2017-11

WANの第3回総会とシンポに参加して

5月13日、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の第3回総会とシンポジウム「女がつなぐメデイア――ミニコミからウェブへ」が東京大学でおこなわれました。

総会もシンポも、それぞれ豊かな内容がありましたが、以下では、私がとくに関心を持った点について述べたいと思います。

<目次>
一 第3回WAN総会
 1.会員数の増加
 2.総会の時間が1時間半に
 3.サイトの双方向性の拡大をめぐって
 4.投稿規程の字数とジャンルの緩和などを要望
 5.組織運営の透明性
 6.「ボランティアでは限界、専従を」という声
二 シンポジウム「女がつなぐメデイアーミニコミからウェブへ」

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[日本]WAN争議が提起した課題と現在のWANの問題点

私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN) の会員として、今のWANに何が不十分であるかについて、WAN争議の際に提起された問題をもとにして考え、以下の文章にまとめてみました(簡潔にするため、文体は常体にしています。もちろん、以下の点のかなりの部分は、すでにWANのメールアドレスやfacebookのコメントなどをつうじてWANには申し上げています)。

私は、今回、WAN争議に関する文献を読み直す過程で、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」というサイトも作りました。「まとめ」といっても、リンク集に毛が生えた程度のものですが、これを作ったのは、争議解決後もWANには問題が残されているうえ、他の少なからぬ非営利団体や市民運動団体にも同様の問題が存在しているからです。こちらの方も、よろしければご覧ください。

私は、今のWANは女性のための総合サイトとして重要な役割を果たしていると思います*1。次々に新しい記事が掲載されていて、私も、毎日、WANを見るのが楽しみです。ご多忙であろう中、多大な努力をなさっている理事や運営委員の方々には、私も敬意を抱いています。しかし、WANには、他の団体がどこでもそうであるように、弱点も存在していると思いますので、この一文を書いた次第です。

<目次>
1.和解の成立(2010年5月)とその後のWAN理事会の対応
2.ボランティアについて
3.会の内部の意見交流・民主主義の不十分さ
4.サイトの双方向性の乏しさ
5.非営利団体・市民運動の「内部」の労働問題などに対するWANの姿勢

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WAN理事会への3通の手紙――WAN争議における謝罪=反省点の表明を求めて

私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の会員として、今年1月以来、理事会に対して、昨年のWAN争議の和解において理事会がユニオンWANに対して謝罪した内容を、自ら会の中で公表するか、かりにそれができないとしても、その内容を「理事会の対応の問題点(反省点)」として表明していただくことなどを求めてきましたが、理事会の同意を得るに至りませんでした。

私は、公然と理事会を追及して理事会に反省点の表明などを迫るよりも、会の内部で理事会に申し入れをすることによって、理事会が自発的に反省を表明していただく形を取った方が今後のWANにとって良いと思いましたので、当初は私が提出した文書(手紙)を公表するつもりはありませんでした。

しかし、私の提案は理事会には受け入れられませんでしたので、以下、私が理事会に提出した3通の文書を本ブログに掲載いたします(私の文書に対する理事会の2通のご返事については、現在、理事会に公表の許可を求めているところです。許可が得られ次第、公表させていただきます〔*しかし、5月15日、理事会から、私のブログへの掲載は許可できないという回答がありました。許可できない理由については書いてありませんでした。私が書いた掲載許可願は、このエントリの末尾に掲載しています――5月16日追記〕)。

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WAN総会に出席して

 6月20日、私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の総会に出席しました。40人以上の方が集まっておられたようです。

 今回の総会の「2009年度事業報告」では、NPO法人会員数やユーザー登録数の大きな伸びが報告され、「2010年度事業計画」では、今年8月に大幅なサイトリニューアルをすることやその際には記念イベントをおこなうこと、特集記事を増やす計画などが報告されました。その他、決算報告や予算案、新役員が説明されて、各議案は、いずれも賛成多数で採択されました。

 以下では、最近私がWAN争議にかかわってきた関係上、WAN争議について私がおこなった発言とそれに対する理事の応答を中心に書きます。私は2回発言しましたが、以下は、私のメモや記憶にもとづく記録ですので、正確でない点があると思います。しかし、だいたいの内容は反映していると思いますので、どうぞご了承ください。

和解内容のうち、自らの謝罪についてだけは口を閉ざすWAN理事会

 上記の「2009年度事業報告」の中で、5月の労働委員会のあっせんによるWAN争議の和解についても簡単に報告がありました。理事会は、今回、解決金についても具体的な金額を報告しました。その際、理事は「労働委員会から和解内容を言わないように求められているが、解決金の金額は、会計報告と関係があるから、労働委員会に特別の許可を得て報告する(だから、ブログなどには書かないようにしてほしい)」むね述べました。

 質疑応答の際、私は「今回の労働委員会のあっせんの結果、理事会はユニオンWANに対して、3項目の謝罪[①平成21年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと、②それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと、③これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと]をなさっている。なぜそれを言われなかったのか分からないが、その謝罪内容をふまえた行動を幾つかなさっていただく必要があると思う」と述べました。

 ところが、理事側は、私が途中まで述べたところで、「あなたがどこからその話を聞かれたのかわからないが、あっせんの内容については、労働委員会から口外しないように言われている。解決金の金額は、会計報告と関係があるから述べたまでだ」とおっしゃったので、私は、「今回の謝罪の内容も、理事会の行動と関係がある」と指摘したうえで、「ユニオンWANは、合意した内容については公表して構わないことをあっせん委員に何度も確認している」「ユニオンWANの遠藤さんやカサイさんが嘘をついていると言うのか?」と問うと、理事会はそうはおっしゃらず、「あっせんは労使が別室でおこなわれるから相手のことはわからない」云々と述べました。

 ということは、WAN-NEWS 16号で、理事会が「労働委員会から、使双方に対し、あっせんでの合意内容や経緯について、第三者に情報を漏洩しないよう、厳に求められおります」と書いてあるうちの、少なくとも下線部分については、理事会は、事実を確認せずに述べているということになります。

 このかん、理事会は、和解内容のうち、ユニオンWANの労働者の「円満退職」という点については早々に発表しており、今回、解決金の金額まで内輪では発表したにもかかわらず、自らの謝罪についてだけは口を閉ざしているわけです。

「以前から謝罪している」と強弁し、謝罪内容と矛盾した2月の事情説明文書の訂正や撤回も拒否

 さて、私は、具体的に理事会がやるべきこととして、「2月に理事会が出した『この間の事情の説明』という文書は、今回の謝罪の内容と矛盾している個所があるので、撤回ないし訂正すること」を求めました。その理由として、「『この間の事情の説明』という文書では、『遠藤さんが、業者によるリニューアルについて事前に相談がなかったことが問題であると主張して』いることや『事務所の閉鎖についても、そういう考えが浮上した時点で相談すべきであると組合は主張して』いることについて、理事会は、[相談をしなかった]自らの態度を正当化しているが、理事会は、今回、相談や協議しなかったことを謝罪なさったのだから[=上記の②参照]、この文書は、撤回ないし訂正する必要がある」と述べました。

 ところが、理事会は「謝罪はこれまでもしてきている」と言うのです。しかし、ユニオンWANが指摘しているように、そもそも理事会がこれまでにおこなった「謝罪」は、WAN理事会には「雇用と経営にたいする予測・見通しの甘さがあった」(から退職をお願いする)という点について以上のものではなく、今回の①~③に書いてあるような具体的な内容は含まれていません。

 私は、「たとえ謝罪内容を秘密にするとしても、今回の謝罪と『この間の事情の説明』という文書の内容が客観的に矛盾している以上、訂正・撤回の必要がある」と述べたのですが、理事側は、「矛盾していない」とか、「どこが矛盾しているかわからない」とかおっしゃるので、率直に言って私はいささか呆れました。文末に特に矛盾がはっきりしている箇所を掲載しますので、本当に訂正や撤回の必要がないのかどうか、ご覧になってほしいと思います(1)

 私は、理事会が「この間の事情の説明」という文書を訂正ないし撤回しないのは、和解条項違反ではないかと考えます (事前に協議・相談をしなかったのを正当だと主張するか、謝罪するかは完全に相反しているので)。少なくとも和解条項の趣旨に違反していると思います。

 以上述べたような理由で、私は「2009年度事業報告」については、それを承認する挙手はいたしませんでした。

今回の謝罪内容は、今後、WAN理事会の言う「労働関係のオルタナティブ」をめざす際にも生かしていくべきもの

 他の会員の方々からも発言はありましたが、その内容は、「私の和解の時も、裁判長から口外しないように言われた」とか、「和解というのは水に流すということ(?)」とかいったものでした。

 私は、その方々は、和解というものの意義を十分理解しておられないのではないかと思いました。たしかに双方が合意によって和解内容を非公表にする場合はありますが、フェミニズムで言えば、たとえば2003年の住友電工男女差別裁判の勝利和解(解決金、原告2人の昇格など)はどうだったしょうか? 和解内容はマスコミにも公表されて大きく取り上げられ、女性労働者の方々を励ましました。会社側も、和解と同時に、(和解内容には含まれていない)原告以外の4人の女性もあわせて昇進させています。もちろん原告の方々は、この和解を間接差別の廃止などのために、大いに活用しておられます。今回のあっせんによる和解も、今後の非営利団体(WANを含む)の雇用・労働(ボランティアを含む)問題に生かしていくべきものだと思います。

 私は、2回目の発言(「2010年度事業計画」についての発言)の際は、「これ以上言っても繰り返しになるから、簡単に要望だけさせていただく。今回理事会が謝罪した行為の内容は、組織における民主主義や人権と関わるものであって、今回理事会が提起している『労働関係のオルタナティブ』をめざす際にも重要である。他の非営利団体でも、さまざまな雇用・労働問題が起きている。その点は、昼の女性学会のワークショップでも話し合われた。今回の経験については、可能な範囲で公開していただきたい」と述べました(2)

双方向性については、何らかの形で実現する方向のようです

 続けて私は、次のテーマに移り、「先日送られてきた文書(3)の中にある、WANサイトでは『意見の対立を明らかにし、「論戦」を招くようなことはしない』という方針は、一面的だ」ということを述べました。その理由として、「ウェブ上の論争の中にも真摯なものや、バッシングに的確に反論しているものもあるので、論争を一概に否定すべきではない。また、コミュニケーションには、批判や攻撃だけではなく、共感・共鳴、議論の発展、異なる視点からの意見など、さまざまなものがあるし、批判にも、建設的批判がある」ということを挙げ、「しかし、今のWANサイトには、コメント欄もなく、トラックバックもできず、掲示板もないので、記事に対する外部の反応が全くわからない。最低、記事に対する感想を書き込める承認制の掲示板でも設置してはどうか。それから、投稿規程を早めに作成して、投稿を広く募る方がいいと思う」と要望しました。

 こちらの件に関しては、理事会も「双方向性については、実現させるようにする。現在いくつかの方法を検討している」といった答えをなさり、他の理事も「今の発言の後半には賛成。私も掲示板や投稿規程については言ってきた」と述べましたので、何らかの形で双方向性は実現するようです。

 この点は、私は歓迎したいと思います。ただ、投稿の承認において、ユニオンWANの活動報告「WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ!」を削除したような、ダブルスタンダード(WAN以外の団体に対する批判は承認されやすいが、WANに対する批判は承認されないか、著しく難しい)が疑われるようなことはやめていただきたいと思います。

私のスタンス

 以上、私の発言を中心に報告しましたが、時間の関係もあって意を尽くせなかった部分も多く、後で「あの時、ああ言っていればよかった」と後悔したりしています。

 それはともかく、WAN発足以来、WANサイトは私が最もよく見るサイトのうちの一つになっておりますし、ほとんどの新着記事をクリックしてきたと思います。私は、理事会の皆さんが、WANサイトを通じて、インターネットにおけるフェミニズムのパワーの拡大に尽力しておられることは素晴らしいと思います。私もそうしたWANに賛同し、昨年度末に入会して、会費はもちろん、寄付金もいくらか払いました。私は本当に微力ですが、今後、拙い投稿などもして、協力させていただきたいと思います。

 ただ、私は、理事会の皆さんに対しても、意見が異なること、おかしいと思うことについては、それを率直に述べることも非常に大切なことだと考えています。私は、その点については、今後もきちんと努力したいし、今回の素晴らしい和解(私は、なぜ理事会の方々が自らの謝罪をもっと誇りに思って、深めないのかがむしろ不思議なのですが)については、その内容を宣伝し、その持つ意義を深めていきたいと思います。

(1)下の、[A]WAN理事会の「この間の事情の説明」(2月13日)と[B]あっせんにおける理事会とユニオンWANとの合意(5月11日)とを比べると、「業者によるリニューアルによる遠藤さんの仕事外し」と「事務所の閉鎖」について「事前の相談、協議」がなかったことについて、[A]の文書には謝罪は皆無であり、むしろ延々と組合のAさん[遠藤さん]やBさん[カサイさん]を非難することによって自己を正当化しているのに対し、[B]の文書は、組合に対して謝罪をしています。すなわち、[A][B]の2つの文書の間には、明らかな矛盾、態度の逆転があることがわかります。

[A]WAN理事会「この間の事情の説明」(2月14日)より
 「Aさんは、業者によるリニューアル(これは、同文書中にも「リニューアルに伴いAさんに時給××××円で担当していただく制作の仕事が不要になる」などと書かれているように、遠藤さんの仕事外しと不可分です)について事前に相談がなかったことを問題であると主張しておられます。実際には、Aさんに10月にはすでに新業者を入れたいと思っていることを伝えてはいましたが、サイトリニューアルに関してAさんの意見を聞くことはできませんでした。それは、上記のような勤務時間の制限からAさんと相談する時間が取れなかったことと、Aさんと理事たちのコミュニケーションに問題があったためです。上述のように、サイト発足まもなくからすでにコミュニケーションが悪化していましたが、その後も、Aさんは、どういう作業をやっているか、今後の制作の見通しはどうなっているのかを『素人』の理事たちに説明するのは時間の無駄であると拒否され、業務上に必要なコミュニケーションも成立しにくい状態になっていました。もちろん、使用者であるWANにコミュニケーション改善の責任の一端があったことは承知していますが、WANとしては、良好な労働環境を作るためにAさんの要望をできる限り受け入れていたにもかかわらず、Aさんが対立的な態度を取り続けられたことは、まことに残念かつ遺憾に思います。
 なお、事務所の閉鎖についても、そういう考えが浮上した時点で相談すべきであると組合は主張されていますしかし、12月末にAさんにかかわる争議が始まって以来、Aさん・Bさんで作られている組合は、協議の最中であるにもかかわらず、協議内容にかかわる情報を一方的にウェブ上で公開し(通常は、円滑な協議の進行のために、双方が合意した事項以外は、途中で公開するのは避けるのが原則です)、しかもその中でWANの信用を失墜さ せるような発言を繰り返しておられたこと、また、サイト作業に関して理事会の要請を無視する行動を取られたことなどから、Aさん・Bさんと信頼関係を維持することができず、重要な事項について相談をする機会を持つことができませんでした。」

[B]労働委員会のあっせんによるWAN理事会とユニオンWANとの合意(5月11日)より
 WAN理事会は、以下の3点について労組に謝罪する。
 ①平成21年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと
 ②それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと
 ③これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと

 [A]の2月14日の段階での理事会の態度がこのようだったからこそ、私は、4月28日と5月8日と2回にわたって、このブログで、業者によるリニューアルや事務所の閉鎖について、理事会が事前に相談や協議をしなかったことを正当している点を批判したのです(「WAN理事会の文書は、サイトリニューアルについて事前に遠藤さんと相談しなかったことを正当化しうるか?」[2010-04-28]、「WAN理事会の行為は、労働者との『信頼関係の消失』を理由にすれば、正当化されるのか?」[2010-05-08])。

 なお、③についても、あっせん以前は、理事会はまったく謝罪などとしていません。私は、今回の謝罪に照らしてみると、WAN理事会の「この間の事情の説明」という文書自体の中にも「不適切な言動」が多数含まれているように思います。

(2)この点については、私はすでに、このブログのエントリー「道理がないWAN理事会の主張、理事会は今回の謝罪を生かした行動を」で以下のように述べています。
 「WANは当面は賃労働者を雇用しない方針だとうかがっていますので、ひょっとしたら、理事会は、今回の謝罪は、今後はもう関係のない問題だと考えておられるのかもしれません。たしかに、もし今回の紛争が賃金水準などをめぐって起きたものならば、ある程度はそうかもしれません。
 しかし、今回理事会が謝罪なさった行為の内容は、組織における民主主義や人権と関わる内容であり、たとえ賃労働者に対してでなく、ボランティアや一般会員に対してであっても、おこなってはならないことであると思います。そう考えると、今回の謝罪の内容は、たとえば、以下のような教訓にも読み替えることができるのではないでしょうか?
 ・WANのあり方ついての民主的な「相談・協議」なしに、ボランティアの仕事を奪ったり、押しつけたり、働く条件を変えたりしてはいけない。
 ・理事会に対する批判をするボランティアや会員に対しても、「不適切な言動」はしてはならない。
 私は、べつに今の理事会が、いま上のような行為をおこなっていると言うつもりはありません。しかし、将来こうしたことが起きない保証はありませんから、上のような点は今後の教訓にすることができると思います。」

(3)これはWANの法人会員宛てに送られてきた文書のことを指していますが、同様の記述はWAN-NEWS16号に添付された「情報開示に関しての方針――なぜWANサイト上で説明を行わなかったか」という文書の中にもあります。このフレーズの前後の文脈は、以下のようなものでした。
 「ジェンダー・フェミニズム関係については、バッシング側の歪曲された情報が蔓延し、声を上げようものなら、ネット上の暴力と言っていいくらいの攻撃が浴びせられ」るような実態があるから、WANサイトは「誰も必要以上の批判をされたり攻撃されたりすることのない、安心してアクセスできる場であることが第一の特長であるべき」だ。もし雇用問題において、WANがWANサイトを用いて情報発信をしたなら、「意見の対立を明らかにし『論戦』を招くこと」になっただろうが、「それは、安心できるネット環境をめざすWANにとって、けっして望むことではない」。

WAN理事会の「情報開示に関しての方針」について

 5月12日、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の理事会は、「情報開示に関しての方針――なぜWANサイト上で説明を行わなかったか」という文書を発表しました。この文書は、今回のWAN争議に際して、WAN理事会が、組合側の主張に対して、WANサイトなどウェブ上で反論や説明をしなかった理由を述べたものです。その理由として、理事会は、「1)労使協議の原則の尊重および労働委員会の指導」と「2)WANのウェブについてのポリシー」という2つの点を挙げています。

 遅ればせながら、以下、理事会のこの文書について、私が疑問に思った点を述べます。

組合側が流した情報のどこが「事実と異なる」かについて、何の説明もできていない

 理事会のこの文書は、組合(ユニオンWAN)が「事実と異なる(基づかない、反する)」情報を流している、と繰り返し述べています(1)

 しかし、この文書を読んでも、組合側が流した情報の「どこが、どのように事実に異なる」のかが全くわかりません。これで納得するというのは、無理と言うものです。

 実は、理事会の考えは、むしろ組合のサイトを見ることによって、わかるのです。すなわち、組合のサイトを見ることによって、理事会は、「組合は『理事会がウェブマスター業務の外注化をした』と言っているが、それは事実と異なる」「『理事会は一切の謝罪を拒否してきた』と言うが、それは事実と異なる」などと主張してきたことがわかります(「1・20 団交の報告」「5/17 内容証明郵便物」「5/22 5/17内容証明郵便物への回答」)。

 また、組合側は、そうした理事会の主張に対しても、頭から相手にしないのではなく、より正確を期すために、組合として必要な補足もおこなっています(上記の記事など参照)。理事会にはなお不満が残っているのかもしれませんが、理事会が「組合の主張は事実と異なる」とだけ言っているのに比べて、組合のほうがずっと誠実な対応をしているように思います。

「1)労使協議の原則の尊重および労働委員会の指導」について

 この節では、理事会は、組合側主張に対してWANサイトなどで反論をしなかった理由として、「労使協議においては、労使双方が公開を合意したこと以外は、公表しないのが原則です」「とくに、労働委員会のあっせんでは、事案の内容について第三者には情報を流さないことが双方に厳格に求められています」という2つの理由を挙げています。

 上の2点に対しては、私は、すでにこのブログで反論しました(「道理がないWAN理事会の主張、理事会は今回の謝罪を生かした行動を」の「あっせんで合意した事項も、公開してはならない?」の箇所、「WAN理事会の行為は、労働者との『信頼関係の消失』を理由にすれば、正当化されるのか?」の(1)の個所など)。もちろん組合側からも、組合と直接かかわる論点については、反論が出ています(「あっせんの結果の説明について」「5.12理事会文書について」)。

 それにしても、「労使協議においては、労使双方が公開を合意したこと以外は、公表しないのが原則」だとは初耳です。たとえば関西圏大学非常勤講師組合が各大学に大量に配布し、ウェブにも掲載している『非常勤の声』には、団体交渉の経過や結果、そうした場での大学当局の主張・行動に対する批判が数多く書かれていますが(2)、まさかそれらについて、いちいち「労使双方が公開を合意」しているはずはありません。それらの記事の多くは、べつに裁判に突入してから書かれたようなものではなく、大学との通常の団交とか、雇い止めをめぐる労使交渉とかについての記事であり、WAN理事会の言う「労使協議」の範疇の出来事についてのものなのです。

「2)WANのウェブについてのポリシー」について

 理事会は、次のように述べています。「ジェンダー・フェミニズム関係については、バッシング側の歪曲された情報が蔓延し、声を上げようものなら、ネット上の暴力と言っていいくらいの攻撃が浴びせられ」るような実態があるから、WANサイトは「誰も必要以上の批判をされたり攻撃されたりすることのない、安心してアクセスできる場であることが第一の特長であるべき」だ。もし雇用問題において、WANがWANサイトを用いて情報発信をしたなら、「意見の対立を明らかにし『論戦』を招くこと」になっただろうが、「それは、安心できるネット環境をめざすWANにとって、けっして望むことではない」。

 私はインターネットには詳しくないのですが、私のささやかな経験も踏まえつつ、以下、私の考えを述べてみます。なお、上の理事会の主張は、単に今回の問題についてだけでなく、WANサイトのあり方全体にかかわってくると思いますので、今回の問題に限定せずに論じます。

(1-1)論争は一概に回避するべきものか?

 まず、一般に論争というものが有意義たりうることは、フェミニズムにおいても、平塚らいてうや与謝野晶子の母性保護論争以来、さまざまな論争がおこなわれてきたこと一つとっても明らかです。

 では、ネット上での論争は有意義になりえないのでしょうか?

 理事会は、ネット上での論争の難しさとして、以下の2点を挙げておられます。
 (a)「ネット上の発言は、生身での語り合いとは異なって、意図したニュアンスが必ずしも伝わらず、ディスコミュニケーションを生みやすい」
 (b)「インターネットは『誰にでも開かれたメディア』でもありうる反面、技術上・時間上の利点を持つ者が多く発言の機会を行使して圧倒的な『強者』にもなりえる」

 しかし、上の(a)や(b)の点は、紙媒体での論争もほぼ同じ難しさを持っていると思います((b)の「技術上の利点」の問題は紙媒体にはありませんけれども、紙媒体に執筆するには、ネットの場合よりもさらに社会的な「強者」でなければならない場合が多いです)。

 たしかにネットの場合、生身での語り合いと比べれば、(a)のような弱点はあるでしょう。しかし、その一方、ネットの場合、生身での語り合いと異なって、「空間的距離の制約を受けない」とか、「すぐに返答せずとも、時間の都合のつくときに返答できる」とか、「まとまった考えを述べることができる」「調査研究をした上で返答できる」といった利点もあります。

 現実に、ネット上の論争も、けっして不毛なバッシングだけではありません。最近の例で言えば、排外主義反対のデモにおける「反日上等」のスローガンをめぐる論争や在特会に対する対応をめぐるmacskaさんの提起をめぐる議論は、排外主義に反対する者どうしの真摯な論争だったのではないでしょうか? 

 私自身も、同一価値労働同一賃金原則をめぐって、インターネット新聞JANJANのある記事(さとうしゅういち「『同一価値労働に同一賃金を』 連続シンポジウムが大阪でスタート」)をめぐって、掲示板で他の方と論争をしたことがあります(その掲示板は現在は消滅していますが)。その、さとうさんの記事は当月の編集委員選賞を受賞したのですが、授賞理由として「[受賞した記事は]専門的な観点からもっと掘り下げてほしかったが、その分をご意見板の書き込みがおぎなって余りあった。感情的な悪罵のやりとりではなく、実り多い論争になった」(「編集委員選賞3月の受賞記事」)という評価をいただいています。これも、私が論争するときに、自宅や図書館にある資料を参照しつつ、じっくり考えて議論することができたからです。WANサイト上での稀有な論争の一つである、澁谷知美さんのトークに対する林葉子さんの批判(「爆笑新春トーク」に対する所感と批判)も、林さんが資料に当たったからこそ書けたものであり、その場での生身の語り合いからだけでは生まれえないものだったと思います。

 また、たしかにネットには不当なバッシングも多いですが、そうした不当な攻撃に対しても、人権擁護勢力が単に閉鎖的な対応ばかりをしているのかと言えば、そうではないと思います。南京事件や従軍慰安婦問題に関しては、しっかり勉強してバックラッシュ側に対抗しているブログも一つや二つではありません。ジェンダー問題についても、たとえば、昨年、曽野綾子氏が、ミニスカートが性暴力を誘発するかのような議論をしたことに対して、ネット上では、たしかにそれを正当化するような論者も少なくなく、いささかうんざりさせられましたが、そうした議論に対する説得力のある反論も多数出されて、私を含めて、多くの方々の性暴力に対する認識が深まったこともありました。まして、今回のWAN争議をめぐる記事の多くは「バッシング」とは言えないものです。

 ネット上の論争がうまくいかないことも多々あると思いますが、そういう場合は、うまくいかなかった原因を解明すること自体が、ネットにおけるコミュニケーションに対する貴重な貢献になると思います。

 ですから、「意見の対立を明らかにし『論戦』を招くこと」を一概に否定するのは、非常に一面的な方針だと思います。個人ブログなら方針は自由でいいと思うのですが、WANは二百人近い会員に支えられた総合サイトですから、あまり単純に考えない方がいいと思うのです。

(1-2)WANは、不当な攻撃を回避しようとするあまり、コミュニケーションをすべて閉ざしていないか?

 その点と関連して、もう一つ感じるのは、現在のWANは、不当な批判や攻撃に対してのみならず、コミュニケーション自体をすべて閉ざしているように思われることです。現在のWANサイトにはコメント欄もなく、トラックバックもできず、掲示板の類もありませんから、記事に対する外部からの反応がまったくわからないのです。

 コミュニケーションには、批判や攻撃だけではなく、共感・共鳴、議論の発展、異なる視点からの意見など、さまざまなものがあります。批判の場合も、その記事の内容をいっそう深めるための建設的な批判が少なくありません。そうしたコミュニケーションを活発化させることは、サイトが繁盛することにもつながります。

 ですから、私は、最低限、WANサイトに、記事に対する感想を書き込みができる掲示板を設置してはどうかと思います(承認制でいいと思う)。一度、ブログ「WAN裏方日記」が、日記のコメント欄に記事に対する感想を書き込んでもらうように呼びかけたことがあり、私も率先して書き込みましたが、「WAN裏方日記」のコメント欄は字数制限がきつくて、まとまったものは書き込めないのが難点です。

 もちろん、できれば個別の記事について、その記事にはどういう反応があったかをわかるようにできればいいと思います。また、現在のところ、WANには投稿が少ないようですから、早めに投稿規程を作成して、投稿を集めるようにしたほうが良いでしょう。

(2-1)インターネットの双方向性は、組織における民主主義にとっても有用

 ご存じのとおり、インターネットでは、「Web2.0」といって、「情報が送り手から受け手への一方的な流れであった状態から、送り手と受け手が流動化し、誰でもが情報を発信できるようになる」ということが提唱されています。理事会も、「インターネットは『誰にでも開かれたメディア』でありうる」という良い面があることは認めておられます。私は、そうしたネットのあり方は、組織における民主主義のためにも必要だと思います。

 逆に言えば、一方的に送り手が「発表する」だけのメディアは、広い意味での、権力を持っている人に有利であるということです。マスメディアはもちろんですが、機関紙やミニコミ、メールマガジンのようなものも、編集部や組織の執行部の主導性が強くなりがちなことは否定できません。WANのメディアも、メールマガジンやWAN-NEWSが軸になっているので、そうした傾向があると思います。

 そうした通常のメディアの弱点を補うためも、ウェブ上での議論は必要ではないでしょうか? 必ずしも公開で議論する必要はありませんが、内部で議論する場合も、メーリングリストやSNSのような双方向性のあるメディアの活用が望まれると思います。

(2-2)より良いWANサイトにするためには、多くの人々に意見を出してもらい、より多くの人をサイトの作成に巻き込むことが必要では?

 もちろん、組織における民主主義を活性化させるためには、ネットの活用だけが手段ではないと思います。たとえばWANサイトをより良いものにするためには、幅広い会員やユーザーの意見を集め、みんなで話し合い、みんなが協力することが必要でしょうが、そのために、以下のようなことをやってみてはいかがでしょうか?
 ・サイトについてアンケートをして、その結果を公表する。
 ・サイトについて、みんなが意見を出し合い、話し合う場を設定する。そのための懇談会のようなことをやってもいいでしょうし、ときには理事会にも一般会員が出席できるようにして、会員の意見を聞いてもいいのではないでしょうか?

 私も、今の理事は、単に上から指示を出しているだけのような人々ではまったくなく、原稿を集めるなど、さまざまな作業を自分たちでやってWANを支えておられる方々であることは承知しています。ただ、より多くの人を巻き込んで、サイト作成に参加してもらうためにも、より多くの人が主体的に意志決定に参加できるようなやり方が必要だと思うのです。

(3)「WAN法人の雇用問題は、一般のユーザーの方には無用・不要なこと」か?

 理事会は、「WAN法人の雇用問題は、NPO会員の皆様をはじめ関心を持っていただいている方には有意な情報であっても、より一般のユーザーの方には、無用・不要なことである」とおっしゃっています。

 しかし、今回WAN法人で起きた雇用問題は、けっしてWANだけの問題ではないと思います。他の非営利団体でも、さまざまな雇用・労働問題が起きています。だからこそ、今回の問題については、署名サイトに170人を越える人々の署名が集まり、多くのブログでも取り上げられたのではないでしょうか? そして、その中には、他の非営利団体の問題に触れた人も少なくありません。

 ですから、WAN理事会も、ぜひ今回の経験については、可能な範囲で広く公開して、NPOの雇用・労働問題に関心のある人の共有財産にしていただきたいと思います。

 以上、私の拙い考えを綴ってきましたが、ぜひもっと多くの方々がWANやウェブのあり方について論じていただきたいと思います。

(1)今回の文書は、「今般、雇用問題に関しては、1月以来、組合側から、事実に基づかない一方的な情報が流され~」、「組合側が、協議が始まって間もなくから、一方的で事実に反することを含む、WANの信用を傷つけるような情報を盛んに流布させた」、「組合は、あっせん終了後さっそく(……)事実と異なる情報をウェブ上に公開し」と述べています。
(2)たとえば、『非常勤の声』第22号の中の、「授業回数が増えれば、賃上げは当然!!」という記事は、大学との定期交渉の内容の報告であり、団交の場での大学側の主張に対する批判も書いてあります。また、「太成学院大学が内定取り消しで全額補償」という記事は、大学側の不当なやり方について交渉した経過と全額補償を勝ち取ったという結果の報告です。「姫路獨協大学で非常勤の大量減ゴマ・雇い止め!」という記事は、大学当局の通告を批判して、今後たたかっていくという記事です。

道理がないWAN理事会の主張、理事会は今回の謝罪を生かした行動を

 WANの理事会とユニオンWANとの争議に関して、5月12日、ユニオンWANは以下のような発表をしました。

 昨日5月11日付けで、理事会からの以下の3点についての謝罪および、ごく少額の[*この金額を、多額の、と取る人はいるかもしれませんが、ユニオンWANのふたりにとっては取れる/取るべきであると思っていた額よりも、少額であったという意味です]解決金の支払いをもって、ユニオンWAN組合員2名が「円満退職」することで合意しました。

 ①平成21年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと
 ②それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと
 ③これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと

 (「【速報】WAN争議解決【勝利和解】」より。*は5/15に追加された箇所)


あっせんで合意した事項も、公開してはならない?

 ところが、上のユニオンWANの発表に対して、WAN理事会は、WAN-NEWS 16号において、「労働委員会から、労使双方に対し、あっせんの合意内容や経緯について、第三者に情報を漏洩しないよう、厳に求められてい」るにもかかわらず、ユニオンWANが情報を公開したと言って、ユニオンWANを非難しています。

 私は、上のWAN理事会の主張は、以下の4つの理由から、まるで説得力がないと思います。

 第一に、ユニオンWANの側は、「結果的にあっせんで合意したことについては、公開は禁止されていない」ということを、あっせん委員に再三確認しているからです。

 すなわち、WAN理事会の側は、抽象的に「第三者に情報を漏洩しないよう、厳に求められている」と述べているだけなのに対して、ユニオンWANの側は、労働委員会から、「あっせんの経過」に関しては、「非公開だという安心感からすすむ話もある」からあっせん継続中は、中身についてサイトに書くことは遠慮してほしいし、「あっせん制度の趣旨からして、合意後もサイトに詳細に書くことは遠慮してほしい」と言われたけれども、「結果的に合意したことに関しては、公開は禁止されていない」ということを「あっせんの席で委員に再三確認しています」と述べています(「あっせんの結果の説明について」)。

 私は、「あっせん制度は、非公開が原則だ」と言う場合の「非公開」の意味は、「裁判所の和解協議は、非公開だ」とか言う場合と同じ意味にすぎないと思います。裁判所の和解協議も、協議の経過については、終了後も含めておおむね非公開だと思うのですが、ご存じのとおり、和解して合意した結果はたいてい公開されています。

 もっとも、あっせんでは、労使が同室となることはないそうなので、WAN理事会が労働委員会からどのような説明を受けたかはユニオンWANにはわからないそうなのですが、これまでに双方が公表した文書から見るかぎり、私は以上のように思います。

 第二に、WAN理事会の側は、あっせんで合意した事項も公開してはいけない理由をまったく説明できていないことです。

 WAN理事会は、「労使協議においては、労使双方が公開を合意したこと以外は、公表しないのが原則です。(……)この見地から、とくに労働委員会あっせんでは、事案の内容について第三者には情報を流さないことが双方に厳格に求められています」と言っており、その理由として、労使協議においては、「公開で、自分たちの立場から相手方を一方的に批判非難したりすれば、なおさらに事態は紛糾し、歩み寄りが困難になる恐れが大いにある」という点と「そのような批判非難の応酬は、双方が属する組織の信頼信用をいたずらに傷つけることにもなりかねない」という点を挙げているのですが(→この2点が理由だとしたら、百歩譲って理事会の言い分に従うとしても、合意した事項については、べつだん「双方が公開を合意」までしなくても、公開してもいいことになる)、労働委員会のあっせんについては、合意した結果すら公開してはいけない理由を示せていません。

 もちろん、労働委員会のあっせんの場合でも、使用者側が、自分たちの都合から、合意した事項も「非公開」にしてほしい場合はあるでしょう。その場合、労働者側も、もし使用者側の「非公開にしてくれ」という条件を飲んだら、自分たちの要求が実現するなら、合意事項を「非公開」にすることに同意する場合もあるでしょう。しかし、それはあくまで労使の合意によるものです。もしWAN理事会が合意内容も非公開にしてほしかったのなら、和解条項の中に「非公開にする」という文言を入れるように提案すればよかったのです。ただし、遠藤さんにうかがったところ、もし「非公開」という条件が付いていたら、絶対に今回の和解は飲まなかったということですが……。

 第三に、理事会がおかしいのは、理事会側も、自分たちに有利な点についてだけは、事実上、あっせんでの合意内容を公表しているということです。

 理事会は「今般、あっせんが成立し、5月11日付で両氏に円満退職いただきました」と発表しています。この文を読んで、「あっせんの合意内容」と「両氏の円満退職」とが無関係だと考える人は誰もいないでしょう。ですから、この発表は、事実上、あっせんの合意内容を伝えており、しかも、理事会が求めていた点(理事会に有利な点)だけを伝えたものだと言えます。

 もし理事会が言うように、本当に「本メールでは、和解に至った点のみをお知らせする」つもりならば、理事会は、文字通り「今般、あっせんが成立し、解決いたしました」とだけ書くべきでしょう。

 私は、ユニオンの発表のほうが、今回の合意内容の理事会に有利な点(=遠藤さんもカサイさんも雇用の継続はできなかったこと)にも触れているぶん、公正だと思います。

 第四に、理事会が謝罪内容を公表することは、WANにとってもプラスになると思います。だから、私は、理事会は、むしろ自らすすんで合意内容を発表してほしいと思います。

 なぜかといえば、今回の謝罪を今後生かしていくためには、謝罪内容を公表することが基礎になるからです。後でも述べるように、WANをより良い団体にするため(ひいては、他の団体を含めた非営利団体における雇用や労働のあり方をより良いものにするため)に、今回の謝罪内容は生かせると思います。きちんと謝罪内容を公表することは、理事会に対する評価も高めるでしょう。

今回理事会が謝罪した①や②は、今迄にすでに文書で謝罪していた問題か?

 ところが、WAN理事会(の代理人の弁護士)は、私が冒頭で引用したユニオンWANの記事「【速報】WAN争議解決【勝利和解】」について、「名誉毀損」だと主張して、同記事の削除や謝罪文の掲載を求めており、もし誠意ある対応がなければ、「断固たる法的手段を執る」と述べた通告を送ってきたそうです(「5/17 内容証明郵便物」)。

 この件については、私は、遠藤さんのそれに対する回答(「5/22 5/17内容証明郵便物への回答」)やユニオンWAN(遠藤さんとカサイさん)の訴え(「迷走!WAN理事会、恫喝訴訟*を予告!?」)に述べておられることに賛成なのですが、私も、以下、若干意見を述べてみます。

 理事会(の代理人の弁護士)は、今回理事会が謝罪した「①平成21年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと」や「②それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと」は、すでにこれまでの「文書中に謝罪してきている」と述べています。

 私は、驚きました。理事会が述べていることは、事実とまるで異なるからです。

 たとえば、この2月に理事会が出した「この間の事情の説明」という文書では、「A[=遠藤礼子]さんは、業者によるリニューアル[によって仕事の多くの部分を取り上げられたこと]について事前に相談がなかったことが問題であると主張して」いることや「事務所の閉鎖についても、そういう考えが浮上した時点で相談すべきであると組合は主張して」いることに対して、理事会は、「謝罪」するどころか、むしろ「Aさん」や「組合」を非難しつつ、自らの態度を正当化しています(同文書の「3)サイトリニューアルとAさんの労働条件変更」の4~5段落目参照)。

 理事会の態度がこのようだったからこそ、私は、2回にわたって、このブログで、業者によるリニューアルや事務所の閉鎖について、理事会が事前に相談や協議をしなかったことを正当している点を批判したのです(「WAN理事会の文書は、サイトリニューアルについて事前に遠藤さんと相談しなかったことを正当化しうるか?」[2010-04-28]、「WAN理事会の行為は、労働者との『信頼関係の消失』を理由にすれば、正当化されるのか?」[2010-05-08])。

理事会が「不当労働行為を行いそれを謝罪したかのような誤った印象」?

 また、理事会(の代理人の弁護士)は、③の点について、「あたかも通告人[理事会]が不当労働行為を行いそれを謝罪したかの誤った印象を与える名誉棄損表現もされました」と言っていますが、遠藤さんと同じく、私も、全然そうは思いませんでした。

 第一に、該当エントリーにはそんなことは全く書いてありません。むしろ、ブログを全体として読むと、「ユニオンの側は、理事会の行為の一部について『不当労働行為』だと主張してきたけれども、あっせんでは、そこまでは踏み込まず『不適切な言動』という表現になった」ということが伝わると思います。

 第二に、理事会が「組合に対して不適切な言動があったこと」を謝罪したのは(「組合に対して」という文言になっていることに注意)、それらの言動には、不当労働行為に近い言動か、そうと疑われかねない不適切な言動も含まれていたのだろうという印象を、読む人が持つことは、ある意味、当然であろうと思います。

理事会は、今回のせっかくの謝罪を生かす行動を

 WAN理事会が、代理人の弁護士を通じて上記のようなことを言ってきたことについて、ユニオンWANは「WAN理事会が、今回の謝罪をなかったものにしているかのように見える」と指摘しておられます。私もそう感じました。

 私は、理事会には、そうではなく、今回のせっかくの謝罪を生かす行動をしていただきたいと思います。具体的には、以下の点を要望いたします。

 第一に、上で述べたように、今回の和解で合意した内容について、理事会からも発表すること。

 第二に、これまで理事会が発表した文書のうち、今回の謝罪の内容と相反するものを訂正・撤回すること。

 たとえば、この2月に理事会が出した「この間の事情の説明」という文書は、上で述べたように、今回の謝罪と相反する個所が含まれていますので、少なくともその個所については撤回ないし訂正することが必要だと思います。この点は、たとえ理事会が今回の謝罪を公表しない場合でも、謝罪内容と上記の文書が現実に矛盾している以上、おこなってほしいと思います。

 第三に、今回理事会が謝罪した問題について、それが生じた原因を解明したり、今後の活動に生かしたりなさることです。

 理事会が今回謝罪した行為について、その原因を掘り下げることは、WANや他団体で今後は同様なことが起きないようにするために重要だと思います。使用者側がそうした掘り下げをすることには困難もあるかもしれませんが、もし掘り下げられれば、それは非常に貴重なものになると思います。

 WANは当面は賃労働者を雇用しない方針だとうかがっていますので、ひょっとしたら、理事会は、今回の謝罪は、今後はもう関係のない問題だと考えておられるのかもしれません。たしかに、もし今回の紛争が賃金水準などをめぐって起きたものならば、ある程度はそうかもしれません。

 しかし、今回理事会が謝罪なさった行為の内容は、組織における民主主義や人権と関わる内容であり、たとえ賃労働者に対してでなく、ボランティアや一般会員に対してであっても、おこなってはならないことであると思います。そう考えると、今回の謝罪の内容は、たとえば、以下のような教訓にも読み替えることができるのではないでしょうか?
 ・WANのあり方ついての民主的な「相談・協議」なしに、ボランティアの仕事を奪ったり、押しつけたり、働く条件を変えたりしてはいけない。
 ・理事会に対する批判をするボランティアや会員に対しても、「不適切な言動」はしてはならない。

 私は、べつに今の理事会が、いま上のような行為をおこなっていると言うつもりはありません。しかし、将来こうしたことが起きない保証はありませんから、上のような点は今後の教訓にすることができると思います。

 また、私は、今回のサイトリニューアルなどが、どこまで幅広く会員やユーザーの意見を聞いてすすめられたことなのか疑問に思います。もちろん今度の総会ではそうした点について報告がおこなわれると思いますし、私が入会したのは昨年度末ですから、それ以前の会の中の事情はわかりません。しかし、私としては、理事会が今回の教訓を生かして、こうしたことについても、もっと会員とも相談してものごとをすすめていただきたいと思います。もちろん理事の方々はご多忙だと思いますので、できる範囲で結構なのですが、そうしてこそ、サイトも繁栄すると思いますので。

 なお、私は、理事会の文書で述べられている「WANのウェブ上のポリシー」にも疑問があるのですが、その点については、またの機会に述べたいと思います。

 ※6月6日(日)、東京で「非営利団体や市民運動における雇用や無償・ボランティア労働を考える~ユニオンWANの事例から」という集会が、遠藤さん、カサイさんをお招きして開かれるそうです。

 ※6月20日(日)、大阪で、日本女性学会のワークショップ「フェミニズム運動や研究組織における非正規・無償労働問題を問い直す」があるそうです。上の集会とは性格は異なる集いですが、おそらく、こちらのワークショップも、今回の問題を深めるうえで役に立つものだと思います。

WAN理事会の行為は、労働者との「信頼関係の消失」を理由にすれば、正当化されるのか?

 前回の記事に引き続き、WAN理事会の事情説明文書に対する疑問を述べます。

 ユニオンWANが、事務所の閉鎖について、「そういう考えが浮上した時点で協議や相談を重ねてほしかった」と主張したのに対して、WAN理事会は、3つの理由を挙げて、ユニオンWANとは「信頼関係を維持することができず、[事務所閉鎖のような]重要な事項について相談する機会を持つことができませんでした」と述べて、自己の対応を正当化しています。

 WAN理事会が挙げているのは、以下の(1)~(3)の理由です。それぞれについて、私の考えを述べます(原文では、遠藤さんとカサイさんのお名前は匿名ですが、このブログでは実名にしているので、お名前を出しました)。

(1)「12月末に遠藤さんにかかわる争議が始まって以来、遠藤さんとカサイさんで作られている組合は、協議の最中であるにもかかわらず、協議内容にかかわる情報を一方的にウェブで公開した(通常は、円滑な協議の進行のために、双方が合意した事項以外は、途中で公開するのは避けるのが原則です)」

 ここで注意すべきは、理事会の立場は、「[新しい業者による]サイトリニューアルは理事会で決定した」けれども、「遠藤さんの業務・労働条件については協議を続けている」(1月5日付の理事長のメールより)というものにすぎないことです。しかも、その協議で理事会が出した提案は、遠藤さんの労働時間を半分にしたうえで、時間当たり賃金を下げるというものでした。

 これは、たとえばの話、Aさんという大学教員(専任)が大学の〇〇研究所に勤務していたら、ある日突然、大学の理事会が「〇〇研究所は廃止(再編)することに決定しました。ついては、A先生には、今後は非常勤になっていただき、何コマかご担当をお願いできないでしょうか?」と言って、協議を求めているようなものです。

 こうした場合、Aさんは、上のような事態について大いに学内や世間に訴えるのではないでしょうか? それに対して、もし大学の理事会が「業務・労働条件については協議の最中であるにもかかわず、Aさんたちは情報を一方的にウェブで公開したので、信頼関係を維持できなくなった」と言っても、全然通用しないでしょう。

 もし労働条件の協議についても「双方が合意しなければ、公開しない」のなら、すべてが終わってから(または、裁判にでも突入してから)でなければ、世間に訴えられないことになりますから、組合は完全に孤立した状態で闘わなければなりません。WANには賃労働者は2人しかいないのに、理事は9人もいらっしゃいますし、その意味でも、たたかいは困難です。

 しかも、遠藤さんは、理事会に「新しい業者にサイトリニューアルをしてもらうことに決定した」と言われて、すぐにそれをウェブで公開したのではありません。昨年12月、遠藤さんは理事会と2回協議をおこないましたが、その間は、遠藤さんは協議の内容を公開なさいませんでした。

 ところが、その間、「円滑に協議が進行」するどころか、理事会は、サイトリニューアルを「決定済みの事項」として一方的に説明するだけだったそうです。だからこそ、今年1月4日、遠藤さんは世間に向けて訴えられたのだと思います。

 理事会は、遠藤さんの仕事を取り上げたままの状態で、賃金だけをいつまでも支払い続けるとは考えられませんから、早目に事態を世間に公表して支援を求めなければ、手遅れになってしまうでしょう。組合の行動は当然です。

 なのに、そうした組合の行動を理由にして、理事会が「信頼関係を維持できなくなった」と言って、重要な事項についての相談もしないのは、理不尽だと思います。

(2)「その中でWANの信用を失墜させるような発言を繰り返しておられた」

 まず、ユニオンWANが批判しているのは、「WAN」総体ではなく、「WAN理事会」です。また、理事会がやってきたことすべてを否定しているのでは全くなく、基本的には「今回の行動、雇用に対する姿勢」を批判しているのだと思います。

 理事会側が、労働組合のこうした活動に対して、抽象的に「WANの信用を失墜させた」と言って、労働者に対してやるべきことをしない理由にするのは極めて危険だと私は思います。

 たとえば、ご存じのとおり、男女差別裁判でも、自らの会社を裁判で訴えながら、その会社で働き続けた原告の方々は多数いますが、もしも会社側が、原告に対して「会社の信用を失墜させた」とか言って、何らかの不利益な取り扱いをしたら、大変な問題になるでしょう。

 もちろん、もしもユニオンWANの発言が虚偽であれば、問題です。しかし、逆に、事実と論理に基づくものであれば、むしろWANをより良くして、WANの信用を高めるのに役立ちますから、結局、ユニオンWANの発言が虚偽か否かが問題なわけです。

 しかるに、理事会の事情説明文書は、「WANの信用を失墜させた」と言うだけで、ユニオンWANの発言のどこが事実と異なるのかを指摘しておられません。こうした労働紛争の際に、抽象的に「信用を失墜させた」という言い方をすることは、内部の労働問題を明るみに出すこと自体を否定する不当なものだと見られかねないと思います。

 さすがに1月20日と2月2日の団交では、ユニオンWANが尋ねた結果、理事会も、どの発言が具体的に問題なのかを述べられました。しかし、理事会が指摘した発言は、ユニオンWANが既に自主的に削除していた発言を除けば、事実についての細かな捉え方の違いやフェミニズムのあり方に対する意見の違いといったものにすぎず(*)、かなり細かな箇所であり、それらを理由にして、理事会がするべきことをしないのは、おかしいとしか思えません。

(3)「サイト作業に関して理事会の要請を無視するような行動を取られた」

 この件は、以下の事件を指していると思われます。
 ・1月4日、遠藤さんが、WANの登録団体である「ユニオンWAN」の活動レポートとして、WANサイトに「WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ!」を投稿・掲載した。しかし、理事会は、同記事を削除し、その理由として、「協議中に一方的な内容を発言している」「当事者が承認するのは問題がある」の2点を挙げた。
 ・1月8日、ユニオンWANが、再度、上の記事を投稿したが、理事会はそれを削除したうえで、「あきらかに業務命令違反」と述べた。

 上の点に対して、遠藤さんは次のように反論しておられます。
 (a)外注を強行しておいて、「協議中」と強弁するのはおかしい。
 (b)ユニオンぼちぼちのレポート「団交申し入れ★トランスジェンダーが安心して働ける職場を」も、会社から見れば「協議中かつ内容が一方的」だろうが、WANサイトは掲載した。また、均等待遇アクション21京都の集会案内は、「当事者が承認」したが、何の問題も指摘されなかった。
 (c)今までのルール(「事務所スタッフが判断する。承認に迷う場合は理事に相談する」)を明快な理由もなく一方的に変更して、新しい「俺様ルール」に違反したからという理由で「あきらかに業務命令違反」などと脅すのはおかしい。
 (d)ユニオンWANの記事を一方的に削除することは、不当労働行為であり、表現の自由をも侵害しかねない。

 それに対して、理事会は、「サイトの管理権は理事会にあるから、削除する権利がある」と述べたということです。

 私は、次の理由で、ユニオンWANの人々が活動レポートを投稿・掲載したのは正当だと思います。
 ・「協議中」という理事会の言い分は、(1)で述べたように成り立たない。
 ・WANが登録団体に活動レポートを投稿することを奨励している以上、登録団体であるユニオンWANも、活動レポートをサイトに投稿することは当然である。その意味で、掲載について「承認に迷う」必要もなかった。

 私は、理事会には、「他の登録団体が自らの主張をWANで訴えるのは良いけれども、WAN内部の登録団体は、自らの主張をWANで訴えるのはダメ」というダブルスタンダードがあるように思います。

 たしかに、世間の一般のメディアにも、ダブルスタンダードはよくあります。たとえば、企業の労働問題を追及している新聞でも、その新聞の記者が自社の労働問題を取材した記事は、まず掲載されないでしょう。

 しかし、運動団体のメディアの場合は、執行部に対する批判を掲載しているものもあります。また、上で挙げた新聞社のダブルスタンダードも、べつに正しいわけではなく、むしろ反動側の週刊誌などに「〇〇新聞が書かない××問題」などと騒がれて、攻撃のネタを提供しているだけではないでしょうか?

 ひびのまことさんは、1月4日の件について、「運動内部にも利害の不一致があること。運動内部の問題を公的な論理の中で解決することが必要があるということ。……運動内部の問題を表に出しても構わないということ。こうしたことに気付き……社会運動を『公的な運動』に作り改めていく機会になることを願って、遠藤さんを断固支持! 遠藤さん、えらい!」(「WAN争議」)と述べておられますが、私もほぼ同感です。

 付け加えると、私は、1月4日、遠藤さんのレポートが掲載されているのを見て、「こういうレポートも掲載するとは、WANはえらい!」と思ったのです。

 たしかに理事会には、その時々に、掲載の可否を判断する最終的権限はあると思います(だからこそ、実際、理事会は記事を削除できています)。ただ、こういう運動内部の不一致の問題について、ルールの修正・発展について合意も議論もしていない段階で、「業務命令違反」と言うだけでは、納得がいきません。

 まして、そのことを理由にして、「信頼関係がなくなった」と言って、事務所移転問題という別の問題に関して、労働者に対してやるべきことをしないのは、不当だと思います。

事務職閉鎖は「重要な事項」と認めているのに……

 理事会が、事務所閉鎖についてユニオンWANと相談しなかった理由を、今回わざわざ述べておられるということは、事務所閉鎖というのは、本来ならば相談(協議)すべき事項であったことを示しています。実際、文中でも、事務職閉鎖の相談は、「重要な事項についての相談」として記述されています。

 しかし、実際の事務所閉鎖は、閉鎖の1つの根拠とされるカサイさんの仕事の状態についても本人と話し合われないままに決定されたために、カサイさんが、理事会発表文書のご自分の仕事に対する記述をお読みになって、「大変な衝撃」を受けるという事態も起きています(「カサイの気持ち」)。

 そうした乱暴なやり方をする根拠として、上の(1)~(3)は十分なものだったでしょうか? そうではありませんね。(1)(2)に関しても、むしろ組合活動に対する報復=不当労働行為である疑念を抱かせかねない部分が大きいと思います。

 理事会には、「信頼関係がなくなった」というような理由で、筋の通らない対応をなさらないようにお願いいたします。

理事会は、ユニオンWANへの対応に関しても、反省やお2人へのおわびを

 WAN理事会は、発表された文書を読むかぎり、労働者の賃金水準などについては、配慮しておられたようです。また、今回の問題に関しても、「雇用や経営に対する予測・見通しが甘かった」点に関しては反省されています。

 しかし、私は、それだけでなく、理事会は、遠藤さんやカサイさんへの対応の問題点についても、具体的に反省とおわびを表明すること必要だと思います。それは、今回の争議を解決する非常に大きな一歩になると思います。

(*)まず、1月20日の団交では、ユニオンWANが「WANはウェブマスター業務の外注化を撤回せよ」と主張したことについて、理事会は「ウェブマスター業務外注化というのは、事実と異なる」と主張したとのことです。
 しかし、遠藤さんによると、かりに理事会の主張に合わせても、ユニオンWANの主張は、「WANにウェブマスターとして雇われていた遠藤礼子が今まで担当していた業務全てを、業者および理事に担当させることに決め、実行したことをWANは撤回せよ」と変わるだけだいうことです(「1・20団交の報告」より)。
 また、2月2日の団交では、理事会は、「理事会を誹謗中傷している」事項として3点を指摘したそうです(「今日の団交」より)。
 1点目については、理事会から言われる前に遠藤さんは自主的に削除していますから、それほど問題にするべきではないでしょう。
 2点目は、tummygirlさんが、ブログ「FemTumYum」でWANの「新春爆笑トーク」を批判なさったのを受けて、遠藤さんが、「主流フェミニズム界」の実態を嘆いて、「私ってこんなノリの業界のNPOに雇われているだなあ」と書いたことについて、理事会が、「フェミニズムの思想や運動を誹謗中傷するものだ」と批判したということです。
 しかし、遠藤さんは、「主流フェミニズム界」を批判しているのですから、いわば「反主流」だというだけの話です。また、「業界」というのは、「同じ産業にたずさわる人々の社会」(広辞苑)という意味であり、たとえば「音楽業界」に対して否定的評価をしてる人が、「音楽」そのものが嫌いかといえば、別にそうではありません。要するに、これも、せいぜい現在のフェミニズムの状況に対する批判的見地の表明以上のものではなく、「フェミニズムの思想や運動を誹謗中傷するもの」とは言えません。
 tummygirlさんも、遠藤さんが共感を示されたエントリについて、「きちんと読んでいただければ、少なくともあのエントリが『フェミニストとしての批判』だったという事はわかっていただけるのではないか、と思う」と述べておられます(「WAN争議アップデート、あるいは、わたくしフェミニスト(自称主流)ですけれども?」)。
 tummygirlさんは、遠藤さんの発言に対する理事会の批判について、「揚げ足とりか、ためにする批判か、それこそ『中傷』のように思われる」(同上エントリ)と述べていますが、私もそう感じました。
 3点目は、ミヤマアキラさんがブログ「デルタG」で「そもそもなぜWANの理事たちは遠藤さんをウェブマスターとして採用したのかいささか謎である」と述べたのに対し、遠藤さんが「そうですよね! というか、いささか、というより、むっちゃ謎!」と述べた(「そんならわたしは『平成オマンコ塾』で」)という点だそうです。
 私は、この箇所については、遠藤さんもおっしゃっているとおり、「今回の労働争議を引き起こしているようなWANの状況から見て、なぜWANが労組の活動家である遠藤さんを雇ったのか謎である」という意味にしか読めません。

WAN理事会の文書は、サイトリニューアルについて事前に遠藤さんと相談しなかったことを正当化しうるか?

 ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)で起きたWAN理事会とユニオンWANとの労働争議に関して、今年2月、WAN理事会は、「この間の事情の説明」と題するWANの法人会員向けの文書(以下、「事情説明文書」と略す)を出して、理事会の行動の正当性を主張しました。

 この文書は、遠藤礼子さんに対する個人攻撃的な色彩もあり、書かれている内容には、客観的事実と相違する箇所も多いようです。

 それに加えて、私は、「かりに事情説明文書に書いてある事実関係がすべて正しいと仮定しても、遠藤さんと事前に相談することなく、遠藤さんのウェブマスター解任と直結するサイトリニューアルを決定したことは、正当化できないのではないか?」と思いました。

 以下に述べるのは、あくまで私の個人的な考えですが、よろしければお読みください。

理事会は、新業者によるサイトリニューアルについて遠藤さんと事前に相談すべきであった

 理事会の事情説明文書は、新業者によるサイトリニューアルおよび遠藤さんのウェブマスター解任をおこなった理由として、おおよそ以下の2点を挙げています。

 (1)WANサイトを改善する必要があるが、業者や専門家に話を聞いたところ、サイト改善のためには、システム自体の変更とそれによる大規模なサイトリニューアルが必要であることがわかった。また、リニューアルに伴い、それまで遠藤さんの仕事のうちの大きな部分が不要になることも判明した。
 (2)サイトリニューアルを遠藤さん自身のイニシアティブで進めることは、遠藤さんの労働時間の制限からも、スキルの点からも、不可能とだと判断せざるをえなかった。

 私が上の箇所を読んで、真っ先に思ったのは、「もしこれが本当なら、今ごろになって全会員に事情説明文書を送るのではなく、サイトリニューアル決定前に、遠藤さん自身に(1)や(2)のようなことを説明していれば良かったじゃないか!?」ということです。同じ手間をかけるのなら、トラブルになる前にやっておいたほうが良かったことは、今やきわめて明らかでしょう。

 これは、けっして単なる結果論ではありません。サイトリニューアルについて遠藤さんと事前に相談すべきだったということは、当時でも十分判断できたと思います。

 なぜなら、なにより第一に、新業者によるサイトリニューアルは、遠藤さんの労働条件の不利益変更と直結する問題だったからです。

 理事会は「サイトリニューアルは、組合との協議事項ではありませんので、理事会にて決定しましたが、遠藤さんの業務・労働条件については協議を続けている」と述べています。私も、理事会がまだ遠藤さんの労働条件の不利益変更をおこなっていない点自体は、良いことだと思います。

 しかし、理事会は、サイトリニューアルを決定した時から、遠藤さんの労働条件の不利益変更を提案(のち退職勧奨)し続けています。はじめから理事会は、サイトリニューアルをしたら「遠藤さんの労働条件に影響を与えざるを得ない」(事情説明文書より)と考えていたのですから、サイトリニューアル自体について遠藤さんと相談しないことには、真の意味で「労働条件について協議をした」ことにはならないと思います。

 WAN理事会のやり方は、言ってみれば、遠藤さんを行き場のない袋小路に追い詰めたうえで、細部についてだけ「協議」をするというものです。すなわち、大まかに言えば、第一段階として「まず仕事を干し」、第二段階として「『あなたのやる仕事はないから』という理由で労働条件を引き下げたり、退職に追い込む」という世間一般に「よくある手法」(遠藤さん)でしかないと思います。

 仕事がないのに給料だけ貰うというのは、一見良いようですが、そのこと自体が本人には心理的圧力になります。ましてWAN理事会は、全会員に向けたこの文書の中で「[遠藤さんには]していただく仕事が無いまま、元の賃金(時給××××円[遠山注:原文には、比較的高い時給の金額が具体的に書かれています])を支払い続けています」と宣伝しています。これは、遠藤さんをさらしものにすることによって、退職するよう圧力をかける行為だと思います。

 第二に、遠藤さんはサイトを統括するウェブマスターであったにもかかわらず、理事会が、サイトの根本的リニューアルについて遠藤さんに一言も相談せずに決定をしたこと自体、遠藤さんを人間として尊重していない行為だと私は思います。

 たとえば、先日の三井マリ子さんの館長雇止め事件の大阪高裁判決を見てみましょう。この事件は、豊中市らが、当時、女性センターの館長だった三井さんを、センターの組織変更を三井さんに知らせずに決定して、排除した事件ですが、高裁判決は次のように言っています。三井さんは「専門的知見や経験……を生かして館長職をこなしてきた者として……組織のあり方、次期館長候補者(自己を含む)について情報を得て、協議に積極的に加わり自らの意見を伝えることは、現館長職にある立場にあってみれば当然」なのに、「説明、相談を受けなかったことは、現館長の職にある者としての人格権を侵害するものであった」(*)

 遠藤さんも、ウェブマスターとして専門的知見や経験を生かして働いてきました。サイト立ち上げの際には、相当な無理をされ、その後も必死に修正作業をしてこられました(昨年12月にも、理事から「それはもう、ここまでやってこれたのは遠藤さんのおかげだ」と言われたそうです)。その矢先のウェブマスター解任でした。私は、法律には詳しくありませんが、遠藤さんが、サイトのシステム変更について、何の相談もされずに、仕事を奪われたこと自体、人間として尊重されていないことだと思います。

 第三に、サイトリニューアルについて、より良い判断するためにも、遠藤さんに相談することが必要だったと思うからです。

 遠藤さんはウェブマスターだったのですから、少なくともその面に関しては、理事よりは、業者や専門家の説明について的確に判断できる力を持っていたと考えられます。業者は根本的には自己の利益を追求する団体ですし、外部の専門家も当事者ではない以上、限界は免れませんから、WANとしてより正確な判断をするためには、理事会だけで判断するのではなく、遠藤さんにも相談するべきだったろうと思います(**)

 第四に、理事会は、それまでの経過を根拠にして、「リニューアルを遠藤さん自身のイニシアで進めることは、労働時間の制限からも、スキルの点からも、不可能と判断せざるをえなかった」と述べています。しかし、人間の生活状況やスキルは常に変動するものですから、他人が勝手に判断すべきことではなく、本人に確認するのが当然だと思います。特に本人の雇用とサイトの根本に関わる、こうした問題に関しては、絶対に本人への確認が必要でしょう。

 もし本人に確認してみたら、「しばらくしたら他の仕事が減るから、大丈夫ですよ」などという答えが返ってこない保証はありません(また、プチ・リニューアルの仕事なら、より短時間でできたと思います)。

 もし理事会の見込みどおり、遠藤さんにはご無理だったとしても、「ご無理ですよね?」と予め確認しておけば、遠藤さんは「はい。私には時間的に(orスキルの面で)できません」とおっしゃるでしょうから、その後の話がよりスムーズに進んだと考えられます。

理事会が挙げている「事前に相談しなかった理由」は、正当な理由たりうるか?

 理事会は、業者によるサイトリニューアルについて事前に遠藤さんに相談しなかった理由として、「[遠藤さんの]勤務時間の制限から遠藤さんと相談する時間が取れなかったこと」と「遠藤さんと理事たちのコミュニケーションに問題があったこと」を挙げています。

 こんなことが理由になるのでしょうか? 当時のコミュニケーションに問題があろうがなかろうが、理事の方々は、最初に挙げた(1)や(2)の点を説明したメールを遠藤さんに送りつけて、相談に応じるよう求めればよかったのではないでしょうか??

 サイトリニューアルは、遠藤さん自身の雇用にとっても、WANサイトにとっても一大事である以上、常識的に考えれば、遠藤さんは時間を作って相談に応じただろうと思われます(事情説明文書にも、遠藤さんは、それまでにも「一部の仕事を自発的に自宅でしてくださったこともあった」と書かれています)。私は、むしろ理事会は、遠藤さんに対して、普段やってもらっているシステムの細かな調整の仕事などより優先して、サイトリニューアルの相談に応じるように命じるべきだったのではないか、とさえ思います。

 もし万一遠藤さんが相談に応じることを断るようでしたら、理事会だけの判断でサイトリニューアルを進行させるものやむをえないでしょうし、遠藤さんの側も、あとで問題にはしづらかったであろうと思われます。

理事会は、「使用者としての自覚」が不十分だったのでは?

 2月の事情説明文書の内容の大部分は、理事会の行動を正当化するためのものですが、最後に反省点もいくつか書かれています。その中に、「使用者としての自覚が当初十分ではな(かった)」とあります。私は、遠藤さんやカサイさんへの具体的対応に関しても、「使用者としての自覚」が不十分な点があったように思うのです。理事会の皆様には、この点について、ぜひご検討をお願いします。

 事情説明文書は、他にもいくつかの論点があり、それらについても疑問が多いのですが、それらについても、またの機会に取り上げたいと思います。

(*)もちろん三井さんの事件に関しては、豊中市が「一部勢力[=バックラッシュ勢力]の動きに屈した」と判断されたことなど、今回の問題とは多くの相違点がありますが、「人格権の侵害」(人間として尊重していない)という要素において、共通点があると思いましたので、引用いたしました。なお、判決の原文には「館長職をこなしてきた控訴人」と書かれていますが、読みやすくするために、「館長職をこなしてきた者」と書き変えました。
(**)事情説明文書は、遠藤さんには比較的高い時給を払っていることを、理事会の誠実さを示す事実として強調しているようですが(時給の高さ自体について言えば、私もそう思いますが)、その時給は、サイトを統括するウェブマスターとしての専門性や責任(ストレスもですが)の大きさを反映したものであったのですから、サイトリニューアルに際しても、それにふさわしい扱いが必要だったと思います。

林さんへのお応え(2)──WANの資金不足の解決策について

林葉子さんが、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)その労使紛争をめぐって、ご自分のブログにお書きになった「WANのこと(2) 遠山さんのコメントにお応えして」というエントリーに対する、私のご返事「林さんへのお応え――『自分はWANのために何ができるか』という問いをめぐって――」に対して、林さんから上記のエントリーのコメント欄でご返事をいただきました。

その中で、林さんは「おそらく最も深刻な問題だと思われる資金不足の問題の解決のために、遠山さんがどのような解決策をお持ちなのか(……)よくわかりませんでした」とおっしゃっています。

私としては、その点についても、ある程度は前回のお応えで触れたつもりですし、ボランティアの賃労働者化を目ざすか否かによって若干解決策は異なってくると思いますが、今回、もう少し詳しく考えてみました。ありきたりな考えのような気もしますが、よろしければお読みください。

1.私自身の寄付・入会およびその動機

今回の林さんの問いかけは、「自分はWANのために何ができるのか?」という私が先日お答えした問いと違って、第一義的には「WANという団体としてどうするのか?」という問いだと思います。

ただ、林さんと私の議論は、林さんが提出された「『自分は、WANのために何ができるのか』を答えてほしい」という問いかけから始まりましたので、今回の問題に関しても、私自身の行動を示しつつ、その行動の動機を出発点にして考えてみたいと思います。

私は、先週末、WANに、先々月の2000円に追加して、5500円、合計して7500円をお送りしました。WAN設立1周年が近づいてきましたので、最初の1年分のつもりでお送りしたのですが、その内訳というか、理由は以下の3点です。

(1)「もしWANが有料だったら、どの程度の価格で購読するか?」→年間3000円。
(2)実際にはWANは無料で広く情報を提供していらっしゃるので、その社会的役割(広い意味で性差別解消に寄与するなど)を応援するためのカンパ→年間2500円。私は、WANは、総合サイトとして、個人サイトでは果たせない役割(個人サイトを持っていない人や幅広い人々に訴えをしたい人に場を提供する)をなしうるということが重要だと思います。
(3)林さんの文からは、ボランティアスタッフの労働の無償性に疑問をお持ちの一面も感じられるので→この問題解決のために、とりあえず2000円。

前回述べたように、もしボランティアスタッフの方々が(たとえ林さんお1人でも)有償労働化を要求する活動を始められたら、私もWANの財政力を強化するためにもう少し頑張ろうと思いますが、今のところ、私にはこれでギリギリです。

今回の送金は、非正規の場合の会費の5000円を上回りましたので、WANへの入会も申し込みました。入会すれば、発言権も得られますので、極めて微力ですが、有償・無償を問わずスタッフの方の応援もさせていただけるという意味でも良いと思います。

以上が私の送金の動機ですが、他の人にお金を出してもらうとしても、(1)~(3)のことが訴える材料になるだろうと思います。

お金を出してもらうには、まず、とにかく(1)や(2)のようなWANの価値を高めることが必要だと思います。(3)のように、WANのボランティアスタッフの労働の有償化のためのお金を集める場合も、もし(1)や(2)の評価が低ければ、難しいでしょう。先日の林さんのご論について、Twitterで言及している方がいらっしゃて、その方は、「月々数万円WANに支払えと言われたら普通に無理。月2万としても年額24万。それで爆笑トークとか専門家の個人ブログの足下にもおよばない映画評とか載せるサイトを運営し続ける? 本気でわけがわからない」とつぶやいておられました。こうした発言からわかるように、林さんのようにおっしゃられても、支払いを求められた側がWANの活動自体を高く評価していなければ、現実的には、お金はあまり集まらないという面も見ておかなければならないと思います。もちろん、ボランティアの無償労働について考えたり訴えたりすることは、それ自体として重要だと思いますし、だからこそ、私もほんの少しですが、送金させていただいたのですけれども……。

さて、かりにWANを有料化したら、皆さんいくらお払いになるのでしょうか? また、WANが性差別解消に向けて果たしておられる役割(もちろん間接的な寄与を含めた広い意味です)を、どの程度のカンパに値するものと見なすでしょうか?

もちろん人によるでしょうが、今のサイトの内容から考えて、私は、正直申し上げて、皆さんからは、それほど高い金額は出てこないと思います。現在の会費や寄付金を払っていらっしゃる方々は、将来に期待して払っていらっしゃる部分が大きいのではないでしょうか? 私の1年目の会費と寄付についても、来月、林さんが力をお入れになった企画が掲載されるとのことですので、そうしたものに対する期待を含めての金額です。

2.資金不足の解決の方向性

私自身の場合をもとにして考えると、資金不足の解決の方向性は、次の2つになると思います。

A.WANのサイトやweb会員へのメールで、上の(1)や(2)のようなWANの役割をもっと具体的に訴えて入会や寄付を呼びかける。
 →入会や寄付の呼びかけ自体は現在でもなされていますが、もっと具体的な声(WANが自分が生きる力や考えを深める力になったり、運動の発展のうえで役に立ったりした経験など)を集めて訴えたり、無料で情報提供していることの社会的意義を訴えたりした方がいいのではないでしょうか?

B.サイトやweb会員へのメールで、WANの魅力、不満、要望、増収策などについてのアンケートをして(できれば、それらの内容を書ける掲示板も設けて)、そうした声をもとにしてサイトの改善策を練る。
 →好評な内容を拡大したり、取り入れるべき要望やアイデアを取り入れば、WANの価値は高まるでしょうし、逆に、不評の内容をやめれば、ボランティアの方々の負担が減ります(有償化の際の金銭的負担も減る)。林さんは一案として「サイトの規模を調整する」というお考えを示されましたが、その場合、どの部分を削るかが問題ですから、そのためにも必要なことだと思います。また、もし「WANは、こんなふうに私の力になっている!」という具体的な意見が出てきたら、それらを広く宣伝すれば、資金集めの助けにもなりますね。

私は、前回は、意見の一つの例として、macskaさんのご意見をご紹介しましたが、より多くの方に意見や感想を出してもらえれば、必ず増収策やコストカット策は見つかると思います。

出てきた意見は、みんなの参考になりますから、集まった意見は公表するか、初めから公開の掲示板に書き込んでいただくようにすればいいと思います。現在でも、「WAN裏方日記」のコメント欄に感想を書き込むことはできますが、この日記のコメント欄は、字数制限が非常にきつく、断片的な内容しか書き込めませんので、専用の掲示板などを設けてもいいのではないでしょうか?

3.私自身の意見・感想

私自身の意見・感想については、すでに「WAN裏方日記」に何度か書き込んでいますし、このブログでも、いくらか述べましたが、以下、何点かを付け加させていただきます。

・他の何人かの方から「学者のエッセイがつまらない」という感想が出ていますが、実は、私もそう思います。研究者の文の場合、ご自分の研究やご自分の研究と関係がある時事問題、ご自分の職場(大学など)の問題について論じていらっしゃる文は興味深いのですが、それ以外の「随筆」的な文は、私個人としては、面白いものは少なかったです。

・いまWANに掲載されている研究関係の記事は、すでに単著を出版なさったような方々が、その本について書くのがメインだと思うのですが、私は、もっと若手の研究者の方も、ご自分の研究や時事問題について大いに論じていただきたいと思います。その意味で、林さんが「新春爆笑トーク」をめぐってお書きなった文はよかったと思いますし、今度なさる企画もとても楽しみです。林さんは「WANのボランティア・スタッフは高い専門性を有する優秀なスタッフなのに、その力がサイトの中で生かされていない」という趣旨のことを指摘なさいましたが、私も、ボランティア・スタッフの方々の専門性を生かしていただけば、興味深いサイトになると思います。

・運動についての文は、現在のところ、団体としての投稿(またはそれに近いもの)にかなり限定されているのがネックだと思います。多くの方々が集会やデモに行ったり、日常的な活動をしておられるのですから、個々人が、自分の経験やルポ、感じたことを自由に書けるようにした方がいいと思います。裁判にしても、支援団体があるような裁判ばかりではなく、伊藤真理子さんの京都市女性協会裁判のように、原告お1人でやっていらっしゃって、支援者はいても、支援団体まではない裁判もありますから……(伊藤さんの文は、幸い、きちんとWANに掲載されていますが)。また、林さんのブログのコメント欄で「こちゅかる子」さんが書かれた市民団体でのご経験など、すごく貴重な経験ではないかと思うのでして、まさにこうした経験を出し合うことが、重要ではないかと思うのです。この点は、個人投稿の問題になりますが、先日、「WAN裏方日記」のコメント欄でお尋ねしたところ、投稿規程を現在作成中でいらっしゃるそうですので、うれしく思います。

・私は、WANに期待が寄せられた背景の一つは、インターネット上ではフェミニズムが弱く、むしろ右派が優勢だという現実だと思います。ですから、WANは、アンチフェミニズムやナショナリズムに対抗し、それを乗り越えていくような文をもっと掲載した方がいいのではないかと思います。最近は朝鮮学校の問題にみられるように、民族問題が激しい争点になっていますので、そうした動きに対して、ジェンダーを絡めた視点から意見を述べるような文が待望されていると思います。もっとも、恥ずかしながら、私自身のこのブログも、いま粗雑な「反中」イデオロギーが強い中で、それに対抗するような文をあまり書けていませんので、この点は自分の反省点でもあるのですけれど、他の個人サイトでは、少なくない方が反歴史修正主義や反バックラッシュのために奮闘しておられますので、WANも、この点にもう少し力を入れてはいかがでしょうか?

もちろん、以上の意見は大した意見ではありません。けれど、こんなふうにして、多くの方々が意見を出し合えば、必ず実りあるものになると思います。

追伸:
林さんにご紹介いただいた、岡本仁宏「市民社会、ボランティア、政府」をコピーしてきました。大きな問題意識で書かれた論文ですね。私は、いま、ボランティアと搾取に関する論文も取り寄せているところですし、カサイさんご推薦の『図解 ゼロからわかる労働基準法』(ナツメ社)も注文しました。もちろん文献だけでなく、林さんやこちゅかる子さんがお書きになっているを読ませていただくこと自体が勉強です。私はまだまだ何も知らない人間ですので、今回の議論からいろいろ学んでいこうと思います。

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遠山日出也

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 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
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 私への連絡はtooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpまで。

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