2017-07

CAWネット・ジャパン解散、アジア女性労働者交流プログラム開催

今年6月、「CAWネット・ジャパン」から、「CAWネット・ジャパン解散についてのお知らせとお礼」という文書が届いた。

「CAW」とは、1981年に結成されたCommittee for Asian Women(アジア女性労働者委員会)の略称である。当時、韓国や台湾、東南アジア諸国のほとんどが独裁政権下にあり、労働運動は弾圧されていた。それらの国々の政権は、安い労働力を求める日本や欧米の資本を誘致するために外資を優遇する「自由貿易地域(輸出加工区)」を設けた。その中では、農村から出てきた多くの若い女性たちが「女工哀史」のような劣悪な労働条件で働かされていた。こうした状況を改善するためにCAWは結成された。当初はキリスト教団体中心だったが、のちに女性労働者自身の団体になったという。アジアに進出している多国籍企業の送り出し国である日本にも、CAWの活動に協力するために、1983年、塩沢美代子氏らが「アジア女子労働者交流センター」を設立した。

アジア女子労働者交流センターは、2000年に財政上の理由で事務所を閉じ(1)、規模を大幅に縮小しつつも、「CAWネット・ジャパン」としてアジアと日本の女性をつなぐ活動を続けてきた。しかし、今年度で活動の幕を閉じることになったのだという(2)

グローバリゼーションが女性(だけではないが)に与える影響がますます強まっている今日、CAWネット・ジャパンが解散せざるをえなくなったとは、たいへん残念だ。

「CAWネット・ジャパン解散についてのお知らせとお礼」の中は、以下のように書かれている。

[アジア女子労働者]交流センターはCAW(……)の創立メンバーの1つでもあり、アジアの仲間からは、何とか続けてほしいという強い要望も出されておりますが、若い協力者が少ない中でいつまでも活動を続けることは困難であり、団体としての区切りを付けておくべきと考えました。


「若い協力者が少ない」とあるが、社会運動の高齢化の影響がこうしたことにもあらわれているのだろうか?

私には詳しい事情はわからないが、もちろん他の要因も考えられる。

アジアにおけるグローバリゼーションと女性の問題に取り組む上で、今日、非常に大きな比重を占めるのは中国である。韓国や台湾、香港では、1980年代後半以降、労働者の運動が活発になり、賃金が次第に高くなったため、多国籍企業は、より安い労働力を求めて、工場を中国や東南アジアに工場を移していった。それによって、韓国や台湾、香港には失業や雇用の非正規化がもたらされるのだが、それと同時に、当時から始まった中国の改革開放政策もあって、中国の女性労働者が多国籍企業の搾取の対象になった。しかし、CAWは、中国の女性労働者と直接連帯することは難しく、香港のNGOを通じてつながるしかないというお話を以前うかがったことがある。こうした点にも運動の困難があるのかもしれない。

また、2000年にアジア女子労働者交流センターが事務所を閉じた際には、「会費やカンパの減少は、15年間に、アジアの民衆に連帯する多様な活動が生まれ、支援の志をもつ方々のお金が分散しているためでもあり、喜ぶべき現象の結果ともみられます」(3)とも述べられていた。今回もそうした面があるのかもしれない(というか、そういう面があってほしい)。

ニュースレター『アジアの仲間』・『CAWネットニュース』と中国・香港・台湾

「アジア女子労働者交流センター」のニュースレターであった『アジアの仲間』と「CAWネット・ジャパン」のニュースレターである『CAWネットニュース』は、韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インド、スリランカ、カンボジア、ネパール、シンガポールなど、さまざまなアジアの国々の女性労働者についての記事を掲載してきた(『アジアの仲間』については、記事の抜粋に解説を加えた、広木道子著、塩沢美代子監修『アジアに生きる女性たち 女性労働者との交流十五年』[ドメス出版 1999年]という本も出版されている)。

『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』は、台湾・香港・中国の女性労働者のニュースも数多く掲載している。この点については、私が作成した「『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』の中国関係記事一覧」をご覧いただきたいが、最近も、たとえば、「台湾で働くフィリピン人移住労働者 労働者の権利より仕事の機会?」CAWネットニュース第26号(2009年1月)とか、「香港・スーパーマーケットで販売促進の女性を組織化」第36号(2012年6月)といった記事を掲載している。中国本土についても、アジア労働資料センター(AMRC)発行のパンフレット「Voice from Below~China’s Accession to WTO and Chinese Workers」を翻訳した「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く」を連載している[(1) (2)(3)(4)(5)(6)(7)](2011年4月~2013年2月)。

『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』は、日本語情報の少ないアジアの女性労働者の状態と運動についての貴重な情報発信だったと言える。

『アジアの仲間』は合本もあり、私も持っているが、現在は品切れのようだ。『アジアの仲間』や『CAWネットニュース』は、所蔵している図書館も多くない。可能な箇所については、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)でやっているように、PDF化して公開する方法もあるかもしれないと思う(WANのミニコミ電子図書館に収録する手もあろう)。もちろん『アジアの仲間』については、『アジアに生きる女性たち 女性労働者との交流十五年』の著作権の問題もあるし、そのほかプライバシーなどの面で細心の注意が必要であるが……。

「アジア女性労働者交流プログラム~韓国・香港・インド・日本~」

CAWネット・ジャパン最後の取り組みとして、「アジア女性労働者交流プログラム」を開催することになったという。そのチラシは、こちら(PDF)からダウンロードできるが、以下のような催しである。

この秋、韓国、香港、インドと日本の女性労働者が集まり交流プログラムを開催します。

アジア諸国の工業化の先駆けとなった韓国、香港では、工場女性労働者がその最先端で働き、経済発展に大きく貢献してきました。

今、そうした女性たちの多くは非正規雇用化が進むサービス産業で、低賃金と雇用不安という問題を抱えて働いています。今後の成長が期待されているインドでは、その大半がインフォーマルな仕事についている反面、グローバル化の下での産業構造の変化により、特に若い労働者の働き方に変化が起きています。

日本では、労働規制緩和が急速に進む中で、女性たちの雇用はますます不安定なものになり貧困が広がっています。アジアの女性たちと共通の問題を話し合い、経験交流を深め、困難な中でこれまで築き上げてきた運動を未来につなげていきたいと、国内の女性労働者グループが集まり、実行委員会を作ってプログラムに取り組んでいます。

プログラムのテーマ
 アジアの女性労働 現状と課題~今をつなぐ、未来につなげる~


具体的な話し合いのテーマ
 1) 女性非正規雇用の実態と 組織化の実践
 2) 若い女性の雇用問題と運動

10月27日(日)オープン・ミーティング
時間:13:30~17:00
場所:明治大学研究棟2F第9会議室
内容:4か国の参加者から、3分間ビデオの上映と各国の報告、意見交換など
資料代:500円 どなたでも参加できます


主催:アジア女性労働者交流プログラム実行委員会
 参加団体)アジア女性資料センター、均等待遇アクション21事務局、下町ユニオン、女性ユニオン東京、全労協女性委員会、働く女性の全国センター(ACW2)、プレカリアートユニオン、Labor Now、CAWネット・ジャパン

共催:明治大学労働教育メディア研究センター

事務局
〒359-1151所沢市若狭3-2555-15
CAWネット・ジャパン気付
Eメール awwc@japan.email.ne.jp

開催成功のためにカンパをお願いします!
*郵便口座番号 00100-9-186394
 加入者名 CAWネット・ジャパン
*1口1,000円 できれば2口以上お願いします。
*簡単な報告を「CAWネットニュース」No.40として年内に発行します。ご希望の方は払込用紙にその旨ご記入下さい。


「女性ユニオン東京」や「おんな労働組合(関西)」や「女性ユニオン東京」もCAWのメンバーなので、CAWネット・ジャパンの解散によって、日本がCAWと切れてしまうわけではないと思う。今回のシンポジウムを成功させて、これまでCAWネット・ジャパンが果たしてきた役割を継承する展望が開かれればいいと思う。

今回のシンポジウムに対しては、もちろん私もカンパした。催し自体にも行きたいと思うのだが……。

(1)その理由としては、「発足当時はアジア第3世界に関する活動ということで、WCC(世界キリスト教協議会)、CCA(アジアキリスト教協議会)、アメリカのキリスト教団体から、年間予算の半分近くの活動資金の援助がありましたが、円高により激減し、数年前からはすべて打ち切りとなりました。国内のカンパ・会費も大口だった方は退職されたり、亡くなったりで減少しております」「お知らせとお願い」(『アジアの仲間』第79号[1999.4]p.11)ということが述べられていた。
(2)予算規模を見てみると、「アジア女子労働者交流センター」の予算は、1985年度以降ずっと、おおよそ年間900万~1000万円程度だったのが、「CAWネット・ジャパン」は、2000年代半ばで150万円程度、2010年以降は90~100万円程度だった(『アジアの仲間』『CAWネットニュース』の各号より)。
(3)『アジアの仲間』第79号(1999.4)p.11

『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』の中国関係記事一覧

 前回の記事「アジア女子労働者交流センターとCAWネット・ジャパン」の続きです。
 アジア女子労働者交流センターの機関誌『アジアの仲間』と、それを引き継いだCAWネット・ジャパンの機関誌『CAWネットニュース』の中国(台湾・香港・中国本土)関係の記事を一覧表にまとめてみました。
 ここでは中国関係の単独の記事だけを抜き出してみましたが、これら以外にも多くの記事が中国に触れています。

 (短)と書いたのは、1ページの1/2~1/4程度の短い記事です。
 (再)と書いたのは、広木道子『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)に再録されているものです。

 『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』は品切れのようですが、多くの図書館にあります。『アジアの仲間』自体も、お茶の水女子大学は所蔵しているようです。また残部僅少ですが、CAWネットジャパンの出版物を紹介したページから合本も購入できます。また、『CAWネットジャパン・ニュース』は、あちこちの女性センター(男女共同参画推進センター)が所蔵しているようです(少なくとも京都の「ウイングス京都」にはあり)。

1.台湾

(1)『アジアの仲間』
「“安くて従順な労働力をどうぞ”─自由貿易地域を訪れて─」(塩沢美代子)第1号(1983.1)(再)
「一日二食で家に仕送り 日本企業の女子労働者の生活」第3号(1984.1)
「女子の深夜業禁止規定強化 工場法に変わり労基法制定」第8号(1985.4)
「高雄輸出加工区を再訪して」(遠野はるひ)第13号(1986.7)
「もう黙ってはいられない 台湾でバス車掌の闘い」第15号(1987.1)(短)
「台湾であいつぐ工場閉鎖 高雄では新白砂電機が撤退」(遠野はるひ)第29号(1990.7)
「女性労働者の詩 台湾の輸出加工区から」同上
「台湾の女性労働者は今」同上
「台湾で国際婦人デー 政府は『女性の日』制定へ」第32号(1991.4)(短)
「多発する女性労働問題 雇用の不安定や健康障害など」第36号(1992.1)
「労働法改悪反対・台湾 女性5000人がデモ行進」第44号(1993.4)(短)
「資本の海外進出は30年前の日本と同じやり方」(シューシャン)第45号(1993.6)
台湾研修ツアー特集号第46,47合併号(1993.10)
 「“女性が変われば社会が変わる”」
 「労働者教育にとりくむSFWW 中高年女性の雇用問題も深刻化」(広木道子)
 「柔軟でパワフルな女性運動 様々な課題に挑戦する『婦女新知』」(堀部ゆり子)
 「台所のゴミから地球環境へ ユニークな活動広げる主婦たち」(福原宇子)
 「公娼制度の裏側で 買春街に売られる少女たち」(柴洋子)
 「女性と子どものためのセンター 進歩的な女性知事の下で実現」(奈須恵子)
 「加工区の女性労働者と交流 企業撤退相つぎ労働者も半減」(川口和子)
 「<台湾ツアー印象記>社会変革めざす女性たちの輝き」
 「明けない夜はない」(塩沢美代子)
「工場閉鎖時の失業手当は絵に描いた餅」第49号(1994.2)(短)
「売上げ、受注の減少理由に日本企業の工場閉鎖」第68号(1997.6)
「相つぐ工場閉鎖と海外移転」(ファン・チウフン)同上(再)
「公娼制廃止は是か非か?」第68号(1998.2)(短)
「台湾の元『慰安婦』提訴へ」第81号(1999.8)(短)

(2)『CAWネットニュース』
「日系電子企業で工場に籠城する女性たち」第1号(2000.7)
「<台湾・実地調査研究(1)>インフォーマルセクターの女性」第13号(2004.7)
「<台湾・実地調査研究(2)>インフォーマルセクターの女性」第14号(2004.11)
「<台湾・実地調査研究(3)>インフォーマルセクターの女性」第15号(2005.5)
「<台湾・実地調査研究(4)>インフォーマルセクターの女性」第17号(2006.1)
「<台湾・実地調査研究(5)>インフォーマルセクターの女性」第18号(2006.5)
「<台湾・実地調査研究(6)>インフォーマルセクターの女性」第19号(2006.10)

2.香港

(1)『アジアの仲間』
「有害承知で新工程導入 10日間で196人ガス中毒 香港マブチモーター」(広木道子)第1号(1983.1)(再)
「頻発する労働災害 社会保障制度の確立が急務」第3号(1984.1)
「わずか四万円の罰金 マブチ社のガス中毒発生事件」同上
「中高年労働者に解雇手当 だが不安定雇用招く恐れも」第13号(1986.7)
「香港女性労働者の会設立 女性労働者の自覚促す」第30号(1990.10)(短)
香港・中国ツアー特集号第40,41合併号(1992.10)
 「安くて若い労働力求め香港から中国へ工場移転すすむ」
 「97年を目前にした香港社会と女性労働者の無権利状態」
 「ビルの中のジーンズ工場 ブランド品つくる女性労働者」(島岡弘子)
 「平等掲げ国際婦人デー 働く母親・失業女性を支援」(福原宇子)
 「新興住宅街の核家族支える主婦達のボランティア活動」(立中修子)
 「虐待された女性のシェルター 閉ざされた心開くオアシス」(山口祐子)
 「アジアの出稼ぎ労働者 組合つくって働く権利守る」(矢島由利)
 「私たちが見た香港・中国の『明』と『暗』」
「製造業からサービス業へ 増えているパートや日給労働者」(スーヒン)第45号(1993.6)
「女性差別撤廃条約批准求める女性たち」第48号(1993.12)(短)
「安全憲章を認め玩具労働者の安全守れ」第57号(1995.7)(短)
「香港の外国人労働者 85%が家事・育児に従事」第60号(1995.12)
「衣料産業の中国移転と女性労働者の大量失業」第68号(1997.6)(再)
「差別の壁厚いサービス産業」(チャン・イユチュン)同上
「家事労働者保護の法改正」第71号(1997.12)(短)
「香港女性おそう失業と不完全就業」(プンニャイ)第78号(1999.2)
「民営化された香港の清掃労働 労働条件低下まねく請負い制度」第82号(1999.10)

(2)『CAWネットニュース』
「香港・キャセイ航空 性差別控訴に敗訴」第6号(2002.2)
「香港・家事労働者組合 4・18条項を打ち破り、非正規労働者に権利を!」第10号(2003.7)
「香港・公共団地清掃労働者の一日」第11号(2003.11)

3.中国本土

(1)『アジアの仲間』
香港・中国ツアー特集号第40,41合併号(1992.10)
 「“時はカネ 効率はイノチ” 『香港化』めざして猛進」(澤田幸子)
 「男女平等、産休は七カ月 経済発展に貢献する女性たち」(黒岩容子)
 「私たちが見た香港・中国の『明』と『暗』」
「中国・深圳で、工場火災」第48号(1993.12)(短)
「靴工場のベンジン中毒で女性労働者が死亡・中国」第51号(1994.6)(短)
「中国・玩具工場の労働事情(1) 相つぐ工場災害 脅かされる命と健康」第65号(1996.12)
「同(2) 工場火災で多数の犠牲者 1日平均12時間労働」第66号(1997.2)
「同(3) 工場への保証金納めなお不安定な女性の雇用」第67号(1997.4)
「同(4) 工場火災の悲劇教訓に “玩具の安全生産のための憲章を”」第69・70号(1997.10)
「中国・ジリ玩具工場火災から4年─ある女性労働者のたたかい─」第73号(1998.4)
「中国のディズニー製造工場で労働者の人権侵害明るみに」第81号(1999.8)

(2)『CAWネットニュース』
「中国・深圳の工業区を訪ねて 消費者として何ができるか」(深沢三穂子)第3号(2001.3)
「若い出稼ぎ女性とともに 中国女性労働者ネットワーク」第18号(2006.5)
(中国の移住労働者 ツァンさんの話)「9つの工場での暮らし」(1)第19号(2006.10)

全体として――台湾や香港から中国本土への工場の移転、女性の雇用の非正規化

 全体としてみると、1990年頃に台湾や香港から中国本土への工場の移転がすすんだことが、それぞれの地の女性労働者に大きな影響を与えていることがわかります。
 この点について、広木道子『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)は以下のように述べています(31-32頁)。
 「[19]87年には台湾で戒厳令も解かれ‥‥東アジアでは労働者の運動も活発になり、賃金も相対的に高くなって、国際競争力が低下し、80年代後半には、外資企業が次つぎと撤退をはじめ、より安い労働力を求めて東南アジアや中国に移っていきました。もちろん日本企業も例外ではありません。」
 「こうした資本の動きは、とりわけ製造業で働く女性労働者に大きな影響を与えました。国の輸出産業の担い手として、低賃金・長時間労働に耐えてきた東アジアの女性たちは、工場閉鎖や海外移転とともに解雇され、職を失いました。とくに香港の中国返還を前に、中国への工場移転が進んだ香港では、膨大な数の女性労働者が職を奪われ、とくに中高年の女性たちは、性差別に加え、教育レベルや年齢制限という厚い壁に阻まれて、サービス産業などへの再就職はむずかしく、仕事さがしに苦労しています。」 

 その一方、1990年代半ば以降中国本土の記事が増えていることに示されるように、中国本土が、かつての韓国や台湾などと同じように、独裁政権の下で外資を優遇する「輸出加工区」において農村から出てきた若い女性が劣悪な労働条件で働かされるという状況になっているわけです。

 また、以上のこととも関連して、どの地域でも女性の雇用の非正規化、インフォーマル化が大きな問題になっていることもわかります。

 前回と今回の記事は私のHPの中の「『アジアの仲間』と『CAWネット・ジャパンニュース』の中国関係記事一覧」に収めておきました。

アジア女子労働者交流センターとCAWネット・ジャパン

 いま私は、「アジア女子労働者交流センター」の機関誌『アジアの仲間』(1~84号。1983.10~2000.3)の合本を読んでいます。
 『アジアの仲間』は毎号8~12ページありますので、合計で約700ページに活字がぎっしり詰まっています。

 また、あわせて塩沢美代子監修、広木道子著『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)も読んでいます。
 この本は、上の『アジアの仲間』の記事の抜粋に解説を加えることをつうじて、アジア女子労働者交流センターの歴史を記述した書物です。監修の塩沢美代子さんの言うとおり、「その活動記録は、そのまま過去二十年あまりのアジアの女子労働者の状況を示しており」、「アジア第三世界の工場労働を主とする、下積みの職場で働く女性たちの実態に焦点をあてたものは、本書が初めて」とも言えるものです。

 『アジアに生きる女たち』は品切れのようですが、『アジアの仲間』の合本は僅少ながら残部があるようです(前者は図書館に多く所蔵されており、後者もお茶の水女子大学などは所蔵しているようです)。
 以下では、この2冊にもとづいて、アジア女子労働者交流センターの歴史を説明してみます。

 アジア女子労働者交流センターは塩沢美代子さんが所長となり、1983年5月に発足しました。
 当時は、韓国や台湾、東南アジア諸国のほとんどが独裁政権下であり、労働運動は弾圧されていました。それらの政権は、安い労働力を求める日本や欧米の資本を誘致し、そのために外資を優遇する「自由貿易地域(輸出加工区)」を設けました。その中では、農村から出てきた多くの若い女性が「女工哀史」のような劣悪な労働条件で働かされていました。
 こうした状況に対し、アジアやアメリカのキリスト教団体が1981年にアジア女性労働者委員会(=CAW。Committee for Asian Women)を結成して、女性労働者の問題に取り組みはじめます(事務所は、最初は香港、現在はバンコクに置かれている)。そして、アジアに進出した多国籍企業の送り出し国・日本にも、CAWの活動に協力するために「アジア女子労働者交流センター」が設立されたのです。
 CAWは最初は各国の女性労働者の活動を外部から支援する団体でした。しかし、1980年代半ばを過ぎ、アジア各国の独裁政権に対する民主化運動の広がりとともに各国に女性労働者自身の組織が設立されると、彼女たち自身の団体になっていきます。すなわちCAWはネットワーク・グループになり、日本からは、「アジア女子労働者交流センター」「女の労働わくわく講座」「女ユニオン神奈川」「おんな労働組合(関西)」の4団体が登録します。

 アジア女子労働者交流センターは、以下のような活動をすすめました。
(1)アジアの女性を日本に招いておこなう交流プログラム。
(2)アジアに行ってアジアの女性に学び、交流する研修ツアー。
(3)アジアの問題を伝える情報・出版活動。『アジアの仲間』の発行もこの一環です。
(4)アジアに影響を及ぼす日本の国内問題に対する取り組み。具体的には、教科書検定や女性の深夜・時間外労働規制撤廃に対する抗議活動など。

 『アジアの仲間』や『アジアに生きる女たち』は、アジアの女性労働運動の歴史を語るうえで必読だと思います。アジアの女性労働者の状態(の変化)を知るための、日本語で読める資料としても(日本語で読めるようにして日本の人々に伝えること自体が大切な運動です)、とても貴重です。

 『アジアの仲間』は、韓国やフィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インドなどのほか、香港や台湾、中国のこともしばしば取り上げています。
 たとえば創刊号は、日本のマブチモーターの香港の子会社「萬宝至実業」が、有害を承知で新工程を導入した結果、196人(うち195人は女性。13人は妊婦)の労働者が有毒ガスを吸い込んで病院に収容されたことを大きく伝えています。また、この記事は、香港では事件が連日報道されているのに、日本ではほとんど報道されないことも問題にしています。
 1993年の深圳の致麗玩具工場の火災の頃からは、中国本土のことも取り上げるようになりました。

 けれども、センターは財政上の限界で、2000年3月に事務所を閉じます。発足当時はアジアの第三世界に関する活動ということで、世界のキリスト教団体からの活動資金の援助があったのですが、それが円高により激減、打ち切りになりました。
 また、国内のカンパ・会費も、大口の人は退職したり、亡くなったりで減少しました。
 「カンパや会費の減少は、アジアの民衆に連帯する多様な活動が生まれ、支援の志を持つ人のお金が分散しているためでもある」とのことですが、残念なことには変わりありません。

 もっともセンターの事務所を閉鎖した後も、「CAWネット・ジャパン」という形で活動は継続されています。
 現在、日本からCAWに登録しているのは、「旧アジア女子労働者交流センター」と「おんな労働組合(関西)」に加えて、「女性ユニオン東京」です。
 けれど、やはり財政規模などは、以前と比べると小さくなっているようです。

 近年、中国本土も市場経済化が進んでグローバリゼーションに巻き込まれ、日中の経済的関係はいっそう緊密化しました。日本の私たちの生活は、労働者としても、消費者としても、中国を含めたアジアの女性労働者の状態とは関係はきわめて密接になっています。ですから、私たちとアジアの女性労働者とが連帯することは、ますます重要になっていると思います。
 最近は大学などで「グローバリゼーションとジェンダー」というテーマが盛んに論じられています。また、「ナショナリズムとジェンダー」との関係は近年のジェンダー論の中心的テーマの一つであり、「ナショナリズムを乗り越える」ことは大きな課題だと説かれています。

 それなのに、CAWネット・ジャパンのような運動はまだ小さいというえに、かつてよりも規模が縮小しているというのは、とてもおかしいと思うのです。
 日本で労働運動をしている人々や中国研究者・ジェンダー研究者、さらには何よりも大切な労働者自身(多くの日本人は多かれ少なかれ労働者)から、もっともっとCAWネット・ジャパンに参加や協力があってしかるべきなのではないでしょうか?

 遅ればせながら私も昨年、CAWネット・ジャパンに入りました。
 私は会費やカンパを払い、機関誌を読むくらいのことしかできていませんが、より多くの人々の入会や協力を訴えたいと思います。
 ここにCAWネット・ジャパンの現在の活動や財政、連絡先について詳しく書いてありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次回は、『アジアの仲間』と『CAWネット・ジャパンニュース』で、中国の女性の問題を取り上げた記事を一覧にしてみたいと思います。

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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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