2017-08

家族などからの結婚圧力(逼婚)を批判する若い女性たちの運動――2014年~2016年

<目次>
はじめに――「逼婚」「剰女」という流行語
一 2014年:「逼婚」を肯定するコマーシャルに対する抗議運動

 1.家族のために結婚することを肯定する「百合ネット」のコマーシャル 2.インターネット上での抗議運動 3.バレンタインデーに十数名が百合ネット総本部前などで、替歌とプラカードで抗議
二 2015年:北京・上海・広州の街頭で活動
 1.北京 2.上海 3.広州
三 2016年:クラウドファンディングで北京の地下鉄に反逼婚広告
 1.クラウドファンディングと微博での逼婚反対の呼びかけ 2.広告審査によって表現をソフトにされつつも、北京地下鉄の東直門駅に広告を掲示 3.「反逼婚連盟」はその後もオンラインとオフラインで集い 4.「女権の声」が反逼婚についての体験談を募集
おわりに――「逼婚」の背景として、中国的「孝」、若者の経済的情況、人口政策なども

はじめに――「逼婚」「剰女」という流行語

子どもに結婚をするように圧力をかけることを、中国語で「逼婚」と呼ぶ。とくに子どもが春節(旧正月)で帰省したときに、家族や親せきから「なんでまだ結婚しないの?」「相手はいるの?」「なんで連れて帰ってきて会わせてくれないの?」などと結婚を催促されることが多く、若者たちの悩みの種になっている。

2012年には、親が子供に早く結婚しろと強要する「中国式逼婚」が、流行語にもなった(1)

2016年2月には、「中国関心下一代(次世代に関心を持つ)工作委員会健康スポーツ発展センター」が『中国逼婚調査報告』を出した。この報告では、25歳から35歳の若者に対する圧力が最も大きく、86%の人が結婚を催促されたことがあるという。女性の方が男性より6%比率が高いこともわかった(2)

結婚適齢期を過ぎても独身でいる男女を軽蔑して呼ぶ言葉である「剰女 (残った女、売れ残り女)」「剰男」も、流行語になっている(3)。こうした言葉も結婚規範の強さを示している。

一人っ子政策などに起因する性別のアンバランスによって、本当は「剰男」の方が大量に出現している。彼らの大多数は貧困で、学歴も低く、農村に住んでいる。しかし、メディアは彼らが単身であることは咎めない。

中国のマスメディアの「剰女」についての記事の多くは、都市の教育を受けた単身女性に対して、「仕事にはもう頑張るな、高望みをするな、結婚相手をえり好みするな」というものである。「男の30歳は花であり、女の30歳は黄土の泥である」という言葉があるが、これは、単身男性と単身女性の二重基準を示している。中華全国婦女連合会のサイトさえ、「剰女」に関する文章を無批判に転載し、その中には、「剰女」を「娯楽の場での一夜の情事が好きだったり、役人や金持ちの妾になったりする」などと否定的に捉えたものもある(4)

もっとも、結婚を強要することを批判する「逼婚」という言葉が流行するようになったことは、結婚規範からの脱却を志向する若者の意識が強まったことを示しているとも考えられる。

さらに、近年、「逼婚」を批判する社会的運動もおこなわれるようになった。この運動は、行動派フェミニスト(女権主義行動派)と呼ばれる人々が中心になっていると見られる。つまり、こうした運動が起こったことは、新しい女性運動の台頭とも関係している。

以下、「逼婚」を批判する、こうした女性を中心とした運動について見ていきたい。

一 2014年:「逼婚」を肯定するコマーシャルに対する抗議運動

1.家族のために結婚することを肯定する「百合ネット」のコマーシャル

「逼婚」を批判する運動が起きた1つのきっかけは、2014年の春節の前に、結婚相手の紹介会社「百合ネット」が次のようなコマーシャルを流したことである。

主人公は高等教育を受けた美女である。彼女は、祖母のもとに、学士帽をかぶって卒業証書を届けたりしてきた。ところが、祖母からは、毎年、「結婚したの?」と聞かれる。けれど、彼女はずっと結婚しなかった。しかし、祖母が病に倒れて「結婚しなさいよ」と言ったので、彼女は「今年は祖母のためにも、必ず結婚しよう」と思って、百合ネットの実店舗に行って、結婚相手を探した。最後の場面では、ウェディングドレスを着た彼女が、病床の祖母の前に一人の男性を連れて来て、目に涙を浮かべて「おばあさん、結婚したよ」と言う。

このコマーシャルは、春節の期間、中国中央テレビの3つのチャンネル、10の衛星テレビ、多くの都市の駅のスクリーンで放映された。

2.インターネット上での抗議運動

このコマーシャルに対して、微博(中国式ツイッター)上で批判が巻き起こった。たとえば、@我是你認識的王小能さんは、このコマーシャルは、「仕事をするより結婚したほうがいい!」「あなたはきれいで、有能で、学歴が高く、仕事の出来がいい。でも、結婚していなければ何の価値もない」という価値観を反映していると指摘した。また、@風小餐さんは、女は適齢期になれば結婚するのが「天地の定め」で、女は子どもを産むことが「本分」であることも示していると述べた。

1月29日、百合ネットは謝罪したが、コマーシャルの放映を中止するか否かには触れておらず、ネットでは、誠意がないと評された。

2月6日、@柴晋寧さんが、新浪微博で「#1万人が百合ネットをボイコットする#」活動を始めた。彼女は、百合ネットにコマーシャルの削除と謝罪を求め、それに同意する人はこのエントリを転載(リツイート)するよう呼び掛けた。そうしたところ、2月8日昼までに、1万5119回、このエントリは転載された(5)

3.バレンタインデーに十数名が百合ネット総本部前などで、替歌とプラカードで抗議

2月14日のバレンタインデーには、十数名の若い女性が北京の百合ネットの総本部に抗議に行った。彼女たちは、自分たちが作った替歌《おばあさん、強要しないで(外婆别逼我)》(テレビの人気バラエティ番組《パパはどこに行くの?(爸爸去哪里)》[아빠! 어디가? の中国版]の主題歌の替歌)を合唱した。彼女たちは、「お父さん、お母さん、もう私に強要しないで。私は、一人で生活するのもいいのです。結婚することも、子どもを産むことも、選択ではないの? 私自身に選ばせて」などと歌い、「私に強要しないで」「私は結婚したいときにする。結婚しないならどうだというのか」などと書かれたプラカードを掲げて抗議した。若い男性も、「おばあさんに言われたからといって、私と結婚しないで」というプラカードを掲げた(動画→「女权青年逆袭百合网反逼婚 」女权之声FeministsVoices)。

彼女たちは、百合ネットの広報部の責任者の楊晶さんに、「結婚を強要するコマーシャルの放映はもうしないでください」という訴えを提出した。そこには、以下のように書かれていた。「まず、このような結婚・恋愛観が陳腐である。結婚は女性の生活の選択肢の一つでしかなく、女性の価値はけっして婚姻によって実現しなければならないものではない。婚姻を女性の最も重要な、ましてや唯一の生きていく道だと考えるのは、女性を拘束し、差別する行為である。また、結婚するかしないか、いつ結婚するか、誰と結婚するかは、みな女性自身の問題であり、家族の圧力や親孝行と関連づけるべきではない。百合ネットのコマーシャルは、倫理道徳によって女性の婚姻自主権を否定している疑いがある。」(6)

彼女たちは、ビルの中の百合ネットの総本部前だけでなく、ビルの外や、地下鉄の車両内や地下鉄の構内でも、歌を歌い、プラカードを掲げてアピールした(動画→女权青年逆袭百合网反逼婚 」女权之声FeministsVoices)

百合ネットは、その日の午後二時、メールで、コマーシャルの放映を中止すると回答した。

この抗議行動は、『南方人物周刊』によると、NGO団体「女権の声」が組織したものである。

この抗議行動に参加した熊婧さんは、「女権の声」に入る前は、武漢の師範大学の学生だった。熊婧さんの父母は、卒業後は、熊婧さんが教師か公務員になって、安定した生活を送ることを望んでいた。しかし、熊婧さんはジェンダー研究を専攻する大学院生になり、自分がフェミニストだと自覚するようになって、賃金が低く不安定なNGO「女権の声」の職員になった。最も母親の心配と父親の怒りを引き起こしたのは、彼女の不婚主義だった。熊婧さんは、父親とはできるだけ交流を避けるようになった。

また、艾可さんの母親も、艾可さんが結婚するまでは家を出てはならないと考えていた。しかし、艾可さんは、長い時間をかけて母親を説得した。けれども、多くの人は、親元から逃れるために結婚することが多い。艾可さんは、これはとても悲しいことだと考えている(7)

二 2015年:北京・上海・広州の街頭で活動

2015年には、北京・上海・広州の3都市で街頭行動がおこなわれた。

1.北京

2015年1月24日午後、未婚の若い女たちと男たちが、北京の三里屯や工人体育館前などで、流行している《小さなリンゴ(小苹果)》という歌と踊りを反逼婚バージョンに改編した歌と踊りを踊りつつ、通行人に「自由を愛し、結婚を強要しない」という歌詞で包んだおひねりを配布した(動画: 小苹果反逼婚)(8)

2.上海

2月4日には、上海の繁華街や地下鉄の車両内で、4、5人の若い女性が、結婚強要を批判するプラカードを持って無言で抗議をおこなった。彼女たちのプラカードには「非暴力不合作剰女連盟(非暴力・非協力の売れ残り女連盟) お母さん、春節のときに結婚を強要しないで! 私の幸福は私が決めます!」と書かれていた(9)

4月末には、5月1日に、上海で結婚を強要された女性や「剰女」というレッテルを貼られた女性10~12人を集めるワークショップをすることが発表された。その協力者として、「万静如(北京BCome小組コーディネーター、話劇《陰道の道》シナリオ制作および俳優の一人)」と「李橙(北京某ジェンダーNGO研究員、BCome小組メンバー)」のお2人の名前が掲載されている(10)

3.広州

3月6日、広州のある街頭で、数人の若い女性が、「私は子どもを産まないことを選択する」と書いたボードと「私はシングルを選択する」と書いたボードを持って、通行人に「シングル」や「不出産」に対する考え方を書いた付箋を貼ってもらう活動をした。

こうした活動をしたのも、終わったばかりの春節で、親戚たちから結婚や出産を催促されたからである。たとえば于磊さんは結婚して3年になるのに、まだ子どもができいなので、姑に「村の中で面を挙げて歩けない」と言われたり、舅に「子どもができなかったから、気が晴れなかった」と暗に言われたりしたという(11)

2015年は、このように街頭行動が3都市に広がった。これらがおこなわれたのは、フェミニスト5女性が刑事拘留された3月6~7日の直前の時期(広州における活動は、まさにその前日)である。つまり、運動が前年よりも広がったことに加えて、街頭行動の自由に対するまだ制約が弱かったことが幸いして各地で街頭行動ができたと言える部分があろう。

三 2016年:クラウドファンディングで北京の地下鉄に反逼婚広告

1.クラウドファンディングと微博での逼婚反対の呼びかけ

2016年1月17日、微博アカウント「@反逼婚聯萌」が、以下のように、反逼婚広告を出すためのクラウドファンディングを呼びかけた。

愚痴や恨みごとを言うよりは、力を尽くして変えるほうがいい! 2016年の春節には、私たちは共に反逼婚行動を起こして、この「逼婚文化」に満ちた社会に対して、結婚を強要する親戚たちに対して、私たちの心の中の声を表に出そう!

結婚するのも、しないのも、私の私事、私の生活、私の自由。

私の人生は、他の誰の支配も受ける義務はなく、まして「上の世代の人の言うことを聞いて」、人に指図され、動かされる義務はない。道理は、こんなに簡単なことだ。

私たちは団結し声を上げて、反逼婚の心の声を、老若男女の誰でも見ることができる主流のチャンネル(たとえば屋外広告)を使って、すべての人に向かって大声で叫ぼう! (12)

目標は3万5000元である。当時、メンバーは約10人だったようだが、1m×1.5mの広告を出すためには3万8000元かかるので、彼女たちだけでは負担しきれず、クラウドファンディングを呼びかけたとのことだ(13)

出した金額に応じて記念品を送ることも宣言された。たとえば、38元出した人には、結婚を強要する親戚や父母らに出すための、「あるフェミニスト芸術家が特別にデザインした『反逼婚はがき』」が贈られる。また、148元、198元を出した人には、それぞれ反逼婚手提げかばん、反逼婚Tシャツが贈られる。

このクラウドファンディングによって、最終的には、383人から2万8593.50元が集まった(14)

この活動の最終的な目的は、公共空間で声を挙げることであり、単に一枚の広告ボードを出すことだけではなかった。そのためには、小さな範囲内で宣伝するだけで満足しはならず、メディアの影響力を使い、SNSに載せて、不断に自己の影響力を放射する必要があった。反逼婚広告は潜在的な広範な受け手とのコミュニケーションが必要だという考えから、お礼の品を送るという方法を使い、寄付をした人とつながりを作ることができるようにした。もっとも、実際にやってみると、「38元」以上というのはハードルが高すぎると思う人もいたので、現物によるお礼はしないが、より少額なサポートを提示したところ、寄付の総額はかえって増えたので、少額の寄付が非常に重要だということがわかったという経験もした。また、お礼を送ること自体にも、時間と精力が必要なので、今回のような場合は必ずしも必要ではないかもしれないといった認識も得た(15)

『北京晩報』の記者が、呼びかけ人の一人の「Coby」に対して、「なぜこの活動を呼びかけたのか?」と尋ねると、「Coby」は、そのきっかけは、幾人かの友だちがみな「結婚を強要された」経験があることだと述べた。学校に通っていたときは、家族に「ボーイフレンドを作るな」と言われ、卒業したら、「女の子はすぐに結婚をして嫁に行くことを考えなければいけない」と言われる。「家族は、いつも私に結婚するように言います。わが家は伝統的で、祖母は、私がボーイフレンドを見つけないのは我儘で、家族に心配をかけていると言います。母親は、結婚していない女は、完全な女ではないと言います。父親はもっとひどく、私の友達を家に呼んで私に勧めます」と述べた(16)

反逼婚聯萌のアカウントは、「#今年の年越しは逼婚なし#」というハッシュタグも作って、微博上での各自の意思表明を呼びかけ、それに応えて、さまざまな人が、自らの顔と自らの意見を書いた紙を写した写真を発信した(17)

北京LGBTセンターの人たちもそうした写真を発表した。たとえば、小鉄主任は「逼婚はいらない。オーガズムに達せられることが必要だ」と書いた(18)

2.広告審査によって表現をソフトにされつつも、北京地下鉄の東直門駅に広告を掲示

彼女たちが最初に広告会社に提出したデザインは、若い女性が頭上で両手をクロスさせて「ノー」の意を示すポーズをとっているもので、「逼婚退散」と横に大きな字で書かれ、縦には、「今年の春節は結婚を強要するな 私の人生は私が決める」と書かれたものだった。彼女のTシャツの上にも、「逼婚」の文字にバッテンが書かれていた(19)

このデザインは、広告会社と北京工商局に下属する部門に審査された結果、拒否された。熊婧さんによると、彼らは拒否した理由は言わなかったそうだが、もっと大人しいデザインにすることにした(20)。つまり、「鋭い」内容は削除して、できるだけ温和で和やかで、前向きな言葉づかいに変えなければならなかった。また、彼女たちも、目上の人および社会の公衆が耳を傾けて、共鳴することができるような表現を望んだ(21)

2月4日、北京地下鉄の東直門駅に、照明看板広告を出すことができた。

それは、可愛い女の子の絵が、大きなハートマークを抱えているデザインであり、その中には、下のように書かれていた。

「親愛なお父さん、お母さん、心配しないで。
世界は広く、
さまざまな人生があります。
独身でも幸せになれます。」

その下には、「単身者も良い青年です。単身のプラスのエネルギーを届けます」と書かれ、「単身自在ホットラインへの電話を歓迎します」として電話番号と受付時間(毎週水~金、12:00~19:00)と記してあった(22)

@反逼婚聯萌は、この広告の前で写真を撮って発信することを呼びかけ(23)、李麦子さんもこの広告の前で自分を撮った写真を微博で発信した。その写真では、李さんは頭上で両手をクロスさせて「ノー」の意を示すポーズをとっている(24)

5月1日には、北京798芸術地区で、反逼婚ポスターの設計者の米果が、ポスターと「連盟」の活動の贈呈用の葉書を印刷した。そのデザインは、地下鉄内の当初のポスターのデザインだった(25)

3.「反逼婚連盟」はその後もオンラインとオフラインで集い

@反逼婚聯萌は、ホットラインだけでなく、微信(Wikipediaによる説明)で交流グループを作って、お互いの経験を交流している(26)

『南方周末』に、5月7日、北京の雍和宮新胡同の醒覚コーヒー館で、「反逼婚連盟」のメンバーである16人の若者(女性14人、男性2人)が集まって集会を開いたという記事が掲載されている。この集会は、2月に「連盟」が結成されて以降初めてのオフラインの活動だったという。この記事は、「反逼婚連盟」には、百人余りのメンバーがいると伝えており、1月にクラウドファンディングを呼びかけたのが約10人であったのと比べて、ずいぶん増えている。

この記事内には、以下のようなメンバーが出てくる。
・Coby――連盟の「盟主」、28歳。
・Caroline――大学3年生で、「連盟」の話劇グループの主要メンバーの1人。
・猪川――33歳の男性で、父母に結婚をひつこく催促されて8年になる。
・二猫――「連盟」の対外ホットラインを管理している。

あるメンバーは、結婚を催促する圧力があまりにも大きいのですでに結婚したが、結婚した後も問題は解決していないと述べている。なぜなら、続いて父母は2人日に子どもを産むよう迫っている。キーワードは変わっても、やり方はまったく同じだと(27)

また、未婚の男性と比べて、同じ年齢の単身女性は、より大きな逼婚の圧力に直面していると述べる参加者もいた。「70年近く以前に、ボーボワールは『第二の性』の中で、『社会の伝統が女性に賦与した意義は、婚姻である』と述べました。現在の社会は多元化したといっても、保護者の多くは伝統的な考え方を強く持っています。今回の広告を出す活動に参加した女性の人数は男性よりずっと多かった。私は、これは重要な要素だと思ったので、反逼婚広告では、私たちは女性を主役にしました」と言う(28)

4.「女権の声」が反逼婚についての体験談を募集

4月20日、微博アカウント「女権の声」が、以下のように「私の反逼婚の話」を募集した。

 今の若い人には、「結婚を催促」されたことがない人は、ほとんどいない。一定の年齢になると、父母や親戚、同僚、同級生、関係のない他人、商業広告、社会の文化全体が、いっせいに飛び出してきて忠告する。

 結婚すべきだ、結婚すべきだ、結婚しないと年をとって/遅くなって/相手がいなくなって/子どもを産む一番いい時期を逃して/死んで……、さまざまな結婚を催促する理由の、一つはあなたに当てはまっているに違いない!(……)

 逼婚文化は強大だが、現実の中には、妥協に甘んじず反抗する者も少なくない!

 それは、理想の伴侶を見つけるためには、「妥協」したくないからかもしれない。

 事業と自己の価値の実現に忙しいので、「結婚」を日程に上らせる時間がないからかもしれない。

 一生、何ものにも拘束されないという自由を愛しているので、「包囲された都市」の中に閉じ込められたくないからかもしれない。

 社会が良くないので平等な婚姻の権利を享受できないからかもしれない。

 結婚しない理由は多いけれども、それぞれの反逼婚の話には、みんな個人の意思と生活の方法についての省察が含まれている。みんな自由を追求し、改革を渇望する勇気を含んでいるから、これらの話は有意義であり、記録される値打ちがある。(29)

この呼びかけの結果集まった文章のうち、7点の力作が「女権の声」の微博に掲載されている(30)

そのうち、ある男性は、「逼婚」の圧力の強さを次のように語っている。父母に「しばらく結婚しないつもりだ」と答えると、親戚の子どもの名前を出して「あなたと年はあまり変わらないのに、みんな結婚して、とてもしっかりしている」と言い、ガールフレンドがいると知ると、「どこの人? 年齢は? 仕事は?」と尋ねる。いなければ、「条件がいいのがいる。紹介しよう」と言ってくる。「結婚しなくてもちゃんと生活していけている」と言っても、「誰それはあなたより何歳も年下なのに、みんな結婚して、あなたが残っている!」と言い、弁解したら、今までに10回以上も、涙声で訴えられたり、突然激怒されたりして、「なんでこうもわからずやなの。年をとるほど馬鹿になる。まともな人間なりなさい。そんなに自分勝手ではいけません」と言われたりする。春節には、親戚が遊びに来て、私に会うなり次々に、「相手はいるのか? いつ結婚するのか?」と聞く。(31)

ある女性は、次のように訴えている。「私は永遠に自由で自分のために生きていたい。けれども、あなた方は、私に結婚を強要して、私を婚姻の牢獄に閉じ込め、一人の男に縛りつけて、もう自分ではないようにする」、「逼婚は、『あなたのため』という名目を付けているが、実際は貴方の幸福を奪うことにすぎない」(32)

おわりに――「逼婚」の背景として、中国的「孝」、若者の経済的情況、人口政策なども

中国における「逼婚」圧力の強さは、上述のようなジェンダー構造と関係しているのはもちろんだが、中国における「孝」が、単に親に尽くすことではなく、子どもの出産により血統を継ぐことに重点が置かれていることと関係しているという指摘もある。たとえば、呂頻さんは、「逼婚」の背景として、「伝統的観念においては、結婚して子供を産むことがいつも『孝』という倫理道徳と堅く結びつけられてきた」ことを挙げ(33)、彭暁輝さんも、「中国では結婚は個人の問題ではなく、家族の問題である。また、中国人は代々血統を継ぐという家族理念が強いことも、特有の『逼婚』現象を引き起こす」(34)と述べている。

ただし、結婚を催促する圧力そのものは、日本でもけっして軽視できないことは言うまでもない。

また、問題は、単なる親の意識やマスコミの論調にだけではなく、若者を取り巻く経済的な面にもある。若者が「逼婚」に反対しようとしても、現実の問題に直面することが指摘されている。すなわち、海外に留学するには学費がかかり、商売をするには立ち上げる資金が必要で、家を買うには「頭金」が必要なのだから、若い人が父母に助けてもらおうとすれば、父母の意向には背きにくいということである(35)。こうした、現在の社会における青年の自立を支える社会的条件の弱さと関連しているという点も重要で、この点も日本にも同様の問題があることが指摘できよう。

さらに、マスメディアが結婚を奨励する理由として、「社会の安定」のためであるとか、「激烈な総合的な国力の競争」のために、「人口の資質」を向上させるためということも言われている。「人口の資質」を向上させるというのは、都市の高学歴の女性に結婚させて「優良な」遺伝子の子どもを作らせるという意味である。メディアはしょっちゅう嬰児の「出生欠陥」についての報道をしており、かつ大多数はその責任を「高齢で初めて出産する産婦」のせいにしている(本当は環境汚染の影響が大きいにもかかわらず)ともいう(36)

こうした側面を見ると、一見家族内の問題のように見える「逼婚」に反対することが、社会のジェンダー構造、婚姻システムの問題はもちろん、それ以外の面でも大きな社会的な広がりを持っていると言えるだろう。


(1)互動百科、2月の十大ネット流行語を発表 (2)」人民網日本語版2012年3月7日、趙 蔚 青「2012年中国の新語・流行語」(愛知大学中日大辞典編纂所『日中語彙研究』第2号、2012年)。
(2)江苏人逼婚最执着,平均每年超10次?」『扬子晚报』2016年2月14日。
(3)時代の流行語『剰男剰女』」新華網日本語版2010年12月8日、「剰女」Insight CHINA日本語版2013年10月23日。当局側の文献の中では、2007年に初めて教育部の文書が「剰女」を新語として挙げている(「关于“剩女”你知道的十个常识」新媒体女性的博客2016年2月1日。
(4)做一个剩女,到底碍了谁的事儿」2016-01-31 新京报书评周刊→「做一个“剩女”,到底碍了谁的事儿」女权之声2016年2月1日。
(5)【传媒观察室】百合网“借外婆逼婚” 网友联合反击道德绑架」南都网2014年2月8日→「百合网“借外婆逼婚” 网友联合反击道德绑架」女声网2014年2月10日。
(6)不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议」女声网2014年2月14日(来源:邮件)=女权之声的微博【不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议】 2014年2月14日 12:09。
(7)冯寅杰「逼婚广告,让爱等待」『南方人物周刊』2014年3月24日。
(8)女权之声的微博【春节将至反逼婚 女青年街头跳“小苹果”】2015-1-28 18:02
(9)上海女青年举牌抗拒父母春节逼婚」中新網2015年2月5日。
(10)[5.1上海]【爱自由•反逼婚】故事工作坊及论坛剧场招募」女权之声2015年4月28日 14:02。
(11)@兔子走丢了「她们选择单身和不生育?!你怎么看?」公益服务网2015年3月9日。
(12)[反逼婚众筹]:送个我们自己的新春“红包”」反逼婚联萌的微博2016年1月17日 22:25。
(13) DIDI KIRSTEN TATLOW“Exalting Life as a Single in ChinaThe New York Times, February 3, 2016→狄雨霏「中国单身青年反逼婚,没那么容易」纽约时报中文网2016年2月3日→女权之声的微博2016年2月4日。
(14)反逼婚众筹:送个我们自己的新春“红包”
(15)被纽约时报报道,她们的众筹有何神奇之处?」2016-06-15 灵析
(16)大龄青年众筹“反逼婚广告”」『北京晚报』2016年1月21日。
(17)反逼婚联萌的微博#今年过年不逼婚#
(18)北京同志中心1月29日 11:53
(19) DIDI KIRSTEN TATLOW“Exalting Life as a Single in ChinaThe New York Times, February 3, 2016→狄雨霏「中国单身青年反逼婚,没那么容易」纽约时报中文网2016年2月3日→女权之声的微博2016年2月4日。
(20)同上。
(21)为了反逼婚,她们直接在北京地铁投了广告! 」尖椒部落2016年2月4日、女权之声的微博【为了反逼婚,她们在北京地铁投了广告】2月4日 12:14
(22)同上。
(23)过年必须拍的一张照片,来看看你拍了吗?」2016-02-05 单身也幸福的 反逼婚联萌。
(24)麦子家的微博2016年2月4日20:17
(25)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(26)被纽约时报报道,她们的众筹有何神奇之处?」2016-06-15 灵析
(27)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(28)为了反逼婚,她们直接在北京地铁投了广告! 」尖椒部落2016年2月4日、女权之声的微博【为了反逼婚,她们在北京地铁投了广告】2月4日 12:14
(29)女声征文│我的反逼婚故事」2016年4月20日。
(30)猪头猫「被逼婚,我遭过的“七宗罪”」2016年5月3日 17:37、米果「请停止社会给予单身的负面意义」2016年5月17日 12:16、Ele_象「拒绝做受人摆布的附属品,我们已踏上“反逼婚”的征程」2016年5月18日 17:27、冬惊「传宗接待是每个成年人应尽的义务?」2016年5月19日 11:48、卢平「女孩,别让逼婚毁了自己」2016年5月20日 16:36、七七「反逼婚十年,我越活越美丽」2016年5月20日 16:54、Gabby「反逼婚历险记」2016年6月12日 18:26。
(31)猪头猫「被逼婚,我遭过的“七宗罪”」2016年5月3日 17:37
(32)☆卢平「女孩,别让逼婚毁了自己」2016年5月20日 16:36
(33)不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议」女声网2014年2月14日(来源:邮件)=女权之声的微博【不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议】 2014年2月14日 12:09。
(34)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(35)大龄青年众筹“反逼婚广告”」『北京晚报』2016年1月21日。
(36)做一个剩女,到底碍了谁的事儿」2016-01-31 新京报书评周刊→「做一个“剩女”,到底碍了谁的事儿」女权之声2016年2月1日。

最高人民法院による婚姻法の司法解釈(三)の意見募集稿をめぐって

 11月15日、最高人民法院は、「『中華人民共和国婚姻法』の若干の問題に関する解釈(三)」(意見募集稿)[最高人民法院「关于适用《中华人民共和国婚姻法》若干问题的解释(三)」(征求意见稿)中国法院網2010-11-15]を発表し、広く社会に対して意見を求めました。解釈の(一)と(二)は、それぞれ2001年12月と2003年12月に公布されていますが(「关于适用《中华人民共和国婚姻法》若干问题的解释(一)」「关于适用《中华人民共和国婚姻法》若干问题的解释(二)」)、今回の(三)は、夫婦の共有財産と個人財産の区別の問題を中心にして、女性の生育権などにも触れています。

 この意見募集稿は身近な問題を扱っているため、世論の関心が比較的高いようです。女性団体も、12月2日に北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター)が研究討論会を開催し(1)、12月9日には全国婦連権益部と全国婦連女性研究所も共同で研究討論会を開催しました。それぞれの研究討論会では、意見募集稿に対して修正提案もおこないました(2)。広東省婦連と広東省法学会も、11月19日に研究討論会を開催しました(3)。『中国婦女報』も特集記事を組んでいます。

 以下では、さまざまな意見の中からいくつかをご紹介します。

1.女性の生育権、堕胎権をめぐって

 意見募集稿第10条「夫が、妻が勝手に妊娠を中止して生育[出産、産育というような意味]権を侵害したことを理由として損害賠償の請求をすることは、裁判所は支持しない」

 『南方都市報』で、沈彬さんという人が、上の条項を指して、この草案は「女性に無条件の、一方的な、制約されない堕胎権を与えており、事実上、男性の生育権を侵害している」と述べ、「夫婦が共同で創造した生命については、女性の側だけで勝手に決めてはならない」と主張しました(4)。同様の主張は、他にも若干あったようです。

 それに対して、呂泉さんは、「男女で出産について意見が一致しないとき、男性が女性の堕胎という選択を否定したら、沈彬さんの考え方でいくと、女性は堕胎して損害賠償させられるか、男性の意思に従って子どもを生むしかなくなり、女性は出産の道具になってしまう」と批判しました(5)。呂頻さんも、「出産は女性の身体を通してでなければできず、また女性の身体を通してのみ可能なのだから、女性が最後の決定をするしかない。」「もしそれが男性に対して不公正だと考えるなら、それは、男性には子宮がないという自然の仕組みのせいでしかない。当然、この仕組みのために、男性は永遠に妊娠・出産・堕胎の苦痛や危険、犠牲を体験しないことを忘れてはならない。女性が出産の負担の不公正に恨み言を言えないからには、男性もまた、公正という名の下に、堕胎の最後の決定権を譲り渡すことに恨み言をどうして言えようか」と述べました(6)。 

 また、柯倩婷さん(中山大学)は、「実際は、中国の法律は女性が堕胎権を享有することを明確には規定していない」ことを指摘しました。すなわち、柯さんは「女性の堕胎権は、『憲法』『人口と計画生育法』『母子保健法』などの関係する条文から導き出されるものであるが、前2者の法律は女性が計画生育を執行する義務を有しており、そのために堕胎の権利をもっていると規定している。これらの『義務が方向づけた』法律は、権利についての線引きを軽視している。『母子保健法』の規定は、妊娠を中絶する3つの状況を規定している:胎児に重大な遺伝的疾病がある、重大な欠陥がある、母親の生命・健康を損なう、である。これは、優生学の原則にもとづいた法律であり、胎児の生命権を最も重要な原則にはしていない」と述べました。

 柯さんは、さらに踏み込んで、「過去30年の計画出産の法律執行過程に存在した問題を反省して、『女性には堕胎しないことを選択する権利もある』ことを提起し、もっと多くの代替策を探究して、画一的な禁止令の代わりにすれば、社会の進歩をさらに推進する助けになるであろう」とも述べました(7)

2.夫婦の共同財産制をいっそう弱めた――結婚前に不動産の頭金を払っていたら個人財産になるのでは、現状では女性に不利

 意見募集稿第11条「夫婦の一方が結婚前に不動産の売買契約をし、個人の財産によって銀行ローンの頭金を払い、結婚後の不動産登記を頭金を払った側の名でおこなった場合は、離婚の際は、その不動産を不動産権利者の個人の財産とし、まだ返済していない部分の借金を不動産権利者の個人の債務として認定できる。
 婚姻関係が存続している期間に夫婦の共同の財産によって返済した部分は、離婚時の不動産価格の市場価値および共同で返済した借金の借金全体に占める比率などの要素を考慮して、不動産の権利者がもう一方に対して合理的な補償をおこなわなければならない。」


[歴史的経過]

 1950年に制定された婚姻法は「夫婦双方は家庭財産に対して平等の所有権を処理権を有する」(第10条)と、夫婦の共有財産制を定めていました。

 しかし、1980年婚姻法は、夫婦の共有財産を「夫婦が婚姻関係継続中に取得した財産」に限定しました。ただし、1993年の最高人民法院の「人民法院の離婚事件における財産分割処理問題に関する若干の具体的意見」は、「一方が婚姻前所有していた個人財産で、婚姻後双方によって共同で使用・経営・管理されたもの、および家屋その他の比較的価値の高い生産資料は8年経過後に、貴重な生活資料は婚姻期間4年経過後に夫妻共有財産となる」としました。

 しかし、2000年に婚姻法が改正された後の2001年末の最高人民法院の司法解釈は、こうした共有財産への転化を否定しました(第19条)。当時、加藤美穂子さんは、中国の婚姻法が「転化共有財産」を否定したことについて、「経済的強者の保護の方に傾いているともいえようか」と述べました(8)。また、郭礫さん(黒龍江省女性研究所)は、「市場経済への転換は女性が直接に社会経済の中から労働報酬を獲得する機会を、程度の差こそあれ、減少させる。夫婦財産制の規定に関する婚姻法の修正案は、疑いもなく『泣き面に蜂』である」と言って批判しました(9)

[今回の司法解釈について]

 今回の司法解釈では、不動産は、結婚前に頭金を払った側の個人財産になります。その点で夫婦の共同財産制をいっそう弱めたわけですが、不動産の頭金を出すのは、男性(夫)側のことが多いので、この司法解釈は男性側に有利です。

 「中国の結婚後の居住モデルの主流はなお『夫方居住』であり、とくに広大な農村ではそうである。都市の少数の婚姻では夫婦自らが家を買うけれども、大部分は依然として男性側または男性側の家族が結婚後の家を買うか、頭金を支払い、女性側は、家屋の付帯設備や家電・家具を買い、自動車さえ買う。家屋は消耗が少なく、価値が増す製品だが、家電や自動車は、消耗が大きい製品である。もし婚姻が何年か続いたら、女性の当初婚姻に対する物資の投入は、投入して青春とサービスと同じように消耗してしまう」(傅寧[中国メディア大学メディアと女性研究センター])(10)

 呂頻さんは、次のように述べます。

 「ジェンダー制度によって、往々にして女性は収入が少なく、無償労働に対する貢献が大きいので、夫婦共同財産制は、このような情況の下では、彼女たちの家庭の中での平等な地位を保護しうる。中国の現在の婚姻モデルと資源の性による分配状況の下では、夫婦の共同財産制を弱めることは、大多数の状況の下では女性にとって不利である。
 男性側が結婚後に住宅を提供するのは中国の伝統の一つであり、農村の父母には息子のために『家を建てて、嫁をもらう』伝統があり、計画経済の時代の都市の住宅の分配も男性に偏っていた。このような偏向のために、男性は住宅をつうじて婚姻の主導権を増大させ、女性は『夫方居住』によって、生活の自主性、とくに離婚の自主性を減少させた。
 都市の住宅の市場化は、このような伝統をけっして弱めず、むしろほとんど結婚の前提の一つにした。『結婚前に頭金を払い、結婚後の共同で返済する』という住宅獲得モデルは、男性側の圧力を緩和し、『共同の奮闘』は、夫婦の婚姻における協力精神を強化した。このような協力は通常、女性にとっては『経済的収入を獲得しなければならないだけでなく、家庭の中の無償労働を担わなければならない』という二重負担を意味していたのだけれども。しかるに、司法解釈の三は、ある程度、この『共同の奮闘』を女性にとって神話に変えるかもしれない。なぜなら、結婚後に共同で奮闘しても、住宅の分割権を得られないのだから。」(11)

 呂頻さんは、「司法解釈の三が、結婚後の共同の返済部分について、住宅価格の上昇という要素と返済の比率を考慮して『合理的な補償』を与えなければならないと規定している」点についても、「補償が合理的か否かは各人で感じ方が異なっており、そこにはすこぶる危険性がある。『合理的な補償』に対する期待は、もう一方がしっかりと不動産を持っていることには遠く及ばない」(12)と述べています。

 上の点を改善するための提案として、北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、頭金の比率が「不動産の総価格の50%以上」の場合は個人財産にし、「50%以下」ならば夫婦の共同の財産にして、債務も共同で負うべきだとしています。なぜなら、「男性側の頭金の比率は10%か20%の場合さえあり、多くの場合、大部分の家を買う金は結婚後に夫婦が共同の財産で返済するのであって、この時、もし家屋を男性側の個人財産として認定するならば、女性側は離婚したら『着のみ着のままで家を出て』いかなければならないのであり、明らかに公平を失している」(13)からです。

3.婚外の愛人と別れる際の補償をめぐって

 意見募集稿第2条「配偶者がいる者が他の人と同居し、同居を解除するために財産上の補償を約束し、一方がその補償を支払うよう要求するか、または補償した後で気が変わって返還を主張しても、人民法院は支持しない。ただし、合法的婚姻の当事者が夫婦の共同の財産権を侵犯したことを理由に返還を主張するのは、人民法院は受理し、具体的状況にもとづいて処理しなければならない。」

 この条文については、二つの方向から批判が寄せられています。

 まず、北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、「この条文は(……)実質上、非法同居の関係の下での約束を条件付で認可しており、合法の配偶者の合法的利益を明らかに侵害している。なぜなら、このような第三者に与える財産上の補償は、個人財産ではなく、夫婦の共有財産であり、もし他人に贈与しようとするなら、必ず夫婦双方の同意がなければならない。本条文は、夫と妻と『第三者』との矛盾を調和させることは全くできない。もし権利が侵害されたと思ったら、権利侵害の訴えをして解決するべきである」と述べています(14)

 方剛さん(北京林業大学人文学院准教授)と陳亜亜さん(上海社会科学院文学研究所研究員)は、まったく逆の意見です。「婚姻法が事実婚を否定していることは、女性の権利に対する剥奪として、既にずっと以前から非難されている。『愛人』の補償を支持しないのは、婚姻内の『過ち』を『愛人』個人の身に転嫁することである。たとえ婚外の恋愛が過ちであっても、この『過ち』は『愛人』個人だけに負わせるべきではない。これらの条文[ここでは、上の第11条も含めて言っているようです]の修正は、すべて現在の一夫一婦の婚姻制度を維持するためものである。逆に言えば、このような条項を制定しなければならないのは、現在、一夫一婦の婚姻制度が現実のレベルでは危機に陥り、挑戦されているからだ。これらの条項は、『私有財産の保護』と『婚姻の中の女性の保護』という名目によって、婚姻における父権の統治を維持するものである。」(15)

 また、全国婦連権益部と全国婦連女性研究所の研究討論会では、「出席した専門家は、第2条は、司法解釈には適していない、価値の方向づけの問題である(と考えた。……)また、現実の生活では、配偶者がいる者と他の人との同居の情況は複雑多様である。同居相手にも、たしかに過ちがある者もあれば、配偶者がおらず、相手に配偶者がいることを知らなかった者もいる。また、配偶者が補償に使う財産は個人財産かもしれず、夫婦の共有財産かもしれない。裁判所は具体的な状況にもとづいて区別して処理するべきであり、簡単に画一的に処理すべきではないと考えた」ということです(16)

 今回の司法解釈の全体的な性格などについては、まだ私にはわかりませんが、どんな点が議論になっているのかを少し紹介してみました。

(1)在北京举办的“婚姻法司法解释(三)征求意见稿”研讨会上,与会者呼吁——应该听听农村妇女的声音」『中国婦女報』2010年12月3日、「北京众泽妇女法律咨询服务中心《关于适用<中华人民共和国婚姻法>若干问题的解释(三)》(征求意见稿)意见」婦女観察網2010年12月8日。
(2)全国妇联“婚姻法司法解释(三)”专家研讨会召开」中国婦女研究網2010年12月20日。
(3)应关注婚前房产归属中的女性权益」『中国婦女報』2010年11月23日。
(4)沈彬「[时事评论]沈彬专栏:堕胎只是女性的生育权吗?」『南方都市報』2010年11月17日。
(5)呂泉「[批评/回应]女性堕胎权让男性生育权走开」『南方都市報』2010年11月18日。
(6)呂頻「[批评/回应]何必为妇女堕胎权惊呼」『南方都市報』2010年11月19日。
(7)「有人侵害男性生育权吗」『女声』59期(2010.11.15-11.21)[word]。計画出産についてのデリケートな問題に踏み込んだせいか、柯さんの文は、新聞には掲載されませんでした。
(8)加藤美穂子『詳解 中国婚姻・離婚法』(日本加除出版 2002年)155頁。
(9)郭礫「新婚姻法与离婚妇女的财产权——“胡海英离婚案”个案研究」香港中文大学中国研究服务中心午餐演讲会(2003.10.29)。
(10)傅寧「法律的性别为男?」『中国婦女報』2010年12月8日。
(11)呂頻「削弱共同财产制,法律给妇女出难题」『中国婦女報』2010年11月30日、「削弱共同财产制,法律给妇女出难题」『女声』60期(2010.11.22-2010.11.28)(word)。
(12)同上。
(13)北京众泽妇女法律咨询服务中心《关于适用<中华人民共和国婚姻法>若干问题的解释(三)》(征求意见稿)意见」婦女観察網2010年12月8日。
(14)同上。
(15)第三届(2010年)年度十大性与性别事件评点公告」方剛ブログ2010年12月18日。
(16)全国妇联“婚姻法司法解释(三)”专家研讨会召开」中国婦女研究網2010年12月20日。

「近年の中国における離婚女性の諸問題に対する女性たちの動向」

 次の原稿を発表しました。
 不十分なものですが、ご関心のある方はご覧になってみてください。

 遠山日出也「近年の中国における離婚女性の諸問題に対する女性たちの動向」『女性歴史文化研究所紀要』(京都橘大学女性歴史文化研究所)第15号(2007年3月)43-59頁。
  〈構成〉
はじめに
一 単親母親をめぐる女性たちの活動の歴史的展開
 1 1980年代末~90年代前半──一部地区の婦連とNGOが活動を開始
 2 1990年代後半──NGOの単親母親グループ、『中国婦女』の「単親家庭」欄
 3 2000年頃以降──婦連の変化
 4 2003年頃以降──貧困な単親母親への援助、婦連とNGOの共同の単親母親グループ
二 単親母親をめぐる活動の主体──婦連とNGO
 1 調査研究・政策提案におけるジェンダー視点
 2 貧困単親母親(家庭)援助と単親母親の互助・交流グループ
 3 近年の婦連とNGOとの共同の進展について
おわりに

『中国家庭研究』第1巻出版

 上海社会科学院家庭研究中心編『中国家庭研究』第1巻が、2006年12月に出版されました(書虫ウェブサイトの中の、この本のデータ)。

 といっても、この本は、すでに発表された代表的な論文を集めたもので、第1巻は、1980―2000年に発表された、社会学と人口科学領域における、中国の家族を研究した論文を収録しています。ですから、読んだことのある論文もかなりありました。
 『社会学研究』から13本、『中国社会科学』から6本、『北京大学学報』『中国社会学』『清華社会学評論』『中国人口科学』から1本づつ、収録されています。
 女性やジェンダーの問題を直接扱った論文も、張翼「中国人口出生性別比的失衡・原因与対策」、李銀河・陳俊傑「個人本位・家本位与生育観念」、佟新「不平等的性別関係的生産与再生産――対中国家庭暴力的分析」など、いろいろ収められています。

 ところで、「序に代えて」で、鄭杭生氏(中国社会学会会長、中国人民大学教授)は、近年、家族研究の学界における地位が低下していることに強い危機感を表明しています。
 鄭氏は、その原因として、以下のような点を挙げています。
 ・「わが国の経済・社会構造の急激な転換」。「この過程で、客観的に、都市化や労働力の移転、階層のアイデンティティ、社会の公平、人口の高齢化、社会保険・保障などの問題が突出し、主観的にも、以前の家族研究の主力が、自らの主な注意をその他の専門領域に移した。」
 ・「1980年と2001年の2度の『婚姻法』の改正と社会的な大討論が終わり、また基層の単位と社区などの公共領域の、個人の私生活に対する関与がしだいに歴史となり、離婚率の上昇がもう道徳の崩壊や社会の不安定の警戒の指標にならなくなった。」
 ・「国内の家族研究の学科の隔離が、以前からの問題である。家族研究は学科を超えた交流や浸透、融合に欠けており、この点が理論的な革新や、複雑で多元的な社会の難題を有効に解決する障害になっている。」

 けれど、現実にはさまざまな重要な家族問題が起こっているのであるから、家族研究を復興しなければならないと鄭氏は説いています。

 しかし、鄭氏の文の題名は「調和[和諧]社会建設の中で家族研究を重視しよう」となっています。この題名は、最近の政権のスローガンをタテマエ的に借用しただけという面もあるでしょうが、婦連などは、「調和社会の建設→その一部として調和家族の建設」という議論をしがちで、女性個人の権利を副次的なものとして扱う傾向もあります。それだけに、研究までもがそうした傾向には陥ってほしくないとは思いました。

鄒城市で「現代の孟母」を表彰する「中華母親文化節」

 今年4月27日から30日まで、鄒城市で「2007'孟子の故郷・中華母親文化節」がおこなわれます。その準備委員会は、ホームページも設置しています(中華母親文化節HP

 この「母親文化節」を主催するのは、中華民族文化促進会・中華母親節促進会・山東省文化庁・済南市人民政府です。陳慕華が組織委員会の名誉主任で、中華民族文化促進会主席の高占祥が組織委員会の主任です(1)
 「中華母親節促進会」というのは、2006年12月13日に成立大会を開催した団体で(2)、「中華母親節」の活動を促進し、それを全国的なものにすることを目指しています。発起人は李漢秋教授です(3)

 「2007'孟子の故郷・中華母親文化節」の主旨はというと、「孟母に代表される優秀な伝統的な母の教えの文化を発揚し、科学を尊び、徳を以て人を育て、国のために子を教える新しい母親像を打ち立て、母を愛し、母を尊び、母を敬い、母に孝である良好な社会的気風を全社会的に唱導し、社会主義調和社会の建設を促進する」というものだそうです(1)

 「孟母」(孟子の母親)といえば、とくに有名なのは「孟母三遷」です。「孟母三遷」とは、孟子が幼いときに墓地のそばに住んでいたら、孟子が葬式のまねをして遊ぶのを見た母親が、市場のそばに引っ越したら商売のまねをするので、学校のそばに引っ越したというものです。要するに、子供の教育に母親が果たすべき役割を説いたエピソードで、「孟母」は、母親のあるべき姿を示す模範として影響力を持ってきました(4)

 「中華母親文化節」では、具体的には以下のようなことをするそうです(5)
 1.「孟子の故郷で現代の孟母を探す」審査選定活動。
 2.開幕式で「現代の孟母」の表彰や「母親宣言」の読み上げ。「母親頌」の文芸公演。
 3.「母親の恩に感謝し、真心を明るく照らす」大行動。「母親を祝福する」一万人署名、母親に対して愛の心をささげる活動など。

 1の活動がメインなのですが、この「現代の孟母」の審査選定基準は次の5つです(6)
 (1)本人も子どもも、法規を守り、品行方正である。
 (2)母と子の関係が仲むつまじく打ち解けており、母親は子どもを愛護し、子どもは親に孝行である。
 (3)母親自身の品格が中華民族の伝統的美徳を体現していなければならず、子どもの人としての処世に直接積極的な影響を与えている。
 (4)母親の教育方法が科学的で当を得ており、科学的な家庭教育の理念を体現しえていて、直接子どもが才をなすのを促進している。
 (5)子どもが何らかの面で国家と社会が公認した功績があるか、何らかの面で国家と社会に顕著な貢献をした。

 「中華母親文化節」の目的と意義としては、以下のような点が挙げられています(7)
 1.中華民族の優秀な伝統的文化を発揚する。「中華母親文化」は、中華民族の優秀な文化の主要な構成部分になっている。
 2.社会主義の先進的文化を建設する。家庭は社会の細胞であり、家族の調和は社会の調和の基礎であり、「母親文化」は家庭の調和に対して重要な働きをする。

 以上からも見て取れるように、上の行事には、伝統的なものだけでなく、近代的な性別(ジェンダー)分業、ナショナリズム、家庭教育、「調和社会」論‥‥さまざまなものが混じり合っているようです(「孟子の故郷」としての地域振興という面もあるかもしれませんが)。
 婦連は近年、女性の母親役割を強調する傾向があります。婦連は、母親役割を絶賛する王東華さんに賛同して、彼の著書『発現母親』(書虫HPのデータ)を「母教文庫・孟母系列(シリーズ)」として出版し、「新世紀両親読書活動」の推薦図書にしたこともあります(8)
 どんな女性が「現代の孟母」に選ばれるのでしょうか? また、当日の「母親宣言」などの内容にも注目したいと思います。

(1)「2007孟子故里中華母親文化節全面啓動」(中華母親文化節HP)「2007孟子故里中華母親文化節四月挙辨」『中国婦女報』2007年3月10日
(2)「多位学者倡議設立中華母親節」『中国婦女報』2006年12月19日。
(3)「母親節促進会章程」「李漢秋在母親節促進会第一次会議上的講話提綱」「母親節発起人――李漢秋教授簡介」(いずれも中華母親文化節HPより)。
(4)橋本草子「『列女伝』」(関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』人文書院 2005年)が簡潔にまとめています。
(5)「活動安排」(中華母親文化節HP)
(6)「“孟子故里尋探現代孟母”活動候選人徴集啓事」『中国婦女報』2007年3月9日。
(7)「目的意義」(中華母親文化節HP)
(8)杉本雅子「『女は家に帰れ』」関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』(人文書院 2005年)99頁。

「お妾さんの権利ネット」をめぐる議論

 2006年6月、鄭百春さん(北京君祥弁護士事務所・業務主任)が「お妾さん権利擁護ネット(二奶維権網)」を開設しました。

 このことは、本プログ1月13日付記事「2006年の女性をめぐる話題」で既に簡単に述べました。けれど、当時は上のサイトが極めてつながりにくい状態で、ほとんど見ることができませんでした。
 現在は正常に見られますので、今回、簡単に紹介します。

 まず、このサイトの一番上を見ると、「お妾さんも人であり、人権があるべきだ」「お妾さんの合法的権益をまもって、調和のとれた公正な社会を築こう」「法律の前には人間は平等である」「道徳は法律に取って代わることはできない。法律は道徳と同じではない」というフラッシュが飛び込んできます。

 「私たちの声明」には、以下のようにあります。
 「お妾さんの合法的権益を守ることは、男が『お妾さん』を持つことを支持することではなく、娘たちに『お妾さん』になるよう呼びかけることでもない」。けれど「彼女たちは人であり、中国の公民、中国の女性であり、人としての基本的な権利があるべきだ」
 「権利の擁護が必要な『お妾さん』は、大多数は困難な境遇におり、弱者層に属している。私たちは、彼女たちに客観的に対処すべきで、分析もせずに、すべての責任を彼女たちに押し付けるべきではない」

 「なぜお妾さんが弱者層だと言うのか」として、以下の点を挙げています。
 「家庭的には、貧しい家の女児で、社会的地位がなく、父母は権力も金もない」
 「彼女たちは、女性で、年若く、世の中の経験が浅い」
 「彼女たちの権利要求の多くは、精神的に傷つけられた、生理的・身体的に傷を負ったというものである」
 「経済的に非常に困難で、また、しばしば幼い子どもを抱えている」
 「現実においては、少なくなからぬ『お妾さん』である女性が、そのことを社会に責められるのを恐れるために、彼女たちの権益が侵害されたときに、しばしば泣き声をのんで耐え忍び、怒っても何も言わない」
 「道徳的評価が法律的判断を上回っている──すなわち社会の『お妾さん』に対する評価、お妾さん自身の自分の権利意識に対する軽視、司法実務界におけるお妾さんに関係する事件に対して適用する法律の曖昧さ。」

 「なぜ権利の擁護をするか」では、以下のようなことを述べています。
 世間の偏見のため、「すべての汚水をみな『お妾さん』にかける」とか、「『お妾さん』と言えば、踏みつけにせずにはすまない」とか状況がある。
 そのため、「お妾さん」の「人格権」「プライバシー権」「財産権」「人身権」が守られなかったり、「『お妾さん』は、その権利がいかなる侵害にあっても、声をあげられずにがまんするしかない」。
 お妾さんの中には、自分に誤りがあったのではなく、だまされた人もいる(ただし、このサイトは、たとえ誤りや罪があっても、その人の権利は侵害されてはならないという見地も表明しています)。

 「私たちはお妾さんのどのような権利を擁護するのか。どのようなサービスを提供するのか」では、以下の点を述べています。
 1.法律に明確に規定された権利(お妾さんという身分から派生した特有の権利ではない)。
 2.公平・正義・合理にもとづく、非法律的な権利と義務。
 3.心理的輔導。お妾さんは、社会・親戚・友人などからの圧力によって、心理的にも精神的にも障害を持っている。性病・婦人病・鬱病も少なくない。自殺や殺人を考える人もいる。

 鄭百春さんがお妾さんの権利について関心を持ったのは、以下の事件からです。献身的に愛人の介護をしたあるお妾さんが、「自分は金銭目当てではない」ことを示すために、「彼女に家を贈与する」という愛人の遺言を破り捨てました。鄭さんは、彼女がお妾さんでなかったら当然遺産を受け取れたと思いました。
 また、次のようなこともありました。安徽から広州に出稼ぎに行ったある娘が、ある企業主と知り合いました。その企業主は「自分はまだ結婚していない」と嘘をついて、彼女と同棲し、1年後に子どもも生まれました。けれど企業主には妻がいました。彼は、彼女に20万元を渡して、子どもをつれて家に帰るよう言いました。しかし彼女は受け取らず、怒りのあまり、子どもを抱えて飛び降り自殺を試みました。

 鄭百春さんには「二奶維権」というブログもあって、いま扱っている事件などについて書いています。

 この問題は昨年、『中国婦女報』でも取り上げられました。たとえば、(「為“二奶”討説法深陥倫理与法的悖論」(『中国婦女報』2006年10月17日)は、鄭百春さんを取材するとともに、批判的な意見も掲載しています。この記事はまた、「お妾さん」の財産権について2005年に民主同盟が提案を出すなど、すでにいくつもの意見が出ていることも紹介しています。
 また、「該不該為“二奶”維権?」(『中国婦女報』2006年12月23日)は、争点としてて次の4点を挙げるとともに、各争点についてさまざまな論者の意見を掲載しています。
1.「お妾さん」は弱者層か否か
 「彼女たちの二重に助けを求めている」(鄭百春)、「妻の精神的傷害は誰が賠償するのか」(王朱)
2.道徳的な問題があれば、正当な権益を放棄すべきか
 「道徳的な瑕疵は、正当な権利を擁護する障害ではない」(韓雪)、「権利の擁護には、積極的な法律的意義がある」(宋長青)
3.法律が彼女たちを保護できるか否か
 「婚外子の子どもは法律の保護を受ける」(李銀河)、「彼女たちには民事的権利もある」(孫健)、「法律は同棲(同居)関係を保護しない」(陳雲生)
4.「お妾さん」を持ったり、「お妾さん」になったりすることを助長するか
 「良くない社会的心理を暗示しかねない」(夏学◇)、「権利の擁護は婚姻外の恋愛を助長する」(張玉芬)、「『お妾さん』を持つ男を問いただすべきである」(何向東)

 ジェンダーの視点から考察としては、郭慧敏さんが「社会性別視角下的“二奶維権”」(『中国婦女報』2006年10月17日)で、「お妾さん権利擁護ネット」が引き起こした論争について自らの意見を述べています。以下で大ざっぱな内容を紹介します。

 郭さんは、まず「『お妾さん』は複雑な社会的現象だが、一つの社会的集団を構成しうるかどうか、および一つの社会的な女性の特殊な権利擁護問題を構成しうるかどうかは、きちんとした議論が必要ある。そうしなければ、一つの『虚偽の社会問題』を作り出すかもしれず、討論の結果によって意識的・制度的なジェンダー不平等が再構築されかねない」と述べます。

 こうした前置きをしたうえで、郭さんは「現段階における『正妻・妾‥‥』という提起のしかたは、男性中心の婚姻の等級秩序の復活である」と言います。郭さんは、人々は、「お妾さん」に「誤った行為があったかどうか」や「最初から男に妻がいることを知っていたかどうか」に関心を集中させすぎており、「男の誤りや二重の責任を追及することをおろそかにしている」と述べます。
 郭さんは、「婚姻は、一つの制度・一つの秩序としては、男性中心文化の産物である。」「男は婚姻という方式で女を占有するだけでなく、婚姻という方式で女を禁固するのであって、婚姻は、性と財産の秩序であるという面が大きい。」「一夫一婦制は、基本的には女性に対してのものであり、男に対しては正妻・妾・妓という等級・名分を乱さないように要求するだけである」と指摘します。
 郭さんは言います。「もしも法律的な関係を作り上げることによって『お妾さん』の問題を調整すれば、伝統的な男性中心の婚姻等級秩序を強化し、一夫一婦制を否定することになるかもしれない。この点は十分注意すべきである」。つまり「婚姻の中の夫婦は法律的関係であり、婚姻の外の男性といわゆる『お妾さん』との関係は非法律的な関係である。もしこの関係を法律の範囲に組み入れて調整すれば、この関係の正当性を承認するに等しい」というのです。

 郭さんは「人々が常に、合法と非合法の二人の女が一人の男を争奪する戦争に注目していることは、このシステムの中枢にいて、初めに悪例を開いた者である男を見過ごすことになる」、「『良い女』と『悪い女』とが大いに戦って、この戦争を作り出した男は、何事もなく漁夫の利を得る」、「男性にコストを払わせてこそ、婚姻の中の妻の利益と婚姻の外の女性の利益を保証することができる」と述べています。

 郭さんは「かつて男性に婚姻外で養われていた女性の法的な権利は、かつての『お妾さん』という身分の喪失に依拠すべきではなく、人身権と正当な財産権、婚外子の権益に依拠すべきである」、「妻の共同の財産とは区別した男性の個人財産から賠償すべきだ」と言います。

 郭さんは、最後にこうまとめています。「要するに、『お妾さん』という提起のしかたは、社会的にかなりマイナスの効果があり、非法律的な関係を無理に法律の中に組み込んで調整することは、一定の問題がある。婚姻の中であるか外であるかにかかわりなく、女性の人身権も財産権も、必ず具体的な事例にもとづいて区別して対処しなければならない。間違った行為と正当な権益とはいっそう区別して、それぞれ白黒をつけるべきであって、正当な権益は、いわゆる身分によって失われてはならない。この問題を解決する制度的に新しい空間を創り出すには、男性という過ちを犯した者の権利侵害のコストを増加させ、それによって家庭の調和と男女の関係の平等を維持すべきである」。

 郭慧敏さんの議論は、鄭百春さんの議論と重なる部分もありますが、やはりいささか異なった角度からの考察だといえそうです。ただし、婚姻制度そのものに対しては、若干はっきりしない態度のようにも思えますが‥‥。

女子大学生、国際シングルペアレントデーの設立を提唱

 3月26日、河南省鄭州で、ひとり親家庭の子どもである女子大学生・張迎梅さん(24歳)が自転車で駆け回って、ビラをまき、毎年11月1日を「国際シングルペアレントデー」にすることを提唱したそうです。
 「11」は、父母それぞれに家があることを象徴し、「1」は、シングルペアレントの子どもを象徴しているとのことです。

資料:「女大学生倡議設立国際単親節」『中国婦女報』2007年3月29日(写真入り)。

中国初の婦連などによる、妊娠した少女のサポートセンター

 8月30日、江西省南昌市で、同省の婦女連合会(婦連)や省教育庁などが「江西省少女救助センター」を設立しました。
 このセンターでは、望まない妊娠をした16歳以下の少女と、望まない性行為(強姦など)によって妊娠した16歳以上の貧困な少女に対して、無料で妊娠中絶の手術をします。
 このセンターの事務局は南昌仁愛女子病院に置かれ、相談電話も設けています。
 6月から試験的に運行を始めており、2ヶ月の間に相談の電話1200本あまりを受け、望まない妊娠をした少女135人に手術と心理的援助をしたとのことです(1)

 こうしたセンターは国内最初ではなく、すでに2003年2月、重慶の病院(計生医院)に「望まない妊娠 緊急中絶援助センター(意外懐妊緊急避妊援助中心)」が設立されています。続いて、杭州・済南・成都・ハルピンにも同様の機構ができました(2)。昨年には海南省にも出来ています(3)
 ただし、今回の江西省南昌市のセンターは、「婦連が主になって、関係部門と協力して成立した少女救助機構」としては、「わが国最初のもの」(全国婦連宣伝部部長・王衛国)です(4)

 こうしたセンターができる背景には、中国でも、青少年の性の早熟傾向や性教育の立ち遅れなどによって、少女の望まない妊娠や妊娠中絶が増大していると言われていることがあります。

 「無料で手術をすることは、未婚の青少年の性行為を助長するではないか」という声もあります。
 しかし、中国では(でも)、望まない妊娠をした少女をサポートする人がいないために、そうした少女は、家族にも言えずに小さな個人の診療所で中絶するしかないようです。そうしたところは、医療設備や技術などがお粗末であるために、もう妊娠できなくなったりする少女や、生命さえ失ってしまう少女もいます。
 だから、こうしたセンターは絶対に必要だとのことです(5)

 もちろん、「根本的には性教育がないことがが問題」な面もあります。中国では(でも)性教育がきわめて立ち遅れているため、「恋人がセックスの要求を出した時に、『ノー』の言い方がわからない、うまく言えない」「性の侵害にあったとき、どうしたらいいかわからない」(6)ということです。中国でおこなわれている「青春期教育」は、禁欲主義的な色彩が強く、避妊についてもきちんと教えません。
 ですから、こうしたセンターでは、避妊を含めた性教育もしています。
 それに対しても、「避妊を教えるのは性の逸脱を助長する」というような声が、中国でもあるわけですが‥‥(7)

 ただし、実は今までのセンターに対しては、「相談の電話が多いけれども、実際に来る人は少ない」という報道がしばしばなされてきました。
 その理由として言われているのは、「後見人が必要だから(そういうセンターもある)」「少女たちが、学校や親に秘密が漏れることを心配するから」といったことです(8)
 今回出来たセンターに関してはそうした報道はないようですが、今後どうなるのか注目したいと思います。

(1)「江西成立全国第一家由婦聯牽頭成立的少女救助機構」新華網江西頻道
(2)「正視“少女意外懐妊”」『中国婦女報』2003年2月26日、「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。
(3)「海南成立少女妊娠救助中心」『中国婦女報』2005年6月7日。
(4)(1)に同じ。
(5)呂霜「救助懐妊少女是“人道”,是進歩」『中国婦女報』2006年9月5日など。
(6)「不能光靠医生収拾残局  国内首家“少女意外妊娠援助中心”主任曾慶亮認為,要从根本上解決性教育“缺席”問題」『中国婦女報』2004年4月21日。
(7)「北京:免費救助懐妊少女引発争議」『中国婦女報』2003年12月10日。
(8)「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。「熱線電話打進3000人多 前来救助僅50人 哈尓濱懐妊少女救助通道遭遇◇尬」『中国婦女報』2003年12月15日。「内蒙古首家少女意外懐妊救助中心遭冷遇 監護人陪同難倒求助者」『中国婦女報』2006年1月4日など。

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