2018-02

ホモフォビア教科書是正運動の展開――出版社・編者に働きかけた成果、民事訴訟、「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」の限界

<目次>
はじめに
一 47冊の教材の出版社や編者に働きかけ、20冊に是正を約束させる
二 教科書の出版社に対する民事訴訟
三 「中国の精神障害の分類と診断基準 (第3版)」の限界が露呈
おわりに

はじめに

中国では、2001年に中華精神病学会が決定した「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」によって、同性愛は精神病とは見なされなくなり、「非病理化」されたと言われる。しかし、大学教科書においては、その変化が反映されているのは今なお一部にとどまり、多くの教科書が、同性愛を「障害」や「異常」として記している。中国の同性愛問題についての活動家は、それらの教科書を「ホモフォビア教科書 (恐同教科書)」として批判してきた。

秋白さんは、その点に関する教育部の責任を問う裁判を起こしたが、2016年9月、一審で敗訴したのに続き、2017年3月には二審(中国では最終審)でも敗訴した(本ブログの記事「ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴」参照)。

一 出版社や編者に働きかけた教材47冊のうち、20冊に是正を約束させる

秋白さんはそれに屈せず、今度は、誤りがある教材の出版社や編者に直接に働きかける道を選んだ。秋白さんは裁判に敗訴したときは、すでに問題がある教材の目録を作成しており、今後、10人の編者に対して、教材から同性愛に汚名を着せる内容をなくすよう手紙を出して、その次には電話やメールで説得するつもりだった。

さらに、そうした活動を一緒にしてくれる人も募集した(1)。このアクションには、すでに出版社や編者への働きかけをしてきた西西さんも参加した(2)。秋白さんは、裁判中から、こうしたアクションなどにかかる費用として、教材の購入費、手紙の郵送料、交通費・宿泊費などを計算しており、カンパを求めてきた(3)

4月から6月にかけて、秋白さんらは、集まった仲間たちとともに、同性愛に対する誤った記述をしている全国の47冊の教材について、その出版社22社と編者79人に対して、速達や電子メールによって、99通の手紙を送った。

7月12日までに計29通の返事が届いた。教科書ごとに見ると、以下のような結果だった。

・教材の誤りを認め、修正を承諾した―――――――――20冊
・教材に誤りが存在することを否認した――――――――2冊
・中立。同性愛に対する認識に論争があることは認めた―3冊
・あいまいな態度。「事情を斟酌して考慮する」など―――4冊
・何の回答もまだ受け取っていない――――――――――18冊

修正を承諾した返事としては、たとえば『大学生心理健康』の編者の周春明さんは、「新版では変更をする。深くお詫びしたい。私たちは、大学生の心理的健康という科目を教えるすべての先生に、この章の内容について正しく話してもらって、学生が誤解しないように求める」というきちんとした回答をした。

また、『婚姻と相続法学(第5版)』を出版している中国政法大学出版社らは、「ちょうど本書の改訂をしているところなので、一週間以内に編者の先生に渡して確認する」という答えがかえってきた。続いて編者の夏吟蘭さんから「以前の私たちの同性愛についての認識は、たしかに伝統的観念の影響を受けていた。今後この教材を改訂するときは、必ずこの部分の内容について修正する。あなたが意見を出してくれたことに非常に感謝する」という返事がきた。

逆に、誤りを認めない返事としては、『現代青年心理学』の編者・張進輔さんの次のような返事があった。「同性愛は当然、性変態である。性変態は精神病と同じではない。変態は異常な変化の状態を指している」、「人が、もしある面が異常で、社会生活に適応が困難ならば、まず改めることを考えるべきである。同性愛者も自分の感覚や興味、習慣だけを考えるのではなく、親戚や友人の感覚や圧力についても気にかけなければならない」、「私たちは、多くの人が同性愛者にならないように、できるだけ早く、青少年の中の同性愛的傾向がある者を発見し、治療・矯正しなければならない」、「現在同性愛者が増加しているのは、ほかでもなく社会が管理を緩めた結果である」、「同性愛者は、自然の規定に背いた行為方式を選択した以上、さまざまな圧力と困難を受けるのが必然であり、伝統的社会や他の人の同性愛に対する態度と見方を変えようと試みることは、不必要かつ不可能である。」

秋白さんらは、こうした人に対しても、必死で冷静になってあらゆる方法で議論をしたが、うまくいかなかったという。

また、態度があいまいな回答としては、「あなたの観点と提案は価値があるので、私は非常に重視し、まじめに考慮する」、「あなたのメールを受け取った。私たちはまじめに対応する」といったものがあった(4)

しかし、いずれにせよ、出版社や編者の4割が訂正を承諾したことは相当の成果だと言えよう。

二 教科書の出版社に対する民事訴訟

7月6日、広州の大学生・西西さんは、ホモフォビア的記述のある張将星・曾慶編『大学生心健康教育』(2013年 曁南大学出版社)を出版している曁南大学出版社と同書を販売していた京東ネットを、同書の内容に誤りや誤解を招く箇所があるなど、明らかに同書の質に問題があることによって消費者に損害を与えたとして、江蘇省宿遷市宿豫区法院に訴えた。

同書のどのような記述が問題だったかというと、同書は、「よく見られる性心理障害」の中の一つに「同性愛」を挙げていた。また、「同性愛」について、「性愛の面での紊乱、あるいは性愛の対象の倒錯であると考えられる」と記していた。

2016年6月から、西西さんは、同書の編者や出版社の副編集長に対して、何度もメール送ったり、面談をしたり、300人以上による連名の手紙を手渡ししたりして、そうした記述を是正するように訴えてきた。しかし、編者は対話に応じなくなり、副編集長も西西さんの訴えを編者に転送する以上のことはしなかった(これまでの経過については、本ブログの記事「大学のホモフォビア教科書の編者・出版社に対する働きかけ」の参照)。

そこで、西西さんは、上記のように7月6日に、江蘇省宿遷市宿豫区法院に訴えを起こしたところ、17日に同法院がこの訴えを受理したという通知が来た(5)

しかし、曁南大学出版社のほうは、その件について記者に取材を受けた際、「すでに2017年3月に新版を出しており、その中では同性愛に関する部分を削除している」と述べた。

けれども、西西さんは編者からそのことを知らされていなかった。

また、西西さんが新版を購入して見てみたところ、教科書は一部、修正されていたが、「同性愛」を「性心理障害」の一つとして挙げている点には変わりがなかった。また、新版は「大学生は、不法なルートで性に関する音声・画像の製品・物品に接触するべきではない」と述べているのだが、その理由として「性的指向に偏りを引き起こす可能性がある」ことが書いてあった(6)

この裁判の審理は、10月31日の午前9時から裁判所の第二法廷でおこなわれることも決まった(7)

しかし、27日、裁判官がこの件についてはもっと多くの研究時間が必要だと述べ、開廷が延期されることになったと西西さんが伝えた(8)。このことは、裁判所が本気でこの裁判に取り組んでいることを示しているのだろうか? もしそうだとしたら、期待が持てるのだが‥‥。

三 「中国の精神障害の分類と診断基準 (第3版)」の限界が明らかに(9)

西西さんの注意を引いたのは、新版は、中国で同性愛を非病理化したと言われる「中国の精神障害の分類と診断基準(Chinese classification of mental disorders )(第3版)」(CCMD-3)を引用しつつ、同性愛は性心理障害であると述べている点だった。

といっても、CCMD-3は「同性愛は性心理障害である」とは書いていない。しかし、この教科書は、それ以外の箇所自体は、たしかにCCMD-3の中から引用していた。

なぜ、中国で同性愛を非病理化したと言われるCCMD-3が、同性愛は性心理障害であることの根拠に用いられたのか? 

CCMD-3は、「性的指向障害(性変態)」という概念はなくしていないのである。ただし、CCMD-3の言う「性的指向障害(性変態)」とは、「さまざまな性の発育と性の指向によって起きる障害を指し、性愛自身は必ずしも異常ではない。しかし、ある人が性の発育と性的指向が心理的障害を伴う、たとえば、そうであることを希望せず、あるいは躊躇して決められず、そのために、焦慮、憂鬱、内心の苦痛を感じ、ある者は治療によって変えようとする」というものである(10)

西西さんは、以下のように指摘している。

CCMD-3は、同性愛者の自己感覚が良好で、性的指向を変えたいと思っていないならば(自我調和的同性愛)、同性愛を異常だとはみなしてはならないと言っているが、そうでない同性愛(自我不調和的同性愛)については、異常だとみなしている。

これは、CCMD-3は、同性愛という性的指向自体は病気だとはみなしていないとはいえ、その同性愛の非病理化と脱スティグマ化が、けっして徹底したものではないことを意味している。

この点は、CCMD-3が制定された経過と関係していることが指摘されている。CCMD-3制定当時、専門家内部で激烈な議論があり、病理化と非病理化の両派が対峙して譲らなかった。しかし、社会のセクマイフレンドリーな人々との協力によって、同性愛は最終的には非病理化を実現した。しかしながら、CCMD-3には、「心理的障害」・「自我不調和的」という記述が残った。この残余は、まさに当時の両派の妥協の結果だという(11)

CCMD-3と異なり、世界保健機関の「国際疾病分類(International Classification of Diseases)第10版」(ICD-10)とアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版」(DSM-5)は、それぞれ1990年と1973年に同性愛を完全に削除することによって、同性愛の徹底的な非病理化を実現している。

これに対して、CCMD-3は、「自我不調和」的同性愛を性心理障害とみなしており、実は国際基準から遅れている。

こうしたCCMD-3の記述には、以下のような問題がある。

(1)性的指向は、障害や心理的問題として見なしてはならない。同性愛者に「自我不調和」という心理的問題、すなわち焦慮、憂鬱、苦痛、治療による改変要求といったことが起きる原因は、けっして同性愛という性的指向自体にあるのではなく、社会の中の同性愛に対するスティグマ、差別、排斥によって自己を受け入れられなかったり、他人との交際の中での障害があったりすることなどがもたらす心理的問題である。

(2)CCMD-3の性的指向障害という情況は、もっぱら「自分を受け入れられない同性愛とバイセクシュアル」を指しており、異性愛には適用されない。CCMD-3が同性愛とバイセクシュアルだけを提示しているのは、実際は、異性愛だけを唯一の自然で、正統な、合法的な性的指向であり、その他は、区別して扱わなければならない、不正常で、非正統的ものだと仮定していることを意味している。

以上のようにCCMD-3が保守的で、立ち遅れていることは、同性愛の脱スティグマ化にとって、以下のような障害と困難をもたらしている。

【同性愛矯正治療にとって】CCMD-3に同性愛者に対する差別的な記述が存在しているうえに、中国の心理カウンセラーの訓練システムでは、多元的ジェンダーの知識が非常に欠けているために、本来の意図としては自分の性的指向を受け入れられない同性愛者の精神的健康のために「自我不調和」的同性愛を治療が必要な範疇にとどめたことが、同性愛の「矯正治療」に変わってしまうと同時に、利益を追い求める不良な動機の医療機関と心理カウンセラーにつけ込む隙を与えて、違法な性的指向の矯正治療をおこなわせた(12)

【「教材の脱スティグマ化」にとって】同性愛を病理化している教材の内容を修正するように編者や出版社を説得しているプロセスにおいて、以下のように、CCMD-3は編者が教材の修正を拒否する口実になっている。

1.ある編者は、その教材に誤りはないと言うために、CCMD-3もまだ同性愛を心理的障害として挙げているから、この言い方は、CCMD-3という基準に合致していると詭弁を弄した。

2.ある編集者たちは、教材の中でCCMD-3がまだ「自我不調和的同性愛」を性の心理のせいにしていることを理由にして、「同性愛という性的指向を矯正する」ことを「助けを求めるものを援助する」方法として述べている。

3.『大学生心理健康教育』の新版の改訂の時に出現した問題である。
 (1)いかなる性的指向自身も偏向や障害、心理的問題ではないので(異性愛、同性愛、バイセクシュアルを含めて)、「大学生は、不法なルートで性に関する音声・画像の製品・物品に接触するべきではない。なぜなら、その中から不適切あるいは誤った性の情報を得るかもかもしれず、さらに重大なことには、性的指向に偏向に出現させるかもしれない」という文の中の「性的指向に偏向が出現する」という言い方は誤っている。同時に、179頁の「性的指向に偏向が出現する」と178頁の性心理障害の同性愛の間には、間テキスト性(=テキストが相互に関連しているように読まれること、といった意味のようです)が存在しているので、「性的指向に偏差が出現する」の中の「性的指向」は、「同性愛」であると非常に理解されやすく、そのために誤解が生じやすい。
 (2)教材が、CCMD-3が「同性愛を性心理障害として挙げている」とし、それを「性的指向障害」に分類している。しかし、CCMD-3は「自我不調和的同性愛」だけを「性心理障害」とみなしており、同性愛を全体として性的指向障害には分類していない。それゆえ、教材の中のCCMD-3の記述は誤っている。
 同時に、『大学生心理健康教育』はCCMD-3の原文をそのままコピーペーストしていて、編者はCCMD-3に対してまったく解析をしておらず、そのうえCCMD-3の原文は曖昧さと誤解を招く点があるので、多元的ジェンダーの知識と専門の訓練を受けていない学生は、その中に引用した原文を、同性愛は心理的障害の一つなのだと理解してしまいやすい。
 (3)新版の教材はCCMD-3だけを引用しており、かつCCMD-3は2001年以来何ら更新されていないので、知識のレベルから見て、非常に立ち遅れている。それなのに、この教材はその他の権威ある基準であるICD-10とDSM-5のようなものを参考にしていないので、同性愛についての記述が非常に一面的である。

西西さんは、国内の心理学と精神医学の専門の教材の中では、銭銘怡『変態心理学』(2006年 北京大学出版社)が最も全面的かつ正確な教材だと評価している。その中ではCCMD、ICD、DSMの同性愛に対する見方を比較して、国内外の同性愛の脱病理化のプロセスを詳細に記述し、同時に「来訪者が自分の性的指向を受け入れるように援助する」ことを通じてその心理的問題を改善するよう提唱しているからである。

それゆえ、西西さんは「曁南大学出版社は、教材に修正をしたとはいえ、新版の教材にも誤り、誤解を招く記述、一面的な記述がある。だから、私は曁南大学出版社と京東に対する提訴を撤回せずに、『大学生心理健康教育』が一層の修正をするように求めてく」と述べている。

同時に、西西さんは、『大学生心理健康教育』の修正が不徹底であることは、自分に、以下のような問題を考えさせると述べている。

(1)同性愛がCCMD-3ではまだ徹底的な脱病理化がなされていないという情況の下で、私たちは、どのようにしたら出版社と編者を説得して、新版の『大学生心理健康教育』に出現したような問題を出現させないようにするか?

(2)結局、教材をどのように書けば、LGBTに対してフレンドリーで、かつ全面的になるのか?

(3)精神的疾病や心理的健康を中心とした教材の中で(たとえば変態心理学)、教材は同性愛を「性心理障害」という一節の中で論じる以外に、どのように扱えばいいのか? あるいは、新しい教学体系の中で、同性愛は「精神的疾病」という枠組みの中でだけ議論しないようにするのか?

(4)私たちはCCMD-3の「性的指向障害」および「同性愛」という項目における保守的な扱いをどのように理解すればいいのか? 精神的疾病の判定は純粋の科学的実証なのか、それとも道徳的判断が混じるか? 私たちはどのように理解すればいいのか?

おわりに

秋白さんらの働きかけによって出版社や編者に働きかけた教材47冊のうち、20冊に是正を約束させることができたのは、秋白さんらがこれまで運動を続けてきたことによって、教科書の問題点を指摘する主張に対する理解が広がってきたことの反映ではないかと思う。

西西さんが教科書の出版社に対する民事訴訟を起こしたことにも見られるように、ほんとうに粘り強いたたかいをしている。

CCMD-3の限界については、早くから批判が出されているが(13)、運動が発展したことによって、そのような限界に直面したことは、理論的批判とはまた別の意義があろう。

(1)以上は、「三诉教育部|败诉,终结还是开始?」2017-03-11 秋白 秋白的自由野。
(2)恐同教材就像巨石,她选择做一个推石头的人」NGOCN 2017-08-23 11:07:45。
(3)筹红包/祝福,支持秋白2017年改变10本毒教材! 」2017-01-31 秋白 秋白的自由野。
(4)以上は、陈秋颜「捷报|四成编者/出版社承诺修正教材中的“恐同”内容」知乎专栏2017年9月16日。
(5)-推石头的西西弗斯 「教材“恐同”,女大学生诉暨大出版社、京东在江苏获立案!」2017-09-04 19:58:05。
(6)-推石头的西西弗斯「分析|暨大出版社,你真的有诚意修改教材吗?! 」2017-09-04 20:27:16。
(7)-推石头的西西弗斯「国内首例“恐同”教材民事诉讼案,31日开庭!」2017-10-25 23:51:26。
(8)-推石头的西西弗斯 10月27日 12:27
(9)この節は、主に、-推石头的西西弗斯「分析|暨大出版社,你真的有诚意修改教材吗?! 」2017-09-04 20:27:16によっているが、節の中で注記した個所は、その注記に詳しい。
(10)CCMD—3 《中国精神障碍分类及诊断标准》
(11)大咪「在中国同性恋还是病吗?|CCMD-3和同性恋的那些事」知乎专栏。
(12)この点については、「同性恋在中国真的去病了吗?」2017-04-20 LGBT权促会。
(13)『桃紅満天下』増刊38期(2001年)「中国同性恋非病理化专辑」、童戈「中国同性性活动的历史沿革和现状」童戈ブログ(http://tongge2005.blog.sohu.com)2010年3月26日。

トランスジェンダー団体が次々に設立、継続的に活動

<目次>
はじめに
1 トランスジェンダーセンター
 (1)「トランスジェンダーの声」――活動家を招いてオンラインで語り合い
 (2)広州以外にも広がる活動
 (3)トランスジェンダーに対するDVについての取り組み
 (4)センターの現在――「トランスジェンダー」の定義と3つのグループ
 (5)h.cさんの話
2 トランスチャイナ
3 トランスジェンダーシェルター
4 トランスジェンダー生活社
5 他のLGBT団体のトランスジェンダー問題への取り組み
 (1)北京LGBTセンター
 (2)同語
おわりに

はじめに

前回は、2016年に提訴されたトランスジェンダーの就職差別裁判についてご紹介した(「トランスジェンダーの就職差別、労働紛争訴訟と人格権訴訟の両方で勝訴」)。こうしたトランスジェンダーの活動が、最近、活発化しているように思う。

この1、2年、組織の面においても、トランスジェンダー独自の団体が次々に設立され、継続的に活動している。

トランスジェンダーに関しては、2006年ごろ、「トランス中国」(この名称になるのは2008年だが)という団体ができ、電話相談もおこなった。また、LGBT関係の組織の中でトランスジェンダーをテーマにした集いがおこなわれることもあった。2009年3月には、北京LGBTセンターの中に、バイセクシュアルやトランスジェンダーのための「無界限小組」が設立された(「各地のセクシュアル・マイノリティのサイト(4)──トランスジェンダーの状況・サイト・思想」)。しかし、そうした動きは、数年前まではあまり目立たなかったように思う。

以下、最近のトランスジェンダー団体の活動を、団体ごとに見てみよう。

1 トランスジェンダーセンター

2016年5月、F女権小組(1)の中核メンバーであるトランスジェンダーレズビアンのh.cさんらが、広州に「トランスジェンダーセンター」を設立した(2)。h.cさんが「別の2人のフェミニストの若者といっしょにトランスジェンダーセンターを設立した」と記している記事もあることから見ても(3)、少なくとも当初はフェミニストが主導して設立したと言えそうだ。

トランスジェンダーセンターは、トランスジェンダーに交友の場を提供したり、集会・サロン・映画鑑賞会・読書会などをおこなうとしている(4)

具体的には、同センターの微博を見ると、まず2016年6月5日に、「広州トランスジェンダー顔合わせパーティー」をおこなうと書かれている(5)

また、トランスジェンダーセンターは、金曜日に定期的に活動をしているようだ。たとえば、2017年3月3日には、「トランスジェンダーをテーマにした軽いゲームの夜」を広州でおこなうと書かれている。この日は、ゲームをしたのちに、参加者がジェンダーアイデンティティと関係がある家庭での話をしたり、テーマを決めた弁論(この日は、「すでに成年になっていて、一定の経済的能力のある人も、父母の許可が得られなければ手術ができないか?」など)をしたりするという(6)

また、同年11月11日-13日には、北京LGBTセンターとトランスジェンダーセンターが主催して、広州で、カウンセラー・教師・ソーシャルワーカー・医師など、セクシュアル・マイノリティに接する人々のために、セクシュアル・マイノリティにフレンドリーなカウンセリングをするための研修を実施している。その研修は、3日間にわたるもので、具体的には、7人のジェンダー/セクシュアリティに関する研究者やカウンセリング指導者を招いて、7つのワークショップをしたり、L・G・B・Tそれぞれの代表をゲストとして招いて参加者との交流をおこなったりしている(7)

(1)「トランスジェンダーの声」――活動家を招いてオンラインで語り合い

2017年の元旦、トランスジェンダーセンターは、今年1年のうちに、国内の10人のトランスジェンダーの先駆者らを集めて、9回、「トランスジェンダーの声」というオンライン上の分享会(シェアリングをする会)を開くことを発表した。以下が、それぞれの会のテーマとゲストである(8)

第一期・上 菜食主義クィアフェミニストとトランスジェンダーレズビアン
1月14日
 小雲:トランスジェンダーレズビアン。南京・北京・東北を行き来するフェミニストで、レズビアン運動の参加者。2013年にレズビアン文化やそのコミュニティに接し、その後、菜食主義フェミニズムとレズビアンサブカルチャーに関心を持つ。トランスジェンダー女性という自らのアイデンティティにもとづいて、フェミニズムとジェンダーの探求は、単なる知識の学習ではなく、生活方式の探求であることに確信を持っている。
 h.c:菜食主義クィアフェミニスト、トランスジェンダーレズビアン。トランスジェンダーセンター現代表。

第一期・下 トランスジェンダーのカミングアウト指南
1月15日
 皮皮:トランスジェンダー女性、パンセクシュアル。現在は主にトランスジェンダーに関する相談の活動に従事している。トランスジェンダー生活社と北京LGBTセンターでボランティアをしている。

第二期・上 第三のジェンダーのトランス――非二元的なジェンダー区分
1月22日
 方羽然:トランスジェンダーの第三のジェンダーのパンセクシュアル。本当に男と女だけなのか? 何故に男と女なのか~。

第二期・下 《陰道欲言》 (《ヴァギナ・モノローグス》の中国版の一つ) から、トランスジェンダー女性と就職差別を語る
 然然:トランスジェンダー女性で、ホルモン剤を服用して3年。蘇州LES GO公益小組(豆瓣微博)のメンバーとして、蘇州とその周辺のフェミニズム運動とLGBTグループの発展と交流に尽力している。2015年と2016年に《陰道欲言》の編集と演出をする。2015年には、その中の〈トランスジェンダー〉の脚本を書いて出演もし、2016年にはその中の〈就職差別〉の脚本を書いて出演した。

第三期・上 トランスジェンダーの医療における権利侵害事件での権利擁護
 雪小霖:調香師、トランスジェンダー女性。「トランスジェンダー危機援助と相談公益グループ」(=後述の「トランスジェンダーシェルター」を運営しているグループであろう)の創始者・運営者として、トランスジェンダーのための緊急保護やフレンドリーな医療のリソースの提案をしたり、トランスジェンダーの法律上の性別変更の提案などをするサービスプロジェクトをおこなっている。

第四期 下 トランスジェンダーの婚姻・子ども・父母家庭
 A哥:「同性愛者の親と友人の会(同性恋親友会)」の中核的ボランティアで、トランスジェンダーセンターの中核メンバーの1人で、レインボー医療(彩虹医療[LGBTiBaby])創始者。トランスジェンダー男性(FtM)。

第五期 学校はいかにしてトランスジェンダーフレンドリーな政策を発表するか
 絲絲:2014年に性別適合手術をし、証書類も変更した。トランスジェンダーキリスト教徒で、《陰道説》(《ヴァギナ・モノローグス》の中国版の一つ)の出演者。新浪ブログは、丝丝公主(http://blog.sina.com.cn/investigatecosmos)。2015年に整形医療で事故にあい、左目の末梢神経が壊死。弁護士を頼んで、数か月後、示談で解決。

第三期・下 トランスジェンダー男性と服薬の安全
 Top:トランスジェンダー男性。今年4月からホルモンの服用を開始。今月中旬、兄弟(=トランスジェンダー男性を指す思われる)微信グループを設立した。その目的は、第一にみんなを集めること、第二に、市場の薬品は偽薬が氾濫していて、価格もばらばらなので、みんなに薬の正確な価格を知らせて、だまされないようにすること。

第四期・上 トランスジェンダー男性・トランスジェンダー女性の手術紹介
 Hitomi:トランスジェンダー男性。北京LGBTセンターのトランスジェンダープロジェクトのコーディネーター。主な活動はトランスジェンダーホットライン。2016年には合計170件の相談を受けた。

ただし、「第一期・上」に関しては、その後の予告では、「フェミニストトランスジェンダーのジェンダー宣言」というタイトルになっており、以下のような文言が書かれている(9)

私たちトランスジェンダーは、性別を間違って生まれたのではない
「セックス(生理性別)」は、生まれつきではなく、人為的な設定である
間違っているのは、粗暴な性別指定制度である

私たちトランスジェンダーの外見は、誰にも判定される必要はない
人の身体は多元的で美しいものだ
強壮さや繊細さは、性別とは無関係だ

私たちトランスジェンダーは、性別を鑑定される必要はない
性別は生まれつきのものではなく、人が選択するものだ
すべての人は、自分に適合した性別を選択する権利がある

トランスジェンダーは、性別のステロタイプなイメージの再生産を拒否する
トランスジェンダー女性は、必ずしもセクシーで美しくなくてもよい
トランスジェンダー男性は、異性愛男性の女性蔑視を基準にする必要はない

私たちトランスジェンダーは、手術をしたか否かで判定することを拒否する
人の身体は性別とは関係ない
身体の改変の有無とジェンダーアイデンティティとは関係がない

私たちはトランスジェンダーだ‥‥

そして、当日のテーマについても若干変更されて、「クィアフェミニズムをテーマにし、フェミニズムを基本的なジェンダー理論として基礎に置いて、2人のフェミニストトランスジェンダーレズビアンが参加者に語る自らの生活体験と観点によって、トランスジェンダーのジェンダー宣言をし、あわせて、各自の菜食主義観についても討論する」となっている。

(2)広州以外にも広がる活動

2017年3月25日には、トランスジェンダーセンターと武漢同行同志センターとの共催で「トランスジェンダー集会+トランスジェンダー互助団準備会」というものがおこなわれている。「トランスジェンダー互助団(跨性别互助团)」とは、武漢同行同志センターに属する、「Trance for Trance」をモットーにしたトランスジェンダーどうしの互助団体だということだ(10)

さらに、4月29日には、トランスジェンダーセンター深圳分部を設立した。トランスジェンダーセンターが国内に設立した初の分部である。Agender(エイジェンダー)パンセクシュアルのVybeさんが執行主任を担当しているという。

その頃すでに、トランスジェンダーセンターは、広州・寧波・成都・武漢・東莞などの都市で公衆に対してトランスジェンダーの経験を伝え、広州・長沙・武漢などの都市の大学と中学(=日本で言う中学と高校の両方を含めた語)の教室でトランスジェンダーの経験を伝えていた(11)

(3)トランスジェンダーに対するDVについての取り組み

2017年5月、トランスジェンダーセンターは、反DVグループ(反家暴小組、Anti-domestic Violence Groupe)を設立する準備を開始した(12)

トランスジェンダーホットラインも、月~金の15:00~17:30に設けた(13)

トランスジェンダーセンターの考えでは、大陸のトランスジェンダーの直面している最も直接的で、最も深刻な暴力は、家庭内暴力、とくに未成年や経済的に独立していないトランスジェンダーの人々の身に起こる家庭内暴力であるという。「最も深刻」だというのは、暴力が発生したとき、しばしば以下の3つの状況に直面するからだ。
(1)家族に殺すと脅される/殺される。
(2)家族に監禁される。
(3)家族に家から追い出される――この場合、追い出されたトランスジェンダーは、いい就職の機会がみつからなければ、自殺する可能性もある。

2016年8月~2017年5月の10ヶ月間にトランスジェンダーセンターがぶつかった11件のトランスジェンダーDV事件のうち、
5件は、トランスジェンダーの未成年者に対するもので、
5件は、当事者が自殺を試みており、
1件は、殺すと脅され、
1件は、殺人未遂であり、
10件は、家族が経済的サポートをやめた後の就職問題と関係しており、
2件は、明白な就職差別と関係しており、
1件は、[この報告が書かれた]昨日(5月29日)起きた。

こうした状況に対して、トランスジェンダーセンターの活動家のh.cさんとL.xさんは、トランスジェンダーセンター反DVグループを設立して、トランスジェンダーをDVやDVの脅しから解放されるよう援助することを決めた。グループ長の一人のL.xさん自身が、典型的なトランスジェンダーによるDV被害者であり、さらに就職問題と就職差別に遭遇している。

L.xさん(17歳、トランスジェンダー女性、高校生)――学校をやめさせられ、差別によって就職もできない

L.xさんは、家族にカミングアウトしたら、家族によって強制的に学校をやめさせられた。L.xさんは、仕事を探しに広州に来て、14歳のトランスジェンダー女性のCZさん(現在家族に監禁されている)と知り合って、トランスジェンダーセンターを紹介された。L.xの仕事を見つけなければならない圧力を緩和するために、センターは、L.xさんにセンターでアルバイトをしながら仕事を探してもらっている。

L.xさんは、CZさんが家族に監禁されているのを知った後、すぐに応急グループを作って、CZさんに関する情報を積極的に探し集めた。このグループがトランスジェンダーセンターの反DVグループの前身である。

L.xは、センターで仕事をしながら(ホットラインの応対、組織活動、反DV救援)、仕事を探していると、フルタイムの仕事が見つかり、面接試験も通った。

しかし、出勤初日に、経営者に身分証のコピーを提出するよう求められた。L.xさんの身分証の性別は元のままだったため、性差別にあい、経営者にすぐ解雇された。

現行の規定とL.xさんの現状では、L.xさんは彼女の身分証の性別を改めるのはほとんど不可能である(L.xさんの外観は、明らかに社会の主流が理解する女性の外観である)。また、高校を中退していて、未成年であるので、L.xさんに主流の社会で仕事を見つけることは至難の業であり、またあらゆるところで性差別にあう(14)

芳さん(14歳、トランスジェンダー女性、中学生)――暴力を振るわれ、家から追い出され、友人の家に身を寄せてアルバイト

また、14歳の中学生のトランスジェンダー女性の芳さんの場合は、さらに困難な状況だった。芳さんは、勇気を出して母親にカミングアウトした。しかし、その後、母親は、たえず芳さんを「変態」と罵るようになった。3か月後には父親もそのことを知り、芳さんを殴るようになった。芳さんは、ほとんど窒息するまで首を絞められ、芳さんの助けを求める声を聞いた隣の家の人が駆けつけて助けられたこともあった。芳さんの父母は「私にはあんたのような子はいない」と言って、わずか14歳の芳さんを家から追い出した。

芳さんがトランスジェンダーセンターに来たが、しばらくすると父母が連れて帰った。トランスジェンダーセンターのh.cさんは、その際に父母に理解してもらうようにしたが、芳さんが家に帰ると、芳さんはまた父親に暴力を振るわれて、追い出されたので、芳さんは他の都市の友人のところに行くしかなかった。h.cさんは、芳さんに弁護士を付けて生活費を父母に出させることも考えたが、芳さんは、自分の父母と裁判をすることに同意しなかった。芳さんはあちこちを転々として、現在は福建の友人の家に間借りして、昼はアルバイトをして生活費を稼いでいる。

最近もまた家から追い出された中学生が2人来たが、その2人も父母を訴えることを拒否した。すなわち、「父母が子どもを殺してしまおうとしても、子どもは肉親の情ゆえに父母を訴えたくない」という情況があるという。だから、h.cさんは、「トランスジェンダー児童反DV」活動を推進しようと固く決意したという。h.cさんの構想では、この反DVプロジェクトは、緊急の救助だけでなく、法律意識の養成も含むもので、トランスジェンダーの児童に自分の正当な権利を擁護することを理解してもらうものにしたいという。

いったん家から追い出されて、もし援助が得られなかったら、トランスジェンダーの児童はあちこちを流浪するしかなく、たとえトランスジェンダーのコミュニティの援助が得られても、小さな子は、児童労働をして自らを養うしかない。社会的差別があるから、たとえ成人で卒業証書を持っていても、きちんとした安定した仕事は見つけにくいのである。h.cさんは、トランスジェンダーの子どもが「安全」に、「尊厳をもって」成長できるようにしたいと思っている(15)

さて、2017年8月末の時点での累計をみると、さらに活動が積み重ねられるとともに、DVの深刻さや未成年者に対するDVの問題が明らかになっている。

直接または間接に接触したトランスジェンダーのDV事件は、のべ26人であり、そのうちのべ11人がトランスジェンダーの未成年者に対するものであり、のべ8人はトランスジェンダーが自殺しようとした(そのうちのべ4人はトランスジェンダーの未成年者)、のべ3人は保護者がトランスジェンダーを殺すと脅しており、1人は、保護者のトランスジェンダーの息子に対する殺人未遂であった(16)

もちろんトランスジェンダーセンターは、DVだけに反対しているのでも、トランスジェンダーに対する暴力にだけ反対しているのでもない。

2016年6月12日のオーランド銃乱射事件の際には、トランスジェンダーセンターのメンバーがそれぞれ「Transgenders Stand with Orlando」と書いた紙を持っている写真を公表して、連帯を表明している☆。(17)

(4)センターの現在――「トランスジェンダー」の定義と3つのグループ

「トランスジェンダー」の定義

現在のトランスジェンダーセンターの「トランスジェンダー」の定義は、広義かつ開放的な「トランスジェンダー(英語のTrans)」であり、過去の狭義の「トランスジェンダー(英語のTransgender)」ではないという。

広義かつ開放的な「トランスジェンダー」とは、個人のジェンダーアイデンティティと社会から貼られたレッテルとが一致しないことだという。すなわち、伝統的な意味であるトランスジェンダー女性(Trans women)、トランスジェンダー男性(Trans men)のほかに、ジェンダー・ノンバイナリー(Gender non-binary)、ジェンダー・ノンコンフォーミング(Gender non-conforming)、ジェンダークィア(Gender queer)などを含み、ジェンダーの自主的定義権を認め、貼られたジェンダーのレッテルを認めないすべての人々を開放的に包括し受け入れる。広義で開放的な「トランスジェンダー」には、限りなく絶えず添加されるジェンダーのレッテルが含まれる、とする。

現在、トランスジェンダーセンターは、3つのグループに分かれて、以下のような活動をしているようだ。

服務グループ[小組]
 トランスジェンダーたちとその親戚・友人に関心を寄せ、リソースにつなぎ、問題に関与する行動をおこなう。現在の服務グループが関心を払っているテーマは主に反DVであるが、将来はその他のテーマにも取り組んでいく。

トランスジェンダーセンターの反DV事件に対応するときの主な手法は、以下のようなものだという:トランスジェンダーの当事者に対して安全と解決のための提案をし、全国のトランスジェンダーたちのネットワークと全国のLGBT組織のネットワークを使って、さまざまな都市の当事者に対して実地のサポートをし、弁護士、ソーシャルワーク団体、シェルター、全国の反DV民間団体につなぐなど。

活動グループ
 トランスジェンダーの人々とトランスジェンダーではない人々とをつなぎ、トランスジェンダーの人々とトランスジェンダーではない公衆との溝をなくし、差別のない未来を推進する。活動グループは、活動の設計、準備、挙行、記録に責任を持つ。活動にはオンラインの活動とオフラインの活動がある。

宣伝唱導グループ
 トランスジェンダーセンターおよびトランスジェンダーたち(トランスジェンダーとその親戚・友人・パートナー)、トランスジェンダーに関する問題を人々に知らせ、トランスジェンダーセンター‐トランスジェンダーたち‐社会の間の交流を促進し、トランスジェンダーに関する議題を推進し、社会文化と法律制度の改善を促進して、トランスジェンダーたちの生活・仕事の環境と質を改善する。

トランスジェンダーセンターの現在の宣伝唱導の主な手法は、セルフメディアでの宣伝唱導、微信による教室、オフライン活動、トランスジェンダーの経験の記録と伝達、相談報告、調査報告、研究報告、フォーラムと交流会に参加するなどである。

8月末に、この三つのグループにボランティアを募集している。服務グループに3人、活動グループに4人、宣伝唱導グループに4人募集しているのだから、いっそう活動を広げていこうということであろう(18)

(5)h.cさんの話

以下では、トランスジェンダーセンターの創設者のh.cさんがセンターを創設するまでと、創設後の経験について見てみたい(19)

トランスジェンダーセンター創設まで

h.cさんは、小さいころ、家族から「人妖(化け物。ふたなり、ゲイボーイの意味もある)」だと呼ばれてきた。h.cさんは、無理やり男らしい軍人のような格好をさせられ、頭髪が少し伸びたら無理やり刈られた。

大学に入って、はじめて頭髪の自主権を得て、他人にも女子学生だと見られるようになって、言い表せないほど気が晴れたという。

h.cさんは、友人の紹介で学校のジェンダー課程の修習を始めるとともに、フェミニズム運動に参加した。演劇(=中国版《ヴァギナ・モノローグス》と推察される)を手段とする、あるジェンダー教育機構の中で、h.cさんは、暴力の被害女性に接し、レズビアンに接し、多くの力のあるフェミニストに接した。彼女は、自分がレズビアンという身分に強烈な帰属感を持っていることを発見し、だんだんと自分を理解していった(20)

h.cさんとフェミニズム機構は、暴力の被害女性を取材して、反DVの演劇の稽古をし、いくつかの学校にG Spotグループ(G点小組。広州の大学でジェンダー/セクシュアリティ問題に取り組むグループ(21))を設立して、LBTIとフェミニズムの活動に集中した(22)

トランスジェンダーセンター創設――多くのトランスジェンダーの結集、弾圧

ある休業中の実習の後、h.cさんはトランスジェンダーセンターを設立する決意を固めた。h.cさんによると、そのときは「多くのトランスジェンダーの人が周囲の都市から駆けつけてきて、ついにトランスジェンダーの機構ができた。私が知っている多くのトランスジェンダーが、私に『あなたは私が初めて知り合いになったトランスジェンダーだ』と言ってくれた」。

その一方、ずっとおとなしかった大学の補導員がh.cさんに訓話をしに来て、彼女のますます女性化してきた外観と「道徳に背いた」思想とを嘲笑した。大学も、ジェンダーグループの活動を弾圧し、h.cさんを危険人物とみなしたという。

出会ったトランスジェンダーの悩み――ホルモン剤や手術のこと

トランスジェンダーセンターを創設したのち、h.cさんはますます多くのトランスジェンダーの友人と知り合いになった。

その第1回目の活動で、h.cさんは、ホルモンによって性徴を変えようとしているトランスジェンダーに出会った。ネットの掲示板は、トランスジェンダーが多く集まるところで、ホルモン使用についての書き込みが多いが、どのように薬を飲んだらいいのかがみんなが非常に関心を持っている問題である。各自が使っている薬はさまざまで、用量もさまざまであり、国内には何の規範もない。

また、性別適合手術も、衛生部の「性転換手術管理規範(試行)」は、性転換者は未婚で、手術前に心理的・精神的治療を1年以上続けて効果がなくて、性転換への要求少なくとも5年以上持続し、思い直さないなどの条件が必須であると規定している。h.cさんは、中国のこうした規定は、実際にはきわめて不合理だと指摘する。「当時、ある友人を心理の医者に治療に行かせたが、医者はどのように治療したらわからないと言った。なぜなら、医者たちの知識の範囲では、それは全く病気ではないからだ」。実際、WHOの呼びかけによって、トランスジェンダーは、世界各地の精神病の分類から取り消されつつある。また、「性転換手術管理規範(試行)」は、心理学的に性的指向が異性であることの証明も必要としているが、「これは、制度面から、トランスジェンダーの同性愛の存在を許さないことである」。しかし、トランスジェンダーの中には、h.cさんのようなトランスジェンダーレズビアンがたくさんいる☆。

このように性別適合手術が困難であるため、2017年4月5日、17歳のトランスジェンダー女性の凌雪が3月31日、自ら手術を試みた。しかし失敗し、中山大学付属第六病院で緊急手術をしたのだが、その時の写真や資料を同病院が本人に無断で微信で公開、各マスコミも転載したという事件が起きた。それに対して、トランスジェンダーセンターは厳しく抗議している(23)

2 トランスチャイナ(環跨中国、TRNASCHINA)

2016年6月9日には、「トランスチャイナ(環跨中国、TRNASCHINA)」(http://transchina.org.cn/)という団体が設立された。

その呼びかけ人には、Joanne Leung (トランスジェンダーレズビアン、香港トランスジェンダーリソースセンター主席)とCさん(前回ご紹介したトランスジェンダー就職差別訴訟の原告)とが共同でなっている。

その趣旨などについては、以下のように書かれている。
・趣旨――中国のそれぞれの地区でトランスジェンダーの声を聞こえるようにすること。
・目的――映像・物語・事例などの方法でトランスジェンダーの経験を分かち合い、それによって一人ひとりが生命を再認識して尊重し、より多くの人の生活をより良くする。
・活動内容――巡回講演、話のシェアリング、ドキュメンタリー撮影、個人の経験の収集、各地の組織と現地のトランスジェンダーのゲストとを結びつなげる、など。
・組織の名前の意味――「環跨」の二文字は、中国の異なる地区をまたがり越える、という意味だが、それと同時に、ここでの「跨」という字は「トランスジェンダー」をも意味する。英語名称の中の「Trans」も同様に、「またがり越える」という意味と「トランスジェンダー」という意味に解される(24)

具体的活動としては、ウェブサイトを見るかぎり、以下のような講演が中心のようである。

環跨・北京站第一講
・日時:2016年11月12日
・場所:706青年空間
・主催:環跨中国
・共催:706青年空間、同語、北京LGBTセンター、レインボー暴力終結所
・ゲスト
 超小米:流性人
 絲絲:トランスジェンダー女性、キリスト教徒、《陰道説》出演者(25)

環跨・北京站第二講
・日時:2016年11月16日
・場所:北京LGBTセンター
・ゲスト
 Bobbie Huthaart:トランスジェンダー
 Cさん
 小妖:バイセクシュアル、北京LGBTセンタートランスジェンダープロジェクト主管、ソーシャルワーカー、LGBTの精神領域の完全な非病理化に尽力(26)

環跨中国・全国巡講第二站-上海
・日時:2016年6月25日
・共催:上海女愛、上海青艾
・ゲスト
 Joanne
 Cさん
 然然(上海で活動している姉妹[MtFの意?]) (27)

環跨・蘇州站
・日時:2017年1月16日 公益と私、1月17日 ジェンダーとは何か
・ゲスト
 卡醤
 天外

杭州站
ボランティア研修
・日時:2017年1月20日
・場所:杭州LGBTセンター
公衆に対する巡講
・日時:2017年1月21日
・場所:THE OOPENコーヒーハウス

さらに予定として以下のような日程がウェブサイトに書かれている。
2017年1月 南京、蘇州、杭州、上海
2017年2月 成都、長沙
2017年3月 広州、昆明、大理
各地の協力組織:南京self公益小組、蘇州LESGO公益小組、向陽花開-杭州LGBT、上海女愛、成都les愛心小組、成都米尓克[ミルク]、平等家庭ネット、トランスジェンダーセンター、雲南同話舎、大理エイズ防止相談センター(28)

上の記載からは、トランスチャイナが各地のLGBT団体と協力して巡回公演をすすめていることがわかる。予定された集会の具体的内容についても、広州站についてはわかる。

環跨・広州站│一連三場:
・日時
 2017年3月8日 トランスジェンダー優先の場
 2017年3月9日 公衆の場
 2017年3月10日 大学の場
・主催:トランスチャイナ、トランスジェンダーセンター
・共催:中山大学レインボーグループ(彩虹小組)
・テーマ:トランスジェンダーの権益、どのようにトランスジェンダーと付き合うか
・ゲスト:
 Cさん/トランスジェンダー男性
 熊猫/貴州黔程工作組運営主管。トランスジェンダーの仲間。
 狐狸/向陽花開-杭州LGBTプロジェクト主管。トランスジェンダーの友人。
 h.c/トランスジェンダーレズビアン。トランスジェンダーセンター執行主任。
 A哥/トランスジェンダー男性。トランスジェンダーセンターの中核メンバーの一人。レインボー医療(彩虹医療[LGBTiBaby])創始者。(29)

厦門站
 上記の予定には書かれていないが、2017年3月におこなわれた厦門站についても、以下のような内容が報告されている(30)
・ゲストは、貴州黔程の運営主管・熊猫さんで、トランスジェンダーのパートナーである。熊猫さんの話によって、みんなはトランスジェンダーの異性愛のパートナーは、実は同性愛のパートナーとは異なることを理解した。
・部屋の中が人でいっぱいだった。
・討論は熱の入ったものになり、アメリカでとくにホットな話題になっているトランスジェンダーのトイレの問題にも議論は及んだという。

なお、現在トランスチャイナのウェブサイトには、巡講の足跡として(巡讲足迹)、北京、南京、蘇州、上海、杭州、長沙、厦門、広州、成都、貴陽、昆明、大理の12都市が書かれている。

3 トランスジェンダーシェルター

2016年12月、霖霖(雪小霖)さんは「トランスジェンダーシェルター」を設立した。

香港のトランスジェンダーリソースセンター主席のJoanneさんが、2017年7月、霖霖さんにインタビューをしているので、それをご紹介しよう(31)

トランスジェンダーシェルターは、この時点で、すでに計6人に住む場所を提供したという。

Joanneさんが「なぜトランスジェンダーシェルターなのか?」と質問したのに対して、霖霖さんは「トランスジェンダーがDVや就職差別を受けたとき、しばらく部屋を借りる金がなかったり、臨時に過ごす場所がなかったりするから」だと答えている。

「なぜシェルターを開設したのか?」という質問に対しては、霖霖さんは、当時、何人かに家から追い出されて、自分のところに臨時に住まわせてくれと言われて、何人かを助けたので、ぜひそうした場所が必要だと感じた、と述べている。また、ロサンゼルスLGBTセンターや台湾にはシェルターがあるが、国内でもトランスジェンダー、とくにMtFに対するDVが特に深刻だということも述べている。

霖霖さんによると、DVは、具体的には、家でカミングアウトしたときに、身体的な暴力や言語による暴力を受ける場合が多い。ホルモン剤を捨てられたり、むりやり頭髪を刈られたりすることもあるという。殴られることは非常によくあり、最後には家から追い出されたり、家の中に軟禁されて、夜、こっそり逃げ出したりするそうだ。また、仕事を探すとき、自分の性別と身分証の性別が一致していないために、壁にぶつかり、金もなく、家にも頼れないので、しばらく霖霖さんのところで過ごす人もいる。

彼/彼女たちは、一般に1カ月前後滞在し、霖霖さんは、彼/彼女に仕事を探すように促す。

しかし、シェルターの運営資金は不足しており、現在の資金では3、4か月しか維持できないという。

霖霖さんは、現在、それぞれの都市にレズビアンかゲイの民間団体があるが、トランスジェンダーのグループは非常に少ないことや、トランスジェンダーはとくに弱い立場に置かれており、セクシュアル・マイノリティの中でもDVを受ける比率が高いということを訴えている。

トランスジェンダーシェルターは、クラウドファンディングなどをして、多くの人から家賃や設備の費用を集めているが(32)、2017年2月末以後の毎月の残金を見ると、1万1786元→8919元→1万0005.92元→1万1397.5元→8632.28元→3201.48元→5789.08元となっている(33)

現在、「海外の勢力の資金援助を受けられない中で、私たちはずっと国内(少し海外の友人)の人々の中から資金援助を得ているが、9か月運営してきて、寄付が可能なメンバーはすでに1回は寄付をしていただいている(苦笑)」(34)という情況のようだ。

4 トランスジェンダー生活社

2015年1月24日には、16人のトランスジェンダーによって「トランスジェンダー生活社」というものも結成されている(サイト微博)。

トランスジェンダー生活社は「ジェンダー教育・サービス機構」であるとして、以下の2つの目標を掲げている。
・トランスジェンダーの健康と法律の知識を伝え、公衆にトランスジェンダーに対する理解を増進させることによって、トランスジェンダーがフレンドリーに対応されることを促進する。
・多くの性に対するプロジェクトを提供し、トランスジェンダーの積極的な自己認識を援助し、トランスジェンダーの心理と生理の両方の健康水準を向上させる。

また、「生活社は、同時に、トランスジェンダーたちに、多くのサービスをおこなう。その中には、証明書の性別の変更の援助、職場の研修、社会に溶け込むための相談などによって、トランスジェンダーがよりよく社会に適応できるよう援助する」、「私たちは、トランスジェンダーにたゆみなく貢献し、社会大衆のトランスジェンダーに対する誤った認識を是正することによって、国内のトランスジェンダーの生活の境遇を改善することを望む」とも述べている(35)

ただ、ネット上での発信を見るかぎり、今のところ、やっていることとして具体的に確認できるのは、2015年6月18日から「トランスジェンダー生活」という微信(メッセンジャーアプリ。「LINE」に近い)の発信することである。開始以来、一年間に157号を出し、376篇の文章を掲載したとのことである(36)

また、ウェブサイトにも、トランスジェンダーについての認識を深めるための文章などを掲載している。

5 他のLGBT団体でのトランスジェンダー問題についての取り組み

また、他のLGBT団体でのトランスジェンダー問題についての取り組みも積極的になっている。先述のようにトランスジェンダーセンターやトランスチャイナとイベントを共催するほかに、主要なLGBT団体も、以下のような取り組みをしている。

(1)北京LGBTセンター

2015年11月24日、北京LGBTセンターは、「トランスジェンダーホットライン」を開始した。

「トランスジェンダーホットライン」とは、単に電話を一本引いただけではなく、インターネット上で、QQ、スカイプ、微信のどれでもOKで、1人60分相談できる。北京LGBTセンターの相談室でも、1人90分相談を受け付ける(37)

2017年2月には、「トランスジェンダープロジェクト」担当者を募集している。

正確には「北京LGBTセンター性別無界プロジェクト」担当者で、条件としてトランスジェンダーであることが必須だが、「この職位はフルタイムの仕事であり、毎週の労働時間は40時間である」というのだから、相当力を入れていると言えよう。

また、その職責については、「性別無界プロジェクトの実習生とボランティアを管理し、本プロジェクトの実習生とボランティアの研修に責任を持ち、激励と評価をする」とも記されており、担当者一人が作業をするような体制ではない(38)

実際、9月には「トランスジェンダー部門実習助手」を募集している。この助手もトランスジェンダーであることが条件の一つだが、「毎週の労働時間が20時間以上」であり、かなりの時間をトランスジェンダーのための取り組みに使うことになる(39)

(2)同語

「同語」は、トランスジェンダーに対する就職差別訴訟を起こしたCさんを金銭的に支援していることは前回ご紹介したが、2017年4月9日 (14:00-17:00)にこの件についての「模擬法廷」をおこなった。Cさん、王永梅弁護士、劉明輝弁護士を招いて、北京LGBTセンターとの共催である(40)

「同語」では、2014年12月から、トランスジェンダー(MtF)の文軍さんという人が、運営管理主任をつとめているようだ(41)

中国を代表する上の2つのセクシュアル・マイノリティ組織が、トランスジェンダーの問題を位置づけているということは、重要なように思う。

おわりに

以上見てきたように、2016年ごろ、中国ではトランスジェンダーの独立した団体が4団体、設立された。トランスジェンダーセンターが最も活動が活発のように見えるが、トランスチャイナもさまざまな都市で活動しており、他の団体も、何らかの形で定期的に活動をしている。

トランスジェンダーが直面する問題として、DV(とくに子どもに対するDV)が非常に深刻な問題としてとらえられている。また、他にもホルモン剤や性別適合手術など、トランスジェンダー特有の重要な問題がある。

前回ご紹介したCさんの経験にもあるように、トランスジェンダーはセクシュアル・マイノリティの中でも孤立しがちだが、トランスチャイナの巡回公演活動に見られるように、トランスジェンダー団体と他のLGBT団体との連携も進みつつある。また、北京LGBTセンターなどはトランスジェンダー問題に力を入れていると言える。

また、フェミニストであるトランスジェンダーの活動も目につく。中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動と結びついている場合があることも、その一つの現れだろう。

ただ、トランスジェンダー団体は、政策提言活動のようなことは、まだあまりおこなっていないように見える。

また、2016年6月に「境外NGO境内活動管理法」が制定され、国外のNGOからの資金獲得が困難になっていることもあり、トランスジェンダーシェルターのような資金を要する活動に関しては、資金不足の問題がついて回っている。

なお、《有性無別(Gender in Bias Out)》というトランスジェンダーに取材したドキュメンタリー作品が制作されており、その中には、ヴァギナ・モノローグスの中国版の一つである《陰道説》のトランスジェンダー女性の出演者である絲絲、トランスジェンダーの調香師である雪小霖、トランスジェンダーセンターのh.cが登場している(「跨性别纪录片:《有性无别》上下集+跨性别中心单独版 」2016-12-23 跨性别中心)。

(1) F女権小組とは、「広州の最も酷(クール)で婊(bitch)なフェミニストグループ」を自称しており、「FとはFeministであり、FとはFuckである」という(F女权小组「广州最酷婊的女权小组要招新啦~」女权之声的微博2016年9月12日)。F女権小組は、最初は、2015年10月に、肖美麗さんがメンバーを募集して作ったようだ。その際には、「F女権小組」は「主に演劇と文化活動をつうじて、ジェンダー理念を伝達し、自我の成長といささかの変革の実現を望むフェミニズムグループである」(「一个神秘的女权小组开始招人啦! 」2015-10-22 F女权小组 削美丽)と述べられおり、ヴァギナ・モノローグスの中国版《陰道之道》の上演活動をしたり、広州の地下鉄に痴漢に反対する公益広告を出す運動をおこなったりしてきた(本ブログの記事「中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動の展開――2003年~2016年――」「広州地下鉄にクラウドファンディングによって痴漢反対ポスターを掲示する試みなど――2016年の女性たちの公共交通での痴漢反対運動」など参照)。
(2)跨性别中心招人啦~坐标广州,这可能是最有趣的跨性别组织」跨性别中心2016年5月12日 15:50。F女権小組の中核メンバーであるh.cらが設立したという点については、跨性别中心的微博2016-10-18 03:17参照。
(3)新年上线|跨性别之声:系列深入有观点的线上分享」2017-01-01 h.c. 跨性别中心(現在閲覧不能)、「跨性别之声 | 第一期·上:女权跨性别者之性别宣言」2017-01-11 h.c 猫 跨性别中心。
(4)跨性别中心招人啦~坐标广州,这可能是最有趣的跨性别组织」跨性别中心2016年5月12日 15:50。
(5)派对 | 哇哇哇!广州跨性别大见面!! 」2016-06-01 跨性别中心
(6)周五定期活动·明晚:跨性别主题轻游戏之夜 |广州」跨性别中心2017-03-02 19:22:38
(7)广州|培训如何为性少数提供友好的心理咨询」2016-10-21 跨性别中心
(8)新年上线|跨性别之声:系列深入有观点的线上分享」2017-01-01 h.c. 跨性别中心(現在閲覧不能)、「今晚!跨性别之声 | 第一期·下:出柜者的必修课」2017-01-15 h.c 猫 跨性别中心。
(9)跨性别之声 | 第一期·上:女权跨性别者之性别宣言」2017-01-11 h.c 猫 跨性别中心。
(10)武汉·周六 | 跨性别聚会+跨性别互助团预备会 」2017-03-23 Trans Center 跨性别中心
(11)以上は、「跨性别中心深圳分部简介」跨性别中心2017-05-03 17:32:39
(12)跨性别中心反家暴小组招募志愿者啦!截止:5月26日」跨性别中心2017-05-24 13:49:29
(13)跨性别中心反家暴」跨性别中心2017-06-2317:33:50
(14)支持我们!我们在怼针对跨性别人士的最严重暴力!」2017-05-30 TransCenter 跨性别中心
(15)小歪「一个跨性别女权主义者的反家暴之道|国际跨性别纪念日」破土工作室2016-11-20
(16) h.c「跨性别中心三小组招志愿者,加入我们吗!」跨性别中心2017-08-29 12:30:37
(17)全国跨性别者拍照撑奥兰多 反对针对性少数的暴力」2016-06-14 Trans Center 跨性别中心(現在閲覧不能)
(18) h.c「跨性别中心三小组招志愿者,加入我们吗!」跨性别中心2017-08-29 12:30:37
(19)小歪「一个跨性别女权主义者的反家暴之道|国际跨性别纪念日」破土工作室2016-11-20
(20)この点について、別の資料では、h.cさんは、2015年6月にシスジェンダーの反DV活動に参加して、性/別(≒ジェンダー/セクシュアリティ)の民間活動に参加する人生を歩むようになったと書かれている(「约起来|其实我很讨厌“跨性别”这个词」豆瓣同城)。なお、中国における《ヴァギナ・モノローグス》上演に関しては、本ブログの記事「中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動の展開――2003年~2016年――」とともに、村田晶子・弓削尚子編『なぜジェンダー教育を大学でおこなうのか 日本と海外との比較から考える』(青弓社 2017年)の第3章の柯倩婷(熱田敬子訳)「グループを育て、社会とつなげる――大学でのジェンダー教育を活性化する新しい試み」、熱田敬子「『まんこ語り』が育むフェミニズム・アクション」参照のこと。
(21)「大学のジェンダー/セクシュアリティグループであり、半開放的な場でフェミニズムとジェンダー多元のテーマを研究し、それと関連する一連のオフライン活動と行動によるアドボカシーをおこなう」(「G点×女友组:拉拉初次性体验故事有酬征稿(截至4.29)」@兔子走丢了 2016-04-22 10:33) とか、「広州市の大学城に出没する神出鬼没のジェンダー公正グループであり、不定期にオフライン活動をする」(「G点×Yummy×女友组|韦婷婷双性恋微课」2016-01-06 GSpot小组)と自らを紹介している。上の2つの注記にも書かれているように、女友組(広州のレズビアングループ)とともに活動をしている。また、広州大学で、学長にトイレの男女比率の是正を求める手紙を書いて、要求を実現している(「女权青年在行动:一封信,让男厕变女厕!」新媒体女性的博客2016-05-25 16:21:37)。
(22)この点について、別の資料では、h.cさんは、2015年末に同じ学校の学生と、大学に性/別グループを設立して、シスジェンダーのテーマのほかに、LGBTI+のテーマに関心を持つようになり、ジェンダーアイデンティティを「クィア」から「女性」に変え、自分を「トランスジェンダーレズビアン」と考えるようになったと書かれている(「约起来|其实我很讨厌“跨性别”这个词」豆瓣同城)。
(23) h.c&夜子(2017-04-06)「愤怒!中山六院擅曝手术照片谑辱跨性别!」跨性别中心2017-04-07 00:49::07
(24)关于环跨中国」环跨中国2016年6月9日
(25)环跨中国北京站第一讲 」环跨中国2016年11月10日。
(26)环跨中国巡讲北京站第二讲 」环跨中国2016年11月11日。
(27)[环跨中国]全国巡讲第二站-上海总结 」2016-06-29 C先生 贵州黔程C先生。
(28)以上は、「关于环跨中国」ウェブサイトより。
(29)环跨·广州站 | 一连三场:跨性别权益&如何与跨性别相处」跨性别中心2017-03-06 19:10:28
(30)关于环跨中国」ウェブサイトより。
(31)【影片】【環跨中國】南京站:跨性別避難所創辦人霖霖專訪|跨性別資源中心」G點電視2017-07-08
(32)【众筹】跨性别避难所以及危机救助」知乎专栏、「跨性别避难所11月财务公示」知乎专栏。
(33)跨性别危机援助与咨询2017年3月收支明细」知乎专栏、「跨性别危机援助与咨询2017年5月收支明细」知乎专栏、「跨性别危机援助与咨询2017年6月收支明细」知乎专栏、「跨性别危机援助与咨询2017年8月收支明细」知乎专栏。
(34)跨性别危机援助与咨询2017年8月收支明细
(35)About Us」05 12月, 2016
(36)《跨性别生活》一岁了! 」2016-06-18 雨雪霏霏 跨性别生活
(37)北京同志中心的微博2015-12-17 09:56
(38)跨性别项目官员招募 | 成长的烦恼,谁来和我一起面对」2017-02-09 北京同志中心 北京同志中心
(39)北京同志中心的微博9月18日 18:51
(40)模拟法庭|当跨性别遇上就业歧视」2017-04-07 钟灵毓卿 同语
(41)李银河事件 | 跨性别者在中国」南方人物周刊2015-01-03

トランスジェンダーの就職差別、労働紛争訴訟と人格権訴訟の両方で勝訴

<目次>
はじめに
1 労働人事仲裁委員会の調停は失敗
2 労働人事仲裁委員会の裁定、Cさんの訴えを認めず
3 裁判でCさん勝訴――違法な解雇と認定、トランスジェンダー差別とは認定せず
4 人格権訴訟も起こす
5 この裁判でも Cさん勝訴――平等な就業権を侵害したと認定
6 書面による謝罪は認められず、控訴
7 Cさんのこと――子どもの頃からのいじめ、提訴への無理解、自分の性別への模索
おわりに

はじめに

ここ2年ほど、中国でもトランスジェンダーの運動が活発化している。

まず今回は、トランスジェンダーに対する解雇裁判についてご紹介したい。この裁判は、解雇の違法性と平等な就業権の侵害を認めさせた裁判である。

2015年4月、トランスジェンダー男性(FtM)のCさん(1)は、貴陽慈銘健康診断センター有限公司(以下、慈銘と記す)に就職したが、7日後、もう来なくていいと通知された。

Cさんがその原因を会社に尋ねたら、「男装は、会社の要求に合致しない」と言われた(2)

最初Cさんが会社の人力資源部主任に面接を受けたとき、その主任はCさんを見て、妙な気がして、同性愛者ではないかと思ったという。その主任は、「私たちは健康診断に従事している会社なのに、もし職員が不健康だったら、なんで顧客にサービスできるのか」とも言った。

Cさんはその時の会話を録音していて、のちに裁判で証拠として提出することになるのだが、主任に対して、Cさんは、「私はトランスジェンダーであり、同性愛者ではない。また、絶対に健康に問題はない」と言った。しかし、無駄だった。

1 労働人事仲裁委員会の調停は失敗

2016年3月7日、Cさんは、この件について、貴陽市雲岩区労働人事仲裁委員会に労働仲裁を申請して、慈銘に対して、賃金と賠償金の支払いと公開での謝罪を求めた。14日、Cさんの訴えは受理された(3)

3月30日、調停がおこなわれた。慈銘は、試用期間中の賃金を支払うことには同意したが、公開での謝罪と経済的賠償を拒否したため、調停は失敗に終わった。

レズビアンなどの団体である「同語」の代表の徐玢さんは「セクシュアル・マイノリティの中の、少なからぬ人が就職差別を受けているが、トランスジェンダーの場合はより顕著だ。なぜなら、隠すことが難しいので、いったん見つかったら、解雇される可能性が極めて高いからだ」と述べている(4)

2 労働人事仲裁委員会の裁決も、Cさんの訴え認めず

調停が失敗したので、4月11日、労働人事争議仲裁委員会は、仲裁法廷を開いて審理をおこなった。

慈銘は、Cさんが制服を着なかったことが辞めさせた主な原因であると言った。さらに、Cさんは仕事を学び始めたばかりであり、本当に出勤したと言えるのは二、三日であるとも主張した。

それに対してCさんの弁護士は、制服は、慈銘が支給しなかったことを述べた。また、Cさんはすでに9日間、仕事をしており、試用期間は過ぎていると主張した。そして、慈銘がCさんをやめさせたのは、トランスジェンダーに対する差別であるとして、その証拠になる録音を提出した(5)

しかし、5月9日の労働人事仲裁委員会の裁決は、Cさんの訴えを証拠不十分として退けるものだった。

3 Cさん勝訴――違法な解雇と認定、トランスジェンダー差別とは認定せず

Cさんは、仲裁の結果を不服として、貴陽市雲岩区法院に訴訟を起こし、慈銘に対して7日分の賃金と経済的賠償を求めた。

6月17日、貴陽市雲岩区法院は、この事件を審理した。

慈銘は、Cさんの「試用職員の仕事の評価表」と「労働組合小組の会議の決議」を提出して、それによって、Cさんの仕事ぶりは採用基準に合致していないことを証明しようとした(6)

しかし、Cさんとその弁護士は、会社は、上記の2つの文書を仲裁の際には提出していないことから見て、訴訟が始まった後で捏造した疑いがあると主張して、文書の鑑定を要求した。そのため審理は中断されたが、裁判所が指定した西南政法大学司法鑑定センターでは、文書の真偽は確定できなかった(7)

次の12月14日の審理では、Cさんとその弁護士は、慈銘がCさんをやめさせた手続きが合法であることを主張するために持ち出した「労働組合小組の会議の決議」は、労働組合の構成が違法だから、無効だと指摘した。なぜなら、「『貴州省労働組合条例』の規定によると、労働組合の主席は、会社の人事責任者であってはならないにもかかわらず、慈銘の労働組合主席は、会社の人事責任者の金某である」からだ。

また、Cさんは、「慈銘が提出した証拠は他の従業員の試用期間は2か月であることを示しているというが、私の試用期間の評価表は、明確に試用期間は4日であると書いている。だから、私は辞めされたときには正式の従業員だった」と主張した(8)

さらに、この日の法廷には、「中国反就業差別法(専門家意見稿)」(9)の起草者である中国政法大学・劉小楠教授をCさんが招いて、専門家として証人になってもらった(10)

12月30日、Cさんは、貴陽市雲岩区法院が民事判決書(作成日は12月18日)を受け取った。判決は、慈銘がCさんとの労働関係を解除したのは違法だと認定し、慈銘に対して、Cさんに賃金438元のほか、賠償金1500元を支払うよう命じるもので、Cさんの勝訴だった。

判決は、原告と被告との争点を以下の3点だとした。
(1)双方の労働紛争が起きたのは、試用期間なのか、契約期間なのか?
(2)被告は原告との労働関係を解除したのは、違法か否か?
(3)被告が原告との労働関係を解除したのは、トランスジェンダーという身分に対する就職差別なのか否か?

裁判所は、それぞれの争点に関して、以下のような判断を下した。

(1)労働契約法は、試用期間を決めるためには、双方が書面の労働契約に署名しなければならないと規定している。ところが、慈銘はCと書面で労働契約を締結していないので、本裁判所は、Cは2015年4月21日に慈銘に入職し、労働関係を打ち立てたと認定する。したがって、双方の労働紛争が起きたのは、契約期間内である。

(2)慈銘は「試用期間の職員の仕事の評価表」と「労働組合グループの会議の決議」にもとづいて、Cが一日、無断欠勤したと言っているが、出勤記録を提出していない以上、慈銘が提出した証拠からは、契約が解除可能な状況だったとは認定できない。慈銘は労働契約法の規定に違反してCさんとの労働関係を解除したと言えるのであり、経済補償金の2倍を原告に対して賠償金と経済的補償として支払わなければならない。

(3) Cが提出した録音によると、Cと慈銘の職員の楊某との会話はCがトランスジェンダーであることにも触れている。しかし、楊某は被告の企業の一般職員であり、その言論は企業の意見を代表しているとは言えないので、原告が「被告は原告との労働関係を解除したのは、慈銘のトランスジェンダーという身分に対する差別だ」と主張している点は、認定することができない(11)

勝訴は画期的だが、人事の責任者を「一般職員」とみなしていいのかは疑問だ。

また、原告の弁護士の黄沙さんは、賠償金額についても、「この事件は、企業の法律違反のコストが非常に低いことを示している。だから現在の就職差別の状況が非常によくないのだ」と指摘した(12)

4 人格権訴訟も起こす

Cさんは、今回の訴訟を起こした最初の日から「私は金のためにこの裁判を起こしたのではない」と言ってきた。実際、Cさんは、この訴訟において、終始、被告の会社に謝罪を求めてきた。

Cさんは、もしも会社が「私たちは多元的ジェンダーの人々を差別せず、すべての人の性的指向、ジェンダー表現、ジェンダー・アイデンティティを尊重し、彼/彼女らに平等な就業権を与える」と公に声明したら、訴訟を撤回してもいいと思っていたほどだ。しかし、会社は、今に至るまで、自分が誤りを犯したことや差別の事実を認めていない(13)

だから、2017年2月9日、Cさんは、裁判所に、この事件を一般人格権事件としても審理するよう申請した(14)

なぜ「一般人格権訴訟」にしたのかというと、中国の現行の法律の枠組みには、「就職差別」という訴因がないので、就職差別という権利侵害については、一般人格権紛争として訴えるしかないからだという。「一般人格権」とは、人格の独立、人格の自由、人格の尊厳を主な内容とする人格的利益のことである(15)

2017年4月20日、その裁判の法廷が開かれた。20名あまりの傍聴者が来たが、法廷が狭かったため、傍聴者の半数は法廷の外で待たざるをえなかった(16)

Cさんは、慈銘は平等な就業権と人格の尊厳を侵犯したので、書面での謝罪と慰謝料5万元を支払うように求めた(17)

この日は、王永梅弁護士、劉明輝弁護士(劉明輝弁護士は、中華女子学院法学院教授でもある)が訴訟代理人として出廷した。

それだけでなく、西南財経大学法学院副教授で、国務院とILOのプロジェクトである「中国のILO111号条約実施を促進する専門家委員会」でも専門委員をつとめた何霞さんが、専門家補助人と出廷し、多元的なジェンダーと法律について裁判官に詳しく説明した。

何さんは、まず、「性別アイデンティティ(性別認同)」、「性別表現(性別表達)」などの一般的概念について説明した。そのうえで、「性別」概念というのは、男女両性に限られたものではなく、多元的性別という内容を包括したものであることを指摘した。そして最後に、「性別アイデンティティと性別表現による差別も、性差別にあたる」と述べた。この何さんの証言は、この事件の判決の中に、「労働法」と「就業促進法」の中の性差別禁止に関する条項を適用するための学理的基礎を提供するものだった(18)

裁判では、証人として心理カウンセラーも出廷し、Cさんが仕事を辞めさせられたために、心身に損害をもたらしたことを立証した(19)

その一方、慈銘は、Cさんを辞めさせたのは、試用期間に会社の基準と条件に合致しなかったためであり、会社には従業員を選択する自由があると主張した。慈銘は、Cさんが自分は差別されたと言っているのは、一方的な憶測にすぎないと述べた(20)

5 この裁判でも Cさん勝訴――平等な就業権を侵害したと認定

7月26日、貴陽市雲岩区法院は、被告の慈銘が原告のCさんの平等な就業権を侵犯したことを認定し、正当な理由なくCさんに対する労働契約を解除したことに対して、被告に対して慰謝料2000元を支払うよう命じる判決を下した。

判決は、慈銘が労働契約を解除した本当の原因は慈銘自身にしかわからないとした。しかし、慈銘がCさんとの労働契約を解除することが可能だったのはCさんが任に堪えない場合のみであるにもかかわらず、慈銘は証拠を示してそれを立証できなかったと指摘した。判決は、この案件において、Cさんは支配される地位に置かれているのだから、もしその立証責任をCさんに押し付けるならば、事実上立証は不可能になって、労働者が自分の権利を守る際に障害を置くことになり、労働者の権益を保護するのに不利であり、社会の進歩に不利であると述べた。

判決は、それゆえ、慈銘が合理的理由なしにCさんとの労働契約を解除したことは、Cさんの平等な就業の権利を侵犯したことであり、Cさんの自信を失わせ、気持ちを落ち込ませ、自己を否定させるなど、Cさんの精神に一定の損害を与えたと認定した。判決は、この案件の実際の状況を総合すると、慈銘のCさんに対する慰謝料は2000元であるとした(21)

6 書面による謝罪は認められず、控訴

ただし、判決は、Cさんが慈銘に謝罪を求めたことに関しては、「原告が被告に要求した、公開の書面の形での謝罪の請求は、根拠が不足しており、本裁判所は支持しない」と述べた。

この点について、劉明輝弁護士は、以下のような批判をしている。

「中華人民共和国権利侵害責任法」第15条には、「権利侵害責任を引き受ける方法」の一つとして「謝罪」が規定されている。最高人民法院の「民事権利侵害・精神的損害賠償責任の若干の問題に関する解釈」(法釈[2001]7号)第8条も、「この司法解釈が列挙する各項の権利と利益の侵害については、被害者は謝罪を請求することができる」と規定している。

裁判所は慈銘がCさんの権利を侵害したと認定しており、「権利侵害責任法」の規定は「謝罪」の法律的根拠を提供している。「根拠が不足している」という結論は、どこから来たのか?

このことは、よくある次のようなシーンを連想させる。強者が弱者を傷つけたにもかかわらず、謝罪を拒否し、弱者に紙幣を投げつけて、大手を振って去っていく。このような慣性的な思考は根が深い。金によって片を付ければいいと考えて、被害者がその紙幣から、強者の弱者の人格的尊厳に対する二次的侮辱を感じることは考慮しない。裁判所が謝罪の請求を支持しないことは、人格の尊厳に対する軽視と金によって片をつけるという慣性的な考え方を感じさせる。

わずか2000元は被告の会社にとっては些末な金額であり、まったくとるに足りないものである。就職差別をなくし、セクシュアル・マイノリティを含めた一人ひとりの平等権を尊重するという戦略的意義から見て、この裁判が本来もたらすことができる社会的効果は、謝罪の要求を認めないことによって大きく損なわれた。

劉弁護士は、2016年9月、高暁さんがコック見習い募集において女性であることを理由にして不採用を訴えた裁判の二審判決が会社側に謝罪も命じたこと(本ブログの記事「就職の男女差別裁判で、会社の謝罪も命じる初の判決」参照)も引き合いに出して、謝罪も命じた判決を出す必要性を説いている(22)

Cさんは、謝罪の請求が認められなかったため、貴陽市中級人民法院に控訴した(23)

7 Cさんのこと――子どもの頃からのいじめ、提訴への無理解、自分の性別への模索など

この事件については、『ニューヨークタイムス』も報道したが、その『ニューヨークタイムス』の中国語ネットがCさんにインタビューしているので、以下、その内容の一部をご紹介したい(小見出しは私が付けました)。

Cさんのこれまで

Cさんは、生理的には女性だが、自分は男性だと認識している。Cさんは、髪型や服装は男性の装いをしてきていて、女性であることを示すものを身に着けることを嫌ってきた。

そのため、Cさんは、かつて、長年学校で同級生に殴られたり罵られたりされてきて、以前は父母とも喧嘩をしていた。

10年前、大学に通っていたときに、Cさんは「貴州黔程工作組」(微博博客)を設立し、貴州のセクシュアル・マイノリティに心理カウンセリングや宣伝活動をしてきた。経費はどこからも出ないし、活動の場所もなかったが、自腹を切って長年活動を続けてきた。

今は、Cさんは、北京の「同語」という多元的なジェンダーに関心を寄せる団体(もともとはレズビアン団体)に経費を申請して、毎月約2500元の活動資金と賃金をもらっている。Cさんの希望は、正規の部門が彼の事業をサポートすることで、最終的には商工登記を申請して、法律で認められたNGOを作ることだ。

提訴に対する社会やLGBTコミュニティからの圧力

2016年2月、Cさんが法律の学習会に参加したときに、自分の職場での経験を話したところ、反就業差別法の専門家である劉小楠先生に、「それは、道理から言えば、法律に違反している。このことで裁判をしてみる気はないか」と言われた。それがきっかけでCさんは今回の裁判を起こした。

当時、Cさんの提訴を報じた新聞のタイトルは、「装いが個性的すぎるので、女子が会社を辞めさせられた」(24)とか「貴陽の28歳の女子が『外観がセクシーすぎるので』会社を辞めさせられた」(25)といったものだった。

また、当時付いたコメントも、すべてCさんを罵るものだった。「この写真は明らかに男なのに、なんで女なのか」とか、「もし女がこんな格好で我々の会社に来たら、私は絶対やめさせる」とかいうものだった。

LGBTコミュニティの中でも、Cさんは悪く言われた。「Cさんのような行為が私たちを誤解させる。あなた一人によって私たちみんなが悪影響を受けた」と言われたのだ。同じ「兄弟」(FtMのトランスジェンダー)たちからも、こんなことは止めてくれと言われたという。なぜなら、多くのトランスジェンダーは、おとなしくして、自分がそうした人だということを他人に知られたくないようにしていたからだ。

トランスジェンダーの中には金星(著名なダンサー。男性から女性への性別適合手術を受けた)のような人はほとんどいない。また、金星は自分をトランスジェンダーだとは言っておらず、性転換者であり、女だと言っていた。

Cさんには、コミュニティの中からも悪く言われたことが特につらかった。当時、Cさんには仕事がなく、生活を支える金がなかった。会社側からも圧力を受け、コミュニティからも圧力を受け、社会からも圧力を受け、親戚友人からも圧力を受けて、まわりはすべて真っ暗のように思った。Cさんは自分が死んで終わりできたら、と思った。

黒龍江の男装しているレズビアンから共感の声

しかし、北京の「同語」など若干のコミュニティ団体の代表が支えてくれた。

Cさんは、最初は記者の取材も断っていたが、支援している先生方に「あなたのこの裁判はもともと世論を動かすためのものなのに、記者の取材を断るとは……」と言われて、記者の取材に対しても、率直に誠実に話をするようにした。

また、裁判を起こした後、あるときモザイクをかけ忘れて、連絡先を公開してしまったら、黒龍江の男装しているレズビアンが、Cさんに、「私もあなたと同じような目にあった。あなたの裁判を知ったとき、私は光を見たような思いがした。私もあなたと同じようにできることを知って、希望を与えてくれた」と言ってくれた。彼女がそう話してくれたことによって、Cさんはこの裁判の意義の大きさがわかった(26)

Cさんの自分の性別に関する模索

Cさんは、子どものときから小さいときからいじめられてきた。男子生徒の服装をしていたからだ。Cさんは、自分で髪を切って、男の子と同じ髪型にして、服も男の子のものを着ていた。Cさんは道を歩くときも、前を見ずに下を向いて歩き、いつも同級生に殴られたり、罵られたりした。女子生徒にも、男子生徒にもいじめられた。

いじめられていること父母も話さなかった。中高生のときには、薬を飲んだり、手首を切ったり、飛び降りたりして自殺をしようとしたこともある。ブラジャーをせずに、布を巻いていたので、「同性愛だ」「人妖(化け物。ゲイボーイ、ふたなりなどの意味でも使う)だ」と罵られたりした。

しかし、Cさんも、大学に入学すると、自分のことを知らない人ばかりだったので、いじめられなくなったので、やりたいことができるようになった。

Cさんは、自分がトランスジェンダーであることを知ったのは2009年だった。それまでは、自分は同性愛だと思っていた。自分の身分証は女で、女が好きだからだ。しかし、後に、自分は小さいころから自分は女子学生にはなりたいとは思っていないことに気づいた。2009年に「トランスジェンダー」という語を知ってから、Cさんは、自分を探求するようになった。

Cさんは香港トランスジェンダーリソースセンター(香港跨性別資源中心)主席のJoanneさんと知り合いになった。Joanneさんは手術をしたトランスジェンダーで、MtFだった。CさんはJoanneさんの話を聞いて、世界の大門が開けたような気がした(27)

おわりに

LGBTの中でもトランスジェンダーには独自の困難がある。Cさんのケースを見ても、外見だけからわるので、たえずいじめや就職差別の標的にされてきた。また、自らがトランスジェンダーだと認識することも、当時はけっして簡単ではなかった。裁判をしても、LGBTコミュニティの中でさえ理解をあまり得られなかった。それらの困難によって、Cさんは自殺をしようとしたほどだった。

Cさんは、それを乗り越えて法的解決を求めて立ち上がった。最初の労働人事仲裁委員会では訴えが認められず、裁判をせざるをえなかった。裁判においても、労働裁判特有の会社側の事実の歪曲や立証責任の問題に直面した。裁判は、労働紛争と人格権の2つを起こさなければならなかった。

しかし、そうした闘いの結果、解雇の不当性と平等な就業権の侵害とを認めさせた。まだ謝罪は実現していないので、さらに控訴して、それを求めている。

このようなトランスジェンダー独自のたたかいが中国で出現したことの意味は大きいと思う。もちろん、それには、裁判でCさんを支えたNGOや裁判での証人になった学者のように、トランスジェンダーのたたかいに協力する人々が出現したことを含めて述べている。

(1) Cさんは、ネット上で「Mr.C」と名乗っていたので、中国語では「C先生」(先生=男性への敬称)と記されているというが(「贵阳跨性别青年“爱穿男装”被单位辞退,申请劳动仲裁获受理」澎湃新闻2016-03-15)、ここでは「Cさん」と記す。
(2)贵阳28岁女子因“外形太性感”遭公司开除人民网2016年03月10日(来源:贵阳网—贵阳晚报)。
(3)以上は、“Job Discrimination Case Raises Questions of Transgender Rights in China”,APRIL 11,2016→「中国跨性别就业歧视第一案启动仲裁」纽约时报中文网(VANESSA PIAO)2016年4月12日。
(4)贵阳跨性别就业歧视案调解失败,即将开庭审理」澎湃新闻2016-03-31。
(5)贵阳跨性别就业歧视案开庭,公司辩称辞退该员工因不穿工装」澎湃新闻2016-04-11。
(6)以上は、「贵阳跨性别就业歧视案宣判:被告属违法辞退,但不认定是歧视」澎湃新闻2016-12-31。
(7)Transgender Man Was Unfairly Fired, but Bias Not Proved, Chinese Court Says, JAN. 2, 2017→「中国跨性别者被解雇,法院:无歧视证据」纽约时报中文网(VANESSA PIAO)2017年1月3日。
(8)贵阳跨性别就业歧视案宣判:被告属违法辞退,但不认定是歧视」澎湃新闻2016-12-31。
(9)少なくとも2009年には、全国人民代表大会に提出するために作成されており、第2条で性的指向による差別にも触れている(「中华人民共和国反就业歧视法(专家建议稿)」知乎专栏2016年4月19日)。
(10)跨性别C先生的微博【国内首例:就业歧视案邀请专家证人出庭】2016-12-14 23:40
(11)贵阳跨性别就业歧视案宣判:被告属违法辞退,但不认定是歧视」澎湃新闻2016-12-31。判決の原文は、跨性别C先生的微博【国内首例胜诉的多元性别就业歧视案:法院判决确认用人单位违法解除并支付赔偿金!!】2016-12-30 16:16に掲載されている。
(12)“Transgender Man Was Unfairly Fired, but Bias Not Proved, Chinese Court Says”, JAN. 2, 2017→「中国跨性别者被解雇,法院:无歧视证据」纽约时报中文网(VANESSA PIAO)2017年1月3日。
(13)全国首例跨性别就业歧视案人格权诉讼开庭」2017-04-25 C先生 同语。
(14)跨性别C先生2月10日 00:55
(15)同语说法 | 深度解读——全国首例跨性别就业歧视案一般人格权胜诉判决(上篇)」2017-07-27 K总 同语。
(16)同语说法 | 深度解读——全国首例跨性别就业歧视案一般人格权胜诉判决(下篇)」2017-07-28 K总 同语。
(17)同语说法 | 深度解读——全国首例跨性别就业歧视案一般人格权胜诉判决(上篇)」2017-07-27 K总 同语。
(18)同语说法 | 深度解读——全国首例跨性别就业歧视案一般人格权胜诉判决(下篇)」2017-07-28 K总 同语。
(19)刘明辉「你给我钱,但我只想要道歉:跨性别就业歧视第一案胜诉背后」橙雨伞公益21 八月 2017 - 10:08。
(20)因“爱穿男装”被辞退?公司被判赔偿精神抚慰金」成都商报2017年8月1日。
(21)因“爱穿男装”被辞退?公司被判赔偿精神抚慰金」成都商报2017年8月1日。
(22)刘明辉「你给我钱,但我只想要道歉:跨性别就业歧视第一案胜诉背后」橙雨伞公益21 八月 2017 - 10:08。
(23)跨性别C先生8月17日 20:48
(24)贵阳28岁女子因“外形太性感”遭公司开除人民网2016年03月10日(来源:贵阳网—贵阳晚报)。
(25)打扮太个性 女子遭单位辞退:已提请劳动仲裁」贵阳网—贵阳晚报 2016-03-10。
(26)跨性别者C先生(上):我为何告诉中国我是直男」纽约时报中文网(王媛)2017年3月22日。
(27)跨性别者C先生(中):我不想不男不女」纽约时报中文网(王媛)2017年3月22日。

マラソン大会への集団的参加や国際反ホモフォビアデーのサイクリングでLGBTをアピール――パレードはできなくとも、パレードのように

目次
はじめに
一 国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング
 1.北京などでの活動
 2.杭州での活動
二 マラソンに集団として参加 (レインボーマラソン)
 1.杭州での活動
 2.他の地区での活動
おわりに

はじめに

2012年11月、湖南省長沙市で、中国大陸初のLGBTパレード(同志游行)が2~30人でおこなわれた。2013年の国際反ホモフォビアデー(5月17日)(*)にも、同じ長沙市でパレードがおこなわれ、このときは約100人が14省から集まった。しかし、2013年のパレードの主催者の向小寒(仮名、ゲイ)は、警察の許可を得ずにデモをしたという理由で行政拘留12日に処せられた。翌2014年の国際反ホモフォビアデーにも、向はパレードを計画したが、事前に警察に呼ばれて圧力をかけられたため、レインボーフラッグを掲げてスローガンを叫びながら山道を行くイベントに変更せざるをえなかった(「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」「BLサイト弾圧に対する抗議のパフォーマンス、情報公開申請、声明など 」の四)。
(*)正確には、2009年からは「国際反ホモフォビア・トランスフォビアデー」となり、2015年からは「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアデー」となっているが、以下では「国際反ホモフォビアデー」と略させていただく。

これ以後、中国ではLGBTパレード(同志游行)と名付けたものはおこなわれていない。すなわち、LGBTの人々が街頭において集団で行進するする自由は封じ込められたように見える。

しかし、それに近いもの、ないしは代わりになるものとして、以下の2つがおこなわれている。

(1)国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング

これは、毎年、国際反ホモフォビアデーを記念して、5月17日前後の土曜日か日曜日に、集団で、反ホモフォビアを示すTシャツを着て、レインボーフラッグを持つなどして、スローガンを叫びながら、自転車に乗って、各地でホモフォビア反対のアピールや宣伝をする活動である。観光地を回る場合と、大学を回る場合とがある。

これは、2009年に北京でおこなわれたのが最初で、その後各地に広がっており、「レインボーサイクリング(彩虹騎行)」などと呼ばれている。

(2)国際マラソン大会の短距離のマラソンに集団的に参加してアピール(レインボーマラソン)

これは、マラソン大会、特にその非常に短距離のマラソンに集団として参加して、みんなで大きなレインボーフラッグを広げたり、各自がレインボーフラッグを持ったりしながら走る活動である。走りながらスローガンを叫ぶときもある。走っている間だけでなく、スタート地点やゴール地点でアピールすることや、レインボーフラッグやLGBTの権利をアピールする横断幕を掲げて選手を応援することにも力が入れられている。

これは、主に2011年から毎年11月の杭州国際マラソンでおこなわれている。ただし、他の国際マラソンでも見られ、「レインボー[プライド]マラソン(彩虹[驕傲]馬拉松)」などと呼ばれる。

レインボーサイクリングの場合は、途中で停車して資料の配布や対話が可能であるという利点がある。その一方、レインボーマラソンの場合は、多人数でレインボーフラッグを手に持って広げたまま運ぶなど、パレードと同様のことができるという利点がある。

ここでは、レインボーサイクリングとマラソンの両方を毎年おこなってきた杭州の事例を中心にご紹介する。ただし、レインボーサイクリングについては、杭州が最も早いわけでも大規模なわけでもないので、北京などの事例を先にご紹介する。

一 国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング

1.北京などでの活動

・2009年・北京

本ブログでも当時紹介したが、2009年、北京で、16名の大学生が自転車隊を作って、国際反ホモフォビアデーの宣伝活動をした。彼らは、「同愛無国界(Love Knows No Border、同性愛に国境はない)」という字句が書かれた揃いのTシャツを身にまとい、レインボーフラッグを掲げて、北京の7カ所の大学を回った(本ブログの記事「中国各地で反ホモフォビア・トランスフォビア・デーの活動」)。

この活動のきっかけは、レズビアングループ「同語」のkarenさんが、「愛白」という中国のLGBT団体のロサンゼルスのセンターに実習に行ったとき、「AIDS Life Cycle」という、毎年、数千人がサンフランシスコからロサンゼルスまでサイクリングして、その沿道でエイズ防止のための募金やLGBTの文化活動をしていることを知ったことである。karenさんは、そこから発想を得て、2009年初め、同語の国際反ホモフォビアデーの活動計画を立てる会議で、大学生が自転車で大学を回る活動を組織することを提起した(1)

・2011年・北京

2011年は、北京では、5月15日に、20人が、さまざまなデザインやスローガンを書いたTシャツを着て、「レインボー自転車隊」を結成して、北京の多くの観光地をめぐって、「国際反ホモフォビアデー」の宣伝をした。

15日におこなった理由は、「みんなの時間を合わせるためと、影響力を高めるため」だった。この点は15日が日曜日だったことと関係していよう。

Tシャツにも、「良い同志」「私は同志だ、私は誇りを持っている」「私は異性愛を差別しない」「ホモフォビアノー」「私を治すな、私は病ではない」「どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ」などのスローガンを書いた。

自転車隊は、午前9時に出発して、天壇、天安門、景山、北海、鼓楼などの北京の有名な観光地を回り、それぞれの建築物の前で、みんなで記念写真を撮るとともに、「私は同志(LGBT)だ、私は誇りを持っている」「ホモフォビアは恥ずべきだ」「私は私だ」「5.17国際反ホモフォビアデー」などと書いた宣伝物を配布した。

天壇では、みんなで声を揃えて「同性愛、私は誇りを持っている」というスローガンを叫び、その場にいた百人以上の観光客の注目を引き、その後、宣伝物を配布したり、国際反ホモフォビアデーの意義を語ったりした(2)

このような自転車を使った宣伝は「流動するレインボー」とも呼ばれ、2011年には、17地区の22のLGBTグループがこうした活動をした(3)

・2012年・北京

2012年には、北京では、5月20日の日曜日に国際反ホモフォビアデーの活動がおこなわれた。自転車隊の人々は、午前中から、「ホモフォビア ゼロトラレンス(恐同零容忍)」と書いたお揃いのTシャツを着て、レインボーフラッグを持ってサイクリングをおこなった。LGBTに対する偏見や差別をなくすために、途中で通行人に宣伝資料も配布した。昼には2組に分かれて、午後も宣伝をおこなった(4)

北京LGBTセンターと同語の5名は、午後は、中国人民大学、北京大学、中国農業大学を回った。彼/彼女らは、1日で合計13㎞を7時間かけて走り、80部あまりの宣伝物を配布し、100人以上と交流をした(5)

・2014年・西安

2014年に西安では、30名近い人々がこの活動をおこなった。午前10時に長安大学を出発して、6大学を回り、学生に宣伝資料を配布して、セクシュアル・マイノリティについての基本的知識を普及した。活動は夕方6時までおこなわれた。

この活動では、ある人に「同性愛は病気だ。ぼくが誘惑されて、汚されるのがこわい」と言われるなど、参加者が気落ちするようなことも何度もあった。しかし、その一方、子どもを抱いた老人に「同性愛はまったく病気ではない。君たちの活動は非常に良い」と言われるなど、さらに大きな喜びや感動もあったという(6)

2.杭州での活動

杭州での国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリングは、2010年に結成された民間団体「向陽花開(ヒマワリの花が開く)‐杭州LGBT」(7)が主におこなっている。

・2011年

杭州では、2011年に最初のレインボーサイクリングがおこなわれた。この年は、5月22日の日曜日の午前8時~10時におこなう予定が立てられている。まず、午前8時に岳廟(西湖の北にある、岳飛を祭った廟)の貸自転車所に集合して、宣伝カードを分配したり、レインボーの印を付けたりするなどの準備をする。8時半に正式に出発して、通行人に国際反ホモフォビアデーのカードや宣伝材料を配布したり、記念写真を撮ったりしつつ、「白堤」(西湖を分ける堤)を通って少年宮(少年少女の文化活動のための施設)まで行くことが予定された(8)。主に西湖の観光地を回るコースのようである。

当日この予定通りおこなわれたかは不明だが、6人がレインボーのマークを付けたTシャツを着て、レインボーフラッグを手に持って自転車を湖畔に停めている写真(9)や、8人が大小のレインボーフラッグを前に掲げて、白堤にある「断橋」という橋で撮った記念写真(10)が微博で発表されている。

・2013年

2013年には、5月25日の土曜日に「Born This Way 私は誇りを持つ」というテーマでおこなわれた。

この年は、9:30-17:00という長時間をかけて、「下沙」という多くの大学が集まっている地区を回った。下沙を回った理由は、この時期は卒業の季節なので、多くの大学の今年度卒業生が4年間生活した大学にもう一度行くことを希望したためだという(11)

この年の参加人数は36人と記されており、大きく増えたように思われる。参加者は各自が「同愛無国界」と書いた揃いのTシャツを着て、手にレインボーのペイントをし、レインボーフラッグを持って出発した。

午前は、浙江メディア学院(9:30-10:00)、杭州職業技術学院(10:00-10:20)、中国計量学院(10:30-11:20)、浙江理工大学(11:30-12:30)を回り、午後は、浙江経済職業技術学院、浙江経貿職業技術学院、浙江金融職業技術学院、浙江財経大学、杭州師範大学、浙江工商大学を回って、合計10大学を回った。

多くの大学では、正門の脇の大学名が大きく記された箇所のそばで、みんなで記念撮影をしている。その際には、後ろに大きなレインボーフラッグを掲げて、前には、「同愛無国界」と書いた横断幕を広げている。

揃いのTシャツを着て、レインボーフラッグを持って隊列を組んでいるためであろうか、多くの大学で、大学に入るときに警備員との攻防戦があったが、それをくぐりぬけて、スローガンを叫んだり、宣伝活動をしたりしている。以下、それぞれの大学での状況を記しておく。

浙江メディア学院では、警備員に侵入を阻止された。そこで、レインボーフラッグをたたみ、正門の50メートル手前で、スローガンを叫ぶのもストップし、分かれて正門に入った。

杭州職業技術学院では、警備員に何をしているのかを聞かれたので、この活動の背景を大いに説明し、意義を大いに説明し、規模を大いに説明したら、解放してくれた。

意気上がった参加者たちは、中国計量学院に行く道でも、「同愛無国界、真愛無性別(同性愛に国境はない、真の愛に性別はない)」というスローガンや、「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」というスローガンを叫んだ。

中国計量学院に入るときは、警備員の近くを通る際には、学術問題を議論しているかのように装って学校に入った。図書館前で、卒業生がクラスで卒業写真を撮っていたので、卒業生たちに向けて、「同愛無国界、真愛無性別」とスローガンを叫んだりした。

浙江理工大学では、20分間、国際反ホモフォビアデーやLGBTについての宣伝を、通行人に宣伝物を配布しつつおこなった。

浙江経済職業技術学院では、警備員がじっと見ていたので、自転車から降りざるをえなかった。学院の正門のそばの「浙江経済職業技術学院」という文字も、バスの陰に隠れていたので、別の門のところで記念撮影をせざるをえなかった。

しかし、ちょうどその頃、人通りが多い時間帯になったため、みんなの情熱が戻ってきて、「同愛無国界、真愛無性別」とスローガンを叫びながら自転車で移動し、浙江経貿職業技術学院との正門前での記念撮影をすませ、浙江金融職業技術学院の正門前では「同愛無国界、真愛無性別」というスローガンも叫んだ。

浙江財経大学でも撮影をし、通行人が多かったので、「同愛無国界、真愛無性別」と叫んだ。

杭州師範大学では、管理が厳しかったので、小旗をしまったり、外套を羽織ったりして、校内に入った。また、写真を撮っているとき、警備員が近づいてきたので、そそくさと撮影をすませ、すぐさま退散した。

しかし、杭州師範大学の門の前の通りには、非常に多くの学生がいたので、思わず「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」というスローガンを叫んだら、周りの人に注目されて、うれしかったという(12)

・2014年

この年は、西湖と下沙を1日ずつかけて回るという、これまでにない規模の予定が立てられている。具体的には、まず、5月17日(土)の8:30‐16:30に西湖の観光地の白堤、岳廟、蘇堤、長橋、呉山を回り、5月25日(日)の8:00‐13:00、15:00‐18:00には、下沙の11大学を回るのである。ただし、この年は、大学の中には入らないとされている(13)

・2015年

この年は5月17日の日曜日に、10:30から西湖の観光地を回るコースでおこなわれた(14)。大学方面には行っていないようだが、60人あまりが参加しており、人数としては、少なくとも2013 年よりは増えている(15)

・2016年

この年は5月15日の日曜日に、以下のように、午前中だけ、やはり西湖の観光地を回るコースでおこなっている。

9:00~9:30 ボランティア集合
9:30~10:00 参加者受付、ペイント、バザー
10:00~11:30 編隊を組んで自転車ツアー(10.2㎞)
11:30~13:00 みんなで食事、バザー(16)

参加者も、40数人と、それほど多くはない。

ただし、この年は、エイズ問題の活動と結び付けておこなわれたことに特徴がある。

5月15日は5月の第三日曜日だが、この日は、エイズで死亡した人を追悼する「国際エイズ・キャンドルライト・メモリアル(International AIDS Candlelight Memorial)」の日でもある。

また、長い間、「同性愛」も「エイズ」も、社会によって汚名を着させられてきたという共通点がある。

そして、ちょうどこのとき、江西省南昌市から「伴艾騎行」という、エイズ問題についての自転車ツアーをしてきた人々(北京まで行く予定だという)が来たたこともあり、彼らといっしょに自転車ツアーをおこなった。

この年も例年同様、頬にレインボーのペイントをして、レインボーフラッグをマントのように翻したり、レインボーフラッグを片手で掲げたりしている写真や、道行く人に資料を渡して説明している写真がネットに掲載されている。

スローガンとしては、以下のようなことが叫ばれている。
「家家都有同性恋、只你們看不見」
「撑同志、反歧視(LGBTを支え、差別に反対しよう)」
「不男不女不一様、又男又女又怎様(男でも女でもなく、いろいろある。男でも女でもあっても、どうだというのか)」
「好基友、一輩子」(よい同性愛の友人は、一生のものだ)

終了後はパーティーもおこなわれた(17)

二 マラソンに集団として参加 (レインボーマラソン)

1.杭州での活動

「向陽花開‐杭州LGBT」は、杭州国際マラソンへの参加も組織している。

・2011年

「向陽花開‐杭州」のメンバーが初めて集団として参加したのは、2011年11月6日の杭州国際マラソンである。メンバーらは、六色のレインボーフラッグを手に持って、フルマラソン、ショートマラソン、ミニマラソンに参加した。さらに、別の多くのメンバーが「レインボー応援団」を作り、「同志愛生活(同志は生活を愛する)」と書いたレインボー色の横断幕を広げて、参加者を応援した。

写真を見ると、このとき既に、顔に小さなレインボーのペイントをした4人がそれぞれレインボーフラッグの4隅を持って広げて手に持ち、肩や頭上に掲げながら走っており、あたかもLGBTパレードのようである。他に、顔にレインボーのペイントをして、小さなレインボーフラッグを持ちながら走っていたり、選手の応援をしたりしている光景もある。出発前なのか終了後なのかわからないが、「同志愛生活」と書いた長大なレインボーフラッグを前に掲げて15人ほどが記念撮影をしている写真もある(18)

・2012年

2012年の杭州国際マラソンは11月18日におこなわれたが、この年は、事前のプランもネット上で発表している。そこには、以下のようなことが書かれている。

・杭州国際マラソンには、「フルマラソン(42.195キロ)」「ハーフマラソン(21.0975キロ)」「ショートマラソン(13キロ)」「小マラソン(6.8キロ)」があるが、「向陽花開‐杭州」は、主に「小マラソン」に重点を置いて活動を組織する。ただし、他のコースに申し込んでもよい。小マラソンの参加者は、8人一組のグループに分かれて出発して、スローガンなどを唱える。他のコースの参加者については、統一的な割りふりはしない。

・参加者はレインボーの印を付けた物品を身につけてマラソンに参加し、スタート前とゴールイン後には、一緒に記念写真を撮る。当日は、参加者は、出発前に、浙江図書館の入り口に集まって、顔にレインボーを描いてもらうほかに、レインボーのスカーフ、サポーター、スウェットバンドを身につけたり、レインボーフラッグやスローガンを書いたプラカードを受け取ったりする(19)

当日の写真を見ると、まず出発前に、15人ほどでレインボーフラッグを前に持って記念撮影をしている(20)。スタート後も、4人で大きなレインボーフラッグを持って走ったり、レインボーフラッグを両手で掲げたりしながら走っている人がいて、非常に目立っている(21)。その他、ミニチュアのレインボーフラッグを持って走っている人、「同志は生活を愛する」という横断幕の後ろで、おおぜいで応援している人々、レインボーフラッグを持って男どうしでキスをしている人など、多くの写真が発表されている(22)

動画もあり、それを見ると、レインボーフラッグを広げてスローガンを叫びながら走ったり、ゴール後に「同志愛生活」と書いた大きなレインボーの横断幕を広げて、「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにでも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」と何度も叫んで注目を集めたりしている (→「【搜狐拍客】杭州马拉松赛场现同性恋高呼“同志爱生活”」)

また、マラソンの前の10月5日と11月3日には、事前に参加者がマラソンの距離や体力の消耗に適応できるようにするためと、参加者の意志と団結を強めるために、みんなでゆっくり走ったり、コーヒーショップで集いをしたりするイベントも設定されている(23)

・2013年

この年の杭州国際マラソンは11月3日におこなわれたが、この年は、「向陽花開‐杭州LGBT」のテーマが、前年のマラソンや同年5月の反ホモフォビアデーまでの「Born This Way 私は誇りを持つ」から「Run This Way 私は私の道を走る」に変わっている。「生まれつき」であることを強調しなくなったということだろうか。

また、この年のプランには、選手とは別に、ボランティアの仕事も書かれている。それは、参加の受付、グッズの分配、バザーでの収入の統計、途中で沿道の観衆に宣伝をおこなうこと、写真や動画の撮影、微博によってリアルタイムで選手と周辺の人々の写真と交流の内容を発信することなどである。

また、小マラソンの選手は8人一組ではなく、7人一組になるなど、少し変わった点もある。また、終了したら、みんなで一緒に食事できることなども書かれている(24)

・2014年

この年の杭州国際マラソンは11月2日におこなわれた。この年のスローガンは「同志(LGBT)たちは立ち上がって、大きな声であなたの愛を語ろう」となっている。

また、この年は、「向陽花開‐杭州」が小マラソンを担当するほかに、「クィアフォーラム」がショートマラソンを担当する計画になっている(25)

参加人数も、また新記録を作ったと書かれている(26)。正確な数字は不明ながら、67人が参加し、そのうち選手が49人、ボランティアが18人だったようだ。性的指向は、ゲイが21人、レズビアンが19人、バイセクシュアルが6人、Questioningが4人、異性愛が10人という。最初の年は20人余りだったのが、70人近くになったと書かれている(27)

また、この年は、多数の大きな写真と比較的長い時間の動画が発表されている。まず、多くの写真を掲載した記事(→「彩虹马拉松,让我们明年,不见不散!」2014-11-11 向阳花开 向阳花开杭州LGBT)を見ると、6時30分に、浙江図書館前に、参加者たちが集まって、受付をし、レインボーの目印になるグッズを受け取り、レインボーのペイントをし、談笑したり、お互いに一緒に写真を撮ったりしていることや、8時から9時30分までは、黄龍体育館で、レインボーフラッグ、バイセクシュアルフラッグ(ピンクとロイヤルブルーの間にラベンダー色がある旗)、向陽花開の旗をはためかせており、スタート後は、大きなレインボーフラッグを複数、横に広げ、大きなレインボーフラッグや向陽花開の旗を旗竿にさしてみんなで軽く走っている情景、終了後は、ゴール地点でしばらく休憩した後、おおぜいで歩いて、バートンコーヒー館に行き、大きなピザを食べて、みんなで楽しくおしゃべりをしたことが書かれている。

上で書かれているように、この年からバイセクシュアルの旗が登場したようだ。

動画(→「向阳花开14年马拉松」)では、レインボーフラッグを持って走ったり、ときに歩いたりしていることがわかる。とくにゴール地点では、全員が集まって、レインボーフラッグを何枚も掲げつつ、スローガンを叫んでいて、しっかりとアピールをしているようすが収録されている。

なお、この年もマラソンの準備活動をしており、10月18日と10月26日に、それぞれ西湖の北にある宝俶山と九曜山に登っている(28)

・2015年

2015年は、杭州国際マラソンは11月1日におこなわれたが、その報告は、次のような書き出しで始まる。

家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」、11月1日、このスローガンが西湖の湖畔に響き渡った。2日前に台北で挙行されたLGBT大パレードで、変わった服装をし、自分を誇り、レインボーが通りを埋め尽くしたことに羨望や嫉妬をしているのか? いま、私たちはそのすべてをやった。(29)

この年は、前夜、杭州LGBTセンターで「面基大会(「面基」とは、ネット上でのゲイの友人[基友]が実際に顔を合わせることであり、現在では広くネット上での知り合いが実際に顔を合わせること全般も指している)をおこなった。若い仲間たちが4、50人集まって、30㎡あまりの部屋は満員になった。大会では、最後に阿妹(アーメイ。台湾の歌手)の《彩虹(レインボー)》を合唱した。

当日の11月1日は、かなりの雨が降っていて、参加者が集まるかどうか心配されたが、五、六十人の人が集合地点である図書館の玄関に集まり、ペイントやバザー、準備運動をした。

この年も、「同志們站出来 大声説出你の愛(LGBTたちは立ち上がって、大きな声であなたの愛を語ろう)」と書いたレインボーの背景を付けたプラカード(「の」は日本語で書いてある)が掲げられている(30)

この年は、8mの長さの巨大なレインボーフラッグを広げたまま、十数人のランナーが持って走った。そのレインボーフラッグは、官制のメディア「浙江在線(オンライン)」が段橋を走るマラソンの空撮をした写真にも大きく写った。

また、向陽花開の旗を持って半裸にマントを背負った、スパルタの勇士の扮装をした男性が登場し、多くの人の目を引いた。これは、フランス7月革命を題材にしたドラクロアの絵画「民衆を導く自由(の女神)」を模したもののようだ(31)

マラソンでは、「家家都有同性恋、只你們看不見」「不男不女不一様、又男又女又怎様」「撑同志、反歧視(LGBTを支え、差別に反対しよう)」というスローガンが響き渡り、以下の文言を書いた6枚のボードが高く掲げられた。
・「李双双(1962年の映画『李双双』のヒロインで、生産労働に参加し、夫から自立する):台所を出て、人民公社に行こう」
・「同性パートナー:婚姻という束縛は、私たちも選択する権利がある」(「たとえ婚姻が束縛だとしても、私たちも自分が選択する権利がほしい」という意味のようだ(32))
・「白素貞(民間説話『白蛇伝』に登場するヒロインで、その正体は白蛇の精):妖怪も恋愛を談じたい」
・「女:社会の果実を、私たちも半分ほしい」
・「経血は恥ずべきではなく、DVこそ恥ずべきだ」
・「祝英台(民間説話『梁山伯と祝英台』のヒロインで、男装をしている):不男不女不一様、又男又女又怎様」

6枚のうち、3枚がフェミニズムのプラカードであることが目立つ。

ゴールした後は、暖かいコーヒー館の地下室に行ってゲームをし、最後は、自分のことを語り合った(33)

こうした状況についても、大きな写真が多数アップされている(→「彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT、「向阳花开2015杭州彩虹骄傲马拉松小结」花开•杭州 2015-11-03 15:14:24)。

・2016年

この年の杭州国際マラソンは11月6日に開催されたが、この年は、以下のようなスローガンを一斉に叫びつつ走った。
・「家家都有性少数、社会需要包容度(どこにもセクシュアル・マイノリティはいる。社会が包容することが必要だ)」
・「不男不女不一様、又男又女又怎様」
・「撑同志、反歧視」
・「愛情不分性別、同性一様和諧」
・「家家都有同性恋、只你們看不見」
・「不止能頂半辺天、婦女能頂整片天(女性は天の半分を支えることができるだけじゃない。天を全部支えることができる)」
・「打非親、罵非愛、告別暴力和傷害(殴るのは親しさではなく、罵るのは愛ではない。暴力と傷害にさよならしよう)」
・「杭州因多元而美麗(杭州は多元的だから美しい)」

この年も、おおぜいの手によって長いレインボーフラッグが運ばれて、多くの人が一人ひとり大きな旗を掲げた。

この年の状況については、参加者の「零下50°」さんが、次のように書いている。

私たちのスローガンは、セクシュアル・マイノリティ、フェミニズム、反暴力などに及ぶ。私たちは、断橋、楼外楼、西冷橋、岳廟、黄龍体育館では、しばらくストップした。道行く人にレインボーフラッグの意味を問われたときには、ボランティアが熱心に説明した。

レインボーフラッグ以外にも、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど、セクシュアル・マイノリティの旗を数枚掲げた。これは、向陽花開は、同性愛だけでなく、いかなる集団の権益も尊重されなければならないと考えているからだ。筆者はかつてイギリス映画《Pride》を見たことがあるが、そこでは、同性愛たちと労働者たちが、偏見から包容へ、誤解から連盟へと変わったという話が語られていた。いかにしてすべてのマイノリティ集団を連合させて、ともに権利の平等を勝ち取るかが、国内の平等な権利運動の次の突破口になるかもしれない。

少なくない友人が、私たちの組織の活動に参加することを通じて、自己肯定の面で大きな進歩があったと語っている。最初は恐怖で奥に引っ込んでいたが、カミングアウトして自分の権利のために努力するようになったという。ある人は、「同性愛者の家族と友人の会」のお母さんたちも来て、私たちの活動を支持してくれたことに心から感動した、なぜなら家族の承認と支持こそが私たちが渇望しているものだから、と述べた。ある人は、レインボーマラソンを通じて、志を同じくする良い仲間たちと知り合いになり、ここで、自分の愛情さえ見つけたと述べた。また、ある人は、来年もつづけてレインボーマラソンに参加したい、このような、みんなといっしょに公の場で権利の主張をすることはとても気持ちいいと言った。

注意すべきなのは、路上でも、少なくない異性愛のおじさん・おばさんが親指を立てて、私たちを励まし、支持してくれたことだ。私たちはずっと異性愛者たちにも、セクシュアル・マイノリティ団体に入るよう呼びかけてきたが、多くの人にはその理由がわからない。なぜなら、みんなは、そうした団体はセクシュアル・マイノリティたちの内部のお祭り騒ぎをしていると思っているからだ。実際はそうではなく、フェミニズムと同じように、多元的セクシュアリティも、一人ひとり利益と関わっている。(‥‥)多元性を主張し、セクシュアル・マイノリティの権利を支持することは、けっしてLGBT+内部のお祭り騒ぎではなく、公衆が主張し、支持することが必要なことなのである。

(34)

2.他の地区での活動

こうしたマラソンへの集団参加によるアピールは、他のマラソンでもおこなわれている。

以下はネット検索によって調べたもので、網羅的な調査ではないが、以下のような事例がある。

・2011年・北京

2011年10月16日の北京国際マラソンでは、ハーフマラソンにレズビアンの大京さんが選手として出場した。大京さんは、服の上に「私は私」「ホモフォビアは恥ずべきだ」というスローガンを貼り、レインボーフラッグを掲げて走りながら、2時間を切る成績をおさめた。

彼女を応援するために、十数人がレインボーフラッグを振り、「頑張れ同志、愛のためにスパート」と書いた横断幕を掲げ、スローガンを叫んで声援を送った(動画→「Rainbow Marathon 彩虹马拉松」)。これは、レズビアン団体「同語」が呼びかけた活動だった(35)

・2013年・太原

計画どおり行われたか否か不明だが、2013年の太原国際マラソンでも、ミニマラソン(4.2195㎞)に重点を置いた、同年の杭州国際マラソンと類似した活動が計画された(36)

・2016年・石家荘

2016年11月13日の石家荘国際マラソンでも、十数人が長大なレインボーフラッグを広げて走ったり、横断幕を数人で掲げたり、プラカードやレインボーフラッグを持って走るなどして、多くの人の目を引いた(37)

おわりに

(1)時期的な変化

参加者数は、杭州の場合、明確に数字として書かれたものを見ると、
・レインボーサイクリングは、(2013年)36人→(2015年)60人余り→(2016年)40数人
・レインボーマラソンは、(2011年)20人余り→(2014年)67人→(2015年)(集合地点で)5~60人
となっており、2014、5年ごろまでは明確に増加しており、その後はそうではないが、さほど減っているとも言い難い。写真を見ても、全体としての増加傾向が感じられる。

また、レインボーマラソンにおいては、2014年ころから、フェミニズムとのつながりやセクマイ内部の多元性(バイセクシュアル、トランスジェンダー)が表現されるようになってきたという変化もある。

レインボーマラソンのプラカードやスローガンの中の「経血は恥ずべきではなく、DVこそ恥ずべきだ」(2015年)とか「殴るのは親しさではなく、罵るのは愛ではない」(2016年)というのは、もともとは行動派フェミニストが提出したスローガンである。また、2014年のレインボーマラソンで、活動当日の「ボランティア管理」を担当した人の名は「麦子」となっているが(38)、これは行動派フェミニストのリーダーの1人である李麦子さんのことではないか。こうした点からは、行動派とのつながりが感じられる。

(2)諸外国のLGBTパレードと中国のレインボーサイクリング、レインボーマラソン

2015年のレインボーマラソンに参加したある大学生は、次のように述べている。「私が見るところ、この活動の意義は、セクシュアル・マイノリティたちの自分のアイデンティティを強めるだけでなく、彼らの公共領域における可視度を強め、人々にセクシュアル・マイノリティという集団に関心を持たせ、LGBTQが身近に存在していることを知らせることにある。」(39)

先述の「零下50°」さんの感想でも述べられていたことだが、レインボーマラソンは、自己のアイデンティティを確立し、仲間を作るとともに、公の場でLGBTの存在や権利を主張する役割を果たしている。こうした意義は、諸外国でおこなわれているLGBTパレードと共通であろう。

2015年の杭州国際マラソンの報告の冒頭を見てもわかるように、中国のレインボーマラソンは、台湾のLGBTパレードを明確に意識している。

また、もし誰かが、長大なレインボーフラッグを運んでいる中国のレインボーマラソンの写真を見たとしたら、多くの場合、これはLGBTパレードの写真ではないかと思うのではないか。

私は昨年の論文で、中国の行動派フェミニストは、地方政府や共産党委員会の前で示威行動をしたり、巨大な政治的横断幕を広げたりすることはせずに、官庁前では、パフォーマンスアートとそれに付随したプラカードなどの掲示をするにとどめることによって弾圧を回避したり、マスメディアにも運動を取り上げやすくさせてきたこと、けれども、行動派フェミニストのそうした活動を写真として視覚的に見ると、官庁や企業に女性たちが要求をしていることを示している点では、弾圧されがちな運動形態と類似したアピール効果を持っていることを述べた。また行動派とも交流がある女性農民工支援団体が、「集会」や「デモ」とは称さずに、写真や動画で見ると集会やデモに見えるような、自らの主張を力強くアピールする活動をしていることも述べた(40)。レインボーマラソンも、こうした運動と同様かそれ以上に、弾圧を回避しつつも、それを写真として見る人には、諸外国のLGBTパレードと同様の視覚的効果を持った運動だと言えるのではないかと思う。

しかし、それでもレインボーマラソンは、他国でおこなわれているパレードとは異なる苦労がある。まず、歩くのでなく、走らなければならない。そのため、ある参加者は「7キロ走ると、ほとんどの人が、履いている靴まで含めて、全身汗びっしょりになった。私はそのために長い間風邪にかかった」(41)と言っている。また、走る速度についても、速すぎれば、沿道の人々にアピールが目に止まらず、逆に「走るのが遅すぎる」(42)と参加者に感じられることもある。

レインボーサイクリングにおいても、大学内に入るに際して、相当の苦労があった。

LGBTパレードはできなくとも、それに近いものを、こうした困難にもめげずやってゆく。そうした姿勢が中国のレインボーサイクリングやレインボーマラソンからは感じられる。

(1)“流动的彩虹”——国际不再恐同日行动(pdf)」同語。
(2)以上は、「国际不再恐同日活动 志愿者彩虹车队京城骑行」淡蓝网2011-05-16。
(3)(1)に同じ。
(4)歧视零容忍:淡蓝网志愿者参与反恐同骑行活动」淡蓝网2012-05-21。
(5)517国际不再恐同日——彩虹骑行见闻」北京同志中心2012-05-22。
(6)同爱无界:西安彩虹骑行呼吁平等」淡蓝网2014-05-19。
(7)ヒマワリの名があるのは、積極的に向上して、陽の光を追い、LGBT内部で積極的で健康的な生活様式を提唱して、自らに誇り持つということと、社会にLGBTの真実の姿を知らせ、人々のLGBTへの偏見を変えて、未来の社会をヒマワリのような暖かさに満ちた、多元的で平等で調和のある社会を作り出すことに努力するということからであるという(向阳花开_杭州LGBT的微博2014-9-25 18:19)。
(8)骑行活动报名!」2011-05-17 22:19:05
(9)言Ada 的微博2011-5-26 14:13
(10)向阳花开_杭州LGBT的微博2011-5-22 09:50
(11)以上は、「向阳花开@下沙008 5.25高校彩虹骑行」。
(12)2013年5月25日【向阳花开@下沙】008高校彩虹骑行活动小结」。
(13)向阳花开034•同志爱骑行•西湖&下沙」、「【转】5月17日•西湖 +5月25下沙•彩虹骑行 」。
(14)517国际不再恐同日 彩虹骑行杭州站」彩虹城市2015-05-12 08:45:12。
(15)国际不再恐同日,中国在行动!」同语桔子报特刊:5.17 国际不再恐同日专题 续。
(16)5.15骄傲骑行 | 老阿姨喊你来过节了」2016-05-10 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(17)以上は、「伴艾同行 消除污名丨你来彩虹骄傲骑行嗨了吗?」2016-05-16 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(18)以上は、「杭州同志社团参加国际马拉松大赛(组图)」淡蓝网2011-11-07。
(19)以上は、「向阳花开021•Born This Way杭州彩虹马拉松
(20)向阳花开_杭州LGBT的微博2012-11-18 08:47
(21)向阳花开_杭州LGBT的微博2012-11-18 08:51
(22)酷儿论坛的微博2012-11-19 11:23、向阳花开_杭州LGBT2012-11-18 10:34
(23)向阳花开020•断桥“同”行」、「向阳花开•断桥“同”行•03-Born This Way 杭州彩虹马拉松热身活动」。
(24)向阳花开_杭州LGBT的微博2013-10-1 19:07
(25)以上は、向阳花开_杭州LGBT的微博2014-9-25 18:19
(26)彩虹马拉松,让我们明年,不见不散!」2014-11-11 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(27)向阳花开037•2014杭州彩虹同志骄傲马拉松小结(图片待补充)」向阳花开•杭州 2014-11-19 00:26:59。
(28)同上。
(29)彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(30)この一文は、彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(31)同上。
(32)この一文は、「5.15骄傲骑行 | 老阿姨喊你来过节了」2016-05-10 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(33)以上は、「向阳花开2015杭州彩虹骄傲马拉松小结」花开•杭州 2015-11-03 15:14:24、「向阳花开•杭州的相册-10.31彩虹马拉松面基大会」。
(34)2016彩虹马拉松 | 今天,杭州因多元而美丽」零下50° 2016-11-07 10:31:36。
(35)同志亮相北京国际马拉松,彩虹旗飞扬天安门广场」爱白(同语より転載)2011-10-17。
(36)同志爱运动-彩虹马拉松 2013太原国际马拉松赛运动员征集令」山西蓝典2013-08-31 21:29:08。
(37)石家庄国际马拉松赛上的彩虹旗:骄傲做同志」资讯频道2016/11/15 7:37:11、淡蓝同志新闻【石家庄国际马拉松赛上的彩虹旗:骄傲做同志】2016-11-14 15:10
(38)向阳花开037•2014杭州彩虹同志骄傲马拉松小结(图片待补充)」向阳花开•杭州 2014-11-19 00:26:59。
(39)彩虹跑回忆录•一 | 热血青年阿园的第一次彩虹马拉松。」2016-09-25 阿园 向阳花开杭州LGBT。
(40)遠山日出也「行動派フェミニストの街頭パフォ―マンスアート――図像を中心に――」(中国女性史研究会編『中国のメディア・表象とジェンダー』研文出版 2016年)268-274頁。
(41)(38)に同じ。
(42)【彩虹跑回忆录•三】历届运动员们的回忆」2016-11-01 向阳花开杭州LGBT。

学校におけるホモフォビアなどについての教員への働きかけ

目次
はじめに
1.教員と協力して、大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設
2.教員にLGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否を表明させる
3.教え子から依頼により教員に宣伝資料を送付
4.小・中・高・大学教員に対する研修活動
おわりに

概要:学校内のホモフォビアの問題に関しては、学校で使われている教科書のホモフォビアについて、教育部や編者・出版社に是正を求めることとともに、教員に対して働きかけることも重要だ。2009年から、広州市の「同城青少年資源センター」などが、大学教員と協力していくつかの大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設してきた。また、2014年からは、全国十数のLGBT団体が、教員に、LGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否をネット上で表明するよう働きかける活動をおこなっているが、この活動には、ジェンダーなどが専門でない教員も多く参加している。また、2015年から、同城青少年資源センターは、この問題に関心がある教員に対して、「教師“性/別”研習営」という、ジェンダーやセクシュアリティの基本的知識を教えたり、LGBT青年の話を聞いてもらう活動も始めた。こうした活動は、ごく小規模なものだが、教育部や編者・出版社に対する働きかけとは別の形で着実な成果をあげている。

これまで本ブログでは、同性愛を「変態」「病気」「倒錯」などと記述している大学教科書の問題に関するLGBTの団体や個人の取り組みとして、調査報告や行政への提言、こうした教科書を放置する教育部を訴えた裁判、教科書の編者や出版社への働きかけについてご紹介してきた(本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」、「ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴」、「大学のホモフォビア教科書の編者・出版社に対する働きかけ」)。

もうひとつ重要なのは、「教員」に対する働きかけである。教員がどうであるかは、教科書の問題にかぎらず、学校内でのLGBTの人権を保障する環境を整備する上でカギとなる。

特にこの問題に取り組んできたのが、広東省広州市の「同城青少年資源センター同城青少年资源中心、Gay and Lesbian Campus Association of China[GLCAC])」(以下、「同城」と略す)である。

同城は、2006年に設立された「青少年のLGBT(原文は「同志」。以下も「同志」は基本的に「LGBT」と訳す)の権益およびその学校での生存環境に関心を持って、サービス・教育・サポートをおこなう非営利機構」(1)である。

まずその刊行物を見てみると、同城は、2012年、愛白文化センターとともに「性的指向とジェンダー身分による学校でのいじめ調査報告(基于性倾向和性别身份的校园欺凌调查报告。概要は、本ブログの記事「学校における性的指向などによるいじめに関する調査」参照)を刊行している。

2013年には、同城は『学校でのいじめ、STOP!――性的指向とジェンダーによる学校でのいじめの予防と対応(性向、性别身份的校园欺凌预防与应对手册[pdf])』という漫画ハンドブックを印刷し、さまざまなLGBT団体、教育団体などに、寄付を求めつつ配布した(2)。このハンドブックは48ページあるが、2016年までにすでに1万8000冊を発行している(3)

2014年には、同城は、中山大学ジェンダー教育フォーラムなどと協力して「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容とその影響の調査報告(中国高校教科书中同性恋错误和污名内容调查报告。主な内容は、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)」を発表した。

同城は、こうした調査研究などと並行して、以下のように教員への働きかけをすすめてきた。

1.教員と協力して、大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設

2008年は、「同城」のメンバーが大学の教員と話をしているとき、学生は入学と卒業で流動するけれども、教師たちはずっと大学にいるので、教員に働きかけたりサポートしたりすることが重要であることに気付いた。

そこで2009年初め、同城は、華南理工大学の教員と初めて講義での協力をして、「多元的性別」という公共選択科目(教員の申請を大学が認可することで、学生が単位を得られる課程になった)を開設した。この科目は非常に人気が出た。

この後、「大学教育と教師の参与」というテーマが、同城の重要な戦略方向となった。同城は、大学の教員に働きかけて、彼らに多元的性別とセクシュアル・マイノリティの権利についての公共選択科目を開設してもらう活動に取り組んだ。

同城らは、2009年から2013年までの5年間に、上記の華南理工大学のほか、中山大学、華南師範大学、湖北工業大学の4大学で公共選択科目を開設した。

カリキュラムは1回2時間×10回で構成され、内容は、性の文化とジェンダー規範、ジェンダー平等、同性愛の生存の現状、性のよろこび、多元的性別と親子関係、トランスジェンダーの生存と権力、学校でのいじめと暴力、性の健康と弱者の権利、セックスワーカーの生存と権利、色情文化などである。

同城らが教員と協力して開設した各大学での講義を、2013年前半までに6000人近くが聴講した(4)

2009年~2013年におこなわれた課程のうち、その全体内容わかるのは、2012年春季におこなわれた中山大学の以下の課程である。これは、中山大学ジェンダー教育フォーラム、朋友公益(広州の華南理工大学の学生が2006年に設立したグループがもとになったLGBT学生たちのNGO) (5)、同城の三者が共催している。

2012年春季・中山大学の「社会文化と多元的性別」公共選択課程

第1講 課程の紹介(2月28日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 映画 《玫瑰少年夢》(Ma vie en rose、ぼくのバラ色の人生。フランス、ベルギー、イギリスの合作、1997年。MtFトランスジェンダーの話)

第2講 同性愛者の生存状態――異文化間の比較(3月6日)
 担当教員 程瑜(中山大学人類学系副教授)
 ゲスト 葉貝(香港智行基金会大陸MSMプロジェクトコーディネーター)

第3講 クィアが包囲を突破する――インディペンデント・フィルムと多元的性/別(注:「性/別」は、日本語で言えば「ジェンダー/セクシュアリティ」に近いが、もう少し含意が多い(6)) (3月13日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 映画 《天使 I Am Not What You Want》(香港、2001年。同性愛と異性愛の話)

第4講 性別規範と「パフォーマンス」――扮装とトランスジェンダーの欲望(3月20日)
 担当教員 柯倩婷(中山大学中文系副教授)
 ゲスト 伊玲

第5講 流行文化と多元的性/別――サブカルチャーから転覆的な実践を語る(3月27日)
 担当教員 周周(香港中文大学ジェンダーと文化研究所博士候補者)

第6講 社会文化とジェンダー気質――ジェンダーのレインボーのスペクトラム(4月10日)
 担当教員 黄海濤(広州のフリーの評論家。前中山大学ジェンダー教育フォーラムのコーディネーターで、そのウェブサイトの責任者)

第7講 多元的性文化と愛情――愛情や他の親密な関係の可能なモデル(4月17日)
 担当教員 羅鳴(香港中文大学社会学博士候補者、レズビアンサイト「同語」のボランティア)

第8講 多元的性別と家族の形――カミングアウトと親子関係(4月24日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 ゲスト 梅さん(「同性愛者の家族と友人の会・上海」の呼びかけ人)

第9講 個人の身体と社会の身体――エイズの恐怖と防止について(5月8日)
 担当教員 艾暁明(中山大学中文系教授)
 ゲスト 張錦雄(香港のエイズ運動の活動家、「香港レインボー」ゲイコミュニティサービス機構の創設者)

第10講 グループの宿題の発表(5月15日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授) (7)

他に、カリキュラム内容の全体は不明ながら、華南師範大学では、2012~2013年に、「社会文化とジェンダー気質――ジェンダーのレインボーのスペクトラム」(黄海濤)、「青年の感情と親密な関係」(陳杜[NGO「朋友公益」創設者])、「多元的性/別と家族関係――1人の母親から見たGAY」(呉幼堅[同性愛者の家族と友人の会])、「映画上映《レインボーは私の心とともに》」、「中国のセクシュアル・マイノリティの現状と思考」(陳杜)、「男女の間――私のトランスジェンダーの道」(Joanne)、「親子関係とジェンダー――愛は最も美しい虹」(呉幼堅)、「欲望とよろこび――珠江デルタのセックスワーカーの生存の現状」(厳月蓮[香港のセックスワーカー団体「紫藤」代表])、「同性パートナーの愛情」(ken仔)、「中国のインディペンデントフィルム――セクシュアル・マイノリティの文化と発声の空間」(魏建剛)といった講義がおこなわれていることがわかる(8)

2014年以降で、一つの課程の第7講までがわかるのは、2014年春季におこなわれた湖北工業大学の課程である。

2014年春季・湖北工業大学「ジェンダー文化」公共選択科目

第1講 女性と人権(4月13日)
 担当教員 呂頻(フェミニスト活動家、時事評論作家)

第2講 メディアとジェンダー研究(4月20日)
 担当教員 紀莉(武漢大学ニュースとメディア学院・副教授)

第3講 男女の間――私のトランスジェンダーの道(4月27日)
 担当教員 Joanne(トランスジェンダー、「香港トランス性/別センター」主席)

第4講 性の権利と色情のポリティクス(5月11日)
 担当教員 小曹(曹文傑)(香港のLGBTおよび性の権利運動で活躍。女同学社を創設した1人)

第5講 親子関係と性的指向(5月18日)
 担当教員 呉幼堅

第6講 同性愛が社会にもたらす啓示(5月25日)
 担当教員 曾子

第7講 エイズと共に生きて19年(6月8日)
 担当教員 ken仔、覃念(エイズ感染者、セクソロジー専攻大学院生) (9)

また、中山大学では、2014年には、「生命がエイズに出会うとき」(光光&小翔[レインボー中国代表、智同中国広州LGBTセンター])、「形式婚姻(ゲイとレズビアンとの偽装結婚)研究」(王穎怡[香港大学博士])、「キャンパスにおけるセクシュアル・マイノリティの生存と対応」(陳杜)、「香港のジェンダー運動」(小曹)、(前期の最後に)「親睦レインボーパーティー」、「ジェンダーのパフォーマンスと多元的性/別」(何其沃[モダンダンサー])、「性と道徳」(厳月蓮)、「レズビアングループの現状と発展」(大拿[華人レズビアン連盟事務局長])、「性の曖昧さとバイセクシュアル」(潘龍飛[カルマン症候群患者]、Sun[中山大学レインボーグループ代表])、「LGBTというテーマに関するメディアに対する提言」(阿強[同性愛者の家族と友人の会・主任])といった講義がおこなわれている(10)

以上の課程の特徴として、毎回教員やゲストが変わること、学者だけでなく、当事者性を持った活動家を多く登壇させていること、学者でも若手に多く話させていることが挙げられよう。そのために、話の内容も、バラエティに富んだ最前線のものになっているように思われる。また、同じ人が複数の大学で話をしている例も少なくなく、インターカレッジ的性格を持っているとも言えよう。

これまでも大学で同性愛などについての講義がなかったわけではない。2003年~2005年に復旦大学で同性愛に関する連続講座がおこなわれている(11)。しかし、民間のLGBT団体が意識的に教員に働きかけたり、協力したりすることによって課程を開設したのは、同城や朋友公益によるものが初めてではないだろうか。

ただ、中山大学に見られるように、こうした課程まで開設できるのは、ジェンダーやセクシュアリティの専門の教授、副教授がいる場が中心にならざるをえないのではないか。ただし、この点は、他の大学のケースを調べなければ断定できない。

2.教員にLGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否を表明させる

2014年10~11月、全国各地の15のLGBT団体(*)が共同で「Teacher, we need you!”全国の教師がLGBTをサポートするアクション」というものを開始した。そのテーマは、「教師はLGBTをサポートし、同性愛に汚名を着せる教材を拒否する」というものである。

(*)同城青少年資源センターのほか、北京LGBTセンター、重慶milk公益小組、杭州下沙-レインボー[彩虹]、武漢同行LGBT小組、山西藍典工作組、湖南大学愛smile工作組、中南高校レインボー連盟、湖南師範大学レインボー社、同在川農LGBT、江蘇同天工作組、 福建師範大学同心社、江西高校レインボー連盟、貴州黔程LES工作組の15団体。

これは、ごく簡単に言えば、教師がLGBTに対するサポートやホモフォビア教科書の拒否を表明した文をA4の紙またはプラカードに書いて、それを手に持った自分の写真を撮ってもらって発表する活動である。

教師が自発的にそうしたことをするだけでなく、LGBTの学生や支持者が積極的に教師に働きかけて上記のことをしてもらうのである。その場合、LGBTの学生や支持者は、同城が作成した『教師遊説実行ハンドブック(教师游说执行手册)』(http://pan.baidu.com/s/1o6KAcOiよりダウンロード)を参考にして、教師を説得する。説得の際には、最初に挙げたようなLGBTのいじめ被害やいじめ防止、ホモフォビア教科書について文献も活用する(12)

こうした努力の結果、2014年には60人の教師がこの活動に参加してもらうことができた。

日本でもジェンダー研究者として知られている、林紅・廈門大学副教授、柯倩婷・中山大学副教授、金一虹・南京師範大学元教授もこの活動に参加した。

しかし、60人のうち、80%にはジェンダー研究のバックグラウンドはなく、大多数は同性愛者と生活の中で接触したことがなく、まして同性愛というテーマで教学や研究をしたことはなかった。

たとえば、最初に宣言をおこなった呉奇・湖南師範大学教育科学学院心理学系講師は、湖南愛smile工作組がアプローチしたのだが、彼は同性愛について少し聞いたことはあったが、理解はしていなかった。しかし、湖南愛smile工作組と交流するなかで「同性愛に汚名を着せる教科書は拒否する。我々は同じ人間だ」と宣言する写真を発表した。ただし、この大学では、教師に働きかけるこの活動は、途中で大学当局にやめさせられ、学生は自己批判を書くよう求められる事態になったのだ。

また、山西省では、まだ教師と現地のLGBT団体との正式な交流がない中、山西藍天工作組が1ヶ月間努力して、王一濤・副教授と馬永新・教師という2人の教員に会うことに成功した。2人は思っていたよりはるかにセクシュアル・マイノリティに理解があったが、山西は保守的な土地柄であることもあって、写真を撮って公然とLGBTたちを支持することにはずいぶん躊躇したという。しかし、最終的には、「私は学生が私にカミングアウトしたとき、私は普通に受け入れる」という宣言とともに、写真に写ってくれた(13)

また、貴州黔程LES工作組は、一か月にわたって6人の貴陽市の教員を訪問したが、いずれも断られた。しかし、このとき、インターネットでの宣伝を見た貴州畢節学院の性健康教育の教師の李丹さんら電話がかかってきて、「このような活動を私は100%支持する。どうしてこの社会に同性愛に汚名を着せる教科書があってよいのか。私が前に出て、写真を撮って支持する」と言われた。さらに彼は、同僚の心理学系の趙占鋒・講師もこの活動に誘ってくれた。貴州黔程LES工作組のメンバー2人は、貴陽市から畢節市まで、バスで6時間半かけて会いに行って、ホモフォビア教科書について語り合った(14)

以上のことから、この活動は、従来からLGBT活動を支持してきた教員に活動に参加してもらうだけでなく、より幅広い教員に活動を広げていることがわかる。

2015年の8月20日~10月10日にも同様の活動がおこなわれた。この年は、同城のほか、西財同伴、南京柒彩公益、北京LGBTセンター、江西高校レインボー連盟、福建師範大学同心社、中珠雨后レインボー、珠海益蘿筐、武漢大学同志公益小組、華師CLS同志公益小組、朝夕青年空間、中南財経大学レインボー社、華中科技大学HGP小組、武漢同行がこの活動をおこなった(15)

前年とは異なる団体も多く取り組んだことがわかる。

こうして2014年と2015年で合計100名あまりの教員に公然とLGBTをサポートすることを表明してもらうことができた。

2016年にも、8月25日~10月10日までの期間、この活動がおこなわれた(16)

3.教え子から依頼により教員に宣伝資料を送付

2016年の教師節(9月10日)の前後には、自分の先生にセクシュアル・マイノリティの人権についての宣伝資料を送付する活動がおこなわれた。

ただし、自分の名前で送るのは難しいのであろう、この活動の参加者は、同城に50元のカンパを送り、自分の先生(または学校)の住所を伝えることによって、同城から「LGBTたちから」という名前で宣伝資料を送るのである。また、お金のない中高生が彼らの先生に宣伝資料を送ることを助けるために、50元のカンパを募る活動もおこなわれた。

その宣伝資料は「性/別フレンドリーな贈り物」と名付けられており、その中には、「この手紙は、あなたが教えたことがあるLGBTの学生に頼まれて~」という書き出しで始まる手紙とともに、『多元的性/別ハンドブック』、『「ホモフォビア」教材の七つの罪』、『学校でのいじめ、STOP!』などの冊子、同城のリーフレットやフォルダー、LGBTをテーマとした葉書などが入っている。

この活動は、同城と「同志の声」という団体が呼びかけて、華科HGP小組、蘇州LESGO公益小組、西政レインボー関愛小組、中山大学レインボー小組、関艾レインボー、楽窩LALAs_VOICE、南大性別性向平等協会、汕大橘子社、雨滴社、クィアフォーラム、江蘇同天、DiversityUNNCが協力しておこなわれた(17)

4.大・中・高・小学教員に対する研修活動

 2015年初めから、同城は、「教師性/別研習営(教師「ジェンダー/セクシュアリティ」研究学習キャンプ)」プロジェクトを開始し、主に武漢・広州・南京などの地で、教師ための学習の場を設けてきた。

これは、大・中・高・小学教師や在校ソーシャルワーカーを対象にしたものである。そうした教員が、セクシュアル・マイノリティの学生に対するいじめが起きていたり、セクシュアル・マイノリティの学生から助けを求める訴えがあったりしても、教師たちがどうしていいかわからないという状況に対応するためのものだ。

たとえば2016年には、5月24日に、同城と武漢同行とが共催して武漢で「教師“性/別”研習営」をおこない、17人の教師が参加した。

この研習営では、まずアイスブレイクをおこなったのち、性/別の基礎理論の知識を学習した。次に、教師たちは、現実の教学の中でぶつかった実例や疑問をシェアして、議論し、助言しあった。

さらに、「実在の人物による図書館(真人図書館)」と称して、4人のLGBTの青少年が、自分が成長してきた生活体験を教師たちに語った。その話の中には、自己受容、愛情と性、家族関係とカミングアウト、学校でのいじめなどがあった。

この研習営に参加した長江大学心理相談センターの王江橋先生は、「私は、真人図書館というプログラムがいいと思った。青少年学生と面と向かって交流することによって、私はセクシュアル・マイノリティの学生を本当に知ったし、彼らの人生について感性的な認識も得た。これは良い学習であり、マイノリティたちのために発言し、サポートを提供することは有意義であるとともに、心理の教師としての重要な使命であることがわかった」と感想を述べている(18)

12月3日-4日にも、珠江デルタ地域の教師を対象に、広州で「教師“性/別”研習営」がおこなわれた。この「研習営」には、30人の申し込みがあり、22人の小中学校の教員とソーシャルワーカーが参加した(19)

この「研習営」でも、参加者が自らジェンダーを語ったり、ジェンダー規範について話をしりたりした後、「真人図書館」で、4人のセクシュアル・マイノリティの青少年が自分のアイデンティティや家族関係、学校でのいじめなどについて話をしたという。

これに参加した「蘇先生」は、「最大の収穫は、ジェンダー平等を願い、他人を理解しようと願う活力に満ちた人々と知り合いになったことだ。研修の内容と一つ一つの討論によって、私は自分が知識に乏しいとことがわかったので、今後よく勉強し、自分にできるかぎりのことをしたい」という感想を述べている(20)

こうした研修は、初級の研修とさらに進んだ研修とで構成されてという。初級の研修では、性/別理論の知識やLGBTの青少年のニーズ、教師の介入やサポートの技術などを学ぶ。そして、進んだ研修では、地区を越えて、さまざまなテーマでの研究・討論、経験交流をする。

2016年11月の時点で、合計120人あまりの教師に対して研修がおこなわれたという。また、毎回の「研習営」の後には、現地のLGBT団体が教師の実践をサポートすることも予定されている(21)

こうした「研習営」は、セクシュアル・マイノリティの問題に関心がある教員に対して、より正確で詳しい知識と実際に当事者が語る経験をつうじた認識を得させるものだと言えよう。

おわりに

ホモフォビア教科書を放置する教育部を裁判に訴えることは、非常に有意義であり、その活動の粘り強さもあって、多くの人々の関心を呼び起こすことにも成功したが、ただちに成果を上げるのは難しかった。

それに比べれば、個別の教科書の編者や出版社に働きかけることは、いくらか成果もあげてきた。

個別の教員に働きかけることは、さらに地を這うような活動だが、全体から見ればごく僅かとは言え、少しずつ着実な成果を挙げているように思われる。

このようにさまざまな手段に尽くして、ホモフォビアに対するたたかいはおこなわれている。

(1)同城のブログ「同城青少年资源中心的博客」における自己紹介文。
(2)【漫画资料】同城青少年资源中心,赠送“校园欺凌”漫画手册!(欢迎捐款印刷)」2013-05-01 20:31:12)。
(3)基于性少数的“校园欺凌 STOP!”漫画手册(第三版),免费赠送!(欢迎合作洽谈) 」2016-03-22 GLCAC。
(4)【动态】五年沉淀,我们的高校多元性别教育的探索。快来听听同学们的听课感受吧!」同城青少年资源中心的博客2014-01-10 11:07:54。
(5)大学での講座開設プロジェクトは、この「朋友公益」も、同城と同じ2009年からおこなっている。朋友公益と同城はしばしば共同で科目を開設している。以下では、同城のブログ(同城青少年资源中心的博客)の記事を中心に紹介するが、「朋友公益」のブログ(朋友公益的博客)にも、講座の内容がわかる記事が掲載されている。
(6)「性/別」とは、何春蕤ら、台湾の国立中央大学に設立した「性/別研究室」などが依拠している概念。日本語の「ジェンダー/セクシュアリティ」という概念に近いと思うが、(1)「性別」の語の中間にスラッシュを引くことで、その内部の多元的な流動性や分裂を示すことによって、単純な男・女の二分法を乗り越える、(2)ジェンダー(性別)とセクシュアリティ(性)との相互連関および、両者が集約不可能であることを示す、(あ)「性」の多元的差異(「別」)を捉える、(4)その他の社会的差違(階級、エスニシティ、年齢など)との関連も捉える、という四つの認識を含む(何春蕤著 舘かおる・平野恵子編 大橋史恵・張瑋容訳『「性/別」攪乱―台湾における性政治』御茶の水書房 2013年参照)。
(7)以上は、「2012年中山大学“性/别”公选课 欢迎旁听(图)」淡蓝网2012-03-14、「201年(春季)高校【社会文化与多元性别】公共选修课程」朋友公益的博客2012-03-12 21:57:03。
(8)【性/别公选课•华师】社会文化与性别气质:性别的彩虹光谱」2012-09-24 11:38:08、「【性/别公选课•华师】青年情感与亲密关系」2012-10-08 20:53:01、「【性/别公选课•华师】多元性/别与家庭形式:一个母亲眼中的Gay」2012-10-11 00:51:18、「【性/别公选课•华师】播放电影——《彩虹伴我心》」2012-10-22 22:08:04、「【性/别公选课•华师】中国性少数生存现状与思考」2013-03-19 01:26:54、「【性/别公选课•华师】男女之间——我的跨性别路」2013-04-15 14:03:53、「【性/别公选课•华师】中国独立影像:性少数的文化与发声空间」2013-04-23 10:38:39、「【性/别公选课•华师】欲望与愉悦:珠三角区性工作者生存现状」2013-05-06 19:45:15、「【性/别公选课•华师】同性伴侣情感面对面」2013-05-13 20:52:17。
(9)【活动】高校性/别文化公选课(武汉湖工大),第三讲《男女之间-我的跨性别之路》」2014-04-25 15:12:29。
(10)【性/别公选课•中山大学】当生命遇上艾滋」2014-04-07 12:18:43、「【性/别公选课•中山大学】第八讲《形婚研究》」2014-04-23 12:33:20、「【活动】高校多元性/别公选课(中大),第十讲《香港性别运动》」2014-05-06 11:12:30、「【活动】高校多元性/别公选课(中大),最终讲-课程联欢彩虹趴」2014-05-12 14:15:49、「【多元性别公选课(中大版)】第四讲:性别表演与多元性别」2014-10-29 17:10:37、「【多元性别公选课(中大版)】第六讲:女同社群现状与发展」2014-11-10 22:21:18、「【多元性别课程(中大版)】第七讲:性与道德」2014-11-18 21:24:33、「【多元性别公选课(中大版)】第八讲:性模糊与双性恋」2014-11-24 22:27:08、「【多元性别公选课(中大版)】第九讲:LGBT议题媒体倡导」2014-12-02 20:56:14、「【多元性别公选课(中大版)】第十讲:彩虹Party到咯!约吗?」2014-12-09 20:54:23。
(11)その内容は高燕寧『同性恋健康干預』(復旦大学出版社、2006年)に収録されている。
(12)以上は、「老师,为了学生,U站出来吗?“Teacher,we need you!”全国教师撑同志行动,开始啦!」同城青少年资源中心的博客2014-10-19 13:37:07。
(13)【回顾2014】60位教师撑同志,够拼了!“盘点”60个温暖的力量」同城青少年资源中心的博客2015-01-06 00:12:44
(14)贵州首个站出来支持同性恋的两位老师!!」贵州黔程总组2014年11月13日 19:33
(15)教师撑同志行动|今年教师节,我们过得不一样」2015-09-10 GLCAC。
(16)【回顾】新生宝典,请速来认领你身边的友同老师」2016-09-04 GLCAC GLCAC、、「【预告】一批友同老师即将上线l文末有彩蛋」2016-09-07 GLCAC GLCAC。
(17)【加群】自己老师自己“教”!9.10让老师“同志”频道开脑洞!」2016-08-31 GLCAC GLCAC、「【预告】910!帮老师的“同志”频道开脑洞!撩么? 」2016-08-29 同志之声 GLCAC。
(18)【动态】学习、倾听,老师们和LGBT学生在一起|5月教师研习营回顾」2016-07-10 GLCAC GLCAC。ただし、「【预告】“打破区隔”—教师“性/别”研习营招募 (2016.5,武汉.初阶)」(2016-05-04 GLCAC GLCAC)には、5月21日の9:00‐18:00に武漢で、武漢やその周辺の地域の人のために「性/別研習営」がおこなわれることが予定されていたとある。ひょっとしたら、この日程が変更されたのにかもしれない。なお、2015年にも、11月22日に、武漢で、同城と武漢LGBTセンターが「校内心理相談と学生指導」という「初級検習営」をおこなうという告知がブログに出ている(「“打破隔阂”——教师 「性/别」研习营」同城青少年资源中心的博客2015-11-15 13:06:54)。
(19)【招募】老师怎么做性/别教育?│研习营广州站!」2016-11-11 GLCAC GLCAC。
(20)天凉了,来一锅性/别教育大补贴│11月简报」2016-12-19 GLCAC GLCAC。
(21)叮叮当,我们带着老师和社工去泡Gay吧」2016-12-25 GLCAC GLCAC。

大学のホモフォビア教科書の編者・出版社に対する働きかけ

目次
はじめに
一、張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(曁南大学出版社)に対して
 1.西西、秋白の不屈の行動から励まし
 2.副編集長は「私は専門家ではない」と本の編者の責任にし、本の編者は対話を途中で拒否
 3.西西ら、ユーモアある抗議をし、別の副編集長が反省を表明するも、その後、態度急変
 4.副編集長「教材の内容は、現在の法律の条文に照らして判断」
二、高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(高等教育出版社・北京大学出版社)に対して
 1.本の編者、訂正を表明
 2.訂正への賞賛と今後の行動を求めるアクション
 3.編集者、個人として、訂正個所の明示とセクマイ差別の重視の意向を表明
おわりに

はじめに

中国では、同性愛を「障害」や「変態」として記述している大学の教科書が少なくないという問題に関して、前回、本ブログでは、「ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴」についてご報告した。

もちろん、ホモフォビア教科書の是正を求める働きかけは、教育部に対してだけでなく、教科書を出版した編者や出版社に対してもおこなわれているので(1)、今回は、それらについてご紹介したい。

一 張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(曁南大学出版社)に対して

張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(2013年 曁南大学出版社)は、「よく見られる性心理障害」の中の一つに「同性愛」を挙げていた。また、「同性愛」について、「性愛の面での紊乱、あるいは性愛の対象の倒錯であると考えられる」とも記していた(2)

1.西西、秋白の不屈の行動から励まし

広州の大学の女子学生の西西さん(仮名)は、同級生たちが「同性愛は病気だ」とか、「ゲイはエイズだ」と言うのを聞き、怒りを感じていた。しかし、それに反論すると、彼らに「同性愛は心理障害だと教科書に書いてある」、「教科書に同性愛はエイズのハイリスクグループだと書いてある」と言われ、西西さんが「教科書が間違っている」と言ってもわかってもらえなかった。西西さんは、教科書の権威の前には、自分が無力であることを感じ、涙をこらえきれないこともあった。

2015年末、広州市の曁南大学のゲイの男子学生が、その性的指向が一因となって自殺したと思われる事件(3)が起きたことも、西西さんに絶望感を与えた。西西さんは、友人の話から、曁南大学の公共選択科目の「大学生心理健康教育」で使用されている教材の『大学生心理健康教育』は、同性愛をスティグマ化する内容に満ちていることを知った。また、この教材の2人の編者は曁南大学の「大学生心理健康教育」の先生であり、「曁南大学心理健康教育センター」のメンバーでもあることも知り、この教材の影響力は非常に大きいと思った。西西さんは、斐然さんもこうした教材を読んだのかもしれないし、こうした教材がもたらした排斥と偏見が、彼を暗くて狭い空間に閉じ込めたのかもしれないと思った。

その後、西西さんは、LGBTの民間団体に加わった。しかし、そこでも、同性愛に汚名を着せる教材によって傷つけられた人々といつも接するようになったことによって、西西さんは、あらためて自分の無力さと絶望を感じるようになった。あるゲイの男性の父母は、大学の教材に「同性愛は矯正することができる」と書いてあったことから、息子を「矯正」しようとしていた。また、彼自身もどこかに助けを求める以前に、助けが得られるという希望自体を持てないという状況を聞き、西西さんは辛かった。

以上のようなさまざまな経験から、西西さんは自らの無力感と絶望を感じた。ギリシャ神話の中で、シジフォスは巨石を山頂近くまで運び上げるが、そのたびに巨石は山から落ちていく。西西さんは、自分がホモフォビア教科書を批判して、自由な空間を広げようとしていることも、シジフォスのしていることと非常に似ているのではないかと感じた。秋白さんにとって、巨石は、運動をする者に対する打撃の象徴だった。

しかし、西西さんは、秋白さんたちが行動によって自分の権利を守ろうとしている姿を見て、励まされた。西西さんは、社会の不公正に直面したとき、黙って受け入れることを選択するのではなく、そうした中でも、同性愛に汚名を着せる教科書の内容について対話を広げ、空間を変えることを求める選択をしているのがシジフォスだと思うようになったのである。

西西さんは、教科書の是正を求める行動を始める決心をした(4)

2.副編集長は「私は専門家ではない」と本の編者の責任にし、本の編者は対話を途中で拒否

6月1日、西西さんは、『大学生心理健康教育』の中にある同性愛に汚名を着せる/誤った内容について、曁南大学出版社と編者の張将星さん・曾慶さんに是正を求める公開書簡を送った(5)

6月4日、西西さんは、曾慶さんに電話をかけた。曾慶さんは、その章は張将星さんや自分が書いた章ではないので、著者に連絡しているところであり、公開の声明を出すと述べた。その声明は西西さんにもメールで送ると述べた。しかし、その後、曾慶さんからは何の連絡もなかった。

6月6日、西西さんは、曁南大学出版社に電話をかけた。翌日、電話は通じたが、相手は、公開書簡は受け取っていないと言った(ところが、西西さんは、郵便会社から、すでに6月2日には、配達および受渡済みの通知を受け取っていたのである)。そこで、西西さんは、電話で自分の訴えを話したが、相手は、すぐに電話を切った。

そこで、6月8日、西西さんと2人の若者は、直接曁南大学出版社に行って、副編集長であり副研究員である晏礼慶さんと1時間あまり話をした。

まず、西西さんらが記述の誤りを指摘すると、晏さんは、「私にどうして『同性愛は心理的障害である』という記述が誤りか否かがわかるだろうか。私に基準をください。これは、もともと、ある観念が正しいか間違っているかの問題だ」と答えた。

それに対して、西西さんらが中華精神医学会の「中国精神障害の分類と診断と基準第3版」が心理学界の科学的基準であり、観念の是非の問題ではないことを指摘すると、晏さんは、「公開書簡を編者に転送する」と言った。

さらに、西西さんらは、出版社と編者、西西さんらの3者が会って話をする場を設けるよう求めた。しかし、晏さんはそれを断り、西西さんらに、直接編者と話をするように言った。

西西さんらは、『大学生心理健康教育』は純粋の出版物ではなく、教材であり、学生に悪い影響を与えていることを指摘した。しかし、晏さんは「まずそれが誤りであることを確定させることが必要だ。私たち編集者がどうして『同性愛は心理的障害である』という記述が誤りか否かを判断できるというのか。私たちは専門家ではない」と答えた。

それに対して、西西さんらは「副編集長としてあなたは、『中国精神障害の分類と診断と基準第3版』を基準にして、その記述の誤りだと判断できないのか?」と追及したが、晏さんは「私は専門家ではない」と繰り返した。

それに対して、西西さんらは「出版社として、出版した内容が社会大衆に悪影響を与えていたら、出版社は本当にどんな責任も負うべきではないのか?」と問うた。

すると、晏さんは「当然、負わなければならない! 出版物は出版前に、本の内容について、以下の面から審査をする。
 第一に、出版物の内容に政治的方向に誤りがないかどうかである。たとえば反党があるのかどうか。
 第二に、出版物の内容に法律法規に反するものがないかどうかである。たとえば憲法に反してはならないし、四つの基本原則(社会主義の道、人民民主主義独裁、中国共産党の指導、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想)に反対してはならない。
 第三に、出版物の内容にロジックの上で誤りがないかである。たとえば、前後の文で矛盾したことを言っていないかとか、1+1=3のような常識的な誤りである。
 第四に、編者が剽窃していないかだが、もし剽窃があったとしたら、『文責は自らが負う』と説明する。
 もし、政治的方向やロジックの上で誤りがあったり、法律法規に触れる誤りがあったりしたら、教材について回収処理やお詫びをする。しかし、問題は、現在法律上は規定がない、あなたが言うところの理解の誤りだ。私はもう一度言うが、『同性愛は心理的障害である』という記述は学術的な専門的議論であり、それに対しては編集者には判断する能力がないので、出版社にではなく、編者に連絡すべきである」と答えた。

最後に西西さんらが「もし私たちが最終的に編者と話をして、編者が公開の声明を出して訂正したなら、あなたがたも訂正して、公開の声明を出して回収するのか?」と尋ねると、晏さんは、「それなら問題はない。しかし、私たちにできるのは、まだ市場に出ていない書籍を回収することだけだ。また、私は出版社が公開の声明を出す必要はないと思う。編者が出したいなら、それは彼の問題だ」と答えた。

西西さんらは、以上の晏さんの答えに次のような疑問を感じた。
1.教材の中で同性愛を「性心理障害」にするのは、どのような性質の誤りなのか? 事実の誤りという性質のものではないのか?
2.教材の属性は何か? 教材と一般の学術的専門書とを同じように扱えるのか?
3.出版社の編集者は、出版物の内容に学術的・専門的な誤りがあるか否かを判断する能力がないのか?
4.出版物に政治的方向かロジック上での誤りがなければ、出版物が社会大衆に悪い影響を与えても、出版社には出版物に対して何ら責任がないのか? また、出版社は出版物について処理(回収、お詫び、訂正声明など)する責任はないのか?(6)

6月19日には、西西さんの携帯電話の番号からは編者の曾慶さんにつながらなくなっていたので、学友の携帯電話の番号を使って曾慶さんに電話をかけた。しかし、西西さんが名乗ると、相手は、「間違い電話だ」と言った。その後、その学友の携帯電話の番号を使って曾慶さんに何度も電話をかけたが、ずっと話し中になっていた(7)

3.西西ら、ユーモアある抗議をし、別の副編集長が反省を表明するも、その後、態度急変

西西さんは、曾慶さんに対話を拒絶されて、シジフォスの話に出てくる巨石が落ちていくように感じた。しかし、西西さんは、「こんなときであっても、私は『シジフォス』の(あきめない)態度を忘れなかった」と言う。

このとき、西西さんの頭の中に、『夜と霧』の作者であるヴィクトール・フランクルの次の言葉がひらめいた。「ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ。ユーモアとは、知られているように、ほんの数秒でも、周囲から距離をとり、状況に打ちひしがれないために、人間という存在にそなわっている何かなのだ」。西西さんは、「鴨梨(河北省特産のナシで、甘くさくさくして汁が多く、香が高い)」を教科書の編者や出版社に贈るというアクションを思い立ち、人々から、彼らへのメッセージを募集した(8)

7月8日の午前10時、西西さんと同級生たちは、一カゴの「鴨梨」と「鴨梨は暑さを癒すことができる。教材は毒を取り除かなければならない(鸭梨可解暑,教材要解毒)」「曁南大学出版社よ、学生のために発言してください」というスローガンを書いたプラカードを持って曁南大学出版社の玄関に行った。一つ一つの鴨梨には、人々が曁南大学出版社と教科書の編者へのメッセージを貼りつけておいた。それらのメッセージは、曁南大学の学生、大学でのジェンダー/セクシュアリティ教育に関心を持つ人々、同性愛者の父母らが書いたものだった。西西さんは、こうしたメッセージをパフォーマンスアートの方式で伝えることによって、人々の期待を本当の「鴨梨」に変えたかったのだ。

その後、西西さんと同級生たちは、曁南大学出版社の副編集長の李戦女史の事務室に行って、鴨梨と300人近くが連署した手紙を手渡し、同出版社の無責任な態度に失望を表明した。

それに対して、李戦さんは、教材の中に同性愛に汚名を着せる内容があって、社会に対してマイナスの影響を与えていることを認めた。また、出版社にはこの問題について絶対に責任があるので、出版社のこれまでの消極的な対応についてお詫びの気持ちを持っているとも述べた。

しかし、西西さんが出版社から出て半時間後、李戦さんの態度は大きく変わった。西西さんに李戦さんから電話がかかってきて、「編者こそ第一の責任者なので、同性愛が病気か否かの問題は編者に判断をまかせなければならない」と言われた後、すぐに電話を切られた。

西西さんらは、編者の職場である曁南大学心理健康教育センターにも行って、同じように、鴨梨と連署をした手紙を渡した。編者本人は不在だったが、『大学生心理健康教育』はセンターの共同の編集なので、西西さんはセンターの先生と対話ししようとした。しかし、冷たく「私は聞かない」と言われただけだった(9)

4.副編集長「教材の内容は、現在の法律の条文に照らして判断」

その後1週間たっても、渡した手紙に対して、出版社や編者からは反応がなかったので、西西さんは、最初に会った晏礼慶さんに電話をした。

晏さんは、西西さんが無断で会話を録音して、その内容の一部だけをネットに公開したことに対したことに腹を立てていた。西西さんも、その点は謝った。

また、晏さんは、西西さんらが入口でプラカードを掲げたり、横断幕を広げたり、鴨梨を送る「パフォーマンスアート」をしたり、「毒教材」「心理不健康センター」といった言葉を使ったりしたことについても、「敵意と対立による方式は、問題をますます悪化させる」と批判した。

西西さんが「出版社として『大学生心理健康教育』という本をどうするのか?」と尋ねると、晏さんは、「もし図書に何か問題が起きたら、私たちはすぐに責任を持って処理と訂正をする。実際、あなた方のこの本についての『公開書簡』を受け取ったら、私たちは直ちに執筆者に連絡を取った。なぜなら、同性愛が精神病か否かは、中国と西洋にはさまざまな判断があるからだ。医学の専門家ではない者として、私たちはその判断を執筆者にゆだねる。なぜなら、彼らこそが専門的な学術権威だからだ。作者も、関係資料を受け取ったと言ったし、教材の内容を今の法律の条文と比較対照すると述べた」と答えた。

西西さんが、その比較対照の結果と、いつ訂正するのかについて尋ねると、晏さんは、「私たちはまだ比較対照の結果を知らないし、いつ訂正するかも今はまだ確定できない。しかし、明確に言えるのは、誤りがあれば、その図書は重版か改訂の際に、私たちは作者と相談してまじめに訂正するので、安心していただいていい」と答えた。

最後に西西さんが「『大学生の心理健康教育』の中に、『同性愛は性愛の面の紊乱あるいは性愛の対象の倒錯である』と書いてあることについては、晏さん個人はどのように見ているのか」と尋ねると、晏さんは、「私はこの面の専門家ではない。けれど、私が知るところでは、現在の中国の法律ではまだ同性婚の合法化に関する条文はなく、中国の社会的観念も、まだ同性婚を普遍的に受け入れる段階には発展しておらず、現在も国外にも同性婚がある国とない国があり、区別して扱わなければならない。もちろん、将来、必ず社会は発展して、しだいに多元的で包容的になって、マイノリティの権益と個性の主張も尊重されるようになるだろう。私はこのよう理解している」と述べた。

以上の晏礼慶さんの回答について、西西さんは、以下のように批判している。

・同性愛が精神病であるか否かについては、中国でも世界でも、科学の世界で、「同性愛は性心理障害ではない」という結論が出ている。

・法律の条文(まして同性婚姻法が成立しているか否か)によって、心理学の学術的観点を判断するのは完全に誤っている(10)

西西さんらの指摘にする編者と出版社の態度は、無責任で冷淡だと言えよう。政治的な「誤り」や現行の法律に直接違反する誤りには敏感でも、人権に関わる問題については学問的な誤りであっても鈍感だ。

しかし、ともかく何度か対話を成り立たせたことや、検討を表明させたことには意義があるだろう。

また、次の事例では、編者と出版社から、比較的良い反応が得られた。

二、高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(高等教育出版社・北京大学出版社)に対して

高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(2011年 高等教育出版社・北京大学出版社)は、その第七章「犯罪の主体」の第三節「刑事責任能力に関係する要素」の中の「精神障害」の項目において、「性変態」の一つとして「同性愛」を挙げていた。

1.本の編者、訂正を表明

2016年5月29日、江西師範大学の法学部の学生の「夏天」さん(後述の『南昌晩報』の記事には、3年生の「夏旭」さんとある)は、自らが履修していた「刑法学」の授業で『刑法学(第五版)』が使われていたことから上記の問題点に気付き、高等教育出版社と北京大学出版社にそのことを指摘する手紙を送った(11)。6月5日には、この本と該当の章の編者である北京師範大学の趙秉志教授にも手紙を送った。

夏天さんは、さらに出版社に電話をかけるなどして働きかけた結果、6月12日、北京大学出版社から電話がかかってきて、北京師範大学の趙秉志教授が「当時この教科書を編集した教授や私は比較的高齢で、この問題について細かい検討や考慮をしていなかった。この内容については、次に重版と新版のときに改める」と述べていることが伝えられた(12)

『南昌晩報』は、そのことを、「江西師範大学の3年生の女子学生、『刑法学』のテキストの『訂正』に成功」という見出しで伝えた(13)

2.訂正への賞賛と今後の行動を求めるアクション

ただし、夏天さんは、上の手紙の中で、出版社に対して、以下のことも求めていた。
 1.貴社が出版している図書について、同性愛とセクシュアル・マイノリティについての誤った/汚名を着せる内容が含まれている教材について検査をして、検査報告を作成し、メールと書面で私に回答する。
 2.貴社の出版物の中のこうした誤った内容について、公式サイトあるいは微信などで「内容の訂正の声明」を出して、教材がもたらしたマイナスの影響をなくす。
 3.誤った教材の編者と連絡を取って、次の出版/印刷の際に訂正するとともに、新しく出版/印刷する教材の目録の前に「内容の訂正の声明」を掲載する。
 4.貴社の職員、とくに教材の編集と校正をする職員に対して、同性愛とセクシュアル・マイノリティの科学的常識と専門知識の研修をして、誤りの再発を防ぐ。(14)

また、趙秉志教授に対しては、以下のことを求めていた。
 1.次の版本/刷の際には、現在の科学的基準にもとづいた訂正をお願いする。
 2.訂正する以前は、大学の日常の授業と教学の中で、この部分について訂正する説明をおこなう。
 3.後日の学術会議との交流の中で、学者や教授の皆さんと、この問題について改めて討論する。

以上の点については、その後も回答がないままだった。

夏天さんは、出版社と趙秉志教授に対して、もっと愛と激励が必要かもしれないと思った。そこで、彼らに対して、訂正すると表明したことに対して賞賛を示す赤い花のマーク(日本で言う「はなまる」に当たる意味があるようだ)やレインボーの各色の花のマーク、および上のような要望や自らの経験など書いたものを、多くの人に自分のところに送ってもらい、それらを贈るプランを立てた。

その結果、67人から協力が得られ、夏天さんがそれらをまとめて、北京大学出版社と趙秉志教授に贈った(15)

3.編集者、個人として、訂正個所の明示とセクマイ差別の重視の意向を表明

返事がなかったので、7月11日、北京大学出版社に電話をかけると、同社の法律類出版物編集部の哥さんに電話をつながり、以下のような回答を得た。

・私個人は、この問題だけのために単独の訂正の声明を出すことは、実際の可能性は大きくないと思う。私が個人の権力の範囲内でできることは、編集責任者に、目次の前の「重版の説明」に、たとえば、読者のフィードバックにもとづいて、私たちはどの章の度の節の内容にどのような訂正をしたかを示すように促すことである。

・趙秉志教授本人は、この点を訂正することに非常に同意している。この本は2000年から出版を開始しており、当時の基準では「同性愛は精神病だ」という結論も、完全にデタラメで道理がないとは言えなかった。しかし、私たちはこの領域について不案内で、最近の新しい基準と学界の通説についてよく知らず、すぐに訂正できなかった。出版社として、私たちは自分の責任として、時代とともに歩み、現在の科学の基準に合致しない内容を訂正しなければならない。

・私たちは、これまで、編集者としての仕事において、「敏感」な話題は政治・民族・宗教のようなこと、たとえば民族差別や宗教差別などをしないことであって、同性愛とセクシュアル・マイノリティ差別は敏感な話題ではなかった。しかし、あなたのフィードバックによって、今後は私たちの仕事において、少なくとも私は法律編集部として、必ずこの問題を重視して、私たちの編集責任者と意思疎通をする。

夏天さんは、「訴えがすべて実現したわけではないが、北京大学出版社と北京師範大学の趙秉志教授のフィードバックは、最近の広東の某出版社の某編者に比べれば、本当にすばらしい!」と述べた上で、今後を見守ることを表明した(16)

おわりに

この2例だけでは明確なことは言えないが、教育部などの官庁への働きかけと比べると、編者・出版社への働きかけは、曲がりなりにも対話になりやすく、検討や訂正を表明させるなど、成果も上がっているように思う。

しかし、全体的には、編者・出版社も、セクシュアル・マイノリティの差別・人権問題への対応は弱い。それは、政治的「誤り」に対する対応の敏感さと対照的である。

そうした困難に立ち向かうがゆえに、中国におけるホモフォビア教科書を是正する運動には、一般的には単なる「徒労」しか意味しないシジフォスの話を前向きの話として読み替えるような粘り強さがあることにも注目したい。

(1)上の裁判を起こした広東省広州市の中山大学の女子学生の秋白さんたちも、2015年3月、広東省教育庁に対して、「教科書の同性愛に対する誤った/汚名を着せる描写の内容に関する公開の通報の手紙」を出したことがあるが、その中で、とくに広東高等教育出版社の教科書の問題点を批判していた。たとえば、同社が出した『心理健康課程』(2003年。2008年再版)は、「よくある精神疾患とその対応」で、「性心理障害の類型」の一つとして「同性愛」を挙げている。また、『諮詢心理学』(2013年)は、同性愛を障害とみなしているのみならず、どのように同性愛を治療するかとして、電気的刺激などの方法で同姓愛の行為に嫌悪感を覚えさせて性的指向を変えることなどまで書いてある。
 広東省教育庁は、この手紙を広東高等教育出版社に転送したため、4月、秋白さんは、広東高等教育出版社から書面での回答を受け取った。しかし、その回答は、教材の中になぜ同性愛を入れたということと、入れた章・節の内容についてであり、秋白さんが批判した問題には触れていなかった。さらに、回答の中には、「同性愛の青少年は、思春期に感情・性などについて心理的な苦慮、憂鬱などを感じるので、『同性愛患者』という用語は合理的だ」とも書いてあった(以上は、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)。
(2)六一行动︱面对恐同教材,祖国的花朵Say No!」2016-06-01 西西 推石头的西西弗斯
(3)2015年12月30日、その男子学生は、微博で遺書を公表し、自分がうつ病であることのほか、父母に対して「私はあなた方に、実は自分が同性愛者で、男の子が好きだということを告白できませんでした」「私は自分が同性愛者であることを恥ずかしいと思ったことはありませんが、後継ぎを作ってほしいというあなた方の願いを実現できなくて申し訳ないと思っています。申し訳ありません」とも書かれていた(-小斐然「对不起,再见」2015-12-30 20:29:40)。この遺書には2016年1月1日時点で、120万アクセスがあるなど、大きな反響を呼んだ(「暨大同性恋男生抑郁跳楼 微博遗书称不敢跟父母坦白」『南方都市报』2016年1月1日)。教科書について裁判を起こした秋白さんは、彼の自殺の原因について勝手に断定はできないと述べつつも、2004年に台湾で葉永鋕さんというトランスジェンダーの学生がいじめにあって自殺した事件が2006年の「ジェンダー平等教育法」の成立に結びついたことを引き合いに出して、「ある生命が消え去ったことで、世界は何か変わるのか」という文を書いた(「一条生命的消逝,世界会因此有所改变吗」)。また、2015年にうつ病患者としての訴えをする「フェミニズム・ウォーク」をおこなった黄葉さんは(本ブログの記事「林鯨らの「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」と黄葉らの「直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」(北京~広州)」参照)は、セクシュアル・マイノリティや女性はうつ病になりやすいことを指摘し、曁南大学に対して、1.ジェンダーと多元的性別の公共選択課程を開設すること、2.すべての教職員に対して、セクシュアリティ/ジェンダー平等の意識研修をおこなうこと、を提案した(「暨大男同自杀 抑郁症女大学生致信呼吁建设友好校园」2015-12-31 黄叶韵子 黄叶假装在徒步)。
(4)以上は、「以“西西弗斯”的姿态面对“恐同”教科书」2016-06-19 西西 和夏天的一天
(5)六一行动︱面对恐同教材,祖国的花朵Say No!」2016-06-01 西西 推石头的西西弗斯。
(6)以上は、「与暨大出版社面谈“恐同教材”,对于我们的争论,你怎么看?(投票ing~) 」2016-06-08 西西 推石头的西西弗斯。
(7)以“西西弗斯”的姿态面对“恐同”教科书」2016-06-19 西西 和夏天的一天。
(8)同上。
(9)以上は、「教材恐同,出版社编者回应不给力,女大学生送“鸭梨”」-推石头的西西弗斯的微博2016年7月9日 22:10:12。「【动态】出版社编者,来!干下这碗鸭梨解毒汤吧!!」同城青少年资源中心的博客2016-07-10 16:47:20。
(10)以上は、「【动态】致暨大出版社:推卸责任哪有改教材好玩」2016-07-19 西西 GLCAC
(11)以上は、「沉默的刑法学 the Silence of the Criminal Law Textbook」2016-05-27 可爱又迷人的 和夏天的一天、「治愈星期天 Self-healing Sunday」2016-05-29 嗯我是 和夏天的一天。
(12) 6•20的小红花 Little Red Flower Campaign 620」2016-06-20 爱 和夏天的一天。
(13)江西师大大三女生 成功“修改”《刑法学》课本」『南昌晩報』2016年7月18日。
(14)以上は、「【新消息】您有新的考试月大礼包,请查收」 2016-06-03 你我都期末狗 和夏天的一天。
(15) 6•20的小红花 Little Red Flower Campaign 620」2016-06-20 爱 和夏天的一天。
(16)以上は、「“我不恐同!”---给不恐同的北京大学出版社&北京师范大学赵秉志教授的小红花」2016-07-11 711不恐同 和夏天的一天。

ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴

目次
はじめに
2015年11月 教育部が「通報すれば処理する」と述べたため、秋白、訴訟撤回
12月~2016年3月 秋白らが通報するが、教育部は受理・回答をせず
4月 秋白、教育部の無回答を行政不作為で再度提訴するが、裁判所は受理せず
5月 秋白、教育部に行政再議を申請するが、教育部は受理せず
6月 秋白、教育部の行政再議不履行を裁判所に訴え、受理される
9月 第一審の審理――秋白と弁護士の訴え
9月 判決――原告は「特定の利害関係者」ではないという理由で秋白敗訴
2017年1月 第二審の審理――教育部、教材の問題点は否定せず、しかし直接秋白を傷つけてはいないと主張
秋白の裁判、青年たちをさまざまな行動へ
おわりに
(以下、追記)
2017年3月 二審判決――同様の理由で秋白敗訴
秋白の今後の決意と呼びかけ

はじめに

中国では、2001年に中華精神病学会が決定した「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」によって、同性愛は精神病とは見なされなくなった。これによって、中国でも同性愛の「非病理化」がなされたと言われる。しかし、大学教科書においては、その変化が反映されているのは今なお一部にとどまり、多くの教科書が、同性愛を「障害」や「変態」として記述している。

2015年5月、広東省広州市の中山大学の女子学生で、レズビアンの秋白さん(微博: @Qamily_Jonnie)は、教育部に対して、大学が誤った非科学的なホモフォビア教材を使用していることについてのどのような監督措置をとっているかについて情報公開申請をおこなった。政府情報公開条例の規定によると、教育部は申請を受け取った日から15日以内に回答をしなければならないが、その法定の期限内に教育部は回答しなかった。

そこで秋白は、広州市天河区人民法院(裁判所)に対して、教育部を行政不作為で訴えたが、同法院は訴えを受理しなかった。秋白は、広州市中級人民法院に控訴したが、結果は同じだった。そこで、秋白さんは、8月14日、北京第一中級人民法院に訴えたところ、17日、訴えが受理された(以上について詳しくは、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)。

2015年11月 教育部が「通報すれば処理する」と述べたため、秋白、訴訟撤回

11月24日、秋白さんが教育部を訴えた裁判が開廷した。

このときは、法院(裁判所)での話し合い(庭前对话)という形を取った。こういう形を取ったのは、教育部が法院に対して「原告の請求を棄却するか、法による調停をお願いしたい」と要請し、それを受けて法院が秋白さんに意向を尋ねると、秋白さんも教育部と対話することを望んだためである(1)

この日、秋白さんの支援者が20名あまり集まって、法院の外で、「同性愛についての誤った内容がある教材の使用を拒否する」、「私たちは、秋白とともにある」と書かれたプラカードを掲げ、レインボーフラッグを広げてアピールした(2)

話し合いは法廷の第七談話室でおこなわれ、裁判官と書記官、秋白さん、王振宇弁護士(秋白さんの代理人)、教育部の政策法規局の鄺璐さん、同事務局の職員(この2人は教育部の代理人)が出席した。

鄺璐さんは、「大学には教材を編纂・採用する自主権がある。教育部にはその内容について一字一句誤りがないかを審査する職責はない。教育部が負っている職責は、マクロな観点からの質の管理だ」と述べた。

秋白さんが「マクロな管理とは何か?」と尋ねると、鄺璐さんは「教材の内容は法律法規に違反すべきではなく、社会の安定を損なうべきではなく、他の公民の権利を損なうべきではない」と説明し、「教材が出版物として、その内容が合法か否かについては、出版管理部門に言うべきだ」と述べた。それに対して、すぐさま秋白さんは、「3月に私は出版管理部門に意見を述べたが、彼らは教育部の責任だと述べた」と言った。

また、鄺璐さんは、「この間、同性愛に汚名を着せる内容についての通報は受け取っていない(その理由は、教育部が法院に出した「答弁書」によると、文書受付室が郵便物を処理した際に、誤った部門に配達したからだという)ので、教材について処理しなかった。もし通報してくれたら、私が教育部の関係部門に取り次ぐ」と言った。さらに、その日の午後、この席にいた教育部の事務局の職員が秋白さんに電話をしてきて、「教育部統一監督通報受理センターに通報すれば、通報監督システムを通じて処理する」と言った(3)

もっとも、この日、秋白さんが教育部の職員に、「教育部で大学教育の質に対して監督・評価する職能は、具体的にはどの部門/工作組が責任を持っているのか? どのように評価するのか?」と尋ねたとき、教育部の職員は「よく知らない」と答えた。また、上述のように、鄺璐さんは「教材の誤りにつていの通報を受け取っていない」と言った。秋白さんは、教育部のこのような責任逃れをする官僚的態度に非常に不満を持った(4)

しかし、秋白さんが「教育部を訴えた初志は、実際は、勝訴するという期待にあったのではなく、訴えをつうじて教育部と対話し、教育部に問題を認識させ、確かな訴えのルートを提供させることにあった」。秋白さんは教育部と対話し、訴えのルートが示されたので、12月末、訴訟を撤回した(5)

12月~2016年3月 秋白らが通報するが、教育部は受理・回答をせず

12月17日、秋白さんのガールフレンドが、レズビアンたちに、各自が教材の同性愛についての記述の誤りについて指摘したものを「教育部統一監督通報受理センター」に郵送して通報するよう呼びかけた(6)

たとえば、こうした呼びかけもあり、12月から、秋白さんを含めた80人あまりの全国各地の大学生が、「教育部監督通報統一受理センター」に通報の手紙を出して、教育部に同性愛者に汚名を着せる教材の内容に対して、監督の職責を果たすよう求めた。

ところが、秋白さんの通報だけが、なんと「審査する機関がない」という理由で、返送された。その後、何度出しても、返送された。他の人々の通報も、返送こそされなかったものの、回答は来なかった。

そこで、秋白さんは、5回目は「教育部監督通報統一受理センター」に出した通報の手紙を、同時に教育部の袁貴仁部長にも送った。すると、やっとその2通の手紙は捺印されて受領された。

ところが、その手紙についても、3月末、教育部政策法規局の職員から秋白さんに電話がかかってきて、「秋白さんの通報は、比較的特別なので、書面での回答はできないし、このような通報を処理するシステムもない」と述べた。秋白さんが、「なぜ特別なのか」、「なぜ書面での回答はできないのか」と尋ねると、この職員は明確な回答をせずに、電話を切った。その後は、秋白さんが何度電話をしても、電話を取る人がないか、通話中だった。

以前、秋白さんに通報の資料を届けることを承諾した鄺璐さんの職務用の電話にもつながらなくなった(7)

4月 秋白、教育部の無回答を行政不作為で再度提訴するも、裁判所は受理せず

4月25日、秋白さんは、北京市第一中級法院に、教育部から回答がないことを行政不作為で訴えた。

しかし、1週間後、同法院から立件しない(受理しない)という回答が返ってきた。その理由は、「秋白の訴えの理由は、陳情の事項に属するが、この陳情の事項は、訴えたものの合法的権益を侵犯していないから」というものであった(8)

5月 秋白、教育部に行政再議を申請するが、教育部は受理せず

5月7日、秋白さんは、自らの微信で、「北京高級法院に控訴するか、それとも教育部に行政再議(中国における行政不服審査制度(9))を申請するか」について投票をしてもらうよう訴えた(10)。その目的は、自分の考える助けにするためだけでなく、人々の関心を引くためでもあった(11)

その結果、控訴と行政再議に対する投票数は、ほぼ同数だった。控訴したほうが影響を広げ、メディアの関心を引き付けるためにはよいという意見もあった。しかし、行政再議のほうが数票多く、そのことと、友人の意見とによって、秋白さんは行政再議を選択した。それは、「行政再議のほうが、焦点を教育部の教材の監督管理に当てられるからであり、行政再議のほうが速くて、1カ月程度で回答がもらえるからでもあった」。また、「もし行政再議の結果がダメでも、その後に教育部を提訴することもできるから」でもあった(12)

5月16日、秋白、教育部の政策法規局に行政再議を申請し、教育部に職責を履行するよう求めた。しかし、20日、教育部は、「申請人(秋白)が請求した事項は。申請人本人とは利害関係がなく、合法権益を侵犯しておらず、その権利・義務に実質的な影響はない」という理由で、秋白さんの申請を受理しなかった(13)

6月 秋白、教育部の行政再議不履行を裁判所に訴え、受理される

6月2日、秋白、教育部の行政再議不履行を北京市中級人民法院に訴えた。これは、同月14日に受理された。

今回は、教育部に対する2回目の訴訟になる(受理されなかったものを含めると3回目)。違いは、前回は情報公開申請に対して回答がなかったことであり、今回はホモフォビア教材の通報に対して回答がなかったことである。秋白さんが言うように(14)、今回のほうがより直接教材に対する対処方法を問題にしている。

この秋白さんの提訴については、募金活動もおこなわれた。まず、ネットを通じての募金で1万7542元が集まった。また、秋白さんの誕生日パーティーが開かれ、そこでは、「六色音符合唱団」というLGBTフレンドリー合唱団による合唱、ボランティアによる弾き語り、参加者全員での《勇気》(梁静茹)の合唱などがおこなわれた。この誕生日パーティーでも、入場券、会場での募金、バザーなどによって計1万1111元が集まり、ネット募金と合わせて、募金の合計は2万8653元(約50万円)に達した(15)

9月 第一審の審理――秋白と弁護士の訴え

9月12日、秋白さんの裁判の審理が北京市中級人民法院でおこなわれた。

この日、教育部からは政策法規局の鄺璐さんと高等教育局の李静さんが来た。

秋白さんは鄺璐さんに1年近く会えなかったので、開廷前、手に月餅を一箱持って、鄺璐さんのもとに駆け寄って、「お久しぶりです。この贈り物は私たちセクシュアル・マイノリティの学生たちの気持ちです。中には私たちが教育部に対して言いたいことが書いてあります。それは、教材から毒をなくして、LGBTの学生と教育部がいっしょに楽しい中秋(=旧暦の8月15日。名月を観賞し、供えた月餅などを一家で分けて食べる習慣がある)を過ごしたいということです」と言った。しかし、鄺璐さんはかたくなに受け取りを拒否した。

その後の審理は、30分という短い時間だった。教育部の主張は、以下の2点にまとめられると秋白さんは言う。
 1.「ホモフォビア」教材は学生の教育を受ける権利を侵犯しておらず、学生は影響を受けていない。
 2.「ホモフォビア」教材を処理するという職責を履行することを拒否する(16)

以下は、原告の秋白さんが、この日、裁判所に出した手紙の全文である(赤字は、秋白さんが自らの微信で赤にした箇所)。

裁判所はセクシュアル・マイノリティの学生のために声を発してください

尊敬する裁判長・裁判官:

私は原告の秋白です。教育部の行政再議不作為事件の訴えについて、私はこの貴重な機会を借りて、あなたがたにお話をさせていただきたいと思います。丁寧にお読みいただいて、セクシュアル・マイノリティの学生の声をお聴きくださることを望みます。

「ホモフォビア」教材は学生を傷つけています。教材と私たちには密接な関係があります。

私は在学中の大学生です。中山大学で勉強しており、大学での生活は他の学生と同じです。今でもまだはっきりと覚えていますが、私が自分の性的指向が大多数の人と異なることを意識したとき、心の中はパニックになり、自分は人間ではないかのようで心配でした。そこで、私はこっそり、あちこちでその答えを探して、自分は結局誰であるのかをはっきりさせようと思いました。大学ではちょうどその時「大学生の心理的健康」という公共選択科目(=学生なら誰でも選択できる科目)があったので、私はその授業を取ったのですが、先生は公然と授業の中で「同性愛は病気だから、急いで治療しなければならない」と言い、教室で使われていた教材にも、同性愛は「性変態」「性逸脱」「性的指向の障害」と書かれていました。それらの言葉は、私の頭の中から消そうとしても消せず、私が同性を好きなことは不正常な性的指向であるとたえず警告します。のちに仲間たちの助けによって、私はやっと少しずつ自分の性的指向を受け入れ、教材の内容が間違っていることがわかったのです!

その後、私は、他の、教材の害毒を受けている同性愛の学生にも接しました。彼らは私ほど幸運ではなく、そのうちの、ある医学生が使っていた教材には、同性愛は疾病だと書いてあったので、彼は恐くなって、医者に自分の性的指向を変えてもらおうとしました。こうした、学生を誤った方向に導く教材は各大学で広く使用されており、どれほど多くのセクシュアル・マイノリティの学生が、教材のせいで、黙って身を隠し、自分に向き合うことができなくなっているのかわかりません。

だから、教育部が法廷で「原告の教育を受ける権利を侵害しておらず、原告の合法的権益を侵害していない」と言ったことは、私は受け入れることはできないと同時に、怒りを感じました。教材は疑問を解き明かすための授業のツールであり、私たち一人一人の学生が教育を受ける最初から使わなければならないものです。どうして学生の教育を受ける権利と関係がないことがあるでしょうか。まったく逆で、教材は学生が教育を受ける権利を保障する重要な一環なのです。

教育部は何度も責任から逃避しています。裁判所が後ろ盾になってください。

私は普通の大学生にすぎません。私は大学で教材に同性愛についての誤った内容を見つけましたが、その表紙には「十二五[=中華人民共和国国民経済・社会発展第12次五カ年(2011~2015年) ]計画教材」「教育部重点研究成果」と書いてありました。このような最も専門的で、権威のある教材の中に多くの誤りがあったのです。だから、私は教育部に手紙を書き、問題について意見を述べたのですが、思いもかけず何度も傲慢な対応をされました。

2015年8月14日、私は「ホモフォビア」教材の監督管理の不作為を理由として教育部を訴え、裁判所に受理されました。当時私は興奮しました。これでついに顔を合わせて教材の問題を話すことができるようなったのだ。教育部はもう私をもう門前払いできなくなったのだと。また、2015年11月24日の法廷前の会議で、教育部の職員の鄺璐は、私の訴えを教育部の関係部門に手渡すことを承諾し、同時に私に「書面の訴えは教育部の統一監督通報受理センターに郵送したらどうでしょう。教育部が監督システムによって処理します」と言いました。私は、教育部の職員が法廷前の会議でした話を信じました。堂々とした教育部の職員が一名の普通の大学生に対して約束を破るようなことは絶対にないと信じたのです。だから、法廷前の会議が終わった後に、私は訴訟を撤回することを選択して、私の通報の手紙を教育部の統一監督通報受理センターに郵送しました。

この通報の手紙はまず何度も何度も訳もわからず返送されました。2016年2月22日にやっと教育部に捺印されて受領されましたが、60日の有効返答期間をひたすら待っても何の返答もありませんでした。このようであっても、私は対話の可能性を放棄せず、2016年5月16日、私は弁護士に委託して行政再議申請書を郵送して、再度教育部に対して私が申請した監督の職責を履行してもらうよう強調しました。最後も、また教育部に残忍に拒絶されました。

やむやく、私は、2016年6月に教育部を再度訴えて、法律という手段を使って教育部にやるべきことしてもらい、同性愛の学生の訴えに対して積極的な返事をしてもらおうと思いました。

2015年に教育部を訴えてから、2016年にふたたび訴えて法廷が開かれるまで、2年間ずっとまじめに頑張り続けてこられたのは、ただ私が、教材がセクシュアル・マイノリティについて正しく記述し、教育の分野において、異なる性的指向の学生を平等に扱ってほしかったからです。大学は何度も私に圧力をかけ、私の父母に通知しましたので、私は父母に病院に連れていかれて「治療」されました。このように大きな圧力を受けても、私は断念しませんでした。なせなら、私は、大学の無知や父母の無理解は、社会のセクシュアル・マイノリティに対する差別に根源があり、「ホモフォビア」教材が社会の差別を促進していることを知っているからです。私が父母に同性愛は病気ではないと説明しましたが、本の中には同性愛は病気だと書いてあります。私が大学に対して同性愛者について説明するときも、教材の中から客観的で全面的な記述を見つけて根拠にすることはできません。

2年間頑張り続けたのは、教育部は教材に同性愛に汚名を着せている状況があることを間違いなく知っていながら、何度も問題を回避し、責任逃れをするばかりであるのは、教育者のあるべき姿では絶対にないと信じるからです。私が闘っているのは、一つの教材の改変のためではなく、まして私一人だけのためではありません。セクシュアル・マイノリティたちが本来持っている平等な権益のためであり、公民が性的志向やジェンダーによっていかなる形態の差別や汚名を受けてはならないからです。

私は堅く信じています。法律が一人ひとりの合法的権益を保証し、公平・公正に、一人ひとりの当事者にとって道理に合った判決が出されることを!

教育部が何も言わないときには、裁判所がセクシュアル・マイノリティの学生のために声を発してください!

 以上のとおり申し上げます。
北京市中級人民法院
   原告:秋白
   2016年9月12日(17)

この裁判では、河北陳建仲弁護士事務所の于麗穎弁護士と王振宇弁護士が共同で秋白さんの代理人をつとめた。以下は、于麗穎弁護士の代理意見の抜粋である。

傷害に対して見て見ぬふりをしてはならない

この事件の原告が申請した事項は、「行政再議法実施条例」第28条の規定(=明確な申請者と規定に合致した被申請者がいること、具体的な行政再議の請求と理由があること、本人と利害関係が存在していること、法定の期限内に提出すること、行政再議法が規定している再議の範囲と再議機関の職責の範囲に属すること)に合致しているので、受理すべきであった。

一、原告が行政再議で提出した請求事項と本人には利害関係が存在している。

 原告が行政再議の申請において被告が履行するよう求めた法定の職責とは、原告が渡した「通報の手紙」の中の、同性愛に汚名を着せる/誤った内容の教材に対してその質の監督管理の職責を履行し、その結果を原告に知らせることである。

 1.関連する課程を選択した在学中の大学生として、教材の中に存在する「同性愛」に対する誤った記述は、当然原告と利害関係が存在する。原告の公共選択科目の「大学生の心理的健康」の中で使用した教材『心理健康教程』(張小遠・解亜寧編、証拠15)は、同性愛を「性変態」に分類している。また、その課程の補助教材『大学生の心理検査と行為指導』(許国彬・黄秀娟編、証拠17)は同性愛を「性逸脱」とし、「性変態」だとも言っている。また、原告が大学の図書館から借りた『諮詢心理学』(邱鴻鐘編、証拠16)は、同性愛を「病態的性的指向障害」だと述べている。

 2.原告本人は、同性愛集団の一人として、2015年に教育部を訴えた後に「アウティング」されて以来、ずっと社会・大学・家庭から何重にも心理的圧力を受けてきた。誤った教材が広く使われていることは、直接に原告の人格権を侵害し、原告に精神的損害を与えた。

 3.(略)

二、被告には教材を監督管理する法定の職責がある。

 1.被告の主要な職責の第三条に(国弁発[2008]57号[=国務院事務局が、教育部の主要な職責、内設機構、人員編制の規定を印刷配布したことに関する通知]、証拠8)、「義務教育のバランスのとれた発展の推進と教育の公平を促進し(……)基礎教育の国家課程の教材を管理し、資質教育を全面的に実施する」とある。

 2.被告は機構の中に、教材の監督管理に責任を負う機構を設置している。(略)

 3.被告は「教育部課程教材工作指導グループ」を設立して教材の監督管理をしている。(略)

 4.被告は、大学出版品質監督検査センターを設立して、大学の出版物の質に対して特別の検査をすることを2016年の業務のポイントにしている。(略)

 5.被告はかつて「大学の教材の中に存在する誤った内容」について監督管理の職責を履行したことがある。
 人民ネットの2015年11月18日の報道(証拠13)によると、「被告はかつて北京林業大学の教師・曾施兵の請求に応じて、大学の教材の監督管理の職責を履行したことがある」。曾施兵は、大学の英語教材の誤りの問題について、2015年、自分が2年かけて一人で完成させた30ページ近い『大学英語教材の品質分析報告』を被告に渡した。この報告の中で、曾施兵は、教材の中に存在する言語の誤りと非言語の誤りを明確に指摘した。それに対して、被告の高等教育局の関係する責任者は、非常に重視し、検証する措置をとると施兵先生に回答し、9つの出版社に向けて「教材の問題について調査の協力をお願いする手紙」を送り、出版社に対して、調査に協力し、その調査の状況を書面の形で高等教育局にフィードバックすることを求め、各出版社に改善する方法を提出して、教材の訂正版の中ですぐに訂正するようお願いした。同時に、曾施兵の手紙と資料を大学の英語教学指導委員会に転送した。(18)

この日、弁護士が裁判官に要請して、秋白さんは閉廷後に5分間、教育部の職員と話をする時間を持つことができた。秋白さんは、「私は在学中の大学生です。授業で使った教材が同性愛に汚名を着せていました。当時私はとても怖くなりました。自分が人間ではないかのようで怖かったのです。だから、私は、もう他の学生には私のように教材によって傷つけられないようにしたいのです。私が教育部を訴えたのは初めてではありません。もう一年経っています。教育部は責任逃れをしてほしくありません。LGBT学生の声を聞いて、セクシュアル・マイノリティの学生を含めた一人一人の学生の訴えに注意を払ってください」と、心をこめて訴えた。

しかし、教育部の職員2人は、ずっとうつむいたままで、聞こえないふり、見えないふりをしていたかのように秋白さんには見え、ますます憤りを感じた。

秋白さんは、教育部の態度は傲慢で、冷淡だと感じた(19)

この日は、少なからぬメディアが裁判所の出入り口で待っていて、裁判が終わると、秋白さんはずっとメディアに囲まれ、2時間取材を受けた。しかし、のちに、記者から続々と、文字のニュースは審査によって報道できなくなったというメッセージを受け取った。秋白さんには、訴訟の前途の困難と、メディアの報道禁止、教育部の傲慢さが、両手でますます自分の喉を絞めてくるように思えた(20)

9月 判決――原告は「特定の利害関係者」ではないとして秋白敗訴

9月30日、北京市中級人民法院は、秋白の請求を棄却する判決を下した。その理由は、「原告の請求は被告の職責との間に法律上の利害関係を有しない」、なぜなら原告は「特定の利害関係者」ではないから、というものだった。、「原告が主張する大学生及び同性愛者の一員として持つ権利」は、「被告に職責の履行を請求する権利の根拠にはなりえない」というのだ。

再議法実施条例(中华人民共和国行政复议法实施条例)第28条は、行政に対する再議の申請が合致しなければならない条件について具体的に規定しており、その中の(二)項は『申請者は、具体的行政行為と利害関係がなければならない』と規定している。この条文が指す具体的行政行為と利害関係がある申請者とは、申請者の合法的権益が直接、行政行為に侵害されたか可能性のある特定の利害関係者を指しており、不特定の社会公衆を指していない。この事件では、原告は被告に対して提出した行政再議申請が指している事項は、教育部に通報した大学の教材に存在する問題について監督管理する職責を履行するよう求めることである。教育部が、秋白(原文は実名)が通報した事項を処理するか否かは、特定の利害関係者の権益を保護することではない。原告が主張する在校中の大学生および同性愛者の一員として持つ権利は、どの不特定の学生あるいは同性愛集団のメンバーでも持っている権利であり、原告として被告に職責の履行を請求する権利の根拠にはなりえない。ゆえに秋白と教育部が履行する職責との間には法律上の利害関係はなく、被告に対して提出した再議の申請は、再議法実施条例第28条が規定した受理の条件に合致しないので、本院は支持しない。

この判決には、何人もの弁護士から強い非難の声が上がった。たとえば、昆明の付薇弁護士は「この判決は、ひどいデタラメの見本である――ある行政の職能が影響を及ぼしうる人数が多いか膨大な集団だったら、たとえその集団の中の任意の一人ひとりに対して、その職能を履行しないことの傷害が具体的・直接的であっても、それらの個人は権利を主張する資格を喪失するというのであるから。」と述べた。

10月12日、秋白さんは、北京高級人民法院に控訴した(21)

2017年1月 第二審の審理――教育部、同性愛者たちを傷つけたことは否認しなかったが、直接秋白を傷つけてはいないと主張

2017年1月10日、第二審の審理がおこなわれた。

この日、教育部の政策法規局と高等教育局の職員は、「秋白は教科書の直接の被害者ではない。教科書が同性愛は病気だと言うのは、同性愛者たち全体について言っているのであり、それがもたらす傷害は、何回も曲折を経て、はじめて秋白自身に達するのであって、原告の秋白は、行政行為の特定の利害関係者でないだけでなく、直接的傷害の原則にも合致しない」と述べた。

秋白さんは、それに対して、「私が受けた授業で使った教材には明確に同性愛は性変態だと書いてあり、先生もこの観点をPPTに書いて授業をおこなった。誤った教材が傷害をもたらす根源であり、教育部は傷害をもたらすことを承認したからには、この障害の原因を解決すべきである!」と述べた。教育部の主張に対しては、「私の行政再議を申請したのは、教育部が私の通報に対して回答しなかったことについてである。この行政不作為はこのように明確であるのに、こっそり概念を変えようとしている」と批判した。

原告の王振宇弁護士と于麗穎弁護士は、以下の2点を指摘した。
・秋白は差別的内容がある教材を買ったことによって、財産に損失が生じた。また、秋白は同性愛者として、「同性愛は性変態だ」という内容を読んで、人格権が侵害された。秋白が教育部に対して教材に対処するよう要求したのは、自分の人格権と財産権を保護するためだ。教育部が職能を履行しなかったことによって、秋白は行政不作為の特定の権利者になった。それゆえ、一審が原告は特定の利害関係者ではないという判決を出したことは、誤っている。
・一審判決は、「原告は集団の一員として持っている権利は、どの不特定のメンバーもみな持っている権利」だから、原告が被告に職責の履行を請求する根拠にはなりえないと述べた。このロジックは非常にでたらめなものである。このロジックでは、すべての人が行政に職責を履行することを要求できず、特権を持った人だけが要求できることになるのではないか?

最後に、秋白さんは、教育部の職員に対して、「もし教科書に、異性愛が病気だと書いてあったら、あなたがたは改めなければならないと思うか?」と尋ねた。回答は、「わからない! 私に尋ねるな」というものだった。

この日、裁判所には、10名あまりの秋白さんの支援者が駆けつけ、裁判所の外でホモフォビア教材を拒否するプラカードを掲げた。

また、「同志の声」という微博が審理の過程を中継し、それに対するアクセスは25.7万に達した。また、「LesPark(拉拉公園)」や「同性愛者の家族と友人の会(同性愛親友会)」というウェブサイトが動画で法廷の外の現場から生放送をし、2000人あまりが同時にネット上で見た(22)

秋白の裁判、青年たちをさまざまな行動へ

秋白さんの裁判は、各地の同性愛者らの青年を励まし、さまざまな行動を起こさせた。

2016年8月には、大学生や青年たちが教科書の記述の是正をさまざまな面(訴訟、図書館、教師など)からめざす「ホモフォビア教材救済(に関心を寄せる)計画(恐同教材拯救[关怀]计划)」を開始した(23)

同年10月には、秋白さんの勇気と行動に感激したゲイの青年が、「秋白を支援する漂流瓶」アクションを呼びかけた。これは、支援者がノートに教育部に言いたいことを書いて、それを自分自身と自分がいる都市を示す建築物などといっしょに写真に撮って、そのノートを次の人に回していくというものである。「漂流瓶」(という名称のノート)は、青島から出発して、臨沂、済南をすでに回り、さらに滄州、天津、北京を回る予定であることが発表されている。このアクションは、そのノートによって、教育部にLGBT問題ついての「補習」をさせるという発想でおこなわれた(24)

11月11日(独身の日)には、柳星宇さんという大学1年生のゲイの男性が、教育部に宛てて、毎日1通ずつ、1000日間に1000通のメッセージを送る活動を始めた。これは、さまざまな人に、「私は××大学に在学している(卒業した)。私は学校でのホモフォビア教材の使用を中止するよう求める」などと書いた紙と自分自身とを写した写真を、微信または微博で「ホモフォビア教材に関心を寄せる計画」や「同志平等権益促進会」宛てに送ってもらい、それを柳星宇さんが教育部に送るというものである。

柳星宇さんは、「私は今年大学1年生なので、1000日後には、まもなく卒業になる。私は大学が教科書から汚名を拭い去るプロセスの証人になりたい。あなたも私とご一緒しませんか」と呼びかけている(25)

12月27日には、広州新メディア女性ネットワークらが、秋白さんの話をネット上で中継するイベントなどもおこなっている(26)

秋白さんは、「幸い、私たちが『教材についてとことん反抗する』という精神は、多くの人が行動し、自分の力でこの社会をよりよいものにすることを始めることを励ました。あるいは、これらの人、これらのこと、これらの成長が、私たちが2016年に作り出した最大の変化かもしれない」と述べて、以下のような活動について述べている。

たとえば、「蘇州LESGO公益小組」のメンバーで、「2016蘇州ヴァギナ・モノローグス」の発起人の「Peter」さんは、《ヴァギナ・モノローグス》の中国版として作成した《陰道欲言》の中で、ホモフォビア教材の問題を取り上げた。それは、あるゲイの男子学生が、自己を探索し、自己を発見する過程において、教科書の中のホモフォビア的な内容を読み、授業でも、先生がたえず「同性愛は精神病だ」と強調するというものである。

「Peter」さんは、秋白さんが教育部を訴えているのを知り、自分もできるかぎりのことをしようと思い、この問題を取り上げたという。「Peter」さんは、「眼、耳、口、鼻は人体の器官であり、みな大声で言えるのに、ペニスとヴァギナは汚名を着せられ、言うことはできない。《陰道欲言》の本質は汚名をぬぐうことにある。教科書についての活動も同じであり、セクシュアル・マイノリティの汚名をぬぐうことである」と述べている。

また、「Barry」さん(「武漢同行同志センター」メンバー)は、「教科書についての活動の私に対する影響は、主に、口では言えないような多くの圧力に直面したとき、勇気が持てたことだ」と述べている。

また、黒龍江大学青年法学社の創設者の「晨曦」さんは、2016年1月、「大学学生団体管理暫定規則(高校学生社团管理暂行办法)」の全文が見つからなかったので、その全文の内容について、教育部に情報公開(のち、行政再議)を申請した。これは、国家secretとの理由で公開されなかったのが……。

さらに、2016年6月、法学部の学生の「夏天」さんは、授業で使われている『刑法学』の中に同性愛は変態だと書いてあったので、北京大学出版社と編者の趙秉志さんに手紙を書いた(27)。このような出版社や編者への働きかけは他にもあり、次回ご紹介したい。

おわりに

大学教科書のホモフォビアに対する秋白さんの裁判について、その提訴以前を含めた経過をもう一度まとめると、以下のようになる。秋白さんは、出版管理部門や出版社に働きかけた。それが、(1)の段階であり、教育部に働きかけたのが(2)の段階である。

(1)国家新聞出版総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社に対して是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前では宣伝活動もする(秋白さんはこれらの活動には1メンバーとして参加)→まともな回答なし→広東高等教育出版社を広州市天河区法院に訴える→受理されず。

(2)教育部に対して、大学の教材に対する監督管理について情報公開を申請→期限までに回答なし→教育部の無回答を行政不作為で広州市天河区法院に訴える→受理されず→広州市中級法院に訴える→受理されず→北京第一中級法院に訴える→受理→教育部が「教科書の問題点について通報すれば処理する」と述べたため、訴訟撤回→通報したが、教育部は、受理や回答をせず→教育部の無回答を行政不作為で北京市第一中級法院に訴える→受理されず→教育部に行政再議を申請→受理されず→教育部の行政再議不履行を北京市第一中級法院に訴える→受理→同法院、原告の請求と教育部の職責との間には「法律上の利害関係がない」とし、秋白敗訴→控訴。

中華精神病学会が15年以上も前に同性愛の非病理化をしたにもかかわらず、それに反する記述を是正させるというだけのことが、上のようにさまざまな手を尽くしても、そのたびごとに壁にぶつかっているのである。

しかも、秋白さんが教育部を裁判に訴えると、中山大学は秋白さん本人だけでなく、秋白さんの家族にも圧力をかけた。その際、大学は秋白さんが同性愛者であることを家族にアウティングしたので、秋白さんは家族からも圧力を受け、疎外されるという苦痛の中で裁判をすすめてきた。

訴えがここまで無視され、抑圧されるのは、近年習近平政権が民間の運動や弁護士に対する締めつけを強めてきたこととも関係しているだろう。教育部についても、2016年7月に教育部長が袁貴仁氏から陳宝生氏に変わって以降、同性愛に汚名を着せる教材は放置されている一方で、教材に対する政治的締めつけは強まったという(28)

以上のような困難な状況ゆえに、運動から離れた人々も多かった。ある活動家は、「2年前、私が最初に仲間たちに、私たちが教科書の同性愛のスティグマ化を変えていくと話したときの(……)力に満ちた感覚は2、3カ月しか続かず、バラバラの砂のようになり、周囲を見渡すと、たった数人の人しか残らず、(……)2年あまりの間に(……)多くの仲間と出会ったが(……)最後に残った人はきわめて少ない」と述べている(29)

しかし、以上のことは、何度跳ね返されてもぶつかっていく秋白さんたちの粘り強さや少人数でも闘い続ける意志の強さも示している。

また、去って行く人が多いことは確かでも、その一方で、先述のように、現在も、新しい人を含めて、秋白さんの裁判がきっかけになって、青年たちがさまざまな新たな行動を起こしていることも事実である。その背景には、この問題に関心を持つ多くの人々がいる。

当事者個人の直接の要求を超えて、社会の変革するための訴訟は「影響性訴訟」と呼ばれているが、その意義について、秋白さんは、「私は、その意義は、相手が最後に法律の改正をしたり規定を出したりするか否かにはないと思う。それは難しい。しかし、訴訟を通じて多くの人がLGBTIたちの権益が無視されていることに気づく。私はそれが訴訟の比較的大きな意義だと思う」(30)と述べている。

先述のようにマスメディアがこの裁判を報道することに対しても圧力がかかっているのが現状だが、それでも『新京報』は今年の第二審での審理に至るまで報道を続けている(31)。また、微博・微信などのネットメディアにおいて大きな関心を集めていることは第二審の審理への多くの人の注目を見れば理解されよう。また、いくもの英米のメディアでも報道されたことも無視できない(32)

こうしたことを考えると、この裁判は、その時々で人々を励ますだけでなく、長い目で見ると、その歴史的意義も十分あるように思う。


以下、追記(2017年4月4日)

2017年3月 二審判決――同様の理由で敗訴

3月2日、北京高級人民法院は、秋白さんの控訴を棄却し、秋白さんは敗訴した(33)

判決理由も、以下のような一審と同趣旨のものだった。

秋白が通報した事項は、秋白個人にだけ関わるのではなく、秋白を含めた多くの不特定の人に関わるものである。(……)ゆえに、秋白と教育部の間には通報によって具体的な行政的法律関係は形成されておらず、教育部が秋白の通報の申請を処理するか否かやどのように処理するかは、秋白がこの裁判で主張する個人的利益には直接には影響せず(……)法律上の利害関係を構成しない。

(1)秋白の感想――法理の面から

このような議論に対しては、秋白さんは、上述の二審での王振宇弁護士の議論を対置することによって反論している。

秋白は、さらに、中国人民大学法学院・王貴松教授の二審判決についてのコメント(34)も引用している。

秋白はその教材を使用した学生であり、秋白は同性愛者という集団に属するけれども、その受けた侵害は具体的である。およそこの教材を使用した同性愛者は、みな、具体的な侵害を受けた者である。上述の教材の問題は、同性愛者全体のイメージの問題であるだけでなく、特定の同性愛者の権利の問題でもある。(……)監督管理の職責は、公共の利益を保護する目的が同時に個人の法律上の権益を保護する目的を兼ねるときは、その法律上の権利を持っている者は、監督管理者が法定の監督管理の職責を履行するよう申請する権利を有する。

教育部は、被害者の通報を受けたら、回答する義務がある。これは、食品を購入した消費者が食薬部門に訴えたら、食薬部門は回答しなければならないことや、携帯電話を購入した消費者が物価部門に対して、電気通信会社がカードの費用を徴収することを通報することを通報したら、物価部門は回答しなければならないのと同じである。


結局のところ、秋白さんは「私たちが法廷でどのように努力して道理を説き、論証しても、最終的には一通の判決書によって、みな徹底的に否定された」と述べる。

(2)秋白の感想――教育部の対話の面から

また、秋白さんは「勝訴することより、私が期待したのは、教育部が『ホモフォビア』教材を正視して管理監督をするようになり、教員と学生が教材の面から客観的にセクシュアル・マイノリティを認識するよう保証することだった」と言う。

しかし、この面でも、秋白は、「教育部との3回の裁判の中で、相手が対話したいのかもしれないと感じたことはなかった。法廷では、私と弁護士が一方的に『話をする』ことが多く、相手は沈黙するか否認するかだった」と言っている。

秋白の今後の決意と呼びかけ

このようにこの裁判自体は、完全な敗訴に終わった。しかし、秋白さんは次のように述べる。

結論が出たということは、終わったことを意味するのか?
敗訴は、終結を意味するのか?
NO!
終結するべきなのは、差別だ! 汚名だ!

新たに始めよう! 続けて私たちがするべきなのは、着実な行動、行動、行動だ!

私がやろうとしているのは、次のことだ。
1.最高人民法院に教育部の件について再審を申請して、手続きを最後までする。
2.整理した誤った教材についての目録のうち、10人の編者/出版社に、教材のスティグマをなくすよう手紙を出し、次に電話やメールで説得する。

秋白さんは、他の人々にも、「とんとんまで闘う」ことを呼びかけている。

行動1 あなたの身の回り(学校/都市)のホモフォビア教材を見つけて、編者/出版社に手紙を出す、電話する、メールを出す、直接会って話をするなどの方法で説得する。
行動2 あなたがホモフォビア教材を読んだ経験を述べて、文章にし、それらの経験を私たちが編者/出版社に対して説得する事例にする。

(35)

このように秋白さんは、力のかぎり闘い続ける道を歩みつつある。

(1)她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」2015-12-10 张鑫明 Vista看天下。
(2)Chinese Student Protesting Books’ Stance on Homosexuality Meets With OfficialsThe New York Times NOV. 24, 2015→「中国同性恋大学生与教育部官员对话」纽约时报中文网2015年11月25日。
(3)以上は、「她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」(2015-12-10 张鑫明 Vista看天下)、および「同性恋遭教材污名化未获处理 大学生再告教育部」(财新网2016年6月15日18:32)による。また、この日、鄺璐さんは「この訴訟についての報道はすべて読んで、秋白さんの話と秋白さんが教育部に出した手紙も読んだ。私は同僚とともに同性愛と精神病との関係についても研究した」とも述べており(上記「她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」)、当日は比較的秋白さんに好意的態度を示したように見える。
(4)幸好一路上有你 与教育部沟通的漫漫长路」2015-11-30 秋白 秋白的自由野
(5)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端
(6)秋白女友:行动起来,让教育部看见“同志”!」2015-12-20 Janeway 秋白的自由野
(7)以上は、「同性恋遭教材污名化未获处理 大学生再告教育部」财新网2016年6月15日18:32。ただし、「秋白さんの通報だけが、なんと『審査する機関がない』という理由で、返送された。その後、何度出しても、返送された。他の人々の通報も、返送こそされなかったものの、回答は来なかった」という箇所は、この記事では、「彼らが出した通報の手紙の大多数は、『審査する機関がない』」という理由で返送された」と記している。しかし、秋白さん自身の記述を含めた他の記事(「2016,我们再试试改变世界好吗?|来自秋白的邀请」(2016-01-14 秋白 秋白的自由野)、「【动态】教育部,你挑逗了我,还一笑而过 」(2016-05-20 秋白 GLCAC)、「女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端)では、本ブログのように記しているので、それに従った。
(8)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端。
(9)詳しくは、徐暁青・藤田直佑「行政再議に関する基礎知識」『SMBC China Monthly』第129号(2016年3月)[PDF]参照。
(10)秋白打官司,下一步由你来决定(姬/基情投票中) 」2016-05-07 秋宝宝 秋白的自由野
(11)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端。
(12)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端、「【动态】教育部,你挑逗了我,还一笑而过 」(2016-05-20 秋白 GLCAC)の中の「致参与《秋白打官司,下一步由你来决定》投票的各位亲们的情书」。
(13)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」(澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端)にも出てくるが、「你们爱的秋白又去找教育部玩了」(2016-06-16 和夏天的一天)に、教育部が行政再議申請を受理しないことを述べた決定書自体の写真が掲載されている。
(14)秋白さんが言うには、前回の訴訟は、教育部の教材に対する監督管理についての情報公開についてであって、教育部がホモフォビア教材をどのように処理しているか、どのように扱っているかは直接問題にしなかった。しかし、今回の訴えの理由は、ホモフォビア教材に対する通報に対する回答がないことであり、これはすなわち、教育部がなぜ回答しないのか、なぜ私の通報申請を受理しないのかということだから、今回のほうがより直接に教材に対する対処を問題にしていると語っている(「如果每个人都怕,就永远不会有学生站出来」2016-09-10 NGOCN原创 GiveNGOA5)。
(15)【动态】告教育部有钱啦!秋白生日趴超额完成筹款目标」 2016-06-24 GLCAC GLCAC
(16)以上は、「再度被告的教育部回应恐同教材 王之冷漠│秋白记录」2016-09-13 秋白 秋白的自由野。
(17)请法院为性少数学生发声 —秋白诉教育部案致法院的一封信」2016-09-18 秋白 秋白的自由野
(18)于丽颖律师:你不能对伤害视而不见――秋白诉中华人民共和国教育部行政复议不作为案」2016-09-14 北京义派律师事务所
(19)以上は、「再度被告的教育部回应恐同教材 王之冷漠│秋白记录」2016-09-13 秋白 秋白的自由野
(20)再告教育部案宣判|当正义还没来的时候,我们要坚持」2016-10-12 秋白 秋白的自由野
(21)以上は、「秋白打官司│一把辛酸泪 六纸判决书」2016-10-14 秋白的自由野。2015年5月12日に秋白さんが最初に広州市天河区人民法院に告訴状を出したとき、同法院が受理しなかった理由も、「上述の書籍を発行する行為と告訴人には法律上の直接的な利害関係はなく、また告訴人は上述の書籍が直接間接にその利益を損なったという証拠を提出していないのに、訴訟を起こしたことは妥当でないため、受理すべきでない」(「开庭!女同性恋起诉教育部第一案24号开庭」)というものだったので、当初から類似したことを述べていたようだ。
(22)以上は、「教育部不否认教材伤害同性恋群体 秋白起诉教育部第二次审理」GS的微博2017年1月11日 19:08.31、「现场:教育部不否认歧视,但没有直接伤害秋白?」2017-01-11 不用恐同教材的人 GLCAC
(23)Barry「发刊词 | 是污名,练就了我们这批小愚公」2016-10-09 秋白的自由野
(24)灵澈子「第一弹|给教育部补补课の“撑秋白漂流瓶”,邀您来接力!」2016-10-26 秋白的自由野、秋白「第二弹|教育部同学,你有一份补课通知书请查收 」2016-11-06 秋白的自由野
(25)以上は、「双11,他决定用1千个日子每1天寄1封信给同1个人 」2016-11-11 LGBT权促会
(26)“女泉微课”第二弹――教材勿恐同,女生力很大!」女权之声 2016-12-20 18:43:54
(27)以上は、「2016│教科书又一年,我们终于站在了一起」2016-12-30 秋白 秋白的自由野
(28)【开庭】教育部这次要到北京高院当被告」2017-01-08 LGBT权促会。
(29)Barry「发刊词 | 是污名,练就了我们这批小愚公」2016-10-09 秋白的自由野
(30)如果每个人都怕,就永远不会有学生站出来」2016-09-10 NGOCN原创 GiveNGOA5。
(31)秋白打官司」新京报网2015年12月13日、熊丙奇(教育学者)「高校教材同性恋争议,为何久拖不决」『新京报』2016年5月20日、「女大学生秋白谈再诉教育部:“恐同”教材伤我心」新京报网2016-09-19 15:57:41(動画)、「称教材“污名”同性恋 秋白状告教育部案二审开庭」新京报网2017-01-10 20:16:06
(32)Chinese Student Protesting Books’ Stance on Homosexuality Meets With OfficialsThe New York Times NOV. 24, 2015→「中国同性恋大学生与教育部官员对话」纽约时报中文网2015年11月25日、Fighting the views of homosexuality in China’s textbooks BBC News 12 September 2016、Chinese student lodges over homosexuality terms in textbooks the Guardian 12 September 2016 16.54
(33)教材疑污名化同性恋 大学女生告教育部二审败诉」财新网2017年3月6日。この記事は、3月2日と記している。「3月3日」と記しているものもあるが、この記事によると、3月3日は、判決書が秋白さんのところに送られて、秋白さんが手に渡った日付である。秋白「三诉教育部|败诉,终结还是开始? 」(秋白的自由野2017-03-11)に写真が掲載されている判決書の日付も、3月2日となっている。
(34)同性恋污名教材风波:秋白不服教育部行政复议决定案 | 附评析 」中国宪政网2017年3月9日。
(35)以上は、秋白「三诉教育部|败诉,终结还是开始? 」秋白的自由野2017年3月11日。

大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動

中国では、2001年に中華精神病学会が決定した「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」によって、同性愛は精神病とは見なされなくなった。これによって、中国でも同性愛の「非病理化」がなされたと言われる。しかし、そのことは大学の教材にさえきちんと反映されておらず、教科書の中にもホモフォビアが頑強に残っている。

この問題ついて、ここ2年ほど、LGBT諸団体が、さまざまな調査研究を発表したり、行政機関や大学へ是正を求める公開書簡を出したり、情報公開申請をしたり、裁判に訴えたりする動きが相次いでいる。そうした動きをまとめてみた。

《目次》
 2013年5月 淡藍網など、教材や啓蒙書のホモフォビアを批判、是正を訴え
 2014年8月 同城青少年資源センターなど、初の詳細な調査報告書を発表。同報告書の概要。
 9月 LGBT関係3団体、112校の「211プロジェクト」大学の学長に、教学内容などの問題について公開書簡
 2015年3月 中山大学の学生ら、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して教科書の是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前で抗議活動
 3月~4月 国家新聞出版広電総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社からはきちんとした回答なし
 4月 中山大学の学生ら、広東省教育庁前で同庁が書簡を転送したことは評価するアピールをし、同庁職員と会談
 5月~7月 秋白、同性愛蔑視の記述が多い広東高等教育出版社を広州市天河区法院(次いで広州中級法院)に訴えたが、受理されず
 5月~8月 秋白、教育部に、大学の教材に対する監督措置について情報公開申請するも回答なし。そこで、回答がないことを行政不作為で北京第一中級人民法院に訴え、受理される
 8月 中山大学、秋白に訴訟をやめさせるよう圧力。それに対するLGBT諸団体の抗議
 3月~ 他の大学でも、自校の図書館に所蔵された教科書をチェックして是正を訴える動き
 3月~ 全国100カ所の師範大学や北京の30か所の重点大学に対して使用教材について情報公開申請

2013年5月 淡藍網など、教材や啓蒙書のホモフォビアを批判、是正を訴え

2013年5月17日、LGBTサイト・淡藍網が「あなたの身辺のホモフォビアの教材を暴露する」という発表をおこない、13本の教材についてホモフォビアを指摘した。その教材とは、人民教育出版社の『生命教育』、広東高等教育出版社の『大学生心理健康教育』、南京林業大学出版社の『大学生の生殖と健康教育読本』、民族出版社の『心理カウンセリング(基礎知識)』などの教材や一般向けの啓蒙書であった。

さらに、10余りの団体(淡藍公益、同性愛者の親と友人の会、北京紀安徳相談センター、北京LGBTセンター、同語など)が連名で「教育出版機構・大学・教育者への公開書簡」を発表し、教材からホモフォビア的な内容をなくすように訴えた(1)

2014年8月 同城青少年資源センターなど、初の詳細な調査報告書を発表

2014年8月27日、同城青少年資源センターが中山大学ジェンダー教育フォーラム、中山大学レインボーグループ[小組]と協力して「『ホモフォビア』の拒絶を、教科書から始める」という記者会見を開いて、「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容およびその影響の調査報告(中国高校教科书中对同性恋的错误和污名内容及其影响调查报告) (2)」を発表した(3)

「同城青少年資源センター(同城青少年资源中心 Gay and Lesbian Campus Association of China)」とは、2006年に設立された、広州を起点として全国的なLGBTサポートを目指している団体である。

後にPDFで発表されたこの報告書は、114ページにも及ぶものである。以下はその内容のごく簡単な紹介である(便宜的に小見出しを付けたが、この小見出しは原文とは異なっている)。

「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容とその影響の調査報告」の概要

同性愛は、文学・社会学・芸術・法学など幅広い学問分野の論文で扱われているにもかかわらず、大学の教科書の中では心理学・医学・生物学の中でしか扱われず、主に専門課程の「変態心理学」(遠山注:日本の「異常心理学」ないしは「精神病理学」に当たるもののようだ)・「医学心理学」と一般教養課程の中の選択科目の「心理健康教育」の教科書の中にしか出てこない(他の科目では、こうした教科書の内容が引用されている)。

上の「変態心理学」と「心理健康教育」の現在使われている教科書90冊を調査したところ、そのうち42冊(46.67%)しか同性愛に触れていなかった(「変態心理学」は28冊/34冊、「心理健康教育」は14冊/56冊)。

書かれている内容も、同性愛の学生の自己受容、心理的発展、社会的サポートのニーズに対する配慮が欠けている。心理健康教育科は大学生の心理的健康のために設置されたカリキュラムだが、調査した56冊の中の14冊(22.95%)しか同性愛に触れていないうえに、それらの内容はすべて「大学生によくある心理的障害」の中に置かれている。心理学の教科書の中の「性と愛情、婚姻家庭」などの内容と心理健康教育の教科書の中の「大学のキャンパスの中の恋愛と性」に関する内容は、すべて異性愛の視点から書かれており、同性愛の感情や性についてはまったく書かれてない。もし同性愛の学生が、自分が「心理障害」や「性変態」の中でしか取り上げられていないことを知れば、心理的にきわめてマイナスの影響があるだろう。同性愛の学生の「心理健康教育権」は無視されているのである。

同性愛は、「病」または「異常」としてしか教学内容の中に組み込まれてない。専門課程の教科書では、同性愛は、変態心理学と医学心理学の中で、「性心理障害」・「性行為変態」という章・節の中の、性的指向の障害として書かれている。一般教養の心理健康教育という選択科目の中では、同性愛を取り上げた教科書は、みなそれを「恋愛と性心理」の章・節の中の性心理の悩み、性心理障害の一種として論じている。同性愛について触れた42冊のうち、「同性愛」を独立した章・節としているのは3冊だけである。教科書の中の同性愛の内容のロジック全体は、「病理化」を核心としている。同性愛に触れている42冊のうちの37冊(88.10%)は、同性愛は「病気か否か」という問題を議論しており、そのことが心理学や医学で同性愛が論じられる理由になっている。

「変態心理学」などの専門課程の教科書について

第一に、国家の科学基準と合致しない記述が大量にある。2001年に中華精神科学会が「中国精神障害分類と診断基準」第3版を出して、同性愛という性的指向を病気とはみなさなくなった。しかし、2011年より後に大陸で編纂された「変態心理学」の教科書の中にも、同性愛の分類や病理判定、治療内容の点で、「中国精神障害分類と診断基準」第3版とは合致しない部分が大量にある。
 ・「真性同性愛」「仮性同性愛」「境遇性同性愛」など、第3版が排除した分類をしているものが69.23%ある。
 ・12冊は「同性愛の治療」について論じている。それらは、みなその困難さや効果の低さについて述べており、嫌悪療法(同性に関心を持ったら、嘔吐する薬を飲んだり電気的刺激を与えたりする「療法」)は無効だと明確に指摘している本も2冊ある。しかし、6冊は、同性愛を異性愛に転化させる「治療」を説いており、3冊は治療に一定の効果があるという報告も掲載している。たとえば、2009年に出版されたある教科書は、嫌悪療法によって60%近いケースで性的指向が変わったと述べている(『変態心理学』高等教育出版社 2009)。
 ・17.65%は、「同性愛のうち、男性が受動的で女性が主動的なものは、本当に病気である」と述べたり(『変態心理学導論』合肥工業大学出版社 2011)、「患者」と呼んだりするなど、病理化を陰に含んだ判断をしている。

2001年より後に大陸で編集された、同性愛が病気か否かを論じた17冊の本のうち、同性愛は病気や障害ではないと述べているのは4冊だけで、11冊は、明確に病的だと判断しており、2冊は、定説はないとし、2冊は観点や内容が不明確だった。

第三に、同一の教科書の中に、前後でロジックが矛盾している状況もよく見られる。たとえば、2001年の後に出版された本のうち、6冊は同性愛が病気でないことを述べつつ、同時に同性愛を異性愛に転化させる治療について述べている。

第四に、一部に、事実と合致しない、ステロタイプな印象を強化したり、観点が古くさかったりする内容がある。たとえば、多くの本は、同性愛を固定的な主動型と受動型とにはっきりと分けており、「同性愛のうち、男性が受動的で女性が主動的なものは、本当に病気である」などと書いてある。しかし、実際は、同性愛の現実のパートナー関係の大多数は、けっして絶対的に固定的なものではない。また、同性の性向の主動的なものか受動的なものかをそのジェンダー的気質・役割といっしょに結び付けて、実のところジェンダーステロタイプなイメージを強化している。「一部の同性愛者は、異性愛で打撃を受けた後、他の仲間の誘惑によって、同性愛になる」(『諮詢心理学』広東高等教育出版社 2013)という根拠のない記述や、「男性同性愛者は楽しみを追い求めることを重んじ、女性同性愛者は感情を追い求めることを重んじる」(『異常心理的矯正与調治』天津科学技術出版社2009)という男性中心主義的な記述がある。

心理健康教育などの一般教養課程の教科書について

17冊のうち11冊(78.57%)は同性愛を、性的倒錯、性心理障害、性変態、性心理異常などの病気だと判定しており、「中国精神障害分類と診断基準」第3版と合致していない。たとえば、「性倒錯はふつう性変態と言われる。(……)性倒錯のあらわれは多種多様で、同性愛、異性装、フェティシズム、サディズム、露出狂などがある」(『大学生心理健康与調適』北京華文出版社 2002)

第二に、内容が短く、説明が簡単で曖昧にすぎる。選択科目の中では、同性愛についての内容はしばしば、「恋愛と性」「性心理」などの章・節で、婚前性行為やフェティシズムなどの内容といっしょに、性の心理の悩みや心理障害として現れる。

第三に、教科書の内容はしばしば学科の専門の観点と食い違っている。同性愛の定義については、専門の教科書は、「同性を指向する思想感情と性行為」とか「同性に引き付けられる」と記述しているが、心理健康の教科書では、71.3%の本が定義の終わりに「異常な性行為」とか「性変態」などの明らかに否定的な言葉を明確に使っている。

第四に、一部の教科書には編者の観点がはっきりしない、またはロジックが矛盾していて統一性に乏しい。

第五に、一部の本の観点は古くさく、根拠に乏しく、誤った情報に基づいており、同性愛に対する差別と汚名を作り出しかねない。たとえば、ある本は、「異性とのつきあいが乏しく、個性が内向的で、ひねくれていて人づきあいがよくなくて、性的抑圧が大きくて、性衝動を発散する有効なルートを見つけ出せないこと」が、同性愛、フェティシズム、覗き見、異性恐怖症などの性心理が異常な状況を引き起こす、と述べている(『大学生心理衛生与諮詢』人民衛生出版社 2008)。また、同性愛を悪魔化し汚名を着せる描写があって、差別を引き起こしかねないものもある。たとえば、ある本は「とくに近年は、同性愛のエイズ患者が急増して、同性愛の性行為に対する疑問と排斥が増加した。同性愛者は病因にもとづいて系統的な治療を受けることによって性的指向を変えることができる」(『大学生心理健康与人生発展』高等教育出版社)と述べている。

まとめ

今回調査した2001年以降に大陸で編集された教科書のうち、17冊の専門課程の教科書と14冊の一般教養課程の教科書が「同性愛は病気か否か」を論じていたが、そのうち13冊(41.49%)は、同性愛自身が病気または異常だと判定していた。正確かつ全面的に中国精神障害分類と診断基準」第3版を引用していたのは8冊(25.81%)だった。31冊のうち、7冊(22.58%)(専門課程の4冊、教養課程の3冊)だけが、同性愛はまったく病気ではないという、国際基準に合致した認識をしていた。

また、一般教養課程の教科書は専門課程の教科書と比べても、同性愛についての内容が専門性に乏しく、差別性が強い。「中国精神障害分類と診断基準」第3版を引用した教科書は1冊もなく、大多数の教科書が同性愛自身を病気とみなしている。

今回調査した42冊の同性愛の内容を含んだ教科書のうち、ロジックが明晰で、観点が明確で、内容が正確で、専門的基準に合致していて、比較的客観的・全面的に同性愛について書いてあるのは、9冊(21.43%)で、8冊は専門課程の教科書(うち5冊は外国の訳書で、3冊が大陸の編著書)、1冊は一般教養課程の教科書だった。

教科書の誤った内容の影響、同性愛の学生の教育についての訴え、私たちの主張と行動提案

さらに、この調査報告は、在学生と大学を卒業したばかりの男女の同性愛者とバイセクシュアル21人にインタビューをおこなって、大学の教科書の同性愛記述について、自分への影響や訴え・期待についても調べている。

そのうえで、自分たちの主張と訴えを次の3項目に分けて述べている。
 1. 社会各界に、セクシュアルマイノリティの青少年の教育環境における境遇に関心を持ち、さまざまな学生に平等な教育の機会と、平等に知識・情報を獲得する機会を保障することから始めることを希望する。
 2.教育業務従事者に科学を尊重し、教育の最低ラインをしっかりと守り、教科書の科学性・厳格性を確実に保証するよう訴える。
 3.キャンパスの性教育・エイズ教育政策を強化・実現し、多元的性別の視角に立って、セクシュアルマイノリティの学生の心理・性・健康のニーズを考慮せよ。

最後に、学校やその管理者、教育部門、教師、NGO、専門家・学者に対して具体的な行動提起をおこなっている。

この報告書は、非常に多数のメディアで報道された(4)

9月、LGBT関係3団体、112校の「211プロジェクト」大学の学長に、教学内容などの問題について公開書簡

2014年9月10日の教師節に、湖南同愛、同志平等権益促進会、南京天下公という3つのLGBT問題に関心を持つ公益団体が、112校の「211プロジェクト」大学(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学のこと。現在112大学ある)の学長に対して、公開書簡を送った。その内容は、性的指向と性別身分にもとづく学校でのいじめがあることや、大学の教科書が異性愛の視点で作成されており、4割以上の教科書が同性愛を疾病として扱っていることを指摘して、以下のようなことを求めるものだった。
・セクシュアルマイノリティを差別するような教学内容が存在しているか否かを入念に見て、積極的に改めること。
・教師に性別多元課程の開設を奨励すること。
・同性愛の学生が社団の設立を申請したとき、承認すること
・同性愛の学生がいじめにあったとき、その権益を保障するとともに心理的サポートをすること(5)

2015年3月 中山大学の学生ら、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して教科書の是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前で抗議活動

3月19日、中山大学の学生11名が、国家新聞出版広電総局(国家ニュース出版ラジオテレビ総局。中国のメディアを統括している)と広東省教育庁に、「教科書の同性愛に対する誤りと汚名をきせる描写の内容に関する公開の通報の手紙」を出した。そのうち5名は、広東省教育庁の前で、各自の手にホモフォビア教材に反対する文言を書いたボードを持って宣伝活動をおこなった(6)

この書簡には、自分は同性愛者だが、同性が好きな気持ちについてインターネットだけでなく、図書館の書籍でも調べてみたが、図書館に所蔵されていた、広東高等教育出版社の『心理健康課程』(2003年)は、第一節第三章の「よくある精神疾患とその対応」で、「性心理障害の類型」の一つとして「同性愛」を挙げていたこと、他の数十冊の本も、大多数は誤ったものや汚名を着せる内容のものであったことが述べている。

とくに広東高等教育出版社が出版した心理学や心理的健康についての教材はほとんどすべて同性愛に対して汚名を着せる記述があることや、『心理健康課程』は、2008年に再版されたものも、2003年に出版された内容と何ら変わっていないこと、2013年に出版された『諮詢心理学』では、同性愛を障害とみなしているだけでなく、どのように同性愛を治療するかとして、電気的刺激などの方法で同姓愛の行為に嫌悪感を覚えさせて性的指向を変えることなどが書いてあることを訴えている。

この書簡は、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して、以下のことを求めている。

1. 国家新聞出版広電総局は「図書の質管理条例」に依拠して、全国的範囲で(大学であるか小中学であるかを問わず)教科書・教科書補助書に対して、図書の質を検査し、教科書の中に同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容が含まれる状況について、全社会に公表すること。また、そうした誤りを含んでいる教科書の問題について、出版社に対して、できるだけ早くすべて回収するように要求すること。

2.広東高等教育出版社の業務主管機関と主宰機関である広東省教育庁と広東省教育研究院は、管理・監督の職能を履行して、通報があった書籍とその出版者に対するに対して具体的な処理の意見を出すべきである。

3.広東高等教育出版社は、さまざまな教材・教育指導用書籍・教科書補助読み物を出版する教育専門の出版者であるのに、多くの教科書に誤った/汚名を着せる内容がある。「図書の質管理条例」第11条にもとづいて、通報者と全社会に対して、その内部に設立した図書の質の管理機構の状況、図書の質の管理制度および以上の教材出版過程における実施状況の記録を公表することを要求すべきである。もし質に関する責任者とメカニズムが欠けているならば、新聞出版機構と主管単位は厳重に処罰すること。

4. 広東高等教育出版社はできるだけ早く通報のあった教科書を全部回収して、メディアでお詫びを公表して、「内容を訂正する声明」を発表して、誤った教科書がもたらしたマイナスの影響をなくすよう要求する。

5.広東省教育庁は、管轄区内のすべての主管する出版社に書籍の中の誤った、汚名を着せるような状況について自らチェックして、誤った書籍を回収するよう求めるべきである。このほか、広東省の各レベルの図書館・学校図書館に、管内の心理学・教育学・社会学・医学・精神病学・心理健康教育・性教育など同性愛に関わる多くの科目の書籍の内容について、全面的に自らチェックし、誤った/汚名を着せる内容の書籍を撤去するように求めるべきである(7)

この通報をした1人の秋白さんは、「私が図書館で手当たりしだいに4、5冊本をめくってみたら、『変態心理学』『心理健康課程』『諮詢心理学』には、同性愛に対する誤った記述がありましたが、これらの本は広東高等教育出版社が出版した教材でした。私は父母や学友がこうした教材を見て、その影響を受けないか本当に心配になりました。このことが、私がなぜ広東高等教育出版社を通報する決心をした理由です」と述べた。

この通報と宣伝活動も、さまざまなメディアに掲載された(8)

3月~4月 国家新聞出版広電総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社からはきちんとした回答なし

3月23日、国家新聞出版広電総局の陳情部門の主任から秋白さんのところに電話があり、「通報の手紙は受け取って、内容も見た。あなた方が通報しているこの問題は私たちメディア出版総局の管轄の範囲ではない」「教材の内容の質の問題はわれわれとは関係がない」という理由で通報の手紙はお返しすると述べた。秋白さんは、それに対して、どこの機関が教材の出版に責任を持っているかを知らせることを求めるとともに、法律の規定にもとづいて、書面での回答を求めたが(*)、いずれも拒否された(9)

(*)「信訪(来信来訪の意。陳情)条例」第21条には、行政機関は陳情事項を受け取った後、その場で回答できない場合は、陳情事項を受け取った日から15日以内に書面で陳情人に告知しなければならない、とある。

そのしばらく後、広東省教育庁から、広東高等教育研究院に転送して問題を研究させるというも回答があった。ただし、その後、何の音沙汰もない。

そうしたとき、秋白さんは、家でテレビを見ていたとき、張国栄をしのぶニュースになり、母親が「張国栄はうつ病だったということだ、本当に惜しい」と言ったので、秋白さんは、母親の同性愛に対する態度を探ろうと思って、「彼にはボーフレンドがいたから、世俗的な偏見の目で見られて、心理的なプレッシャーも大きかったんだ」と言ったところ、母親は「飛び降り自殺するのも無理はない。同性愛は病気だから」と言ったので、秋白さんは、横面を殴られたようなショックを受けた(10)

こうした現実があるのに、広電総局が何もしないことに、秋白さんは救いのなさと前途の長さを感じていたこところに、秋白さんは、《ビッグ・ヒーロー・シックス》の登場人物で、人の心と体を癒すケア・ロボットであるベイマックスの動画を見て、秋白さんは癒された。秋白さんは、ベイマックスに精神的に支えられながら、ベイマックスと自分がいっしょに教科書の問題を訴えるというアクションを思いついて、ベイマックスの服装を買う費用とベイマックスに扮する人を募集した。

4月18日、秋白さんは、広東高等教育出版社から書面での回答を受け取った。しかし、その回答は、教材の中になぜ同性愛を入れたということと、入れた章・節の内容についてであり、秋白さんたちが問うた問題については書かれていなかった。さらに、回答の中には、「同性愛の青少年は、思春期に感情・性などについて心理的な苦慮、憂鬱などを感じるので、『同性愛患者』という用語は合理的だ」とも書いてあった。秋白さんは、「このような回答は同性愛者たちに対する二次加害であり、すべての学生が科学的知識を得る権利に対する侵害でもある」と考えた。

4月 中山大学の学生ら、広東省教育庁前で同庁が書簡を転送したことは評価するアピールをし、同庁職員と会談

秋白さんは、広東高等教育出版社からの回答の内容には失望したけれども、この手紙を受け取って、ほんとうに感激して、目が涙でいっぱいになったという。自分の訴えが正視されたと感じたからだ。秋白さんは、「これは、この間の出来事のなかで、ただ一つ意外で、満足できたことだった」、「そのころは絶望してしまいそうだったので、最後の一日に出版社から回答を受け取れるとは思っていなかったし、広東省教育庁が転送するという処理をするとは思っていなかった。彼らが通報を正視し、実務的に処理したことをほめたい!」と言う。

4月29日、広東省教育庁前で、秋白さんたち5人は、同庁に対して、「積極的にフィードバックし、実際に処理した」と書かれた錦の旗を持ち、親指を立てたマークのボードを掲げて、教育庁を讃えた。もちろんそれだけでなく、「学生の声に対して関心を持ち続けてほしい」「広東高等教育出版社は、教材で学生を害するな」といった要求を書いたボードを持った人もいた。「ベイマックス」の扮装をした人もいた。

現場では、教育庁の陳情事務局の責任者が秋白さんを出迎え、錦の旗を受け取って秋白さんを陳情室に招き入れた。秋白さんは、広東高等教育出版社の回答についての意見書を渡して、出版社は問われたことに答えず、問題をすり替えていると述べ、広東省教育庁が引き続きこの問題に関心を持つよう訴えた。責任者は、これは自分たちの職責の内のことだからフォローすると述べ、秋白さんにこの意見書を出版社には渡したかどうかといったことを尋ねた(11)

5月~7月 秋白、同性愛蔑視の記述が多い広東高等教育出版社を広州市天河区法院(次いで広州市中級法院)に訴えたが、受理されず

5月12日、中山大学の女子学生・秋白は、ほとんどの教材に同性愛蔑視の記述があった広東高等教育出版社を「ホモフォビアの教材は名誉権を侵害している」として、広州市天河区人民法院に訴えた。しかし、5月25日、同法院は、「出版社が上述の書籍を発行する行為と告訴人とは法律上直接の利害関係はなく、告訴人は上述の書籍が直接あるいは間接に利益を損なったことを立証する証拠を提供せずに、訴訟を起こしたのは、不当であり、受理すべきではない」と回答した(12)

そこで、秋白は、広州市中級人民法院に控訴した。しかし、いっこうに返事がないので、7月29日、同法院の陳情部門に行って、陳情をした。秋白と学友たちは、法院の前で「『ホモフォビア』の教材を訴えたことを無視された。『大胆』にも天河法院は審理せず決めた。中級法院が審理するようお願いする」というプラカードを掲げた。3人は、レインボーの目隠しをすることによって、同性愛者たちが平等な教育権を無視されている無力感を象徴させた。法院の職員は「すでにこの案件の処理の結果は、天河法院と秋白に郵送した」と言ったが、秋白は何も受け取っていなかった(13)

5月~8月 秋白、教育部に、大学の教材に対する監督措置について情報公開申請するも回答なし。そこで、回答がないことを行政不作為で北京第一中級人民法院に訴え、受理される

5月14日、秋白は、教育部に対して、大学が使用している教材に対する監督の職能と大学が誤った非科学的な教材を使用していることについてのどのような監督措置をとっているかについて情報公開申請をおこなった。政府情報公開条例の規定によると、教育部は申請を受け取った日から15日以内に回答をしなければならないが、その法定の期限内に回答がなかった。

そこで秋白は、広州市天河区法院に対して、教育部を行政不作為で訴えたが、同法院は受理しなかった。秋白は、広州市中級人民法院に控訴したが、結果は同じだった。そこで、8月14日、北京第一中級人民法院に訴えたところ、17日に受理された(14)。このことはさまさまざまなメディアで報道された(15)。『南方都市報』は、「女子学生が教育部を訴えた:訴訟の権利、公共的精神」という社説(16)を出したほどである。

8月 中山大学、秋白に訴訟をやめさせるよう圧力。それに対するLGBT諸団体の抗議

しかし、訴訟が受理された翌日から、大学側は、秋白を繰り返し呼び出して、圧力をかけた。「卒業させないかもしれない」と言って脅したともいう(この点については、大学側は否定しているが(17))。また、彼女の父母にも連絡して、秋白に教育部に「たてつく」のを止めさせようとした。秋白は自分が同性愛者であることを父母にはずっと言っていなかったのに、大学側は、秋白さんが同性愛者であることも言ったため、家族との間にも亀裂が生じて、秋白さんは、大学と家族の両方から圧力を受ける形になっている(18)

中山大学の卒業式でレインボーフラッグをまとって登壇してガッツポーズをしたことで有名になった万青さんは、学生の思想政治教育や日常管理などをおこなう「輔導員」制度を批判した。万さんは、「輔導員は教師と幹部の二重の身分を持っている」が、「行政訴訟法」は、「行政機関とその職員は人民法院が行政事件を受理することに介入・阻害してはならない」と規定しているので、輔導員が職務を利用して秋白を脅して訴訟をやめさせることは、司法に対する干渉であると述べている(19)

また、フェミニストとしてさまざまな活動に参加してきた卡楽さんは、中山大学は開放的で寛容なイメージを持たれているが、けっしてそうではないことを指摘した。卡さんは、中山大学が清掃労働者の争議を支援した学生を卒業させないと何度も脅したということを述べている。卡さんは、「同性愛はデリケートな言葉で、口に出せないし、話せない」という状況を述べ、ある女性が中国直同連盟(2011年に設立された異性愛者が同性愛者に連帯し、支援する組織)の創設者の梁文輝を取材したときも、宣伝機関に、「もし保護者が我々の大学に同性愛者がいると知ったら、どうするのか?」と言われたことを紹介している。卡さんによると、「皮肉なことに、当時のニュースサイトのトップページで特集される人物が、同性愛者であることをカミングアウトできていない」ということなのだ(20)

以下の点を中山大学に要求する署名運動も起きた。
 1.秋白が、教科書が同性愛に汚名を着せていることに反対する行動と教育部を訴えたことを支持せよ。
 2.中山大学は秋白に対するハラスメントをストップし、自らがおこなった秋白のプライバシー権を侵犯すること胃について謝罪せよ。(21)

また、LGBT12団体(女友組、江西在一起[いっしょに]文化発展センター、同性愛者の家族と友人の会、長沙同愛ネットワーク、楽窩拉拉小組、同城青少年リソースセンター、LGBT平等権益促進会、Les+、武漢同行、西安plus青年空間、北京紀安徳センター、上海プライドフェスティバル)は、中山大学の輔導員の行為は、司法の公正を妨害し、同性愛を差別し、職務を利用して学生を支配し傷つけるものとして譴責した。12団体は、中山大学の学長と大学指導部に以下のことを求めた。

 1.独立したグループを設立して、学生である秋白の人身の安全を守り、秋白の学業の正常な進行を保障すること。この独立したグループは、LGBTに対して友好的な教師、LGBT民間団体、学校指導部側が共同で構成すること。
 2.二度と学生個人のプライバシーを暴露しないことを承諾し、学生が法律にもとづいて公民の権利及び義務を実践する公民活動を支持すること。
 3.二度と同性愛を差別した誤った教材を使わないことを承諾し、多元的な性別に関する課程をおこない、大学でのLGBTの学生の活動を支持すること。
 4.輔導員・教職員・校務員全員に多元的性別の知識と非暴力的コミュニケーションの知識を学ばせること(22)

3月~ 他の大学でも自校の図書館に所蔵された教科書をチェックして是正を訴える動き

他大学でもいくつかの動きが起きた。

自らの大学の図書館にある教科書を、同城青少年資源センターとほぼ同様の観点から調査したLGBTグループもある。

(1)華中科技大学

3月7日、HGP(hust gay pride)華中科技同志プライド公益グループ[小組]は、華中科技大学(湖北省武漢市にある大学)主校区の図書館にある115冊の『心理健康教育』と『変態心理学』の教科書について調査した。

その結果、『心理健康教育』102冊のうち、32冊(31.3%)が同性愛を心理障害と性変態としており、一部は同性愛の「治療」について言っていること、58冊(56.8%)が同性愛に関する正しい心理知識をまったく掲載していないことがわかった。14冊(13%)には同性愛についての知識が書いてあるが、そのうち7冊だけが詳しく正確に紹介しており、残りの7冊は簡単に述べているだけであることもわかった。『変態心理学』13冊については、内容が客観的なものが6冊、明らかに誤りや偏見があるものが3冊、同性愛について述べていないのが4冊だった(23)

4月1日、HGP(hust gay pride)華中科技同志プライド公益グループは、西十二門の前で、突然、顔を白く塗った5人が、レインボーフラッグとプラカードを使って、パフォーマンスアートもおこなった(24)

また、彼/彼女らは、華中科技大学図書館長に向けて、同性愛を汚名化している教科書を撤去することや同性愛について科学的で客観的な教材を増やすことを求める署名運動をおこなった。この署名には、華中科技大学から43名、武漢理工大学から15名、武漢大学から5名、中南民族大学から3名、華中農業大学から2名、他に63大学の学生がネット上に名前を出して賛同している(25)

(2)華中師範大学

4月9日、CLS公益グループは、華中師範大学の図書館内の『変態心理学』の教科書19冊と『心理健康教育』教科書39冊の調査報告を出した。

この調査報告も、同城青少年資源センターの調査報告とほぼ同様の知見を得てているほか、ある教科書は、男性同性愛者について、「恥ずかしそうに歩き、話し方や立ち居振る舞いは少女のようで、ふだんは女性の仕事をしたがる」などと性的指向とジェンダー気質、性役割とをイコールで結んでいたりとか、別の教科書では、同性愛の原因として「父母の一致性のなさ、誘惑、異性に対する恐怖、機会のなさ」を挙げるなど、根拠のないことを言ったりしていることを指摘している。

この調査報告でも、社会の各界や教員、大学に対して同じ訴えをしている(26)

3月~ 全国100カ所の師範大学や北京の30か所の重点大学に使用教材について情報公開申請

また、大学に同性愛などに関する使用教材について情報公開申請した学生たちもいる。

(1)3月 長沙の同愛ネットワークの2人の学生が、全国100カ所の師範大学に対して教材についての情報公開申請

3月23日、長沙の同愛ネットワークの2人の大学生は、全国100カ所の師範大学に対して、「教材の使用基準と同性愛などに関する教材のデータ」についての情報公開を求める書簡を書留で送った。師範大学は教員を養成する大学なので、とくに同性愛など、さまざまな性的指向の人々に対して慎重に、客観的に対応する必要があるからだ(27)

(2)7月 北京の大学生2人も、北京の30か所の重点大学に情報公開申請

2015年7月3日、北京の2人の大学生が、北京の30か所の重点大学に「大学の関連教材の使用基準および同性愛にかかわる内容の教材の情報を求める」などの内容の情報公開申請の書簡を送った。

2人は、3月に同愛ネットワークの2人の大学生が全国100カ所の師範大学に対しての2人の大学生が全国の100カ所の師範大学に情報公開書簡を送ったことから、北京の大学の教材の中にも同性愛を汚名化している内容があるかもしれないと思ったのだ。2人は、「もし同性愛を汚名化している教材が存在しているのなら、新学期には使用を停止、改正、あるいは選購、新しい同性愛者を科学的に扱っている教材に改めてほしい」と述べている(28)

以上、さまざまな地方で各種の方法で運動がおこなわれていることがわかる。マスメディアもかなり注目している。しかし、行政や裁判所の壁は厚く、なかなか成果は上がっていない。そうしたなか、中山大学の秋白さんが粘り強い活動で、教育部が回答しないというごく初歩的な点についてではあるが、裁判への扉を開いたことは注目される。そうした活動にさえ、大学当局は圧力をかけているのだが、それを批判するLGBT諸団体の運動もあり、今後どのように道を切り開いていくのか、目が離せない。

(1)淡蓝5•17系列活动:揭露你身边的恐同教材」淡蓝网2013年5月25日。
(2)現在はダウンロード不可能のようだが、そのポイントがわかりやすく、一只死拉拉 GLCAC「盘点“毒“教材│错误一箩筐」(2015年4月16日)に記述されている。
(3)【教科书同性恋污名调查】中外专家联合呼吁对“恐同”教材说不!」同城青少年资源中心的博客2014年8月28日。
(4)广州日报「同性恋是一种病?四成教科书这么说」、信息时报「同性恋是病?教科书错了」、les168「教科书居然将同性恋描写为病态」、凤凰卫视「内地有高校教材称同性恋是病惹争议」、中央广播电视台华夏之声「国内外专家齐聚广州呼吁高校教材停止同性恋污名化」、新浪教育「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、NGO发展交流网「关注平等教育机会对教科书同志污名化说不」、网易教育「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、人民网教育频道「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、中商情报网「調查:高校四成教科書誤認同性戀為病態專家呼吁快更改」、南报网「同性恋是病?教科书错了」、21CN新闻「同性恋是一种病?四成教科书这么说」、中国社会科学网「调查称高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、央广网「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、女权之声「中外专家联合对教科书同志污名化说不!」、lesplus拉拉杂志「中外专家联合对教科书同志污名化说不!」、「超四成国内教科书仍认定同性恋为病态 同性恋群体叫板“恐同”教材」『南方都市报』2014年11月26日。
(5)同性恋组织给全国112所大学校长写信 呼吁关注校园同志群体」同爱网络的微博2014年9月10日 10:25。
(6)10余中大学子抗议恐同“毒”教材,广东高等教育出版社遭举报」北京同志中心2015年3月23日。
(7) DC339徐可证的微博「关于教科书中针对同性恋的错误和污名描述内容的 公开举报信」2015年3月20日。ただし、この書簡は個人名で書かれているので、提出したものと若干異なるのかもしれない。
(8)中山大学学生举报恐同教材,央视网、人民网多家主流媒体转载新闻」北京同志中心2015年3月23日。
(9)【“毒教材”跟进爆料】国家新闻出版总局:教科书对同性恋污名化跟我有关系吗」同城青少年资源中心的博客2015年4月4日。
(10)同-城青少年资源中心的微博“毒”教材│未等到的回复,筹个“大白”陪我上北京求抱抱4月16日 12:56
(11)以上は、陈秋颜「广东教育厅务实回应举报,暖男“大白”陪学子上门点赞」北京同志中心的微博2015年5月1日。秋白的自由野「 THANK YOU│感动筹“大白”上北京的一路上有你」2015年4月19日も参照。
(12)秋白「教材“恐同”|学生起诉出版社 法院竟不予立案?」秋白的自由野2015年6月1日、「女大学生状告教科书诬蔑同性恋 反应称无利害关系」LGBT权促会2015年6月1日。
(13)起诉“恐同”教材遭无视 学生信访中院求说“法”」秋白的自由野2015年7月30日。
(14)高校教材“污名”同性恋:教育部拒公开内情,女生起诉获立案」同志权益运动的微博2015年8月18日 10:55。
(15)教材若出错由谁来管」人民网2015年8月19日(来源:广州日报)。「【#抗议“毒”教材# 媒体齐关注】向站出来的人致敬」同城青少年资源中心的博客2015年8月20日。
(16)[社论]女生状告教育部:诉讼的权利,公共的精神」『南方都市报』2015年8月22日。
(17)铁瑾「中大女生诉教育部“教材歧视同性恋”,学校否认以不毕业施压」捜狐新闻2015年8月21日(来源:弧度)。
(18)秋白来信| 那些爱与自由」同志平等权益促进会的微博2015年8月26日 22:28など。
(19)羊驼青的微博 《学生天然有免于被辅导员“侵扰”的自由》8月21日 18:03。
(20)卡乐潼的微博「中国大学校园并没那么开放包容」2015年8月21日19:13。
(21)参与联署支持起诉教育部的女同性恋秋白! 请中大向秋白道歉!」食品药品安全的博客2015年8月26日。
(22)致中山大学校长公开信:保障校园同志学生免受歧视」同志平等权益促进会的微博2015年8月28日。
(23) HGP小组「【抵制污名化教科书】华中科技大学同性恋污名化教材调查报告(完整版)」2015年3月24日。
(24) HGP公益小组的微博【爱是平等,不是疾病】4月1日 13:26
(25)【联名签署】华科学子恳请华中科技大学图书馆下架同性恋污名化教科书」HGP小组2015年4月26日。
(26) CLS公益小组「【抵制污名化教科书】华师图书馆教科书同性恋污名化调查报告」2015年4月9日 21:48。
(27)@lusunk「国家新闻出版总局:教科书对同性恋污名化“与我无关”」NGOCN2015年3月31日。
(28)北京高校教材恐同吗? 消息公开一下!」RAINBOW彩虹律师团的微博2015年7月4日 08:18。

職場での性的指向による差別の調査報告、企業への提言、中国初の性的指向による解雇裁判

〈目次〉
一、愛白文化教育センター「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」
二、広州のレズビアンが、500企業のCEOにセクシュアル・マイノリティ差別を禁止する企業憲章の制定を求める手紙
三、中国初の性的指向による差別解雇裁判

中国においても、セクシュアル・マイノリティの人々は職場でも、さまざまな差別にさらされています。最近、そうした差別について調査をして、企業に提言をしたり、同性愛者であるために解雇された人が裁判を起こしたりする動きがありました。それらをご紹介します。

一、愛白文化教育センター「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」

2013年の国際反ホモフォビアデー(5月17日)に、愛白文化教育センター(もともとはゲイサイトだったが、現在はLGBTの人権問題に取り組む民間団体)が、社商賢匯(community Business)(香港)、商道縦横(以上2つは、企業の社会的責任問題に取り組む非営利機構)、「同性愛者の親と友人の会」(同性恋亲友会(PFLAG))、飛賛ネット(ゲイのコミュニティサイト)、拉拉風向標(レズビアンのためのネットラジオ)とともにおこなった、「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」(1)を発表しました。この調査をおこなった期間は、2013年1月3日~4月3日の3か月間で、17の省・市・自治区から2161の有効回答が得られました(ただし、トランスジェンダーで異性愛の人や、16歳以下または60歳以上の人、農村の人、香港・台湾からの訪問者の回答は、サンプル数が少なすぎるか、調査の条件に合わないという理由で省かれています)。

回答者の特徴は、以下のとおりでした。
 ・居住地は、広東省・北京市・上海市が、それぞれ17%、14%、10%で、他の省・市は2~5%程度。
 ・生物学的性別は、男性が63.44%、女性が36.56%で、性自認は、男性が65.66%、女性が32.99%。
 ・性的指向は、85.89%が同性愛で、14.11%がバイセクシュアル。
 ・年齢は、16歳~44歳が98.66%、45歳~59歳が1.34%。
 ・学歴は、75.71%が大学卒で、13.56%が修士以上、8.7%が高卒で、中卒・小卒は2.04%。

主な質問の結果は、以下のとおりでした。

1.あなたは職場で自分の性的指向あるいは性自認をどれほど公開していますか?
 ・完全に公開している――6.29%
 ・親しい友だちあるいは一部の同僚にだけ公開している――45.63%
 ・上司にだけ公開している――0.46%
 ・全く公開していない――47.62%

2.(完全には公開していない人に対して)もしあなたが仕事の中で自分の性的指向を完全に公開していないなら、その理由は? (これ以後の質問は、複数選択可)
 ・他人にあれこれ言われるのが怖い、またはかつてあれこれ言われたから――69.4%
 ・同僚が性的指向のために自分を遠ざけるのが怖いから――60.9%
 ・個人のキャリアの発展に影響し、昇進の機会を失うから――51.71%
 ・性的指向が自分の家族に知られるのが怖いから――43.3%
 ・解雇されるのが怖いから――22.49%
 ・同性の従業員のセクハラに遭うのが怖いから――6.82%

4.もしあなたが自分の性的指向あるいは性自認のために、仕事の中で不公平な待遇を受けたことがあるなら、それは具体的に言えば、どのようなものでしたか?
 ・言語による侮辱と嘲笑――38.5%
 ・しかるべき尊重をされなかった――30.45%
 ・仕事の中で意地悪をされた――14.53%
 ・昇進の機会を失った――12.86%
 ・会社のグループ活動から排斥された――11.99%
 ・採用を拒否された――7.59%
 ・解雇された、または離職を要求された――6.71%
 ・研修の機会を失った――6.11%
 ・セクシュアルハラスメント――2.82%
 ・暴力、いじめ――1.3%
(・ない――39.94%)

5.以下の状況があなたの仕事の場で起きたことがありますか?
 ・経営者、同僚がLGBTなどセクシュアル・マイノリティをからかったり、侮辱したり、失礼なことを言ったりした――53.63%
 ・会社の中の他の同僚の性的指向、性自認に対して言葉で攻撃した――32.35%
 ・LGBTの同僚がいじめにあった――5.83%
 ・LGBTの同僚がセクシュアルハラスメントにあった――2.41%
 ・LGBTの同僚が暴力をふるわれた――1.2%
(・以上のことはなかった――33.09%)

7.労働環境がLGBTに対して友好的でなかったことによって、あなたに以下の状況が発生しましたか?
 ・本当の自分を隠すために精力と時間を費やさなければならなかった――45.07%
 ・出席することを避けた活動や接触することを避けた人がいる――34.34%
 ・仕事のグループや経営者・同僚と率直な交流ができない――27.58%
 ・離職を考えたことがある――21.01%
 ・全力で仕事に打ち込むことができない――18.14%
 ・仕事に熱心になれなくて、仕事の効率が低下した――13.37%

この調査報告は、以上のような結果について、「中国の企業の中では、大多数のLGBTの従業員は、仕事の場で自分の性的指向/性自認を完全には公開しておらず、多くの人は、さまざまな原因で本当の自分を隠して別の『身分』で生活しなければならない。このことは、さまざまな原因によってもたらされているが、その重要な原因の一つは、包容的で友好的な仕事の環境や多元性を励ますような企業文化がないことである」として、多元的な企業文化は、従業員の仕事の効率を上げたり、従業員の招聘や保持にとっても有利であったりすると述べ、「企業の行動の建議指南」として、以下の点を挙げました。

 1.性的指向とジェンダーによる差別に反対し、LGBTの従業員の平等な権益を保障する企業の憲章を制定する。
 2.会社の従業員にLGBTに関する知識の研修を提供し、LGBTの話題とグループに正しく対応できるようにする。
 3.責任者を指定するか、専門のグループを作るかして、企業内部のLGBTに関する実務(たとえば、セクシュアル・マイノリティが、不公平な待遇やフレンドリーでない環境について訴えるのに対処すること)の管理に責任を持たせる。
 4.LGBTのパートナーに相応の福利を提供する。現在、アメリカの大多数の多国籍企業(IBM、マイクロソフト、グーグル、ボーイング、コカコーラ、ディズニーなど)は、そのLGBTの従業員とそのパートナーにも福利を提供している。
 5.寛容で多様な企業文化を唱導・創造する。LGBTの従業員の就業に対して、平等な福利と昇進の機会を含めた、平等な機会を与えること。
 6.LGBTのNGOが差別に反対する活動をするのをサポートし、それによって会社の取引先や事業パートナーがLGBTに対する理解を深めると同時に、企業の内部文化と外部イメージを高めることができるようにする。

二、広州のレズビアンが、500企業のCEOにセクシュアル・マイノリティ差別を禁止する企業憲章の制定を求める手紙を送る

2014年9月23日には、広州のレズビアンの曾家琪さんが、全国トップ500の企業のCEOに対して、トップ企業として性的指向とジェンダーによる差別に反対し、セクシュアル・マイノリティにフレンドリーで多元的な職場環境を創造するような憲章を制定するように求める手紙を送りました。

曾家琪さんは、仕事に就いている2年間の間に、さまざまな面接試験を受けたり、企業で仕事をしたりしましたが、その中で、不愉快な質問をされたり、同僚とのつきあいがうまくいかなかったり、伝統的な異性愛の恋愛観・結婚観のために抑圧を受けたりしたことがよくありました。

その後、曾さんが民間団体の活動に参加して、多くのLGBTの人と接触したところ、セクシュアル・マイノリティが職場で差別やハラスメントなど、さまざまな辛い目にあっていることがわかりました。

たとえば、あるレズビアンは、面接試験のとき、短髪で背広を着ていたために、そのことばかり質問されて、仕事にとって肝心の専門的素養や能力の問題については、まったく尋ねられなかったそうです。また、同僚に自分はレズビアンだとカミングアウトしても、男の同僚のさまざまなハラスメントにあう事例も多いそうです。

自分と他の人に経験に多くの共通点があることを知った曾さんは、半月余りの時間をかけて中国のトップ500の企業の住所を調べ、手紙を書き、自分のお金を出して郵送しました(2)

「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」によると、カミングアウト自体はゲイよりもレズビアンのほうが少し容易なのですが、曾さんの友人たちの話からは、レズビアンにはゲイにない困難もあることがわかります。


三、中国初の性的指向による解雇裁判

2014年11月26日、穆易さん(仮名。報道の際には「阿易」という仮名も使っている記事もありますが、以下、「穆易」で統一します)は、彼を同性愛者であるために解雇した深圳市装修芸装飾設計有限公司(以下、「会社」と略す)を、深圳市南山区人民法院に訴えました。

10月29日、深圳の街頭で2人の男性同性愛者がけんかをしたため、やじ馬が集まりました。その場面を何者かが動画で撮影してインターネットに掲載したため、多くの人がそれを見ました。その1人が穆さんだったのです。

11月8日、会社は、穆さんが社章と制服を身につける規律を守らなかったことと「穆さんのサービスの態度がよくない」という訴えがあったことを理由に、穆さんを解雇しました。しかし、その後、穆さんが会社と交渉する中で、人事責任者の李某さんが、ビデオで穆さんが同性愛者であることが暴露されたことについて、「中国社会は封建的だから、同僚や取引先に与える印象を考慮しなければならない」と言いました。

穆さんは、8月に入社して以来、販売計画の責任者として頑張って働き、定時に退勤することも少なく、3週連続して休みがなくても文句も言わずに働いてきました。穆さんは、「ビデオが自分の個人のプライバシーを暴露したことによって、以前の友人や同僚が電話をかけてきてあれこれ言われて辛かったところに、解雇までされて、精神が崩壊しそうでした。」「外出することも、電話に出ることもできず、仕事も失ってしまいました」と語っています。

穆さんは、「不運だったのだ、と諦めることはできません。自分の権利を守るために立ち上がらなければなりません。私は何も間違ったことはしていないので、やすやすと頭は下げられません」という気持ちから、訴訟をすることに決め、劉瀟虎さんに弁護士をお願いしました。劉瀟虎弁護士は、中国初の遺伝子差別(サラセミア[地中海貧血])による就職差別事件や福建初のB型肝炎差別事件の弁護士をつとめた人です。

穆さんは、その後、設計師の仕事を見つけることはできましたが、そこでは自分の性的指向は言っていません。新しい会社は元の会社よりも待遇はいいのですが、「仕事はまた探せても、差別は容認できません」という気持ちで訴訟に踏み決ったのです。

11月26日に提出した訴状は、「性的指向の違いは、社会にとっては、人類の多様性の具体的な現れであり、個人にとっては、平等で独立した個人の特質である。それは人の品行や能力を判断する基準ではなく、仕事の能力とは何も関係がない個人のプライバシーである。一人一人が性的指向によって差別されないことは、人格の尊厳にとって必須の事項であり、法律が有している正義の最低ラインでもある」と述べ、「被告は原告の平等な就業権を侵犯したので、被告に謝罪と5万元の精神的損害賠償(慰謝料)を請求する」というものでした(3)

この裁判は、中国初の性的指向による解雇裁判であるとともに、中国初の性的指向による雇用差別裁判でもあります。

2015年1月22日、公開での審理がおこなわれました。裁判所前には、支援者が20人近く集まり、「最初の同性愛就業差別裁判」、「職場の性的指向差別反対」などと書かれたボードを掲げてアピールをしました。「同性愛者の家族と友人の会」の董婉婉さんは、「同性愛の子どもに平等な就業権が必要だ」と書かれたボードを持って立ちました。同会の執行主任の阿強さんは、「穆さんの境遇を知って、多くの同性愛者はとても怒るとともに、穆さんが立ち上がったことはすばらしいと思ったので、自発的にみんなで声援を送っているのです」と述べました(4)

支援者が裁判を傍聴しようとしたところ、最初、法廷の保安の人に傍聴を断られたり、その後も、別の保安の責任者に、南山法院の本部に行って傍聴証をもらってくるように言われたり、入廷のときに、持ち物をすべて預けるように言われたり(本当は「公民法廷訊問傍聴規定」では、筆記用具などの持ち込みは可能だということです)という紆余曲折がありました。傍聴席も14席しかなく、原告側支援者ですぐにいっぱいになりました。

裁判では、穆さん(原告)側の弁護士が訴状の内容を説明したところ、会社(被告)側弁護士は、原告と会社との労働関係すら否認し、性的指向による解雇ではないと述べ、公の謝罪や精神的損害賠償には法律的根拠がないと主張しました。

原告側弁護士は、会社の印鑑が押された穆さんの従業員章などを示すとともに、重要な証拠として、原告と会社の人事責任者の李さんとの電話の記録を提出しました。その記録は10数分にわたるもので、会社の幹部たちが穆さんの性的指向を知った後、会社に影響があると考えて、会議を開き、解雇するかどうかを議論したこと、解雇の主な理由は同性愛であることなどが語られていました。録音には、人事責任者の李さんが、「同性愛は[解雇の]一つの理由である。同性愛を受け入れることができる人もいるけれど、私たちの会社の同僚と取引先には受け入れられない。」「あちこちで私たちの会社には同性愛がいると言われており、気持ちが悪い」などといった差別的発言をしていることが収録されていました。

被告側弁護士は、原告側が提出した録音は、当事者の同意なしに録音されたものなので、合法ではないから、証拠にはできないと主張しました。

原告側弁護士は、それに対して、録音中では、李さんは被告の会社の人事責任者として、解雇の理由を話しているのであって、これは仕事の範囲内であり、個人のプライバシーとは関係がないから、合法的で合理的な証拠であると主張しました(5)

2時間余りの審理のあと、裁判官は、日を選んで判決を下すと述べました。弁護士によると、3カ月以内に判決が下されるとのことです。

劉瀟虎弁護士は、「これは典型的な就業差別であり、わが国の『憲法』と就業促進法の中の平等な就業と反差別の規定に違反しているのみならず、わが国が正式に批准したILOの『1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約』(第111号)の平等な就業の規定に違反しています。同性愛者全体の人数に比べて、実際に起きている裁判はきわめて少ないのですが、その原因は、社会全体の偏見によって、多くの人が自分の性的指向を言えなかったり、差別されたときに自分の権利を守ることができなかったりするためかもしれません」と語りました。

広州平機センター(2013年に設立された、障害者差別や戸籍などさざまな差別に反対するNGO)の代表の程淵さんは、「性的指向によって差別をされないということは、多くの国家の立法で保護されていますけれども、中国の法律には、まだこの点が立法に入っていないので、改善しなければなりません」と語りました(6)。この点に関しては、愛白文化教育センターが2014年10月に刊行した『中国大陸LGBTIの権利の政策回顧と社会実践』(7)も、「中国政府がそれぞれ1994年と2007年に公布した『労働法』『労働契約法』は、労働者の労働権を保障しており、女性・障害者・少数民族の労働権にはとくに注意を払っている。けれども、LGBTIの人々が十分な労働権の享受を保障する面については、中国の現実の政策と実践には空白がある。『労働法』第12条は、労働者は民族・人種・性別・宗教信仰によって差別されてはならないことを規定しているけれども、労働法は、性的指向や性自認など、その他の差別は禁止していない」と指摘しているところです。

広州で発行されている『南方都市報』『羊城晩報』も、この裁判についてかなり詳しく報じています(8)

愛白文化教育センターの「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」は、セクシュアル・マイノリティが置かれている状況が深刻な人権問題であることを明らかにしつつ、それが企業にとってもマイナスであることを述べたものでした。その一方で、企業の差別を問う裁判を起こし、それを支援する団体(主に「同性愛者の家族と友人の会」のようですが)もある。その両方の面から、中国のセクシュアル・マイノリティの人々は、職場を変えていこうとしているようです。

(1)中国語版「中国性少数群体(LGBT)职场环境在线调查报告(PDF)」2013年5月17日、英語版“Online Survey Report On The Work Environment For China’s LGBT Community ”(PDF)2013年9月1日。「中国性少数群体职场环境报告:男性出柜少 国企压力大」(爱白网2013年5月18日)に、結果の概要とグラフが掲載されています。この調査結果では、その他、国有企業で抑圧が強いこと、女性より男性のほうがカミングアウトが難しいこと、学歴が高いとカミングアウトが難しいこと、同性愛よりバイセクシュアルのほうがカミングアウトが難しいことなども明らかになっています。
(2)女同性恋者致信500强企业首席执行官 呼吁为性少数群体创造多元友好环境」中国彩虹媒体奖的博客2014年9月23日。
(3)以上は、@兔子走丢了「深圳小红帽事件后续:全国首例同性恋职场歧视案今起诉」NGO交流发展网2014年11月27日(訴状の冒頭と最後の写真あり)、「“被出柜”后又被炒鱿鱼,男同志起诉单位欲维权」同性恋亲友会2014年12月4日(@兔子走丢了の文章の内容と同一)。「小红帽事件另一同性恋主角遭辞 其诉公司歧视并索赔 全国首例同性恋职场歧视案件 开庭审理,同性恋公益机构庭外声援」(『晶报』2015年1月23日)、「“小红帽”红得发紫“小太阳”惨被辞退 百元哥事件另一男主角“被出柜”后被辞退,告公司侵犯平等就业权」(『南方都市报』2015年1月23日)に書かれている情報も加味。
(4)以上は、【中国性倾向职场歧视第一案】1月22日 18:34(写真あり)→[同じ記事]「中国性倾向职场歧视第一案今日庭审结束」淡藍公益2015年1月22日(写真あり)、「小红帽事件另一同性恋主角遭辞 其诉公司歧视并索赔 全国首例同性恋职场歧视案件 开庭审理,同性恋公益机构庭外声援」『晶报』2015年1月23日(写真あり)。董婉婉さんが単独で写っている写真は、同性恋亲友会的微博2015年1月22日 15:59
(5)以上は、「亲历中国性倾向职场歧视第一案庭审!」同性恋亲友会2015年1月28日。この記事によると、被告側弁護士は、以下のようなおかしな発言もして、原告側支援者に呆れられたようです。
・原告側弁護士が、差別は重大な社会問題だから法律によって処罰しなければならないと強調したのに対して、被告側の弁護士は、「社会問題は社会に解決させる」と言った。
・被告側弁護士が、「録音の証拠は人事の責任者のプライバシーに及んでいる」と言ったので、原告側弁護士が「どんなプライバシーに及んでいるのか」と尋ねたら、被告側弁護士は「それはこの事件とは関係ない」と言った。
・被告側弁護士が、2回、「同性愛と同性愛を宣伝することは別問題だ」と言ったので、原告側弁護士は、「それは、穆さんが同性愛を宣伝したから解雇されたという意味か?」と尋ねたら、被告側弁護士は「私はそのようには言っていない」と言った。
(6)以上は、【中国性倾向职场歧视第一案】1月22日 18:34(写真あり)→[同じ記事]「中国性倾向职场歧视第一案今日庭审结束」淡藍公益2015年1月22日(写真あり)。
(7)中国大陆LGBTI人群权利的政策回顾和社会实践(PDF)」(爱白文化教育中心 2014年10月)。
(8)“小红帽”红得发紫“小太阳”惨被辞退 百元哥事件另一男主角“被出柜”后被辞退,告公司侵犯平等就业权」『南方都市报』2015年1月23日、「“小红帽”事件男主角告公司歧视一审开庭 男子认为他是因暴露了同性恋才被辞退,但该公司辩称其为主动离职」『羊城晚报』2015年1月23日。

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 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
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