2017-02

李斌さんが安徽省の省長に――女性の省長(自治区主席)はやっと4人目、女性の政治的地位の低さが議論に

少し以前の話になりますが、今年2月15日、安徽省の第11期人民代表大会第5回会議で、李斌さんが安徽省の省長に当選しました。李斌さんは、中国で4人目の女性の省長(自治区主席を含む)です(1)

といっても、すでに昨年12月に、中国共産党の安徽省委員会の常務委員会拡大会議で、「中国共産党中央委員会が『李斌を中国共産党の安徽省委員会の委員・副書記・常務委員にするとともに、安徽省の省長の候補者にする』と決定した」(中国共産党中央委員会「安徽省政府の主要な指導的同志の職務の調整に関する決定」)ということが発表されています(2)

もちろん、その中国共産党の中央委員会の決定の中にも、「省長の職務の任免は、関係する法律の規定によって取り決める必要がある」とありますし、安徽省の人民代表大会では「無記名投票の方式」で李斌さんを省長にしたとのことです。しかし、対立候補が出たわけでもないようですし、李斌さんを安徽省省長にすることは、実質的には、中国共産党中央委員会が決めたと言ってもいいと思います。

また、李斌さんは、省長にはなりましたが、中国共産党の安徽省委員会では「副書記」であり、トップ(書記)は別人なのですから、上のように共産党主導でものごとが決まる中国においては、必ずしも省のトップとは言い難いのではないでしょうか?

それはともかく、中国でこれまで誕生した女性の省長(自治区主席を含む)は、以下のとおりです。
・顧秀蓮 江蘇省省長(1983年4月─1989年4月)
・烏雲其木格(Uyunqing) 内モンゴル自治区主席(2001年2月―2003年4月)
・宋秀岩 青海省省長(2005年1月─2010年1月)
・李斌 安徽省省長(2012年2月―)

中国には省・自治区・直轄市が合計30ほどありますが、中国では同一の時期に2人以上の女性省長が誕生したことはないので、中国の女性省長の比率は、1980年代以後(も)、ずっと3%かゼロだったことになります。

(なお、日本の場合は、女性知事が誕生したのは非常に遅く、2000年2月に太田房江さんが大阪府知事になったのが最初ですが、現在は、高橋はるみ・北海道知事、嘉田由紀子・滋賀県知事、吉村美栄子・山形県知事の3人が在任しているので、全国の知事の約6%が女性知事だと言えます。)

今年の国際女性デー(3月8日)から5月にかけて、上述のように女性省長が少ないことをはじめとした、中国の女性の政治参加の遅れ(ないし後退)が話題になりました(3)

今回中国で話題になったことの多くは、既にこのブログでも取り上げたことがあるのですが、今まで述べたことの単なる繰り返しにならないように、以下、「今回どのようなことが指摘されたか」をご紹介したいと思います。

全国人民代表大会[全人代]の代表――女性比率の停滞と国際的順位の低下(4)

全国人民代表大会[全人代]の代表(一般的な言い方をすれば、「議会の議員」)の女性比率(21.3%)は、世界の平均(下院または衆議院は19.0%、上院または参議院は17.8%)よりはやや高い。しかし、1995年の北京での世界女性会議以後、世界各国で女性議員の比率が大きく伸びたにもかかわらず、中国では伸びていないために(中国での歴史的変化については、本ブログの記事「全人代の女性代表の比率、21.3%にとどまる」参照)、以下のように、世界の中での中国の順位は、急速に低下している。
○1997年
・女性議員の比率が30%以上の国―5ヵ国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、オランダ)。
・中国の全人代の代表の女性比率―21%(世界で16位)。
○2000年
・女性議員の比率30%以上の国―8ヵ国(上記5ヵ国とアイスランド、ドイツ、南アフリカ)
・中国の全人代の代表の女性比率―21.8%(世界で22位)。
○2005年
・女性議員の比率30%以上の国―17ヵ国
・中国の全人代の代表の女性比率―20.2%(世界で38位)。
○2010年1月末
・女性議員の比率30%以上の国―26ヵ国(ルワンダ、スウェーデン、南アフリカ、キューバ、アイスランド、オランダ、フィンランド、ノルウェー、モザンビーク、アンゴラ、アルゼンチン、ベルギー、デンマーク、コスタリカ、スペイン、アンドラ、ニュージーランド、ネパール、ドイツ、マケドニア、エクアドル、白ロシア、ウガンダ、ブルンジ、タンザニア、ガイアナ)……欧州だけでなく、アフリカ、南米、オセアニアの国々も含まれている(5)
・中国の全人代の代表の女性比率―21.3%(世界で55位)。

(日本は、ここ20年ほどの間に増加したとはいえ、衆議院では11.3%で世界121位、参議院でも18.2%です(6))

女性閣僚の少なさ

2010年1月の時点で、女性閣僚の比率は、47ヵ国で25%を超えており、世界一のフィンランドは63.2%だが、中国では、26の部(日本で言う省)のうち、女性の部長は3人(11%)だけであり、世界で61位にすぎない(7)

(日本の女性閣僚は、ここのところ、2人程度のことが多かったですが、現在は小宮山洋子さんお1人です。)

女性幹部の比率は増大しているが、正職は少なく「女性領域」の仕事が多い

2009年時点で、行政の女性幹部は、省・部クラス以上の女性幹部は11%、地・庁クラスの女性幹部は13.7%、県・処クラスの女性幹部は16.6%だそうです。2000年には、それぞれ、8%、10.8%、15.1%だったそうですから、全体として伸びています。

ただし、女性の場合は、正職(○○長)が少なく、副職(副○○長)が多いということが以前から指摘されています。女性幹部には、「副職昇進」という現象があるそうで、たとえば、何魯麗さんの場合は、北京市西城区区長→北京市市長→全国政治協商会議主席→全国人民代表大会常務委員会委員長というルートで昇進したということです。つまり、一度も「トップ」には立たないまま昇進しています。

また、女性の場合、教育・科学・文化・衛生といった領域を担当する場合が多く、政治・経済・法律といった「重要」領域を担当する場合が少ないという問題もあります(8)。とくに女性の場合は、計画出産の仕事を担当する例が目立ちます。今回安徽省の省長になった李斌さんも、2007年に国家人口計画生育委員会の「党グループの書記」かつ「副主任」になり、翌2008年には「主任」になっており、計画生育の最高責任者でした(9)

あるいはまた、女性幹部には、以下の1~4の「四多四少」という現象があるとも指摘されています。
 1.「低いクラスの指導者が多く、高いクラスの指導者が少ない」
 2.「補助的なポストが多く、重要なポストが少ない」――行政実務のポストは、女性の31.2%、男性は23.2%。サービス業務のポストは、女性12.5%、男性8.2%。指導管理のポストは、女性22.0%、男性30.4%。専門技術ポストは、女性29.4%、男性35.0%。
 3.「名目だけのポストが多く、実際に職務のあるポストが少ない」――名目だけのポストを担当している女性は21.5%、男性は19.3%。実際に職務のあるポストを担当している女性は57.3%、男性は62.9%。
 4.「本職が多く、兼職が少ない」――人民代表にもなっているのは、女性は0.8%で、男性は1.1%、政治協商会議の委員になっているのは、女性1.0%、男性3.3%、党支部書記・支部委員、工会主席、職員労働者代表会議委员などの兼職も、女性の比率は、男性より明らかに低い(10)

中国共産党の指導部の女性比率の低さ

最初に李斌さんの安徽省省長就任について述べた個所で触れたように、中国の場合、議会の議員や行政の長・幹部よりも、むしろ共産党の幹部が重要な面があると思います。なぜなら、人民代表大会の審議はまだまだ形式的な面が強いですし、地方の各省も「地方自治体」ではないからです。

しかし、中国共産党の「中央委員」の女性比率は6.4%で、ここ30年ほどは、5~6%程度で低迷しています。その上の「中央政治局員」は20名以上いるのに女性は1人だけ(11)、さらにその上の「中央政治局常務委員」には、いまだかつて女性が就任したことはありません(歴史的変化などは、本ブログの記事「中国共産党指導部の女性比率」参照)。

今秋の中国共産党大会で、劉延東・中央政治局員が、女性初の中央政治局常務委員になると予想されているようですし(ウォール・ストリート・ジャーナルの記事にもそうあります)、上で述べたように女性幹部は増加傾向にあるのですから、その意味では、女性パワーが発揮されつつ面もあるのかもしれません。

しかし、全体としてみると、中国では、女性の政治参加は、世界の趨勢に比べて、ほんとうに伸び悩んでいると言わざるをえません。この点は、やはり女性運動の自律的発展を含めた、民主主義の発展が抑えつけられていることと関係しているのだろうと思います。

(1)李斌当选安徽省省长 系该省首位女省长」中国新聞網2012年2月15日。
(2)李斌任安徽省委委员、常委、副书记 王三运不再担任」中国共産党新聞網2011年12月11日(来源:安徽日報)。
(3)中国妇女参政不进则退 史上仅产生过4位女省长」中国新聞網2012年4月20日、「中国女官员“橄榄形”格局待解」新京報2012年3月8日、杜洁「妇女参政——老议题,新挑战」中国妇女研究网2012年3月8日など。このほか、ウォール・ストリート・ジャーナルが、シンガポール大学などが作成した“Rising to the Top: A Report on Women's Leadership in Asia [PDF]”という報告をもとに、中国の女性の地位が低下していることを指摘した記事を掲載し(“Women Lose Ground Gained Under MaoThe Wall Street Journal April 23, 2012)、その中国語版(「中国女性领导比例下滑」华尔街日报中文版2012年4月23日)や抄訳(「看不见的天花板:中国女性领导比例下滑」網易新聞中心2012年5月2日)がネットにも掲載されています。
(4)(3)の3つの記事や論文がともに指摘していますが、それらが依拠しているのは、全国婦連婦女研究所編『研究信息简报』2011年第3期(总第116期)の「2010年国际妇女参政主要状况」特集です。
(5)「欧州だけでなく、アフリカ、南米、オセアニアの国々も含まれている」ことを『研究信息简报』自体が指摘しており、その点が中国にとってもインパクトになったのだろうと想像されますが、発展途上国の場合、さまざまな特殊な要因が絡んでいることは間違いありません。たとえば、1位のルワンダは、女性議員が多い背景として、ジェノサイドで男性が大量に死亡したことが挙げられます。しかし、それだけでなく、やはり女性運動の力もあったようで(「世界で最も女性議員が多い国ルワンダ」FEM-NEWS)、女性議員比率が増大したことを、単に「特殊事情」扱いして済ませるわけにはいきません。
(6)国会議員の女性比率、日本は11%、121位」asahi.com2011年6月21日。
(7)杜洁「妇女参政——老议题,新挑战」中国妇女研究网2012年3月8日も触れていますが、依拠しているのは全国婦連婦女研究所編『研究信息简报』2011年第3期(总第116期)の「2010年国际妇女参政主要状况」特集です。
(8)以上は、「中国女官员“橄榄形”格局待解」新京報2012年3月8日。
(9)省委副书记、省长 李斌」安徽省サイト。
(10)杜洁「妇女参政——老议题,新挑战」中国妇女研究网2012年3月8日。詳しくは、「机关女干部成长调查报告」『中国婦女報』2011年7月26 日。
(11)この件に関しては、「中国女官员“橄榄形”格局待解」新京報2012年3月8日、「中国女性领导比例下滑」华尔街日报中文版2012年4月23日が触れています。

中国の女性副省長――「中国女性発展要綱(2011-2020年)」をめぐって(その2)

 前回の記事「『中国女性発展要綱(2011-2020年)』をめぐって(その1) 」の続きです。

 「中国女性発展要綱(2011-2020年)」の記者会見における質疑応答(1)で、AP通信の記者は、「中国では、みんなが『中国の女性は天の半分を支えている』と言っているけれど、政治への参与の領域を見ると、劉延東国務委員一人だけが天の半分を支えている。どのような要因が現在の状況をもたらしたと考えているのか?」と尋ねました。

 それに対して、宋秀岩さん(国務院女性児童工作委員会副主任、中華全国婦女連合会副主席・書記処第一書記)は、「あなたは今、劉延東政治局委員・国務委員(*)の名前を挙げたが、全国人民代表大会副委員長に3人の女性がおり、全国政治協商会議副主席にも4人の女性がいる」、「省、地区、県政府指導部の女性配属率は、2000年がそれぞれ64.5%、65.1%、59.8%だったが、昨年は87.1%、89.4%、86.2%に上昇した」「省の政府に女性の副省長がいる省が87.1%である」といったこと述べました。
 (*)「政治局」とは、中国共産党中央政治局のこと(Wikipediaによる説明)。国務委員については、中華人民共和国国務院についてのWikipediaによる説明参照。

 しかし、まず、現在、政治局委員は25人もいますし、国務委員も10人います。それなのに、そのどちらにも女性は1人(劉延東)しかいないという事実がある以上、宋さんの説明は説得力に欠けます。全国人民代表大会や全国政治協商会議の副委員長は、あまり実権がないと思いますし。

 地方の政府指導部の中に女性が増えていることは確かです。女性副省長に関しては、宋さんの発言を受けてでしょうか、会見の翌日、人民網が「中国には26の省に28名の女性副省長がおり、最も若い副省長は43歳である」という見出しで、28人の副省長(直轄市の女性副市長と自治区の女性副主席を含む)の写真と経歴を詳しく紹介した記事を掲載しました。中国の31の省のうち女性の副省長がいないのは、遼寧・吉林・湖南・貴州・青海だけで、甘粛と広東には2人の女性副省長がいるそうです(2)

 しかし、現在、中国には、女性の省長は1人もいません(2010年1月に、宋秀岩さんが青海省長から、全国婦連の党グループ書記・副主席・書記処第一書記に転任して以降:本ブログの記事「ただ一人の女性省長・宋秀岩さんが辞職──歴史的にも女性の省のトップはごく僅か」参照)。副省長というのは、各省に7、8人いるのですから、女性が各省に1人程度いても、それほど女性の地位が高いとは言えません。

 人民網の記事からは、28人の女性の副省長のうち、6人は少数民族で、6人は共産党でない人(民主同盟、民主進歩党、九三学社、農工民主党、無党派)であることもわかります。これは、「指導部に女性も1人は入れなければならない」「少数民族も1人は入れなければならない」「党外の人も1人は入れなければならない」という中央の要求がそれぞれあるために、「女性であり、かつ少数民族である人(または党外の人)」を1人だけ指導部に入れておく(→そうすれば、マジョリティである漢民族の男性がより多くのポストを占めることができる)という状況が若干あることを示しているのではないかと思います。こうした現象は、中国でも、「無知少女」=「無党派(または民主党派)であり、かつ知識人であり、かつ少数民族である女性」を指導部に選出するやり方だとして、批判の声が上がっています(3)

 また、女性副省長の件に関しては、『南方日報』の記事(4)は、人民網が述べていない以下の1)~4)の点も指摘しています。

 1)女性副省長がいない省のうち、2008年の改選以来ずっと女性副省長がいなかったのは貴州だけで、他の省は、任期中に職務の調整で他の部署に転出したため、欠員になった。その際、女性の副省長を補充する措置は取られていない。
 →この点は、「女性の副省長を置く」という方針も、けっして確固としたものではないことを示していると考えられます。

 2)女性の副省長の大多数は、教育・科学技術・文化・衛生・スポーツなどの仕事を担当している。
 →この点は、ある種の性別役割分業であり、女性の副省長は、より重要であると考えられている財政、経済、工業・農業、建設などの仕事は担当していないことを示しています。唯一の国務委員である劉延東さんの職務も、「教育、科学技術、文化・メディア、スポーツ、香港・マカオ」担当です(5)

 3)中国の女性の政治参加構造には、「三多三少」(副職が多く、正職が少ない、虚職[実権のない職]が多く、実職[実権のある職]が少ない、周縁の部門が多く、主力のラインが少ない)という問題がある。
 →この点は、これまでご紹介してきたことで理解していただけると思います。

 4)一部の地方は、中央の「各レベルの指導部には少なくとも1名の女性幹部がいなければならない」という目標を、「指導部には女性幹部が1名いればいい」と理解する。だから、女性の「比率」を規定しなければならないと提案する学者もいる。
 →この観点から、「中国女性発展要綱(2011-2020年)」を見ると、「県レベル以上の地方政府の指導部の中には1名以上の女性幹部がいなければならず、かつ一歩一歩増やさなければならない」となっており、不十分であることがわかります。

(1)2011-2020年中国妇女儿童发展纲要新闻发布会举行」国務院婦女児童工作委員会サイト2011年8月10日。
(2)中国26省份共有28名女副省长 最年轻女副省长43岁」人民網2011年8月10日。新華網日本語版も、「87.1%の1級行政区政府指導部に女性進出」(2011年8月10日)と報じています。
(3)最近も、「制度框架下的“无知少女”现象研究——基于湖北省女性领导干部的访谈」(『婦女研究論叢』2011年2期)という論文が出ています。
(4)26省有28名女副省长 男女干部同龄退休呼声高」『南方日報』2011年8月10日。
(5)梁旭光主編『民主政治進程与婦女参政』(済南出版社 2003年)にも、「指導部の中の女性幹部は正職が少なく、重要な仕事を担当している者は少ない。」「私たちのアンケート調査[山東省での調査]では、[女性の]処クラスの幹部20人のうち、全面的に責任を負っているのは1人(5%)であり、経済・司法の仕事を分担しているのは1人(5%)、文教・衛生・計画生育の仕事を分担してるのが13人(65%)であり、大衆団体[婦女連合会、青年団など]を分担しているのが5人(25%)であり(……)女性の指導幹部が主に分担しているのは文教・衛生・計画生育・大衆団体の仕事であり、全面的に責任を負っていたり、経済・司法など経済建設の中で非常に重要な仕事を分担している者は少ないことがわかる」(184-185頁)とあります。

村民委員会組織法の改正草案と女性

 2009年12月24日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、村民委員会組織法(中华人民共和国村民委员会组织法)の改正草案の審議がおこなわれました。全人代常務委員会は、改正草案の全文を公表し、意見を募りました(1月末まで)(村民委员会组织法(修订草案)条文及草案说明)。

 村民委員会とは、「基層の大衆の自治組織」で、「村の公共事務と公益事業の処理し、民間の紛争を調停し、社会の治安の維持に協力する」などのことしています(村民委員会組織法第2条)。実際には、しばしば行政の末端としての機能も果たしているようです(1)

 今回の改正草案について、全人代常務委員会は、「村民委員会の選挙と罷免の手続きをいっそう完全なものにした」、「民主的な議事制度をいっそう完全なものにした」、「民主的管理と民主的監督制度をいっそう完全なものにした」と説明しています。

一、女性に関する規定の改正点

 今回の改正草案では、女性に関する規定のうち、以下の3点が改正されています。

1.村民委員会に女性メンバーが「いなければならない」と規定した

 現行法第9条より:「村民委員会の主任・副主任・委員は、計3~7人で構成する。村民委員会のメンバーの中で、女性は適当な人数を占めなければならない
 ↓
 改正草案第6条より:「村民委員会の主任・副主任・委員は、計3~7人で構成する。村民委員会のメンバーには、女性メンバーがいなければならない

 現行の条文の中の「『適当』という言葉は十分明確でなかった」という指摘もあり、陝西省女性理論婚姻家庭研究会の会長の高小賢さんは、今回の改正は「女性が村民委員会に入ることを保障する力を強めた」と評価しています。

 2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人です。しかし、全国に村民委員会は60.4万あるので(民政部の2008年の民政事業発展統計報告)、少なくとも9万余りの村民委員会には女性がいないことになります(2)。このような言葉の変化によって、女性のいない村民委員会が減るでしょうか?

2.「女性は、村民代表会議を構成するメンバーのうち3分の1以上を占めなければならない」と規定した

 村民委員会組織法は、満18歳以上の村民によって「村民会議」を設置するとしていますが(現行法17条、改正草案20条)、「人数が比較的多い、または住んでいるところが分散している村」では、「村民代表会議を設置して、村民会議が権限を与えた事項を討論し決定することができる」と定めています。

 その村民代表会議を構成するメンバー(村民代表)については、「5~15戸ごとに1人を推薦する、あるいは各村民小組が若干名を推薦する」ことになっていますが(現行法第21条、改正草案第23条)、改正草案は、「女性は村民代表会議を構成するメンバーの3分の1以上を占めなければならない」(第23条)と規定しました。

3.村民委員会の任務に「男女平等を促進する」が入った

 村民委員会組織法には、村民委員会の政治的役割を規定した条文があるのですが(現行法の第6条、改正草案の第9条)、改正草案では、この条文の中に「男女平等を促進する」という言葉が入りました。

 以上の3点については、中国の女性問題の専門家・関係者や女性の村官から、今回の改正は一歩前進だと評価する意見が出ています(3)

二、女性たちからの要求

 しかし、今回の改正には多くの不十分な点があるとして、上のような女性たちからは、以下のようなさまざまな要求も出ています。

村民委員会のメンバーのうち、女性を30%以上(または1/3以上)にすると規定すべき(4)

 先述のように、2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人ですが、これは全メンバーの21.7%を占めるにすぎません。

 重慶市開県和謙鎮文聖村の村の主任助手である廖雅妮さんは、「村民委員会の委員のうち、女性は30%以上を占めなければならない」と言います。廖さんは、村民委員会の選挙のとき、「女は男に劣る」などの伝統的観念が今なお妨げになっているけれど、もし女性の比率が規定してあれば、抵抗も減るのではないかと述べています。

 また、李慧英さん(中央党校女性研究センター教授)は、次の4つの理由から、「女性を3分の1以上にすると規定すべきだ」と主張しています。
 1.[第一次国共内戦期の]ソビエト根拠地のとき、県の議員を選挙する際に、女性を25%以下にしないと明確に規定した。それから80年あまり経ったのだから、1/3にすべきだ(5)
 2.解放初期、「人民公社の社長または副社長に、女性を少なくとも1人入れなければならない」と規定した(6)。それから60年あまり経ったのだから、村の(主任ではなく)「2つの委員会[村民委員会と党支部委員会]」に女性の比率が33%になっても、進歩の速度はけっして速くない。
 3.[多くの男性が出稼ぎに行ったために]現在農村に残っている人のうち、女性は60~80%を占めているにもかかわらず、女性が「2つの委員会」の正の職位を担当しているのは、わずか1%である。両者の比率の差が非常に大きいので、積極的な措置を取ることによって、この差を縮小させる必要がある。
 4.2009年、中央党校女性研究センターのジェンダー平等政策唱道課題グループは、河南省登封市の3つの村、河南省舞陽県の5つの村で、村規民約(村の決まり)の改正を推進した。すべての村がジェンダー平等の観念を受け入れて、村の「2つの委員会」の1/3以上を女性が占めるべきことを村規民約に書き入れた(7)。このことは、村の「2つの委員会」の1/3以上を女性が占めることは、民衆の中に基礎があり、けっして手が届かない目標ではないことを示している。

 また、陝西省女性理論婚姻家庭研究会(陕西省妇女理论婚姻家庭研究会)は、村民委員会組織法の改正草案について座談会を開いて討論をし(8)、以下のような幾つかの提案をまとめました(9)

村民委員会に、必要に応じて、女性児童委員会を設置すべき(陝西省女性理論婚姻家庭研究会の提案)
 ―「村民委員会は、必要にもとづいて、人民調停、治安警備、公共衛生、計画生育などの委員会を設置する」(改正草案第7条、現行法第25条にも類似の規定あり)とあるが、「必要にもとづいて設置する委員会」の中に、女性児童委員会も入れるべきである。

 この点について、高小賢さんは、「現在、村の人口の多くは、女性と子どもです。留守児童の問題、留守女性の問題などは、すでに新しい農村を建設する上での主要な問題になっており、治安問題など以上の問題でさえあります」と指摘し、「農村の女性と子どもの問題を、村民委員会の主な仕事の一つにするべきです。女性児童委員会を設立すれば、制度上からこの問題を村民委員会の仕事に組み込むことができますし、同時に、村の婦女代表会議の主任が村の『2つの委員会』に入るためにも有利です」と主張しています(10)

「村の主任と副主任の候補者に、女性候補者がいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―陝西省の実践は、こうした規定は、女性が村の主任に当選する比率を高めるのに有利であることを証明している。

「村民選挙委員会には女性がいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―村民委員会の選挙は、村民選挙委員会が主宰することになっているが(現行法第13条、改正草案第12条)、「村民選挙委員会には女性がいなければならない」と規定すべきである。

 この点について、陝西省合陽県路井鎮韓家城村の党支部書記で村民委員会主任の路小春さんは、「現在若干の農村では、まだ選挙での買収があります。もし選挙委員会に女性の委員がいれば、前もって内情を知ることができて、早めに対策ができるので、選挙に参加する女性にとって有利です」と語っています(11)

「村務監督機構に女性メンバーがいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―改正草案の第29条に「村は、村務監督機構を設立して、村民の民主的財政管理と村務公開などの制度の執行の責任を負う」ことが定められているが、村務監督機構の中に女性メンバーがいるようにして、女性に村務の監督権の行使に参与させるべきである。

村民委員会の任期を延ばして、女性に仕事に習熟させるようにすべき(12)

 合陽県女村官協会は、村民委員会の任期が3年であること(現行法でも改正草案でも第11条)について、「3年が1期では、時間が短すぎて、女の村官が業務に習熟して、仕事ができるようになったら、改選の時期が来るので、任期を5年に延ばすべき」と提案しました。

「村規民約(村の決まり)」によって女性の土地権益が奪われないように、「現行の法律に違反している村規民約は無効だ」と明確に規定すべき(13)

 李慧英さんは、「改正草案は、村の集団的資源を分配する際には、村民代表大会の決定によるべきことを強調していますが、これは、双刃の剣です」と言っています。李さんは、そのことによって、たしかに村の幹部の権力が村民によって制約されるので、幹部が私利を謀るのを防ぐには有利だけれども、その一方で、多数の人が合法的な手続きを利用して、少数の人の合法的な権益を剥奪する可能性もあると言っています。

 中国の農村では、家父長制的・父系制的観念のために、村規民約や村民代表大会の決議によって、嫁に行った娘(出嫁女)や入り婿の土地権を剥奪しているケースがあります(14)。李慧英さんは、そうしたケースを心配しているのです。

 この点については、現行の村民委員会組織法でも、「村民自治の規則、村規民約、村民会議または村民代表大会が決定して決定した事項は、憲法・法律・法規・規則・国家の政策と抵触してはならず、社会の公共の利益を損ねてはならず、村民の人身の権利、民主的権利、合法の財産権を侵犯してはならない」(現行法第20条、改正草案第25条)と規定していますが、上のようなケースが後を絶ちません。

 ですから、李慧英さんは、村民委員会組織法に、さらに、「村規民約は現行の法律と矛盾してはならない。矛盾した場合は、村民代表大会の決議は無効である」という条項を設けることを提案しています。

 総じて言えば、今回の改正草案は、女性の権利を保障する上で、少し前進した点もあるけれども、まだまだ関係者の要求に応えるものにはなっていないと言えましょう。

(1)村民委員会についての文献は多いが、清水美和『中国農民の反乱―昇竜のアキレス腱』(講談社 2002年)第6章「農村民主化の実験」など。ネットでも「村民委員会―中国の民主化の最前線―」(自治体国際化協会HP)が簡単に説明している。
(2)「《村民委员会组织法》修订征求公众意见」『女声』第14期[word]。「2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人です」という点については、2009年10月におこなわれた全国婦連「2つの委員会[村民委員会と党支部委員会]」女性幹部座談会における全国婦連の党グループ書記、副主席、書記処第一書記の黄晴宜さんの発言(「全国妇联村“两委”女干部座谈会在长沙召开」『中国婦女報』2009年11月2日)によるもののようです。また、「民政部の2008年の民政事業発展統計報告によると、全国に村民委員会は60.4万ある」という点については、「2008年民政事业发展统计报告」参照。
(3)《村民委员会组织法》征求公众意见 明确村民代表中女性应占1/3以上」『中国婦女報』2009年12月29日、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(4)以上については、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(5)1939年の陝甘寧辺区第1回参議会で採択された「女性の政治的経済的文化的地位を向上させる案」は、「各級の参議会は25%の女性議員がいなければならない」と規定していました。
(6)人民公社に関しては、そのような規定は見当たらず、「高級農業生産合作社示範章程(1956年6月30日)」(邦訳「高級農村生産合作社模範定款」『新中国資料集成』第5巻 日本国際問題研究所 1971年)第61条に「合作社の主任・副主任のうち、少なくとも1人は女性でなければならない」とあるものを指しているのではないかと思われます。李慧英編著『社会性別与公共政策』(当代中国出版社 2002年)212-213頁にも、この規定も上の陝甘寧辺区の規定も述べられているのですが、そこで引用されているのも、人民公社の定款ではなく、合作社の定款です(全国婦連副主席の穎超の発言を、正式に決定した定款であるかのように誤って引用していますけれども……)。
(7)ジェンダー平等政策唱道課題グループが河南省登封市の周山村の村規民約を改正した試みについての詳細な報告が、最近、「《悄然而深刻的变革—周山村‘村规民约’修订纪实》的电子版」(2010-01-11)として、社会性別与公共政策HPに掲載ました(「1 周山村村规民约修订纪实1-1.doc」、「1 周山村鬼鬼民乐修订纪实1-2.doc」、「2 周山村村规民约修订过程记录.doc」、「3 《周山村村规民约》.doc」、「4 全国其他省份探索行动.doc」、「5 村规民约修订中的常见问题.doc」、「6 后记.doc」、「附录1 性别平等政策倡导课题组成员名单.doc」)。
(8)村民委员会组织法修订讨论会在西安举行」(2010-01-14)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP。討論会には、陝西省委員会党校・省委員会政策研究室・合陽県婦連、渭南婦女促進会、合陽女村官協会、陝西師範大学婦女文化博物館などの人を招いたそうです。
(9)关于《中华人民共和国村民委员会组织法(修订草案)》的修改建议」(2010-01-16)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP
(10)この発言については、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(11)同上。
(12)关于《中华人民共和国村民委员会组织法(修订草案)》的修改建议」(2010-01-16)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP
(13)妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(14)何燕侠「中国農村女性の土地請負経営権をめぐる諸問題」『中国女性史研究』第10号(のち何燕侠『現代中国の法とジェンダー──女性の特別保護を問う』尚学社、2005年、第5章「農村女性の土地請負経営権とその実態」として収録)参照。本ブログの記事でも、「農村女性の土地請負経営権をめぐる裁判」、「仏山市南海区政府が農村の『出嫁女』の土地権益問題を解決」などで触れています。

ただ一人の女性省長・宋秀岩さんが辞職──歴史的にも女性の省のトップはごく僅か

青海省省長の宋秀岩さん辞職、全国婦連の党グループ書記・副主席・書記処第一書記に転任

 1月12日、青海省人民代表大会常務委員会は、青海省の女性の省長である宋秀岩さんの辞職願を受け入れる決定をしました。宋さんは、辞職願の中で、「仕事の配置転換のため、省長の職務を辞めさせてくれるようお願いする」と述べていました(1)

 翌13日、全国婦連の第10期第2回執行委員会において、中国共産党の中央組織部の副部長の沈躍躍さんが、中国共産党中央委員会の「全国婦連の主要な責任を持つ同志の調整に関する決定」を発表しました。この決定は、それまで全国婦連の党グループ(2)書記・副主席・書記処第一書記であった黄晴宜さんを、年齢的理由によって、それらの職務に再任せず、宋秀岩さんを党グループ書記に任命するものでした。そして、全国婦連の第10期第2回執行委員会は、中共中央の指名にもとづき、宋さんを副主席に選出しました。また、同日開催された第3回常務委員会の推薦により、宋さんは書記処第一書記にもなりました(3)。要するに、党の決定にもとづいて、黄晴宜さんの婦連の職務を宋秀岩さんが引き継いだということです。

 宋さんの異動の詳しい背景はわかりませんが、宋さんは中国でただ一人の女性の省長でしたから、これで、女性の省長は中国からいなくなりました。

歴史的に見ても、女性の省のトップはごく僅か

 歴史的に見ると、宋さんは、2人目の女性の省長でした。女性の省長は、宋さんを含めて、以下のとおりです。

中華人民共和国における女性の省長
・顧秀蓮(江蘇省 1983年4月─1989年4月)
・宋秀岩(青海省 2005年1月─2010年1月)

 中国の場合、党のトップが重要ですから、女性で、中国共産党の省委員会の書記(省の第一の指導者)になったことがある人も、以下に示しておきます。

中華人民共和国における女性の中国共産党省委員会書記
・呂玉蘭(河北省 1977年5月─1980年2月)※
・万紹芬(江西省 1985年6月─1988年4月)
・孫春蘭(福建省 2009年11月─)

 ※ただし、呂玉蘭さんが在任した時期は、別に「第一書記」というトップがいました(4)。ですから、呂さんは「初の女性の省委員会書記」ではありますが、初のトップというわけではないようで、初のトップは次の万紹芬さんになるように思います。

 以上、中華人民共和国において、これまで女性で省のトップに立ったことがあるのは、行政においても、党においても、2人ずつしかいなかったということです。年代的には、省長も、党の省委員会の書記も、1980年代と2000年代に1人ずつです。

(1)宋秀岩辞任青海省长 49岁时成我国第二位省長」人民網2010年1月13日(新浪網より)
(2)党中央から国家機関と大衆団体に派遣される指導グループ
(3)全国妇联十届二次执委会议在京闭幕 全国人大常委会副委员长、全国妇联主席陈至立出席会议 中央任命宋秀岩为全国妇联党组书记,全国妇联十届副主席」『中国婦女報』2010年1月14日。
(4)新中国两位女省委书记」紅色論壇2009-12-04、wikipediaの記述「省委书记」より。「河北省历任党委书记」(国家形勢網2006-6-30)によると、第一書記は、1979年12月までは劉子厚さんで、1979年12月から1982年6月までは金明さんです。

村民委員会における女性

 最近発表された、北京工業大学の銭王呈さんの調査報告「北京東部の農村女性が村民委員会に入る状況の調査および対策の分析」は、農村の女性が政治に参加することが困難な状況を明らかにしました(村民委員会というは、農村の自治組織ですが、政権の末端としての性格も持っており、そのメンバーは一応選挙で選出されます)。

 その調査報告によると、村民委員会は一般に3~7名で構成されていますが、大部分の村民委員会では、女性のメンバーは1~2名です。3名を越えている村民委員会はごく少なく、平均すると女性メンバーの比率は22%前後にすぎません。

 しかも、村民委員会において女性委員が担当している職務は、73%が婦女代表会議の主任や婦女連合会の委員などで、22%が会計だそうです。村民委員会の主任や副主任のような重要な職務を担っている女性委員はごく少数だということです。

 また、既婚女性の投票権を、「一家の長」である夫が代わりに行使しているという実態もあるそうです。

 さらに、女性組織に関しても問題点が指摘されています。村に婦女代表会議や村の婦女連合会のような女性組織があることは知っていたのは62%で、それらの組織の役割を知っていたのは23%だけでした(以上は、(1))。

 村民委員会に女性メンバーが少ないという問題は以前から指摘されており、女性メンバーを増やす試みもいくつか行われていますが、最近『中国婦女報』で取り上げられているのは、女性委員の「専職専選」というやり方です。女性委員の「専職専選」とは、村民委員会の定員を一人増やし、その一人に関しては必ず女性を選出するというものです。従来からの定員のメンバーにも今までどおり女性を選出することもできるので、女性委員を増やすことができます。

 このやり方は、今年初め、浙江省の中共党委員会と省政府の弁公庁が発した通知によって推進されました(2)。たとえば同省の温嶺市の浜海鎮では、女性委員が17%増えたということです(3)

 女性委員の「専職専選」を報じた記事はいろいろありますが(4)、「専職専選」で選出された女性委員が村民委員会の中でどういう働きをしているのかはよくわかりません。結局のところ、女性役割を担っているのではないかという疑いも捨てきれませんので、そうした点には今後、注目していきたいと思います。

(1)「農村婦女参選権利受到諸多隠性限制」『中国婦女報』2008年4月30日。
(2)「浙江試点村委女幹部専職専選」『中国婦女報』2008年1月11日「確保村女性“専職専選”崗位落実」(『中国婦女報』2008年4月29日)によると、《省委組織部・民政庁〈関于認真做好2008年村民委員会換届選挙交錯的意見〉》という通知の中に、「加大女幹部的推選力度,村民委員会選挙中要単独設立婦女委員崗位,実行専職専選」とあるということです。
(3)「“X+1”模式浜海鎮村委会選挙実行女委員専職専選」『中国婦女報』2008年1月19日
(4)女性委員の「専職専選」を扱った記事は(2)(3)で挙げたほかに、「専職専選“村官” 婦女参選熱情高」『中国婦女報』2008年4月12日「“専職専選”実現村村都有“女委員”」『中国婦女報』2008年4月22日などがあります。

全人代の女性代表の比率、21.3%にとどまる

 今回、第11期全国人民代表大会(全人代)の代表が選出されましたが、その女性比率は21.33%でした。前回(5年前)選出された代表の女性比率は20.2%でしたから、今回は、前回に比べて約1.1%伸びました(1)

 しかし、昨年3月、「次期全人代の女性代表の比率は22%を下回ってはならない」という決定がなされており(2)、当時の『中国婦女報』にも、この決定を歓迎する声が掲載されていたのですが(3)、この決定は守られませんでした。

 また、これまでの全人代の代表の女性比率は、以下のようでした(小数点一桁まで)。

全国人民代表大会の代表の女性比率(4)
 第1期(1954年~)12.0%
 第2期(1959年~)12.2%
 第3期(1964年~)17.9%
 第4期(1975年~)22.6%
 第5期(1978年~)21.2%
 第6期(1983年~)21.2%
 第7期(1988年~)21.3%
 第8期(1993年~)21.0%
 第9期(1998年~)21.8%
 第10期(2003年~)20.2%
 第11期(2008年~)21.3%(今回)

 上に示したとおり、1975年以降は、ほぼ横ばいです。今回は、前回が1975年以降では最低だったのを、元に戻しただけにとどまっています。

 ただし、全人代と同時期に開催される全国政治協商会議の委員の方は、今回、女性比率が17.7%になり(5)、下に示したように、一応史上最高になりました(もっとも、政治協商会議は、議論や提案をするだけで、立法権や決定権はないのですが)。

全国政治協商会議の委員の女性比率(6)
 第1期(1954年~) 6.1%
 第2期(1959年~)11.4%
 第3期(1964年~) 8.1%
 第4期(1975年~) 8.9%
 第5期(1978年~)14.7%
 第6期(1983年~)13.8%
 第7期(1988年~)14.5%
 第8期(1993年~) 9.2%
 第9期(1998年~)15.5%
 第10期(2003年~)16.8%
 第11期(2008年~)17.7%(今回)

(1)「十一届全国人大女代表21.33%」『中国婦女報』2008年2月29日。
(2)「第11届全国人大代表名額和選挙問題決定」(2007年3月16日第十届全国人民代表大会第五次会議通過)国家司法考試遠程培訓中心HPより
(3)王長路「22%,婦女参政的利好信息」『中国婦女報』2007年3月9日佟吉清「欣聞女代表不少于22%」『中国婦女報』2007年3月9日
(4)2003年までのデータは、国家統計局人口和社会科技統計司編『中国社会中的女人和男人――事実和数据(2004)』(中国統計出版社 2004年)85頁。
(5)「女委員395名,比上届提高1個百分点」『中国婦女報』2008年1月28日。
(4)2003年までのデータは、(4)の86頁。

中国共産党指導部の女性比率

 昨日、中国共産党17回党大会が終わり、新しい中央委員が選出されました。
 女性で中央委員に選出されたのは、次の13人です。
 馬[文+馬]、烏雲其木格(モンゴル族)、楠、劉延東、孫春蘭、李斌、李海峰、楊衍銀、呉愛英、沈躍躍、宋秀岩、陳至立、黄晴宜(敬称略)
 (中国共産党第十七届中央委員会委員名単より)。

 2002年の16回大会では、女性は5人しか中央委員に選出されませんでしたから、今回、2.5倍以上に増えたわけです。しかし、中央委員は全部で204人選出されているので(今大会の場合)、女性は全体の6.4%でしかありません。
 下の表を見ていただければわかるように、中央委員会の女性比率は、1950年代からずっと低いままであり(文化大革命の時に少しだけ上昇した)、16回大会が異常に低かったのを回復しただけとも言えます。
 しかし、今後、女性が増大する流れの第一歩である可能性もあると思います。

各党大会で選出された中央委員の女性数・比率(1)
8(1956年) 4/ 97[4.1%]
9(1969年)13/170[7.6%]
10(1973年)20/195[10.3%]
11(1977年)14/201[7.0%]
12(1982年)11/210[5.2%]
13(1987年)10/175[5.7%]
14(1992年)12/189[6.3%]
15(1997年)8/193[4.1%]
16(2002年)5/198[2.5%]
17(2007年)13/204[6.4%]

 今日は、中央委員会の総会で、中央政治局常務委員と中央政治局員が選出されました(第十七届一全会産出中央領導機構)。
 中国共産党の場合、中央委員会の上に位置する中央政治局とその常務委員会とがたいへん重要です。10年以上以前の話ですが、毛利和子さんは次のように言っていました。「党が上から下へのピラミッド型機構のため(……)中央委員会はこれまでずっと政策決定の中で重要な役割を果たしてこなかった。/政策決定のコアになるのは二十数名の中央政治局、とくにもっとも重要な決定は、多くの場合6~7名のごく小さい集団――中央政治局常務委員会で行われる。(……)10億以上の国民を擁する大規模国家の重大事が、20人前後の党政治局のメンバー、ひいては6~7名の政治局常務委員によって決められる。これが四十年来の中国政治だった」(2)

 中央政治局員と中央政治局常務委員には、これまで女性ほとんど選出されていません。
 まず、女性が中央政治局常務委員になったことはありません。
 ヒラの中央政治局員には、女性がなったことはあります。しかし、1980年代までは、女性で政治局員になったのは、江青(毛沢東の妻)、葉群(林彪の妻)、鄧頴超(周恩来の妻)という、著名な指導者の妻である場合ばかりだったのです(下表)。

 そうしたなか、呉儀さんは著名な指導者の妻ではなく、独身(未婚)で、5年前の16回大会直後の中央委員会総会で中央政治局委員に選出され、2003年3月には国務院副総理にもなりました。
 現在68歳である呉儀さんは、今大会で、中央政治局や中央委員会から引退しました。
 今回は、女性では、中国共産党中央統一戦線部長の劉延東さん(簡歴)が中央政治局委員になりました。劉延東さんも著名な指導者の妻というわけではないので、今後も女性が中央政治局の一角を占める流れ(といっても、まだ1人だけですが)が続くのかもしれません。

中国共産党最高指導部の女性数(女性数/全体の人数)(3)
政治局常務委員  政治局委員
8(1956年)0/6  0/17
9(1969年)0/5  2/21(江青、葉群)
10(1973年)0/9  1/21(江青)
11(1977年)0/5  0/22
12(1982年)0/6  1/25(鄧頴超)
13(1987年)0/5  0/17
14(1992年)0/7  0/20
15(1997年)0/7  0/22
16(2002年)0/9  1/24(呉儀)
17(2007年)0/9  1/25(劉延東)

(1)中華全国婦女聯合会婦女研究所・国家統計局社会与科技統計司編『中国性別統計資料(1990-1995)』(中国統計出版社 1998)430頁、中華全国婦女聯合会編『中国婦女運動百年大事記』(中国婦女出版社 2003)における各党大会とその後の一中全会の記述などより作成。
(2)毛里和子『現代中国政治』(名古屋大学出版会 1993)141頁。
(3)(1)と同じ。

全国政協や村民委員会の女性比率の最低線を定める提案

全国政協委員の女性比率の最低ラインを定める提案
 先日このブログで、来年選出される第11期全国人民代表大会(全人代)の人民代表について、「女性の代表は22%を下回らない」という規定が導入されそうだということを書きました。
 いま中国では、全国政治協商会議(全国政協)も開催されています。全国政協というのは、全人代と違って立法権や決定権はありませんが、幅広い人が国の政治について話し合ってさまざまな提案をおこなう会議です。
 全国政協の委員も5年ごとに改選されますが、これまでの女性委員の比率は、以下のとおりでした(1)
第1期(1954年~) 6.1%
第2期(1959年~)11.4%
第3期(1964年~) 8.1%
第4期(1975年~) 8.9%
第5期(1978年~)14.7%
第6期(1983年~)13.8%
第7期(1988年~)14.5%
第8期(1993年~) 9.2%
第9期(1998年~)15.5%
第10期(2003年~)16.8%

 全人代の女性代表の比率とほぼ同様に、ここ30年近くはだいたい横ばい状態です。
 そこで、全人代同様、全国政協の委員の女性の最低比率も決めるべきではないか、という提案を全国政協委員で敦煌研究院院長の樊錦詩さんが出しました(2)

村民委員会に女性を少なくとも1名入れる規定の導入を求める提案
 また、いま全人代に参加している全国婦連副主席・書記処書記の洪天慧さんは、「村民委員会組織法を改正して、『村民委員会に少なくとも女性を一名入れる』と規定すべきだ」という提案をしました。村民委員会というのは、農村住民の自治組織であるとされつつも、政府の末端組織としての性格も持っている組織で、3~7名で構成されます。

 洪天慧さんは、「女性は農業生産で大きな役割をはたしているのに、農村における女性の政治参加は少ない。2005年に至っても、村民委員会のメンバーの女性比率は16.7%であり、村民委員会の主任・副主任の女性比率は1%に達していない。村民委員会の中に女性が少なすぎることが、女性が土地経営権などの問題のおいて利益を侵害されることにつながっている」と述べます。
 洪さんはさらに、「現行の村民委員会組織法は『村民委員会のメンバーに、女性を適当に割り当てなければならない(村民委員会成員中,婦女応当有適当的名額)』と規定している。しかし、きちんとした比率の保障がないために、現実には多くの村で女性のメンバーがおらず、多くの優秀な女性が村民委員会に入ることができていない。これは、農業生産労働の主力軍である女性に対して不公平である」と指摘しています(3)

 日本でも間もなく統一地方選挙がおこなわれますが、社会の中の女性やジェンダーの問題を解決するためは、女性の政治参加を促進する必要があるとこは同じだと思います。

(1)「歴届全国政協委員人数和性別構成」国家統計局人口和社会科技統計司編『中国社会中的女人和男人─事実和数据(2004)』(中国統計出版社 2004年)86頁。
(2)「政協女委員的比例也設最低綫」『中国婦女報』2007年3月13日。
(3)「村委会成員中至少応有一名以上女性」『中国婦女報』2007年3月14日。

全人代の女性代表比率を「22%以上」と規定へ

 来年選出される第11期全国人民代表大会(全人代)の人民代表について「女性の代表は22%より低くてはならない」という規定が導入されるようです(1)

 全人代の人民代表は5年ごとに改選されますが(文化大革命の前後はそうなっていません)、これまでの全人代の女性の人民代表の比率は、以下のとおりでした(2)
 第1期(1954年~)12.0%
 第2期(1959年~)12.2%
 第3期(1964年~)17.9%
 第4期(1975年~)22.6%
 第5期(1978年~)21.2%
 第6期(1983年~)21.2%
 第7期(1988年~)21.3%
 第8期(1993年~)21.0%
 第9期(1998年~)21.8%
 第10期(2003年~)20.2%

 上の表を見ると、第4期(1975年選出)に22%を上回りましたが、それ以後は20~21%台であり、ここ30年あまりは完全に横ばい状態であることがわかります(この点は、各国で1975年の国際女性年以降に女性の運動が盛り上がったのと違って、中国では女性の下からの運動がまだ極めて弱いことと関係していると考えられます)。

 従来も第8期と第9期の代表を選出するときに「女性代表の比率は前期より低くてはならない」という規定が導入され、第10期の代表を選出するときには「女性代表の比率は前期より高くなければいけない」と規定されました。
 しかし、数値を決めたのは初めてです。

 ただし、来年22%を上回ったとしても、現在が20.2%なのですから、僅かな伸びにとどまります。北京行動綱領の「30%」という数字とはまだ落差があることに触れている記事もあります(3)
 また、上の表からもわかるように、そもそも、これまでの規定はけっして守られていません。

 しかし、昨年、湖南省では人民代表大会の代表の候補者の30%以上を女性にすることを決める(4)など、地方によっては数値規定を置く例もあらわれており、今回の動きもこうした流れを反映しているとはいえそうです。

(1)「22%,婦女参政的利好信息」『中国婦女報』2007年3月9日。
(2)「歴届全国人民代表大会的代表人数和性別構成」国家統計局人口和社会科技統計司編『中国社会中的女人和男人─事実和数据(2004)』(中国統計出版社 2004年)85頁。
(3)「欣聞女代表不少于22%」『中国婦女報』2007年3月9日。
(4)「湖南率先立新規 30%候選人成為婦女参政剛性指標」『中国婦女報』2006年8月8日。

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Author:遠山日出也
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