2008-08

「近年の中国における離婚女性の諸問題に対する女性たちの動向」

 次の原稿を発表しました。
 不十分なものですが、ご関心のある方はご覧になってみてください。

 遠山日出也「近年の中国における離婚女性の諸問題に対する女性たちの動向」『女性歴史文化研究所紀要』(京都橘大学女性歴史文化研究所)第15号(2007年3月)43-59頁。
  〈構成〉
はじめに
一 単親母親をめぐる女性たちの活動の歴史的展開
 1 1980年代末〜90年代前半──一部地区の婦連とNGOが活動を開始
 2 1990年代後半──NGOの単親母親グループ、『中国婦女』の「単親家庭」欄
 3 2000年頃以降──婦連の変化
 4 2003年頃以降──貧困な単親母親への援助、婦連とNGOの共同の単親母親グループ
二 単親母親をめぐる活動の主体──婦連とNGO
 1 調査研究・政策提案におけるジェンダー視点
 2 貧困単親母親(家庭)援助と単親母親の互助・交流グループ
 3 近年の婦連とNGOとの共同の進展について
おわりに

『中国家庭研究』第1巻出版

 上海社会科学院家庭研究中心編『中国家庭研究』第1巻が、2006年12月に出版されました(書虫ウェブサイトの中の、この本のデータ)。

 といっても、この本は、すでに発表された代表的な論文を集めたもので、第1巻は、1980―2000年に発表された、社会学と人口科学領域における、中国の家族を研究した論文を収録しています。ですから、読んだことのある論文もかなりありました。
 『社会学研究』から13本、『中国社会科学』から6本、『北京大学学報』『中国社会学』『清華社会学評論』『中国人口科学』から1本づつ、収録されています。
 女性やジェンダーの問題を直接扱った論文も、張翼「中国人口出生性別比的失衡・原因与対策」、李銀河・陳俊傑「個人本位・家本位与生育観念」、佟新「不平等的性別関係的生産与再生産――対中国家庭暴力的分析」など、いろいろ収められています。

 ところで、「序に代えて」で、鄭杭生氏(中国社会学会会長、中国人民大学教授)は、近年、家族研究の学界における地位が低下していることに強い危機感を表明しています。
 鄭氏は、その原因として、以下のような点を挙げています。
 ・「わが国の経済・社会構造の急激な転換」。「この過程で、客観的に、都市化や労働力の移転、階層のアイデンティティ、社会の公平、人口の高齢化、社会保険・保障などの問題が突出し、主観的にも、以前の家族研究の主力が、自らの主な注意をその他の専門領域に移した。」
 ・「1980年と2001年の2度の『婚姻法』の改正と社会的な大討論が終わり、また基層の単位と社区などの公共領域の、個人の私生活に対する関与がしだいに歴史となり、離婚率の上昇がもう道徳の崩壊や社会の不安定の警戒の指標にならなくなった。」
 ・「国内の家族研究の学科の隔離が、以前からの問題である。家族研究は学科を超えた交流や浸透、融合に欠けており、この点が理論的な革新や、複雑で多元的な社会の難題を有効に解決する障害になっている。」

 けれど、現実にはさまざまな重要な家族問題が起こっているのであるから、家族研究を復興しなければならないと鄭氏は説いています。

 しかし、鄭氏の文の題名は「調和[和諧]社会建設の中で家族研究を重視しよう」となっています。この題名は、最近の政権のスローガンをタテマエ的に借用しただけという面もあるでしょうが、婦連などは、「調和社会の建設→その一部として調和家族の建設」という議論をしがちで、女性個人の権利を副次的なものとして扱う傾向もあります。それだけに、研究までもがそうした傾向には陥ってほしくないとは思いました。

鄒城市で「現代の孟母」を表彰する「中華母親文化節」

 今年4月27日から30日まで、鄒城市で「2007'孟子の故郷・中華母親文化節」がおこなわれます。その準備委員会は、ホームページも設置しています(中華母親文化節HP

 この「母親文化節」を主催するのは、中華民族文化促進会・中華母親節促進会・山東省文化庁・済南市人民政府です。陳慕華が組織委員会の名誉主任で、中華民族文化促進会主席の高占祥が組織委員会の主任です(1)
 「中華母親節促進会」というのは、2006年12月13日に成立大会を開催した団体で(2)、「中華母親節」の活動を促進し、それを全国的なものにすることを目指しています。発起人は李漢秋教授です(3)

 「2007'孟子の故郷・中華母親文化節」の主旨はというと、「孟母に代表される優秀な伝統的な母の教えの文化を発揚し、科学を尊び、徳を以て人を育て、国のために子を教える新しい母親像を打ち立て、母を愛し、母を尊び、母を敬い、母に孝である良好な社会的気風を全社会的に唱導し、社会主義調和社会の建設を促進する」というものだそうです(1)

 「孟母」(孟子の母親)といえば、とくに有名なのは「孟母三遷」です。「孟母三遷」とは、孟子が幼いときに墓地のそばに住んでいたら、孟子が葬式のまねをして遊ぶのを見た母親が、市場のそばに引っ越したら商売のまねをするので、学校のそばに引っ越したというものです。要するに、子供の教育に母親が果たすべき役割を説いたエピソードで、「孟母」は、母親のあるべき姿を示す模範として影響力を持ってきました(4)

 「中華母親文化節」では、具体的には以下のようなことをするそうです(5)
 1.「孟子の故郷で現代の孟母を探す」審査選定活動。
 2.開幕式で「現代の孟母」の表彰や「母親宣言」の読み上げ。「母親頌」の文芸公演。
 3.「母親の恩に感謝し、真心を明るく照らす」大行動。「母親を祝福する」一万人署名、母親に対して愛の心をささげる活動など。

 1の活動がメインなのですが、この「現代の孟母」の審査選定基準は次の5つです(6)
 (1)本人も子どもも、法規を守り、品行方正である。
 (2)母と子の関係が仲むつまじく打ち解けており、母親は子どもを愛護し、子どもは親に孝行である。
 (3)母親自身の品格が中華民族の伝統的美徳を体現していなければならず、子どもの人としての処世に直接積極的な影響を与えている。
 (4)母親の教育方法が科学的で当を得ており、科学的な家庭教育の理念を体現しえていて、直接子どもが才をなすのを促進している。
 (5)子どもが何らかの面で国家と社会が公認した功績があるか、何らかの面で国家と社会に顕著な貢献をした。

 「中華母親文化節」の目的と意義としては、以下のような点が挙げられています(7)
 1.中華民族の優秀な伝統的文化を発揚する。「中華母親文化」は、中華民族の優秀な文化の主要な構成部分になっている。
 2.社会主義の先進的文化を建設する。家庭は社会の細胞であり、家族の調和は社会の調和の基礎であり、「母親文化」は家庭の調和に対して重要な働きをする。

 以上からも見て取れるように、上の行事には、伝統的なものだけでなく、近代的な性別(ジェンダー)分業、ナショナリズム、家庭教育、「調和社会」論‥‥さまざまなものが混じり合っているようです(「孟子の故郷」としての地域振興という面もあるかもしれませんが)。
 婦連は近年、女性の母親役割を強調する傾向があります。婦連は、母親役割を絶賛する王東華さんに賛同して、彼の著書『発現母親』(書虫HPのデータ)を「母教文庫・孟母系列(シリーズ)」として出版し、「新世紀両親読書活動」の推薦図書にしたこともあります(8)
 どんな女性が「現代の孟母」に選ばれるのでしょうか? また、当日の「母親宣言」などの内容にも注目したいと思います。

(1)「2007孟子故里中華母親文化節全面啓動」(中華母親文化節HP)「2007孟子故里中華母親文化節四月挙辨」『中国婦女報』2007年3月10日
(2)「多位学者倡議設立中華母親節」『中国婦女報』2006年12月19日。
(3)「母親節促進会章程」「李漢秋在母親節促進会第一次会議上的講話提綱」「母親節発起人――李漢秋教授簡介」(いずれも中華母親文化節HPより)。
(4)橋本草子「『列女伝』」(関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』人文書院 2005年)が簡潔にまとめています。
(5)「活動安排」(中華母親文化節HP)
(6)「“孟子故里尋探現代孟母”活動候選人徴集啓事」『中国婦女報』2007年3月9日。
(7)「目的意義」(中華母親文化節HP)
(8)杉本雅子「『女は家に帰れ』」関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』(人文書院 2005年)99頁。

「お妾さんの権利ネット」をめぐる議論

 2006年6月、鄭百春さん(北京君祥弁護士事務所・業務主任)が「お妾さん権利擁護ネット(二奶維権網)」を開設しました。

 このことは、本プログ1月13日付記事「2006年の女性をめぐる話題」で既に簡単に述べました。けれど、当時は上のサイトが極めてつながりにくい状態で、ほとんど見ることができませんでした。
 現在は正常に見られますので、今回、簡単に紹介します。

 まず、このサイトの一番上を見ると、「お妾さんも人であり、人権があるべきだ」「お妾さんの合法的権益をまもって、調和のとれた公正な社会を築こう」「法律の前には人間は平等である」「道徳は法律に取って代わることはできない。法律は道徳と同じではない」というフラッシュが飛び込んできます。

 「私たちの声明」には、以下のようにあります。
 「お妾さんの合法的権益を守ることは、男が『お妾さん』を持つことを支持することではなく、娘たちに『お妾さん』になるよう呼びかけることでもない」。けれど「彼女たちは人であり、中国の公民、中国の女性であり、人としての基本的な権利があるべきだ」
 「権利の擁護が必要な『お妾さん』は、大多数は困難な境遇におり、弱者層に属している。私たちは、彼女たちに客観的に対処すべきで、分析もせずに、すべての責任を彼女たちに押し付けるべきではない」

 「なぜお妾さんが弱者層だと言うのか」として、以下の点を挙げています。
 「家庭的には、貧しい家の女児で、社会的地位がなく、父母は権力も金もない」
 「彼女たちは、女性で、年若く、世の中の経験が浅い」
 「彼女たちの権利要求の多くは、精神的に傷つけられた、生理的・身体的に傷を負ったというものである」
 「経済的に非常に困難で、また、しばしば幼い子どもを抱えている」
 「現実においては、少なくなからぬ『お妾さん』である女性が、そのことを社会に責められるのを恐れるために、彼女たちの権益が侵害されたときに、しばしば泣き声をのんで耐え忍び、怒っても何も言わない」
 「道徳的評価が法律的判断を上回っている──すなわち社会の『お妾さん』に対する評価、お妾さん自身の自分の権利意識に対する軽視、司法実務界におけるお妾さんに関係する事件に対して適用する法律の曖昧さ。」

 「なぜ権利の擁護をするか」では、以下のようなことを述べています。
 世間の偏見のため、「すべての汚水をみな『お妾さん』にかける」とか、「『お妾さん』と言えば、踏みつけにせずにはすまない」とか状況がある。
 そのため、「お妾さん」の「人格権」「プライバシー権」「財産権」「人身権」が守られなかったり、「『お妾さん』は、その権利がいかなる侵害にあっても、声をあげられずにがまんするしかない」。
 お妾さんの中には、自分に誤りがあったのではなく、だまされた人もいる(ただし、このサイトは、たとえ誤りや罪があっても、その人の権利は侵害されてはならないという見地も表明しています)。

 「私たちはお妾さんのどのような権利を擁護するのか。どのようなサービスを提供するのか」では、以下の点を述べています。
 1.法律に明確に規定された権利(お妾さんという身分から派生した特有の権利ではない)。
 2.公平・正義・合理にもとづく、非法律的な権利と義務。
 3.心理的輔導。お妾さんは、社会・親戚・友人などからの圧力によって、心理的にも精神的にも障害を持っている。性病・婦人病・鬱病も少なくない。自殺や殺人を考える人もいる。

 鄭百春さんがお妾さんの権利について関心を持ったのは、以下の事件からです。献身的に愛人の介護をしたあるお妾さんが、「自分は金銭目当てではない」ことを示すために、「彼女に家を贈与する」という愛人の遺言を破り捨てました。鄭さんは、彼女がお妾さんでなかったら当然遺産を受け取れたと思いました。
 また、次のようなこともありました。安徽から広州に出稼ぎに行ったある娘が、ある企業主と知り合いました。その企業主は「自分はまだ結婚していない」と嘘をついて、彼女と同棲し、1年後に子どもも生まれました。けれど企業主には妻がいました。彼は、彼女に20万元を渡して、子どもをつれて家に帰るよう言いました。しかし彼女は受け取らず、怒りのあまり、子どもを抱えて飛び降り自殺を試みました。

 鄭百春さんには「二奶維権」というブログもあって、いま扱っている事件などについて書いています。

 この問題は昨年、『中国婦女報』でも取り上げられました。たとえば、(「為“二奶”討説法深陥倫理与法的悖論」(『中国婦女報』2006年10月17日)は、鄭百春さんを取材するとともに、批判的な意見も掲載しています。この記事はまた、「お妾さん」の財産権について2005年に民主同盟が提案を出すなど、すでにいくつもの意見が出ていることも紹介しています。
 また、「該不該為“二奶”維権?」(『中国婦女報』2006年12月23日)は、争点としてて次の4点を挙げるとともに、各争点についてさまざまな論者の意見を掲載しています。
1.「お妾さん」は弱者層か否か
 「彼女たちの二重に助けを求めている」(鄭百春)、「妻の精神的傷害は誰が賠償するのか」(王朱)
2.道徳的な問題があれば、正当な権益を放棄すべきか
 「道徳的な瑕疵は、正当な権利を擁護する障害ではない」(韓雪)、「権利の擁護には、積極的な法律的意義がある」(宋長青)
3.法律が彼女たちを保護できるか否か
 「婚外子の子どもは法律の保護を受ける」(李銀河)、「彼女たちには民事的権利もある」(孫健)、「法律は同棲(同居)関係を保護しない」(陳雲生)
4.「お妾さん」を持ったり、「お妾さん」になったりすることを助長するか
 「良くない社会的心理を暗示しかねない」(夏学◇)、「権利の擁護は婚姻外の恋愛を助長する」(張玉芬)、「『お妾さん』を持つ男を問いただすべきである」(何向東)

 ジェンダーの視点から考察としては、郭慧敏さんが「社会性別視角下的“二奶維権”」(『中国婦女報』2006年10月17日)で、「お妾さん権利擁護ネット」が引き起こした論争について自らの意見を述べています。以下で大ざっぱな内容を紹介します。

 郭さんは、まず「『お妾さん』は複雑な社会的現象だが、一つの社会的集団を構成しうるかどうか、および一つの社会的な女性の特殊な権利擁護問題を構成しうるかどうかは、きちんとした議論が必要ある。そうしなければ、一つの『虚偽の社会問題』を作り出すかもしれず、討論の結果によって意識的・制度的なジェンダー不平等が再構築されかねない」と述べます。

 こうした前置きをしたうえで、郭さんは「現段階における『正妻・妾‥‥』という提起のしかたは、男性中心の婚姻の等級秩序の復活である」と言います。郭さんは、人々は、「お妾さん」に「誤った行為があったかどうか」や「最初から男に妻がいることを知っていたかどうか」に関心を集中させすぎており、「男の誤りや二重の責任を追及することをおろそかにしている」と述べます。
 郭さんは、「婚姻は、一つの制度・一つの秩序としては、男性中心文化の産物である。」「男は婚姻という方式で女を占有するだけでなく、婚姻という方式で女を禁固するのであって、婚姻は、性と財産の秩序であるという面が大きい。」「一夫一婦制は、基本的には女性に対してのものであり、男に対しては正妻・妾・妓という等級・名分を乱さないように要求するだけである」と指摘します。
 郭さんは言います。「もしも法律的な関係を作り上げることによって『お妾さん』の問題を調整すれば、伝統的な男性中心の婚姻等級秩序を強化し、一夫一婦制を否定することになるかもしれない。この点は十分注意すべきである」。つまり「婚姻の中の夫婦は法律的関係であり、婚姻の外の男性といわゆる『お妾さん』との関係は非法律的な関係である。もしこの関係を法律の範囲に組み入れて調整すれば、この関係の正当性を承認するに等しい」というのです。

 郭さんは「人々が常に、合法と非合法の二人の女が一人の男を争奪する戦争に注目していることは、このシステムの中枢にいて、初めに悪例を開いた者である男を見過ごすことになる」、「『良い女』と『悪い女』とが大いに戦って、この戦争を作り出した男は、何事もなく漁夫の利を得る」、「男性にコストを払わせてこそ、婚姻の中の妻の利益と婚姻の外の女性の利益を保証することができる」と述べています。

 郭さんは「かつて男性に婚姻外で養われていた女性の法的な権利は、かつての『お妾さん』という身分の喪失に依拠すべきではなく、人身権と正当な財産権、婚外子の権益に依拠すべきである」、「妻の共同の財産とは区別した男性の個人財産から賠償すべきだ」と言います。

 郭さんは、最後にこうまとめています。「要するに、『お妾さん』という提起のしかたは、社会的にかなりマイナスの効果があり、非法律的な関係を無理に法律の中に組み込んで調整することは、一定の問題がある。婚姻の中であるか外であるかにかかわりなく、女性の人身権も財産権も、必ず具体的な事例にもとづいて区別して対処しなければならない。間違った行為と正当な権益とはいっそう区別して、それぞれ白黒をつけるべきであって、正当な権益は、いわゆる身分によって失われてはならない。この問題を解決する制度的に新しい空間を創り出すには、男性という過ちを犯した者の権利侵害のコストを増加させ、それによって家庭の調和と男女の関係の平等を維持すべきである」。

 郭慧敏さんの議論は、鄭百春さんの議論と重なる部分もありますが、やはりいささか異なった角度からの考察だといえそうです。ただし、婚姻制度そのものに対しては、若干はっきりしない態度のようにも思えますが‥‥。

女子大学生、国際シングルペアレントデーの設立を提唱

 3月26日、河南省鄭州で、ひとり親家庭の子どもである女子大学生・張迎梅さん(24歳)が自転車で駆け回って、ビラをまき、毎年11月1日を「国際シングルペアレントデー」にすることを提唱したそうです。
 「11」は、父母それぞれに家があることを象徴し、「1」は、シングルペアレントの子どもを象徴しているとのことです。

資料:「女大学生倡議設立国際単親節」『中国婦女報』2007年3月29日(写真入り)。

中国初の婦連などによる、妊娠した少女のサポートセンター

 8月30日、江西省南昌市で、同省の婦女連合会(婦連)や省教育庁などが「江西省少女救助センター」を設立しました。
 このセンターでは、望まない妊娠をした16歳以下の少女と、望まない性行為(強姦など)によって妊娠した16歳以上の貧困な少女に対して、無料で妊娠中絶の手術をします。
 このセンターの事務局は南昌仁愛女子病院に置かれ、相談電話も設けています。
 6月から試験的に運行を始めており、2ヶ月の間に相談の電話1200本あまりを受け、望まない妊娠をした少女135人に手術と心理的援助をしたとのことです(1)

 こうしたセンターは国内最初ではなく、すでに2003年2月、重慶の病院(計生医院)に「望まない妊娠 緊急中絶援助センター(意外懐妊緊急避妊援助中心)」が設立されています。続いて、杭州・済南・成都・ハルピンにも同様の機構ができました(2)。昨年には海南省にも出来ています(3)
 ただし、今回の江西省南昌市のセンターは、「婦連が主になって、関係部門と協力して成立した少女救助機構」としては、「わが国最初のもの」(全国婦連宣伝部部長・王衛国)です(4)

 こうしたセンターができる背景には、中国でも、青少年の性の早熟傾向や性教育の立ち遅れなどによって、少女の望まない妊娠や妊娠中絶が増大していると言われていることがあります。

 「無料で手術をすることは、未婚の青少年の性行為を助長するではないか」という声もあります。
 しかし、中国では(でも)、望まない妊娠をした少女をサポートする人がいないために、そうした少女は、家族にも言えずに小さな個人の診療所で中絶するしかないようです。そうしたところは、医療設備や技術などがお粗末であるために、もう妊娠できなくなったりする少女や、生命さえ失ってしまう少女もいます。
 だから、こうしたセンターは絶対に必要だとのことです(5)

 もちろん、「根本的には性教育がないことがが問題」な面もあります。中国では(でも)性教育がきわめて立ち遅れているため、「恋人がセックスの要求を出した時に、『ノー』の言い方がわからない、うまく言えない」「性の侵害にあったとき、どうしたらいいかわからない」(6)ということです。中国でおこなわれている「青春期教育」は、禁欲主義的な色彩が強く、避妊についてもきちんと教えません。
 ですから、こうしたセンターでは、避妊を含めた性教育もしています。
 それに対しても、「避妊を教えるのは性の逸脱を助長する」というような声が、中国でもあるわけですが‥‥(7)

 ただし、実は今までのセンターに対しては、「相談の電話が多いけれども、実際に来る人は少ない」という報道がしばしばなされてきました。
 その理由として言われているのは、「後見人が必要だから(そういうセンターもある)」「少女たちが、学校や親に秘密が漏れることを心配するから」といったことです(8)
 今回出来たセンターに関してはそうした報道はないようですが、今後どうなるのか注目したいと思います。

(1)「江西成立全国第一家由婦聯牽頭成立的少女救助機構」新華網江西頻道
(2)「正視“少女意外懐妊”」『中国婦女報』2003年2月26日、「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。
(3)「海南成立少女妊娠救助中心」『中国婦女報』2005年6月7日。
(4)(1)に同じ。
(5)呂霜「救助懐妊少女是“人道”,是進歩」『中国婦女報』2006年9月5日など。
(6)「不能光靠医生収拾残局  国内首家“少女意外妊娠援助中心”主任曾慶亮認為,要从根本上解決性教育“缺席”問題」『中国婦女報』2004年4月21日。
(7)「北京:免費救助懐妊少女引発争議」『中国婦女報』2003年12月10日。
(8)「懐妊少女『緑色通道』面臨◇尬境地」『中国婦女報』2003年11月12日。「熱線電話打進3000人多 前来救助僅50人 哈尓濱懐妊少女救助通道遭遇◇尬」『中国婦女報』2003年12月15日。「内蒙古首家少女意外懐妊救助中心遭冷遇 監護人陪同難倒求助者」『中国婦女報』2006年1月4日など。

«  | HOME |  »

プロフィール

Author:遠山日出也
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントとトラックバックは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私のHPである中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ