『中国女性史研究』第28号刊行
内容は以下のとおりです。
【『上海婦女』特集】
「孤島」期の『上海婦女』誌に見る女性市民ネットワークと党派(江上幸子)
『上海婦女』の希求と苦悩――「家事顧問」コーナーの変遷を手がかりに――(姚毅)
【論文】
中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動と行動派フェミニスト(遠山日出也)
【ワークショップ】列女伝の諸相
劉向の『列女傳』と『後漢書』列女傳(渡邉義浩)
『列女傳演義』における貞順について(仙石知子)
正史「列女伝」変遷と元代の節婦思想(大島立子)
【書評】
山﨑眞紀子・石川照子・須藤瑞代・藤井敦子・姚毅著『女性記者・竹中繁のつないだ近代中国と日本――一九二六~二七年の中国旅行日記を中心に――』(研文出版、2018年2月)(杉本史子)
方祖猷著『晩清女権史』(浙江大学出版社、2017年)(須藤瑞代)
【交流と紹介】
西安の丁玲国際学会と婦女文化館(江上幸子)
「女性とジェンダー史研究群学術座談会――大衆娯楽とジェンダー」報告(大濱慶子)
【年表】
現代中国女性史年表追補13(2018.1~2018.12)(遠山日出也)
例会報告2017年10月~2018年9月
中国女性史研究会第23回総会
中国女性史研究会規約
会員業績一覧
『中国女性史研究』執筆要項
入退会者・編集後記
1冊1000円です(送料別)。ご購入については、こちらのページをご覧ください。
ご覧のように私は2本書かせていただいていますが、「中国版《ヴァギナ・モノローグス》上演運動と行動派フェミニスト」のほうは、中国で「行動派フェミニスト」と呼ばれる女性たちと同派の劇団である「BCome小組」が、それまでの中国での《ヴァギナ・モノローグス》上演運動から何を継承し、何を新たに切り開いたかについて考察したものです。編別構成は、以下のようになっています。
はじめに
1 先行研究
2 2003年の中山大学での上演と行動派の活動
3 行動派の上演運動の展開――とくに弱者層との連帯に焦点を当てて
4 女権五姉妹事件後の上演運動
おわりに
「現代中国女性史年表追補13(2018.1~2018.12)」について言えば、この年表追補は、以前は1年1ページですんでいました。しかし、最近は、インターネットでの民間の運動や個人の発信が増えたために(その一方で弾圧も増えましたが)、1年で2ページ使っています。
それが、今年は4ページになりました。#MeToo運動のためです。とくに、7月23日、エイズ差別反対運動の闘士だった雷闖によるセクハラに対する告発をきっかけにして#MeTooが頻発した7月下旬は、それだけで1ページ以上使いました(これは、#MeTooに関しては、最初の告発の箇所に、その後の経過もいっしょに書いたからでもあるのですが)。
中国の#MeTooも、何年も前の事件のために今も心身に傷を負っていたり、何年も加害自体が続いていたりという場合がほとんどで、それが今年になって告発できたということには、#MeToo運動の意義を感じます。
ただし、マスメディアで取り上げられたのは、加害者がはっきり処分された場合とか、著名な民間の活動家の場合くらいで、それほど多くないようです。
「日本では#MeTooはあまり盛り上がらなかった」と言われることが多いですが、実際は日本でもさまざまなところでおこなわれているのだろうと思います。しかし、周りが適切に対応できないことなどにより、メディアに取り上げられるところまで行っていないというだけ、という面があるのではないかと思います。
中国でも、加害者として告発された人のうち、すなおに謝罪した例はほぼ皆無で、否認したり、沈黙したり、二次加害をしたり、告発者を訴えたり、というものが大半です。その中には、実際に告発が誤っているものも含まれているかもしれませんが、それはごく少数だと思います。全体的に言えば、そんな対応しかできない人だから、セクハラや強姦をしたのだろうという感じです。
『中国女性史研究』のバックナンバーの目次の一覧はこのページです。
なお、私は、『女性学年報』39号(2018年)に「中国の公共交通機関における性暴力反対運動と女性専用車両──香港・台湾・日本との初歩的比較も──」を書かせていただきました。PDFもインターネット(J-STAGEサイト)に掲載されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arws/39/0/39_21/_pdf/-char/ja
「論文」というよりも、「紹介」という色彩がかなり強いものですが、よろしければご覧ください。
他のさまざまな記事も以下からお読みいただけます。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/arws/39/0/_contents/-char/ja
中国のキャンパスセクハラ反対運動・その後
はじめに
一 国内での運動は水面下へ
1.海外の中国人学生・学者300人以上が教育部や各大学に連名の書簡
2.政治協商会議の委員への働きかけ
3.昨年の大学生セクハラ調査の活用のためのクラウドファンディング
4.「北京大学学生セクハラ遭遇状況調査報告」
二 国際女性デーの活動の呼びかけと「女権の声」微博・微信の封鎖
その後も続く運動――南京大学
三 北京大学教授・瀋陽の事件をきっかけとした活動活発化と大学の対応
1.李悠悠、元北京大学(現南京大学)教授・瀋陽のセクハラを告発
2.各大学の対応
3.大学の対応の問題点・その1――「師徳」の問題として扱う
その2――十分な調査や討論、事実認定なしに処分だけをおこなう
その3――セクハラ防止メカニズム構築に学生や当局側以外の団体が参与できていない
その4――教員の審査基準の中に「セクハラ」が入っていない大学、訴える窓口がない大学が多い
4.南京大学での指摘と是正
5.中国人民大学での告発と運動
6.北京大学での運動、情報公開要求と弾圧
(1)非公開で意見募集会
(2)岳昕の活動に対する弾圧
7.「約談」制度の問題
(1)北京大学への李一鳴らの公開書簡
(2)ジェンダー平等のための活動家にも強要されてきた「約談」
8.中山大学での新たな告発
おわりに
1.まとめ
2.大学以外への広がりの乏しさ
3.外国メディアの論評が見落としがちなこと
はじめに
今年1月1日、北京航天航空大学卒業生の羅茜茜さんが#Me Tooに触発されて、在学時の陳小武教授のセクハラを実名で告発したことから、中国の多くの大学でキャンパスセクハラ反対運動が始まった。各大学にキャンパスセクハラ防止メカニズムの構築を要求する校友や在学生の署名は、74大学の8000人に広がった。各大学は、学生たちが作成した署名サイトを削除するなどの弾圧をおこなった。しかし、北京航天航空大学は、陳小武の教員資格を取消し、教育部と一部大学は、キャンパスセクハラ防止メカニズムの研究を表明するなどせざるをえなくなった(本ブログの記事「中国における#MeTooとキャンパスセクハラ反対運動」参照、中国における#MeTooに関しては、本ブログの記事「『中国女性記者職場セクハラ状況調査報告』」も参照)。
このエントリーでは、中国のキャンパスセクハラ反対運動のその後の状況をご紹介したい。
一 国内での運動は水面下へ
1.海外の中国人学生・学者300人以上が、教育部や各大学に連名の書簡
1月25日、「海外の中国人の学生・学者のセクハラ防止についての公開の連名の書簡」が発表された。
これは、海外在住の中国人の学生・学者が、全国人民代表大会と教育部、全国の各大学の学長に、以下の点を要求したものである(要旨)。
一、もっと多くの大学と教育部が、学生と教師のセクハラ反対の声を肯定したり、聞いたりするだけでなく、いっそう積極的に行動すること。
二、私たちが求めているのは、単なる「セクハラ防止」ではなく、全面的で有効な、可能なかぎり信頼できるセクハラ予防・懲罰のメカニズムである。それは、具体的には、1.反セクハラの理念と防止のための情報を広く知らせ、教育すること、2.教学と管理工作における職権乱用とセクハラに対する行為規範。3.教員と責任者の、セクハラについての強制的な報告義務、4.セクハラ事件に対する処置の手続きとその期限についての規定、5.セクハラ事件に対する各面での保護措置、6.加害者に対する懲罰措置(情状が重い者に対する解雇を含む)、7.報告と処置の職責を尽くさない責任者に対する懲罰措置、である。
三、教育部と各大学は、セクハラ防止メカニズムの構築を引き延ばすのではなく、期限について明確に決めること。この制度の枠組みは複雑ではないし、他の多くの国・地域に参考にできる経験があるので、私たちは、半年あれば可能だと考える。
四、セクハラ防止メカニズムの制定の過程において、学生と教員に情報公開をし、参加させること。
同時に、私たちは、全国人民代表大会にセクハラ防止立法を研究し、制定することを求める(1)。
この書簡に対して、2月末までに、オーストラリア、フィリピン、ドイツ、フランス、韓国、オランダ、カナダ、チェコ、アメリカ、日本、スウェーデン、香港、シンガポール、ハンガリー、イギリスなどから、100以上の大学の60余りの専攻の339名の中国の学者・学生が署名した。
その内訳は、学部の在学生・卒業生が19%、修士課程の在学生・卒業生が30%、博士課程在学生・博士が33%、教員が9%だった。また、120人近い人が、さまざまなコメントも寄せてくれたという(2)。
しかし、2月に入ると、中国国内では、大学のセクハラの問題は、当局の抑圧的対応もあって、あまり話題にならなくなった。
しかし、運動がなくなったわけではない。
2.政治協商会議の委員への働きかけ
2月11日、女子学生の樹(仮名)が、100人近い政治協商会議の委員に、「大学セクハラ防止法」を制定するよう手紙を送った。14日に1人の委員から「あなたが出した提案と結びつけて、報告を作って、両会(人民代表大会と政治協商会議)の期間に提案したい」という賛同の返答が来た(3)。
3.昨年の大学生セクハラ調査の活用のためのクラウドファンディング
昨年(2017年)3月、NGO「広州ジェンダーセンター」が「中国大学在校・卒業生セクハラ遭遇状況調査」を発表した。この調査は、以下のようなものだった(4)。
●調査対象
・有効回答―6592部
・女性84%、男性16%。
・異性愛75%、バイセクシュアル13%、同性愛4%
●セクハラされた経験
・68.7%がセクハラをされた経験がある。
・1回―――20%
・2-4回――37%
・5回以上―11%
●加害者
性別
・男性(複数)47.8%
・男性(1人)42.1%
・女性(1人) 1.1%
・女性(複数) 0.8%
身分
・見知らぬ人――――44.4%
・同じ大学の学生――21.8%
・ネットユーザー―――7.7%
・同じ大学の卒業生― 7.3%
・大学の上級―――― 5.2%(指導部、先生、補導員[*])
*「補導員」とは、学生の政治思想教育、学生の日常管理、就職指導、心理的健康などの面の指導をする教員。
●セクハラされた後の反応(女性)
・黙って我慢した―――――― 46.6%
・相手に止めるように言った――35.6%
・大学の管理部門に言った―― 2.7%
・警察に通報した―――――― 1.3%
・その他――――――――――13.7%
・多くの人は黙って我慢した理由の55.4%は、通報しても無駄だと思ったから。
広州ジェンダーセンターは、今年、その調査報告を出版する資金を得るために、クラウドファンディングをお願いするページをネットに掲載した。しかし、そのページは4回も削除された。同センターの創始者である韋婷婷さんは、削除されるたびにタイトルを変えてみた。たとえば、タイトルに「性騒擾(セクハラ)」という言葉があるのが検索で引っかかるのかと思って、「騒」を音で示した「性SAO擾」という語にした。さらに「セクハラ」という言葉自体をタイトルから外したりしたりした。しかし、いずれも削除された。
そこで、韋婷婷は、文章とクラウドファンディングのページをリンクするのはやめて、写真とのリンクにしたところ、ようやく削除されなくなり、2月8日までに、当初の目標の3.5万元の69%である2.4万元まで金額が達した(5)。
2月22日には、金額が目標に到達し、211大学(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学)に調査報告を送る費用とパートタイムの職員1人の1年分の賃金が支払える額になった(6)。
4.「北京大学学生セクハラ遭遇状況調査報告」
3月8日には、「北京大学学生セクハラ遭遇状況調査報告」が発表された(7)。
この調査報告は、1月以来の大学でのセクハラ反対運動を契機に結成された「北京大学反セクハラ調査グループ」が、母校のセクハラ防止メカニズム構築をめざして情報やデータを集めるために、インターネット調査やインタビューによって大学内でのセクハラを調査した結果をまとめたものである。
調査対象は、北京の大学全般で、1月20日に調査を開始し、2月25日に終了した。その中でサンプル数が多く、かつ集中していた北京大学のデータを主に分析したという。その結果の一部を、以下にご紹介する。
●調査対象
・北京大学の190人
・女性64.3%、男性35.7%
・異性愛者76%、バイセクシュアル/パンセクシュアル15%、同性愛7%。アセクシュアルまたはクレスチョニング1%
●大学のセクハラ防止メカニズム構築について
・大学にはセクハラ防止メカニズムが必要だ――95%
どのようなメカニズムが必要か?
・匿名の通報制度――83.2%
・系統的な性教育課程――73.4%
・キャンパスセクハラについての宣伝システム――70.0%
・セクハラについての心理的介入・カウンセリング――78.4%
・心身の障害者などの特殊な集団に対して全面的な性教育をする措置――70.5%
・実名での通報をサポートする手段――58.9%
●セクハラにあった経験
・大学生の期間にセクハラにあったことがある――35.8%(68人、そのうち6人は指導教官から)。
・男女別――女性:37.7%、男性:32.4%(男性の場合は、特定の形態のセクハラ、たとえば「性的指向や気質に対する侮辱」などが多い)
・異性愛者が被害者の67.1%を占めるが、バイセクシュアル/パンセクシュアルも21.2%、同性愛が10%を占める。
●セクハラの被害にあった場所
・学内――51%(うち、教員の部屋4%)
・学外――25%
・インターネット――24%
●加害者
・学外の知らない人――31%
・同じ大学の学生――25%
・教員――15%
・インターネットユーザー――11%
●その後の対応(総数:54名)
・黙って我慢した―――――20人
・個人的に関係している人(パートナー、友人)に訴えた―19人
・SNSで暴露した―――――10人
・反抗した――――――――9人
・大学に助けを求めた―――4人
→大学に訴えた4人は、誰も、実質的に肯定的な回答や援助を得られなかった。
・援助団体に助けを求めた―2人
・警察に助けを求めた―――1人
●黙っていた理由
・「被害者が非難される」世論・雰囲気―――――――――7人
・「文化的観念のために、口に出すのが恥ずかしかった」―6人
・大学に訴える窓口がなかった――4人
・公権力を信用していない――――4人
・身近に成功した事例がなかった―4人
全体として、性教育を含めた大学でのキャンパスセクハラ防止措置の必要性が明らかになったと言えよう。
二 国際女性デーの活動の呼びかけと「女権の声」微博・微信の封鎖
3月6日、1月に母校でキャンパスセクハラ防止メカニズムの構築の署名を呼びかけた38人のさまざまな大学の在校生や卒業生が、「最強の国際女性デーの過ごし方指南|必見」というタイトルで、以下のような声明を「女権の声」の微信で発した(8)。
かくして、3月8日には、#私の反セクハラ宣言(我的反性骚扰宣言)#ハッシュタグがあちこちに出現した。その中には「女子力」という言葉に反発したものが目立ち、「#女子力# 私に、打折(割引)してくれるより、「痴漢」に打骨折(骨を折る)してくれるほうがいい」というメッセージや「女子力」という言葉を、女性パワーという意味で使ったメッセージなどがあった(9)。もうすぐ国際女性デーです。大学でのセクハラ反対運動の呼びかけ人が再び姿を現しました。私たちは、セクハラに反対し、ジェンダーフレンドリーな環境を創造するという希望を持って、自らのセクハラ反対宣言を発表し、みんなに行動に加わりセクハラ反対を最後まで行うよう呼びかけます。
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(ここに、共同発起人のうちの4人が、それぞれ以下のような「セクハラ反対宣言」を手に持ってアピールしている写真を掲載)
「セクハラ反対=真の女子力」
「女王もセクハラ反対」
「国際女性デー:(女性デーだから)割引してくれるより、一緒にセクハラ反対をしてくれるほうがいい」
▼私たちの声
私たち38人は、国内のさまざまな大学の在学生か卒業生です。私たちは、母校でセクハラ防止メカニズムを構築するための署名活動の呼びかけ人と参加者です。私たちは、この国際女性デーに、あなたにも加わって、反セクハラ宣言を出して、平等な権利を求める態度を表明することを呼びかけます。セクハラ反対には持続力が必要です。
【共同発起人名簿】
張褘(武漢大学)、鄭熹(浙江大学)、李蕙月(陝西師範大学)、魏源(復旦大学)、楠本和(対外経済大学)、肖月(中国伝媒大学)、李雨景(南華大学)、郭晶(信陽師範大学)、鄭楚然(中山大学)、王怡然(北京大学)、徐汀(華中師範大学)、梁渺(四川外国語大学)、郜憲達(香港中文大学)、段毅敏(香港中文大学)、諶蓉(大連外国語大学)、李雪寧(広西民族大学)、韋婷婷(武漢大学)、句月舟(中山大学)、肖洋(湖南女子学院)、李暁雪(天津工業大学)、顧華盈(北京大学)、高波(陝西科技大学)、趨文墨(信陽師範大学)、趙梅星(北京師範大学)、符麗萍(広州工業大学)、李子舒(西北師範大学)、宋小雨(湖北大学)、仇雪酈(北京師範大学)、侯艶(上海交通大学)、杜鈺(西安郵電大学)、任嬿如(中国伝媒大学)、李婷婷(長安大学)、李丹(西安聯合大学)、朱鑫明(滁州学院)、王昕熠(北京師範大学)、王雪瑶(遼寧師範大学)、梁暁雺(華南理工大学)
▼私たちに加わることで、あなたに何ができるのか?
中国にMe Tooがついに来ました。大学でのセクハラ反対署名が勢いよく集められた後、私たちには、セクハラ反対の知識をもっと普及し、ジェンダー平等を推進するために、何ができるのでしょうか?
この国際女性デーには、私たちは、休みを取り、買い物をし、「女神」という賛美を一言もらい、あるいは一日だけ家事を平等に分担するという「恩恵」があるほかに、どのような意義を見出すことができるのでしょうか?
もっと平等な国際女性デーを過ごすために、あなたにできるのは、次のことです。
1.実名でセクハラに反対し、セクハラしない人になることを承諾する。
2.反セクハラ宣言を書いて、SNSと微博の「@女権の声」と「@セクハラを明るみに出す」で発表し、#国際女性デー反ハラスメント(三八节反骚扰)#というタグを付ける。
3.身近な人たちに対して、一度、セクハラ反対の呼びかけをする。
私たちは、3月8日夜の24時までに3万8千の#国際女性デー反ハラスメント#を発信して、セクハラの悪に光を当て続け、もっと多くの人にセクハラ反対の行動に参加してもらうことを望みます。
しかし、3月8日から9日にかけて、「女権の声」の微信・微博アカウントは抹消されてしまった(本ブログの記事「中国最大の影響力を持つフェミニズムアカウント『女権の声』抹消とその後の『女権の声』に対する誹謗中傷」参照)。
このことを微信に問い合わせると、以下の答えが返ってきた。
「関係する法律法規と政策にもとづき、あなたのアカウントはすでにインターネットの情報内容の主管部門により永久にシャットアウトされた。
規則違反の内容:最強の国際女性デーの過ごし方指南|必見」(10)
もちろん今回の「女権の声」の抹消は、フェミニズムに対する弾圧という大きな背景があってのものだろうが、上の記載から見ると、上の38人の呼びかけが権力の反発引き起こしたように見える。
実は、すでに2月初め、「女権の声が大学のセクハラ防止メカニズム提唱の背後の黒幕である」という流言が流さていた(11)。実際は、「黒幕」などではなく、運動の宣伝に協力しただけなのだが、そのような流言が広がっていたことは、当局の警戒心を掻き立てた(または当局の警戒心の現れだった)と言えるのかもしれない。
その後も続く運動――南京大学
「女権の声」の削除は中国のフェミニズム運動にとって大きな打撃だった。しかし、「女声が削除されたことは、私たちがセクハラ反対の闘いを続けることを阻止できない。すでに、北京師範大学、陝西師範大学、湖南女子学院、北京語言大学、浙江大学、大連大学聯盟(大連理工大学、大連外国語大学、遼寧師範大学、東北財経大学)は、国際女性デーの期間に公然と学内のセクハラアンケート調査をしている」(12)という声もあがった。
3月27日、南京大学のセクハラ反対グループは、学長と大学の指導部に3通目の手紙を出している。この手紙は、再度キャンパスセクハラ防止メカニズムの重要性と必要性を説き、大学に対して、教育部の呼びかけに応えて、できるだけ速く行動して、全国の模範になってほしいと訴えている。
この手紙は、「私たちは『南京大学セクハラ防止制度を提案する手紙』の呼びかけ人として、409人の呼びかけに署名にした南京大学在学生・校友・教授を代表して、再度手紙を出して、進展をうかがいます」という文章から始まるもので、「提案の手紙を出して以後、私たちのもとには、在校生と卒業生が、自分が南京大学でセクハラを受けたという訴えや一部の教授に対する告発があり、胸が痛む」ことも書かれている(13)
1月19日に出した1通目の手紙に対しては、当時の学長から「関係部門に方案を研究させている」という返事があり、3月8日の2通目の手紙に対しても、学長の事務局から「研究の後、回答する」という返事だったので(14)、督促したということであろう。
三 北京大学教授・瀋陽の事件をきっかけとした活動活発化と大学の対応
1.李悠悠、元北京大学(現南京大学)教授・瀋陽のセクハラを告発
4月5日、北京大学の1995年度の卒業生(現在はカナダ在住)の李悠悠が、北京大学教授(現在は南京大学文学院)だった瀋陽が20年前、女子学生の高岩に性暴力をふるって、自殺に追いやったことを告発した。この告発により、大学でのセクハラにふたたび社会的注目が集まった。
当時、高岩が李悠悠に語ったところでは、1996年、高岩は、学術問題を討論するという口実で瀋陽の家に招かれて、抱きつかれたり、頬ずりされたりした。その年の秋、高岩は瀋陽に襲いかかられた。彼女は裸にされ、強姦された。
瀋陽は、高岩と同じクラスの女子学生とも頻繁にデートして、性行為をしていた。瀋陽は、その女子学生には、「私は高岩のことはちっとも好きじゃない。髙岩は自分から私にくっついて、ベッドに誘惑したんだ。髙岩は精神病だ」と言った。
その話は、その女子学生の口から高岩と同じ寄宿舎の女子学生や同じクラスの女子学生に伝わった。そのデマは広がり、高岩は瀋陽先生に「片思い」していて、精神病だと噂されるようになった。それにより、高岩は性暴力とデマという二重の苦しみを負うことになり、心身を痛めつけられた。
1998年3月、高岩は自殺した(16)。以上の李悠悠の訴えについては、北村豊「中国の名門大学を騒がせたセクハラ告発運動」(日経ビジネス2018年4月20日)が非常に詳しく紹介している。
瀋陽は、今回の李悠悠の告発に対して、「当時、北京大学中国語学科党委員会と北京海淀警察が調査して、そのような事実はまったくないという結論を出した」「そのような非難は悪意の誹謗である」「それゆえ、私は告発の権利を保留する」と述べた(17)。
2.各大学の対応
4月6日、北京大学は、「この事件について、大学は非常に重視し、教員職業道徳・規律委員会にただちに状況を再調査するよう求めた。関連資料を調べたところ、20年前、すなわち1998年3月、北京市公安局西城分局はこの事件について事実認定をおこない、調査の結果を出した。1998年7月、北京大学は、瀋陽に対して行政処分をおこなった」という「説明」を発表した。
同日、南京大学党委員会教員工作部も「説明」を出しし、「南京大学の関係部門は、この問題を非常に重視し、ただちに専門のワーキンググループを設置して、この事件について検討・判断をし、この事件の進展をきめ細かに注目している」と述べた(18)。
4月7日には、南京大学文学院が、すでに瀋陽の講義を止めさせるとともに、南京大学文学院の教職を辞めるよう勧告したという声明を出した(19)。
同日、上海師範大学も、瀋陽との契約を打ち切ると発表した(20)。
北京大学は、さらに「北京大学反セクハラ関連規定(建議稿)」についての検討もすすめた。
4月8日、北京大学の林建華学長は「北京大学教員職業道徳・規律委員会専門会議」を開催した。会議は「北京大学はいかなる形態のセクハラにも断固として反対する。大学は反セクハラの制度建設を推進し、教員と学生に対して反セクハラの宣伝と教育をおこなう」とした。そして、この会議では、「北京大学反セクハラ関連規定(建議稿)」の適用範囲、大学の反セクハラ機構の設置、セクハラ行為についての訴え、調査、認定、処理手続き、反セクハラの教育・予防活動について研究討論をおこなったという(21)。
この時期、南華大学や浙江大学も、学生たちの要請に対して回答をしており(22)、これも、瀋陽の事件での世論の関心の高まりの影響ではないかと思う。
3.大学の対応の問題点・その1――「師徳」の問題として扱う
「中国女性記者職場セクハラ状況調査報告」をおこなった黄雪琴は、李悠悠の告発に対して各大学が迅速に対応したことは評価しつつも、いずれの大学もそれを「師徳」の問題として処理している点を批判した。黄雪琴は、「『師風師徳』は、双方の権力とリソースの不対等、かつ有効な監督がない下において、学生の成績・プロジェクト・卒業・就職など生死にかかわる大権を持っている教員が、職権を利用して学生に対してさまざまな脅迫をしている現実を覆い隠す」ものであると述べた(23)。
その2――十分な調査や討論、事実認定なしに処分だけをおこなう
陳亜亜(上海社会科学院文学研究所)は、いち早く処分を決めた南京大学が出した声明についても、「声明が出た時期から見て、この決定は、詳細な調査、十分な討論、手続きに合致した正義の結果ではなく、機構の中核的指導部だけが参与した、突発的事故に対する緊急会議、簡単な相談と評決の後に出した結果である」と指摘した。陳亜亜は、1月に陳小武が処分されたときも、「具体的にどのような調査をし、調査の結果はどのようであり、どのような事実を認定したかは、みんなにははっきりわからなかった」と述べる(24)。
その3――セクハラ防止メカニズム構築に学生や当局側以外の団体が参与できていない
黄雪琴は、「私たちに欠けているのは、自由に対話をすること、透明で障害のない意思疎通、真に双方を保護するメカニズムとチャンネルである。もし教育部と各大学がこのメカニズムを研究・起草・改正する際に、学生が直接参加するルートがなければ、そのメカニズムはどうして本当に弱者の側である学生を保障することができようか?」「大学は、学生の意見を吸収して、学生の参与を歓迎しなければならない」と指摘する(25)。
陳亜亜は、「このような問題を解決するためには、現行の行政機構・規律検査機構にのみ依拠するのは不十分である。最も良いのは多方面からの参与(学内のさまざまな社会組織、たとえば教員連合会、学生会など)、共同管理の管理メカニズムを打ち立て、必要な時には、第三者である調査機関を導入することであり、事実を明らかにするという基礎の上に、多方面の意見を尊重し、民主的な方法で協議し、最終的に共同で決議することである」とする(26)。
その4――教員の審査基準の中に「セクハラ」が入っていない大学、訴える窓口がない大学が多い
4月16日、「NJU核真録」(南京大学ジャーナリズムコミュニケーション学院が実験的に作成しているメディア)が、「985大学(教育部が1998年5月に定めた、「211」大学の中でもさらに重点的に投資する大学)」である39大学について、師風師徳/セクハラに関す監督や訴えのメカニズムの有無を調べた。
その結果、そもそも「セクハラ」が「師風師徳」を審査する条項の中に入っていない大学が16大学であり、全体の41%を占めていた。そのうち、7大学は、「師風師徳」を審査する制度さえなく(清華大学、北京航空航天大学、北京理工大学、吉林大学、中国科学科技大学、湖南大学、国防科学科技大学)、9大学は、「師風師徳」を審査する制度はあるが、その審査項目の中に「セクハラ」が入っていなかった(中央民族大学、南開大学、天津大学、ハルピン工業大学、復旦大学、厦門大学、中国海洋大学、電子科技大学)。
また、大学のウェブサイト上に、「師風師徳」を監督する連絡先(電話番号、メールアドレス)を書いているのは、6大学であり、2割以下だった(浙江大学、北京大学、南京大学、西北工業大学、四川大学、中山大学)。そのうち、北京大学と南京大学は、瀋陽事件が起きた後にになって、監督方法を発表した(27)。
4.南京大学での指摘と是正
もちろん、以上で述べられている問題を克服するための学生たちの活動はおこなわれている。
まず、ごく単純な例を挙げる。
教育部が2014年9月に発表した「健全な師徳建設の長期的メカニズムを構築することに関する意見(「教育部关于建立健全高校师德建设长效机制的意见」教师〔2014〕10号)」を受けて、南京大学は2015年9月、「南京大学の健全な師徳建設の長期的メカニズムを構築することに関する実施規則(南京大学关于建立健全师德建设长效机制的实施办法)」を発表した。
しかし、それに対して、@我也是藍鯨霊(藍鯨=シロナガスクジラ。小藍鯨は南京大学のマスコット)は、4月7日、「大学でのセクハラに対して、南京大学人は何ができるか?」という文の中で、教育部の「紅七条」から、なんと、「学生に対してセクハラをする、または不正当な関係を持つ」という個所を削除し、「紅六条」にしてしまっていることを指摘した。
また、4月6日の南京大学党委員会教員工作部の「説明」には、「南京大学は(……)監督信箱(信箱:郵便受け、メールボックス)と通報電話などの師徳に関する訴えの場を設置している」と書かれていた。
しかし、@我也是藍鯨霊は、この点に関しても、「私たちはまだ公式のウェブサイトには、その具体的連絡方法を見つけられない」と指摘した(28)。
こうした@我也是藍鯨霊の指摘に対して、南京大学は、「南京大学の健全な師徳建設の長期的メカニズムを構築することに関する実施規則」の改正を発表して、「学生に対してセクハラをする、または不正当な関係を持つ」という条項を入れることを発表した。また、通報の窓口も設置した(29)。
5.中国人民大学での告発と運動
4月11日、中国人民大学の経済学院の顧海兵教授に在学中にセクハラを受けたという告発が匿名でなされ、大きな反響を呼んだ。13日には、同大学の行政管理学科の張康之教授がセクハラをしていることが卒業生の微博で告発された(30)。
4月13日、中国人民大学は、一部の教員の師徳師風に反する言行に関する意見について、大学は非常に重視し、専門工作グループを設置し、事実調査をするという声明を出した(31)。
4月14日、同大学の学生・「頑石」(2016年度入学の哲学院の楊舒涵)が、以下の「学内セクハラ防止メカニズムに関する提案」を提出する人を募集した。
しかし、上の文章は「『中華人民共和国インターネット安全法』に違反した」として、見ることができなくなった。「キャンパスセクハラ防止メカニズムに関する提案」
最近、「学生の性知識の伝達と性侵害に関する状況の調査アンケート(人民大学)」が発表された。このアンケートに対し、学内で大きな関心が集まり、転送されて記入されたアンケートの部数はすでに3000部を突破した。このことは、学内の教員や学生が学内でのセクハラ問題に深い関心を寄せており、セクハラ防止のメカニズムを構築することを強く望んでいることを示している。
4月12日には、経済学院の教授・顧海兵に対する匿名の告発が知乎(ネット上の掲示板)に出現して、広く関心を集め、議論されたが、その後、知乎からこの問題は削除された。
私は、大学がキャンパスセクハラを正視して、学生の安全を保証し、教職員と学生のセクハラ防止意識を高め、セクハラ防止メカニズムを構築して、調査・処理・プライバシー保護などの面の制度を整備することを望んでいる。
これにもとづき、私は、以下の数点の提案を出す。
まず、最近一部の学生が匿名で通報した本学の経済学院の顧海兵教授のセクハラ疑惑について、大学はすでに態度を公表し、専門の工作グループをつくり、事件について事実調査をおこなっている。大学は、師徳師風に反するいかなる言行に対しても、断固反対し、どんな人であれ、絶対に見逃さず、絶対に容認しないという態度を終始鮮明にしている。
大学の態度は本当にすばらしい!
しかし、声明には、欠けている部分が2つある。1つは、大学が調査結果を公表する期限である。もう1つは、学生がキャンパスセクハラ反対に参与することについての大学の態度である。
第二に、基本的な、長期的反セクハラメカニズムを構築するべきである。
1.大学に、キャンパスセクハラを防止・処理する専門機構か指導グループを設置する。
2.教員と学生がともに参加して、キャンパスでの性侵害・セクハラに反対する規範と条例を討論し、制定する。
3.匿名の通報と審査制度を構築して、学内に存在している可能性がある性侵害・セクハラ行為に対して、威嚇と監督をする。
4.学内に反性侵害・反セクハラの公示制度を作り、通報された行為に対して調査をおこない、調査のプロセスと結果を随時詳細に公示する。
5.正式に通報された性侵害・セクハラ行為は、大学側が期限内(たとえば10日以内)に初歩的回答をおこなう。回答は、事件が起きた経緯とその重大さについての初歩的判断についてであるべきである。
6.防止と対応のプロセスでは、学生(教職員)代表が被害学生(教職員)と同等の立場で全過程に参与する。
第三に、本学には、公共の討論の空間がなく、教員と学生にとって必要な情報の集散地がないため、性侵害やセクハラにあった教員や学生は、公共空間から必要な援助を得られないし、潜在的被害者に注意や警告を知らせる基本的な情報のルートもない。そのため、悪質な事件の処理と解決のプロセスにも、教員と学生が参与することは難しく、悪質な事件もうやむやになってしまう。それゆえ、フォーラムを作って、全学の教員と学生の公共討論の空間にするべきである。
第四に、学外者が学内に進入して、性侵害・セクハラ事件のかなりの比率を起こしているので、以下の点を提案する。
1.門の出入りのチェックをする。
2.学内の、辺鄙で静かな、性侵害・セクハラの多発地区に、監視・照明設備を設置する。
3.夜間の学内の主な道路の街頭照明の時間を12時まで延長する。
最後に、大学生段階に適応した、全面的な性教育課程を開設して、反セクハラと性教育とをともに展開することによって、反性侵害・反セクハラだけをすることでもたらされる可能性がある性観念を避けるべきである(32)。
それでも、中国人民大学の20学院の69人の学生(本科生、博士課程学生、修士課程学生を含む)がメールを寄せ、実名で「キャンパスセクハラ防止メカニズムを構築する」提案に賛成した。そして、少なくとも3人の哲学院以外の学生の代表が、この提案を学生代表大会に提出した。頑石(楊舒涵)は、この「中国人民大学の学内のセクハラ防止メカニズムに関す提案」を学長、書記、学生局のメールボックスにも発信した(33)。
4月16日、中国人民大学は、「中国人民大学教員職業道徳規範(試行)」「中国人民大学師徳建設長期的メカニズム試行規則(試行)」「中国人民大学教職員規律処分暫定規定」を発表した。これらによって、「学生に対してセクハラをする、または不正当な関係を持つ」こと、「利益関係を持つ学生と恋愛関係を持つ」こと、「同僚に対してセクハラをする、または不正当な関係を持つ」ことを規則違反とした(34)。
学生たちが要求していたものとはまだ遠いが、最低限の規定は作成したと言えよう。
5.北京大学での運動、情報公開要求と弾圧
(1)非公開で意見募集会
北京大学では、4月16日に、共産主義青年団(官制の青年組織)の委員会が、「『北京大学反セクハラ関連規定(建議稿)』意見募集会」を開催した。
この会は、北京大学学生会の常務代表委員会の会長で、歴史学系の本科生である李穎が、北京大学反セクハラ暫定規定起草専門家グループの委託を受けて主催した形をとっている。専門家は、北京大学社会学系教授・佟新、北京大学教育学院副教授・張冉、北京大学社会学系副教授・呉麗娟である。
この会では、まず、張冉が、陳小武事件の後、北京大学中外婦女問題研究センターが、北京大学反セクハラ暫定規定の起草を請け負って、何度か起草をおこなって、参加者の手元に意見募集稿を配布したことを述べている。
その後、その意見募集稿の中の、セクハラに関する概念や、反セクハラ専門委員会のメンバーの中の教師・学生の代表の比率や選出方法、調停のメカニズム、教員と学生の恋愛の問題、反セクハラ専門委員会に対する監督などについて議論した(35)。
しかし、この会は非公開だった。この会の中でも、主催者が参加者に対して、「資料を持って帰ったり、ネット上で伝えたりしないようにしてください」と要請した。上で記した内容も、参加者の誰かがひそかに録音したもののようだ。
こうした状況に対して、ある学生は、「座談会をするからには、なぜ広範な熱心な学友を招かないのか?」「公開で座談会を開催することに、何か悪い点があるというのではあるまい?」「もちろん会議の収容人数には限りがあるが、出席する代表は公けに募集すべきである」「情報公開を申請した学生こそを招くべきである」と主張した。
この学生は、以下の点を要求した。
1.なぜ全学生に事前に情報(目的、参加者の範囲、時間、場所など)を公開して、代表を募集しなかったのかを学友全体に説明すること。
2.代表の名簿とその作成方法を発表して、それが広範な代表性と手続きの合法性などの面を満たしているか否か、みんなの質疑と監督を受けること。みんながそこに重大な瑕疵があると考えるなら、時期を選んであらためて座談会を招集すること。
3.できるだけ早く全学の教員と学生に「建議稿」を公開し、反セクハラに関する規定が最終的にどのように決まるかのスケジュールを確定し、意見を表明できるルートを作ること(36)。
(2)岳昕の活動に対する弾圧
4月23日には、北京大学外国語学院2014年度入学の女子学生・岳昕がネット上に「北京大学の教員・学生宛ての公開書簡」を発表した。その内容は、以下のようなことを記したものだった。
岳昕は、4月9日、7人の学生とともに北京大学に対して「情報公開申請表」を提出した。その内容は、瀋陽の師徳を議論した会議の記録、公安局の調査結果、瀋陽の自己批判の内容の公開を求めるものだった。
すると、その後、岳昕のところに、たえず学生工作部(学生思想政治教育工作部)の教員や指導者が話をしにやってきた。それは、午前1時や2時にまで及ぶこともあった。その中で、教員は何度も「ちゃんと卒業できるかどうか」、「こんなことをして、お母さんやお祖母さんはどう思うか」、「学生工作部の教員は直接保護者に連絡する権限がある」などといって、卒業論文を書いている岳昕に圧力をかけた。
4月20日、大学側から回答が来たが、それは以下のようなものだった。
1.瀋陽の師徳を討論した会議は、記録を残すようなランクのものではなかった。
2.公安局の調査結果は、大学が管理している範囲のものではない。
3.瀋陽の公開自己批判の内容は、中国語学科の業務ミスにより探し出せなかった。
岳昕はこの回答に失望したが、卒業論文提出の締切が迫っていたので、論文を書くことに集中するしかなかった。
4月22日の晩11時ごろ、突然、補導員が岳昕に電話をかけてきた。もう遅い時間だったので、岳昕は電話に出られなかった。すると、午前1時、補導員と母親が突然、寮にやってきて、岳昕を起こし、携帯電話とパソコンの中の事件に関するすべての資料を削除するよう要求した。夜が明けると、学生工作部の教員のところに行かされ、この件にはもう介入しないことを保証する書面を作らされた。その後、岳昕は保護者に連れられて家に帰らされた。
大学が岳昕の母親に連絡したとき、事実を歪曲して伝えたため、母親は驚き、おびえた。母親は、岳昕に向かって泣き叫んだり、ひざまずいてお願いをしたり、自殺すると言って脅したりして、岳昕を家に帰らせたのだ(37)。
4月23日晩、北京大学の学内の「紅旗団委」の宣伝スペースに、「勇士岳昕に声援を送る」という壁新聞が貼られた。この壁新聞は、「湖底群魂」という署名が付されたもので、北京大学の創立記念日(5月4日)が間近であることを踏まえている。この壁新聞は、岳昕が恐れているのは、「精神上の創立記念日をダメにしたら、120年前の五四運動の先輩に申し訳ない」ことであるのに対して、大学側が恐れているのは、「ごたごた」が起きて「行政的成績としての創立記念日」をダメにすることだと指摘し、両者の矛盾を「『2つの北京大学』の間の闘争」だと述べるものだった(38)。
岳昕は、一週間後、文章を発表して、一週間前の夜の状況や大学側の説明の誤り、その後の心の中の闘いなどについて説明した。そこには、岳昕の家族の気持ちは落ち着きつつあるが、それは自分がもう何もしないと思っているからであること、自分は家族の気持ちとの板挟みになって苦しんできたことなどが書かれていた。
岳昕は、自分は活動をやめれば、中産家庭の幸福な日々を送れるようになるけれども、「情報公開制度、セクハラ・性侵害防止制度、約談制度を改善する提起を公然とすることは困難になり、たとえ何らかの制度ができたとしても、それは密室での会議の産物になる」と述べた。岳昕は、「私は、後輩たちがまったく合法的な権利を闘い取るだけのために、このような思いをさせ続けるわけにはいかない。私は、次の高岩が命を断っても、我慢して黙ってい続けさせるわけにはいかない」と、今後も活動を続ける決意を表明した。
岳昕は、また、「多くの労働者家庭の不公正と苦難に比べれば、私と私の家族の苦難は取るに足りない」と労働者に思いを致している(39)。
6.「約談」制度の問題
(1)李一鳴らの北京大学への公開書簡
4月25日には、北京大学の学生の李一鳴らが、北京大学指導部に「一部の学友が情報公開を申請したことについて約談(*)されたことについての北京大学当局への連名の手紙」という公開書簡を送った。(*)「約談」とは、文字通りの意味は「時間の約束をして話をする」ということだが、「中日辞書 北辞郎」では、その他に「事情聴取」とか「取り調べ」という訳も書かれている。「百度百科」では、「約談とは、すこぶる中国独特の制度である。具体的な行政的職権を持つ機関が、話をして意思疎通する、政策法規を学習する、分析・講評するなどの方法で、下級組織の運行に存在する問題に対して、是正し、規範に合わせる具体的行政行為」と解説されている。
李一鳴らは、以下の点を北京大学指導部に要請した。
1.約談の行為によって岳昕を傷つけたことに対して、適切な埋め合わせをすること。
2.約談制度に対する制約を強めること。全学の教員・学生に対して、北京大学の約談制度を明確にし、約談の施行細則を制定し、「学生を中心にする」という思想を具体化し、学友たちの正常な学習生活が影響を受けないようにすること。「学友に関心を寄せる」などの名目で意のままに学友と約談して、みんなの合法的権益を侵害することを厳禁すること。
3.学友の合法的権利を十分保障すること。約談の活動の前に、誠心誠意状況を説明し、約談される者に断る自由があることを告げて、学友本人を越えて、学友の家族に圧力をかけてはならないこと。
4.約談制度の大衆の監督と制度的制約を整備すること(40)。
この署名には、北京大学の在学生と教員、卒業生200名近くから署名が集まったという(41)。
(2)ジェンダー平等のために活動家にも強要されてきた「約談」
岳昕の事件によって、今回、「約談」制度が広く注目されたが、それ以前から、ジェンダー平等のために活動してきた学生と青年も「約談」という手段で抑圧されてきていたことを「広州新メディア女性ネットワーク」が指摘している。その中のいくつかの例をご紹介する。
1. 秋白(同性愛に対して差別的な教科書についての教育部の責任を追及する裁判を起こしたレズビアン)の場合
秋白は、裁判の準備中から圧力をかけられ、裁判を起こして以後、無数に約談されたという。
大学の補導員は、秋白に対して、「外国メディアの取材を受けてはならなし、自分がどの大学なのかも言ってはならない」「外国メディアには下心がある。きっと利用される」とか、「あなたはひどく大学の面子をつぶした」と言って圧力をかけた。
さらに秋白の父母を大学に呼んで、「大学の指導部は怒っている。これではあなたの子供の将来によくないし、卒業できるかどうかもかわからない」と言って父母を怖がらせた。父母は秋白を家に連れて帰り、いくつもの精神病院に連れて行って、心理的問題がないか検査させた。
2.小宇(広州外語外貿大学で、卒業式の日に小宇はレズビアンのパートナーに求婚するパフォーマンスをおこなった女性)の場合
小宇も、活動が大きく報道されたことで学院の副書記から電話がかかってきた。小宇は電話に出られなかったが、すると、副書記は父母に電話をして、小宇に事務所まで来るように言った。
副書記は「私は同性愛を差別しないが、国外の勢力に利用され、だまされる」「拘束に違反したから、しばらく学位証はあげられない」と言った。
また、父母が烈火のごとく怒ったので、小宇は父母としばらく連絡を取らなかったら、副書記と父母は、「小宇が失踪した」と警察に言って、警察は、小宇が借りている部屋のドアをこじ開けて、部屋を無茶苦茶にした。
小宇が学位証をもらうために、再度副書記に会いに行ったら、副書記は「同性愛をやってはいけないとは言わない。しかし、家に帰ってからやれ。公衆の面前でやって、大学のイメージを傷つけるな」と言った。
3.小皮(ジェンダー平等のための団体の職員)の場合
小皮は、ジェンダー平等関連の演劇(《ヴァギナ・モノローグス》の中国版のことであろう)のチケットを売ったり演出をしたりしたために、文化局から二回、約談された。
一度目は劇をしている場での面談であり、活動の参加者や活動の責任者について尋ねられたが、小皮は答えなかった。
二度目は文化局に連れて行かれた。このときは、男の課長が訊問し、すべて記録にとられ、指紋も押させられた。主要な参加者の微信をすべて出すように言われた。
約談で小皮が最も印象に残っているのは、男の課長が「なぜみっともない話題を上演するのか(上演には性と情欲が関係している)?」と尋ねたので、小皮が「あなたにはお嬢ちゃんやお坊ちゃんがいないのか? 性教育をするときには、性器の名前を言わないわけにはいかないでしょう?」と言うと、彼は「生殖器官の名称は非常に下品だ」と言ったことだった(42)。
以上3つの例を挙げたが、「外国に利用される」「大学のイメージを傷つける」などと言われていること、大学生の場合、父母にも圧力をかけていることなどが、複数の事例で共通している。
7.中山大学での新たな告発
中山大学でも、1月1日の羅茜茜の告発をきっかけに、キャンパスセクハラ反対運動がおこった。1月8日には、118人の卒業生と77人の在校生が、大学に対して、セクハラ防止のための「5つの1」(43)を求める提案をおこなったが、なしのつぶてであった。
しかし、そうした中、4月28日、中山大学の人類学科の卒業生が、同大学の某人類学系教授が農村でのフィールドワーク中に女子学生にセクハラをしていたことを告発した。その卒業生が学生だった3年前の夏、その教授は、1ヶ月のフィールドワークの期間に、酒を飲んで女子学生の部屋に入って、布団をはいで胸を触ったりしていた。酒を飲んでいないときも、後ろから女子学生に抱き着いたり、女子学生の尻を叩いたりしていた。
そのことを知った彼女は、大学院生の男性に協力を求めて、教授とその女子学生らを接触させないようにした。しかし、その教授は他の事情を知らない女子学生にターゲットを変えた。また、フィールドワーク終了後、その教授は彼女に対して冷淡になった。
なぜ彼女が3年前のことを告発しようと思ったのかと言えば、その教授の指導下の大学院生と話をしていたら、彼が、教授のセクハラについて「教授が成長した文化的環境が私たちとは異なるからかもしれない」と弁護したことに怒りを感じたからだという(44)。
その日の午前10時には、この告発は削除されたが、他のあちこちに転載された。
さらに同日、その告発に対して、ネットの掲示板で、数人の匿名のユーザーが「自分はその学科の学生だが、その事件は事実だ」という趣旨の書き込みをおこなった。
しかし、それらの転載や書き込みも削除された。
それでも、4月30日、中山大学社会学・人類学学院人類学科の卒業生と学生が、学院内部に建議の手紙を送るという動きが起きた(45)。
おわりに
1.まとめ
中国では、今年1月、74大学で8000人以上(多くの人が実名)が、母校に対してキャンパスセクハラ防止システムの制定を求める署名に加わるなど、運動が大きく広がった。しかし、2月以降は、大学当局の抑圧によって、運動にはそうした勢いと広がりとはなくなった。
4月に北京大学で卒業生の李悠悠が元北京大学教授の瀋陽のセクハラを告発したことは大きな話題になり、それによって運動も少し活発化したが、学生たちの運動には強い圧力がかけられ続けている。
ただし、そうした中でも、北京大学以外でも教員のセクハラに対する告発は続いており(同済大学、中国人民大学、中山大学など)、大学によっては、学生たちによってセクハラについての調査(北京大学、中国人民大学)やキャンパスセクハラ防止システム構築を求める運動が続いている。
北京大学のようにセクハラ防止規定の制定をすすめている大学もある。その際、学生たちは、学生や教員の参加を要求しているが、大学当局の弾圧は厳しい。
また、セクハラ反対運動で女性が主力になっており、3月6日には、「女権の声」の微信で38人のキャンパスセクハラ防止システムを求める運動の呼びかけ人が、広範な人々に3月8日にネット上などでのセクハラ反対の行動を呼びかけた。しかし、3月8日夜には「女権の声」の微信と微博は抹消されてしまった。このことは、セクハラ反対の運動が、女性と権力とのたたかいという性格を強く持っていることを示していよう。
なお、当然ながら、セクハラ事件の背景には、大学の制度全体、すなわち指導教員と学生との関係のあり方全般に問題があるという指摘も出ている。たとえば、指導教員が大学院生を安いアルバイトとして使うとか、教材の代筆をさせるといったことである。その背景には、論文発表や学位獲得、就職などに関して指導教官の力が大きいために、人身的な依存関係ができるという状況がある。そうした状況に対して、学生の権利を保護する体制はきわめて不十分である(46)。
それ以外に、以下のような指摘にも注目したい。
2.大学以外への広がりの乏しさ
陳亜亜は、中国のMetoo運動と外国のMetoo運動とを比較すると「欧米(韓国など、いくらかのアジアの国を含む)では、セクハラ反対運動が全面的に開花して、多くの領域に及んでおり、とくに映画・テレビ業界、文学界、政界の反響が最も強烈で、多くの人の関心を引いている。しかし、国内では学界(大学)だけで類似した効果が生じているにとどまり、他の領域では(……)基本的にセクハラ反対の声は聞こえない」と指摘している。
陳は、この点について、「その原因は複雑」だが、「当事者がニュースとしての価値を持っていない」場合があるとし、その例として「女工」の場合を挙げている。たとえば、2013年には「広州女工セクハラ調査研究報告」が、大多数の女工がセクハラを受けており、15%はセクハラのために「自分から辞職した」ことがあることを明らかにした。また、2018年には、某民間団体のセルフメディアが、フォックスコンの女工がセクハラ反対の活動をし、それに「#MeToo中国」のタグを付けたが、メディアや公衆の関心を引かなかった。
陳は、それに対して、大学で起きたセクハラ事件は、多くの関心を引いたとし、その理由として、以下の3点を挙げる。
(1)「これは、メディアが大学に対して構築してきたイメージ、公衆の大学に対する心理的期待と関係している。多くの人の目には、大学は神聖な知識の殿堂であり、この殿堂に入る学生は神の寵児のように映る。(……)社会が大学に高い期待をしているために、彼らは大学教員に対してもより高い道徳的期待をする。こうした背景があるので、大学に性的スキャンダル(教員の学生に対する性暴力など)が暴露されれば、とりわけ人の注目を引く」
(2)「大学、とくに名門大学は選り抜きの人材を集めたところであり、教員の中の少なからぬ人は、社会のエリート、著名人であり、社会からの関心が高い。学生の資質も高く、多くの卒業生がいる業界は影響力が大きい。一言で言えば、彼らは社会で相対的に発言権を持った人である。これらの人のネット上での訴え、呼びかけ、弁論は、記述が明確で、観点が鮮明で、読みやすく、情報量が多く、訴えが的確であるという優れた点がある」
(3)「大学の学生(若い卒業生)は、国内のジェンダー平等運動の主力軍である」(47)。
3.外国メディアの論評が見落としがちなこと
大学でのセクハラ反対運動について多くの発信をしてきた@七隻小怪獣は、外国メディアの評論を読んで、気がふさいだという。なぜなら「(中国の)審査制度については書かれていても、いきいきとした主観的能動性を持った個人が、どのようにして、困難を前にして、創意と知恵を用いてネットワークを通じてより多くの力を集めて制度の確立を監督し推進しよう試みていることがほとんど書かれていない」からだ。「もしみんなが運動の評価について、失敗/成功という結果を見るだけならば、成功する希望はごくわずかで、大半は失敗だ。しかし、そうした見方は、『審査制度と政府の権力を中心に置き、市民の行動の効果に関心を持たず』、グループ形成の中で民主を体現していることを軽視し、公民の積極的参加とそれがもたらす変化、次の爆発のために蓄積するエネルギーを軽視している」と批判する。そして「『このような『不成功すなわち失敗』という見方は、私の身近にも溢れており、『中国は困難すぎる、必ず失敗する』から『きっと無駄だ』』という(48)。
中国報道において、政府の弾圧の類を中心にし、市民の運動自体には注目しないという傾向は、日本のメディアにもかなり当てはまるのではないか。また、@七隻小怪獣は、それは、中国の人々の変革へのあきらめとも共通したものだと指摘しているが、中国に対する政府の権力を中心にした見方は、日本の変革に対する同様の見方にも通じるものでないか。
(1)「海外中国学生学者就性骚扰防治的公开信」思考者iThink 2018-02-07 20:57:55。
(2)「来自全球联名者的声音」七隻小怪獸的微博小怪獸2018-02-28 16:03:56。
(3)「一封政协委员的回信:会将高校性骚扰防治以提案上交两会」鱼里鱼闯江湖的微信2018-02-14、新媒体女性「两会在即,你应该关注的五大性别提案」新媒体女性2018-03-02 18:40:09。
(4)广州性别中心「调查显示:大学生中七成人曾被性骚扰」新媒体女性的微博2017-03-08 19:37:45。
(5)「发布高校性骚扰报告之后,她成立了广州性别中心,她会遇到多少挑战?」新浪看点(作者:好奇心日报) 2018-02-09 02:02:13。
(6)爱你的「新年开工+筹款成功!我们开始干活儿啦」广州性别中心的微信2018年2月22日。
(7)反性骚扰调查小组「北京大学学生遭遇性骚扰状况调查报告」顶个球公社2018-03-08七隻小怪兽的微博3月9日 01:29。
(8)女权行动派「最强妇女节过节指南|必看」女权之声2018-03-06七隻小怪兽的微博3月7日 00:37。
(9)女权之声的微博3月8日 13:21。
(10)「女声消失51天,我们和编辑聊了聊」@新媒体女性04月28日 16:25。
(11)「反性骚扰,停止“幕后黑幕”思维吧,看见青年的力量」2018年2月10日。
(12)七隻小怪獸的微博3月9日 16:37。
(13)「【第三封致校长信】南京大学校友、学生和教授实名请求建立校园性骚扰防治机制的公开联名信」七隻小怪獣的微博3月28日 12:00。
(14)我也是蓝鲸灵的微博3月27日 10:15。
(16)「现南京大学文学院语言学科主任、长江学者沈阳教授,女生高岩的死真的你无关吗?」「北京大学李悠悠实名揭发长江学者沈阳教授」头条校园2018-04-05 15:07:29。
(17)「前北大教授被指性侵女生致其自杀 独家回应:均为恶意诽谤」2018-04-05 21:50(『新京报』より)。
(18)「南京大学:已成立专门工作组对沈阳被举报事件进行研判」『新京报』2018年4月6日。
(19)「南京大学文学院关于北大校友网上发文的声明」南京大学文学院公式サイト。
(20)「上师大声明:终止与南大教授沈阳签订的校外兼职教师聘任协议」上师大人事在线2018-04-07 13:36。
(21)「“沈阳事件”最新进展! 北大开会研究反性骚扰制度」人民网-人民日报2018年04月08日15:06。
(22)4月6日、南華大学は、キャンパスセクハラ防止のために、以下の4つの措置を取ると回答した。1.セクハラ防止を新入生の教育内容に入れる。2.関係するテーマの専門の教育をおこなう。毎年、専門家を招いて、セクハラ防止および自尊自愛などの関係するテーマの講座をする。3.心理的健康の面の調査をおこない、学生のセクハラの悩みを知り、心理的指導をする。4.専門や兼職の隊伍を強化し、キャンバスの巡視を強める。
また、浙江大学からは「党委員会教員工作部は、教育部の指導意見にもとづき、関係部門と共同でセクハラに関するメカニズムを研究する」という回答が来た(鱼里鱼闯江湖的微博4月8日 14:31)。
(23)黄雪琴「高岩们不能白死 我们需要怎样的反性骚扰侵害机制?」广州性别中心2018-04-10。
(24) voiceyaya「陈亚亚:我为什么无法为南大文学院的声明鼓掌」新媒体女性2018-04-08 20:12:47。
(25)(23)に同じ。
(26)(24)に同じ。
(27)「调查独家调查39所985高校,超八成还未设立性骚扰监督渠道」NJU核真录2018-04-16。
(28)「面对高校性骚扰,南大人能做什么?」我也是蓝鲸灵的微博2018年4月7日 14:33:53。
(29)我也是蓝鲸灵的微博2018年4月26日 15:50。
(30)「一封呼吁调查人大顾海兵教授的倡议书:面对性骚扰,拒绝包庇和隐瞒」端点星2018-04-13、「中国版#MeToo持续震荡 人民大学两教授卷性丑闻」2018-04-14、「人大教师被指性骚扰女学生 举报女生:相信学校可以作出公正处理」中国妇女报的微博2018-04-17 12:58:53。
(31)「人大校友举报长江学者张康之性骚扰 校方表态」凤凰网2018年04月16日 06:52:00。
(32)顽石「就关于校园性骚扰防治机制的提案发起征集」东门顽石2018-04-14七隻小怪獸的微博4月14日 13:12。
(33)杨舒涵「关于校园性骚扰防治机制提案提交情况的说明」东门顽石2018-04-15七隻小怪獸的微博4月15日 23:40。
(34)「中国人民大学印发《师德建设长效机制实施办法》等文件 进一步加强师风建设」人大新闻网2018-04-15 20:04:41。
(35)小Q「北大反性骚扰意见征集会都讲了什么?」境外事例2018-04-17我也是蓝鲸灵的微博4月17日 22:08。
(36)以上は、普通北大同学「反性骚扰座谈会,为何我不知道?」北门不说话2018-04-15七隻小怪獸的微博4月16日。
(37)岳昕「致北京大学师生的一封公开信」博谈网2018-04-24 06:07(来源:岳昕)、「北京大のセクハラ、情報公開求めた女子学生が軟禁状態」『朝日新聞』2018年4月25日06時39分。
(38)「北大百廿校慶前再現『大字報』,微博將『北大』列為敏感詞」端媒体2018-04-24、「女生要求信息公开遭警告 “北大”成敏感词」BBC2018年4月24日。
(39)「木・田:我在公开信后的一周里(原载于公众号“木田君的鎬头”) 」
(40) Shawn Zhang「就部分同学因申请信息公开被约谈一事致北大校方的联名信」Apr24
(41)(39)に同じ。
(42)「性别平等倡导者:我们被约与被谈」新媒体女性 | 05月07日 19:46。
(43)(「5つの1」とは、1.毎年、全学の各教職員に対して、1回、セクハラ防止に関する研修をすること。2.各学生に、1回、反セクハラの授業を受けさせること。3.毎学期に1回、セクハラのインターネット調査をして、学生がセクハラ、憂鬱、焦慮などの状況について匿名でフィードバックできるようにすること。4.セクハラの通報・訴えを受け付けるルート(郵便箱、メールボックス、電話など)を1つ、設置すること。5.セクハラ行為の訴えを受理する部門1つと、責任者1人を明確にすること。以上は、さまざまな大学で要求された
(44)。「田野裡的『叫獸』」看中國2018-04-30 08:32。
(45)大学生「中大人在行动田野里的“叫兽”后续」MetooinSYSU2018-04-30dianaloves-object的微博2018-04-30 12:38。
(46) 吴余 朱不换「比起沈阳,更应该关心的是高校制度问题|大象公会」大象公会的微信2018-04-08。
(47)voiceyaya「职场性骚扰小调查|如何将#Metoo效应从学界扩散出去?」新媒体女性2018-04-12 14:08:11。
(48)「写在#metoo在中国#被删一个月之际」七隻小怪兽的微博2018-02-18 15:32:45。
「中国女性記者職場セクハラ状況調査報告」
この調査は、昨年11月20日、黄雪琴さんが、#MeTooに触発されて自らと周囲の女性記者のセクハラ被害を微博・微信で発表するとともに、開始したものだ。黄さんは、同日、セルフメディア「ATSH(Anti-Sexual Harassment)」を通じて、インターネットでアンケートを取るという形で調査を開始した(2)(中国における#MeTooについては、本ブログの記事「中国における#MeTooとキャンパスセクハラ反対運動」参照)。
「広州ジェンダー研究センター」は、2015年3~4月に刑事拘留された「女権五姉妹(Femnist Five Sisters)の一人であり韋婷婷さんが創設した団体である。同センターは、昨年3月、「中国大学在校・卒業生セクハラ状況調査」を発表している。この調査は、6592部の有効回答(女性84%、男性16%)をもとにしたもので、その7割にセクハラを受けた経験があることなど、さまざまなことを明らかにした(3)。
今回の「中国女性記者職場セクハラ状況調査」の質問票は「中国记者性骚扰状况调查」であり、調査報告の全文は、「中国女记者职场性骚扰状况调查报告」からダウンロードできる。
以下、内容をごく簡単に日本語でご紹介させていただく。ただし、とくに個人の話に関しては、原文は非常に詳細なものであり、今回は、そのごく一部を大雑把に訳しただけであることをお断りする。
一 前書き
2010年から2014年の間、私(黄雪琴)は他の女性記者がセクハラにあってきたのをたびたび目にしてきた。美人アナウンサーは、四つの「お相手」(食事、飲酒、歌、おしゃべり)を要求され、立場が強いはずの調査記者も、食事などの場でわいせつな笑い話をされた。酒に酔って大胆になった指導者は女性記者の目の前でズボンの前を開き、性行為を強要された記者さえいる。
2017年10月、“Me too”運動が全世界に広がった。その中で、メディアの職場でも、セクハラがけっして少なくないことが明らかになった。
中国の女性記者たちの中で、いったい、どれほどの人が職場でセクハラにあっているだろうか? 新聞社・雑誌社などのメディアには、職場のセクハラに関する研修や規定があるのだろうか? 職場のセクハラを、私たちはどのように防止すべきだろうか? 私は、調査をして、中国の女性記者が遭遇している職場のセクハラの真の状況を知るように呼びかけた。
このアンケートは、国内の記者のQQ(中国のインスタントメッセンジャー)のグループや微信(中国版line)グループなどに向けて発信した。さらに、微信や微博(中国版twitter)を通じて個人的に207人の女性記者にアンケートをお願いした。メールでも39人の女性記者にアンケートを発送した。その後、広州ジェンダー研究センター、女権の声、媒通社などのインターネットのセルフメディアの場にもアンケートを配布した。11月25日までに参加人数は1762人に達し、そのうち有効回答は416部であった。
そのうち89人は、アンケートの中で自分が受けたセクハラについて書いてくれており、そのうち37人はメールや私信で、私に対して詳しく自分の体験について詳細に述べてくれた。
二 回答者の基本的状況
・地域――広東省113人、北京市94人、上海市79人、湖北省53人、浙江省37人など
・性的指向――異性愛83.5%、バイセクシュアル8.5%、同性愛3.3%など
・年齢――25-34歳52.3%、18-24歳33.9%、35-44歳11.6%など
・現在の勤務先――新聞社21.5%、ネットメディア15.4%、テレビ局7.2%、雑誌社5.0%、ラジオ局0.6%、その他50.4%
現在の勤務先で「その他」が多いのは、近年、メディアの人材の流出が深刻であることを示しているが、その原因は、女性記者の離職の場合、収入の低さや低下、報道の不自由さのほか、指導者や同僚からのセクハラもある。
※個人の話:
・大学で実習して以来、5年間、私は多くの新聞社にいたが、どの新聞社にも例外なく、下品な中年の男の指導者あるいは年寄りの男がいた。彼らは、娯楽の場所、たとえばカラオケや部内の食事のときに、「今夜は1人ぼっち?」などと言って、頭を撫でたり、腰に手を回したり、手を握ったり、さらには、後ろからきつく抱きしめたり……。
皮肉なことに、私たちはペンを武器にして、全人民のために声を上げ、弱者のために権利を擁護していると自認しているにもかかわらず、自分のために権利を守ることを恥じている。私も同僚がセクハラを受けたのをたびたび目にしてきた。とくに広告部門の女子学生は、酒やカラオケの相手をさせられている。あるとき、新しく入社した卒業生が、深夜、新聞社の建物の下で吐いているのを見て、私がどうしたのかと聞くと、メディアがこんなにひどいとは思わなかったと言った。1週間経たない間に、その子は辞職した。
私は一昨年まで頑張って勤めたが、3人の同僚と一緒に辞職した。
メディアにはこんなに広範囲にセクハラの事例があるのに、報道されることはほとんどない。このことは、メディアでは、年を取った男が権力のトップにいて、権力と発言権を握っていることと不可分だ。こうした環境であるがゆえに、女性記者はどんどん転職して、人材が流出し、メディアの環境は、ますます劣悪になる。(27歳、南方の某新聞社)
三 セクハラを受けた状況
●セクハラを受けた回数
・0回―――16.3%
・1回―――23.1%
・2-4回――42.4%
・5回以上―18.2%
●受けたことがあるセクハラの形態
・同意なしに、性に関する冗談や話題を話されたり、わいせつな字句や写真を見せられたりした―48.2%
・同意なしに、故意に身体またはプライベートな部位に触れられて、嫌悪を感じた―46.3%
・同意なしに、いやらしい/わいせつな視線でじっと見られた―39.9%
・同意なしに、わいせつな動作をされたり、性器を見せられたりした―21.5%
・デートや交際を断ったのに、まとわりつかれた―21.2%
・むりやりキスをされた、またはキスをさせられた―16.8%
・何らかの手段によって怖がらせ、もし性的な関係を持たなければ、報復されることを心配した―9.4%
・性的指向あるいはジェンダー気質に対して侮辱的評価をされた―6.9%
・むりやり性行為をされた―6.3%
・いずれもされたことがない―15.4%
※個人の話:
・私はメディア専攻の学生で、大学2年の夏休みにテレビ局に実習に行った。私が主任にサインをもらいに行ったとき、彼はサインをすると、笑いながら私の手を引っ張った(そのとき、主任は座っていて、私は立っていた)。私はぽかんとして、主任が私の手を引っ張るのはどういう意味で、何をしようとしているのかわからなくて、頭の中が真っ白になったが、私の印象では主任は「きれいだ」とか言ったような気がする。
多くのセクハラ事件の中では、私の場合は些末なことのように聞こえるかもしれないが、私は最初に接触したメディアでこのようなことがあって、ショックだった。(某大学のメディア専攻の学生)
・私は2年間写真記者をして、3回セクハラを経験した。1回目は企業家だった。写真撮影をしているときに、近づくと、その成金は、右手でさっと私の腰をつかみ、左手で秘書を抱いて、大声で秘書に「早く撮れ、早く撮れ」と叫んだ。(他の2回は略)(26歳、北京某新聞社)
四 加害者の状況の分析
●加害者の人数とその性別
・複数、男性――51.0%
・1人、男性―― 40.1%
・複数、男女―― 8.0%
・複数、女性―― 0.6%
・1人、女性―― 0.3%
●加害者とあなたの関係
・上司――――40.9%
・見知らぬ人―37.1%
・同僚――――30.0%
・取材対象――17.3%
・友人――――16.3%
※個人の話:
・最も重要なのは、多くの職場の人、とくに権力を握っている人が、「セクハラ」あるいは「職場のセクハラ」という概念と内容をまったく認めていないことである。彼らは、それを「リソースの交換」とみなす傾向がある。これらの人は、背後の権力とリソースが対等でないことや女性は望んでいないことがまったくわかっていない。彼らは女性が望んでいないことを、嫌がっているけれども本当は望んでいるとみなしさえするので、言葉もない。あるいは、これらの人は、男女平等を根本的に認めていないので、彼らの男性中心の世界観の中では、女性をモノ化し、軽視することも正常なのである。XX社は、その好例である。
また、発達した都市から辺鄙な町に行くにしたがって、セクハラは深刻になる。私が現在いる小さな町では、男性たちが集団になって女性をからかうことが常態化している。記者たちはお互いに知り合いであり、同じグループであり、いつもお互いに庇いあう。女性記者や女性実習生にセクハラをするのも、集団でおこなうのである。もし嫌がったら、その人は度量が小さく、交際をわかっていないと言われる。最も重要なことは、集団的に排斥されるかもしれないということである。
職場でのセクハラの反対する道は険しく、権力との闘いが必要である。アンケートの中で、職場にセクハラについての研修や文書があるかないかを述べているが、私は、これだけでは不十分だと思う。職場の最高指導者を問責する制度も必要だ。しかし、それも難しい。誰が自分を取り締まる規則を自分で制定するだろうか? (30歳、もと某社記者)
五 セクハラが起きた場所の分析
・公共の場所(事務室、会議室、資料室、トイレ)――――――43.8%
・公共および娯楽の場所(地下鉄、バス、カラオケ、ホテル)―42.2%
・私人の場所(個人の事務室、家庭の部屋、ホテルの部屋)―37.7%
・SNSソフト上(インターネット、携帯電話)―――――――― 31.6%
※個人の話:
・夜の9時、編集者から電話があって新聞社に帰って原稿を修正するよう言われたので、行ったら、新聞社の中は4、5人しかいなかった。編集者は私を部屋の隅に座らせて、取材の詳細を尋ねつつ、私の手を取って、手のひらを絶え間なく撫でた。
六 セクハラを受けた後の対応と影響
●セクハラに対する対応
・黙っていた/我慢した/避けた―――57.3%
・相手に止めるように言った――――25.0%
・職場の上級の指導者や人事管理部に報告した―3.2%
・辞職した――――2.5%
・警察に通報した――――0.6%
●沈黙した理由
・しばらく混乱して反応できなかった――57.4%
・どのように反抗したらいいのかわからなかった――48.6%
・自分の仕事/生活に悪い影響があると思った――38.2%
・恥ずかしいと思った――22.6%
・証拠が見つからなかった――21.3%
●セクハラを受けた影響(2回以上セクハラを受けた176人について)
・自尊心が傷つけられたと感じ、気落ちした――61.4%
・人間関係や付き合いに重大な影響があった――27.3%
・長期間精神的に緊張した、不眠になった――23.2%
・何も影響はなかった――――――18.3%
・精神的憂鬱が続いた――――――16.3%
・仕事に重大な影響があった(辞職など)――12.4%
・自傷あるいは自殺したくなったか、試みた――5.6%
●職場や警察に報告/訴えなかった理由
・報告したり訴えたりしても無駄だと思ったから――61.3%
・プライバシーが漏れたり、仕事に影響することを恐れたから――48.9%
・職場で起きたことではなかったから――33.3%
・手続き/過程が煩わしかったから――29.1%
・どうしたらいいかわからなかったから――14.5%
・たいしたことではないと思ったから――9.9%
※個人の話:
・私が新聞社に入って9ヶ月目、23歳のとき、上司と一緒に外出して取材した帰りに、公園で、上司が私に抱きつきながら、わいせつなことを言った。私は驚いて逃げたが、まだ混乱していて、また抱きつかれた。
その後数か月じっと我慢していたが、気持ちが落ち込み、毎日の仕事が、一日が一年のように長くて辛かった。次の年の3月、私はその上司が他の部署に異動するのを知った。私は、今後彼の正体を暴く機会はもうないと思って、部署の会議で、実名でその上司のセクハラを訴えた。しかし、新しく来た女の上司は、私に秘密を守るように求め、彼らが職場の規律委員会に申請して調査するように言ったが、その後、私には何の説明もなかった。(25歳、北京の某新聞社)
・私は人物について書くのが割合うまかったので、新聞社はいつも私に人物についての原稿を書かせたが、私はそのためにセクハラにあった。最初に私にセクハラをした取材対象は、政治協商会議の委員だった。当時、夏だったので、私はワンピースを着ており、スカートも短かったからか、相手は、回答するときは、しばしば私の太ももをじっと見ていて、私がノートをとっているときは、靴の先を使って私のすねを開かせた。
もう一度は、取材対象者が外国の青年の企業家だった。彼は会ったとき、力を入れてわたしを抱きしめた。その力の入れ方普通の挨拶ではなく、明らかに、彼の胸を私の胸に押しつけたものだった。
この2回の原稿はボロボロで、編集者は補充取材をするように求めたが、私は行かなかった。その後私が重要な人物の取材を任せられることは少なくなった。(26歳、南方の一雑誌社)
七 勤務先と警察の処理の状況
●上級の職場の指導者や人事部門に訴えたのは、3.2%の13人だったが、調査がおこなわれ、相手は重く罰せられた(解雇など)のは、1人だけだった。調査がおこなわれ、相手は軽く罰せられた(口頭での警告など)のも、1人だけだった。あとは、取り合われなかったか、「言いふらすな」と言われただけで、相手は処罰されなかった。
●会社にセクハラ防止のための研修/カリキュラム/講座があるか
・ある――― 3.0%
・ない―――84.3%
・知らない―12.7%
以上が調査報告の要旨である。
黄さんによると、今回89人の記者が被害を訴えたが、#Me Tooの写真を出したのは5人だけで、それらの写真も、顔を隠したり、背景だけを写したりものだったとのことである。顔を出して訴えるのは容易でないことがわかるが、黄さんによると、だからこそ、「みんなが自分のために声を上げるために、調査という形をとることを決めた」のだという。
黄雪琴さんによると、調査の過程について、「記者という職業を中傷するものだ」とか「両性の矛盾を激化させるものだ」とか言う人もいたという(4)。
調査報告の発表会で、黄雪琴さんは、この報告は国内の主要メディアや婦女連合会に送ると述べた。また、広州ジェンダー研究センターも、3月に全国の113の「211大学((1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学)」に送って、大学でのセクハラ防止のための教育と制度作りを呼びかけるという。さらに広州ジェンダー研究センターと「ATSH(Anti-Sexual Harassment)」は、セクハラ防止のための研修課程とプロジェクトを研究・推進するとした(5)。
この調査報告の発表会については、『新京報』が動画で報道した(「女记者性骚扰调查报告发布 作者:八成受访者曾被性骚扰」新京报3月10日)。ただし、それ以外のマスメディアの報道は乏しいようだ。
その後、黄雪琴さんは、この調査報告を中華全国新聞工作者(ジャーナリスト)協会や労働組合にも郵便で送るつもりだと述べている(6)。
今の日本では、主に取材対象からの女性記者へのセクハラ(とそれに対する新聞社や男性社員の対応)が話題になっている(7)。この調査報告でも、それは重要な問題として取り上げられている。ただし、どちらかというと、上司や同僚からのセクハラのほうが多く書かれている。
この違いの原因は、今、日本で、女性記者へのセクハラが問題になったきっかけが、財務次官によるセクハラだったからだろう。だから、日本でも実は社内のセクハラも多いのかもしれない。あるいは、中国の場合は、社内でのセクハラ防止対策が日本より遅れているから、社内でのセクハラが日本より多いのかもしれない。
こうした点については、少なくとも私にはよくわからないが、いずれにせよ、中国でも女性記者が声を上げ始めているということをお伝えしたいと思い、このエントリを書かせていただいた。
(1)韦婷婷&黄雪琴「女记者性骚扰调查报告发布,超8成曾被性骚扰」广州性别中心的微信2018-03-07。
(2)黄雪琴「我也被性骚扰过—中国女记者性骚扰调查」ATSH2017-11-20。このことは、『朝日新聞』でも報道された(「中国の記者も#MeToo セクハラ被害調査に260通」『朝日新聞』2017年12月24日)。
(3)广州性别中心「调查显示:大学生中七成人曾被性骚扰」新媒体女性的微博2017-03-08 19:37:45
(4)「专访《中国女记者性骚扰调查》发起者黄雪琴」全媒派2018-03-23 08:23:36、「发声本身就是一种力量:专访《中国女记者性骚扰调查》发起者黄雪琴」腾讯传媒2018-03-23
(5)(1)に同じ。
(6)(4)に同じ。
(7)「セクハラなくす契機に 本紙女性記者の経験は」『東京新聞』4月20日など。
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中国最大の影響力を持つフェミニズムアカウント「女権の声」抹消とその後の「女権の声」に対する誹謗中傷
一 「女権の声」の微博・微信などの削除
1.18万以上のフォローワーを持つ「女権の声」の微博と微信などが削除
2.中国各地の民間フェミニズムの活動をつなぎ、リードしてきた「女権の声」
3.「女権の声」編集部の声明
二 「女権の声」に対する誹謗中傷とそれに対する反論
1.「酷玩実験室」による誹謗中傷(1)
2.「女権の声」編集部の声明
3.鄭楚然の反論(1)
4.「酷玩実験室」による誹謗中傷(2)
5.鄭楚然の反論(2)
6.紀小城の反論――排外的民族主義も指摘
7.猪西西の反論
8.女権の声の弁護士が酷玩実験室に手紙、鄭楚然は名誉棄損で裁判所に訴え
9.鄭楚然の分析――酷玩実験室は「コンテンツファーム」
10.酷玩実験室の事務所を探して訪問――正体を隠し、資金源も謎
11.まとめ
一 「女権の声」の微博・微信などの削除
1.18万以上のフォローワーを持つ「女権の声」の微博と微信などが削除
国際女性デーの3月8日から9日にかけて、中国を代表する民間フェミニズム団体「女権の声」の微博(http://www.weibo.com/genderinchina)と微信が削除された。
その理由について「女権の声」が新浪微博に問い合わせたところ、新浪微博は、「敏感(デリケート)な、規則に違反した情報を発信したから」「関係する法律法規にと政策による」と回答した(1)。
しかし、「女権の声」がその頃、なにか特に反政府的な発信をしたわけではない。最後の24時間にどのような発信をしたかは、「女権の声」自身がその記録を画像にしたものを発表しているが(ただし、これもすぐ削除された) (2)、セクハラ反対の活動などを報じていただけだった。
「女権の声」の微博は、18万以上のフォローワーがおり、1日のアクセス数も十数万あった。
「女権の声」は、昨年2月~3月にも、30日間、発信を停止させられたことがある。その際にはサブアカウントである「帰来的女神221」でメッセージを発信していたが、今回は、その「帰来的女神221」も削除された(3)。
また、ウェブサイトである「女声網(http://www.genderwatch.cn:801/)」も、つながらなくなった。
さらに、「女権の声」の微博と微信だけでなく、いくつかの関連微博も削除されており、「女権主義貼吧」の微博も2月に削除されている(4)
2.中国各地の民間フェミニズムの活動をつなぎ、リードしてきた「女権の声」
「女権の声」の微博は、2010年にできた。「女権の声」や「女性網」は、中国各地のさまざまなフェミニズムの活動を報じ、国外のフェミニズムについても紹介すると同時に、「女権の声」自身が、以下のようなさまざまな活動において大きな役割を果たしてきた。
2012年
・大学入試の合格ラインの男女差別の問題について教育部や各大学に訴え、翌年には、大幅に是正させる。
・英語学習法「クレイジー・イングリッシュ」創始者・李陽のDV事件に取り組む。
2013年
・DV被害者・李彦の夫殺しの死刑判決を食い止める。
・DV防止法の迅速な制定を求める署名を1万2000筆集める。
・女子大学生・曹菊の就職の性差別裁判の提訴を支援し、1年あまりの努力の末に、提訴を受理させる。
2014年
・DV防止法のパブリックコメント募集の際に、さまざまな提起をおこなう。
・「(肖)美麗のフェミニズムウォーク」(北京~広州)を支援する。
2015年
・大学入試の性差別問題について、3年連続で報告書を出して、女子の入学制限の是正を訴える。
・刑法の「幼女買春罪(幼女強姦より罪が軽い)」の廃止を求める活動がついに実を結ぶ。
2016年
・単身女性の生育権についての報告書を出す。
・多くの省の師範教育で男子学生に対する優待がおこなわれていることを指摘し、是正を求める。
2018年
・70余りの大学の学生や卒業生が、母校にセクハラ防止制度の制定するよう訴えを出す。
以上は、あるネットユーザーがまとめた「女権の声あるいはフェミニスト活動家がやったことの整理」の一部である(5)。しかし、このタイトルにも表れているように、実際は、「女権の声」と中国の民間フェミニズム運動とは切り離せない形でおこなわれてきており、「女権の声」の活動だけを取り出すことは不可能であると言える。
ちなみに、本ブログを検索してみたら、本文中に「女権の声」が36か所、注記には「女権之声」の微博が125か所、「女声網」が52か所出てくる。注記で出典を示す際は、当然オリジナルな文章を掲載するようにしているので、「女権の声」が転載したことによって私が知った文章を含めれば、もちろん上の何倍にもなろう。
「女権の声」の微博や微信などがなくなった影響は非常に大きいと言えよう。
3月中頃、「女権の声」とかかわってきた人のうち数人が、人里離れた山の近くで、色とりどりの服と頭巾で全身を覆って、「『女権の声』の葬式」のパフォーマンスアートをおこなった。その幟には「女権不死」と書かれていた(6)。
3.「女権の声」編集部の声明
3月12日、「女権の声」の編集部は、以下のような声明を出した(抜粋)。
これを受けて、多くのアカウントから「女権の声」に対する声援や抗議が出されたが、そうしたものさえ、次々に削除された(8)。一、私たちが3月8日の国際女性デーの期間に発信した書き込みは、みな女性の権利とセクハラ反対をテーマとしたものだった。私たちはすべての書き込みをインターネット上で発信しており、誰でも見ることができる。その中には、なんら公共の利益に反する内容はなく、新浪微博の回答は、私たちのどこが法律や規則に反しているのかを指摘できていない。それゆえ、私たちは封鎖という結果を受け入れることを拒否する。
二、女権の声は、中国のソーシャルメディアにおいて、誰もが認める最も影響力を持つ、フェミニズムを伝え唱導する場だったのであり、その唯一の目的は、女性の権利を訴えることだった。これまで8年間、幸いにして多くの仲間たちがともに歩み、私たちとともに中国のフェミニズムの事業の進歩を見守り、創造してきた。私たちが消え去ることによって、中国のインターネットの正義の声を失わせることはできない。
三、私たちはすべての合法的手段によって、私たちの微博と微信のアカウントを取り戻す。私たちはすべての仲間たち、読者、社会の公正に関心を持つ友人たちに、この事件に関心を持ち、私たちの訴えを援助し、私たちにできるだけのサポートをお願いする(7)。
もちろん他にもフェミニストのアカウント自体は多数あり、その後も、大学における反セクハラの活動などは続けられている。
しかし、女権の声の微博・微信、女声網の消滅の影響は大きいように思う。少なくとも、インターネット上で見るかぎり、その後の中国のフェミニズム運動は、今のところ沈滞気味である。
二 「女権の声」に対する誹謗中傷とそれに対する反論
「女権の声」の発信が封じられた後、インターネット上に登場したのが、「女権の声」に対する誹謗中傷である。なぜ「誹謗中傷」と呼ぶのかといえば、誤った事実認識と論理的誤謬にもとづく主張だからだ。以下では、その点を含めて、誹謗中傷の内容とそれに対する反論をご紹介する(文中敬称略)。
1.「酷玩実験室」による誹謗中傷(1)
3月16日、「酷玩実験室」というサイトで「蛋蛋姐」という人物が「外国の男から金を取り、中国の女子学生にセックスをさせる? 中国には、なんとこんな『フェミニズム組織』がある」という文章を発表した(9)。
「酷玩実験室」というのは、後でも述べるように、扇情的なタイトルと事実をゆがめた内容によってアクセス数を稼いでいるサイトのようだ。中国の検索エンジン「百度」から、百度の従業員に対する名誉棄損で訴えられたこともある。
以下は、その文章からの抜粋を中心にした、その要旨である(ゴシック体は原文のもの)。支離滅裂な文章のように見えるかもしれないが、それは実際にそうだからで、あくまでその文章に沿った抜粋であり、要約である。
2.「女権の声」編集部の声明私は、「偽フェミニズム」が、なんとブラックな産業チェーンを形成しているとは思わなかった。
一群の人々が「フェミニズム」の名の下に組織的な売春をおこなっており、事情を知らない中国の女子学生を、外国人の男に売りとばしている。
「マリー女王」というフェミニストは、中国の男を罵りつくし、「中国の男はこんなに程度が低いから、外国の男を探そう!」と言って、外国の男を紹介している。ところが、その際、外国の男から金をとっている。つまり、中国の女子学生は正常な交際だと思っているが、外国の男は、自分は買春していると思っているかもしれないのだ。
なぜ「フェミニズム」は中国の男を辱め罵るのか? なぜ「外国の男との交友」が、売春組織になるのか?
その原因は非常に複雑だが、私は、現在、中国の多くの大きなフェミニズム組織の背後に、欧米の勢力の影があることを発見した。彼女たちはフェミニズムの名の下に、暴利をむさぼり、欧米の国家のために破壊活動をしている。そのため、真に女性の平等な権利のために奔走している人は、必要な補助を得られていない。その非常に有名なフェミニズム組織は、「女権の声」である。
彼女たちの資金援助者は、なんとフォード財団である。
女権の声の組織の中に、鄭楚然という者がいる。彼女はフェミニズム運動以外、何の仕事をしておらず、フルタイムのフェミニズム活動家である。2015年、彼女は騒動挑発により、警察に30日あまり拘留された。彼女が拘留されたとき、ヒラリー[・クリントン] がそれにかこつけて、中国が人権を侵害し、民主を抑圧していると非難した。中国の小さな民間組織の首領に対して(……)なんとヒラリークラスの者が関心を寄せたのである。ヒラリーだけではない。このような思想的に何の功績もない人を、欧米メディアのBBCは、世界の百大思想家と評したのである。
また、彼女たちは普段から政府を攻撃しており、私たちの国家を分裂させようとしている。たとえば、女権の声という組織にいる著名なフェミニズムの闘士・洪理達(Leta Hong Fincher)は、著名な香港のメディアであるHong Kong Free Pressの言論を転載したことがあり、チベット独立・香港独立・台湾独立の言論を発表したことさえある(として『ガーディアン』の記事を提示している)。彼女はいつも鄭楚然といっしょに活動している。
私にはわからない。もし彼女たちが本当に単なるフェミニストならば、なぜ国家を分裂させる言論を発表しなければならないのか?
外国の金主は中国人に金を与えたら、必ずお返しを求める。彼らが中国の「フェミニズム組織」に金を与えるとき、どのような利益が得られるだろうか?
私たちは、自分が知らないうちに、他の下心を持った人に洗脳されたり、自分が知らないうちに、外国の男に売られて、金を稼がせたりしないよう警戒しなければならない。
3月17日、「女権の声」編集部は、以下のような声明を出した(抜粋) (10)。
この回答もすぐに削除された。この後は、主に「女権の声」の関係していた女性たち個々人が反論することになる。3月16日夕方、微信アカウント「酷玩実験室」が発表した文章は、ネット上の「売春ブラック産業」のうわさと「女権の声」とを無理やり関連づけるとともに、「女権の声」とその仲間たちに対して、さまざまな誹謗中傷をしている。
「女権の声」といわゆる「売春ブラック産業」とは何の関係もない。この類のいかなる論法も完全な誹謗である。「女権の声」の活動は、他の違法行為にもなんら関わっていない。
私たちは、弁護士の援助を得て、法律的手段をとってこの問題を処理する準備をしている。
3月9日に「女権の声」の微博と微信が、無辜にアカウントが封鎖されたことによって、私たちは声をあげる場を失い、また、大量の歴史的資料を失い、さらに、多くの他の女権関係のアカウントとスレッドがゆえなく削除された。これが、デマが流されているにもかかわらず、みんなが私たちの回答を見ることができない根本的原因である。私たちはすでに中央インターネット安全と情報化指導グループ事務局に訴えを出した。
3.鄭楚然の反論(1)
3月20日には、鄭楚然が反論を出した(以下は、要旨) (11)。
4.酷玩実験室による誹謗中傷(2)「酷玩実験室」は大量のロジックの誤りと事実と異なる情報を使って、罪名を私になすりつけている。その罪名は具体的には何なのか?
フェミニズムの旗を掲げて、外国人の男の買春を助けたことか? しかし、全文のどこにも、その仲介者がフェミニストであることを示す資料はない。たとえ彼/彼女がフェミニストだとしても、私にはなんの関係もない。
私は、「酷玩実験室」が、どのようにロジックの誤りと事実でない情報によって、私を誹謗しているかを述べよう。
その文章は、まず、誤った関連づけによって、「ある人が売春の仲介をした」ことと「鄭楚然」とを関連づけている。
次に、文章は大量の事実でない情報を採用している。
1.私は「女権の声」の職員/「首領」だったことはない。
2.文章は、鄭楚然は「フルタイムのフェミニスト活動家」で何の仕事もしていないと言っている。しかし、私は有名なパーティーのプランナーであり、淘宝店(インタネット上の店舗)の店主であり、ゲーム式教学設計の協力者であり、コラムニストであり、文化・創造産業の責任者である。毎日多くの仕事をしながら、同時に男女平等という基本的国策の宣伝をしているのである。
3.文章は、私が騒動挑発で警察に30日あまり拘留されたと言っている。しかし、文章は、私の冤罪事件は、検察院に却下されて、逮捕が認められなかったことを言っていない。逮捕が認められなかった理由は証拠不十分だったからである。つまり、私には前科はなく、法を犯したことはない。このような半分の情報を隠した記述は、中国の法律に対する蔑視である。
4.私はBBCに世界の百大思想家として評価されたことはない。
5.私は洪理達(香港生まれのアメリカ人)に会ったことはない。
6.酷玩実験室の一番ひどいのは、英語が得意でない読者をだましていることだ。洪理達が転載した『ガーディアン』には、どこにも香港独立・台湾独立・チベット独立の記述はない。
以上は、非常に低級なデマである。他に、以下のようなロジックの誤りがある。
1.恐怖にあおる――読者の「欧米」の二文字に対する恐怖を単純に利用し、陽謀(腹蔵のない陰謀)論的に関連機構を攻撃する。
文書は「女権の声に資金援助をしているのはフォード財団である」と述べているが、フォード財団の中国の公式サイトを見ると、2006年から2017年の間に、フェミニズム機構だけでなく、清華大学・北京大学・中国科学院・雲南社会科学院など17481機構に援助をしている。また、フォード財団は2017年6月30日に北京市公安局に登記を完了している。
2.原因についての誤謬
この世界には、「権謀術数」「利益」だけを見て、「正義」「道理」を見ない人がいる。私は、ヒラリーからの声援はどうでもよい。自分がやったことに誤りがないことを自分が知っていれば、それでいいのだ。その37日間に、私は多くの侮辱を受けた。ジェンダー平等を唱えたために、私は獄舎でじっとさせられ、髪は抜け落ち、関節は傷つき、その後にまた、あなたのような人たちに汚名を着せられているのだ。
3.藁人形の誤り――藁人形を立てて、その藁人形を打倒すれば、相手も打倒されると考える。
文章の中の「売春組織」は、明らかに酷玩実験室が立てた藁人形である。私と何の関係もない藁人形を立てて、全力で打倒し、その後で、「フェミニズム組織は外国から金をもらって中国を破壊している」という論断が成立することを宣言している。
今、女権の声が封じられ、多くのフェミニストは発言を禁じられている。さまざまな誹謗中傷にあって、私たちはたえずデマに反論しているが、デマを言う者の文章はずっと残っているのに、デマに対する反論はすぐに削除される。デマを言う者の背後には、結局のところ、どんな恐るべき男権勢力があるのか? 酷玩実験室は、本来科学技術のアカウントだが、今はこのような文章を発表して汚名を着せ、デマを流している。どんな勢力から資金をもらっているのか?
3月23日にも、酷玩実験室は、「香港独立の、偽フェミニストが集まった『準邪教』、私が罵っているのはおまえだ! 女権の声!」という文章を発表した(12)。
この文章は、まず、色とりどりの服と頭巾で全身を覆った人が「女権の声」の葬式をしている写真を示して、「これは邪教だ」と言う。
次に、16日に出した文章と同様に、「『女権の声』という組織は国際女性デーのときに、微博を封鎖されたが、(……)広範なネットユーザーがみるところ、背後の原因は、だいたいのところ、外国の資金を受け取って、偽フェミニズムの衣をまとって、実際は国家を分裂させていることにある」と述べる。
また、6年ほど前、ある人が「イスラム国家では、女性は離婚できない」と書いたのに対して、「女権の声」の微博が「イスラム国家は、現在は法律上は、それほど野蛮ではない。現在は、女性は法律的理由に合致していれば離婚できる」と述べたことを捉えて、「女権の声は、公然とイスラム国家の女性の権利の問題は大きくないと言っている。」「外国の男性ならすべてOKで、中国の男性に対しては、あれこれとひどく責める。これが二重基準でなくて何なのか?」と述べる。
また、フォード財団からの資金援助に関しては「女権の声の微博が封じられて以後、彼女たちは『フォード財団』の文字を消した! やましいところがないのなら、なぜ削除するのか?」と言う。
鄭楚然の釈放についても、「BBCのウェブサイトには、鄭楚然の釈放は、『イギリスの外務省の介入』によるもので、ECやアメリカの力もあったと明確に書いてある。一人の『フェミニスト』が騒動挑発によって入獄したことが、なんとイギリスの外務省、EC、アメリカを騒がせたのだ! BBCが賞を出したことと併せて考えると、鄭楚然とイギリスとはどんな関係があるのか? 言わなければならないのではないか?」と言う。
さらに、洪理達がツイッターでは、たしかに台湾独立・香港独立の主張をしていることを述べる。
そして、最後に「中国の利益を売りとばして、欧米社会で紳士になろうとするな。歴史上の数限りない漢奸の末路は、最終的には欧米社会の走狗になるしかないのだ!」と宣言する。
5.鄭楚然の反論(2)
3月23日、鄭楚然は、「あえて酷玩実験室に問う、なぜ私たちの愛国の心を消費してアクセスを稼ぐのか?」という文を発表した。そこには、以下のようなことが書かれている(抜粋) (13)。
6.紀小城の反論――排外的民族主義も指摘「香港人の洪理達が国家を分裂させている」と言うが、洪理達は、アメリカ人である。酷玩実験室の創始者・朱紫輝は以前アイセック(AIESEC、Association Internationale des Etudiants en Sciences Economiques et Commerciales、国際経済商学学生協会)にいた。アイセックは多国籍企業とも協力している。多国籍企業の中には、児童労働者の搾取が問題になっている企業もある。酷玩の神ロジックでは、朱紫輝は児童労働者の搾取を支持していることにならないか?
私はと言えば、アメリカのトランプに対して、公然と、反セクハラ、反メールショービニズムの警告をしたことがある!
酷玩実験室は、みんなの愛国心を利用して、10万+の文章をひねり出している。アクセス数は広告費につながるのであり、賃金と株式配当につながる。商売はインターネットではありふれた行為である。
酷玩実験室は、平等を求めるフェミニストを人民大衆から切り離して汚名を着せている。読者の愛国の気持ちを利用して、自分のアクセス数を増やしている。
酷玩実験室がやっているのは、理性的に思考するネットユーザーを排除して、暴力的で論拠を見ず、道理を重んじない戦闘力の強い読者を残して、彼らを確実なファンにして、そのブランドとアクセス数を維持することである。そうしたやり方をしていたら、私たちの社会のネット環境は、憎しみやデマ、暴力に満ちたものになり、一切の反対意見は「狂犬」だとされ、一切の理性的思考は「愛国でない」とされ、一切の討論は白でなければ黒だと言うものに変わってしまう。
3月24日、紀小城も反論をした(14)。
紀小城の反論も、すでに上で紹介した反論と重なる部分が大きいが、以下のようなことも述べている。
・蛋蛋姐(以下、蛋)の先生である潘綏銘もフォード財団の資金援助を受けている。
・鄭楚然らの拘留には、何の道理もなかった。だから、このときは、ヒラリーだけでなく、アメリカの副大統領・バイデン、国務長官のケリーも公に釈放を要求した。カナダ・ドイツ・イギリス・ECの外務省は、みな声明を出して中国に圧力をかけた。アメリカ・日本・韓国・インドなど10あまりの国や地区のフェミニスト団体は街頭でデモをした。国際フェミニズム団体である「女性の権利と発展協会(AWID)」は、国連が同年9月に中国と世界女性サミットを共催する計画を再考する呼びかけさえおこなった。
・もし蛋と蛋の読者が「中国の問題については、外国勢力の口出しは許されない」と思っているとしたら、一つ例を挙げよう。2015年、ISISが二名の日本人の人質によって身代金を要求したときは、中国の外務省のスポークスパーソンは「人質が安全に釈放されるよう望む」と言っている。蛋、人の権利に国境はないのだ。
・蛋は、「女権の声」の抗議行動に「邪教」というレッテルを貼った理由は、彼女たちが抗議行動で顔を覆った衣装を使ったからにすぎない。これは、顔を出すことに一定の危険があったからである。
・蛋は「女権の声」の微博はイスラム国家の女性の境遇に寛容だと言っているが、それは、ある微博が「イスラム国家の女性は離婚できない」「もし離婚しようとしたら、石を投げられて殺される」と言ったのに対して、「法律上は女性が離婚することは禁止されていない」「石打ちの刑は同性愛と姦通に対してのものだ」と言っているだけである。この非常に明晰な微博が、蛋から見ると、「彼女たちはこのように完全な男性覇権の法律をOKだと思っている」となってしまうのでは、蛋の語学水準が文字の仕事をするのにふさわしいかどうか疑わしい。
・蛋は、「女権の声の微博が封じられて以後、彼女たちは『フォード財団』の文字を消した」と言っているが、実際は、ずっと以前に協力組織についての箇所はみな削除している。
紀小城は最後に、「愛国」というテーマについて、以下のように論じる。
「最近、ある原因で、多くの芸能人や会社、組織が自覚的に『愛国』の旗を高く掲げており、若干のセルフメディアも、民族主義を売り物にしていると指摘されている。私は、愛国という商売も当然あっていいし、社会に団結を呼びかける点ではいいところもあるが、酷玩のような嘘をつくやりかたでやってはならないと思う。そうでなければ、『毎日メラミンを一杯飲めば、中国人は丈夫になる(「毎日牛乳を飲めば、中国人は丈夫になる」というスローガンのもじり。牛乳にメラミンが混じっていた事件にもとづく)』と言うのと同じになる。また、酷玩のように人に濡れ衣を着せるやり方でやってはならない。そうでなければ、文革中の紅衛兵と同じになる。まして酷玩のような憎しみを扇動する方法でやってはならない。『女権の声』は男女平等を唱え、セクシュアルハラスメントと性暴力に反対している。もしそれらに対する憎しみならば、あなたは鏡で自分の面構えを見ることができるのか?
国家の間には利益の衝突があるのは国際社会の普遍的現象である。しかし、そのことと国際組織のインターナショナルな協力とは別問題だ。蛋、あなたは両者をいっしょくたにして、排外的な狭隘な民族主義を鼓吹している。これは、あなたの国家が奉じている多角的な原則の主張に背いている。」
7.猪西西の反論
3月24日、猪西西も反論を出した(15)。
その反論は、上記のさまざまな反論と重なる部分が多い。たとえば、鄭楚然が釈放されたことについて、そのことは、政府部門が「騒動挑発」罪が成立しないことを認めたということなのだから、「騒動挑発」によって鄭楚然を中傷することは、司法の公正を信じないことになることを述べるなどしている。
ただ、猪西西は、酷玩実験室の文章について、最初は「少しでもフェミニズムを知っている人なら信じないようなでたらめであり、なにも心配はない」と思っていたという。しかし、猪西西は、「私は『少しでもフェミニズムを知っている人』の数を高く見積もりすぎており、この『文章』の影響力を低く見積もっていた。私はそれがすぐに多くのところに転載されるのを見た」と述べており、けっして楽観を許さない事態であることを語っている。
8.女権の声の弁護士が酷玩実験室に手紙、鄭楚然は名誉棄損で裁判所に訴え
3月26日の夕方、女権の声は、親会社の北京趣智阿尓法科技術有限公司と酷玩実験室の蛋蛋姐に対して、以下の2点を要求する弁護士の手紙を正式に出した。
一、酷玩実験室の2つの文を当日中に削除すること。また、転載した他のメディアに削除するよう通知するなどして、悪い影響をなくすよう手段を尽くすこと。
二、2つの文章と同じ場と字数で、「女権の声」と社会公衆に対して謝罪すること(謝罪文は委託者[弁護士]の同意を得ること) (16)。
3月29日には、鄭楚然が、酷玩実験室を名誉棄損で裁判所に訴えた。広州市越秀区人民法院は、この提訴を受理した(17)。
9.鄭楚然の分析――酷玩実験室は「コンテンツファーム」
また、鄭楚然は、蛋蛋姐(以下、蛋と略す)と酷玩実験室について、以下のように分析している(18)。
蛋が中国人民大学で勉強していたとき、ある大先生[潘綏銘]の授業を受け、それを非常に賞賛している。また、蛋は、その先生の影響で、「私は今も同性愛と売春合法化を支持しており、売買春一掃のようなことには絶対反対である」と言っていた。これは、今回、売買春を非難しているのと全く異なる。
また、酷玩実験室は、蛋を「18歳の美少女」と称する一方で、蛋について、「大学院は浙江大学だった」と言っている。「ということは、18歳で大学院を修了した。。。?」(鄭楚然)。
つまり、蛋蛋姐は「設定によってできた『バーチャルな人物だ』」。
鄭楚然は、ある人の指摘にもとづき、酷玩実験室のタイトルの付け方や執筆方式は、「コンテンツファーム」だと述べている。つまり、誇張された、あるいは扇情的な文言をタイトルにして、読者の好奇心を引きつける。同時に、とくにSNSに依拠して宣伝し、内容の正確性の確認を重視しない。そうしたやり方でアクセス数を稼ぐサイトであるということである。
10.酷玩実験室の事務所を探して訪問――正体を隠し、資金源も謎
「女権の声」が酷玩実験室に出した弁護士の手紙には、なんの返事もなかった。そこで、3月30日、3人の熱心な「女権の声」の読者が、酷玩の責任者に会いに行った。
まず、3人は酷玩実験室の事務所の住所として書かれていた、中関村(IT産業や研究所が集積しているところ)の「創客空間」というビルに行ってみた。しかし、そこには「酷玩実験室」と書かれたプレートが掛っていただけで、受付は「酷玩実験室は1年あまり前に、望東に引っ越した」と言った。
そこで、地図アプリ上で、望東にある酷玩の住所を探したら、「モトローラビル(摩托罗拉大厦羅拉)」にあったので、そこに行った。しかし、そこの受付も、「酷玩はしばらく前に引っ越した」と言った。ところが、3人が新しい住所を尋ねたら、その受付は、警戒するような口調で、「あなたたちはどういう人?」と言った。私たちは「私たちは酷玩の読者です」と言ったが、「私たちはあなた方には住所は教えられない。どんな用事があるのか?」と言いつつ、こっそり3人の後ろ姿を撮って、誰かに送ろうとした。3人は厳重に抗議して、受付に携帯の写真を削除させた。
その後、3人は、新しい住所をどうにかして探り当てた。そこは、超高級オフィスビルである「保利国際広場」の9階だった。酷玩実験室は、なんら大きな商売をしておらず、毎日アクセス数が多い文章を書いているだけの「科学技術会社」なのに、その金は、いったいどこから出ているのか? と3人は疑問に思った。
3人は、ビルの管理人に、「私たちは女権の声の読者です。弁護士の手紙に返事がないことについて、酷玩と面談したい」と言ったら、管理人は酷玩に連絡を取り、彼らにすぐ降りてくるように言った。
長い間待たされて、ようやく1人、酷玩の人が下りてきた。しかし、彼は、自分の名前は秘密で、職位も秘密だと言い、声も、やっと聞きとれる程度の小声だった。
彼は、「弁護士の手紙は、弁護士事務所に返事をするのに、なんであなた方と話をするのか」と言った。それに対して、3人は、「返事はしたのか」と尋ねたが、答えは返ってこなかった。
そこに突然、数人の酷玩の職員がやってきて、「私たちは弁護士の手紙は受け取っていない! 受け取っていない、受け取っていないといったら、受け取っていない!」と言った。
3人は「EMSはすでに、署名して受け取り済みだと通知されている。なんで受け取っていないなどということがあるのか!」と言ったが、彼らは逃げて行った。
初めに来た酷玩の人は「自分は酷玩の責任者ではない。責任者は不在だ」と言うので、責任者は誰かと尋ねると、「あなたには言わない~あなたには言わない~みんな秘密だ~」と言った。
ビルの受付によると、登記された会社名は「字節跳動」であり、最初は「酷玩実験室」だとは知らなかったという。
管理人によると、酷玩実験室では、現在、ごく少数の人数しか仕事をしておらず、あたかもまだ引っ越しを終えていないかのようであり、別の場所でも仕事をしているのではないかという。3人は、二番目に行ったところが、そこの受付の態度から見て、そうかもしれないと思った。
3人は、なぜ、こんなに得体が知れない会社なのか、と言い、「狡兎三窟(ずるいウサギは三つの巣を持っている。いくつもあらかじめ逃げ道を用意しておく)」という言葉を引いている(19)。
11.まとめ
まず、「酷玩実験室」の主張とそれに対する批判とを照らし合わせてみると、「酷玩実験室」の主張は、その事実認識においても、論理においても、完全に誤ったものであることは明らかだろう。
批判者が指摘するように、「酷玩実験室」はナショナリズムを強烈に煽りたてている。「イスラム国家」を持ち出して、国内の問題から批判をそらしていることも、ナショナリズムの現れだろう。
紀小城は、最近のナショナリズム的風潮の原因について、「ある原因」とぼやかして言っているが、その背景には、習近平政権の「中華の回復」といったナショナリズムがあると言えよう。
また、「酷玩実験室」は、誇張された扇情的な見出しと事実や論理に反する内容にもとづいて、アクセス数を増やして金を稼いでいる。この点は、「コンテンツファーム」の問題点であり、日本の「まとめサイト」などにも見られることである。
鄭楚然が述べている「ネット環境が、憎しみやデマ、暴力に満ちたものになり、一切の反対意見は『狂犬』だとされ、一切の理性的思考は『愛国でない』とされ、一切の討論は白でなければ黒だと言うものに変わってしまう」という憂慮は、日本のネットにも当てはまるだろう。
それだけではない。「女権の声」に対する弾圧と同時に「酷玩実験室」によるデマが流されたこと、資金源が謎であること、住所を隠そうとしていること、責任者が秘密であることなどの点からは、背景には、権力の謀略があることを強く疑わせるのである。
もっとも、この点についても、日本でも、権力の側のインターネット工作はかなりおこなわれていることはたしかであるのだが……。
(1)吕频的微博3月9日 10:48(現在閲覧不能)、「Feminist Voices's Weibo account is censored (again!) on International Women's Day!」Free Chinese Feminists3月9日 13:02、「Prominent Chinese feminist social media account censored on International Women’s Day」HONG KONG FREE PRESS2018年3月9日、「中国“女权之声”微博、微信同时被封」Radio Free Asia2018年3月13日、「The Censored Feminist Voices in China」Free Chinese Feminists 2018年3月15日。
(2)「妇女节,一个女权账号的最后24小时」鱼里鱼闯江湖的微博3月9日09:29(現在閲覧不能)。
(3)女权dianaloves-object3月9日 15:24。
(4)春风十里桃花至的微博2月26日 07:27。
(5)「我知道女权主义者们都做了些什么吗?」美丽的女权徒步的微博3月23日 16:29。
(6)「The funeral of FEMINISM VIOCES!」Maizi Li3月15日 19:14
(7)女权dianaloves-object的微博3月12日(現在閲覧不能)。なお、陳亜亜は、「女権の声と某人が攻撃している売春女権組織との間にはたしかに関係がないが、その事実を明確にすると同時に、できればこのような公衆の売春に対する嫌悪を利用して、フェミニズムに汚名を着せるやり方の中に、セックスワークに対する攻撃が含まれていることも認識してほしい」(voiceyaya的微博3月18日 10:29)ということも指摘している。
(8)美丽的女权徒步的微博3月13日 12:10(現在閲覧不能)。
(9)蛋蛋姐「收外国男人的钱,骗中国女生的炮?中国竟有这样一帮“女权组织”」酷玩实验室2018年3月16日、酷玩实验室的微博3月17日 11:36「收外国男人的钱,骗中国女生的炮?中国竟有这样一帮“女权组织”」。
(10)「女权之声就网络抹黑时间声明(第一号)」AshFromPlanetGethen的微博3月17日 17:21(現在閲覧不能)。
(11)大兔就是郑楚然「抗击网络诽谤|郑楚然给酷玩实验室的公开警告」滚筒洗脑机2018年3月20日。
(12)酷玩实验室「曝光一伙港独、伪女权聚集的“准邪教”,我骂的就是你!女权之声!」酷玩实验室2018年3月23日 11:59:21。
(13)大兔纸啦啦啦「敢问酷玩实验室,为何消费我们的爱国之心赚流量?」大兔纸啦啦啦的微博2018-03-23 20:05:02。
(14)纪小城5的微博「详解酷玩实验室的蛋抹黑女权组织的事实错误和忽悠之道」2018年3月24日 11:40:45。
(15)猪西西爱吃鱼「讲道理能阻止酷玩造谣攻击女权主义者吗?起码能让人看到谣言多烂呀」猪西西爱吃鱼的微博2018年3月24日 15:41:52。
(16)美丽的女权徒步的微博3月27日 13:46【女权之声已就酷玩实验室抹黑文章发出律师函】。
(17)「揭秘酷玩蛋蛋姐:精分?中伤?法院已立案你摊大事了」大兔纸啦啦啦的微博3月30日 13:11:07。
(18)同上。
(19)「酷玩酷玩,抹黑女权一点不酷,这可能要玩完」美丽的女权徒步的微博3月31日 10:28。
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中国における#MeTooとキャンパスセクハラ反対運動
一 北京航天航空大学卒業生の羅茜茜さん、#MeTooに触発され、在学時の陳小武教授のセクハラを実名で告発
1 告発の内容と大学に訴えるまでの経過
2 腰が重い大学、陳の圧力――実名での告発へ
3 大学が陳の停職などを発表、それに対する懸念
4 問題を否認する陳に対して他の女子学生の証言や録音も公開
二 さまざまな大学の卒業生と在学生が、各大学に対して、キャンパスセクハラ防止システム確立を実名の連署で訴え
1 昨年から訴えていた何息さんが、西安外国語大学に対して
2 広州新メディア女性ネットワークが、教育部と北京航空航天大学とに対して、キャンパスセクハラ防止のための規定の案を付して
3 羅茜茜さんも、北京航空航天大学に対して
4 半月余りの間に74大学で延べ8000人が署名
5 大学当局の警戒、署名サイトは次々に削除
6 削除されても続けられる運動、一部大学からは返答
7 全国大学教員反セクハラ宣言
三 #MeTooに触発された女性記者・黄雪琴さんの「中国女性記者セクハラ状況調査」。黄さんと羅さん、万弁護士の協力
1 黄雪琴さんの「中国女性記者セクハラ状況調査」
2 黄雪琴さんと万淼焱弁護士が羅さんに協力
四 羅さんの告発は成果、教育部も対応
1 北京航空航天大学、陳の教員資格取り消し、セクハラ防止システムの整備を表明
2 全国の大学生が教育部にも要求
3 教育部は、陳の「長江学者」称号取消、セクハラ防止システムの研究を表明
4 フェミニスト活動家の教育部への要求
五 これまでのキャンパスセクハラ反対運動の積み重ね
1 厦門大学のセクハラ事件をめぐる運動(2014年)
2 中国の大学生のセクハラに遭遇状況調査(2017年)→今後は、全国的ネットワークの構築を呼びかける
六 さまざまな論評
1 欧米のMeToo運動との相違
(1)芸能界や政界ではなく、大学が中心
(2)欧米に比べて困難な点――セクハラ防止のための制度のなさ、インターネット規制・社会的統制の強さ、フェミニズムの蓄積の短さ
2 中国における変化――若者や女子学生と高等教育の家父長制との矛盾の顕在化、セクハラ認識の高まり
3 「師徳師風」という枠組み、システムの整備だけでは不十分
[要旨]
北京航天航空大学卒業生の羅茜茜さんは、今年1月1日、在学時に陳小武教授に受けたセクハラを実名で告発した。羅さんは、昨年10月から、アメリカでの#MeTooの呼びかけに触発されて、SNSで自らの被害を公表し、他の被害者たちとも話し合って、大学に陳を告発してきた。しかし、大学の動きは鈍く、陳が被害者に圧力をかけはじめたので、それに対抗するために、実名で告発したのだ。
当日のうちに、大学は、この問題は調査中であり、陳をとりあえず停職にしたと発表した。しかし、大学は「セクハラ」の語を回避して「師徳師風」の問題として捉えていた。また、今まで他の大学では、調査の結果がうむやになったこともしばしばあった。陳も問題を否認した。そこで、羅さんらは、他の被害者の証言も発表し、セクハラの録音も公表した。
また、羅さんを先頭に、さまざまな大学の卒業生と在校生が、各大学に対して、キャンパスセクハラ防止システム確立を実名の連署で訴える動きが起こった。この動きは、20日までに74大学、のべ8000人に広がった。しかし、多くの大学は、署名サイトを削除するなど、運動に対する警戒心をあらわにした対応をした。
しかし、それにもめげず運動は続けられたし、きちんとした対応をした大学もあった。また、教員による宣言も出されたり、全国的ネットワークを呼びかける動きが起きたりもした。
そして、羅さんの告発に対して、12日、北京航天航空大学は、陳の教員として資格を取消し、今後セクハラ防止システムを整備すると表明した。教育部もそうしたシステムを研究することを表明した。
昨年11月に、やはり#MeTooに触発されて、自らの被害を訴えた女性記者・黄雪琴さんが「中国女性記者セクハラ状況調査」を開始していたのだが、今回の羅さんの告発には、その黄さんらも協力した。
また、すでに2014年に、厦門大学などを中心に全国でセクハラについての学生や学者の運動が起きており、その際に作成された「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止管理弁法」や「厦門大学セクシュアルハラスメント防止規範」は、今回の運動でも活用された。さらに、2017年、民間のグループが発表した中国の大学生のセクハラ遭遇状況調査も、今回の運動で活用された。
今回の中国の運動について、欧米の#MeToo運動と比較すると、芸能界や政界ではなく、大学が中心であることが指摘されている。また、欧米に比べていくつも困難な点(セクハラ防止のための制度のなさ、インターネット規制・社会的統制の強さ、フェミニズムの蓄積の短さ)があることも指摘されている。しかし、同時に中国でも、若者や女子学生と高等教育の家父長制との矛盾が顕在化し、セクハラ認識の高まってきたことも、今回の運動の背景として指摘されている。
一 北京航天航空大学卒業生の羅茜茜さん、#MeTooに触発され、在学時の陳小武教授のセクハラを実名で告発
1 告発の内容と大学に訴えるまでの経過
2018年1月1日、羅茜茜さんは、インターネットの微博で、博士課程時代の副指導教官の陳小武教授が、自分在学中に、自分を含めた女子学生に対してセクハラをしていたことを告発した(1)。
陳教授は、「長江学者」(中国の教育部が、国内外の優秀な学者を中国の高等教育機関に招致して、国際的にトップレベルの学術界のリーダーを養成することを目的とした「長江学者奨励計画」(2)によって招致された学者)の1人でもあった。
羅さんが微博に書いたのは、以下のような内容である。
羅さんは、2000年に北京航天航空大学に入学し、2004年には直接博士課程に入り、2011年に博士課程を卒業した。現在は、アメリカ在住である。
2017年10月15日、羅さんは、ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴィー・ワインスタインが多くの女性にセクハラをしていたことが明るみに出た事件をめぐって、アリッサ・ミラノがツイッターで、性暴力の問題の巨大さを示すために自らの被害を公表する「#MeToo」の活動を呼びかけたことを知った。
そのとき、羅さんは心の中で「me too」と言った。羅さんは、北京航天航空大学の学友のグループチャットの中の「北航の陳小武先生をどう評価するか」というスレッドを開いてみた。
すると、ある匿名の女性が、陳小武から「あなたが数年間、私に一途になって、ボーイフレンドを作らず、私に対して絶対的な忠誠を誓ったら、ほしいものを何でもあげる」と言われ、今後の進路のことも言われて、ホテルに誘われたことを書いていた。それを断ったら、口をきいてくれなくなったという。また、別の匿名の女性は、2人きりのデートに誘われたことを書いていた。また、陳が女子学生に対しては軽薄なことを言って、ひどいからかいをするという投稿も、いくつも匿名でなされていた。
羅さんは呆然とするとともに、ついに立ち上がった人たちが出てきたことに感激した。
2日後、羅さんはそのスレッドに匿名で、今から12年前の2004年末~2005年初めに、自分が陳からセクハラを受けたことを、おおむね以下のように書き込んだ。
羅さんが自分の被害について訴えると、続々と以前同じ実験室にいた学友が羅さんに連絡を取ってきたという。私が博士課程に進学したばかりのある日の午後、陳は私に「姉が外国に行って、姉の家の花の面倒を見る人がいなくなった。女子学生は生まれつきそういうことが上手だから、来てほしい」と言った。私は、「私は上手ではない」と言ったが、陳がどうしても、と言うので、陳の機嫌を損ねるのを恐れて、彼の姉の家に行った。陳は「妻との関係がうまくいっていない」「その原因は、妻が保守的すぎて、性生活が不調和だからだ」と言い、「あなたは知ってるか? 実際はとてもおもしろいんだ」と言って、性行為を強要しようとした。私はすっかり怖くなって、泣きながら「陳先生、やめてください。私はまだ処女です。私は何もわかりません」と言った。陳は私が処女だと聞いて少しためらったようで、その後も私はずっと泣き続けたので、ようやく諦めた。陳は、私を送って帰るとき、助手席に座らせて、手をなでながら、「今日起こったことは、誰にも言ってはならない」と口止めした。
これ以後、私は陳にずっと反発の気持ちを持つようになり、陳も私にずっと意地悪をした。その後出国する機会ができたら、私はすぐに出国した。それは彼の魔手から逃れるためだった。彼の下で勉強していた数年間は、私の人生の悪夢だった。なぜなら、陳にひどくいじめられて、出国前には、うつ病になって、幻聴や幻覚も出ていた。抗鬱剤を飲むことで、どうにかやってこられた。
私が知るところでは、現在少なくとも5人の女子学生が彼にセクハラを受けたことがあることが明確である。ますます多くの人が立ち上がるにしたがって、精神的被害者の人数は増えつつある。私は学位のために、長い間立ち上がる勇気がなかったことをずっと後悔してきた。もし立ち上がっていれば、その後これほど多くの被害者が出なかっただろう。私が最初のセクハラの被害者に違いない。姉妹たちに対して、私の告発が遅くなったことをおわびする。
以上の陳述には絶対に嘘はないことを私は保証する。もし今後必要になれば、私は実名で通報する。アメリカはセクハラについて非常に厳格な法規と通報システムがあるが、私たちの中国にはない。そのことこそが、このような恥知らずが無法の限りを尽くす機会を与えている。私は社会の関心を呼び起こして、このような学術の恥知らずを追放するとともに、女子大学院生という弱者たちを保護する措置を導入したい。
羅さんは、自分一人の証言だけでは不十分なので、陳にセクハラにあった女性の校友とともに「Hard Candy」というグループを作った。この名称は、少女が性犯罪者に報復をする映画からとったものだった。といっても、彼女たちは私的に陳に報復しようと思ったわけではない。当初はその後の行動についてまでは考えておらず、ただ事実を知りたかった。そのグループで女性たちは、自分がセクハラをされた経験について語り合った。
しかし、セクハラの被害について語るのは難しい。グループの中にも、以前陳にセクハラの被害に遭ったけれども、グループでは自分の被害について訴えずに沈黙を守った女性もいた。陳さんは、その女性の気持ちがわかった。
羅さん自身も、陳にセクハラの被害にあったときは、陳を告発できなかった。羅さんは父母にそのことを言ったのだが、保守的な父母は、それを不名誉なことだと思った。また、父母は、羅さんが勉学に努力して大学から推薦をもらっていたので、陳のセクハラを告発したら、陳に報復されて推薦を取り消されることを心配した。
「北航の陳小武先生をどう評価するか」というスレッドでの話は盛り上がり、ある卒業生からは、友人が「陳に大金を貸した。その金は、陳が女子学生を妊娠させて、家族に怒鳴りこまれたので、口止めをするための金だった」と言っているという情報も入ってきた。
また、グループの中のBさんは、陳のセクハラの証拠になる録音を提出してくれた。Bさんはセクハラをされていた2年間、自己防衛のために、陳の発言を録音していた。そこには、陳がBさんに「私の愛人になれ」、「同棲しよう」、「ホテルの部屋を取った」と言ったり、からかったりしていたことが記録されていた(3)。
証言や証拠がそろったので、羅さんはこの男を徹底的に打倒するときだと思った。そこで、北航の校友会の会長に連絡をとって、北航の指導者に引き合わせるよう求め、陳を女子学生にセクハラをしたことを実名で通報したいと言った。
すると、すぐに北航の規律検査委員会の教員から陳さんに連絡があった。羅さんは北航の規律検査委員会に、陳のセクハラには、3つの証拠があると言った。1.私たち被害者の証言、2.女子学生Bの録音、3.陳が女子学生を妊娠させたとき、金を借りて口止め料を払った際の、その貸借過程を証明する第三者である。
2 腰が重い大学、陳の圧力――実名での告発へ
10月下旬に羅さんは実名で北航の規律検査委員会に通報したのだが、同委員会は、もっと多くの証拠が必要だとずっと言っていた。
規律検査委員会は、Bさんの録音について、陳の声と非常に似ていることは認めたが、まだ技術的な鑑定が必要だと言った。また、規律検査委員会は、陳を問いただしたときに、陳がさまざまな理由を見つけて、取り繕うことを心配した。たとえば、「これは、私がおしゃべりしているときの映画の中のセリフだ」とか「以前のガールフレンドと恋愛していた時のものだ」とか言うのではないかというのだ。
また、陳は、自分のセクハラについて書かれたスレッドを削除し始めた。
さらに、陳は、Bさんに電話をして圧力をかけた。Bさんは、今後、仕事の必要上、以前の指導教官だった陳の署名をもらわなければならなかったので、Bさんは、陳が、Bさんが大学から学位や学歴の証明をもらうことを妨害することを恐れた。Bさんは、また、陳が家族に報復するのではないかということも恐れた。
しかし、Bさんは、録音を弁護士に渡すことは同意した(4)。
また、規律検査委員会は、被害者と面談したいと何度も言った。しかし、羅さんは、被害者の情報が漏れるのを警戒して、面談は断った。同委員会の調査にははっきりした進展はなかった。
その間に、以前は積極的に活動してきた1人のメンバーが、家族に心配され、反対されたために、グループから抜けるということも起きた。
そのため、羅さんは、これ以上待てないと思い、大学に催促をするために、ネット上で暴露することが必要だと考えた。「Hard Candy」グループは、みんなで投票するというやり方で、この決定を支持した(5)。
3 北京航空航天大学が陳の停職などを発表、それに対する懸念
北京航空航天大学は、1日の午後7時に、以下の声明を出した(6)。
しかし、この大学側の声明に関しては、以下の2点について、疑問や懸念が出た。大学はずっと最近のSNSの本学の教員の陳小武の師徳師風(教師としての道徳、態度)問題の評判と実名の通報を重視してきており、まず工作組を設立し、迅速に調査と事実確認をおこない、すでに陳小武をとりあえず停職にした。北京航空航天大学は、師徳師風に反する行為に対しては一切容認しない。事実であることを確認したら、断固として厳しく処分し、けっしていい加減にはしない。
第一に、李钘瀅さんという人が「四年間に13件の大学教員のセクハラ事件が明るみに出ているが、その1/3は調査結果が不明である」という文章を発表し、今回もそれらと同様の結果にならないか、危惧の念を表明した(7)。北京航空航天大学以外の12件の事件の一覧は、以下である。
2014年
・5月、広西財経学院の女子学生が、論文の指導教官の容某の猥褻行為を警察に通報した→警察は容某を行政拘留5日にした。
・6~7月、新浪微博のIDが「汀洋」と「青春大蓬車」の2人が、厦門大学歴史系考古学専攻の博士課程指導教員の呉春明が女子学生にたびたびセクハラをしていたことをネット上で告発し、呉春明が半裸でホテルで熟睡している写真も公表した→厦門大学は、7月、呉春明の博士課程の指導教員の資格を停止し、10月には、党から除名、教員資格をはく奪する処分をした。しかし、2015年12月、呉は、中国考古学会新石器時代考古専門委員会の委員に当選した。
・10月、四川美術学院の副教授・王小箭が食事の時に、左右の女子学生に頬ずりしたり、手を握ったりしている写真がネットに掲載された。王は何度も2人の女性の身体に接触し、抵抗されてもやめなかった。→王は謝罪、四川美術学院は、王の教学・研究・学術活動への参加を禁止した。
・10月、北大国際関係学院の女性留学生が、同院の副教授・余万里が性暴力によって友人の女子学生を妊娠させたとネットで告発。北京大学にも微信の証拠を付けて告発。→北京大学、余万里を党から除名。
2015年
・6月、天津工業大学の女子学生が、同校の男性教員のセクハラと脅迫を微博で、微信の証拠付きで告発。→天津工業大学の公式微博が、事実調査がはっきりする以前は、教員の身分と関係するすべての仕事をとりあえず停止し、調査結果が出るのを待って、法律・法規に照らして処理すると回答。●この事件は、調査結果が不明である。
・8月、巣湖音楽学院の卒業生が、学生局の趙尚松局長が、卒業証を使って脅迫、言語によるセクハラをおこなったことを告発。微信のチャットの記録も付ける。→大学の党委員会が、趙を厳重警告処分にし、学生局局長を解任。
2016年
・8月、北京師範大学の学生が、同大学の某学院の副院長の教授が女子学生にセクハラをしていたことを暴露。→同大学は、すでに調査を始めたと表明。●しかし、この事件も、調査結果は不明である。
・5月、北京連合大学生物化学工程学院の卓球の代講教員が女子学生に対してセクハラをしている写真がネットで公表される。→同学院の微信、事件の調査処理の期間は、学院はその教員の授業停止にすると回答。●この事件も、調査結果が不明である。
・10月、南京師範大学教師教育学院の教授・李某がセクハラをしている微信がネットで暴露される。→同学院当局は、現在調査中であり、事実であることを確認したら、けっしていい加減にはしないと回答。●この事件も、調査結果が不明である。
2017年
・5月、北京映画学院の女子学生が、大学のクラス担任の父親に性暴力の被害を受け、そのことを訴えたら、逆に教師と学生に攻撃・排除されたと訴える。6月、あるアカウントが、宋靖・呉毅を頭目とする教授たちがしばしばセクハラをしてきたと通報。→●数日後、そのアカウントの内容は削除され、この事件もその後どうなったのか不明である。
・7月、「女権の声」の微博が、電子科学技術大学通信学院の張翼徳教員が、セクハラをし、たびたび、試験の成績や優秀な学生に対する大学院の試験免除制度を利用して、女子学生を脅してきた疑いがあるという情報を発信した。
・12月、南昌大学の卒業生が、同校の国学研究院副院長・周斌に性暴力を受けてきたことを大学に訴え、院長・程水金による事件揉み消しも通報。→南昌大学、程を院長から解任、周を副院長から解任するとともに、周の教学研究業務をとりあえず停止。
第二に、フェミニスト活動家の猪西西さん、張累累さん、waiting(韋婷婷)さんが、大学が陳小武の事件について「師徳師風の問題」と述べており、明確には「セクシュアルハラスメント」と言っていないことを批判した。彼女たちは1月4日に声明を出し、その中で、「私たちは、セクハラは先生の道徳や態度の問題ではなく、女性の権益に対する重大な侵害であり、教育環境の性差別と違法な犯罪であると考えている。私たちは、大学が、陳小武が女子学生を侵害した事件のセクシュアルハラスメントとしての性質を正視・承認し、『セクシュアルハラスメント』という言葉を回避しないよう希望する」と述べた(8)。
4 問題を否認する陳教授。それに対して他の女子学生の証言や録音も公開
1月1日、『北京青年報』の記者が陳教授に連絡を取ると、陳教授は、「第一に、私はその(ネットで言われている)ことを知っているが、私は、私は違法なことや規律に反することはやったことがない。第二に、大学がすでにそのことを調査しており、具体的な状況は大学の調査結果を基準にする。第三に、このことは私個人の名誉に関わるのだから、私はすべての合法的権利を保留する」と述べた(9)。
それに対して、1月3日には、記者の黄雪琴さん(後述)が「沈黙を打ち破る、羅茜茜は勇気を12年間蓄積した」という文章をネットに発表した。
黄さんの文章は、陳のセクハラについて、他のさまざまな女子学生による証言を詳しく伝えるものだった。
たとえば、大学院生のDさんによると、陳は女子学生を、出張や会議、食事などにつき合わせ、食事の席では、陳が注いだ焼酎を飲み干すよう強要していた。Dさん自身も、陳に呼び出され、罵倒されて、泣いたら、きつく抱きしめられた。ある先輩は、陳に罵られるのに耐えきれず、退学しようとしたら、みんなの前で、「亭主と勉強のどちらが重要なのか」「勉強を続けたいなら、離婚しろ」と言われたという。
さらに、この文章の中で、黄さんは、陳がBさんにセクハラをしている録音のファイルもネット上に公開した。
また、黄さんによると、羅さんがネットで告発をおこなった翌日、羅さんの父母の家に「陳の従姉」と称する見知らぬ人から電話がかかってきて、すぐに微博を削除するように言われたという。こうした陳のさまざまな圧力についても、黄さんは暴露した(10)。
二 さまざまな大学の卒業生と在学生が、各大学に対して、キャンパスセクハラ防止システム確立を実名の連署で訴え
中国における#Me Too運動の特徴は、各大学におけるキャンパスセクハラ防止システム構築を求める運動が進められている点である。
1 昨年から訴えていた何息さんが、西安外国語大学に対して
まず、1月2日、西安外国語大学を2017年に卒業した何息さんという女性が、同大学に対して、キャンパスセクシュアルハラスメント防止システムを早く構築するように、「西安外国語大学ジェンダー平等促進会」の微信をつうじて訴えた。すると、2時間後には、王鉄軍学長から積極的な回答が返ってきた(11)。
何さんが学長にそのように訴えたのは、これが初めてではない。昨年6月にも、何さんは、当時、学校の病院でセクハラの疑いのある事件があったので、キャンパスセクハラ防止システムを設立するように王学長にメールで訴えた。卒業の前日の7月4日にも、学長に同様のことを訴えていた。
今年1月1日、何息さんは羅茜茜さんの微博を見て、その時のことを思い出して、今回も学長に訴えたわけである(12)。
2 広州新メディア女性ネットワークが、教育部と北京航空航天大学とに対して、キャンパスセクハラ防止のための規定の案を付して
1月3日、広州新メディア女性ネットワークも、教育部と北京航空航天大学に対して、キャンパスセクシュアルハラスメント防止システムを作るように建議の手紙を送った。教育部宛ての手紙には、「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止弁法」(「弁法」は、「規則」というような意味)を付し、北京航空航天大学宛ての手紙には、「北京航空航天大学セクシュアルハラスメント防止規範」の試案をもした。
「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止弁法」の内容を紹介すると、まず、第1章「総則」では、セクハラの定義などについて規定している。
第2章「校内セクシュアルハラスメント防止管理制度」では、大学に「セクシュアルハラスメント防止工作小組(委員会)」を設立することや、大学内のセクシュアルハラスメントに関する相談制度、通報制度、調査制度、処罰などについての制度、報復防止制度などについて規定している。
第3章「セクシュアルハラスメント事件校外処理制度」では、学内の制度は、訴訟や警察への訴えを妨げるものではないことなどを規定している。
第4章「セクシュアルハラスメント防止教育」では、教職員と学生に対するセクハラ防止教育について規定している。
第5章「責任および処罰」では、大学がセクハラ防止についての職責を果たさない場合は、教育部が命令を出したり、処罰したりすることを規定している。
「附則」では、義務教育や中等教育に関しては、別の弁法を制定することなどを規定している。
また、「北京航空航天大学セクシュアルハラスメント防止規範」は、個別の大学向けのものであり、より詳細なものである。
たとえば、セクハラなどに対処する「ジェンダー平等工作小組」は、日常の活動を3名の委員が担い、そのうち少なくとも2名は女性とし、少なくとも1名は女性の権利やジェンダーについての研究者にし、少なくとも1名は学外者にするなどとしている。また事件が起きたときは、9名のメンバーで構成する委員会を設立し、そのうち女性委員が少なくとも5名、男性委員が少なくとも3名、学外の委員が少なくとも3名とするなどとしている。
広州新メディア女性ネットワークは、上の「弁法」や「規範」を含めた手紙の全文を公開して、多くの人々が自分の母校に対して建議の手紙を送るように訴えた(13)。
3 羅茜茜さんも、北京航空航天大学に対して
1月4日、羅茜茜さん自身が、北京航空航天大学に対して、以下のような公開書簡を出した(14)。
4 半月余りの間に74大学以上で延べ8000人が署名北航への連名の手紙――私たちの勇気と期待を無にしないでください
尊敬する北航の指導部ご高覧:
2018年1月1日、卒業生の羅茜茜が実名で北京航天航空大学の陳小武教授が女子学生にセクハラをしていたことを通報していたことは、すぐにホットな話題になりました。この、最初に沈黙を打ち破り、実名で通報したことは、羅茜茜が12年間蓄積した勇気によるのです。また、陳小武にセクハラを受けていた他の女子学生も、学業、事業、家庭にマイナスの影響が生ずる危険を冒しています。しかし、彼女たちが道義上あとに引けず通報したのは、心の中では北航に対して深い愛情があるからであり、北航に健康で向上を目指す大学の気風を取り戻してほしいからです。
キャンパスセクシュアルハラスメントは、偶発的で低確率な事件ではありません。
2014年の某有名高等学府での「性暴力事件」の後、西華師範大学の李佳源副教授が四川・安徽の2つの大学の129名の女性院生に対しておこなった調査によると、女性院生の32.56%がセクハラを受けたことがありました。
2017年、広州ジェンダー教育センターが6592部の「中国の大学の在校生・卒業生がセクハラにあった状況調査」の結果を公表しました。調査の結果は、7割近い調査対象者が、程度はさまざまですが、セクハラにあったことがあることを示しています。なかでも女性がセクハラにあった比率は75%であり、セクハラをした者の9割が男性です。
全国113の211大学に情報公開申請をしておこなわれた調査もあり、各大学がセクハラに関する訴えや通報を受けたことがあるかどうかや、大学内でセクハラ防止の研修教育と処理システムがあるかどうかを尋ねています。受け取った回答によると、セクハラを処理する専門の部門またはプロセスがある大学は全国に1つもありませんでした。
反セクハラのシステムや信頼できる空間がないこと――これが、キャンパスセクハラが次から次へと尽きることのない最も根本的な原因です。このことも、私たちがなぜこの手紙を連名で書いたかという理由です。
何がセクハラなのか? どのようにしたらセクハラが起きる前に潜在的ハラッサーを震え上がらせることができるのか? どのようにしてセクハラをする者に対して勇敢にNOを言うのか? セクハラを受けたら、どのようにしたら傷をいやすことができるのか? 私たち広範な学生は、これらの知識を普及することを必要としています。
それゆえ、私たちは連名で、大学に対して、通報した学生の身分を秘密にするという前提の下で、できるだけはやく陳小武に対して調査をして、その結果を公表しすることと、有効なキャンパスセクハラ防止システムを打ち立てることをお願いするのです。
私たちは、以下のことを希望します。
1.大学はセクハラを防止する教員の行為準則を出して、教員は直接の権力関係がある学生と性的に親密な、恋愛関係になってはならないと明示すること。なった場合は状況に応じて処分する、あるいは教学のポストから離れさせること。
2.毎学期、定期的に反セクハラに関する講座、課程を開設し、予防と対応などの面について、教員と学生にそれぞれ研修をおこなうこと。
3.毎学期、定期的にインターネット上でキャンパスセクハラの研修とテストをおこない、学生がセクハラ・憂鬱・焦慮などの状況について、オンラインで匿名でフィードバックできるようにすること。
4.大学の指導部、職業的専門家、法律関係者などによって構成される教職員と学生の平等権益機構を設立し、セクハラの通報・訴え・調査・問責・懲戒などのシステムを打ち立て、教師と学生のセクハラの通報と訴えに責任を負う専門的機構を設立して、監督の力を強め、スムーズに通報・訴えができるようにし、セクハラの被害者に対して有効な援助を提供すること。
5.心理的援助をおこなう事務局を設立して、セクハラ被害者のための援助プロジェクトを導入すること。
6.セクハラ行為の訴えを受理する部門の責任者を明確にすること。
私たちは、キャンパスセクハラは「生活の態度」の小事でなく、ましてや個人の私事ではなくて、教育の「たましいの若死」であると信じています。私たちは、北航には厳格な教師としての道徳(師徳)の審査監督システムがあることは知っています。しかしながら、科学的なセクハラ防止と対応のメカニズムを打ち立てることは、教員の職業倫理に関わる公共の事務であり、教育の公平を保障し、権力の濫用を防止し、従業員と学生の権益を保障し、性差別を制止するために必要な手段です。私たちは、この事件を契機にして、セクハラに関する政策を出し、セクハラ防止のための制度を打ち立て、北航が、公正な気風の労働・教学・生活環境がある大学になることを望んでいます。
私たちは、北航が率先してキャンパスセクハラに防止し対応するシステムを作ることを期待しています。
北航は、私たちの勇気と期待を無にしないでください。私たちはもっと北航を誇りにしたいと思います。
北航の学生がたてまつる
2018年1月4日
連署人:
羅茜茜 6系2004級
姓名( )
何か私たちに言いたいことがありますか( )
1月4日には、何息さんに賛同した西安外国語大学の校友も、同大学に対してキャンパスセクハラを防止することを求めて、セクハラ防止規定の草案を付した連名の手紙を発表して、署名を求めた(15)。他のさまざまな大学でも、同様の活動が始まる。
以下、私が読むことのできた公開書簡について、大学名と手紙の執筆者、連署人を列挙する。ここではスペースの関係で連署人については数字で示しているが、実名も公開されている。なお、日付は、その手紙のネットでの公開が確認された日であり、実際にはより以前に執筆、公表されていたものが多いと思われる。
また、以下の連名の署名人数は、ネットで公開された時点でのものであり、後述のように、その後集まった署名を合わせると、これよりはるかに多くの人が署名している。
1月4日
西安外国語大学←―2017年卒業・何息ら18人の連名
1月5日
南華大学←―2015年卒業・李雨景、連署人:2012年~2015年卒業・9人(16)
北京師範大学←―2017年卒業・趙梅星(17)
1月6日
山東大学←―1994年卒業・呂頻(18)
南京師範大学←―2013年入学・張雨欣(19)
西安培華学院大学←―2016年卒業・宋逸飛。連署人:2010年入学~2017年入学・14人(20)
長安大学←―2012年卒業・李婷婷(21)
湖北大学←―2011年卒業・宋小雨(22)
西南大学←―2015年修士卒業・邱汐羽(23)
北京郵電大学←―1994級学生・常立(24)
1月7日
西北大学←―2014年卒業・陳紅麗(25)
東北師範大学←―2014年卒業・鄧亜娟(26)
汕頭大学←―2013年~2017年入学・陳敏芝ら13人(27)
1月8日
北京大学←―2012年卒業・顧華盈、連署人:2011年入学~2017年入学・14人(28)
上海交通大学←―本科2001年入学で修士2005年入学・侯艶、連署人:1998年入学~2016年入学の36人(29)
1月9日
清華大学←―2017年修士入学・蒋家齢と2003年卒業・黄溢智、連署人:2002年~2017年入学・20人。伝言欄に2011年~2017年入学・99人の実名書き込み(30)
華南理工大学←―2014年入学・梁暁雯、2013年入学・劉憚(?)文(31)
広東外語外貿大学←―1970年入学~2012年入学の4人の連名(32)
厦門大学←―2013年度卒業生・劉新童、連署人:1月9日だけで、2011年入学~2017年入学の74人(33)
復旦大学←―校友151人、在学生176人、合計327人が実名で連署(34)
1月10日
遼寧師範大学←―2012年卒業・鄭熹(35)
山東財経大学←―2008年入学~2014年入学の4人の連名(36)
広東工業大学←―2007年入学~2017年入学の55人の連名(37)
四川大学←―2012入学・肖斯琦、連署人:2004年入学~2014年入学の25人(38)
1月11日
広州大学←―2017年入学・区媚婷(39)
信陽師範学院←―2010年入学・郭晶、連署人:2010年入学~2016年入学の4人(40)
天津商業大学←―2016年入学・劉輝(41)
江漢大学文理学院←―2016年卒業・甘雨辰ら3人(42)
1月12日
中国海洋大学←―2014年入学・謝瑞鑫(43)
大連理工大学←―2001年入学・陳紅偉、連署人:は1981年入学~2003年入学の8人(44)
1月16日
南京大学←―1996年入学~2017年入学の269人(45)
1月19日
中国政法大学←―2007年卒業~2017年卒業の197人(名前を出している人は (46)
私が原文を確認できたのは以上だが、この運動は、1月10日までに「全国45大学」(47)ないしは「47大学」(48)に広がり、1月12日に「61大学」(49)、1月17日までに「71大学」(50)、20日までに「74大学」(51)にまで広がっている。
また、署名したのは、20日までに「のべ8000人」(52)にのぼったという。
原文を確認できた手紙を見ると、その内容はさまざまではあるが、パターンとしては、以下のものが多い。
まず、自分の卒業年次とジェンダー平等に関心を持っていることを書く。
次に、羅茜茜の陳小武に対する告発について述べ、陳のような者は一人だけではないことを、2014年、厦門大学の女子学生が、指導教官の呉春明にセクハラを受けていたことを訴えた事件や、2017年、北京映画大学の女子学生が、多くの教授が女子学生にセクハラをしていたことを告発した事件を例にして述べる。しかも、それらの事件では、加害者がきちんと処分されていないことを指摘する。
さらに、2017年4月に広州大学ジェンダー研究センターが発表した調査結果によると、女子学生の75%がセクハラを受けたことがあるなど、セクハラはどこでも起きていることを述べる。
そのうえで、自分の大学の状況や自分の在学中の経験について述べている。
そして、大学に対して、以下の「5つの1」を提案する。
最後に、署名を求める。1.毎年、全学の各教職員に対して、1回、セクハラ防止に関する研修をすること。
2.各学生に、1回、反セクハラの授業を受けさせること。
3.毎学期に1回、セクハラのインターネット調査をして、学生がセクハラ、憂鬱、焦慮などの状況について匿名でフィードバックできるようにすること。
4.セクハラの通報・訴えを受け付けるルート(郵便箱、メールボックス、電話など)を1つ、設置すること。
5.セクハラ行為の訴えを受理する部門1つと、責任者1人を明確にすること。)
最初に呼びかけたのは卒業生が多いが、連署人として名前を出したり、名前を書き込んだりしている人の中には在学生も非常に多い。
1月4日に羅茜茜さんが出した北京航空航天大学への建議の手紙は、同大学の学生でなくとも署名できるようにしたこともあり、翌5日までに、2000人近い署名が集まった(53)。署名をした人の中には、同大学の第1期の学生で、82歳になる金如山元教授もいた(54)。
対象を各大学の在校生や卒業生に限定した署名でも、多数の署名が集まっている。
上記にも327人(復旦大学)、269人(南京大学)という数字があるが、南京大学では、1月16日に公表したところ、初日だけで350人の校友と在校生が署名し、翌日には、410名に達した。そのうち約180人は匿名だったが、約230人は公開だった。三日目には、教授からも署名が来た。1月19日に大学に提出する予定だという(55)。
また、精華大学では出された翌日の午後4時42分までに358人が連署し(56)、四川大学では半日で270人を越えた(57)。北京大学でも、200人余りの署名が集まった(58)。さらに、中国政法大学では、19日までに851人の校友の署名が集まった(59)。
5 署名サイトは次々に削除、大学当局の警戒
しかし、現在、多くの署名サイトはアクセスできなくなっている。個人の微信などで発信した場合は必ずしもそうではないが、署名を書き込むサイトのほとんどはアクセスできなくなっている。これは、大学当局が、運動の広がりを恐れていることを示していると言えよう。
そのことをはっきり示しているのが北京大学の事例である。
11日、北京大学からも返信は来た。しかし、それは、「大学はセクハラ防止システムに関する提案には留意する。皆さんの大学に対する関心と非常に感謝している」と述べたものの、その後は、「近年、大学は師徳師風を強化する制度建設にはたえず注意している」と言って、「師徳師風」に関する規定など、これまで大学がしてきたことを述べるだけの返信だった(60)。
北京大学の学生が書いたと思われる「失望と憤怒:北京大学反キャンパスセクハラ提案の手紙その後」という一文によると、その後、大学側の態度として、以下のようなことがわかったという。[1]大学は、提案に対してもう別の回答はしない。なせなら、大学は、セクハラに関しては、すでにある制度によってすでにカバーしていると思っているからだ。[2]大学は、提案の手紙を支持した学友たちを、誰かに利用されていると思っている。というのも、多くの大学で同時にこうしたことをしているのは、(背後に)組織があるからだと考えているのだ。[3]大学は、教育部に出した反セクハラの手紙(後述)の中で、北京大学の名前が最初に書いてあるのは、故意に北京大学の名前を利用して、ことを起こそうとしているからだと思っている。
そうした大学の姿勢に対して、この文の筆者は、おおむね、以下のように反論している。[1]もし今ある制度でセクハラの問題がカバーできているのなら、なぜ学内でさまざまなセクハラが起きるのか? 制度に抜け穴や盲点があるからこそ、セクハラが起きるのだ。[2]まさか組織があったら何か問題があるというのではあるまい? ピクニックをするにも組織が必要なのに、制度建設には組織が必要ではないというのか? 1人や数人だけで声を上げても、大学はとりあってくれるのか? [3]すべての大学をピンイン順に並べた結果、北京大学の名前が最初になっているだけである。ピンイン順になっていることにも気が付かないほど、大学は、何を恐れ慌てているのか?(61)
「フェミニスト行動派」の微信がリンクを発信したものは、すべて削除されているとのことだ。4年前の厦門大学の呉春明のセクハラ事件のときは、フェミニストの連名の公開の建議の手紙(後述)が主流メディアにも争って報道されていたのと比べても、がっかりさせられる状態だという(62)。
6 削除されても続けられる運動、一部大学からは返答
それでも、いちおう12校では、電子メールなどの形式で返答があったという(63)。
なかでも、大連外国語大学の回答は最も積極的だった。同大学では、劉宏学長(女性)が、連署に参加した1人の在学生に連絡を取って会談をした。その際、大学側は、学長を含む5人の管理層の人が出席した。学長は「あなた方の『5つの1』については、私は非常によく書けていると思う」と言い、「『5つの1』で述べられている内容については、一部は責任者が大学にすでにいるが、もっと完全な制度あるいは措置にしなければならない」と述べて、学生たちの意識を肯定し、その活動を支持すると表明したという(64)。
また、四川大学も、「あなたが手紙の中で述べている『キャンパスセクシュアルハラスメント防止システム』を構築することに関する建議は、建設的なものであり、母校は今後関連する活動の中で、取り入れ、参考にする」という回答をした(65)。
また、1月8日には、南京師範大学から「あなたが提出した提案については、大学は専門家を招聘して、検討する」と返信があった(66)。
復旦大学・北京林業大学・信陽師範大学も「すでに関係する制度を研究しているところである」と表明した(67)。
また、やや特殊な例だが、1月8日、youthさん(仮名)は、北京師範大学・香港浸会大学連合国際学院に対して、公開の手紙を出した。すると学内の教員から電話がかかってきて、「大学にはすでに英文のセクハラ防止制度と処理プロセスがある」と言った。これは、同学院が香港の大学との合同の国際大学だから、ということのようだ。9日午後には、大学からyouthさんに連絡が来て、10日に面談をすることになった。もっとも、11日の朝になっても、その件での連絡がまだないというが(68)。
また、注目したいのは、次々に削除されても、新しい大学で署名運動が開始されていることである。10日までに40数大学で署名が開始されたのに比べると、11日以降は若干勢いが衰えたとはいえ、5で述べたように、その後も30大学ほどの伸びを示している。
7 全国大学教員反セクハラ宣言
1月19日には、以下のような、「全国大学教員反セクハラ宣言」が発表されている(69)。これは、必ずしも全国規模のものではないが、教員からの声明として貴重である。
この宣言には、21日の時点で、武漢大学ジャーナリズムとコミュニケーション学院の教授ら12人と他のさまざまな大学の教授・副教授・講師ら32人が連名で名を連ねている。最近、北航長江学者・陳小武、南昌大学国学院副院長・周斌、対外経貿大学副教授・薛原が長期にわたって女子学生にセクハラをしてきたことが明るみに出た。私たちは大学教員として、これに対して強い怒りを感じ、彼らに対して最も厳しく譴責する。私たちの学生を保護し、類似の事件を予防するために、私たちは連署を出して、以下のように訴える。
私たちは訴える。教育部と各大学、各小中学校が、精緻で厳格な反セクハラの政策と規定を制定することを。
私たちは訴える。全国人民代表大会が、精緻で厳格な反セクハラの法律を制定し、セクハラ、とくに学生に対するセクハラを厳罰にすることを。
私たちは要求する。各大学と小中学校が毎年度、すべての学生と教員に対して、一時間、反セクハラの政策と規定についての講演をおこない、学校の指導者を含めた全員が必ず参加することを。
私たちは要求する。すべての系・院・校の指導者はセクハラの通報を受けたら、必ず上級へ報告し、学校によって真剣に調査をすること、そうしない各クラスの指導者は一律に解任することを。
私たちは要求する。セクハラが調査によって事実だとわかったら、セクハラをした者を必ず解雇し、教員の資格を取消し、教育部に通報し、大学内のインターネット、権威あるメディアに通告を出し、犯罪の疑いがある者は、必ず司法機関に引き渡すべきことを。
私たちは承諾する。私たちは、絶対に学生や同僚、部下に対してセクハラをしないことを。
私たちは承諾する。もしどの学生や同僚、部下が他の人にセクハラをされていても、私たちは直接大学の学長に通報することを。
私たちは承諾する。セクハラの被害者を断固としてサポート・保護し、セクハラ被害者・セクハラ通報者・セクハラ暴露者に報復する、いかなる行為及び機関、個人も暴露することを。
2018年1月19日
新メディア女性ネットワークが取材したところでは、発起人は、武漢大学ジャーナリズムとコミュニケーション学院・特任教授の徐開彬さんである。彼は、アメリカで博士号を取って教員になったために、アメリカの大学のセクハラに関する制度・政策を体験していて、教員と学生との権力関係についても問題意識を持っていたことが、今回の宣言を出すことに結び付いたようだ(70)。
三 #MeTooに触発された女性記者・黄雪琴さんの「中国女性記者セクハラ状況調査」。黄さんと羅さん、万弁護士の協力
1 黄雪琴さんの「中国女性記者セクハラ状況調査」
話は昨年にさかのぼるが、2017年11月20日、女性記者・黄雪琴さんも、#MeTooに触発されて自らや周囲の女性記者のセクハラ被害を微博・微信で発表した。これが、中国での#MeToo運動の最初の公然としたあらわれのようだ。
黄さんは、ずっと以前に、セクハラのために某有名メディアを辞職したが、その本当の辞職理由は誰にも言わなかった。黄さんは、周囲の女性記者たち(A~Eの仮名)もセクハラが原因で辞職していることを述べ、「今回、私は沈黙を破ることを決めた。たとえ自ら傷跡をさらしても、たとえ続いて荒れ狂う風雨がこようとも」と書いている(71)。
さらに黄さんは、ネットでアンケートを取るという形で「中国女性記者セクハラ状況調査」を開始し(72)、1カ月で260通が集まった(73)。
2 黄雪琴さんと万淼焱弁護士が羅さんに協力
羅茜茜さんも、黄さんと連絡を取った。
さらに、羅さんは国内の法律関係者にも積極的に相談をし、とくに万淼焱弁護士に援助してもらった。万弁護士は、中国の1990年代から現在までのセクハラ反対運動を整理しており、外国の法律や判例の比較もおこなっていた(74)。また、万弁護士は、長年DV被害を受けていた李彦さんが夫を殺した事件や、国内で初めて女児に対する性暴力について心理的リハビリの費用を含めた賠償を認めさせた事件を担当してきた(75)。
羅茜茜さんは、黄雪琴さんに「私は実名で告発したい」と伝えたが(76)、羅さんが陳教授を告発した際には、黄雪琴さんや万淼焱弁護士も協力した。
たとえば、1月1日の羅茜茜さんの告発はもちろん羅さん自らが書いたものだが、黄さんは、羅さんの告発の中の細部に関して、女子学生や証人に手を尽くして取材し、告発が真実であるという裏付けをした。万淼焱弁護士は、法律面での詳細な提案や意見を出し、告発に虚構や曲解、他の人を傷つける内容が混じっていないかどうかをチェックした。
そのうえで、1月3日に、黄さんは、自らの文章として「沈黙を打ち破る、羅茜茜は勇気を12年間蓄積した」を発表した。
また、黄さんの「北航への連名の手紙――私たちの勇気と期待を無にしないでください」は、黄さんが羅さんと万弁護士の同意を得て初稿を書き、羅さんと万弁護士が補充や修正をした。そのうえで、黄さんが発起人・第一署名人になり、人々に署名を求めたのである(77)。
四 羅さんの告発は成果、教育部も対応
1 北京航空航天大学、陳の教員資格取り消し、セクハラ防止システムの整備を表明
1月12日、北京航空航天大学は、微博で以下のように発表した(78)。
この決定について広州新メディアネットワークの李思磐さんは、「厦門大学の事件と比べて、北航の処理には、2つの良い点がある。陳のしたことを『セクシュアルハラスメント』と規定していて、『正当でない関係』と規定して被害者に汚名を着せるようなことをしていないこと。セクハラ防止システムという事後の手立てを講じていることの2つである。1つ変わっていない点は、教員の資格を取消し、各種の職務を解任したが、まだ加害者を解雇していないことである。呉春明は、教員の資格を取り消された一年後に、公的な学会の委員になり、かつまだ学内で学術資源を掌握している」と指摘した(79)。最近の本学教員・陳小武についての実名の通報とメディアの報道について、本学は、非常に責任を持って、事実にもとづいて真相を明らかにするという態度で、調査・事実確認を真剣かつ綿密におこなった。調査の結果、陳小武が学生に対してセクハラ行為をしたことは現在すでに明らかになった。
陳小武の行為は、教師の職業道徳と行為規範にはなはだしく背いており、劣悪な社会的影響を与えた。国家と大学の規定にもとづいて検討した結果、陳小武の大学院常務副院長の職務を解任し、大学院生指導教官の資格を取り消し、教員の職務を解任し、教員の資格を取り消すことを決定した。
「徳才兼備・知行合一」が、北航の人間が追求する価値であり、大学は師徳師風に違反する行為に対して一貫して一切容認してこなかった。大学は、これを教訓にして、施行細則を制定し、関係するシステムを整備し、師徳師風の構築をいっそう強化し、人民が満足する教育をしっかりおこなうよう努力する。
2 全国の大学生が教育部にも要求
1月13日、上の北京航空航天大学の発表を受けて、44大学の53人の卒業生や在学生が実名で「キャンバスセクシュアルハラスメント防止システムを訴える教育部への公開の手紙」を発表した。
この手紙は、以下のことを要求している。
1.教育部は、陳小武の「長江学者」の称号を取消し、既に支給した奨励金の返還を求め、陳小武を事業編制から外すべきである。
2.教育部は、対外経貿大学が薛原のセクハラ疑惑事件に対して徹底的に調査し、被害者のプライバシーは保護するように督促すること。
3.教育部は、先頭に立ってキャンバスセクシュアルハラスメント防止実施弁法を制定・公布し、同時に各クラスの学校に実施を督促すること。
4.教育部は、キャンパスセクハラ防止活動を学校の審査の中に入れること(80)
3 教育部は、陳の「長江学者」称号取消、セクハラ防止システムの研究を表明
1月14日、教育部は、陳小武の「長江学者」の称号を取消し、奨励金の支給停止および既に支給した奨励金の返還を求めることを決定した。
教育部はさらに、関係部門と共同で大学でのセクシュアルハラスメントを防止する持続的システムの研究をするとも述べた(81)。
4 フェミニスト活動家の教育部への要求
1月20日には、フェミニスト活動家として著名な25歳の張累累さんが、肖美麗さんとともに、教育部に宛てて公開の手紙を出した。
その手紙は、まず、この半月の間に非常に多くの大学の卒業生や在校生が各大学にセクハラ防止システムの整備を求めて署名に参加したこと、それは私たちの怒りの現れであることを述べている。次に、そうした動きに対して積極的な回答を寄せた大学もある一方で、少なくない大学が学生の声に耳を貸さなかった中、教育部が陳小武の「長江学者」の称号を取消し、セクハラ防止メカニズムを研究することを表明したことを歓迎の意を表している。そのうえで、以下の点を教育部に要求している。
1)教育部は、キャンパスセクハラ防止システムの構築プロセスに、学生を十分に参加させること。
2)教育部が先頭に立って、キャンパスセクハラ防止実施弁法を制定・公布し、同時に各レベルの学校に実施を督促すること。
3)教育部は、キャンパスセクハラ防止活動を学校の審査の中に入れること(82)。
今回のキャンパスセクハラ反対運動では、各大学における運動でも、猪西西、張累累、韋婷婷、李婷婷、呂頻、梁暁雯(梁小門)、郭晶、黄溢智(弁護士)といったフェミニスト女性が先頭に立っており、行動派に属するフェミニストが大きな役割を果たしていると言える。
また、陳小武は断罪されたが、中国の大学にはまだ多くの「陳小武」がいる。しかし、それを実名で公然とは告発できない状況もある。そこで、微博アカウント「@让性sao扰见光[https://www.weibo.com/u/6453223392](セクハラを明るみに出す。「性騒擾」の「騒」が「sao」となっているのは、当局の検索よけのためであろう)」が、全国各地から寄せられたセクハラの訴えを、匿名で発信する活動を始めた(83)。
五 キャンパスセクハラ反対のためのこれまでの活動の積み重ね
もちろん中国でも、以前から性暴力やセクハラに対する取り組みはおこなわれてきた。さまざまな調査研究、セクハラに対する裁判、法制度についての提案、企業内の制度を確立するためのNGOの取り組みなどである。
また、2014年以後は、キャンパスセクハラについての運動が高まっており、そうした運動の到達点は、今回の事件にも生かされている。
1 厦門大学のセクハラ事件をめぐる運動(2014年)
そのきっかけになったのが、以上でもたびたび言及されている、厦門大学のセクハラ事件である。これは、2014年7月から8月にかけて、新浪微博のIDが「汀洋」と「青春大蓬車」の2人が、厦門大学歴史系考古学専攻の博士課程指導教官の呉春明が女子学生にたびたびセクハラをしていたことをネット上で告発したことに端を発する(84)。
この際すでに(同年7月24日)、厦門大学の76名の在校生と卒業生が、大学に対して、キャンパスセクハラ防止規範の制定などを求める連名の手紙を学長に送っている(85)。
さらに「教師の日」(9月10日)の前日の9月9日には、256名の学者や学生が、教育部に対して「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止管理弁法」を制定するように連名で手紙を出し、厦門大学の学長に対しても、「厦門大学セクシュアルハラスメント防止規範」の制定を要請する手紙を出した(86)。
この時の「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止弁法」と「厦門大学セクシュアルハラスメント防止規範」は、今回、広州新メディア女性ネットワークが教育部に出した「高等教育学校セクシュアルハラスメント防止弁法」と各大学に出した「セクシュアルハラスメント防止規範」のほぼ同一である。すなわち、この時に、すでにそれらの「弁法」や「規範」が出来ていたからこそ、今回、羅茜茜さんが告発した際に、すばやく提案ができたと言えるだろう。
また、このときの256名の中には、王政、沈睿、蔡一平、馮媛といった著名なフェミニスト研究者や活躍しているフェミニスト活動家が入っている点も注目される。
さらに、「教師の日」には、10の大学(厦門大学・天津大学、東北師範大学・北京外国語大学・西北大学・武漢大学・西北師範大学など)の門前で、女子大学生たちが「赤ずきん」の扮装をして、キャンパスセクハラ防止を訴えるというパフォーマンスアートもおこなった。彼女たちは、全国116カ所の「211プロジェクト大学(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学)」の校長に、彼女たちが起草した「中国大学セクハラ防止規範」を提案する手紙も送った(87)。
この時の「赤ずきん」は、右手に剣を、左手に盾を持ち、その盾には「自由と夜を女子学生に返せ」と書かれていた。なぜそうしたのかというと、この活動に参加した「小五」さんは、「伝統的な理解では、赤ずきんが狼に食べられたのは、彼女が警戒していなかったからだとされており、この物語は、家にいなければならず、どこにも行ってはならないことを教えているとされてきました。セクハラや性暴力の事件がおきるたびに、それは女子学生が警戒していなかったからだと言われてきました」、「私たちが赤ずきんの扮装をして、手に剣と盾を持ったのは、私たちは、家にいてどこにも出かけない人になるつもりはない、と言いたいからです」と述べた(88)。
10月9日、教育部は「大学教員の健全な師徳建設を推進する長期的メカニズムに関する意見」を出し、その中で大学教員の「紅七条」の一つとして「学生に対してセクシュアルハラスメントをする、あるいは学生と正当でない関係になる」を挙げた(89)。
10月14日、厦門大学は、以下のような発表をした(抜粋) (90)。
この処分について、広州新メディア女性ネットワーク代表の李思磐さんは、「厦門大学は、呉春明の教員の資格を取り消したけれども、解雇はしなかった。このことは、(呉が)間接的に学術的資源を掌握し続けるかもしないことを意味する」と批判した。呉春明は一名の女性大学院生とたびたび正当でない性関係を持ち、別の一名の女子大学院生に対してセクシュアルハラスメント行為をおこなった。
(このことは)教員が持つべき基本的職業道徳と態度に非常に背いており、師徳師風を損ない、教員の隊列全体のイメージを非常に損ない、学生の心身の健康に対してきわめて大きな損害を与え、劣悪な社会的影響を生じさせた。
呉春明を党から除名し、教員の資格を取り消す処分を決定した。
さらに、李思磐さんは、厦門大学が、呉春明が1人の当事者とは「正当でない関係を持ち」、別の1人の当事者に対しては「セクシュアルハラスメントをした」と認定している点に関しても、次のように批判した。「呉春明は、2人の当事者に対して、同じように、指導教官であり、学科のリーダーであるという公職の身分を利用して、非常に似た手段によって、支配し、接近し、セクハラをおこなった。違うのは結果だけで、1人は孤立無援な状況の下で呉と性関係を持ち、もう1人は、困難な中、抵抗し、幸いにしてそれを免れた。(……)こうした認定のロジックは、被害者に口をつぐませる効果を非常に強め、また、被害者に汚名を着せるものである」(91)。
彼女の危惧は当たり、2015年12月、呉春明は、中国考古学会新石器時代考古専門委員会の委員に選出された(92)。
こうした負の教訓も、今回の事件に際して生かされたと言えるのではないか。
2 中国の大学生のセクハラ遭遇状況調査(2017年)→今後は、全国的ネットワークの構築を呼びかける
その他にもさまざまな事件をめぐる活動があるが、調査として重要なのが、2017年3月8日に、民間団体である「広州ジェンダー研究センター」という小さなグループの韋婷婷さんらが発表した「中国の大学の在校生と卒業生がセクハラに遭遇した状況調査」である(93)。この調査も、上述のように、今回の運動で言及されている。
この調査は、2016年9月に始めたもので、6592部のアンケートと500人以上に対する取材をもとにしている。調査対象は約84%が女性である。学外であったセクハラも調査対象になっている。
その結果は、「北航への連名の手紙」などで記されたことのほか、以下のような点ものである。
・非異性愛者のほうが、異性愛者よりもセクハラにあう比率が高い。
・学生から遭ったことがある人が21.8%、大学の上級(教員など)から遭ったことがある人が5.2%。
・大半が黙っていたり、我慢したりしており、大学に報告・通報したのは4%未満。6割の人が「報告しても無駄だ」と考えている。
・被害者の12.4%は、人間関係や学業に重大な影響があり、鬱になったり、自殺などの状況もある。
韋婷婷さんは、2015年3月に公共交通でのセクハラ反対運動をめぐって刑事拘留されたフェミニスト五姉妹の一人でもある。
韋さんは、「広州ジェンダー教育センター」を設立した後、「セクハラと侵害予防ネットワーク」という小さなグループを作り、2017年1月にキャンパスセクシュアルハラスメントについての茶話会をした。その時に黄雪琴さんも来て、その後も彼女と交流を深め、陳小武の問題にもかかわっていった。
しかし、ある女子学生は羅茜茜さん同様に、男性の副教授にセクハラの被害に遭っていたが、彼女は彼を告発できないという話を韋さんは聞いた。その副教授も、陳同様に陳小武同様に何人もの女子学生にセクハラをしていながら、陳のように証拠を残していなからだ。つまり、「羅茜茜」以外に、多くの「羅茜茜」がいるのだ。
韋さんは言う。「Me Tooでは不十分だ。Everyone Inをしなければならない」。
また、次のようにも言う。「Me Tooは『声を上げる』ことしか解決しない。声を上げたのちに何をするのか、必要なのは、もっと多くの人がI’m Inすることだ」。
韋さんは、だから、今後、私たちは以下のようなことをしなければならないと言う。
その目標は大きく、下のようなものである。
1.全国的な、セクハラを予防し、反対するために助け合う場を設立し、さまざまな都市でボランティアのサービスの場を提供し、お互いに交流する。
2.心理的・法律的サービスを提供する。
3.セクハラを予防するための研修を提供し、平等なジェンダー/セクシュアリティの意識を唱導する。
4.反セクハラに関する教育、研修、予防メカニズムを呼びかけ訴える。
新しい年の目標としては、以下のことを掲げている。
1.調査報告の中のすべての211大学に大学調査報告と建議の手紙を送る。
2.このネットワークのクラウドファンディングのコーディネーター1人分の賃金。
3.もっと多くの関心を持った仲間を募集し、一緒に仕事をする!
そのために、韋さんはクラウドファンディングを呼びかけている(94)。
六 さまざまな論評
今回の運動については、さまざまな論評がなされている。呂頻さんの見解などを中心に、最後に、それらを見ていきたい。
1 欧米のMeToo運動との相違
(1)芸能界や政界ではなく、大学が中心
まず指摘されているのは、欧米の#MeToo運動は芸能界や政界が中心だったが、中国では反セクハラ運動は、まず大学で発生したということである。
この点について、呂頻さんは「それは、時期がまだ早いのかもしれない。なぜなら、中国の父権制にもとづく利益共同体はとても強固なので、現在はまだ周縁部分の、若い女性が声を上げているということかもしれない」と述べている(95)。
(2)欧米に比べて困難な点――セクハラ防止のための制度のなさ、インターネット規制・社会的統制の強さ、フェミニズムの蓄積の短さ
また、中国では、欧米ほどにはMeToo運動が盛んにならないのではないかという指摘は何人もの人からなされている。その原因としては、以下のような点が挙げられている。
・セクハラ防止のための制度の有無
呂頻さんは、欧米でMeToo運動が盛んになった1つの背景として、欧米にはセクハラ防止制度がすでに存在していることを挙げている。「“MeToo”は(……)具体的な政策的訴えがない。これは、アメリカにはすでにセクハラ防止制度が存在するという社会的条件があるからである。しかし、その一方で、長い間存在している制度――体制内処理のシステムがいまだにセクハラをなくすことができていないので、強力で集団的な運動と公然とした告発によって、より有効に個別の事件を解決するとともに、社会全体を広範に教育している。」(96)
馮媛さんも、中国の女性が羅茜茜のように自分が性暴力にあったことを公にしようとしても、ハードルが高く、そのことは、制度的な欠陥を示していると指摘している。すなわち、国家の法律にも、大学や企業にも、セクハラ防止制度がなく、女性が訴えても梨のつぶてになるかもしれないというのである(97)。
・インターネット規制・社会的統制の強弱、フェミニズムの蓄積の長短
また、呂頻さんは、欧米でMeToo運動が盛んになった背景として、他にも、「完全に開放的なインターネット」、「政治や会社における管理の相対的な透明性」、「1970年代の第二波フェミニズム以来、セクハラについて相対的に広範な認識の基礎」を挙げる(98)。
呂頻さんは、「これを中国と対比すると、いくつかの点で中国はまだかなり不利ではないか? だから、北航事件は、インターネットの自発性に基づいているという類似性はあるとはいえ、“中国版MeToo”というラベルを貼れるかは不確かだ」(99)と言う。
Leta Hong Fincher(洪理達)さんも、中国におけるMeToo運動の障害として検閲を挙げる。彼女は、「もし公憤が一定程度に達したら、当局は『社会的不安定』とみなして、躊躇なく検閲をするだろう。」「アメリカのMeToo運動で引きずり降ろされた男の中には、政界の人物も少なくないが、中国共産党の指導者にとっては、これは非常に怖いことだ」と述べている。
彼女は、中国では近年フェミニズム運動を含めた社会運動が弾圧されていることについて、「さまざまな都市にはフェミニスト活動家がいて、彼女たちが互いに協力して、広範な支持を集めることを、中国当局は、政治的脅威とみなしている」と指摘している(100)。
2 中国における変化――若者や女子学生と高等教育の家父長制との矛盾の顕在化、セクハラ認識の高まり
この点については、すでに本稿でも、五「キャンパスセクハラ反対のためのこれまでの活動の積み重ね」で触れたが、さらに呂頻さんは、今回の事件に至るまでの、中国の女性のソーシャルメディア上での活動に注目している。呂頻さんは、2017年5~6月の北京映画学院事件でも、教員の行為に対する広範で、強い憤りが示されたが、その背景には、高等教育の体制の中の父権的ないじめがあり、学校の教員の学生に対する暴力を庇護し隠蔽する官僚主義があるという。ソーシャルメディアの主なユーザーである若者は、そうした問題に敏感であると呂頻さんは述べている。
呂頻さんは、また、フェミニズムの視点から言えば、現在、中国の大学では女子学生の比率が50%に達している一方で、大学のほうはと言えば、教育部が女子学生の人数を規制したり、教授が性差別発言をしたりしているという状況を指摘する。すなわち、女子学生の成長と教育における家父長制との矛盾が、今回の反セクハラ運動の背景にあったということである(101)。
また、中国でも、この数年、社会のセクハラに対する共通認識はすでにかなり高まってきた。セクハラの若干の基本理念、たとえばジェンダーにもとづく権力関係によるものであることや、被害者を責めてはならないことなどを多くの人が理解するようになってきた(102)。こうしたことも指摘されている。その一端は、本文で触れた「赤ずきん」のパフォーマンスアートにも現れているだろう。
そのうえで、呂頻さんは、MeTooのインパクトについて、「しかし、微博上の“MeToo”というタグはすでに450万アクセスあり、“MeToo”運動の情報が、中国においてセクハラというテーマの合法性と関心度を強めたし、中国の若者にさらに自信を与えた」と述べている。
また、「ただ、私たちの基盤は非常に限られている。だからこそ、中国の女性の知恵と勇気は讃嘆に値する」とも呂頻さんは指摘する(103)。
インターネットの検閲に関しても、検閲からあるから諦めるのではなく、「私が見たところ、検閲によって、人々が話をするのを放棄したことはない」(呂頻)、「検閲に対しては、みんな多くの対策をしている。たとえば、生放送とか、火星文(一般の中国語とは異なるさまざまな文字の用法によって意味をあらわす)とか、文字を図版にするとか」(肖美麗)、「削除されても、人々の記憶には残る」(呂頻)といったことが指摘されている(104)。
3 「師徳師風」という枠組み、システムの整備だけでは不十分
この点は、すでに猪西西さん、張累累さん、韋婷婷さんも指摘していたことだが、呂頻さんも、セクハラの問題を処理する政府側の枠組みが「師徳師風」になっていることを問題にしている。呂頻さんは、「この枠組みは、まず回避しているのは『性』である」と指摘し、また、「道徳の角度から、セクハラの原因を個人化することは、ちょうど完全で無辜の体制の中にいくつかネズミの糞があるようなものとして理解することになる」と批判している(105)。
また、呂頻さんは、単にスクールセクハラ防止システムを整備するだけでは不十分であることも強調している。
「制度は必須だが、私たちに必要なのは条文のプロセスの官僚主義ではなく、陳情のような消耗と苦しみの迷宮ではない。(……)制度がユートピア的に機能することは不可能である。父権的ないじめに満ちた体制内では、『セクハラ投書郵便箱』をしても何の役にも立たない。たとえば、北航はたしかに調査を開始し、通報者が提供した陳小武の録音を受け取ったが、『陳はモノローグの公演の練習をしていたと言うかもしれない』という思考回路で対応した。/このような、誠意がない調査で明らかになったことは、男権的な個人と男権的なシステムが、再度結びついて、いっしょに責任を拒否することである。/私は、制度を作ることに意義がないと言っているのではなく、広範な抗争と監督の意義を軽視してはならないと言っている。」(106)
1月23日には、フォックスコンの女性労働者からも、反セクハラの声が上がった。
「大きな声でエロ話をし、体つきや容姿によって身近な女性の同僚をからかう。『仕事を指導する』という理由で、まったく必要がない身体の接触をする。工場の現場では、どこにもこのような『セクハラ文化』が存在している。未婚の女性労働者は、セクハラにとくによくあう。また、多くの人がこれを当然のことと考え、もし被害に遭った女性労働者が反抗したら、かえって『敏感すぎる』、『冗談が分からない』と責められる」
この女性労働者は、こうした文化だけでなく、制度も問題だとし、会社に対しても、作業現場にセクハラ防止の標語を貼る、組長や管理職、新入従業人にセクハラ防止研修を受けさせる、訴えを受け付けるチャンネルを設置するなどの対策を求めている(107)。
こうした階層的な広がりを含めて、注目していきたい。
(1)「我要实名举报北航教授、长江学者陈小武性骚扰女学生」cici小居士2018-01-01 08:16:22。以下、とくに典拠が明記していない一―1の記述は、これによる。
(2)「長江学者奨励計画」高等教育の現状と動向 Science Portal China(科学技術振興機構)。
(3)この段落とその上の2つの段落については、「陈小武:你敢说没持续性骚扰女学生?没乱纪?」cici小居士2018-01-02 08:34:03。
(4)以上は、「陈小武:你敢说没持续性骚扰女学生?没乱纪?」cici小居士2018-01-02 08:34:03。
(5)以上は、张奕涵 邓晖「女博士讲述举报教授性骚扰始末:受害群体投票决定曝光」新媒体女性2018-01-05 10:52:46(首发于谷雨实验室(guyulab))。なお、「打破沉默,罗茜茜积累了12年的勇气」(2018-01-03 黄雪琴 ATSH)には、このとき他の人が羅さんの決断に賛意を表して挙手した微信のスクリーンショットが掲載されている。
(6)北京航空航天大学的微博1月1日 18:57。
(7)「四年内曝出13起高校教师性骚扰事件,1/3查无后续」2018-01-02 编辑组 NGOCN君。
(8)「为北航点赞👍全世界都期待你的行动,请将性骚扰追查追责到底」猪西西爱吃鱼2018-01-04 17:30:32。
(9)「北航教授回应举报性骚扰女学生:没做过违法的事」网易新闻2018-01-01 19:59:32(来源: 北京青年报)。
(10)「打破沉默,罗茜茜积累了12年的勇气」2018-01-03 黄雪琴 ATSH。
(11)女权之声的微博1月3日 10:48。
(12)以上は、「“#Me Too” 在中国的一次大范围流行:学姐学长们出手了」好奇心日报(魏倩)1月11日。
(13)「建议母校建立反性骚扰机制,支持北航罗茜茜,第一枪已经打响!」新媒体女性1月3日 23:50(現在閲覧不能)。
(14)「给北航的联名信—请别辜负我们的勇气和期待」2018年1月4日。(現在閲覧不能)→(転載)「给北航的联名信—请别辜负我们的勇气和期待」雪鸟-黄小懒人2018-01-04 11:16:32。
(15)「建立预防校园性骚扰机制,让西安外国语大学变得更好」2018-01-04 西外校友 以何西言。
(16)「南华大学校友李雨景实名建议建立校园性骚扰防治机制的公开信」鱼里鱼闯江湖 2018-01-05 18:04:30(現在閲覧不能)。
(17)「北师大|北师大,希望你不要辜负我们的勇气和期待」2018-01-05 赵海星 女权行动派很好吃(現在閲覧不能)。
(18)「山东大学校友吕频实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」吕频的微博2018-01-06 17:24:21。
(19)「南京师范大学校友张雨欣实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」妇女张的微博1月6日 18:15(現在閲覧不能)。
(20)「西安培华学院大学校友宋逸飞实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」93趙雲的微博1月6日 18:36(現在閲覧不能)。
(21)「【公开信】校友李婷婷实名呼吁长安大学建立防治性骚扰机制」麦子家2018-01-06 22:14:01。
(22)「湖北大学校友宋小雨实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」2018-01-06 宋小雨 我们与平权(現在閲覧不能)。
(23)「致西南大学|实名建议母校建立校园性骚扰防治机制的公开信」(現在閲覧不能)。
(24)「北京邮电大学校友常立实名建议母校建立校园性骚扰防治机制的公开信」2018-01-06 常立 嗓音(現在閲覧不能)。
(25)「致西北大学郭立宏校长的公开信」大栗子要不负时光的微博1月7日 11:20(現在閲覧不能)。
(26)「东北师范大学校友邓亚娟实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」马户陪你打官司的微博1月7日 23:44(現在閲覧不能)。
(27)「给母校汕头大学的公开信:为了那些可能正在默默忍受的学生」(現在閲覧不能)。
(28)「联名信 | 北京大学学生实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信 」2018-01-08 PKU的北门静悄悄。
(29)「上海交通大学校友实名倡议建立校园性骚扰防治机制的公开信」JaneHY2018-01-08 20:45:24。
(30)「清华大学学生、校友关于建立校园性骚扰防治机制的建议信」黄溢智律师的微博1月10日 14:29。
(31)「华南理工大学校友梁晓雯实名建议母校建立反性骚扰机制」梁小门_的微博2018-01-09 05:54:22。
(32)「广外校友实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」小海豚在北极的微博1月9日 22:11。
(33)「厦门大学校友刘新童实名呼吁建立校园性骚扰防治机制的公开信」「# Metoo | 厦门大学学生&校友致校长建议信」2018-01-10 厦门大学学生校友 厦大言炎。
(34)「复旦大学学生校友提议建立建立校园性骚扰防治机制的公开信」桃莉格日勒在路上的微博1月9日 22:24。
(35)「辽宁师范大学校友郑熹实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」猪西西爱吃鱼的微博2018-01-10 16 44(現在閲覧不能)。
(36)「迟来的Me Too|实名呼吁山东财经大学建立校园性骚扰防治机制」网红社工2018-01-10 16:27:11。
(37)「#Me Too丨广东工业大学校友关于“建立学校防治性骚扰机制”的倡议书」。
(38)「四川大学校友学生实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」七隻小怪獸的微博【联名信有了一次有意义的修改】1月10日 15:37。
(39)「广大青年,这有封寄给校长的公开信,你一块儿吗?」。
(40)「信阳师范学院,反性骚扰,我们不能输!」社工郭晶的微博1月10日 11:27。
(41)「天商人 不冷漠」(現在閲覧不能)。
(42)「江汉大学文理学院校友实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」。
(43)「中国海洋大学要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」北京时间七点半的微博1月12日 22:43。
(44)「大连理工大学校友陈红伟实名实名呼吁母校建立校园性骚扰防治机制的公开信」Nov0304的微博1月12日 09:39。
(45)七隻小怪獸的微博1月16日 13:42、「南京大学校友、学生实名请求建立校园性骚扰防治机制的公开信」。
(46) YakiShare的微博1月19日 15:02、「呼吁中国政法大学建立校园性骚扰防治机制的联署」。
(47)「厦门大学校友刘新童实名呼吁建立校园性骚扰防治机制的公开信」「# Metoo | 厦门大学学生&校友致校长建议信」2018-01-10 厦门大学学生校友 厦大言炎。
(48)七隻小怪獸的微博【联名信有了一次有意义的修改】1月10日 15:37(「四川大学校友学生实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」)。
(49)「罗茜茜“赢”了,反性骚扰征途仍在继续」新媒体女性2018-01-12 20:15:22。
(50)「在逆风中前进的反性骚扰行动者 」2018-01-17 李钘滢 李钘滢。
(51)「万人致信母校反性骚扰发起人张累累给教育部的一封信」2018-01-20 张累累 削美丽。
(52)同上。
(53)「校长亲启|中国Metoo在大学,母校能否承载罗茜茜们的勇气和期待?」2018-01-09 枣枣 女权之声。
(54)「北航已与4名性骚扰举报者联系 82岁校友力挺罗茜茜」2018年01月09日 18:57:28来源:红星新闻。
(55)我也是蓝鲸灵的微博1月18日 13:55。
(56)黄溢智律师的微博1月10日 14:29。
(57)「四川大学校友学生实名要求建立校园性骚扰防治机制的公开信」七隻小怪獸的微博【联名信有了一次有意义的修改】1月10日 15:37。
(58)「“#Me Too” 在中国的一次大范围流行:学姐学长们出手了」好奇心日报(魏倩)1月11日。
(59) YakiShare的微博1月19日 15:02、「呼吁中国政法大学建立校园性骚扰防治机制的联署」。
(60)「关于提议建立校园性骚扰防治机制的说明」校长信箱。
(61)「失望和愤怒:北大反校园性骚扰倡议信的后续」十六盈的微博1月17日 04:07。
(62)「罗茜茜“赢”了,反性骚扰征途仍在继续」新媒体女性2018-01-12 20:15:22。
(63)「罗茜茜“赢”了,反性骚扰征途仍在继续」新媒体女性2018-01-12 20:15:22。
(64)「校长亲启|中国Metoo在大学,母校能否承载罗茜茜们的勇气和期待?」2018-01-09 枣枣 女权之声。
(65)七隻小怪獸的微博汇报【川大校长办公室对呼吁建立高校性騷擾防治机制的邮件回复】1月17日 18:35。
(66)妇女张的微博1月10日 10:59。
(67)「罗茜茜“赢”了,反性骚扰征途仍在继续」新媒体女性2018-01-12 20:15:22。
(68)「“#Me Too” 在中国的一次大范围流行:学姐学长们出手了」好奇心日报(魏倩)1月11日。
(69)「全国高校教师反性骚扰宣言:武大、浙大、中山、复旦等已加入 」2018-01-21 14:35。
(70)「高校反性骚扰机制,教授们站出来了!」新媒体女性2018-01-22 15:07:31。
(71)「我也被性骚扰过—中国女记者性骚扰调查」2017-11-20 黄雪琴 ATSH。
(72)「中国记者性骚扰状况调查」
(73)「中国の記者も#MeToo セクハラ被害調査に260通」『朝日新聞』2017年12月24日。
(74)「我要实名举报北航教授、长江学者陈小武性骚扰女学生」cici小居士2018-01-01 08:16:22。
(75)「从北航性骚扰到校园反性骚扰机制:律师、专家和行动者怎么说」女权之声2018-01-03 17:02:54。心理的リハビリのための費用を含めた賠償を認めさせた事件については、「六旬教师48小时数次性侵13岁少女被判11年 法院:心理康复费3000」未来网2017-12-08 10:15:00(新京报などによる)参照。
(76)张奕涵 邓晖「女博士讲述举报教授性骚扰始末:受害群体投票决定曝光」新媒体女性2018-01-05 10:52:46(首发于谷雨实验室(guyulab))。
(77)以上は、「我们写联名信的动机」(現在閲覧不能)。
(78)北京航空航天大学的微博1月12日 23:05。
(79)「罗茜茜“赢”了,反性骚扰征途仍在继续」新媒体女性2018-01-12 20:15:22
(80)鱼里鱼闯江湖的微博1月13日 12:36。
(81)「教育部决定撤销陈小武“长江学者”称号,停发并追回已发奖金」澎湃新闻2018-01-14 18:01。
(82)「万人致信母校反性骚扰发起人张累累给教育部的一封信 」2018-01-20 张累累 削美丽。
(83)「“导师带我们去陪酒,想要读博就不能拒绝”| 陈小武的十八个分身」女权之声2018-01-16 11:25:54
(84)「对话“青春大篷车”:我只想说出真相」、「举报人专访2:爆料者“汀洋”:6年的漫长缠斗」网易号2014年8月7日 18:28。
(85)新媒体女性的微博2014-7-24 10:36【76名校友联署呼吁厦门大学建立机制防治校园性骚扰】。
(86)新媒体女性的微博【教师节256名学者致信教育部及厦大校长:建立高校性骚扰防范机制迫在眉睫2014-9-10 11:13。
(87)女权之声的微博【“小红帽”现身大学 十地女大学生要求校长反性骚扰】2014年9月10日 11:27 、「十地女大学生起草性骚扰防治规范 致信百所“211”高校校长呼吁禁止“师生恋”」法制日报——法制网2014年9月10日。
(88)Group Urges Action Against Sexual Harassment on University Campuses,The New York Times,September 10, 2014→「与中国校园性骚扰斗争的“小红帽”」2014年9月11日。当時の「赤ずきん」を使ったパフォーマンスアートに関しては、本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で「赤ずきん」姿で痴漢・セクハラ反対活動」参照。
(89)新媒体女性的微博【教育部出台规定禁止高校教师性骚扰学生 厦门大学博导性骚扰案尚未公布处理结果】2014-10-11 09:34 。
(90)新媒体女性的微博【你对厦大事件“吴春明被开除党籍 撤销教师资格”的处理结果怎么看?】2014-10-15 08:30。
(91)新媒体女性的微博【厦大性骚扰处理结果令人失望】2014-10-16 11:30。
(92)「吴春明满血复活出任中国考古学会委员 他们知道他性骚扰多名女学生吗」新媒体女性2015年12月23日 18:20。
(93)广州性别教育中心「调查显示:大学生中七成人曾被性骚扰」新媒体女性2017-03-08 19:37:45、「报告称高校性骚扰中过半的人选择沉默和忍耐」界面新闻2017/04/13 13:42。
(94)以上は、「【众筹】给高校寄性骚扰调查报告,筹建反性骚扰网络 」 2018-01-21 韦婷婷 广州性别中心。
(95)「教育部表态“零容忍”,反校园性骚扰大功告成了吗?」2018-01-18 吕频、美丽、大兔 女权之声。
(96)吕频「中国式反性骚扰的新女性前途」女权之声的微博1月10日 11:08。
(97)「北航女博士举报教授性骚扰 能推动中国的#MeToo运动吗」BBC中文网2018年1月5日。
(98)95に同じ。
(99)96に同じ。
(100)97に同じ。
(101)96に同じ。
(102)95に同じ。
(103)96に同じ。
(104)95に同じ。
(105)95に同じ。
(106)96に同じ。
(107)尖椒部落的微博1月23日 18:10。
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