2017-10

公共トイレの男女の便器数の不公平是正を求める運動の2014年以降の展開

 はじめに――2012年、2013年の運動 
 一 2014年世界トイレの日:李麦子ら、「都市公共トイレ設計基準」に男女の便器比率を1:2にする強制的な規定導入を求める書簡
 二 2015年2~3月:全人代の代表や全国政協の委員への働きかけの広がりとフェミニスト5女性の刑事拘留
 三 2015年世界トイレの日:観光地のトイレ整備計画に便器比率におけるジェンダーの視点を求める建議
 四 2016年青年節:8大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙
 おわりに――運動の継続、新しい参加者

はじめに――2012年、2013年の運動

行動派フェミニスト(女権主義行動派)の活動が最初に広く知られたのは、2012年2月~3月に全国各地でおこなわれた「男子トイレ占拠」のときであろう。

中国では(も)、公共トイレの便器数が男女の生理的差異などを十分考慮せずに決められているため、女子トイレの前にはしばしば行列ができる。それに対して、李麦子さん・鄭楚然さんをはじめとした女子大学生が、広州市の越秀公園近くの男性トイレを一時的に占拠し、行列を作って待っている女性に男性トイレを使用してもらうパフォーマンスアートをおこなって、女性トイレ不足の解決を訴えた。その後、全国各地の女子大学生たちが同様のアクションをおこなった。

また、李さんと鄭さんは女子トイレを増設する提案を微博やメールを使って全国人民代表大会(全人代)の代表や全国政治協商会議(全国政協)の委員(いずれも日本で言う議員)を送り、全人代などに提出してもらった(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」 「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」)。

さらに、2012年の世界トイレの日(11月19日)には、女子学生の増加が著しい全国の12の師範大学(北京師範大学、天津師範大学、河南師範大学、広州第二師範大学、華中師範大学、信陽師範大学、杭州師範大学、重慶師範大学、江西師範大学、西北師範大学、陝西師範大学、新疆師範大学)で、各大学の女子学生が、女子トイレ増設を要望する手紙を学長に送り、いくつかの大学から増設するという回答を得た。また、2013年の世界トイレの日には、13都市の女子大学生らがそれぞれの都市のケンタッキーとマクドナルドの店舗にユニセックストイレ設置を求める手紙を出した(本ブログの記事「全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙」、「世界トイレの日に、13都市の女子大学生らがケンタッキーとマクドナルドの各店舗にユニセックストイレ設置を求める手紙を出す」)。

こうした動きに対して、衛生部(医療や衛生を担当する省)も、2013年2月、「公共トイレ衛生基準」の意見募集稿において、男女の便器の比率を1:2にすると定めた。それに対しても彼女たちは、同年7月、全国9都市の公共トイレの便器の状況を調査し、現状ではむしろ男性用便器の方が多いので、衛生部の「基準」に強制性を持たせるべきことなどを訴えた(本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループ、9都市の公共トイレの便器数の男女比の調査報告発表」参照)。

「男子トイレ占拠」で有名になった彼女たちだが、その後は、彼女たちの労働や教育における女性差別、女性に対する性暴力に関する活動がより注目されるようになった。

しかし、2014年以後も、公共トイレの問題についての運動は続いている。そして、2015年2~3月に李麦子さん、鄭楚然さんを含むフェミニスト活動家5女性が刑事拘留されるという弾圧にあって以後も、運動は続いている。今回は、そのことについてご紹介したい。

一 2014年世界トイレの日:李麦子ら、「都市公共トイレ設計基準」に男女の便器比率を1:2にする強制的な規定を求める書簡

2014年の世界トイレの日には、「都市公共トイレ設計基準」の男女の便器比率を1対2にすることを強制的な規定にするために、李麦子さんは、12都市(北京・西安・蘭州・杭州・寧波・重慶・東莞・武漢・広州・昆明・韶関・香港など)の23名の大学生や設計師とともに、中華人民共和国住宅・都市農村建設部と各地の住宅・都市農村建設委員会に建議の手紙を出した。

この活動に参加した、蘭州で都市計画を専攻している女子大学生の小雨さんは、「昨年2月の『都市公共トイレ設計基準(意見募集稿)』は、『公共トイレのサービス地区の男女の人数がほぼ同じならば、男女の便器の比率は1:2とするのが適当である』と言っていますが、強制力がないために批判されています。もし強制しないならば、女子トイレの増設はやってもやらなくてもいいことになってしまいます」と話した(1)

この建議に対しては、各地の住宅・都市農村建設委員会からも、必ずしもすぐに改善するという内容ではないが、何通か返信が届いた(2)

二 2015年2~3月:全人代の代表や全国政協の委員への働きかけの広がりとフェミニスト5女性の刑事拘留

2014年2月には、李麦子さんが微博で呼びかけて、100人あまりの女子大学生や若い女性が、300人余りの全人代の女性代表に対して、女性用便器不足の問題を取り上げるように郵便やメールで訴えた。

この活動に参加した北京の大学二年生の林さんは、冬休みの期間を利用して、100人余りの代表の連絡先を調べた。中国の全人代の代表(議員)は、日本の国会議員と違って専業ではなく、議員事務所があるわけではない。それでも代表が教授や企業家の場合は調べやすかったが、公務員の場合は調べるのが難しかったという。

代表からの返事は、「受け取りました」という簡単なものが大半だったが、取り上げるとか、参考にするといった積極的な回答も2通あった(3)

2015年にも、154人の女子大学生などの若い女性たちが、全人代の代表や全国政協の委員らに対して、女性用便器不足の問題を取り上げるように訴えた(4)

すなわち、2012年には李麦子さんと鄭楚然さんの2人でやった全人代の代表などへの働きかけが、2014年、2015年には100人、150人の運動へと広がったのである。

しかし、同年3月6日から7日にかけて、李麦子さんと鄭楚然さんを含む5人のフェミニスト活動家(フェミニスト五姉妹)が刑事拘留されるという弾圧にあう。

ところで、この年の全国政協では北京大学中文系教授の葛暁音さんが「公共トイレ建設における女性トイレ比率向上に関する提案」を出したのだが、この提案は、上述の154人が出した提案にもとづくものだったのだ(5)

つまり、全国政協で公共トイレの女性トイレ便器比率の向上が提案されたのに、そのような提案活動をしてきた李さんや鄭さんたちは獄中にいるという皮肉な事態になり、女性たちの中から批判の声が上がった。

また、4月29日付けの「女権の声」の微博は、「男子トイレ占拠」から3年にして、北京市が全市の公共トイレについて、新しい基準にもとづいて、女性便器の数を2倍にする見込みであることを伝えた(6)。こうした事態も、5人の刑事拘留の不当性を浮かび上がらせたと言えよう。

5人は4月13日に釈放された。しかし、「フェミニスト五姉妹の釈放は、けっして弾圧の終わりではなかった。彼女たちは現在に至るまで本当の自由を取り戻していないというだけでなく、恐怖と混乱によって、フェミニズムアクティビズムの活動空間全体が大きく縮小された。街頭での活動はストップし、講座やシンポジウムにも中止されたものがある。一部の参加者は運動から退き、多くの人はもうNGOには加入しなくなった。中国のフェミニズムアクティビズムは衰えた」(呂頻)(7)

しかし、李さんらも若い中国のフェミニストも、トイレの問題に関する活動をストップしたわけではない。

三 2015年世界トイレの日:観光地のトイレ整備計画に便器比率におけるジェンダーの視点を求める建議

観光地の女性トイレに行列ができることは、中国でもよくある。

2015年4月6日、中華人民共和国国家観光局は、「全国観光トイレ建設管理行動3カ年計画」を発表し、2015年から2017年までの間に全国で5万7000カ所の観光トイレを新築ないし増築するとした。しかし、この計画は、男女の便器の比率には全く触れていなかった(8)

そこで、2015年の世界トイレの日、李麦子さんは、10都市あまりのジェンダー平等に関心を持っている人と連名で、観光地の女子トイレの比率を高めるとともに、ユニセックストイレの増設を求める書簡を国家観光局に出した(9)

この書簡は、「『全国観光トイレ建設管理3カ年行動計画』を完全なものにし、女性便器の比率を高め、ユニセックストイレを増設する建議」と題するもので、具体的には、以下の点を要求していた。

1.「行動計画」の中に、以下についての強制的な規定を入れること。公共トイレの女性用便器(しゃがみ込み式、腰掛式)と男性用便器(しゃがみ込み式、腰掛式、小便器)の比率は必ず2:1に達していなければならず、そのうち女子トイレと男子トイレのしゃがみ込み(腰掛)式の比率は必ず4:1に達していなければならず、女子トイレの面積も必ずそれに応じて増やさなければならない。

2. 「行動計画」の中で、公共トイレについては、必ずバリアフリートイレを増設するとともに、適切にユニセックストイレを増設しなければならないと規定すること。

3. 「行動計画」の中で、公共トイレの審査・許可、および検査の上で納品する制度を規定し、各地の観光管理部門がきちんと執行するよう要求すること(10)

四 2016年青年節:8大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙

2016年5月4日の青年節(五四運動を記念して定められた日)には、8大学(陝西師範大学・遼寧師範大学・北京師範大学・広州大学・広州工業大学・南京財経大学・鄭州大学・汕頭大学(11))で、女子学生たちがそれぞれの学長へ手紙を出す活動をおこなった。それらの手紙は、大学の男女の便器の比率を変えて女子トイレを増やしたり、ユニセックストイレを増設するなどして、女子学生の長期にわたるトイレ難の問題を解決することを求めるものだった。

さらに、彼女たちは、大学の学内や校門前で、手に「トイレの比率は2:1、そうでなければ女子学生は待ち切れない」と書いた紙を持っている写真を公表した(12)。この活動を報じた微博の記事には、陝西師範大学・遼寧師範大学・広州大学・広州工業大学・南京財経大学での活動の写真が掲載されている(13)

青年節の日に行動を起こした理由について、広州大学の蔡さんは、「公共空間において女性が権利を勝ち取らなければならないというだけでなく、より重要なのは、私たちは若い女性として、若い女性という形象でフェミニズムのために行動をすることだった」と述べた(14)

今回の活動の呼びかけ人は、陝西師範大学の在如さんだ。在如さんは、ずっとフェミニズムに関心を持っていたが、卒業する前にこの問題を何とかしなければならないと思った。在如さんは、かつて女子トイレが満員だったために、やむをえず男子トイレに入ったこともあり、この件はもう猶予できないと考えていた。在如さんは、自分の大学のトイレの情況について実地に調べてみた。在如さんが調べたところ、「私たちの大学は師範大学で、女子学生の方が男子学生よりはるかに多く、わが校の公式微信によると、2015年の男女の学生の比率は3:7であるのに、男女の便器の比率は基本的に1:1です。授業が終わると、女子トイレの入り口には長い列ができるのに、男子トイレにはほとんど人がいません」とのことだ。

在如さんは、同じような情況の大学の学生たちに対しても、学長に手紙を出す活動をしようと呼びかけたところ、8つの大学から応える声が上がった(15)

活動に参加者した北京師範大学の張雪莉さんは、「2年前に私たちの大学では、女子学生が学長に女子トイレを増やすよう求める手紙を出したので、2つの教学楼でトイレを3:1の比率にしました。けれど、私は先日、ある教学楼ではまた元に戻したことを発見しました。私もいつもトイレに並んでいるので、本当にもう待ちきれません」と語った。

「男子トイレ占拠」の呼びかけ人である李麦子さんは、「トイレは大学にはなくてはならない教育施設なので、大学の男女の便器の不合理さの問題は、実は教育資源の分配の不合理さの問題であり、女性の平等な教育権に関わる問題なのです。2012年から今までに、多くの大学が改革をしました。一部の男子トイレを女子トイレに改造した大学もありますし、教師の休憩室を女子トイレに改造した大学もあります。これはどちらもよい手本であり、各地の大学も参考にできます」と語った(16)

今回活動がおこなわれた8大学のうち、北京師範大学と陝西師範大学は、2012年の世界トイレの日にも活動がおこなわれている。しかし、他の大学は、2012年とは異なっている。2012年当時の学生はおおむね卒業しているであろうことから考えても、2016年の活動は新たな担い手によって進められたのだろう。

成果

2012年と同様に、今回もいくつかの大学で成果を収めた。

この行動によって、1カ月も経たない間に便器の比率が変わったのは広州大学だ。

広州大学では、ジェンダー/セクシュアリティの問題に取り組んでいる「Gスポットグループ(G点小組)」の4人の女子学生が、学長に手紙を出して、大学の男女のトイレの比率を1:2にするように訴えた。

この行動を呼びかけた菜菜さん(仮名)らが、広州大学の2つの文科の教学楼の男女の便器の比率を計算したところ、だいたい1:1であり、1:1.5という規定にも達していなかった。まして、文科の教学楼では女子学生はもっと多いので、女子トイレに対するニーズはもっと高いはずだ。そこで、菜菜さんは、広州大学の最近3年間の学生募集の男女比率を調べるとともに、大学の各学院の男女の比率も調べた。すると、4つの学院では女子学生の比率が80%を超えており、それらはすべて文科専攻だった。こうした調査を経て、菜菜さんらは、学長に手紙を出したのだった。

約2週間後、菜菜さんは、広州大学の学長の事務局と後方勤務部から電話で、「便器の比率を調整するというプランを試行する」という回答を受け取った。具体的には、6つの男子トイレを女子トイレに改造して、6月から使用できるようにするということだった。

他にも、陝西師範大学と遼寧師範大学で、大学当局からトイレの改築をおこなうという回答があった(17)

陝西師範大学では、5月17日、在如さんと後方勤務部、学校の各学院の学生工作部の書記が便器の比率の計画について協議をした。5月20日には、大学は「雁塔校区の一部の教学楼のトイレの調整プラン」を発表し、男子トイレを女子トイレに改造して、これまでは男女の便器の比率が3:2だったのを、1:2に変えるとした。

遼寧師範大学では、鐲子さんが学院の党総書記と話をした。党総書記は「男女のトイレの比率の問題と調整の問題は夏休みの計画に入れる。大学は学生が理にかなった提案をすることを奨励するし、理にかなった提案は積極的に取り入れたい」と述べた。

南京財経大学の維尼さん本人には大学から回答が来ていない。しかし、ある日、教学楼で、後方勤務部の職員と警備の職員と不動産の職員がいっしょにトイレの状況を調査して、彼らはトイレを改造することに関してしゃべっていることが目撃された。

ただし、広州工業大学の阿思さん、汕頭大学の春暁さん、鄭州大学の木木さん、北京師範大学の張雪莉さんには、現在(5月下旬時点)、まだ大学からの回答などはない(18)

広州大学での運動の成果は、地元の『羊城晩報』でも報道された(19)

ユニセックストイレ

上述のようにユニセックストイレの設置も要求されているが、とくに最近はそれがトランスジェンダーの問題としてもしっかり論じられるようになったと感じる。

李麦子さんは、「大学でもユニセックストイレを増設してはどうかと思います。なぜなら、男子トイレと女子トイレという二元的区分は、セクシュアルマイノリティの一部にはフレンドリーではなく、彼/彼女がトイレを選択しようとしても、選択しようがないからです。それに、ユニセックストイレを設置したら、女子トイレには長い行列ができるのに、男子トイレは誰も使っていないという状況をなくせるからです。だから、ユニセックストイレは将来の趨勢でもあります」と述べている(20)

李雪莉さんも、「私たちは女子学生のトイレ難についてだけでなく、大学には一般にユニセックストイレがなく、バリアフリートイレもないことにも注意し、解決しなければならない」と述べている。

李雪莉さんは「実際には人は2つの性別があるだけでなく、トランスジェンダーもいる。トランスジェンダーは、性別と関係する公共施設を使うときに困惑を感じる。たとえば、MtFとFtMのトランスジェンダーは、男が女装することもあり、女が男装することもあるので、トイレに行くときに、周囲の人が困惑したりフレンドリーでなかったりするし、セクハラや痴漢だと言われることもある」と述べている。

ただし、大学側はユニセックストイレには、まだ消極的なようだ。

在如さんは、少なからぬ人がユニセックストイレに対する要求を持っていることは知っていたが、女子トレイ不足の問題という厄介な問題をまず解決したかったので、手紙にはそれは書かなかったという。しかし、彼女たちが大学の指導部との面会したときには、ユニセックストイレについても議論した。大学は、ユニセックストイレについてもプランに書くとしたら、過激すぎると言った。すなわち、ユニセックストイレには良いところもあるけれども、大学に圧力がかかる(?)かもしれないし、ユニセックストイレだと男女の間、あるいはさまざまな性別の間でセクハラの問題が起きるかもしれないので、しばらく棚上げにすると話したという(21)

おわりに――運動の継続、新しい参加者

以上をまとめると、まず、2014年、2015年と、全人代などの代表への働きかけに参加する人数は広がっていたことがわかる。

フェミニスト活動家の刑事拘留事件の後は、活動の規模は縮小したが、世界トイレの日の活動に見られるように、運動は継続されている。

とくに2016年には、2012年の12大学には及ばないまでも、8大学で学長への手紙や写真での要求のアピールがなされ、成果も上がっている。これは、街頭での活動でこそないものの、全国一斉の(ネットでなく)実地での活動であり、新しい人々による活動の広がりを示すものであるように思われる。

(1)女权之声的微博【厕位比例2:1,否则女生等不及!建议住建部强制比例】2014年11月19日 11:57
(2)麦子家的微博【占领男厕所两周年,各地建设部门对于扩建女厕的回复。】2015年2月24日 20:55
(3)百名女大学生上书两会代表:希望解决女性如厕难」『北京晚报』2014年3月6日 16:47
(4)女代表女委员关注公厕改革 不能对女厕排长队习以为常」『中国婦女報』2015年3月14日。
(5)同上。
(6)女权之声【“占领男厕所”3年了,北京市公厕女性厕位数有望翻倍】2015年4月29日 11:58。
(7)Lu Pin“Critical Mass? On the Perilous Point”Free Chinese Feminist2016.1.31.
(8)关于印发《全国旅游厕所建设管理三年行动计划》的通知旅办发﹝2015﹞ 78号」中华人民共和国国家旅游局2015年4月8日。
(9)麦子家的微博 2015年11月18日 19:32
(10)关于完善《全国旅游厕所建设管理三年行动计划》,提高女厕位比例、增设无性别厕所的建议」问道网。
(11)この大学名については、「学校真随意,男厕所说改就改?还记得青年节致信校长的那些大学生吗」(女权之声的微博2016年5月25日 15:48)にもとづく。
(12)女权行动派吃不完「8所高校女生致信校长呼吁增加女厕比例,增设无性别厕所」女权之声的微博2016年5月4日 15:25:51。
(13)同上および「学校真随意,男厕所说改就改?还记得青年节致信校长的那些大学生吗」(女权之声的微博2016年5月25日 15:48)。
(14)男女比例失衡4女生致信校长改厕所 广大6男厕改为女厕」金羊网2016年5月30日 16:17、
(15)以上は、「中国式厕所风波」自由亚洲电台(RFA)2016年6月3日、女权行动派吃不完「8所高校女生致信校长呼吁增加女厕比例,增设无性别厕所」女权之声的微博2016年5月4日 15:25:51。
(16)以上は、女权行动派吃不完「8所高校女生致信校长呼吁增加女厕比例,增设无性别厕所」女权之声的微博2016年5月4日 15:25:51。
(17)以上は、「女权青年在行动:一封信,让男厕变女厕!」新媒体女性的微博 2016年5月25日、「男女比例失衡4女生致信校长改厕所 广大6男厕改为女厕」金羊网2016年5月30日 16:17、「广大4女生致信校长“改”厕所 校方回应:文科楼6男厕改女厕,6月1日启用」『羊城晚报』2016年6月1日。「广大4女生致信校长“改”厕所 校方回应:文科楼6男厕改女厕,6月1日启用」『羊城晚报』2016年6月1日。
(18)学校真随意,男厕所说改就改?还记得青年节致信校长的那些大学生吗」(女权之声的微博2016年5月25日 15:48)にもとづく。
(19)广大4女生致信校长“改”厕所 校方回应:文科楼6男厕改女厕,6月1日启用」『羊城晚报』2016年6月1日。
(20)女权行动派吃不完「8所高校女生致信校长呼吁增加女厕比例,增设无性别厕所」女权之声的微博2016年5月4日 15:25:51。
(21)以上は、「中国式厕所风波」自由亚洲电台(RFA)2016年6月3日。

世界トイレの日に、13都市の女子大学生らがケンタッキーとマクドナルドの各店舗にユニセックストイレ設置を求める手紙を出す

11月19日は、「世界トイレの日」です。2001年11月19日、シンガポールで30ヵ国あまりから500人あまりが集まって、トイレに関するさまざまな問題を話し合う「世界トイレサミット」が開催されました。この日をを記念し、WTOの呼びかけの下、11月19日を「世界トイレの日」として、世界各地でトイレの問題を考える取り組みが行われてきました。2013年7月の第67回国連総会では、毎年11月19日を国連「世界トイレの日」にすることが決定されました(1)

中国では、2012年の「世界トイレの日」には、全国の12の師範大学で、各大学の女子学生が、学長に女子トイレ増設求める手紙を送りました。女性は男性よりもトイレに長い時間がかかるのに、トイレの便器の数はその点に十分配慮せずに決められているので、中国では女子トイレ不足が問題になっており、とくに師範大学では、近年、女子学生の比率が高まってきたために、女子トイレ不足が深刻になってきたからです(本ブログの記事「全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙」参照)。

一 済南大学の女子学生が、山東省の101の大学の学長に手紙を出して、女子トイレ増設を訴える

2013年は、「世界トイレの日」の20日ほど前になりますが、10月28日に、済南大学の女子学生の凌甜さん(仮名)が、山東省の101の大学の学長宛てに書留で手紙を出して、女子トイレを増やして、女子学生のトイレ難を解決するよう訴えました。

凌甜さんは、2012年2月~3月におこなわれた「男子トイレ占拠」活動(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)に啓発されて、女子トイレ不足の問題に目を向けるようになりました。凌さんは、今回の活動について、「私は大学3年生ですが、大学にいる間にトイレの前に行列を作った経験が数多くあります。第一教学楼の各トイレには男女とも大便器が5つありますが、男子トイレにはそれ以外に小便器が5つあって、男子の同級生に聞くと、行列をした経験は基本的にないとのことです。けれど、女子トイレにはしょっちゅう行列ができています。ですから、山東省内の101の大学に手紙を出すという方法で、学長に対して、女子学生のトイレ難の問題を重視して、できるだけ早く(一部の)男子トイレを女子トイレに変えるか、女子トイレを拡張するように訴えたのです」と語りました。

山東女子学院では、そこの学生の玉潔さんによると、「私たちの学院の男女の学生の比率は1:10なのに、トイレの比率は1:1です。ですから、休憩時間になるごとに、女子トイレの前には長い列ができます」という状況です。また、済南大学の楚子さんは、「女子トイレが占用されていることも、わが校では非常に重大な問題です。というのは、清掃労働者はふつう女性なので、女子トイレには5つしかトイレがないのに、その1つか2つは道具部屋になっているので、女子トイレ不足がさらに深刻になっているからです」と語っています。

もっとも、最近は、多くの師範大学が、女子トイレを拡充したり、一部の男子トイレを女子トイレに改造したりしているそうです。「けれども、師範大学は中国の大学の中の氷山の一角なので、今回、山東省内の大学に女子トイレの拡充を訴えたことは重要です」と柯倩婷さん(中山大学副教授、中山大学ジェンダー教育フォーラム代表)は語っています(2)

二 11月19日(世界トイレの日)、13都市の女子大学生らが、ケンタッキーフライドチキンとマクドナルドにユニセックストイレの設置を求める手紙を、各市内の各店と総本部に合計870通出す

2013年の世界トイレの日には、中国の13都市(北京、ハルピン、上海、広州、武漢、西安、成都、蘭州、杭州、汕頭、昆明、鄭州)で女子大学生らが、ケンタッキーフライドチキン(以下ケンタッキーと略す)とマクドナルドにユニセックストイレの設置を求める建議の手紙を、それぞれの都市の各店と総本部に合計870通出しました。

また、その前の週末には、各都市のケンタッキーやマクドナルドの店の前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要です(我们需要更多 性别友善厕所)」というパネルを掲げて立つというパフォーマンスもおこないました。

この活動の発起人は、前年に「男子トイレ占拠」の活動を起こした李麦子さんです。李さんは、「中国ではどこでも女子トイレの便器が不足していますが、トイレをユニセックストイレに改造して、男女とも使えるようにすれば、問題は解決します。ユニセックストイレに改造すれば、男子トイレの便器という資源を有効に利用することもできますから、一曲両得だと言えます」と語りました。

また、今回、北京で活動をした別の人は、「私のように中性的な装いをしている人は、トイレに行くとき、しょっちゅう嫌な思いをします。中性的な女子学生がトイレに行くと、男子学生だと誤認されて、清掃労働者にトイレから追い出されることもあります。このようなドタバタ劇を避けるために、ユニセックストイレにしてほしいという要求は、非常に切実なものです。私の学校の近くにも、ファストフードの店がたくさんあるので、それらの店に率先してユニセックストイレにしてもらうことは、私にとって、とても重要です」と語りました(3)

三 11月19日(世界トイレの日)の行動の各地での取り組みの状況

以下は、インターネット上に掲載されている各都市での取り組みの状況ですが、以下のうち、広州・西安・成都・昆明・鄭州での活動は現地の新聞で報じられています。また、新聞で報じられる以前に、各人が、自らの微博(中国版ツイッター)に、店舗の前で「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いた紙を手に持っている写真をアップするなどして、自分たちの活動を発信しています。

広州

広州では、2人の女子学生が、市内のマクドナルドとケンタッキーの105の店舗に手紙を出して、ユニセックストイレの設置を訴えました。

その2人の女子学生は、華南理工大4年生の梁小門さんと中山大学4年生の木果さんです。梁小門さんは、7月に、ジェンダー平等活動グループの「9都市公共トイレ男女便器状況調査報告(性别平等工作组「九城市公共厕所男女厕位状况调查报告)」の調査に参加して、広州市内の調査をしました。男女の生理的な差違などを考慮すれば本来は女性用便器のほうが多くなければならないのですが、その調査の結果では、逆に男性用便器のほうが多く、とくに広州では、男女の便器比率は1.79:1で、9都市の中で最も女性用便器の比率が少ないことがわかりました(本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループ、9都市の公共トイレの便器数の男女比の調査報告発表」参照)。手紙を出したのは、そのためもあったということです。

木果さん(@冬蟲夏草泥馬PK君)は、「女子学生のトイレ難はどこにでもあって珍しくないというのに、ずっと改善されていません。学校だけでなく、マクドナルドとケンタッキーのようなファストフードのチェーン店でも、女子トイレに長い行列が出来ているのをよく見かけます」と語っています(4)

西安

西安でも、何人かの女子大学生が、店舗の前で「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いたプレートを掲げたり、ケンタッキーやマクドナルドの店に手紙を書いたりしました(5)

成都

成都では、李丹妮さんが、11月17日に、市内にある30カ所のケンタッキーとマクドナルドの店に書留郵便を出して、ユニセックストイレの設置を訴えました。李丹妮さんがトイレの男女平等の問題に取り組むのはこれが初めてではなく、前年に北京で李麦子さんと知り合って、その後、李麦子さんといっしょに政府や商業機構に女子トイレの増設を訴えたり、法律によって、男女の便器の比率を2:1にすることを訴えたりしてきました。

李丹妮さんが今回、ケンタッキーとマクドナルドに手紙を出したのは、「こうしたファストフードの店は多いので、少なくない市民がそれらのトイレを公共トイレだと考えているからだ」という理由からです(6)

蘭州

蘭州でも、蘭州サクランボグループの微博(兰州樱桃小组的微博)が、ケンタッキーの店の前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いた紙を手に持っている写真を発信しました(7)

汕頭

汕頭でも、女子学生が、市内のすべてのケンタッキーとマクドナルドの店に書留を送って、ユニセックストイレを設置するよう要望しました。その書留には、ユニセックストイレを設置することによって、女子学生だけでなく、中性的な気質の人やトランスジェンダーの若者も助かるということが述べられています(8)

蘭州と汕頭の情報は、それぞれ、蘭州サクランボグループの微博と汕頭大学オレンジ社の微博((汕大橘子社的微博)が発信しています。蘭州サクランボグループと汕頭大学オレンジ社は女性と女性の性的マイノリティの権利に取り組むグループであり、それぞれ、2013年5月12日、2013年5月1日(5月1日は微博の登録日)に創立されています。名称の由来は、それぞれ、ジャネット・ウィンターソンの『さくらんぼの性は』(邦訳は岸本佐知子、白水社1997)と『オレンジだけが果物じゃない』(邦訳は岸本佐知子、白水社2011)から取られています。今回の運動には、こうした地方のフェミニズムグループも一つの基盤になっているようです。

昆明

昆明では、雲南大学の社会学専攻の2人の女子学生(発起人は小彭)が、51通の手紙を昆明のケンタッキーとマクドナルドの各店に書留で送りました(9)

鄭州

鄭州では、小美さんが、71通の手紙を出しました。そのうち69通は鄭州のマクドナルドとケンタッキーの各店に出し、2通はそれぞれの中国の総本部に出しました(10)

ハルピン

東北各地では大雪で各種の警報が出ていました。しかし、ハルピンでも、ある女性市民が、マクドナルドの前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要です」と書いた紙を手に持っている写真を微博で発信するとともに、市内のケンタッキーやマクドナルドにユニセックストイレを設置するよう要望する手紙を出しました。その女性はバイセクシュアルなのですが、「男子学生と女子学生を分ける必要はないし、もっと重要なことは、トイレを利用する民衆が異なった性的指向の生理的ニーズを尊重しなければならないということだ」と訴えています(11)

四 ケンタッキーから「考慮・研究」するという返信

汕頭の劉小牛さんのところには、汕頭ケンタッキー有限公司から、11月28日付けで、「全世界的チェーンの飲食ブランドとして、ケンタッキーは一貫してお客さまの声を重視し、お客さまに迅速で快適なお食事の環境を提供することに努力しております。あなたのご提案に感謝します。ご提案は会社の建設専門部門に転送して、考慮・研究させていただきます」という返信が返ってきました(12)

また、成都の李丹妮さんのところにも、12月25日付で、百勝(ケンタッキーのチェーン店を展開する企業である「ヤム・ブランズ」の中国名)飲食グループ中国事業部から、同文の返信が返ってきました(13)

五 まとめ

以上、2013年の世界トイレの日の前後の女子大学生らの取り組みは、以下のような特徴があったとまとめられるように思います。

1.前年は師範大学に対する働きかけだったが、2013年は、山東省だけとはいえ、全大学に働きかけた。

2.それまでは公共トイレを中心にした働きかけだったが、今回は、公共性があるとはいえ、商業施設のトイレに働きかけた。

3. 2012年2~3月の「男子トイレ占拠」アクションにおいても、要求の一つとしてユニセックストイレが挙げられていたが(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)、今回は、ユニセックストイレの設置をメインの要求にした。これは、設置する空間が限定されているファストフードの店舗に対する働きかけだったからかもしれない。しかし、そのために、「中性的」な女子学生の要求やトランスジェンダーの要求が以前より正面に出ていることは確かである。

なお、現在の中国では、本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」の「7.ユニセックストイレについて」でも触れたように、ユニセックストイレに対する抵抗があり、そのことはとくに女性の間で強いのですが、その点に対しては、彼女たちは、仕切りを完全にすることや警報装置を設置することなどを提案しています(14)

(1)日本ユニセフ協会プレスリリース「11月19日は 初の国連『世界トイレの日』」日本ユニセフ協会2013年11月14日、「11月19日は国連初の『世界トイレの日』 世界のトイレ問題の解決には 草の根運動が重要」日本ユニセフ協会2013年11月19日、「11月19日は『トイレの日』、25億人の衛生状態改善を」CNN 2013年11月20日。
(2)以上は、「济南大学女大学生致信省内101位校长,呼吁扩建校园女厕 校园女生如厕难,厕所比例需2:1」社会性别与发展在中国2013年10月28日(来源:邮件)。新聞報道としては、「大学生信“谏”百余校长增女厕 称女生排队太久,建议扩建至男厕两倍」『齐鲁晚报』2013年10月29日。
(3)以上は、女权之声的微博【全国13城市女大学生致信快餐店 呼吁建立“性别友善厕所”】2013年11月19日 18:04、「世界厕所日全国13城市女大学生致信肯德基 呼吁建“无性别厕所”」中国网河南频道2013年11月19日。
(4)快餐店能否建更多无性别公厕?」『信息时报』2013年11月20日。@冬蟲夏草泥馬PK君がケンタッキーの前でパネルを掲げている写真は、梁小门的微博2013年11月19日 13:31
(5)今天是首个世界厕所日 女大学生吁建性别友善厕所」『三秦都市报』2013年11月19日。
(6)11月19日是首个“世界厕所日”,成都女生昨日致信30家“洋快餐”店:建男女通用厕所 减少女士排队等候」『华西都市报』2013年11月18日→「成都一女生建议洋快餐店设置男女通用公厕」人民网2013年11月18日(来源:华西都市报)。
(7)兰州樱桃小组的微博2013年11月18日 22:33
(8)汕大橘子社的微博2013年11月19日 18:27
(9)“世界厕所日”云大两女生向昆明多家快餐连锁店发出倡议—— 建无性别厕所 让女性如厕不再排队 」『春城晩报』2013年11月20日。
(10)洋快餐店里多设男女通用厕所吧 全国13个城市的女权志愿者发出倡议 求解女性如厕难」『东方今报』2013年11月20日。
(11)Makarina的微博11月20日 22:56
(12)汕大橘子社的微博【肯德基回信啦〜】2013年12月9日 11:13
(13)丹妮鯉的微博2013年12月26日 21:58→「2013世界厕所日致信获肯德基总部回复:会考虑建设“性别友善厕所”」社会性别与发展在中国2013年12月31日(来源:邮件)。
(14)「快餐店能否建更多无性别公厕?」『信息时报』2013年11月20日、「11月19日是首个“世界厕所日”,成都女生昨日致信30家“洋快餐”店:建男女通用厕所 减少女士排队等候」『华西都市报』2013年11月18日。

ジェンダー平等活動グループ、9都市の公共トイレの便器数の男女比の調査報告発表

7月8日、ジェンダー平等活動グループ(正式名称は「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」。2012年に結成された若い行動派のフェミニストのグループ、この年表など参照)は、「9都市公共トイレ男女便器状況調査報告(性别平等工作组「九城市公共厕所男女厕位状况调查报告)」[ここからダウンロード可能]を発表した。この調査研究は、昨年夏ごろから計画が始まっており(1)、その意味では1年近くかかって完成したものだと言える。以下、そのおおまかな内容を、ごく簡単にご紹介する。



一 前書き

トイレは生活の中の小事のように見えるが、人民の生活に関わる重大な問題である。

新中国成立以来、就業する女性が増大し、女性は消費の主体にもなって、女性の外出が増大した。けれど、中国の基礎的施設の基準はまだ男性中心で、トイレの増改築も男性のニーズを満たすためにおこなわれることが多いため、女子トイレは不足しており、どこに行っても、女子トイレの前には行列が見られる。

ニューヨーク市の2人の議員が起草した法案の中に、女性は生理的条件やそれに伴って生じる行為モデルに制約される――女性は、衣服を緩め、座り、ときには連れている子どもの世話もしなければならない――ので、小便のときにトイレの中にいる時間は、男性は平均すると39秒(±6秒)であるのに対し、女性は89秒(±7秒)である、すなわち女性がトイレで使う時間は平均して男性の2.3倍である、と述べられている。子どもを連れていたり、生理だったりするともっと時間がかかる。

2005年の中国の「都市公共トイレ計画・設計基準」は、「トイレの男性用便器(座位・立位)と女性用便器(座位)との比率は1:1~2:3が適当である」と規定した。2012年初め、全国で「男子トイレ占拠」運動が起こり(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)、フェミニストたちが女性の便器を増やして、男女の比率を1:2にするよう訴えた。2013年2月24日、衛生部は「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)を出して、「公共トイレの便器の男女比率は1:2にするのが適当である」と規定した。しかし、武漢のあるメディアは、それを強制しないのならば、女子トイレ増築の願望はかなえられないかもしれないという評論を発表した。

今回の調査研究で、私たちは、男性用便器と女性用便器の数などの現状を調査した。地区によっては、大学や地下鉄のトイレなどに的を絞った調査もおこなった。

二 調査研究方法

調査時期:2012年10月1日~2013年1月31日

調査研究内容
・北京・天津・済南・蘭州・西安・鄭州・武漢・杭州・広州の公共トイレの総数
・上記9都市の公共トイレの便器の数をランダムサンプリングによって調査する
・9都市のユニセックストイレの数を調査する
・バリアフリートイレの状況

今回調査したトイレは、道路のわきや駅、観光地にある公共トイレである。独立した公共トイレもあれば、一部の他の建築物に付属した公共トイレもある。商業経営の場所に付属したトイレは、今回は調査しなかった。

三 調査結果

9都市の公共トイレの状況

9都市の常住人口は、男性51.72%、女性48.28%である。各都市とも、男性が女性よりもやや多い程度である。しかし、9都市のトイレの男性用便器と女性用便器の比率(男:女)は、以下のとおりだった。

北京―1.22:1
天津―1.51:1
済南―1.57:1
蘭州―1.65:1
西安―1.4:1
鄭州―1.56:1
武漢―1.48:1
杭州―1.49:1
広州―1.79:1
総計―1.5:1

すなわち、9都市の男女の便器の比率はみなアンバランスであり、男の方が女より多く、女性のトイレのニーズをまったく満たしていない。

バリアフリートイレ

北京の公共トイレのうち、ユニセックストイレとバリアフリートイレの比率は1%未満であり、しかもバリアフリートイレの大きな部分は占用されているか、壊されている。

    ユニセックス バリアフリー(×は占用または損壊されている)
朝陽区    0      0
東城区    4      5(うち3は×)
豊台区    5      1(うち3は×←この箇所は何らかの誤記?)
海淀区    1(しかし×) 7
西城区    2      0
石景山区   0      0
海淀区    0      1

地下鉄のトイレ

天津の地下鉄のトイレの状況を調査したところ、以下のようだった。
・地下鉄2号線――男性用小便器35、男性用大便器36、女性用便器35
・地下鉄3号線――男性用小便器43、男性用大便器48、女性用便器52
出退勤のピーク時には、女子トイレの前には行列が出来る。

西安の地下鉄2号線でも、男性用と女性用の比率は1.52:1であり、ピーク時には、女子トイレ前に行列が出来る。

大学のトイレ

武漢では、3大学の合計17カ所の公共トイレの状況も調査した。3大学の男女比は、中南財経政法大学は7:3、武漢大学は5:3、華中師範大学は1:3である。しかし、華中師範大学でも男女の便器数は、それぞれ76と55であり、不合理さが明らかだった。他の2大学も、トイレの時間の男女差を考慮すると不合理だった。

9都市の公共トイレの全体的状況の分析

(1) 9都市のトイレの便器の比率は、どの都市も男性用のほうが女性用より多い。
 最も差が少ないのが北京市の1.22:1であり、最も差が大きいのが広州市で、1.79:1だった。全体では、1.5:1前後である。

(2) 経済の発展水準と便器の平等とには、必然的関係はない。

(3) 現在のトイレ改革は、小便器を統計に入れていないので、効果が少ない。
 調査研究の過程で、私たちは、大部分の地区の女子トイレ増築政策は、女性用便器を男性用の大便器の2倍にすることを基準にしていて、小便器を計算に入れていないことを知った。こうした政策によって、実際は男性用便器が女性用便器よりもずっと多いという現実が長い間無視されてきたのだ。

(4) 広州市都市管理委員会はトイレ改築を承諾したけれども、実際の行動にはまだ移していない。
 2012年2月19日、女子大学生が「男子トイレ占拠」のパフォーマンスアートをおこなったら、20日には、広州市都市管理委員会は「強制的な立法によって、女子トイレを男子トイレの1.5倍にする」と微博で発表した。政府が返事をするという点では、広州市都市管理委員会は積極的で迅速だが、実際の行動においては、女子トイレ増築はまだ立法の議事日程には入っておらず、規範的文書も遅々として出ていない。

四 国内外のトイレの男女の便器の比率

1.アメリカでは、12の州で、1990年代初めに「ポッティ・パリティ(トイレの公平)」を保障する法案が成立した。この法律は、公共トイレを増築するとともに、女性用便器の数を男性用便器の2倍にすることを定めた。

2.台湾では、2006年に「建築技術規則」を改正して、駅・学校・映画館の「男女の公共トイレの比率を1:3」にすると明確に規定した。今後はこの規定に従わなければ、建築が許可されない。

3.香港政府は、2012年2月に立法会に対して文書を出して、建築物の規則を改正して、男女の便器の比率を1:1.5にすることを提案した(2)

五 中国の公共トイレの男女の便器の分配の合理化に関する提案

建設部「都市公共トイレ計画・設計基準」について

2005年の中国の「都市公共トイレ計画・設計基準(城市公共厕所规划和设计标准[PDF])」は、第3.1.8条で「公共トイレは女子トイレの建築面積と便器の数を適当に増やさなければならない。トイレの男性用便器(座位・立位)と女性用便器(座位)との比率は1:1~2:3が適当である。独立した公共トイレは1:1にするのが適当であり、商業地区の公共トイレは2:3にするのが適当である」と規定している。

しかし、この基準には、便器の比率または便器の数に対する強制的な規定がないため、具体的に執行する際には恣意的なりがちであり、女性がトイレに行く平等な権利を保障できていない。それゆえ、私たちは、この「基準」について以下の提案をする。

1.「基準」の中の便器の概念について、男性用便器には、しゃがむ便器、座る便器、立つ便器が含まれ、女性用便器には、しゃがむ便器と座る便器が含まれることを明確にする。

2.「基準」の中に、強制的な規定を設けて、公共トイレの中の女性用便器と男性用便器の比率は必ず2対1に達しなければならず、そのうち女性用便器と男性用のしゃがむ(座る)便器の比率は必ず4:1に達しなければならず、女性トイレの面積も増やさなければならず、あわせて各地の行政管理部門(都市建築管理部門)に真剣に執行し監督を強化するよう求めることを定める。

3. 「基準」の中で、公共トイレでは必ずバリアフリートイレを増設し、第三のトイレ(ユニセックストイレ)を適切に増設しなければならないことを規定する。

4. 「基準」の中で、公共トイレの審査許可と検収のメカニズムを規定して、各地の行政管理部門に真剣に執行するよう要求する。各地の都市建築管理部門は、新しく公共トイレを建築するとき、女性用便器の比率と面積が基準に達していなければ許可しない。公共トイレを検収するときは、基準に達していなければ検収しない。現在ある公共トイレについては、3年以内に改築を完成させるよう要求する。改築が完成する前は、一部の男子トイレを振り向けて女性に使わせるべきである。どうしても改築できない場合は、男でも女でも使えるトイレ(ユニセックストイレ)を増やすべきである。

衛生部「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)に関する提案

2013年2月24日、衛生部は、「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)を出した。この「基準」は、「公共トイレの便器の男女比率は1:2にするのが適当である[このアンダーラインの箇所は、彼女たちの原文では黄色のマーカーで印がつけてある]」と規定している (「《公共厕所卫生标准》征求意见稿[word]」の4.2.2.2、卫生部办公厅「关于征求国家标准《公共厕所卫生标准(征求意见稿)》意见的通知」2013年2月21日より)。

この「基準」は、建設部の1:1.5に比べて進歩しているように見えるけれども、私たちは、「強制的な立法」を要求している。

提案:トイレの比率について、まず男子トイレの小便器も便器であることを明確にし、それと同時に男女の便器の比率を必ず1:2にしなければならず、かつ法律を制定することをつうじて強制的に執行しなければならない。

もし強制しなければ、各地区の政府がトイレを新しく建設したり、改造したりする希望はほとんど持てない。

ユニセックストイレの改築・新築プロジェクト

現在あるトイレを拡張することには難しさがあるし、特殊な人々のニーズを満たすためにも、ユニセックストイレを新しく建設するプランを特に立てる必要がある。

提案:公共交通の駅、列車の駅、地下鉄など人の流れが密集している場所にはユニセックストイレを増設する、あるいはユニセックストイレに改築する。

その理由:
 1.現在のトイレの構造は、女性のニーズを満たすことができない一方、男子トイレの空間は使われておらず、浪費を引き起こしている。
 2.ユニセックストイレは、ある幾らかの特殊なニーズを持つ人々のトイレの難題を解決する。たとえば、老人・子どもを連れている人、性別の気質が中性の人とトランスジェンダーのニーズ

トイレの矛盾を緩和し、積極的にトイレの誘導をおこなう

女子トイレの拡張やユニセックストイレの新築・改築がまだのときは、人の流れが密集している場所のトイレに誘導員を配置して、女子トイレに長い列ができているのに男子トレイが空っぽであるという、資源の分配が不均等である現状のバランスを取るようにする。

六 中国の女性の公共トイレを勝ち取る唱導行動

1.男子トイレ占拠―→本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照

2.人民代表大会への提案――2012年3月8日、武漢の全人代の代表で、湖北省統計局局長の葉青が、「都市の公共トイレの設計基準を改善し、女性便器比率を高める」提案を出した。(その内容は、上記の五の建設部「都市公共トイレ計画・設計基準」についてとほぼ同じである。)

3.広州で16人の女性が都市管理委員会の前で大いに便器の陣立をして、女子トイレの便器不足に抗議した―→本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」参照

4.女子大学生が学長に手紙を書いて、女性用便器の比率を増やすように提案した―→本ブログの記事「全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙」参照

5.武漢でお母さんが公衆の面前で授乳して、もっと母乳保育ができる空間を作るよう要求した――2012年8月4日、世界母乳育児週間(8月1日~8月7日)に合わせて、30人あまりの母親が、武漢市で、1分半、「哺乳フラッシュモブ」をおこなった。これは、公共の場所や職場に授乳室を設置することを訴えるためのアクションだった。2013年の全人代と全国政協の期間にも、授乳室増設のための提案をおこなった。

6.唱導への反応:各地区の政府の女子トイレ拡大政策(略)

七 謝辞

9都市のボランティアが厳寒を恐れず、冬に大部分の実地の調査研究活動を完成させたことに感謝する。

付録

1.男の方への手紙

2.両会(全人代と全国政協)の提案の手紙「女性便器の比率を高め、女性の平等な権利を保障することに関する手紙」

3.広州市都市管理委員会の女子トイレ増築立法の過程に関する陳情事項の返信

4.信陽師範学院学長への手紙



上の調査結果については、「男子トイレ占拠」運動の発祥の地であり、また、今回とくに男性用便器に比べて女性用便器が少なかったことが明らかになった広州で発行されている『南方都市報』と『羊城晩報』が真っ先に大きく報じた(3)。それらの記事は、人民網などにも転載された。

この調査は、トータルで7500にも及ぶ便器について男女別に算出しており、非常に大規模なものである。また、ユニセックストイレやバリアフリートイレについても調査しているという点においても、従来にないものだと思う。

また、建設部や衛生部の基準について、調査結果を踏まえて丁寧に批判と提言をおこなっている点、今後新築するトイレについてだけでなく、既成のトイレの改築、ユニセックストイレの増設、誘導員の設置などによって、早急な措置を提起している点でも重要だ。

今後の課題としては、商業施設のトイレや農村のトイレ(4)などの調査があろう。

日本における調査

日本でも男女の便器数の公平さについての調査がおこなわれたことがある。私の知るかぎり、ある程度まとまったものは、以下の2つである。

1 「女と男のトイレ研究会」による調査(5)

1980年代末に、「女と男のトイレ研究会」が、大阪・京都・東京で調査をおこなっている。この研究会は、以下のような人々によって作られた会である。
 ・自分たちの小学校で、トイレの数や所要時間などを男女別に調査し、統計グラフコンクールで入賞した堺市の小学6年生の女子生徒3人(一原教子さん、橋本美代子さん、岩田朋子さん。「女と男のトイレ研究会」の調査の当時は中学に進学)
 ・広瀬洋子さん、島田裕巳さんという研究者
 ・桂坂の会・女の目で見るまち研究会の伊藤陽子さん・安達恵子さん

彼女たちの調査結果は以下のようなものであり、女性用便器がどこでも男性用便器よりも少ないことが明らかになっている。

(大阪)
 ○堺市立月州中学校―→男性用81 女性用49

(京都)
 ○京都府と京都市の施設(観光地にある25カ所の公衆便所、児童公園の中の公衆トイレ、小中学校、府立伏見港総合体育館、市東余熱センター、西京極スポーツセンター、京都こども文化会館[エンゼルハウス]、社会教育総合センター、京都会館)―→清水寺境内の公衆便所を除いて、すべて男性用が女性用よりも数が多かった(たとえば西京極スポーツセンターは、男性用80、女性用49)

 ○デパートでも―→男性用が女性用の1.5倍(阪急百貨店は、男性用66、女性用46、近鉄百貨店は、男性用30、女性用20)。

 ○病院(京都桂病院)―→男性用と女性用の比率は3:1で、兼用のものを男女半々に分けても、女性用は男性用の半数以下。

(東京)
 デパート、劇場、区の施設、高速道路のパーキングエリアなど―→どこでも男性用の数の方が女性用よりも多かった。

2 埼玉県による調査

1995年8月、埼玉県の住宅都市部に「女性トイレレベルアップ検討会」が設置され、委員10人が、女性が不便を感じない県有施設における女性トイレについて検討した。1996年3月に刊行されたその報告書(6)が埼玉県立浦和図書館に所蔵されている。

この報告書には、「県有施設トイレの状況」として、以下のように男性用便器と女性用便器の比率(報告書では「穴数」という概念を使っているが)が明らかにされている。

(1)県立公園

 ・集客的公園施設(体育館・陸上競技場・野球場・ラグビー場などを有する公園を指すようです)―→穴数の男女比は、平均3.0:1(最大5.8:1[双輪場]、最小1.5:1[秩父ミューズ音楽堂他])

 ・その他の公園施設―→穴数の男女比は、平均1.4:1(最大2:1[上尾運動公園管理棟ほか]、最小1.2:1[加須はなさき公園水泳場])

 ・一般園地―→穴数の男女比は、平均1.5:1(最大2:1[久喜菖蒲公園]、最小1:1[和光樹林公園ほか])

 公園施設総計―→穴数の男女比は、平均2:1(最大6.7:1[吉見総合運動公園]、最小1.1:1[和光樹林公園])

(2)劇場・ホール
 穴数の男女比は、最大6:4(埼玉会館改修前)、最少5:5(行田文会館)

(3)事務所等
 越谷県税事務所→6.5:3.5、越谷保健所→5.5:4.5、羽生勤労婦人ホーム→3:4

(4)アリーナ
 さいたまアリーナ→5:5

以上、勤労婦人ホームを例外として、ほとんどの施設で、便器数自体が、男性用の方が女性用よりも多い。

つまり、上の2つの日本での調査においても、本来便器数は女性用の方が男性用の2倍以上必要であるにもかかわらず、実際は、男性用の方がむしろずっと多いという状況が明らかになっている。

ただし、上の2つの日本での調査は今から20年ほど前のものであり、現在は状況が異なっていると考えられる。この点については詳しいことはわからないが、新聞記事や単行本から見ると、女性トイレ不足は、1980年代末~1995年ごろに比較的よく問題になっている。そして、その後は問題が少しずつ解決してきたようにも思われる(埼玉県の報告書は県立施設の改善に生かされているし、1999年には、JR東日本が30年ぶりに便器数の男女比の見直しに取り組んでいるという記事が出ている。また、2007年と2009年には、それぞれ東日本高速道路会社と西日本高速道路会社が女性用トイレを増設しているという記事が出ている)。ただし、この問題についての新聞投書は、ごく最近まで見られるし、最近でも、地方議会では、公共施設や観光地の女性トイレ不足について相変わらず取り上げられている(以上については、本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」参照)。また、被災地の女子トイレ問題は今日でもよく取り上げられるし、もちろん今後も女性が急増するような場所では、問題になろう。駅のトイレなどについても、先日、私は近鉄京都駅で女子トイレ前の行列を見たばかりである。

いずれにせよ、日本では、この件に関しては、1990年代終わりごろ以降は、まとまったデータはないように思われる。また、問題のかなりの部分が解決したのだとしても、それはどのような要因によるかは、もう少し解明する必要があるように思う。

以上のような幾つかの意味では、日本でも、男女の便器数の公平さの問題は、今後も考えるべき点、取り組むべき点があることは確かである。

また、日本と中国とでは、同じように男女の便器数の公平さが問題になっているといっても、中国固有の問題(ひょっとしたら、公共トイレの数自体が少ないといった可能性もあるかもしれない)が存在する可能性も否定できないだろう。そうした問題も解明する必要があると思う。

(1)本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」ですでにご紹介したように、2012年9月26日の「性差別撤廃討論群会」の記録に「全国のその他の地方でトイレ報告をする必要があるか……武漢の夏合宿で始動、トイレ1周年のときに発表、李麦子と湯倩がアンケート調査を整理・修正」とあり(郭小花「“消除性别歧视讨论”会议记录(20120926)」性别平等倡导计划2012年9月26日)、昨年夏ごろから計画されていたようだ。また、10月15日には、ジェンダー平等活動グループのサイト「性別平等網(性别平等网)」に、「私たちは、政策を変えさせ、女性のトイレ難の問題の解決を促進するために、全国の公共トイレの比率の調査研究をおこなう」と述べて、杭州での調査研究のためにボランティアを募る記事が掲載されている(「全国公共厕所厕所比例调研——杭州站志愿者招募」2012年10月15日)。ただし、「トイレ1周年のときに発表」するということならば、今年2月19日に発表しなければならなかったはずなので、計画どおりにはいかなかったということだろう
(2)2012 年2 月28 日討論文件 立法會發展事務委員會 《建築物(衞生設備標準、水管裝置、排水工程及廁所)規例》(第123I 章)的修訂建議」中华人民共和国香港特別行政區立法會サイト
(3)“占领男厕所”发起组织发布九城市公厕男女厕位调查 广州公厕女厕位比例最低」『南方都市报』2013年7月9日、「厕位数量男多于女 广州供需倒挂最厉害」『羊城晚报』2013年7月9日。
(4)日本では、1962年の『読売新聞』の「赤でんわ」欄に、農家の主婦のF子さんが、田植えをする際、便所がないことが大きな苦痛になっていると訴えた投書が掲載されており(「のどかな田植え風景の陰に」5月30日朝刊)、その投書が反響を呼んで、婦人面で大きな記事になっている(「農村女性の悩み/田植え時のトイレ/お茶さえ飲めない/反響読んだ『赤でんわ』欄の投書/口には出せなかった苦痛」6月12日朝刊)。詳しくは、本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」の「3.田植え時の女性トイレ問題」を参照していただきたいが、こうした農作業の際のトイレ問題は、中国ではどのように解決しているのだろうかと思う。
(5)島田裕巳「女のトイレはなぜ混むか」島田裕巳『私というメディア』パーソナルメディア1989年。広瀬洋子「トイレを開ければ社会が見える」『からだの科学』no.152(1990年5月)もこの調査を取り上げている。
(6)埼玉県住宅都市部女性トイレレベルアップ検討会『女性トイレレベルアップに向けて』1996年3月。この報告書については、「公共施設のトイレ、便器数は『男性優位』 県の検討会」(『朝日新聞』1996年4月17日埼玉朝刊)、「トイレの便器数、男女比は2対1――県所有の公園施設/埼玉」(『毎日新聞』1996年4月19日埼玉版)として、新聞記事でも取り上げられている。

全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙

11月19日は、世界トイレの日(World Toilet Day)でした。この日の前後に、中国では、全国の12の師範大学(北京師範大学、天津師範大学、河南師範大学、広州第二師範大学、華中師範大学、信陽師範大学、杭州師範大学、重慶師範大学、江西師範大学、西北師範大学、陝西師範大学、新疆師範大学)の女子学生が、女子トイレを増やすことを要望する手紙をそれぞれの大学の学長に送りました。

この活動は、今年2月、広州で「男子トイレ占拠」アクション(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)の発起人だった李麦子さん(仮名)が、「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(Gender Equality Advocacy and Action Network)」などを通して呼びかけたものです(1)。李さんによると、近年女子学生が占める比率が高くなっている師範系大学の女子トイレ不足が深刻になっているので、今回の行動を呼びかけたということです。

各師範大学の情況と女子学生の訴え

北京師範大学

北京師範大学では、3年生の鄭さんが学長に手紙を出しました。鄭さんは、手紙の中で、「授業が終わったら、多くの女子学生は、大急ぎでトイレに行かなければなりません。なぜなら、もしトイレで順番を長い時間待つことになれば、次の授業に間に合わないかもしれないからです。これは、疑いなく女子学生の生理と心理に対する試練です。トイレは小さな問題のように見えますけれど、トイレには毎日行くのですから、大きな問題です。長い間積み重なると、女子学生の泌尿器系統に良くない影響があるかもしれませんし、女子学生の学業にも不利です」と訴えました。

鄭さんによると、北京師範大学の男女の学生の比率は3:7で、鄭さんがいる文学院には、男子学生はもっと少ないのに、トイレの比率は1:1だということです。鄭さんはいつも学校の教二楼で授業を受けるのですが、この建物の女子トイレには便器が3つしかなく、休憩時間にはいつも長い列ができると言います。

もっとも、『法制晩報』の記者が北京師範大学の女子学生20人に取材したとろ、彼女たちはみな、女子トイレに行列ができることはないと答えました。中には、鄭さんの売名行為ではないかと言う人もいました。また、北京師範大学宣伝部の李先生は、「董奇学長はすでに手紙を受け取りました。今後、女子トイレの問題を調査し、もし事実なら解決に着手します」と述べつつも、「学校のすべての教学楼の各階のトイレの男女の比率はみな1:1ですが、ふだんは女子学生が行列を作るという情景は見られません」と言いました。

しかし、鄭さんは、他の建物については調査していないけれど、自分がふだん授業を受けている教二楼の2階は、午前中、授業を受ける人が多く、休憩時間になると2階の女子トイレは長い列ができるので、やむをえず1階と3階のトイレに行くけれども、どちらも列ができているのだ、と言いました(2)

また、『新京報』が取材したところ、たしかに教七楼は、授業を受ける人が少ないので、「休憩時間も、せいぜい1~2人が待っているだけ」(ある大学院1年生)だけれども、教二楼は、行列ができており、清掃の人も「一番ひどい時は、外の渡り廊下にまで行列ができている」と言いました(3)

私も、女子学生のほうがずっと多いのに、(宣伝部の人も認めているように)トイレの男女比が1:1だという点から言っても、鄭さんのような経験をする学生はいるだろうと思います。

実際、鄭さんには、すぐに学長の秘書から、「董学長は、最近関係部門と一緒にこの問題を研究して、明日(11月21日)午前、関係する指導者と責任部門の同志を集めて、問題を解決する具体的措置と任務の割り当てを研究して決定するつもりです」という回答が返ってきました(4)

天津師範大学

天津師範大学3年生の艾智慧(仮名)さんは、学長への手紙で、「私が何人かの同級生と調べたところ、わが校の教学区の男子トイレと女子トイレの比率は約1:1でした。たとえば、勧学楼のB区では、各男子トイレに小便器11と大便器9、合わせて便器が20ありましたが、女子トイレの便器は22で、男子便器より2つ多いだけです。女子学生の数が男子学生の数よりはるかに多いキャンパスにおいて、このような便器の比率であることは、非常に不合理です。さらに、女子学生の用便の時間は、男子学生のおおよそ2~3倍かかります。ですから、たとえ男女の人数が同じであったとしても、女子トイレの便器は男子トイレの2~3倍であるべきです」と書きました。

艾智慧さんは、女性がトイレに行くのに長い間行列を作る問題は、けっして取るに足りない問題ではなく、それぞれの女子学生にとっては、どのように時間の割り振りをし、どのように勉強の計画を立て、どのように休憩するかという、日常生活にとって非常に重要なことであると考えています。

今年の世界トイレの日を前に、トイレの調査活動が呼びかけられたのに応えて、艾智慧さんも、天津師範大学のソーシャルワーク専攻の学生として、ボランティアを募って、天津の公共トイレの便器の数の比率の調査もしているところです。艾さんは「しばらく後に結論が出たら、関係部門に提出します」と語っています(5)

華南師範大学

華南師範大学の文怡さんは、「私たちの大学では、男女の学生の比率が1:7になっているのに、トイレの数は同じなので、授業が終わるたびに、女子トイレの前には長い行列ができます。多くの建物を駆け回って、やっとトイレにたどり着ける情況であり、女子学生にとって影響が大きいのです」と語っています(6)

華中師範大学

華中師範大学文学院の大学院生の樹葉さん(仮名)は、学長宛ての手紙で、「華中師範大学は伝統的な師範学校であり、学校側が発表した数字によると、今年の新入生のうち、女性は7割を超えたにもかかわらず、男子トイレと女子トイレの比率はまだ1:1です。トイレの問題は女子学生の勉強と生活の中で大きな問題です。この間、学校は外国語学院の一部の男子トイレを女子トイレに改造して、私たちに進歩した現実を見せてくれましたけれども、もっとスペースを広げるように希望します。」「私は比較的水を飲むのが好きなのですが、この良い習慣のために、私は辛い思いをします。女子トイレに行って行列をすることは、知力と体力を費やす戦争になっています。女の同胞たちは、休憩時間に『問題』を解決するために、少しでも空いている女子トイレを探して走り回るのです」と訴えました。樹葉さんが調査したところ、小便器をプラスすると、男性用の便器はもともと女子トイレを上回っているのに、(人数が多い)女子学生に対する配慮がなされていないので、もっと多くの建物で、女性が「便利」にしてほしいと述べています。

樹葉さんは、9月16日に武漢大学の前でおこなわれた、ミスキャンパスコンテストに抗議するパフォーマンスアートの発起人でもありました(本ブログの記事「ミスキャンパスコンテストに対する抗議行動」参照)。

『長江日報』の記者が取材したところ、校務主任の駱軍さんは、「ここ数回の学長の午餐会で、すでに何度も、学生たち、とくに女子学生たちが男女のトイレの比率の問題を出していることは掴んでおり、学校としても、学生のニーズを学校の発展計画の中に組み入れるつもりです」と言いました。学長の楊宗凱さんも「トイレに行くことは大きな問題であり、関係部門と協議して、できるだけ早く解決したい」と述べました(7)

中山大学副教授で、中山大学ジェンダー研究フォーラムの責任者の柯倩婷さんは、「師範大学の女性の比率は年を追って増していて、華中師範大学外国語学院の男女の比率は1:10になっているのに、トイレの比率は少しも変わっていません。師範学院などが率先して女子トイレを増築して、女子学生に『男子トイレを占拠』しなくてもよいようにし、また『女子トイレ増築』を単なるスローガンに止めないようにすべきです」と語っています(8)

杭州師範大学

今回の手紙を送る活動に参加した杭州師範大学の学生の夏嘉蔚さんは、「大学では、男子学生と女子学生の比率は1:7であり、ある学院では1:14にまで達しているのに、男女のトイレの数の比率はずっと1:1です」と批判しています(9)

夏さんは、杭州師範大学の文一校区の国際服務工程学院に在学中ですが、彼女によると、各階の6~7つしか便器がない女子トイレは非常に混雑しているとのことです。下沙校区の看護専攻の呉さんの場合は、クラスに男子学生が1人しかいなくて、女子学生が28人いるのに、教学楼は各階に男女のトイレが3つずつだったので、女子トイレはいつも混雑しているのに、男子トイレは空っぽなので、男子トイレで用を足したい衝動に駆られることもありました。

こうした女子学生のトイレ難の問題について、夏さんと呉さんは小さな調査をして、男子学生がトイレに一回83秒しかかからないのに、女子学生は3分、生理の時はさらに長くかかることを明らかにしました。

以上のような事実をもとに、夏さんと呉さんは、学長の葉高翔さんに手紙を書いて、女子トイレと男子トイレの比率を2:1に調整するように訴えました。

葉高翔学長は、学校のトイレの問題は、学生だけの問題ではなく、ダンス・看護・就学前教育などの、女性教員の多い専攻では、教員たちも困っていること、旧い校区は改造が少し難しいけれども、新しい校区では男女のトイレの比率を1:2にし、第二期工事の看護学院の教学楼では、男女のトイレの比率を1:3さらには1:4にできると表明しました(10)

信陽師範学院

「懶羊羊」さんは、信陽師範学院のソーシャルワーク専攻の2010年入学の学生です。「懶羊羊」さんのクラスは、49人の学生のうち、43人が女子学生です。「懶羊羊」さんも、授業が終わると、多くの女子学生が、次の授業に遅れないようにトイレに急ぐと言っています。休憩時間は10分しかないのに、女子学生はトイレに男子学生の2~3倍の時間が必要で、女子トイレの入口に行列ができるのは、いつものことなのに、「男子トイレはほとんど人がいない」といいます。

「懶羊羊」さんが同級生と調査したところ、学内に女子トイレは1044、男子トイレは889で、比率は1.17:1でした。

11月18日、「懶羊羊」さんは、学長に手紙を書いて、「調査研究のデータと私たちの推計にもとづくと、女子トイレと男子トイレの便器は、2:1が適切な比率です」と訴えました(11)

陝西師範大学

陝西師範大学でも女子学生が学長に手紙を送りました。王さんは、授業が終わるたびに、女子トイレの前には行列ができるので、それを見ると尻込みしてしまう、と言っています(12)

李麦子さんは、記者に対して、陝西師範大学では2年前、キャンパスの中に「女性立式トイレ」を設置したけれども、それは実用的なものではなく、また設置した場所がわりあい辺鄙なところだったので、女子学生のトイレ難を解決しなかったと語りました。

陝西師範大学の、トイレに責任を持つ部門の責任者は、「まだ手紙は受け取っていないが、学生の実際の情況を考慮して、学生の比率にもとづいて、学生の大学生活の便宜を図りたい」と述べました(13)

トイレについての調査研究も

以上でおわかりいただけるように、女子大学生たちは、自分自身の体験を訴えるとともに、天津師範大学、華中師範大学、杭州師範大学、信陽師範学院などでは、トイレについての調査もおこなったうえで、学長への手紙を書いています。

女子大学生たちは、学内だけでなく、北京・武漢など、10の都市で小調査をおこないました。その結果、公共の場所の男女のトイレの比率は、多くは1:1であること、けれど、女性がトイレに行く時間は平均4分半であるのに対して、男性は1分半でしかないことを明らかにしています。今回の手紙を書く活動の組織者でもある李婷婷(=李麦子と思われる)さんは、「この面だけから見ても、女子トイレの数は男子トイレよりも多くなければならない」と語っています(14)

また、11月5日、苗傑さんが、鄭州市の政治協商会議に「女子トイレの比率を高めて、女性の平等な権利を保障する」という提案の手紙を書いて、女子トイレ比率の拡充とユニセックストイレの増設を訴えました。その苗傑さんも、現在、何人かのボランティアとともに「トイレ調査研究活動」をおこなって、鄭州市の都市区、観光スポット、駅などのデータを収集して、現在の問題点を明らかにして、提案をおこなう予定だと述べています(15)

これらは、「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」の活動の一環のようです(本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」の中の「8月?~ ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク、全国の公共トイレの調査研究も開始」参照)。

また、今年の世界トイレの日は、2月以来の女子大学生らの運動のためか、『南方都市報』や『三秦都市報』が、女子トイレ不足問題を含めた、公共トイレについての調査報道をおこないました(16)

広州市都市管理委員会から返答

また、以前お伝えしたように、8月20日、李麦子さんや鄭楚然さん、区佳陽さんら16人の若い女性が、広州市都市管理委員会の前で、女子トイレ不足問題の解決を訴えるパフォーマンスアートをおこないました(本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」参照)。その際に彼女たちが都市管理委員会に出した訴え(陳情として扱われた)の回答が、10月23日付けで返ってきました。

その回答は、「李婷婷・鄭楚然・区佳陽・余丹丹など同学[学生に対する敬称]」宛てに書かれており、以下の「一」~「四」のような内容(要旨)です(17)

まず、「一、本市の公共トイレの基本的状況」では、「一部の地区のある時間帯に、たしかに女性のトイレ難の現象がある」ことを認めたうえで、それに対して、下の3点の対応をしたことが記されています。
 1、2011年初めに「公共トイレの女性便器比率の向上に関する実施意見」を制定した。
 2、女性のトイレ難の場所に、ユニセックストイレを増設した(ここでは、具体的な地点が何か所かあげてあります)。
 3、新築または増築する公共トイレの設計の審査において、一律に男女の便器の比率が1:1.5以上にするようにした。また、関係する管理部門や企業に、女性便器の比率を増やすように建議をおこなった。

次の「二、存在する困難」では、トイレの設計から完成までには時間がかかることや、女性トイレの面積を増やす際の用地の困難などが書かれています。

「三、トイレに関する立法活動」では、2012年度に「広州市都市公共トイレ管理規則[弁法]」を立法計画に入れるべく、調査研究をし、初稿を作成したが、今年は立法の項目が多く、任務が重いので、入れられなかった、といったことが書いてあります。

「四、越秀公園前の公共トイレの女性のトイレ難について」では、トイレの混雑状況を調査した結果や、行列ができる時間は限られているけれども、混雑を緩和するために、公園の中のトイレへの案内を増設するなど、緊急の措置を取ったことが書かれています。

一の1と3の点は、以前から広州市が述べてきたことですし、他の箇所も、今後すぐに事態が改善できるという回答ではないようです。ですから、事態の緊急性という点から見ると歯がゆい感じで、熱意にも物足りなさを感じます。

しかし、全体として、わりあい丁寧に書かれた回答であり、広州市も、それなりに女性のトイレ不足問題について対応していることがうかがえます。実際、武嶸嶸さん(北京益仁平センター性差別撤廃プロジェクトコーディネーター)は、この回答を見て、「私たちの声が具体化した」と喜んでいます(18)

女子大学生らの訴えは、じわじわと成果を上げつつある?

以上で見てきたように、師範大学の学長に対する女子トイレ増設の訴えに対して、学長側もある程度の対応をしていることといい、広州市都市管理委員会からそれなりの回答が返ってきたことといい、10月に北京市が男女の便器の比率の基準を現行の1:1から1:2以上(1:1.5以上と報じているメディアもあるが)に変更することを表明したことといい(本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」参照)、このかんの動向を見ていると、女子大学生たちの訴えが、じわじわとある程度の成果を上げつつあるのかな、という気がいたします。

女子トイレ増設の訴えは、雇用の平等などと比べれば、権力や男性の既得権をさほど脅かさないから、比較的成果を上げやすいのかもしれません。しかし、「男子トイレ占拠」というパフォーマンスアートを全国でおこなったうえに、メディアや全人代の代表への働きかけ、地道な調査、都市管理委員会への陳情、今回のような学長への手紙など、さまざまな手段を使っての粘り強い訴えが成果を上げつつあるという面も否定できないように感じます。

(1)たとえば、「帮忙推荐师范类院校志愿者,麦子需要你的帮助! 」(google group性别平等倡导计划2012年11月13日)参照。「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(Gender Equality Advocacy and Action Network)」については、本ブログの記事「若い行動派フェミニストたちの『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』」参照。
(2)以上は、「12所师范院校女生致信校长要求扩建学校女厕」網易新聞2012年11月20日(来源:法制晩報)。
(3)12女生致信校长呼吁大学增建女厕」『新京報』2012年11月20日。
(4)【北师大校长表示将解决女生如厕难问题!】」麦子家微博2012年11月21日。
(5)以上は、「天津师大女生致信校长:比例不合理 女厕该扩建」中国新聞網2012年11月20日(来源:城市快報)。
(6)“扩建女厕”发酵 山东12所高校女生写联名信」騰訊網2012年11月20日(来源:山東商報)。
(7)以上は、「全国12所师范院校女大学生上书校长:增加女厕」湖北教育新聞網2012年11月20日(来源:長江日報)。
(8)“扩建女厕”发酵 山东12所高校女生写联名信」騰訊網2012年11月20日(来源:山東商報)。
(9)中国十二所师范院校女学生致信校长要求扩建女厕」新華網2012年11月19日。
(10)以上は、「杭师大女生致信校长建议调整厕位比例」新浪浙江2012年11月20日(来源:青年時報)。
(11)以上は、「郑州女大学生向政协提建议 讨要“方便权”」中国新聞網2012年11月20日(来源:大河網)。
(12)11月19日"世界厕所日" 女性呼吁扩建女厕解决如厕难」中国経済網2012年11月20日(来源:西部網)。
(13)陕师大女生致信校长求增女厕 学校:会考虑实际情况」華商網2012年11月20日。
(14)中国十二所师范院校女学生致信校长要求扩建女厕」新華網2012年11月19日。
(15)郑州女大学生向政协提建议 讨要“方便权”」中国新聞網2012年11月20日(来源:大河網)。
(16)街头公厕,你知道我在找你吗? 市区繁华地段公厕多藏“深闺”,女厕蹲位不足,市民盼新建」南都網2012年11月20日(来源:南方都市報)、「记者街头体验女性“如厕难” 11月19日是第12个世界厕所日市民普遍反映,女厕依旧不够用」人民網2012年11月20日(来源:三秦都市報)。
(17)广州城市管理委员会关于女厕扩建的信访事项的回复函」社会性別与発展在中国サイト2012年11月7日。
(18)广州城市管理委员会关于女厕扩建的信访事项的回复函」google group性别平等倡导计划2012年11月6日。

女性トイレの増設求める運動続く――「男子トレイ占拠」から8ヶ月

中華人民共和国建設部が2005年12月に施行した「都市公共トイレ設計基準(城市公共厕所设计标准)」では、トイレの男女の便器の比率を1:1に定めています。しかし、男と女とでは、トイレにかかる時間などが異なるのですから、これでは、女性用便器が不足してしまいます。

そうした状況に対して、今年2月19日、広州市で、李麦子さん・鄭楚然さんをはじめとした女子大学生が、同市の越秀公園近くの男性トイレを一時的に占拠し、行列を作って待っている女性に男性トイレを使用してもらうパフォーマンスアートをおこなって、女性トイレ不足の解決を訴えました。その後、全国各地の女子大学生たちが同様のアクションをおこない、人民代表大会や政治協商会議の議員に対しても働きかけました(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)。

8月 広州市で若い女性たちが、進まない女性トイレ増設に対してさまざまな抗議活動

けれども、広州市では、その後半年たっても、女性トイレの増設はすすんでいません。

そこで、8月20日、広州市都市管理委員会のオフィスビルの前で、李さんや鄭さんを含めた16人の若い女性が、ふたたび、この問題の解決を訴えるパフォーマンスアートをおこないました。今回は、彼女たちは、各自が作った発泡プラスチック製の便器を広場に置いて、「[女と男の]便器の比率は2対1、そうでなければ女子学生は待ちきれない!」という横断幕を掲げました。各自の便器には、「女性が自分で身につけている便器」と書いてあり、女性用便器が少ないから、女性は自分で便器を持って歩かないといけない、というアピールになっています。

16人の女性は「便器の比率は2対1、そうでなければ女子学生は待ちきれない!」というスローガンを叫んだり、「都市管理委員会への手紙」を読み上げたり、「いつになったら女性トイレの増築は実現するのか?」という意味を込めて、便器や手紙をクエスチョンマークの形に並べたりして、道行く人やメディアにアピールしました。

下がこのアクションのビデオです。

@新浪拍客 女孩背马桶摆阵广州城管委吐槽男女厕位比(2012-08-24)
http://video.sina.com.cn/v/b/84184596-1396400570.html

その後、このアクションの発起人である区佳陽さん・李麦子さん・鄭楚然さんがみんなを代表して、広州市の都市管理委員会の建物に入って、16通の「都市管理委員会への手紙」を届けました。

その手紙の中で、彼女たちは、2011年に広州市の都市管理委員会が「法律を制定することによって、公共の場の、新築・改築・増築する公共トイレは男女の便器の比率が1:1.5以上になるよう設計・建設・検査する」と決めたことには、いちおう賛同しています。「しかし、現在、関連する法規の制定がどの段階までいっているのか全くわかりません。現実に女性トイレの増築はまだ実施されていません」(李麦子さん)。ですから、彼女たちは、広州市の都市管理委員会に対して、できるだけ早く強制的な法律を制定するように訴えています。

彼女たちの訴えに対して、都市管理委員会は、陳情に責任を持つ鄧さんという人が応対し、(「男子トイレ占拠」アクションがおこなわれたすぐ後の)2月下旬に、都市管理委員会は、男女のトイレは、1:1.5の比率で新築・改築・増築するよう各区に通知を出したと答えました。さらに、彼女たちの手紙のうち4通の、差出人の姓名が書いてある手紙については、「これは陳情行為にあたるので、陳情の手続きにしたがって、60日以内に回答する」と述べました。

ただ、鄧さんは、その一方で、「立法で男女のトイレの建設の比率を規定するのは、プロセスがとても長くかかり、手続きを踏んでやらなければならない」とも言いました。

いずれにせよ、李麦子さんによると、彼女たちは、今後は「政府情報公開」の申請をして、都市管理委員会に法規の制定の状況について回答を求めていくということです(1)

8月?~ ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク、全国の公共トイレの調査研究も開始

「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(「性别平等倡导行动网络、Gender Equality Advocacy and Action Network)」>)」(本ブログの記事参照)は、7月におこなわれた夏合宿で、「就業の性差別唱導」計画ととともに、「男女便器比率唱導」計画について話し合っています(2)。「男女便器比率唱導」計画の一つが上記のアクションだったのですが、同ネットワークは、同時に、男女の便器の比率についての調査研究も開始したようです。

10月15日、同ネットワークのサイト「性別平等網(性别平等网)」に、「男子トイレ占拠から半年余りが経ちましたが、全国各地でトイレを待つ女性たちは、相変わらず苦痛にあえいでいます。北京・広州・深圳以外の地区は、まだトイレを改築する政策や法律を出していません。政策を変えさせ、女性のトイレ難の問題の解決を促進するために、私たちは、全国の公共トイレの比率の調査研究をおこないます。調査研究をする都市には、北京・天津・蘭州・西安・南京・杭州・武漢・済南・広州が含まれます」と述べている文が掲載されています(3)

上の文は、具体的には、杭州で調査研究をおこなうボランティアを募集している文なのですが、ボランティアたちの団結を固め、ジェンダー意識を向上させるために、読書会とサロンもおこなうとしています。

このプロジェクトの行動の期間は、第1期は、2012年10月21日~11月30日、第2期は、2012年12月1日~2013年1月1日とのことです(これは、杭州市についての話なので、他市では期間が異なるのかもしれません)。「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」の9月26日の「性差別撤廃討論群会」の記録には、「全国のその他の地方でトイレ報告をする必要があるか……武漢の夏合宿で始動、トイレ1周年のときに発表、李麦子と湯倩がアンケート調査を整理・修正」(4)(下線は遠山による)とありますので、今年いっぱいは調査をして、来年2月に調査報告を発表するのであろうと思います。

10月 北京市、男女の便器の比率の基準を、現行の1:1から1:2以上(1:1.5以上と報じているメディアもある)に変更することを表明

10月12日、北京市の市政市容管理委員会(北京市の衛生、環境インフラなどを管轄する)が『新京報』の記者に明らかにしたところによると、北京市では、来年から施行される新しい公共トイレ基準では、男女の便器の比率を、現行の1:1から1:2かそれ以上に変更することになりました(5)(ただし、1:1.5以上と報じているメディアもあります(6))。

この新しい基準が施行されると、新しく建設される公共トイレは、この基準に沿って建築されることになります。すでにある公共トイレについては、改築できる条件があるか否かによって、改築するかどうかを決めるということです。ただし、小売業やホテルなどには、この基準は強制はされません。

すでに、2010年~2011年に、福建省や広東省珠海市、広東省広州市などで、男女の便器の比率を1:1.5以上にする意見や条例が出されていますが(7)、もしも男女の便器の比率を1:2以上と規定するのだとしたら、北京市が全国で初めてになります。

いずれにせよ、この北京市の決定は反響を呼び、自分の市の女性トイレの情況、市の方針、女性の声などを報じた新聞も幾つかあります(8)

この北京市の決定に、今年の女子大学生らの運動の影響があったのかどうかははっきりしません。以前からの各地の意見や条例の延長線上のようにも見えます。しかし、以前からの変化についても、広東省珠海市の条例(2010年12月施行)の背景には多くの機構や専門家の努力があったと考えられているように(9)、単に上から降りてきたものだとは言えませんから、少なくとも幾分かは、今年メディアで大きく取り上げられた女子大学生らの運動の影響があったのではないでしょうか。

日本では、女性トイレ不足問題について、1980年代末に「女と男のトイレ研究会」が調査研究をおこなって、その女性差別性を明らかにしたり(島田裕巳「女のトイレはなぜ混むか」『私というメディア』[パーソナルメディア 1989年]に詳しい)、各地の議会で質問がおこなわれたりした結果、この問題は少しずつ改善されてきた面があります(本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」参照)。

女性トイレ不足問題は、日本でもそうした地道な努力よって一歩一歩改善されてきたような問題ですし、中国で女子大学生らの運動が即座に大きな成果を上げなくても、不思議はありません。

また、日本でも、現在、この問題はけっして解決していません。たとえば、今年鳴り物入りで開業した東京スカイツリーでさえ、「天望回廊にはトイレが少ない。とくに女性トイレでは、おばあちゃんたちが20人以上も並んでた」(10)というような情況です。

むしろ、この問題については、日本では、個々の場での動きや個別の調査はあるけれども、中国の女性たちのような、全国的で積極的・系統的な運動は(少なくとも今までは)起こすことができなかったように思います。この点は、むしろ、日本の私たちが、中国の女性から学ぶべき点のように思います。

中国の女性たちの運動は、私などにもそうしたことを考えさせますが、インドの女性たちも(インドでは女性トイレの少なさが非常に深刻な問題だそうです)、中国の女性の「男子トイレ占拠」アクションに刺激を受けたことが報じられています(11)。そうした意味で、中国の女子大学生の運動は、国境を越えたインパクトを持っていると思います。

(1)以上は、「 16女孩背马桶摆阵广州城管委 吐槽男女厕位比例」新浪広東2012年8月21日(来源:南方網)、「 16名女大学生半年前曾发起“占领男厕”,昨日行动“升级”“坐”马桶致信城管委」『羊城晩報』2012年8月21日。
(2)嵘嵘「“女性公民社会参与暨性别平等”夏令营 在北京成功举行 (附评估表) 」性别平等倡导计划2012年7月27日。
(3)全国公共厕所厕所比例调研——杭州站志愿者招募」性別平等網2012年10月15日。
(4)郭小花「“消除性别歧视讨论”会议记录(20120926)」性别平等倡导计划2012年9月26日。
(5)北京新建公厕男女厕位1∶2 明年起实施」人民網2012年10月13日(来源:新京報)。
(6)北京男女公厕配置比例明年将调整为2:3」新浪新聞2012年10月15日(来源:中国广播网)。
(7)以下のような意見や条例が出されています。
 ・2010年11月に福建省政府事務局が出した「都市の公衆トイレ建設に関する実施意見(福建省人民政府办公厅关于福建省城市公厕建设的实施意见)」は、新しく設置する公衆トイレの男女の便器の比率を1対1.5から1対2の比率にすることを規定した(二-(二)の箇所)。
 ・2010年12月 珠海市が施行した「珠海市婦女権益保障条例(珠海市妇女权益保障条例)」が、「新しく建築または改築する公衆トイレでは、女性の便器の比率は男性の便器の比率の1.5倍以上でなければならない」と初めて明確に規定した(第22条)。
 ・2011年 広州市が制定した「公共トイレの女性便器比率の向上を実施することに関する意見」では、今後広州市の場所の新しく建築される公共トイレは、男女の便器の比率は、1:1.5より低くてはならないことを定めた。
 (以上については、本ブログの記事「公衆トイレなどの便器数の男女比を改める動き」も参照してください。)
 ・2012年6月に制定された「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例(深圳经济特区性别平等促进条例)」も、意見募集稿では、「公共の場所での公共トイレおよび公共施設がトイレを新築・改築するときは、女性トイレの建築面積と便器の数を増やさなければならない。女性トイレの便器の数は、男性の1.5倍未満であってはならない。」(第29条)と規定していました。しかし、実際に制定された条例では、「市・区の政府及びその関係部門が公共サービスを提供する、あるいは公共の場所に母子室・公共トイレなどの公共サービス施設を建設するときは、女性の特殊なニーズにも注意を払わなければならない。/市のジェンダー平等促進機構が公共サービスあるいは公共サービス施設が女性の特殊なニーズを考慮していないと考えたときは、関係単位に改善提案をすることができる。関係単位は書面で回答しなければならない。」(第13条)という、数値を挙げない条文になりました。
(8)南京城管称今后新建公厕将考虑增加女厕位」新浪江蘇2012年10月15日(来源:南京日報)、「女性如厕难厕位何时增 市民呼声:增加女性厕位」広西新聞網2012年10月31日。
(9) 2010妇女权益年度报告」『中国婦女報』2011年1月4日。
(10)「異常人気! 東京スカイツリーに昇った人に聞いた『ここにちょっぴりがっかりした』」『週刊ポスト』2183号(2012年6月8日号)p.57。また、平林純氏は、労働省令第43号「事務所衛生基準規則」で定められている「最低レベル」に沿ってトイレを作った場合、実は「女性便所の方が男性便所より必ず混雑する」という問題が生じる、なぜなら、女性の方が男性よりもトイレで時間が掛かるにも関わらず、男女ともに「トイレの数が同じ個数」とされていることを指摘しておられる「法律が決める「トイレの数」は男女不平等だった!?」(雑学界の権威・平林純の考える科学2011年11月23日)。すなわち、中国の旧い規定と同じ問題があると言えます。
(11)Priyankka Deshpande“China's 'Occupy men's toilet' drive inspires city's women”mid-day.com2012-03-02(中国語訳[翻訳:辛婷、校対:孫葉竹]「中国“占领男厕所”运动鼓舞印度女性」社会性別与発展在中国サイト2012年3月28日)。日本のブログやメディアにも、「中国の女性たちによって始まった“男子トイレを占拠せよ”運動がインドへ飛び火へ」(サムライ英語 with 韓国・中国語のすゝめ2012年3月3日)、「【インド】 女性が “おしっこ権” を叫び立ち上がる / インド政府も承認」(ロケットニュース2012年6月20日)という記事が掲載されています。

教育部、大学入試の男女差別について、外国語専攻などの専攻名を挙げつつ正当化――女性団体はすぐ反論

中国では、一部の大学の一部の専攻、とくに外国語専攻などで、「多すぎる」女子学生の人数を抑制しようとして、男女別に合格者数を決めているために、そうした専攻では、女性の入試合格ラインが男性より高くなっています。今年7月以降、このような男女差別に対して批判が高まり、女子大学生らによる街頭での抗議活動もおこなわれてきました(本ブログの記事「一部大学・専攻の入試合格ラインの男女差別に対する批判高まる」「大学入試の男女差別に対する抗議活動つづく――差別を正当化する教育部を批判して、坊主頭になるパフォーマンスアートも」参照)。

その中で、8月9日、女性活動家の呂頻さんと黄溢智弁護士が、「政府情報公開条例」(2007年4月公布、2008年5月施行)にもとづいて、教育部(日本で言う文科省)に対して、「2012年の大学入試において、教育部は、どの大学のどの専攻の男女の採用比率の制限を批准(承認)したのか? その根拠は何か?」(原文の文字に色がついているわけではなく、文字に色を付けたのは、私[遠山]です。以下も同じです)という点の情報を公開するよう申請しました。

それに対して、教育部から、8月23日付けで、「国家の利益を考慮して、一部の特殊な職業あるいはポストの特殊な専門的人材を養成するために、特定の手続きを経て、少数の学校は一部の専攻で男女の学生募集の比率を適当に調整することができる」という回答が返ってきました。

この回答は、まったくと言っていいほど、呂さんや黄弁護士の質問に答えていません。8月30日、広州で4人の若い女性が坊主頭になって、教育部の回答に抗議しましたが、彼女たちが坊主頭になったのは、「教育部の回答はゼロに等しい」ということを訴えるためでもありました。

北京衆沢女性法律相談サービスセンターの情報公開申請

教育部の回答が無内容だったので、8月28日、北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター(1))は、教育部に対して、以下のような情報公開申請をしました(2)

1.一部の大学の一部の専攻が2012年の大学入試で男女を区別して合格させ、かつ合格ラインが明らかに女が高く男が低い現象に対して、貴部は2012年8月23日に北京の黄溢智弁護士への回答で、「国家の利益の考慮にもとづいて、一部の特殊な職種あるいはポストに対する特殊な専門の人材の養成は、少数の学校の一部の専攻は適当に男女の学生募集の比率を調整することができる。……」と述べているが、「何が国家の利益の考慮なのか」? 「一部の特殊な職種あるいはポスト」とは、どのような職種あるいはポストなのか? 「少数の学校の一部の専攻」とは、どのような学校のどのような専攻なのか? ということを貴部はもっと対外的に公開して明確にしていただきたい。

2.貴部は2012年の大学入試の学生募集で、あるいくつかの大学のあるいくつかの専攻で男女の学生の採用比率を制限できることを批准したのか否か? その根拠は何か? を法律にもとづいてすぐに公開していただきたい。


9月18日、教育部から、10月15日まで回答を待ってほしいという返事が来ました(3)(「中華人民共和国政府情報公開条例」の第24条には、「行政機関は(……)申請を受理した日から15業務日以内に回答しなければならない。回答期限を延長する必要があるときは(……)、これを申請者に告知しなければならない。回答を延長する期間は、最長で15業務日をこえてはならない」とあります(4))。

教育部の回答――3つの類型の専攻を挙げて、それぞれ男女差別を正当化

10月15日、教育部は、北京衆沢女性法律相談サービスセンターに対して、以下の回答を送ってきました(5)

北京衆沢女性法律相談サービスセンター:

本機関はあなたが郵便という方法で提出した情報公開申請を受け取った。ここに以下のようにお答えする。

いささかの特殊な職種・職業の特徴と教育のリソースの配置の現実の情況にもとづき、「高等教育法」「婦女権益保障法」に違反しないという条件の下で、現在、大学が男女の学生募集の比率をはっきり決めることが許される特殊な専攻には、以下の3つの類型がある。

1.特定の職業上の必要と密接に関連しており、かつ職業に男女の比率に対して要求がある専攻、たとえば軍事、国防、公共の安全などの専攻

2.女性を保護する視点から、適当に女性の出願を制限する、たとえば航海・採鉱などの専攻

3.一部の専門の教育のリソースに限りがあって、学生募集の数に限りがあり、かつ社会的ニーズに一定の性別のバランスがある専攻、もし男女の比率を制限しなければ、重大な男女の比率のアンバランスが生じる可能性があって、実質的に教育の効果と社会の利益に影響して、国家の関係部門のニーズにも影響がある専攻、たとえば、一部のあまねく通用しない言語の種類
[=「小語種(英語以外の外国語)」]、播音主持[キャスター、アナウンサーといった仕事のようです]の専攻など。

教育部は、上述の専攻を開設している大学が男女の募集の比率を決めることを許可しており、その比率は一般に1対1に規制している。大学は法にもとづいて学生募集の自主権を有している。大学はこのような特殊な専攻では養成のニーズにもとづいて男女の学生募集の比率を設定することができ(その他の専攻は設定してはならない)、教育行政部門あるいは上級の主管部門に報告し、それが受理されれば公表することができる。男女の学生募集の比率を設定している大学の学生募集要項と学生募集規則は、教育部の「陽光高考(http://gaokao.chsi.com.cn)」プラットフォームでみな事前に公表している。

以上、ご通知まで。

教育部政務公開事務局
2012年10月15日


この回答は、北京衆沢女性法律相談サービスセンターの質問に対して、「一部の特殊な職種あるいはポスト」とはどのような職種あるいはポストなのか? という点には答えていますが、「国家の利益」とどういう関係があるのか? というような点には答えていません。

李麦子さんが情報公開申請

上の教育部の回答を読んで、誰もが疑問に思うのは、「男女の比率のバランスを言うなら、男性が多い理工系などはどうなのか?」という点です。

実際、8月に教育部に抗議して坊主頭になった女性の1人である李麦子さんは、教育部の回答を読んで、翌々日の10月17日には、教育部に対して、次のような情報公開申請をしました(6)

2012年の大学の学生募集において、貴部は、どの大学のどの専攻で、ジェンダー平等のニーズにもとづいて、男子学生の合格ラインを上げることによって、女子学生の採用比率を増やして、男子学生が多い専攻での女性の教育の機会を保障したのか?


北京衆沢女性法律相談サービスセンターの建議書(反論)

10月19日、北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、教育部の回答に対して、以下の建議書を出しました(7)

教育部の公開申請の返答の意見に関する建議書

教育部政務公開事務局:

まず、貴機関が法定の手続きと時限どおりに、私たちが貴機関に申請した2012年大学入試の学生募集の性差別現象の公開について回答をしたことを非常に賞賛する。私たちはそれと同時に、2012年8月23日に貴機関がこの問題についておこなった回答と比べて、今回の回答は、いくらか実質的な内容があることにも注目している。私たちは、貴機関にとって、そのこと自身が、広く建言の道を開き、多くの人々の考えを取り入れることによって、業務を真理を求め実際を重んじるようにする有利な機会になるとも考える。

私たちの2012年8月27日の情報公開申請の手紙の原文と照らし合わせると、貴機関の回答について、私たちには、まだ以下のように幾つかわからないところがあり、貴機関にもっと明確にしていただきたく思う。それと同時に、私たちは、私たちの意見と建議が、貴機関がこの問題を処理する助けになることを願っている。

一、貴機関の返答の意見の第一条について

貴機関は、返答の意見の中で、「特定の職業上の必要と密接に関連しており、かつ職業に男女の比率について要求がある専攻、たとえば軍事、国防、公共の安全などの専攻」と述べている。貴機関は、国防・公共安全などの職業の類が、どのように女性に適していないから、女性の採用を制限するのかを、もっと明確にしていただきたい。

私たちの考えでは、私たちは、女性が必ずあるいくからの職業には当然適さないとは考えてはならない。私たちが検討しなければならないのは、このような専攻の女性に対する排除である。例を挙げると、現在国防・安全の中では(たとえば情報戦)、技術と知力に対する要求が日増しに高まり、体力に対する要求は日に日に減っている。この領域に存在する問題の一つは、若干の女性の士官は、大学院受験や博士課程受験という方法によって軍隊における自分の地位を向上させ、揺るぎないものにしたいと望んでおり、高学歴であることは軍備縮小と退役の確率を減らすことができるにもかかわらず、募集の際には各単位が女の兵卒が出願することを制限しているという制約を受けるかもしれないことである。同時に、現実にますます多くの非常に優秀な女性特殊警察部隊と女性宇宙飛行士が出現しているのであって、このことは、特定の職業の男女の比率を制限する要求は、実質的には女性に対する排除であることを十分に説明している。私たちはもうすでに性別が原因で、人為的に多くの潜在的に優秀な女性兵士、女性警官、女性宇宙飛行士の出現を制限・剥奪しているのではないだろうか?

ここにおいて、私たちが真に必要なことは、女性を排除している制度自体を真剣に検討することであって、「存在することは合理的である」ということを当然の正当な理由として、女性の教育と就業についての憲法上の権利を制限し剥奪することであっては絶対にならない。これは最大の不公正であり、特定の職種と職業の損失でもある。

二、貴機関の返答意見の第二条について

貴機関の返答の意見は、「女性を保護する視点から、適当に女性の出願を制限する、たとえば航海・採鉱などの専攻」と述べている。航海・採鉱などの専攻で女子学生を制限することが、どのように女性を保護するという目的を実現することになるのか? 男性が航海・採鉱の職業につけば、保護は不要なのか? ということを貴機関にはもっと明確にしていただきたい。

現在の国際社会が平等の問題においてすでに基本的に到達している共通認識で、私たちが提唱・追求しているのは、結果の平等(実質的平等とも言う)であって、けっして形式的平等と保護的な平等だけではない。遺憾なことに、国家の最高教育主管機関である貴部がやっているのは、依然としていわゆる「女性を保護する」保護的な平等の観念と教育関係政策であり、その実質は、保護の名の下に差別をしているのである。

私たちが検討しなければならないのは、なぜこれらの専門の労働の環境が女性に適合しないのかということである。私たちは、これらの単位が積極的に従業員の労働条件を改善して、男性にも女性にも適合した労働環境を提供することを奨励・強制するべきであって、現状を前提として、女性が教育を受ける権利、就業する権利を排除するべきではない。

三、貴機関の返答意見の第三条について

貴機関の返答の意見は、「一部の専門の教育のリソースに限りがあって、学生募集の数に限りがあり、かつ社会的ニーズに一定の性別のバランスがある専攻、もし男女の比率を制限しなければ、重大な男女の比率のアンバランスが生じる可能性があって、実質的に教育の効果と社会の利益に影響して、国家の関係部門のニーズにも影響がある専攻、たとえば、一部のあまねく通用しない言語の種類、アナウンス専攻など」と述べている。貴機関は、次の点をもっと明確にしていただきたい。
(1)土木・電子・航空など男子学生が絶対的な主導的地位を占めている理工科の専攻において、各大学が女子学生のために入試の合格ラインを下げることは、なぜ、ほとんどおこなわれてこなかったのか?
(2)小語種
[英語以外の外国語]・播音主持[キャスター、アナウンサーといった仕事のようです]の専攻で女子学生の採用を制限することは、具体的にどのような社会的ニーズ、教育的効果、社会的利益、国家の関係部門のニーズと、どのような関係があるのか?

これらの専攻が実際に口にしているのは、男性を入れるという問題である。私たちは、国家は社会的多様性(性別の多様性を含む)を確保する視点から、男性を優遇する政策の正当性を論証することはできると考える。けれども、そのような多様性の実施した結果は、女性に対しても有益なものでなければならず、排除、ましてや傷害であってはならない。そうでなければ、それは不当なものである。上述の専攻が女子学生の採用を制限することは、この原則に反しているのだから、どうして合理的で正当だと言うことができようか?

「国家の関係部門のニーズに影響する」という理由は、なおさら成り立たない。私たちは、教育はまず個人のニーズと追求を満たさせなければならないと考える。遺憾なことに、この回答は、個人が教育を受けるニーズにはまったく触れておらず、「社会のニーズ」だけを強調しており、公民の権利に対して冷淡である。私たちには、職業市場のニーズによって差別的な教育の正当性を論証することは許されない。この回答は、完全に市場のロジックが浸透している典型的な例である。就業市場の性差別を矯正しようとすれば、教育で差別をしないことこそが最も重要である。国家は正義の最も重要な実施者・擁護者として、まず国家機構の採用における公平(性別の公平を含めて)、とくに社会的マイノリティの包容を保証しなければならない。多元的社会において、偏向した政策を用いることは、「排除」するためではなく、「包容」するためにのみ許されるのであり、「排除」する結果をもたらすことは、不正義である。

私たちはまた、社会公衆が返答意見について、みんながそろって述べているキーポイントになる問題に注目している。それはすなわち、なぜ教育のリソースが不足していたら、女性の利益を犠牲にしなければならないのか? 女性の利益を犠牲にすることと、国家の利益にもとづく考慮とはどんな関係があるのか? いつ大学入試の時に男性が絶対的に主導的地位を占めている理工系の専攻の学生募集で各大学が女子学生に合格ラインを下げた例があったのか? ということである。もし本当にいわゆる男女の比率のバランスをとろうとすれば、すべての専攻の男女両性の比率のアンバランスの現象に対して、対等で合理的な規制の措置を同時におこなわなければならず、男性が絶対的多数を占める理工科の専攻の女性のために、合格ラインを下げなければならない。しかし現在おこなわれているのは、各大学が一方的に女性に対して大学入試の採用の敷居を高くしていることだけである。このように一方的・選択的に男性の合格ラインを下げる行為は、明らかに女性の教育についての性差別になる。(以下略)

四、貴機関の返答意見の第四条について

私たちは貴部の「陽光平台」から各大学の学生募集要項と学生募集規則を見つけることはできるけれども、貴部が2012年に、どの大学のどの専攻が男女別に分けて合格ラインを決めることを批准したのかという情報を見つけることはできない。一歩譲って、「陽光平台」プラットフォームで公表されているすべての大学の性別を制限した学生募集要項自身は、みな教育部が批准したものだと理解していいのだろうか? もしその答えが、肯定であるならば、私たちはこう尋ねなければならない。教育部の批准の根拠は何であるのか?

もし貴部自身の批准の根拠が成り立たないのならば、その批准という行為自身が法律・法規の規定に違反している疑いがある。明らかに、貴部はまだ本当にこの問題に普遍性・重大性・女性に対する一方的差別という本質があるところに気づいていない。

(中略)このように長期的な利益を犠牲にして、短期的な利益を得る差別的なやり方は、ジェンダー意識が欠けているあらわれであるだけでなく、国家の法律に対する侮蔑であり、わが国が署名した国際条約上の義務に反している。

(以下略)

北京衆沢女性法律相談サービスセンター
2012年10月19日


この回答は、同センターの呂孝権弁護士が女行郵件組(メーリングリスト)で他の人々からも意見を出してもらうなどしてまとめたもののようです(8)

市場のニーズが国家の政策にも完全に浸透

以前もこのブログで述べたように、2005年に北京大学の小語種選考で男性より女性の合格ラインを高くしていたことが問題になって、その翌年、教育部は「教育部の批准なしに、大学が勝手に男女の合格比率を規定してはならない」と定めました。北京大学では、その後はそうした男女差別をやめたこともあって、それで問題は解決したとみられていました。

しかし、今回明らかになったのは、さまざまな大学の男女差別に教育部がお墨付きを与えているという深刻な事態でした。

北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、教育部の回答について、「職業市場のニーズによって差別的な教育の正当性を論証」しており「完全に市場のロジックが浸透している」と指摘しています。日本も市場の論理(資本の論理と言った方がいいかもしれません)に対する国家の規制が非常に弱く、大学もその聖域ではけっしてないと思いますが、中国は、現在、大学入試において、点数による形式的平等さえもが侵犯されていると言えます(日本でも都立高校などの問題はあった)。

女性に対する保護という点については、日本の戦後の公務員採用においても、以前、いくつかの職種での女性の排除があったと記憶しています。

大学入試の男女差別を社会問題化させた点は成果

男女差別の実態は深刻ですが、今回、それを支える教育部の政策を明るみに出したことや、大学入試の合格ラインの男女差別問題を大きな社会問題として注目させたことは女性の運動の成果だと思います。

その一つの力になったのは、今年、さまざまな他の問題で行われている女子大学生らのパフォーマンスアートでしょう。パフォーマンスアートは、8月19日の男女で異なるハードルを書いたパネルを使ったものと、8月30日に坊主頭になったものの2回おこなわれていますが、8月30日に広州で4人の若い女性が坊主頭になってによって「教育部の回答はゼロに等しい!」と回答の無内容さを強烈に訴えた(翌日に北京でもおこなわれた)ことが、今回の教育部の若干具体的な回答につながったのかもしれません。

大学入試の合格ラインの男女差別問題を社会問題にしたもう一つの要因は、2008年に施行された政府情報公開条例をうまく使ったことだと思います。「意見書」や「建議」だけですと、政府も法律的には回答する義務はないように思いまですが、情報公開条例の場合はそうはいきません。

しかも、単に1つの団体(または1個人)が情報公開申請をしたのではなく、呂頻さんや黄溢智弁護士に対する回答を受けて、北京衆沢女性法律相談サービスセンターがより具体的な情報公開を求めたことが、より突っ込んだ回答につながった面もあると思います。

第三に、新聞報道などにはあまり出てきませんが、微博、ツイッター、フォーラム、メーリングリストといったネット上の個人の発言がこれまで以上に活発におこなわれたようで、それらの間でも連係プレーがなされたという点もあるかもしれません。

(1)名称を変更した経緯については、本ブログの記事「北京大学、女性法律研究・サービスセンターを切り捨て──人権NGOに対する政府の締めつけの一環か?」参照。
(2)北京众泽妇女法律咨询服务中心申请教育部公开有关男女分性别招生的信息」北京众泽妇女法律咨询服务中心サイト2012年8月27日。
(3)2012年9月24日,中心收到教育部政务公开办公室书面信函答复」北京众泽妇女法律咨询服务中心サイト2012年9月24日。
(4)中华人民共和国政府信息公开条例」中国政府网。同条例については、岡村志嘉子、刈田朋子「中国の政府情報公開条例[pdf]」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』235号(2008年3月)が翻訳と解説をしています。本稿の翻訳は、岡田・苅田両氏の翻訳を使わせていただきました。
(5)教育部10月15日高考招生性别歧视政府信息公开申请延期答复意见(全文)」北京众泽妇女法律咨询服务中心サイト2012年10月16日。この教育部の回答と、それに対する女性たちの反応を伝えた記事としては、「教育部回应高考招生性别“歧视”:不限制男女比例会影响教育效果」财经网2012年10月17日、「公益人士呼吁教育不应顺应就业性别歧视潮流」中国新聞網2012年10月19日(来源:工人日報)、「教育部回应高招性别歧视 三类专业可限招女生」騰訊網2012年10月19日(来源:京華時報)。そのうち、「教育部回应高考招生性别“歧视”:不限制男女比例会影响教育效果」(财经网2012年10月17日)が最も詳しく報じており、教育部は1:1と言っているのに、国際関係学院は合格者の男女比を7:3にしていることも指摘しています。
(6)“光头姐”再问:哪些专业可限招男生?」『羊城晩報』2012年10月19日。
(7)关于教育部公开申请答复意见的建议书」北京众泽妇女法律咨询服务中心ブログ2012年10月19日。
(8)女行郵件組は未公開ですし、私も加入していませんが、google groupのフォーラムに転載されたものから、その一部を読むことができます(「 Fwd: [女行邮件组] 从社会正义的角度来评估教育部的回复——我的个人看法」性别平等倡导计划2012年10月17日)。また、その中で出されて、北京衆沢女性法律相談サービスセンターの建議書の重要な構成部分になった意見については、性別平等網でも公開されています(「从社会正义的角度来评估教育部的回复」性別平等網2012年10月18日)。

WANに「中国の女子大学生の『男性トイレ占拠』アクションと日本のメディア」掲載、および日本の女性トイレ不足問題

 私が先日、WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)サイトに投稿した「中国の女子大学生の『男性トイレ占拠』アクションと日本のメディア」が、本日、同サイトに掲載されました。よろしければ、お読みください。

 上の文章は、私が昨月このブログ紹介した「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」に対する、日本のメディア(とくにネットメディア)の取り上げ方を批判したものです。昨月のこのブログの記事では、日本のネットメディアの記事について、「記事の内容そのものは、本国や欧米の報道に依拠していたため、特にひどいものではありませんでした」と書きましたが、よく見ると重大な問題がありましたので、その点を中心に書きました。

 以下では、日本における女性トイレ不足問題――本当は単なる「不足」ではなく、男性との「不平等」「差別」なのですが、ここでは、「不足問題」と略します――については、すでに上記の「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」の9でも少し述べましたが、今回WANに掲載した文章を書く過程でもう少し調べたことについて、報告させていただきます。なお、この件に関しては、被災地や議会、大学のトイレの問題も重大なのですが、今回は省略させていただきました。

<目次>
1.「女と男のトイレ研究会」の報告
2.新聞記事などから
3.田植え時の女性トイレ問題

1.「女と男のトイレ研究会」の報告

 私が見たかぎりでは、日本の女性トイレ不足問題ついての最も詳しい報告は、「女のトイレはなぜ混むか」(島田裕巳『私というメディア』パーソナルメディア1989年所収)のようです。この文は、島田氏の著作ですが、なぜか一貫して「私」ではなく、「私たち」という人称を使っています。その「私たち」というのは、「女と男のトイレ研究会」のことのようです(1)

 「女と男のトイレ研究会」とは、後で言及する【1】~【3】の3つのグループがもとになって発足した会ですが、彼女たち(島田氏は男性だが)は、堺市の小中学校、京都府・京都市の施設(観光地の公衆便所、公園の中の公衆トイレ、小中学校、体育館・スポーツセンター、京都会館など)・デパート・病院、東京都のデパート・劇場・区の施設、高速道路のパーキングエリアについて、男性用と女性用のトイレの面積と便器の個数を調査しました。彼女たちは、以下のような問題意識の下に調査をおこない、以下のような結論を得ています。

(問題意識)
 女のトイレが混んで、男のトイレは混んでいない。もしこれが事実なら、これほどの不平等はあるだろうか。社会はどうしてそれを放置したままにしているのだろうか。女性の社会的差別を問題にする人たちも、どういうわけかこれを問題にしていない。それが私たちの研究の出発点だった。(p.192)

(結論)
 こうして私たちの調査によって、女性用のトイレがどこでも少ないことが明らかになった[遠山注:ここで言っているのは、ほとんどの施設のトイレで、男性用便器よりも、女性用便器のほうが、数が少なかったということです]。改めてこの数字を見てみると、不思議に思える。明らかに女性は差別されているのである。しかし、誰もそれを差別だと思っていない。少なくとも、これまではそう思われてはいなかった。数が少ない以上、混雑するのは目に見えている。しかも、女性は所用時間が長く、多目的にトイレを利用する。子どもを連れていたり、生理ということもあって利用せざるをえない。さらに、場所によっては女性の集まる数が圧倒的に多かったりする。(p.204)


 つまり、彼女たちは、明らかに女性に対する差別であるにもかかわらず、それが問題にされてこなかったことを問題にしたわけです。

 また、女性用便器が男性用便器よりも少ない原因については、以下のように述べています。

 おそらく建築家にはトイレを作る時の常識のようなものがあるのではないだろうか。設計図を引く時に、男女の面積が一緒である方が図面が引きやすい。対照的な形の方が見た目も美しいのである。そういった感覚は現実はまったく考慮にいれていない。私たちが調査したどの建物を見ても、女性用の混雑を配慮したものはなかった。(p.206)

 面積を同じにすれば、自ずと女性用の便器の数が少なくなる。(p.200)


 阪急や近鉄のようなデパートの場合は、女性用の方のトイレの面積は広くなっているけれども、便器の個数はやはり女性の方が少なく、京都市の体育館の場合は、面積からして、男性の方が広くなっていることも報告されています(p.201,203)。

 体育館について言えば、「スポーツは男性のもの」という考えないし実態があったということなのでしょう。下で紹介する新聞記事などを読むと、高速道路や国鉄(現在のJR)についても、同様の傾向があったようです。

2.新聞記事などから

 次に、私は、1980年代終わりごろからの、女性用トイレ不足問題を扱った新聞記事や単行本中の記述について、年表形式でまとめてみました。といっても、『朝日』『毎日』『読売』のデータベースを利用して「女性andトイレ」で全文検索して、関係がありそうな見出しの記事を読んだだけですので、漏れが多数あると思います。まして単行本に関しては、さらに漏れが多いでしょうが……。

1987年
 ・堺市の小学六年生の女子生徒3人が、自分たちの小学校でトイレの数、所要時間、トイレについて困っていることを男女別に調査、大阪市の統計グラフコンクールで二席に入賞(「“男中心社会” に小さな疑問/校内トイレなぜ/女の子は困っている/堺市の小学六年三人が調査/男子42個―17秒 女子28個―30秒/数が少ないのでいらいら行列」『読売新聞』1987年10月19日夕刊[未見])。【1】
 ・第3回トイレシンポジウムで、広瀬洋子・島田裕巳両氏が「なぜ女はがまんを強いられるのか:男女別トイレの社会学的考察」を発表。男女別のトイレ利用時間、環境庁の「自然公園等施設整備技術指針」、東京都内のデパートの現状など報告(日本トイレ協会『「第3回トイレシンポジウム」トイレ論文・作文集』地域交流センター 1987年 p.97-100)→『朝日新聞』の「天声人語」でも取り上げられる(「トイレシンポジウム」1987年11月25日朝刊)。【2】
 ・桂坂の会・女の目で見るまち研究会『女の街づくり宣言 京都発』(学芸出版社 1987年)が、男女の便器数の格差も批判(p.80-81)。【3】

1989~90年
 「女と男のトイレ研究会」(上の【1】~【3】のグループが元になって発足した会)の研究成果が発表される。
 ・島田裕巳「女のトイレはなぜ混むか」『私というメディア』(パーソナルメディア 1989年)。
 ・広瀬洋子「トイレを開ければ社会が見える」『からだの科学』no.152(1990年5月)。

1991年
 ・『読売新聞』の「編集手帳」が高速道路のトイレ数における男女差別を指摘(「高速道路のトイレにみる性差別」1991年10月1日東京朝刊)。

1993年
 ・尼崎の女性7人が女性の視点から公共トイレを検証した本である、トイレ探検隊『トイレ見て歩記』(1993年)が、女性トイレの不足問題にも言及(p.5,6,37など)→この本は、「公衆トイレ、女性に不安 公園や地下街を尼崎の主婦7人が『探検』」(『朝日新聞』1992年2月11日朝刊)、「公衆トイレ、1年がかり『見て歩記』、兵庫・尼崎市の主婦7人が自費出版」(『読売新聞』1993年4月21日大阪朝刊)という形で新聞にも取り上げられる。

1994年
 ・大阪ドームに催しの内容によって男性用を女性用に変えられるフレックス型のトイレが1997年春に導入されると報じられる(「大阪ドームにフレックス型トイレ 男性用が女性用に早変わり イベントに応じ」『読売新聞』1994年2月2日大阪夕刊)。
 ・埼玉県の所沢市議会で、中嶋里美議員が「公共施設の女性トイレの広さ」について質問、女性トイレ拡大を求める(平成6年第4回 埼玉県所沢市議会会議録4号)(「女性用トイレに注文『公共施設で増設を』 所沢市議会で質問」『朝日新聞』埼玉1994年12月14日朝刊)。

1995年
 ・「渋滞」で評判の悪い劇場や公共施設の女性用トイレが、相次いで大拡張されていると報じられる。日本道路公団でも、平成元(1989)年から、サービスエリア改修の際、女性用を多めに設置しているという(「増えてゆったり 女性トイレ“革命” “大渋滞”解消図る劇場や公共施設」『読売新聞』1995年11月6日東京朝刊)

1996年
 ・埼玉県住宅都市部女性トイレレベルアップ検討会『女性トイレレベルアップに向けて』刊行[未見]。現在の便器数の男女比の平均は、公園施設が2対1、劇場・ホールが1.2対1であり、女性トイレが少なすぎるので、便器数の男女比を4.2対5.8にすべきと指摘。この報告は改修中の施設などに生かされるという(「公共施設のトイレ、便器数は『男性優位』 県の検討会」『朝日新聞』1996年4月17日埼玉朝刊、「トイレの便器数、男女比は2対1――県所有の公園施設/埼玉」『毎日新聞』1996年4月19日埼玉版)。

1997年
 ・「女性のトイレ待ちの列を解消したい」という願いを込めた女性専用トイレが嵐山に誕生した、など(「今日のテーマは『公共トイレ』/その1 女性デザイナー増え『優しく』」『毎日新聞』1997年5月6日)

1999年
 ・三重県を中心とした3組の夫婦で作ったグループが女性用公共トイレの不足などを訴える活動をしているという記事(「女性用公共トイレの整備――ワイワイガヤガヤ・スリーペアーズ/愛知」『毎日新聞』1999年4月14日愛知版)。
 ・JR東日本が、30年ぶりに便器数の男女比の見直しに取り組んでいる。従来の基準は約40年前の利用客をモデルにしたもので、実態とはかけ離れていたという。新基準では女性用が3割ほど増やされる(「駅の女性トイレ大改『増』 列のイライラサヨナラ JR東日本」『朝日新聞』1999年11月11日夕刊)。

2003年
 ・岐阜県の男性職員有志が「岐阜モデルトイレ研究会」を作り、アンケート調査や提言をしたが、その提言の中に「施設の規模や利用者、その男女の比率からトイレの数や規模を決める」という点もある(「公共建築はトイレから 県職員グループ『癒し・ゆとりの空間』提言」『読売新聞』2003年5月30日中部朝刊・岐阜)

2007年
 ・東日本高速道路会社は、女性トイレを増やすことにし、特に混雑の目立つ休憩施設17か所で増設するという(「トイレ『汚名』返上へ 東日本高速、全面改修へ」『朝日新聞』2007年3月26日)。

2009年
 ・西日本高速道路会社は、管内計10か所のサービスエリアとパーキングエリアのトイレで、混雑時に間仕切りを使って男性用スペースの約半分を女性用にする「リバーシブルトイレ」を導入する(「リバーシブルトイレ:男性トイレ仕切り、混雑時は女性用に――西日本高速が導入」『毎日新聞』2009年4月28日大阪朝刊)

2011年
 ・萩市が、市内の公共施設や観光地にある女性トイレの混雑を解消するため、今後、新設や増改築をする場合、女性の便器数の割合を、男性1(小用含む)に対し、2にする整備方針を定めた(「トイレ:比率、男性1・女性2に 公共施設での混雑解消へ、萩市が整備方針」『毎日新聞』2011年6月18日地方版/山口、「女性用トイレ 男性の2倍に 萩市が決定 混雑解消狙う=山口」『読売新聞』2011年6月15日西部朝刊・山口)
 ・大阪で、商業施設のトイレが様変わりしている例として、「女性トイレの行列解消のために男性用の5倍の個室を用意した」という「ルクア」を紹介(「客はトイレでつかむ 女性用は個室大幅増、男性用に化粧台 関西の商業施設/大阪府」『朝日新聞』大阪市内2011年8月12日)。

 また、以下のように、ニュースというよりも、コラム的なコーナーで取り上げられることもあります。
 ・「[読者←→記者]混雑ひどい駅などの女性用トイレ、不便解消の知恵は…」『読売新聞』1989年12月27日東京夕刊。
 ・「[よみうり寸評]劇場の女性トイレ不足」『読売新聞』1994年1月8日東京夕刊。
 ・牧太郎「[憂楽帳]トイレの『平等』」『毎日新聞』1995年5月12日東京夕刊。
 ・奥武則「[憂楽帳]男女不平等論」『毎日新聞』1995年10月19日東京夕刊。

 なお、私がWANサイトに投稿した記事中にも出てくる、1996年5月4日に、女子大学生が台北駅内の男性用トイレを占拠し、当局も法改正を約束した事件については、当時の日本のマスコミでも、300字程度ですが、報道されています(「『女性用』不足に抗議 男性用トイレに女子大生が30人――台北駅」『毎日新聞』1996年5月8日、「『トイレも男女平等に』学生訴え 台湾」『朝日新聞』1996年5月9日東京朝刊)。

 以上のような新聞記事や単行本から見ると、女性トイレ不足は、1980年代末~1995年ごろに特に話題になっ(てその後次第に解決していっ)た問題のように見えます。

 ただ、新聞記事の検索からは、女性トイレの不足問題は、以下のように、投書欄への投書として掲載される場合が比較的多いこともわかりました(執筆者名については、プライバシーを考慮して、インターネット上に書くことは控え、かわりに名前から判断した性別を付記しました)。絶対数としては少ないとはいえ、投書のよる訴えが比較的目立つとことは、一般の人の身近な不満として広く存在することを示している可能性が高いと思うのですが、こうした投書による訴えは、より長い期間、続いているようです。
 ・「五輪もいいがトイレ改善も」(男56歳)『朝日』1991年6月20日。
 ・「トイレ不備が女性の行動に」(女28歳)『朝日』1992年1月22日☆
 ・「女性用トイレには広いスペース必要 提案します」(女32歳)『朝日』1993年4月26日朝刊
 ・「建物は豪華になっても…」(女67歳)『毎日』1994年8月26日東京朝刊
 ・「男女同権はトイレ増設から」(男74歳)『毎日』1994年10月2日地方版/愛知
 ・「少なくて狭い公共女性トイレ」(女48歳)『朝日』1997年11月25日夕刊
 ・「観光地の女性用トイレ、増設を」(男72歳)『毎日』1998年9月1日東京朝刊
 ・「女性用トイレが少な過ぎるから」(女70歳)『毎日』2001年5月3日東京朝刊☆
 ・「男女トイレの区別は臨機応変に」(女61歳)『毎日』2002年2月9日東京朝刊
 ・「女性トイレ、数を増やして」(女52歳)『朝日』2002年3月9日
 ・「女性用トイレ、観光地では不足」(男69歳)『読売』2005年2月11日東京朝刊
 ・「声楽堂の女トイレ、増やして」(男71歳)『朝日』2010年7月22日朝刊
 (☆を付けた2件は、男子トイレに入ってくる女性がいることを非難した投書に対する反論です)

 また、最近でも、相変わらず地方議会では取り上げられているようです。私の住んでいる近辺の議事録を検索してみると、滋賀県議会には見当たりませんでしたが、お隣の京都府議会では、2007年に太陽が丘の広域総合運動公園の女性トイレの不足について議員が質問しており(2)、京都市議会でも、2002年と2008年に、観光地の女性トイレ不足について、2004年と2006年には、京都会館の女性トイレ不足について質問がなされています(3)。議会の質問で取り上げられるということは、かなりの住民が不満を訴えていることを意味していると思われます。

 また、2010年には、一般のオフィス空間でも、女子トイレは「ランチタイム直後の混雑が激しい」などの調査結果がT社から発表されたとのことです(白倉正子「国会議事堂の女子トイレ問題が社会を変える?」日本トイレ協会サイト2010年12月5日)。

 現在でも女性トイレ不足問題が解決していないことは、こうした資料の上からも確認できます。

3.田植え時の女性トイレ問題

 島田裕巳氏(ないし「女と男のトイレ研究会」)は、昔は「劇場や体育館はもともと男性用トイレの方が多く、女性が大量に押し寄せることを考慮していなかった」のに、近年は「都市では、女性の社会進出が進んでいる」ので問題が顕在化したと捉えています(p.206)。

 しかし、いわゆる「女性の社会進出」以前にも、問題はあったようです。

 『朝日』『毎日』『読売』とも、データベースで全文検索が可能なのは1980年代後半以降ですが、『朝日』と『読売』については、それ以前の記事についても、キーワード検索はできますので、検索してみると、1962年に『読売新聞』の「赤でんわ」欄に、農家の主婦のF子さんが、田植えをする際、便所がないことが大きな苦痛になっていると訴えた投書が掲載されており(「のどかな田植え風景の陰に」5月30日朝刊)、その投書が反響を呼んで、婦人面で大きな記事になったことがわかりました(「農村女性の悩み/田植え時のトイレ/お茶さえ飲めない/反響読んだ『赤でんわ』欄の投書/口には出せなかった苦痛」6月12日朝刊)。

 上の婦人面の記事によると、新聞記者が「たまたま東京の本部で開かれていた全国農協婦人組織協調会の役員会に、この問題を問いかけてみたところ、各県から集まっている県会長さん全員が、まったく虚をつかれたという表情で、『いわれてみれば、わたしたちもがんましながら、こうしたものだと思い込んできた』」とのことで、ある方が「私は農繁期には朝食のお茶も飲まないで家を出ます。昼間、ノドのかわきをがまんしているので、夕方家へ帰ると、やたらと湯茶が飲みたくなる。そのため夜は二時間おきくらいにトイレにいきたくなって目がさめる。睡眠不足が翌日のからだにこたえる」と言うと、「ほかの会長さんもうなずく」という情況だったとのことです。

 記者は、「農村婦人にとって、こんなに苦しいことが、いままでとりあげられなかったのはなぜでしょうか」と疑問に思って取材したところ、「男性は大して必要を感じないし、しゅうとめさんはむかしからこうだったと考え、嫁さんははずかしくて口に出せなかった」という情況が浮かび上がったそうです。

 当時も問題が問題として自覚されず、社会的運動の視野にも入っていなかったのは、後に「女と男のトイレ研究会」が調査をおこなった時と同じだったのだな、と思います。ただ、農村女性が1960年代以降、単にそのまま黙っていただけかどうか、わかりませんが……。

 なお、『読売新聞』は、田植え時のトイレ問題の背景として、作業着が和服式から洋服式に変わったので、ハダを隠す方法がなくなったという点も挙げています。時代をさかのぼれば、性や排泄についての意識も現代とは異なっていたのではないかとも思われ、そうした時代の問題のありようは、どのようだったのかな? という疑問もわいてきました。

 以上、非常にざっと資料を見ただけですし、あまりまとまっていませんが、とりあえず調べたことをご報告しました。

(1)ただし、形式上は島田氏の著作ですし、どこまでが研究会の共通認識なのかが明確でありません。国立国会図書館サーチなどで調べたかぎり、研究会の広瀬洋子氏からも、この研究会の調査結果について、ごく簡単な報告が出ていますが、研究会全体としての報告は発表されていようです。この点についても、なぜなのか、疑問を持ちました。
(2)2007年2月定例会健康福祉常任委員会における東徹議員の質問。
(3)それぞれ、順に、2002年11月の中村三之助議員の質問、2008年5月の中野洋一議員の質問、2004年11月のせのお直樹議員の質問、2006年2月のくらた共子議員の質問(質問の場は4人とも「普通決算特別委員会第1分科会」)。

女子大学生の「男子トイレを占拠する」アクション

本ブログでは、これまでも「学校の女子トイレの便器の数を男子トイレよりも多くする規定」「公衆トイレなどの便器数の男女比を改める動き」のように、トイレの便器の男女比率をめぐる動きを紹介してきました。今回は、この2月からおこなわれている、女子大学生の「男子トイレを占拠する」アクションについて、まとめてみました。

《目次》
1.広州でのアクション
2.ターゲットは政府の政策、男性に対しては宣伝と説得を重視
3.各地でアクションを展開
4.アクションの反響
5.今回のアクションと中国のフェミニズム
6.北京などでは弾圧や情報統制も
7.ユニセックストイレについて
8.日本での報道
9.日本の女性トイレ問題は?

1.広州でのアクション(1)

2月19日午前、広州市の越秀公園の正門前の公衆トイレで、数名(20名と報じているメディアもある)の女子大学生が「男子トイレを占拠する」アクションをおこないました。彼女たちは男子トイレを占拠することによって、女子トイレの前で行列している女性を、男子トイレに誘導して使ってもらいました。このアクションの目的は、政府や社会に対して公衆トイレの女性便器の数を増やすようアピールすることでした。

女子学生たちは、男子トイレの前に陣取り、「女性への思いやりは、トイレから(关爱女性 从方便开始)」「女がもっと『便利』になれば、ジェンダーはもっと平等になる(女人更“方便” 性别更平等)」というプレートを高く掲げてアピールしました。

アクションを報道したテレビの録画(中国新聞網より)
视频:实拍女大学生上演占领男厕所行为艺术

トイレに入ろうとした中年の男性が「ここは男子トイレですよ。どうして若い女性が入り口をふさいでいるの?」と尋ねると、女子学生たちは、「女性に先に男子トイレを使わせてもらえませんか? 女子トイレには行列ができていて、我慢できない女性もいるんです。数分後に、また来ていただけませんか?」と言って、その男性に納得してもらうと、女子トレイの前に並んでいた女性に男子トイレに入ってもらいました。

道行く人には、以下のような「男性の同胞への手紙」というチラシを配布して、アクションの趣旨を説明しました。


男の同胞各位へ

驚かないでください。落ち着いてください。私たちは女の「暴徒」ではありません。この「男子トイレ占拠」は、財物のためでも、色欲のためでもなく、ただ、広範な女の同胞が急に便意を催す問題を解決するのを助けるためのものです。

あなたが男子トイレに入るとき、女子トイレには、よく多くの人が行列をしていることに気がつきませんか? あなたが女性と街に遊びに行ったとき、彼女がトイレに行く時間が長すぎることに、不平をこぼしたことはありませんか? 現在、大部分のトイレは、男女の(大)便器の数が同じです。なぜ、女子トイレにはいつも行列ができているのでしょうか?

事実はこうです。一般にトイレでは男女の大便器の数は同じですが、男子トイレには、大便器とほとんど同数の小便器もあります。ですから、男子トイレは女子トイレよりも少なくとも2倍の人を収容できます。しかも、女性は、大便でも小便でも、服を脱いで、しゃがまなければならず、生理的な差異もあるので、トイレに1回行くのに必要な時間は、平均して男性の2倍あまりです。また、一般に小さな子どもは、お母さんに付いて女子トイレに行きますから、そのためにトイレの一部を占有しますし、妊娠期間や月経期間の女性は、一般の女性よりも頻繁にトイレに行きます。トイレに行くのが難しければ、我慢をするしかありませんが、長期にわたって我慢していると、膀胱炎や腎臓病になりやすく、尿毒症にさえなりやすくなります。

人には3つの急なことがありますが、便が急なことが第一です。もしあなたの家族がこうした問題にぶち当たったのに、女子トイレに長い列ができていたら、あなたはどうしますか?

彼女たちがしばらく男子トイレを「徴用」するのを助けるために、入口で見張りをしてください。たとえあなたが行列をしている女性を知らなくても、あなたは、新しい良き男性としての態度を示して、先に彼女たちに男子トイレを使ってもらうことができます。具体的にどうするかは、私たちが見本を示します。

この臨時の措置のほかに、女性のトイレ難を根本的に解決しようと思うなら、私たちと一緒に以下の呼びかけをしてください。

第一に、政府が法律を作って、公衆トイレの女性便器の数を増やして、男女の便器の数が少なくとも1:2になるようにすべきです。

たとえ男女の利用者が同数で、トイレに行く時間も同じだとしても、女性トイレの便器の総数が男子トイレの大便器と小便器をプラスした数と同じになって、はじめて数が同じになります。だから、男女の大便器の比率は、少なくとも1:2でなければいけません。台北市は、男女の大便器の比率は1:5を下回ってはならないと規定しています。上海万博の男女のトイレの比率は、1:2.5でした。政府は、これらの先進的地区の経験を全国に押し広め、各地の立法を整備するべきです。

第二に、ユニセックストイレとバリアフリートイレを、とくにマーケットや病院、広場、駅などの地に増設すべきです。

ユニセックストイレは、独立した空間で、男女の区別はありません。ユニセックストイレは、男女のトレイの異なるニーズの量の問題を緩和できるだけでなく、とくに病院などで、息子が老いた母親を助けたり、夫が妊婦に付き添ってトイレに行く際などの不便をも解決できます。バリアフリートイレも性別の制限はなく、階段・敷居などの障害もなく、スペースはもっと広くて、障害者や老人に便利であるだけでなく、ベビーカーもスムーズに入ることができます。

私たちが女性のために急に便意を催す問題を解決することは、オーバーに騒ぎ立てているわけではなく、「三俗[庸俗・低俗・媚俗]」でもありません。男女や貧富を問わず、ほとんどの人には、急に便意を催す苦しさを体験したことがあります。あなたの身の回りにも、母親とか、妻とか、ガールフレンドとか、女児とか、あなたが守るべき女の人がきっといるでしょう。彼女たちのために、私たちと一緒に行動しましょう。


このアクションの発起人は、北京出身で西安の大学で学んでいる李麦子さん(仮名、李婷婷と書いているメディアもある。彼女の网易微博)でした。李さんは、女子トイレの前には行列ができていて、いつも我慢するのがつらいのに、隣の男子トイレはいつも空いているので、あるとき、男子トイレを「占用」するという考えが浮かんだのでした。彼女が広州で公益活動に参加したとき、広州の女子大学生たちと知り合ったのですが、彼女たちに自分の考えを話したところ、多くの女性が同意して、今回のアクションになりました。

当日は、男性もひとり参加しました。彼は男子トイレの前で「門番」をして、やって来る男性を説得しました。

2.ターゲットは政府の政策、男性に対しては宣伝と説得を重視

このアクションに参加した広州の大学生の鄭楚然さんは、「私たちにとっては、最初から、このアクションは、男性に対するものでも、トイレに対するものでもなく、政策に対するものであることは明確でした」と語っています。

実は、今回のアクションの前に、彼女たちは、あるマーケットで「予行演習」をおこなっており、それ自体は順調にいったのですが、そのとき、参加者の中から、「アクションの場所が、人々の誤解を招くかもしれない。こういう場所でやったら、多くの人は、マーケットの設備の問題だと思って、公共のリソースの配置の問題であることに気付かないだろう」という声が出て、公衆トイレでアクションをすることにしたのです。

このアクションは、男性に対しては宣伝と説得を重視したものだったと言えると思います。上のように男性向けにチラシを作成したこと自体がその表れですし、チラシの内容も、女性にとってのトイレの問題を丁寧に説明するとともに、男性がするであろう経験の話も出し、「自分の母親や妻、ガールフレンドのために」という言い方もして、なんとか男性を説得しようとしています。

インターネットでは、「もしお腹を壊した男性が来たらどうするのか?」という疑問も寄せられましたが、鄭楚然さんは、「当日も、たしかにある男性が、女性がまだ男子トイレにいたのに慌ててトイレに入って行ったことがありました。けれども、各トイレにはドアがあったので、問題は起きませんでした。現在は、世界中にこうしたユニセックストイレがあります」と答えています。

中山大学ジェンダー研究フォーラムの柯倩婷さんも、今回のアクションについて、「プランも巧妙であり、けっして単純に男子トイレを占拠するのではなく、男性と意思を疎通させて、彼らに何分か時間を使って列に並んでもらうことによって、自分で体験してもらい、話題になって討論を呼び起こす目的を達しています」と指摘しています(2)

3.各地でアクションを展開

李麦子さんは、当初から北京と深圳でもアクションをすると語っていましたが(3)、その後、全国各地の女子大学生たちが同様のアクションを繰り広げました。下に、アクションがおこなわれた日と場所、おこなった人をまとめてみました(4)

2月19日 広州市 越秀公園の正門前の公衆トイレ 6人の女子大学生(発起人:李麦子)+1人の男子大学生
2月26日 北京市 駅の近くの公衆トイレ 10人あまりの女子大学生
2月29日 鄭州市 鄭州市人民公園の公衆トイレ 11~12名の女子大学生(発起人: 張亜楠[鄭州の大学の学生])
3月4日 南京市 秣陵路付近の公衆トイレ 10人あまりの女子大学生
3月6日 成都市 路地の公衆トイレ 4人の女子大学生
3月8日 武漢市 広場の公衆トイレ 20名あまりの女子大学生(組織者: 張甜[中南財経政法大学大学の院生])
3月18日 西安市 地下の公衆トイレ 8人の女子大学生+9人の男子大学生(発起人: 夏媛[西安の大学の3年生])
3月18日 蘭州市 中山橋東側の公衆トイレ 女子大学生(記事中に「数人の若い女性が男子トイレの『門番』をした」という記述あり)

いずれも、だいたい数人から10数人の女子大学生による、「公衆トイレ」の占拠活動です。そのやり方も、広州同様、完全に「占拠」するのではなく、男性に3分ほど待ってもらって、その間に女性が使うというものです。スローガンも、「关爱女性 从方便开始」と「女人更“方便” 性别更平等」が広州のほか、鄭州・武漢・蘭州でも用いられ、シール投票が広州と北京と蘭州で試みられるなど、共通している部分もあります。

また、参加者にも重なりがあります。李麦子さんは少なくとも三市での活動に参加していますし、南京での活動には北京から支援に来た女子学生も参加し、武漢での活動の組織者である張甜さんは広州での活動にも参加するなどしています。

といっても、もちろん同じ人が全国を回っているのでは全然ありません。南京でのアクションは、主に、公益機構である南京甘之露ボランティアセンター(南京甘之露志愿者中心、B型肝炎差別などに取り組んでいる団体のようです)から来た学生や南京師範大学の学生によって担われ、武漢でのアクションをしたのは、湖北工業大学や武漢大学、中南財経政法大学、武漢科技職業学院高校の学生だとのことです。また、スローガンも、北京と蘭州では「爱她就别让她等待(彼女を愛るするなら、待たせてはいけない)」、南京では「学习雷锋好榜样 方便女性三分钟(雷鋒[「人民に奉仕した」模範的人物]に学んで、女性に3分トイレの時間を)」、成都では「占领男厕所 让我方便点(男子トイレを占拠する。私にトイレの場所を)」といった独自のものも使われています。

以上から見ると、それぞれのアクションは地元の女子大学生のグループによって担われつつ、各地の女子学生たちの間には、繋がりないしネットワークがあるという情況だと思います。その意味で、(やや大げさな言い方をすれば)全国的広がりを持った運動とも言いうるように思います。

ただし、上記以外に、3月9日福州でおこなわれたアクションがあり、これは、会社員の女性が1人でマクドナルドのトイレでおこなったものです。プラカードに書かれたスローガンも、「三八婦女節 女人我最大」というものでした(5)。これは、上で述べた女子大学生のアクションとは異質であると言えます。

彼女は、他の都市の「男子トイレ占拠」活動に啓発されて、自分も活動をしたそうで、このことは、それだけ女子大学生たちのアクションが話題になったことを示していると思います。また、公衆トイレだけでなく、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのような店のトイレの便器の男女比にも批判が出ていますから、その意味で、彼女の行動にも意義があったと思います。

4.アクションの反響

メディアで注目され、世論にも一定の支持

このアクションはおだやかにおこなわれたようです。鄭楚然さんは、「少数の人には『理解できない』と言われましたが、『男子トイレを占拠する』というアクションは、現場の大多数の公衆に理解され、肯定されました。女性が主になり、男性が支持しました。私は、全体的な状況は非常に和やかだっと思います」と述べています(6)

広州でのアクションの当日、女子大学生は、路上で市民に「現在の男女のトイレの便器の比率は合理的だと思いますか?」というアンケート調査もしましたが、「合理的」だとしたのは5人だったのに対して、「不合理」という回答が61人、「わからない」が4人でした(7)(ただし、この調査は、シール投票の形でおこなったようですから、女子大学生を支持する回答が集まりやすかったのではないかと思いますが)。

メディアでも、かなり大きく取り上げられました。メディア報道は、全体としては、女子大学生の言い分を伝えているものが多く、また、それぞれの地区のトイレの便器の男女比を調査した報道(8)やアメリカや台湾、香港における女性トイレ増設の動向を紹介した記事もあり(9)、アクションにわりあい好意的なものが多かったのではないかと思います。

インターネットでも、ケンタッキーフライドチキンや自分の学校のトイレでもそうだと言って、賛成する声が多く寄せられました(10)。その一方、ネットを中心に、「男子トイレを占領するような公序良俗に反する行為を芸術と呼べるのか?」「男性が男子トイレを入る権利やプライバシーを侵犯するものだ」といった批判も寄せられました(11)

『河南商報』の公式ミニブログで、「公衆トイレの女子トイレの比率を増やすこと賛成か?」という質問に対したところ、以下のような結果でした(12)
・賛成……83.9%(2373名)
・不賛成……9.4%(265名)
・関心がない……6.8%(191名)

「鳳凰網」のネット投票では、以下のような結果でした(3月18日時点)(13)

○「女子大学生が男子トイレを占拠した行為は、理にかなっているか?」という質問に対しては――
・「理にかなっている。女性がトイレを使う時間が長いのだから、もっと設置すべきである」……29.7%(16036票)
・「理にかなっていない。他の方法でニーズを解決すべきであり、男子トイレはきわめてプライベートな場所である」……54.4%(29335票)
・「理解できるが、支持できない」……15.3%(8253票)

○「女子トイレの比率を増やすことを支持するか?」という質問に対しては――
・支持する……51.2%(23736票)
・支持しない……45.0%(24041票)
・どちらともいえない……3.8%(2031票)

現場に比べて、インターネットの匿名投票などでは女子大学生のアクションに対して否定的な意見が多いようです。ただし、ネット上の投票というのは、日本の場合を見ればわかるように、世論の平均値とは非常にズレた結果が出ることもあるので、世論全体としては、もっと支持が多い可能性もあると思います。また、匿名投票でさえ、アクション自体にも3割の支持があり(「理解するが、支持しない」を含めると半数近く)、まして「現在の男女のトイレの便器数の比率を改める」ことに関しては、かなりの支持があると言えます。

広州市の回答は、とくに前進した個所はない?

21日、広州市の城管委(都市管理委員会)は、この事件について、1)「現在、『広州市公衆トイレ管理規則[广州市公共厕所管理办法]』を作成しているところであり、新築・改築・増築の際には少なくとも男女の便器の比率を1:1.5にするように規定する」、2)「その規定は、執行を強制する条項も入れる」と答えました。また、3)「現在あるアンバランスに関しても、改めるように呼びかける」と述べました(14)

この回答を、女子大学生の要求に対して広州市が応えたものであるかのように報じているメディアが多いのですが(とくに外国のメディアにそうした傾向がある(15))、実際は、少なくとも1)や2)の点は、後述のように広州市が昨年から言っていることを繰り返しただけの回答です。

相次ぐ政策提案――その背後にはアクションをした女性たち自身の働きかけも

ただし、その後、女子大学生たちのアクションに応えて、さまざまな人がトイレの便器の男女比の問題について政策的提案をしています。

3月1日、北京・広東・上海などの男性弁護士や学者10人が、政府の「住宅と都市・農村建設部」に対して、「公衆トイレの中の女性便器と男性便器の比率を2:1に到達するようにし、そのうち女子トイレと男子トイレの大便器の比率は4:1に到達するようにすべきである」という要望を提出しました。彼らは、「駅・商業センター・観光地などでは、女子トイレに長い列ができる現象は非常に明白であり、男子トイレよりも状況はずっと深刻である」と指摘し、女子大学生の「男子トイレを占拠する」アクションを支持すると表明しています(16)

また、全国人民代表大会(全人代)代表の葉青さん(湖北省統計局副局長)は、「都市の公衆トイレ設計基準を完全なものにし、女性用便器の比率を高める提案」を提出しました。葉さんによると、2005年に建設部が施行した「都市公衆トイレ設計基準」は、公衆トイレでは男性の大便器と女性の便器の比率を1~2:3にし、商業区域内の公衆トイレでは2:3にするのが適当だとしているが、「適当である[宜為]」という言葉は、この基準が強制的でないことを示しているので、今回、男女の便器の比率を1:2にすると定め、かつ規定を強制的なものにする提案をしたということです(17)。陝西師範大学に立位式女子トイレを設立した(ただし現在ではほとんど使用されていないようです(18))ことで著名な屈雅君さんも、男女の便器の比率を1:2にする提案を全人代に出しました(19)

上で引用した「男の同胞への手紙」にも、「政府が法律を作って、公衆トイレの女性便器の数を増やして、男女の便器の数が少なくとも1:2になるようにすべき」と書かれていますが、李麦子さんも、当初から「人民代表大会の代表と政治協商会議の委員に、この提案をその2つの会に持って行ってもらって、男女の便器の比率の改善とジェンダーレストイレ・バリアフリートイレの建設を推進する立法を推進してほしい」と語っていました(20)

さらに、鄭楚然さんは友人たちと一緒に、全人代や全国政治協商会議(全国政協)に提出するための「民間の提案」を書き上げ、それをミニブログや電子メールを使って、全人代の代表や全国政協の委員に訴えて回り、こまごまとした煩わしい交流をしたのちに、若干の代表と委員から返答と支持を得たのだといいます。このようにして「民間のパフォーマンスアートが全人代や全国政協の提案に転化した」のは、「歴史的に初めて」のことだと鄭さんは述べています(補1)

全人代や全国政協に対する個々の代表(議員)の提案は、それが、そのまま法律になるようなことはけっしてありません。しかし、こうした提案が出されるのは、世論の反映であるとともに、パフォーマンスアートをした人々自身の働きかけの結果でもあったわけで、そうしたことには大きな意義があると思います。

5.今回のアクションと中国のフェミニズム

台湾での実践から学ぶ――「ウォール街を占拠せよ」の物まねではない

日本を含めた外国のメディアは、彼女たちのアクションを「ウォール街を占拠せよ」運動と並列して語る傾向が強いようです。中国国内にもそうした人がいないわけではないのですが、彼女たちは、「ウォール街占拠」運動のまねをしたわけでは、けっしてありません。彼女たちの口からは、「ウォール街占拠」にヒントを得たという話は出てこず、むしろ李麦子さんは、「ウォール街を占拠せよ」という世界的なアクションのために、「占拠」という言葉が、強硬なイメージを与えることを懸念していました。そのこともあって、新聞記者に対して、李さんは「このアクションは、『男子トイレを占拠する[占領]』のであって、『力づくで占領する[覇占]』ではありません。広範な男性の同胞の了承を得ます」、「私はフェミニスト[女性主義者]ですが、女性の覇権主義者ではありません」ということを何度も強調したそうです(21)

彼女たちが参考にしたと言っているのは台湾の経験です。李さんは、「台湾では、1996年から男子トイレの占拠を開始したので、現在、台湾の法律は改善されています。私たちも台湾の経験を参考にしました」と述べています(22)。台湾では、1996年5月4日、台湾大学女性研究社の女子学生たちが、男女のトイレの便器数の不平等を訴えるために、台北駅の男子トイレを占拠してアピールしており、台湾の彼女たちは、この運動を、かつての「五四新文化運動」にならって、「五四新女性トイレ運動(五四新女廁運動)」と呼んでいます。この運動の結果、同年10月、台湾の「建築技術規則建築設備編」が改正され、公共施設での男女の便器の比率を1:2にするように定められました。さらに2006年には、「建築技術規則」が改正されて、多くの人が同時にトイレを使用する場所(劇場など)では、男女の便器の比率を1:5にするように定められ(それ以外の場所は1:3)、2010年には、その規定に沿って「建築法」も改正されました(23)

昨年すでにフェミニスト活動家らが男子トイレ占拠を呼びかけ――民間フェミニズムの思想的な流れ

昨年5月24日、呂頻さん(フェミニスト活動家、ジャーナリスト。本ブログの記事「戴晴、艾暁明、呂頻氏らが『劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明』に署名」も参照])は、「トイレも権力である。誰が変えるのか?」というトイレの男女比を論じた文を書いた際、「女性は我慢するだけの被害者であってはならない(……)もちろん普通の人には、調査をして提案をするようなことはできない。けれども、私たちには別のこと、たとえば男子トイレを占拠すること[占領男厠]はできる――なぜやらないのか? もし自分だけでは怖くてできなくても、みんなで手をつなげば、きっと紳士たちは私たちの行動に対して文句を言えないだろう」(24)と、今回のアクションを呼びかけ、予言したようなことを述べています。呂頻さんの上の文は、昨年8月8日には、広州で発行されている『南方都市報』にも転載されていますし(25)、広州の女子学生が目にした可能性も高いでしょう。

広州市では、昨年2月、政治協商会議の委員の韓志鵬さんがトイレの便器の男女比の問題を提起したのに答えて、広州市の城管委(都市管理委員会)は、「近いうちに『広州市公衆トイレ管理規則』を作成して、男女の便器の比率を1:1.5にし、この『規則』には執行を強制できる条項も入れる」と回答しました(26)。この回答に対して、李思磐さん(『南方都市報』調査記者、フェミニスト。腾讯微博)は、昨年8月10日、「トイレ革命いまだ成功せず。女性の同志はなお努力が必要だ」という論説(『東方早報』掲載)の中で、城管委の回答に一定の評価をしながらも、台湾の「建築法」の規定などを引いて、「広州の新しい基準はまだ低すぎる」と指摘しました。

その際、李思磐さんは、「公衆トイレの女性トイレの比率を高めるには、立法、法改正、建築・改造という長い過程が必要だ。けれど、その前は、広州と中国の女性たちはまだ長い間待たなければならないのか? 列を作っていてトイレが我慢ができないとき、誰が最初にカニを食べて[=初めてで勇気がいる行動のたとえ]『男子トイレを強襲』するだろうか? その女性のために番をする新しい世代の紳士は、いつ現れるのだろうか?」(27)と、呂頻さん同様、男子トイレ占拠を呼びかけており、女性のために番をする男性についても語っています。

呂頻さんは、今回のアクションがおこなわれた後、「公衆トイレは、公共のリソースとして、それが公平に享有され、効率的に使用されるように保障されなければなりません。いわゆる『男子トイレ占拠』の意義は、利益を占有することではなく、男性と女性が公衆トイレというリソースの配分が公平か否かを共に考えることにあります」(28)と語っています。この呂頻さんの言葉は、先に引用した、広州のアクションの組織者である鄭楚然さんの、「このアクションは、男性に対するものでも、トイレに対するものでもなく、政策に対するもの」という言葉と合致しています。

私は、何も、「呂頻さんや李思磐さんの影響によって今回のアクションがおこなわれた」と言いたいわけではありません(たぶんそうした単純・一方的な関係ではないだろうと思います)。しかし、以上から、今回のアクションは、女子大学生だけの突発的発想ではなく、中国の民間のフェミニズムの思想的な流れの中に位置づけられる、ということは言えると思います。

パフォーマンスアートによって、女性の声を強烈にアピール

もちろんこれまでにも女性の政策的訴えがなかったわけではなく、、2008年に制定された「広東省未成年者保護条例」で学校の女子トイレの一人あたりの便器数を男子トイレより多くする規定が導入された際には、少なくない女子生徒が、条例への意見募集の段階で意見を出しています(本ブログの記事「学校の女子トイレの便器の数を男子トイレよりも多くする規定」)。また、2010年12月に施行された「珠海市婦女権益保障条例」で「公衆トイレでは、女性の便器の比率は男性の便器の比率の1.5倍以上でなければならない」と規定された背景には、多くの専門的機構や専門家・学者の活動があったと言われています(本ブログの記事「公衆トイレなどの便器数の男女比を改める動き」)。

さらに、女子大学生のアクションに先立って、今年2月5日、アモイ市の公衆トイレで女子トレイの前には長い列ができていたのに、男子トイレは空だったので、我慢できなくなった女性たちが、男子トイレを「占拠」したという事件もありました(29)。こうした自然発生的な事件は他にもあったでしょうし、そうした行動を笑い話にすべきでないと主張した記事も出ています(30)

ジャーナリストの馮媛さんは、こうした事件を踏まえて、今回のアクションについて、「『トイレの占拠』は(……)以前にもあったことだが、このたび女子大学生は、それを芸術化して公に表現することによって、社会に向けて、平等を要求する声をよりはっきりと伝えた」と評価しています(31)

鄭楚然さんは、「パフォーマンスアートとは、私たちが観念を表現し伝える一つのやり方です。この行動は、表面的には滑稽なようですが、その中には、私たちの明確な訴えがあります。(……)私たちの最終目的は、政策によって変革を成し遂げることであり、現場とメディアの影響によって、公衆がこの問題は変えられると思うようになります」と述べていますが、実際、今回のパフォーマンスアートは、メディアでも大きく取り上げられて、女性の声を強烈なアピールすることに成功したと言えると思います(32)

「学術化・学院化」したフェミニズムを乗り越え、現実に働きかける流れ

中山大学ジェンダー研究フォーラムの柯倩婷さんは、彼女たちのアクションに関連して、新聞記者が「フェミニズムの中国での発展をどのようにご覧になりますか?」と質問したのに答えて、「このたびの男子トイレ占拠のアクション以外にも、若干のNGO・女性団体・大学生は多くの活動をしてきました。中山大学の艾暁明先生[本ブログの記事「戴晴、艾暁明、呂頻氏らが『劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明』に署名」参照]を含めた学者・法律界の人々は、黄静事件[デートレイプ事件]、鄧玉嬌事件[性暴力に対する正当防衛事件。本ブログの記事「鄧玉嬌事件をめぐって」「鄧玉嬌事件の判決をめぐって」参照]で成果を収めました。このほか、最近も北京で女子学生がバレンタインデーに血に染まったウェディングドレスを着て街を歩きました(*)。中山大学ジェンダー研究フォーラムも、美容整形の女性に対する被害をアピールするために、地下鉄でフラッシュモブをする活動を組織したことがあります(**)。しかし、活動には、多くの不十分な点もあります。たとえば、学術化・学院化しすぎて、本当に街頭に出て、深く民衆の中に入って、権益に関心を寄せることはあまり多くありません」と述べています(33)

(*)の「北京でも女子学生がバレンタインデーに~」とは、今年2月14日、ドメスティックバイオレンス反対のアピールをするために、3人の女子大学生が、北京の前門で、血痕の色が付いたウェディングドレスを着て、「殴るのは親しさではなく、罵るのは愛ではない!」「暴力はあなたの身の回りにあるのに、まだ黙っているの?!」「愛は暴力の口実ではない!」といったプラカードを掲げて歩いてアピールをしたことです。DV反対のチラシも配布しました。その3人の女子大学生の1人が李麦子さんでした。

バレンタインデーにこのパフォーマンスをした理由は、この日は若い人にとってパートナー文化の圧力が強まる日であり、本当はロマンチックラブは暴力と関係があるのに(女性をお姫様扱いするけれども、実は男性が強者だから)、そのことに対する警戒が欠けているので、親密な関係の中にも暴力が隠されている可能性があることに気づいてもらいたいからでした(34)

(**)の「地下鉄でフラッシュモブをして~」とは、2010年4月11日、広州市の地下鉄の複数の駅の美容整形の広告の前で、女子大学生たちが、「私は私の自然を愛する。美は愛するが、傷つけられはしない」と書いた揃いの黒いTシャツを着て、それらの広告を批判するパフォーマンスをしたのち、「愛美不受傷」と書かれた横断幕を広げる活動をしたことです(フラッシュモブとは、突然ある地点に集まって、短い時間パフォーマンスをしたのちに、すみやかに解散する活動)(35)

単なる学術団体ではなく、現実にコミットしてきた中山大学ジェンダー研究フォーラムの柯さんさえも(だからこそ、でもありますが)が、上のように、中国のフェミニズムは「学術化・学院化しすぎて~」と語っているのですから、「男子トイレ占拠」のようなアクションは、学術レベルにとどまらない現実世界の運動として、評価されうると思います。また、上のようなさまざまなパフォーマンスをする流れが、女子大学生たちの中から生まれていることにも注目したいと思います。

しかも、「血染めのウェディングドレス」とか、「フラッシュモブ」といった自分たちだけでやるパフォーマンスと違って、今回のアクションは、「男性のトイレ利用者」という他人に直接働きかける活動ですから、より社会性が強いとも言えるでしょう(36)。そして、上で述べたように、自ら働きかけることによって、歴史的に初めて民間のパフォーマンスアートを全人代や全国政協の提案に転化させたのです。

こうした運動が、上で述べたように、全国各地で、平均して10人程度の女子学生がグループを作っておこなわれているのですから、歴史に残る運動になる可能性もあるように思います。

フリージャーナリストの卞楽さんは、(女性のトイレ問題については理解を示しつつも)女子大学生のアクションは「過激だ」と考える人々に対して、「ジェンダー平等を実現するにはフェミニズムが必要であり、フェミニズムは単なる社会理論ではなく、社会運動であることを理解していない」と述べて批判するとともに、「フェミニズム理論は中国にやって来たら、社会的現実とは何の関係もない言葉の体系になった。若干のジェンダー平等に関する話題は(……)大衆の世論の中では、男権的言語体系の中で歪曲されて、その意義が伝わらなかったり、嘲笑されたりした」という情況を指摘し、「官僚政治と男権の伝統は、不可分に結びついて、互いに強化し合っており、平等を勝ち取るためには、行動をして、フェミニズム本来の姿を取り戻さなければならない。まさにこの意味で、私は男子トイレ占拠運動が新しいスタートになることを期待している」と言っています(37)

こうしたインパクトがある運動のせいでしょうか、このアクションから説き起こして、フェミニズムについて論じる人も出てきています(38)。そうした機会をつくったという点でも、このアクションには意味があると思います。

6.北京などでは弾圧と情報統制も

上述のように、今回のアクションは現実世界に強く働きかける活動だったからでしょうか、北京と鄭州のアクションは当局の介入を招いています。

『ニューヨークタイムズ』によると、北京で女子大学生たちが、徳勝門の長距離バス停近くのトイレでアクションをしようとしたら、警官10人と警察車両3台によって阻止されたとのことです。アクションは他のトイレでおこなったのですが、その際、女子大学生たちがマスメディアの記者に自らの活動について語っている姿は警察に録画されていました。また、記者たちがいなくなると、李さんたちは近くのホテルに閉じ込められました。中国のメディアは、こうした警察の弾圧については報じず、あたかもアクションが順調におこなわれたかのように報じています(39)

また、イギリスの『ファイナンシャル・タイムズ』によると、その翌日には、「男子トイレを占拠する」というキーワードが、新浪ミニブログ(中国版ツイッター)でシャットアウトされました。「次は鄭州で活動を計画している」という情報も、かたっぱしからインターネット警察に削除されました(40)

李麦子さんは、こうした当局の動きについて、「これは政治的にデリケートな問題ではないのに、どういうことなのかわからない」と述べたということですが(41)、『ニューヨークタイムズ』は、「広州は比較的リベラルだが、北京は警戒が厳しい[ultra-security-consciousという言葉を使っています]ので弾圧された」と述べています。また、弾圧を報道させなかったのは、「中国政府は女性トイレの改善を求める無害な女子大学生を拘留するような政府」だという悪いイメージを持たれたくなかったからだといいます。

鄭州でも、女子大学生たちは、鄭州市人民公園の公衆トイレでアクションをするために東門から公園に入ろうとしましたが、公園の管理者たちに阻止されました。彼女たちは西門から公園に入って、トイレの前でプラカードを掲げて、何分か男子トイレを「制圧」して活動をしましたが、男子トイレを使った女性がトイレから出てきたところで、管理者に「女性が男子トイレを使ってはいけない」と追い出されました。管理者の一人は、「彼女たちが女子トイレの増設を望んでいるは知っているし、この活動には反対しないが、男子トイレに入るのには反対だ」と述べました。鄭州の場合は、警察は直接介入していませんし、女子大学生を軟禁するような弾圧ではなかったせいでしょうか、中国のメディアも報道しています(42)

しかし、このまま運動が各地に広がった場合、当局がどう対応するかという点は、若干心配です。

7.ユニセックストイレについて

女子大学生たちが提案しているユニセックストイレについては、中国では、現在のところ、女性の抵抗が強いようです。ネットで賛否を尋ねたところ、男性は、賛成4056人(68.2%)、反対1893人(31.8%)で、7割近い人が賛成しました。しかし、女性は、賛成1609人(30.7%)、反対3625人(69.3%)で、3割程度の人しか賛成していません。その理由は、捨てた生理用品を見られるのが嫌といったこともありますが、最大の理由は、安全(のぞきなどの犯罪)に対する心配のようです(43)

その点に関しては、李麦子さん自身は、台湾のように非常ベルを備えればいいと述べていますし(44)、ネットでも、壁を天井まで築くとか、警備員を置くといった対策が指摘されています(45)

柯倩婷さんは、ユニセックストイレの意義として、李麦子さんが挙げている点のほかに、「比較的中性化した人々」や「トランスジェンダーの人々、たとえば異性装者、性転換者」のため、という点を挙げていますし(46)、方剛さんなども、トランスジェンダーの人々にとっての意義を指摘しています(47)

報道を見るかぎり、李さんたちはトランスジェンダーにとってのユニセックストイレの意義は述べていません。しかし、台湾の運動ではトランスジェンダーが視野に入っているので、李さんたちが知らなかったとは考えにくく、単に、李さんたちは、一般の人にはトランスジェンダーへの偏見が強いことを考慮して、あえてそうした人々のことは述べなかっただけかもしれません。

8.日本での報道

このアクションについては、日本の一般のマスコミはほとんど報道していません(48)。私は、2006年にこのブログを開設した際、「日本のマスコミの海外ニュースには、男女平等(女性差別)についての話題があまり登場しません。とくに少ないと思うのが、海外の女性の主体的な動き、女性が地位向上を勝ち取っていく動きです」(「開設にあたって」)と書きましたが、そうした状況はあまり変わっていないようです。まして今回は、「トイレ」の話なので、より周縁的な話題として軽視されたのでしょう。

インターネットメディアでは、かなり多数の報道がありました。その意味では、ネットメディアは存在意義を示したと思います(なかには、かなりひどい誤報もありましたが(49))。私は、当初、日本のネットメディアは、このアクションを、「呆れた運動」と捉えて、笑いものにするのではないかと心配していたのですが、記事の内容そのものは、本国や欧米の報道に依拠していたため、特にひどいものではありませんでした[しかし、よく読むと、かなり重大な問題がありましたので、別途ご報告します(2012/4/12追記)→「中国の女子大学生の『男性トイレ占拠』アクションと日本のメディア」(WAN2012/04/18)]。中国のメディアは、女子大学生たちの努力の甲斐あってか、比較的正面からこのアクションを報道していましたし、欧米の報道機関は、「ポッティ・パリティ」と呼ばれる諸外国のトイレの男女平等施策に言及するなど、日本よりフェミニズムに理解がある報道をしていました。

ただし、このアクションに対しては、他の女性関係のニュースと比べて、日本のネット報道が非常に多いという特徴があり、そのことは、このニュースが、「物珍しいニュース」として、関心を引いた可能性が高いことを示しているように思います。そこに何か、「呆れたニュースとして、笑いものにしてやろう」というような底意も感じる――とまで言えば、言いすぎかもしれません。しかし、実際、ヤフーコメントの1位は「人体の機能面に対して不平等を声高に叫ぶ意味が分からない」(このコメントは「トイレの待ち時間の不平等をなくせ」というニュースのタイトルに反応したものでしょう)で、2位は「痛い、痛すぎる…」、3位は「女子トイレの個室の数を増やせば済む話 中国人の頭は、いっちゃってんな」というものであり、こうしたコメントが付くことが容易に予想できる題材だったと思うのです。ヤフコメの場合、いかなる記事に対しても反動的・排外主義的なコメントを付ける傾向が非常に強いとはいえ、こうしたコメントは、ネットニュースが、とにかく珍しい「話のタネ」になるような題材(中国の場合は、一見「呆れたニュース」になりやすい)を優先するという歪みの反映でもあろうと思います。中国本国のメディアにも、似たような弱点はあるのかもしれませんが、日本における中国報道のあり方を考えさせられます。

9.日本の女性トイレ問題は?

日本では、女性トイレ不足は、中国のように大きな問題として報じられませんが、けっして問題になっていないわけでも、まして問題が存在しないわけではないようです。

私がかつて1980年代の初めごろ、東京大学の学生だったとき、大学に女子学生が増加したために女性トイレ不足が問題になり、その増設が自治会の要求の一つになっていました。『東京大学新聞』もこの件をかなり大きく取り上げ、女子学生が「休憩時間にトイレに並んでいて、ゼミに遅れたために、教授からおしかりを頂戴することもある」という発言が掲載されてたことを覚えています。他大学でも同様の問題が起きていたのではないでしょうか?

自治体の公共施設に関しても、1994年、埼玉県の所沢市議会で、中嶋里美議員が「公共施設の女性トイレの広さ」について質問しています。中嶋議員は「体の構造や身につけている衣服等の関係で、女子がトイレ使用にかかる時間は男子の3倍と言われております。しかし現状では、トイレの広さや便器数は男女ほとんど同じです。その結果、劇場での幕間や学校等の休み時間は、女子トイレには長蛇の列ができることがしばしばであります。男の人は、用を済ませ、幕間にゆっくりとコーヒーなどを飲む時間をもてるのに、女性は、トイレで並ぶだけですべての時間を費やしてしまうというような現状があります。/また、ある小学校の校長先生は、休み時間には校庭で遊びなさいと指導しているのに、女子がなかなか校庭に出てこない、調べてみると、みんなトイレで休み時間を使っていたということを知ったとお話していました」という情況を指摘し、公共建築物における女性トイレ拡大を求めています(50)

1996年に刊行された埼玉県の「女性トイレレベルアップ検討会」の報告によると、当時の同県の便器数の男女比の平均は、公園施設が2対1、劇場・ホールが1.2対1でした。検討会は、これでは女性トイレが少なすぎるので、便器数の男女比を4.2対5.8にすべきだと指摘し、その意見は、当時の施設の改修や計画に生かされたのことです(51)

近年もこうした問題がなくなったわけではなく、2005年の「愛・地球博(愛知万博)」ではトイレ不足が深刻で、とくに女子トイレは1時間待ちなどという話が今でもネットで見つかります。

昨年(2011年)も、萩市が、市内の公共施設や観光地にある女性トイレの混雑を解消するために、今後新設や増改築をする場合、女性の便器数の割合を、男性1(小用含む)に対し、2にする整備方針を定めたことが報じられています(52)。観光客などから「女性トイレを増やしてほしい」という要望があったということですが、昨年になって萩市に急に女性観光客が増えたわけではないでしょうし、萩市民館のトイレも男性22個、女性14個であるのに対して、市民館の利用者の約7割は女性だったとのことですから、女性にとってトイレ問題は長い間深刻な問題だったのでしょう。

最近でも、私がよく通りかかる京都駅ビル(1994年完成)の改札口近くのトイレは、しばしば女性が行列を作っておられます。

以上から見ると、日本でも、おそらく設計段階で男性中心の考え方があったり、利用時間の男女差を十分把握していなかったり、女性の利用者が増加したのに対応が遅かったりといった理由で、女性トイレの不足が生じる情況がしばしばあるのではないでしょうか? 文字通り、「女性の視点」が不足しているのだと思います。法律で対応すべき面もあるのではないでしょうか?

よく「おばさんが男子トイレに入ってくる」ということが、「恥ずかしげもない」行動として非難されていますが、本末転倒であり、そうした現象は、女性トイレ問題が日本でも実はかなり重大である(少なくともそうした場所がある)あらわれとして捉える必要があると思います。

学問的なトイレ研究についても、1995年のことですが、澤田真知・佐々木伸子・上野勝代の三氏が「総合的な女性利用者の立場からのトイレ研究は少なく、女性のおかれている文化的、社会的、生理的立場に基き“公共空間と女性”という視点から系統的になされたトイレ研究は未だない」(53)と指摘しておられます。この面でも努力が必要ではないでしょうか?

※日本の女性トイレ問題については、詳しくは、「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」を参照してください[2012年4月18日追記]。

【関連記事】
・「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」(2012/04/18)。
・「『男子トイレ占拠』などのパフォーマンスアートの成功支えた周到なプラン」(2012/05/20)

(1)広州でのアクションについては、「女大学生“占领”男厕 呼吁解决男女厕位不合理」新浪広東2012年2月20日(来源:南方網)、「女大学生“占领”男厕所 广州越秀公园附近上演行为艺术,呼吁解决男女厕位不均衡问题」南都網2012年2月20日(来源:南方日報)、「女生占领男厕所引围观 无性别厕所是否可行」中国広播網2012年2月20日(来源:華声在線)、「广州女大学生“占领男厕”争平等」BBC中文網2012年2月23日、「女性平等入厕的时候到了」南都網-南方都市報2012年3月5日参照。日本語での報道は、「『女子トイレ増やせ』女学生が男子トイレ占拠 広東」中国網(人民網日本語版2012年2月20日)、「『男子トイレを占拠せよ』運動 中国で女性大生が開始」ウォール・ストリート・ジャーナル2012年2月22日、「中国でも『オキュパイ』運動? 女子大生ら男性トイレを占拠」AFPBB News2012年2月24日、「トイレの待ち時間の男女不平等をなくせ! 女子大生が男子トイレを占拠―中国」レコードチャイナ2012年2月25日。
(2)この節でのさまざまな発言の引用は、すべて「女性平等入厕的时候到了」南都網-南方都市報2012年3月5日より。
(3)"占领男厕"计划26日在北京深圳发起同样活动」南方報業網(南方都市報)2012年2月23日。
(4)各地のアクションについては、以下の記事参照。
 ・北京市―「北京女大学生结伙“冲进”男厕所 称欲推动立法」大洋網2012年2月26日(来源:法制晩報)、「北京女大学生举行“占领男厕所”活动」新浪網2月26日、「『公共トイレの待ち時間、女性の方が長いのは不平等!』と女子学生が抗議運動―北京市」レコードチャイナ2012年2月27日。
 ・鄭州市―「郑州女大学生"占领男厕"遭轰出 被指作秀」中国新聞網2012年3月1日(来源:大河網)、「“占领男厕”郑州上演 十余女大学生与公园管理方PK」新浪網2012年3月1日(来源:東方今報)、「女大学生人民公园“占领男厕所” 三分种轰走」商都網2012年3月1日(来源:中原網―鄭州晩報)、「女子大生『男子トイレ占拠』デモ、阻止される 鄭州」人民網日本語版2012年3月1日、「女子大生が男子トイレに侵入…『エッチな目的ない』と表明=河南」サーチナ2011年3月1日。
 ・南京市―「南京上演女大学生“占领男厕所”」新華網江蘇頻道2012年3月5日、「北京南京志愿者联手秣陵路上冒雨“占领男厕”」中国江蘇網2012年3月5日、「男女厕位不均志愿者南京街头“占领男厕”」揚子晩報網2012年3月5日。
 ・成都市―「"占领男厕"风 昨"刮"到窄巷子」四川新聞網‐成都商報2012年3月7日。
 ・武漢市―「“占领男厕所”大学生呼吁关爱女性从方便开始」漢網2012年3月9日。
 ・西安市―「西安女大学生"占领"男厕 呼吁改善男女厕位比例」西部網2012年3月19日、「女大学生钟楼“占领男厕” 仅6人男厕“方便”」华商网-华商报 2012年3月19日。
 ・蘭州市―「呼吁提高女厕位比例解决女性如厕难问题 女大学生当街“占领”男厕所」蘭州新聞網-蘭州晩報2012年3月19日、「兰州女大学生“占领”男厕所上演行为艺术」每日甘肃网-兰州晨报 2012年3月19日、「兰州女生“占领”男厕所 被拦男士表示理解(图)」凤凰网2012年3月19日(来源:甘粛新聞網)。
(5)三八节榕街头上演行为艺术 女白领“占”男厕」東南網寧徳頻道2012年3月10日、「女子举牌堵男厕上演 福州版“占领男厕”活动」大閩網-福州新聞網2012年3月9日。
(6)“占领男厕”行动:不仅是一场“行为艺术”」新華網2012年2月27日。
(7)女大学生“占领”男厕 呼吁解决男女厕位不合理」新浪広東2012年2月20日(来源:南方網)など。
(8)“占领男厕所”大学生呼吁关爱女性从方便开始」漢網2012年3月9日、「郑州女大学生"占领男厕"遭轰出 被指作秀」中国新聞網2012年3月1日(来源:大河網)、「缓解公共场所女性如厕难 长沙男女厕位达1:1.5」紅網2012年2月21日など。
(9)卞楽「谁说厕所不重要」『南方周末』2011年3月3日、「"占领男厕"指向公厕改革」法制網2012年3月11日など。
(10)“占领男厕”行动:不仅是一场“行为艺术”」新華網2012年2月27日。
(11)"占领男厕"指向公厕改革」法制網2012年3月11日。
(12)郑州女大学生"占领男厕"遭轰出 被指作秀」中国新聞網2012年3月1日(来源:大河網)
(13)广州女大学生占领男洗手间 要求女权惹争议」鳳凰網2012年2月20日→(調査結果)「女大学生占领男洗手间事件调查」鳳凰網
(14)男女厕位不合理 广州拟立法源头解决女性如厕难」中国新聞網2012年2月21日、「“占领男厕所”大学生呼吁关爱女性从方便开始」漢網2012年3月9日。
(15)たとえば、「女性の『トイレ問題』解決へ…新設は男子用の1.5倍以上=広州」サーチナ2011年2月24日。
(16)十位男性律师学者致信住建部 建议提高女厕位比例」中国新聞網2012年3月1日。
(17)人大代表叶青:城市公共厕所应提高女厕位比例」謄訊新聞2012年03月09日(汉网-武汉晚报)。
(18)『華商報』の趙瑞利記者によると、「当初据え付けられた3つの立位式の小便器はまだ存在しているが、そのうちの1室は物置になっており、1室だけにまだ導流器があったが、ほとんど誰も使っていなかった。ある学生が言うには、彼女は使ったことはないし、他の人が使っているのも見たことがなく、みんなやはりこの小便のやり方には慣れないのだという。公衆トイレの管理人も、使用状況は思わしくないと認めた」とのことです(「女大学生钟楼“占领男厕” 呼吁加女厕位(图) “如果现有厕位不改变以后每年都会‘占领男厕’”」华商网-华商报 2012年3月19日)。
(19)“退休要平等”“厕位要多” 女代表建言女性“民生”」新華網2012年3月7日、「从"占领男厕"到改革公厕有多难」新華網2012年3月8日。
(20)女大学生“占领男厕”呼吁性别平等」新華網2012年2月24日。
(21)女性平等入厕的时候到了」南都網-南方都市報2012年3月5日。
(22)"占领男厕"计划26日在北京深圳发起同样活动」南方報業網(南方都市報)2012年2月23日。
(23)李可「来自台湾女厕运动的启示」楽雲網-雲南信息網2012年2月28日、彭渰雯「從女廁運動到無性別廁所[PDF]」『性別平等教育學刊』34期。
(24)呂頻「厕所也是权力 谁来改变」網易女人2011年5月24日。
(25)呂頻「厕所也是权力 谁来改变」『南方都市報』2011年8月8日。
(26)穗《公厕管理办法》拟强制规定 男女厕位比1:1.5」『南方都市報』2011年8月8日。
(27)李思磐「厕所革命尚未成功,妇女同志仍需努力」『東方早報』2011年8月10日。
(28)郑州女大学生"占领男厕"遭轰出 被指作秀」中国新聞網2012年3月1日(来源:大河網)。
(29)厦门园博苑女厕人满为患 女游客抢占男厕所」捜狐新聞2012年2月6日(来源:台海網)。
(30)一株「可別把女生“占领男厕”当笑话看」新華網2012年2月21日(来源:新华每日电讯3版)。
(31)北京女大学生结伙“冲进”男厕所 称欲推动立法」大洋網2012年2月26日(来源:法制晩報)。
(32)“占领男厕”行动:不仅是一场“行为艺术”」新華網2012年2月27日。
(33)女性平等入厕的时候到了」南都網-南方都市報2012年3月5日。
(34)以上は、「北京女大学生情人节发起行为艺术反对伴侣暴力――――北京首次在情人节开展反暴力行为艺术」妇女传媒监测网络2012年2月14日、「北京女大学生情人节发起行为艺术反对伴侣暴力」中国日報網2012年2月14日、「“受伤的新娘”情人节现身北京前门 北京女大学生借行为艺术反家暴」『中国婦女報』2012年2月15日。[2013年7月追記:このパフォーマンスアートについては、大橋史恵「中国フェミ的見聞録」(第1回)『女たちの21世紀』70号(2012年6月)も参照されたい。]
(35)年轻闪客多个地铁口横行 恶搞整容广告」新快網2010年4月12日、「如何组织一次成功的发声活动――广州“快闪”经验谈」『女声』30期[word]。
(36)方剛さん(ジェンダー論・男性学研究者)も、「男子トイレを占拠することは、明白な社会的行動であり、その目的は社会の関心を引いて、公共空間の中のジェンダー不平等を変えることであり、さらには全社会の不平等を変えることである。だから、これは良いことであり、明確な社会的行動である」と述べています(「厕所的"性别政治学"(占领男厕所的背后)」方剛ブログ2012年2月21日)。
(37)卞乐:占领男厕所能改变什么」『南方周末』2012年3月8日。
(38)たとえば、李思磐さんは、今回のアクションについて、「中国では、女性の権利の議題は長い間、泥を塗られたり周縁化されたりしてきた。多くの人は、男女を問わず、ジェンダーの平等や女性の権利の話が出ると、『中国では男女はもう平等になっている。まだ何をしろと言うのか』とか、女権を女性が男性の上に立つことだと勝手に理解したりしている」という情況を指摘して、「女性の権利やジェンダー平等に対して、敏感でなかったり理解していない人たちにとっては、女性のトイレ問題は、理解の入り口になる」として、以下の6点を指摘しています。
 1「性差別は日常生活に満ち溢れているけれども、気がついたり認識したりすることは難しい」
 2「ジェンダーが引き起こした問題はもとより『個人の問題』としてあらわれるけれども、『個人の問題』を解決するには公共に参与することによって、公共政策を法律を変えなければならない」
 3「問題を解決するには、異なる性別の差異が作り出したニーズの差異を考慮しなければならない」
 4「空間は権利である」
 5「女子トイレの比率の大幅な上昇は男性の利益にもなるのであり、人権は、けっしてお互いの盛衰ではなく、相互依存・相互促進である」
 6「男女平等の実現は、さらに平等で、さらに公正な社会を意味する」
他に「社会关爱女性有很多细节可以做」天空永远蔚蓝→青年導報網2012年2月22日なども、この事件を出発点にしてフェミニズムを論じています。
(39)For Chinese Women, a Basic Need, and Few Places to Attend to ItThe New York Times,2012.2.29
(40)中国女性开展“占领男厕所”活动」FT中文網2012年2月29日。
(41)同上。
(42)郑州女大学生"占领男厕"遭轰出 被指作秀」中国新聞網2012年3月1日(来源:大河網)、「女大学生人民公园“占领男厕所” 三分种轰走」商都網2012年3月1日(来源:中原網―鄭州晩報)。
(43)男女共用厕所? 男性接受,女性反对!」南方報業網2012年2月22日(来源:南方日報)。
(44)占领男厕活动引热议郑州要求女厕位多于男厕位」大河網2012年2月24日(来源:河南商報)
(45)(43)に同じ。
(46)女生占领男厕所引围观 无性别厕所是否可行」中国広播網2012年2月20日(来源:華声在線)。
(47)方剛「厕所的"性别政治学"(占领男厕所的背后)」方剛ブログ2012年2月21日。
(48)私がデータベースで調べたかぎり、『朝日』『毎日』『読売』の三大紙では、隅俊之「上海交差点:広州トイレ占拠事件」(『毎日新聞』2012年3月5日東京夕刊)が唯一の記事です。
(49)たとえば、「エクスプロア上海」サイトが、3月4日に「上海南京路」で女子大学生のパフォーマンスがおこなわれたと報じてますが(「女子学生が男性トイレを占拠?!」2012年3月6日)、実際におこなわれたのは「南京市秣陵路」です。
(50)「平成6年第4回 埼玉県所沢市議会会議録4号」より。『朝日新聞』埼玉版でも報道されています(「女性用トイレに注文『公共施設で増設を』 所沢市議会で質問」1994年12月14日朝刊)。
(51)「公共施設のトイレ、便器数は『男性優位』 県の検討会」『朝日新聞』1996年4月17日朝刊埼玉版。未見ですが、埼玉県住宅都市部女性トイレレベルアップ検討会『女性トイレレベルアップに向けて』(1996年)は、埼玉県立浦和図書館に所蔵されているようです。
(52)「トイレ:比率、男性1・女性2に 公共施設での混雑解消へ、萩市が整備方針」『毎日新聞』2011年6月18日山口版。
(53)澤田真知・佐々木伸子・上野勝代「まちづくりにおける女性の視点に関する考察―女性利用者の立場からみた京都市公衆トイレを通して」『1995年第30回日本都市計画学会学術研究論文集』、182頁。その後も、國嶋道子・大河内博子・山田幸恵「商業施設・駅・観光地における利用しやすい女子トイレ」『生活造形』42号(1997年)、松本暢子・平野あずさ「女性や子どもの利用しやすい公共トイレのあり方に関する考察―東京都新宿区における公衆トイレの実態調査をもとに―」『社会情報学研究』(大妻女子大学紀要・社会情報系)14号(2005年)といった論文が出ていますが、これらの研究は、施設設備、立地環境、衛生状況などに着目しています。

[以下、2012年3月22日追記]
(補1)“占领男厕”从民间行为艺术转化为全国两会建议,发起者郑楚然:“如果作秀能解决问题,那就是好事」『南方日報』2012年3月21日。この注の(補1)を追加するとともに、その下の段落に「女子大学生たちの努力の結果でもあった」という一節を付け加えるなど若干の書き換えをすると同時に、その節の見出しに「――背後にはアクションをした女性たち自身の働きかけも」という語句を付記しました。さらに、注(36)の次に、「そして、上で述べたように、自ら努力して~」という一文を付け加えました。

公衆トイレなどの便器数の男女比を改める動き

 中国の公衆トイレは、建設部の「都市環境衛生施設設置基準(城市环境卫生设施设置标准)」にもとづいて設置されていますが、男女の便器の比率については、1988年に制定された「都市公衆トイレ計画・設計基準(城市公共厕所规划和设计标准)」が、「男女の便器の設置比率は2対3あるいは1対1にするのが適当である」と規定しています(第3.2.1条)。現在のところ、国内の大多数の都市の公衆トイレの便器の比率は、1対1だと報じられています。

 しかし、男と女では用便に必要な時間がまったく異なるので、男女の便器の比率が1対1では、しばしば女子トイレの前に行列ができたりします。便器が足りないために、女性は、時間の面でも、身体に対する負担の面でも、男性より困難を強いられている――そうした状況が中国でも指摘されています。

学校のトイレの便器数の男女比に関して

 トイレの女性用の便器の数を保障する規定は、まず、学校のトイレについて、一部地方で作られはじめたようです。

 以前お伝えしたとおり、2008年11月に制定された「広東省未成年者保護条例」(2009年1月施行)は、「学校の公共トイレなどの施設の建設・配置・使用においては、未成年の女子学生の生理的特徴に配慮しなければならず、女子トイレの一人当たりの実際の使用便器数は、男子トイレの便器数より多くなければならない」(第22条)と規定しました(本ブログの記事「学校の女子トイレの便器の数を男子トイレよりも多くする規定」参照)。

 続いて、2009年5月に改正された「陝西省『中華人民共和国未成年者保護法』実施規則(陕西省实施〈中华人民共和国未成年人保护法〉办法)」(2009年6月施行)も、同様の規定を置きました(第23条)(1)

 学校の場合、授業時間と休憩時間が決まっているので、女子生徒がトイレのために授業に遅れたりすることがないように、女子便器を確保する動きが起こったのかもしれません。

公衆トイレの便器数の男女比に関して

 公衆トイレについてはどうでしょうか?

 河南省鄭州市では、公衆トイレの男子トイレの面積が女子トイレの面積より大きく、ひどい場合は、3/4が男子用に充てられている場合もありました。そこで、2007年、市長の趙建才が「私は、今後鄭州で公衆が集まる場にトイレを建設する場合は、必ず女子トイレの面積を男子トイレよりも大きくしなければならないという『規定』を宣言しなければならない」と述べました(2)。ただし、何か法律的な規定を設けたというわけではないようです。

 しかし、2010年5~10月に開催された上海万博では、男女の便器の比率を1対2.5にしました。というのは、事前に、上海緑化・市容[都市の外観]管理局が調査チームを作って、さまざまな人の公衆トイレの利用時間を調査することによって、男女のトイレの使用にアンバランスが生じないようにしたためです。その結果、一時を除いて、女子トイレに長い行列はできなかったそうです。この結果を受け、上海では2011年から新しく設置するトイレの男女の便器の比率も、1対2.5にするということです(3)

 昨年大きな話題になったのは、2010年12月に施行された広東省珠海市の「珠海市婦女権益保障条例(珠海市妇女权益保障条例)」が、「新しく建築または改築する公衆トイレでは、女性の便器の比率は男性の便器の比率の1.5倍以上でなければならない」と初めて明確に規定したことです(第22条)(4)。「珠海市婦女権益保障条例」は、ほかにも、「婦女事務諮詢委員会」という、女性に関わる法規について市政府に意見や提案を出す機関を設けたり、DVに対する人身安全保護裁定や「ジェンダー統計」についての規定を置いたりするなど、さまざまな点で新しいものです(5)(珠海市の条例の人身安全保護裁定に関する規定については、本ブログの記事「DVに対する人身安全保護裁定(人身保護命令)の現状」五-2で言及しました)。『中国婦女報』も、「2010女性権益報告」で、この珠海市婦女権益保障条例を取り上げていますが、記事の中で、陳本建さんは、こうした良い条例ができた背景に関心を示し、香港やマカオの経験を参考にしたことを含めて、多くの専門的機構や専門家・学者の活動があったからではないかと述べています(6)

 陳本建さんは珠海市が「改革開放の最前線の都市」であることにも触れていますが、広東省では、ほかに仏山市も、女性便器の比率は男性便器の比率の1.5倍と決めています(7)。また、2010年春には、深圳市政治協商会議の徐華委員らが、「女性トイレに行列ができるのは、予算にジェンダーの視点がないからだ」と主張して、同会議の第5期第1回会議に、「ジェンダー予算の試行に関する提案」を提出しています(8)

 広東省以外でも、杭州市の西湖景区では、2010年に新しく改造したトイレでは、男女の便器はそれぞれ51と92で、男女の比率が1対2近くになりました。これは「観光客が満足するように」という目的でおこなったようですが(9)、福建省政府事務局が2010年11月に出した「都市の公衆トイレ建設に関する実施意見(福建省人民政府办公厅关于福建省城市公厕建设的实施意见)」も、新しく設置する公衆トイレの男女の便器の比率を1対1.5から1対2の比率にすることを規定しています(二-(二)の箇所)(10)。そのほか、いくつかの地方の新聞が、公衆トイレの男女の便器の比率の問題を取り上げています(11)

背景は?

 このように昨年あたりから公衆トイレの便器数の男女比を改める流れが出てきているようですが、なぜ昨年あたりからこうした動きが顕在化したのかという点については、私にはよくわかりません。もちろん大きな歴史的背景としては、女性の社会的活動が活発化したことがあるのでしょうし、上海万博などの場合には、国外の目を意識したという面もあるでしょう。陳本建さんが推測しているように、女性が要求を実現するために(広い意味での)運動をしていることも想像されるのですが、私には具体的なものはつかめていません。

 トイレの便器の男女比を改める動きは、もちろん中国だけのことではなく、「FEM-NEWS」(三井マリ子さん)は、2006年1月21日付けで「トイレの男女平等、世界中に」という表題で、「男女平等トイレは、ポッティ・パリティ(Potty Parity)と呼ばれる。アメリカでは、女性用を男性用より広くすることを義務づける建設基準のことを指す。NYを初め多くの州や都市で、この制度が確立しつつある。ストッキングをはいていたり、子ども連れだったり、生理上のニーズなどから、統計によると女性は男性の2倍時間がかかるという。だから女性トイレの前には長蛇の列。スタジアムなどでは、『男性トイレ誰もいない?』と、我慢しきれず男性トイレを使う女性も。ポッティ・パリティは、アメリカだけでなく、シンガポールでも法制化されている」と伝えています。こうした意味では、トイレの便器の男女比を改める動きは、男女平等の流れの中にあることは間違いないのですが……。

 なお、本ブログの記事「『第3回(2010年)中国10大セックス/ジェンダー事件批評』」で挙げられた、昨年陝西師範大学に出現した立式の女性トイレも、女性用トイレが不足していることへの対応という面もあります。立式の女性トイレを推進する人は、「女性が小便する時間は、男性の3倍かかるのだから、女性用の便器を男性の1.5倍にする程度では足りないし、かといって、男性用の3倍の女性用トイレを作るのは浪費である」と主張しています(12)。たしかに女性用の便器の比率を男性の1.5倍にする程度では、上海緑化・市容管理局の調査チームの調査に基づく1:2.5という数値に比べて、まだ女性用が少ないのでは? という疑問がわきます。もっとも、地域や施設による男女の公衆トイレの利用状況には差があるでしょうから、一概には言えませんが……。

 男女の便器の比率の問題はともかく、立式女性トイレについていえば、たしかに小便に関しても歴史や文化による差異はあるようで、畢恒達さんは「昔、エジプトでは、宗教的な要因で、小便のときに男はしゃがみ、女は立つことによって、神を冒涜しないようにした。イスラム教徒は、男女ともしゃがむ姿勢を取る。マオリ人は、服装上の装飾品の要因によって、男はしゃがみ、女は立った。19世紀の日本の女性も、木の桶の前に立って小便した」と言っています(13)。畢恒達さんの言っていることが正確かどうか、私は知りませんが、たしかに生理的な要因だけが現在の小便スタイルを生みだしたと考えてはいけないでしょう。

 そのほか、性別に関係なく使えるトイレ(无性别公厕)の設置の問題などもありますが、この点については、まだほとんど調べられていないので、また別に書きたいと思います。

(1)草案段階の報道は、「《陕西省实施办法(修订草案)》拟规定学校女厕厕位应多于男厕」女権在線2009年3月26日(来源:華商報-華商網)。以前の規則(「陕西省实施〈中华人民共和国未成年人保护法〉办法」)には、こうした規定はありませんでした。
(2)河南郑州规定新建公厕中女厕面积要大于男厕」新華網2007年10月26日(来源:東方今報)。
(3)明年起女性如厕不再“受累”」解放牛網2010年10月26日。
(4)珠海首次立法规定男女厕位比例」2010年10月29日、「公衆トイレの便器数、男女比を法律で決める―中国珠海市」サーチナ2010年11月1日、「珠海立法规定男女如厕比例1:1.5 获网友盛赞」深圳新聞網2010年11月5日、
(5)《珠海市妇女权益保障条例》呈现八大亮点」珠海婦女網2010年12月2日。
(6)2010妇女权益年度报告」『中国婦女報』2011年1月4日。
(7)珠海立法规定男女如厕比例1:1.5 获网友盛赞」深圳新聞網2010年11月5日。
(8)女厕排队事关性别预算」『羊城晩報』2010年6月2日。
(9)杭州西湖景区改造公厕男女厕位比近1:2」中国新聞網2010年11月12日(来源:銭江晩報)。
(10)福建出台文件规定男女公共厕位比例」中国新聞網2010年11月15日。
(11)公厕设置如何体现男女平等」『四川日報』2010年3月2日、「公厕设置厕位应该“重女轻男”」蘭州新聞網(来源:蘭州晩報)、「女性出游为何常遇如厕难?3大原因寻根究底」中国新聞網(来源:南方日報)2010年12月7日、「公共场所如厕 女士总是在等」毎日甘粛2011年1月21日(稿源:中国甘粛網-西部商報)
(12)男女厕位之比为 2:3 , 并不是好办法」女性方便新観念サイト。
(13)畢恒達「男人来自火星,女人来自金星?」(2009/9/14)中山大学性別教育論壇サイト。

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