2017-03

中国の女性障害者の状況と組織

 先日、「中国女性障害者データベース研究開発および女性障害者の現状研究」プロジェクトの調査結果が発表されました。このプロジェクトは、国連ジェンダーテーマワーキンググループ(聯合国社会性別主題工作組)の資金援助を得て、中国障害者連合会(中国残疾人聯合会)と中国リハビリ研究センター(中国康復研究中心)がおこなったものです。

 上の調査によると、就職している障害者のうち、女性は35.8%だけでした(男性が64.2%だった)。大多数の障害者の生活費は、家族の他のメンバーが供給しているそうで、女性障害者の場合は、その点が特に著しいとのことです(1)(男性の場合でも、家族しか支える者がいないからか、筑波大の徳田克己氏によると、とくに地方都市などでは、物乞いをしている障害者の姿も見かけるそうです)。

 また、広州市での別の調査によると、「大部分の女性障害者の健康状況は良くなく、婦人病にかかっている人だけで42.53%に達する。学歴も低く、教育を受けた平均年数は僅か5.57年であった。就職も困難で、労働能力があって就労を求めている女性の65%が、レイオフの状態にある。生活は貧困で、単親者率が高く、戸籍(戸口)は独立しておらず、最低所得保障制度などの保障を受けるも難しい。彼女たちは、女性と障害者という二重の偏見と差別に直面しており、弱者層の中の弱者である」(2)とのことです。

 中国では、2006年9月、初の女性障害者団体として「広州市女性障害者協会」が設立されましたが(3)(ただし活動自体は2003年12月から始めていました(4)。民政局が登記を承認したのが2006年9月ということ)、この協会は、最近サイトを設立しました(「広州市残疾婦女協会」)。

 規約によると、広州市女性障害者協会は「障害者女性の仕事や生活、家庭に関心を寄せることを主旨とし、障害者女性が各面で自立・自強(自ら努力して向上すること)し、自らの社会的責任感を発揮して広範な障害者女性と団結・連携するのを励ますとともに、社会の各界が共同して広州市の障害者女性の事業の発展を促進して、障害者女性のために広々とした発展の空間を切り開くことを促進する」(「広州市残疾婦女協会章程」第2条)という団体です。広州市障害者女性協会は、広州市婦連の団体会員でもあります。

 実際の活動としては、女性障害者に保健講座(5)や性知識の講座(6)をしたり、社会保障の網から漏れた彼女たちに無料で健康診断(7)をしたりしているようです。

 講座などの詳しい内容がわかりませんので、はっきりしたことは言えませんが、以上を見ると、女性障害者自身が主体になって権利を主張するような団体とは少しおもむきが違うようです。

 しかし、上のようなアンケート調査もしていますし(8)、最近では、香港の女障協進会と交流をして、その中から刺激を受けたりしているようです(9)。2008年1月には、女障協進会が主催した「女性障害者シンポジウム2008(東アジアおよび東南アジア(残疾婦女研討会2008[東亜及東南亜])」に代表が参加して、報告をおこないました(10)

 「女性障害者シンポジウム2008」は、香港都市大学でおこなわれたシンポジウムで、「女性障害者運動」「ジェンダー視点」「サービスの利用者の権益と参与」という3つのテーマと、「貧困」「健康」「暴力」「婚姻と家族」「芸術」「メディアとジェンダー」という6つのサブテーマを掲げておこなわれ(「主題範疇」)、18の国家と地区から200名余りが参加しました。

 私は、このブログを単なる「中国女性(男性)一般」「中国のジェンダー一般」を書いたブログではなく、その中での多様性やマイノリティの人々に注意しつつ書いているつもりですが、たとえば今回のような女性障害者に関しては、私は、日本の障害者の状況を含めて、まだまだ状況を「知る」ということすら不十分であることを感じます。今後少しずつでも勉強していきたいと思います。

(1)「一項関于残疾婦女現状的調査顕示 残疾人就業,女性占35.8%」『中国婦女報』2008年4月18日
(2)「広州市残疾婦女協会成立」。なお、趙没名「現代中国都市部における障害者問題――上海市Wコミュニティの障害者統計調査から――」『立命館産業社会論集』39巻2号(2003年9月)(PDFファイル)には、「近年当地域で深刻になってきた障害者の失業・介護問題は、主に1980年代から始まった市場経済の中国都市部での浸透、また人口・住宅政策等の社会変動に起因するのではないか」ということが提起されています。女性障害者のレイオフについても、こうした問題が関係していると思います。
(3)上記の記事「広州市残疾婦女協会成立」より。
(4)「国内首個残疾婦女団体――広州市残疾婦女協会成立」(広州市残疾婦女協会のサイトより)
(5)「残疾婦女協会挙辨保健講座 関愛残疾婦女身心健康」(〃)
(6)「広州市残疾婦女協会挙辨女性性知識講座」(〃)
(7)「市婦嬰医院・市残聯“関愛残疾婦女健康活動”新進展――婦嬰医院上門送医贈薬」(〃)
(8)「広州市残疾婦女協会進行残疾婦女専項問巻調査」(〃)
(9)「穂港残疾婦女三八節挙行交流活動」(〃)。この記事には、香港女障協進会との交流は、障害者活動に「多くの新しい理念・新しい方法をもたらした」と書かれています。
(10)「“国際残疾婦女研討会 2008”在香港挙行」(広州市残疾人聯合会HP。広州市残疾婦女協会のサイトには、このシンポの記事はまだ掲載されていません)

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