2017-05

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国連女性差別撤廃委員会の中国政府第7次、第8次合併レポート審議・総括所見とNGO

<目次>
一、中国のNGOと女性差別撤廃委員会
 1.中国大陸のNGOが初めて政府レポート審議の際にシャドウレポート提出――全国婦連傘下の中国婦女研究会から独立したレポートも初めて出現、政府を厳しく批判
 2.女性差別撤廃委員会とNGOとの非公式会談
 3.「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは出国を妨害され、出席できず
 4.国内で女性差別撤廃条約に関心を集めようとした葉海燕さんへの弾圧
二、中国の政府レポートの審議詳細――シャドウレポートが力に。まともに質問に答えない中国政府側
三、女性差別撤廃委員会の総括所見
おわりに

昨年(2014年)10月20日から11月7日まで、第59会期女性差別撤廃委員会が開催され、同委員会は中国政府の第7次、第8次合併レポートを審議して、総括所見を出した(1)

中国政府レポートの前回の審議がおこなわれたのは、2006年8月の第36会期だったので(本ブログの記事「国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント」参照)、今回は8年ぶりの審議だった。

一、中国のNGOと女性差別撤廃委員会

1.中国大陸のNGOが初めて政府レポート審議の際にシャドウレポート提出――全国婦連傘下の中国婦女研究会から独立したレポートも初めて出現、政府を厳しく批判

中国政府レポートは2012年に出されたが(「审议缔约国根据《消除对妇女一切形式歧视公约》第十八条提交的报告 缔约国第七次和第八次合并定期报告 中国」)、今回は、中国大陸のNGOも初めてレポート(「NGOレポート」、「シャドウレポート」、「オルタナティブレポート」、「カウンターレポート」などと呼ばれる)を出した。

1999年に女性差別撤廃委員会が中国政府レポートについて審議したとき、NGOの席には、若い中国女性2人の姿があっただけだった。当時は、中国大陸のNGOには、まだシャドウレポートを書くだけの専門的能力や勇気がなく、その2人はウォッチャーとして参加していた。

2006年に女性差別撤廃委員会が中国政府の第5次、第6次レポートを審議したときは、女性メディアウォッチネットワーク、家庭内暴力反対ネットワーク、北京大学女性法律研究・サービスセンターという3つのNGOが人員を派遣して参加した(本ブログの記事「女性差別撤廃委員会と中国のNGO」参照)。

ただし、このときも各NGOは、シャドウレポートは提出しなかった。「Human Rights in China(中国人権)」や「チベット女性協会」のような国外に拠点を置くNGOが提出した中国の女性の状況についてのレポートはあったが(本ブログの記事「チベット女性の状況」など参照)、中国大陸の団体が中国政府のレポートに対置して書いたレポートはなかった。

今回、中国についてのシャドウレポートは合計47本出ており(香港の団体が香港の状況について述べたものを含む)、それらは国連人権高等弁務官事務所のサイトに掲載されているが(CEDAW - Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women 59 Session (20 Oct 2014 - 07 Nov 2014) の「China」の「Info from Civil Society Organizations」の箇所をクリックすると出て来る)、そのうち13本は、中国大陸のNGOによるものだった(2)

中国大陸のNGOによるシャドウレポートは、おおまかに2つのグループに分けることができる。

第一のグループは、中華全国婦女連合会傘下の中国婦女研究会と結びついたNGOによるものである。これらのレポートは、各団体で女性差別撤廃条約の条文を分担して、それぞれの条文に関する事項ついて、努力と進歩(Efforts and Progress)、問題と挑戦(Gaps and Challenges)、応答(勧告)についての示唆 (Suggestion in Respose)を述べたものであり、比較的短く、5ページ程度のものである。論調がマイルドであることが特徴である。以下の9本がこれに属すると言えよう。

●Research Center for Human Rights and Humanitarian Law under the Law School of Peking University & Center for Gender and Law Studies, Institute of Law under the Chinese Academy of Social Sciences (CASS)(北京大学法学院人権と人道法研究センター[北京大学法学院人权与人道法研究中心]、ジェンダーと法律センター、中国社会科学院)⇒第1~3条(女性差別の定義、締約国の差別撤廃義務、女性の能力開発・向上の確保)について
●Women’s Studies Institute of China(中国婦女研究所[中国妇女研究所])⇒第4条と第7条(暫定的特別措置、政治的・公的活動における平等)について
●Media Monitor for Women’s Network & Women’s Studies of Jiangsu Province(妇女传媒监测网络と江苏省妇女研究所) ⇒第5条(役割分担の否定)について
●China Women’s University(中華女子学院[中华女子学院]) ⇒第10条(教育)について
●Beijing Zhongze Women’s Legal Consulting Services Center & China Association for Employment Promotion & Women’s Studies Institute of China(北京衆沢法律サービスセンター[北京众泽法律服务中心]と中国婦女研究所と中国就業促進会(中国就业促进会)⇒第11条(雇用)について
●Women’s Studies Institute of China & Shaanxi Research Association for Women and Family(中国婦女研究会と陝西省婦女理論婚姻家庭研究会[陕西妇女理论婚姻家庭研究会])⇒第12条(保健)について
●Institute of Sociology under the Yunnan Academy of Social Sciences & Gender and Development in China Network (GAD Network) & Beijing Zhongze Women's Legal Consulting Services Center(雲南社会科学院社会学研究所[ ]、中国におけるジェンダーと発展ネットワーク[社会性别与发展在中国]、北京衆沢法律サービスセンター)⇒第14条(農村女性)について
●Anti-Domestic Violence Network / Beijing Fanbao & Beijing Zhongze Women’s Legal Conslting Service Center & China Women’s University(家庭内暴力反対ネットワーク/北京帆葆[反对家庭暴力网络/北京帆葆]と北京衆沢法律サービスセンター)⇒一般勧告第19号(女性に対する暴力) (3)について
●Beijing Cultual Development Center for Rural Wimen(農家女文化発展中心[农家女文化发展中心])⇒移住女性の権利について

これまでにも、「北京+5」と「北京+10」と「北京+15」の際に、中華全国婦女連合会と中国婦女研究会がシャドウレポートを出したことはあるが(本ブログの記事「『“北京+15”中国女性NGOレポート』――中国政府の『北京行動綱領』の実施状況をチェック」参照)、女性差別撤廃委員会の中国政府レポート審査の際にシャドウレポートを出したのは今回が初めてである。

第二のグループは、中国婦女研究会傘下でない、中国のNGOによるものであり、いくつかの匿名のNGOが連携して執筆している(例外として、「女性抗エイズネットワーク-中国」のレポートは、組織の実名を出しており、このNGO単独で出している)。このように中国のNGOが中国婦女研究会と別個にシャドウレポートを出すのは、今回が初めてである。これらのレポートは、多くの条文について検討した分厚いものであり、非常に具体的で厳しい指摘や勧告案が書かれていることが特徴である。以下の4グループのもの(改訂版を含めればレポートは6本だが)がそれに相当する。

●Joint Chinese NGOs with the Assistance of Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者)(2014.2.20)――中国のいくつかの人権NGOがCHRDの助けを得て、他の人権活動家、学者、弁護士とも相談して作成した。中国政府からの報復の心配があるため、NGOの名称は匿名にした。このレポートは、条約の非常に多くの条文について取りあげている。
●Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者) & a coalition of NGOs(2014.9.30)――上の文書をより詳細にし、勧告案を付けている。
●The China Violence Against Women Concern Group(China VAW Concern Group)――このグループは、中国の女性の権利とジェンダー平等の活動家と専門家の連合である。このレポートは、職場でのセクシュアル・ハラスメント、学校での女児への性暴力、計画出産における女性への暴力、女性の人権活動家の状況について取りあげている。
●China LBT Ligbts Initiative(a caolition of China LBT Women NGOs)(中国性少数女性权益)(2014.2.20)――このレポートは、中国で活動している、コミュニティを基盤にしたLBTの女性のグループが、他の活動家や専門家の助けを得て作成した。中国政府からの報復の心配があるため、NGOの名称は匿名にした。このレポートでは、女性に対する暴力(とくに家族による暴力)、健康(とくに精神的健康)、雇用、結婚(とくに国際同性婚[パートナーシップ])について記述している。
●China LBT Ligbts Initiative(2014.9)
●Women’s Network Against AIDS,China(女性抗艾网络-中国)――レポートの内容は後述。

第三に、中国の国外や香港のNGOが中国大陸の状況について執筆したレポートもある。こうしたレポートは以前からあるものだが、これらの多くも、多数の条文にわたって、非常に厳しい指摘や勧告案を掲載している。

Chinese Human Rights Lawyers Concern Group(中國維權律師關注組)(香港)――このグループは、2007年、弁護士や立法会議員、学者、NGOの活動家らが設立した中国の人権弁護士の人権に関心を寄せている団体である。これレポートでは、女性に対する暴力(女性人権弁護士に対する暴力、人権弁護士の家族に対する暴力、学校での女児に対する性暴力)と女性障害者の権利に焦点。
The Chinese Working Women NetworkHong Kong Confederation of Trade Union[香港職工會聯盟]Labor Action ChinaWorker Empowerment(香港)
Human Rights in China(中国人権)(ニューヨーク、香港)――このレポートでは、データと情報の透明性と利用可能性、女性の権利が侵害された際の司法へのアクセス、政治的・公的活動における平等の問題を取り上げている。
The Dui Hua(対話) Foundation (サンフランシスコ) ――女性の囚人・勾留者の処遇について。
Tibet Watch(ロンドン、ダラムサラ) ――チベット女性の人権について。
The International Baby Food Action Network(IBFAN)――母乳哺育をめぐる諸問題について
The Humanitarian Organization for Migration Economics(HOME) (シンガポール) ――中国からの移民女性について。

今年3月から、フェミニスト活動家5人の勾留が問題になってきたので、ここでは、勾留を含む政治弾圧について取りあげたJoint Chinese NGOs with the Assistance of Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者)のレポートを抜き書きしてみる。

2006年の最終コメント(CEDAW/C/CHN/CO/6、para22)で、女性差別撤廃委員会は、締約国[=中国]に「拘置所内での女性に対する暴力事件」の調査を勧告し、「締約国が女性に対するあらゆる形態の暴力に関するデータ収集を強化することを求めた」が、たとえば、北京で勾留された、女性の権利を擁護する活動家の曹順利と、いま勾留されている、2010年のノーベル平和賞受賞者である劉暁波の妻の劉霞に対する虐待は続いている。曹は拘留中に健康状態が急速に悪化したが、当局が曹に医療を受けさせなかった。曹の家族と弁護士の報告によると、彼女は拘留後、多くの重大な病が深刻化した。2013年10月、彼女の家族が保証人を立てて一時出所を認めるよう申請したが、当局はそれを拒否した。2013年9月から、曹は「挑発してトラブルを起こした」罪の疑いで朝陽区拘置所に勾留されている。劉霞は、2010年10月から中国政府によって不法に軟禁されている。彼女は家族や友人との接触を断ち切られた。彼女が秘かに送った手紙によれば、プレッシャーと孤立によって彼女の精神は崩壊寸前である。

人権グループと外国のメディアは、中国における勾留された女性(拘置所、監獄、精神病院、労働矯正[教養]所、「ヤミ監獄(不法な、間に合わせの監房)」、「収容教育所(ほとんどはセックスワーカーを収容する)」)に対する暴力事件をしばしば報じてきた。勾留中に、女性たちは、殴られ、足かせをはめられ、性的に攻撃されたり、辱められ(たとえば、服を脱がされる)、彼女たちを監視する者に強制的に投薬される。これらの暴力の形態と拷問の特定の型は、懲罰、脅し、強制のために用いられる。

2006年の最終コメントで、女性差別撤廃委員会は「締約国に、女性差別撤廃条約第14条の推敲を強化するため、農村女性が農村発展政策と方案の設計・制定・遂行・監視に積極的に参加するよう必要なすべての措置をとることを勧告した」。第7条(2)は、「あらゆる選挙および国民投票において投票する権利ならびにすべての公選による機関に選挙される資格を有する権利」を保護している。中国では、2011年から2012年の間、独立の(中国共産党または政府の役人から選ばれていない)候補者として基層の人民代表の選挙に参加しようとした数名の女性が、政府当局からハラスメントや処罰を受けている。

たとえば、劉萍は江西省新余市在住のリストラされた労働者だが、基層の人民代表の選挙に立候補したところ、選挙前も選挙時も、身体的暴力と言語による侮辱、ハラスメントにあい、身体の自由を制限された。別の独立候補者である、広東省の李碧雲も、同様に選挙前も選挙時も、暴力的な身体的攻撃を経験した。選挙が終わった後も、この2人の女性は自由と人権を訴える活動を続けたために、ハラスメントと報復を受け続けた。彼女たちは、でっち上げられた罪によった勾留され、拷問と虐待を受けた。劉萍は、申し立てによると、逮捕の後だけでなく、勾留中の数か月間も拷問された。劉は、訊問されるとき、警官に金属棒で頭を突かれ、首と腕をねじられ、長い時間手錠をかけられた。彼女の弁護士が、裁判のときに拷問の問題を取り上げたが、裁判官は拷問によって聞き出したかもしれない証拠や自供を却下することを拒否した。裁判官は、拷問があったという申し立てを調査することも拒否した。李碧雲は2013年10月、仏山市で「公務妨害罪」の疑いで勾留された。彼女の弁護士は、1月13日に広東武警隊病院での面会後、彼女は非常に虚弱で、歩くのも難しいと述べた。李は、弁護士に、警官に脊柱を折られて意識を失ったと訴えた。彼女は順徳拘置所では、床の上で眠らなければならず、足枷を嵌められていたと述べた。


2.女性差別撤廃委員会とNGOとの非公式会談

10月20日、女性差別撤廃委員会が各国のNGOの意見を聞くために非公式会談をおこなった。

中国のNGOに割り当てられた時間は15分間だった。それを各NGOにどう割り当てるかの話し合いは、その前日に、一触即発の雰囲気の下でおこなわれた。テーブルの一方には、香港のNGOの代表たちが、そろって当時の雨傘革命のシンボルカラーである黄色のリボンを身につけて座っており、もう一方には、中華全国婦女連合会が率いるNGOグループが座っていて、ほかに、大陸の草の根NGOグループもいるという具合だった。話し合いは3時間続いたあげくに、膠着してしまい、なんの合意もできなくなったところで、International Women’s Rights Action Watch Asia Pacific(IWRAW)に属していた会議の主催者が仲裁をして、大陸の草の根NGOに6分間、香港の草の根NGOにも6分間、婦連などに4~5分間を割り当てた。

こうした状況の中、たとえば、大陸の草の根NGOの1つである「女性メディアウォッチネットワーク」(女声)は、1分間、話ができることになったので、次の話をした。

今日は2つのテーマを話します。第一は大学入試の性差別です。最近の報告にもとづくと、「211プロジェクト(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学のこと。現在112大学ある)」大学の59%が、2014年度学生募集の中で、差別的制限をしているか、女子学生を募集していません。それは、さまざまな専攻と学部に及んでいます。

第二は「収容教育」です。これは主にセックスワーカーに対する行政処罰で、裁判をせずに、6カ月から2年間、人身の自由を制限できます。これは違憲です。

それゆえ、私たちは、女性差別撤廃委員会が、中国政府に対して大学入試政策を再検討し、収容教育制度を廃止するように要求するように訴えます。

(4)

また、この昼食会では、香港のNGOである、知的障害者の団体「卓新力量」が、女性障害者の医療や労働の問題について報告したが、彼女たちの発言を聞き終わった女性差別撤廃委員会の専門家が、「あなた方がおっしゃった知的障害者に対する医療制度は、香港だけの状況なのか。中国の内地もそうなのか?」と質問した。しかし、その場にいた内地のNGOは何も答えられなかった(5)

このように香港のNGOの活動が大陸のNGOにインパクトを与える場面もあったようだ。

3.「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは出国を妨害され、出席できず

10月22日には、女性差別撤廃委員会は、中国女性NGOと昼食会(ランチ・ブリーフィング)も開催した。

けれども、「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは、「政府」にパスポートを取り上げられて出席できなかった。

「女性抗エイズネットワーク-中国」によると、10月10日、王秋雲さんは、パスポートを国保(=公安部国内安全局)に持って行かれた。王さんは、国保に「パスポートは『政府』が持って行った」と言われ、王さんが「どのレベルの政府か?」「どの部門か?」「どの人か?」と尋ねても、回答を拒否され、王さんが「なぜ私を行かせないのか?」と尋ねても、「上級機関の要求だ」としか答えてくれなかった。その後も、王さんのいる鶴壁市の国保・衛生局・街道辦事処は、王さんにしょっちゅう電話や訪問をして、市から離れさせないようにした。

中国のエイズ問題の女性活動家が出国を制限されたのは、最近1年間で、これで3回目だ。2013年11月には、女性抗エイズネットワーク-中国の袁文莉さんが、警察にパスポートを取り上げられて、第11回アジア太平洋地区エイズ会議に参加することができなかった。2014年7月には、女性活動家の葉海燕さんが政府に「パスポートを紛失」されて、第20回国際エイズ会議に参加することができなかった。

女性抗エイズネットワーク-中国の「シャドウレポート」は、以下のように指摘していた。

性文化のタブーと性道徳のダブルスタンダードのために、女性と子どもには、性や性行為、HIVに関する情報・教育が不足しており、中国のHIVの女性と子どもはとくに弱い立場に置かれている。貧困、暴力、権利のアンバランス、機会の不均等、社会的差別などの多くの問題、不利な社会的文化的環境、低い経済的地位、その他の不利な要素によって、女性がHIVに感染する可能性は大きく増加している。性行為による感染が中国のHIV感染の最も主要なモデルになるに伴って、女性のウィルス感染者数は上昇しつつある。女性HIV感染者とエイズに影響を受けた女性のために政府が政策を打ち出し、資金をサポートするよう期待する。中国の女性の中で蔓延しているエイズを食い止め、差別をなくすために、今回の女性差別撤廃委員会の審議がエイズというテーマに十分に注目するよう希望する。

今回の事態については、馮媛さんは、「このたびの女性差別撤廃条約の審議における女性感染者の『待遇』から考えると、エイズの女性に対する影響をなくすためには、医療問題にとどまってはけっしてならない。もしエイズの影響を受けた女性が公共・政治生活に参与することを保障できず、彼女たちの関する議題の決定的な場面で発言できなければ、彼女たちのエイズウィルスとエイズに抵抗・反撃する能力は打ち砕かれるであろう」と述べた(6)

4.国内で女性差別撤廃条約に関心を集めようとした葉海燕さんへの弾圧

一方、そのころ中国国内では、葉海燕さんが、女性差別撤廃条約に関心を集めようとして、裸の身体をベッドに横たえ、その身体の上に、「中国の女は目覚めよ」「『女性差別撤廃条約』をあなたは本当に知らないのか?」と書いたボードを載せた写真を微博(中国版ツイッター)で発表した。

しかし、11月1日、警察は、葉海燕さんが、「治安管理処罰法」が禁じている「公共の場所で故意の身体の露出」をしたとして、葉さんを勾留10日にした。

けれど、長平さん(ジャーナリスト、現在はドイツ在住)は、「治安管理処罰法」44条は、「他人に猥褻なことをし、または公共の場所で故意に身体を露出させ、情状が劣悪なものは、5日以上10日以下の勾留にする」というものであるが、この規定は非常に曖昧であるうえ、身体を露出する行為が侵害に当たるか否かは行為者と被害者との関係で決まるのであるし、さらに、葉さんの場合は女性差別撤廃条約にみんなの関心を集めようするための行為だから、「情状が劣悪」には到底当てはまらないと指摘している(7)

二、中国の政府レポートの審議詳細――シャドウレポートが力に。まともに質問に答えない中国政府側

10月23日、女性差別撤廃委員会は、中国政府第7次、第8次合併レポートを審議した。女性差別撤廃委員会の各委員の質問に対して、宋秀岩さん(国務院女性児童工作委員会副主任、中華全国婦女連合会副主席・書記処第一書記)ら中国政府側の人間が回答した。以下、事項ごとに主要な問答をまとめてみた。

差別の定義

問:私は、法律の枠組みと法律の中に差別の定義がないことを質問したい。(……)私たちは具体的な条項を見たいし、法廷で条約が援用されているかを見たい。
  ↓
答:(「婦女権益保障法」や「労働、教育、選挙の法律」を挙げて)私たちの法律には、条約の差別の定義を一字の違いもなくコピーした規定はないけれども、この規定はわが国の法律体系の中にすでに完全に具体的に表現されている。

女性の土地権と司法の独立

問:女性の土地の紛争の70%は、法廷が審理を拒絶している。どうしたら司法機関がもっと独立性を持てるかを知りたい。
  ↓
答(最高人民法院):われわれは、法院の審理においては、いかなる機関・団体・組織・個人の干渉も受けず、司法の審理の独立を守ると規定している。

売買春――収容教育制度と性病伝播罪

問:売春に関して、あなた方が提供している情報は少なすぎる。収容教育制度は、もっぱらセックスワーカーと客に対するものだが、この制度は人身の自由を6カ月から2年間制限するものであり、多くの人は差別的だと考えている。セックスワーカーは客よりも収容教育をされやすい。客は罰金払うだけでいいこともある。去年11月、あなた方は労働矯正を廃止した。そのことは賞賛に値するが、あなた方は、現在どのように収容教育制度を評価し、将来いつか廃止しようとしているのか。
 収容教育は行政処罰なのか? 調査した研究者は、これは憲法違反であり、セックスワーカーの健康にマイナスであり、彼女たちは(売春が地下にもぐるので)エイズに感染する危険が増えると言っている。
 病気を持っている売春者は(性病伝播罪によって)処罰するべきではない。私は、彼女たちに処罰ではなく、援助を提供するべきだと考える。
  ↓
答(人民代表大会法制工作委員会):収容教育の目的は法律・道徳教育と性病の治療の援助である。これらの措置は現在論争を引き起こしており、現在なくすかどうか私たちは研究しているところである。
 わが国は、重大な性病にかかっていることを知りながら売春する女性に対してだけ、刑事責任を追及している。その目的は性病の防止と公共の安全の維持であり、われわれは差別だとは考えていない。なぜなら、性病にかかっていることを知りながら買春する客も相応の責任が追及されるからだ(呂頻さん注:正しくないようだ。性病伝播罪は客を含まない)。

女性の政治参加――独立候補者

問:(中国共産党の推薦を得ずに)独立して立候補した女性が選挙のときに侮辱とハラスメントを受けたと聞く。あなた方は調査をしたか?
  ↓
答:中国の憲法と選挙法は、中国の18歳以上の公民はみな選挙権と被選挙権を持つと規定している。暴力的手段で選挙民の選挙権と被選挙権の自由な行使を妨害することは、選挙破壊罪になる。だから、もし委員がそのような事件を知っていたら、被害者に事件を中国の司法機関に提出して調査してもらうようお願いする。

問:私たちは、女性の候補者が虐待と暴力に遭ったという多くの資料を持っている。政府はそのことを知っているのか?
  ↓
答:私はその問題には答えたと思う。中国のいかなる公民も満18歳になりさえすれば、みな選挙権と被選挙権を持つ。だから、もしあなたが言う事件があるのなら、彼女たちは公安局に調査をしてもらうことができる。

NGOや活動家の女性差別撤廃委員会への参加の制限、報復

問(林陽子):私たちは、エイズの活動をしている一人の女性が、この会に出席したかったのに、結局、パスポートを押収されたと聞いている。このことを説明してください。
  ↓
答(外交部の孫昴?):私は委員にその状況を聞いたばかりなので、いま具体的な状況を把握していない。私は背景を少し説明する。いま毎年1億の中国人が出国としており、毎年10%ずつ増えており、人数は世界一である。(‥‥)出国の計画を計画した中国人のうちには、最終的にはそれが実現しなかった人もいくらかおり、その理由にはいろいろある。(‥‥)林陽子が挙げた一人の女性が行けなくなったことについては、私たちは、回答できるよう、もっと多くの情報を得たい。

問:NGOのシャドウレポートは、政府の許可がないと委員会に提出できないのか? 中国の民間社会はますます多くの制限を課せられ、NGOに対する報復もあると聞いている。私たちは、NGOが今回の審議に参与することは安全であると確実に保証しなければならない。
  ↓
答:中国政府はNGOがジェンダー平等を勝ち取ることと女性の人権の面で役割を果たすことを歓迎する。今日審議に参加したことによって報復を受けるいかなる可能性もない。
 今日、多くの委員が中国は女性の権利とジェンダー平等に関するどのような法律を制定したかと尋ねた。この点は、はっきりした情報を伝えている。すなわち、ジェンダー平等と女性の権利の促進は、必ず法制の枠組みの中でおこなわなければならないということである。この数日、国内の法治も非常に関心を持たれている。それゆえ、私たちはNGOが中国の法律を守り、法律の枠組みの中で活動することを希望している。

大学入試の合格ラインの男女差別

問:大学では、男女の入学の合格ラインが異なるという現象があるという報告がある。警察関係の専攻など、若干の専攻では、女性には最大限の枠があるという。中国政府は、この問題をなくす措置を取るのか否か?
  ↓
答:性別を制限する出発点については、みんなの理解が異なっており、隔離と差別であると考える人もいれば、女性に対する保護だと考える人もいることである。これは正常なことであり、差別があれば意思疎通こそが必要である。小語種(英語以外の外国語)の性別の制限をなくしたことも、公益組織と教育部との意思疎通によってこそ実現した。

雇用

問:雇用の平等にもっと多くの工作をするべきである。
  ↓
答(労働と社会保障部):(「われわれの法律には各種の規定があり、各種の文書もある」といったことを述べた後に) 訴訟例については、私たちは、2013年、中国のメディアの多くが、山西の女子大学生が海淀の巨人学校を訴えた事件を報道し、最初の就職差別事件となった。後に海淀の裁判所の調停の下で和解し、会社は女子学生に3万元を就業平等資金として支給し、訴訟費も支払った。このように差別に対する訴訟例は存在しており、女性の法律意識の増強に伴ってより多くの女性が法律の武器を取るようになった。

計画出産

問:産児制限を強制している問題について、人口と計画生育法によると、計画出産に違反した人は費用を払わなければならないが、その罰金の額はいくらで、どの地方がそうしているのかを知りたい。地方で産児制限を強制している役人を処罰するように希望する。
  ↓
答:中国の計画出産法の規定では、各クラスの政府と職員は、厳格に法律にもとづいて行政をおこなわなければならず、公民の合法的権益を侵犯してはならないこと、侵犯したら責任を追及することを規定している。社会扶養費については、この税金徴集制度は、わが国が人口の増加を抑制するために取っている経済的制限措置であり、計画生育という国策を実現するための手段であって、出産の秩序に積極的な働きをしている。

女性の土地権

問:女性の土地権の問題は非常に重要である。中国は2007年に「農村土地請負法」を制定したけれども、まだ不十分である。またこの法律が執行されていない省がある。
  ↓
答(宋秀岩):中国の法律の規定から見て、女性の土地権は明確に規定されている。現実には、婚姻の変化によって、たしかに女性の土地権が侵害されるという現象が出現している。たとえば、出嫁女(結婚後もさまざまな事情で戸籍を実家の村に置いたままにしている女性)は、実家の土地を兄弟姉妹が耕作しているかもしれない。土地が徴用されたとき、彼女の兄弟姉妹が保障費を受け取るかもしれない。それは家庭の問題である。私たちは民間の調停によって家族に対する工作をする。

女性の勾留、ヤミ監獄

問:女性の拘禁について。私たちは監獄とヤミ監獄の中の女性について、身体と性の面で虐待されているという資料を持っている。
  ↓
答:他の国家と同様、中国にも監獄はあるが、それらは法律の枠組みの外で運営されている「ヤミ監獄」ではない。中国にはけっして法律の枠組みの外の「ヤミ監獄」は存在しないし、まして女性に対するそのような監獄は存在しない。もし勝手に拘禁場所を設置して、他人を拘禁したら、それは犯罪であり、具体的に言えば、中国刑法238条の不法監禁罪になる。

問:個人が何らかの動機で不法に他人を監禁することがあるのか? あなたがたは、勝手に陳情者を監禁する人がいると言うが、私にはよくわからない。
  ↓
答:委員は、彼らがどうしてそのような動機を持っているのかを問うたが、私の答えは、彼らの動機にかかわらず、私たちは法によって処罰しなければならないということである。

答:暴力の定義、被害者に対する庇護、加害者に対する懲罰はみな法律の中で具体的に示されるであろう。しかし、その法はまだ起草中であり、まだ全国人民代表大会にも提出されていないので、委員の問題は公布後に満足をいく回答ができるだろう。

婚姻と女性の財産権

問:離婚後の財産は、もともと出資した側に返さなければならないという。これは形式的には平等だが、実際は不平等である(婚姻法司法解釈三の、離婚後の不動産は登記している側のものになることを指している)。これは、夫婦の共同財産制に反している。何らかの方法で現在の婚姻法の問題をはっきりさせて、最高人民法院の司法解釈を取り消すべきである。

LBT

問:私たちは、同性愛・バイセクシュアル・トランスジェンダーの女性に対して差別があると聞いている。
  ↓
答:中国はいかなる人も法律の保護を受けており、性的指向によって差別されることはない。中国はこれらの人に対してますます寛容になっており、専門的な研究やサービスを提供する組織もある。政府の関連機構は、彼らに便宜を図るよう力を尽くしており、たとえば関係団体に登記を提供している。

選択議定書

問:あなた方は、条約の選択議定書の批准について討論しているのか?
  ↓
答:私たちはまじめに研究しているところだ。私たちはできるだけ早く進展させて、次の審議のときに委員会に進展を報告できるようにしたい。(8)

NGOからの情報提供が委員の質問に反映

女性差別撤廃委員会の委員の質問には、NGOのシャドウレポートや事前の非公式会談での意見表明が反映していることは明らかである。上記ではそれぞれ1団体のものしかご紹介しなかったが、それらの団体が情報を提供した諸問題(収容教育制度、独立候補者、大学入試の合格ラインの男女差別、ヤミ監獄)はすべて委員の質問に取り入れられている。

前進面も少しあるが、全体として、まともに質問に答えていない中国政府側の答弁

政府側の回答に関して言えば、収容教育の廃止や選択議定書の批准を考慮していることを表明した点は、前進と言えないこともない(9)

また、LBTの人権の問題に関して、「中国はいかなる人も法律の保護を受けており、性的指向によって差別されることはない」と述べたことについては、China LBT Ligbts Initiative(a caolition of China LBT Women NGOs)(中国性少数女性权益)が「これは、政府当局が初めて性的指向による非差別原則を述べたものであり、画期的な進歩だ」とした上で、「私たちは、中国政府が承諾を履行して、非差別原則を家庭内暴力防止や差別禁止立法の中で実行するとともに、立法・司法・法律執行・教育・福利などの機構に対する多元的ジェンダー教育を強化することを希望する」と述べて、(言質として)一定の評価をしている(10)

また、中国当局が、NGOについて、「ジェンダー平等を勝ち取ることと女性の人権の面で役割を果たすことを歓迎する」と言い、「小語種の性別の制限をなくしたことも、公益組織と教育部との意思疎通によってこそ実現した」と述べている点や、雇用差別に対する訴訟を取り上げた点は、中国の現状を肯定する文脈においてではあるが、フェミニストの団体・個人の活動を肯定した内容だと言える。

しかし、同時に、NGOについて、「私たちはNGOが中国の法律を守り、法律の枠組みの中で活動することを希望している」と述べている点は、違法行為(だと当局が認定した行為)があれば弾圧することも示唆していると言えるだろう。実際、「このような威嚇を含んだ承諾を聞いて、その場にいるNGOの代表は泣くに泣けず笑うに笑えなかった」という(11)

また、中国政府の回答は、実態を尋ねられているのに、法律の規定を答えることによって話をそらして場合が非常に多いことに大きな特徴がある。司法の独立や、独立候補者への侮辱・ハラスメント、計画出産、女性の土地権、ヤミ監獄についての質問の回答はすべてそうである。

王秋雲さんの出国の問題についても、知っていながら、知らないふりをして空々しい回答をしている可能性が大いに疑われる(本当に知らなかったとしても、それはそれで大問題だ)。独立候補者の女性に対する迫害について、警察や司法に訴えればいいと言っていることも、それで問題が解決するか否かを知らないとは考えられない。

また、誤りないし虚偽を答えていることもある。買春する人が性病伝播罪で罰せられることもあるとか、LGBT団体の登記を認めているとかという点がそれに当たる。

また、宋秀岩さんは、女性の土地権の問題について、「家庭の問題」であり、家族に対する「調停」によって問題が解決できるかのように述べたのは、この問題に対するまったくの無理解を示していると言えるだろう。

全体として、中国政府側の答弁は、質問にまともに答えようとしないものだったと言える(12)

三、女性差別撤廃委員会の総括所見全文(香港・マカオ除く)

以下では、中国についての女性差別撤廃委員会の総括所見を、香港・マカオ関係の個所を除いて、翻訳した(原文は、ここから、英語、フランス語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、中国語の6カ国でダウンロードできる→「CEDAW/C/CHN/CO/7-8」)。なお、前回の総括所見については、本ブログの記事「国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント」参照してほしい。

議会

7.女性差別撤廃委員会(以下、委員会と略す)は、女性差別撤廃条約の完全な実施を保障する立法権の決定的役割を強調している(女性差別撤廃委員会の「女性差別撤廃委員会と議員の関係」に関する声明、2010年第45会期)。 委員会は、全国人民代表大会に、その権限にもとづいて、女性差別撤廃条約の現在と次の報告期間の間に、総括所見の実施に関する必要な措置を取るよう要請する。

女性に対する差別の定義

12.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.9)を想起し、婦女権益保障法が2005年に改正されたにもかかわらず、締約国[=中国]の法律には、女性差別撤廃条約(以下、条約と略す)の第1条と合致した女性に対する差別の包括的定義が含まれていないことを引き続き懸念する。

13.本委員会は、以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.10)を繰り返して、締約国に、国家レベルの法律で、生活のすべての領域における直接的および間接的差別から女性を守るために、条約の第一条と合致した、女性に対する差別の包括的定義を採用するよう要請する。とくに、締約国は、セックスおよび/またはジェンダーにもとづく差別を、適切な執行メカニズムと処罰によって確実に禁止しなければならない。

司法の独立と司法へのアクセス

14.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.11)を想起して、女性による司法的救済へのアクセスが困難であるというレポートが寄せられていることを引き続き懸念する。委員会は、また、とくに女性が関わる土地紛争に関して、裁判の判決や審理に影響するような司法に対する政治的干渉があるという報告を懸念する。

15.委員会は、以下の点を締約国に勧告する。
 (a)女性が、土地権の問題で困っている女性を含めて、司法に十分アクセスできるよう、法律援助の提供を含めて保障すること。また、女性の司法へのアクセスを容易にするために、もしそれが適切ならば、NGO団体を援助すること。
 (b)国家の政治的機構によるあらゆる形態の司法への干渉を防止して、司法の独立を確立し、女性の人権にかかわるすべての紛争が法の支配に従って解決されるようにすること。

国内人権機関

16.委員会は、締約国が、女性の権利を守り推進する広範な権限を持った、人権擁護のための国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則) (法務省訳)に従った、独立した国内人権機関をまだ設置していないことを、懸念を伴って留意する。

17.委員会は、締約国に、明確なタイムスケジュールを持って、女性の権利とジェンダー平等に関する問題をパリ原則(1993年12月20日、国連決議48/134によって採択)に従った、その権限に女性の権利とジェンダー平等に関する問題を含んだ、独立した全国的な人権機構を設立することを勧告する。

女性の地位向上のための機構とデータ収集

18.委員会は、国務院女性児童工作委員会が、人的・財政的リソースを増やす規定によって強化されてきたことに留意する。しかし、委員会は、国務院女性児童工作委員会は政策を遂行するための権限または財源がない単なる調整機関であり、法律や政策のジェンダー評価をする権限を持っていないというレポートがあることに懸念を有する。委員会は、また、国務院女性児童工作委員会と、締約国の女性の権利の問題のために活動している広範な民間組織との間との協力が乏しいことも懸念を有する。

19.委員会は、締約国に、国務院女性児童工作委員会を、財源と明確な権限を持った、女性の進歩を可能にする活動を効果的に担うことができる機構として強化を続け、中国女性発展要綱(2011-2020)に対してジェンダー評価をする権限を与え、民間組織との協力を強めるよう勧告する。

20.委員会は、2012年の女性と子どもの地位に関する包括的な統計システム(妇女儿童状况综合统计报表制度)を改訂したことを留意する。しかし、委員会は、女性の地位を評価するために必要な決定的ないくつかの情報が、女性の権利の問題に関する情報へのアクセスを不当に制限するさまざまな機密規定によって、国家機密に分類されていることに懸念を有する。委員会は、さらに、データの収集と共有のシステムが、条約の遂行に十分な監督と評価をするには弱すぎることにも懸念を有する。

21.委員会は、ジェンダー平等の主流化と女性の人権の擁護を目的とした政策と要綱の影響・効果にすべての利害関係者がアクセスできるよう、性別に分けたデータの収集・共有・宣伝にとっての障害(締約国の秘密法が引き起こした障害を含む)を研究するよう締約国に勧告する。この点で、委員会は、締約国に、女性の状況について統計的データに関する一般勧告第9号(1989年)に注意を払うよう要請する。

暫定的特別措置

22.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.23)を想起して、条約の第一段落の第4条と暫定的特別措置に関する一般勧告第25号(2004年)にもとづいた、条約のすべての領域における女性のための実質的平等の達成を加速するための暫定的特別措置が十分使われなかったことを遺憾に思う。

23.委員会は、以前の勧告を繰り返して、締約国に、とくに民族的・宗教的少数者の女性と障害女性の権利の向上のため、女性と男性の実質的平等の達成を加速するための必要な戦略として、条約の第4条(1)と一般勧告第25号の暫定的特別措置にしたがって、条約のすべての分野において、暫定的特別措置を使うよう要請する。

固定観念と有害な慣習

24. 委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.17)を想起して、家族と社会の中の女性と男性の役割と責任に関する根強い固定観念の存続、たとえば、違法な強制的中絶・断種や違法な性別選択的中絶という方法によって不利な性比をもたらす男児選好の伝統を懸念する。

25.委員会は以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.18)を繰り返して、締約国に以下のことを勧告する。
 (a)女性児童工作委員会と他の関係者が、女性と男性の伝統的役割を強固にする社会的規範を変革し、女性と少女の人権を保障する積極的な文化的伝統と慣習を強化する努力を強めること。
 (b)性別を選択する妊娠中絶、強制的な中絶、女児殺しに対処するための現存の法的手段の執行を強めること。
 (c)ジェンダーについての固定観念をなくすためにとられた措置の影響を評価するために、締約国の独立した専門家の組織によって、定期的に監督と評価をおこなうこと。

女性に対する暴力

26.委員会は、家庭内暴力防止法の草案が第12期全国人民代表大会の常務委員会に付託されたことに留意する。しかし、委員会は、草案の内容、とくに保護命令と処罰、シェルター、採択までのタイムスケジュールについての情報がないことに懸念を有する。委員会は、また、女性に対するあらゆる形態の暴力(暴力の広がりや女性被害者に与えられる補償、有罪の判決を受けた加害者に対する裁判所の命令を含む)についての十分なデータがないことも懸念を有する。

27.女性に対する暴力に関する一般勧告第19号(1992)と以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.22)を想起して、委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)家庭内暴力防止法を練り上げる際には、法律学だけでなく、条約と一般勧告第19号を活用し、法案を迅速に採択するとともに、ドメスティック・バイオレンスを含めた、女性に対する暴力に包括的に対処するものになるようにすること。
 (b)家庭内暴力防止法の草案を、保護命令が使用でき、暴力の犠牲者である女性が、十分で適切な施設のあるシェルターを利用できるものにすること
 (c)女児殺しを含めた、女性に対するあらゆる暴力の形態に関する包括的なデータ収集のシステムを引き続き強化すること。
 (d)女性に対するあらゆる形態の暴力の犠牲者が警察に通報するよう勇気づけること。
 (e)女性に対する暴力の訴えをきちんと調査し、そうした行為を起訴し、加害者を適切に罰すること。

人身取引と売春の搾取

28.委員会は、「人身取引防止のための中国の国家行動計画(2013-2020)」が発表されたことを歓迎する。しかし、委員会は、包括的な反人身取引立法がないこと、国内法が性的搾取、強制労働、強制結婚、不法な養子縁組を目的とした人身取引を含めたあらゆる形態の人身取引を刑事上の犯罪としている否かが不明確であることに懸念を有する。さらに、委員会は、労働矯正[教養]制度が廃止されたにもかかわらず、締約国が、売春女性を主な対象とした勾留を含む収容教育制度を用い続けていることに懸念を有する。

29.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)次期レポートでは、明確な人身売買の定義を伴った包括的な反人身取引立法の採択についての情報を提供し、またどのようにそれが国際基準と合致しているかを説明すること。
 (b)地域における人身取引防止のための情報交換と人身取引をする者を起訴するための他国との法律的手続きの調整を含めた、二国間・地域的・国際的な協力を目的とした努力を引き続き強化すること。
 (c) 労働矯正を受けたすべての女性に十分な保障をするとともに、女性の恣意的な勾留を正当化するために用いられかねない収容教育制度の廃止を考慮すること。

政治的・公的生活への参加

30.委員会は、締約国が、女性が政治的・公的生活への参与を向上させる上で前進を作り出したことと、少数民族の国政への参加と同様、すべてのレベルにおける女性の政策決定団体への参加目標を提起した中国女性発展要綱(2011-2020)を採択したことを留意する。また、委員会は、村民委員会には女性のメンバーがいなければならないことと女性が村民代表者会議の全参加者の3分の1以上を占めなければならないことを規定した村民委員会組織法改正を歓迎する。しかし、委員会は、このかん、人民代表大会・内閣・各省レベルにおいて女性が少なく、かつ女性があまり増えていないことを引き続き懸念する。また、チベット人・ウイグル人のような民族的・宗教的少数派の女性が、農村や内陸部の女性と同様に、政策決定機関に少ないことに懸念を有する。さらに、委員会は、独立した候補者として選挙に立候補した女性たちが虐待や暴力にあっているという報告に深い懸念を有する。

31.委員会は以前の勧告を繰り返すとともに、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)中国女性発展要綱(2011-2020)の、全国的・地方的レベルでの、十分な財源を付けた実効性ある履行を確保する手段を導入すること。
 (b)より強制的な暫定的特別措置、すなわち、条約の第4条の第1段落および暫定的特別措置に関する委員会の一般勧告第25号(2004年)、女性の政治的・公的生活における、選挙で選出・任命される団体における全面的で対等な参加を加速するための一般勧告第23号に合致したクォータ制のようなものを採用すること。
 (c)村民委員会には女性がいなければならず、村民代表者会議の参加者の1/3以上の割合を女性が占めなければならないと規定している村民委員会組織法の改正を実効ある実施を確実におこなうこと。
 (d)独立候補者として選挙に立候補した女性に対する暴力と虐待の申し立てを徹底的に調査して、加害者を確実に起訴し、重く罰すること。
 (e)民族的・宗教的マイノリティ女性の参加を促進し、容易にするための特別な措置を採用することによって、国家人権行動計画を確実に履行すること。

人権活動家とNGO

32.委員会は、中国全土からNGOが委員会に積極的に参加したことを歓迎する。しかし、締約国が、NGOから委員会に提出された幾つかのレポートが、締約国の官吏に検閲されたという申し立てと、委員会にレポートを提出した幾つかのNGOの代表が締約国のレポートを批判したことによる報復を恐れているという申し立てに注意を払っている。委員会は、また、委員会に訴えをしようとし、締約国の審議を傍聴しようとした、少なくとも1人の女性人権活動家が旅行制限を課されたという情報にも注意を払っている。さらに、委員会は、市民社会の組織の設立に管理者が必要だという中国の法律がNGOの登記の不当な制限を引き起こしているという情報に懸念を有する。

33.委員会は締約国に以下の勧告をする。
 (a)委員会に情報を提供した人を含めて、女性の人権の擁護者を守るためにすべての必要な措置をすること。今後は締約国のレポート審議の傍聴を希望する個人/人権活動家に旅行制限が課せられないように措置をとること。
 (b)NGOが委員会に提出したレポートを政府の官吏が検閲したという申し立てを調査し、そうしたことを防ぐ措置をとること。
 (c)女性のエンパワメントと発展に関する締約国の努力を遂行する女性の権利団への女性の参加を促進するために、管理者なしでNGOが直接登記できるように、NGOの設立に関する国家の規定を再吟味すること。

教育

34.委員会は、締約国が女児の入学率を改善させ、教育によって成人女性を含めて非識字率を減少させ、2011年に「女性の科学技術人材の建設に関する意見(关于加强女性科技人才队伍建设的意见(word))」を出し、中国女性発展要綱(2011-2020)で明確な目標を提示したことを歓迎する。しかし、委員会は、大学の課程における性別分離と一部の大学のいくつかの学科で男児には合格最低ラインを低くしていることに懸念を有する。また、委員会は、知的障害を持った女性・女児、チベットやウイグルの女性・女児のような民族的・宗教的マイノリティの教育へのアクセスが限られていることにも懸念を有する。委員会は、さらに、両親が都市に移住した女児(いわゆる「留守」児童)の教育へのアクセスが限られていることと中退率についても懸念を有する。

35.委員会は、締約国に以下のことを勧告する。
 (a)入試の合格ラインが女性や女児に不利にならないよう保証することを含めて、女性・女児に男性・男児と対等に教育を与えること。
 (b)財政的・およびその他のリソースを増やして、民族的・宗教的マイノリティ女性・女児、とくにチベット人、ウイグル人、いわゆる「留守」女児に対して、漢語でない言語を話す学生に対して母語の教育をすることを含めて、必要なサービスを供給することによって、教育へのアクセスを保証すること。
 (c)障害、とくに知的障害を持った女性・女児のために、教育へのアクセスにおけるすべての障害物を取り除くこと。

雇用

36.委員会は、国家人権行動計画(2012-2015)に「女性の権利」という節が入ったこと、とくに雇用における性/ジェンダーにもとづく差別をなくす目標が提示されたことを留意する。また、委員会は、生育保険を規定した社会保険法(中华人民共和国社会保险法)(2011年7月施行)の制定も歓迎する。しかし、委員会は、以下の点に懸念を有する。
 (a)持続し、拡大しつつある男女賃金格差。その一部は、同一価値労働同一価値原則にもとづく法律がないことが原因となっていること。
 (b)労働市場における男女の水平的・垂直的職業分離と雇用における女性の低賃金部門への集中が続いていること。
 (c)男性と女性がそれぞれ60歳と50歳で、女性幹部は55歳であるという定年の相違。および、この定年の相違のために、女性はしばしば男性より年金が少ないために、定年後は、貧困に陥りやすいこと。
 (d)セクシュアル・ハラスメントに対して雇用主に責任を課す法律の規定がないこと。

37.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)国家人権行動計画(2012-2015)、2007年の就業促進法、他の関連する法律のもとで構造的不平等と職業分離をなくす努力を強めるとともに、同一価値労働同一価値原則を規定するとともに、雇用における差別について裁判に訴える女性たちのために紛争解決メカニズムを規定した法案を採択することによって男女賃金格差を縮小する措置をとる努力を強めること。
 (b)男女の定年を平等にする努力を加速し、高齢者の年金の平等を確保すること。
 (c)職場でのセクシュアル・ハラスメントについて雇用主に責任を課す法律の規定を採択すること。

健康

38.委員会は、妊産婦死亡率の顕著な改善と、女児と男児の性比の不均衡をもたらす強制的中絶や強制的断種とともに、非医学的な胎児の性別鑑定と性別選択的中絶の問題を抑制する努力を歓迎する。しかし、委員会は、それらの不法な慣習が国内で続いており、女児、とくに障害をもつ女児殺しが、完全には根絶されていないことを引き続き懸念する。委員会は、また、最近締約国の一人っ子政策は緩和されているにもかかわらず、一人っ子政策に違反した女性たちは罰金を課せられ、有給の産休を剥奪され、子どもを登記する際にいくつもの困難を経験する状態が続いていることにも懸念を有する。さらに、委員会は、家族計画の手段は、結婚している女性しか利用できず、性および出産の健康に関する効果的で年齢に合った教育が学校でおこなわれていないことに懸念を有する。

39.委員会は、以前の勧告を繰り返し、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)しばしば非医学的な胎児の性別鑑定や性別選択的中絶、強制的中絶、強制的断種、女児殺しをもたらす男児選好の伝統を断ち切るために、法律の執行と意識の向上を含めた努力を強化すること。
 (b)一人っ子政策に違反した女性たちに対する制裁を止め、彼女たちの子どもの登記にとってのすべての障害をなくすよう考慮すること。
 (c)嬰児殺し事件を徹底的に調査し、加害者を適切に処罰すること。
 (d)婚姻の状況に関係なく、すべての女性に無料の家族計画の手段を提供し、学校で性および出産の健康に関する年齢にあった教育をおこなうこと。

40.委員会は、締約国がHIVの検査と相談のサービスを開始したことに留意する。しかし、委員会は、HIVに感染した女性の数が増加していることとHIV/AIDSとともに生きる女性に対する差別と社会的スティグマが存続していることに懸念を有する。

41.委員会は、締約国がHIVととともに生きる女性たちに対する差別をなくすための措置をとり、そうした女性たちをケアするコミュニティの女性組織にサポートを提供するよう勧告する。

農村女性

42.委員会は、農村地域の貧困縮小について締約国がおこなった努力と進歩に留意する。また、2007年に物権法を採択した後、締約国が、女性が関わる土地契約紛争に対して、調停や開発に伴う補償によって対処したことにも留意する。しかし、委員会は、多くの農村女性が請け負う土地がないままであることに懸念を有する。

43.委員会は締約国に、特に農村地域で女性の土地へのアクセスを制限しているすべての障害を除去し、それらの紛争の際に、女性に有効な救済策を与える調停や解決をおこなうよう要請する。

結婚と女性の財産権

44.委員会は、土地に関する女性の財産権を守る締約国の努力に留意する。しかし、委員会は、2011年8月9日に最高人民法院がおこなった、離婚または相続の場合、最初の出資者に財産権を戻すという婚姻法の解釈に関する決定に懸念を有する。その決定は、間接的に女性を差別し、彼女たちから財産権を奪うものである。委員会は、また、農村地域の伝統と慣習のために、女性がまだ彼女自身の名義の土地を所有または登記できず、婚姻の状態が変化すると土地所有権が失われる危険があることに懸念を有する。

45.委員会は、締約国が、農村および都市において、女性の土地に対するアクセスと権利を妨げるすべての法律、習慣、伝統をよく調査し、女性が婚姻状態に関わりなく財産権を完全に享受できるように、条約の第16条と委員会の一般勧告第29号(婚姻、家族関係及びその解消の経済的影響) (13)にしたがった効果的措置をとること。

複合差別

46.委員会は、チベットやウイグルの女性のような民族的・宗教的マイノリティ女性や障害を持った女性が、複合的で交差的な形態の差別に遭い続けていることに懸念を有する。委員会は、とくに民族的・宗教的マイノリティ女性が、健康・教育・雇用の権利がいまだに限られていることに懸念を有する。

47.委員会は、締約国に、民族的・宗教的マイノリティ女性と障害を持った女性の文化的アイデンティティ・慣習の享受、健康、教育、公共生活への参加をしばしば損なっている複合的で交差的な形態の差別を除去することを目的とした努力を精力的におこなうことを要請する。

勾留されている女性

48.委員会は、中国で勾留されている女性の人数が増加し続けていることに懸念を有する。委員会は、また、女性刑務所の数が限られているために、女性たちがしばしば、家族から遠く離れた、暴力と虐待の危険がある超満員の場所に入れられていることに懸念を有する。さらに、委員会は、女性の陳情者が多く勾留されると申し立てられている、中国の「ヤミ監獄」として知られる非正規の勾留施設についての情報に懸念を有する。

49.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)女性の犯罪行為の原因に対処することを目的とした予防的なプロジェクトによるものを含めて、勾留されている女性の人数を減らす措置を取ること。
 (b)刑務所が超満員である問題を解決するために、国際基準に従って女性の勾留施設の状態を改善し、さまざまなカテゴリーの被拘禁者を分けて収容することを保証し、「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則」(バンコクルール)に従って、十分な健康施設とサービスを供給すること
 (c)ただちに不法な交流施設(「ヤミ監獄」)を廃止し、国家の者でなくとも、そうした悪事を働く者を適切に処罰すること。

また、この総括所見では、中国政府に2018年11月に第9次定期レポートを提出するよう要請するとともに、「フォローアップ行動」として、「78.委員会は、締約国に、2年以内に、書面の形式で、上の15の(a)(b)、31の(b)(d)(e)に含まれる勧告を履行するためにとった手段を説明するよう要請する」としている。すなわち、それぞれ簡単に言えば、女性の土地権に関する司法へのアクセス、司法の独立、選挙でのクォータ制、独立候補者に対する暴力と虐待、民族的・宗教的マイノリティ女性の政治参加のためのクォータ制の件について早急に措置をとるよう求めている。

馮媛さんは、今回の総括所見は、以前のものと共通する問題も多いが、とくに「条約の実施の面では、とくに立法メカニズムについての勧告」「NGOと女性人権活動家」「国家人権機構」「複合的で交差的な形態の差別」に重点が置かれることに特色があると述べている(14)

また、女性差別撤廃委員会の総括所見には、各団体がシャドウレポートで取り上げた事項が反映していること、委員の質問に対する中国政府側回答は、まったく有効ではなかったこともわかる。

おわりに

中国のNGO、とくに自律性の強いNGOが初めてシャドウレポートを提出して、それが総括所見にも反映された意義は大きい

中国のNGOが初めて女性差別撤廃委員会の審議の際にシャドウレポートを提出したこと、しかも、中国婦女研究会によるものだけではなく、より自律的なNGOによるものも含まれていたこと、それらのシャドウレポートとロビイング活動によって、女性差別撤廃委員会の委員の質問もより鋭いものになって、それが総括所見、勧告の内容にも反映したという点で、今回の女性差別撤廃委員会の審議は大きな意義を持つものだったと思う。

フェミニスト活動家の拘留事件との関連で

また、2015年3月からのフェミニスト活動家の拘留事件と関連で見ると、中国大陸のNGOが、この時点でシャドウレポートにおいて、女性の人権活動家や独立候補者に対する暴力や虐待(病気でも釈放しない、ベッドに寝かせないといった形態を含めて)を詳しく取り上げていることが注目される。また、主に売春した女性に対するものだが、「恣意的な勾留」を正当化する収容教育制度の問題を取り上げたことも重要だ。もちろん収容教育制度の問題を含めて、多くのテーマに行動派フェミニストたちが取り組んできた課題も多く取り上げられている。「ヤミ監獄」の問題は、以前本ブログでも取り上げたように。女性の土地権の保障を訴える陳情者がしばしば監禁されるという点で、男女平等という観点からも重要である(本ブログの記事「農村での土地権侵害に対する「出嫁女」の闘い――陳情、デモ、裁判、インターネット、パォーマンスアート」の「1.陳情とその困難」の「2.陳情狩りとヤミ監獄、行政拘留」参照)。ただし、中国大陸のNGOはそうした訴えを匿名で出さざるをえなかった状況も見なければならない。

女性差別撤廃委員会の総括コメントも、馮媛さんが指摘しているように「NGOと女性人権活動家」の問題を重視しており、女性の独立候補者に対する暴力や虐待の申し立てに関する調査を2年以内という期限付きで要請するとともに、女性人権活動家の出国制限、シャドウレポートに対する報復の問題が取り上げたことは注目される。さらには、勾留されている女性の問題が独立した項目として扱われて、彼女たちに対する暴力と虐待、「ヤミ監獄」、収容教育制度の廃止にも言及されたことは重要である。

ただし、収容教育制度の問題などを除いて、「報告」や「情報」、「申し立て」に対する懸念・関心という表現になっている点は、女性差別撤廃委員会の調査能力や権限の限界なのかもしれない。

(1)女性差別撤廃条約を批准した国は、「この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置によりもたらされた進歩に関する報告」(女性差別撤廃条約第18条)を国連に定期的に提出しなければならない。国連の女性差別撤廃委員会はそれを審議して、勧告などのコメントを出す。
(2)以上は、冯媛「消歧公约中国审议15年:妇女NGO的参与」女声网2014年10月21日、「中国妇女组织积极参与联合国消歧委员会第59届会议」妇女研究网2014年10月24日。
(3)一般勧告第1号から第25号までの日本語訳は、「女性差別撤廃委員会による一般勧告(内閣府仮訳)(PDF)」。
(4)以上は、冬旸「一分钟的发言机会」女声网2014年10月22日。
(5)冬旸「残障妇女在中国?极缺关注——记香港权利组织在NGO午餐会的发言」女声网2014年10月23日。
(6)以上は、冯媛「消歧委员与中国NGO见面 女性抗艾网络代表被缺席」女声网2014年10月23日。
(7)以上は、「 Ye Haiyan, Rights Campaigner, Is Detained Over Photo Posted Online」New York Times 2014.11.5、「葉海燕的裸照擊傷了誰?」東網2014年11月7日、女权之声的微博【兑现承诺,放过叶海燕】2014年11月10日 14:15
(8)以上は、吕频,JESS,张平,冯媛「消歧公约审议现场直播记录」女声网2014年10月23日。とくにそのポイントを取り上げたものが、吕频「政府代表回复消歧审议,哪条最神?」(女声网2014年10月24日)である。
(9)冯媛「收容教育制度:“正在研究是否废止”」(女声网2014年10月27日)は、収容教育の廃止を研究中であるという点を見出しにしている。ただし、この記事も触れているように、収容制度についての情報開示を求めた趙思楽さんによる裁判は、この答弁がおこなわれたのと同じ23日に敗訴している。
(10)中国性少数女性权益(China LBT Rights Initiative)「中国政府首度明确表示同性恋不会被歧视」女声网2014年10月27日。
(11)女权之声的微博【性别平等与外交技巧——围观审议有感】2014年10月25日 18:00
(12)马兰「七大招轻松过关联合国审议」は、中国政府代表が委員会の委員の質問をやりすごす7つの手段を挙げている。それは、1.聞こえない(またはときどき聞こえない)ふりをする、2.否認+回避、3.問われていないことを答える、4.(1つだけ、良い)例を挙げる、5.焦点をぼかす、6.「私は知らない。知ったらきっと処理する」と言う、7.最後の手段は、法律の条文を読むこと、である。
(13)邦訳は、「一般勧告第29号 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第16条に関する一般勧告 婚姻、家族関係及びその解消の経済的影響(PDF)」。
(14)冯媛「[公约审议]带回家的功课:结论性意见向中国政府建议」原刊:2014年10月24日 発表:2014年12月17日。

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台湾、「女性差別撤廃条約施行法」制定

 5月20日、「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約施行法(消除對婦女一切形式歧視公約施行法)」が台湾の立法院の三読会を通過し(参考:台湾の立法手順の解説)、成立しました。来年(2012年)1月から施行されます(1)

2007年、台湾も女性差別撤廃条約に署名(国連は加入を拒否)

 台湾は国連加盟国ではありませんが、2004年から、台湾婦女団体全国連合会は、女性差別撤廃条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women[CEDAW])を台湾の国内法化して、台湾でも効力を持たせるよう運動を始めました。同年の8月には、「民間台湾CEDAW実施推進連盟(民間推動台灣落實CEDAW聯盟)」(台湾婦女団体全国連合会、台湾女性学学会、婦女新知基金会、中華民国YWCAなど(2))も結成されました。

 彼女たちは、政府に女性差別撤廃条約に署名するよう要求しました。それを受けて、2007年1月、台湾の立法院は、女性差別撤廃条約に署名すると決定し、同年2月には、陳水扁総統(当時)が加入書に署名しました。外交部はそれをニューヨークの国連に送りましたが、3月、国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長は、中華人民共和国が国連における中国の唯一の合法的代表である(国連第2758号決議文)という理由で、台湾の加入を拒否しました(3)

 2009年、台湾政府は、条約加盟国に義務づけられている、条約の実施状況に関する国家報告も完成させました(聯合國『消除對婦女一切形式歧視公約』中華民國(台灣)初次國家報告)。けれども、条約を実現するための国内法が整備されていなかったので、女性たちが条約を国内で活用することはできませんでした。

「女性差別撤廃条約施行法」の内容

 今回成立した、女性差別撤廃条約施行法は、以下のような内容です(抄訳)(4)

第1条 国連の1979年の女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women)(以下、条約と略称)を実施して、女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃し、女性の発展を促進し、ジェンダー的人権の保障とジェンダー平等の促進を実現するために、この法律を制定する。

第2条 条約が掲げている、ジェンダー的人権を保障し、ジェンダー平等を促進する規定は、国内法として効力を持つ。

第3条 条約の規定を法規と行政措置に適用する際には、条約の趣旨と国連女性差別撤廃委員会の条約に対する解釈を参照しなければならない。
 [→この第3条によって、条約本文のみならず、女性差別撤廃委員会が出す「一般的勧告(general recommendations)」と「最終コメント(concluding comments)」(5)も効力を持つことになる (婦女新知基金会・曾昭媛さん) そうです。]

第6条 政府は、条約の規定により、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃の報告制度を設け、4年ごとに国家報告を提出し、関係する専門家・学者および民間団体の代表を招いて審査させなければならず、政府は審査意見を検討・研究して、その後の政策をおこなわなければならない。

第8条 各級政府機関は、条約に規定された内容にもとづいて、主管している法規と行政措置を検討し、条約の規定に合致しない規定があれば、本法の施行後3年以内に法規の制定・修正・廃止および行政措置の改善を完成させなければならない。

付帯決議2項
 ・政府は条約の規定により、女性に対するあらゆる形態の差別撤廃の監督機構を設立しなければならない。その設置の要点は、行政院・立法院・司法院(wikipediaによる説明)・監察院(wikipediaによる説明)・考試院(日本で言う人事院、wikipediaによる説明)がこれを定める。
 ・(……) 行政院・立法院・司法院・監察院・考試院は(……)条約の規定により、4年ごとに国家報告を提出して、国連あるいは条約締結国の専門家・学者を招いて審議させければならない。政府は審議の後の結論的意見にもとづいてフォローアップ・実行の仕事を完成させなければならない。


女性団体の反応

 民間台湾CEDAW実施推進連盟は、この法律が民間団体が要求してきた以下の点を取り入れたことを歓迎しています。
 ・女性差別撤廃条約と国連の最終コメントに国内法としての効力を持たせた。
 ・政府は4年ごとに国家報告を出す。
 ・適用機関を、行政院以外に、立法・司法・監察・考試の4院とその所属機関にまで全面的に広げた。
 ・5院が女性差別撤廃の監督機構を設置し、その設置要点は、各院によって定める(6)

 尤美女弁護士は、「2007年に総統がCEDAWに署名したとはいえ、国連の事務総長が加入を拒絶したために、民衆や弁護士が裁判所で訴訟をしたり、裁判官が判決を書いたりするとき、直接条約の条項を引用することができなかった。台湾がCEDAW施行法を制定した後、来年の元旦からは、人民が基本的権利を侵害されたときは、条約を引用してその権益を請求することができるようになる」と語りました(7)

 台湾は女性差別撤廃条約には加入していないにもかかわらず、加入国と同じように条約を国内に適用し、実施状況を審議・監督するシステムを作る法律を女性団体が制定させたことには、いささか驚かされます。

 もっとも、台湾は、昨年、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」という2つの国際人権規約に署名するとともに、それらの「施行法」も制定したのですが、その後、この2つの国際人権規約は必ずしも生かされていないようです。陳瑤華さん(台湾女性学学会常務幹事)は、「2つの規約の施行法が発効してから今までに、裁判所が2つの規約を判決の基礎にした判例を見たことがない。国内で起草された法案も、2つの規約を法案の基礎にしていない。まして2つの規約の一般的勧告を引用して、法令に対して緻密な修正をしたことはない」(8)と言っています。

 ひょっとしたら、台湾政府がこうした条約や規約に署名した背景には、国際的地位の向上をめざす意図のようなものがあって、それらの規約の内実化はあまりしていない、という面があるのでしょうか? といっても、女性差別撤廃条約や2つの国際人権規約を批准している日本(国際人権規約に関しては重要な点を留保しているが)も、それらの条約・規約は裁判や法律にあまり生かされていないと思いますから、いずれにしても、今後の闘いが重要だということだと思います。

 たとえば、曾昭媛さん(婦女新知基金会)は、国連の女性差別撤廃委員会が民間からシャドウレポートを出すことを歓迎していると述べ、民間の観点から見て、たとえば女性の労働権については、以下のような問題があるので、こうした点を監督していきたいと言っています。
 (1)妊娠した女性を差別する現象が依然としてかなり普遍的で深刻である。条約の第11条は「妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているかいないかに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止する」としており、台湾も、「ジェンダー工作平等法」で妊娠差別を禁止している。しかし、女性がそれを訴えるメカニズムがはっきりせず、違反した使用者に対する制裁の効果も限られている。それゆえ、関連する行政措置(労政人員の訓練不足、民衆に対する宣伝不足など)を改善するよう検討しなければならない。
 (2)一部の外籍配偶者は、居留権はあるが、労働権はない。条約の第11条に「すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利」が規定されているが、現行の移民法の解釈と施行細則では、移民女性は、配偶者を失ったり離婚したりして、自ら産んだ子がいなければ、労働権を失う。基本的人権の観点から言って、居留権がある者には、労働権があるべきである。
 (3)トランスジェンダーと同性愛者が労働権を保有するのは容易でない。馬偕病院の事件(本ブログの記事「女装して勤務した従業員を解雇した病院に罰金5万元――台湾初のトランスジェンダーの雇用差別に関する裁定」参照)において、事件の当事者は、つらく苦しい訴えを終えても、まだ仕事を失っているという現実に直面している。国連の女性差別撤廃委員会が2010年10月22日の47回会議で出した「一般的勧告(General Recommendation)」28号は、女性に対する差別は、性的指向と性自認にもとづく差別も含むことを肯定した(9)。このたび成立した施行法の第3条により、政府は、国連の解釈にもとづいて関連する措置の修正を検討し、できるだけ早くトランスジェンダーと同性愛者の人々に差別のない友好的な環境を作り上げるべきである(10)


(1)CEDAW上路 保障婦女人權」『台湾立報』2011年5月24日、「禁歧視婦女公約 明年施行」『自由時報』2011年5月21日など。立法院の前に、行政院が可決した際の状況については、台北駐日経済文化代表処のサイトにも出ています(「行政院で『女性差別撤廃条約施行法』の草案が通過」台湾週報2010/5/14台北駐日経済文化代表処サイト)。
(2)現在では、以下の団体が、参与または署名しています。
 ・参与団体:台灣婦女團體全國聯合會、台灣女性學學會、婦女新知基金會、中華民國基督教女青年會協會、勵馨社會福利事業基金會、東吳大學人權學程、台大婦女研究室、東吳大學張佛泉人權研究中心、展翅協會、世界和平婦女會、台灣女性影像學會、台北市婦女新知協會
 ・署名団体:台北市雙胞胎協會、主婦聯盟環境保護基金會、現代婦女基金會、中華心理衛生協會
(3)以上については、「【民間推動台灣落實CEDAW 聯盟】大事記(PDF)」(婦女新知基金会サイト)参照。なお、パン事務総長が「台湾は中華人民共和国の一部である」と発言したため、台湾の国連作業グループは、「国連第2758号決議文は国連における中国の代表権問題を解決したに過ぎない。台湾2300万人の権利の問題は解決しておらず、さらに台湾が中華人民共和国の一部とは言及していない。パン事務総長の拡大解釈は理解できず、受け入れることもできない」と抗議しました(「台湾国連作業グループ、パン国連事務総長の解釈は受け入れられない」台湾週報2007/7/6台北駐日経済文化代表処サイト)。
(4)全国法規資料庫」には、まだ掲載されていないようですが、台灣婦女團體全國聯合會「民間婦女團體說明如何監督政府落實『消除對婦女一切形式歧視公約施行法』」(苦労網2011/05/24)や「女人真的要CEDAW了! 歡迎五院,全面推動「消除對婦女一切形式歧視公約」記者會 [會後新聞稿](word)」の文末に原文があります。
(5)「一般的勧告」と「最終コメント」について、赤松良子・山下泰子監修、日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク編『日本女性差別撤廃条約とNGO』(明石書店 2003年)は、次のように解説しています(13頁)。
・「一般的勧告」――女性差別撤廃委員会は、条約締約国から提出されるレポートを検討し、「一般的勧告」を出すことができる。「一般的勧告」によって、各国に共通した取り組み課題を明確にするほか、条約の解釈についての委員会の見解を明らかにするなどの意義がある。
・「最終コメント」――各国から国連に提出された、条約の実施状況についてのレポートを、女性差別撤廃委員会が審議した後、それぞれの国に課題を明確にするために出すコメント。他の人権条約機関の「勧告」「最終所見」「最終見解」「総括所見」と同一の性格を持っている。
(6)女人真的要CEDAW了! 歡迎五院,全面推動『消除對婦女一切形式歧視公約』」婦女新知基金会サイト。
(7)(4)の2つの記事参照。
(8)陳瑤華「人權保障如何與國際接軌呢?(word)」婦女新知基金会サイト
(9)原文には、「交差性(intersectionality)が、第2条[=女性に対するあらゆる形態の差別の禁止]に含まれる締約国の全般的義務の範囲を理解するための基本的概念である。セックスとジェンダーに基づく女性差別は、人種、民族、宗教、信仰、健康、地位、階級、階層、性的指向、性自認などの、女性に影響を与える他のファクターと不可分に結びついている。セックスまたはジェンダーに基づく差別は、そうしたグループに属する女性に対して、男性とは異なった程度または方法で影響を与えるかもしれない。締約国は、そうした交差的な差別の形態および女性に対して何重にも否定的なそれらの影響を法律的に認識し、防止しなければならない。締約国は、そうした現象をなくすための政策と計画を採用し遂行しなければならない」(CEDAW/C/2010/47/GC.2の18。中国語訳は「《消歧公约》委员会拟订包括性倾向与性别身份的一般性建议」)とあります。つまり、単純に「女性差別撤廃条約は、性的指向や性自認の問題も扱う」と言っているわけではなく、女性差別は、性的指向や性自認などに基づく差別とも不可分に絡み合っているのだから、女性差別をなくすには、それらに対してもきちんと対処することが必要だ――と述べているのだと思います。
(10)婦女新知基金會資深研究員 曾昭媛 發言稿(word)」婦女新知基金会サイト

国務院女性児童工作委員会、CEDAW最終コメントについてのシンポ開催

 さる5月25日、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の最終コメントに対する国家のフォローアップアクションに関するシンポジウム(関于聯合国審議中国執行《消歧対婦女一切形式公約》報告結論意見国家后続行動研討会)が北京で開催されました(昨年8月の最終コメントの内容についての本ブログの記事)。

 これは国務院の女性児童工作委員会(婦女児童工作委員会。婦児工委)の事務局が組織して開催したもので、婦児工委を構成する30あまりの部門が参加しました。さらに、全国婦連の女性研究所所長の譚琳と副所長の劉伯紅も、NGO(非政府組織)の代表として参加しました。

 このシンポジウムの趣旨について、全国婦連書記処書記で副主席の趙少華は、各関係部門が最終コメントと結びつけて政策などを制定し、活動を改選するという基礎のうえに、意思疎通をつよめ、政府の各部門の間や国連の在華機構、および社会の関連する業界や非政府組織との間で多角的な協力をいっそう探求し、推進することにあると述べました。

 このシンポでは国務院の女性児童工作委員会の事務局の人のほか、政府の関係部門の責任者が活動の状況を発言しました。
 シンポの参加者は、女性差別撤廃委員会(CEDAW)の最終コメントや、それと中国の実際の状況との関係ついても議論をかわしました。NGOの代表は、最終コメントを遂行する過程において、政府の各部門や国連の機構との協力を強めて、中国のジェンダー平等の事業推進のために提案をしたいということを述べました。

 中国の政府機関がこのようにCEDAWの最終コメントのフォローアップをめぐってシンポジウムをしたのは、おそらく初めてです。
 ただし、このシンポジウムの参加者は、政府関係者が主であり、参加したNGOも、全国婦連の女性研究所所という、やや政府よりの機関です。ですから、今後は、NGOからの発言にもあったように、最終コメントを生かすためにも、NGOの意見をもっと取り入れていくことが必要であるように感じました。

資料
蔡一平「関于聯合国審議中国執行《消歧公約》報告結論意見国家后続行動研討会在京召開」(2007年5月29日)
「性別平等有助実現全面建設和諧社会 関于聯合国審議中国執行《消歧公約》報告結論意見国家后続行動研討会在京召開」『中国婦女報』2007年5月28日

女性差別撤廃委員会と中国のNGO

 2006年8月に開催された女性差別撤廃委員会第36会期には、中国の女性NGOなども参加しました。その報告が最近相次いで掲載されましたので、その内容を簡単にお伝えします。

中国大陸の女性NGO

 まず、中国のNGOである家庭内暴力反対ネットワークの張祺さんの報告が、同ネットワークのホームページ掲載されています(張祺「消歧委員会第36届会議非政府組織監察員総結報告」)。

 今回、中国からこの会議に参加した女性・ジェンダー関連のNGOは、中国女性研究会(中国婦女研究会)、家庭内暴力反対ネットワーク(家庭暴力反対網絡)、女性メディアウォッチネットワーク(婦女伝媒監測網絡)、ジェンダー資源グループ(社会性別資源小組)、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター(北京大学法学院婦女法律研究与服務中心)、農家女百事通雑誌社の6つです。

 上の6つのNGOは、ニューヨークに行く前に準備会をしています。そこで、女性差別撤廃委員会とNGOとの会談における発言テーマも相談したそうです。その結果、劉伯紅さんと蔡勝さんがNGOを代表して、女性の政治参加の問題と農村女性・移住労働者の問題について発言することになったとのことです。
 今回は、中国大陸の女性NGOは、カウンターレポートは出しませんでした。しかし、中国女性研究会と北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターが、それぞれ座談会をやって、女性差別撤廃条約の執行情況に対する国内のNGOの評価について意見交換をしたとのことです。

 張祺さんは、今回、女性差別撤廃委員会の会議に参加して、だいたい以下のようなことを感じたそうです。
 ・実際に参加したことによって、女性差別撤廃条約の審議の過程やNGOの果たす役割がわかった。
 ・国内では女性差別撤廃条約への理解がまだ少なすぎる。女性の組織や活動家は、女性差別撤廃条約を直接活用することは少ない。女性差別撤廃条約は、女性の人権の基準を提供するだけでなく、全世界の女性組織の交流と協力の場を提供し、女性の人権状況に対する全世界的な世論の空間を作り出しているのだ。
 ・女性差別撤廃条約は政府間の取り決めだけれども、条約を現地の女性運動に利用するためには、民間の女性団体が積極的な行動主体にならなければならない。実際、香港の女性団体は、法律や政策を条約に適合させたり、政府や司法機関を監督したりしている。
 ・今回、中国は、政府の代表団も、NGOのウオッチャーも、参加人数がこれまでの記録を破った。このことは、政府が女性の権利に対して重視の度合いを強めつつあり、女性のNGO組織の力も強まりつつあることを示している。

アメリカの「中国人権」

 また、アメリカの人権団体、「中国人権」(Human Rights in China:HRIC。中国大陸出身の人々が1989年、中国における人権擁護のために設立した組織)は、事前にカウンターレポートを出しました(Implementation of the Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women (CEDAW) in the People’s Republic of China)。
 その執行主任の譚竟嫦(Sharon Hom)さんは、女性差別撤廃委員会の会議で、同レポートについて簡単に紹介しました。

 譚さんは、その際、カウンターレポートで指摘した「核心の問題」として、以下の2点を述べました。
1.情報が封鎖されていて、透明度と情報へのアクセス権が欠乏している。この点は、女性差別撤廃委員会が中国の条約の履行情況を審議する上で不利である。たとえば、女性や女児の誘拐・人身売買、人工中絶や幼児殺に関する統計数字も不明である。情報を得るルートが欠乏していることは、政府の信頼性を根本的に弱めており、また、民間の活動家や一般民衆、メディアが女性の地位向上に貢献するためにも不利である。
2.国内法と国際法の間にギャップがある。たとえば、「差別」の概念の明確な定義がない、「人身売買」の定義が国際規準に比べて弱い(売春との関係だけしか規定しておらず、強制的な労働・サービスが含まれていない)、「家庭内暴力」の定義が北京女性会議の「行動綱領」に比べても狭い、中国の法律体系には適切な履行のメカニズムがないなど。
 (以上、譚竟嫦「中国人権対中国政府第五和第六合併定期報告所作的評估和建議──在聯合国“消除対婦女一切形式歧視委員会”第36届会議上的発言」2006年8月7日[英語中国語])

 こうした内外の力は、現在ではまだ小さなものですが、中国でも女性差別撤廃条約が生かされることにつながっていくと思います。

女性権益公益弁護士ネットワークの挑戦

 女性権益公益弁護士ネットワーク(2007年1月~)のサイトが、この3月に開設されました(「婦女権益公益律師網絡」)。
 このネットワークは、Open Society Instituteの資金援助を受け、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターが具体的に管理・実施するプログラムです。2007年1月に開始され、長期的におこなわれるもののようです。

 「公益訴訟」の定義は論者によってさまざまのようですが、このサイトではおおむね、個人の利害だけにかかわるのでなく、ある集団全体(あるいは社会全体)にとって意義のある訴訟という、広い意味で用いられているようです。
 たとえば、「世界の著名なジェンダー公益訴訟の事例」として挙げられているものを見ると(「世界著名性別公益訴訟案例選」)、日本の訴訟では、住友セメント事件(結婚退職制)と日産自動車事件(差別定年制)の2つが挙げられています。
 ただし将来的には、「公益訴訟制度」として、個人でなく団体が訴訟を起こせるような制度も視野に入れているようです。

 さて、このネットワークは、次の3つの機能を持つとのことです(「婦女権益公益律師網絡介紹」)。
 1.公益訴訟の実践。具体的には、ある領域(たとえば農村の女性の土地権益)について、全国各地で同一の類型の訴訟をすることによって、社会的な(立法部門と法律執行部門を含めて)関心を集め、立法と政策の改革を推進する。
 2.公益弁護士の隊伍の養成。訓練・訴訟の実践・シンポジウムなどを通じておこなうようです。
 3.公益訴訟の理論的探求と研究。そのための学習と交流の場になる。

 具体的には、以下の活動をするとのことです。
 1.サイトの開設。
 2.『女性権益公益弁護士ネットワーク月報』の発行。
 3.公益法と公益訴訟の研修。
 4.女性の権益の5つの重点領域(女性労働者の権益、農村女性の土地権益、家庭内暴力、職場の性差別、職場のセクハラ)で25の公益訴訟事件を取り扱う。
 5.「中国女性権益公益訴訟年次フォーラム」を今年終わりか来年初めに開催する。
 6.「女性権益公益弁護士年次人物」の選出

 このサイトには、『女性権益公益弁護士ネットワーク月報』もすでに3期収録されています(「網絡月報」)。
 第1期は、発刊の言葉などを収めています。
 第2期は、職場でのセクハラ事件についての特集です。
 第3期は、公益訴訟に関する、さまざまな専門家の見解が収められています。「公益訴訟とは何か?」「なぜ公益訴訟が必要なのか?」「誰が公益訴訟を起こすのか?」「どのようにして公益訴訟をおこなうのか?」などの点について論じたあと、「結語」で、公益訴訟の意義は単に裁判に勝つことだけでなく、弱者層が声をあげ、人々を立ち上がらせ、教育し、長期的に社会を変えていくことにあることが強調されています。

女性差別撤廃条約と婦女権益保障法の研修プロジェクト

 今年1月から12月までの間、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターが、中国女性裁判官協会と河北省婦連と雲南省婦連の協力を得て、「政策制定者と法律執行者に対する『女性差別撤廃条約』および『婦女権益保障法』研修」プロジェクトをおこなっています。同センターのサイト内には、このプロジェクトの専用のページも設置されています(「《消除対婦女一切形式歧視公約》《婦女権益保障法》培訓項目」)。
 このプロジェクトは、EUの小型人権プロジェクトの事務局との契約にもとづき、資金援助を受けておこなわれるもののようです(「進行了項目執行的前期準備工作」)。

 上で言う「政策制定者」とは、具体的には、人民代表大会、婦女連合会、労働と社会保障、労働組合、教育などの部門の関係者を指しています。また、「法律執行者」とは、各クラスの裁判所、労働仲裁委員会などの関係者を指しています。
 そうした政策制定者や法律執行者の、女性差別撤廃条約と婦女権益保障法に対する認識と理解を高め、同条約と同法の運用を促進することが、このプロジェクトの目標です。
 具体的には、1.アンケート調査をして、統計と分析をおこなう、2.上で述べた関係者の研修をする、3.シンポジウムを開催する、4.関係メディアで宣伝・報道、5.執行および研修の状況の研究報告の作成を目標にしています。

 このプロジェクトをおこなう理由としては、中国は女性差別撤廃条約を批准し、婦女権益保障法を制定したとはいえ、立法の面でも、法律執行の面でも問題点が多いこと、「とくに法律の執行と司法実践において、法律の執行をする者が婦女権益保障法を法律的に運用することがきわめて少なく、国内法のいささかの不足と空白に対しても、法律の執行をする者が女性差別撤廃条約の原則と精神の運用を試みることがきわめて少ない」ことが挙げられています。
 また、現在、各省・市で婦女権益保障法の施行規則が制定ないし修正中であることや、婦女権益保障法に対する最高人民法院の司法解釈の起草が進行中であることも、このプロジェクトをおこなう一つの理由として挙げられています。

 このプロジェクトはそれほど大規模なものではありません。研修は9回(北京2回、河北の石家荘で4回、雲南の昆明で3回)おこなわれる予定ですが、毎回2日間で40人に対して研修をおこなうとのことであり、合計しても360人が研修を受けるにとどまります(以上は、「《消除対婦女一切形式視公約》及《婦女権益保障法》培訓項目介紹」より)。

 けれども、上のプロジェクトは、昨年8月に国連の女性差別撤廃委員会が、中国では「女性差別撤廃条約は裁判所でまだ援用されたことがない」と指摘し、「女性差別撤廃条約や一般的勧告や関連する国内法を、裁判官・弁護士・検察官などの司法人員の法制教育と研修の内容にする」ように勧告した最終コメント(英語[Concluding comments of the Committee on the Elimination of Discrimination against Women]中国語[消除対婦女歧視委員会的結論意見]。それぞれ11.と12.の箇所参照)に対応した、たいへん意義のあるものだと思います。

 また、婦女権益保障法についても、李秀華さんが調査したところ、裁判官の80%は、婦女権益保障法の内容をよく理解しておらず、たとえば離婚事件の際、判決や調停で使う法律的文献は、婚姻法と民法と最高人民法院の司法解釈だけだったそうです(李秀華「特殊婦女群体婚姻家庭権利之実証研究」劉伯紅主編『女性権利-聚焦《労動法》和《婚姻法》』当代中国出版社、2002年、276頁)。こうした状況を見ると、婦女権益保障法についての研修も、立法者のみならず、法律執行者に対しても重要だと思います。

 さて、具体的に、今年1月の河北省石家荘での研修を見ると、以下のような内容でした。
1)「女性差別撤廃条約」の原則・精神・主な内容、署名の背景と意義
2)「婦女権益保障法」の主な内容、関係部門の「婦女法」執行における職責と任務
3)「河北省『婦女法』施行規則」の修正意見の討論
「在河北省石家荘市挙辨了CEDAW和婦女法的省級培訓班」
 1)~3)からは、中国ではあまりなじみがない女性差別撤廃条約についての話を聞いたというだけでなく、実践的・主体的な研修だったことがうかがえます。

『ジェンダー平等と法律:研究と対策』出版

 今年1月、譚琳・姜秀花主編『ジェンダー平等と法律:研究と対策(社会性別平等与法律:研究和対策)』(社会科学文献出版社 2007年)が出版されました(書虫ホームページにおけるこの本のデータ)。

 内容は以下のとおりです(訳語は厳密ではありません)。
 郭慧敏「ジェンダーと女性の人権──あわせてジェンダー的な法律分析の方法を論ず」
 周安平「ジェンダーと法学研究」
 尹小栄「中国女性の権益保護の探究──法源の視点から」
 彭希哲「社会政策の手段を運用し、ジェンダー平等を推進する──中国の年金制度の分析を例に」
 陳衛民・李瑩「中国の都市労働者の年金の性別の差異に対する定年年齢の影響の分析」
 王竹青・呉道霞「女性の専門技術者の定年問題の分析」
 劉軍ほか「男女の公務員の同一定年問題に関する討論」
 潘錦棠「中国の女性労働者保護の制度と現状」
 李程「就労における容貌差別問題の法律的規制の初歩的探求」
 郭慧敏・段燕華・高濤「労災法におけるジェンダー的盲点と差別──“妊婦の労災による胎児の損害”の事例分析」
 林金貴「家政婦の損害類型と救済メカニズムの研究」
 陳桂蓉「非公有制企業の女性労働者の特殊な権益の保護の現状と対策の提案──福建省の製靴業を例に」
 蒋月・潘峰・陳宝貴「都市の外来女性の権益保障の問題と対策──福建省厦門市からの報告」
 李鳳章「女性の土地権益の損失の制度的原因と保護制度の創設の分析」
 郭江平「嫁入りした女性の土地請負権の流失の原因および法律的保護」
 董江愛・陳曉燕「農村女性の土地権益擁護の法律的思考」
 李敏・程洪宝「法律的視角から農村の嫁に出た女性の土地権益の保護を論ず」
 王海燕・彭紅艶「法社会学の視点から見た家庭内暴力」
 郭英華・潘「家庭内暴力の法律的救済の手段の初歩的探求」
 王文怡「中国が家庭内暴力防止法を制定する必要性と合理性」
 付曉娟・雷曉坤「中国の反家庭内暴力立法の現状および思考」
 瀋奕斐「『セクシュアル・ハラスメント』概念の解析」
 郭慧敏・于慧君「『セクシュアル・ハラスメント』の法律的コストの性別配分──『婦女権益保障法』の法律経済学的分析」
 張栄麗「セクシュアル・ハラスメント防止の立法対策の研究」
 胡波「セクシュアル・ハラスメント立法に関するいくつかの思考──あわせて『婦女権益保障法』の関係条項を評す」
 劉明輝「反セクシュアル・ハラスメント立法における義務主体の欠如」
 段成鋼・彭迪「セクシュアル・ハラスメントの予防と制止の地方立法の浅議」
 林金貴「強姦犯罪における生育役割の欠如の法律的探究」
 冀祥徳「婚姻内強姦の犯罪化の立法の変更の提案」
 張弦「中国の婚姻内強姦の法律的救済・試論」
 欧陽和霞「生育保険制度の女性への配慮と男性の責任」
 [イ+几]興玉「生育保険制度の立法促進に関するいくつかの思考」
 欧陽曉安・葉国平「離婚損害賠償制度の法律的適用を論ず」
 張美萍「現行の離婚時の財産分割制度の分析と思考──江蘇省儀徴市陳集法廷の農村離婚事件の調査」
 張萍「ある事例から中国の新『婚姻法』における夫婦の共同財産の範囲を考える」
 張国舗「配偶権制度に対する反省と立法の完全化の提案」
 姜遠志・姜元奎「新『婚姻法』の夫婦の相互の忠実義務の規定を評す」
 肖巧平「中国『刑法』の関係規定のジェンダー的解読」
 張英麗「性犯罪事件の被害者の精神的損害賠償の研究」
 劉余香「調和社会の背景の下での、虐待されて夫を殺した女性の合法的権益の保護──虐待されて夫を殺した女性の無罪判決あるいは刑罰減免の法律的根拠」
 張雪梅「児童に対する性侵犯に関する探求」
 蔡一平「女児と青年女性の労働搾取を目的にした人身売買に反対するメカニズムの探求」
 袁娥・楊鎮宇「辺境民族地区の女性の人身売買犯罪の研究──雲南省文山のチワン族・ミャオ族自治州を例に」
 欧陽梅「中国の高等教育の法学の教育と研究へ女性法学の導入を推進する対策」
 郭慧敏「民間の女性の法律的援助の問題の探求」
 何貴忠「新『婚姻法』の五年の実践の評価と分析」

 各論文はそれぞれ10ページ程度です。
 この書物は、『婦女研究論叢』の編集部が中心になってまとめたものです。そのせいか、私も『婦女研究論叢』ですでに目にした覚えのある論文がかなりありました。『中華女子学院学報』などの他誌で目にしたものもあります。ただし、すべてが発表済みのものかどうかは確かめていません。
 なお、すでに発表されたものも、原文がそのまま収録されているわけではありません。その後出版された参考文献を付け加えている論文もあります。ただし全体としては原文より短かくしているものが多数のようです。「フェミニズム(女性主義)」が「ジェンダー(社会性別)」に変えられている(肖巧平論文)など、少し気になる変更もありました。
 しかし、いずれにせよこの本は、現在の中国の法律をジェンダー平等の観点から論じた論文をもっとも多く集めた単行本には違いないように思います。

国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント

 8月7日から25日まで、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の36回会期が開催されていましたが、その最終日の25日、女性差別撤廃委員会は、中国政府の第5次、第6次レポートに対して以下の最終コメント(勧告など)を出しました。

 ご存じの方も多いと思いますが、女性差別撤廃条約を批准した国は、条約の遂行状況を国連に定期的に報告しなければなりません。その報告に対して、どの国に対してもコメントが出されるわけです。
 日本に対しては2003年に出された最終コメントが、コース別雇用が男女差別の隠れみのになっていることや、一般職やパート・派遣などの賃金が低いところで女性が多く働いていることを問題として指摘し、是正を勧告したことは記憶に新しいと思います(詳しくは、日本女性差別撤廃条約NGOネットワークのHPの「第29会期女性差別撤廃委員会に関する活動(2002年~2004年)」の欄を参照してください)。

 今回の中国に対する最終コメントの全文は、ここをクリックしてください(pdfファイル。英語)。[追記]中国語版もupされました(うまく開けないときは、36回会期のページから開いてください)。前回の1999年の中国政府に対する最終コメントは、CEDAWのHPでは英語版しか掲載されていなかったのですが、今回は違うようです)。

 以下では、今回どういう点が問題にされたのか、大体の内容を紹介します(見出しは私が付けたものです)。ただし省略している部分がかなりありますし、翻訳も粗いものです。何かに使われる場合は、ナンバリングをもとにして直接原文に当たられるようお願いいたします(2011年6月28日、省略した部分を減らすとともに、翻訳を少し改善しましたが、なお省略している個所は残っています)。

肯定的側面

 5.女性差別撤廃委員会(以下、「委員会」と略す)は、2005年の婦女権益保障法改正、2001年の婚姻法改正(家庭内暴力禁止規定導入など含む)、2002年の農村土地請負法(結婚して家を出たり、離婚した女性の土地の割当ての規定など含む)の公布、2006年の義務教育法改正、中国女性発展要綱(2001-2010年)を歓迎する。
 6.(香港について)
 7.(マカオについて)

主要な関心事項と勧告([ ]内の見出しは、遠山による)

[女性差別の定義]
 9.委員会は、中国の国内法には、女性差別撤廃条約の第1条と合致した、直接差別と間接差別の両方を含む「女性に対する差別」の定義がまだ含まれていないことを引き続き懸念する。この点については既に前回の最終コメントでも述べたにもかかわらず、そうした定義は、2005年に改正された婦女権益保障法にも含まれていない。
 10.委員会は、上の点を改めるよう繰り返し勧告する。

[女性の権利の法的保障、女性差別撤廃条約の国内での活用]
 11.委員会は、中国政府が女性と子どもの権利の保護のための特別の法廷を設立したことを歓迎する一方、効果的な法的救済の規定がないために、女性が差別を受けた場合に司法へのアクセスが依然として限られていること―とくに農村では―を懸念をもって留意する。また、裁判所で女性差別撤廃条約がまだ活用されたことがないように思われることを留意する。
 12.委員会は、女性差別撤廃条約や一般的勧告や関連する国内法を、法学教育と司法職員(裁判官、弁護士、検察官を含む)の訓練の必修事項にするよう保障することを奨励する。委員会は、締約国に、女性が効果的な法的救済を受けられやすくし、また、そうした差別に対する救済策を女性自身が使えるように、意識を向上させ、敏感になる措置を取るように求める。

[統計]
 13.委員会は、中国政府の報告には、性と地域、民族別のデータ、女性の状況と男性の状況を比較したデータが十分に含まれておらず、そのため、条約がカバーするすべての領域と時代的変化という面で、女性の現在の状況を理解することができなくなっていることを懸念する。委員会は、さらに、そのような詳細なデータが欠けていたり、限られていたりすることによって、締約国自体が、政策や計画を設計・実施する上や、条約を広大な国土全体で執行した効果を監視する上でも障害になることを懸念する。
 14.上の点を改めるよう勧告する。

[経済の成長・改革と男女の格差の拡大]
 15.委員会は、中国が近年経済成長を達成して貧困率を減少させたことは評価するが、その利益配分は都市と農村で不均等であり、女性は男性より利益を得ていないことを懸念する。また、経済の再構成やサービスの脱中央集権化がジェンダー特定的な結果をもたらしていること、とくに女性の雇用や健康、教育に影響していることを懸念する。
 16.委員会は、中国政府が、経済の成長と変化が女性に与える影響の測定を強化し、社会的支出(social spending)の増額を含めた方策をとって、経済成長や貧困率の減少から女性が男性と同等に利益を得られるようにするよう勧告する。経済の再構築が女性、とくに農村や辺境に住んでいる人々や少数民族にマイナスの結果を与えない方策をとるように勧める。

[男女の役割のステレオタイプ]
 17.委員会は、家族と社会における男女の役割と責任に関するステレオタイプが根強く存続していることを懸念する。それは、性別の不均衡や性別に基づく中絶をもたらす男児選好に反映している。委員会は、そうした広く行き渡っている態度が女性の価値を下げ、彼女たちの人権を侵害し続けていることを懸念する。
 18.委員会は、中国政府が条約の第2条(f)と第5条(a)にもとづいて、社会における男女の役割に関する伝統的なステレオタイプを克服する包括的なアプローチを取るように求める。そうしたアプローチは、法的・政策的および意識向上の方法を含んで行われなければならず、公的機関と市民社会を包括し、全住民、とくに男性と少年たちをターゲットにしなければならない。それは、テレビやラジオ、出版物を含むさまざまなメディアを活用しておこなわれなければならない。委員会は、中国政府に、2000年以来おこなっているカリキュラムや教科書の改革をジェンダーに敏感な視点で評価し、女と男の平等の原則を明確に述べることを保証するよう求める。

[人身取引、売春]
 19.委員会は、中国政府が、地域間協力や国際的な協力を含めて、女性と子どものトラフィッキングに取り組んでいることを認めるけれども、「刑法」における女性と子どものトラフィッキングの定義が、売春による搾取を目的にしたものに限定されており、国際的な定義と一致していないことを懸念する。また売春を犯罪化し続けていることは、ひもやトラフィッカーの起訴と処罰よりも、むしろ売春する者に不釣り合いに打撃を与えることに懸念を表明する。また売春する者が法的な手続きなしに行政的に拘留される危険があることにも懸念を表明する。さらにトラフィッキング(とくに国内のトラフィッキング)の広がりについてのデータと統計的インフォメーションが不十分であることも懸念する。
 20.委員会は、締約国が、女性と女児のすべての形態のトラフィッキングと闘う努力を強めるように勧告する。委員会は、締約国に、国内法の定義と国際的な定義を一致させ、また、人身取引に反対する国家行動計画の草案を迅速に完成させ、採択し、履行するよう強く促す。また、委員会は、売春女性の社会復帰と社会への再統合のための措置をとり、売春から抜けられるように他の生活をする機会を増やし、そうするように彼女たちに援助をし、また、正当な法的手続きなしに女性を拘留することを防止するように強く促す。委員会は、締約国に、地域間および国内のトラフィッキングの詳細なデータを系統的に収集し、被害者の年齢と民族的背景を説明するよう呼びかける。

[女性に対する暴力]
 21.委員会は、締約国が2001年に改正された「婚姻法」で家庭内暴力を明文で禁止し、女性に対する暴力を禁止するその他の措置をとったことを賞賛する。委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な全国的法律(被害者に司法に対するアクセスを与え、加害者を処罰するもの)がないことと、女性に対するあらゆる形態の暴力に関する統計的なデータがないことを引き続き懸念する。また、委員会は、収容所(とくにチベット)において女性に対する暴力事件が報告されていることも懸念する。
 22.委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な法律(女性と女児に対する、公私の領域におけるあらゆる形態の暴力を、刑法によって処罰できる犯罪を構成することを保障するもの)を採択するよう強く促す。委員会は政府に、一般的勧告19にもとづいて、女性と女児の暴力の被害者に即時の救済と保護を与えるよう求める。委員会は、被害者の司法と救済へのアクセスを高める――たとえば、司法官僚(裁判官、弁護士、検察官を含む)がジェンダーに敏感な視点で女性に対する暴力に対処する能力を高めたり、収容所における女性に対する暴力事件を含めて、女性の要求を確実に迅速に調査したりすることを通じて――ことを奨励する。委員会は、また、女性に対するすべての形態の暴力に関するデータ収集のシステムを強化して、次回のレポートにそれを含めるよう求める。

[暫定的特別措置の活用]
 23.委員会は、締約国が、条約の第4条第1款と委員会の一般的勧告25にもとづいて、暫定的特別措置を十分活用して、現在の条約が規定しているすべての領域で、できるだけ早く女性が事実上の平等を獲得できるようにしていないことを懸念する。
 24.そうするように勧告する。

[女性の政治参加]
 25.委員会は、中国政府が採用した、すべての政治および公的生活への女性の代表を保障する条項を歓迎しつつも、女性の代表の低い水準(少数民族女性、公的・政治的レベル、政策決定をする職位、外交部を含む)が続いていることを懸念する。また委員会は、提案されている村民委員会組織法の改正が、村民委員会への女性の平等な参加を要求していない点も、懸念をもって留意する。
 26.委員会は、締約国が、暫定的特別措置を含めて、選挙で選ばれる機構と任命される機構に女性が迅速に平等かつ十分に選出されるように、地方的・全国的レベルで、また、外交部を含めた政府のすべての部局で、適切な数値的な目標・標的・タイムテーブルを作成するなど、持続的な措置をとるように奨励する。委員会は、締約国が、現在と未来の女性の指導者のために、指導力と交渉能力に関する研修プログラムをおこなうよう勧告する。

[農村女性]
 27.委員会は、農村女性の、教育や保健、雇用、リーダーシップへの参与や土地などの財産における不利な地位にひき続き懸念を持つ。また、委員会は、農村の少数民族女性(チベット女性を含む)の状況を懸念する。彼女たちは、性別・民族・文化的背景・社会的経済的地位などによる何重もの形態の差別に直面している。委員会は、農村の女児の文盲率と中途退学率が高いことを引き続き憂慮する。委員会は、農村地区の保健施設と医療人員の欠如、高い妊産婦死亡率、医療費の上昇にも懸念を表明する。委員会は、農村で土地がない人の70%は女性であること、農村地区における女性の自殺率の高さが続いていることも留意する。
 28.委員会は、締約国が「条約」の第14条の遂行のために、農村の発展のための政策と計画の設計・発展・遂行・監督に対して農村女性の積極的参加を強化するように、すべての必要な措置をとるよう勧告する。それには、すべての女児が9年制の義務教育(いかなる雑費も学費もない)を修了することを保証することが含まれなければならない。また、農村地区で、無料ヘルスケアとサービスに農村女性がアクセスできるようにすることも、緊急に求められている。委員会、締約国に、農村で土地を持たない者の中に女性が多い理由をさらに深く検証し、救済のための適切な行動――女性に対して差別になる農村の慣習を変革する手段と措置を含めて――をとるように促す。委員会は、農村地区において、女性の自殺率をいっそう下げるために、上質なメンタルヘルスとカウンセリングサービスが利用できるようにするよう勧告する。委員会は、締約国に、少数民族の女性が直面している何重もの差別を撤廃し、彼女たちの実質的な平等を促進するための総合的なアプローチをとるように強く促す。委員会は、締約国に、次回のレポートでは、少数民族の女性を含めた農村の女性の性別のデータ、とくに彼女たちの教育・雇用・健康・暴力被害に関する包括的な情報を提供するように求める。

[女性の雇用労働]
 29.委員会は、同一労働や同一価値労働に対する同一賃金を保障する法的規定の欠如、賃金格差が存続していること、インフォーマルセクターへの女性の高度な集中、一部の女性労働者がさらされがちな有毒で有害な環境、競争的な労働市場における収入の減少など、雇用部門で働く女性の状況を懸念する。レイオフされた女性の再雇用を促進するさまざまな努力は評価するが、ジェンダーがレイオフの第一の理由になっていることも懸念する。委員会は、また、労働法規の監督が限定的であることと、そうした規定の侵害を通報する女性が非常に少ないことも懸念する。委員会は、職場でのセクシュアル・ハラスメントも懸念する。
 30.委員会は、締約国が、垂直的・水平的職務分離を克服し、婦女権益保障法を含めた法的枠組みの監督と効果的執行を強化し、ジェンダーにもとづく女性の差別的レイオフを含めた労働法の侵害に対して女性の効果的救済を保障するために、より進んだ措置をとることを勧告する。委員会はまた、女性が同一労働と同一価値労働に対して同一の賃金と同一の社会保障とサービスを受け取ることを保障する措置を取るよう訴える。委員会はまた、締約国に、女性労働者が危険な作業環境から守られ、公的および私的部門の中の雇用の場での女性に対する差別(セクシュアル・ハラスメントを含む)をおこなった者が適切に制裁されることを保証するように奨励する。

[計画生育]
 31.委員会は、性別を選択する中絶や女児殺しなど禁止する法的手段や2006年に始まった「女児愛護」行動のような全国的運動に留意しつつも、性別を選択する不法な中絶や女児殺し、女児の不登記・遺棄が存続していることや強制的中絶について引き続き懸念している。また女性と女児のトラフィッキングの増加をもたらしかねない性別比の逆転について懸念する。
 32.委員会は、締約国に、選択的中絶と女児殺しに対する現存の法律の執行の監督を強化するとともに、権限を乱用する公務員を制裁する公正な法的手続きによって、それらの法律を執行するように強く促す。委員会はまた、少数民族の女性に対する地方の家族計画官僚の虐待と暴力(強制的不妊手術と強制的中絶を含む)の報告を調査して起訴するように締約国に強く促す。委員会は、締約国が家族計画官僚に、ジェンダーに敏感な研修を義務付けるよう勧告する。委員会は、締約国に、すべての女児(とくに農村地帯の)が出生時に登録されるよう保証する努力をひきつづき強化するよう奨励する。委員会は、さらに、締約国に、保険制度と老齢年金を住民全体(とくに農村地帯)に拡大し、農村でまだ強固な男児選好と一人っ子政策の否定的な結果としての生別比の逆転の原因を解決するように勧告する。

[脱北女性]
 33.委員会は、締約国が1951年の「難民の地位に関する条約」の締約国でもあるにもかかわらず、女性の亡命者や庇護申請者を保護する法律または規則がないことを懸念する。委員会は、北朝鮮から来た女性の状況、すなわち地位が不安定なままで、虐待やトラフィッキング、強制的な結婚と事実上の奴隷状態の犠牲者になっているか、なる危険が特にあるという状態にとくに懸念を表明する。
 34.委員会は、締約国に、女性の保護を保証するためにも、国際基準に合致した、難民と庇護申請者の地位に関する法律と規定を制定するよう訴える。委員会は、締約国が国連難民高等弁務官事務所と緊密に協力して、庇護申請者/難民の地位を認めるプロセスの中に、女性ジェンダーに敏感なアプローチを十分に統合するよう訴える。委員会は、締約国が国内における北朝鮮の女性難民/庇護申請者の状況を調査して、彼女たちが不法な居留外国人であるがために、トラフィッキングと奴隷的な結婚との犠牲にならないことを保証するよう奨励する。

 女性差別撤廃委員会は中国の政策に一定の評価を与えつつも、中国の女性差別問題を包括的に厳しく指摘し、改善を勧告したと言えるでしょう。中国国内では指摘しにくい問題もかなり含まれています。
 こうした国連からの指摘や勧告は、以前は中国国内では(私が日本で入手できるような文献を見るかぎり)活字になりませんでした。しかし、2004,5年頃からは中国国内でも、こうした指摘を受け止めた議論が散見されるようになりました。
 今度の勧告も、中国国内でも少しでも活用されることを願います。

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プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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