2017-04

マラソン大会への集団的参加や国際反ホモフォビアデーのサイクリングでLGBTをアピール――パレードはできなくとも、パレードのように

目次
はじめに
一 国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング
 1.北京などでの活動
 2.杭州での活動
二 マラソンに集団として参加 (レインボーマラソン)
 1.杭州での活動
 2.他の地区での活動
おわりに

はじめに

2012年11月、湖南省長沙市で、中国大陸初のLGBTパレード(同志游行)が2~30人でおこなわれた。2013年の国際反ホモフォビアデー(5月17日)(*)にも、同じ長沙市でパレードがおこなわれ、このときは約100人が14省から集まった。しかし、2013年のパレードの主催者の向小寒(仮名、ゲイ)は、警察の許可を得ずにデモをしたという理由で行政拘留12日に処せられた。翌2014年の国際反ホモフォビアデーにも、向はパレードを計画したが、事前に警察に呼ばれて圧力をかけられたため、レインボーフラッグを掲げてスローガンを叫びながら山道を行くイベントに変更せざるをえなかった(「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」「BLサイト弾圧に対する抗議のパフォーマンス、情報公開申請、声明など 」の四)。
(*)正確には、2009年からは「国際反ホモフォビア・トランスフォビアデー」となり、2015年からは「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアデー」となっているが、以下では「国際反ホモフォビアデー」と略させていただく。

これ以後、中国ではLGBTパレード(同志游行)と名付けたものはおこなわれていない。すなわち、LGBTの人々が街頭において集団で行進するする自由は封じ込められたように見える。

しかし、それに近いもの、ないしは代わりになるものとして、以下の2つがおこなわれている。

(1)国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング

これは、毎年、国際反ホモフォビアデーを記念して、5月17日前後の土曜日か日曜日に、集団で、反ホモフォビアを示すTシャツを着て、レインボーフラッグを持つなどして、スローガンを叫びながら、自転車に乗って、各地でホモフォビア反対のアピールや宣伝をする活動である。観光地を回る場合と、大学を回る場合とがある。

これは、2009年に北京でおこなわれたのが最初で、その後各地に広がっており、「レインボーサイクリング(彩虹騎行)」などと呼ばれている。

(2)国際マラソン大会の短距離のマラソンに集団的に参加してアピール(レインボーマラソン)

これは、マラソン大会、特にその非常に短距離のマラソンに集団として参加して、みんなで大きなレインボーフラッグを広げたり、各自がレインボーフラッグを持ったりしながら走る活動である。走りながらスローガンを叫ぶときもある。走っている間だけでなく、スタート地点やゴール地点でアピールすることや、レインボーフラッグやLGBTの権利をアピールする横断幕を掲げて選手を応援することにも力が入れられている。

これは、主に2011年から毎年11月の杭州国際マラソンでおこなわれている。ただし、他の国際マラソンでも見られ、「レインボー[プライド]マラソン(彩虹[驕傲]馬拉松)」などと呼ばれる。

レインボーサイクリングの場合は、途中で停車して資料の配布や対話が可能であるという利点がある。その一方、レインボーマラソンの場合は、多人数でレインボーフラッグを手に持って広げたまま運ぶなど、パレードと同様のことができるという利点がある。

ここでは、レインボーサイクリングとマラソンの両方を毎年おこなってきた杭州の事例を中心にご紹介する。ただし、レインボーサイクリングについては、杭州が最も早いわけでも大規模なわけでもないので、北京などの事例を先にご紹介する。

一 国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリング

1.北京などでの活動

・2009年・北京

本ブログでも当時紹介したが、2009年、北京で、16名の大学生が自転車隊を作って、国際反ホモフォビアデーの宣伝活動をした。彼らは、「同愛無国界(Love Knows No Border、同性愛に国境はない)」という字句が書かれた揃いのTシャツを身にまとい、レインボーフラッグを掲げて、北京の7カ所の大学を回った(本ブログの記事「中国各地で反ホモフォビア・トランスフォビア・デーの活動」)。

この活動のきっかけは、レズビアングループ「同語」のkarenさんが、「愛白」という中国のLGBT団体のロサンゼルスのセンターに実習に行ったとき、「AIDS Life Cycle」という、毎年、数千人がサンフランシスコからロサンゼルスまでサイクリングして、その沿道でエイズ防止のための募金やLGBTの文化活動をしていることを知ったことである。karenさんは、そこから発想を得て、2009年初め、同語の国際反ホモフォビアデーの活動計画を立てる会議で、大学生が自転車で大学を回る活動を組織することを提起した(1)

・2011年・北京

2011年は、北京では、5月15日に、20人が、さまざまなデザインやスローガンを書いたTシャツを着て、「レインボー自転車隊」を結成して、北京の多くの観光地をめぐって、「国際反ホモフォビアデー」の宣伝をした。

15日におこなった理由は、「みんなの時間を合わせるためと、影響力を高めるため」だった。この点は15日が日曜日だったことと関係していよう。

Tシャツにも、「良い同志」「私は同志だ、私は誇りを持っている」「私は異性愛を差別しない」「ホモフォビアノー」「私を治すな、私は病ではない」「どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ」などのスローガンを書いた。

自転車隊は、午前9時に出発して、天壇、天安門、景山、北海、鼓楼などの北京の有名な観光地を回り、それぞれの建築物の前で、みんなで記念写真を撮るとともに、「私は同志(LGBT)だ、私は誇りを持っている」「ホモフォビアは恥ずべきだ」「私は私だ」「5.17国際反ホモフォビアデー」などと書いた宣伝物を配布した。

天壇では、みんなで声を揃えて「同性愛、私は誇りを持っている」というスローガンを叫び、その場にいた百人以上の観光客の注目を引き、その後、宣伝物を配布したり、国際反ホモフォビアデーの意義を語ったりした(2)

このような自転車を使った宣伝は「流動するレインボー」とも呼ばれ、2011年には、17地区の22のLGBTグループがこうした活動をした(3)

・2012年・北京

2012年には、北京では、5月20日の日曜日に国際反ホモフォビアデーの活動がおこなわれた。自転車隊の人々は、午前中から、「ホモフォビア ゼロトラレンス(恐同零容忍)」と書いたお揃いのTシャツを着て、レインボーフラッグを持ってサイクリングをおこなった。LGBTに対する偏見や差別をなくすために、途中で通行人に宣伝資料も配布した。昼には2組に分かれて、午後も宣伝をおこなった(4)

北京LGBTセンターと同語の5名は、午後は、中国人民大学、北京大学、中国農業大学を回った。彼/彼女らは、1日で合計13㎞を7時間かけて走り、80部あまりの宣伝物を配布し、100人以上と交流をした(5)

・2014年・西安

2014年に西安では、30名近い人々がこの活動をおこなった。午前10時に長安大学を出発して、6大学を回り、学生に宣伝資料を配布して、セクシュアル・マイノリティについての基本的知識を普及した。活動は夕方6時までおこなわれた。

この活動では、ある人に「同性愛は病気だ。ぼくが誘惑されて、汚されるのがこわい」と言われるなど、参加者が気落ちするようなことも何度もあった。しかし、その一方、子どもを抱いた老人に「同性愛はまったく病気ではない。君たちの活動は非常に良い」と言われるなど、さらに大きな喜びや感動もあったという(6)

2.杭州での活動

杭州での国際反ホモフォビアデーのレインボーサイクリングは、2010年に結成された民間団体「向陽花開(ヒマワリの花が開く)‐杭州LGBT」(7)が主におこなっている。

・2011年

杭州では、2011年に最初のレインボーサイクリングがおこなわれた。この年は、5月22日の日曜日の午前8時~10時におこなう予定が立てられている。まず、午前8時に岳廟(西湖の北にある、岳飛を祭った廟)の貸自転車所に集合して、宣伝カードを分配したり、レインボーの印を付けたりするなどの準備をする。8時半に正式に出発して、通行人に国際反ホモフォビアデーのカードや宣伝材料を配布したり、記念写真を撮ったりしつつ、「白堤」(西湖を分ける堤)を通って少年宮(少年少女の文化活動のための施設)まで行くことが予定された(8)。主に西湖の観光地を回るコースのようである。

当日この予定通りおこなわれたかは不明だが、6人がレインボーのマークを付けたTシャツを着て、レインボーフラッグを手に持って自転車を湖畔に停めている写真(9)や、8人が大小のレインボーフラッグを前に掲げて、白堤にある「断橋」という橋で撮った記念写真(10)が微博で発表されている。

・2013年

2013年には、5月25日の土曜日に「Born This Way 私は誇りを持つ」というテーマでおこなわれた。

この年は、9:30-17:00という長時間をかけて、「下沙」という多くの大学が集まっている地区を回った。下沙を回った理由は、この時期は卒業の季節なので、多くの大学の今年度卒業生が4年間生活した大学にもう一度行くことを希望したためだという(11)

この年の参加人数は36人と記されており、大きく増えたように思われる。参加者は各自が「同愛無国界」と書いた揃いのTシャツを着て、手にレインボーのペイントをし、レインボーフラッグを持って出発した。

午前は、浙江メディア学院(9:30-10:00)、杭州職業技術学院(10:00-10:20)、中国計量学院(10:30-11:20)、浙江理工大学(11:30-12:30)を回り、午後は、浙江経済職業技術学院、浙江経貿職業技術学院、浙江金融職業技術学院、浙江財経大学、杭州師範大学、浙江工商大学を回って、合計10大学を回った。

多くの大学では、正門の脇の大学名が大きく記された箇所のそばで、みんなで記念撮影をしている。その際には、後ろに大きなレインボーフラッグを掲げて、前には、「同愛無国界」と書いた横断幕を広げている。

揃いのTシャツを着て、レインボーフラッグを持って隊列を組んでいるためであろうか、多くの大学で、大学に入るときに警備員との攻防戦があったが、それをくぐりぬけて、スローガンを叫んだり、宣伝活動をしたりしている。以下、それぞれの大学での状況を記しておく。

浙江メディア学院では、警備員に侵入を阻止された。そこで、レインボーフラッグをたたみ、正門の50メートル手前で、スローガンを叫ぶのもストップし、分かれて正門に入った。

杭州職業技術学院では、警備員に何をしているのかを聞かれたので、この活動の背景を大いに説明し、意義を大いに説明し、規模を大いに説明したら、解放してくれた。

意気上がった参加者たちは、中国計量学院に行く道でも、「同愛無国界、真愛無性別(同性愛に国境はない、真の愛に性別はない)」というスローガンや、「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」というスローガンを叫んだ。

中国計量学院に入るときは、警備員の近くを通る際には、学術問題を議論しているかのように装って学校に入った。図書館前で、卒業生がクラスで卒業写真を撮っていたので、卒業生たちに向けて、「同愛無国界、真愛無性別」とスローガンを叫んだりした。

浙江理工大学では、20分間、国際反ホモフォビアデーやLGBTについての宣伝を、通行人に宣伝物を配布しつつおこなった。

浙江経済職業技術学院では、警備員がじっと見ていたので、自転車から降りざるをえなかった。学院の正門のそばの「浙江経済職業技術学院」という文字も、バスの陰に隠れていたので、別の門のところで記念撮影をせざるをえなかった。

しかし、ちょうどその頃、人通りが多い時間帯になったため、みんなの情熱が戻ってきて、「同愛無国界、真愛無性別」とスローガンを叫びながら自転車で移動し、浙江経貿職業技術学院との正門前での記念撮影をすませ、浙江金融職業技術学院の正門前では「同愛無国界、真愛無性別」というスローガンも叫んだ。

浙江財経大学でも撮影をし、通行人が多かったので、「同愛無国界、真愛無性別」と叫んだ。

杭州師範大学では、管理が厳しかったので、小旗をしまったり、外套を羽織ったりして、校内に入った。また、写真を撮っているとき、警備員が近づいてきたので、そそくさと撮影をすませ、すぐさま退散した。

しかし、杭州師範大学の門の前の通りには、非常に多くの学生がいたので、思わず「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」というスローガンを叫んだら、周りの人に注目されて、うれしかったという(12)

・2014年

この年は、西湖と下沙を1日ずつかけて回るという、これまでにない規模の予定が立てられている。具体的には、まず、5月17日(土)の8:30‐16:30に西湖の観光地の白堤、岳廟、蘇堤、長橋、呉山を回り、5月25日(日)の8:00‐13:00、15:00‐18:00には、下沙の11大学を回るのである。ただし、この年は、大学の中には入らないとされている(13)

・2015年

この年は5月17日の日曜日に、10:30から西湖の観光地を回るコースでおこなわれた(14)。大学方面には行っていないようだが、60人あまりが参加しており、人数としては、少なくとも2013 年よりは増えている(15)

・2016年

この年は5月15日の日曜日に、以下のように、午前中だけ、やはり西湖の観光地を回るコースでおこなっている。

9:00~9:30 ボランティア集合
9:30~10:00 参加者受付、ペイント、バザー
10:00~11:30 編隊を組んで自転車ツアー(10.2㎞)
11:30~13:00 みんなで食事、バザー(16)

参加者も、40数人と、それほど多くはない。

ただし、この年は、エイズ問題の活動と結び付けておこなわれたことに特徴がある。

5月15日は5月の第三日曜日だが、この日は、エイズで死亡した人を追悼する「国際エイズ・キャンドルライト・メモリアル(International AIDS Candlelight Memorial)」の日でもある。

また、長い間、「同性愛」も「エイズ」も、社会によって汚名を着させられてきたという共通点がある。

そして、ちょうどこのとき、江西省南昌市から「伴艾騎行」という、エイズ問題についての自転車ツアーをしてきた人々(北京まで行く予定だという)が来たたこともあり、彼らといっしょに自転車ツアーをおこなった。

この年も例年同様、頬にレインボーのペイントをして、レインボーフラッグをマントのように翻したり、レインボーフラッグを片手で掲げたりしている写真や、道行く人に資料を渡して説明している写真がネットに掲載されている。

スローガンとしては、以下のようなことが叫ばれている。
「家家都有同性恋、只你們看不見」
「撑同志、反歧視(LGBTを支え、差別に反対しよう)」
「不男不女不一様、又男又女又怎様(男でも女でもなく、いろいろある。男でも女でもあっても、どうだというのか)」
「好基友、一輩子」(よい同性愛の友人は、一生のものだ)

終了後はパーティーもおこなわれた(17)

二 マラソンに集団として参加 (レインボーマラソン)

1.杭州での活動

「向陽花開‐杭州LGBT」は、杭州国際マラソンへの参加も組織している。

・2011年

「向陽花開‐杭州」のメンバーが初めて集団として参加したのは、2011年11月6日の杭州国際マラソンである。メンバーらは、六色のレインボーフラッグを手に持って、フルマラソン、ショートマラソン、ミニマラソンに参加した。さらに、別の多くのメンバーが「レインボー応援団」を作り、「同志愛生活(同志は生活を愛する)」と書いたレインボー色の横断幕を広げて、参加者を応援した。

写真を見ると、このとき既に、顔に小さなレインボーのペイントをした4人がそれぞれレインボーフラッグの4隅を持って広げて手に持ち、肩や頭上に掲げながら走っており、あたかもLGBTパレードのようである。他に、顔にレインボーのペイントをして、小さなレインボーフラッグを持ちながら走っていたり、選手の応援をしたりしている光景もある。出発前なのか終了後なのかわからないが、「同志愛生活」と書いた長大なレインボーフラッグを前に掲げて15人ほどが記念撮影をしている写真もある(18)

・2012年

2012年の杭州国際マラソンは11月18日におこなわれたが、この年は、事前のプランもネット上で発表している。そこには、以下のようなことが書かれている。

・杭州国際マラソンには、「フルマラソン(42.195キロ)」「ハーフマラソン(21.0975キロ)」「ショートマラソン(13キロ)」「小マラソン(6.8キロ)」があるが、「向陽花開‐杭州」は、主に「小マラソン」に重点を置いて活動を組織する。ただし、他のコースに申し込んでもよい。小マラソンの参加者は、8人一組のグループに分かれて出発して、スローガンなどを唱える。他のコースの参加者については、統一的な割りふりはしない。

・参加者はレインボーの印を付けた物品を身につけてマラソンに参加し、スタート前とゴールイン後には、一緒に記念写真を撮る。当日は、参加者は、出発前に、浙江図書館の入り口に集まって、顔にレインボーを描いてもらうほかに、レインボーのスカーフ、サポーター、スウェットバンドを身につけたり、レインボーフラッグやスローガンを書いたプラカードを受け取ったりする(19)

当日の写真を見ると、まず出発前に、15人ほどでレインボーフラッグを前に持って記念撮影をしている(20)。スタート後も、4人で大きなレインボーフラッグを持って走ったり、レインボーフラッグを両手で掲げたりしながら走っている人がいて、非常に目立っている(21)。その他、ミニチュアのレインボーフラッグを持って走っている人、「同志は生活を愛する」という横断幕の後ろで、おおぜいで応援している人々、レインボーフラッグを持って男どうしでキスをしている人など、多くの写真が発表されている(22)

動画もあり、それを見ると、レインボーフラッグを広げてスローガンを叫びながら走ったり、ゴール後に「同志愛生活」と書いた大きなレインボーの横断幕を広げて、「家家都有同性恋、只你們看不見(どこにでも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」と何度も叫んで注目を集めたりしている (→「【搜狐拍客】杭州马拉松赛场现同性恋高呼“同志爱生活”」)

また、マラソンの前の10月5日と11月3日には、事前に参加者がマラソンの距離や体力の消耗に適応できるようにするためと、参加者の意志と団結を強めるために、みんなでゆっくり走ったり、コーヒーショップで集いをしたりするイベントも設定されている(23)

・2013年

この年の杭州国際マラソンは11月3日におこなわれたが、この年は、「向陽花開‐杭州LGBT」のテーマが、前年のマラソンや同年5月の反ホモフォビアデーまでの「Born This Way 私は誇りを持つ」から「Run This Way 私は私の道を走る」に変わっている。「生まれつき」であることを強調しなくなったということだろうか。

また、この年のプランには、選手とは別に、ボランティアの仕事も書かれている。それは、参加の受付、グッズの分配、バザーでの収入の統計、途中で沿道の観衆に宣伝をおこなうこと、写真や動画の撮影、微博によってリアルタイムで選手と周辺の人々の写真と交流の内容を発信することなどである。

また、小マラソンの選手は8人一組ではなく、7人一組になるなど、少し変わった点もある。また、終了したら、みんなで一緒に食事できることなども書かれている(24)

・2014年

この年の杭州国際マラソンは11月2日におこなわれた。この年のスローガンは「同志(LGBT)たちは立ち上がって、大きな声であなたの愛を語ろう」となっている。

また、この年は、「向陽花開‐杭州」が小マラソンを担当するほかに、「クィアフォーラム」がショートマラソンを担当する計画になっている(25)

参加人数も、また新記録を作ったと書かれている(26)。正確な数字は不明ながら、67人が参加し、そのうち選手が49人、ボランティアが18人だったようだ。性的指向は、ゲイが21人、レズビアンが19人、バイセクシュアルが6人、Questioningが4人、異性愛が10人という。最初の年は20人余りだったのが、70人近くになったと書かれている(27)

また、この年は、多数の大きな写真と比較的長い時間の動画が発表されている。まず、多くの写真を掲載した記事(→「彩虹马拉松,让我们明年,不见不散!」2014-11-11 向阳花开 向阳花开杭州LGBT)を見ると、6時30分に、浙江図書館前に、参加者たちが集まって、受付をし、レインボーの目印になるグッズを受け取り、レインボーのペイントをし、談笑したり、お互いに一緒に写真を撮ったりしていることや、8時から9時30分までは、黄龍体育館で、レインボーフラッグ、バイセクシュアルフラッグ(ピンクとロイヤルブルーの間にラベンダー色がある旗)、向陽花開の旗をはためかせており、スタート後は、大きなレインボーフラッグを複数、横に広げ、大きなレインボーフラッグや向陽花開の旗を旗竿にさしてみんなで軽く走っている情景、終了後は、ゴール地点でしばらく休憩した後、おおぜいで歩いて、バートンコーヒー館に行き、大きなピザを食べて、みんなで楽しくおしゃべりをしたことが書かれている。

上で書かれているように、この年からバイセクシュアルの旗が登場したようだ。

動画(→「向阳花开14年马拉松」)では、レインボーフラッグを持って走ったり、ときに歩いたりしていることがわかる。とくにゴール地点では、全員が集まって、レインボーフラッグを何枚も掲げつつ、スローガンを叫んでいて、しっかりとアピールをしているようすが収録されている。

なお、この年もマラソンの準備活動をしており、10月18日と10月26日に、それぞれ西湖の北にある宝俶山と九曜山に登っている(28)

・2015年

2015年は、杭州国際マラソンは11月1日におこなわれたが、その報告は、次のような書き出しで始まる。

家家都有同性恋、只你們看不見(どこにも同性愛はある。あなたには見えないだけだ)」、11月1日、このスローガンが西湖の湖畔に響き渡った。2日前に台北で挙行されたLGBT大パレードで、変わった服装をし、自分を誇り、レインボーが通りを埋め尽くしたことに羨望や嫉妬をしているのか? いま、私たちはそのすべてをやった。(29)

この年は、前夜、杭州LGBTセンターで「面基大会(「面基」とは、ネット上でのゲイの友人[基友]が実際に顔を合わせることであり、現在では広くネット上での知り合いが実際に顔を合わせること全般も指している)をおこなった。若い仲間たちが4、50人集まって、30㎡あまりの部屋は満員になった。大会では、最後に阿妹(アーメイ。台湾の歌手)の《彩虹(レインボー)》を合唱した。

当日の11月1日は、かなりの雨が降っていて、参加者が集まるかどうか心配されたが、五、六十人の人が集合地点である図書館の玄関に集まり、ペイントやバザー、準備運動をした。

この年も、「同志們站出来 大声説出你の愛(LGBTたちは立ち上がって、大きな声であなたの愛を語ろう)」と書いたレインボーの背景を付けたプラカード(「の」は日本語で書いてある)が掲げられている(30)

この年は、8mの長さの巨大なレインボーフラッグを広げたまま、十数人のランナーが持って走った。そのレインボーフラッグは、官制のメディア「浙江在線(オンライン)」が段橋を走るマラソンの空撮をした写真にも大きく写った。

また、向陽花開の旗を持って半裸にマントを背負った、スパルタの勇士の扮装をした男性が登場し、多くの人の目を引いた。これは、フランス7月革命を題材にしたドラクロアの絵画「民衆を導く自由(の女神)」を模したもののようだ(31)

マラソンでは、「家家都有同性恋、只你們看不見」「不男不女不一様、又男又女又怎様」「撑同志、反歧視(LGBTを支え、差別に反対しよう)」というスローガンが響き渡り、以下の文言を書いた6枚のボードが高く掲げられた。
・「李双双(1962年の映画『李双双』のヒロインで、生産労働に参加し、夫から自立する):台所を出て、人民公社に行こう」
・「同性パートナー:婚姻という束縛は、私たちも選択する権利がある」(「たとえ婚姻が束縛だとしても、私たちも自分が選択する権利がほしい」という意味のようだ(32))
・「白素貞(民間説話『白蛇伝』に登場するヒロインで、その正体は白蛇の精):妖怪も恋愛を談じたい」
・「女:社会の果実を、私たちも半分ほしい」
・「経血は恥ずべきではなく、DVこそ恥ずべきだ」
・「祝英台(民間説話『梁山伯と祝英台』のヒロインで、男装をしている):不男不女不一様、又男又女又怎様」

6枚のうち、3枚がフェミニズムのプラカードであることが目立つ。

ゴールした後は、暖かいコーヒー館の地下室に行ってゲームをし、最後は、自分のことを語り合った(33)

こうした状況についても、大きな写真が多数アップされている(→「彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT、「向阳花开2015杭州彩虹骄傲马拉松小结」花开•杭州 2015-11-03 15:14:24)。

・2016年

この年の杭州国際マラソンは11月6日に開催されたが、この年は、以下のようなスローガンを一斉に叫びつつ走った。
・「家家都有性少数、社会需要包容度(どこにもセクシュアル・マイノリティはいる。社会が包容することが必要だ)」
・「不男不女不一様、又男又女又怎様」
・「撑同志、反歧視」
・「愛情不分性別、同性一様和諧」
・「家家都有同性恋、只你們看不見」
・「不止能頂半辺天、婦女能頂整片天(女性は天の半分を支えることができるだけじゃない。天を全部支えることができる)」
・「打非親、罵非愛、告別暴力和傷害(殴るのは親しさではなく、罵るのは愛ではない。暴力と傷害にさよならしよう)」
・「杭州因多元而美麗(杭州は多元的だから美しい)」

この年も、おおぜいの手によって長いレインボーフラッグが運ばれて、多くの人が一人ひとり大きな旗を掲げた。

この年の状況については、参加者の「零下50°」さんが、次のように書いている。

私たちのスローガンは、セクシュアル・マイノリティ、フェミニズム、反暴力などに及ぶ。私たちは、断橋、楼外楼、西冷橋、岳廟、黄龍体育館では、しばらくストップした。道行く人にレインボーフラッグの意味を問われたときには、ボランティアが熱心に説明した。

レインボーフラッグ以外にも、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど、セクシュアル・マイノリティの旗を数枚掲げた。これは、向陽花開は、同性愛だけでなく、いかなる集団の権益も尊重されなければならないと考えているからだ。筆者はかつてイギリス映画《Pride》を見たことがあるが、そこでは、同性愛たちと労働者たちが、偏見から包容へ、誤解から連盟へと変わったという話が語られていた。いかにしてすべてのマイノリティ集団を連合させて、ともに権利の平等を勝ち取るかが、国内の平等な権利運動の次の突破口になるかもしれない。

少なくない友人が、私たちの組織の活動に参加することを通じて、自己肯定の面で大きな進歩があったと語っている。最初は恐怖で奥に引っ込んでいたが、カミングアウトして自分の権利のために努力するようになったという。ある人は、「同性愛者の家族と友人の会」のお母さんたちも来て、私たちの活動を支持してくれたことに心から感動した、なぜなら家族の承認と支持こそが私たちが渇望しているものだから、と述べた。ある人は、レインボーマラソンを通じて、志を同じくする良い仲間たちと知り合いになり、ここで、自分の愛情さえ見つけたと述べた。また、ある人は、来年もつづけてレインボーマラソンに参加したい、このような、みんなといっしょに公の場で権利の主張をすることはとても気持ちいいと言った。

注意すべきなのは、路上でも、少なくない異性愛のおじさん・おばさんが親指を立てて、私たちを励まし、支持してくれたことだ。私たちはずっと異性愛者たちにも、セクシュアル・マイノリティ団体に入るよう呼びかけてきたが、多くの人にはその理由がわからない。なぜなら、みんなは、そうした団体はセクシュアル・マイノリティたちの内部のお祭り騒ぎをしていると思っているからだ。実際はそうではなく、フェミニズムと同じように、多元的セクシュアリティも、一人ひとり利益と関わっている。(‥‥)多元性を主張し、セクシュアル・マイノリティの権利を支持することは、けっしてLGBT+内部のお祭り騒ぎではなく、公衆が主張し、支持することが必要なことなのである。

(34)

2.他の地区での活動

こうしたマラソンへの集団参加によるアピールは、他のマラソンでもおこなわれている。

以下はネット検索によって調べたもので、網羅的な調査ではないが、以下のような事例がある。

・2011年・北京

2011年10月16日の北京国際マラソンでは、ハーフマラソンにレズビアンの大京さんが選手として出場した。大京さんは、服の上に「私は私」「ホモフォビアは恥ずべきだ」というスローガンを貼り、レインボーフラッグを掲げて走りながら、2時間を切る成績をおさめた。

彼女を応援するために、十数人がレインボーフラッグを振り、「頑張れ同志、愛のためにスパート」と書いた横断幕を掲げ、スローガンを叫んで声援を送った(動画→「Rainbow Marathon 彩虹马拉松」)。これは、レズビアン団体「同語」が呼びかけた活動だった(35)

・2013年・太原

計画どおり行われたか否か不明だが、2013年の太原国際マラソンでも、ミニマラソン(4.2195㎞)に重点を置いた、同年の杭州国際マラソンと類似した活動が計画された(36)

・2016年・石家荘

2016年11月13日の石家荘国際マラソンでも、十数人が長大なレインボーフラッグを広げて走ったり、横断幕を数人で掲げたり、プラカードやレインボーフラッグを持って走るなどして、多くの人の目を引いた(37)

おわりに

(1)時期的な変化

参加者数は、杭州の場合、明確に数字として書かれたものを見ると、
・レインボーサイクリングは、(2013年)36人→(2015年)60人余り→(2016年)40数人
・レインボーマラソンは、(2011年)20人余り→(2014年)67人→(2015年)(集合地点で)5~60人
となっており、2014、5年ごろまでは明確に増加しており、その後はそうではないが、さほど減っているとも言い難い。写真を見ても、全体としての増加傾向が感じられる。

また、レインボーマラソンにおいては、2014年ころから、フェミニズムとのつながりやセクマイ内部の多元性(バイセクシュアル、トランスジェンダー)が表現されるようになってきたという変化もある。

レインボーマラソンのプラカードやスローガンの中の「経血は恥ずべきではなく、DVこそ恥ずべきだ」(2015年)とか「殴るのは親しさではなく、罵るのは愛ではない」(2016年)というのは、もともとは行動派フェミニストが提出したスローガンである。また、2014年のレインボーマラソンで、活動当日の「ボランティア管理」を担当した人の名は「麦子」となっているが(38)、これは行動派フェミニストのリーダーの1人である李麦子さんのことではないか。こうした点からは、行動派とのつながりが感じられる。

(2)諸外国のLGBTパレードと中国のレインボーサイクリング、レインボーマラソン

2015年のレインボーマラソンに参加したある大学生は、次のように述べている。「私が見るところ、この活動の意義は、セクシュアル・マイノリティたちの自分のアイデンティティを強めるだけでなく、彼らの公共領域における可視度を強め、人々にセクシュアル・マイノリティという集団に関心を持たせ、LGBTQが身近に存在していることを知らせることにある。」(39)

先述の「零下50°」さんの感想でも述べられていたことだが、レインボーマラソンは、自己のアイデンティティを確立し、仲間を作るとともに、公の場でLGBTの存在や権利を主張する役割を果たしている。こうした意義は、諸外国でおこなわれているLGBTパレードと共通であろう。

2015年の杭州国際マラソンの報告の冒頭を見てもわかるように、中国のレインボーマラソンは、台湾のLGBTパレードを明確に意識している。

また、もし誰かが、長大なレインボーフラッグを運んでいる中国のレインボーマラソンの写真を見たとしたら、多くの場合、これはLGBTパレードの写真ではないかと思うのではないか。

私は昨年の論文で、中国の行動派フェミニストは、地方政府や共産党委員会の前で示威行動をしたり、巨大な政治的横断幕を広げたりすることはせずに、官庁前では、パフォーマンスアートとそれに付随したプラカードなどの掲示をするにとどめることによって弾圧を回避したり、マスメディアにも運動を取り上げやすくさせてきたこと、けれども、行動派フェミニストのそうした活動を写真として視覚的に見ると、官庁や企業に女性たちが要求をしていることを示している点では、弾圧されがちな運動形態と類似したアピール効果を持っていることを述べた。また行動派とも交流がある女性農民工支援団体が、「集会」や「デモ」とは称さずに、写真や動画で見ると集会やデモに見えるような、自らの主張を力強くアピールする活動をしていることも述べた(40)。レインボーマラソンも、こうした運動と同様かそれ以上に、弾圧を回避しつつも、それを写真として見る人には、諸外国のLGBTパレードと同様の視覚的効果を持った運動だと言えるのではないかと思う。

しかし、それでもレインボーマラソンは、他国でおこなわれているパレードとは異なる苦労がある。まず、歩くのでなく、走らなければならない。そのため、ある参加者は「7キロ走ると、ほとんどの人が、履いている靴まで含めて、全身汗びっしょりになった。私はそのために長い間風邪にかかった」(41)と言っている。また、走る速度についても、速すぎれば、沿道の人々にアピールが目に止まらず、逆に「走るのが遅すぎる」(42)と参加者に感じられることもある。

レインボーサイクリングにおいても、大学内に入るに際して、相当の苦労があった。

LGBTパレードはできなくとも、それに近いものを、こうした困難にもめげずやってゆく。そうした姿勢が中国のレインボーサイクリングやレインボーマラソンからは感じられる。

(1)“流动的彩虹”——国际不再恐同日行动(pdf)」同語。
(2)以上は、「国际不再恐同日活动 志愿者彩虹车队京城骑行」淡蓝网2011-05-16。
(3)(1)に同じ。
(4)歧视零容忍:淡蓝网志愿者参与反恐同骑行活动」淡蓝网2012-05-21。
(5)517国际不再恐同日——彩虹骑行见闻」北京同志中心2012-05-22。
(6)同爱无界:西安彩虹骑行呼吁平等」淡蓝网2014-05-19。
(7)ヒマワリの名があるのは、積極的に向上して、陽の光を追い、LGBT内部で積極的で健康的な生活様式を提唱して、自らに誇り持つということと、社会にLGBTの真実の姿を知らせ、人々のLGBTへの偏見を変えて、未来の社会をヒマワリのような暖かさに満ちた、多元的で平等で調和のある社会を作り出すことに努力するということからであるという(向阳花开_杭州LGBT的微博2014-9-25 18:19)。
(8)骑行活动报名!」2011-05-17 22:19:05
(9)言Ada 的微博2011-5-26 14:13
(10)向阳花开_杭州LGBT的微博2011-5-22 09:50
(11)以上は、「向阳花开@下沙008 5.25高校彩虹骑行」。
(12)2013年5月25日【向阳花开@下沙】008高校彩虹骑行活动小结」。
(13)向阳花开034•同志爱骑行•西湖&下沙」、「【转】5月17日•西湖 +5月25下沙•彩虹骑行 」。
(14)517国际不再恐同日 彩虹骑行杭州站」彩虹城市2015-05-12 08:45:12。
(15)国际不再恐同日,中国在行动!」同语桔子报特刊:5.17 国际不再恐同日专题 续。
(16)5.15骄傲骑行 | 老阿姨喊你来过节了」2016-05-10 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(17)以上は、「伴艾同行 消除污名丨你来彩虹骄傲骑行嗨了吗?」2016-05-16 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(18)以上は、「杭州同志社团参加国际马拉松大赛(组图)」淡蓝网2011-11-07。
(19)以上は、「向阳花开021•Born This Way杭州彩虹马拉松
(20)向阳花开_杭州LGBT的微博2012-11-18 08:47
(21)向阳花开_杭州LGBT的微博2012-11-18 08:51
(22)酷儿论坛的微博2012-11-19 11:23、向阳花开_杭州LGBT2012-11-18 10:34
(23)向阳花开020•断桥“同”行」、「向阳花开•断桥“同”行•03-Born This Way 杭州彩虹马拉松热身活动」。
(24)向阳花开_杭州LGBT的微博2013-10-1 19:07
(25)以上は、向阳花开_杭州LGBT的微博2014-9-25 18:19
(26)彩虹马拉松,让我们明年,不见不散!」2014-11-11 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(27)向阳花开037•2014杭州彩虹同志骄傲马拉松小结(图片待补充)」向阳花开•杭州 2014-11-19 00:26:59。
(28)同上。
(29)彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(30)この一文は、彩虹马拉松丨雨中的彩虹色 依旧躁起来的我们!」2015-11-02 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(31)同上。
(32)この一文は、「5.15骄傲骑行 | 老阿姨喊你来过节了」2016-05-10 向阳花开 向阳花开杭州LGBT。
(33)以上は、「向阳花开2015杭州彩虹骄傲马拉松小结」花开•杭州 2015-11-03 15:14:24、「向阳花开•杭州的相册-10.31彩虹马拉松面基大会」。
(34)2016彩虹马拉松 | 今天,杭州因多元而美丽」零下50° 2016-11-07 10:31:36。
(35)同志亮相北京国际马拉松,彩虹旗飞扬天安门广场」爱白(同语より転載)2011-10-17。
(36)同志爱运动-彩虹马拉松 2013太原国际马拉松赛运动员征集令」山西蓝典2013-08-31 21:29:08。
(37)石家庄国际马拉松赛上的彩虹旗:骄傲做同志」资讯频道2016/11/15 7:37:11、淡蓝同志新闻【石家庄国际马拉松赛上的彩虹旗:骄傲做同志】2016-11-14 15:10
(38)向阳花开037•2014杭州彩虹同志骄傲马拉松小结(图片待补充)」向阳花开•杭州 2014-11-19 00:26:59。
(39)彩虹跑回忆录•一 | 热血青年阿园的第一次彩虹马拉松。」2016-09-25 阿园 向阳花开杭州LGBT。
(40)遠山日出也「行動派フェミニストの街頭パフォ―マンスアート――図像を中心に――」(中国女性史研究会編『中国のメディア・表象とジェンダー』研文出版 2016年)268-274頁。
(41)(38)に同じ。
(42)【彩虹跑回忆录•三】历届运动员们的回忆」2016-11-01 向阳花开杭州LGBT。

学校におけるホモフォビアなどについての教員への働きかけ

目次
はじめに
1.教員と協力して、大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設
2.教員にLGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否を表明させる
3.教え子から依頼により教員に宣伝資料を送付
4.小・中・高・大学教員に対する研修活動
おわりに

概要:学校内のホモフォビアの問題に関しては、学校で使われている教科書のホモフォビアについて、教育部や編者・出版社に是正を求めることとともに、教員に対して働きかけることも重要だ。2009年から、広州市の「同城青少年資源センター」などが、大学教員と協力していくつかの大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設してきた。また、2014年からは、全国十数のLGBT団体が、教員に、LGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否をネット上で表明するよう働きかける活動をおこなっているが、この活動には、ジェンダーなどが専門でない教員も多く参加している。また、2015年から、同城青少年資源センターは、この問題に関心がある教員に対して、「教師“性/別”研習営」という、ジェンダーやセクシュアリティの基本的知識を教えたり、LGBT青年の話を聞いてもらう活動も始めた。こうした活動は、ごく小規模なものだが、教育部や編者・出版社に対する働きかけとは別の形で着実な成果をあげている。

これまで本ブログでは、同性愛を「変態」「病気」「倒錯」などと記述している大学教科書の問題に関するLGBTの団体や個人の取り組みとして、調査報告や行政への提言、こうした教科書を放置する教育部を訴えた裁判、教科書の編者や出版社への働きかけについてご紹介してきた(本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」、「ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴」、「大学のホモフォビア教科書の編者・出版社に対する働きかけ」)。

もうひとつ重要なのは、「教員」に対する働きかけである。教員がどうであるかは、教科書の問題にかぎらず、学校内でのLGBTの人権を保障する環境を整備する上でカギとなる。

特にこの問題に取り組んできたのが、広東省広州市の「同城青少年資源センター同城青少年资源中心、Gay and Lesbian Campus Association of China[GLCAC])」(以下、「同城」と略す)である。

同城は、2006年に設立された「青少年のLGBT(原文は「同志」。以下も「同志」は基本的に「LGBT」と訳す)の権益およびその学校での生存環境に関心を持って、サービス・教育・サポートをおこなう非営利機構」(1)である。

まずその刊行物を見てみると、同城は、2012年、愛白文化センターとともに「性的指向とジェンダー身分による学校でのいじめ調査報告(基于性倾向和性别身份的校园欺凌调查报告。概要は、本ブログの記事「学校における性的指向などによるいじめに関する調査」参照)を刊行している。

2013年には、同城は『学校でのいじめ、STOP!――性的指向とジェンダーによる学校でのいじめの予防と対応(性向、性别身份的校园欺凌预防与应对手册[pdf])』という漫画ハンドブックを印刷し、さまざまなLGBT団体、教育団体などに、寄付を求めつつ配布した(2)。このハンドブックは48ページあるが、2016年までにすでに1万8000冊を発行している(3)

2014年には、同城は、中山大学ジェンダー教育フォーラムなどと協力して「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容とその影響の調査報告(中国高校教科书中同性恋错误和污名内容调查报告。主な内容は、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)」を発表した。

同城は、こうした調査研究などと並行して、以下のように教員への働きかけをすすめてきた。

1.教員と協力して、大学でセクシュアル・マイノリティをテーマとする選択科目を開設

2008年は、「同城」のメンバーが大学の教員と話をしているとき、学生は入学と卒業で流動するけれども、教師たちはずっと大学にいるので、教員に働きかけたりサポートしたりすることが重要であることに気付いた。

そこで2009年初め、同城は、華南理工大学の教員と初めて講義での協力をして、「多元的性別」という公共選択科目(教員の申請を大学が認可することで、学生が単位を得られる課程になった)を開設した。この科目は非常に人気が出た。

この後、「大学教育と教師の参与」というテーマが、同城の重要な戦略方向となった。同城は、大学の教員に働きかけて、彼らに多元的性別とセクシュアル・マイノリティの権利についての公共選択科目を開設してもらう活動に取り組んだ。

同城らは、2009年から2013年までの5年間に、上記の華南理工大学のほか、中山大学、華南師範大学、湖北工業大学の4大学で公共選択科目を開設した。

カリキュラムは1回2時間×10回で構成され、内容は、性の文化とジェンダー規範、ジェンダー平等、同性愛の生存の現状、性のよろこび、多元的性別と親子関係、トランスジェンダーの生存と権力、学校でのいじめと暴力、性の健康と弱者の権利、セックスワーカーの生存と権利、色情文化などである。

同城らが教員と協力して開設した各大学での講義を、2013年前半までに6000人近くが聴講した(4)

2009年~2013年におこなわれた課程のうち、その全体内容わかるのは、2012年春季におこなわれた中山大学の以下の課程である。これは、中山大学ジェンダー教育フォーラム、朋友公益(広州の華南理工大学の学生が2006年に設立したグループがもとになったLGBT学生たちのNGO) (5)、同城の三者が共催している。

2012年春季・中山大学の「社会文化と多元的性別」公共選択課程

第1講 課程の紹介(2月28日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 映画 《玫瑰少年夢》(Ma vie en rose、ぼくのバラ色の人生。フランス、ベルギー、イギリスの合作、1997年。MtFトランスジェンダーの話)

第2講 同性愛者の生存状態――異文化間の比較(3月6日)
 担当教員 程瑜(中山大学人類学系副教授)
 ゲスト 葉貝(香港智行基金会大陸MSMプロジェクトコーディネーター)

第3講 クィアが包囲を突破する――インディペンデント・フィルムと多元的性/別(注:「性/別」は、日本語で言えば「ジェンダー/セクシュアリティ」に近いが、もう少し含意が多い(6)) (3月13日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 映画 《天使 I Am Not What You Want》(香港、2001年。同性愛と異性愛の話)

第4講 性別規範と「パフォーマンス」――扮装とトランスジェンダーの欲望(3月20日)
 担当教員 柯倩婷(中山大学中文系副教授)
 ゲスト 伊玲

第5講 流行文化と多元的性/別――サブカルチャーから転覆的な実践を語る(3月27日)
 担当教員 周周(香港中文大学ジェンダーと文化研究所博士候補者)

第6講 社会文化とジェンダー気質――ジェンダーのレインボーのスペクトラム(4月10日)
 担当教員 黄海濤(広州のフリーの評論家。前中山大学ジェンダー教育フォーラムのコーディネーターで、そのウェブサイトの責任者)

第7講 多元的性文化と愛情――愛情や他の親密な関係の可能なモデル(4月17日)
 担当教員 羅鳴(香港中文大学社会学博士候補者、レズビアンサイト「同語」のボランティア)

第8講 多元的性別と家族の形――カミングアウトと親子関係(4月24日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授)
 ゲスト 梅さん(「同性愛者の家族と友人の会・上海」の呼びかけ人)

第9講 個人の身体と社会の身体――エイズの恐怖と防止について(5月8日)
 担当教員 艾暁明(中山大学中文系教授)
 ゲスト 張錦雄(香港のエイズ運動の活動家、「香港レインボー」ゲイコミュニティサービス機構の創設者)

第10講 グループの宿題の発表(5月15日)
 担当教員 宋素鳳(中山大学中文系副教授) (7)

他に、カリキュラム内容の全体は不明ながら、華南師範大学では、2012~2013年に、「社会文化とジェンダー気質――ジェンダーのレインボーのスペクトラム」(黄海濤)、「青年の感情と親密な関係」(陳杜[NGO「朋友公益」創設者])、「多元的性/別と家族関係――1人の母親から見たGAY」(呉幼堅[同性愛者の家族と友人の会])、「映画上映《レインボーは私の心とともに》」、「中国のセクシュアル・マイノリティの現状と思考」(陳杜)、「男女の間――私のトランスジェンダーの道」(Joanne)、「親子関係とジェンダー――愛は最も美しい虹」(呉幼堅)、「欲望とよろこび――珠江デルタのセックスワーカーの生存の現状」(厳月蓮[香港のセックスワーカー団体「紫藤」代表])、「同性パートナーの愛情」(ken仔)、「中国のインディペンデントフィルム――セクシュアル・マイノリティの文化と発声の空間」(魏建剛)といった講義がおこなわれていることがわかる(8)

2014年以降で、一つの課程の第7講までがわかるのは、2014年春季におこなわれた湖北工業大学の課程である。

2014年春季・湖北工業大学「ジェンダー文化」公共選択科目

第1講 女性と人権(4月13日)
 担当教員 呂頻(フェミニスト活動家、時事評論作家)

第2講 メディアとジェンダー研究(4月20日)
 担当教員 紀莉(武漢大学ニュースとメディア学院・副教授)

第3講 男女の間――私のトランスジェンダーの道(4月27日)
 担当教員 Joanne(トランスジェンダー、「香港トランス性/別センター」主席)

第4講 性の権利と色情のポリティクス(5月11日)
 担当教員 小曹(曹文傑)(香港のLGBTおよび性の権利運動で活躍。女同学社を創設した1人)

第5講 親子関係と性的指向(5月18日)
 担当教員 呉幼堅

第6講 同性愛が社会にもたらす啓示(5月25日)
 担当教員 曾子

第7講 エイズと共に生きて19年(6月8日)
 担当教員 ken仔、覃念(エイズ感染者、セクソロジー専攻大学院生) (9)

また、中山大学では、2014年には、「生命がエイズに出会うとき」(光光&小翔[レインボー中国代表、智同中国広州LGBTセンター])、「形式婚姻(ゲイとレズビアンとの偽装結婚)研究」(王穎怡[香港大学博士])、「キャンパスにおけるセクシュアル・マイノリティの生存と対応」(陳杜)、「香港のジェンダー運動」(小曹)、(前期の最後に)「親睦レインボーパーティー」、「ジェンダーのパフォーマンスと多元的性/別」(何其沃[モダンダンサー])、「性と道徳」(厳月蓮)、「レズビアングループの現状と発展」(大拿[華人レズビアン連盟事務局長])、「性の曖昧さとバイセクシュアル」(潘龍飛[カルマン症候群患者]、Sun[中山大学レインボーグループ代表])、「LGBTというテーマに関するメディアに対する提言」(阿強[同性愛者の家族と友人の会・主任])といった講義がおこなわれている(10)

以上の課程の特徴として、毎回教員やゲストが変わること、学者だけでなく、当事者性を持った活動家を多く登壇させていること、学者でも若手に多く話させていることが挙げられよう。そのために、話の内容も、バラエティに富んだ最前線のものになっているように思われる。また、同じ人が複数の大学で話をしている例も少なくなく、インターカレッジ的性格を持っているとも言えよう。

これまでも大学で同性愛などについての講義がなかったわけではない。2003年~2005年に復旦大学で同性愛に関する連続講座がおこなわれている(11)。しかし、民間のLGBT団体が意識的に教員に働きかけたり、協力したりすることによって課程を開設したのは、同城や朋友公益によるものが初めてではないだろうか。

ただ、中山大学に見られるように、こうした課程まで開設できるのは、ジェンダーやセクシュアリティの専門の教授、副教授がいる場が中心にならざるをえないのではないか。ただし、この点は、他の大学のケースを調べなければ断定できない。

2.教員にLGBTへの支持やホモフォビア教科書の拒否を表明させる

2014年10~11月、全国各地の15のLGBT団体(*)が共同で「Teacher, we need you!”全国の教師がLGBTをサポートするアクション」というものを開始した。そのテーマは、「教師はLGBTをサポートし、同性愛に汚名を着せる教材を拒否する」というものである。

(*)同城青少年資源センターのほか、北京LGBTセンター、重慶milk公益小組、杭州下沙-レインボー[彩虹]、武漢同行LGBT小組、山西藍典工作組、湖南大学愛smile工作組、中南高校レインボー連盟、湖南師範大学レインボー社、同在川農LGBT、江蘇同天工作組、 福建師範大学同心社、江西高校レインボー連盟、貴州黔程LES工作組の15団体。

これは、ごく簡単に言えば、教師がLGBTに対するサポートやホモフォビア教科書の拒否を表明した文をA4の紙またはプラカードに書いて、それを手に持った自分の写真を撮ってもらって発表する活動である。

教師が自発的にそうしたことをするだけでなく、LGBTの学生や支持者が積極的に教師に働きかけて上記のことをしてもらうのである。その場合、LGBTの学生や支持者は、同城が作成した『教師遊説実行ハンドブック(教师游说执行手册)』(http://pan.baidu.com/s/1o6KAcOiよりダウンロード)を参考にして、教師を説得する。説得の際には、最初に挙げたようなLGBTのいじめ被害やいじめ防止、ホモフォビア教科書について文献も活用する(12)

こうした努力の結果、2014年には60人の教師がこの活動に参加してもらうことができた。

日本でもジェンダー研究者として知られている、林紅・廈門大学副教授、柯倩婷・中山大学副教授、金一虹・南京師範大学元教授もこの活動に参加した。

しかし、60人のうち、80%にはジェンダー研究のバックグラウンドはなく、大多数は同性愛者と生活の中で接触したことがなく、まして同性愛というテーマで教学や研究をしたことはなかった。

たとえば、最初に宣言をおこなった呉奇・湖南師範大学教育科学学院心理学系講師は、湖南愛smile工作組がアプローチしたのだが、彼は同性愛について少し聞いたことはあったが、理解はしていなかった。しかし、湖南愛smile工作組と交流するなかで「同性愛に汚名を着せる教科書は拒否する。我々は同じ人間だ」と宣言する写真を発表した。ただし、この大学では、教師に働きかけるこの活動は、途中で大学当局にやめさせられ、学生は自己批判を書くよう求められる事態になったのだ。

また、山西省では、まだ教師と現地のLGBT団体との正式な交流がない中、山西藍天工作組が1ヶ月間努力して、王一濤・副教授と馬永新・教師という2人の教員に会うことに成功した。2人は思っていたよりはるかにセクシュアル・マイノリティに理解があったが、山西は保守的な土地柄であることもあって、写真を撮って公然とLGBTたちを支持することにはずいぶん躊躇したという。しかし、最終的には、「私は学生が私にカミングアウトしたとき、私は普通に受け入れる」という宣言とともに、写真に写ってくれた(13)

また、貴州黔程LES工作組は、一か月にわたって6人の貴陽市の教員を訪問したが、いずれも断られた。しかし、このとき、インターネットでの宣伝を見た貴州畢節学院の性健康教育の教師の李丹さんら電話がかかってきて、「このような活動を私は100%支持する。どうしてこの社会に同性愛に汚名を着せる教科書があってよいのか。私が前に出て、写真を撮って支持する」と言われた。さらに彼は、同僚の心理学系の趙占鋒・講師もこの活動に誘ってくれた。貴州黔程LES工作組のメンバー2人は、貴陽市から畢節市まで、バスで6時間半かけて会いに行って、ホモフォビア教科書について語り合った(14)

以上のことから、この活動は、従来からLGBT活動を支持してきた教員に活動に参加してもらうだけでなく、より幅広い教員に活動を広げていることがわかる。

2015年の8月20日~10月10日にも同様の活動がおこなわれた。この年は、同城のほか、西財同伴、南京柒彩公益、北京LGBTセンター、江西高校レインボー連盟、福建師範大学同心社、中珠雨后レインボー、珠海益蘿筐、武漢大学同志公益小組、華師CLS同志公益小組、朝夕青年空間、中南財経大学レインボー社、華中科技大学HGP小組、武漢同行がこの活動をおこなった(15)

前年とは異なる団体も多く取り組んだことがわかる。

こうして2014年と2015年で合計100名あまりの教員に公然とLGBTをサポートすることを表明してもらうことができた。

2016年にも、8月25日~10月10日までの期間、この活動がおこなわれた(16)

3.教え子から依頼により教員に宣伝資料を送付

2016年の教師節(9月10日)の前後には、自分の先生にセクシュアル・マイノリティの人権についての宣伝資料を送付する活動がおこなわれた。

ただし、自分の名前で送るのは難しいのであろう、この活動の参加者は、同城に50元のカンパを送り、自分の先生(または学校)の住所を伝えることによって、同城から「LGBTたちから」という名前で宣伝資料を送るのである。また、お金のない中高生が彼らの先生に宣伝資料を送ることを助けるために、50元のカンパを募る活動もおこなわれた。

その宣伝資料は「性/別フレンドリーな贈り物」と名付けられており、その中には、「この手紙は、あなたが教えたことがあるLGBTの学生に頼まれて~」という書き出しで始まる手紙とともに、『多元的性/別ハンドブック』、『「ホモフォビア」教材の七つの罪』、『学校でのいじめ、STOP!』などの冊子、同城のリーフレットやフォルダー、LGBTをテーマとした葉書などが入っている。

この活動は、同城と「同志の声」という団体が呼びかけて、華科HGP小組、蘇州LESGO公益小組、西政レインボー関愛小組、中山大学レインボー小組、関艾レインボー、楽窩LALAs_VOICE、南大性別性向平等協会、汕大橘子社、雨滴社、クィアフォーラム、江蘇同天、DiversityUNNCが協力しておこなわれた(17)

4.大・中・高・小学教員に対する研修活動

 2015年初めから、同城は、「教師性/別研習営(教師「ジェンダー/セクシュアリティ」研究学習キャンプ)」プロジェクトを開始し、主に武漢・広州・南京などの地で、教師ための学習の場を設けてきた。

これは、大・中・高・小学教師や在校ソーシャルワーカーを対象にしたものである。そうした教員が、セクシュアル・マイノリティの学生に対するいじめが起きていたり、セクシュアル・マイノリティの学生から助けを求める訴えがあったりしても、教師たちがどうしていいかわからないという状況に対応するためのものだ。

たとえば2016年には、5月24日に、同城と武漢同行とが共催して武漢で「教師“性/別”研習営」をおこない、17人の教師が参加した。

この研習営では、まずアイスブレイクをおこなったのち、性/別の基礎理論の知識を学習した。次に、教師たちは、現実の教学の中でぶつかった実例や疑問をシェアして、議論し、助言しあった。

さらに、「実在の人物による図書館(真人図書館)」と称して、4人のLGBTの青少年が、自分が成長してきた生活体験を教師たちに語った。その話の中には、自己受容、愛情と性、家族関係とカミングアウト、学校でのいじめなどがあった。

この研習営に参加した長江大学心理相談センターの王江橋先生は、「私は、真人図書館というプログラムがいいと思った。青少年学生と面と向かって交流することによって、私はセクシュアル・マイノリティの学生を本当に知ったし、彼らの人生について感性的な認識も得た。これは良い学習であり、マイノリティたちのために発言し、サポートを提供することは有意義であるとともに、心理の教師としての重要な使命であることがわかった」と感想を述べている(18)

12月3日-4日にも、珠江デルタ地域の教師を対象に、広州で「教師“性/別”研習営」がおこなわれた。この「研習営」には、30人の申し込みがあり、22人の小中学校の教員とソーシャルワーカーが参加した(19)

この「研習営」でも、参加者が自らジェンダーを語ったり、ジェンダー規範について話をしりたりした後、「真人図書館」で、4人のセクシュアル・マイノリティの青少年が自分のアイデンティティや家族関係、学校でのいじめなどについて話をしたという。

これに参加した「蘇先生」は、「最大の収穫は、ジェンダー平等を願い、他人を理解しようと願う活力に満ちた人々と知り合いになったことだ。研修の内容と一つ一つの討論によって、私は自分が知識に乏しいとことがわかったので、今後よく勉強し、自分にできるかぎりのことをしたい」という感想を述べている(20)

こうした研修は、初級の研修とさらに進んだ研修とで構成されてという。初級の研修では、性/別理論の知識やLGBTの青少年のニーズ、教師の介入やサポートの技術などを学ぶ。そして、進んだ研修では、地区を越えて、さまざまなテーマでの研究・討論、経験交流をする。

2016年11月の時点で、合計120人あまりの教師に対して研修がおこなわれたという。また、毎回の「研習営」の後には、現地のLGBT団体が教師の実践をサポートすることも予定されている(21)

こうした「研習営」は、セクシュアル・マイノリティの問題に関心がある教員に対して、より正確で詳しい知識と実際に当事者が語る経験をつうじた認識を得させるものだと言えよう。

おわりに

ホモフォビア教科書を放置する教育部を裁判に訴えることは、非常に有意義であり、その活動の粘り強さもあって、多くの人々の関心を呼び起こすことにも成功したが、ただちに成果を上げるのは難しかった。

それに比べれば、個別の教科書の編者や出版社に働きかけることは、いくらか成果もあげてきた。

個別の教員に働きかけることは、さらに地を這うような活動だが、全体から見ればごく僅かとは言え、少しずつ着実な成果を挙げているように思われる。

このようにさまざまな手段に尽くして、ホモフォビアに対するたたかいはおこなわれている。

(1)同城のブログ「同城青少年资源中心的博客」における自己紹介文。
(2)【漫画资料】同城青少年资源中心,赠送“校园欺凌”漫画手册!(欢迎捐款印刷)」2013-05-01 20:31:12)。
(3)基于性少数的“校园欺凌 STOP!”漫画手册(第三版),免费赠送!(欢迎合作洽谈) 」2016-03-22 GLCAC。
(4)【动态】五年沉淀,我们的高校多元性别教育的探索。快来听听同学们的听课感受吧!」同城青少年资源中心的博客2014-01-10 11:07:54。
(5)大学での講座開設プロジェクトは、この「朋友公益」も、同城と同じ2009年からおこなっている。朋友公益と同城はしばしば共同で科目を開設している。以下では、同城のブログ(同城青少年资源中心的博客)の記事を中心に紹介するが、「朋友公益」のブログ(朋友公益的博客)にも、講座の内容がわかる記事が掲載されている。
(6)「性/別」とは、何春蕤ら、台湾の国立中央大学に設立した「性/別研究室」などが依拠している概念。日本語の「ジェンダー/セクシュアリティ」という概念に近いと思うが、(1)「性別」の語の中間にスラッシュを引くことで、その内部の多元的な流動性や分裂を示すことによって、単純な男・女の二分法を乗り越える、(2)ジェンダー(性別)とセクシュアリティ(性)との相互連関および、両者が集約不可能であることを示す、(あ)「性」の多元的差異(「別」)を捉える、(4)その他の社会的差違(階級、エスニシティ、年齢など)との関連も捉える、という四つの認識を含む(何春蕤著 舘かおる・平野恵子編 大橋史恵・張瑋容訳『「性/別」攪乱―台湾における性政治』御茶の水書房 2013年参照)。
(7)以上は、「2012年中山大学“性/别”公选课 欢迎旁听(图)」淡蓝网2012-03-14、「201年(春季)高校【社会文化与多元性别】公共选修课程」朋友公益的博客2012-03-12 21:57:03。
(8)【性/别公选课•华师】社会文化与性别气质:性别的彩虹光谱」2012-09-24 11:38:08、「【性/别公选课•华师】青年情感与亲密关系」2012-10-08 20:53:01、「【性/别公选课•华师】多元性/别与家庭形式:一个母亲眼中的Gay」2012-10-11 00:51:18、「【性/别公选课•华师】播放电影——《彩虹伴我心》」2012-10-22 22:08:04、「【性/别公选课•华师】中国性少数生存现状与思考」2013-03-19 01:26:54、「【性/别公选课•华师】男女之间——我的跨性别路」2013-04-15 14:03:53、「【性/别公选课•华师】中国独立影像:性少数的文化与发声空间」2013-04-23 10:38:39、「【性/别公选课•华师】欲望与愉悦:珠三角区性工作者生存现状」2013-05-06 19:45:15、「【性/别公选课•华师】同性伴侣情感面对面」2013-05-13 20:52:17。
(9)【活动】高校性/别文化公选课(武汉湖工大),第三讲《男女之间-我的跨性别之路》」2014-04-25 15:12:29。
(10)【性/别公选课•中山大学】当生命遇上艾滋」2014-04-07 12:18:43、「【性/别公选课•中山大学】第八讲《形婚研究》」2014-04-23 12:33:20、「【活动】高校多元性/别公选课(中大),第十讲《香港性别运动》」2014-05-06 11:12:30、「【活动】高校多元性/别公选课(中大),最终讲-课程联欢彩虹趴」2014-05-12 14:15:49、「【多元性别公选课(中大版)】第四讲:性别表演与多元性别」2014-10-29 17:10:37、「【多元性别公选课(中大版)】第六讲:女同社群现状与发展」2014-11-10 22:21:18、「【多元性别课程(中大版)】第七讲:性与道德」2014-11-18 21:24:33、「【多元性别公选课(中大版)】第八讲:性模糊与双性恋」2014-11-24 22:27:08、「【多元性别公选课(中大版)】第九讲:LGBT议题媒体倡导」2014-12-02 20:56:14、「【多元性别公选课(中大版)】第十讲:彩虹Party到咯!约吗?」2014-12-09 20:54:23。
(11)その内容は高燕寧『同性恋健康干預』(復旦大学出版社、2006年)に収録されている。
(12)以上は、「老师,为了学生,U站出来吗?“Teacher,we need you!”全国教师撑同志行动,开始啦!」同城青少年资源中心的博客2014-10-19 13:37:07。
(13)【回顾2014】60位教师撑同志,够拼了!“盘点”60个温暖的力量」同城青少年资源中心的博客2015-01-06 00:12:44
(14)贵州首个站出来支持同性恋的两位老师!!」贵州黔程总组2014年11月13日 19:33
(15)教师撑同志行动|今年教师节,我们过得不一样」2015-09-10 GLCAC。
(16)【回顾】新生宝典,请速来认领你身边的友同老师」2016-09-04 GLCAC GLCAC、、「【预告】一批友同老师即将上线l文末有彩蛋」2016-09-07 GLCAC GLCAC。
(17)【加群】自己老师自己“教”!9.10让老师“同志”频道开脑洞!」2016-08-31 GLCAC GLCAC、「【预告】910!帮老师的“同志”频道开脑洞!撩么? 」2016-08-29 同志之声 GLCAC。
(18)【动态】学习、倾听,老师们和LGBT学生在一起|5月教师研习营回顾」2016-07-10 GLCAC GLCAC。ただし、「【预告】“打破区隔”—教师“性/别”研习营招募 (2016.5,武汉.初阶)」(2016-05-04 GLCAC GLCAC)には、5月21日の9:00‐18:00に武漢で、武漢やその周辺の地域の人のために「性/別研習営」がおこなわれることが予定されていたとある。ひょっとしたら、この日程が変更されたのにかもしれない。なお、2015年にも、11月22日に、武漢で、同城と武漢LGBTセンターが「校内心理相談と学生指導」という「初級検習営」をおこなうという告知がブログに出ている(「“打破隔阂”——教师 「性/别」研习营」同城青少年资源中心的博客2015-11-15 13:06:54)。
(19)【招募】老师怎么做性/别教育?│研习营广州站!」2016-11-11 GLCAC GLCAC。
(20)天凉了,来一锅性/别教育大补贴│11月简报」2016-12-19 GLCAC GLCAC。
(21)叮叮当,我们带着老师和社工去泡Gay吧」2016-12-25 GLCAC GLCAC。

大学のホモフォビア教科書の編者・出版社に対する働きかけ

目次
はじめに
一、張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(曁南大学出版社)に対して
 1.西西、秋白の不屈の行動から励まし
 2.副編集長は「私は専門家ではない」と本の編者の責任にし、本の編者は対話を途中で拒否
 3.西西ら、ユーモアある抗議をし、別の副編集長が反省を表明するも、その後、態度急変
 4.副編集長「教材の内容は、現在の法律の条文に照らして判断」
二、高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(高等教育出版社・北京大学出版社)に対して
 1.本の編者、訂正を表明
 2.訂正への賞賛と今後の行動を求めるアクション
 3.編集者、個人として、訂正個所の明示とセクマイ差別の重視の意向を表明
おわりに

はじめに

中国では、同性愛を「障害」や「変態」として記述している大学の教科書が少なくないという問題に関して、前回、本ブログでは、「ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴」についてご報告した。

もちろん、ホモフォビア教科書の是正を求める働きかけは、教育部に対してだけでなく、教科書を出版した編者や出版社に対してもおこなわれているので(1)、今回は、それらについてご紹介したい。

一 張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(曁南大学出版社)に対して

張将星・曾慶編『大学生心理健康教育』(2013年 曁南大学出版社)は、「よく見られる性心理障害」の中の一つに「同性愛」を挙げていた。また、「同性愛」について、「性愛の面での紊乱、あるいは性愛の対象の倒錯であると考えられる」とも記していた(2)

1.西西、秋白の不屈の行動から励まし

広州の大学の女子学生の西西さん(仮名)は、同級生たちが「同性愛は病気だ」とか、「ゲイはエイズだ」と言うのを聞き、怒りを感じていた。しかし、それに反論すると、彼らに「同性愛は心理障害だと教科書に書いてある」、「教科書に同性愛はエイズのハイリスクグループだと書いてある」と言われ、西西さんが「教科書が間違っている」と言ってもわかってもらえなかった。西西さんは、教科書の権威の前には、自分が無力であることを感じ、涙をこらえきれないこともあった。

2015年末、広州市の曁南大学のゲイの男子学生が、その性的指向が一因となって自殺したと思われる事件(3)が起きたことも、西西さんに絶望感を与えた。西西さんは、友人の話から、曁南大学の公共選択科目の「大学生心理健康教育」で使用されている教材の『大学生心理健康教育』は、同性愛をスティグマ化する内容に満ちていることを知った。また、この教材の2人の編者は曁南大学の「大学生心理健康教育」の先生であり、「曁南大学心理健康教育センター」のメンバーでもあることも知り、この教材の影響力は非常に大きいと思った。西西さんは、斐然さんもこうした教材を読んだのかもしれないし、こうした教材がもたらした排斥と偏見が、彼を暗くて狭い空間に閉じ込めたのかもしれないと思った。

その後、西西さんは、LGBTの民間団体に加わった。しかし、そこでも、同性愛に汚名を着せる教材によって傷つけられた人々といつも接するようになったことによって、西西さんは、あらためて自分の無力さと絶望を感じるようになった。あるゲイの男性の父母は、大学の教材に「同性愛は矯正することができる」と書いてあったことから、息子を「矯正」しようとしていた。また、彼自身もどこかに助けを求める以前に、助けが得られるという希望自体を持てないという状況を聞き、西西さんは辛かった。

以上のようなさまざまな経験から、西西さんは自らの無力感と絶望を感じた。ギリシャ神話の中で、シジフォスは巨石を山頂近くまで運び上げるが、そのたびに巨石は山から落ちていく。西西さんは、自分がホモフォビア教科書を批判して、自由な空間を広げようとしていることも、シジフォスのしていることと非常に似ているのではないかと感じた。秋白さんにとって、巨石は、運動をする者に対する打撃の象徴だった。

しかし、西西さんは、秋白さんたちが行動によって自分の権利を守ろうとしている姿を見て、励まされた。西西さんは、社会の不公正に直面したとき、黙って受け入れることを選択するのではなく、そうした中でも、同性愛に汚名を着せる教科書の内容について対話を広げ、空間を変えることを求める選択をしているのがシジフォスだと思うようになったのである。

西西さんは、教科書の是正を求める行動を始める決心をした(4)

2.副編集長は「私は専門家ではない」と本の編者の責任にし、本の編者は対話を途中で拒否

6月1日、西西さんは、『大学生心理健康教育』の中にある同性愛に汚名を着せる/誤った内容について、曁南大学出版社と編者の張将星さん・曾慶さんに是正を求める公開書簡を送った(5)

6月4日、西西さんは、曾慶さんに電話をかけた。曾慶さんは、その章は張将星さんや自分が書いた章ではないので、著者に連絡しているところであり、公開の声明を出すと述べた。その声明は西西さんにもメールで送ると述べた。しかし、その後、曾慶さんからは何の連絡もなかった。

6月6日、西西さんは、曁南大学出版社に電話をかけた。翌日、電話は通じたが、相手は、公開書簡は受け取っていないと言った(ところが、西西さんは、郵便会社から、すでに6月2日には、配達および受渡済みの通知を受け取っていたのである)。そこで、西西さんは、電話で自分の訴えを話したが、相手は、すぐに電話を切った。

そこで、6月8日、西西さんと2人の若者は、直接曁南大学出版社に行って、副編集長であり副研究員である晏礼慶さんと1時間あまり話をした。

まず、西西さんらが記述の誤りを指摘すると、晏さんは、「私にどうして『同性愛は心理的障害である』という記述が誤りか否かがわかるだろうか。私に基準をください。これは、もともと、ある観念が正しいか間違っているかの問題だ」と答えた。

それに対して、西西さんらが中華精神医学会の「中国精神障害の分類と診断と基準第3版」が心理学界の科学的基準であり、観念の是非の問題ではないことを指摘すると、晏さんは、「公開書簡を編者に転送する」と言った。

さらに、西西さんらは、出版社と編者、西西さんらの3者が会って話をする場を設けるよう求めた。しかし、晏さんはそれを断り、西西さんらに、直接編者と話をするように言った。

西西さんらは、『大学生心理健康教育』は純粋の出版物ではなく、教材であり、学生に悪い影響を与えていることを指摘した。しかし、晏さんは「まずそれが誤りであることを確定させることが必要だ。私たち編集者がどうして『同性愛は心理的障害である』という記述が誤りか否かを判断できるというのか。私たちは専門家ではない」と答えた。

それに対して、西西さんらは「副編集長としてあなたは、『中国精神障害の分類と診断と基準第3版』を基準にして、その記述の誤りだと判断できないのか?」と追及したが、晏さんは「私は専門家ではない」と繰り返した。

それに対して、西西さんらは「出版社として、出版した内容が社会大衆に悪影響を与えていたら、出版社は本当にどんな責任も負うべきではないのか?」と問うた。

すると、晏さんは「当然、負わなければならない! 出版物は出版前に、本の内容について、以下の面から審査をする。
 第一に、出版物の内容に政治的方向に誤りがないかどうかである。たとえば反党があるのかどうか。
 第二に、出版物の内容に法律法規に反するものがないかどうかである。たとえば憲法に反してはならないし、四つの基本原則(社会主義の道、人民民主主義独裁、中国共産党の指導、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想)に反対してはならない。
 第三に、出版物の内容にロジックの上で誤りがないかである。たとえば、前後の文で矛盾したことを言っていないかとか、1+1=3のような常識的な誤りである。
 第四に、編者が剽窃していないかだが、もし剽窃があったとしたら、『文責は自らが負う』と説明する。
 もし、政治的方向やロジックの上で誤りがあったり、法律法規に触れる誤りがあったりしたら、教材について回収処理やお詫びをする。しかし、問題は、現在法律上は規定がない、あなたが言うところの理解の誤りだ。私はもう一度言うが、『同性愛は心理的障害である』という記述は学術的な専門的議論であり、それに対しては編集者には判断する能力がないので、出版社にではなく、編者に連絡すべきである」と答えた。

最後に西西さんらが「もし私たちが最終的に編者と話をして、編者が公開の声明を出して訂正したなら、あなたがたも訂正して、公開の声明を出して回収するのか?」と尋ねると、晏さんは、「それなら問題はない。しかし、私たちにできるのは、まだ市場に出ていない書籍を回収することだけだ。また、私は出版社が公開の声明を出す必要はないと思う。編者が出したいなら、それは彼の問題だ」と答えた。

西西さんらは、以上の晏さんの答えに次のような疑問を感じた。
1.教材の中で同性愛を「性心理障害」にするのは、どのような性質の誤りなのか? 事実の誤りという性質のものではないのか?
2.教材の属性は何か? 教材と一般の学術的専門書とを同じように扱えるのか?
3.出版社の編集者は、出版物の内容に学術的・専門的な誤りがあるか否かを判断する能力がないのか?
4.出版物に政治的方向かロジック上での誤りがなければ、出版物が社会大衆に悪い影響を与えても、出版社には出版物に対して何ら責任がないのか? また、出版社は出版物について処理(回収、お詫び、訂正声明など)する責任はないのか?(6)

6月19日には、西西さんの携帯電話の番号からは編者の曾慶さんにつながらなくなっていたので、学友の携帯電話の番号を使って曾慶さんに電話をかけた。しかし、西西さんが名乗ると、相手は、「間違い電話だ」と言った。その後、その学友の携帯電話の番号を使って曾慶さんに何度も電話をかけたが、ずっと話し中になっていた(7)

3.西西ら、ユーモアある抗議をし、別の副編集長が反省を表明するも、その後、態度急変

西西さんは、曾慶さんに対話を拒絶されて、シジフォスの話に出てくる巨石が落ちていくように感じた。しかし、西西さんは、「こんなときであっても、私は『シジフォス』の(あきめない)態度を忘れなかった」と言う。

このとき、西西さんの頭の中に、『夜と霧』の作者であるヴィクトール・フランクルの次の言葉がひらめいた。「ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ。ユーモアとは、知られているように、ほんの数秒でも、周囲から距離をとり、状況に打ちひしがれないために、人間という存在にそなわっている何かなのだ」。西西さんは、「鴨梨(河北省特産のナシで、甘くさくさくして汁が多く、香が高い)」を教科書の編者や出版社に贈るというアクションを思い立ち、人々から、彼らへのメッセージを募集した(8)

7月8日の午前10時、西西さんと同級生たちは、一カゴの「鴨梨」と「鴨梨は暑さを癒すことができる。教材は毒を取り除かなければならない(鸭梨可解暑,教材要解毒)」「曁南大学出版社よ、学生のために発言してください」というスローガンを書いたプラカードを持って曁南大学出版社の玄関に行った。一つ一つの鴨梨には、人々が曁南大学出版社と教科書の編者へのメッセージを貼りつけておいた。それらのメッセージは、曁南大学の学生、大学でのジェンダー/セクシュアリティ教育に関心を持つ人々、同性愛者の父母らが書いたものだった。西西さんは、こうしたメッセージをパフォーマンスアートの方式で伝えることによって、人々の期待を本当の「鴨梨」に変えたかったのだ。

その後、西西さんと同級生たちは、曁南大学出版社の副編集長の李戦女史の事務室に行って、鴨梨と300人近くが連署した手紙を手渡し、同出版社の無責任な態度に失望を表明した。

それに対して、李戦さんは、教材の中に同性愛に汚名を着せる内容があって、社会に対してマイナスの影響を与えていることを認めた。また、出版社にはこの問題について絶対に責任があるので、出版社のこれまでの消極的な対応についてお詫びの気持ちを持っているとも述べた。

しかし、西西さんが出版社から出て半時間後、李戦さんの態度は大きく変わった。西西さんに李戦さんから電話がかかってきて、「編者こそ第一の責任者なので、同性愛が病気か否かの問題は編者に判断をまかせなければならない」と言われた後、すぐに電話を切られた。

西西さんらは、編者の職場である曁南大学心理健康教育センターにも行って、同じように、鴨梨と連署をした手紙を渡した。編者本人は不在だったが、『大学生心理健康教育』はセンターの共同の編集なので、西西さんはセンターの先生と対話ししようとした。しかし、冷たく「私は聞かない」と言われただけだった(9)

4.副編集長「教材の内容は、現在の法律の条文に照らして判断」

その後1週間たっても、渡した手紙に対して、出版社や編者からは反応がなかったので、西西さんは、最初に会った晏礼慶さんに電話をした。

晏さんは、西西さんが無断で会話を録音して、その内容の一部だけをネットに公開したことに対したことに腹を立てていた。西西さんも、その点は謝った。

また、晏さんは、西西さんらが入口でプラカードを掲げたり、横断幕を広げたり、鴨梨を送る「パフォーマンスアート」をしたり、「毒教材」「心理不健康センター」といった言葉を使ったりしたことについても、「敵意と対立による方式は、問題をますます悪化させる」と批判した。

西西さんが「出版社として『大学生心理健康教育』という本をどうするのか?」と尋ねると、晏さんは、「もし図書に何か問題が起きたら、私たちはすぐに責任を持って処理と訂正をする。実際、あなた方のこの本についての『公開書簡』を受け取ったら、私たちは直ちに執筆者に連絡を取った。なぜなら、同性愛が精神病か否かは、中国と西洋にはさまざまな判断があるからだ。医学の専門家ではない者として、私たちはその判断を執筆者にゆだねる。なぜなら、彼らこそが専門的な学術権威だからだ。作者も、関係資料を受け取ったと言ったし、教材の内容を今の法律の条文と比較対照すると述べた」と答えた。

西西さんが、その比較対照の結果と、いつ訂正するのかについて尋ねると、晏さんは、「私たちはまだ比較対照の結果を知らないし、いつ訂正するかも今はまだ確定できない。しかし、明確に言えるのは、誤りがあれば、その図書は重版か改訂の際に、私たちは作者と相談してまじめに訂正するので、安心していただいていい」と答えた。

最後に西西さんが「『大学生の心理健康教育』の中に、『同性愛は性愛の面の紊乱あるいは性愛の対象の倒錯である』と書いてあることについては、晏さん個人はどのように見ているのか」と尋ねると、晏さんは、「私はこの面の専門家ではない。けれど、私が知るところでは、現在の中国の法律ではまだ同性婚の合法化に関する条文はなく、中国の社会的観念も、まだ同性婚を普遍的に受け入れる段階には発展しておらず、現在も国外にも同性婚がある国とない国があり、区別して扱わなければならない。もちろん、将来、必ず社会は発展して、しだいに多元的で包容的になって、マイノリティの権益と個性の主張も尊重されるようになるだろう。私はこのよう理解している」と述べた。

以上の晏礼慶さんの回答について、西西さんは、以下のように批判している。

・同性愛が精神病であるか否かについては、中国でも世界でも、科学の世界で、「同性愛は性心理障害ではない」という結論が出ている。

・法律の条文(まして同性婚姻法が成立しているか否か)によって、心理学の学術的観点を判断するのは完全に誤っている(10)

西西さんらの指摘にする編者と出版社の態度は、無責任で冷淡だと言えよう。政治的な「誤り」や現行の法律に直接違反する誤りには敏感でも、人権に関わる問題については学問的な誤りであっても鈍感だ。

しかし、ともかく何度か対話を成り立たせたことや、検討を表明させたことには意義があるだろう。

また、次の事例では、編者と出版社から、比較的良い反応が得られた。

二、高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(高等教育出版社・北京大学出版社)に対して

高銘暄・馬克昌編『刑法学(第五版)』(2011年 高等教育出版社・北京大学出版社)は、その第七章「犯罪の主体」の第三節「刑事責任能力に関係する要素」の中の「精神障害」の項目において、「性変態」の一つとして「同性愛」を挙げていた。

1.本の編者、訂正を表明

2016年5月29日、江西師範大学の法学部の学生の「夏天」さん(後述の『南昌晩報』の記事には、3年生の「夏旭」さんとある)は、自らが履修していた「刑法学」の授業で『刑法学(第五版)』が使われていたことから上記の問題点に気付き、高等教育出版社と北京大学出版社にそのことを指摘する手紙を送った(11)。6月5日には、この本と該当の章の編者である北京師範大学の趙秉志教授にも手紙を送った。

夏天さんは、さらに出版社に電話をかけるなどして働きかけた結果、6月12日、北京大学出版社から電話がかかってきて、北京師範大学の趙秉志教授が「当時この教科書を編集した教授や私は比較的高齢で、この問題について細かい検討や考慮をしていなかった。この内容については、次に重版と新版のときに改める」と述べていることが伝えられた(12)

『南昌晩報』は、そのことを、「江西師範大学の3年生の女子学生、『刑法学』のテキストの『訂正』に成功」という見出しで伝えた(13)

2.訂正への賞賛と今後の行動を求めるアクション

ただし、夏天さんは、上の手紙の中で、出版社に対して、以下のことも求めていた。
 1.貴社が出版している図書について、同性愛とセクシュアル・マイノリティについての誤った/汚名を着せる内容が含まれている教材について検査をして、検査報告を作成し、メールと書面で私に回答する。
 2.貴社の出版物の中のこうした誤った内容について、公式サイトあるいは微信などで「内容の訂正の声明」を出して、教材がもたらしたマイナスの影響をなくす。
 3.誤った教材の編者と連絡を取って、次の出版/印刷の際に訂正するとともに、新しく出版/印刷する教材の目録の前に「内容の訂正の声明」を掲載する。
 4.貴社の職員、とくに教材の編集と校正をする職員に対して、同性愛とセクシュアル・マイノリティの科学的常識と専門知識の研修をして、誤りの再発を防ぐ。(14)

また、趙秉志教授に対しては、以下のことを求めていた。
 1.次の版本/刷の際には、現在の科学的基準にもとづいた訂正をお願いする。
 2.訂正する以前は、大学の日常の授業と教学の中で、この部分について訂正する説明をおこなう。
 3.後日の学術会議との交流の中で、学者や教授の皆さんと、この問題について改めて討論する。

以上の点については、その後も回答がないままだった。

夏天さんは、出版社と趙秉志教授に対して、もっと愛と激励が必要かもしれないと思った。そこで、彼らに対して、訂正すると表明したことに対して賞賛を示す赤い花のマーク(日本で言う「はなまる」に当たる意味があるようだ)やレインボーの各色の花のマーク、および上のような要望や自らの経験など書いたものを、多くの人に自分のところに送ってもらい、それらを贈るプランを立てた。

その結果、67人から協力が得られ、夏天さんがそれらをまとめて、北京大学出版社と趙秉志教授に贈った(15)

3.編集者、個人として、訂正個所の明示とセクマイ差別の重視の意向を表明

返事がなかったので、7月11日、北京大学出版社に電話をかけると、同社の法律類出版物編集部の哥さんに電話をつながり、以下のような回答を得た。

・私個人は、この問題だけのために単独の訂正の声明を出すことは、実際の可能性は大きくないと思う。私が個人の権力の範囲内でできることは、編集責任者に、目次の前の「重版の説明」に、たとえば、読者のフィードバックにもとづいて、私たちはどの章の度の節の内容にどのような訂正をしたかを示すように促すことである。

・趙秉志教授本人は、この点を訂正することに非常に同意している。この本は2000年から出版を開始しており、当時の基準では「同性愛は精神病だ」という結論も、完全にデタラメで道理がないとは言えなかった。しかし、私たちはこの領域について不案内で、最近の新しい基準と学界の通説についてよく知らず、すぐに訂正できなかった。出版社として、私たちは自分の責任として、時代とともに歩み、現在の科学の基準に合致しない内容を訂正しなければならない。

・私たちは、これまで、編集者としての仕事において、「敏感」な話題は政治・民族・宗教のようなこと、たとえば民族差別や宗教差別などをしないことであって、同性愛とセクシュアル・マイノリティ差別は敏感な話題ではなかった。しかし、あなたのフィードバックによって、今後は私たちの仕事において、少なくとも私は法律編集部として、必ずこの問題を重視して、私たちの編集責任者と意思疎通をする。

夏天さんは、「訴えがすべて実現したわけではないが、北京大学出版社と北京師範大学の趙秉志教授のフィードバックは、最近の広東の某出版社の某編者に比べれば、本当にすばらしい!」と述べた上で、今後を見守ることを表明した(16)

おわりに

この2例だけでは明確なことは言えないが、教育部などの官庁への働きかけと比べると、編者・出版社への働きかけは、曲がりなりにも対話になりやすく、検討や訂正を表明させるなど、成果も上がっているように思う。

しかし、全体的には、編者・出版社も、セクシュアル・マイノリティの差別・人権問題への対応は弱い。それは、政治的「誤り」に対する対応の敏感さと対照的である。

そうした困難に立ち向かうがゆえに、中国におけるホモフォビア教科書を是正する運動には、一般的には単なる「徒労」しか意味しないシジフォスの話を前向きの話として読み替えるような粘り強さがあることにも注目したい。

(1)上の裁判を起こした広東省広州市の中山大学の女子学生の秋白さんたちも、2015年3月、広東省教育庁に対して、「教科書の同性愛に対する誤った/汚名を着せる描写の内容に関する公開の通報の手紙」を出したことがあるが、その中で、とくに広東高等教育出版社の教科書の問題点を批判していた。たとえば、同社が出した『心理健康課程』(2003年。2008年再版)は、「よくある精神疾患とその対応」で、「性心理障害の類型」の一つとして「同性愛」を挙げている。また、『諮詢心理学』(2013年)は、同性愛を障害とみなしているのみならず、どのように同性愛を治療するかとして、電気的刺激などの方法で同姓愛の行為に嫌悪感を覚えさせて性的指向を変えることなどまで書いてある。
 広東省教育庁は、この手紙を広東高等教育出版社に転送したため、4月、秋白さんは、広東高等教育出版社から書面での回答を受け取った。しかし、その回答は、教材の中になぜ同性愛を入れたということと、入れた章・節の内容についてであり、秋白さんが批判した問題には触れていなかった。さらに、回答の中には、「同性愛の青少年は、思春期に感情・性などについて心理的な苦慮、憂鬱などを感じるので、『同性愛患者』という用語は合理的だ」とも書いてあった(以上は、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)。
(2)六一行动︱面对恐同教材,祖国的花朵Say No!」2016-06-01 西西 推石头的西西弗斯
(3)2015年12月30日、その男子学生は、微博で遺書を公表し、自分がうつ病であることのほか、父母に対して「私はあなた方に、実は自分が同性愛者で、男の子が好きだということを告白できませんでした」「私は自分が同性愛者であることを恥ずかしいと思ったことはありませんが、後継ぎを作ってほしいというあなた方の願いを実現できなくて申し訳ないと思っています。申し訳ありません」とも書かれていた(-小斐然「对不起,再见」2015-12-30 20:29:40)。この遺書には2016年1月1日時点で、120万アクセスがあるなど、大きな反響を呼んだ(「暨大同性恋男生抑郁跳楼 微博遗书称不敢跟父母坦白」『南方都市报』2016年1月1日)。教科書について裁判を起こした秋白さんは、彼の自殺の原因について勝手に断定はできないと述べつつも、2004年に台湾で葉永鋕さんというトランスジェンダーの学生がいじめにあって自殺した事件が2006年の「ジェンダー平等教育法」の成立に結びついたことを引き合いに出して、「ある生命が消え去ったことで、世界は何か変わるのか」という文を書いた(「一条生命的消逝,世界会因此有所改变吗」)。また、2015年にうつ病患者としての訴えをする「フェミニズム・ウォーク」をおこなった黄葉さんは(本ブログの記事「林鯨らの「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」と黄葉らの「直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」(北京~広州)」参照)は、セクシュアル・マイノリティや女性はうつ病になりやすいことを指摘し、曁南大学に対して、1.ジェンダーと多元的性別の公共選択課程を開設すること、2.すべての教職員に対して、セクシュアリティ/ジェンダー平等の意識研修をおこなうこと、を提案した(「暨大男同自杀 抑郁症女大学生致信呼吁建设友好校园」2015-12-31 黄叶韵子 黄叶假装在徒步)。
(4)以上は、「以“西西弗斯”的姿态面对“恐同”教科书」2016-06-19 西西 和夏天的一天
(5)六一行动︱面对恐同教材,祖国的花朵Say No!」2016-06-01 西西 推石头的西西弗斯。
(6)以上は、「与暨大出版社面谈“恐同教材”,对于我们的争论,你怎么看?(投票ing~) 」2016-06-08 西西 推石头的西西弗斯。
(7)以“西西弗斯”的姿态面对“恐同”教科书」2016-06-19 西西 和夏天的一天。
(8)同上。
(9)以上は、「教材恐同,出版社编者回应不给力,女大学生送“鸭梨”」-推石头的西西弗斯的微博2016年7月9日 22:10:12。「【动态】出版社编者,来!干下这碗鸭梨解毒汤吧!!」同城青少年资源中心的博客2016-07-10 16:47:20。
(10)以上は、「【动态】致暨大出版社:推卸责任哪有改教材好玩」2016-07-19 西西 GLCAC
(11)以上は、「沉默的刑法学 the Silence of the Criminal Law Textbook」2016-05-27 可爱又迷人的 和夏天的一天、「治愈星期天 Self-healing Sunday」2016-05-29 嗯我是 和夏天的一天。
(12) 6•20的小红花 Little Red Flower Campaign 620」2016-06-20 爱 和夏天的一天。
(13)江西师大大三女生 成功“修改”《刑法学》课本」『南昌晩報』2016年7月18日。
(14)以上は、「【新消息】您有新的考试月大礼包,请查收」 2016-06-03 你我都期末狗 和夏天的一天。
(15) 6•20的小红花 Little Red Flower Campaign 620」2016-06-20 爱 和夏天的一天。
(16)以上は、「“我不恐同!”---给不恐同的北京大学出版社&北京师范大学赵秉志教授的小红花」2016-07-11 711不恐同 和夏天的一天。

ホモフォビア教科書を放置する教育部を訴えた裁判の紆余曲折とその敗訴

目次
はじめに
2015年11月 教育部が「通報すれば処理する」と述べたため、秋白、訴訟撤回
12月~2016年3月 秋白らが通報するが、教育部は受理・回答をせず
4月 秋白、教育部の無回答を行政不作為で再度提訴するが、裁判所は受理せず
5月 秋白、教育部に行政再議を申請するが、教育部は受理せず
6月 秋白、教育部の行政再議不履行を裁判所に訴え、受理される
9月 第一審の審理――秋白と弁護士の訴え
9月 判決――原告は「特定の利害関係者」ではないという理由で秋白敗訴
2017年1月 第二審の審理――教育部、教材の問題点は否定せず、しかし直接秋白を傷つけてはいないと主張
秋白の裁判、青年たちをさまざまな行動へ
おわりに
(以下、追記)
2017年3月 二審判決――同様の理由で秋白敗訴
秋白の今後の決意と呼びかけ

はじめに

中国では、2001年に中華精神病学会が決定した「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」によって、同性愛は精神病とは見なされなくなった。これによって、中国でも同性愛の「非病理化」がなされたと言われる。しかし、大学教科書においては、その変化が反映されているのは今なお一部にとどまり、多くの教科書が、同性愛を「障害」や「変態」として記述している。

2015年5月、広東省広州市の中山大学の女子学生で、レズビアンの秋白さん(微博: @Qamily_Jonnie)は、教育部に対して、大学が誤った非科学的なホモフォビア教材を使用していることについてのどのような監督措置をとっているかについて情報公開申請をおこなった。政府情報公開条例の規定によると、教育部は申請を受け取った日から15日以内に回答をしなければならないが、その法定の期限内に教育部は回答しなかった。

そこで秋白は、広州市天河区人民法院(裁判所)に対して、教育部を行政不作為で訴えたが、同法院は訴えを受理しなかった。秋白は、広州市中級人民法院に控訴したが、結果は同じだった。そこで、秋白さんは、8月14日、北京第一中級人民法院に訴えたところ、17日、訴えが受理された(以上について詳しくは、本ブログの記事「大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動」参照)。

2015年11月 教育部が「通報すれば処理する」と述べたため、秋白、訴訟撤回

11月24日、秋白さんが教育部を訴えた裁判が開廷した。

このときは、法院(裁判所)での話し合い(庭前对话)という形を取った。こういう形を取ったのは、教育部が法院に対して「原告の請求を棄却するか、法による調停をお願いしたい」と要請し、それを受けて法院が秋白さんに意向を尋ねると、秋白さんも教育部と対話することを望んだためである(1)

この日、秋白さんの支援者が20名あまり集まって、法院の外で、「同性愛についての誤った内容がある教材の使用を拒否する」、「私たちは、秋白とともにある」と書かれたプラカードを掲げ、レインボーフラッグを広げてアピールした(2)

話し合いは法廷の第七談話室でおこなわれ、裁判官と書記官、秋白さん、王振宇弁護士(秋白さんの代理人)、教育部の政策法規局の鄺璐さん、同事務局の職員(この2人は教育部の代理人)が出席した。

鄺璐さんは、「大学には教材を編纂・採用する自主権がある。教育部にはその内容について一字一句誤りがないかを審査する職責はない。教育部が負っている職責は、マクロな観点からの質の管理だ」と述べた。

秋白さんが「マクロな管理とは何か?」と尋ねると、鄺璐さんは「教材の内容は法律法規に違反すべきではなく、社会の安定を損なうべきではなく、他の公民の権利を損なうべきではない」と説明し、「教材が出版物として、その内容が合法か否かについては、出版管理部門に言うべきだ」と述べた。それに対して、すぐさま秋白さんは、「3月に私は出版管理部門に意見を述べたが、彼らは教育部の責任だと述べた」と言った。

また、鄺璐さんは、「この間、同性愛に汚名を着せる内容についての通報は受け取っていない(その理由は、教育部が法院に出した「答弁書」によると、文書受付室が郵便物を処理した際に、誤った部門に配達したからだという)ので、教材について処理しなかった。もし通報してくれたら、私が教育部の関係部門に取り次ぐ」と言った。さらに、その日の午後、この席にいた教育部の事務局の職員が秋白さんに電話をしてきて、「教育部統一監督通報受理センターに通報すれば、通報監督システムを通じて処理する」と言った(3)

もっとも、この日、秋白さんが教育部の職員に、「教育部で大学教育の質に対して監督・評価する職能は、具体的にはどの部門/工作組が責任を持っているのか? どのように評価するのか?」と尋ねたとき、教育部の職員は「よく知らない」と答えた。また、上述のように、鄺璐さんは「教材の誤りにつていの通報を受け取っていない」と言った。秋白さんは、教育部のこのような責任逃れをする官僚的態度に非常に不満を持った(4)

しかし、秋白さんが「教育部を訴えた初志は、実際は、勝訴するという期待にあったのではなく、訴えをつうじて教育部と対話し、教育部に問題を認識させ、確かな訴えのルートを提供させることにあった」。秋白さんは教育部と対話し、訴えのルートが示されたので、12月末、訴訟を撤回した(5)

12月~2016年3月 秋白らが通報するが、教育部は受理・回答をせず

12月17日、秋白さんのガールフレンドが、レズビアンたちに、各自が教材の同性愛についての記述の誤りについて指摘したものを「教育部統一監督通報受理センター」に郵送して通報するよう呼びかけた(6)

たとえば、こうした呼びかけもあり、12月から、秋白さんを含めた80人あまりの全国各地の大学生が、「教育部監督通報統一受理センター」に通報の手紙を出して、教育部に同性愛者に汚名を着せる教材の内容に対して、監督の職責を果たすよう求めた。

ところが、秋白さんの通報だけが、なんと「審査する機関がない」という理由で、返送された。その後、何度出しても、返送された。他の人々の通報も、返送こそされなかったものの、回答は来なかった。

そこで、秋白さんは、5回目は「教育部監督通報統一受理センター」に出した通報の手紙を、同時に教育部の袁貴仁部長にも送った。すると、やっとその2通の手紙は捺印されて受領された。

ところが、その手紙についても、3月末、教育部政策法規局の職員から秋白さんに電話がかかってきて、「秋白さんの通報は、比較的特別なので、書面での回答はできないし、このような通報を処理するシステムもない」と述べた。秋白さんが、「なぜ特別なのか」、「なぜ書面での回答はできないのか」と尋ねると、この職員は明確な回答をせずに、電話を切った。その後は、秋白さんが何度電話をしても、電話を取る人がないか、通話中だった。

以前、秋白さんに通報の資料を届けることを承諾した鄺璐さんの職務用の電話にもつながらなくなった(7)

4月 秋白、教育部の無回答を行政不作為で再度提訴するも、裁判所は受理せず

4月25日、秋白さんは、北京市第一中級法院に、教育部から回答がないことを行政不作為で訴えた。

しかし、1週間後、同法院から立件しない(受理しない)という回答が返ってきた。その理由は、「秋白の訴えの理由は、陳情の事項に属するが、この陳情の事項は、訴えたものの合法的権益を侵犯していないから」というものであった(8)

5月 秋白、教育部に行政再議を申請するが、教育部は受理せず

5月7日、秋白さんは、自らの微信で、「北京高級法院に控訴するか、それとも教育部に行政再議(中国における行政不服審査制度(9))を申請するか」について投票をしてもらうよう訴えた(10)。その目的は、自分の考える助けにするためだけでなく、人々の関心を引くためでもあった(11)

その結果、控訴と行政再議に対する投票数は、ほぼ同数だった。控訴したほうが影響を広げ、メディアの関心を引き付けるためにはよいという意見もあった。しかし、行政再議のほうが数票多く、そのことと、友人の意見とによって、秋白さんは行政再議を選択した。それは、「行政再議のほうが、焦点を教育部の教材の監督管理に当てられるからであり、行政再議のほうが速くて、1カ月程度で回答がもらえるからでもあった」。また、「もし行政再議の結果がダメでも、その後に教育部を提訴することもできるから」でもあった(12)

5月16日、秋白、教育部の政策法規局に行政再議を申請し、教育部に職責を履行するよう求めた。しかし、20日、教育部は、「申請人(秋白)が請求した事項は。申請人本人とは利害関係がなく、合法権益を侵犯しておらず、その権利・義務に実質的な影響はない」という理由で、秋白さんの申請を受理しなかった(13)

6月 秋白、教育部の行政再議不履行を裁判所に訴え、受理される

6月2日、秋白、教育部の行政再議不履行を北京市中級人民法院に訴えた。これは、同月14日に受理された。

今回は、教育部に対する2回目の訴訟になる(受理されなかったものを含めると3回目)。違いは、前回は情報公開申請に対して回答がなかったことであり、今回はホモフォビア教材の通報に対して回答がなかったことである。秋白さんが言うように(14)、今回のほうがより直接教材に対する対処方法を問題にしている。

この秋白さんの提訴については、募金活動もおこなわれた。まず、ネットを通じての募金で1万7542元が集まった。また、秋白さんの誕生日パーティーが開かれ、そこでは、「六色音符合唱団」というLGBTフレンドリー合唱団による合唱、ボランティアによる弾き語り、参加者全員での《勇気》(梁静茹)の合唱などがおこなわれた。この誕生日パーティーでも、入場券、会場での募金、バザーなどによって計1万1111元が集まり、ネット募金と合わせて、募金の合計は2万8653元(約50万円)に達した(15)

9月 第一審の審理――秋白と弁護士の訴え

9月12日、秋白さんの裁判の審理が北京市中級人民法院でおこなわれた。

この日、教育部からは政策法規局の鄺璐さんと高等教育局の李静さんが来た。

秋白さんは鄺璐さんに1年近く会えなかったので、開廷前、手に月餅を一箱持って、鄺璐さんのもとに駆け寄って、「お久しぶりです。この贈り物は私たちセクシュアル・マイノリティの学生たちの気持ちです。中には私たちが教育部に対して言いたいことが書いてあります。それは、教材から毒をなくして、LGBTの学生と教育部がいっしょに楽しい中秋(=旧暦の8月15日。名月を観賞し、供えた月餅などを一家で分けて食べる習慣がある)を過ごしたいということです」と言った。しかし、鄺璐さんはかたくなに受け取りを拒否した。

その後の審理は、30分という短い時間だった。教育部の主張は、以下の2点にまとめられると秋白さんは言う。
 1.「ホモフォビア」教材は学生の教育を受ける権利を侵犯しておらず、学生は影響を受けていない。
 2.「ホモフォビア」教材を処理するという職責を履行することを拒否する(16)

以下は、原告の秋白さんが、この日、裁判所に出した手紙の全文である(赤字は、秋白さんが自らの微信で赤にした箇所)。

裁判所はセクシュアル・マイノリティの学生のために声を発してください

尊敬する裁判長・裁判官:

私は原告の秋白です。教育部の行政再議不作為事件の訴えについて、私はこの貴重な機会を借りて、あなたがたにお話をさせていただきたいと思います。丁寧にお読みいただいて、セクシュアル・マイノリティの学生の声をお聴きくださることを望みます。

「ホモフォビア」教材は学生を傷つけています。教材と私たちには密接な関係があります。

私は在学中の大学生です。中山大学で勉強しており、大学での生活は他の学生と同じです。今でもまだはっきりと覚えていますが、私が自分の性的指向が大多数の人と異なることを意識したとき、心の中はパニックになり、自分は人間ではないかのようで心配でした。そこで、私はこっそり、あちこちでその答えを探して、自分は結局誰であるのかをはっきりさせようと思いました。大学ではちょうどその時「大学生の心理的健康」という公共選択科目(=学生なら誰でも選択できる科目)があったので、私はその授業を取ったのですが、先生は公然と授業の中で「同性愛は病気だから、急いで治療しなければならない」と言い、教室で使われていた教材にも、同性愛は「性変態」「性逸脱」「性的指向の障害」と書かれていました。それらの言葉は、私の頭の中から消そうとしても消せず、私が同性を好きなことは不正常な性的指向であるとたえず警告します。のちに仲間たちの助けによって、私はやっと少しずつ自分の性的指向を受け入れ、教材の内容が間違っていることがわかったのです!

その後、私は、他の、教材の害毒を受けている同性愛の学生にも接しました。彼らは私ほど幸運ではなく、そのうちの、ある医学生が使っていた教材には、同性愛は疾病だと書いてあったので、彼は恐くなって、医者に自分の性的指向を変えてもらおうとしました。こうした、学生を誤った方向に導く教材は各大学で広く使用されており、どれほど多くのセクシュアル・マイノリティの学生が、教材のせいで、黙って身を隠し、自分に向き合うことができなくなっているのかわかりません。

だから、教育部が法廷で「原告の教育を受ける権利を侵害しておらず、原告の合法的権益を侵害していない」と言ったことは、私は受け入れることはできないと同時に、怒りを感じました。教材は疑問を解き明かすための授業のツールであり、私たち一人一人の学生が教育を受ける最初から使わなければならないものです。どうして学生の教育を受ける権利と関係がないことがあるでしょうか。まったく逆で、教材は学生が教育を受ける権利を保障する重要な一環なのです。

教育部は何度も責任から逃避しています。裁判所が後ろ盾になってください。

私は普通の大学生にすぎません。私は大学で教材に同性愛についての誤った内容を見つけましたが、その表紙には「十二五[=中華人民共和国国民経済・社会発展第12次五カ年(2011~2015年) ]計画教材」「教育部重点研究成果」と書いてありました。このような最も専門的で、権威のある教材の中に多くの誤りがあったのです。だから、私は教育部に手紙を書き、問題について意見を述べたのですが、思いもかけず何度も傲慢な対応をされました。

2015年8月14日、私は「ホモフォビア」教材の監督管理の不作為を理由として教育部を訴え、裁判所に受理されました。当時私は興奮しました。これでついに顔を合わせて教材の問題を話すことができるようなったのだ。教育部はもう私をもう門前払いできなくなったのだと。また、2015年11月24日の法廷前の会議で、教育部の職員の鄺璐は、私の訴えを教育部の関係部門に手渡すことを承諾し、同時に私に「書面の訴えは教育部の統一監督通報受理センターに郵送したらどうでしょう。教育部が監督システムによって処理します」と言いました。私は、教育部の職員が法廷前の会議でした話を信じました。堂々とした教育部の職員が一名の普通の大学生に対して約束を破るようなことは絶対にないと信じたのです。だから、法廷前の会議が終わった後に、私は訴訟を撤回することを選択して、私の通報の手紙を教育部の統一監督通報受理センターに郵送しました。

この通報の手紙はまず何度も何度も訳もわからず返送されました。2016年2月22日にやっと教育部に捺印されて受領されましたが、60日の有効返答期間をひたすら待っても何の返答もありませんでした。このようであっても、私は対話の可能性を放棄せず、2016年5月16日、私は弁護士に委託して行政再議申請書を郵送して、再度教育部に対して私が申請した監督の職責を履行してもらうよう強調しました。最後も、また教育部に残忍に拒絶されました。

やむやく、私は、2016年6月に教育部を再度訴えて、法律という手段を使って教育部にやるべきことしてもらい、同性愛の学生の訴えに対して積極的な返事をしてもらおうと思いました。

2015年に教育部を訴えてから、2016年にふたたび訴えて法廷が開かれるまで、2年間ずっとまじめに頑張り続けてこられたのは、ただ私が、教材がセクシュアル・マイノリティについて正しく記述し、教育の分野において、異なる性的指向の学生を平等に扱ってほしかったからです。大学は何度も私に圧力をかけ、私の父母に通知しましたので、私は父母に病院に連れていかれて「治療」されました。このように大きな圧力を受けても、私は断念しませんでした。なせなら、私は、大学の無知や父母の無理解は、社会のセクシュアル・マイノリティに対する差別に根源があり、「ホモフォビア」教材が社会の差別を促進していることを知っているからです。私が父母に同性愛は病気ではないと説明しましたが、本の中には同性愛は病気だと書いてあります。私が大学に対して同性愛者について説明するときも、教材の中から客観的で全面的な記述を見つけて根拠にすることはできません。

2年間頑張り続けたのは、教育部は教材に同性愛に汚名を着せている状況があることを間違いなく知っていながら、何度も問題を回避し、責任逃れをするばかりであるのは、教育者のあるべき姿では絶対にないと信じるからです。私が闘っているのは、一つの教材の改変のためではなく、まして私一人だけのためではありません。セクシュアル・マイノリティたちが本来持っている平等な権益のためであり、公民が性的志向やジェンダーによっていかなる形態の差別や汚名を受けてはならないからです。

私は堅く信じています。法律が一人ひとりの合法的権益を保証し、公平・公正に、一人ひとりの当事者にとって道理に合った判決が出されることを!

教育部が何も言わないときには、裁判所がセクシュアル・マイノリティの学生のために声を発してください!

 以上のとおり申し上げます。
北京市中級人民法院
   原告:秋白
   2016年9月12日(17)

この裁判では、河北陳建仲弁護士事務所の于麗穎弁護士と王振宇弁護士が共同で秋白さんの代理人をつとめた。以下は、于麗穎弁護士の代理意見の抜粋である。

傷害に対して見て見ぬふりをしてはならない

この事件の原告が申請した事項は、「行政再議法実施条例」第28条の規定(=明確な申請者と規定に合致した被申請者がいること、具体的な行政再議の請求と理由があること、本人と利害関係が存在していること、法定の期限内に提出すること、行政再議法が規定している再議の範囲と再議機関の職責の範囲に属すること)に合致しているので、受理すべきであった。

一、原告が行政再議で提出した請求事項と本人には利害関係が存在している。

 原告が行政再議の申請において被告が履行するよう求めた法定の職責とは、原告が渡した「通報の手紙」の中の、同性愛に汚名を着せる/誤った内容の教材に対してその質の監督管理の職責を履行し、その結果を原告に知らせることである。

 1.関連する課程を選択した在学中の大学生として、教材の中に存在する「同性愛」に対する誤った記述は、当然原告と利害関係が存在する。原告の公共選択科目の「大学生の心理的健康」の中で使用した教材『心理健康教程』(張小遠・解亜寧編、証拠15)は、同性愛を「性変態」に分類している。また、その課程の補助教材『大学生の心理検査と行為指導』(許国彬・黄秀娟編、証拠17)は同性愛を「性逸脱」とし、「性変態」だとも言っている。また、原告が大学の図書館から借りた『諮詢心理学』(邱鴻鐘編、証拠16)は、同性愛を「病態的性的指向障害」だと述べている。

 2.原告本人は、同性愛集団の一人として、2015年に教育部を訴えた後に「アウティング」されて以来、ずっと社会・大学・家庭から何重にも心理的圧力を受けてきた。誤った教材が広く使われていることは、直接に原告の人格権を侵害し、原告に精神的損害を与えた。

 3.(略)

二、被告には教材を監督管理する法定の職責がある。

 1.被告の主要な職責の第三条に(国弁発[2008]57号[=国務院事務局が、教育部の主要な職責、内設機構、人員編制の規定を印刷配布したことに関する通知]、証拠8)、「義務教育のバランスのとれた発展の推進と教育の公平を促進し(……)基礎教育の国家課程の教材を管理し、資質教育を全面的に実施する」とある。

 2.被告は機構の中に、教材の監督管理に責任を負う機構を設置している。(略)

 3.被告は「教育部課程教材工作指導グループ」を設立して教材の監督管理をしている。(略)

 4.被告は、大学出版品質監督検査センターを設立して、大学の出版物の質に対して特別の検査をすることを2016年の業務のポイントにしている。(略)

 5.被告はかつて「大学の教材の中に存在する誤った内容」について監督管理の職責を履行したことがある。
 人民ネットの2015年11月18日の報道(証拠13)によると、「被告はかつて北京林業大学の教師・曾施兵の請求に応じて、大学の教材の監督管理の職責を履行したことがある」。曾施兵は、大学の英語教材の誤りの問題について、2015年、自分が2年かけて一人で完成させた30ページ近い『大学英語教材の品質分析報告』を被告に渡した。この報告の中で、曾施兵は、教材の中に存在する言語の誤りと非言語の誤りを明確に指摘した。それに対して、被告の高等教育局の関係する責任者は、非常に重視し、検証する措置をとると施兵先生に回答し、9つの出版社に向けて「教材の問題について調査の協力をお願いする手紙」を送り、出版社に対して、調査に協力し、その調査の状況を書面の形で高等教育局にフィードバックすることを求め、各出版社に改善する方法を提出して、教材の訂正版の中ですぐに訂正するようお願いした。同時に、曾施兵の手紙と資料を大学の英語教学指導委員会に転送した。(18)

この日、弁護士が裁判官に要請して、秋白さんは閉廷後に5分間、教育部の職員と話をする時間を持つことができた。秋白さんは、「私は在学中の大学生です。授業で使った教材が同性愛に汚名を着せていました。当時私はとても怖くなりました。自分が人間ではないかのようで怖かったのです。だから、私は、もう他の学生には私のように教材によって傷つけられないようにしたいのです。私が教育部を訴えたのは初めてではありません。もう一年経っています。教育部は責任逃れをしてほしくありません。LGBT学生の声を聞いて、セクシュアル・マイノリティの学生を含めた一人一人の学生の訴えに注意を払ってください」と、心をこめて訴えた。

しかし、教育部の職員2人は、ずっとうつむいたままで、聞こえないふり、見えないふりをしていたかのように秋白さんには見え、ますます憤りを感じた。

秋白さんは、教育部の態度は傲慢で、冷淡だと感じた(19)

この日は、少なからぬメディアが裁判所の出入り口で待っていて、裁判が終わると、秋白さんはずっとメディアに囲まれ、2時間取材を受けた。しかし、のちに、記者から続々と、文字のニュースは審査によって報道できなくなったというメッセージを受け取った。秋白さんには、訴訟の前途の困難と、メディアの報道禁止、教育部の傲慢さが、両手でますます自分の喉を絞めてくるように思えた(20)

9月 判決――原告は「特定の利害関係者」ではないとして秋白敗訴

9月30日、北京市中級人民法院は、秋白の請求を棄却する判決を下した。その理由は、「原告の請求は被告の職責との間に法律上の利害関係を有しない」、なぜなら原告は「特定の利害関係者」ではないから、というものだった。、「原告が主張する大学生及び同性愛者の一員として持つ権利」は、「被告に職責の履行を請求する権利の根拠にはなりえない」というのだ。

再議法実施条例(中华人民共和国行政复议法实施条例)第28条は、行政に対する再議の申請が合致しなければならない条件について具体的に規定しており、その中の(二)項は『申請者は、具体的行政行為と利害関係がなければならない』と規定している。この条文が指す具体的行政行為と利害関係がある申請者とは、申請者の合法的権益が直接、行政行為に侵害されたか可能性のある特定の利害関係者を指しており、不特定の社会公衆を指していない。この事件では、原告は被告に対して提出した行政再議申請が指している事項は、教育部に通報した大学の教材に存在する問題について監督管理する職責を履行するよう求めることである。教育部が、秋白(原文は実名)が通報した事項を処理するか否かは、特定の利害関係者の権益を保護することではない。原告が主張する在校中の大学生および同性愛者の一員として持つ権利は、どの不特定の学生あるいは同性愛集団のメンバーでも持っている権利であり、原告として被告に職責の履行を請求する権利の根拠にはなりえない。ゆえに秋白と教育部が履行する職責との間には法律上の利害関係はなく、被告に対して提出した再議の申請は、再議法実施条例第28条が規定した受理の条件に合致しないので、本院は支持しない。

この判決には、何人もの弁護士から強い非難の声が上がった。たとえば、昆明の付薇弁護士は「この判決は、ひどいデタラメの見本である――ある行政の職能が影響を及ぼしうる人数が多いか膨大な集団だったら、たとえその集団の中の任意の一人ひとりに対して、その職能を履行しないことの傷害が具体的・直接的であっても、それらの個人は権利を主張する資格を喪失するというのであるから。」と述べた。

10月12日、秋白さんは、北京高級人民法院に控訴した(21)

2017年1月 第二審の審理――教育部、同性愛者たちを傷つけたことは否認しなかったが、直接秋白を傷つけてはいないと主張

2017年1月10日、第二審の審理がおこなわれた。

この日、教育部の政策法規局と高等教育局の職員は、「秋白は教科書の直接の被害者ではない。教科書が同性愛は病気だと言うのは、同性愛者たち全体について言っているのであり、それがもたらす傷害は、何回も曲折を経て、はじめて秋白自身に達するのであって、原告の秋白は、行政行為の特定の利害関係者でないだけでなく、直接的傷害の原則にも合致しない」と述べた。

秋白さんは、それに対して、「私が受けた授業で使った教材には明確に同性愛は性変態だと書いてあり、先生もこの観点をPPTに書いて授業をおこなった。誤った教材が傷害をもたらす根源であり、教育部は傷害をもたらすことを承認したからには、この障害の原因を解決すべきである!」と述べた。教育部の主張に対しては、「私の行政再議を申請したのは、教育部が私の通報に対して回答しなかったことについてである。この行政不作為はこのように明確であるのに、こっそり概念を変えようとしている」と批判した。

原告の王振宇弁護士と于麗穎弁護士は、以下の2点を指摘した。
・秋白は差別的内容がある教材を買ったことによって、財産に損失が生じた。また、秋白は同性愛者として、「同性愛は性変態だ」という内容を読んで、人格権が侵害された。秋白が教育部に対して教材に対処するよう要求したのは、自分の人格権と財産権を保護するためだ。教育部が職能を履行しなかったことによって、秋白は行政不作為の特定の権利者になった。それゆえ、一審が原告は特定の利害関係者ではないという判決を出したことは、誤っている。
・一審判決は、「原告は集団の一員として持っている権利は、どの不特定のメンバーもみな持っている権利」だから、原告が被告に職責の履行を請求する根拠にはなりえないと述べた。このロジックは非常にでたらめなものである。このロジックでは、すべての人が行政に職責を履行することを要求できず、特権を持った人だけが要求できることになるのではないか?

最後に、秋白さんは、教育部の職員に対して、「もし教科書に、異性愛が病気だと書いてあったら、あなたがたは改めなければならないと思うか?」と尋ねた。回答は、「わからない! 私に尋ねるな」というものだった。

この日、裁判所には、10名あまりの秋白さんの支援者が駆けつけ、裁判所の外でホモフォビア教材を拒否するプラカードを掲げた。

また、「同志の声」という微博が審理の過程を中継し、それに対するアクセスは25.7万に達した。また、「LesPark(拉拉公園)」や「同性愛者の家族と友人の会(同性愛親友会)」というウェブサイトが動画で法廷の外の現場から生放送をし、2000人あまりが同時にネット上で見た(22)

秋白の裁判、青年たちをさまざまな行動へ

秋白さんの裁判は、各地の同性愛者らの青年を励まし、さまざまな行動を起こさせた。

2016年8月には、大学生や青年たちが教科書の記述の是正をさまざまな面(訴訟、図書館、教師など)からめざす「ホモフォビア教材救済(に関心を寄せる)計画(恐同教材拯救[关怀]计划)」を開始した(23)

同年10月には、秋白さんの勇気と行動に感激したゲイの青年が、「秋白を支援する漂流瓶」アクションを呼びかけた。これは、支援者がノートに教育部に言いたいことを書いて、それを自分自身と自分がいる都市を示す建築物などといっしょに写真に撮って、そのノートを次の人に回していくというものである。「漂流瓶」(という名称のノート)は、青島から出発して、臨沂、済南をすでに回り、さらに滄州、天津、北京を回る予定であることが発表されている。このアクションは、そのノートによって、教育部にLGBT問題ついての「補習」をさせるという発想でおこなわれた(24)

11月11日(独身の日)には、柳星宇さんという大学1年生のゲイの男性が、教育部に宛てて、毎日1通ずつ、1000日間に1000通のメッセージを送る活動を始めた。これは、さまざまな人に、「私は××大学に在学している(卒業した)。私は学校でのホモフォビア教材の使用を中止するよう求める」などと書いた紙と自分自身とを写した写真を、微信または微博で「ホモフォビア教材に関心を寄せる計画」や「同志平等権益促進会」宛てに送ってもらい、それを柳星宇さんが教育部に送るというものである。

柳星宇さんは、「私は今年大学1年生なので、1000日後には、まもなく卒業になる。私は大学が教科書から汚名を拭い去るプロセスの証人になりたい。あなたも私とご一緒しませんか」と呼びかけている(25)

12月27日には、広州新メディア女性ネットワークらが、秋白さんの話をネット上で中継するイベントなどもおこなっている(26)

秋白さんは、「幸い、私たちが『教材についてとことん反抗する』という精神は、多くの人が行動し、自分の力でこの社会をよりよいものにすることを始めることを励ました。あるいは、これらの人、これらのこと、これらの成長が、私たちが2016年に作り出した最大の変化かもしれない」と述べて、以下のような活動について述べている。

たとえば、「蘇州LESGO公益小組」のメンバーで、「2016蘇州ヴァギナ・モノローグス」の発起人の「Peter」さんは、《ヴァギナ・モノローグス》の中国版として作成した《陰道欲言》の中で、ホモフォビア教材の問題を取り上げた。それは、あるゲイの男子学生が、自己を探索し、自己を発見する過程において、教科書の中のホモフォビア的な内容を読み、授業でも、先生がたえず「同性愛は精神病だ」と強調するというものである。

「Peter」さんは、秋白さんが教育部を訴えているのを知り、自分もできるかぎりのことをしようと思い、この問題を取り上げたという。「Peter」さんは、「眼、耳、口、鼻は人体の器官であり、みな大声で言えるのに、ペニスとヴァギナは汚名を着せられ、言うことはできない。《陰道欲言》の本質は汚名をぬぐうことにある。教科書についての活動も同じであり、セクシュアル・マイノリティの汚名をぬぐうことである」と述べている。

また、「Barry」さん(「武漢同行同志センター」メンバー)は、「教科書についての活動の私に対する影響は、主に、口では言えないような多くの圧力に直面したとき、勇気が持てたことだ」と述べている。

また、黒龍江大学青年法学社の創設者の「晨曦」さんは、2016年1月、「大学学生団体管理暫定規則(高校学生社团管理暂行办法)」の全文が見つからなかったので、その全文の内容について、教育部に情報公開(のち、行政再議)を申請した。これは、国家secretとの理由で公開されなかったのが……。

さらに、2016年6月、法学部の学生の「夏天」さんは、授業で使われている『刑法学』の中に同性愛は変態だと書いてあったので、北京大学出版社と編者の趙秉志さんに手紙を書いた(27)。このような出版社や編者への働きかけは他にもあり、次回ご紹介したい。

おわりに

大学教科書のホモフォビアに対する秋白さんの裁判について、その提訴以前を含めた経過をもう一度まとめると、以下のようになる。秋白さんは、出版管理部門や出版社に働きかけた。それが、(1)の段階であり、教育部に働きかけたのが(2)の段階である。

(1)国家新聞出版総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社に対して是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前では宣伝活動もする(秋白さんはこれらの活動には1メンバーとして参加)→まともな回答なし→広東高等教育出版社を広州市天河区法院に訴える→受理されず。

(2)教育部に対して、大学の教材に対する監督管理について情報公開を申請→期限までに回答なし→教育部の無回答を行政不作為で広州市天河区法院に訴える→受理されず→広州市中級法院に訴える→受理されず→北京第一中級法院に訴える→受理→教育部が「教科書の問題点について通報すれば処理する」と述べたため、訴訟撤回→通報したが、教育部は、受理や回答をせず→教育部の無回答を行政不作為で北京市第一中級法院に訴える→受理されず→教育部に行政再議を申請→受理されず→教育部の行政再議不履行を北京市第一中級法院に訴える→受理→同法院、原告の請求と教育部の職責との間には「法律上の利害関係がない」とし、秋白敗訴→控訴。

中華精神病学会が15年以上も前に同性愛の非病理化をしたにもかかわらず、それに反する記述を是正させるというだけのことが、上のようにさまざまな手を尽くしても、そのたびごとに壁にぶつかっているのである。

しかも、秋白さんが教育部を裁判に訴えると、中山大学は秋白さん本人だけでなく、秋白さんの家族にも圧力をかけた。その際、大学は秋白さんが同性愛者であることを家族にアウティングしたので、秋白さんは家族からも圧力を受け、疎外されるという苦痛の中で裁判をすすめてきた。

訴えがここまで無視され、抑圧されるのは、近年習近平政権が民間の運動や弁護士に対する締めつけを強めてきたこととも関係しているだろう。教育部についても、2016年7月に教育部長が袁貴仁氏から陳宝生氏に変わって以降、同性愛に汚名を着せる教材は放置されている一方で、教材に対する政治的締めつけは強まったという(28)

以上のような困難な状況ゆえに、運動から離れた人々も多かった。ある活動家は、「2年前、私が最初に仲間たちに、私たちが教科書の同性愛のスティグマ化を変えていくと話したときの(……)力に満ちた感覚は2、3カ月しか続かず、バラバラの砂のようになり、周囲を見渡すと、たった数人の人しか残らず、(……)2年あまりの間に(……)多くの仲間と出会ったが(……)最後に残った人はきわめて少ない」と述べている(29)

しかし、以上のことは、何度跳ね返されてもぶつかっていく秋白さんたちの粘り強さや少人数でも闘い続ける意志の強さも示している。

また、去って行く人が多いことは確かでも、その一方で、先述のように、現在も、新しい人を含めて、秋白さんの裁判がきっかけになって、青年たちがさまざまな新たな行動を起こしていることも事実である。その背景には、この問題に関心を持つ多くの人々がいる。

当事者個人の直接の要求を超えて、社会の変革するための訴訟は「影響性訴訟」と呼ばれているが、その意義について、秋白さんは、「私は、その意義は、相手が最後に法律の改正をしたり規定を出したりするか否かにはないと思う。それは難しい。しかし、訴訟を通じて多くの人がLGBTIたちの権益が無視されていることに気づく。私はそれが訴訟の比較的大きな意義だと思う」(30)と述べている。

先述のようにマスメディアがこの裁判を報道することに対しても圧力がかかっているのが現状だが、それでも『新京報』は今年の第二審での審理に至るまで報道を続けている(31)。また、微博・微信などのネットメディアにおいて大きな関心を集めていることは第二審の審理への多くの人の注目を見れば理解されよう。また、いくもの英米のメディアでも報道されたことも無視できない(32)

こうしたことを考えると、この裁判は、その時々で人々を励ますだけでなく、長い目で見ると、その歴史的意義も十分あるように思う。


以下、追記(2017年4月4日)

2017年3月 二審判決――同様の理由で敗訴

3月2日、北京高級人民法院は、秋白さんの控訴を棄却し、秋白さんは敗訴した(33)

判決理由も、以下のような一審と同趣旨のものだった。

秋白が通報した事項は、秋白個人にだけ関わるのではなく、秋白を含めた多くの不特定の人に関わるものである。(……)ゆえに、秋白と教育部の間には通報によって具体的な行政的法律関係は形成されておらず、教育部が秋白の通報の申請を処理するか否かやどのように処理するかは、秋白がこの裁判で主張する個人的利益には直接には影響せず(……)法律上の利害関係を構成しない。

(1)秋白の感想――法理の面から

このような議論に対しては、秋白さんは、上述の二審での王振宇弁護士の議論を対置することによって反論している。

秋白は、さらに、中国人民大学法学院・王貴松教授の二審判決についてのコメント(34)も引用している。

秋白はその教材を使用した学生であり、秋白は同性愛者という集団に属するけれども、その受けた侵害は具体的である。およそこの教材を使用した同性愛者は、みな、具体的な侵害を受けた者である。上述の教材の問題は、同性愛者全体のイメージの問題であるだけでなく、特定の同性愛者の権利の問題でもある。(……)監督管理の職責は、公共の利益を保護する目的が同時に個人の法律上の権益を保護する目的を兼ねるときは、その法律上の権利を持っている者は、監督管理者が法定の監督管理の職責を履行するよう申請する権利を有する。

教育部は、被害者の通報を受けたら、回答する義務がある。これは、食品を購入した消費者が食薬部門に訴えたら、食薬部門は回答しなければならないことや、携帯電話を購入した消費者が物価部門に対して、電気通信会社がカードの費用を徴収することを通報することを通報したら、物価部門は回答しなければならないのと同じである。


結局のところ、秋白さんは「私たちが法廷でどのように努力して道理を説き、論証しても、最終的には一通の判決書によって、みな徹底的に否定された」と述べる。

(2)秋白の感想――教育部の対話の面から

また、秋白さんは「勝訴することより、私が期待したのは、教育部が『ホモフォビア』教材を正視して管理監督をするようになり、教員と学生が教材の面から客観的にセクシュアル・マイノリティを認識するよう保証することだった」と言う。

しかし、この面でも、秋白は、「教育部との3回の裁判の中で、相手が対話したいのかもしれないと感じたことはなかった。法廷では、私と弁護士が一方的に『話をする』ことが多く、相手は沈黙するか否認するかだった」と言っている。

秋白の今後の決意と呼びかけ

このようにこの裁判自体は、完全な敗訴に終わった。しかし、秋白さんは次のように述べる。

結論が出たということは、終わったことを意味するのか?
敗訴は、終結を意味するのか?
NO!
終結するべきなのは、差別だ! 汚名だ!

新たに始めよう! 続けて私たちがするべきなのは、着実な行動、行動、行動だ!

私がやろうとしているのは、次のことだ。
1.最高人民法院に教育部の件について再審を申請して、手続きを最後までする。
2.整理した誤った教材についての目録のうち、10人の編者/出版社に、教材のスティグマをなくすよう手紙を出し、次に電話やメールで説得する。

秋白さんは、他の人々にも、「とんとんまで闘う」ことを呼びかけている。

行動1 あなたの身の回り(学校/都市)のホモフォビア教材を見つけて、編者/出版社に手紙を出す、電話する、メールを出す、直接会って話をするなどの方法で説得する。
行動2 あなたがホモフォビア教材を読んだ経験を述べて、文章にし、それらの経験を私たちが編者/出版社に対して説得する事例にする。

(35)

このように秋白さんは、力のかぎり闘い続ける道を歩みつつある。

(1)她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」2015-12-10 张鑫明 Vista看天下。
(2)Chinese Student Protesting Books’ Stance on Homosexuality Meets With OfficialsThe New York Times NOV. 24, 2015→「中国同性恋大学生与教育部官员对话」纽约时报中文网2015年11月25日。
(3)以上は、「她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」(2015-12-10 张鑫明 Vista看天下)、および「同性恋遭教材污名化未获处理 大学生再告教育部」(财新网2016年6月15日18:32)による。また、この日、鄺璐さんは「この訴訟についての報道はすべて読んで、秋白さんの話と秋白さんが教育部に出した手紙も読んだ。私は同僚とともに同性愛と精神病との関係についても研究した」とも述べており(上記「她在法院与教育部官员聊聊课本中的“同性恋”」)、当日は比較的秋白さんに好意的態度を示したように見える。
(4)幸好一路上有你 与教育部沟通的漫漫长路」2015-11-30 秋白 秋白的自由野
(5)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端
(6)秋白女友:行动起来,让教育部看见“同志”!」2015-12-20 Janeway 秋白的自由野
(7)以上は、「同性恋遭教材污名化未获处理 大学生再告教育部」财新网2016年6月15日18:32。ただし、「秋白さんの通報だけが、なんと『審査する機関がない』という理由で、返送された。その後、何度出しても、返送された。他の人々の通報も、返送こそされなかったものの、回答は来なかった」という箇所は、この記事では、「彼らが出した通報の手紙の大多数は、『審査する機関がない』」という理由で返送された」と記している。しかし、秋白さん自身の記述を含めた他の記事(「2016,我们再试试改变世界好吗?|来自秋白的邀请」(2016-01-14 秋白 秋白的自由野)、「【动态】教育部,你挑逗了我,还一笑而过 」(2016-05-20 秋白 GLCAC)、「女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端)では、本ブログのように記しているので、それに従った。
(8)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端。
(9)詳しくは、徐暁青・藤田直佑「行政再議に関する基礎知識」『SMBC China Monthly』第129号(2016年3月)[PDF]参照。
(10)秋白打官司,下一步由你来决定(姬/基情投票中) 」2016-05-07 秋宝宝 秋白的自由野
(11)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端。
(12)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端、「【动态】教育部,你挑逗了我,还一笑而过 」(2016-05-20 秋白 GLCAC)の中の「致参与《秋白打官司,下一步由你来决定》投票的各位亲们的情书」。
(13)女生秋白再磕教育部:举报教材同性恋问题没回复,提行政复议」(澎湃新闻2016-05-19 13:57澎湃新闻记者 徐晓阳 实习生 韩晓彤 吴伊端)にも出てくるが、「你们爱的秋白又去找教育部玩了」(2016-06-16 和夏天的一天)に、教育部が行政再議申請を受理しないことを述べた決定書自体の写真が掲載されている。
(14)秋白さんが言うには、前回の訴訟は、教育部の教材に対する監督管理についての情報公開についてであって、教育部がホモフォビア教材をどのように処理しているか、どのように扱っているかは直接問題にしなかった。しかし、今回の訴えの理由は、ホモフォビア教材に対する通報に対する回答がないことであり、これはすなわち、教育部がなぜ回答しないのか、なぜ私の通報申請を受理しないのかということだから、今回のほうがより直接に教材に対する対処を問題にしていると語っている(「如果每个人都怕,就永远不会有学生站出来」2016-09-10 NGOCN原创 GiveNGOA5)。
(15)【动态】告教育部有钱啦!秋白生日趴超额完成筹款目标」 2016-06-24 GLCAC GLCAC
(16)以上は、「再度被告的教育部回应恐同教材 王之冷漠│秋白记录」2016-09-13 秋白 秋白的自由野。
(17)请法院为性少数学生发声 —秋白诉教育部案致法院的一封信」2016-09-18 秋白 秋白的自由野
(18)于丽颖律师:你不能对伤害视而不见――秋白诉中华人民共和国教育部行政复议不作为案」2016-09-14 北京义派律师事务所
(19)以上は、「再度被告的教育部回应恐同教材 王之冷漠│秋白记录」2016-09-13 秋白 秋白的自由野
(20)再告教育部案宣判|当正义还没来的时候,我们要坚持」2016-10-12 秋白 秋白的自由野
(21)以上は、「秋白打官司│一把辛酸泪 六纸判决书」2016-10-14 秋白的自由野。2015年5月12日に秋白さんが最初に広州市天河区人民法院に告訴状を出したとき、同法院が受理しなかった理由も、「上述の書籍を発行する行為と告訴人には法律上の直接的な利害関係はなく、また告訴人は上述の書籍が直接間接にその利益を損なったという証拠を提出していないのに、訴訟を起こしたことは妥当でないため、受理すべきでない」(「开庭!女同性恋起诉教育部第一案24号开庭」)というものだったので、当初から類似したことを述べていたようだ。
(22)以上は、「教育部不否认教材伤害同性恋群体 秋白起诉教育部第二次审理」GS的微博2017年1月11日 19:08.31、「现场:教育部不否认歧视,但没有直接伤害秋白?」2017-01-11 不用恐同教材的人 GLCAC
(23)Barry「发刊词 | 是污名,练就了我们这批小愚公」2016-10-09 秋白的自由野
(24)灵澈子「第一弹|给教育部补补课の“撑秋白漂流瓶”,邀您来接力!」2016-10-26 秋白的自由野、秋白「第二弹|教育部同学,你有一份补课通知书请查收 」2016-11-06 秋白的自由野
(25)以上は、「双11,他决定用1千个日子每1天寄1封信给同1个人 」2016-11-11 LGBT权促会
(26)“女泉微课”第二弹――教材勿恐同,女生力很大!」女权之声 2016-12-20 18:43:54
(27)以上は、「2016│教科书又一年,我们终于站在了一起」2016-12-30 秋白 秋白的自由野
(28)【开庭】教育部这次要到北京高院当被告」2017-01-08 LGBT权促会。
(29)Barry「发刊词 | 是污名,练就了我们这批小愚公」2016-10-09 秋白的自由野
(30)如果每个人都怕,就永远不会有学生站出来」2016-09-10 NGOCN原创 GiveNGOA5。
(31)秋白打官司」新京报网2015年12月13日、熊丙奇(教育学者)「高校教材同性恋争议,为何久拖不决」『新京报』2016年5月20日、「女大学生秋白谈再诉教育部:“恐同”教材伤我心」新京报网2016-09-19 15:57:41(動画)、「称教材“污名”同性恋 秋白状告教育部案二审开庭」新京报网2017-01-10 20:16:06
(32)Chinese Student Protesting Books’ Stance on Homosexuality Meets With OfficialsThe New York Times NOV. 24, 2015→「中国同性恋大学生与教育部官员对话」纽约时报中文网2015年11月25日、Fighting the views of homosexuality in China’s textbooks BBC News 12 September 2016、Chinese student lodges over homosexuality terms in textbooks the Guardian 12 September 2016 16.54
(33)教材疑污名化同性恋 大学女生告教育部二审败诉」财新网2017年3月6日。この記事は、3月2日と記している。「3月3日」と記しているものもあるが、この記事によると、3月3日は、判決書が秋白さんのところに送られて、秋白さんが手に渡った日付である。秋白「三诉教育部|败诉,终结还是开始? 」(秋白的自由野2017-03-11)に写真が掲載されている判決書の日付も、3月2日となっている。
(34)同性恋污名教材风波:秋白不服教育部行政复议决定案 | 附评析 」中国宪政网2017年3月9日。
(35)以上は、秋白「三诉教育部|败诉,终结还是开始? 」秋白的自由野2017年3月11日。

大学教科書のホモフォビアの是正を求める運動

中国では、2001年に中華精神病学会が決定した「中国の精神障害の分類と診断基準(第三版)」によって、同性愛は精神病とは見なされなくなった。これによって、中国でも同性愛の「非病理化」がなされたと言われる。しかし、そのことは大学の教材にさえきちんと反映されておらず、教科書の中にもホモフォビアが頑強に残っている。

この問題ついて、ここ2年ほど、LGBT諸団体が、さまざまな調査研究を発表したり、行政機関や大学へ是正を求める公開書簡を出したり、情報公開申請をしたり、裁判に訴えたりする動きが相次いでいる。そうした動きをまとめてみた。

《目次》
 2013年5月 淡藍網など、教材や啓蒙書のホモフォビアを批判、是正を訴え
 2014年8月 同城青少年資源センターなど、初の詳細な調査報告書を発表。同報告書の概要。
 9月 LGBT関係3団体、112校の「211プロジェクト」大学の学長に、教学内容などの問題について公開書簡
 2015年3月 中山大学の学生ら、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して教科書の是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前で抗議活動
 3月~4月 国家新聞出版広電総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社からはきちんとした回答なし
 4月 中山大学の学生ら、広東省教育庁前で同庁が書簡を転送したことは評価するアピールをし、同庁職員と会談
 5月~7月 秋白、同性愛蔑視の記述が多い広東高等教育出版社を広州市天河区法院(次いで広州中級法院)に訴えたが、受理されず
 5月~8月 秋白、教育部に、大学の教材に対する監督措置について情報公開申請するも回答なし。そこで、回答がないことを行政不作為で北京第一中級人民法院に訴え、受理される
 8月 中山大学、秋白に訴訟をやめさせるよう圧力。それに対するLGBT諸団体の抗議
 3月~ 他の大学でも、自校の図書館に所蔵された教科書をチェックして是正を訴える動き
 3月~ 全国100カ所の師範大学や北京の30か所の重点大学に対して使用教材について情報公開申請

2013年5月 淡藍網など、教材や啓蒙書のホモフォビアを批判、是正を訴え

2013年5月17日、LGBTサイト・淡藍網が「あなたの身辺のホモフォビアの教材を暴露する」という発表をおこない、13本の教材についてホモフォビアを指摘した。その教材とは、人民教育出版社の『生命教育』、広東高等教育出版社の『大学生心理健康教育』、南京林業大学出版社の『大学生の生殖と健康教育読本』、民族出版社の『心理カウンセリング(基礎知識)』などの教材や一般向けの啓蒙書であった。

さらに、10余りの団体(淡藍公益、同性愛者の親と友人の会、北京紀安徳相談センター、北京LGBTセンター、同語など)が連名で「教育出版機構・大学・教育者への公開書簡」を発表し、教材からホモフォビア的な内容をなくすように訴えた(1)

2014年8月 同城青少年資源センターなど、初の詳細な調査報告書を発表

2014年8月27日、同城青少年資源センターが中山大学ジェンダー教育フォーラム、中山大学レインボーグループ[小組]と協力して「『ホモフォビア』の拒絶を、教科書から始める」という記者会見を開いて、「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容およびその影響の調査報告(中国高校教科书中对同性恋的错误和污名内容及其影响调查报告) (2)」を発表した(3)

「同城青少年資源センター(同城青少年资源中心 Gay and Lesbian Campus Association of China)」とは、2006年に設立された、広州を起点として全国的なLGBTサポートを目指している団体である。

後にPDFで発表されたこの報告書は、114ページにも及ぶものである。以下はその内容のごく簡単な紹介である(便宜的に小見出しを付けたが、この小見出しは原文とは異なっている)。

「中国の大学の教科書の中の同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容とその影響の調査報告」の概要

同性愛は、文学・社会学・芸術・法学など幅広い学問分野の論文で扱われているにもかかわらず、大学の教科書の中では心理学・医学・生物学の中でしか扱われず、主に専門課程の「変態心理学」(遠山注:日本の「異常心理学」ないしは「精神病理学」に当たるもののようだ)・「医学心理学」と一般教養課程の中の選択科目の「心理健康教育」の教科書の中にしか出てこない(他の科目では、こうした教科書の内容が引用されている)。

上の「変態心理学」と「心理健康教育」の現在使われている教科書90冊を調査したところ、そのうち42冊(46.67%)しか同性愛に触れていなかった(「変態心理学」は28冊/34冊、「心理健康教育」は14冊/56冊)。

書かれている内容も、同性愛の学生の自己受容、心理的発展、社会的サポートのニーズに対する配慮が欠けている。心理健康教育科は大学生の心理的健康のために設置されたカリキュラムだが、調査した56冊の中の14冊(22.95%)しか同性愛に触れていないうえに、それらの内容はすべて「大学生によくある心理的障害」の中に置かれている。心理学の教科書の中の「性と愛情、婚姻家庭」などの内容と心理健康教育の教科書の中の「大学のキャンパスの中の恋愛と性」に関する内容は、すべて異性愛の視点から書かれており、同性愛の感情や性についてはまったく書かれてない。もし同性愛の学生が、自分が「心理障害」や「性変態」の中でしか取り上げられていないことを知れば、心理的にきわめてマイナスの影響があるだろう。同性愛の学生の「心理健康教育権」は無視されているのである。

同性愛は、「病」または「異常」としてしか教学内容の中に組み込まれてない。専門課程の教科書では、同性愛は、変態心理学と医学心理学の中で、「性心理障害」・「性行為変態」という章・節の中の、性的指向の障害として書かれている。一般教養の心理健康教育という選択科目の中では、同性愛を取り上げた教科書は、みなそれを「恋愛と性心理」の章・節の中の性心理の悩み、性心理障害の一種として論じている。同性愛について触れた42冊のうち、「同性愛」を独立した章・節としているのは3冊だけである。教科書の中の同性愛の内容のロジック全体は、「病理化」を核心としている。同性愛に触れている42冊のうちの37冊(88.10%)は、同性愛は「病気か否か」という問題を議論しており、そのことが心理学や医学で同性愛が論じられる理由になっている。

「変態心理学」などの専門課程の教科書について

第一に、国家の科学基準と合致しない記述が大量にある。2001年に中華精神科学会が「中国精神障害分類と診断基準」第3版を出して、同性愛という性的指向を病気とはみなさなくなった。しかし、2011年より後に大陸で編纂された「変態心理学」の教科書の中にも、同性愛の分類や病理判定、治療内容の点で、「中国精神障害分類と診断基準」第3版とは合致しない部分が大量にある。
 ・「真性同性愛」「仮性同性愛」「境遇性同性愛」など、第3版が排除した分類をしているものが69.23%ある。
 ・12冊は「同性愛の治療」について論じている。それらは、みなその困難さや効果の低さについて述べており、嫌悪療法(同性に関心を持ったら、嘔吐する薬を飲んだり電気的刺激を与えたりする「療法」)は無効だと明確に指摘している本も2冊ある。しかし、6冊は、同性愛を異性愛に転化させる「治療」を説いており、3冊は治療に一定の効果があるという報告も掲載している。たとえば、2009年に出版されたある教科書は、嫌悪療法によって60%近いケースで性的指向が変わったと述べている(『変態心理学』高等教育出版社 2009)。
 ・17.65%は、「同性愛のうち、男性が受動的で女性が主動的なものは、本当に病気である」と述べたり(『変態心理学導論』合肥工業大学出版社 2011)、「患者」と呼んだりするなど、病理化を陰に含んだ判断をしている。

2001年より後に大陸で編集された、同性愛が病気か否かを論じた17冊の本のうち、同性愛は病気や障害ではないと述べているのは4冊だけで、11冊は、明確に病的だと判断しており、2冊は、定説はないとし、2冊は観点や内容が不明確だった。

第三に、同一の教科書の中に、前後でロジックが矛盾している状況もよく見られる。たとえば、2001年の後に出版された本のうち、6冊は同性愛が病気でないことを述べつつ、同時に同性愛を異性愛に転化させる治療について述べている。

第四に、一部に、事実と合致しない、ステロタイプな印象を強化したり、観点が古くさかったりする内容がある。たとえば、多くの本は、同性愛を固定的な主動型と受動型とにはっきりと分けており、「同性愛のうち、男性が受動的で女性が主動的なものは、本当に病気である」などと書いてある。しかし、実際は、同性愛の現実のパートナー関係の大多数は、けっして絶対的に固定的なものではない。また、同性の性向の主動的なものか受動的なものかをそのジェンダー的気質・役割といっしょに結び付けて、実のところジェンダーステロタイプなイメージを強化している。「一部の同性愛者は、異性愛で打撃を受けた後、他の仲間の誘惑によって、同性愛になる」(『諮詢心理学』広東高等教育出版社 2013)という根拠のない記述や、「男性同性愛者は楽しみを追い求めることを重んじ、女性同性愛者は感情を追い求めることを重んじる」(『異常心理的矯正与調治』天津科学技術出版社2009)という男性中心主義的な記述がある。

心理健康教育などの一般教養課程の教科書について

17冊のうち11冊(78.57%)は同性愛を、性的倒錯、性心理障害、性変態、性心理異常などの病気だと判定しており、「中国精神障害分類と診断基準」第3版と合致していない。たとえば、「性倒錯はふつう性変態と言われる。(……)性倒錯のあらわれは多種多様で、同性愛、異性装、フェティシズム、サディズム、露出狂などがある」(『大学生心理健康与調適』北京華文出版社 2002)

第二に、内容が短く、説明が簡単で曖昧にすぎる。選択科目の中では、同性愛についての内容はしばしば、「恋愛と性」「性心理」などの章・節で、婚前性行為やフェティシズムなどの内容といっしょに、性の心理の悩みや心理障害として現れる。

第三に、教科書の内容はしばしば学科の専門の観点と食い違っている。同性愛の定義については、専門の教科書は、「同性を指向する思想感情と性行為」とか「同性に引き付けられる」と記述しているが、心理健康の教科書では、71.3%の本が定義の終わりに「異常な性行為」とか「性変態」などの明らかに否定的な言葉を明確に使っている。

第四に、一部の教科書には編者の観点がはっきりしない、またはロジックが矛盾していて統一性に乏しい。

第五に、一部の本の観点は古くさく、根拠に乏しく、誤った情報に基づいており、同性愛に対する差別と汚名を作り出しかねない。たとえば、ある本は、「異性とのつきあいが乏しく、個性が内向的で、ひねくれていて人づきあいがよくなくて、性的抑圧が大きくて、性衝動を発散する有効なルートを見つけ出せないこと」が、同性愛、フェティシズム、覗き見、異性恐怖症などの性心理が異常な状況を引き起こす、と述べている(『大学生心理衛生与諮詢』人民衛生出版社 2008)。また、同性愛を悪魔化し汚名を着せる描写があって、差別を引き起こしかねないものもある。たとえば、ある本は「とくに近年は、同性愛のエイズ患者が急増して、同性愛の性行為に対する疑問と排斥が増加した。同性愛者は病因にもとづいて系統的な治療を受けることによって性的指向を変えることができる」(『大学生心理健康与人生発展』高等教育出版社)と述べている。

まとめ

今回調査した2001年以降に大陸で編集された教科書のうち、17冊の専門課程の教科書と14冊の一般教養課程の教科書が「同性愛は病気か否か」を論じていたが、そのうち13冊(41.49%)は、同性愛自身が病気または異常だと判定していた。正確かつ全面的に中国精神障害分類と診断基準」第3版を引用していたのは8冊(25.81%)だった。31冊のうち、7冊(22.58%)(専門課程の4冊、教養課程の3冊)だけが、同性愛はまったく病気ではないという、国際基準に合致した認識をしていた。

また、一般教養課程の教科書は専門課程の教科書と比べても、同性愛についての内容が専門性に乏しく、差別性が強い。「中国精神障害分類と診断基準」第3版を引用した教科書は1冊もなく、大多数の教科書が同性愛自身を病気とみなしている。

今回調査した42冊の同性愛の内容を含んだ教科書のうち、ロジックが明晰で、観点が明確で、内容が正確で、専門的基準に合致していて、比較的客観的・全面的に同性愛について書いてあるのは、9冊(21.43%)で、8冊は専門課程の教科書(うち5冊は外国の訳書で、3冊が大陸の編著書)、1冊は一般教養課程の教科書だった。

教科書の誤った内容の影響、同性愛の学生の教育についての訴え、私たちの主張と行動提案

さらに、この調査報告は、在学生と大学を卒業したばかりの男女の同性愛者とバイセクシュアル21人にインタビューをおこなって、大学の教科書の同性愛記述について、自分への影響や訴え・期待についても調べている。

そのうえで、自分たちの主張と訴えを次の3項目に分けて述べている。
 1. 社会各界に、セクシュアルマイノリティの青少年の教育環境における境遇に関心を持ち、さまざまな学生に平等な教育の機会と、平等に知識・情報を獲得する機会を保障することから始めることを希望する。
 2.教育業務従事者に科学を尊重し、教育の最低ラインをしっかりと守り、教科書の科学性・厳格性を確実に保証するよう訴える。
 3.キャンパスの性教育・エイズ教育政策を強化・実現し、多元的性別の視角に立って、セクシュアルマイノリティの学生の心理・性・健康のニーズを考慮せよ。

最後に、学校やその管理者、教育部門、教師、NGO、専門家・学者に対して具体的な行動提起をおこなっている。

この報告書は、非常に多数のメディアで報道された(4)

9月、LGBT関係3団体、112校の「211プロジェクト」大学の学長に、教学内容などの問題について公開書簡

2014年9月10日の教師節に、湖南同愛、同志平等権益促進会、南京天下公という3つのLGBT問題に関心を持つ公益団体が、112校の「211プロジェクト」大学(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学のこと。現在112大学ある)の学長に対して、公開書簡を送った。その内容は、性的指向と性別身分にもとづく学校でのいじめがあることや、大学の教科書が異性愛の視点で作成されており、4割以上の教科書が同性愛を疾病として扱っていることを指摘して、以下のようなことを求めるものだった。
・セクシュアルマイノリティを差別するような教学内容が存在しているか否かを入念に見て、積極的に改めること。
・教師に性別多元課程の開設を奨励すること。
・同性愛の学生が社団の設立を申請したとき、承認すること
・同性愛の学生がいじめにあったとき、その権益を保障するとともに心理的サポートをすること(5)

2015年3月 中山大学の学生ら、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して教科書の是正を求める書簡を送り、広東省教育庁前で抗議活動

3月19日、中山大学の学生11名が、国家新聞出版広電総局(国家ニュース出版ラジオテレビ総局。中国のメディアを統括している)と広東省教育庁に、「教科書の同性愛に対する誤りと汚名をきせる描写の内容に関する公開の通報の手紙」を出した。そのうち5名は、広東省教育庁の前で、各自の手にホモフォビア教材に反対する文言を書いたボードを持って宣伝活動をおこなった(6)

この書簡には、自分は同性愛者だが、同性が好きな気持ちについてインターネットだけでなく、図書館の書籍でも調べてみたが、図書館に所蔵されていた、広東高等教育出版社の『心理健康課程』(2003年)は、第一節第三章の「よくある精神疾患とその対応」で、「性心理障害の類型」の一つとして「同性愛」を挙げていたこと、他の数十冊の本も、大多数は誤ったものや汚名を着せる内容のものであったことが述べている。

とくに広東高等教育出版社が出版した心理学や心理的健康についての教材はほとんどすべて同性愛に対して汚名を着せる記述があることや、『心理健康課程』は、2008年に再版されたものも、2003年に出版された内容と何ら変わっていないこと、2013年に出版された『諮詢心理学』では、同性愛を障害とみなしているだけでなく、どのように同性愛を治療するかとして、電気的刺激などの方法で同姓愛の行為に嫌悪感を覚えさせて性的指向を変えることなどが書いてあることを訴えている。

この書簡は、国家新聞出版広電総局と広東省教育庁に対して、以下のことを求めている。

1. 国家新聞出版広電総局は「図書の質管理条例」に依拠して、全国的範囲で(大学であるか小中学であるかを問わず)教科書・教科書補助書に対して、図書の質を検査し、教科書の中に同性愛に対する誤った、汚名を着せる内容が含まれる状況について、全社会に公表すること。また、そうした誤りを含んでいる教科書の問題について、出版社に対して、できるだけ早くすべて回収するように要求すること。

2.広東高等教育出版社の業務主管機関と主宰機関である広東省教育庁と広東省教育研究院は、管理・監督の職能を履行して、通報があった書籍とその出版者に対するに対して具体的な処理の意見を出すべきである。

3.広東高等教育出版社は、さまざまな教材・教育指導用書籍・教科書補助読み物を出版する教育専門の出版者であるのに、多くの教科書に誤った/汚名を着せる内容がある。「図書の質管理条例」第11条にもとづいて、通報者と全社会に対して、その内部に設立した図書の質の管理機構の状況、図書の質の管理制度および以上の教材出版過程における実施状況の記録を公表することを要求しなければならない。もし質に関する責任者とメカニズムが欠けているならば、新聞出版機構と主管単位は厳重に処罰すること。

4. 広東高等教育出版社はできるだけ早く通報のあった教科書を全部回収して、メディアでお詫びを公表して、「内容の訂正する声明」を発表して、誤った教科書がもたらしたマイナスの影響をなくすよう要求する。

5.広東省教育庁は、管轄区内のすべての主管する出版社に書籍の中の誤った、汚名を着せるような状況について自らチェックして、誤った書籍を回収するよう求めるべきである。このほか、広東省の各レベルの図書館・学校図書館に管内の心理学・教育学・社会学・医学・精神病学・心理健康教育・性教育など同性愛に関わる多くの科目の書籍の内容について、全面的に自らチェックし、誤った/汚名を着せる内容の書籍を撤去するように求めるべきである(7)

この通報をした1人の秋白さんは、「私が図書館で手当たりしだいに4、5冊本をめくってみたら、『変態心理学』『心理健康課程』『諮詢心理学』は、同性愛に対する誤った記述がありましたが、これらの本は広東高等教育出版社が出版した教材でした。私は父母や学友がこうした教材を見て、その影響を受けないか本当に心配になりました。このことが、私がなぜ広東高等教育出版社を通報する決心をした理由です」と述べた。

この通報と宣伝活動も、さまざまなメディアに掲載された(8)

3月~4月 国家新聞出版広電総局、広東省教育庁、広東高等教育出版社からはきちんとした回答なし

3月23日、国家新聞出版広電総局の陳情部門の主任から秋白さんのところに電話があり、「通報の手紙は受け取って、内容も見た。あなた方が通報しているこの問題は私たちメディア出版総局の管轄の範囲ではない」「教材の内容の質の問題はわれわれとは関係がない」という理由で通報の手紙はお返しすると述べた。秋白さんは、それに対して、どこの機関が教材の出版に責任を持っているかを知らせることを求めるとともに、法律の規定にもとづいて、書面での回答を求めたが(*)、いずれも拒否された(9)

(*)「信訪(来信来訪の意。陳情)条例」第21条には、行政機関は陳情事項を受け取った後、その場で回答できない場合は、陳情事項を受け取った日から15日以内に書面で陳情人に告知しなければならない、とある。

そのしばらく後、広東省教育庁から、広東高等教育研究院に転送して問題を研究させるというも回答があった。ただし、その後、何の音沙汰もない。

そうしたとき、秋白さんは、家でテレビを見ていたとき、張国栄をしのぶニュースになり、母親が「張国栄はうつ病だったということだ、本当に惜しい」と言ったので、秋白さんは、母親の同性愛に対する態度を探ろうと思って、「彼にはボーフレンドがいたから、世俗的な偏見の目で見られて、心理的なプレッシャーも大きかったんだ」と言ったところ、母親は「飛び降り自殺するのも無理はない。同性愛は病気だから」と言ったので、秋白さんは、横面を殴られたようなショックを受けた(10)

こうした現実があるのに、広電総局が何もしないことに、秋白さんは救いのなさと前途の長さを感じていたこところに、秋白さんは、《ビッグ・ヒーロー・シックス》の登場人物で、人の心と体を癒すケア・ロボットであるベイマックスの動画を見て、秋白さんは癒された。秋白さんは、ベイマックスに精神的に支えられながら、ベイマックスと自分がいっしょに教科書の問題を訴えるというアクションを思いついて、ベイマックスの服装を買う費用とベイマックスに扮する人を募集した。

4月18日、秋白さんは、広東高等教育出版社から書面での回答を受け取った。しかし、その回答は、教材の中になぜ同性愛を入れたということと、入れた章・節の内容についてであり、秋白さんたちが問うた問題については書かれていなかった。さらに、回答の中には、「同性愛の青少年は、思春期に感情・性などについて心理的な苦慮、憂鬱などを感じるので、『同性愛患者』という用語は合理的だ」とも書いてあった。秋白さんは、「このような回答は同性愛者たちに対する二次加害であり、すべての学生が科学的知識を得る権利に対する侵害でもある」と考えた。

4月 中山大学の学生ら、広東省教育庁前で同庁が書簡を転送したことは評価するアピールをし、同庁職員と会談

秋白さんは、広東高等教育出版社からの回答の内容には失望したけれども、この手紙を受け取って、ほんとうに感激して、目が涙でいっぱいになったという。自分の訴えが正視されたと感じたからだ。秋白さんは、「これは、この間の出来事のなかで、ただ一つ意外で、満足できたことだった」、「そのころは絶望してしまいそうだったので、最後の一日に出版社から回答を受け取れるとは思っていなかったし、広東省教育庁が転送するという処理をするとは思っていなかった。彼らが通報を正視し、実務的に処理したことをほめたい!」と言う。

4月29日、広東省教育庁前で、秋白さんたち5人は、同庁に対して、「積極的にフィードバックし、実際に処理した」と書かれた錦の旗を持ち、親指を立てたマークのボードを掲げて、教育庁を讃えた。もちろんそれだけでなく、「学生の声に対して関心を持ち続けてほしい」「広東高等教育出版社は、教材で学生を害するな」といった要求を書いたボードを持った人もいた。「ベイマックス」の扮装をした人もいた。

現場では、教育庁の陳情事務局の責任者が秋白さんを出迎え、錦の旗を受け取って秋白さんを陳情室に招き入れた。秋白さんは、広東高等教育出版社の回答についての意見書を渡して、出版社は問われたことに答えず、問題をすり替えていると述べ、広東省教育庁が引き続きこの問題に関心を持つよう訴えた。責任者は、これは自分たちの職責の内のことだからフォローすると述べ、秋白さんにこの意見書を出版社には渡したかどうかといったことを尋ねた(11)

5月~7月 秋白、同性愛蔑視の記述が多い広東高等教育出版社を広州市天河区法院(次いで広州中級法院)に訴えたが、受理されず

5月12日、中山大学の女子学生・秋白は、ほとんどの教材に同性愛蔑視の記述があった広東高等教育出版社を「ホモフォビアの教材は名誉権を侵害している」として、広州市天河区人民法院に訴えた。しかし、5月25日、同法院は、「出版社が上述の書籍を発行する行為と告訴人とは法律上直接の利害関係はなく、告訴人は上述の書籍が直接あるいは間接に利益を損なったことを立証する証拠を提供せずに、訴訟を起こしたのは、不当であり、受理すべきではない」と回答した(12)

そこで、秋白は、広州市中級人民法院に控訴した。しかし、いっこうに返事がないので、7月29日、同法院の陳情部門に行って、陳情をした。秋白と学友たちは、法院の前で「『ホモフォビア』の教材を訴えたことを無視された。『大胆』にも天河法院は審理せず決めた。中級法院が審理するようお願いする」というプラカードを掲げた。3人は、レインボーの目隠しをすることによって、同性愛者たちが平等な教育権を無視されている無力感を象徴させた。法院の職員は「すでにこの案件の処理の結果は、天河法院と秋白に郵送した」と言ったが、秋白は何も受け取っていない(13)

5月~8月 秋白、教育部に、大学の教材に対する監督措置について情報公開申請するも回答なし。そこで、回答がないことを行政不作為で北京第一中級人民法院に訴え、受理される

5月14日、秋白は、教育部に対して、大学が使用している教材に対する監督の職能と大学が誤った非科学的な教材を使用していることについてのどのような監督措置をとっているかについて情報公開申請をおこなった。政府情報公開条例の規定によると、教育部は申請を受け取った日から15日以内に回答をしなければならないが、その法定の期限内に回答がなかった。

そこで秋白は、広州市天河区法院に対して、教育部を行政不作為で訴えたが、同法院は受理しなかった。秋白は、広州市中級人民法院に控訴したが、結果は同じだった。そこで、8月14日、北京第一中級人民法院に訴えたところ、17日に受理された(14)。このことはさまさまざまなメディアで報道された(15)。『南方都市報』は、「女子学生が教育部を訴えた:訴訟の権利、公共的精神」という社説(16)を出したほどである。

8月 中山大学、秋白に訴訟をやめさせるよう圧力。それに対するLGBT諸団体の抗議

しかし、訴訟が受理された翌日から、大学側は、秋白を繰り返し呼び出して、圧力をかけた。「卒業させないかもしれない」と言って脅したともいう(この点については、大学側は否定しているが(17))。また、彼女の父母にも連絡して、秋白に教育部に「たてつく」のを止めさせようとした。秋白は自分が同性愛者であることを父母にはずっと言っていなかったのに、大学側は、秋白さんが同性愛者であることも言ったため、家族との間にも亀裂が生じて、秋白さんは、大学と家族の両方から圧力を受ける形になっている(18)

中山大学の卒業式でレインボーフラッグをまとって登壇してガッツポーズをしたことで有名になった万青さんは、学生の思想政治教育や日常管理などをおこなう「輔導員」制度を批判した。万さんは、「輔導員は教師と幹部の二重の身分を持っている」が、「行政訴訟法」は、「行政機関とその職員は人民法院が行政事件を受理することに介入・阻害してはならない」と規定しているので、輔導員が職務を利用して秋白を脅して訴訟をやめさせることは、司法に対する干渉であると述べている(19)

また、フェミニストとしてさまざまな活動に参加してきた卡楽さんは、「中山大学は開放的で寛容なイメージを持たれているが、けっしてそうではないことを指摘した。卡さんは、中山大学が清掃労働者の争議を支援した学生を卒業させないと何度も脅したことを述べている。卡さんは、「同性愛はデリケートな言葉で、口に出せないし、話せない」という業況を述べ、ある女性が中国直同連盟(2011年に設立された異性愛者が同性愛者に連帯し、支援する組織)の創設者の梁文輝を取材したときも、宣伝機関の回答は、「もし保護者が我々の大学に同性愛者がいると知ったら、どうするのか?」と言われたことを紹介している。卡さんによると、「皮肉なことに、当時のニュースサイトのトップページで特集される人物が、同性愛者であることをカミングアウトできていない」ということなのだ(20)

以下の点を中山大学に要求する署名運動も起きた。
 1.秋白が、教科書が同性愛に汚名を着せていることに反対する行動と教育部を訴えたことを支持せよ。
 2.中山大学は秋白に対するハラスメントをストップし、自らがおこなった秋白のプライバシー権を侵犯すること胃について謝罪せよ。(21)

また、LGBT12団体(女友組、江西在一起[いっしょに]文化発展センター、同性愛者の家族と友人の会、長沙同愛ネットワーク、楽窩拉拉小組、同城青少年リソースセンター、LGBT平等権益促進会、Les+、武漢同行、西安plus青年空間、北京紀安徳センター、上海プライドフェスティバル)は、中山大学の輔導員の行為は、司法の公正を妨害し、同性愛を差別し、職務を利用して学生を支配し傷つけるものとして譴責した。12団体は、中山大学の学長と大学指導部に以下のことを求めた。

 1.独立したグループを設立して、学生である秋白の人身の安全を守り、秋白の学業の正常な進行を保障すること。この独立したグループは、LGBTに対して友好的な教師、LGBT民間団体、学校指導部側が共同で構成すること。
 2.二度と学生個人のプライバシーを暴露しないことを承諾し、学生が法律にもとづいて公民の権利及び義務を実践する公民活動を支持すること。
 3.二度と同性愛を差別した誤った教材を使わないことを承諾し、多元的な性別に関する課程をおこない、大学でのLGBTの学生の活動を支持すること。
 4.輔導員・教職員・校務員全員に多元的性別の知識と非暴力的コミュニケーションの知識を学ばせること(22)

3月~ 他の大学でも自校の図書館に所蔵された教科書をチェックして是正を訴える動き

他大学でもいくつかの動きが起きた。

自らの大学の図書館にある教科書を、同城青少年資源センターとほぼ同様の観点から調査したLGBTグループもある。

(1)華中科技大学

3月7日、HGP(hust gay pride)華中科技同志プライド公益グループ[小組]は、華中科技大学(湖北省武漢市にある大学)主校区の図書館にある115冊の『心理健康教育』と『変態心理学』の教科書について調査した。

その結果、『心理健康教育』102冊のうち、32冊(31.3%)が同性愛を心理障害と性変態としており、一部は同性愛の「治療」について言っていること、58冊(56.8%)が同性愛に関する正しい心理知識をまったく掲載していないことがわかった。14冊(13%)には同性愛についての知識が書いてあるが、そのうち7冊だけが詳しく正確に紹介しており、残りの7冊は簡単に述べているだけであることもわかった。『変態心理学』13冊については、内容が客観的なものが6冊、明らかに誤りや偏見があるものが3冊、同性愛について述べていないのが4冊だった(23)

4月1日、HGP(hust gay pride)華中科技同志プライド公益グループは、西十二門の前で、突然、顔を白く塗った5人が、レインボーフラッグとプラカードを使って、パフォーマンスアートもおこなった(24)

また、彼/彼女らは、華中科技大学図書館長に向けて、同性愛を汚名化している教科書を撤去することや同性愛について科学的で客観的な教材を増やすことを求める署名運動をおこなった。この署名には、華中科技大学から43名、武漢理工大学から15名、武漢大学から5名、中南民族大学から3名、華中農業大学から2名、他に63大学の学生がネット上に名前を出して賛同している(25)

(2)華中師範大学

4月9日、CLS公益グループは、華中師範大学の図書館内の『変態心理学』の教科書19冊と『心理健康教育』教科書39冊の調査報告を出した。

この調査報告も、同城青少年資源センターの調査報告とほぼ同様の知見を得てているほか、ある教科書は、男性同性愛者について、「恥ずかしそうに歩き、話し方や立ち居振る舞いは少女のようで、ふだんは女性の仕事をしたがる」などと性的指向とジェンダー気質、性役割とをイコールで結んでいたりとか、別の教科書では、同性愛の原因として「父母の一致性のなさ、誘惑、異性に対する恐怖、機会のなさ」を挙げるなど、根拠のないことを言ったりしていることを指摘している。

この調査報告でも、社会の各界や教員、大学に対して同じ訴えをしている(26)

3月~ 全国100カ所の師範大学や北京の30か所の重点大学に使用教材について情報公開申請

また、大学に同性愛などに関する使用教材について情報公開申請した学生たちもいる。

(1)3月 長沙の同愛ネットワークの2人の学生が、全国100カ所の師範大学に対して教材についての情報公開申請

3月23日、長沙の同愛ネットワークの2人の大学生は、全国100カ所の師範大学に対して、「教材の使用基準と同性愛などに関する教材のデータ」についての情報公開を求める書簡を書留で送った。師範大学は教員を養成する大学なので、とくに同性愛など、さまざまな性的指向の人々に対して慎重に、客観的に対応する必要があるからだ(27)

(2)7月 北京の大学生2人も、北京の30か所の重点大学に情報公開申請

2015年7月3日、北京の2人の大学生が、北京の30か所の重点大学に「大学の関連教材の使用基準および同性愛にかかわる内容の教材の情報を求める」などの内容の情報公開申請の書簡を送った。

2人は、3月に同愛ネットワークの2人の大学生が全国100カ所の師範大学に対しての2人の大学生が全国の100カ所の師範大学に情報公開書簡を送ったことから、北京の大学の教材の中にも同性愛を汚名化している内容があるかもしれないと思ったのだ。2人は、「もし同性愛を汚名化している教材が存在しているのなら、新学期には使用を停止、改正、あるいは選購、新しい同性愛者を科学的に扱っている教材に改めてほしい」と述べている(28)

以上、さまざまな地方で各種の方法で運動がおこなわれていることがわかる。マスメディアもかなり注目している。しかし、行政や裁判所の壁は厚く、なかなか成果は上がっていない。そうしたなか、中山大学の秋白さんが粘り強い活動で、教育部が回答しないというごく初歩的な点についてではあるが、裁判への扉を開いたことは注目される。そうした活動にさえ、大学当局は圧力をかけているのだが、それを批判するLGBT諸団体の運動もあり、今後どのように道を切り開いていくのか、目が離せない。

(1)淡蓝5•17系列活动:揭露你身边的恐同教材」淡蓝网2013年5月25日。
(2)現在はダウンロード不可能のようだが、そのポイントがわかりやすく、一只死拉拉 GLCAC「盘点“毒“教材│错误一箩筐」(2015年4月16日)に記述されている。
(3)【教科书同性恋污名调查】中外专家联合呼吁对“恐同”教材说不!」同城青少年资源中心的博客2014年8月28日。
(4)广州日报「同性恋是一种病?四成教科书这么说」、信息时报「同性恋是病?教科书错了」、les168「教科书居然将同性恋描写为病态」、凤凰卫视「内地有高校教材称同性恋是病惹争议」、中央广播电视台华夏之声「国内外专家齐聚广州呼吁高校教材停止同性恋污名化」、新浪教育「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、NGO发展交流网「关注平等教育机会对教科书同志污名化说不」、网易教育「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、人民网教育频道「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、中商情报网「調查:高校四成教科書誤認同性戀為病態專家呼吁快更改」、南报网「同性恋是病?教科书错了」、21CN新闻「同性恋是一种病?四成教科书这么说」、中国社会科学网「调查称高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、央广网「高校四成教科书明确认定同性恋是一种病」、女权之声「中外专家联合对教科书同志污名化说不!」、lesplus拉拉杂志「中外专家联合对教科书同志污名化说不!」、「超四成国内教科书仍认定同性恋为病态 同性恋群体叫板“恐同”教材」『南方都市报』2014年11月26日。
(5)同性恋组织给全国112所大学校长写信 呼吁关注校园同志群体」同爱网络的微博2014年9月10日 10:25。
(6)10余中大学子抗议恐同“毒”教材,广东高等教育出版社遭举报」北京同志中心2015年3月23日。
(7) DC339徐可证的微博「关于教科书中针对同性恋的错误和污名描述内容的 公开举报信」2015年3月20日。ただし、この書簡は個人名で書かれているので、提出したものと若干異なるのかもしれない。
(8)中山大学学生举报恐同教材,央视网、人民网多家主流媒体转载新闻」北京同志中心2015年3月23日。
(9)【“毒教材”跟进爆料】国家新闻出版总局:教科书对同性恋污名化跟我有关系吗」同城青少年资源中心的博客2015年4月4日。
(10)同-城青少年资源中心的微博“毒”教材│未等到的回复,筹个“大白”陪我上北京求抱抱4月16日 12:56
(11)以上は、陈秋颜「广东教育厅务实回应举报,暖男“大白”陪学子上门点赞」北京同志中心的微博2015年5月1日。秋白的自由野「 THANK YOU│感动筹“大白”上北京的一路上有你」2015年4月19日も参照。
(12)秋白「教材“恐同”|学生起诉出版社 法院竟不予立案?」秋白的自由野2015年6月1日、「女大学生状告教科书诬蔑同性恋 反应称无利害关系」LGBT权促会2015年6月1日。
(13)起诉“恐同”教材遭无视 学生信访中院求说“法”」秋白的自由野2015年7月30日。
(14)高校教材“污名”同性恋:教育部拒公开内情,女生起诉获立案」同志权益运动的微博2015年8月18日 10:55。
(15)教材若出错由谁来管」人民网2015年8月19日(来源:广州日报)。「【#抗议“毒”教材# 媒体齐关注】向站出来的人致敬」同城青少年资源中心的博客2015年8月20日。
(16)[社论]女生状告教育部:诉讼的权利,公共的精神」『南方都市报』2015年8月22日。
(17)铁瑾「中大女生诉教育部“教材歧视同性恋”,学校否认以不毕业施压」捜狐新闻2015年8月21日(来源:弧度)。
(18)秋白来信| 那些爱与自由」同志平等权益促进会的微博2015年8月26日 22:28など。
(19)羊驼青的微博 《学生天然有免于被辅导员“侵扰”的自由》8月21日 18:03。
(20)卡乐潼的微博「中国大学校园并没那么开放包容」2015年8月21日19:13。
(21)参与联署支持起诉教育部的女同性恋秋白! 请中大向秋白道歉!」食品药品安全的博客2015年8月26日。
(22)致中山大学校长公开信:保障校园同志学生免受歧视」同志平等权益促进会的微博2015年8月28日。
(23) HGP小组「【抵制污名化教科书】华中科技大学同性恋污名化教材调查报告(完整版)」2015年3月24日。
(24) HGP公益小组的微博【爱是平等,不是疾病】4月1日 13:26
(25)【联名签署】华科学子恳请华中科技大学图书馆下架同性恋污名化教科书」HGP小组2015年4月26日。
(26) CLS公益小组「【抵制污名化教科书】华师图书馆教科书同性恋污名化调查报告」2015年4月9日 21:48。
(27)@lusunk「国家新闻出版总局:教科书对同性恋污名化“与我无关”」NGOCN2015年3月31日。
(28)北京高校教材恐同吗? 消息公开一下!」RAINBOW彩虹律师团的微博2015年7月4日 08:18。

職場での性的指向による差別の調査報告、企業への提言、中国初の性的指向による解雇裁判

〈目次〉
一、愛白文化教育センター「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」
二、広州のレズビアンが、500企業のCEOにセクシュアル・マイノリティ差別を禁止する企業憲章の制定を求める手紙
三、中国初の性的指向による差別解雇裁判

中国においても、セクシュアル・マイノリティの人々は職場でも、さまざまな差別にさらされています。最近、そうした差別について調査をして、企業に提言をしたり、同性愛者であるために解雇された人が裁判を起こしたりする動きがありました。それらをご紹介します。

一、愛白文化教育センター「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」

2013年の国際反ホモフォビアデー(5月17日)に、愛白文化教育センター(もともとはゲイサイトだったが、現在はLGBTの人権問題に取り組む民間団体)が、社商賢匯(community Business)(香港)、商道縦横(以上2つは、企業の社会的責任問題に取り組む非営利機構)、「同性愛者の親と友人の会」(同性恋亲友会(PFLAG))、飛賛ネット(ゲイのコミュニティサイト)、拉拉風向標(レズビアンのためのネットラジオ)とともにおこなった、「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」(1)を発表しました。この調査をおこなった期間は、2013年1月3日~4月3日の3か月間で、17の省・市・自治区から2161の有効回答が得られました(ただし、トランスジェンダーで異性愛の人や、16歳以下または60歳以上の人、農村の人、香港・台湾からの訪問者の回答は、サンプル数が少なすぎるか、調査の条件に合わないという理由で省かれています)。

回答者の特徴は、以下のとおりでした。
 ・居住地は、広東省・北京市・上海市が、それぞれ17%、14%、10%で、他の省・市は2~5%程度。
 ・生物学的性別は、男性が63.44%、女性が36.56%で、性自認は、男性が65.66%、女性が32.99%。
 ・性的指向は、85.89%が同性愛で、14.11%がバイセクシュアル。
 ・年齢は、16歳~44歳が98.66%、45歳~59歳が1.34%。
 ・学歴は、75.71%が大学卒で、13.56%が修士以上、8.7%が高卒で、中卒・小卒は2.04%。

主な質問の結果は、以下のとおりでした。

1.あなたは職場で自分の性的指向あるいは性自認をどれほど公開していますか?
 ・完全に公開している――6.29%
 ・親しい友だちあるいは一部の同僚にだけ公開している――45.63%
 ・上司にだけ公開している――0.46%
 ・全く公開していない――47.62%

2.(完全には公開していない人に対して)もしあなたが仕事の中で自分の性的指向を完全に公開していないなら、その理由は? (これ以後の質問は、複数選択可)
 ・他人にあれこれ言われるのが怖い、またはかつてあれこれ言われたから――69.4%
 ・同僚が性的指向のために自分を遠ざけるのが怖いから――60.9%
 ・個人のキャリアの発展に影響し、昇進の機会を失うから――51.71%
 ・性的指向が自分の家族に知られるのが怖いから――43.3%
 ・解雇されるのが怖いから――22.49%
 ・同性の従業員のセクハラに遭うのが怖いから――6.82%

4.もしあなたが自分の性的指向あるいは性自認のために、仕事の中で不公平な待遇を受けたことがあるなら、それは具体的に言えば、どのようなものでしたか?
 ・言語による侮辱と嘲笑――38.5%
 ・しかるべき尊重をされなかった――30.45%
 ・仕事の中で意地悪をされた――14.53%
 ・昇進の機会を失った――12.86%
 ・会社のグループ活動から排斥された――11.99%
 ・採用を拒否された――7.59%
 ・解雇された、または離職を要求された――6.71%
 ・研修の機会を失った――6.11%
 ・セクシュアルハラスメント――2.82%
 ・暴力、いじめ――1.3%
(・ない――39.94%)

5.以下の状況があなたの仕事の場で起きたことがありますか?
 ・経営者、同僚がLGBTなどセクシュアル・マイノリティをからかったり、侮辱したり、失礼なことを言ったりした――53.63%
 ・会社の中の他の同僚の性的指向、性自認に対して言葉で攻撃した――32.35%
 ・LGBTの同僚がいじめにあった――5.83%
 ・LGBTの同僚がセクシュアルハラスメントにあった――2.41%
 ・LGBTの同僚が暴力をふるわれた――1.2%
(・以上のことはなかった――33.09%)

7.労働環境がLGBTに対して友好的でなかったことによって、あなたに以下の状況が発生しましたか?
 ・本当の自分を隠すために精力と時間を費やさなければならなかった――45.07%
 ・出席することを避けた活動や接触することを避けた人がいる――34.34%
 ・仕事のグループや経営者・同僚と率直な交流ができない――27.58%
 ・離職を考えたことがある――21.01%
 ・全力で仕事に打ち込むことができない――18.14%
 ・仕事に熱心になれなくて、仕事の効率が低下した――13.37%

この調査報告は、以上のような結果について、「中国の企業の中では、大多数のLGBTの従業員は、仕事の場で自分の性的指向/性自認を完全には公開しておらず、多くの人は、さまざまな原因で本当の自分を隠して別の『身分』で生活しなければならない。このことは、さまざまな原因によってもたらされているが、その重要な原因の一つは、包容的で友好的な仕事の環境や多元性を励ますような企業文化がないことである」として、多元的な企業文化は、従業員の仕事の効率を上げたり、従業員の招聘や保持にとっても有利であったりすると述べ、「企業の行動の建議指南」として、以下の点を挙げました。

 1.性的指向とジェンダーによる差別に反対し、LGBTの従業員の平等な権益を保障する企業の憲章を制定する。
 2.会社の従業員にLGBTに関する知識の研修を提供し、LGBTの話題とグループに正しく対応できるようにする。
 3.責任者を指定するか、専門のグループを作るかして、企業内部のLGBTに関する実務(たとえば、セクシュアル・マイノリティが、不公平な待遇やフレンドリーでない環境について訴えるのに対処すること)の管理に責任を持たせる。
 4.LGBTのパートナーに相応の福利を提供する。現在、アメリカの大多数の多国籍企業(IBM、マイクロソフト、グーグル、ボーイング、コカコーラ、ディズニーなど)は、そのLGBTの従業員とそのパートナーにも福利を提供している。
 5.寛容で多様な企業文化を唱導・創造する。LGBTの従業員の就業に対して、平等な福利と昇進の機会を含めた、平等な機会を与えること。
 6.LGBTのNGOが差別に反対する活動をするのをサポートし、それによって会社の取引先や事業パートナーがLGBTに対する理解を深めると同時に、企業の内部文化と外部イメージを高めることができるようにする。

二、広州のレズビアンが、500企業のCEOにセクシュアル・マイノリティ差別を禁止する企業憲章の制定を求める手紙を送る

2014年9月23日には、広州のレズビアンの曾家琪さんが、全国トップ500の企業のCEOに対して、トップ企業として性的指向とジェンダーによる差別に反対し、セクシュアル・マイノリティにフレンドリーで多元的な職場環境を創造するような憲章を制定するように求める手紙を送りました。

曾家琪さんは、仕事に就いている2年間の間に、さまざまな面接試験を受けたり、企業で仕事をしたりしましたが、その中で、不愉快な質問をされたり、同僚とのつきあいがうまくいかなかったり、伝統的な異性愛の恋愛観・結婚観のために抑圧を受けたりしたことがよくありました。

その後、曾さんが民間団体の活動に参加して、多くのLGBTの人と接触したところ、セクシュアル・マイノリティが職場で差別やハラスメントなど、さまざまな辛い目にあっていることがわかりました。

たとえば、あるレズビアンは、面接試験のとき、短髪で背広を着ていたために、そのことばかり質問されて、仕事にとって肝心の専門的素養や能力の問題については、まったく尋ねられなかったそうです。また、同僚に自分はレズビアンだとカミングアウトしても、男の同僚のさまざまなハラスメントにあう事例も多いそうです。

自分と他の人に経験に多くの共通点があることを知った曾さんは、半月余りの時間をかけて中国のトップ500の企業の住所を調べ、手紙を書き、自分のお金を出して郵送しました(2)

「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」によると、カミングアウト自体はゲイよりもレズビアンのほうが少し容易なのですが、曾さんの友人たちの話からは、レズビアンにはゲイにない困難もあることがわかります。


三、中国初の性的指向による解雇裁判

2014年11月26日、穆易さん(仮名。報道の際には「阿易」という仮名も使っている記事もありますが、以下、「穆易」で統一します)は、彼を同性愛者であるために解雇した深圳市装修芸装飾設計有限公司(以下、「会社」と略す)を、深圳市南山区人民法院に訴えました。

10月29日、深圳の街頭で2人の男性同性愛者がけんかをしたため、やじ馬が集まりました。その場面を何者かが動画で撮影してインターネットに掲載したため、多くの人がそれを見ました。その1人が穆さんだったのです。

11月8日、会社は、穆さんが社章と制服を身につける規律を守らなかったことと「穆さんのサービスの態度がよくない」という訴えがあったことを理由に、穆さんを解雇しました。しかし、その後、穆さんが会社と交渉する中で、人事責任者の李某さんが、ビデオで穆さんが同性愛者であることが暴露されたことについて、「中国社会は封建的だから、同僚や取引先に与える印象を考慮しなければならない」と言いました。

穆さんは、8月に入社して以来、販売計画の責任者として頑張って働き、定時に退勤することも少なく、3週連続して休みがなくても文句も言わずに働いてきました。穆さんは、「ビデオが自分の個人のプライバシーを暴露したことによって、以前の友人や同僚が電話をかけてきてあれこれ言われて辛かったところに、解雇までされて、精神が崩壊しそうでした。」「外出することも、電話に出ることもできず、仕事も失ってしまいました」と語っています。

穆さんは、「不運だったのだ、と諦めることはできません。自分の権利を守るために立ち上がらなければなりません。私は何も間違ったことはしていないので、やすやすと頭は下げられません」という気持ちから、訴訟をすることに決め、劉瀟虎さんに弁護士をお願いしました。劉瀟虎弁護士は、中国初の遺伝子差別(サラセミア[地中海貧血])による就職差別事件や福建初のB型肝炎差別事件の弁護士をつとめた人です。

穆さんは、その後、設計師の仕事を見つけることはできましたが、そこでは自分の性的指向は言っていません。新しい会社は元の会社よりも待遇はいいのですが、「仕事はまた探せても、差別は容認できません」という気持ちで訴訟に踏み決ったのです。

11月26日に提出した訴状は、「性的指向の違いは、社会にとっては、人類の多様性の具体的な現れであり、個人にとっては、平等で独立した個人の特質である。それは人の品行や能力を判断する基準ではなく、仕事の能力とは何も関係がない個人のプライバシーである。一人一人が性的指向によって差別されないことは、人格の尊厳にとって必須の事項であり、法律が有している正義の最低ラインでもある」と述べ、「被告は原告の平等な就業権を侵犯したので、被告に謝罪と5万元の精神的損害賠償(慰謝料)を請求する」というものでした(3)

この裁判は、中国初の性的指向による解雇裁判であるとともに、中国初の性的指向による雇用差別裁判でもあります。

2015年1月22日、公開での審理がおこなわれました。裁判所前には、支援者が20人近く集まり、「最初の同性愛就業差別裁判」、「職場の性的指向差別反対」などと書かれたボードを掲げてアピールをしました。「同性愛者の家族と友人の会」の董婉婉さんは、「同性愛の子どもに平等な就業権が必要だ」と書かれたボードを持って立ちました。同会の執行主任の阿強さんは、「穆さんの境遇を知って、多くの同性愛者はとても怒るとともに、穆さんが立ち上がったことはすばらしいと思ったので、自発的にみんなで声援を送っているのです」と述べました(4)

支援者が裁判を傍聴しようとしたところ、最初、法廷の保安の人に傍聴を断られたり、その後も、別の保安の責任者に、南山法院の本部に行って傍聴証をもらってくるように言われたり、入廷のときに、持ち物をすべて預けるように言われたり(本当は「公民法廷訊問傍聴規定」では、筆記用具などの持ち込みは可能だということです)という紆余曲折がありました。傍聴席も14席しかなく、原告側支援者ですぐにいっぱいになりました。

裁判では、穆さん(原告)側の弁護士が訴状の内容を説明したところ、会社(被告)側弁護士は、原告と会社との労働関係すら否認し、性的指向による解雇ではないと述べ、公の謝罪や精神的損害賠償には法律的根拠がないと主張しました。

原告側弁護士は、会社の印鑑が押された穆さんの従業員章などを示すとともに、重要な証拠として、原告と会社の人事責任者の李さんとの電話の記録を提出しました。その記録は10数分にわたるもので、会社の幹部たちが穆さんの性的指向を知った後、会社に影響があると考えて、会議を開き、解雇するかどうかを議論したこと、解雇の主な理由は同性愛であることなどが語られていました。録音には、人事責任者の李さんが、「同性愛は[解雇の]一つの理由である。同性愛を受け入れることができる人もいるけれど、私たちの会社の同僚と取引先には受け入れられない。」「あちこちで私たちの会社には同性愛がいると言われており、気持ちが悪い」などといった差別的発言をしていることが収録されていました。

被告側弁護士は、原告側が提出した録音は、当事者の同意なしに録音されたものなので、合法ではないから、証拠にはできないと主張しました。

原告側弁護士は、それに対して、録音中では、李さんは被告の会社の人事責任者として、解雇の理由を話しているのであって、これは仕事の範囲内であり、個人のプライバシーとは関係がないから、合法的で合理的な証拠であると主張しました(5)

2時間余りの審理のあと、裁判官は、日を選んで判決を下すと述べました。弁護士によると、3カ月以内に判決が下されるとのことです。

劉瀟虎弁護士は、「これは典型的な就業差別であり、わが国の『憲法』と就業促進法の中の平等な就業と反差別の規定に違反しているのみならず、わが国が正式に批准したILOの『1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約』(第111号)の平等な就業の規定に違反しています。同性愛者全体の人数に比べて、実際に起きている裁判はきわめて少ないのですが、その原因は、社会全体の偏見によって、多くの人が自分の性的指向を言えなかったり、差別されたときに自分の権利を守ることができなかったりするためかもしれません」と語りました。

広州平機センター(2013年に設立された、障害者差別や戸籍などさざまな差別に反対するNGO)の代表の程淵さんは、「性的指向によって差別をされないということは、多くの国家の立法で保護されていますけれども、中国の法律には、まだこの点が立法に入っていないので、改善しなければなりません」と語りました(6)。この点に関しては、愛白文化教育センターが2014年10月に刊行した『中国大陸LGBTIの権利の政策回顧と社会実践』(7)も、「中国政府がそれぞれ1994年と2007年に公布した『労働法』『労働契約法』は、労働者の労働権を保障しており、女性・障害者・少数民族の労働権にはとくに注意を払っている。けれども、LGBTIの人々が十分な労働権の享受を保障する面については、中国の現実の政策と実践には空白がある。『労働法』第12条は、労働者は民族・人種・性別・宗教信仰によって差別されてはならないことを規定しているけれども、労働法は、性的指向や性自認など、その他の差別は禁止していない」と指摘しているところです。

広州で発行されている『南方都市報』『羊城晩報』も、この裁判についてかなり詳しく報じています(8)

愛白文化教育センターの「中国セクシュアル・マイノリティ(LGBT)職場環境オンライン調査報告」は、セクシュアル・マイノリティが置かれている状況が深刻な人権問題であることを明らかにしつつ、それが企業にとってもマイナスであることを述べたものでした。その一方で、企業の差別を問う裁判を起こし、それを支援する団体(主に「同性愛者の家族と友人の会」のようですが)もある。その両方の面から、中国のセクシュアル・マイノリティの人々は、職場を変えていこうとしているようです。

(1)中国語版「中国性少数群体(LGBT)职场环境在线调查报告(PDF)」2013年5月17日、英語版“Online Survey Report On The Work Environment For China’s LGBT Community ”(PDF)2013年9月1日。「中国性少数群体职场环境报告:男性出柜少 国企压力大」(爱白网2013年5月18日)に、結果の概要とグラフが掲載されています。この調査結果では、その他、国有企業で抑圧が強いこと、女性より男性のほうがカミングアウトが難しいこと、学歴が高いとカミングアウトが難しいこと、同性愛よりバイセクシュアルのほうがカミングアウトが難しいことなども明らかになっています。
(2)女同性恋者致信500强企业首席执行官 呼吁为性少数群体创造多元友好环境」中国彩虹媒体奖的博客2014年9月23日。
(3)以上は、@兔子走丢了「深圳小红帽事件后续:全国首例同性恋职场歧视案今起诉」NGO交流发展网2014年11月27日(訴状の冒頭と最後の写真あり)、「“被出柜”后又被炒鱿鱼,男同志起诉单位欲维权」同性恋亲友会2014年12月4日(@兔子走丢了の文章の内容と同一)。「小红帽事件另一同性恋主角遭辞 其诉公司歧视并索赔 全国首例同性恋职场歧视案件 开庭审理,同性恋公益机构庭外声援」(『晶报』2015年1月23日)、「“小红帽”红得发紫“小太阳”惨被辞退 百元哥事件另一男主角“被出柜”后被辞退,告公司侵犯平等就业权」(『南方都市报』2015年1月23日)に書かれている情報も加味。
(4)以上は、【中国性倾向职场歧视第一案】1月22日 18:34(写真あり)→[同じ記事]「中国性倾向职场歧视第一案今日庭审结束」淡藍公益2015年1月22日(写真あり)、「小红帽事件另一同性恋主角遭辞 其诉公司歧视并索赔 全国首例同性恋职场歧视案件 开庭审理,同性恋公益机构庭外声援」『晶报』2015年1月23日(写真あり)。董婉婉さんが単独で写っている写真は、同性恋亲友会的微博2015年1月22日 15:59
(5)以上は、「亲历中国性倾向职场歧视第一案庭审!」同性恋亲友会2015年1月28日。この記事によると、被告側弁護士は、以下のようなおかしな発言もして、原告側支援者に呆れられたようです。
・原告側弁護士が、差別は重大な社会問題だから法律によって処罰しなければならないと強調したのに対して、被告側の弁護士は、「社会問題は社会に解決させる」と言った。
・被告側弁護士が、「録音の証拠は人事の責任者のプライバシーに及んでいる」と言ったので、原告側弁護士が「どんなプライバシーに及んでいるのか」と尋ねたら、被告側弁護士は「それはこの事件とは関係ない」と言った。
・被告側弁護士が、2回、「同性愛と同性愛を宣伝することは別問題だ」と言ったので、原告側弁護士は、「それは、穆さんが同性愛を宣伝したから解雇されたという意味か?」と尋ねたら、被告側弁護士は「私はそのようには言っていない」と言った。
(6)以上は、【中国性倾向职场歧视第一案】1月22日 18:34(写真あり)→[同じ記事]「中国性倾向职场歧视第一案今日庭审结束」淡藍公益2015年1月22日(写真あり)。
(7)中国大陆LGBTI人群权利的政策回顾和社会实践(PDF)」(爱白文化教育中心 2014年10月)。
(8)“小红帽”红得发紫“小太阳”惨被辞退 百元哥事件另一男主角“被出柜”后被辞退,告公司侵犯平等就业权」『南方都市报』2015年1月23日、「“小红帽”事件男主角告公司歧视一审开庭 男子认为他是因暴露了同性恋才被辞退,但该公司辩称其为主动离职」『羊城晚报』2015年1月23日。

BLサイト弾圧に対する抗議のパフォーマンス、情報公開申請、声明など

<目次>
一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道
二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス
三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案
四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

中国では、この4月から「ポルノ・違法サイト取締り」キャンペーンが始まり、その中で、BL(ボーイズラブ)小説を掲載しているサイトも摘発されたと報じられました。それに対して、女性やレズビアンたちから抗議の声が上がっていることなどをご紹介します。あわせて、本年の国際反ホモフォビアデーの状況についても触れます。

一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道

今年4月から、中華人民共和国の4部門(「ポルノ・違法サイト取締り」工作グループ事務局、国家インターネット情報事務局、工業と情報化部、公安部)は、「インターネットを利用して猥褻・ポルノ情報を作成する行為を厳しく取り締まる」特別行動を開始しました(1)

4月4日には、安徽テレビ局が、河南省の警察が、BL小説を掲載していたサイト「耽美小説網(http://dmxhw.com/)」を摘発し、その管理人と作者たちを逮捕したこと、作者の大部分は20歳前後の若い女性だったと報じたことがネットで伝えられました(2)

安徽テレビ報道は、事件の経過を次のように報じています。
――鄭州の公安局の警官が、「耽美小説網」のアクセス数が非常に多いことを不審に思って、VIP会員になってその内容を確認した。インターネットの監視[网监]支隊の副隊長の耿傑は、そのサイトの有料部分の内容は「ポルノ小説が主であり、同性愛・暴力・血なまぐさいものを宣揚していた。それらが描写していたのは、すべてゲイだった。つまり、それらはゲイの恋と性行為の描写だった」と話した。警察は、まずサイトの主催者である王朝挙という男を逮捕した。さらに、彼の住まいから、小説の作者との契約書(クリック数に応じて収益がもらえることなどを決めている)を押収して、各地にいた作者を逮捕した。作者の大部分は20歳前後の若い女性だった(3)

ただし、この動画が報じているのは、2011年1~2月に起きた事件です(この事件については、当時、日本のブログも取り上げています→「中国の鄭州でBL小説サイトが摘発され関係者が大量に逮捕される」「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」2011年3月28日)。

といっても、今回、3年以上も前の事件について報道がなされたということは、今回も取締りの強化がおこなわれることを示しているように思います。

二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス

5月17日の反ホモフォビアデーの前に、北京・広州・信陽・武漢・南京・蘭州・杭州・汕頭・南昌の9市の、9名のさまざまな性的指向の女子学生が、前後して、中国当局の先述の4部門に対して、「わいせつ・ポルノ」情報の具体的基準と同性愛に関する審査基準について情報公開を申請しました。

5月17日の当日には、10市で、自らをレズビアンだと考えている学生たちが、さまざまな広場でパートナーとキスをして、「これがポルノか?」と書いたプラカードを掲げました。

5月17日の、このパフォーマンスに参加した女子大学生の白柏さんは、「BL文学の愛好者として、いつも見ていたサイトが閉鎖されて、その理由がポルノだというので、すっかり落ち込みました。異性愛を題材にした小説も取り締まられていますが、取り締まりの基準は、同性愛小説ほど厳しくありません。このことは、同性愛のネット小説と異性愛のネット小説とでは、審査がダブルスタンダードになっていることを示しています。一部の地方では、同性愛とポルノとを同一視して、サイトを閉鎖しています」と訴えました。

参加者の徐早早さんは、「私自身、女性同性愛者ですが、私はいまのポルノ・違法サイトの取締りは同性愛に対する非常に重大な差別だと思います。多くの地方では、任務を執行するときに、同性愛はみな、わいせつであり、ポルノだとみなして、同性愛を題材にした作品の中の良い内容のものと悪い内容のものとを区別せずに、すべてを取り締まっています。けれども、異性愛のわいせつな作品に対しては、細かく区別して対処しています。このようなタプルスタンダードは、それ自身が差別であり、ただでさえ社会的な弱者である同性愛の人々を、いっそうフレンドリーでない境遇に置くものです」と語りました。

今回の活動の発起人である王可然さんは、耽美小説網の事件で、「インターネット監視隊の耿傑副隊長は明らかに同性愛をポルノの範疇に入れています。明らかにこれは同性愛に対する重大な差別です。一人のレズビアンとして、私はこのような同性愛を差別する言論と行為を容認できません。関係部門は自らの差別的行為を正すよう望みます」と語りました(4)

レズビアンがパフォーマンスをすること自体は、もちろん以前からありました。また、レズビアンが(同性愛者一般や女性一般としてではなく)レズビアンとしてパフォーマンスをすることも2012年ころからおこなわれ始めました(5)

しかし、今回のように全国各地でいっせいにレズビアンがパフォーマンスをすることは、初めてのように思います。

また、以下のような点から見て、今回のパフォーマンスには、2012年から若い女性がパフォーマンスアートなどを繰り広げてきた「ジェンダー平等活動グループ(性別平等工作組)」(その年表や本ブログの関係記事へのリンク)も関わっているように思います。
 ・ジェンダー平等活動グループの猪西西さんが、杭州の女子学生がさまざまな場所でキスをするパフォーマンスをしている写真を自らの微博に掲載している(6)
 ・グループのリーダー的存在である李麦子さんも、インターネットの同性愛小説を弾圧することに抗議しており(7)、この抗議に添付されているキスの写真は本人のものかどうか不明だが、別のツイートで、「レズビアンがキスしているのに出会った」と言って、北京師範大学でのキスのパフォーマンスの写真を自らの微博に掲載して宣伝している(8)
 ・この活動には、「蘭州桜桃フェミニズムレズビアングループ(兰州樱桃女权拉拉小组)」も参加しているが(9)、この小組の設立には李麦子さんもかかわっている(10)
 ・プレスリリースらしきものは、広州のニューメディア女性ネットワーク(新媒体女性网络)の微博で発表されているが(11)、このネットワークはジェンダー平等活動グループに近い知識人である李思磐さんがリーダーである。

三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案

4月30日には、陳亜亜さんが発起人になって、8人のセクソロジー研究者が、「ポルノ・違法サイト取締り」に対する共同提案を発表しています。

この提案は、まず、「現在、多くの国家はポルノ情報に一定の制限を設けている(主に児童に関する情報)けれども(……)人類の性の情報に対するニーズは抑制するのは難しい」と指摘して、今回のような取締りは「長い目で見れば、その効果は僅かである」こと、また「性の自由な表現権と衝突する可能性がある」ことなどを述べています。

その上で、以下のような提案をおこなっています。

1. インターネットのポルノ取締り行動に希望を託すことはやめるべきであり、専門家・学者、従業人員、公衆の意見を広く求め、国際的に成功した経験を参考にして、もっと合理的な管理モデルを探求・実践すべきである。

2. 法律・法規の中の「わいせつ、ポルノ」についての定義を改めて、映画・出版物のレイティング制度を実施し、「ポルノ取締り」の範囲の拡大化を避け、性の自由な表現権を保障すること。

3.青少年の性教育を充実させて、インターネットのポルノ情報に影響を受けやすい人々のために、指導と援助を提供すること。

発起人
陳亜亜(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士)

連署人
方剛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張玉霞(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張静(ジェンダー/セクシュアリティ学者)
郭暁飛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
彭濤(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
斐諭新(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
魏建剛(ジェンダー/セクシュアリティ平等な権利活動家)(12)


研究者たちの提議をめぐる議論

この提案に対して、呂頻さんは、「この提案のレイティング制度については、異論もある。私が思うに、現在のポイントは、国家権力のフェードアウトと言論の自由に承認にあるのであって、重点は、方案にではなく、言論の自由という前提の下で民主的な協議と産業の自律によって方案を達成する手段にこそある」とコメントしています(13)

呂頻さんの批判に対して、陳亜亜さんは、「レイティング制度は、私の初稿にはなかったが、意見を募集したとき、何人かが提起した。私はそれを共通認識にするかどうかを問うたが、返事がなかったので、改稿するときに入れた。個人的に言えば、レイティング制度を入れたほうが、政府がこの意見を受け入れやすいと感じる」と回答しています(14)

また、性教練(性のコーチという意味でしょうか?)陽春さんは、「最も良い性教育は、ポルノ的資料を含めて、すべての性の情報・資料を、各年齢層、各性別、各階層、各性的指向の性を好むすべての人に向けて広く流通させて、得られるようにして、すべての性のタブーを打ち破ることこそが、最も良い性教育だ」とコメントしました(15)

陽春さんに対しては、陳亜亜さんは、「完全に開放することは不可能だ。現在の提案は、実行可能なことを言っているのだけれども、それでも多くのネットユーザーはやはり実行可能ではないと感じているようだ。おそらく、それは、ポルノ取締りの目的が、けっしてポルノに関することだけではないからだろう」と言っています(16)

四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

1.公衆の前でキスをするパフォーマンスは昆明でも

今年の国際反ホモフォビアデーで公衆の前でキスをするパフォーマンスをしたのは、BL小説弾圧に抗議するレズビアンだけではなかったようです。

雲南省の昆明市の南屏街では、「雲南平行」の20人あまりの人々が、午後3時ごろ、レインボー色の傘を差し、レインボーフラッグを手に持って、市民に国際反ホモフォビアデーの意義について説明しました。その後、5組のゲイやレズビアンのカップルが、金碧広場に行って、抱き合い、キスをしました(17)

2.長沙では、プライドウォークは当局の圧力で中止、プライド登山を80人あまりでおこなう

長沙市では、2012年11月24日、中国大陸初のLGBTパレードが2~30人でおこなわれました。2013年5月17日には、ふたたび、100人余りによるLGBTパレードがおこなわれました。いずれも、発起人は向小寒さんという男性でしたが、2013年のパレードのとき、向小寒さんは、無許可デモを行ったという理由で行政拘留12日に処せられました(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」、「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」参照)。

今年の5月17日には、向小寒さんは、長沙市岳陽区で「プライドウォーク」と「LGBT大会」をする計画でした。しかし、向小寒さんが5月6日、北京に行って、ある同性愛組織を正規のNGOとして登録する問題(現在、中国では、同性愛組織は正規のNGOとして登録できない)の会議に参加したら、その会議の9人の参加者はみな人身の自由を制限され、一番長い人は16時間近く拘束されました。さらに、活動の数日前、向小寒さんは警察に呼ばれて、圧力をかけられて、「プライドウォーク」や「LGBT大会」は中止を余儀なくされました。

やむなく今年は、長沙で約80人の大学生と社会人が登山し、歩くという方法で、差別反対の活動をおこないました。彼/彼女たちは、北京・天津・武漢・広東などからやってきて、レインボーフラッグを掲げ、「私は病気ではない。治療は必要じゃない」、「男も女もおおぜい立ち上がった!」、「YES, I am GAY」、「同性婚姻に関心を寄せて、同妻(ゲイの妻)の悲劇をなくそう」といったプラカードを掲げて歩きました(写真は、この記事の中にあります→「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日(18))。休憩時間には、交流もおこないました。参加者は非常に多彩で、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、LGBTを支持する異性愛の友人などがいたとのことです(19)

今年は、山の中の道を歩くという、誰も見ていない、デモとしての役割を果たさないウォークしかできなかったわけです。けれど、微博(中国版ツイッター)など、インターネット上には多数の写真が掲載されましたので、社会に対するアピールにはならなかったとはけっして言えないだろうと思います。

しかし、今年は、北京でも、さまざまな団体が国際反ホモフォビアデーに計画していた活動が圧力をかけられて続々と中止させられたり、LGBT活動家が警察に呼ばれたりしたとのことで、こうした活動にも、いま、寒風が吹いているようです。

(1)中国扫黄打非网」、「扫黄打非・净网2014 专项行动」(Wikipedia)など参照。
(2)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」安徽网2014年 4月4日(来源:安徽卫视)、「河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)、「中国『BL小説執筆者』逮捕で波紋」NewSphere 2014年04月23日。
(3)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)の中の動画参照。
(4)以上は、新媒体女性的微博5月17日 23:31
(5)2013年5月16日、北京で3組の若いレズビアンカップルがキスしているところに、通りがかった男性が「同性愛は死ね!」と言うと、3組のカップルが倒れるパフォーマンスアートをおこなった。倒れたカップルの上には、「ホモフォビアは女同性愛を殺す(恐同杀死女同性恋)」と書いてあるボードが十字に置かれたのだが、「とくに『女同性愛』と言ったのは、女の同性愛は男の同性愛に比べて社会から無視されているので、私たちは『女』という字をはっきりと書かなければならなかった」(発起人の小航)からだという(「年轻女孩“快闪”“装死”反对同性恋歧视」同语2013年5月16日)。 
 また、2012年7月1日には、新しい「献血者健康検査要求」が施行されて、女性同性愛者の献血禁止が撤廃されたのだが、その後、女性同性愛者が公然と献血したという報道はなかった。そこで、新しい「献血者健康検査要求」の施行状況をチェックするため、2013年7月1日、瀋陽・広州・北京・武漢・鄭州の5つの都市のレズビアンが、いっせいに公然と献血した(「同志献血解禁1周年 四城拉拉骄傲献血」网易女人2013年7月1日)。
 上の2つの活動は、20余りの草の根組織が集まった「第2回レインボーメディア賞研修ワークショップ」(第1回は4月に昆明で開催)で、指導者に啓発されつつ、メンバーが計画したとのことである。この研修ワークショップは「レインボーメディア賞」という、優れたLGBT報道に賞を出している団体が主催し、北京紀安徳相談センター、同性愛者の家族と友人の会、同語、女性メディアウォッチネットワークが共催した(「媒体奖培训再结硕果 “女同性恋骄傲献血”五城连动」[動画])。
(6)猪西西爱吃鱼的微博5月17日 10:47
(7)麦子家的微博5月17日 09:05
(8)麦子家的微博5月17日 15:45
(9)兰州樱桃小组的微博5月17日 22:14
(10)本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」参照。
(11)新媒体女性的微博5月17日 23:31
(12)voiceyaya的微博5月1日 00:30
(13)吕频的微博5月5日 00:42
(14)voiceyaya的微博5月7日 14:01
(15)性教练阳春的微博5月5日 01:52
(16)voiceyaya的微博5月5日 08:07
(17)国际不再恐同日 20多位同性恋者昆明闹市拥吻」云南网2014年5月18日。
(18)NGO发展交流网2014年5月20日。同爱网络的微博5月18日 21:56も参照。
(19)以上は、「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日」NGO发展交流网2014年5月20日。

「2013年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」

中国では、近年、年末になると、ゲイサイト「淡藍網」などが、セクシュアル・マイノリティに関する「10大ニュース」を発表するようになったが(本ブログの記事「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」「『2010年中国10大同性愛ニュース』」「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」「『2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」参照)、昨年(2013年)末も、同様に「10大ニュース」が発表されたので、それらをご紹介する。

一 淡藍網による10大ニュース

12月9日、「淡藍網」が、以下の「10大セクシュアル・マイノリティニュース」を発表した(「淡蓝网盘点:2013年中国十大同志新闻」淡蓝网2013年12月9日)。

1.「2人のお年寄り」楊さんと何さんが、友人とネット上の友人が証人になって結婚した

北京のお年寄りのゲイカップルが1月30日、同性婚をおこなったが、その一人の息子が暴力的に乱入した。しかし、2人は愛を固く守ると言った。

楊さんは退職した教師で、何さんはお茶を配達する労働者だったが、お互いに「小宝」、「大宝」と呼び合ってきた。二人が「二人の年寄りの愛情(两个老头的爱情)」というアカウントで、微博(中国版ツイッター)を始めると、楊さんと何さんは話題の人物になり、フォローワーは1万人を超えた。二人が恋心を発表し、結婚する計画を予告すると、何千何万のネットユーザーの熱い議論を巻き起こした。

しかし、その幸福であるべき結婚式は順調にはいかなかった。その1人の息子が突然闖入して、テーブルをひっくり返したり、賓客を殴ったりしたため、予定していたいたネットでの中継を余儀なくされたのだ。

二人のお年寄りは、こうしたことが起きたために「私たちの尊厳が失われて、苦痛だった」、「なぜ赤の他人が私たちを祝福してくれるのに、実の息子がそうできないのか」と嘆いたが、「愛を固く守る」と言った。

[資料]
・「老年同性恋人秀婚纱照 撑同志反歧视」淡蓝网2013年1月20日。
・「外媒:中国老年同志宣示同性恋情 引网友热议」淡蓝网2013年1月26日(来源:参考消息)。
・「北京“两个老头”举办同性婚礼 遭儿子闹场」淡蓝网2013年1月31日。

2.香港で「1人が1枚の写真」によって、LGBTを支持して差別に反対した。黄耀明が立法会で発言した

香港の芸能人の黄耀明(アンソニー・ウォン)と何韵詩(デニス・ホー)が去年カミングアウトした後、LGBTの権利を擁護するための組織として「大愛同盟(Big Love Alliance)[facebook]」を立ち上げた。彼らは連名で、facebookと微博で「1人が1枚の写真で、LGBTをサポートして差別に反対するアクション」を起こした。2人は率先して「撑同志 反歧视(LGBTを支え、差別に反対する)」というスローガンを手に持った写真を公表し、多くの人が後に続いた。

2月18日には、黄耀明が、「大愛同盟」の代表という身分で、香港の立法会の政制事務委員会の会議に出席した。彼は、香港の政府に対して、できるだけ早く、性的指向による差別に反対する立法について、公開の意見募集をおこなって、「国際人権規約」の中の「性的指向の違いによる差別をなくす」という規定を実現するよう訴えた。

黄耀明は、その席で、「去年の11月、性的指向による差別に反対する立法の意見募集が否決されたので、私は非常に傷ついた。香港政府が先頭に立って意見募集や立法をしない以上、私は香港市民として、『大愛同盟』を結成し、積極的に公衆とコミュニケーションをして、同性愛者がこの社会で被っている差別と偏見について説明したい。欧米の国々は、同性愛者の平等な権利のために、より高いレベルに歩みを進めているのに、香港は国際的大都会であるにもかかわらず、差別に反対するための討論や意見の募集さえ始めることができておらず、まして立法はできていない。私は、このことは、国際的大都会として恥だと思う」と訴えた。

[資料]
・「黄耀明何韵诗成立同志组织 推动反歧视」淡蓝网2013年1月13日。
・「黄耀明首次在立法会为同性恋权益发声」淡蓝网2013年2月18日[淡蓝网综合]。

3.多くの人々が人民代表大会の代表に手紙を送って、同性婚を認める立法をするように訴えた

2013年の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の期間に、100人余りの同性愛者の父母が人民代表大会の代表[日本で言う議員]に手紙を送って、同性婚姻を認める法律を作るように訴えた。彼らは、同性愛者である自分の子どもが承認と尊厳を得られることや、新しい「婚姻法」の下で平等な婚姻権を得られることを望んでいる。また、著名な社会学者の李銀河も、ふたたび同性婚姻法案を人民代表大会の代表に提出した。

広州市の同性愛者の大学生の梁文輝は、百名の人民代表大会の代表に郵便を出して、代表たちに、「両会」で同性婚姻立法の議案を提出するように訴えた。彼は自分の手で100通の手紙に切手を貼って、一通一通、ポストに投函した。

全国人民代表大会の代表の呉青は、取材を受けたとき、同性愛と異性愛には区別はないから、同性婚に賛成すると述べた。

[資料]
・「2013两会在即 李银河盼递交同性婚姻合法化提案」淡蓝网2013年2月17日[淡蓝网综合]。
・「百余同志父母致信人大代表 呼吁为同性婚姻立法」淡蓝网2013年2月26日。
・「广东大三男同性恋致信全国人大代表」『南方日報』2013年2月28日。

4.アイスランドの女性首相が夫人とともに訪中し、中国側は礼儀正しく応対した

4月17日、アイスランドの女性首相のシグルザルドッティルが夫人を伴って中国を訪問した(アイスランドは2010年に同性どうしの結婚も可能になった)。中国の中央テレビは、夕方のニュース番組で、シグルザルドッティルが、中国側が首相と夫人を友好的に応接していることに感謝しているシーンを放送し、彼女と夫人のレオスドッティルが一緒に座っている写真も放送した。これは史上ほとんど前例がないことだった。

このアイスランドの「ファースト婦婦」はいっしょに故宮を参観した。また、首相夫人は、北京外国語大学にも行って、アイスランド語を学んでいる中国の学生と交流した。

[資料]
・「冰岛总理夫妇的中国行」北青网2013年4月30日。

5.長沙のLGBT差別反対パレードの組織者が12日拘留された後、釈放された

→本ブログの記事「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」参照。

6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた

淡藍グループが開発したゲイの交友のためのアプリケーション「Blued」のユーザーが200万を突破した。Bluedは、LBS(位置情報サービス)にもとづくゲイの社交のためのアプリケーションで、位置情報による交友機能のほかに、友だちグループの概念を取り入れ、音声・画像・地理座標の発信など、微信(中国大手IT企業テンセント[騰訊]が作った無料インスタントメッセンジャーアプリ[Wikipediaによる説明])の基本的機能に近いものを実現した。さらにゲイニュースや小説、ゲイの活動の送信もおこなっている。

Bluedが年初に上海中路資本の300万ドルのエンジェル投資を獲得したことは、科学技術界が多元的価値観を重視したことをはっきり示した。わが国の法律法規の整備と社会意識の進歩にともなって、もっと多くの創業投資企業がゲイ向け商品に対して関心を持つようになるであろう。

[資料]
・「直男玩不转的创业:同志交友应用Blued获数百万投资」淡蓝网2013年9月15日
・「同志社交应用Blued用户突破200万 将推女同版Pinkd」淡蓝网2013年12月2日(来源:36氪)
・Steven Millward“Blued, a gay dude flirting app from China, picks up 2 million users and plans lesbian app next” December 2, 2013→「中国のゲイ向け交流アプリ『Blued』が200万ユーザを獲得、レズビアン向けアプリも計画中」THE BRIDGE2013年12月11日。

7.90歳の「中国の良い外祖母」が同性愛者の外孫を勇敢に支持した

90歳の外祖母が同性愛者を支持しているビデオが、8月からインターネットで人気を集め、幅広い関心を得た。ビデオの中の福州のおばあさんはネットの友人に「中国の良い外祖母」という名を与えられた。

この慈愛に満ちたお年寄りは、「差別反対、権利を勝ち取ろう!」というボール紙を手に持って籐椅子に座って、自分の外孫が良いボーイフレンドを見つけて幸福な生活をすることを願っている。

この「中国の良い外祖母」は、国内で最も高齢の公に同性愛者を支持している親族であり、多くのネット仲間が彼女に対する敬意を書き込み、内外のメディアも報道した。

[資料(ビデオ)]
・「90岁外婆拍视频支持同性恋外孙」新浪新闻中心2013年8月16日(来源:信息时报)。

8.台湾の多元成家立法が対立を引き起こした

台湾パートナーシップ権推進連盟が起草した「多元成家民法修正案」が9月に法務部門に提出された。その修正案には、同性婚姻、パートナーシップ制度、家族制度、養子縁組などの内容が含まれていた。

支持者は、台湾社会には既に多くの異なった形態の家族が存在しているにもかかわらず、彼らの関係がまだ法律的な保障が得られていないために、生活上の困難がもたらされていると述べている。だから、法律は「成家(結婚)」にもっと幅広い選択肢――同性愛者に対してだけでなく、「同性婚姻合法化」だけでもない――を与えるべきであると主張している。

この草案は台湾の宗教団体の反対を引き起こし、幾千幾万の支持者と反対者が11月30日、街頭に出て対峙した。

いま多元成家草案の中の「婚姻の平等な権利」はすでに一読を通過した。もし三読を通過すれば、台湾は「多元的性別の婚姻権」の先駆けになる(台湾の立法手順)。

9.同性愛者の母親がファーストレディに手紙を出して、社会的差別の解消を訴えた

11月17日、深圳の董お母さん、江西の小濤お母さん、貴州の雲お母さんなど、5人の同性愛者の母親が、EMS(Express Mail Service)で「彭麗媛(=習近平夫人)さんへの手紙」を出した。

5人の母親がファーストレディの彭麗媛に手紙を出したのは、学校で性の安全の教育を強化することや、できるだけ早く「差別反対法」を制定して、同性愛者たちへの社会の偏見と差別をなくすことを訴えるためだった。

彼女たちは、彭麗媛がWHOのエイズ予防・治療親善大使になって、エイズ防止活動に活躍していることを歓迎しつつ、ゲイのエイズ感染率が比較的高いのは、社会の偏見や差別が重要な原因であることなどを述べて、差別を解消するように訴えた。

[資料]
・「中国同志母亲致信第一夫人 呼吁消除社会歧视」淡蓝网2013年11月23日。
・「習氏の好感度アップ、妻も一役 エイズ予防活動に参加」朝日新聞デジタル2012年12月3日。

10.長沙LGBTセンターがNGOの登録を拒否され、行政再議を申し立てた

11月11日、長沙LGBTセンター準備委員会の責任者の向小寒が民政登記を申請したが、長沙市民政局は「指導部が決裁しない」という理由で拒絶したので、向小寒は、湖南省民政庁と民政部に対して、その理由について情報公開を申請した。

11月29日、向小寒は、湖南省民政庁の公式の回答を受け取ったが、そこには以下のように記されていた。

1.「中華人民共和国婚姻法」第5条に「結婚は必ず男女の完全な自由意志によらなければならない」と規定されており、婚姻は必ず一人の男と一人の女によるものでなければならない。すなわち、「婚姻法」は同性の結婚や恋愛の関係を認めていない。それゆえ、同性愛の社会的組織には法律的基礎がない。

2.「社会団体登記管理条例」第4条は、「社会団体は必ず憲法・法律・法規及び国家政策を順守しなければならず、社会の道徳気風に反してはならない」と規定している。同性愛は、わが国の伝統文化や精神文明に反するので、成り立ちえない。


このことは、12月6日付け『ニューヨークタイムス』でも「Homosexuality ‘Against Spiritual Civilization,’ Hunan Government Says(同性愛は「精神文明に反する」と湖南省政府は言う)」という見出しで報じられた。

[資料]
・「长沙同志中心申请注册 官方回复 “同性恋违背社会道德风尚”」同爱网2013年11月29日。
・“Homosexuality ‘Against Spiritual Civilization,’ Hunan Government SaysNew York Times December 6, 2013→小寒「纽约时报就“湖南民政部门发表同性恋违背精文明建设言论”进行报道」同爱网2013年12月6日。

二 「同志亦凡人」による10大ニュース

「同志亦凡人(Queer Comrades)」という、LGBTのためにインターネットビデオを作成している団体も、12月31日、10大ニュースを発表した(「千人近いネット友だちが共同で選出した」とのことだ)。こちらの10大ニュースはビデオで発表されており、今年1月6日には、中国語と英語の字幕付きのものも発表された(「2013中国十大同志新闻 字幕版」←最初は広告が出ます)。

以下をご覧いただければわかるように、「同志亦凡人」の10大ニュースのうち7件は「淡藍網」のものと重なっているので、重なっていない3件についてだけ、ご紹介する。

1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した

7月1日、瀋陽・広州・北京・武漢・鄭州の5つの都市のレズビアンが、いっせいに誇りを持って献血した。

昨年7月1日、新しい「献血者健康検査要求(献血者健康检查要求[GB18467-2011])」(献血できる条件を定めた規定)が施行された。以前の規定は、「同性愛者」の献血を禁止していたが(献血者健康检查要求[GB18467-2001]の4.5.3)、新しい規定は、「同性愛者」という身分には言及せず、「男どうしで性行為をする(男男性行為)」者の献血だけを禁止した(5.2.2)。すなわち、少なくとも女性同性愛者は献血できるようになった(本ブログの記事「中国、女性同性愛者の献血禁止を撤廃」、「女性同性愛者らの組織『同語』、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘」参照)。

しかし、その後1年間たっても、レズビアンが公然と献血したという報道はなかったので、新しい「献血者健康検査要求」の施行状況をチェックする必要があった。

24歳の小航とfreeと猪西西(いずれも仮名)は、いま北京で仕事をしているレズビアンだ。彼女たちは、新しい「献血者健康検査要求」の施行1周年にあたって、自ら献血することにした。

彼女たちは、「女性同性愛者は誇りを持って献血する(女同性恋骄傲献血)」というスローガンを書いたTシャツを着て、献血をしようとした。

しかし、彼女たちが東直門の交通のカナメにある採血スポットで献血しようとしたら、そのスタッフに拒否された。freeと小航が体重計に乗ったとき、2人とも[規定の]45㎏を超えた数字が出たのだが、スタッフは、2人が身に着けているスローガンを見つけると、「体重計が壊れた」と言い、「体重が不合格」という理由で彼女たちの献血を拒否した。そこで、やむなく海淀区の北京血液センターに行って、そこでついに献血に成功した。

小航は、「同性愛者はずっと多くの汚名を負わされてきた。たとえば、同性愛者は病気だとか、同性愛者の血は不健康だ、などと。レズビアンの献血の解禁は、レズビアンの健康上の汚名を取り除いた。私は、このことをもっと多くの人に知ってもらえるように尽力したい」と語った。

この活動は、6月29~30日に開催された、20余りの草の根組織が集まった「第2回レインボーメディア賞研修ワークショップ」(第1回は4月に昆明で開催)で、指導者に啓発されつつ、メンバーが計画したものだ。この研修ワークショップは「レインボーメディア賞」という、優れたLGBT報道に賞を出している団体が主催したもので(共催は、北京紀安徳[ジェンダー]相談センター、同性愛者の家族と友人の会、同語、女性メディアウォッチネットワーク)、プレスリリースの書き方、メディアに対する働きかけの方法、ニューメディアでの発信の技術などを教える研修のようだ。

この研修の模様や瀋陽での献血の現場の状況を伝えるビデオが「媒体奖培训再结硕果 “女同性恋骄傲献血”五城连动-字幕版 」(同志亦凡人)である(中国語と英語の字幕付き)。

[資料]
・「同志献血解禁1周年 四城拉拉骄傲献血」网易女人2013年7月1日。
・「 2013中国彩虹媒体奖LGBT媒体倡导工作坊(沈阳站)招募启事」中国彩虹媒体奖的博客2013年5月10日。

2.淡藍がホモフォビアの教材を暴露した

5月17日、淡藍網が「あなたの身辺のホモフォビアの教材を暴露する」という発表をおこない、13本の教材についてホモフォビアを指摘した。その13本の教材は、人民教育出版社の『生命教育』、広東高等教育出版社の『大学生心理健康教育』、南京林業大学出版社の『大学生の生殖と健康教育読本』、民族出版社の『心理カウンセラー(基礎知識)』などの教材または一般向けの啓蒙書である。

さらに、10余りの団体(淡藍公益、同性愛者の親と友人の会、北京紀安徳相談センター、北京LGBTセンター、同語など)が連名で「教育出版機構・大学・教育者への公開書簡」を発表し、教材からホモフォビア的な内容をなくすように訴えた。

[資料]
・「淡蓝5•17系列活动:揭露你身边的恐同教材」淡蓝网2013年5月25日。

3.北京の高齢のゲイカップルが同性結婚をした

4.黄耀明が立法会に出席した

5.長沙の5月17日の活動が成功したが、組織者は拘留された

6.台湾/香港プライドパレード

10月26日と11月9日、台湾と香港でそれぞれLGBTパレードが挙行され、ともにパレードの参加人数の記録を作った。今回の香港のパレードには大陸からさまざまな団体が参加し、その中には同性愛者の父母の団体もあった。

7.中国の良い外祖母が外孫をサポートした

8.全国人民代表大会の呉青が同性婚に賛成した

9.アイスランドの女性首相が夫人とともに訪中した

10.百人余りの同性愛者の母親が人民代表大会の代表に手紙を出して、同性婚姻立法を訴えた


四 全体として感じること

「10大ニュース」の選定について

2つの「10大ニュース」を比べてみると、「淡藍網」による10大ニュースには入っていて、「同志亦凡人」による10大ニュースには入っていないのが、「6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた」、「9.同性愛者の母親がファーストレディに手紙を出して、社会的差別の解消を訴えた」、「10.長沙LGBTセンターがNGOの登録を拒否され、行政再議を申し立てた」の3件である。

逆に、「同志亦凡人」による10大ニュースには入っていて、「淡藍網」による10大ニュースには入っていないのが、「1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した」「2.淡藍がホモフォビアの教材を暴露した」「6.台湾/香港プライドパレード」である。

以前、私は、「淡藍網」はゲイサイトとしての性格が強いせいか、その10大ニュースは、若干、ゲイ中心の傾向があると思うと述べた(「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」)。そのことは、今回の「10大ニュース」の選定においても、「淡藍網」のみが選定した「6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた」などはゲイに関するニュースであり、「同志亦凡人」のみが選定した中の「1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した」がレズビアンに関するニュースであることに現れているように思う。

また、「淡藍網」も「同志亦凡人」も同性愛の話題が大半だが、それ以外の「バイセクシュアル」や「トランスジェンダー」の話題はなかったのか、と思う。たとえば、本ブログで、「バイセクシュアルの運動が現れはじめる」で述べたような、バイセクシュアル関係の新しい動きを取り上げてもよかったのではないだろうか?
また、同性婚に話題が偏り気味の感じもしないではない。

明るい出来事、セクシュアル・マイノリティの権利にとって前進である出来事が多いが……

とはいえ、「10大ニュース」を全体として見ると、明るい出来事、セクシュアル・マイノリティの権利にとって新たな前進である出来事が多い。

その一方、湖南省当局が「同性愛は、わが国の伝統文化や精神文明に反する」と言ってNGOの登記を拒否したりとか、Tシャツに「同性愛」と書いてあるのを見たとたんに「体重計が壊れた」と言って献血を拒否するなど、旧い体制や意識も強力に残存していることがわかる。

また、企業がゲイ向け商品に注目したことは、それ自体は明るいニュースだが、セクシュアル・マイノリティ間の経済的・社会的格差が今後顕在化してくることを示しているとも思う。

バイセクシュアルの運動が現れはじめる

私は、2010年、本ブログで、台湾には2007年6月に設立された「Bi the Way」というバイセクシュアル団体があるけれども、まだ本土には明確なバイセクシュアル団体はなく、バイセクシュアルとしての活動は僅かしかないという状況をご紹介しました(「各地のセクシュアル・マイノリティのサイト(3)──バイセクシュアル」)。

しかし、今年の夏以降、中国本土でも、バイセクシュアルとしての運動が出現しつつあるように思います。以下、時系列順に見ていきます。

1.第6回北京クィア映画祭でバイセクシュアルに関する企画

6月19日~23日、第6回北京クィア映画祭(同映画祭のサイト[中国語])がおこなわれました。今回の映画祭は、事前に周到に準備していたため、北京の市街地でおこなわれたクィア映画祭としては、初めて当局からの取り締まりにも遭わずに、順調におこなわれました(1)。今回の映画祭では、当時中国に在住しておられた福永玄弥さんらが「関西クィア映画祭」を特集した企画をおこなったことにより、日本からの参加者との交流も目立ちました(2)。下は、今回の映画祭についてのビデオです。



この映画祭では、「マイノリティの中のマイノリティ」に注目した企画もおこなわれ(你看见了吗? Did you see me?)、その一環として、6月21日午後、「バイセクシュアル」をテーマとした企画が行われました。この企画では、《Bisexual revolution(双性恋革命)》(フランス)というドキュメンタリー映画を上映した後、「あなたは見たか? バイセクシュアル革命」と名づれられたフォーラムがおこなわれました。そこでは、蘇茜(バイセクシュアルとして早くから中国のLGBT運動に参加してきた人)、Alex Tso(ブラジルのバイセクシュアル団体Bi-sidesの創始者の1人)、韋婷婷(=Waiting。北京紀安徳ジェンダープロジェクト責任者、バイセクシュアル)、汪梅子(映画の字幕の翻訳者)、ひびのまこと(バイセクシュアル。関西クィア映画祭代表)の各氏が、この映画とバイセクシュアルについて討論しました。

蘇茜さんは、「バイセクシュアル」は時代遅れな言葉であると言います。蘇さんは、「クィア(酷儿)」や「セクシュアル・ライツ(性权)」のほうが、「バイセクシュアル」より有用で、時代に合っているし、身分的な分類をする必要がない言葉なので、カミングアウトする必要もないと述べました。ひびのまことさんも、「バイセクシュアル」という概念は、男女の二元的な区別を強調しているので、現在は「パンセクシュアル[泛性恋](pansexualまたはomnisexual)」と「ポモセクシュアル[后现代性恋](pomosexual)」という語を使っていると語りました。

このフォーラムをレポートした人も、異性愛/同性愛の二元的構造の中では、そのどちらでもないバイセクシュアルは「無視されるか、歪曲される」という現状を嘆き、「パンセクシュアル」概念は二元的ジェンダー論の枠組みを打破していると述べています(3)

2.北京LGBTセンターと北京レズビアンセンターでバイセクシュアルの集い

8月8日には、北京LGBTセンターで初めてバイセクシュアルの集いがおこなわれました。この集いは、北京LGBTセンターと北京紀安徳ジェンダーセンターとが共同でおこなったものです。

この集いには35人が集まりました。彼/彼女らは、バイセクシュアルだったり、バイセクシュアルな欲望や経験があったり、そうした友人がいたり、この問題に関心がある同性愛や異性愛の人々でした。この集会で、バイセクシュアルが「最も嫌な言葉」を挙げてもらったところ、次の12の言葉が集まりました(俗語なども含まれているせいか、私に正確に意味が取れなかった箇所もありましたので、以下はだいたいの内容です)。

1.バイセクシュアルは乱交だ
2.変態、浮気者、ゲイのうちのカス、裏切者
3.あなたは、自分が本当は何者なのかがわかっているのか?(自分が同性愛だとはっきりわかっていない人だと思われているということ)
4.あなたはいくつなの?(男性中心主義的なゲイがいやで「真の愛」を求めたら、「真の愛」を求める考え方は、幼稚だという意味で言われた)
5.バイセクシュアルは腐れマンコ
6.バイセクシュアルは妥協だ(自分が同性愛だと認める勇気がない)
7.あなたは気持ち悪くないの?(レズビアンから男とセックスすることをこのように言われた)
8.世の中になんでバイセクシュアルのような怪物がいるのか。
9.あなたは、自分のことがよくわかっていない同性愛者だ。
10.あなたがそうすることは正しくない。
11.お父さん・お母さんに反抗するためにやっているんだ(父母の言葉)
12.たとえ同性愛であっても、バイセクシュアルよりはいい。

「乱交」「変態」などの言葉は、かつては同性愛者が異性愛者から言われたことだったのが、今では同性愛者がLGBTの中のマイノリティに対して言っていると、この集いを呼びかけた韋婷婷(=Waiting)さんは指摘しています。

韋婷婷さんは、「バイセクシュアルだけを議論するのでは不十分だ。なぜなら、私たちが恋をするのは、男でも女でもないトランスジェンダーかもしれず、パンセクシュアルかもしれず、情欲の中を行き来するクィアかもしれない。バイセクシュアルとは言われたくない、まだ命名されていない(もしかすると、命名される必要もない)関係や欲望かもしれない。『バイセクシュアル』という命名さえ必要ないと言うひともいる」とも述べています(4)

この集会は、「第1回」と名づけられているように、今後も継続して続けるつもりのようで、集会の趣旨説明には、この「グループ(小组)の目標」として、「バイセクシュアルの交流を促進し、バイセクシュアルが声を上げる」、「バイセクシュアルの議題を探究し、セクシュアリティ/ジェンダーの多元的平等を促進する」、「セクシュアリティ/ジェンダーの垣根を打ち破り、多様な可能性を探索する」ということが挙げられています。

このグループの「具体的行動」としては、「バイセクシュアルが定期的に交流し、集会をする」、「バイセクシュアルサロン――映画鑑賞/テーマ討論」「さまざまな社会的グループに参与し、社会的グループと公衆の中でバイセクシュアルの姿が見えるようにする」ということが挙げてあります(5)

9月6日には、北京レズビアンセンター(もと北京レズビアンサロン)でも、同じく北京紀安徳センターとの共催で、バイセクシュアル集会がおこなわれました。呼びかけ人も、同じく韋婷婷さんです(6)

3.2つのセンターでは、バイセクシュアルのパーティーも開催

9月23日には、北京レズビアンセンターで、バイセクシュアルパーティーが開かれました。やはり韋婷婷さんが主催したもので、呼びかけ人は、韋さんと猪川猫二餅さん、caesaさんでした(7)

9月27日には、北京LGBTセンターが、バイセクシュアルどうしがお相手を見つけるパーティーを開催しました(8)

4.広州でもバイセクシュアル小集会

10月19日、女友組(広州のレズビアン団体(9)博客微博)が広州LGBTセンターでバイセクシュアルの小集会を開催しました。

この集会は、バイセクシュアルについての短編映画を見た後で、バイセクシュアルとしての経験を分かち合い、北京での集会同様に、バイセクシュアルにとって最も嫌なことを出し合って交流する、というものでした(10)。写真を見ると、17~18人の方が集まったようです(11)

この集会の呼びかけ文や趣旨説明には、「双/泛性恋(パイ/パンセクシュアル)として~」「双/泛性恋としての自己認識」という文言も使われており、「泛性恋」という言葉が、実際にも使われ始めていることがうかがえます(12)

5.リーフレット『バイセクシュアルABC』

また、女性の同性愛者やバイセクシュアルのグループ「同語」は、『同性愛ABC(同性恋ABC)』に加えて、『バイセクシュアルABC(双性恋ABC)』というリーフレットを作成しました(13)。このことが「同語」のウェブサイトに掲示されたのは11月ですが、8月13日には、そのリーフレットの写真が「バイセクシュアル」という微博のアカウント(双性恋_bi的微博)に掲載されていますので(14)、8月頃には完成していたものと思われます。

6.「r&Bバイセクシュアルグループ」設立

9月4日には、「r&Bバイセクシュアルグループ(r&B双性恋团体)」というグループが発表されています。このグループは、2007年にできたネット上のバイセクシュアルグループ「双生活」のメンバーと同志(LGBT)運動の中の何人かのメンバーがいっしょに設立したもので、今後、オンライン・オフラインで活動するとのことです。「r」は、半分曲がっていてストレートではないという意味で、自分たちが偽装した同性愛者でも、異性愛者の一時の迷いでもないことを示しているそうです。「B」は、「バイセクシュアル」の「B」です。

このグループは、まず、バイセクシュアルたちに、自らの体験を募集して、バイセクシュアルの真の姿を知ってもらおうとしています(15)

7.第5回香港プライドパレードに、初めてバイセクシュアルの隊列

11月9日、第5回香港プライドパレードが実施されました。今回のパレードは、主催者側発表で5200人(警察側発表でもピーク時で4500人)が参加するという、パレード史上最大の規模のものになりました。また、機会平等委員会(性差別条例などの執行に責任を持つ法定機構)の主席が初めてパレードに参加しました(16)

今回参加した約50団体のうちの20団体は本土の団体だったといいますが(17)、斯蒂夫妮(ステファニー、住所は香港になっていますが、広州でのバイセクシュアル小集会でも話をしています)さんと韋婷婷さんが初めてバイセクシュアルとしての隊列を作って行進しました(18)。といっても、その隊列は、ごく少人数(その2人だけ?)だったようですが、彼女たちは「Bi Pride」のプラカードを持って行進しました。そのプラカードには、「We'er not confused.」「You'er just ignorant」(私たちが混乱しているのじゃなくて、あなたたちが無知なのだ)という、同性愛者や異性愛者からのバイセクシュアル差別に抗議する文言が書かれていました(19)

以上、中国本土でも、バイセクシュアルとしての活動が、現実世界でも目に見える形で現れてきたという状況をご報告しました。あくまで一部の大都市の話であり、多くの国にも存在するとはいえ、日本には現在は存在しない(のではないかと思う)「バイセクシュアル」を掲げた運動が起きていることは注目に値すると思います。

(1)第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」同志亦凡人(写真あり)、「第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」北京酷儿影展2013年10月28日。第1回から第4回については、本ブログの記事「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」参照、第5回については、本ブログの記事「第5回北京クィア映画祭は当局に中止を命じられるも、ゲリラ的に開催」参照。なお、この映画祭については、《わたしたちの物語 ~ 北京クィア映画祭と十年間の「ゲリラ戦」》という映画があります(福永玄弥さんがこの映画を関西クィア映画祭で上映なさいました)。
(2)福永玄弥さんは「朋あり、友邦より来たる――関西クィア映画祭精選(有朋自友邦来)」というシリーズを企画なさったのですが、北京クィア映画祭のサイトには、福永さんからのメッセージも中国語と英語で掲載されています(福永玄弥「《中日两国间的性别少数人群合作可能吗?》」)。その中で上映されたイノウエカナ監督の《あん、あん、あん》上映終了後には、日本からいらっしゃったイノウエさんが、《あん、あん、あん》は日本で上映したときは一部で誤解や批判を受けたのに、北京クィア映画祭では歓迎されたので、思わず声を上げてお泣きになったという場面あったようです(上記「第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」)。他には、《THE LITTLE GIRL IN ME 僕の中のオトコの娘》(窪田将治監督)、《すいっちん バイブ新世紀》(ササタニーチェ監督)が上映されたようです。また、開会式でも、関西クィア映画祭の代表である「ひびのまこと」さんが同映画祭について紹介するとともに、現在の日中関係の困難についても語りつつ、しかし、両国の民間交流はその流れに逆らってすすめていこう、北京クィア映画祭と関西クィア映画祭は互いに学び合い、切磋しあって、ともに進歩していこう、といったことを述べられたようです(以上は、「第六届北京酷儿影展成功举办(图)」淡蓝网2013年6月24日)。なお、福永さんは、この映画祭について、今後より詳しいご報告をなさることと思いますが、すでに『女たちの21世紀』75号に「中国で北京クィア映画祭(第6回)が開催」という短文を書いていらしゃいますし、自らのブログ「銀色の道」では、「北京クィア映画祭ノート(1) 」を書き始めておられます。
(3)包包 阿木「双性恋,你看见了吗?——第六届北京酷儿影展双性恋影像侧记」女声网2013年7月3日。
(4)以上は、Waiting「 Ta们最讨厌的12句话,你中枪了吗?——双性恋聚会侧记」《酷拉时报》2013年8月14日。
(5)以上は、「2013年8月8日【双性恋聚会】第一期:双性恋,今晚我们说故事」北京同志中心的博客2013年8月2日。
(6)北京9月6日 女同中心:你好 我是双性恋-聚会」同语2013年9月4日(来源:北京女同志中心)。
(7)北京女同志中心的微博9月21日 10:22
(8)2013年9月27日【非双勿扰】城中第一次双性恋速配约会活动!」北京同志中心的博客2013年9月20日。
(9)2009年10月に結成されたグループで、当初は広州同城青少年リソースセンターに下に付属していたが、2013年3月8日、独立して運営するようになったとのことです(「2013女友组招新公告」女友组的博客2013年9月2日)。
(10)【10.19女友组, 广州!双性恋集结号!】」女友组的博客2013年10月7日。
(11)斯蒂夫妮的微博10月19日 19:55
(12)(10)と同じ。
(13)同语免费赠送多元性别教育资料」同语2013年11月7日。
(14)双性恋_bi的微博8月13日 14:26
(15)双性恋_bi的微博【r&B双性恋团体】9月3日 18:02
(16)同志遊行五千人 反對歧視爭取權益 平機會主席首參與」『香港成报』2013年11月10日。
(17)5200人破紀錄 走出來爭平權 」『蘋果日報』2013年11月11日。
(18)斯蒂夫妮的微博11月8日 21:01
(19)斯蒂夫妮的微博11月10日 01:27

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遠山日出也

Author:遠山日出也
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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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