「ジェンダーとスポーツ」シンポジウム
さる3月12日、北京で、国連ジェンダー主題活動グループ[聯合国社会性別主題工作組]と全国婦連との共催による「ジェンダーとスポーツ[社会性別与体育]」討論会がおこなわれました。
この席で、全国婦連国際部長の鄒曉巧さんは「スポーツの領域においては、依然としてジェンダー不平等の問題が存在しています。男女の選手に対する資源の分配は不公平であり、女性コーチと女性は、指導と管理のポストで比率が低く、社会には女性のスポーツに対する各種の偏見があります」と指摘しました。
2003年の時点で、中国の国家体育総局と直属単位において、局クラスの女性幹部は20人で、全体の人数の12%にすぎません。北京オリンピックの組織委員会で仕事をしている人のうち、女性は30%以上を占めていますが、執行委員会の19名の委員の中には、女性は3名しかいません。
また、このシンポジウムでは、中国社会科学院の卜衛教授が、中国のメディアのスポーツ報道にも次のような問題があると指摘しました。
1.スポーツのジェンダー化。スポーツは男性のものだとされる。国内のあるスポーツ新聞が2000年に創刊されたときに出した広告は、「男の新聞」というものだった。女性の参加は、しばしば「差異性」の記号を付される。
2.スポーツ選手の報道のジェンダー化。女性選手に対する報道は、「性感化」「家庭化」される傾向がある。このような報道は、女性選手の社会的領域における成就をおとしめ、生物学的特徴や私的領域における役割を強調している。
3.女性のスポーツ参加のジェンダー化。多くのメディアは、女性のフィットネスを、健康のためではなく、ダイエットによって、自分の身体を美女の基準に当てはまるようにするためのものであることを強調している。これは、ジェンダー文化による女性の身体への暴力である。こうした暴力は、女性がスポーツの中から楽しみや自信、自由を得させずに、基準に当てはまる体になれないことによって気力を喪失させる(以上、(1))。
また、他の人からは、女児がスポーツを選択する際、ジェンダーの影響を受けて、競争性が強くない運動を選択する傾向があるなどの話が出ました(2)。
このシンポジウムでは、女性選手の具体的な状況などに関しては、どのような議論が交わされたかよくわかりません。しかし、北京オリンピックを迎えて、スポーツとジェンダーに関する議論が中国でもなされつつあることがうかがえます。
もっとも、それは今に始まったことではなく、すでに2002年11月には、北京大学女性体育研究センター[婦女体育研究中心]というものが設立されています(3)。また、同センターが設立された際には、「北京オリンピック──女性の機会と挑戦」シンポジウムも開催されました。また、その後すぐに、スポーツ報道における女性の扱い方を問い直す記事も『中国婦女報』に掲載されたりしています(4)。
2005年11月には、北京大学女性体育研究センターは、第1回中国女性とスポーツ文化国際フォーラムも開催し、2006年10月には第2回目のフォーラムも開催しました。この2回のフォーラムをもとにして、董進霞・張鋭・王東敏主編『女性・文化・体育研究動態』(北京体育大学出版社 2007年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)も出版しました。董進霞さんには、『她們撑起来大半辺天――当代中国女子競技体育透視』(九州出版社 2007年)(同上データベースの中のこの本のデータ)という著書もあります。
北京大学女性体育研究センターが運営している「博雅女性体育」サイトは、それほど内容的に充実したサイトではありませんが、以上で述べたほかにもいくつか情報が掲載されていますので、よろしければご覧ください。
また、日本の女性史総合研究会の会誌『女性史学』16号(2006年)には、張軼欧さんが「中国の女性とオリンピックの現況から」と題して、とくに選手の引退後の状況に焦点を当てた議論をしておられます。張さんは、中国の(とくに女子)オリンピック選手が置かれている問題点として、以下を指摘しています。
1.素質のある選手が7、8歳ごろから入る体育学校では、教養教育が軽視されている(最近は、その点に中国でも批判が高まって、体育学校は減少しつつあるそうです)。
2.金メダリスト以外の選手については、国は引退後の面倒をみず、自力で就職活動を余儀なくされる場合が多い
3.1や2のために、引退後の選手は就職難であり(また、女性は中国でも男性より就職難)、医療費の負担もかかってくる
4.ドーピングは、とくに女子選手にとって重大な問題である(ひげが生える、生理不順、子どもが産めないなど)
張さんは、以上の問題点の根本原因として、中国の選手強化策である「挙国体制」があることを指摘し、その改善策などについてもいくつか提起しておられます。
(1)「聯合国社会性別主題工作組和全国婦聯聯合挙行“社会性別和体育”討論会 以社会性別視角審視体育発展」『中国婦女報』2008年3月25日。
(2)「国際婦女説慶祝活動“社会性別和体育”」社会性別与中国HP2008年03月14日
(3)「首家婦女体育研究中心落戸北大」『中国婦女報』2002年10月31日。
(4)「体育報道中的女性」『中国婦女報』2002年11月26日。
この席で、全国婦連国際部長の鄒曉巧さんは「スポーツの領域においては、依然としてジェンダー不平等の問題が存在しています。男女の選手に対する資源の分配は不公平であり、女性コーチと女性は、指導と管理のポストで比率が低く、社会には女性のスポーツに対する各種の偏見があります」と指摘しました。
2003年の時点で、中国の国家体育総局と直属単位において、局クラスの女性幹部は20人で、全体の人数の12%にすぎません。北京オリンピックの組織委員会で仕事をしている人のうち、女性は30%以上を占めていますが、執行委員会の19名の委員の中には、女性は3名しかいません。
また、このシンポジウムでは、中国社会科学院の卜衛教授が、中国のメディアのスポーツ報道にも次のような問題があると指摘しました。
1.スポーツのジェンダー化。スポーツは男性のものだとされる。国内のあるスポーツ新聞が2000年に創刊されたときに出した広告は、「男の新聞」というものだった。女性の参加は、しばしば「差異性」の記号を付される。
2.スポーツ選手の報道のジェンダー化。女性選手に対する報道は、「性感化」「家庭化」される傾向がある。このような報道は、女性選手の社会的領域における成就をおとしめ、生物学的特徴や私的領域における役割を強調している。
3.女性のスポーツ参加のジェンダー化。多くのメディアは、女性のフィットネスを、健康のためではなく、ダイエットによって、自分の身体を美女の基準に当てはまるようにするためのものであることを強調している。これは、ジェンダー文化による女性の身体への暴力である。こうした暴力は、女性がスポーツの中から楽しみや自信、自由を得させずに、基準に当てはまる体になれないことによって気力を喪失させる(以上、(1))。
また、他の人からは、女児がスポーツを選択する際、ジェンダーの影響を受けて、競争性が強くない運動を選択する傾向があるなどの話が出ました(2)。
このシンポジウムでは、女性選手の具体的な状況などに関しては、どのような議論が交わされたかよくわかりません。しかし、北京オリンピックを迎えて、スポーツとジェンダーに関する議論が中国でもなされつつあることがうかがえます。
もっとも、それは今に始まったことではなく、すでに2002年11月には、北京大学女性体育研究センター[婦女体育研究中心]というものが設立されています(3)。また、同センターが設立された際には、「北京オリンピック──女性の機会と挑戦」シンポジウムも開催されました。また、その後すぐに、スポーツ報道における女性の扱い方を問い直す記事も『中国婦女報』に掲載されたりしています(4)。
2005年11月には、北京大学女性体育研究センターは、第1回中国女性とスポーツ文化国際フォーラムも開催し、2006年10月には第2回目のフォーラムも開催しました。この2回のフォーラムをもとにして、董進霞・張鋭・王東敏主編『女性・文化・体育研究動態』(北京体育大学出版社 2007年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)も出版しました。董進霞さんには、『她們撑起来大半辺天――当代中国女子競技体育透視』(九州出版社 2007年)(同上データベースの中のこの本のデータ)という著書もあります。
北京大学女性体育研究センターが運営している「博雅女性体育」サイトは、それほど内容的に充実したサイトではありませんが、以上で述べたほかにもいくつか情報が掲載されていますので、よろしければご覧ください。
また、日本の女性史総合研究会の会誌『女性史学』16号(2006年)には、張軼欧さんが「中国の女性とオリンピックの現況から」と題して、とくに選手の引退後の状況に焦点を当てた議論をしておられます。張さんは、中国の(とくに女子)オリンピック選手が置かれている問題点として、以下を指摘しています。
1.素質のある選手が7、8歳ごろから入る体育学校では、教養教育が軽視されている(最近は、その点に中国でも批判が高まって、体育学校は減少しつつあるそうです)。
2.金メダリスト以外の選手については、国は引退後の面倒をみず、自力で就職活動を余儀なくされる場合が多い
3.1や2のために、引退後の選手は就職難であり(また、女性は中国でも男性より就職難)、医療費の負担もかかってくる
4.ドーピングは、とくに女子選手にとって重大な問題である(ひげが生える、生理不順、子どもが産めないなど)
張さんは、以上の問題点の根本原因として、中国の選手強化策である「挙国体制」があることを指摘し、その改善策などについてもいくつか提起しておられます。
(1)「聯合国社会性別主題工作組和全国婦聯聯合挙行“社会性別和体育”討論会 以社会性別視角審視体育発展」『中国婦女報』2008年3月25日。
(2)「国際婦女説慶祝活動“社会性別和体育”」社会性別与中国HP2008年03月14日
(3)「首家婦女体育研究中心落戸北大」『中国婦女報』2002年10月31日。
(4)「体育報道中的女性」『中国婦女報』2002年11月26日。
