による日和見感染と抗ウイルス剤の副作用は、次第に、または急速にエイズ患者の健康を損ないます。もともと貧困だった家庭が、エイズに感染したことによってさらに貧困になります。差別は、無知と恐怖から来ますし、感染者自身のアイデンティティの欠如からも来ます。DVは、身体的暴力と精神的暴力を含んでいて、もし夫が妻がエイズに感染したことによって思いやりをなくし、性愛をなくしたら、名前は夫婦でも、赤の他人と同じになります。」(5)

(1)以上は、「中国女性抗艾网络正式成立,21个组织为首批成员」中国紅絲帯網2009-07-10、「我们是女性抗艾网络-中国」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15、「Debrifing on Women's Network against AIDS-China」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15
(2)馮媛「感受她们的力量」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15
(3)個旧市苦草工作室。2005年10月に設立された、(前)女性セックスワーカーのエイズ感染者のための組織(「“无意苦争春,一任群芳妒” ——记个旧市苦草工作室」NGOCN官方博客2009-11-05に詳しい)。
(4)蒋雯丽、王小慧与联合国官员携手女性抗艾网络为《写.生》揭幕」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-26
(5)网易女人专访女性抗艾网络总干事、《写生》主编何田田」網易女人2009-11-26

HIV女性感染者のネットワーク

 中国では、HIV感染者の中で女性が占める比率が、ここ10年間で7.1%から35%に急増しました(1)

 エイズの感染、治療・サポートは、女性の地位の問題と深く関わっています(性的自律性、女性の性に対する偏見、経済力、暴力、医療・教育の保障、妊娠・出産、病人の介護などの面で)。ですから、中国でも、以下のようなHIVの女性感染者のネットワークが活動を始めています。

1.タンポポ女性感染者ネットワーク

 2007年3月8日、「タンポポ女性感染者ネットワーク(のちに「タンポポ中国女性ネットワーク」などとも称する。蒲公英中国女性網絡、Dandelion:Association of Chinese Women PLWHA、Dandelion Chinese Women's Network)」が設立されました。女性感染者を中心に、男女のボランティアも含めて100人あまりが加入しています。「タンポポ」という言葉は、生命力の強さを象徴しています。

 このネットワークの目標は、インターネットを通じて女性の力を合わせて、女性感染者と家族のエイズ治療に関する知識や自己看護能力を高め、女性感染者の生存・学習・就労・婚姻・出産の機会・環境を勝ち取り、改善し、治療環境も改善して、生存の質を高め、最終的には「エイズの平等な治療、エイズの平等な生存」を実現することです(2)

 それまでにも、地域に女性感染者の小さなグループはあったようですが、全国的な組織は、「タンポポ女性感染者ネットワーク」が初めてです(3)。べつに男性感染者と対立する組織ではなく、女性には、治療、就労、結婚・育児、家庭看護、心理的な訴えなどの点で男性とは異なる問題があるので結成されました(4)

 このネットワークは、活動内容として、以下のことを掲げています。
 (1)電話相談やQQ群(グループ内で話し合えるネット上のコミュニティ)、ホームページ(今は不通)、フォーラムなどをとおして、女性感染者のために、交流や訴え、相談の場を作る。
 (2)女性のニーズ調査をする。
 (3)独身の感染者に友人・結婚相手募集の場を提供する。
 (4)女性・子どもの個別のケースの整理、および権益の主張。
 (5)不平等な待遇にあった女性や子どものために法律的援助を求める。
 (6)貧困な女性・子どものために資金援助を求める。
 (7)より多く、より高い効果のあるウイルスに対抗する薬、および高い質の治療サービスを求める(5)

 設立したのは、感染者の何田田さんらです。「何田田」というのは、「江南可採蓮,蓮葉何田田」という詩句から採ったペンネームで、彼女は、同名のブログも持っており、書いた文章は、「何田田治療手記」という形でも、まとめられています。何さんは「HIV感染者及関注者圏」というブログサークルも主宰しています。

 上の(2)~(7)の活動がどこまでなされているかは具体的には確認できませんでしたが、少なくとも、(1)の交流や相談は、活発になされています。たとえばQQ群では、感染者の出産や育児の問題(期待と危険性、楽しみと負担の両面がある)がよく話し合われているそうです(6)

 また、昨年から今年にかけて、「タンポポ女性感染者ネットワーク」は、「赤いマフラー(紅囲巾)」行動を起こしました。この活動は、女性感染者が少しずつマフラーを編んで、次々にリレーし、長いマフラーを編んでいく活動です。編んでリレーすることを通じて「生命の意義を次々に伝え、女性感染者がさらに高い質の生活を追求する願いを示し、普遍的に存在している感染者に対する差別と偏見を変える」という主旨だそうです。東部・南部・西部・中部の四つの方面から同時に織り始め、昨年11月、「エイズと芸術展覧および招待会」で披露されました(7)

 また、今年2月には、「ピンク色空間性文化発展センター(粉色空間性文化発展中心)」と共同で、『蒲公英通訊』(PDFファイル)という機関誌も発行しました。

2.「中国女性抗エイズネットワーク」の準備グループ

 今年2月、「中国女性抗エイズネットワーク(中国女性抗艾網絡)」の第1回準備会議がおこなわれ、全国各地から、女性のエイズ感染者だけでなく、多数の専門家の顧問が集まりました。

 このネットワークは、上記の「タンポポ女性~」を基礎にしつつも、「主な目標」として、「女性感染者と女性組織を成長させ、女性の代表性と参与度を高め、女性感染者の地位を向上させ、政策を推進すること」を掲げています(8)

 中国のエイズ対策では、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」(HP日本語による説明)の国内委員会である「国別調整メカニズム(Country Coordinating Mechanism[CCM])」が大きな役割を果たしています。しかし、今年3月の武漢での会議(9)に参加した225名のうち、女性は40名にすぎず、その中で女性と子どもの利益を代表して参加したのは、5名前後だけでした。

 そこで、「中国女性抗エイズネットワーク準備グループ」は、セックスワーカーのために性病防止活動をしている「青島姐妹行健康工作組(10)と共同で、女性の感染者や女性組織がより多く参与できるように、選挙の規則を改善するように4つの提案をおこないました。

 それらの提案うち、2つは採択(2/3の賛成が必要)されましたが、残りの2つは採択されませんでした。採択されたのは、原則的・奨励的な提案(「代表には、一定の比率の女性を確保する」など)であり、採択されなかったのは、具体的に女性枠を「〇人以上」などと決める提案でした。参加者からは、「女性は能力によって競争すべきで、特別待遇を要求すべきでない」といった意見も出されたのですが、それに対して十分な反論が出来なかったとのことで、その点は今後の課題だということです。

 今後、選挙に向けて、「ジェンダーと発展ネットワーク」とも協力して、代表の選出方法を分析したり、女性を動員したり、ハンドブックを作成するなど、さまざまな活動をおこなっていくそうです(11)

[追記(2009.12.29)]
 2009年7月、「女性抗エイズネットワーク・中国」が設立されました(「『女性抗エイズネットワーク・中国』設立」)。

(1)中国のHIV感染者、過去10年で女性比が5倍に」人民網(日本語版)2008年10月21日、「女性のエイズ患者急増、10年間で5倍に―中国」レコードチャイナ2008年10月21日。もっとも、中国のエイズ統計については、感染者を過小に見積もっている疑いが強いと言われます。また、中国の場合、1990年代における河南省を中心とした売血政策による感染者が多いのが特徴ですが(ピエール・アスキ[山本知子訳]『中国の血』[文芸春秋 2006年]など参照)、売血による感染者には、女性も多いと考えられます。
 けれど、いずれにせよ、中国でも、近年、異性間性交渉、売買春による感染の比率が増加しているのは間違いないようです。
(2)"蒲公英”女性感染者組織正式宣布成立」(2007-03-08)何田田新浪博客、「“蒲公英”中国女性網絡聯盟簡介」(2007-10-16)中国紅絲帯網。なお、組織の名称が、後者では、「タンポポ中国女性ネットワーク」と改称されています。これは、恐らく、感染者以外のボランティアや専門家を含めた名称にしたたためではないかと思います。
(3)生命教科書 07十大健康英雄」南都週刊2007年12月4日。
(4)関于女性感染者組織的説明,兼回周筱[斌+貝]版主」(2007-03-19)何田田新浪博客
(5)(2)の「“蒲公英”中国女性網絡聯盟簡介」
(6)何田田「与艾滋戦闘:像蒲公英那様温暖世界」『蒲公英通訊』
(7)“紅囲巾”在行動:一条長囲巾正在女性感染者手中伝逓」(2008-03-08)、「把紅囲巾行動進行到底」(2008-03-26)、「艾滋感染者与芸術社区聯手反歧視」(2008-12-10)。いずれも何田田新浪博客より。
(8)中国女性抗艾網絡「中国女性抗艾網絡第一次籌備会議在北京召開」(2009-03-02)中国発展簡報網站
(9)武漢で、「第2期エイズ・結核・マラリア防止活動NGO会議」と「世界基金中国調整委員会改選選挙コミュニティ会議」の2つが連続して開催された。その2つの会議について言っている。
(10)イギリスのBarry―Martin財団の資金援助の下に、2006年に設立された。娯楽サービスの場で働く女性や流動女性を対象として、性病・婦人病治療などの医療サービスをおこなう。具体的には、青島大学医学院付属病院性健康センターで、HIVと梅毒の無料検査のほか、他の性病・婦人病についても、安価に治療を行っている。青島姐妹行健康工作組のサイトは、セックスワーカーに力点が置かれており、セックスワーカーの人権や互助活動に関する報告も収録されている。
(11)中国女性抗艾網絡籌備組「関于完善選挙規定促進女性参与的建議」(2009-03-02)中国発展簡報網站、「09年04月GAD聚会:从艾滋領域中的婦女参与到促進婦女参与CCM選挙」社会性別与発展在中国HP

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はtooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpまで。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード