セックスワーカーのためのセンターの機関紙
中国のセックスワーカーのための3つのセンターの機関紙が、そうしたセンターの一つである「女性ネットワークおよび研修センター」(婦女網絡及培訓中心)のサイトからダウンロードできるようになりました(「項目文件転載」のコーナー)。
ダウンロードできるのは、次の3つのセンターの機関紙です。いずれの機関紙も、センターの「通信[通訊]」という名称であり、何かの社会的主張をするというよりも、セックスワーカーに読んでもらうためのものです。
1.膠州愛心健康サービス相談センター(膠州愛心健康服務中心)(山東省)
このセンターには、一応、独自のサイトもあります(膠州愛心健康諮詢中心)
このセンターは、オランダと香港のオックスファム、香港の紫藤の資金援助を得た非営利の国際的公益プロジェクトだということです。その趣旨としてうたわれているのは、「主に社会的な弱者集団やハイリスクグループのために、無料で健康の知識の相談や性病・エイズ予防の知識の相談を提供し、婦人科の検診・検査をし、無料で宣伝資料を提供し、無料でコンドームを提供する」ということです。その他にも、無料で、美容の知識やマッサージの技能、パソコン入力についての訓練もしているそうです(これらは、職業訓練だと思います)。
このセンターが2005年7月以降ほぼ毎月発行している機関紙がすべて読めます(『膠州愛心健康中心通訊』)。機関紙に掲載されている記事は、避妊(コンドームなど)、月経、妊娠中絶、性病(エイズ、梅毒、淋病など)、婦人病、薬物についてのものが中心です。毎号、「姉妹の悄悄話(ひそひそ話)」というコーナーも設けられています。このコーナーは、仕事を始めたばかりの女性と、仕事の経験を積んで、現在はセンターで健康相談をしている女性、センターの医者の3人がさまざまな具体的問題について語り合うスタイルで書かれています。また、このセンターは、毎年、無料で行楽行事を組織して、セックスワーカーが日ごろの憂鬱を忘れて、交流をする機会を作っているようです。
2.広州関愛女性健康センター(広州関愛婦女健康中心)
このセンターは、目的として「弱者層である周縁女性の職業上の安全、職業上の健康に注意し、彼女たちの社会的地位を向上させる」ことをうたっています。毎週3回、午後、セックスワーカーのところに行って、彼女たちの仕事の状況や生活を知るとともに、さまざまなサービスをしているそうです。
このセンターの2008年の機関紙がダウンロードできます(「広州関愛婦女健康中心2008年通訊」)。警官を装った窃盗や警官への対応のし方、コンドームの選び方・使い方、顧客に使わせる方法などの問題も取り上げています。
3.女性ネットワークおよび研修センター(婦女網絡及培訓中心)(北京?)
このセンターについては、以前、このブログでも紹介しました(その時の記事)
2008年の機関紙がダウンロードできます(「婦女網絡及培訓中心2008年第一期通訊」)。薬物や妊娠中絶、警官を装った詐欺、月経の遅れなどについての記事があります。
記事の内容はいずれもセックスワーカー向けのなのですが、センターの趣旨としては、そのようには明確に謳われていないのは、中国では売買春が非合法であることと関係しているのでしょうか。さまざまな記事の内容からは、中国のセックスワーカーが置かれた状況が、少しだけですが、見えてくるように感じます。薬物の記事があるのは、そうした状況に置かれた女性がしばしば薬物中毒になることを示しているのでしょう。
ダウンロードできるのは、次の3つのセンターの機関紙です。いずれの機関紙も、センターの「通信[通訊]」という名称であり、何かの社会的主張をするというよりも、セックスワーカーに読んでもらうためのものです。
1.膠州愛心健康サービス相談センター(膠州愛心健康服務中心)(山東省)
このセンターには、一応、独自のサイトもあります(膠州愛心健康諮詢中心)
このセンターは、オランダと香港のオックスファム、香港の紫藤の資金援助を得た非営利の国際的公益プロジェクトだということです。その趣旨としてうたわれているのは、「主に社会的な弱者集団やハイリスクグループのために、無料で健康の知識の相談や性病・エイズ予防の知識の相談を提供し、婦人科の検診・検査をし、無料で宣伝資料を提供し、無料でコンドームを提供する」ということです。その他にも、無料で、美容の知識やマッサージの技能、パソコン入力についての訓練もしているそうです(これらは、職業訓練だと思います)。
このセンターが2005年7月以降ほぼ毎月発行している機関紙がすべて読めます(『膠州愛心健康中心通訊』)。機関紙に掲載されている記事は、避妊(コンドームなど)、月経、妊娠中絶、性病(エイズ、梅毒、淋病など)、婦人病、薬物についてのものが中心です。毎号、「姉妹の悄悄話(ひそひそ話)」というコーナーも設けられています。このコーナーは、仕事を始めたばかりの女性と、仕事の経験を積んで、現在はセンターで健康相談をしている女性、センターの医者の3人がさまざまな具体的問題について語り合うスタイルで書かれています。また、このセンターは、毎年、無料で行楽行事を組織して、セックスワーカーが日ごろの憂鬱を忘れて、交流をする機会を作っているようです。
2.広州関愛女性健康センター(広州関愛婦女健康中心)
このセンターは、目的として「弱者層である周縁女性の職業上の安全、職業上の健康に注意し、彼女たちの社会的地位を向上させる」ことをうたっています。毎週3回、午後、セックスワーカーのところに行って、彼女たちの仕事の状況や生活を知るとともに、さまざまなサービスをしているそうです。
このセンターの2008年の機関紙がダウンロードできます(「広州関愛婦女健康中心2008年通訊」)。警官を装った窃盗や警官への対応のし方、コンドームの選び方・使い方、顧客に使わせる方法などの問題も取り上げています。
3.女性ネットワークおよび研修センター(婦女網絡及培訓中心)(北京?)
このセンターについては、以前、このブログでも紹介しました(その時の記事)
2008年の機関紙がダウンロードできます(「婦女網絡及培訓中心2008年第一期通訊」)。薬物や妊娠中絶、警官を装った詐欺、月経の遅れなどについての記事があります。
記事の内容はいずれもセックスワーカー向けのなのですが、センターの趣旨としては、そのようには明確に謳われていないのは、中国では売買春が非合法であることと関係しているのでしょうか。さまざまな記事の内容からは、中国のセックスワーカーが置かれた状況が、少しだけですが、見えてくるように感じます。薬物の記事があるのは、そうした状況に置かれた女性がしばしば薬物中毒になることを示しているのでしょう。
中国の女性セックスワーカーに対する暴力の調査
先月、中国版ニューズウイーク(中国新聞週刊)が、中国の女性セックスワーカーに対する暴力の問題を取り上げました(「暴力猛于艾滋病──女性性工作者生命安全被厳重威脅!!」)。
この記事は、中国の女性セックスワーカーの生存状況を描写した潘綏銘さん(彼女のブログ)の言葉――「第一に生存、第二に殺されたり奪われたりしないこと、第三に性病・エイズからの防備」から始まっています。中国版ニューズウイークの記者が数十名の最底辺のセックスワーカー(小姐)を取材したところ、ほとんどすべての人が強盗にあったり、強姦されたりした経験があったそうです。
この記事は、趙軍さん(1969年生まれ)という、「女性セックスワーカーの被害問題」を研究テーマにしている女性のインタビューも掲載しています。趙軍さんは潘綏銘さんの弟子で、この10年近くセックスワーカーの中に入って、調査をしてきたそうです。以下、趙軍さんのお話の一部をおおまかに紹介します。
なぜセックスワーカーは暴力的な侵犯のターゲットになりやすいか? (1)女性は生理的・身体能力的に弱者である。(2)セックスワーカーは、接近しやすく、商売の対象が流動的で、不特定であるという特徴がある。(3)彼女や彼女の雇い主は、ふつうの出稼ぎの若い男性よりも金を持っている。(4)一人で活動することが比較的多い。(5)警察に事件を届け出ることが少ない。
犯罪の動機について言えば、強盗はもちろん金目当てだが、殺害に関しては、さまざまな動機がある。客にサディズム的傾向があり、セックスワーカーが承諾しなかったために殺された場合もある。もっとよく見られるのは価格の問題で、セックスワーカーは価格には敏感なので、話がまとまらなくて、セックスワーカーが騒いだために、客が静かにさせようとして殺害する結果になる。もちろん金を奪うためにセックスワーカーを殺害した事件もある。
なぜ警察に事件を届けないかといえば、現在の法律の体制では、警察は彼女たちの敵だからである。法律の規定によると、売春する者は、軽くて10〜15日間の拘留、5000元以下の罰金、重ければ6カ月〜2年間の労働矯正処分となる。
経営者(老板)も、警察に介入されるのをいやがる。刑法359条では、他人を誘惑・収容・紹介して売春させたものは、5年以下の有期懲役・拘留(*)・管制(**)に処すとされており、情状の重いものは、5年以上の刑もある。重大な組織的売春は、死刑さえある。したがって、被害者が警察に事件を届けることは、経営者にとってさらに危険かもしれない。
(*)短期間の自由刑
(**)一定期間、一定の自由(表現活動や移動・面会など)を制限して、公安機関の監督下で社会生活を送らせる刑罰
セックスワーカーの権利は周縁化されている。その原因は、彼女たちの「仕事」が周縁化・地下化されていることである。
警察は、被害を届け出たセックスワーカーや経営者はあまり処罰しないようにすべきである(しかし、警察は往々にして公然と「我々は被害を届け出た者を処罰しない」と言えない)。
また、警察は、摘発した事件をもとにして、セックスワーカーにどうしたら自分の権利を守れるかを宣伝すべきである。生命権は、疑いなく「社会の教化」より重要である。権利の主体は、身分のいかんを問わない。この点から出発すれば、警察がいかに自分の生命や財産を保護するかを教育することは完全に合法的である。
趙軍さんは昨年4月、『懲罰の辺境:売春刑事政策実証研究(懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究)』(中国法制出版社 2007年)という本も出版しました。私はまだ読んでいませんが、以下のような構成の本です(詳しい紹介)。
第1章 序論
第1節 研究視角
第2節 研究方法
第2章 法益あるいは権利の侵害に関して
第1節 「家庭破壊説」の疑問点
第2節 「性病・エイズ伝播説」の欠陥
第3節 「違法犯罪誘発説」への疑問
第4節 売春とそれと関係する行為の侵害
第3章 規範あるいは道徳の違反に関して
第1節 売買春が徳行にもとることの考察
第2節 売春を紹介することが徳行にもとることの考察
第3節 売春を組織することが徳行にもとることの考察
第4章 法律のコストと効果に関して
第1節 経済的コストの分析
第2節 社会的コストの分析
第3節 法律的効果の分析
結語
参考文献
附録
目次を見ると、売買春の取締りについて、非常に根本的なところから問題にしている本のようです。また、抽象的な思弁ではなく、セックスワーカーに対するアンケートなど、実際の調査をもとしして論じられているようです。
全体で429ページありますが、そのうち200ページ近くが、「附録」という形で、警察や経営者、セックスワーカー、顧客などに対する調査、ケーススタディに充てられており、この箇所だけでも貴重な本のように思われます。
私はさっそくこの本をネット書店「書虫」に注文しましたので、もし入手可能なら、2週間ほどしたら、書虫の目録に掲載されると思います(書虫は、予め目録に掲載されている本以外の本を注文すると、その注文が通った時点で目録に掲載されるシステムです)。→掲載されました(趙軍『懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究』)
この記事は、中国の女性セックスワーカーの生存状況を描写した潘綏銘さん(彼女のブログ)の言葉――「第一に生存、第二に殺されたり奪われたりしないこと、第三に性病・エイズからの防備」から始まっています。中国版ニューズウイークの記者が数十名の最底辺のセックスワーカー(小姐)を取材したところ、ほとんどすべての人が強盗にあったり、強姦されたりした経験があったそうです。
この記事は、趙軍さん(1969年生まれ)という、「女性セックスワーカーの被害問題」を研究テーマにしている女性のインタビューも掲載しています。趙軍さんは潘綏銘さんの弟子で、この10年近くセックスワーカーの中に入って、調査をしてきたそうです。以下、趙軍さんのお話の一部をおおまかに紹介します。
なぜセックスワーカーは暴力的な侵犯のターゲットになりやすいか? (1)女性は生理的・身体能力的に弱者である。(2)セックスワーカーは、接近しやすく、商売の対象が流動的で、不特定であるという特徴がある。(3)彼女や彼女の雇い主は、ふつうの出稼ぎの若い男性よりも金を持っている。(4)一人で活動することが比較的多い。(5)警察に事件を届け出ることが少ない。
犯罪の動機について言えば、強盗はもちろん金目当てだが、殺害に関しては、さまざまな動機がある。客にサディズム的傾向があり、セックスワーカーが承諾しなかったために殺された場合もある。もっとよく見られるのは価格の問題で、セックスワーカーは価格には敏感なので、話がまとまらなくて、セックスワーカーが騒いだために、客が静かにさせようとして殺害する結果になる。もちろん金を奪うためにセックスワーカーを殺害した事件もある。
なぜ警察に事件を届けないかといえば、現在の法律の体制では、警察は彼女たちの敵だからである。法律の規定によると、売春する者は、軽くて10〜15日間の拘留、5000元以下の罰金、重ければ6カ月〜2年間の労働矯正処分となる。
経営者(老板)も、警察に介入されるのをいやがる。刑法359条では、他人を誘惑・収容・紹介して売春させたものは、5年以下の有期懲役・拘留(*)・管制(**)に処すとされており、情状の重いものは、5年以上の刑もある。重大な組織的売春は、死刑さえある。したがって、被害者が警察に事件を届けることは、経営者にとってさらに危険かもしれない。
(*)短期間の自由刑
(**)一定期間、一定の自由(表現活動や移動・面会など)を制限して、公安機関の監督下で社会生活を送らせる刑罰
セックスワーカーの権利は周縁化されている。その原因は、彼女たちの「仕事」が周縁化・地下化されていることである。
警察は、被害を届け出たセックスワーカーや経営者はあまり処罰しないようにすべきである(しかし、警察は往々にして公然と「我々は被害を届け出た者を処罰しない」と言えない)。
また、警察は、摘発した事件をもとにして、セックスワーカーにどうしたら自分の権利を守れるかを宣伝すべきである。生命権は、疑いなく「社会の教化」より重要である。権利の主体は、身分のいかんを問わない。この点から出発すれば、警察がいかに自分の生命や財産を保護するかを教育することは完全に合法的である。
趙軍さんは昨年4月、『懲罰の辺境:売春刑事政策実証研究(懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究)』(中国法制出版社 2007年)という本も出版しました。私はまだ読んでいませんが、以下のような構成の本です(詳しい紹介)。
第1章 序論
第1節 研究視角
第2節 研究方法
第2章 法益あるいは権利の侵害に関して
第1節 「家庭破壊説」の疑問点
第2節 「性病・エイズ伝播説」の欠陥
第3節 「違法犯罪誘発説」への疑問
第4節 売春とそれと関係する行為の侵害
第3章 規範あるいは道徳の違反に関して
第1節 売買春が徳行にもとることの考察
第2節 売春を紹介することが徳行にもとることの考察
第3節 売春を組織することが徳行にもとることの考察
第4章 法律のコストと効果に関して
第1節 経済的コストの分析
第2節 社会的コストの分析
第3節 法律的効果の分析
結語
参考文献
附録
目次を見ると、売買春の取締りについて、非常に根本的なところから問題にしている本のようです。また、抽象的な思弁ではなく、セックスワーカーに対するアンケートなど、実際の調査をもとしして論じられているようです。
全体で429ページありますが、そのうち200ページ近くが、「附録」という形で、警察や経営者、セックスワーカー、顧客などに対する調査、ケーススタディに充てられており、この箇所だけでも貴重な本のように思われます。
私はさっそくこの本をネット書店「書虫」に注文しましたので、もし入手可能なら、2週間ほどしたら、書虫の目録に掲載されると思います(書虫は、予め目録に掲載されている本以外の本を注文すると、その注文が通った時点で目録に掲載されるシステムです)。→掲載されました(趙軍『懲罰的辺界:売淫刑事政策実証研究』)
台湾総統選に向けてセックスワーカー処罰条項廃止を求めるデモ
台湾で、3月8日の国際女性デーに「底辺優先─売春婦処罰条項廃止大デモ(底邊優先─廢除罰娼條款大遊行)」がおこなわれました。
このデモは、3月22日投票の台湾(中華民国)総統選挙に向けたものであり、セックスワーカーとその支援者の団体である日日春関懐互助協会(日日春。Collective Of Sex Workers And Supporters, COSWAS)が主催しました。他にも多数の団体が参加しました。
台湾の「社会秩序保護[維護]法」第80条には、「公共の場所あるいは公衆が出入りできる場所で、売春あるいは売春の仲介を意図して客を引く者」は、「3日以下の拘留あるいはニュー台湾ドル(新台湾幣)3万元以下の罰金に処する」という条項があります(「第3篇第2章 妨害善良風俗」)。
上の条項に関して、日日春は、今回の総統選挙に立候補している民進党の謝長廷候補と国民党の馬英九候補に対して、おおむね以下のような内容の承諾書に署名を求めました。
1.社会秩序保護法80条の廃止を支持し、成人が自発的におこなう情況の下では、性の取引に従事するセックスワーカーを処罰しない。
2.就任後2年以内に、社会秩序保護法80条の改正を完成する。社会秩序保護法80条を正式に廃止する前に、政府当局とセックスワーカーと民間の公衆の三者の交流・対話をつうじて、必要な関連措置のプランを完成させ、それによって社会政策・労働政策・公衆衛生・治安の各面で底辺の弱者層の人権と社会公衆の利益の双方に配慮する(1)。
国民党の馬英九候補は、上の要求に対して、「セックスワークの非犯罪化は、社会のコンセンサス(社会共識)が出来てからにする」という趣旨の回答をしました。日日春は、馬候補が「コンセンサス」を口実にしていることを批判するとともに、馬候補が台北市長時代にセックスワーカーの取締りを推進したことも批判しています。
それに対して民進党の謝長廷候補は、上の承諾書に署名をしました。日日春は、この点について、謝候補は「台湾で初めてセックスワーカー不処罰の要求を支持する態度を公の政策として表明した総統選挙の候補者」だと言って評価しています。しかし、民進党については、同党の陳水扁前総統が台北市長時代の1997年に廃娼をおこない、謝候補自身も2002年に高雄市長時代に廃娼をおこなうなど、これまでの態度に対して不信感が残っているようです。また、謝候補は現在、政権党である民進党の主席でもあるにもかかわらず、街頭では依然として取締りが続いている点についても疑問を呈しています(下記の要請行動のビデオ参照)。(2)。
当日の集会とデモ、両候補の陣営への要請行動については、You Tubeで見ることができます(⇒「《2008底邊優先──廢除罰娼條款大遊行》影音實録與馬謝總部回應」2008年3月11日)。歌や踊りもまじえた集会、トラック・バイク・徒歩によるデモ、それぞれの陣営の総本部の前で要求を突きつけている様子などがビデオに収められています。セックスワーカーや台北市議が、激しく両陣営を追及しています。台湾性別人権協会や婦女新知基金会の旗も見えます。それほど大規模な行動ではありませんが、たいへんな熱気が伝わってきます。「謝長廷篇」と「馬英九篇」が、それぞれ7〜8分ほどです。
近年、台湾でも貧富の格差が急激に拡大しており、さまざまな事情からセックスワークをおこなう女性も増えています。しかし、底辺に置かれた人々の就労の問題に関しては、今回の総統選ではあまり争点になっていません。馬候補も謝候補も、女性・福祉・就業に関する政策は全体として不十分です。民進党はかつては「弱者優先」を唱えていたのですが、最近はそうでなくなったようです。日日春は、こうした点も問題にしています(3)。
日日春は、今後も、総統選投票日に向けて両陣営に対して運動の計画を立てています。また、セックスワークの問題に関しては、台湾の女性運動の中でもおそらくまだ意見の違いがあると思います。それらの点にも今後注目したいと思います。
(1)日日春が発表した、「底邊優先,廢除罰娼條款遊行,及簽署給總統候選人訴求」(2008年3月2日)に、承諾書の全文や社会秩序保護法80条に関する詳しい批判が掲載されています。
(2)以上は、「2008總統大選《底邊優先──廢除罰娼條款大遊行》新聞稿」(2008年3月11日)参照。
(3)「底邊就業優先,廢除罰娼條款,立刻政策弁論──2008/2/24公視總統辯論日日春新聞稿」2008年2月24日。
※しばらくの間、このブログの注記へのリンクに不具合がありましたが、修正しました。
このデモは、3月22日投票の台湾(中華民国)総統選挙に向けたものであり、セックスワーカーとその支援者の団体である日日春関懐互助協会(日日春。Collective Of Sex Workers And Supporters, COSWAS)が主催しました。他にも多数の団体が参加しました。
台湾の「社会秩序保護[維護]法」第80条には、「公共の場所あるいは公衆が出入りできる場所で、売春あるいは売春の仲介を意図して客を引く者」は、「3日以下の拘留あるいはニュー台湾ドル(新台湾幣)3万元以下の罰金に処する」という条項があります(「第3篇第2章 妨害善良風俗」)。
上の条項に関して、日日春は、今回の総統選挙に立候補している民進党の謝長廷候補と国民党の馬英九候補に対して、おおむね以下のような内容の承諾書に署名を求めました。
1.社会秩序保護法80条の廃止を支持し、成人が自発的におこなう情況の下では、性の取引に従事するセックスワーカーを処罰しない。
2.就任後2年以内に、社会秩序保護法80条の改正を完成する。社会秩序保護法80条を正式に廃止する前に、政府当局とセックスワーカーと民間の公衆の三者の交流・対話をつうじて、必要な関連措置のプランを完成させ、それによって社会政策・労働政策・公衆衛生・治安の各面で底辺の弱者層の人権と社会公衆の利益の双方に配慮する(1)。
国民党の馬英九候補は、上の要求に対して、「セックスワークの非犯罪化は、社会のコンセンサス(社会共識)が出来てからにする」という趣旨の回答をしました。日日春は、馬候補が「コンセンサス」を口実にしていることを批判するとともに、馬候補が台北市長時代にセックスワーカーの取締りを推進したことも批判しています。
それに対して民進党の謝長廷候補は、上の承諾書に署名をしました。日日春は、この点について、謝候補は「台湾で初めてセックスワーカー不処罰の要求を支持する態度を公の政策として表明した総統選挙の候補者」だと言って評価しています。しかし、民進党については、同党の陳水扁前総統が台北市長時代の1997年に廃娼をおこない、謝候補自身も2002年に高雄市長時代に廃娼をおこなうなど、これまでの態度に対して不信感が残っているようです。また、謝候補は現在、政権党である民進党の主席でもあるにもかかわらず、街頭では依然として取締りが続いている点についても疑問を呈しています(下記の要請行動のビデオ参照)。(2)。
当日の集会とデモ、両候補の陣営への要請行動については、You Tubeで見ることができます(⇒「《2008底邊優先──廢除罰娼條款大遊行》影音實録與馬謝總部回應」2008年3月11日)。歌や踊りもまじえた集会、トラック・バイク・徒歩によるデモ、それぞれの陣営の総本部の前で要求を突きつけている様子などがビデオに収められています。セックスワーカーや台北市議が、激しく両陣営を追及しています。台湾性別人権協会や婦女新知基金会の旗も見えます。それほど大規模な行動ではありませんが、たいへんな熱気が伝わってきます。「謝長廷篇」と「馬英九篇」が、それぞれ7〜8分ほどです。
近年、台湾でも貧富の格差が急激に拡大しており、さまざまな事情からセックスワークをおこなう女性も増えています。しかし、底辺に置かれた人々の就労の問題に関しては、今回の総統選ではあまり争点になっていません。馬候補も謝候補も、女性・福祉・就業に関する政策は全体として不十分です。民進党はかつては「弱者優先」を唱えていたのですが、最近はそうでなくなったようです。日日春は、こうした点も問題にしています(3)。
日日春は、今後も、総統選投票日に向けて両陣営に対して運動の計画を立てています。また、セックスワークの問題に関しては、台湾の女性運動の中でもおそらくまだ意見の違いがあると思います。それらの点にも今後注目したいと思います。
(1)日日春が発表した、「底邊優先,廢除罰娼條款遊行,及簽署給總統候選人訴求」(2008年3月2日)に、承諾書の全文や社会秩序保護法80条に関する詳しい批判が掲載されています。
(2)以上は、「2008總統大選《底邊優先──廢除罰娼條款大遊行》新聞稿」(2008年3月11日)参照。
(3)「底邊就業優先,廢除罰娼條款,立刻政策弁論──2008/2/24公視總統辯論日日春新聞稿」2008年2月24日。
※しばらくの間、このブログの注記へのリンクに不具合がありましたが、修正しました。
香港でセックスワーカー自身の組織「姐姐仔会」設立
2月24日、香港でセックスワーカー自身の組織「姐姐仔会」の設立祝賀会がおこなわれました。
これまで存在していた「紫藤」や「青鳥」は、どちらかと言えば、セックスワーカー自身の組織というよりも、セックスワーカーを支援する組織という色彩が強いものでした。
ただし、「紫藤」の一つの目標は、セックスワーカーを組織して、自分たちの権利を守るために自らの組織を設立させることでした。2006年11月、紫藤は、数名のセックスワーカーと協力し、援助して「姐姐仔会」を設立しました。「姐姐仔」というのは、セックスワーカーのフレンドリーな呼称です。セックスワーカーに覚えてもらいやすいように、この名称にしたそうです。その後も、彼女たちに対してさまざまな訓練の機会を与えたり、援助をおこなったりしました(1)。
「姐姐仔会」の会員は、現在58名で、「一楼一鳳」(2)やサウナ、マッサージパーラーで仕事をしている人たちが主です。すでに社会団体としての登録も済ませ、今回、正式に設立した祝賀会をおこないました。設立祝賀会には、立法会(香港の立法機関)議員の劉慧卿、梁国雄両氏を含めて、ゲストも100人あまり出席しました。
「姐姐仔会」会長のLilyさんは、「姐姐仔会」は労働組合ではないが、セックスワーカーに法律的な権利を教える活動はおこなうと言います。一番重要なのは、同業の者どうしが、心の中に鬱積しているものを出しあえることだとのことです。対外的には、公衆への教育活動に力を入れて、エイズの予防の宣伝をしたり、大学でも講座をおこなって、多くの公衆に理解を深めてもらい、職業に対する偏見をなくしたいと語りました(3)。
(1)「不同地区的性工作者項目‐香港」(中国語)|「New sex workers programs in different areas‐homgkong」(英語)(『紫藤会訊』第20期より)
(2)ビルなどの一つの部屋に一人の女性がいる形式のもので、「一楼一」、「161」、「141」とも言う。8割前後は、大陸からの移民。詳しくは、Wikipedia「一楼一鳳」参照。
(3)「港首個性工作者組織成立 圖洗行業恥辱争取公衆認同」『蘋果日報』2008年2月25日(紫藤BLOGより)、「“姐姐仔會”成立慶祝會」(中国語)|「JJJ Association celebration party」(英語)(紫藤HPより)。
これまで存在していた「紫藤」や「青鳥」は、どちらかと言えば、セックスワーカー自身の組織というよりも、セックスワーカーを支援する組織という色彩が強いものでした。
ただし、「紫藤」の一つの目標は、セックスワーカーを組織して、自分たちの権利を守るために自らの組織を設立させることでした。2006年11月、紫藤は、数名のセックスワーカーと協力し、援助して「姐姐仔会」を設立しました。「姐姐仔」というのは、セックスワーカーのフレンドリーな呼称です。セックスワーカーに覚えてもらいやすいように、この名称にしたそうです。その後も、彼女たちに対してさまざまな訓練の機会を与えたり、援助をおこなったりしました(1)。
「姐姐仔会」の会員は、現在58名で、「一楼一鳳」(2)やサウナ、マッサージパーラーで仕事をしている人たちが主です。すでに社会団体としての登録も済ませ、今回、正式に設立した祝賀会をおこないました。設立祝賀会には、立法会(香港の立法機関)議員の劉慧卿、梁国雄両氏を含めて、ゲストも100人あまり出席しました。
「姐姐仔会」会長のLilyさんは、「姐姐仔会」は労働組合ではないが、セックスワーカーに法律的な権利を教える活動はおこなうと言います。一番重要なのは、同業の者どうしが、心の中に鬱積しているものを出しあえることだとのことです。対外的には、公衆への教育活動に力を入れて、エイズの予防の宣伝をしたり、大学でも講座をおこなって、多くの公衆に理解を深めてもらい、職業に対する偏見をなくしたいと語りました(3)。
(1)「不同地区的性工作者項目‐香港」(中国語)|「New sex workers programs in different areas‐homgkong」(英語)(『紫藤会訊』第20期より)
(2)ビルなどの一つの部屋に一人の女性がいる形式のもので、「一楼一」、「161」、「141」とも言う。8割前後は、大陸からの移民。詳しくは、Wikipedia「一楼一鳳」参照。
(3)「港首個性工作者組織成立 圖洗行業恥辱争取公衆認同」『蘋果日報』2008年2月25日(紫藤BLOGより)、「“姐姐仔會”成立慶祝會」(中国語)|「JJJ Association celebration party」(英語)(紫藤HPより)。
香港のセックスワーカーのための組織「青鳥」と「午夜藍」がサイト設立
香港にあるセックスワーカーのための組織は、「紫藤」(1996年設立。ブログ)が有名ですが、昨年「青鳥」もサイトを設立しました(「青鳥」のサイト)。
「青鳥(Action for REACH OUT)」は1993年に設立され、香港だけでなく、中国大陸やタイ、フィリピンなど外国から来たセックスワーカーのサポートにも力を入れています(「関於青鳥」)。
「青鳥」については、すでに岡崎千佳さんが「セックスワーカーをサポート 『青鳥』」として『女たちの21世紀』41号(2005年冬号)で簡単にレポートしておられます。岡崎さんによると、「青鳥」は、もともとはヨーロッパから来た3人の女性によって設立された団体だとのことです。
「青鳥」はサービスセンターも持っていて、そこでさまざまな活動をしています。たとえば──
・電話相談
・転介服務(referral service)‥‥セックスワーカーに法律相談、健康診断、臨時シェルターなどの紹介。
・朋輩教育(peer education)……訓練を通じて、セックスワーカーの自己主張、組織化、エンパワメントを助ける。
もちろん、センターの外でも活動をおこなっています。
・外展服務(outreach service)……セックスワーカーの仕事の場に出向いて、健康のための教育や権益擁護のための活動をする。
・公衆教育……セックスワーカーに対する市民の理解を深めもらって、誤解や偏見をなくし、セックスワーカーに対する関心や支持を獲得する。
・提案‥‥政府の政策や法律について研究や弾劾、提案をする。長期的にはセックスワークの非犯罪化を目標にしている。
・研究‥‥セックスワーカーのニーズや状況を研究する。職業上の安全・健康、法律上の権益、差別、スティグマについてなど。
このサイトでは、ニュースレター『Reaching Out 展翅』を読むこともできます(「青鳥通訊―《展翅》」)。
また、「研究」のページでは、次の2つの研究報告を全文、読むことができます。
1.香港の女性セックスワーカーの職業上の安全についてのアンケート調査報告(『香港女性性工作者職業安全問巻調査(報告)』[PDFファイル。中国語]2007年6月)
この調査で取り上げられているのは、客がコンドームを使用しない、客が事後に代金の支払いを拒絶する、客の暴力(同意していない性行為の強要など)、仕事場で強盗にあう、警官や警官だと自称する者に恐喝や強要にあう、といった問題です。
こうした問題の多くについては、客などに責任があるのはもちろんです。しかし、それだけでなく、この調査報告は、たとえば、セックスワーカーがコンドームを持っていると、警察にセックスワーカーだと思われて逮捕されるというような状況があって、そのことが、ますますセックスワーカーを危険にさらしているということも指摘しています。
香港では、セックスワークをすること自体は一応合法なのです。けれども、たとえば街頭に立つセックスワーカーに対して、警察は「不道徳な目的で他人をそそのかした」という名目で逮捕したりします。また、警官は、おとり捜査をする時に無料でセックスサービスを受けたり、セックスワーカーのプライバシーを侵害したりすることもあります。
セックスワーカーが客や警官から上で述べたようなさまざまな被害にあっても、セックスワーカーはこうした警察には行きにくいし、社会的にも孤立しているために声を上げることは難しいのです。
とくに大陸から越境してきた女性の場合は、仕事をすること自体が「逗留条件」に違反していて違法であるために、被害にあってもとりわけ警察に行きにくかったり、警官の恐喝にも抵抗しにくいなど、とくに危険にさらされやすいです。フィリピンから来た女性の場合は、ダンサーとして入国するのですが、英語力が劣っている人がいたり、酒場でずっと長時間働いていて、労働時間以外は代理人が手配した住居に集まって住んでいるために、社会的に孤立しやすいということも書かれています。
2.香港警察のセックスワーカーに対する態度についての調査(『青鳥就香港警員對待性工作者態度之調査』中国語版│英語版[いずれもPDFファイル]2005年7月)
こちらの報告書は、とくに警官の問題に絞って、その無礼さや不合理な応対、不合理な逮捕、逮捕・拘留期間における権利の剥奪について詳しく報告しています。
もちろん、報告書の1、2ともに、セックスワーカーの状態を改善するためのさまざまな提言もなされています。
そのほか、「青鳥」のサイトには、「青鳥」のざまざまな対外的な声明や文書・文章も収録されています(「対外声明」、「文件及文章」)。
「午夜藍(Midnight Blue)」というのは、男性セックスワーカーのための組織です(「午夜藍」のサイト)。労働運動家やジェンダー研究者、医者などによって設立されました。
「午夜藍」は、「紫藤」の一つのワーキンググループが発展して、独立した組織です。2003年以降、香港では男性のセックスワーカーが増え、エイズの感染率も高くなったので、2005年初めに「紫藤」が男性セックスワーカーのためのグループを設立したということです。
活動としては、以下のようなことをやっています。
・外展工作(outreach work)……主体的にセックスワーカーに接触して、健康や法律の相談を受ける。
・組織工作(organization work)……組織化にむけた訓練、ニュースレターの作成。
・側試服務(HIV testing)……無料でHIV検査。
(以上は、[中国語|英語])
このサイトは、まだ工事中のところが多いですが、セックスワーカーにとって必要な健康や法律の知識が得られるようになっているようです(健康資訊|法律資訊)。
追記:先日このプログでもお願いしたつくばみらい市のDV防止講演中止事件に関する署名、2600名の方が署名なさって、本日、上野千鶴子さんが同市に提出なさったようです(ブログ「みどりの一期一会」の記事)。ご協力ありがとうございました。
「青鳥(Action for REACH OUT)」は1993年に設立され、香港だけでなく、中国大陸やタイ、フィリピンなど外国から来たセックスワーカーのサポートにも力を入れています(「関於青鳥」)。
「青鳥」については、すでに岡崎千佳さんが「セックスワーカーをサポート 『青鳥』」として『女たちの21世紀』41号(2005年冬号)で簡単にレポートしておられます。岡崎さんによると、「青鳥」は、もともとはヨーロッパから来た3人の女性によって設立された団体だとのことです。
「青鳥」はサービスセンターも持っていて、そこでさまざまな活動をしています。たとえば──
・電話相談
・転介服務(referral service)‥‥セックスワーカーに法律相談、健康診断、臨時シェルターなどの紹介。
・朋輩教育(peer education)……訓練を通じて、セックスワーカーの自己主張、組織化、エンパワメントを助ける。
もちろん、センターの外でも活動をおこなっています。
・外展服務(outreach service)……セックスワーカーの仕事の場に出向いて、健康のための教育や権益擁護のための活動をする。
・公衆教育……セックスワーカーに対する市民の理解を深めもらって、誤解や偏見をなくし、セックスワーカーに対する関心や支持を獲得する。
・提案‥‥政府の政策や法律について研究や弾劾、提案をする。長期的にはセックスワークの非犯罪化を目標にしている。
・研究‥‥セックスワーカーのニーズや状況を研究する。職業上の安全・健康、法律上の権益、差別、スティグマについてなど。
このサイトでは、ニュースレター『Reaching Out 展翅』を読むこともできます(「青鳥通訊―《展翅》」)。
また、「研究」のページでは、次の2つの研究報告を全文、読むことができます。
1.香港の女性セックスワーカーの職業上の安全についてのアンケート調査報告(『香港女性性工作者職業安全問巻調査(報告)』[PDFファイル。中国語]2007年6月)
この調査で取り上げられているのは、客がコンドームを使用しない、客が事後に代金の支払いを拒絶する、客の暴力(同意していない性行為の強要など)、仕事場で強盗にあう、警官や警官だと自称する者に恐喝や強要にあう、といった問題です。
こうした問題の多くについては、客などに責任があるのはもちろんです。しかし、それだけでなく、この調査報告は、たとえば、セックスワーカーがコンドームを持っていると、警察にセックスワーカーだと思われて逮捕されるというような状況があって、そのことが、ますますセックスワーカーを危険にさらしているということも指摘しています。
香港では、セックスワークをすること自体は一応合法なのです。けれども、たとえば街頭に立つセックスワーカーに対して、警察は「不道徳な目的で他人をそそのかした」という名目で逮捕したりします。また、警官は、おとり捜査をする時に無料でセックスサービスを受けたり、セックスワーカーのプライバシーを侵害したりすることもあります。
セックスワーカーが客や警官から上で述べたようなさまざまな被害にあっても、セックスワーカーはこうした警察には行きにくいし、社会的にも孤立しているために声を上げることは難しいのです。
とくに大陸から越境してきた女性の場合は、仕事をすること自体が「逗留条件」に違反していて違法であるために、被害にあってもとりわけ警察に行きにくかったり、警官の恐喝にも抵抗しにくいなど、とくに危険にさらされやすいです。フィリピンから来た女性の場合は、ダンサーとして入国するのですが、英語力が劣っている人がいたり、酒場でずっと長時間働いていて、労働時間以外は代理人が手配した住居に集まって住んでいるために、社会的に孤立しやすいということも書かれています。
2.香港警察のセックスワーカーに対する態度についての調査(『青鳥就香港警員對待性工作者態度之調査』中国語版│英語版[いずれもPDFファイル]2005年7月)
こちらの報告書は、とくに警官の問題に絞って、その無礼さや不合理な応対、不合理な逮捕、逮捕・拘留期間における権利の剥奪について詳しく報告しています。
もちろん、報告書の1、2ともに、セックスワーカーの状態を改善するためのさまざまな提言もなされています。
そのほか、「青鳥」のサイトには、「青鳥」のざまざまな対外的な声明や文書・文章も収録されています(「対外声明」、「文件及文章」)。
「午夜藍(Midnight Blue)」というのは、男性セックスワーカーのための組織です(「午夜藍」のサイト)。労働運動家やジェンダー研究者、医者などによって設立されました。
「午夜藍」は、「紫藤」の一つのワーキンググループが発展して、独立した組織です。2003年以降、香港では男性のセックスワーカーが増え、エイズの感染率も高くなったので、2005年初めに「紫藤」が男性セックスワーカーのためのグループを設立したということです。
活動としては、以下のようなことをやっています。
・外展工作(outreach work)……主体的にセックスワーカーに接触して、健康や法律の相談を受ける。
・組織工作(organization work)……組織化にむけた訓練、ニュースレターの作成。
・側試服務(HIV testing)……無料でHIV検査。
(以上は、[中国語|英語])
このサイトは、まだ工事中のところが多いですが、セックスワーカーにとって必要な健康や法律の知識が得られるようになっているようです(健康資訊|法律資訊)。
追記:先日このプログでもお願いしたつくばみらい市のDV防止講演中止事件に関する署名、2600名の方が署名なさって、本日、上野千鶴子さんが同市に提出なさったようです(ブログ「みどりの一期一会」の記事)。ご協力ありがとうございました。
中国にセックスワーカーのためのセンター
先日、香港のセックスワーカーのための組織・紫藤から「女性ネットワークおよび研修センター」というサイトがリンクされていることに気がつきました。
見てみると、中国、おそらくは北京にあるセックスワーカーのためのセンターのサイトのようです。
このセンターは2006年5月に設立されたそうで、趣旨としては、「弱者である周縁の女性(辺縁婦女。セックスワーカーのことを指すようです)の心身の健康に関心を寄せ、女性自身の権益を擁護することを目標とし、差別せずに尊重するという原則にもとづいて、人間的なサービスを提供し、彼女たちの全面的な発展に関心を寄せる」といったことがうたわれています。
具体的には、セックスワーカーのための情報センターの設立、全国的な無料電話相談、調査研究などをするそうです。
それだけでなく、週一回、現地での活動(外展服務)をしているようです。すなわちセックスワーカーが働いているところに行って、彼女たちの生活や仕事の状況を調査し、彼女たちに情報提供や無料の診察をしたり、健康についてのパンフレットやコンドームを配布したりしているとのことです。
また、定期的に大学生や社会人にボランティアの研修をし、終了後にいっしょに活動をするということも書いてあります。(機構簡介「婦女網絡及培訓中心」)
中華女子学院ソーシャルワーク部(社会工作系)や中国人民大学性社会学研究所、香港の楽施会(オクッスファム)や紫藤などへのリンクが貼ってありますから、そうしたところの人々が関わっているのでしょう。
サイトには、学生らが現場での活動をしてセックスワーカーと接触した感想などもいくつか掲載されています(「外展経験的分享」)。
また、「サイトの公告」として、セックスワーカーの人権について訴えた文章も掲載されています(「網站公告」)。
見てみると、中国、おそらくは北京にあるセックスワーカーのためのセンターのサイトのようです。
このセンターは2006年5月に設立されたそうで、趣旨としては、「弱者である周縁の女性(辺縁婦女。セックスワーカーのことを指すようです)の心身の健康に関心を寄せ、女性自身の権益を擁護することを目標とし、差別せずに尊重するという原則にもとづいて、人間的なサービスを提供し、彼女たちの全面的な発展に関心を寄せる」といったことがうたわれています。
具体的には、セックスワーカーのための情報センターの設立、全国的な無料電話相談、調査研究などをするそうです。
それだけでなく、週一回、現地での活動(外展服務)をしているようです。すなわちセックスワーカーが働いているところに行って、彼女たちの生活や仕事の状況を調査し、彼女たちに情報提供や無料の診察をしたり、健康についてのパンフレットやコンドームを配布したりしているとのことです。
また、定期的に大学生や社会人にボランティアの研修をし、終了後にいっしょに活動をするということも書いてあります。(機構簡介「婦女網絡及培訓中心」)
中華女子学院ソーシャルワーク部(社会工作系)や中国人民大学性社会学研究所、香港の楽施会(オクッスファム)や紫藤などへのリンクが貼ってありますから、そうしたところの人々が関わっているのでしょう。
サイトには、学生らが現場での活動をしてセックスワーカーと接触した感想などもいくつか掲載されています(「外展経験的分享」)。
また、「サイトの公告」として、セックスワーカーの人権について訴えた文章も掲載されています(「網站公告」)。
香港でセックスワークと法律についての会議
昨年9月にこのブログで書いた香港のアイドル女性の盗撮問題ですが、昨年11月1日、盗撮写真を載せた雑誌が裁判所から猥褻出版物の指定を受けました。
詳しくは、アジア女性資料センターの『女たちの21世紀』の48号(2006年秋号)に掲載されれている、小出雅生「盗撮写真掲載誌に猥褻出版物」(同誌57頁)を見てください。
盗撮の被害にあった鐘欣桐さん(亜州明星総覧HPの中の彼女を紹介した日本語版ページ)は写真の返還と賠償を求めた訴訟も起こしているようです。
『女たちの21世紀』の上の号には、要友紀子・武田明恵「セックスワークを不安全にする越境組織犯罪防止政策」(同誌28-31頁)という文章も掲載されているのですが、その中で、昨年10月21日から2日間にわたって香港で紫藤と香港城市大学応用社会科学部との共催で「売春非犯罪化会議」という国際会議が開かれたことが2ページにわたって紹介されています。
参加したのは香港のほか、イギリス・スウェーデン・ドイツ・オーストラリア・ニュージーランドなど6カ国のセックスワーカーや研究者、NGOのメンバーだったそうです。 要さんと武田さんの文章は、日本の人身売買取締政策がセックスワーカーの排除とセックスワーカーの労働環境の悪化をもたらしたこと、その点は諸外国でも同じであることを述べたものですが、香港の「売春非犯罪化会議」でそうした諸外国の状況が話し合われたことをレポートしています。
上の会議については、『紫藤会訊』19期に「千言万語―性工作与法律」会議として掲載されています。
『女たちの21世紀』の上の号は、「不安の動員 守られるのは誰の安全なのか」という特集や「北コリア・スタディーツアー」の報告もあって、大変興味深い内容でした。
詳しくは、アジア女性資料センターの『女たちの21世紀』の48号(2006年秋号)に掲載されれている、小出雅生「盗撮写真掲載誌に猥褻出版物」(同誌57頁)を見てください。
盗撮の被害にあった鐘欣桐さん(亜州明星総覧HPの中の彼女を紹介した日本語版ページ)は写真の返還と賠償を求めた訴訟も起こしているようです。
『女たちの21世紀』の上の号には、要友紀子・武田明恵「セックスワークを不安全にする越境組織犯罪防止政策」(同誌28-31頁)という文章も掲載されているのですが、その中で、昨年10月21日から2日間にわたって香港で紫藤と香港城市大学応用社会科学部との共催で「売春非犯罪化会議」という国際会議が開かれたことが2ページにわたって紹介されています。
参加したのは香港のほか、イギリス・スウェーデン・ドイツ・オーストラリア・ニュージーランドなど6カ国のセックスワーカーや研究者、NGOのメンバーだったそうです。 要さんと武田さんの文章は、日本の人身売買取締政策がセックスワーカーの排除とセックスワーカーの労働環境の悪化をもたらしたこと、その点は諸外国でも同じであることを述べたものですが、香港の「売春非犯罪化会議」でそうした諸外国の状況が話し合われたことをレポートしています。
上の会議については、『紫藤会訊』19期に「千言万語―性工作与法律」会議として掲載されています。
『女たちの21世紀』の上の号は、「不安の動員 守られるのは誰の安全なのか」という特集や「北コリア・スタディーツアー」の報告もあって、大変興味深い内容でした。
本年の動向10―売買春に関する議論と行動
2005年12月 流氓燕、流氓燕妓女維権熱綫(権利擁護電話相談。06.1〜紅塵熱綫)開始。
2006年1月 周瑞金「両会代表も地下性産業について語ってみたら?」が東方網(ネット)に掲載。
3月 全国人民代表大会で遅夙生弁護士が売買春合法化の提案を試みるも、黒竜江代表団の会議を通らず。
5月 李扁、猥褻物品罪と売買春処罰条項について全人代常務委員会に違憲審査を要求。
6月 流氓燕、サイト「紅塵網」設立。
11月 深圳市警察が売春女性を引き回し→翌月にかけて批判おこる。
売買春については、従来から李銀河さんなどが非犯罪化を唱えてきました。
李さんは、多くのセックスワーカーが犯罪の犠牲になっていることを述べ、その背景には、彼女たちは危険な目にあっても警察に助けを求めることができないことがあることを指摘して、セックスワークの非犯罪化を提唱します。
李さんはまた、売買春は彼女たちに打撃を与えるという方法によってはなくすことはできず、職業訓練や学校こそが必要だとも言います(1)。
今年はとくに、売買春(ないしセックスワーク)に関する議論や活動が多い年だったように思います。
すでにサイト「China Super City」に、「売春の合法化論争」という題で日本語である程度まとめられていますが、それとの重複をできるだけ避けつつ、私も少し紹介したいと思います。
まず今年1月、政治ジャーナリストとして有名な周瑞金さんが、「両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の代表も地下の『性産業』について語ってみたら?」という論文を発表します。
周さんは、地下の性産業は三つの点(性病の伝染、家庭の破壊、社会的犯罪の増加)で社会に危害を与えているので、性産業の管理規則を作って、政府の公共管理に組み込むことを主張しました。
周さんは、外国には売春婦の労働組合があることや、セックスワーカーのために活動する人権活動家がいることにも少し触れていますが、全体としては社会防衛的な視点が強い議論と言えます(2)。
周さんの議論に対しては、「歴史を逆行させるものである」「禁止しても蔓延しているからといって、合法化するのはおかしい」という反論も出ます。
ただ、この反論も、売春している女性の人権という観点よりも、売買春が社会に与える危害の大きさ(公序良俗の破壊、性病、家庭破壊・犯罪の増加)を主張しているという点は同じでした(3)。
3月には、周さんの提案どおり、全国人民代表大会で遅夙生弁護士が売春合法化の提案をしようと試みます。彼女の提案は、黒竜江代表団の会議では採用されなかったので、大会には提出できなかったのですが、社会に反響を呼びます。
遅さんの提案も、基本的には性病(とくにエイズ)の蔓延を阻止するという観点からのものです。遅さんは、売春している者は、自らが病気であることも知らない場合が多いので、売春を合法化して「性従業者の行為規範」を作って、彼女たちの健康診断をすることなどを主張しています(4)。
それとは別に、2005年12月には流氓燕(葉海燕)さんが、流氓燕妓女維権熱綫(06.1〜紅塵熱綫)を始めています。これは、社会の周縁の女性、具体的には売春をしている女性向けの電話相談です。
流氓燕さんは、この電話相談の趣旨について次のように言います。
「私たちは旗幟鮮明に女性の売春に反対する。同時に、人権を尊重するという基本原則によって周縁女性を尊重し、周縁女性に関心を寄せるように呼びかける。あらゆる性暴力、または周縁女性を傷つける行為に抗議する。社会の各層が、周縁女性の過去に寛容になり、彼女たちが再び社会に溶け込む機会を与えるように呼びかける」(5)
流氓燕さんは、2006年6月には、上記と同趣旨のサイト「紅塵網(ネット)」(現在停止中)を設立します。
流氓燕さんは、この頃には「性産業の合法化」も唱えるようになります。その理由としては、エイズ防止のほか、李銀河さんと同じく、売買春が地下にもぐることによって売春女性の安全が確保できなくなることなどを挙げています(6)。
また5月には若手の性学者の李扁さんが、刑法や治安処罰法にある猥褻物品罪と売買春処罰条項について全人代常務委員会に違憲審査を要求します。
李さんは、売買春それ自体が醜悪なのではなく、醜悪なのは、売春と関係する抑圧や騙り、強奪、ペテン、暴力なのだと言います。
その醜悪さとは、具体的には、
第一に、社会資源の極端な不均衡をはっきりと示していること、とくに中国の膨大な貧困人口の問題。
第二に、女性が弱者であるために彼女たちに加えられる犯罪、具体的に暴力をふるったり、騙して連れて来てして売春を強制すること。
第三に、絶対的な権力が絶対的に腐敗することをはっきり示すこと、具体的には警察が職権を利用して、権力者どうしの争いに利用したり、売春女性を虐待したり。
第四に、公権力を乱用して、罰金を自分の懐に入れることなど。
李さんは、売買春が違法とされているがゆえに法律執行者の自由裁量権が大きすぎるので、公権力の横暴が起きていることを強調し、売買春の合法化を主張します(7)。
11月には深圳市の警察が売春の取締りの後、「公開処理大会」と称して、検挙した女性の実名や出身地を公表したうえで、市民の前で、いわば「引き回す」という事件が起きました。
こうした警察の行為に対しては庶民から強い批判が起こりました。『産経新聞』の福島香織記者によると、その背景には、貧しい農村からの出稼ぎに来て、売春せざるをえない彼女たちの境遇への同情があるといいます。また風俗産業の後ろ盾に実は公安当局者がいることへの反発もあるとのことです。上海の姚建国弁護士は、そうした警察の行為を批判する公開の書簡を全国人民代表大会に送りました(8)。
李銀河さんは、この時にも、売春を消滅させるためには、売春の非犯罪化が必要だと述べました。李銀河さんは、(李扁さんも触れていたことですが)売春に対する罰金が関係部門の資金源になっていることも指摘して、やはり売春をなくすには、彼女たちを罰するのではなく、職業教育を受けさせるべきだと主張しています(9)。
売買春をめぐる議論や論争は日本でも数多くあります。私はそれらを十分フォローしていないこともあって、私は中国の議論に関しても、うまく整理ができませんが、とりあえず、中国でもさまざまな議論や行動があることを少し紹介してみました。
(1)「李銀河:応実行売淫非犯罪化 根治対性工作者犯罪」
(2)周瑞金「“両会”代表不妨議議地下“性産業”」
(3)「譲地下“性産業”合法化能実現和諧社会?」
(4)「人大代表提議対性従業者行為規範立法」『法律与生活』2006年4月上半月刊。
(5)流氓燕が設立したサイト「中国民間女権網」(消滅)のトップページより
(6)流氓燕「我再一次旗幟鮮明地支持性産業合法化」(2006年6月4日)。ほかに、流氓燕「我們必須譲妓女合法化」(2006年3月16日)など。
(7)「李扁就“売淫合法化”・“淫穢物品罪”問題提請違憲審査(三) 第二部分 関于“売淫嫖娼”(《治安処罰法》)的違憲審査」(2006年5月22日)。この意見書は、「中国青年性学論壇」の第6期にも、反響を含めて掲載されています。
(8)「売春婦ら100人『市中引き回し』‥庶民反発 中国深圳市」Sankeiweb2006年12月7日、「売春女性の引き回しに抗議 弁護士が全人代に書状」(サイト「中国情報局」2006年12月5日)
(9)李銀河「網聊売淫問題」(サイト「中国情報局」2006年 12月7日付による日本語訳)
2006年1月 周瑞金「両会代表も地下性産業について語ってみたら?」が東方網(ネット)に掲載。
3月 全国人民代表大会で遅夙生弁護士が売買春合法化の提案を試みるも、黒竜江代表団の会議を通らず。
5月 李扁、猥褻物品罪と売買春処罰条項について全人代常務委員会に違憲審査を要求。
6月 流氓燕、サイト「紅塵網」設立。
11月 深圳市警察が売春女性を引き回し→翌月にかけて批判おこる。
売買春については、従来から李銀河さんなどが非犯罪化を唱えてきました。
李さんは、多くのセックスワーカーが犯罪の犠牲になっていることを述べ、その背景には、彼女たちは危険な目にあっても警察に助けを求めることができないことがあることを指摘して、セックスワークの非犯罪化を提唱します。
李さんはまた、売買春は彼女たちに打撃を与えるという方法によってはなくすことはできず、職業訓練や学校こそが必要だとも言います(1)。
今年はとくに、売買春(ないしセックスワーク)に関する議論や活動が多い年だったように思います。
すでにサイト「China Super City」に、「売春の合法化論争」という題で日本語である程度まとめられていますが、それとの重複をできるだけ避けつつ、私も少し紹介したいと思います。
まず今年1月、政治ジャーナリストとして有名な周瑞金さんが、「両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の代表も地下の『性産業』について語ってみたら?」という論文を発表します。
周さんは、地下の性産業は三つの点(性病の伝染、家庭の破壊、社会的犯罪の増加)で社会に危害を与えているので、性産業の管理規則を作って、政府の公共管理に組み込むことを主張しました。
周さんは、外国には売春婦の労働組合があることや、セックスワーカーのために活動する人権活動家がいることにも少し触れていますが、全体としては社会防衛的な視点が強い議論と言えます(2)。
周さんの議論に対しては、「歴史を逆行させるものである」「禁止しても蔓延しているからといって、合法化するのはおかしい」という反論も出ます。
ただ、この反論も、売春している女性の人権という観点よりも、売買春が社会に与える危害の大きさ(公序良俗の破壊、性病、家庭破壊・犯罪の増加)を主張しているという点は同じでした(3)。
3月には、周さんの提案どおり、全国人民代表大会で遅夙生弁護士が売春合法化の提案をしようと試みます。彼女の提案は、黒竜江代表団の会議では採用されなかったので、大会には提出できなかったのですが、社会に反響を呼びます。
遅さんの提案も、基本的には性病(とくにエイズ)の蔓延を阻止するという観点からのものです。遅さんは、売春している者は、自らが病気であることも知らない場合が多いので、売春を合法化して「性従業者の行為規範」を作って、彼女たちの健康診断をすることなどを主張しています(4)。
それとは別に、2005年12月には流氓燕(葉海燕)さんが、流氓燕妓女維権熱綫(06.1〜紅塵熱綫)を始めています。これは、社会の周縁の女性、具体的には売春をしている女性向けの電話相談です。
流氓燕さんは、この電話相談の趣旨について次のように言います。
「私たちは旗幟鮮明に女性の売春に反対する。同時に、人権を尊重するという基本原則によって周縁女性を尊重し、周縁女性に関心を寄せるように呼びかける。あらゆる性暴力、または周縁女性を傷つける行為に抗議する。社会の各層が、周縁女性の過去に寛容になり、彼女たちが再び社会に溶け込む機会を与えるように呼びかける」(5)
流氓燕さんは、2006年6月には、上記と同趣旨のサイト「紅塵網(ネット)」(現在停止中)を設立します。
流氓燕さんは、この頃には「性産業の合法化」も唱えるようになります。その理由としては、エイズ防止のほか、李銀河さんと同じく、売買春が地下にもぐることによって売春女性の安全が確保できなくなることなどを挙げています(6)。
また5月には若手の性学者の李扁さんが、刑法や治安処罰法にある猥褻物品罪と売買春処罰条項について全人代常務委員会に違憲審査を要求します。
李さんは、売買春それ自体が醜悪なのではなく、醜悪なのは、売春と関係する抑圧や騙り、強奪、ペテン、暴力なのだと言います。
その醜悪さとは、具体的には、
第一に、社会資源の極端な不均衡をはっきりと示していること、とくに中国の膨大な貧困人口の問題。
第二に、女性が弱者であるために彼女たちに加えられる犯罪、具体的に暴力をふるったり、騙して連れて来てして売春を強制すること。
第三に、絶対的な権力が絶対的に腐敗することをはっきり示すこと、具体的には警察が職権を利用して、権力者どうしの争いに利用したり、売春女性を虐待したり。
第四に、公権力を乱用して、罰金を自分の懐に入れることなど。
李さんは、売買春が違法とされているがゆえに法律執行者の自由裁量権が大きすぎるので、公権力の横暴が起きていることを強調し、売買春の合法化を主張します(7)。
11月には深圳市の警察が売春の取締りの後、「公開処理大会」と称して、検挙した女性の実名や出身地を公表したうえで、市民の前で、いわば「引き回す」という事件が起きました。
こうした警察の行為に対しては庶民から強い批判が起こりました。『産経新聞』の福島香織記者によると、その背景には、貧しい農村からの出稼ぎに来て、売春せざるをえない彼女たちの境遇への同情があるといいます。また風俗産業の後ろ盾に実は公安当局者がいることへの反発もあるとのことです。上海の姚建国弁護士は、そうした警察の行為を批判する公開の書簡を全国人民代表大会に送りました(8)。
李銀河さんは、この時にも、売春を消滅させるためには、売春の非犯罪化が必要だと述べました。李銀河さんは、(李扁さんも触れていたことですが)売春に対する罰金が関係部門の資金源になっていることも指摘して、やはり売春をなくすには、彼女たちを罰するのではなく、職業教育を受けさせるべきだと主張しています(9)。
売買春をめぐる議論や論争は日本でも数多くあります。私はそれらを十分フォローしていないこともあって、私は中国の議論に関しても、うまく整理ができませんが、とりあえず、中国でもさまざまな議論や行動があることを少し紹介してみました。
(1)「李銀河:応実行売淫非犯罪化 根治対性工作者犯罪」
(2)周瑞金「“両会”代表不妨議議地下“性産業”」
(3)「譲地下“性産業”合法化能実現和諧社会?」
(4)「人大代表提議対性従業者行為規範立法」『法律与生活』2006年4月上半月刊。
(5)流氓燕が設立したサイト「中国民間女権網」(消滅)のトップページより
(6)流氓燕「我再一次旗幟鮮明地支持性産業合法化」(2006年6月4日)。ほかに、流氓燕「我們必須譲妓女合法化」(2006年3月16日)など。
(7)「李扁就“売淫合法化”・“淫穢物品罪”問題提請違憲審査(三) 第二部分 関于“売淫嫖娼”(《治安処罰法》)的違憲審査」(2006年5月22日)。この意見書は、「中国青年性学論壇」の第6期にも、反響を含めて掲載されています。
(8)「売春婦ら100人『市中引き回し』‥庶民反発 中国深圳市」Sankeiweb2006年12月7日、「売春女性の引き回しに抗議 弁護士が全人代に書状」(サイト「中国情報局」2006年12月5日)
(9)李銀河「網聊売淫問題」(サイト「中国情報局」2006年 12月7日付による日本語訳)
第1回香港セックスワーカー映画祭
これまで6回に分けて、本年の今までの中国の女性やジェンダーに関わる動きを紹介してきました。
まだご紹介すべきことはあるのですが、それはおいおいやっていくことにして、今後はその時々のニュースも紹介していきます。
ただし私の時間の都合で、更新はそれほど頻繁にできないと思います。
さて、8月も末になりましたが、今月は、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の第36回会期(7日〜25日)で、中国の第5次・第6次レポートの審議がおこなわれました。
これについては、CEDAWの最終コメント(中国政府への勧告など)が出たときに報告することにして、今回は同じ頃おこなわれた、次のことについて簡単に報告します。
8月11日〜13日に、第1回香港セックスワーカー映画祭(香港首届性工作者電影節)が開催されました。
紫藤が主催し、游静(ヤウ・チン)が企画して、何春蕤(ジョセフィン・ホー)、戴錦華などの著名人もゲストに招いて、紫藤活動センターでおこなわれました。
游静さんは、香港の映画監督で、初めてレズビアンであることをカミングアウトした方としても知られています。
何春蕤さんは、台湾の国立中央大学性/別研究室の教員で、台湾のセックスワーカーの人権組織である日日春関懐互助協会(日日春、COSWAS)(1)とも深く関わっていらっしゃいます。
戴錦華さんは、中国本土で、文学芸術(とくに映画)をジェンダーの視点から研究している方です(中国学術論壇のページ|銀海サイトの専欄)。
紫藤は、1996年9月に香港で結成された、セックスワーカーのための組織です(2)
紫藤については、アジア女性資料センターのスタディ・ツアーで紫藤を訪問された長田円香さんが、同センター発行の『女たちの21世紀』の41号(2005年冬号)で簡単に紹介しておられます(76-77頁)。
長田さんによると、香港にはセックスワーカーが40万人いて、そのほとんどが中国本土から来た女性だそうです。
紫藤は、彼女たちを対象に、法律相談やカウンセリング、無料婦人科検診・性病検査などをおこなっているほか、研究や出版、政策的な要求もおこなっています。
映画祭は、二つの部分に分かれています。
第一は、過去数十年の映画におけるセックスワーカーたちの姿を紹介・分析する企画です。過去の映画ではセックスワーカーはさまざまな形で描かれてきましたが、たとえば、もっぱら社会の犠牲者としてだけ描写されてきた点などを問題にしています。
第二に、セックスワーカーが主体となった映画の上映です(3)。
次のような映画が放映されとのことです(恥ずかしながら、すべて未見)(4)。
[口+麥]相害(Street Survivor)台湾、日日春関懐互助協会、2006
夜仙曲(Tales of The Night Fairies)インド、Shohini Ghosh、2002
美国「小姐」上電影(Scarlot Harlot on Sex TV)カナダ、Judith Pyke、2004
親善大使企華爾街(Scarlot Harlot's Interstate Solicitation Tour)アメリカ、Carol Leigh、1991
公娼啓示録(The Story of the Taipei Licensed Prostitute)台湾、蔡崇隆、1998
異性工作者(Straight for the Money:Interview with Queer Sex Workers)アメリカ、Hima B、1994
性工作者宣言(Sex Workers' Manifesto)インド、C.J Roessler with the assistance of Carol Leigh、1997
假想看不見(To See,or Not to See)台湾、蔡一峰、2003
姉姉妹妹和紫藤(Sisters and Ziteng)香港、江瓊珠、2006
(1)日日春など台北市のセックスワーカーの運動についてはweb上でも、水島希さんがオンラインマガジン『セクシュアル サイエンス』に書かれた記事「セックスワーカー研究(2) 台北市公娼たちの労働運動に学ぶ」を読むことができます。
(2)紫藤HP
(3)紫藤会訊、第十八期
(4)プログラムと各映画の内容についての詳しい説明は、共催の女同学社のHPの中の第一届性工作者電影節のページを参照してください(中国語だけでなく、英語の説明も併記されています)。
まだご紹介すべきことはあるのですが、それはおいおいやっていくことにして、今後はその時々のニュースも紹介していきます。
ただし私の時間の都合で、更新はそれほど頻繁にできないと思います。
さて、8月も末になりましたが、今月は、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の第36回会期(7日〜25日)で、中国の第5次・第6次レポートの審議がおこなわれました。
これについては、CEDAWの最終コメント(中国政府への勧告など)が出たときに報告することにして、今回は同じ頃おこなわれた、次のことについて簡単に報告します。
8月11日〜13日に、第1回香港セックスワーカー映画祭(香港首届性工作者電影節)が開催されました。
紫藤が主催し、游静(ヤウ・チン)が企画して、何春蕤(ジョセフィン・ホー)、戴錦華などの著名人もゲストに招いて、紫藤活動センターでおこなわれました。
游静さんは、香港の映画監督で、初めてレズビアンであることをカミングアウトした方としても知られています。
何春蕤さんは、台湾の国立中央大学性/別研究室の教員で、台湾のセックスワーカーの人権組織である日日春関懐互助協会(日日春、COSWAS)(1)とも深く関わっていらっしゃいます。
戴錦華さんは、中国本土で、文学芸術(とくに映画)をジェンダーの視点から研究している方です(中国学術論壇のページ|銀海サイトの専欄)。
紫藤は、1996年9月に香港で結成された、セックスワーカーのための組織です(2)
紫藤については、アジア女性資料センターのスタディ・ツアーで紫藤を訪問された長田円香さんが、同センター発行の『女たちの21世紀』の41号(2005年冬号)で簡単に紹介しておられます(76-77頁)。
長田さんによると、香港にはセックスワーカーが40万人いて、そのほとんどが中国本土から来た女性だそうです。
紫藤は、彼女たちを対象に、法律相談やカウンセリング、無料婦人科検診・性病検査などをおこなっているほか、研究や出版、政策的な要求もおこなっています。
映画祭は、二つの部分に分かれています。
第一は、過去数十年の映画におけるセックスワーカーたちの姿を紹介・分析する企画です。過去の映画ではセックスワーカーはさまざまな形で描かれてきましたが、たとえば、もっぱら社会の犠牲者としてだけ描写されてきた点などを問題にしています。
第二に、セックスワーカーが主体となった映画の上映です(3)。
次のような映画が放映されとのことです(恥ずかしながら、すべて未見)(4)。
[口+麥]相害(Street Survivor)台湾、日日春関懐互助協会、2006
夜仙曲(Tales of The Night Fairies)インド、Shohini Ghosh、2002
美国「小姐」上電影(Scarlot Harlot on Sex TV)カナダ、Judith Pyke、2004
親善大使企華爾街(Scarlot Harlot's Interstate Solicitation Tour)アメリカ、Carol Leigh、1991
公娼啓示録(The Story of the Taipei Licensed Prostitute)台湾、蔡崇隆、1998
異性工作者(Straight for the Money:Interview with Queer Sex Workers)アメリカ、Hima B、1994
性工作者宣言(Sex Workers' Manifesto)インド、C.J Roessler with the assistance of Carol Leigh、1997
假想看不見(To See,or Not to See)台湾、蔡一峰、2003
姉姉妹妹和紫藤(Sisters and Ziteng)香港、江瓊珠、2006
(1)日日春など台北市のセックスワーカーの運動についてはweb上でも、水島希さんがオンラインマガジン『セクシュアル サイエンス』に書かれた記事「セックスワーカー研究(2) 台北市公娼たちの労働運動に学ぶ」を読むことができます。
(2)紫藤HP
(3)紫藤会訊、第十八期
(4)プログラムと各映画の内容についての詳しい説明は、共催の女同学社のHPの中の第一届性工作者電影節のページを参照してください(中国語だけでなく、英語の説明も併記されています)。
