2017-04

『中国女性史研究』第26号刊行

中国女性史研究会の会誌『中国女性史研究』第26号が刊行されました。

内容は以下のとおりです。

【論文】
権力と皇后(金子修一)
アメリカ人女性宣教師ローラ・ホワイトの女性役割観――1910年代の匯文女子学校と『女鐸』における活動から(張語涵)

【末次玲子さん追悼記念特集】
略年譜
業績一覧
末次玲子さんを偲んで(米田佐代子・前山加奈子・早川紀代・後藤延子・Susan Mann・江沛・游鑑明・杜芳琴ほか)

【秋山洋子さん追悼】
略年譜
著作目録
秋山洋子さんを悼む(田畑佐和子)

【書評】
楠原俊代著『韋君宜研究』(田畑佐和子)

【交流】
「第4回中国近現代社会文化史国際学術シンポジウム」報告(江上幸子)

【年表】
現代中国女性史年表11(2015.9~2016.8)(遠山日出也)

例会報告
中国女性史研究会第21回総会
中国女性史研究会規約
会員業績一覧
『中国女性史研究』執筆要項
入退会者
編集後記


1冊1000円です(送料別)。

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『中国女性史研究』第25号刊行

中国女性史研究会の会誌『中国女性史研究』第25号が刊行されました。

内容は以下のとおりです。

【論文】
中国のネット文化とクィア――「屌絲」と「腐女」における「抵抗」表象の分析を通して (陳晨)
「満洲国」における中国人女子学生の婦女問題観――奉天省立女子師範学校の校友会誌を手がかりに(譚娟)

【研究ノート】
『丁母回憶録』を読む (田畑佐和子)
清末中国の性科学書――『男女交合新論』とその受容 (楊力)

【書評】
スーザン・マン著、小浜正子、リンダ・グローブ監訳、秋山洋子、板橋暁子、大橋史恵訳『性からよむ中国史――男女隔離・纏足・同性愛』 (大島立子)
早川紀代・秋山洋子・伊集院葉子・井上和枝・金子幸子・宋連玉編『歴史をひらく 女性史・ジェンダー史からみる東アジア世界』須藤瑞代)

【交流と紹介】
中国女性演劇の今――第3回中国越劇芸術フェスティバル報告 (中山文)
二つの丁玲学術シンポジウム (江上幸子)

【論文紹介】
Signs 中国女性学特集号~2015年合宿報告 (天神裕子)

【年表】
現代中国女性史年表追補10(2013.9~2015.8) (遠山日出也)

例会報告
中国女性史研究会第20回総会
中国女性史研究会規約
会員業績一覧
入退会者・編集後記

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北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター)、当局の圧力により閉鎖

<目次>
はじめに
一 センターの歴史
二 センターのさまざまな活動――訴訟、情報公開申請、調査研究、シンポジウム、職員・従業員の研修
三 海外でも報道――ヒラリー・クリントンも批判
四 センターの閉鎖をめぐるセンターへ攻撃
五 センター活動上の数々の苦労――低収入で、貧しい女性のために/さまざまな妨害や困難、無理解ともたたかって/海外からの資金援助について
おわりに

はじめに

2016年1月29日の午後、女性のための民間の法律援助機構である「北京衆沢女性法律相談サービスセンター(北京众泽妇女法律咨询服务中心)」のウェブサイトに、「北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター)は2016年2月1日から休業する。みなさんの長年の関心と支持に感謝する」という同日付けの通知が掲載された(1)。この「休業」の件については、同日の午前中から情報が流れており、これは「『関係部門』の要求による」ものだという(2)

NGOの「広州ニューメディア女性ネットワーク」が、同センターの代表の郭建梅弁護士に問い合わせたところ、郭弁護士は、「センターは取材を受けることはできないが、現在、今、緊急に会議を開いて、今後どうするかを相談しているところだ。衆沢は何度も『話をされた』(=当局に圧力をかけられたという意)」と述べた(3)。Radio Free Asiaの取材に対しては、郭弁護士は、「しばらくは取材を受けるのは都合が悪い。なぜなら、事情が複雑で、現在は国内の情勢もたしかにあまり良くないので、めんどうなことになるのが怖いからだ。しばらくしたら、取材を受けることを考慮したい」と述べた(4)

一 センターの歴史

1995年、第4回世界女性会議が北京で開催されたとき、郭建梅弁護士は『中国律師(中国の弁護士)』という雑誌社で仕事をしていた。郭弁護士は、この世界女性会議で多くのNGOと接触して感化され、3カ月後には、雑誌社という安定した職場を去って、北京大学の2人の教員と共に、「北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター[北京大学法学院妇女法律研究与服务中心]」というNGOを設立した。このセンターは、民間の法律援助組織として、貧しくて弱い立場の女性たちのために、無料で相談に応じ、弁護士を引き受けた。

このセンターには「北京大学」という名前が付いていたが、これは、「北京大学が金を出し、メンバーも大学職員としての身分を保障されている」という意味ではない。中国では、法定のNGOである「社会団体」になるためには、日常の業務の管理監督をおこなう「業務主管単位」が必要なので、北京大学に付属している形をとっていたという意味にすぎない。

北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、2004年から、活動の重点を、個別の法律援助だけでなく、公益訴訟(個人の利害だけではなく、社会全体、とくに弱者層全体とって意義のある訴訟)にも置くようになり、訴訟をつうじて女性の権利と法律・制度の変革を促進することに力を入れるようになった(5)

センターは、司法部(日本の法務省に当たる)と法制日報社が主催した2006年度の「十大法制ニュース人物」にも選出された(6)。センターの活動は、当時は政府機関にも評価されていたということであろう。

センターは、2007年1月、「女性権益公益弁護士ネットワーク」を設立した(本ブログの記事「女性権益公益弁護士ネットワークの挑戦」参照。)。このネットワークは、2009年に「公益弁護士ネットワーク(公益律师网络)」と改称するが、弱者の権利を守る訴訟に携わる弁護士の連係や研修、理論研究をめざすものだった。2009年12月まで『月報』も出していた。

2009年9月には、公益弁護士のための弁護士事務所「千千弁護士事務所」を設立した。

2009年には、鄧玉嬌事件という、娯楽施設勤務の女性が強姦されそうになったため抵抗し、加害者を死に至らしめた事件が起きた(本ブログの記事「鄧玉嬌事件をめぐって」参照)。センターは、現地で調査をしたり、警察や裁判所に働きかけたり、声明を発表したりして鄧さんのために力を尽くした。こうしたセンターの活動を含めた、さまざまな運動や世論が実って、判決は、「鄧の正当防衛だ」という弁護側の主張こそ認めなかったが、鄧さんに対する処罰は免除した(「鄧玉嬌事件の判決をめぐって」参照)。

しかし、センターがこうした活動をしたことによって、2009年6、7月に、センターは、北京大学から「今後は、センターは、研究活動はしてもよいが、具体的な事件の訴訟に参与してはならない」と言われた。

そして、2010年3月、北京大学は、法学院女性法律研究・サービスセンターを、大学の所属から外すという公告を出した。センターの主任の郭建梅弁護士によると、北京大学がそうしたのは、教育部(日本で言う文科省)が直接北京大学に通知を出したから」であり、その理由は「センターは国外の資金を受け取って、公益弁護士ネットワークを作っていて、政治的な危険が比較的高い」からだったという(以上は、本ブログの記事「北京大学、女性法律研究・サービスセンターを切り捨て──人権NGOに対する政府の締めつけの一環か?」参照)。

その後一週間もしないうちに、中国法律援助基金会は、郭さんらに対する資金援助をストップし、6月には、公益弁護士ネットワークも停止させられた(7)

郭さんらは、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターを継承する団体として、「北京衆沢女性法律相談サービスセンター」を設立し、「北京千千法律事務所」とともに登記をおこなった。ただし、この登記は、社会団体としての登記ではなく、商工[中国語では工商]登記である。

「衆沢」とは、多くの人に法律の恩恵を及ぼすという意味である。「千千」のほうは、事務所のビルに「千」という字があったから、そう名付けたのだが、郭さんは、「千家万戸[多くの家々]、千千万万[幾千幾万]、千方百計[あらゆる方法]、大千世界[広大無辺な世界]とも理解できる」と冗談で言ったという(8)

二 センターのさまざまな活動――訴訟、情報公開申請、調査研究、シンポジウム、職員・従業員の研修

北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターと北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、1995年~2011年の間に、全国各地から8万件近い相談を受け、3千あまりの事件について無料で弁護士をつとめた。また、その間に、センターのメンバーは合計百本近い論文を執筆した。また、政府の各部門などに法律的意見書や立法建議、報告を70件余り提出した。さまざまな書籍も出版した(9)

以下、個別具体的な活動について、本ブログで取り上げてきたニュースを中心に見てみよう。

職場のセクシュアル・ハラスメント

北京衆沢女性法律相談サービスセンター副主任の呂孝権弁護士が2013年に述べたところでは、2007年以来、全国12省から寄せられた190件のセクハラと性暴力の訴えのうち、50件の事件でセンターの弁護士が代理人になったが、そのうち18件が職場でのセクハラ事件だった(10)

中国でもセクハラ裁判にはさまざまな困難がある。たとえば、2006年には、重慶市の小学校の女性教師が校長をセクハラで訴えた裁判で、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターの弁護士が代理を務めた。その女性教師は猥褻メールをその証拠として提出した。しかし、裁判所は、女性教師から校長へのメールに「厳しい言葉での拒絶がない」として、訴えを退けた(本ブログの記事「本年の動向3―セクハラ裁判の困難」参照)。

2010年に山木教育グループ総裁・宋山木が女性従業員を強姦する事件が起きた。この事件では、北京衆沢女性法律相談サービスセンター主任の李瑩弁護士が、付帯民事訴訟(*)の原告である被害者の羅雲さん(仮名)の弁護士を務めた。判決は、宋を懲役4年に処すとともに、羅さんに4200元あまりを支払うことを命じた。北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターはシンポジウムを開催して、この事件の判決の不十分点や性暴力の論じられ方・法律のあり方、山木教育グループの企業文化(女性の身体の管理、従業員の奴隷化など)やその背景について検討した(本ブログの記事「山木教育グループ総裁・宋山木の強姦事件をめぐる議論」参照)。

(*)「中華人民共和国刑事訴訟法」第53条に「被害者が被告人の犯罪行為によって物質的損失を被ったときは、刑事訴訟の過程において、付帯民事訴訟を提起する権利を有する」とある。

また、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、企業内のセクハラ防止システムを構築する努力もおこなった。センターは、2007年に国際シンポジウムを開催して、企業が職場のセクハラを防止するための規則の建議稿を発表し、その後、実際にいくつかの企業でセクハラ防止システムを構築したり、研修をしたりした(本ブログの記事「北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターによる企業内のセクハラ防止制度構築の取り組み」参照)。

ドメスティック・バイオレンス

2009年、北京の董珊珊さんが夫に殴り殺される事件が起きた。翌年、董さんの母親が民事訴訟も起こしたが、そのときの代理人が北京衆沢女性法律相談サービスセンターの李瑩弁護士と張偉偉弁護士だった。この事件では、裁判所は夫を懲役6年6カ月に処すとともに、家族に対して81万元余りの支払いを命じた。ただし、夫に対して適用した罪名は「虐待罪」という比較的軽い罪であり、李瑩弁護士らは、「故意傷害」罪の適用を求めた。この事件については、センターを含めたさまざまな団体や人々が、警察や医療機関のDVに対する関与を問い直し、保護命令の必要性も明らかにした(11)

2010年には、長い間夫に暴力をふるわれ続けていた李彦さんが、夫を誤って死なせてしまった事件が起きた(本ブログの記事「DV被害者の夫殺しに対する死刑に反対する中国国内の運動」参照)。このときは、北京衆沢女性法律相談サービスセンターの徐維華弁護士が李彦さんの代理人をつとめた。この事件では、一審でも二審でも李彦さんに死刑判決が下され、死刑について最高人民法院が承認のための審査をするという段階になってから、李彦さんの家族は、他に手段が見つからなくて、北京衆沢女性法律相談サービスセンターに助けを求めた。センターは、ただちに弁護士を四川に派遣して事件の状況を調べ、重要な証拠を集め、他の多くの団体とも協力して、死刑をストップさせることに成功した(12)

地下鉄の痴漢

2012年、地下鉄の痴漢の問題が、「フェミニスト行動派」の運動によってクローズアップされた。このとき、北京衆沢女性法律相談サービスセンターの呂孝権弁護士は、北京地下鉄公司に対して、地下鉄の痴漢対策について情報公開申請をしたり、痴漢防止策について建議を送ったりした(13) (本ブログの記事「各地の弁護士・市民が地下鉄会社に対して痴漢防止策の建議・署名運動」)。

定年の男女差別

中国では、定年が、男性は60歳であるのに対して、女性は、労働者の場合は50歳、幹部の場合は55歳だという差別がある。2006年、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、この規定は、憲法で定められている男女平等に違反しているとして、全国人民代表大会常務委員会に違憲審査を請求した(本ブログの記事「本年の動向1―『定年の男女差別は違憲』と訴え」)。

センターは、女性の定年問題の訴訟にも、2007年~2009年の3年間だけで、21件携わった。それらは、主に、以前「労働者」身分だった女性が、専門技術者になっても、「あなたは『労働者』だから」という理由で、しばしば50歳で定年にされることを訴えた裁判だった。すなわち、「性別の差別と身分の差別」という「二重の差別」(センター副主任・李瑩)を問題にするものだった (本ブログの記事「元「労働者」身分の女性専門技術者の50歳定年――性別と身分の二重の差別」)。

職場での女性の権利についての調査研究

北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、自らの活動のために(または活動にもとづいて)、調査研究もおこなった書物を何冊も出版してきた。

たとえば、職場の女性労働者の権利については、2006年に、『中国女性労働権益保護の理論と実践──法律援助と公益訴訟の視角から』(北京人民公安大学出版社 2006年)を出版して、自らの実践や研究について報告をした(本ブログの記事「女性労働者の権益保護の理論と実践の書」参照)。また、2010年には、センターの調査をもとにして、『中国職場性差別調査』(李瑩主編・張帥副主編、中国社会科学出版社)を出版した (本ブログの記事「『中国職場性差別調査』出版」参照)。

農村女性の権利

2007年から、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、農村出身の家事労働者の権利を守るために、家事労働者保護条例を提案したり、家事労働者に対して法律を教える研修をしたりしてきた(本ブログの記事「北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター、家政婦の労働保護条例を提案」)。

また、中国の農村では、「出嫁女」という、結婚後も、「婿入り」などの理由で戸籍を生まれた村に置いている女性たちの土地や住宅などの権利が、しばしば村によって侵害されている。

内モンゴル自治区のフフホト市賽罕区西把柵郷沙梁村の「出嫁女」たちは、よその土地の男と結婚したが、戸籍は同村にあり、夫婦一緒に同村に住み続けた。けれども、村は、彼女たちには土地や住宅を分配しなかった。そこで、2006年、28人の出嫁女が村民委員会を相手取って裁判を起こし、勝訴した。村民委員会は判決に従おうとしなかったが、最後は強制執行によって住宅を勝ち取った。この裁判で原告の代理人をつとめたのも、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターの弁護士だった(本ブログの記事「農村女性の土地請負経営権をめぐる裁判 」参照)。

センターは、2013年までに、128件、こうした農村女性の土地紛争事件で、原告の代理をつとめた。しかし、そのうちの93件(72.6%)は、裁判所が訴えを受理しなかった(14)。次の事件では、そうした困難な状況にぶち当たった。

広東省恵州市の38人の出嫁女は、結婚後も村が分配した土地を耕し、村に税金を納めて生活してしたにもかかわらず、村は、彼女たちの土地を回収し、村が上げた収益(土地が徴用された際の補償金など)も彼女たちには分配しなくなった。2006年、彼女たちは、この問題を市の政府や婦女連合会(婦連)、省の婦連などに訴えたが、問題は解決せず、最後に全国婦連と北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターに訴えた。

センターの2人の弁護士は、『中国婦女報』の記者といっしょに恵州市に行って、法律的に問題を解決しようとしたが、現地の裁判所はこの事件を受理せず、「広東省ではこのような事件はどの裁判所も受理しないことになっている」と言った。センターの2人の弁護士は、そのような規定は違法だが、訴訟で解決するのは困難だと考えて、村が属している行政事務所に働きかけた。しかし、明確な回答は得られなかった。郭建梅主任は、その区の共産党の書記に電話して働きかけた結果、区の政府が、区と行政事務所と村の3者の会議を開いて、「出嫁女」にも平等な権利を保障しようとしたが、村民委員会は拒否した。「出嫁女」たちは、再びセンターに電話で訴えたので、センターは恵州市の市長と市の共産党委員会書記に法律上の問題と責任を記した書簡を出したところ、その半月後に、村が、土地が徴用された際の補償金を出嫁女にも分配し、2007年、問題は解決した(15)

このように、センターは裁判だけに頼るのではなく、当事者の利益のために、さまざまな手を尽くしてきた。「出嫁女」たちは、内モンゴル自治区のフフホト市の事件では、合計9千万元あまりの土地補償金を勝ち取り、広東省恵州市の事件では、一人数十万元の土地補償金を勝ち取っている(16)

李彦さんのケースや、広東省恵州市の出嫁女のケースは、他のさまざまな方法では解決せず、当事者は最後にセンターに訴えきている。この点からもセンターの役割がわかるだろう。

大学入試の男女差別

2012年には、一部の大学の一部専攻が入試で男女別の定員を定めて、男女の合格ラインを差別していることが問題になり、教育部に坊主頭になって抗議したフェミニスト行動派のパフォーマンスアートも話題になった。

北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、教育部が「国家の利益を考慮して、一部の特殊な職種あるいはポストに対する特殊な専門の人材の養成は、少数の学校の一部の専攻は適当に男女の学生募集の比率を調整することができる」と述べたことに対して、その「国家の利益」や「少数の学校の一部の専攻」、「一部の特殊な職種あるいはポスト」の具体的内容は何かについて情報公開を申請した。それに対して、教育部は、具体的な専攻を挙げつつも、それらの専攻では定員を男女別にすることを容認する回答をしたので、センターは、それを批判する法律的意見書を教育部に提出した(17) (「教育部、大学入試の男女差別について、外国語専攻などの専攻名を挙げつつ正当化――女性団体はすぐ反論」)。

女性差別撤廃条約

2007年、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターは、中国女性裁判官協会と河北省婦連と雲南省婦連の協力を得て、「政策制定者と法律執行者に対する『女性差別撤廃条約』および『婦女権益保障法』研修」プロジェクトをおこなった。これは中国が女性差別撤廃条約を批准し、婦女権益保障法を制定したにもかかわらず、立法や行政、司法においてそれらがきちんと踏まえられていないことに対処するためのプロジェクトだった(「女性差別撤廃条約と婦女権益保障法の研修プロジェクト」)。

以上は、主に私がこのブログで取り上げた問題についてのセンターの活動を記したにすぎない。しかし、これだけでも、さまざまな困難な状況があるなかで、センターがさまざまな問題について、さまざまな手段で取り組んできたことが理解できよう。他では問題が解決せずセンターに訴えてきた事例も多い。行動派のパフォーマンスアートが話題になった事件でも、センターが法律面から活動していることもわかる。

三 海外でも報道――ヒラリー・クリントンも批判

『ニューヨークタイムズ』も、衆沢の閉鎖を、中国当局の民間団体に対する弾圧として報じた(18)

上のニューヨークタイムズの報道を引用して、1月31日、いまアメリカ大統領選の民主党の指名候補争いをしているヒラリー・クリントン氏が、彼女のtwitterで、1995年の北京女性会議での彼女のスピーチ「女性の権利は人権である」という言葉も引き合いに出して、「このセンターは存続するべきだ――私は、郭を支持する」と述べた(19)

クリントン氏は、彼女がファーストレディだった1998年の6月29日、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターを訪問して、郭建梅さんと会見し、同センターについて「ground-breaking(草分けの、開拓者的な)」の活動をしていると賞賛したこともある(20)

また、郭建梅さんは、アメリカ国務省の2011年度の「国際勇気ある女性賞(International Women of Courage Awards)」を受賞している(21)。これは、「中国で法律へのアクセスから排除されている人々のための活動をするために、快適な世界を去った」ことなどが評価されての結果だが、ワシントンで彼女に賞を渡したのは、大統領夫人のミシェル・オバマ氏と当時国務長官だったヒラリー・クリントン氏だった。

今回の事件について、国外の政治家で発言した人物は、クリントン氏くらいしか見当たらないが、クリントン氏のツイートの背景には、女性としての人権問題への関心ということもあろうが、同時に、中国との駆け引きとか、対中姿勢の有権者へのアピールといった、政治的思惑もあるかもしれない。また、アメリカ政府の「人権外交」には、人権についての二重基準があることはたしかだ。

しかし、郭さんは、アメリカの賞だけでなく、2010年には、フランスのジュリア・クリステヴァなどが創設した「女性の自由のためのシモーヌ・ド・ボーヴォワール賞」も受賞している(22)

また、今回の事件については、他の国や地域のメディアも報じている。たとえば、フランスラジオ国際放送局(23)、ドイチェ・ヴェレというドイツの国際放送(24)、日本の共同通信(25)、聯合網(26)など台湾の各メディア、『サウス・チャイナ・モーニングポスト(南華早報)』(27)など香港の各メディアもこの事件を報じている。

『サウス・チャイナ・モーニングポスト』は、下の事件も、衆沢の閉鎖と同様の性格を持っていると見なしたのか、同じ記事で報じている。

1月25日、人権活動家らに法的支援などを提供するアメリカのNGO「チャイニーズ・アージェント・アクション・ワーキング・グループ(チャイナ・アクション)」の活動が「国家の安全に危害を与えている」という理由で、そのメンバーのピーター・ダーリン氏(スウェーデン国籍)が中国から追放された。中国当局は、チャイナ・アクションが外国からこっそり多額の資金を受け取り、中国に関する虚偽の情報が外国機関へ流れるよう仕向けていたと主張した(28)

四 センターの閉鎖をめぐるセンターへ攻撃

中国の『環球時報』は、「欧米のメディアが衆沢の閉鎖事件を大げさに宣伝するのは、野次馬的である」(単仁平)という論説を発表した。この論説は、センターの閉鎖の原因については明確なことを述べていないが、「通常、国外の資金が中国の公共社会の領域に入ることは複雑な影響を生じる。それらは、社会の建設のプラスになるかもしれないし、それらの資金の政治的傾向によって使用が選択されれば、社会に敵対的な緊張を高めるかもしれない」と述べており(29)、センターの閉鎖が国外資金の問題と関係していることを示唆しているように思われる。

実際、微博では、「解散させられたのは、彼女たちがアメリカ人の金でアメリカ人のために仕事をしたからだ。資本主義の走狗が人権擁護の看板を掲げたら、同情が得られるのか?」と言う人もいた(30)。こうした攻撃も、上のようなマスメディアの議論と無関係ではないだろう。

こうした「衆沢はアメリカ帝国主義の走狗だ」という攻撃や「衆沢は国外の反動勢力がわが国を転覆するためのものだ」という攻撃のほか、「衆沢は北京にあるのに、農村の女性のこともやっているのは、公益の旗印を掲げたスパイ機構だからだ」という攻撃なども一部のネットで出たようだ(31)

五 センター活動上の数々の苦労

上のような攻撃について、センターの元職員(@「花香-弥漫」さん)は、衆沢には「半年いただけで、離職して数年になる私でさえ、くやしくて涙をこらえきれない」と述べて、衆沢について理解してもらうために一文を書いた(32)。また、2011年に、「公益弁護士・郭建梅の苦難」という記事が『鳳凰週刊』という雑誌に掲載されたことがある(33)。この2つの記事から、センターの弁護士や職員の苦労をご紹介してみよう。見出しは私が付けた。

【低収入で、貧しい女性のために】

センターは、助けが必要な女性のために、完全に無料でサービスをしていた。弁護士費用も、出張費も取らなかった。センターの弁護士には、北京大学を卒業している人も2人いて、英語が達者で、外国での会議に不自由なく出席できる人も何人もいた。「もし彼らが商業弁護士になったら、年収はかるく十倍、あるいは百倍になるだろう人たちだった」という。李彦さんの事件を引き受けたとき、ある人が憶の値をつけた商業事件を頼んできたが、郭さんはいつもどおり断った。郭さんは、「李彦の事件は、もし自分が引き受けなければ、引き受ける人を見つけるのは難しい。大金が儲かるような事件は、自分がやらなくても、引き受ける人は簡単に見つかる」と述べた。

2009年の南方週末の報道によると、センターには、3人の事務職員を含めて、12人いた。郭建梅さんがセンターの主任だったが、彼女でも月給は6000元、他の弁護士は3500元、事務職員は2000元あまりだった。他には、祝日に2~300元、年末に500元が出るだけだった。郭さんでさえ、北京の人の平均的月収と大差ないと思われるし、弁護士の月収としては非常に低いと言えるだろう。

郭さんに、「商業弁護士をやりながら、その金を使って公益弁護士をすることはできないのか?」と尋ねる人もいた。しかし、それは郭さんにはできなかった。宋山木の事件のとき、宋が強姦したことは検察や警察が認めた証拠から見ても間違いなかったのに、宋の弁護士が、被害者が売春したのだと主張した。郭さんは、その発言に対して法廷で厳重に抗議し、ノートに「永遠に商業弁護士にはならない!」と書いた。郭さんは、「公益弁護士の感情の方向や理念、仕事の方法、事件を扱うテクニックは、商業弁護士とは全く異なり、道が違っている。どうやったら線路に自動車を走らすことができるのか?」と言う。

【さまざまな妨害や困難、無理解ともたたかって】

弱い立場の人や農村の人のための法律援助の仕事は、業界を守ろうとする勢力、地方保護主義、司法の腐敗、警察などの資質の低下、土地のごろつきやブラックな勢力の激しい妨害にあった。

ある省の女性から、夫から長年暴力をふるわれ、離婚後も暴力が続いているため、左目が失明し、鼻の骨も折れ、腰も麻痺しているのに、元の夫の勢力が強大で、現地ではまったく訴えが受理されないという訴えが来た。郭弁護士は、その元の夫の資料を調べてみて怒り心頭に発した。その夫は著名な弁護士だったのだ。このような事例からも、彼女の仕事が、社会の底辺の人々の立場に立って、強権と闘う性格を持っていたことがわかる。

危険な目にもあった。農村女性の土地権を擁護するために、郭さんは、2回も現地の政府に手錠をかけられそうになったことがあり、殴られそうになったこともある。郭さんと副主任の李瑩弁護士が河南の登封に行ったときは、村の男たちが集団で彼女たちが泊っていたホテルに押し掛けて、「家には家のおきてがあり、村には村の規則がある。北京から来た弁護士がなんだ」と大声で怒鳴り、身の危険を感じ、すんでのところでパトカーが到着した、ということもあった。

こうしたさまざまな障害にぶつかったうえ、周囲の人の無理解にも直面した。「なんでそんな事件をやるのか?」という疑問や誤解、ひどい場合には、「精神病だ」「誇大でセンセーショナルな宣伝だ」「有名になろうとしている」といったレッテル貼りもされた。

【海外からの資金援助について】

センターの事務所は簡素なものだったが、家賃はかかる。地方に主張するためには、交通費もかかる。シンポジウムを開ければ、場所代もかかれば、専門家を招く費用もかかる。職員の賃金やウェブサイトの費用などもかかる。翻訳は、多くの方がボランティアでやってくれたが、重要な文書は、専門の翻訳者に頼まなければならない。

しかし、国内の基金からは、長期的な資金援助はなかった。

だからこそ、衆沢は、国連やEC、大使館、国外の財団などのプロジェクトの資金をできるだけ多く申請してきたのだ。そして、衆沢の場合は、コストが低いのに、成果が大きかったからこそ、申請に成功したのである。また、国外の資金援助の資金に対する管理監督は厳格で、一つ一つの出費に対して、非常に詳細な報告が求められる。衆沢に対する悪口に憤っている@「花香-弥漫」さんは、出張のときに何を食べて、その価格はどうだったかも書かなければいけないし、膨大で詳細な中国料理などの名称を翻訳するのに苦労したと述べている。そして、このような地道な作業があったからこそ、援助が継続されたのだと言い、「陰謀論者」に対して、「自分で申請できるものなら、申請してみるようにお願いしたい。衆沢の中の人は、裁判や調査研究、講座、その他のNGOの仕事で多忙を極めていて、スパイをする暇はまったくない」、「衆沢が金のために売国をして走狗になったとか、公益のという羊頭を掲げて××を売っているとかいう者がいるが、私は、これが公益でないのかと言いたい」と述べている。

【「衆沢が休業して、私はがっかりすると同時にほっとしている」】

@「花香-弥漫」さんは、また、「いま衆沢が休業して、私はがっかりすると同時にほっとしている」と言う。「ほっとしているというのは、彼女たちがやっと休息できるからだ。大ボス(郭弁護士)は、とても善良な人で、公益をすることによって、うつ病になり、長年何度もそれを繰り返して、2013年[に私が衆沢にいたときは]、まださまざまな治療をしていたが、現在もよくなっているのか、はっきりしない」と述べている。

おわりに

いまアメリカにいる滕彪弁護士は、「郭建梅の衆沢女性法律センターのようなものは、実際は多くの人は半ば官制の色彩を持っていると考えている。一部の人権団体や人権活動家ほど急進的ではなく、多くの、人権においてデリケートな領域である法輪功とか、強制立ち退きとか、新彊・チベット問題のようなものには関わってこなかった。女性の権利は中国では最もデリケートな領域というわけではないのに、このような機構さえ容認できないのは、中共が社会全体に対する統制を明確に強めていることを示している」(34)と述べている。

滕彪弁護士の指摘は、正しい。ただ、だからといって、衆沢の活動自体が、もっと「デリケート」な領域の活動より価値が低いとか、苦労が少なかったとかいうのでないことは、これまで述べてきたことから明らかだろう。体制が直ちには弾圧しないような領域で、力の限り活動してきたことの意義は巨大である。

代表の郭建梅弁護士は、衆沢の閉鎖直後に、「衆沢は『休業』するが、北京千千弁護士事務所は存在し続ける」と述べた(35)。実際、現在も千千弁護士事務所の微博は今も発信を続けており、今年2月16日に出した新年のあいさつでは、「衆沢は休業したが、千千はまだある。どのようになっても、私たちの公益に関心を持ち支持する心と行動はいつまでも変わらない!」(36)というメッセージを出している。

(1)歇业通知」北京众泽妇女法律咨询服务中心2016年1月29日 15:57
(2)中国第一家妇女法律援助NGO遭强迫解散?」2016年1月29日 NGOCN原创 GiveNGOA5、「中国女权NGO“众泽妇女法律咨询服务中心”遭当局强迫宣告解散」维权网2016年1月29日。
(3)反家暴法通过了,但做反家暴法律援助的机构被关了」新媒体女性的微博20161年1月29日 21:20
(4)中国女权NGO“众泽妇女法律咨询服务中心”遭当局强迫宣告解散」自由亚洲电台(RFA)2016年1月29日。
(5)以上は、「反家暴法通过了,但做反家暴法律援助的机构被关了」新媒体女性的微博20161年1月29日 21:20
(6)2006年度法制新闻人物十大法制新闻评选揭晓」法制网。
(7)郭建梅的磨难|丈夫刘震云:她顶多是学德兰修女,不是曼德拉」民间 2016年2月3 日(原題名およびソースは、「公益律师郭建梅的“磨难”」『凤凰周刊』2011年14期[2011年5月15日])。
(8)同上。
(9)中心主要成就」北京市千千律师事务所サイト(2016年2月24日確認)。
(10)职场性骚扰:法律如何帮弱者说“不”」『检察日报』2013年7月13日。
(11)董珊珊,不能瞑目的冤魂」法制与新闻 2010年8月9日。
(12)前东家今日歇业,生命暂停在20岁,我是来安利的」花香-弥漫的微博2016年2月1日 03:03
(13)呂孝権弁護士の北京市地下鉄への建議は、「关于在北京轨道交通运营中建立性骚扰防治机制的建议」(北京众泽妇女法律中心的博客2012年9月13日)、その回答は、「北京市地铁公司关于北京轨道交通性骚扰防治信息公开申请的答复」(北京众泽妇女法律中心的博客2012年9月13日)。
(14)频损“农嫁女”土地权 村规民约成法外之地?」『检察日报』2013年12月23日。
(15)以上は、「广东省惠州市38位出嫁女土地征用补偿纠纷案」北京众泽妇女法律咨询服务中心2010年7月19日。
(16)郭建梅「心怀希望 为公益前行」北京众泽妇女法律咨询服务中心2014年12月19日(出所:中华女性网)。
(17)北京衆沢女性法律相談サービスセンター(NGO)の教育部への情報公開申請は「北京众泽妇女法律咨询服务中心申请教育部公开有关男女分性别招生的信息」(北京众泽妇女法律中心的博客2012年8月27日)、教育部からの回答は「2012年10月16日」(北京众泽妇女法律中心的博客2012年10月16日)、教育部に対する意見書は「众泽妇女法律咨询中心致教育部意见书」(网易女人2012年9月2日)。
(18) DIDI KIRSTEN TATLOW“China Is Said to Force Closing of Women’s Legal Aid CenterThe New York Times JAN. 29, 2016(中国語訳:狄雨霏「北京著名妇女法律援助中心被迫关闭」纽约时报中文网2016年2月1日)。
(19)Hillary Clinton“True in Beijing in 1995, true today: Women's rights are human rights. This center should remain—I stand with Guo. http://hrc.io/1JQCWy3 -H ” 7:56 - 2016年1月31日、Emily Rauhala“On eve of Iowa, Hillary Clinton chides China on women’s rights. Here’s why.Washington PostFebruary 1→「希拉里•克林顿抨击中国当局关闭妇女法律援助组织」自由亚洲电台(RFA)2016年2月1日、「希拉里•克林顿批评中国关闭“众泽妇女法律中心”」美国之音2016年2月1日。
(20)CLINTON IN CHINA: WOMEN; First Lady Visits Center For Women And the LawThe New York TimesJune 29, 1998
(21)2011 International Women of Courage Award Winners」U.S. Department of State
(22)同じ年に艾暁明さんも受賞しており、それは、日本の日刊ベリタの記事にもなっている(「四川大地震を描いたドキュメンタリー映画『私たちの子供』 ボーヴォワール賞受賞の艾暁明さんに制作の意図を聞く」日刊ベリタ2010年5月17日)。
(23)古莉「北京一妇女法律援助中心被关闭」Radio France Internationale (RFI) 2016年2月2日。
(24)长平「长平观察:妇女自己的法律中心」德国之声2016年2月2日。
(25)中国の著名NGO活動停止 当局の締め付けか」共同通信2016年1月30日。共同通信の記事は、もちろん他のメディアも掲載している(「中国の著名NGO活動停止 当局の締め付けか」『日本経済新聞』2016年1月30日、「中国の著名NGO活動停止 当局の締め付けか」『東京新聞』2016年1月30日)。
(26)陸女權組織 『眾澤中心』忽歇業」聯合報2016年2月1日。
(27)北京众泽服务中心今起歇业 专营妇女法援维权」《南华早报》中文网2016年2月1日。
(28)中国で拘束のスウェーデン人男性、テレビで『謝罪』」CNN 2016年1月20日。
(29)单仁平「西媒炒作众泽关闭事件是为看热闹」环球时报2016年2月2日。この論説は、衆沢については、「閉鎖の過程から見ると、今までのところ比較的温和で、衆沢も対抗する態度をとっていない」と述べつつ、「法律援助の領域では、以前ごく少数の過激な人権弁護士が法律と対立するようになり、悪い影響を与えたことも言わなければならない」と言う。また、この論説は、「管理機構も、法律文化領域のNGOも、デリケートなことについては抑制と理性を保持するべきである。前者は胸襟を開き続けて、一般的な規則違反や管理における摩擦をデリケートな方向に連想するべきではない」と言いつつ、「後者は管理措置の強化に正しく対処して、関連する変化を政治上の問題として大げさに扱って『政治的弾圧』と見なすべきではない」と言う。すなわち、全体として、衆沢に対して大人しくしているように威圧しつつ、衆沢の閉鎖について穏当なものであるかのように述べて、欧米の世論は「野次馬見物をして、調子に乗って火に油を注いでいる」と言って欧米のメディアを非難している。反論として、查建国「众泽关闭,国人有知情权(与环球时报争鸣之291)」(博讯新闻网2016年2月7日)がある。
(30)我是你认识的王小能的微博2016年1月30日 11:51
(31)前东家今日歇业,生命暂停在20岁,我是来安利的」花香-弥漫的微博2016年2月1日 03:03
(32)同上。
(33)郭建梅的磨难|丈夫刘震云:她顶多是学德兰修女,不是曼德拉」民间 2016年2月3 日(原題名およびソースは、「公益律师郭建梅的“磨难”」『凤凰周刊』2011年14期[2011年5月15日])。
(34)神州之大 连"众泽"都容不下」自由亚洲电台(RFA)2016年2月5日。
(35)反家暴法通过了,但做反家暴法律援助的机构被关了」新媒体女性的微博20161年1月29日 19:21:20
(36)众泽妇女法律中心――千千律师所的微博2016年2月16日 09:38

林鯨らの「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」と黄葉らの「直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」(北京~広州)

目次
はじめに
一 林鯨さんらの7日間の「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」
二 黄葉さん、「直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」(北京~広州)に出発
おわりに

はじめに

国際女性デー前日(3月7日)にバスの中でセクハラ反対の活動を計画していたことを理由に3月6日~7日に刑事拘留されたフェミニスト活動家の李婷婷 [李麦子]さん、王曼さん、韋婷婷さん、武嶸嶸さん、鄭楚然さんの5人が4月13日に釈放されてから半年以上がたった。

5人はあくまで保釈扱いで、依然として容疑者の身分のままであり、他のフェミニストの活動も大きな制約を受けている。しかし、しだいにさまざまな活動がおこなわれるようになってきたので、それらについて何度かに分けてご紹介させていただく。

さて、2013年9月~2014年3月、フェミニスト活動家の肖美麗さんは、女性が性暴力の被害にあうことなく、行動の自由を保障されるべきことを訴えるために、女性には危険と思われがちな長期の徒歩旅行をおこなった。肖さんは2013年9月15日北京を出発し、途上で各地の政府などに性暴力防止のための提案などを提出したり、「強姦犯を閉じ込めろ、私を閉じ込めるな」というパフォーマンスアートもおこなったりした(本ブログの記事「学校教師による性暴力と行動派フェミニスト――『強姦犯を閉じ込めろ、私を閉じ込めるな』」の「7.肖美麗さんがフェミニズムウォーク(北京~広州)に出発――性侵害反対と女性の自由を主張」参照)。肖さんは、173日後の2014年3月5日、広州に到着した。

肖さんは、144日かけて2343kmを歩き、29日間は各地の都市にとどまって活動した。肖さんは、署名集めを55回おこなって2300筆以上の署名を集めて、各地の政府や公安局・教育局に対して、性暴力防止のための提案(「学校での性暴力を防止し二次被害を防ぐメカニズムを構築することに関する建議」)と情報公開申請(学校での性暴力防止の措置についての情報公開)をそれぞれ165回通郵送した。それらに対して50回ほど公式の回答ももらった(その内容の多くは不十分なものだったが)。講座も19回おこなった。肖さんと途中でいっしょに歩いた人も52人いた(1)。すべての費用は、募金でまかなった(2)

今年、肖さんの友人が同じような活動をおこなった。

一 林鯨さんらの7日間の「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」

まず、5人の釈放からまだ1カ月たたない5月3日、25歳の海南の女子学生の林鯨さんと2人の仲間が、「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー小分隊」を結成して、海南島を自転車で回って性暴力反対を訴える活動に出発した。彼女たちは、海南島の北端の海口から、南端の三亜まで、ほぼ内陸部を通るコースを、一週間で行く計画を立てた。

林鯨さんは、自転車に性暴力反対の旗とスローガンを挿して、署名を集めて回り、それを海南島教育庁に渡して、政府が性暴力防止活動をするよう督促する計画を立てた。

林鯨さんは、友だちの肖美麗さんの影響で、フェミニズムの活動に関心を持つようになった女性だ。海南島は林鯨さんの故郷だが、林鯨さんは海南島の他の場所のことはよく知らなかった。また、海南島は、本ブログの記事「海南万寧の女子小学生の性侵害事件と女性運動」でもご紹介したように、2013年に小学校の校長らによる、女子小学生に対する性暴力事件が問題になったところなので、性暴力反対をテーマにしたという。

林鯨さんは、「性暴力を防ぐための言論の多くは、女子学生に多くのことをやらないよう要求している。たとえば、ショートスカートを履くなとか、遠くに出かけるなとか。(……)そうした観念があるために、みんなが被害をあった人に性暴力の原因を求めるのだ。『Don’t get raped』という考え方を『Don’t rape』に転換しなければならない。これが、私がこの自転車ツアーをした初志だ。女子学生には自由が必要だ。何を着ても、どこに行っても、性暴力に遭わない自由が必要だ。こうしたことは私たちが本来持っていなければならない自由だ」と述べている(3)

以上の趣旨は、肖美麗さんのフェミニズムウォークと同じだ。林鯨さんは、自分たちの活動を、肖美麗さんがフェミニズムウォークをしたときに作成した微博のアカウント「美丽的女权徒步(@美丽的女权徒步)」にそのつど掲載した(5月2日 19:23~)。

彼女たちは、各地で署名を集めたり(4)、「性暴力に反対する、女子学生に自由が必要だ!(反対性侵害,女生要自由!)」という大きな旗を広げたりして、微博でもそれらの写真を発信した(5)

彼女たちは、中学校(日本で言う、中学校+高等学校)の校門前でも、学生や保護者から署名を集めた。ある中学校の校門前では、中学生が多数すすんで署名をしてくれた。あるおばさんは、「これは良いことだから、支持しなければならない」と言って周りの何人かの保護者から署名を集めるのを手伝ってくれた(6)

しかし、4日目、林鯨さんと他の2人の仲間との間で激しい議論が起きた。他の2人は、もともとは海南島一周ツアーだけをするつもりで計画を立てたのに、林鯨さんが出発前日に急に、性暴力反対の活動を提案して、そうした活動をすることになったので、なにか騙されたような気がしたのだ。2人は活動をすることによってみんなの注目を浴びたくなかったし、「性」に関することは話しにくいというのだ。けれども、話し合った結果、もし林鯨さんがやりたいのなら、2人も協力してくれることになり、林鯨さんが写真を撮るのを助けたり、車を停めて待っていたりすることになった(7)

林鯨さんは、予定通り7日目の5月9日、三亜に到着し、海岸で旗を広げた写真を撮影した(8)

ただし、集めた署名を海南島教育庁に渡した(郵送した)とは、微博には書かれていない。そこまではできなかったのかもしれないし、やったけれども微博では発表しなかっただけかもしれない。

このツアーは、ごく小規模で控え目な活動で、あまり宣伝もされなかったが、5人の釈放以後に開始された活動としては最も初期のものに属するのではないかと思う。

二 黄葉さん、「直男癌(*)に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」(北京~広州)に出発

(*)「直男癌」の「直」は、「ストレート(異性愛者)」の意味で、「直男癌」とは、「女性を自らの審美眼・価値観で評論するなど、異性愛者の男に見られる男性中心主義という不治の病理」といった意味の、2014年6月以降使われ始めた言葉(9)。攻撃的な言葉だが、呂頻さんは、この言葉の出現について、男性が女性を汚い下品な言葉で罵っていたことに対して、女性たちが強いられた「女らしさ」を打ち破って、男性中心主義者を強烈に批判する武器としての意義を述べている(10)

11月10日、黄葉さんという女性が、以下のような文を発表した(カギ括弧に入れた個所以外は、要約である)。

私はなぜ中国をウォークしなければならないのか?――あるうつ病の女性の自述

(1)私がうつ病になったとき

私がうつ病になったことを周りの人たちはできるだけ隠そうとした。その理由は、女の子がうつ病であることを知られたら、その価値が低くなって、彼氏ができなくなるからだ。私も、公の場では、自分がうつ病であることを隠そうとした。

私はフェミニストであり、また自分でそのことを誇りに思っていた。しかし、うつ病になって自分の中に矛盾が生じ、分裂した。私は、自分を、この社会の「良い女」に対する要求に完全に適応させることに執着するようになった。

すると、私は拒食症になってしまった。その理由は、自分は「良い女」はなれないから、この世界にはふさわしくなく、食物を取る資格がないことだった。

私は反抗した。私は、自分が不可能なことを求めて自分を責めていることを冷静に見つめた。また、家族が、私が精神病の女だということを受け入れないことを意識するようになった。

(2)ジェンダーとうつ病

私には、社会はうつ病の患者に生産力がないために、病人であるという汚名を着せていることはわかっている。

「しかし、男性と女性、性的マイノリティは、うつ病において抑圧を受ける程度がそれぞれ異なる」。男性の場合は、家に精神障害者または不健康な息子がいれば、「別の地方から正常な女房を息子に買ってきて面倒をみさせた」という話をニュースや田舎の風習で聞く。けれど、もし女が精神障害者だったら、「夫を助け、子供を教育することができないことを意味するから、女としての価値はなく、彼女の末路は、監禁され、放っておかれることである」。もし性的マイノリティだったら、「矯正治療」を受けさせられて、いっそうひどいうつ病になり、しばしば自殺する。

「多くの研究結果は、女性は男性よりうつ病になりやすく、うつ病になる女性の人数は、男性の2倍である(11)。(……)女性に対してフレンドリーでない社会環境の中では、女性は、性暴力、DVなどによってきわめて緊張した特殊な状況に置かれやすいので、うつ病になりやすい。また、性的マイノリティはさらにうつ病になりやすく、北京LGBTセンターの調査によると、性的マイノリティはうつ病のサンプルは全国の普通の人の3倍であり、その多くは社会的差別によって引き起こされたものである」。

「ジェンダー問題はうつ病の中で非常に軽視されている。一方で、ジェンダーのメカニズムによる抑圧が多くのうつ病を発生させており、もう一方では、ジェンダー問題が主流のうつ病治療法の中では重視されていない。」

私自身、ジェンダー意識のない多くの心理の医者に会ったことがある。その大多数は、同性愛は「矯正」して治療できると考えていたし、患者を分析・診断する際には、生まれた家庭での幼児期の陰影によってすべての問題を解釈していた。

(3)「直男癌」に反抗することは、自らを救うこと

「美麗のフェミニズムウォークは、女子学生が一人で遠方に出かけることによって、『女子学生が一人で出かけることは危険だ』という女性を保護するかのような差別的議論に対抗して、女子学生が性暴力の被害にあわないように保護することは、彼女たちに外に行かせないことではなく、社会が性暴力を防止するメカニズムをつくならければならず、女子学生が一人で出かけたから、彼女が被害にあったのだと考えてはならないということ自らの行動によって訴えた。」

「美麗のフェミニズムウォークに励まされて、私は中国を歩くことによって、直男癌に反抗する。

徒歩は、私が自らを救うことである。毎日一定の運動量を維持して、生活環境を広々としたものにすることは、うつ病を自ら癒すことに対して理論的に助けになる。

さらに重要なことは、大きな環境が、女性が運動をすることを励まさず、女性が外に出ることを励まさず、まして病気の女性が大通りを歩くことを励まさない中、私は、自らの行動でこうした話を覆すこと証明することを企てる。また、私は、同じ苦しみの中にいる姉妹たちが、私の話を知って以後、自分のために何かを計画し、実行して、自分に対する傷害をストップする――なぜなら、それはあなたの誤りではないから!――能力があることを信じられるようになることを望む。

最も重要なことは、もっと多くのうつ病の経験がある姉妹たちに自分の話を話してもらい、家の中にいて外出したくない/できない姉妹たちに家の外に出て、私といっしょに中国でウォークするように励ますことである。

(一)私は何をするのか?

1.北京から広州まで2000キロメートルあまりを歩く。

2.途中でその土地(市)の精神衛生に関心を持つ部門と協会を訪問して、その土地の女性と性的マイノリティの精神衛生の状態と受診状況を知り、政府情報公開を申請する。同時に、その土地の精神衛生に関係する部門、関係する協会と、ジェンダーと鬱病の問題について意志疎通をする。

3. ジェンダーフレンドリーな社会を構築するために、大学に次のような提案の手紙を届ける。①大学にジェンダーと多元的性別の選択科目を開設して、もっと多くの学生がこの方面の知識に接することができるように提案する。②大学の学院補導員・教職員・カウンセラーにジェンダー教育の入職/在職研修をして、ジェンダーフレンドリーな学園環境を構築するよう提案する。

4.ジェンダーと鬱病の体験を収集して、彼女/ta[注:taは男性にも女性にも通用する語であり、男性という意味での他(彼)ではない]らに自分の話をし、文章を書き、微博をつうじて広め/表現するよう励まし/援助する。

(二)この活動にあなたの参加を求める!(抄)

1.お話。私はうつ病の女性の体験を収集している。たとえ「不健康な」人の話であっても、その話が知られさえすれば、力になる。投稿アドレスは××××××である。語ることが難しければ、私にご連絡ください。お助けする。

2.お気持ち。ウォークには資金のサポートが必要だ。私たちは定期的に財務を公開する。

3.いっしょに歩く。私のスケジュールを見て、もし時間が合って、いっしょに歩いて宣伝したいのなら、ごいっしょに歩きましょう。(12)

黄葉さんがこのウォークを計画したのは、2月初めだった。当時、黄葉さんの状況は悪く、自殺したい気持ちが強かった。さまざまな方法試したがうまくゆかず、医者に「何か計画を持たなければいけない」と言われて、父母のために、しばらく生きながらえる努力をする方法として計画した。2月10日、黄葉さんは、友人たちに、休学してウォークをする計画を知らせた。

しかし、休学の申請は許可されなかった。また、「フェミニスト5姉妹」が拘留された。仲間たちといっしょに食事をしたとき、「フェミニスト5姉妹」の拘置所での状況の話になると、黄葉さんは、がまんできずに席を外して号泣した。

最初は4月に出発するつもりだったが、6月にした。しかし、心理的状態と政治的雰囲気がまだよくなかった。黄さんは何度もやめようと思ったが、友人に「黄葉さん、行きなさい! まだジェンダーの視点からうつ病を分析した人はいません。それに、黄さんがウォークに行くこと自体が、フェミニズムの運動です!」と励まされた(13)

10月18日、黄葉さんは北京を出発した。写真を見ると、もう一人の仲間といっしょに出発したようだ。黄葉さんは、背中に「北京―広州 1日目 次の目的地:北京西駅 うつ病の女の子のフェミニズムウォーク」と書いたパネルを背負い(もちろん翌日には、「2日目 次の目的地:北崗洼」というふうに書き換えている)、もう一人は「うつ病の女の子 フェミニズムウォーク 直男癌に抗する」と書いたパネルを背負っている(14)

また、黄葉さんの文に対して、ある女性から反響を寄せられた。それは、医者が女性のうつ病患者にスティグマを与えていることを自らの体験から述べたものだった。その女性によると、「私が26歳の頃、その医者はすべてを分かっているかのように、『あなたはきっと恋愛や結婚のことでトラブルがあるから、うつ病になったのだ。結婚すれば、すべて良くなる』と言い」、その女性が自分は当分恋愛や結婚をするつもりはないと述べたら、医者は、今度は「病気の原因は、あなたが『強い女』だからだ」と言ったという(15)

また、11月1日には、黄葉さんは、メールボックスの中に、2人のうつ病の友人が、自らのうつ病についての体験を寄せてくれたメールが入っていることを発見し、感動した(16)

しかし、11月4日、黄さんは、自分が最初に書いた上記の文が新浪微博から削除されていることに気づいた。黄さんは、「私が用いたのは、非暴力の、持久的だが、実際にはけっして強力ではない方法であり、もっとジェンダーフレンドリーな社会を提唱して、みんなに、女性がなりやすいうつ病の大部分はジェンダー不平等が引き起こしたものであることに気づいてもらいたいと望んだものだ。こんなに温和なものも削除するとは、悲しい」と述べた(17)

11月6日から、@劉暁青(@刘晓青--)さんが、いっしょに歩いてくれた(18)。@劉暁青さんは8日に別れの挨拶を述べているので(19)、2日ほどいっしょに歩いたようだ。

また、10月28日、黄さんは、河北省保定市で、同市の教育局と衛生局に対して、精神疾患の人数とその男女比などについて情報公開申請をした(20)

けれど、10月30日、保定市教育局から電話がかかってきて、黄さんの申請した政府情報公開は条件が不十分だと言った。「黄さんは広州の人なのに、保定市の情報の公開を申請して、何をするのだ」と言うのだ。しかし、黄さんは、政府情報公開条例(中华人民共和国政府信息公开条例)第25条には、自分の納税・社会保険・医療保険の情報を請求するときは、身分証など証明書を示すことが必要だと書いてあるにすぎないと述べている(21)

また、11月20日には、黄さんは、河南省の安陽師範学院で学生たちの署名を集めて、ジェンダーと多元的性別に関するカリキュラムを開設することと、教職員に対してジェンダー研修をおこなうことを求める建議の手紙を出した(22)

11月22日には、郵便局から河南省の45大学に同様の建議の手紙を出した(23)

おわりに

林鯨さんらの「性暴力反対・海南島一周自転車ツアー」は、ごく小規模なもので、あまり宣伝もされていないが、肖美麗さんの「フェミニズムウォーク」の精神をそのまま受け継いでいる。5人が釈放されて間もない時期に、身近な仲間を誘っただけで、署名集めも含めて果敢におこなわれたという点で、貴重だと思う。

黄葉さんらの「直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク」は、より長期にわたる本格的なものだ。

参加人数を肖美麗さんの「フェミニズムウォーク」と比較すると、肖美麗さんが出発時は10人といっしょに歩き始め、その後1人になったものの、10月1日には5人の友人がやってきていっしょに歩いたというような状況に比べれば(本ブログの記事「学校教師による性暴力と行動派フェミニスト――『強姦犯を閉じ込めろ、私を閉じ込めるな』」)、黄さんといっしょに歩いたと明確に書かれているのは、2人だけであり、少ない。しかし、これは、「うつ病」というテーマの特殊性によるものかもしれない。

また、黄葉さんは、出発から1カ月たった11月19日、みんなからの資金援助と支出を公表したが、のべ約150人から約1万5800元の資金援助をもらっている(24)。肖美麗さんは、出発した2013年9月15日から10月7日までの間に1万6500元以上の募金を集めているので(25)、それにかなり近い金額である。これは、中国のフェミニストの熱意が、今のような大変な状況の下でも衰えていないことを示しているように思える。

黄葉さんのウォークについても、マスコミの報道はまだのようだが、肖美麗さんの活動についても、中国国内のマスコミは終了間際までほとんど報道しなかった(26)。今後はもっと知られるようになってほしい。

(1)以上は主に、「美丽的女权徒步――永远“在路上”」(女声网2014年3月29日)によるが、公安局・教育局への提案、情報公開申請の名称、返信状況については、「24岁徒步五省市反性侵」『羊城晚报』2014年3月7日、「144天 美丽徒步」社会性别与发展在中国2014年3月11日(来源:『南方都市报』2014年3月7日)より。また、私のブログエントリ以後のフェミニズムウォークの状況については、「只属于行动派的实验——“美丽的女权徒步”在路上(word)」『女声』第138期(2013.10.23)、「问责不会结束——“美丽的女权徒步”到广东(word)」『女声』第145期(2014.3.3)がまとまっている。
(2)问责不会结束——“美丽的女权徒步”到广东(word)」『女声』第145期(2014.3.3)2頁。
(3)女权之声的微博「女生要自由!25岁女生骑行环海南岛反性侵」2015年5月5日 10:48→「女生要自由!25岁女生骑行环海南岛反性侵」女声网2015年5月5日。
(4)美丽的女权徒步的微博5月4日 18:28 、美丽的女权徒步的微博 5月7日 18:44
(5)美丽的女权徒步的微博5月3日 14:03など。
(6)美丽的女权徒步的微博5月5日 13:40。 他に、美丽的女权徒步的微博5月8日 18:13は、学校の校門の前で旗を広げている。
(7)美丽的女权徒步的微博5月7日 13:32>。
(8)美丽的女权徒步的微博5月9日 23:09
(9)直男癌男人 你的自信从天上来的吗?」搜狐女人2014年6月24日。
(10)吕频「“直男癌”这个词:女人也用上了杀伤性武器」女声网2015年5月14日。
(11)日本の厚生労働省「地域におけるうつ対策検討会」の『うつ対策推進方策マニュアル(word)』(2004年)にもそう書かれている(3頁)。
(12)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博「“直男癌”把我变成抑郁症以后怎么办?――我选择徒步中国来反抗」2015年11月10日 23:51。その後、微博「女権の声」アカウントが、うつ病の背景にある性差別について詳しく解説した文を掲載したり(女权之声的微博「当抑郁遇见性别:什么给女人的生活蒙上阴霾」2015年10月30日 14:58)や黄葉さんのアカウントが、拒食症についての体験とフェミニズムとの出会いを記述した文を掲載したりしている(黄叶抗直男癌的女权徒步的微博「她和ta说|从厌食症中解脱:女权主义告诉我,自然的身体没有错」2015年11月10日 22:58)。
(13)以上は、「一个有“病”的女孩儿要在大马路上自由行走」2015-10-15 豆芽 女泉 女泉→「一个抑郁症女孩正徒步中国,反抗“直男癌”」2015-10-19 豆芽 女权之声 女权之声→「一个抑郁症女孩正徒步中国,反抗“直男癌”」女声网2015年10月20日。
(14)一个抑郁症女孩正徒步中国,反抗“直男癌”」2015-10-19 豆芽 女权之声 女权之声→「一个抑郁症女孩正徒步中国,反抗“直男癌”」女声网2015年10月20日。
(15)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博「她和ta说|医生,难道我结个婚或者学会温柔,我的抑郁症就好了?」2015年10月26日 01:18。
(16)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博11月1日 19:56
(17)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博 11月4日 15:07
(18)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博11月6日 21:27
(19)刘晓青--的微博11月8日 13:38
(20)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博10月28日 14:15
(21)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博10月30日 12:09
(22)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博11月20日 12:34
(23)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博11月22日 10:40
(24)黄叶抗直男癌的女权徒步的微博「徒步一个月快到河南,给金主和未来金主们的感谢信 #抑郁症女生徒步中国抗直男癌#」2015年11月20日 00:00。
(25)只属于行动派的实验——“美丽的女权徒步”在路上(word)」『女声』第138期(2013.10.23)には、9月21日までに4000元あまり、9月21日~9月末に8300元あまり、「十一」の休みに4200元あまりと記されている(p.8)。
(26)问责不会结束——“美丽的女权徒步”到广东(word)」『女声』第145期(2014.3.3)3頁。

中国の行動派フェミニストのNGO閉鎖と習近平政権のNGO弾圧政策

目次
1.2012年以来、行動派フェミニストの中心的グループだったNGOが閉鎖
2.活動に対する弾圧――5人への厳重な監視、フェミニストの出国禁止、企業の性差別の通報活動に対する圧力
3.習近平政権成立後、次第に強まっていたNGO弾圧――従来は容認されていた活動も弾圧、最近は北京益仁平センターと関連団体が標的に
4.「国外NGO管理法」草案――国外NGOの活動や国内NGOの国外からの資金獲得を規制
5.習近平政権のジェンダー・家族イデオロギーとフェミニズム運動との矛盾
6.弁護士らによる「フェミニスト五姉妹」事件の撤回要求、北京益仁平センターによる警察の捜査に関する情報公開申請

1.2012年以来、行動派フェミニストの中心的グループだったNGOが閉鎖

5月29日、中国の女性NGO「杭州蔚之鳴(ハンチョウ・ウェイジーミン)」機構が閉鎖を宣言した。このNGO自体は2014年8月に設立された団体だが(1)、その前身は「ジェンダー平等活動グループ(性別平等工作組)」(正式名称は「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」、中国語名「性別平等倡導行動網絡」、英語名「Gender Equality Advocacy and Action Network」)であり(2)、同グループは2012年1月の設立以来、2月の「男子トイレ占拠」アクションなど、さまざまなパフォーマンスアートや署名活動をおこなってきた行動派フェミニストの中心的グループだった(拙稿「中国の行動派フェミニストの活動とその特徴」『女性学年報』34号、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」参照)。

「杭州蔚之鳴」は、専従職員の武嶸嶸(ウー・ロンロン)さん、鄭楚然(ジョン・チューラン)さん、メンバーの李婷婷(リー・ティンティン)さん、王曼(ワン・マン)さん、韋婷婷(ウェイ・ティンティン)さんの5人が3月7日に拘留されたうえに、機構自体も警察の捜索を受けたため、「多くの人員は仕事をストップさせられて家におり、プロジェクトも停止している状態で、職員の賃金と家賃などの支払いができず(……)何重もの圧力に直面して、『杭州蔚之鳴』という身分で活動を継続することができないため、本日、業務の停止と閉鎖を宣言する」(3)と発表した。

2.活動に対する弾圧――5人への厳重な監視、フェミニストたちの出国禁止、企業の性差別に対する通報活動への圧力

上の5人のフェミニスト活動家(「フェミニスト五姉妹」と呼ばれる)は、先に本ブログで述べたように4月13日に釈放されたが、5月末になっても「現在なお当局の厳重な監視を受けており、家に出たり入ったりするのも尾行されている。これは未だかつてない状況だ」(4) (武嶸嶸)という。

5月25日には、フェミニストの郭晶(クオ・ジン)さんが広州から香港に行くために越境することを阻止された(5)。郭晶さんは、昨年11月、中国大陸で初めて就職の男女差別(男子のみ求人)に関して勝利判決(慰謝料2000元)を勝ち取った女性だが (本ブログの記事「求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる」参照)、今回はべつに拘留などはされなかったのに、そうした制約を課されている。郭さんだけでなく、長い間フェミニズムの活動に参加しなかったために、武さんも忘れてしまっているようなメンバーさえ、外国に行けないという(6)

さらに、武さんによると、「以前は、私たちは差別をしている企業を見つけたら直ちに[行政当局に]通報したが、現在は通報するボランティアはみな国保(公安部国内安全局)にお茶を飲んで話をされた(=そういう口実で、法的手続きなしに、訪問されたり呼び出されたりして、活動をしないように警告・恫喝された)ので、通報活動をすることができなくなった」(7)という。

3.習近平政権成立後、次第に強まっていたNGO弾圧――従来は容認されていた活動も弾圧、最近は北京益仁平センターと関連団体が標的に

中国の人権弁護士で、以前、公盟(後述)というNGOのメンバーだった滕彪さんによると、習近平が政権を握って以来、独立した民間組織の生存環境はいっそう悪化したという(8)

まず、2013年5月、中国共産党中央委員会は、9号文書「現在のイデオロギー領域の状況に関する通達(关于当前意识形态领域情况的通报)」(非公開。ただし、『明報月刊』に掲載[「《明鏡月刊》獨家全文刊發中共9號文件」拉清单2013年8月20日])を出した。この文書は、「7つの言ってはならない」こととして、「欧米の憲政民主」「世界に普遍的な価値」「公民社会(市民社会)」「新自由主義」「欧米の報道観」「歴史虚無主義(注:中国共産党中心の歴史観を信じないといった意味)」「改革開放への疑い」を挙げた。これらを否定することは、新自由主義の否定などを除いて、独立した民間組織の理念や活動に対する攻撃にもなるものである。

2013年7月には、許志永さんと彼のグループの百人あまりが拘留され、許さん本人は、2014年1月、北京市第一中級人民法院で「群衆を集めて公共の場所の秩序を乱す罪(聚衆擾乱公共場所秩序罪)」で懲役4年に処せられた。許さんは、2003年に出稼ぎの青年が収容所で暴行を受けて死亡した「孫志剛事件」をめぐって、「都市浮浪乞食収容送還法」の廃止を実現したことで広く知られるようになった人だ。許さんは、2005年には公盟(北京公盟諮詢有限責任公司)を創設して、民主・法治・憲政を重視する「公民社会(市民社会)」の実現をめざす「新公民運動」を提唱し、農民労働者への差別是正や汚職への抗議などの活動をおこなってきた。それらの活動のうち、教育部の前での抗議活動が、「群衆を集めて公共の場所の秩序を乱す罪」に問われたのだ(9)

2013年11月には、中国共産党は、第18期中央委員会第3回全体会議の決定にもとづいて、「国家の安全を確保する」のために、「中央国家安全委员会(国安委)」を設立し、その主席には習近平総書記が就任した(10)

翌2014年5月から7月末にかけて、その中央国家安全委員会が、国外のNGOに対して、全国いっせいに内情を探る調査をおこなった(11)。改革開放当初は、国外のNGOは国際的資金や先進的な技術・理念をもたらして、中国の科学技術・民生・公益事業にとってプラスになると考えられていた。しかし、21世紀に入って、一部の国外のNGOが政治・経済・環境・人権などの領域に関心を持って、大陸の政治の方向に影響を持ち始めると、中国当局が警戒するようになり、上のような調査がおこなわれたのである。その結果、海外の基金ら資金提供を受けていた、ある民間教育機構も、正常な活動ができなくなり、業務を停止した(12)

また、この調査がおこなわれている最中の6月17日、鄭州億仁平機構(もと北京益仁平センター鄭州事務局)が、警察による捜索を受けた。

9月18日には、農村で民間図書館を運営していた「立人郷村図書館」が、当局の弾圧を受けて、活動を停止した。

また、10月9日には、「北京伝知行(北京伝知行社会経済諮詢有限公司)」の創立者の郭玉閃さんらが「挑発してトラブルを起こした罪」で警察に拘留された。翌2015年1月3日には、北京市公安局は、郭さんらを「不法経営」罪で逮捕した。郭さんは、許志永さんらと公盟を結成した人だが、2007年に自ら設立した「伝知行」は、研究活動を重視した組織であり、社会問題を解決するための改革モデルについての調査や政策提言をおこなってきた団体だ(13)

伝知行が「不法経営」罪に問われた背景の一つに、伝知行が「工商部門」で登記をしていたことがある。しかし、中国では、NGOが正規の「社会団体」として登記するのが難しいために、工商部門で登記している場合が多い。そうしたやり方をしていても、近年規制が厳しくなり、たとえば外国からの寄付を受けることなどは難しくなってきたという(14)

立人郷村図書館や伝知行などは、直接社会的運動をしていたわけではない。しかし、以前と異なって、「伝知行や立人郷村図書館などあまりデリケートではない機構も閉鎖された」と滕彪さんは述べている(15)

ジェンダー平等の問題も「デリケート」な問題ではないと一般に考えられてきたのだが、本ブログで報告してきたように、2015年3月6日から7日にかけての「フェミニスト五姉妹」が拘留され、「杭州蔚之鳴」が警察の捜索を受けた。3月24日には、彼女たちの多くが関わってきた北京益仁平センターも警察の捜索を受けた。

もっとも、イギリスの『エコノミスト』によると、中国共産党の一部の人々は、大きくなりつつある中産階級が社会に参与することを完全に禁止することは不可能なので、市民に社会的な物事に参与することをある程度許すことは、共産党が民衆の支持を得るのに役立つと考えているという(16)。この点は、フェミニスト五姉妹の釈放に関して、「中国政府は一枚岩の存在ではない」と述べた王政さんの指摘(17)や4月18日付『朝日新聞』が報じた、「5人の拘束後、共産党傘下の有力団体である中華全国婦女連合会の有志幹部らが北京市公安局に拘束の是非を問う非公式の文書を送付」した(18)という事実につながるものであろう。

しかし、最初で述べたように、釈放後もフェミニストたちの活動が非常に厳しい制約の下に置かれていることに変わりはない。

さらに、2015年6月12日には、楊占青さんと郭彬さんも「不法経営」罪の疑いで警察に拘留された。楊さんと郭さんは、北京益仁平センター鄭州事務局(のちに独立して、鄭州億仁平機構になる)の主任を務めたことがある。楊さんは、中国最大のB型肝炎ウィルス保有者のフォーラムの法律版の管理人であり、中国初のC型肝炎差別の訴訟で弁護士をつとめたこともある。郭さんは、今は差別反対の民間団体「広州衆一行」の代表を務めている(19)

楊占青さんは、2012年には、大学入試の一部専攻の合格ラインの男女差別に抗議して、坊主頭になって「光頭哥要求 招生平等(坊主頭の男が、学生募集の平等を要求する)」と書いた紙を掲げたことがある。これは、女性たちが「光頭姐」になって入試の男女差別に抗議したのに呼応した活動だった(20)

北京益仁平センターは、「公益人士である郭彬・楊占青が鄭州の警察に連行されたことに関する声明」を出し、その中で、「『不法経営』罪は。すでになくなった『投機空売買罪』がもとになっている。わが国の刑法とその司法解釈によると、この罪は(……)不法な経営活動をおこなって、市場の秩序をかく乱して、情状が悪い行為を指している。郭彬・楊占青が鄭州やその他の都市でおこなっている差別反対活動は、なんら料金を取る行為をしておらず、完全に非営利の性格のものであって、『経営』行為ではなく、市場の秩序をかく乱しえないものであるから、明らかに『不法経営罪』とはまったく関係がない」と述べた。

北京益仁平センターは、さらに、フェミニスト五姉妹を国内外の抗議によって釈放せざるをえなくなったのに、次の日には、外交部のスポークスパーソンが、北京益仁平センターを「違法の疑いがあり、処罰する」と述べて、同センターの多くの元職員や協力パートナーを出国できなくしたり、2人のメンバーの父母のところにまで行って捜査したりしているのは、明らかに法治に反する「連座」行為だと述べて批判した(21)

楊さんと郭さんの弁護を引き受けた弁護士も、記者が「実際には、これは益仁平というNGOに対する弾圧の行動なのか?」と尋ねたのに対して、「まったく疑問の余地なく、そうである」と答えている(22)

2人とは1週間近く誰も面会できず、行方も確認できなかったが、19日になって、ようやく弁護士が2人と鄭州第三拘置所で面会することができた。彼らは身体的虐待は加えられていなかったが、訊問の際に、警察は、楊占青さんが言ったとおりに記録をせず、しかもそれを改めないまま楊さんの署名を要求しているという(23)

この事件についてはさまざまな国外のメディアも取り上げており(24)、アムネスティ・インターナショナルも緊急のアクションを開始した(25)。中国国内でも彼らを釈放など要求する署名運動も始まり(26)、「フェミニスト五姉妹」も、インターネット上で2人に声援を送っている(27)

以上のように見てくると、「フェミニスト五姉妹」拘留事件は、習近平政権のNGO弾圧政策の流れの中で起きたことであり、とくに北京益仁平センター弾圧と関係していることがわかる。「フェミニスト五姉妹」を釈放させた中国内外の世論や運動も、習政権の政策の方向を変えるまでには至っていないと言えよう。

4.「国外NGO管理法」草案――国外NGOの活動や国内NGOの国外からの資金獲得を規制

2014年12月、全国人民代表大会法制事務局は、「中華人民共和国国外NGO管理法」の草案を全国人民代表委大会の常務委員会に提出した。2015年4月、常務委員会はその草案を審議し、5月5日には、その第二次審議稿(「境外非政府组织管理法(草案二次审议稿)全文」中国人大网)を公表して、6月4日までの期間、パブリックコメントを求めた。

人権活動家は、この法案は、習近平国家主席が異見を抑圧するための措置の一つだと考えている(28)。具体的には、この法案には、以下のような問題点が指摘されている(29)

(1)国内のNGOが外国のNGOから資金の獲得することが困難になる。
・国外のNGOは、事前の登記または臨時の許可がなければ、中国国内で活動をしたり、中国国内の個人や組織に資金援助をしたりできない(第6条~第7条)。
・また、そうしたことをする際には、多くの登記(第10条~第20条)と報告・会計・人事などの要求(第23条~第38条)に従わなければならない。
・しかし、資金の獲得は、結社の自由の権利に不可欠であることは、各種の国連人権機関も認めている。

(2)国外NGOに対して、公安部門(警察)が「国家の安全」や「公衆の秩序」の名の下に、権限を濫用する危険が大きい。
・国外のNGOが中国で活動する場合は、国内のNGOと同様、登記管理機関と業務主管単位の二重の管理制度が設けられるが、それは国内のNGOより厳しい。すなわち、国内のNGOは、民政部門が登記管理機関であるのに対して、国外のNGOについては、「中国の国家の統一、安全、民族の団結」や「中国の国家の利益を損なわない」(第5条)という観点から、国務院の公安部門および省レベルの政府の公安機関が国外のNGOの登記管理機関になり、国務院の関係部門と県レベル以上の地方政府の関係部門が業務主管単位になると規定されている(第7条)。
・公安機関に、国外NGOの業務の場所や活動の場所を検査したり、職員を訊問したり、調査する事件と関係がある文書を調べたりコピーしたりする権限を(おそらく刑事訴訟の手続き抜きに)与える(第48条)。また、刑事犯罪にならない場合でも、当局にNGOの人員を15日間拘留する権限を与える(第59条)。

中国の国外NGO管理法は、ロシアのNGOに対する管理の経験を参考にしているとも言われる。2013年4月、ロシアは、9000近いNGOの活動の停止を要求し、6000近い組織に罰金を科した(30)

この国外NGO管理法に対しては、10あまりの省の30名の弁護士が、制定をしばらくストップするよう建議の手紙を出し、アムネスティなどの国際人権団体も関心を示しているが(31)、それらが直ちに効力を発揮するのは難しそうだ。

5.習近平政権のジェンダー・家族イデオロギーとフェミニズム運動との矛盾

6月2日付『朝日新聞』も、習近平政権がNGO、とくに海外から資金提供を受けるNGOに対して警戒を強めていることを述べており、フェミニスト活動家に対する弾圧も、彼女たちが職員や関係者だった人権NGO「北京益仁平センター」への弾圧として記述している(32)。『朝日新聞』の記述は正しい。

ただし、私は「フェミニスト五姉妹」事件や「杭州蔚之鳴」弾圧については、同時に、習近平政権のジェンダーイデオロギー・家族イデオロギーとの関係も見なければならないと思う。もちろんそうしたイデオロギーが習政権のNGO弾圧とは別個に存在しているというのではなく、弾圧を支えるものになっているという意味である。

すでに本ブログで以前ご紹介したが、2013年10月、中華全国婦女連合会(官制の女性団体)の新指導部に対して習総書記がおこなった講話に以下の一節があった。

中華民族の家庭の美徳を発揚し、良好な家風を築くための女性の独自の役割を発揮させることを重視しなければならない。(……)広範な女性は、老いたるを尊び、幼きを愛し、子どもを教育する責任を自覚的に担い、家庭の美徳を建設する上で役割を発揮し、子どもが良い心をはぐくむことを助け、健康な成長を促して、国家と人民に有用な大人になるようしなければならない。

「ここ数回の大会の指導者の祝辞や講話では、これほどはっきりと女性役割への期待が表明されたことはなかった」(馮媛)と言われる。この講話に対しては、多くの女性が微博(中国版ツイッター)上で批判し、「広州ニューメディア女性ネットワーク」というNGOが批判のまとめを作成したら2000回以上転載されるなど(以上は、本ブログの記事「中国婦女第11回全国代表大会、習近平講話に対する微博上での批判」参照)、既にこの時点で両者の矛盾は顕在化していた。

さらに、2015年2月17日、習近平主席は、春節の祝賀会で、「中華民族は昔から家庭を重視し、肉親の情を重視してきた。家庭が円満ならば、何もかもうまくゆく。一家団欒の楽しみ、老人を尊び、幼きを愛すること、賢い妻であり、良き母であること、夫を助け、子どもを教育すること、勤勉で節約して家を興す、これらはみな中国人のそのような観念を体現している」と述べ(33)、中華全国婦女連合会も、それを受けて、「習近平総書記の春節の祝賀会での重要な講話の精神を真剣に学び貫いて、家庭建設における女性の独特の働きと婦連組織の優位性を発揮しよう」という指示を出した(34)

習近平の講話のすぐ後に中国中央テレビが放映した春節の大晦日の交歓の夕べでは、孝道が宣伝の重要なテーマになり、番組ではいまだかつてない性差別が出現した。フェミニズム団体は抗議の署名を発起し、中国中央テレビの思想統制と洗脳教化を批判し、春節の大晦日の交歓の夕べの放映停止と娯楽市場の開放を要求した(35)

さらに、フェミニストたちは、春節で帰省した際に結婚を強いられることに反対する歌や踊りによるパフォーマンスもおこなった(36)

しかも、5人が拘留される6日前、中国の代表的ネットメディア新華網は、下のように伝えていた。

20歳前後を主とした「90後(1990年代生まれ)」の女性たち(……)の中から「フェミニズム[女権]団体」が誕生した。それについての公式の確かな統計データはないが、記者の観察では、公衆の視野の中に入る、活躍している団体が10前後あり、常に「フェミニズム」活動を組織・参加している若い人が数百人前後いる。(……)100名あまりの中核メンバーを擁する「フェミニスト行動派」と「フェミニズムの声」という民間団体が近年非常に活躍している。長い間インターネットの下で生活している彼女たちは、街頭でのパフォーマンスアートなどの方法でニュースを作って、最速のスピードで活動内容をメディアに伝達している(37)

このように、弾圧直前には、習総書記が女性役割を強調する一方、フェミニズム運動はかなりの規模に達していたのであり、政権と彼女たちとの矛盾は、以前よりさらに拡大していたと考えられる。

6.弁護士らによる「フェミニスト五姉妹」事件の撤回要求。北京益仁平センターによる警察の捜査に関する情報公開申請

5月25日、5人についている7弁護士は、今回の「フェミニスト五姉妹」事件は完全な冤罪であり、この事件の捜査のプロセスでも、当局が多くの違法行為(物品の押収、拘留中の迫害など)をおこなったことを指摘して、この事件を撤回するように訴えている(38)。釈放されたフェミニストたちも、先日の本ブログでご紹介したように勇敢に法律的な異議を唱えている。

また、4月20日、北京益仁平センターの代表の陸軍弁護士は、海淀区公安分局に対して、政府条公開申請を提出している。公開を申請したのは、3月23日から24日にかけて警察が北京益仁平センターを捜査した際の、「警察の捜査・物品押収という行為の性質・原因・法律執行の根拠、物品の『押収目録』」である。しかし、5月29日、海淀区公安分局は、「得ることを申請した情報は『中華人民共和国政府情報公開条例』第2条に規定する政府情報ではない」といった理由で、公開を拒絶した。それに対して、6月11日、陸軍弁護士は行政再議を申し立てた(39)

こうした異議申し立ても直ちに効力を発揮するとは考えにくいが、自らの正当性を内外にアピールする上では重要な意味を持っていると考えられる。

また、いまフェミニストたちは、身近な問題に取り組んでいる。「フェミニズムの声」は、「私はいかにしてフェミニストになったのか」というテーマで文章を募集している。また、若いフェミニストの女性たちは従来から身体に関する性別規範を問うさまざまな活動をしてきたが、女性は腋毛を剃るという規範を批判して、微博上で「第1回女子腋毛コンクール」をおこなった。これらの活動については、また次回ご紹介したい。

(1)杭州蔚之鸣文化创意有限公司」智联招聘网。
(2)「杭州蔚之鳴機構は、前身は性別平等工作組であり、若い女性をエンパワメントすることをつうじて、彼女たちを女性の権益のために積極的に声を上げ、権利のために立ち上がらせる」と記されている(杭州蔚之鸣「妈妈社群需求及社会支持公益论坛邀请函」NGOCN 2015年1月22日 14:03)。
(3)女权行动派更好吃的微博「杭州蔚之鸣妇女机构将被迫关闭声明」2015年5月29日。
(4)女权者郭晶被禁出境旅游 女权要求撤案」Radio Free Asia2015年5月26日。
(5)同上。
(6)同上。
(7)小社工大社会嵘嵘的微博[女权五姐妹后续之武嵘嵘告诉海淀公安什么是妇女社会工作]6月8日 18:19
(8)独立NGO在中国遭遇寒冬」(美国之音2015年3月10日)。この節の記述の、注記のない個所は、この記事に依拠している部分が多い。
(9)中国:許志永氏への見せしめ裁判での判決を撤回せよ」Human Rights Watch 2014年1月26日、ふるまいよしこ「許志永: 北京当局に説明を求め続ける法学者」2014年1月29日。
(10)习近平任国安委主席,权力空前」德国之声2014年1月25日。
(11)全面清查在华NGO:不胫而走的内部通知?」德国之声2014年6月20日。
(12)境外NGO面临监管严冬」『凤凰周刊』2015年第7期(2015年3月6日)。
(13)及川淳子「【Views on China】納税者意識の向上を目指す社会運動――民間シンクタンク『伝知行』弾圧事件」2015年2月10日。
(14)萬延海專欄:傳知行『非法經營罪』敲響的警鐘」2015年5月1日。
(15)独立NGO在中国遭遇寒冬」美国之音2015年3月10日。
(16)同上。
(17)王政さん(ミシガン大学准教授)のコメント(アジア女性資料センターFacebookより。翻訳は大橋史恵さん)。
(18)「市民運動抑圧に異論 中国、活動家5人釈放 党の傘下団体からも批判」『朝日新聞』2015年4月18日。
(19)zhuhanhku的微博6月16日 14:00 、公益老男孩的微博「在中国做公益反歧视是一种什么样的体验?」2015年6月15日21:49。
(20)羊驼青的微博2015年6月15日 17:46。
(21)公益老男孩的微博「在中国做公益反歧视是一种什么样的体验?」2015年6月15日21:49。
(22)两公益人士被以“非法经营罪”抓捕」Radio Free Asia2015年6月14日。
(23)公益老男孩的微博6月19日 18:37、郑州马连顺律师的微博6月19日 20:43
(24)『ガーディアン』紙(Fears of new crackdown as China holds two former members of rights group)、ロイター電(Chinese police detain two activists linked to prominent NGOJun 15, 2015)、AFP通信(China anti-discrimination group protests 'arrest' of staff )、South China Morning Post(Fears for Chinese NGOs as activists arrested)、デイリーメール紙( China anti-discrimination group protests 'arrest' of staff)などが取り上げている。
(25) China: Release Guo Bin and Yang Zhangqing (UA 137/15) ” Amnesty International 2015年6月17日。要求項目は、・ただちに無条件に郭彬と楊占青を釈放せよ、・ただちに郭彬と楊占青が拘留されている場所を明確にせよ、・拘留期間は、郭彬と楊占青に定時に制限なく弁護士と家族と面会し、必要な医療のケアを受け、拷問されない権利を保証するよう訴える、である。
(26)联署声援释放反歧视公益人郭彬、杨占青」2015年6月18日。
(27)公益老男孩「做公益、进监狱? ----女权五姐妹网上声援被刑拘的公益同仁郭彬、杨占青」2015年6月19日 12:11、女权之声的微博「反歧视公益老男孩被刑拘,“女权五姐妹”网上声援」2015年6月19日12:42。
(28)在华境外NGO管理法: 以保护之名进行取缔?」德国之声2015年3月9日など。
(29)中国人权法律评论:境外非政府组织管理法草案损害了中国的民间社会和中国政府的国际参与」中国人权2015年5月21日、「中国: NGO締め付け法院を取り下げよ」アムネスティ・インターナショナル日本2015年6月9日(アムネスティ国際ニュース2015年6月2日)。他に、「中国当局、『国家の敵』外国NGOを標的に」(ウォール・ストリート・ジャーナル2015年5月27日)も参照。
(30)萬延海「管死境外组织,中国何去何从?」2015年6月4日 01:57。
(31)关于暂停制定《境外非政府组织管理法》的法律建议书」新公民运动2015年6月3日、「中国: NGO締め付け法院を取り下げよ」アムネスティ・インターナショナル日本2015年6月9日(アムネスティ国際ニュース2015年6月2日)。
(32)(消される言葉 天安門事件から26年:上)中国、NGO封じ込め」『朝日新聞』2015年6月2日。
(33)习近平:在2015年春节团拜会上的讲话 」新华网2015年2月17日。
(34)认真学习贯彻习近平总书记在春节团拜会上重要讲话精神在家庭建设中发挥妇女独特作用和妇联组织独特优势」『全国妇联简报』第8期。
(35)工评社聚焦:她们与我们每一个受压迫者息息相关(2015-3-10)」工评社博客2015年3月15日、「深切关注遭受当局打压的女权运动:她们与我们每一个受压迫者息息相关」工评社 新声代2015年3月11日、「长平观察:北京向女权亮剑」德国之声2015年3月11日。
(36)女权之声的微博【春节将至反逼婚 女青年街头跳“小苹果”】1月28日 18:02
(37)中国年轻一代女性更关注自己权益」新华网2015年3月1日。
(38)关于撤销“女权五姐妹”案的法律意见书」维权网2015年5月25日。
(39)益仁平对北京海淀警方提起行政复议,要求答复搜查办公室原因」2015年6月16日 12:46。

フェミニスト活動家5女性の釈放とその後の困難、闘い、弁護士によるセクハラ

<目次>
一 釈放の背景――国内外のフェミニストらの抗議など
 日本でもアジア女性資料センターが声明を出し、東京の中国大使館前で抗議/中国の党・政府内部にも異論/5人がそれぞれ感謝のメッセージ発表/その一方、すでに懲罰の目的を達した、との指摘も
二 あくまで保釈(取保候審)、容疑者扱いで行動にも制約、北京益仁平センターへの処罰も表明
 李婷婷さんの住居への監視/韋婷婷さんは故郷の親元に送還/武嶸嶸さん、犯罪容疑者として8時間訊問され、心身ともにぼろぼろに/支援者の趙思楽さんまで容疑者扱いされ、香港行きが不許可に/外交部、北京益仁平センターに対する処罰を表明/女性の権利は認めても、女性が運動によって闘い取ることは認めない? フェミニズム運動と民主化運動との相互協力を説く意見も
三 反撃もはじまる
 捜査取りやめと国家賠償、謝罪、押収物品の返還を求める市民署名/李婷婷さん、武嶸嶸さん、拘置所内での人権侵害を告発し、押収物品の返却を求める/李婷婷さん、留置所の状況についてルポ/武嶸嶸さん、人権侵害的召喚を拒否/武嶸嶸さん、行政再議申し立てによって身分証を再発行させる/李婷婷さん、裁判支援を再開
四 人権弁護士によるセクシュアル・ハラスメントをめぐって
 猪西西さん、王秋実弁護士のセクハラを明らかにし、公の謝罪など求める公開書簡/むしろ公開書簡の王弁護士への影響を心配する仲間たち。そうした状況に対する肖美腻さんの異議/王弁護士の謝罪の声明。しかし彼は反省しておらず、北京紀安徳諮詢センターによる処分も軽かったため、肖さんはセクハラの証拠を公開/在米学者の沈睿さん「アメリカなら解雇」

国際女性デー前日の3月7日にバスの中でセクハラ反対の活動を計画していたことを理由にして北京で拘留されていたフェミニスト活動家の李婷婷(リーティンティン)[李麦子(リーマイズ)]さん、王曼(ワンマン)さん、韋婷婷(ウェイティンティン)さん、武嶸嶸(ウーロンロン)さん、鄭楚然(ジョンチューラン)さんの5人が4月13日、釈放された(これまでの経過については、本ブログの記事「国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず」、「拘留中のフェミニスト活動家5女性の状況、国内外の支援運動、弾圧の背景など」参照)。

4月13日は彼女たちの拘留期限だった。警察は、彼女たち5人に当初容疑をかけた「挑発してトラブルを起こす(寻衅滋事)罪」を適用するのは、それが計画段階のものだったために難しいと考えて、過去のアクションにさかのぼって「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す(聚众骚乱公共场所秩序)罪」を適用して、彼女たちを正式に逮捕しようとしたが、検察がそれに応じなかったために、彼女たちは釈放された。

一 釈放の背景――国内外のフェミニストらの抗議など

5人が釈放された背景には、本ブログでもご紹介してきたような国内外の批判の高まりがあった。彼女たちとかかわりが深い北京益仁平センターの陸軍弁護士も、「当局は何の理由もなく譲歩したわけでない。5人が1か月あまり後に釈放されたのは、明らかに、5人を捕まえたことによって、国内でも国際的にも、一致した普遍的な抗議を受けたからである。たとえば国内では、大学生が20年来初めて集団行動を起こして、5人の釈放を訴えた。国際的には、国際オリンピック委員会、多くの国の政府、もちろん国際的な女性団体は言うまでもないが、みんながこの事件に関して強い声を上げた」と述べている(1)

日本でもアジア女性資料センターが声明を出し、東京の中国大使館前で抗議

日本でも、4月8日、アジア女性資料センターが「中国若手フェミニスト活動家の速やかな釈放を求めます」という声明を出した。この声明には、他の13団体(日本カトリック正義と平和協議会、アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)、FGM廃絶を支援する女たちの会、ふぇみん婦人民主クラブ、特定非営利活動法人レインボー・アクション、レイバーネット国際部、女性と天皇制研究会、日本軍「慰安婦」問題解決のために行動する会・北九州、性暴力を許さない女の会、セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる、「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク、ゆる・ふぇみカフェ、ウィメンズ アクション ネットワーク)も賛同した(「【ご報告】中国の若手フェミニスト5人の釈放を求めた声明について」)。

また、4月12日午後2時から、東京の中国大使館前でも10人ほどで抗議行動がおこなわれ、私も参加した。この抗議行動もアジア女性資料センターが提起したものであり、同センターの方々が午前中から抗議のためのボードやお面を制作して持って来ておられた。また、中国の行動派フェミニストの活動家が今よく歌っている、《女の歌(女人之歌)》(「レ・ミゼラブル」の劇中歌である《民衆の歌》の替え歌)の日本語訳も同センターの方が考えてきてくださっており、その歌を歌いつつ、10分ほど抗議行動をおこなった。この抗議行動には、お一人、レイバーネットの方も、広東で女性労働運動にも尽力していた鄭楚然さんの行動に呼応して、フェミニズムと労働運動との連帯を示すスローガンを掲げて参加しておられた。

4月13日、今回の釈放について、王政さん(ミシガン大学准教授)がコメント(アジア女性資料センターFacebookより。翻訳は大橋史恵さん)を発表して、「中国の文脈で考えれば、勾留を受けた社会活動家のグループが一度に釈放されるのは初めてのことだ。この決定からわかることを示しておきたい。第一に、未だかつてない規模のグローバルなフェミニスト組織やそれ以外のNGOが支援に動き出したことには効果があった。草の根による膨大な署名運動に突き動かされ、それぞれの国の政治家が声を上げた。そして中国政府に対し、国家を背負った政治上の敵によってではなく、グローバルな政治の力――社会正義と平等を求めるトランスナショナルなフェミニストやその他の草の根の組織――によってこうした署名が集まるのだということを示してみせたのであった」と述べた。

中国の党・政府内部にも異論

王政さんは、今回の保釈からわかることとして、「第二に、中国政府は一枚岩の存在ではない」ことも指摘したが、実際、4月18日付『朝日新聞』は、「市民運動抑圧に異論 中国、活動家5人釈放 党の傘下団体からも批判」という見出しで、「北京の女性団体幹部によると、5人の拘束後、共産党傘下の有力団体である中華全国婦女連合会の有志幹部らが北京市公安局に拘束の是非を問う非公式の文書を送付。市公安局内ですら捜査のあり方に疑問の声が出るなどしたことが検察の判断に影響し、4月13日の全員釈放の決定につながった」(2)と報じた。

私がもう一つ付け加えたいのは、フェミニストの彼女たちがそれまでDVや大学入試・就職の性差別など、さまざまな問題に粘り強く取り組み、それらが中国のマスメディアでも報道されて、かなりの世論の支持も獲得し、政府当局も一定の政策的な対応をせざるをえなかった、という成果を挙げてきたことである。彼女たちは、デモのような行為は控えて、街頭ではパフォーマンスアートなどによって自らの主張を訴えるなど、法律に抵触しないように慎重に行動してきた(3)(それゆえ、マスコミでも報道されやすかったという面もある)。そうしたことも、中国当局の判断にも影響を与えただろう(これまでの彼女たちの活動の年表と本ブログ記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」)。

5人がそれぞれ感謝のメッセージ発表

5人はそれぞれ支援者への感謝などを述べたメッセージを発表した。

鄭楚然さんは、次のように述べた:拘置所の中にいたときは、情報がなかったので、父母やボーイフレンド、一緒に捕まった4人、そのほか私が関わった人々がどうしているかが心配で、一日として泣かなかった日はなかった。しかし、外に出たら、さまざまな応援の声を目にすることができて、また涙を流した。とくに中山大学の校友の運動にはこのうえない誇りを感じた。声援を送る行動や文章を目にするたびに、拘置所の中でなくしかけていた自尊心と自信を取り戻した(4)

李婷婷さんも、支援への感謝、とくに国内の友人たちが「このように峻厳な国内の情勢の下で、強権を恐れず、犠牲を問題にせず、正義と公正な道理のために声を上げた」こと、弁護士、国際的な友人、家族への感謝を表明した(5)

また、李婷婷さんのレズビアンパートナーのテレサさん(英語名)によると、李さんは「フェミニズムは私の魂だ」、「私の信念は強くなった。フェミニズムはたしかに私と切り離せない」とも語ったという(6)

4月20日、韋婷婷さんは、友人の趙思楽さんら3人といっしょに《女の歌》を歌っている動画を公開した。同日、王曼さんも、心身が回復しつつあることを述べるともに、家族や友人、弁護士、自分を思やってくれた獄友、内外の支援者たちに感謝する手紙を発表した。(7)

武嶸嶸さんは、困難な時でも自分の仲間や多くの人々を信じていたこと、弁護士との面会が励みになったこと、差し入れからも外部の支援の状況を感じたことなどを述べている。武さんが拘留中に屋外に出されたとき、壁の向こうから李婷婷さんが歌う《女の歌(女人之歌)》が聞こえてきて、思わず「麦子!!」と叫んで自分も大声で歌ったら、李婷婷さんも返事をしてくれたというエピソードも披露した(8)

その一方、すでに懲罰の目的を達した、との指摘も

国内外の抗議の声が5人の釈放をもたらしたのは誰もが認めているが、若干冷めた声もある。武嶸嶸さんの弁護士の梁小軍さんは、中国当局が「圧力に迫られて、妥協をせざるをえなかった」という面とともに、「当然、彼ら[中国当局]自身にも理由があった。彼らは『我々は目的をすでに達した。我々はすでに彼女たちに懲罰をした。だから、今はもう国際メディアや国際社会に対抗する必要はないから、釈放すべき人は釈放した』と考えたのかもしれない」と述べている。梁弁護士は「中国当局がここ2年間市民の行動の問題を処理するための、いつもの手は、人を捕まえて、30日か37日後に釈放して、その間にしばしば家宅捜索をして物品を没収するというものだ」と指摘している(9)(「30日」は、警察が検察院に逮捕の承認の審査を申請する期限。検察院は、警察から逮捕承認請求書を受け取って7日以内[=「37日」後までに]に逮捕の承認か不承認かを決定しなければならない[(中华人民共和国刑事诉讼法日本語訳[pdf])」第89条、第90条])。

二 あくまで保釈(取保候審)、容疑者扱いで行動にも制約、北京益仁平センターへの処罰も表明

4月13日に5人が釈放されたのは、「取保候審」という措置によってである。

「取保候審(字義としては、保釈されて審判を待つといった意味。「立保証」とも訳されている)」とは、「中華人民共和国刑事訴訟法(中华人民共和国刑事诉讼法日本語訳[pdf])」第64~第71条や「公安機関刑事事件処理手続き規定(《公安机关办理刑事案件程序规定》)」 第六章第二節で規定されている措置で、拘留されている犯罪の容疑者や被告人について、その親族や法定代理人、親族が申請するもので、保証人または保証金を出すことによって保釈されることである。公安局などが「拘留の期限がいっぱいになったけれども、事件の処理が終わっておらず、続けて捜査する必要がある」と考えた場合などに使用できる措置で、12カ月を超えることはできない。けれども、その期間は、公安局の許可なしに居住している市や県を離れることはできず、召喚されたら出頭して尋問を受けなければならないなどの制約がある。

フェミニストの趙思楽さんは、「取保候審」について以下のように述べている。

「取保候審」は、中国で警察権力が常用している脅しの手段であり、「取保候審」によって、権力者は、捕まえた後に釈放した「政治的に信任しない対象」に対してこう言うのだ:「私はお前を監視しているぞ。おとなしく言うことを聞け。さもないと私はいつでもお前をまた捕まえるぞ」と。このような赤裸々な国家による精神的暴力はつねに効果があり、釈放された政治的弾圧の被害者の多くは、みな長期にわたって、自分や家族が「もう一度捕まるのではないか」と心配しながら生活する中で、言行を慎まざるをえなくなり、あれこれ思ったりパニックになったりして、反抗する力をなくしていく(10)

彼女たちに対しては、具体的に、以下のような扱いが伝えられている。

李婷婷さんの住居への監視

少なくとも4月15日の時点では、李婷婷さんの家は警察に厳重に監視されていて、出入口は15分ごとに自転車が巡邏しており、携帯電話も正常に使用できない状況だった(11)

韋婷婷さんは厳重に護送されて故郷の親元に送還

韋さんは厳重に護送されて、故郷の広西チワン族自治区の親元に送り返された。韋さんの言うところでは、その護送は「自分の人生の中で最も『ランクが高い』首長クラスの待遇」で、4人の留置所の警官が空港まで車で送り、5人の警官が南寧の空港まで同乗し、南寧の空港では、父母と南寧の国保(公安部国内安全局)の警官と市・郷鎮の警官が待っており、南寧で一晩宿泊した後、次の日は区・郷鎮の警官が直接5時間あまりかけて車で自分の区まで送ったという(12)

武嶸嶸さん、犯罪容疑者として8時間訊問され、心身ともにぼろぼろに

4月24日、武嶸嶸さんは、北京から来たと言う警官に呼び出されて、2時20分から、3人の警官にホテルの1室で訊問された。警官たちは、「武さんのフェミニズムの活動は支持しており、問題はまったくない」と言いつつも、北京益仁平センターの陸軍弁護士やその他の(元)同僚のことを尋ねた。武さんは、事実にもとづいてありのままに「私が知っていることは少ないし、益仁平ではプロジェクトの責任者だっただけだ」と述べた。警官たちは、続いて、男子トイレ占拠やDV反対、今年の国際女性デーのステッカーの活動について訊問した。そうしたことは拘留中の尋問で何度も聞かれたことなので、武さんは「もうきちんと言ったことではないのか?」と尋ねると、警官たちは「私たちは知らない」と言って、調書を作り始めた。

そこで、武さんは「正規の調書なのか? もし正規の調書なら、正当な手続きでやってほしい」と言ったら、警官は、急に居丈高になって、「お前は犯罪の容疑者だ。自分がどんな身分なのか知らないのか? 取り調べをするのは、正当な手続きだ」と言った。しかし、彼らは、召喚状も見せなければ、警察手帳も見せなかった。

警官たちが何度も武さんに説明を求めたことは、武さんが参加した活動は単純なフェミニズムの活動ではないのではないかということだった。武さんは本当に女性の権利に関する活動であり、それ以上の情報はないと答えたが、警官たちは、武さんは本当の話をしていないと言った。

5時45分、武さんは病気であり、身体が疲れたので、ソファーにもたれたら、警官に怒鳴られた。食事中も、警官から「思想政治教育」をされたので、武さんは、「私はこの国と人民を愛している。私は婦女権益保障法などが女性に対して法律的保障をしていることに同意している。私はソーシャルワーカーとして、社会の建設に対してささやかな貢献をしたいのだ」と言った。

6時25分、武さんは、身体的にも精神的にもつぶれる寸前で、頭が回らなくなって、ある女性警官に皮肉を言われて、その警官に午後ずっと我慢できないほど軽蔑的な言い方をされてきたこともあって、武さんは怒って、空気に向かって「このあま」と言ったら、長い時間罵られ続け、90度腰を曲げて3回お辞儀(三鞠躬)をして謝れと言われたので、武さんは罵倒を終わらせるために、やむなくそうした。その後も長いあいだ悪罵を浴びせられるなどしたので、武さんはずっと涙が止まらなくなった。

10時半になって、武さんはやっと部屋から出られたが、涙を流すばかりで、身体も精神も崩壊寸前だった。10時45分に夫に会って、タクシーを拾って家に帰ったが、8時間余りの人格攻撃のために、強烈な頭痛がした。友人と電話で会話をしたが、20分近く泣いて、「精神がほとんど崩壊しそうだ。もし明日会えなかったら、私は死んだということです」と言った(13)

そのほか、彼女たちはジャーナリストと会うことも許されていないという(14)

支援者の趙思楽さんまで容疑者扱いされ、香港行きが不許可に

フェミニストの趙思楽さんは、文章を書くなどして5人を支援してきたが、趙さんが4月16日に香港に行こうとしたら、税関で遮られて、警官に「あなたは未解決の事件の犯罪の容疑者なので、出境は許されない」という「北京市公安局」の落款入りの文書を読み上げられ、香港行きを阻止された。こうした行為にはなにも法律的根拠はなく、趙さんも「私はどの事件についても、調査も召喚も拘留もされたことがないし、なんの通知も受け取っていない。こんなふうに理由も言われずに、犯罪の容疑者にされるのか?! フェミニズム事件に声援を送ることが犯罪になるのか?!」と言っている(15)

外交部、北京益仁平センターに対する処罰を表明

5人が釈放された翌日の4月14日、外交部のスポークスパーソンは、北京益仁平センターには「法律違反の疑いがあり、処罰するだろう」と述べた。前回述べたように、同センターは5人の拘留中の3月24日にすでに家宅捜索を受けていたが、処罰を意図していることを示した発言だった。

それに対して、北京益仁平センターは、おおむね以下のように応答した
・私たちも弁護士を招聘して、法律にもとづいて今回の外交部の非難と3月24日の益仁平オフィスの家宅捜索と物品没収に対応する。
・北京益仁平は、2006年の設立以来、多くの部門や多くのクラスの警察部門に「面倒を見て」こられたが、もし本当に違法なことがあるのならば、今日外交部門が言うのではなく、とっくに警察が言っているはずだが、警察も何ら違法な点を指摘していない。
・私たちは、去年から、他の反差別機構も、連続して、まったく法律的根拠がない、まったく突然の弾圧にあっていることに注意している。2014年7月、障害者差別の解消を主な目的にしている鄭州億仁平機構が物品を差し押さえられ、2015年3月、性差別の解消を主な目的にしている杭州蔚之鳴機構が差し押さえにあった。
・国内で最も早く差別反対を専門にした公益機構として、北京益仁平センターは、反差別に努力をしてきたが、「反差別」という概念はすでに全社会の同意を得られており、中共中央18期3中全会の全面的な改革の深化に関する60条の決定の中にも「すべての就業差別をなくす」とある。当局が、反差別が必要だと宣言する一方で、反差別機構のオフィスを立て続けに捜査して、「違法」だと非難していることは、当局の政策に真実性・一致性・一貫性があるのか理解しがたい。
・釈放されたばかりの「フェミニスト五姉妹」は、みな北京益仁平センターの同業者で良き友であり、そのうち3人は私たちの同僚か以前の同僚でもある。五姉妹が警察に捕まったことに対して、私たちは国内外の各界といっしょに抗議をし、彼女たちに声援をおくり、4月13日に全員が釈放された。しかし、私たちは、益仁平がこの抗議と声援の活動において特に突出した貢献をしたとは考えていないので、私たちも、益仁平オフィスが3月24日に捜査され、外交部が益仁平を非難したことが、まちがいなく「報復」行為だと証明することはできない(16)

北京の人権弁護士の唐吉田さんは、外交部が北京益仁平センターの活動について「法律違反の疑いがある」と言ったのは、国際社会が「フェミニスト五姉妹」と北京益仁平センターが警察に捜索された事件に注目していることと関係があろうと述べた(17)。たとえば、3月27日、アメリカの国務省が、北京益仁平センターに対する捜索に遺憾の意を示し、「中国の人権状況は悪化し続けている」と述べたので(18)、外交部は、そうした発言に対して応答したのだろうというわけだ。

4月24日に、武嶸嶸さんが北京益仁平センターのことを何度も尋ねられたのも、中国当局が同センターに対する処罰を狙っているからだろう。

女性の権利は認めても、女性が運動によって闘い取ることは認めない? フェミニズム運動と民主化運動との相互協力を説く意見も

武さんに対して、北京から来た警官が、「フェミニズムの活動は支持しており、問題はまったくない」と言っているように、当局も今回の事件がフェミニズム自体に対する弾圧ではないと強調しているように見える。

しかし、陸軍弁護士が「中国では、女性の権益あるいはジェンダー平等は、政府によって与えられることはできるが、女性たちが自分で主張したり、自分で闘い取ったりするのではないと政府当局は考えている」と述べているように(19)、当局は女性の主体的な闘いについては否定的だと考えざるをえない(20)

そこまで露骨な言い方はしていないが、5人が釈放される少し以前の4月9日、『環球時報』は、5人の拘留について、「女性の権利の擁護は、勝手に通りに出て抗議をする理由ではない」という社説を出した。この社説は「女性の権利は中国では何ら尖鋭な話題ではなく、中国の女性の地位は世界の主要な順位で前の方であり、女性の権利を闘い取ることはタブーではない」と言いつつ、「重要なのは、フェミニズムがどんなやり方をするかであり、女性の権利そのものだけを論じるのか、それともわざとエッジボールを打つ(法律や規定にぎりぎり抵触しない行為をする)のか、不法な抗議によって社会秩序に挑戦して、さらに現行の法律体系に挑戦する姿勢を示すのかということである」と述べた(21)

この社説に対して、趙思楽さんは、「政府当局の代弁者である『環球時報』」の「言わんとするところは、女性の権利を論じてもいいが、私が私の方法でしか論じてはならず、女性自身は、自分の行動によって権利を勝ち取る資格はないということである」と指摘して、中国のフェミニズム運動と民主化運動とが相互に協力を強める必要があると述べている。伏字交じりの文章だが、一部をご紹介する。

フェミニズム運動の反権威の属性や自由平等に対する追求や運動をする者の自主的発声・自主的行動に対する信念は、[zz](=中国政府?)国家においては、フェミニズム運動は、必然的にD(Democracy?)運動の有機的構成部分になることを決定づけている(両者が相互に協力・承認するか否かにかかわらず)。

このたびの3.7フェミニズム事件と救援の闘いの成功は、中国のフェミニズム運動が正式に反[zz]の色彩を帯び、半ば受動的に政治化してD運動と互いに融合することを示している。

このような現実は、同時に、中国のフェミニズム運動家とD運動家の智慧と勇気を試している。彼女たちは新たな出発をする必要がある。両者がどのようにしてお互いに結びつき、お互いに敵視しないようになるか、そのためには、現在男性が主であるD運動が、いまなお重大なジェンダー的偏見と男権的思惟を脱却して、フェミニズム運動の成果と力を認め受容することが必要であるとともに、フェミニズム運動家がD運動と公共討論に意識的に参与して、ジェンダー意識について「進歩が必要な」[my](=民主運動?)の人々に対して辛抱強くなることが必要である。(22)

中国の行動派フェミニストがこれまで体制外の運動などとは一線を画す形で運動してきたことは事実であるし、だからこそマスメディアにも取り上げられたし、その点が5人の釈放にも有利に働いた面があることは先に述べたとおりである。しかし、その一方、それでも1カ月あまり拘留され、現在も拘留以前より運動がはるかに厳しい制約の下に置かれていることを考えると、これまでどおりの運動だけでよいのかという疑問もある。今後は、こうした点でも模索がおこなわれるだろうし、フェミニストの間にも分岐が生じるのかもしれない。

三 反撃はじまる

以上で述べたような、さまざまな困難な状況があるが、彼女たちや支援者も、当局からの報復を恐れずに、反撃を始めた。

捜査取りやめと国家賠償、謝罪、押収物品の返還を求める市民署名

5人が釈放された翌日の14日、「公民社会連署声明:警察はただちに職権の濫用を停止し、フェミニスト五姉妹事件を撤回し取り消せ」という署名サイトが設置された。以下は、その全文である。

2015年4月14日、「公共交通の車両の反セクシュアルハラスメント」活動を計画したことによって警察に捕まって1カ月あまり監禁された「フェミニスト五姉妹」は、4月13日夜に自由を獲得し、私たちと国内外の各界人士はみな喜び、安心した。しかし、五姉妹の事件に対する調査がまだ取りやめられず、五姉妹がまだ警察に「犯罪容疑者」として扱われ、彼女たちが「取保候審」にされているに過ぎないことに対しては、私たちは、警察のこうした対処の方法は合法でないし、不合理だと考える。

1.「フェミニスト五姉妹」は捕まったときに、「公共交通反痴漢」という「普法(法律知識普及)」活動を計画していたところだった。3月6日・7日に北京の警察が刑事拘留した理由は、「挑発してトラブルを起こす罪(尋衅滋事罪)」であった。しかし、この普法活動はまだ計画中であり、実行されていなかったので、「挑発してトラブルを起こす罪」の法律的要件にまったく合致していないので、根本的に成立しない。

2.警察が4月6日に検察院に「フェミニスト五姉妹」の逮捕を申請したときは、彼女たちの罪名は「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す(聚衆擾乱公共場所秩序)」に変更され、捜査の方向は、3年も以前に五姉妹の一部の人が参加した「男子トイレ占拠」・「血染めのウェディングドレス」の活動になった。明らかに、警察はもう五姉妹を拘留したときの罪名が成り立たないことがよくわかったから、事件を無理やり成立させるために、無関係な罪名と捜査の方向に変えたのである。これは、疑いなく、「先に人を捕まえて、後で証拠をでっち上げる」という違法な捜査である。

3.「男子トイレ占拠」の活動も「血染めのウェディングドレス」の活動も、起きたのは3年前であり、前者は、「にわかの便意」を覚えた女性を助けるために、男女の便器のアンバランスの問題を解決することを訴えたものであり、後者は、家庭内暴力防止に関する法律を普及させるためものであった。両者とも短時間のパフォーマンスアートにすぎず、「秩序を乱す」ことが目的ではなく、現場ではトラブルは発生していないし、公共秩序の混乱も起きていない。事後の効果から見ても、「男子トイレ占拠」という娯楽化した行動によって、メディアや立法者、為政者が「女子トイレの行列」の問題に注目し、重視をした。2012年だけでも、少なくとも広州・深圳・昆明・石家荘・南昌・太原などの都市の政府部門が関連する措置を実施した。年末には、「男子トイレ占拠」は『中国婦女報』の「2012年『ジェンダー平等』十大ニュース」に入選した。「血染めのウェディングドレス」のパフォーマンスアートも、わが国が今制定している「反家庭暴力法」に沿い、それを促進するものである。

以上述べたところを総合すれば、過去1カ月余り、警察によって「犯罪の容疑がある」と考えられたフェミニスト五姉妹がやってきた行為はすべて、なんら法律違反や犯罪の部分がなく、むしろ、わが国の女性の権益の保護を促進し、法治建設を促進したのであるから、表彰と褒賞を受けるのが当然である。彼女たちを捕まえたのは、明らかに冤罪事件である。現在、警察がフェミニスト五姉妹を「犯罪容疑者」として扱い続けていることは、明らかにこの冤罪事件を継続していることである。ここにおいて、私たちは、中国の警察に要求する。

1.ただちに五姉妹に対する刑事捜査を取りやめ、この事件を撤回して、五姉妹に対する「犯罪容疑者」としての扱いをやめよ。

2.ただちに国家賠償の手続きを開始し、フェミニスト五姉妹を不法に拘禁し、連行した行為について公開の謝罪をおこない、職権を濫用した警察の責任者を法によって処理せよ。

3.ただちに杭州蔚之鳴(注:武嶸嶸さんたちのNGO)・北京益仁平センターに対して押収した物品を返還し、民間公益機構に対する侵害と弾圧を停止せよ。

4.ただちに五姉妹にすべて財物を返還し、国際法に合致したフェミニズム運動の参与者に対するすべてのハラスメントを停止し、女性と女性団体が権益を勝ち取るすべての権利を保障し、セクシュアルハラスメントに反対し、家庭内暴力に反対するなどの女性の権益を保障する活動をまじめにおこなえ。

1.あなたの姓名は?
(        )

2.あなたの職業は?
(        )(23)

この署名ページは翌日には消えてしまった。それでも、150人近くの署名が集まり、この署名は北京市公安局と北京市人民検察院か検察庁事務局に送る予定だと報じられた(24)

李婷婷さん、武嶸嶸さん、拘置所内での人権侵害を告発し、押収物品の返却を求める

李婷婷さんは、王宇弁護士に委託して、北京海淀公安分局が違法行為――具体的には、疲労させて訊問した、人格を侮辱した、一度ならず顔に煙草の煙を吹きかけたなど――を海淀人民検察院に告発し、この案件を撤回して、自分に対する強制措置を解除し、押収した数十件の物品を返還するよう求めた。

李さんは、告発の手紙で、警察が国際女性デーの公共交通でのセクハラに反対する活動のために私たちを拘留したことは、思ってもみなかったことであり、「挑発してトラブルを起こす」罪も、「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す」罪も、自分に罪に陥れるものだと述べた。李さんは、犯罪にならないことをした人に対して上のような違法行為をしたことは無実の罪を作り出す行為だと述べている。

また、李さんは、取り調べのとき、目に強い光を当てられ続けたため、眼が長いあいだ赤くなって、よく見えなくなり、涙が流れて、具合が悪くなったことを明らかにした(また、李さんは、繰り返し、同性愛で「吐き気がする」、「恥知らず」だと言われたという(25))。

李さんの告発状には、押収されてまだ返却されていない物品として、本人の財布、ノートパソコン、ポータブルハードディスク、携帯電話3本、一眼レフカメラ、ガールフレンドのパソコン、携帯電話、USBメモリー、同室の友人のノートパソコンと携帯電話なども列挙されている。

李さんは、告発をしたことによって、逆に警察に攻撃されるという報復も心配はしたけれども、以上のようなさまざまな点を是正させることは、みな自分が持っている権利だと思うと述べている(26)

また、武嶸嶸さんは、訊問のときに以下のような精神的「拷問」を受けたと訴えた。
・「B型肝炎にかかっているから」という理由によって床で寝させられた(実際は、ベッドを共用しても伝染することはない)。
・同じ部屋の人がみな寝たずっと後になるまで、部屋に帰ることができなかった。こうした疲労させて訊問するというやり方によって、肝炎の病状が悪化した。
・「縄で縛って男子房に放り込んで、輪姦させてやろうか」「子どもはまだ4歳だな。今後の進学と就職が大変だな」と脅迫された。
・拘置所の警官に「あんたはくずだ。害毒を流す女だ。以前は、男は三妻四妾を持てたのに、今は、我々はあんたがたに苦しめられている」と大声で罵られた。
・捕まったとき、カルテや健康診断結果や数種類の薬を身につけており、そのうちの一つは、勝手に服用を停止したら生命が危険なものだったにもかかわらず、拘置所で薬を取り上げられた。武は何度も拘置所にそのことを言ったのに、ずっと無視され、やっと3月19日に公安病院で治療を受けたが、そのときには病状は非常に重大になっていた。
・出獄後も、身分証を警察に理由なく押収されて、生活のさまざまな面で苦労している(27)

北京の警察が武さんにしたことは、国連の「拷問禁止条約」の第1条の「拷問」の定義(「『拷問』とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって(……)『拷問』には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない」(28)) の「拷問」に当てはまると指摘されている。

李婷婷さん、留置所の状況についてルポ

また、李婷婷さんは、ただちに何らかの告発を伴うものではないが、留置所での状況についてやや詳しい記録を発表した。

李さんは、そのなかで、「威嚇と脅迫にあっても、私はフェミニズムの追求を放棄しないし、かえって決心が固まった」と述べているのだが(29)、留置所に関しても、以下のようなことを指摘している。
・留置所には、男性は放風(獄中生活者を屋外で運動させたりトイレに行かせたりする)させるのに、女性は放風させないことがある。また、監獄(留置所ではなく、既決囚が入る場所)では、祝祭日は夫婦で過ごせるのに、女性はそうではないという性差別がある。
・「当直制度」は、拘留している人が拘留している人を管理するという法規に違反する制度である(30)

武嶸嶸さん、人権侵害的な召喚を拒否

また、4月29日、武嶸嶸さんは声明を出して、杭州市の地区担当警察官から電話があって、北京の国保(公安部国内安全局)が私を召喚していると言われたけれども、私は召喚を受けなかったと述べた。その理由として、武さんは声明の中で次の3点を挙げた。
 1.私を担当している国保の警官は、北京の警察は召喚していないと言っているし、地区担当警察官は北京の警官の身分情報を確認していない。召喚している主体がはっきりしない状況の下では、私は召喚を受けることができない。
 2.北京の警察は4月24日と25日に、何の証明書を見せずに、八時間にわたって、疲労させて訊問をし、人格的侮辱もおこなった。以前私を侮辱した数名の警官の尋問は受けられない。これらの警官には最低限の職業道徳が欠けている。
 3.このように頻繁な尋問とその内容は、私の現在の事件とは関係がない。彼らは私が以前仕事をしていた機関(北京益仁平センター)のことを集中的に訊問したが、私はずっと以前に離職した末端の職員であり、私が知っていることは以前の尋問の中ですでに答えている。私は警察が尋ねる益仁平の内容をよく知らない。また、北京の警察が私を益仁平の証人として扱っているのか、それとも現在の事件の容疑者として扱っているのかもわからない。もし証人ならば、証人としての待遇を要求するし、もし容疑者なら、上述の問題は、明らかに私の事件の範囲を超えている。
 北京の警察のはなはだしく違法で非人道的な召喚に対しては、私は近いうちに法によって告発をする。私は適切な時間に、適切な範囲内で訊問を受けることを要求する。また、私を召喚した警官が専門的資質と基本的道徳を備えることを要求する。(31)

武嶸嶸さん、行政再議申し立てによって身分証を再発行させる

武嶸嶸さんは、釈放されたのに、身分証を返してもらえなかった。海淀派出所の警官は「武さんの身分証をなくした」と言い、武さんがもう一度発行するように求めると、何度もそれを承諾したが、実際にはずっと何もしてくれなかった。そこで武さんは、故郷の山西に帰って身分証を作ってもらおうと思ったが、武さんは保釈中なので遠方に出かけるには、臨時の身分証明文書が必要だった。だから、武さんは、居住地の杭州の西湖区の蒋村派出所に臨時の身分証明文書を交付するように求めたが、断られた。

身分証がないために生活のさまざまな面で不便を強いられたので、5月5日、武さんは、西湖区公安分局の蒋村派出所が職責を履行しないのは行政不作為に当たるとして、西湖区人民政府法制事務局に行政再議を申し立てて、臨時身分証を交付するように要求した(32)

さらに、翌日の6日には、杭州の地区担当警察官の王海浜警官に先月25日の尋問や身分証を渡さないことの不当性を訴える文書を渡した(33)

5月7日、海淀派出所の警官から、身分証はもう山西の方で出来ており、遅くとも明日には、王海浜警官に送るという返事が来た(34)

こんな当然のことについてさえ粘り強く働きかけなければならないことは、きわめて不当だが、武さんは筋を通して公に訴えて権利を勝ち取ったと言えよう。

李婷婷さん、裁判支援を再開

4月20日、李婷婷さんは、女子大学生の馬戸さん(仮名)が、宅配便配達員の採用の際、北京郵政が馬さんを「女性だから」という理由で採用しなかったことを訴えた裁判(この裁判については、本ブログの記事「『男性のみ』募集を訴えた3件目の裁判――今回は翌日に受理、『男性向け』と思われがちな宅配便配達員での採用の性差別を問う」参照)の2回目の審理の応援に駆けつけ、原告の馬さんと一緒に裁判所の門の前で、女性の力を示す「WE CAN DO IT」のポーズをして写真に収まった(35)

以上のような形で彼女たち反撃しているが、市民署名や李婷婷さん、武嶸嶸さんの要求や告発が直接なんらかの成果を挙げているわけではまだない。また、李婷婷さんが活動を再開したといっても、以前のような街頭パフォーマンスアートや全国的な活動はおこなわれないままである。彼女たちの活動が中国のマスコミに取り上げられることもない。その意味では初歩的な反撃であり、活動再開だが、そもそも釈放されてまだ一ヶ月、まだ保釈(取保候審)の段階である。今後のどのように道を切り開こうとなさるのかに注目したいし、国際連帯の方法も考えていきたい。

四 人権弁護士によるセクシュアル・ハラスメントをめぐって

そうしたなか、5人についた弁護士の1人である王秋実(ワンチウシー)さんが、当事者の家族や友人の女子学生たちに対して職権を利用してセクシュアル・ハラスメントをしていたことが明るみに出た。

猪西西さん、王秋実弁護士のセクハラを明らかにし、公の謝罪など求める公開書簡

5人の拘留中は、捕まっている当事者の救援に悪い影響があることを怖れて被害者や支援者も王弁護士のセクハラについて黙っていたが、4月22日、フェミニストで5人の支援者の一人である猪西西(ジューシーシー)さんが公開書簡を出して、王秋実弁護士が以下の行為をしたことを明らかにした。
・当事者のある家族が当事者の状況を尋ねたとき、引き替えに相手にプライベートな写真を送るよう要求した。その家族が事件の進展について相談したときも、性的要求をした。
・他のフェミニストの若い仲間たちに対しても、この事件で王弁護士に接触せざるをえないときに、程度は異なるが何度もセクハラをした。その若い仲間は、自分の安全も保障されていないなか、王弁護士は、緊急連絡人の身分を利用して、彼女に対して言語による露骨な性的暗示をした。
・その仲間が、王弁護士にそうした行為はやめて謝罪するよう求めたら、王弁護士はそれを受け入れつつも、からかった。

猪さんは、王弁護士が「フェミニスト五姉妹の権利を擁護しながら、彼女たちの友人の怖れや気かがり、心配を利用して、彼女たちを脅迫し、機会に乗じて彼女たちにセクハラしたことは、抑圧者の抑圧を利用して、あなたが支持しなければならない人を抑圧し続けたことであり、被害者を傷つけただけでなく、フェミニスト五姉妹と若い仲間のあなたに対する信頼を傷つけたことではないか?」と述べて、王弁護士に以下のことを要求した。
1.公に声明を出して、フェミニスト五姉妹事件の期間に職権を利用してセクハラをしたことを認め、それらの行為は女性の人権に対する侵犯だったことを認めること、
2.この事件の期間にセクハラをしたすべての女性に対して公に謝罪をすること、
3.今後は弁護士としての職権を利用することによる当事者その家族・友人に対してセクハラをしないことを承諾すること(36)

むしろ公開書簡の王弁護士への影響を心配する仲間たち。そうした状況に対する肖美腻さんの異議

肖美腻(肖美麗)さんも、4月23日、「私は王秋実に公の謝罪を求める。私にはこの最低限の正義が必要だ」という文を微博で発表した(37)

肖さんも、以下のことを明らかにした。
・王は私とメールでおしゃべりをしたが、何を話してもセックスする約束や男性の生殖器の話になった。
・私の友人たちも王にセクハラをされた。
・一番長いあいだ一番ひどいセクハラをされた人は、捕まっていた5人のうちの1人と関係が密接だったので、王との関係を壊したら彼女の救援にマイナスになることを恐れていた。
・肖さんが探してみたら、多くの友人たちもセクハラをされていて、自分の被害はとても軽微なものだった。
・自分たちはそれぞれ王に謝罪を求めたが、王の回答はふまじめなものだった。後に口頭での謝罪があり、それで終わりにした人もいたが、肖さんは不満足だった。しかし、救援にマイナスになることを恐れて、それ以上追及しなかった。

さらに、肖さんは、猪さんの公開書簡が出ると騒ぎになったが、みんなが議論したのは「王秋実はなぜこんなことをしたのか」といったことではなく、議論の焦点は「なぜこの公開書簡を出す必要があるのか」ということや「この書簡が王秋実に対してどのような影響を与えるのか心配だ」ということだったと述べた。

そういう状況に対して、肖さんは、「私はとても辛い。私は性暴力に反対する活動をしているので、被害者を責めるロジックはよく知っている。けれども、まさかこんなことがこんな形で自分の身に起きて、仲間の口から出ようとは思わなかった。本当にフェミニズムのテーマが私たち自身の身に起きたときの、多くの友だちの行為には、私は失望したし辛かったし、傷ついた。ある人は、友だちグループで、私たちが王秋実をネットでいじめていると言い、ある人は、私たちは王秋実に対して愛と思いやりが足りないと言い、ある人は、もう謝ったのにまだ不十分なのか、と言った。」

「私は本当にわかない。数人の女子学生が彼にセクハラされたというのに、私たちが公開の謝罪を要求するのがまさか行き過ぎだとでもいうのか? 公開の謝罪を要求することだけのことが……! まさかこれが本当に行き過ぎた要求で、彼に対するいじめだというのではあるまい?(……) まさか私たちセクハラされた人は、彼の秘密を守らならなければ思いやりがないというのではあるまい?(……)私は王秋実に公開の謝罪を求める。私にはこの最低限の正義が必要だ。また、私は、それを公開することによって彼が傷つくのは、私たちの責任ではなく、彼自身の行為が招いたものであり、彼をいじめていることでまったくないと言わなければならない。セクハラ事件がセクハラした者のプライバシーではないことは、家庭内暴力が暴力を振るう者のプライバシーでないのと同じであり、公表する必要があるか否かは被害者が決めることであって、被害者がある人のセクハラを公表したからといって、セクハラした者のプライバシーを侵害したと言って責めてはならない。」

「これはフェミニズム運動だ。もしフェミニズムの信念に背いたら、たとえより多くのフェミニズムを認めない人と団結したとしても、その運動をする意義はどこにあるのか? もし私たちがセクハラを受けても声をあげなければ、その反セクハラ運動の意義はどこにあるのか? 男権社会の中で成長した私たちは、みな男権文化の影響を多かれ少なかれ受けていて、多くの男権思想を内面化している。フェミニズム運動の参加者は、たえず学び反省する必要がある。これは遊び半分ではない。今回の事件の中から、私たちも学び、成長することを私は希望する」。

王弁護士の謝罪の声明。しかし彼は反省しておらず、北京紀安徳諮詢センターによる処分も軽かったため、肖さんはセクハラの証拠を公開

こうした声を受けて、4月23日の夜、王弁護士は微博で声明を出して、「このたびの事件で被害を受けたすべての女性に謝罪し、こうした事件を2度と起こさないことを保証する」と述べた(38)

しかし、27日、猪西西さんは、この声明は、同時にセクハラを「冗談だった」と言い、自分の職権を利用したことを否認している点で、「弁解ではなく、お詫びだと認めるのは難しい」と批判した(39)

29日、肖美腻さんも、王秋実が「冗談が行き過ぎただけだ」と弁解していることを批判した。それだけでなく、肖さんは、王秋実が別の場所では「私の友人はもちろん私を信じ支持している。そうでない者は自由に言わせておけ。私は意に介しない。人の言、恐るべし。私にはどうしようもない」と書いているスクリーンショットを示した。また、事件が起きた後に、王秋実も非常によく知っているフェミニストの友人2人が、多くの精力を使って彼と意思疎通を試み、その1人は彼と12時間話をしたが、2人とも説得に失敗したことも明らかにした。

肖さんは、多くの友人から「なぜ証拠を公開しないのか」と尋ねられたことに対して、それは「当事者に二次被害を与えることになるし、当時はまだ私は王秋実の面子をあまり失わせたくないと思っていた」し、「私たちは単純すぎて、王秋実というフェミニストを弁護する弁護士は、誤りを認識できる能力があると考えていた」し、「また、彼がいる機構である北京紀安徳諮詢センター(遠山注:1997年の「北京同性愛諮詢ホットライン」を起源とするLGBT団体)にも希望を持っており、この機構は彼に適切な処分をすると期待していた」、「紀安徳という名前は英語のgenderという単語に由来しているのだから、きっと基本的なジェンダー意識を持っているに違いない」と思っていたからだという。

しかし、肖さんが北京紀安徳諮詢センターからその日(29日)に得た回答は、王秋実に対して、「給料の支払いを停止して反省させる」だった。これでは「みんなの関心が過ぎ去ったら、機構に戻って出勤させる」ことになるが、「王秋実は職務を利用して多くの女性(レズビアンを含む)にセクハラをし、かつ、問題が指摘された後も、自分の誤りを認識することできず、自分は冗談を言っただけだと弁解し、さまざまな不平を言っている。このような弁護士がどうしてジェンダー機構にまだいる資格があって、どうして人権弁護士になることができるのか? 私は、紀安徳というのは、ただの虚名だと考えざるをえない。私は、紀安徳がなぜ直接自分はそのままgay団体だと言わずに、このような名前にしなければならないのかわからない。いや、たとえgay団体だとしても、このように言うのは不公平だ。gay団体でも王秋実には仕事を続けさせないだろう」と述べた。

肖さんは、王弁護士のセクハラに対して「大局のためには騒いではならない」という人もいるが、それは警察や公安の論理と同じだと以下のように批判している。

「私たちが公共交通でのセクハラ反対運動をしたとき、警察と国保(公安部国内安全局)が私たちのところに来て、5人の友人を拘留して、国家の安定のためには騒ぎを起こすなと言った。多くの友人が、私たちがこの5人の友人を解放するために声援を送るのを助けた。けれども、その『友人』がセクハラを受けたとき、いっしょに声援を送った人の一部は、私たちに、大局のためには騒いではならないと言った。それでは国保と同じではないか? こんな時も私たちはまだ紀安徳の安全を考慮しなければならないのか?(これらの情報はすでに国保も知っているということは別にして)」

肖さんは、王秋実のセクハラの証拠として彼のチャットの画像を公開した。それは、彼が「胸を見せてくれ!!!」とか、「これから会うときは、ズボンを脱いであなたが舐めるのを待っている」、「口でやってくれ」とか、(拘留されている女性のレズビアンパートナーに対して)「火事場泥棒をして、あなたの異性のセックスの初夜を自分のものにする」とか、「どっちにしても、口でやってくれ」「2人いっしょに口でやってくれ」とかチャットで話している(俗語が多いので、正確な翻訳かどうかわからないが)画像であった(40)

在米学者の沈睿さん「アメリカなら解雇」

5月1日、在米学者の沈睿さんは、「王秋実のセクハラはごろつきの行為である」という文を発表して、「私は謝罪では軽すぎると思う。謝罪は処罰ではない。私は彼を処罰しなければならないと思う」と述べた。沈睿さんは、王秋実は「他人が苦境にあるときを利用して、自らの権力によって、自らの性的ファンタジーを満足させ、きたない話をし(……)火事場泥棒をした」、「鉄格子の中の友だちが心配でたまらない」女性たちに「大局のために(……)調子を合わせざるをえないようにした」、「赤裸々なごろつきの行為である」と批判した。さらに、「王秋実のハラスメントは、中国の男権思想を持った、ちょっと権力を持つと濫用する男性のごろつきぶりと無知を示した」と述べた。

沈睿さんは、もしアメリカで同様な行為があれば、「王秋実は、まず彼がいる弁護士事務所から解雇される」し、「誠実な謝罪をしなければならず、そうしなければ処罰から逃れることはできない」と述べた(41)

社会運動内部の問題について声を上げることに対して、「大局のために」という理由から抑圧(ないし自己抑制)がかかるのは、日本も同様だろう。社会運動や人権弁護士に対する抑圧の強さという点から見ると、中国のほうが声をあげることはより困難かもしれない。まさに二重三重の困難がふりかかっている形だが、こうした問題についても声をあげている女性たちの存在は重要だ。

(1)中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(2)「市民運動抑圧に異論 中国、活動家5人釈放 党の傘下団体からも批判」『朝日新聞』2015年4月18日。
(3)この点に関連して、王政さんも、警察が1カ月かけても何の罪証も出てこなかったこと、以前政府系メディアも「男子トイレ占拠」をほめていたことなどが釈放につながったことを述べている(李思磐的微博「密西根大学王政教授的评论:拿出良知与勇气,无罪释放她们」2015年4月11日)。
(4)大兔泪目:这一次,你们比我更坚强勇敢」有道云笔记2015年4月20日。
(5)女权五姐妹之李婷婷的感谢信:字短而情长,要感谢的太多太多」博讯新闻网2015年4月21日。
(6)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(7)刚释放的女权人士韦婷婷与友人即兴演唱」博讯新闻网2015年4月20日
(8)武嵘嵘的信:期待它日相聚时,畅谈人生,把酒言欢」博讯2015年4月21日
(9)「中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(10)赵思乐「中国女权运动重新出发」博讯新闻网2015年4月18日。
(11)向莉‏@alicedreamss 2015年4月15日 5:46
(12)致小伙伴――来自Waiting的感谢信」有道云笔记2015年4月17日。
(13)以上は、「女权五姐妹之一杭州武嵘嵘出狱后继续连续遭北京警察骚扰精神几近崩溃」维权网2015年4月25日、「武嵘嵘:4月23、24日的情况记录」维权网2015年4月25日。
(14)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(15)因声援女权五姐妹案 女权主义者赵思乐被列犯罪嫌疑人阻止出境」维权网2015年4月17日。
(16)益仁平:对外交部指控我机构“涉嫌违法”的回应」维权网2015年4月15日。
(17)外交部谴责NGO组织益仁平违法 该机构称将聘请律师维权」Redio Free Asia 2015年4月14日。
(18)美国关注益仁平中心遭搜查 称中国人权恶化」美国之音2015年3月28日。
(19)中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(20)女性の権利の実現を唱えつつ、女性の権利のため運動を抑圧することは完全に矛盾しているということについては、前回ご紹介したように、艾暁明さんが「現在の維穏[=社会の安定維持]メカニズムは、国家が長いあいだ唱えている男女平等という文言とは完全に相反していることを暴露した。私たちの国家の女性の権益を保護する法律の中には、家庭内暴力にも性暴力にも反対する文言があるけれども、維穏メカニズムはこれらの言葉と完全に反しており、まったく引き裂かれた関係である」(「艾晓明:打压女权活动者为不智专横之举」博讯新闻网2015年3月12日)と述べているとおりである。
(21)社评:维护女权不是随便上街抗议的理由」『环球时报』2015年4月9日。
(22)赵思乐「中国女权运动重新出发」博讯新闻网2015年4月18日。
(23)https://zh.surveymonkey.com/s/RPD8FBN→(転載)「征集公民社会联署:女权仍未自由」博讯新闻网2015年4月20日。
(24)狄雨霏「支持者称女权五女应获得国家赔偿」纽约时报中文网2015年4月16日。
(25)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(26)获释女权人士抗争不止 李婷婷控告北京海淀公安局」Redio Free Asia2015年4月22日。
(27)女权五姐妹之一武嵘嵘指控警察出狱后提讯时对她实行精神“酷刑”」维权网2015年4月26日。
(28)詳しく言うと、「拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約)」第1条は、「この条約の適用上、『拷問』とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。「拷問」には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない」と記している。
(29)麦子家的微博「如果同志运动是我的情,女权主义则是我的魂——看守所侧记一」2015年4月26日。
(30)麦子家的微博「看见不合理的规则,挑战规则——看守所侧记二」有道云笔记创建时间: 2015-4-23 22:43 修改时间: 2015-4-26 14:36
(31)“女权五姐妹之一武嵘嵘不接受传唤的声明」博讯新闻网2015年4月29日。
(32)女权行动派更好吃的微博【五姐妹案件后续行政复议:嵘嵘需要身份证,嵘嵘要去看春天】5月5日 15:32
(33)小社工大社会嵘嵘的微博5月6日 21:18
(34)小社工大社会嵘嵘的微博【女权五姐妹续—武嵘嵘马上就是有身份的人了】5月7日 19:12
(35)以上は、女权之声的微博「竟称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭,北京邮政拒不认错」2015年4月21日 12:04→熊婧「北京邮政称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭」2015年4月21日。Maizi Li「 #‎freeforfive‬# is also a great Art Performance.Thanks for you all!」Facebook2015年4月21日では、1人でポーズをとったり、釈放運動で使われた自分の顔写真といっしょに写真に収まったりしている。
(36)猪西西爱吃鱼的微博「谢谢您的维权,但请为您的性骚扰行为道歉——致王秋实律师的公开信」2015年4月22日。
(37)肖美腻的微博「我要王秋实公开道歉,我要这最起码的正义」2015年4月23日。
(38)秋实律师的微博2015年4月23日 22:36
(39)猪西西爱吃鱼的微博2015年4月27日 14:30
(40)以上は、肖美腻的微博「我要王秋实道歉,而不是狡辩」2015年4月29日。
(41)以上は、沈睿「王秋实性骚扰是流氓行为」豆瓣2015年5月1日。

拘留中のフェミニスト活動家5女性の状況、国内外の支援運動、弾圧の背景など

<目次>
 1.拘留中の5女性の状況――さまざまな人権侵害。また、これまでの活動をすべて問題にされるが、罪は認めず支援に感謝
 2.NGO――家宅捜索、ウェブサイトの消失・更新停止など
 3.国内外で広がる支援、諸外国の政府も声明
 4.中国政府、国内の支援運動を弾圧、外国の要請も拒否
 5.弾圧の背景など――習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因か。
 6.まだの方は、署名をお願いいたします!

1.拘留中の5女性の状況――さまざまな人権侵害が加えられ、これまでの活動をすべて問題される、しかし罪を認めず支援に感謝

痴漢対策を訴えるために、今年の国際女性デー前日にバスの中でステッカーを配布するなどのアクションを計画していた若いフェミニストたちが3月6日~7日に警察に拘束され、中核的な活動家5人がその後も釈放されていない件(本ブログの記事「国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず」参照)のその後について、ご報告させていただく。なお、彼女たちのこれまでの活動の年表と本ブログの諸記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧いただきたい。

その前にお断りしなければならないのは、先日の記事には記述が不正確だった点があることだ。韋婷婷さんの代理人の王秋実弁護士は、「最近メディアは、5人の女の子がすでに逮捕されたと報道し、5人の女の子がすでに刑期5年の罪で起訴されたという情報さえあるが、それらは事実ではない。5人の女の子は刑事拘留されているだけで、逮捕はされておらず、まして法廷で審理されている段階ではない」(1)という声明を出している。また、当初拘留されたのは、10人ではなく、9人だったようだ。これらの点について記述が不正確だったことをお詫びしたい。

さて、この間、彼女たちと面会した弁護士から、それぞれの状況が伝わってきた。

【1】武嶸嶸さん――B型肝炎を発病しているのに、薬を取り上げられ、治療も受けられず。その後病院に移されたが釈放されず

3月16日、王飛弁護士が武嶸嶸(ウー・ロンロン)さんと面会したところ、武さんは「私は慢性B型肝炎(中度)を患っていて、かつ発病期なのに、留置所は治療をしてくれず、身につけていた薬も押収されたので服用できない。伝染するのが心配だからと、毎日(ベッドでなく)床で寝させられている(遠山注:実際は、B型肝炎ウィルスHBVは、HIVウィルス同様、体液を交換しなければ伝染しない)」と述べた。

その後、王飛弁護士が留置所に何度も掛け合ったところ、留置所側は「もう武嶸嶸はベッドで寝られるようにしたし、病気はちゃんと治療する」と約束した。けれども18日にもう一度、武さんと面会したら、武さんは「あいかわらず床で寝ていて、なんら治療は受けていない」と言った(2)

王飛弁護士は、「2回の面会したとき、武嶸嶸の顔色は蠟のように青ざめていた。彼女は、発病期なので、いつも疲労を感じており、夜、眠る時も肝臓の部分が痛み、朝、起きると口の中には血痰があると言っている」と述べている。武さんの夫によると、武さんは肝臓病で今年2月に、12日間入院し、退院した時も「注意して休息すること」「1か月したらまた病院で検査をし、具合が悪い時は医者にかかること」という注意を与えられていた。

武さんの友人の野靖環さんは、「警察は、第二の曹順利事件(人権活動家が、彼女たちと同じ「寻衅滋事(挑発してトラブルを起す)」罪で逮捕され、拘留中にさまざまな病気を発症し、治療も受けられずに死亡した事件(3))を引き起こそうとしているのではないか?」と心配している(以上は、(4)

その後、弁護士が連日病気の治療の問題について留置所と交渉したところ、19日に、「もう公安病院に検査のために入院させた」と答えた。しかし、その後の詳しい状況は不明だ(5)。23日、梁小軍弁護士が武嶸嶸さんに面会しようとしたが、できなかった(6)

ただ、武嶸嶸さんは、3月16日に面会した王飛弁護士によると、自分はけっして違法な犯罪活動をしていないと述べ、各方面から支持に感謝しているとのことである(7)

【2】王曼さん――連日の真夜中までの訊問のために心臓病を発病、病院に。

3月20日、趙霞弁護士が、公安病院で王曼(ワン・マン)さんに面会した。王さんは連日、訊問が頻繁でかつ常に真夜中まであるので身体が疲労し、心臓病を発病して、現在は公安病院で治療を受けているという。病状はすでにコントロールされており、当面の危険はないが、弁護士としては、もう拘留を続けるべきではないと考えている(8)

【3】李婷婷(李麦子)さん――真夜中までの尋問や労働で2時間しか寝られない夜も。汚い言葉で人格的侮辱も

3月20日と23日、燕薪弁護士が李婷婷(李麦子)(リー・ティンティン、リー・マイズ)さんに面会しようとしたが、留置所側に拒絶された(9)

3月25日、燕薪弁護士はやっと李さんに会えた。李さんは、訊問の状況について、「土曜日は休みなのを除いて、毎日2、3回尋問がある。通常11時までおこなれわれ、夜中の1時半になることもあり、今日は2時から4時まで当番を割り当てられたが、6時には起床しなればならないので、2時間しか寝られなかった。また、訊問課長ともう一人の警官は、いつも汚い言葉で李さんの人格を侮辱し、わざと煙を顔に吹きかけることもある」と述べた。

警官は、李さんがやろうとした3月8日の痴漢反対ステッカーによる宣伝や、李さんがこれまでにやってきた、(トイレの男女の便器数の不公平さに抗議するための)男子トイレ占拠、傷を負った新婦のコスプレ(をしてDV反対を訴えたこと)、(大学入試の男女差別に抗議して)坊主頭になったことなどのフェミニズムの宣伝について訊問して、李さんに誤りを認めるように要求した。それに対して、李さんは、「それらはみな性差別に反対し、ジェンダー平等を提唱する、非常に意義があることだ。パフォーマンスアートという方法をとったこともあるが、いかなる誤りでもまったくなく、まして犯罪ではない」と述べて、誤りを認めることを拒否した。

李さんは数日間気分が落ち込んでいたが、そのときに、以前男子トイレ占拠をして警察に呼び出されたときに、あるフェミニストの先輩がショートメールをくれて、「フェミニズムの事業をすることによってあなたは辛い目にあうだろう」と言われたことを思い出した。李さんはこの言葉を思い出すたびに全身に力がみなぎると語った(10)

【4】鄭楚然さん――重度の近視なのにメガネを取り上げられる

3月17日、胡貴雲弁護士が、鄭楚然(ジョン・チューラン)さんに面会した。鄭さんは、重度の近視なのにメガネがないので、物を見るのに苦労するが、同室の人も良くしてくれるし、飲食や生活も問題はない。胡弁護士が、鄭さんに、中山大学を含めた世界各地の団体と個人、メディアなどの激励と注目を伝えると、鄭さんは、胡弁護士に託して、みんなへの感謝の意を示した(11)

【5】韋婷婷さん――メガネがないために不便。何度も同じことを尋ねられて疲労。

3月17日、王秋実弁護士が、韋婷婷(ウェイ・ティンティン)さんに面会した。韋さんの精神状態は良く、韋さんは、自分が女性のためにやったことは国家の政策と法律の規定に合致しており、なんら違法な犯罪行為ではないと考えている。ただ、留置所にはメガネがないので、800度の近視の韋さんには不便を強いられているが、外部の声援の情報を聞いて感動して涙をこぼしたとのことである(12)

最近は訊問の頻度が高くなり、韋さんも「もう疲れてしまった」と言う。韋さんは「多くの問題は何度も尋ねられたことだ。3、4年前の研修の経験についてさえ尋ねられたけれども、時間が経ちすぎたのでもうはっきり覚えていない。また、訊問している警官は、多くの活動は許可[批准]されていないから違法だと言って、違法だったと認めろと言う」と述べた。それに対して、弁護士は、「なんら違法ではないし、まして犯罪ではない。あなた方は集会やデモ、大きな集団活動をしたわけではないのだから、許可を得る必要はまったくない。一万歩譲って、たとえあなたが違法だと認めても、罰金、せいぜい治安拘留であり、刑事拘留はできない。まして人を捕まえてきた後に違法だと認めろと言うのは、罪名をでっち上げることだ」と述べた(13)

以上から、拘留中の女性5人に対して、さまざまな形で人権侵害がおこなわれていることがわかる。

まず、総じて、弁護士がなかなか面会できないという状況がある。

また、深刻なことに、連日の真夜中までの訊問とか、それによって睡眠を取らせないとか、病状から言っても釈放すべきような人からも薬を取り上げるとか、その結果として入院に至らしめても釈放しないといった状況がある。メガネが没収されたままであることも人権侵害であるし、人格的侮辱も加えられている。

さらに、李婷婷(李麦子)さん、韋婷婷さんに対する尋問から見ると、単に今年の国際女性デーの活動計画だけでなく、彼女たちのこれまでの活動全体を問題にし、違法と見なしているようだ。

ただし、それにもかかわらず、これまでに自らの罪を認めた女性はおらず、外からの激励に感謝しているという点も共通している。

2.NGO――家宅捜索、ウェブサイトの消失・更新停止など

【1】彼女たちの活動を支えた北京益仁平センターに家宅捜索

3月24日の早朝、差別反対運動をしている民間団体である北京益仁平センターの事務局に、約20名の警官らしき者たちが捜査に入り、ドアをこじ開け、物品を差し押さえた。彼らは4、5時間の捜索の後、事務局の財務証票やパソコンなどを差し押さえて持って行った。

北京益仁平センターは、2012年に「ジェンダー平等」プロジェクトを開始し、多くのフェミニスト活動家を育成・支援してきた団体であり、今回拘留中の若い女性たちの研修などもおこなってきた(14)

【2】ウェブサイトの消失、更新停止、エントリ削除

若いフェミニストグループの中核になっていた「性別平等工作組(正式名称は、中国語は「性別平等倡導行動網絡」、英語は「Gender Equality Advocacy and Action Network」)」のウェブサイトがなくなってしまった(現状)。このウェブサイトは街頭パフォーマンスアートをはじめとした、さまざまな活動を伝える写真が満載のカラフルなサイトで、アドレスのxbpdは「行動派(xingdongpai)」を意味していたと思う。

女声網」は無事だが、更新は完全に停止している。こちらのサイトは、以前からあったNGOである女性メディアウォッチネットワークのサイトだが、彼女たちの活動を伝える上で「性別平等工作組」のサイトと同じく重要な役割を果たしてきたサイトである。

微博(中国版ツイッター)に関しては、アカウント自体が削除された微博は見当たらないし、フェミニスト行動派の微博(女权行动派很好吃)も無事である。しかし、どのアカウントのものであれ、今回の事件関係の発信は、非常に頻繁に削除されている。

3.国内外で広がる支援、諸外国の政府も声明

【1】国内

3月11日頃から、鄭楚然さんが卒業した中山大学など、広州の10大学の学生・卒業生は、署名運動を始めた。その署名は、以下のように訴えている(その一部)。

広州の大学生として、私たちはみんなに訴える:
一貫してジェンダー平等を推進し、立派な都市の建設に力を尽くした若い公益人で、広州の中山大学の卒業生である鄭楚然に声援を送り、彼女の境遇が一日も早く妥当な形で解決し、今後も行動の力によって私たちの社会のために、もっと多くの正のエネルギーを作り出し、若者の努力によって共に調和した幸福な社会を促進させるよう訴える。

私たちは、各大学の学校側にも訴える。中山大学の学校側が、中山[孫中山、孫文]先生の学校創立の理念を受け継ぎ、鄭楚然校友に声援を送り、関係各方と協調して、事件の適切な解決を積極的に促進するように求める。現在いたるところで見られる女性を差別し、女性をモノ化する社会環境の中で、鄭楚然と彼女の友人の行動は積極的な力に満ちており、社会進歩の方向を代表している。中山大学はこのような理想と気持ちを持った学生を生み出したことを光栄に感じるべきである

3月12日時点で、この署名に応じてネット上に氏名を公表している人が107人(うち中山大学の在学生51人、卒業生31人)がいた(15)

3月12日、李麦子(李婷婷)さんが卒業した長安大学がある西安の大学でも、5人を支援する署名運動がおこった。この署名は、以下のように訴えている(一部)。

李麦子が男子トイレ占拠活動を起こし、都市管理委員会に手紙を書き、大学で女子トイレの改築をすすめたことは、すでに衛生部・住宅建設部の政策の改善にも結びついた。DV反対の写真を集める活動に参加し、裁判の現場ではDV被害者のKIMに何度も声援を送った。また、教育部の学生募集の性差別に反対した。

私たちと李麦子は、西安という悠久の歴史と輝かしい文明の古都の学生であり、私たちは、彼女が女性に対する差別をなくし、ジェンダー平等を推進する事業のために貢献したことを誇りに思う。

ここに私たちは呼びかける。北京の警察は「法によって国を治める」という環境の下ですべてを厳格な法律的手続きによって行わなければならない。辱めたり中傷したりしてはならず、疲労させて訊問してはならず、拷問による自白の強要をしてはならない。弁護士との面会を許可し、医者にかかり薬を飲むことを許可し、基本的人権を保障し、秘密に拘禁してはならず、公開で公正な裁判をして、彼女に自分を弁護する権利と機会を与えなければならない。(16)

3月12日には、韋婷婷さんが卒業した武漢大学でも署名運動が起こった。この署名は、要求内容は西安の署名と似ているが、韋さん自身ついては、以下のように説明している。

韋婷婷は武漢大学社会学系社会学専攻2005年級の校友で、武漢大学の人類学専攻修士課程を卒業した。在校期間は、《ヴァギナ・モノローグ》を上演し、さまざまな形でフェミニズム思想をキャンパスに引き入れ、多くの学生を啓発した。卒業後はLGBTたちの行動に心身を投入している。(17)

さらに、全国18省市34人の女性弁護士が、「[北京市公安局によって]数名の女性の権利の唱導者が拘禁されたことについての通報の書簡」を出した。通報先は「公安部、北京市人民検察院、全国婦連」だから、この書簡自体に効果があるとは考えられないが、法的な不当性がアピールされていると言えよう。下はその一部である。

公安部、北京市人民検察院、全国婦連:

彼女たちに対する逮捕・ハラスメントは、わが国の女性児童権益保護法の女性の権益保護についての関連規定に対する重大な違反であり、女性の合法的権益を侵害した責任者たちは、行政・民事・刑事責任を法にもとづいて負わなければならない。それゆえ、私たちは、ここに、公安部、北京市人民検察院、全国婦連に対して、北京市公安局の違法行為を通報するとともに、次のように訴える。

一、北京の警察はただちに違法行為を停止し、拘禁された女性の権益の唱導者をただちに釈放し、彼女たちから押収した物品を返却し、他の女性の権益の唱導者に対するハラスメントと威嚇を停止すること。

二、北京市の人民検察院は、警察が法律の規定に反して公民を勝手に拘留した違法行為に対して法律的監督をおこない、北京の警察にただちに違法行為を是正し、関係する責任者を調査し処分すること。

三、全国婦連はただちに捕まえられ拘留された女性の権益の唱導者の合法権益を擁護し、上述の部門に違法行為を調査・処分することを自ら要求すること。

四、私たちは事件の展開を注意深く見守って、これらの女性の権益の唱導者に対して必要な法律的援助をおこなう。(18)

なお、国外からだが、3月13日、フェミニストアーティストの李心沫さんも、ドイツのウィースバーデンでの個展の開幕式で、5人の釈放を要求した。李さんは、身体にも「Free Maizi li(李麦子を釈放せよ)」などと釈放を要求する5人の赤い文字を書いて訴えた(19)

また、中国の国内外で、ネットユーザーが一人一枚の写真で5人に声援を送る運動も始まった。これはFacebookの「Free Chinese Feminists」を利用したものだ。このページは、現在、英文で最新情報が読めるページになっている。

また、今回の大きな特徴として、労働者、とくに深圳の労働者や広州大学城の環境衛生(清掃)労働者からの支援の声が大きいことがある(20)。これはとくに鄭楚然さんが彼(彼女)らを支援したことによる(この点については、鄭楚然「ルポ:女たちのたたかい-広州大学城の環境衛生労働者のストライキ」、「中国:囚われたフェミニズム 労働者たちが支援に駆けつける」を参照されたい)。工評社という体制外に近いサイトも、「労働者の権利と女性の権利が別々だったことはない」(21)として、彼女たちの支援を呼びかけている(後述)。

【2】国(地域)外の民間団体

まず、3月10日、アムネスティ・インターナショナル中国チームが、彼女たちはまだ弁護士と接触できておらず、拷問などの虐待の危険があることをアピールした。その後、アムネスティ・インターナショナルが「Free The Five」アクションを開始した。

また、おりしも3月9日~20日に、ニューヨークで国連女性の地位委員会が開催されていたが、女性団体が、5人が釈放されないかぎり、中国が国連と今年9月に開催しようとしている「世界女性サミット」(22)をボイコットすることを呼びかけた(23)

また、開発における女性の権利協会(Associantions for Women's Rights in Development[AWID])、イシス・インターナショナル(Isis International)、女性の人権のための緊急行動基金(Urgent Action Fund for Women’s Human Rights)、人権と発展のためのアジア・フォーラム(The Asian Forum for Human Rights and Development)、貧困をなくすためのグローバル・コール(Global Call to Action against Poverty[GCAP])などの国際女性団体も5人の釈放を要求した(24)

3月11日には、台湾の婦女新知基金会が、以下のことを要求する署名運動を開始し、以下の点を要求した(25)

1.中国政府が女性の権益とジェンダー平等を顧みないことを譴責し、拘留されているフェミニズム運動家をすみやかに釈放することを要求する。
2.台湾の女性/ジェンダー/人権団体には、この署名に連署し、海峡を隔てたジェンダー運動の仲間たちに声援を送るよう要請する。
3.馬政府には、両岸の経済・貿易交流だけを重視するのではなく、両岸のジェンダーおよび人権の発展のための交流も重視することを要求する。また、政府はすみやかに外交ルートをつうじて、拘留されている者に関心を示して、釈放するよう求める。

3月14日、マレーシアの26の人権団体が5人の釈放を求める共同声明を出した(26)

3月17日、ドイツ最大の女性人権団体「TERRE DES FEMMES(女性地球)」が、ただちに5人を釈放するよう要求する公開書簡を出した(27)

3月18日、世界フェミニストたちが、1週間で100ヵ国あまり、2500名以上の署名を集めて、国連本部の向いでも小さな集会をおこなった([動画] FREE OUR SISTERS NOW! )(28)

同じ3月18日には、韓国の市民団体が中国大使館前で集会を開いて、40団体と150人が連署した声明書を発表し、5人の釈放を要求した(動画)(29)

私たちは、女性とセクシュアル・マイノリティに対する暴力に反対し、すべての人の自由の権利を擁護する韓国の社会運動団体と個人として、逮捕された5名の活動家と政府に弾圧されて苦境にある中国のフェミニストLGBT活動家たちに、心から深い支持と連帯の情を表明する。私たちは、ある個人の生活も国境を越えた他の人の生活と結びついていると信じる。

私たちは中国政府に対して、拘禁されたフェミニストLGBTの5人の活動家をただちに釈放して、フェミニストLGBTを含めた活動家と社会運動に対する弾圧を停止するよう訴える。私たちは中国政府に対して、健全な集会、結社、言論の自由と権利を保障するよう訴える。拘禁された活動家が安全に釈放されるまで、フェミニストLGBTの活動家と社会運動に対する弾圧を停止するまで、私たちは全力を尽くしてあらゆる方法で彼女たちとともに闘い続ける。

3月21日には、香港の新婦女協進会(The Association for the Advancement of Feminism[AAF])、アムネスティ・インターナショナル香港(國際特赦組織香港分會)、職工盟婦女事務委員会(Women's Affair Committee of Hong Kong Confederation of Trade Unions)、大専同志アクション(大学や専門学校で活動するLGBTの人権団体)(大專同志行動 Action Q)など4団体の30人近くの人々がデモをおこなった。彼女たちは、「セクハラ反対には道理がある。フェミニストを釈放せよ」とスローガンを叫びつつ、中央人民政府香港特別行政区駐在連絡事務局(中聯辦)に行って、その看板のプレートに世界各地から寄せられた署名を入れた袋を貼りつけ、以下の点を要求した。

 1.中国政府は、ただちに無条件に武嶸嶸、鄭楚然、李婷婷、韋婷婷、王曼を釈放するよう要求する。
 2.彼女たちが釈放される以前は、定期的に何の制限もなく弁護士・家族と面会でき、何の制限もなく彼女たちが求める治療が受けられるようにし、拷問やその他の虐待はしないよう保障するよう要求する。(30)

この署名は先日呼びかけさせていただいたもので、世界各地から2033人の個人署名と71団体がこの日までに集まった。下に署名した方全員のお名前がある。
【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】

当日の活動を担った団体の一つである「大専同志行動」の李徳雄さんは、「中国共産党は、中国人民と同じように香港人民も圧迫しようとしており、香港でのジェンダーに関する運動も取り締まられるのではないかという心配が強まっている」と語った(31)

3月23日には、アメリカのフェミニズム団体、「ストップ・ストリート・ハラスメント」と「スラットウォークDC」が、ワシントンの中国大使館前で抗議行動をした(動画:Support the Five Feminists from DC)(32)

スペインの「連帯のための同盟」(Alianza por la Solidaridad)も署名運動を開始している(33)

【3】諸外国の政府も声明

3月12日、EUの外交事務と安全政策のスポークスパーソンが、中国政府はただちに5人を釈放することやただちに弁護士や家族と面会させるよう求める声明を出した(34)

3月14日には、アメリカ合衆国国連大使のサマンサ・パワー(Samantha Power)がツイッターで直ちに5人を釈放するように求めた(35)

3月24日には、イギリスの「外務および英連邦省」のスポークスマンが「私たちは、中国政府に、中国の憲法と国際的人権に合致した言論の自由を行使したために拘留されているすべての人々を釈放するよう求める」と述べた(36)

3月25日、カナダの外務国際貿易省も、「カナダは、セクシュアルハラスメントに対する平和的運動をした5人の女性が拘留され続けていることに深い関心を持っている。カナダは中国政府に対して、これらの女性を釈放することを求める」という声明を出した(37)

4.中国政府、国内の支援運動を弾圧、外国の要請も拒否

以上のような動きに対して、中国政府は弾圧や拒絶をした。

まず、政府当局は、大学に対して、学生が署名運動をするのを阻止するように求めた。ネットにはその通知の内容も書き込まれた。それは、「各学院は迅速に行動して、学年・クラス、学生の中に入って、状況を調査し、教育と忠告・制止をし、積極的に有効な措置をとって、断固として旗幟鮮明に、学生がこのような連署や声援を送る活動に参加しないよう教育し、導かなければならない。もしそのような状況があれば、ただちに学生部の思想教育事務局に知らせるようにお願いする」というものだった。

実際、中山大学で「フェミニストを釈放せよ」という署名に参加した人は、みな学校側の指導員に呼び出されて、以下のようなことを言われて脅され、止めるように言われた。
 1.「档案(身上調書)に良くない記録を付けるから、今後の進学や就職に影響するぞ」
 2.「まだことの顛末がはっきりしないのに、衝動的にやるな」
 3.「あなた方は利用されている」
 4.「政府が逮捕したのは、大兔(鄭楚然のペンネーム)たちがやっているこのような『公共交通での性暴力反対』は集団的活動で、他に目的があるかもしれないからだ」(38)

他の大学の署名運動に関しても、同様の措置が取られたと考えられる。

また、武さんの状況が心配なので、20日、北京の人権活動家の野靖環さんたち16人が海淀留置所に行って、所長と交渉しようとした。しかし、彼女たちは、みなパトカーに乗せられて派出所に連行された。とくに野靖環さんは、一人で蘇家坨派出所に連行され、その後連絡が取れなくなり、十数時間後にやっと釈放された(39)

中国政府は、外国政府の声明に対しても、拒否する姿勢を示した。

たとえば、EUの声明は、「欧盟在中国」というEU在中代表団の公式微博にも掲載されたが、その声明は微博から削除された(40)

また、24日のイギリスの外務および英連邦省の声明に対しても、翌25日、中国外交部の華春瑩スポークスパーソンは、定例記者会見で、「いかなる人も中国に彼女たちを釈放するよう要求する権利はない」「中国の司法の主権に干渉することを止めるよう望む」と述べた(41)

5.弾圧の背景など――習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因か。

「工評社」という体制外の労働運動グループと思われる団体が、「当局に弾圧されたフェミニズム運動に重大な関心を持て:彼女たちと私たち一人一人の被抑圧者は深い関係がある」という論文を発表したが、その中で、今回の弾圧の原因などにも触れている。

以下はその抜き書きであるが、簡単に言えば、彼女たちのような非常に温和な運動が弾圧されたのは、近年習近平政権が女性役割や伝統的家庭観を強調していたこととフェミニズムとが相反していたことや、彼女たちは自らの体系的思想や組織を持ち、国家から独立していて、行動力があり、政府の政策決定にも関与しようとしたことが弾圧の原因になったと述べている。

工評社は、この事件はおそらく中華人民共和国建国以後、当局が初めておこなった、フェミニズム活動グループに対する大規模な政治的迫害であり、また、2015年に国家が暴力的に民間の社会運動を弾圧する最初の重大なシグナルだと考える。

2012年から今まで、「フェミニスト行動派」がとりあげたテーマは、数えきれない。(……)彼女たちは、勇敢に「行動派」の旗印を掲げ、さまざまな創意あるパフォーマンスアートと政策の唱導をつうじて自らの理念を実践した。とくに述べておきたいのは、鄭楚然という「挑発してトラブルを起こす」罪をかぶせられたフェミニスト行動派は、ずっと労働者、とくに女性労働者の権益の問題に非常に関心を寄せていたことである。

今までのところ、彼女たちの活動のやり方はまだ非常に温和であり、いったんは統治階級によって有益な社会活動の補充だと見なされ、政府側のメディアでも広く肯定的な報道がなされ、多くの政府側部門が彼女たちの訴えに何度も公に返答をし(……)てきた。それゆえ、このたびの空前の大規模なフェミニズム活動家に対する弾圧は、非常に意外で、すっかり驚かされ、わけがわからないと感じられた。まさか公共交通の痴漢防止のシステムを作ることを唱える公益活動さえ、デリケートなタブーになったのではあるまい? いまなぜ、官庁が、このように温和で、以前は政府側のメディアでも肯定的な報道が少なくなかった社会活動さえ容認できなくなったのか? フェミニズム活動グループに対する、このまれに見る大規模な弾圧は、誰にとって、どのような危険信号なのか?

直接的には、その前の2つの事件が注目に値する。去年10月、「広州市非法社会組織取り締り工作細則(意見募集稿)」が広州各地の社会運動公益界の集団的なボイコットにあって、民間で政治的騒動を引き起こしたことと、今年2月22日(旧暦の新年4日)に、18名のフェミニストが春節の夕べの差別に反対するネット上の署名運動を起こしたことである。わずか数時間内に1300あまりの署名が集まって、すぐさま全国の各大メディアとネットの報道の焦点となり、広い範囲で討論が起きた。この2つの事件は、社会の公共生活でも文化領域でも、政府側の主旋律が、民間の社会活動に対して無視・抑圧したことを表しており、後者はますます大きくなりつつある影響力と独立した意志、なかでも、フェミニズム運動がこれらの民間運動の中の最も自覚的な一つだということを示した。それゆえ、国際女性デーの前夜の逮捕は(……)おそらく国家のフェミニズム活動とその他の民間社会活動に対する系統的な弾圧の開始である。

私たちは、一つの重要な原因は、フェミニストが唱える、両性の平等を勝ち取って父権制が決めた女性の社会的役割に反対するという「異端の理念」が、当局が宣伝する主旋律に「逆らった」ためであると考える。ここ数年来、社会保障システムの重大な欠陥が明らかになって、公式のイデオロギーが日増しにお笑い草になってきて以後、国家は、社会を安定させ、青年を抑えつけるために、年長者や夫、夫の家の権威を強化し、女性の権益と青年の自由意志を犠牲にした基礎の上に家族関係を構築しようとして、家庭倫理・伝統的道徳を強力に宣伝してきた。たとえば、注目に値するのは、先ごろ、習近平がとくに「社会生活と家庭生活での女性の独特の役割を発揮させることに重点を置く」と明確に指示し、政府当局側の婦女連合会がさらに直接にそれを「家庭を社会主義の核心的価値を養育し実践する立脚点にする」と解読して、伝統的家庭観を強力に宣伝した。

国家がこのたび広範囲でフェミニズムの活動を暴力的に弾圧したもう一つの、さらに重要かもしれない原因は、この社会運動は、行動があり、組織があり、影響があり、すでに形が出来上がっていて、自らの思想ないし社会生活圏があり、自らのシステムを形成しているだけでなく、国家の主流の言葉に屈服せず、柔軟で強い独立性があって、さらに不合理な政策を変える行動精神と新進気鋭の遊説能力を持っていることである。公式のメディアの報道によると、公衆の視野の中で活動しているフェミニズム組織は10前後あり、いつも組織されてフェミニズム活動に参与している若い人は数百名前後いる。たとえば有名なフェミニズム団体「フェミニスト行動派」は100名あまりの中核的メンバーを有している(42)。彼女たちはうまく微博・微信を運用してコミュニケーションしており、街頭パフォーマンスアートなどの方法でニュースを作り出し、かつ即座にメディアに情報を提供し、意識的に政府の政策決定に関与しようとしてきた。

一般の文化活動と異なって、彼女たちは、広範な女性の権利擁護のために、実際の行動をする性質を持っている。また、一般の権利擁護活動と異なって、彼女たちは自らの体系的な思想文化を持っていて、かつその思想体系は、国家・資本・統治イデオロギーに対して批判的性質を持っており、同時にまた、それを行動に移して政府の関係部門の政策決定を変えてきた。その結果、彼女たちの主張は情理に合ったもので、活動方法も非常に温和だったにもかかわらず、彼女たちの勢いが大きくなったとき、国家が弾圧する必要がある不調和な異端になる。

実際、他の領域では、弾圧はすでに発生している。フェミニズム団体の受けた弾圧は、もちろん最も早いものでも、最も厳しいものでもない。

しかし、私たちは、このたびのフェミニズム運動が遭遇したまれに見る広範囲の弾圧は、2つの点でとくに重大な性質を持っており、すべての進歩的な労働者、被抑圧者と社会の解放に努力している人々が深い関心を持ち、声援を送るべき理由があると考える。

第一に、この弾圧されたフェミニストは、女性の権益のために誠実に奔走してきただけでなく、労働者を含む多くの被抑圧集団の権利擁護を支持してきたし、それぞれの社会運動の相互の支援のために貴い努力をしてきた。

たとえば捕まった(……)フェミニスト活動家の鄭楚然は、数年来ずっと珠江三角州の労働団体と交流や協力をし、深圳の女性労働者の活動に参加してきており、2013年には刑務所に入れられたストライキの労働者代表の呉貴軍を支援する活動に参加し、2014年には広州大学城の環境衛生(清掃)労働者の集団的権利擁護運動に参加した。また、同様に弾圧された杭州のフェミニズム活動家の武嶸嶸は、エイズ公益機構で仕事をしてきて、B型肝炎の母親が集団で主張した「B型肝炎の子どもの教育を受ける権利」に協力し、女性セックスワーカーの生存状況の調査とエイズ防止活動をして、2011年から性差別に反対する活動に専門的に従事し始めた。

第二に、去年、政府当局が「非法社会組織の取り締まり」と密接に関連する「社会組織管理辦法」が今年1月1日から施行が開始される。三八国際女性デーの前夜のフェミニズム団体の弾圧(これ自身が、国家機構の広範な女性たちへのブラックユーモア的な嘲りである)、は「社会組織管理新政」が念入りに選んだ1回目の弾圧である。新法の1回目の弾圧が、行動が温和な女たちに対してだったことは、それ自身が非常に重大な政治的シグナルである。このシグナルは実はすべての民間団体に向けられている。このように温和な組織が弾圧されるなら、弾圧を免れることできる者がいるか否かは、推して知るべしである。

今、彼女たちが国家の弾圧を受けているときに、まさか私たちは対岸の火事を見るように見てみぬふりをするのではあるまい?(43)

中国のメディアで長いあいだ活躍してきて、現在はドイツ在住の長平さんも、以下のように述べた。

習近平の就任以来、政府側のメディアは、欧米式の民主や報道の自由などに主張に対して「肝心のときには、あえて剣を抜かなければならない」と繰り返している。メディアは厳格に統制され、市民の権利を主張するNGOは次々とつぶされ、異議申し立てをする人々に重い刑を課されて投獄された。しかし、フェミニズムはまだ「欧米の価値観」というレッテルを貼られず、多くのフェミニズムNGOは政府部門の各級の婦女連合会と協力関係を保持していた。

しかし、若い世代の女性がしだいに独立したフェミニズム意識を持つようになり、習近平政府の父権帝国の夢想と矛盾するようになった段階で、すでに矢は弦につがえられた。中共が去年発表した「9号文書」のなかの「7つのこと(欧米の憲政民主、世界に普遍的な価値、市民社会、新自由主義、欧米の新聞観、歴史虚無主義、改革開放への疑い)を言わない」ということの多くは、フェミニズム思想と抵触する。

中国の陰暦の正月の前夜、習近平は中共中央・国務院の春節の祝賀会での講話で、「家庭を重視し、家庭教育を重視し、家風を重視する」ことを要求した。すぐさま上演された中国中央テレビの春節の大晦日の交歓の夕べでは、孝道が宣伝の重要なテーマになり、番組ではいまだかつてない性差別が出現した。フェミニズム団体は抗議の署名を発起し、中国中央テレビの思想統制と洗脳教化を批判し、春節の大晦日の交歓の夕べの放映停止と娯楽市場の開放を要求した。

「あえて剣を抜いた」中国政府が、フェミニスト行動派を取り締まるのは必然である。(44)

以上のような考察から見ると、今回の弾圧の原因は、習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因だったと言えそうだ。

私は、それに加えて、彼女たちが、工場労働者や他のマイノリティとも連帯をはかろうとしていたという、まさにそのことが弾圧の原因となったのではないかと思う。学生と知識人だけではなく、他の広範な人々と結びつくことが、政権にとって脅威になったのではないだろうか。

また、中山大学元教授の艾暁明さんは、現在の政府のやり方と中国の「維穏[=社会の安定維持]」政策が矛盾していることを指摘している。

このたびの攻撃・抑圧は、非常に愚かなやり方であり、非常に専横で、わからずやで道理をわきまえないやり方でもある。それは、現在の維穏[=社会の安定維持]メカニズムは、国家が長いあいだ唱えている男女平等という文言とは完全に相反していることを暴露した。私たちの国家の女性の権益を保護する法律の中では、家庭内暴力にも性暴力にも反対する文言があるけれども、維穏メカニズムはこれらの言葉と完全に反しており、まったく引き裂かれた関係である。(45)

いま、両会(全国人民代表大会や全国政治協商会議)では、公共トイレの女性便器を増やす建議が議員(代表や委員)によっておこなわれている。その一方で、それを議員に持ち込んだ民間の運動家は牢獄につながれているという矛盾が指摘されている(46)。この矛盾は、艾暁明さんが指摘したことが現実の中に現れたものだと言えるだろう。

6.まだの方は、署名をお願いいたします!

以上で述べたように、今回の事件は、5人の女性が現在置かれている状況という意味でも、今後の中国社会の人権や民主主義を左右するという意味からも、非常に重要です。中国内部でも困難な中で支援をしている方々もおり、国際的な運動は外国の政府も巻き込む形で広がっています。

先日呼びかけさせていただいた、彼女たちの釈放を求める下の国際署名がまだの方は、ぜひお願いいたします!

★★[署名]中国のフェミニストアクティビストたちの即時釈放を求める署名――大橋史恵★★

(1)王秋实律师的微博3月14日 18:02
(2)武嵘嵘慢性乙肝(中度)发病中 律师交涉后仍无改善 网友呼吁投诉要求其睡床、治疗(2015-3-18)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】134楼(2015年3月19日)。
(3)北京大学法学院の曹順利さんがジュネーブで人権活動に参加しようとして2013年9月14日、北京空港で警察に連行され、「不法集会罪」の疑いで北京の留置所に拘留され、10月、今回の彼女たちと同じ「寻衅滋事(挑発してトラブルを起す)」罪で逮捕された。曹さんは拘留期間に肺結核・肝腹水・子宮筋腫などさまざまな病気を患ったが、病院に送られて緊急措置がなされるまで、治療を受けることができないかったため、2014年3月14日、曹さんは病院で死亡した。
(4)女权人士重病遭警方停药,亲友担忧“第二个曹顺利事件”」博讯新闻网2015年3月22日。
(5)女权案武嵘嵘狱中境况堪忧 16公民前去探望遭扣押」博讯新闻网2015年3月21日。
(6)被捕女权人士持续引发各界关注 律师会见频受阻」博讯新闻网2015年3月24日。
(7)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。
(8)“女权五杰案”最新进展通报——本网呼吁不要让武嵘嵘成为第二个曹顺利」维权网2015年3月22日、律师常玮平的微博【女权五杰案王曼被审讯至心脏病发】3月22日 12:31
(9)被捕女权人士持续引发各界关注 律师会见频受阻」博讯新闻网2015年3月24日。
(10)以上は、李思磐的微博「李麦子被讯问 一天只能睡两小时」2015年3月25日、「燕薪律师:女权五姐妹案情况通报6 李婷婷受辱」博讯新闻网2015年3月26日。
(11)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。「大兔の身体は良い。5人の中で一番いいかもしれない。中の人の対応はよく、中で仕事はしなくても良い(なぜなら重度の近視で、メガネがないから) というふうに記している報告もある(胡贵云律师的微博【郑楚然(大兔):3.8女权案】3月18日 12:53)。
(12)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。
(13)秋实律师的微博「全世界的女人都是盟友――三见韦婷婷」2015年3月31日 20:53。
(14)Jun Lu「正在呼吁释放五位女权人士的反歧视公益机构北京益仁平中心被多名“警察”查抄」Facebook2015年3月25日。彼女たちと北京益仁平センターとの関係については、拙稿「中国の若い行動派フェミニストの活動とその特徴――『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』をめぐって――」(『女性学年報』34号[2013年])11-12頁も参照。
(15)支持中大校友及女权公益人——中大学子的联名声援」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】54楼(2015年3月12日)、「广州10所高校学子联署声援被捕中山大学毕业生及女权公益人」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】68楼(2015年3月13日)(2015年3月12日 青益台)。
(16)【西安高校参加联署,支持为公益被拘禁的校友李麦子】」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】67楼(2015年3月13日)。
(17)【武大校友呼吁武大学生站出来声援校友韦婷婷】(2015-3-12发起)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】71楼(2015年3月13日)。
(18)全国十八省市三十四名女律师就数名女性权益倡导者被羁押的举报信」维权网2015年3月15日。
(19)吕频的微博3月15日 09:13
(20)劳工界对女权活动者的集体声援」劳工互助网、「大学城环卫工声援被捕女权行动派」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】137楼(2015年3月20日)。
(21)工权与女权,从未分离(2015-3-15,作者:女权与工人)」工评社博客2015年3月15日。
(22)中国が国連と世界女性サミットを開催へ」人民網日本語版2015年3月11日。
(23)李思磐的微博「国际女权组织声称将杯葛中国峰会」2015年3月11日 14:31
(24)国际妇女组织声援中国活动家(信息汇编)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】103楼(2015年3月15日)。
(25)【聲明稿】聲援中國女權人士,號召台灣關心性別運動者一起挺對岸的夥伴! 婦女新知基金會聲明及連署募集」婦女新知基金會サイト2015年3月21日(署名ページ「聲援中國女權人士,號召台灣關心性別運動者一起挺對岸的夥伴! 婦女新知基金會聲明及連署募集」)。
(26)馬來西亞公民社會發表的聯合聲明Malaysian civil societies Joint statement」3月15日 7:35
(27)德国最大女权组织声援中国活动家」2015年3月18日。
(28)周三联合国集会吁中国释放女权活动家」博讯新闻网2015年3月18日、「五位中国女权活动人士被抓超过10天」博讯新闻网2015年3月20日。
(29)韩国公民团体在中国使馆前集会呼吁释放女权活动家(3月18日,附40团体声明书及现场图片)」Evernote
(30)[新聞稿]向中聯辦遞交聯署,要求立即釋放五位女權人士 呼籲中國政府:立即釋放五位女權人士」新婦女協進會2015年3月21日、「[Press Release]DEMAND RELEASE OF WOMEN’S RIGHTS ACTIVISTS IN CHINA」The Association for the Advancement of Feminism[AAF]2015年3月21日。
(31)团体游行至中联办抗议大陆拘五女权人士」Radio Free Asia 2015年3月21日[動画あり]。
(32)StopStHarassmnt & SlutWalk‬ DC‬‬「記事」、「美国女权组织声援中国被捕女权人士」博讯新闻网2015年3月24日。
(33)大陸女權份子遭刑拘 各國人權組織要求釋放」香港獨立媒體網2015年3月17日。
(34)Statement on the arrest and detention of women’s rights activist in China ”EU Delegations to the United Nations
(35)Samantha Power. Chinese authorities should immediately release “Beijing+20 five.” Sad reflection on “women’s rights are human rights.”2015年3月12日13:24
(36)Foreign Office concerned by detention of women's rights activists in China,GOV.UK
(37)Foreign Affairs, Trade and Development Canada “Statement by Parliamentary Secretary Obhrai on Detention of Chinese Women’s Rights Activists
(38)以上は、「大学生连署声援被拘女权人士 当局下令管控」Radio Free Asia2015年3月16日、原文の画像は「网传校方紧急制止广州高校学生联名声援被捕女权公益校友 学生撰文反诘(2015-3-14)」(新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】87楼[2015年3月14日])に収録されている。
(39)野靖环因抗议武嵘嵘不人道待遇失联  郭飞雄狱中待遇糟糕家人忧心」Radio Free Asia2015年3月20日、「女权案武嵘嵘狱中境况堪忧 维权人士野婧环等16人海淀看守所表达关切竟遭扣押」维权网2015年3月20日
(40)欧盟呼吁中国政府尽快释放五名女权活动家 官微消息竟也遭中国当局删除(2015-3-13)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】81楼(2015年3月13日)。
(41)中国当局拒绝释放5名女权活动人士」博讯新闻网2015年3月26日。
(42)彼女たちの組織状況については、拙稿「中国の若い行動派フェミニストの活動とその特徴――『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』をめぐって――」(『女性学年報』34号[2013年])12-13頁でも触れている。2013年4月時点で、「ジェンダー平等活動グルーブ中核メンバー」として52人が記載されていたが、その後さらに拡大したのであろう。
(43)工评社聚焦:她们与我们每一个受压迫者息息相关(2015-3-10)」工评社博客2015年3月15日、「深切关注遭受当局打压的女权运动:她们与我们每一个受压迫者息息相关」工评社 新声代2015年3月11日。
(44)长平观察:北京向女权亮剑」德国之声2015年3月11日。
(45)艾晓明:打压女权活动者为不智专横之举」博讯新闻网2015年3月12日。
(46)2015两会代表委员建议增加公厕女厕位 民间首倡者却遭到牢狱之灾(2015-3-14)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】109楼(2015年3月14日)。

国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず

<目次>
一、逮捕の経過
二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず
三、逮捕の理由について
四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか
五、逮捕の背景をめぐって
六、国際・国内的な支援広がる
七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会
八、署名運動にご協力をお願いします!

2012年2月以来、就職の男女差別、入学試験における男女差別、性暴力、ドメスティック・バイオレンス、公共トイレの男女の便器比率の不公平などの問題に対して、署名運動、裁判、街頭パフォーンスアート、情報開示請求などさまざまな運動をしてきた若い女性フェミニストの活動家たちが(彼女たちの今まで活動の年表とそれらについて書いた拙ブログ記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」参照)、今年の3月8日の国際女性デーに公共交通での痴漢防止アクションを計画していたことを理由に、3月6日から7日にかけて次々に警察に連行されました。

一、逮捕の経過

彼女たちの逮捕の経緯をまとめてみると、以下のようになります。

3月6日午後4時
・北京の韋婷婷さんと王曼さん、当地の海淀区派出所に連行・訊問される。

3月6日午後11時半
・広州で鄭楚然(大兔)さん、警官によって広州新港路派出所に連行される。派出所では訊問を2時間した後、付き添いを付けて家に帰らせて、国際女性デーのセクハラ防止のステッカーを持って派出所に戻らせた後、また訊問され、尋問は(合計?)8時間に及んだ。その後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。軟禁中のことでしょうか、3月8日、香港の『明報』記者が鄭楚然さんに電話したところ、鄭さんは、言葉少なに、記者の質問に対して「はい」か「いいえ」としか答えず、「話をするのも不自由で、誰かが傍らで監視している」と言い、自分は家にも、派出所にもおらず、広州におり、現在は安全だが、逮捕の理由については今は話せず、いつ家に帰ることができるかもわからない、と述べた(1)
・北京の李婷婷(李麦子)さんの自宅に、太平橋派出所の警官がドアをこじ開けて侵入、住居を捜査され、連行される。李麦子の家は「物品がひっくり返されて『めちゃくちゃ』」(『明報』)だった。

3月7日午前4時半頃
・艾可さん、連行される。艾可さんは後に釈放されるが、警察では、「携帯電話でおしゃべりした内容は、グループのものも含めて全部見られた。私が連絡できる人すべてに明日の活動は中止すると通知しろと言われた」という。

3月7日午後2時半
・武嶸嶸さん、杭州の蕭山空港で、北京の国保(公安部国内安全局)の警官に連行され、古蕩派出所に連れて行かれる。午後5時10分、武の友人が、古蕩派出所からの武がかけた電話を受け、武が泣き叫ぶ声や痛みを訴える声を聞く。

その後、李麦子さん、徐汀(酸小辣)さん、韋婷婷さん、于蓮さんらは、北京の海淀派出所に拘留されていることが判明した(2)

北京と広東、杭州というはるか離れた地でいっせいに逮捕がおこなわれたこと、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てているわけでもないのに、深夜に何人もの人が逮捕されたことは、今回の捜査の異常さを感じます。

二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず

ニューヨークタイムスは、「少なくとも10人の女性の権利のための活動家」(3)が逮捕されたと伝えています。その後、徐汀さん、于蓮さん、艾可さんらは釈放されましたが、李婷婷(李麦子)さん、鄭楚然さん、武嵘嵘さん、王曼さん、韋婷婷さんはまだ釈放されていません

彼女たちの仲間は、「今回の攻撃は、私たちにとって重大事です。なぜなら、逮捕された人々はここ数年成長しつつある私たちの運動の中核を形成していたからです。」「彼たちは、女性の活動家の運動の中核的な力でした」(4)と述べています。

三、逮捕の理由について

彼女たちが逮捕された理由として示されたのは、刑法239条「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こす)」罪でした。おそらくその「4」の「公共の場所で騒動を起こし、公共の場所の秩序をひどく混乱させる」を指しているものと思います。

しかし、彼女たちがやろうとしたのは、「フェミニズムの理念を印刷したステッカーをバスの乗客に配布して、乗客に向かってセクシュアルハラスメント反対と国家機関の職責について説明し、ステッカーを乗客の体の目につくところに貼ってもらって、『人間宣伝器』にする計画だった」(香港の『明報』)とか、せいぜい「交通機関の車両にハラスメント反対のステッカーを貼ろうとした」(ニューヨークタイムス)という程度のことのようです。

もっとも、ロイター電は、李麦子さんと鄭楚然さんに近い人権活動家の話として、「彼女たちと活動家数人は、3月7日、公共交通のスペースでセクハラ反対のデモ(demomstration)をする計画をしていた。このデモは、北京、広州、その他いくつかの地区でおこなう計画だった」と伝えました(5)。中国の微博でも、「許可されていなデモは、違法だから、拘留は間違っていない」という意見を述べる人もいました。しかし、陳亜亜さんは、そうした意見に対して、1.これはデモではなく、数人が地下鉄で宣伝をしようと思っただけである。2.実行したわけではなく、計画しただけである。3.拘留は、違法デモではなく、「寻衅滋事」という罪名によっておこなわれたと述べて反論しています(6)

また、今回の逮捕は、きわめて不備な手続きによっておこなわれました。黄思敏弁護士は、自らの微博で、「寻衅滋事 海淀区拘留所」とだけ書かれた紙片の写真を掲載して、「こんな一枚の紙によって、北京の公安(≒警察)は、女性の権利の唱導者である鄭楚然を連行した。刑事訴訟法には紙くずほどの価値もないのか? 公権力の恣意・傲慢がありありと紙上に現れている。女性の権利を擁護するには、男権的社会で平等を勝ち取らなければならないだけでなく、専制下の醜悪な公権に直面しなければならない」と述べました(7)

公共交通機関の敷地内などでの行動は、日本でも弾圧の口実(ないしは言いがかりのネタ)にされることがあります。しかし、彼女たちは、今までも地下鉄の構内のみならず、車両内でパフォーマンスアートをしたり、歌を歌ったりしたりしてきましたし、チラシの配布や署名への協力の呼びかけさえしてきました。さらに、彼女たちはそれを動画で公表してきましたが、とくに弾圧などはされませんでした(「视频: 我可以骚你不能扰」「视频: 2012性别不平等之“我可以骚你不能扰”现场视频终」「视频: 阴DAO独白 北京地铁“快闪”」)。2012年2月に彼女たちが「男子トイレ占拠」アクションを中国各地でしたときも、事前に阻止されたことはありましたが、逮捕された人はいませんでした。

しかも、先に述べたように、今回の逮捕は、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てていたわけでもないのにおこなわれました。

四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか

中国国内のマスメディアは、今回の問題を取り上げていません。また、ネット上での発言も、頻繁に削除されています。しかし、そうした中で拾えた声を以下にいくつか挙げてみました。

牛犇犇さんは、「女性デー、ハラスメントに反対したために、ハラスメントをされる?」という一文を書きました(8)

また、チベット雪域レインボーグループ(西藏雪域彩虹小组)の微博は「三八デーの準備のための活動で、テーマはセクハラをなくす宣伝なのに、おおぜいの人を動員して逮捕するというのか? これは、手続きなしに消失させられることであり、でっち上げの罪名による合法的な失踪ではないか? 72時間が過ぎた。私たちの仲間を返してください! 悪法を制定し、執行した者は、だれであれ、いずれは自分の身に報いが来るであろう!」と述べました(9)

最近、国際女性デーが単なる「女性が女性役割を果たしていることを思いやる祝日」になっている風潮の中、女性が自らの権利を主張したら弾圧されたことを痛烈に皮肉る声もありました。すなわち、ある女性は、微博で、「女性の権利を闘い取る祝日が、母の日に変わり、恋人の日に変わり、買い物の日に変わり、感謝の日に変わった。女性たちが自らのためのことを少ししたときだけ、逮捕された」(10)と書きました。

フェミニストの仲間もなかなか発言が難しい状況があると思いますが、卡楽潼さんは、「私はもう沈黙する理由は何もない。ジェンダー/セクシュアリティ活動家を釈放してください」という一文を公表しました(11)

また、フェミニストの趙思楽さんは、「女性デーの中国における真の回帰」という一文を書いて、「女性デーは、どこかの国家、どこかの政党が『働く女性のものだ』とか『女性全体のものだ』とか設定する祝日ではなくて、女自身の祝日であり、たたかっている女性自身こそが作り上げる祝日だ。この日は、女は自分自身にふりかかった不公正・不正義のために歌い、叫び、闘うのだ。闘いがあってこそ、女性デーには意義があり、不屈であってこそ、女性デーは女性デーなのである。/女性の平等の権利を擁護する活動家が3月7日に捕まったが、3月8日には、各地のフェミニストの若い仲間が屈服せずに、何人かで集まって各種の方法で彼女たちのために叫び、声援を上げ、抗争をしている。/こうして、本当の女性デーが返ってきたことを宣言する。」(12)と述べました。

ミシガン大学准教授の王政さんは、次のように述べました。
 「私は生まれて初めて三八国際女性デーで心痛を感じた!
 アメリカでの30年、以前はこの日は、私は心の中で特に誇りを感じた。なぜなら、私たちには国定の国際女性デーがあり、アメリカにはないからだ。中国のフェミニズム運動は悠久の歴史があり、成果は顕著である。……
 近年は、三八女性デーはいつも私に喜びをもたらしてくれた。なぜなら、はるかに海を隔てて、若い世代のフェミニズムアクティビストが、積極的に努力をしてさまざまな創意ある行動によって男権文化を変革することによって、市民の責任感とフェミニストの社会変革能力を示したからだ。三八デーは、彼女たちが、自らの素晴らしい実践によって中国のフェミニズムの光栄な歴史を継承・発展するものだった。
 今年彼女たちが公共の場所でセクハラ反対活動を組織すると知って、私も彼女たちの女性デーの活動の情報について、興奮しつつ期待していた。彼女たちが三八デーの活動を組織したことによって無法に拘留されるとは全く予想していなかった! このような三八デーの活動に対する干渉は史上前例がなく、中華人民共和国憲法に違反しており、政治のやり方の最低ラインを踏みにじっている! 中国の女性はセクハラにさえ反対できない。こうした国家は、自由恋愛をした女を石で殺す国家とも五十歩百歩の区別しかない! 何香凝・宋慶齢・鄧穎超ら無数の中国の男尊女卑を改造して男女平等を実現するために終生奮闘した先輩たちを思うと、この三八デーについて、私は悲しみ悼んでいる。
 すすぎえない冤罪をこうむっている若いフェミニズムアクティビストが早く自由を獲得するよう願う!」(13)

五、逮捕の背景について

公共交通の痴漢防止というテーマは、本ブログでお伝えしてきたように、2012年に上海地下鉄の痴漢問題を取り上げたことに始まり、昨年は行政側とも会談をして、一定の前向きの反応を得たような問題ですから(本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で『赤ずきん』姿で痴漢・セクハラ反対活動」)、このテーマ自体が問題だったとは考えられません。

だから、おりしも両会(人民代表大会と政治協商会議)が開催されている期間だから、活動を抑圧したのだろうとも考えられてきました。当時、環境保護の集会を各地の市政府の前で開こうとしたから、民間の活動を抑圧しているという見方もありました(14)

そうした中、陳亜亜さんは、3月8日の時点で、「私は公共交通の痴漢防止は安全なテーマだと思っていたので、力ずくの治安維持の対象になるとは思わなかった。また三八(国際女性デー)が過ぎれば釈放されるという、暫時の制圧だと思ったけれど、今日、ある人が30日入獄しなければならないと言っているのを見た。これは、単純に両会のためではなく、あたかも政府が放出するための力を長いあいだ蓄えていて、今回のことを口実にして、重い拳で攻撃して、このような活動を厳しく制圧をする発端にしようとしていると感じた」と、かなり深刻な見方を示しました(15)

実際、彼女たちは逮捕されて6日経っても釈放されておらず、陳亜亜さんの心配が当たったのではないかと思います。

六、国際・国内的な支援広がる

この事件は、日本のマスコミではなぜか報じられていませんが、ロイター通信やBBC、ニューヨークタイムス、ガーディアンも報じました(16)

また、国連の第59回女性の地位委員会が3月9日~20日までニューヨークで開催されており、各国のフェミニストが「女权无罪(フェミニズム無罪)」「CHINA:FREE FEMINIST」といったプラカードを掲げて、中国政府にフェミニストの釈放を要求しました(17)

中国国内についても、「理解女权主义,关注被打压的女权运动」には、彼女たちを支持する多くの記事やアピールが収録されていますが、労働者やLGBT関係者が目立ちます。

それというのも、彼女たち行動派のフェミニスト活動家は、自分自身がセクシュアル・マイノリティであったり、セクシュアル・マイノリティの運動にも関わったりしていました。とくに、韋婷婷さんはバイセクシュアルの活動家で、「北京同性愛相談ホットライン」の後身である「北京紀安徳(紀安徳=genderの音訳)相談センター」というセクシュアル・マイノリティ団体のプロジェクトの主任でしたし、徐汀さんは、武漢Lainbow LGBTの代表でした。

また、HIV/AIDS感染女性やセックスワーカーへの支援者の葉海燕さんも、彼女たちに大きな声援を送っています。

3月12日午前の段階で、世界で集めている下の1の署名は、署名人数が1000人を超え、署名者の国籍も73に達しました。また、鄭楚然さんの母校の中山大学を含めた広州の10大学、武嵘嵘さんの母校・中華女子学院、李婷婷(李麦子)さんの母校・長安大学の学生がみな声明を出したり署名運動をしたりしているとのことです(18)

七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会

3月12日に、李婷婷(李麦子)さんと面会した燕薪弁護士によると、李さんは「やったことは何ら法律に違反していないばかりか、社会にとって有益である。すなわち、ジェンダー平等意識を広め、女性の権利に対する全社会の保護の認知を高めることであり、国家が女性の権利を保障するという国策とも合致している」と述べたそうです。李さんは、関心を持ってくれている社会の各界の人々に対して謝意を表明し、自分は勇敢にこの苦難に対して立ち向かうことが必ずできるし、自分と将来に自信を持っていると表明したとのことです。

また、李さんは、6日夜に自分を逮捕した警官は、(身分を証明する)証明書を誰も提示せず、彼らが示した召喚状も捜査証も空白であり、名前さえ書いていなかったと述べました。これは重大な違法行為だとして、弁護士がしかるべき機関に告発するとのことです(19)

八、署名運動にご協力をお願いします!

国際的に集められている署名を日本語訳しましたので、皆さまも、ぜひ署名をお願いいたします!

署名1

今、国際的に集められている署名です。

【中国政府に彼女たちの即時釈放を求める署名】(この署名の文面については、大橋史恵さんの翻訳を参考にさせていただきました)
http://goo.gl/forms/v7m4L8tYdB

私たちは世界中のフェミニストです。2015年の国際女性デー直前に、中国の5人の若いフェミニスト活動家たちが、バスの中でセクシュアルハラスメントに反対する運動を計画したという理由で拘留されたと知り、ショックを受けました。

20年前の1995年、中国は第4回世界女性会議を開催しました。北京行動綱領に署名し、女性の権利とジェンダー平等の推進に力を注ぐと決意したのです。中国政府がこれら5名の若いフェミニストたちにしたことは、許しがたいことであり、北京行動綱領と女性差別撤廃条約の精神に反しています。

彼女たち5名のフェミニストは、李婷婷、王曼、韋婷婷、武嵘嵘、鄭楚然です。彼女たちは、ジェンダー規範を変革し、ジェンダー平等を推進するために、創意あふれるあらゆる手段を使って、一般の人々のジェンダーへの気づきを高めるという使命に力を尽くしてきました。彼女たちは、中国における女性運動の新しい波をリードしています。彼女たちは、中国をより住みよい社会に変革して、中国の未来を創造しているのです。

私たちは彼女たちを心の底から支援しています。彼女たちに、私たちがいつもそばにいると知ってほしいと思っています。女性の人権を擁護する人びとへの弾圧は世界中で起きており、私たちは絶対に彼女たちを守らなければなりません。それは彼女たちの問題であるとともに、私たちの問題でもあるのです。

私たちは中国政府に対して、彼女たちの即時釈放を求めます! どうぞ私たちに支援をください。そしてこのメッセージを、できるだけ多くの人たちに知らせてください。

世界のフェミニストより
2015年3月9日

【以下、署名欄部分の翻訳です。】
Your Name (名前)
Your Country (国)
私たちの目標は、最低50カ国からの支援を集めることです。どうぞ広くシェアしてください!皆さんのご尽力に感謝します。

署名2

こちらは香港の女性/ジェンダー団体の署名です。

【中国政府にフェミニスト活動家の釈放を求める声明】

【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】
発起団体:中国婦女協進会

香港の女性/ジェンダー団体は、北京の当局が、まだ十分な根拠がない状況において、省を越えて5名の有名なフェミニスト活動家、すなわち北京の李婷婷(麦子)、韋婷婷、王曼、杭州の武嶸嶸、広州の鄭楚然(大兔)を逮捕したことに対して重大な関心を持っている。私たちは、北京の公安当局に対して、憲法が賦与した人民の言論の自由を尊重・厳守し、関係者の司法的権利を確実に保証し、弁護士・家族と面会させ、人身の安全を確保すること、ならびに、違法行為の証明ができていない情況の下では、ただちに各人を釈放することを求める。

得られた資料によると、逮捕の行動は3月6日から始まった。当日午後4時、北京の韋婷婷と王曼が当地の海淀区派出所に連行され、訊問された。同日深夜11時半、北京の李婷婷と広州の鄭楚然も、それぞれ5、6名の警官の訪問を受けた。李婷婷の家には警官が扉をこじ開けて侵入して、李を連行し、その後30時間あまり経った今も消息不明である。鄭楚然は、広州の地方警察にただちに派出所に連行され、8時間訊問された後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。3月7日、広州の武嶸嶸は午後2時に飛行機で到着した杭州の空港で、ただちに北京の国保(公安部国内安全保衛局)に連行され、西湖区の古蕩派出所で訊問された。当日午後5時10分、友人が一度、武嶸嶸が泣いて訴え、痛みを叫ぶ電話を受けたが、通話は直ちに切断され、その後再度の連絡はない。

私たちは、各人の現在の状況、とくに武嶸嶸の人身の安全の状況に非常に関心を持っている。私たちは、中国の法令と国際基準にもとづけば、武嶸嶸が病気を患っている状況の下では、拘留している機関は、ただちに有効な治療をする義務があることを指摘しなければならない。

国際女性デーでは、これまで40年、さまざまな祝賀をし、女性の権利に関するテーマを提起し、法律と政策の改革の提唱をして、女性の社会的地位を確認し、男女平等の原則を保障することによって、ずっと各地の女性の権利の訴えの場の一つであった。中国でも、国際的にも、各地でもそうであった。

中国はつとに1995年に国連と共催して、「両性の平等、発展と平和」をテーマとする「第4回世界女性会議」をおこない、その期間に「北京宣言」と「北京行動綱領」を採択した。先月、習近平は、公開の講話で、中国は男女平等を基本的国策として堅持すると述べた。これらはみな、女性というテーマの討論や訴えは、中国ではけっしてタブーではないことを示している。

調べたところ、5名の逮捕された女性が今回逮捕されたのは、彼女たちが「セクハラを制止し、みんなの安全を守ろう」「痴漢を捕まえて、警察に駆け込もう!」といった張り紙を作成し、3月7日に自分がいる都市で配布し、「公共交通セクハラ防止メカニズム」を設立することを要求する予定だったことによる。しかし、こうした行動は、彼女たちが、今年は全国総工会(全国的な官制の労働組合)が職場でのセクハラ問題について両会(人民代表大会と政治協商会議)で提案することを知り、セクハラ問題が重視される可能性があるので、民間でも関心を集めようとしたからにすぎない。私たちは、彼女たちのアクション計画は、穏健で理性的であり、各地の民間社会が注目を集め、提案・教育をする常用の手法であり、けっして「挑発してトラブルを起こす」、あるいはその他の刑事的な非難に当たるものではないと考える。私たちは、北京の公安当局の逮捕行動の合理性・合法性に対して、強い疑問を表明する。

実際、中国のセクハラ問題は社会の現実であり、また近年どこでも関心を持たれ、討論されている。北京衆沢女性法律相談サービスセンターと北京市千千弁護士事務所の2011年の北京・広東など4地での研究によると、セクハラは非常に普遍的で、40%から60%の職場の女性の生活に影響を与えており、また、セクハラを受けた人々のうち、20歳~29歳の若い人の比率が最も高く、57.5%に立っているが、多く人は我慢したり退職したりしている。

問題は今も存在しており、さまざまなところから注目されている。国連の女性差別撤廃委員会が2014年11月7日に中国政府の国家報告に対して発表した総括所見では、中国のセクハラ問題に対して関心を表明し、中国政府に対して、立法によって雇い主に職場で発生するセクハラ事件の法律上の責任を負わせることを求めている。

ここに、私たちは、中国政府に、問題を提起する人を拘禁することによって声を上げられなくするのではなく、社会のさまざまなテーマに対して事実にもとづいて行動するという態度によって対応して、法律を整備し、実際に執行することよってこそ問題の根本が解決するということを訴える。私たちは、この事件に関心を持ち、これからも各人が釈放されるまでフォローを続けるということを再度強調する。

(1)內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(2)以上は、全体としては、「大陆女权运动遭打压 女权主义者因欲举办反性骚扰活动遭半夜抓捕 多人已失联」维权网2015年3月7日、「中国女权NGO遭严厉打压,杭州妇女平权倡导者武嵘嵘被带走疑遭暴力 及多位女权主义者被捕情况通告」维权网2015年3月8日、「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日、新婦女協進會「【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】」。
(3)China Detains Several Women’s Rights Activists,New York Times,2015.3.8
(4)同上。
(5)China detains feminist activists ahead of Women's Day Reuters 2015.3.7
(6)voiceyaya 的微博2015年3月10日 08:42
(7)黄思敏律师的微博2015年3月8日 01:46
(8)牛犇犇「妇女节,因为反骚,所以被扰? | NGOCN特评」2015年3月7日
(9)西藏雪域彩虹小组的微博2015年3月10日 00:08
(10)小手大头的微博2015年3月8日 16:46
(11)酷拉时报的微博2015年3月8日 08:52
(12)赵思乐feminist的微博【2015年3月8日 妇女节在中国的真正回归】2015年3月8日 20:58
(13)吕频的微博2015年3月8日 05:50→指冷君的微博2015年3月8日 11:36
(14)內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(15)voiceyaya 的微博2015年3月8日
(16)ロイターやニューヨークタイムスは既出。「婦女節前中國拘捕多名女權活動者」BBC中文網2015年3月7日、China detains feminist activists over International Women's DayGuardian2015.3.9。
(17)新媒体女性的微博【特别关注:数名女权者因欲在三八妇女节举行反性骚扰活动被羁押 全球多地关注声援】3月9日 19:57
(18)新媒体女性的微博【女权者被拘文章已火速被删禁转:从学校到工人 从国内到国际】3月12日 17:34
(19)王秋实律师的微博3月12日 13:00

『中国女性史研究』第24号刊行

中国女性史研究会の会誌『中国女性史研究』第24号が、2015年2月に刊行されました。

内容は以下のとおりです。

【論文】
・性の政治経済学と資本主義的ジェンダーの奥義――2014年「東莞売買春一掃」をめぐる論争から (宋少鵬/及川淳子[訳])

【研究ノート】
・アヘン戦争下の女性 (西田千津)

【書評】
・何春蕤著『「性/別」攪乱――台湾における性政治』 (于寧)
・小浜正子・松岡悦子編『アジアの出産と家族計画――「産む・産まない・産めない」身体をめぐる政治』 (池上清子)

【新刊紹介】
・関西中国女性史研究会編『中国女性史入門』増補改訂版について (遠山日出也)
・三成美保・姫岡とし子・小浜正子編『歴史を読み替える――ジェンダーから見た世界史』 (須藤瑞代)

【交流と紹介】
・第12回国際丁玲学術シンポジウム参加記 (前山加奈子)
・アジアへの視線、アジアからの視線――ふたつの展覧会『描かれたチャイナドレス』と『官展にみる近代美術』 (秋山洋子)
・中国ジェンダー史共同研究の活動紹介 (小浜正子)
・ワークショップ<紛争下の暴力とジェンダー>参加記 (加藤修弘)
・シンポジウム<現代中国におけるジェンダー・ポリティクスの新局面>参加記 (秋山洋子)

・例会報告
・中国女性史研究会第19回総会
・中国女性史研究会規約
・会員業績
・編集後記


1冊1000円です(送料別)。

バックナンバーの目次の一覧はこのページです。ご購入については、こちらのページをご覧ください。

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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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